糖代謝促進剤
【課題】天然物由来で、長期服用しても安全であり副作用が少なく、効率的に内臓脂肪の蓄積を防ぎメタボリックシンドロームを予防しうる糖代謝促進剤の提供。
【解決手段】サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を含有することを特徴とする糖代謝促進剤。より詳しくはサラシア属植物が、サラシアオブロンガ(Salacia oblonga)、サラシアレチキュラータ(S. reticulata)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)から選ばれた少なくとも一種である。
【解決手段】サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を含有することを特徴とする糖代謝促進剤。より詳しくはサラシア属植物が、サラシアオブロンガ(Salacia oblonga)、サラシアレチキュラータ(S. reticulata)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)から選ばれた少なくとも一種である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサラシア属植物の粉末物又は抽出物を含有する糖代謝促進剤及びその成分を含む食品、医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
サラシア属植物の根や幹はインドやスリランカの伝統医学アーユルヴェーダにおいて天然薬物として利用されてきた。スリランカではサラシア・レティキュラータの根皮がリュウマチ、淋病、皮膚病の治療に有効であるとともに、初期糖尿病の治療に用いられると伝承されている。インドではサラシア・オブロンガの根が同様の治療に用いられるほか、サラシア・キネンシスも糖尿病の治療に用いるとされており、その作用メカニズムはα−グルコシダーゼ活性阻害に基づく糖吸収抑制作用によるものであることが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
更に、サラシアに含まれる成分は肝臓内の糖新生を抑制し空腹時の血糖降下作用を有するとの報告もある(特許文献1)が、これまでサラシアが糖燃焼を促進しているという知見は得られていなかった。
【0004】
近年、過剰に摂取した糖分や脂質が内臓脂肪に転換され、それがひきがねとなってメタボリックシンドロームを引き起こすことが問題となっている。この内臓脂肪をためないためには糖質がより代謝されにくい脂質に変換される前に燃焼させた方が効率的である。
しかし、これまで明確に糖燃焼・糖代謝を選択的に促進する効果のある素材についての報告はされていなかった。
従って、メタボリックシンドロームの対策が社会問題化している現在、糖代謝促進作用を持つ安全な素材の開発が求められている。
【特許文献1】特開2006−290860号公報
【非特許文献1】FOOD Style 21、第6巻、第5号、第72〜78頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、長期服用しても安全な天然物由来で副作用の少ない、糖の代謝を促進させて効率的に内臓脂肪の蓄積を防ぎメタボリックシンドロームを予防する糖代謝促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では上記課題を解決するため鋭意検討した結果、サラシア属植物の粉末物又は抽出物を摂取することで、糖の代謝を選択的に上昇させることが可能なことがわかった。
本発明は、下記構成よりなる。
<1>
サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を含有することを特徴とする糖代謝促進剤。
<2>
サラシア属植物が、サラシアオブロンガ(Salacia oblonga)、サラシアレチキュラータ(S. reticulata)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする<1>に記載の糖代謝促進剤。
<3>
上記<1>又は<2>に記載の糖代謝促進剤を含有する食品。
<4>
上記<1>又は<2>に記載の糖代謝促進剤を含有する食品原料。
<5>
上記<1>又は<2>に記載の糖代謝促進剤を含有する医薬品。
【発明の効果】
【0007】
今回、我々はサラシアを摂取した際の呼吸商について調べ、サラシアの摂取が糖代謝を有意に高めることを見出した。
よって本発明により、糖代謝を高め内臓脂肪の蓄積を予防することができる。これにより、長期服用しても安全な天然物由来で副作用の少ない、メタボリックシンドロームを予防する糖代謝促進剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<サラシア>
本発明の糖代謝促進剤は、サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を含有する。
サラシア属植物としては、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)、サラシア・オブロンガ(S. oblonga)等、ニシキギ科サラシア属の植物を用いることができる。特に、コタラヒムブツともよばれるサラシア・レティキュラータ(S. reticulata)を好適に利用することができる。
【0009】
本発明においては、好ましくはサラシア属植物の幹、根皮および葉からなる群から選択される少なくとも1種からの抽出物又は粉砕物を使用する。
葉は粉砕して細片もしくは粉末として用いることが好ましい。さらにそのまま服用することもできる。
根皮および幹は、粉末として用いることができる。また、エキスの抽出に用いることもできる。ここでいうエキスとはサラシア属植物の抽出物のことをいう。エキス抽出に用いる際はそのまま使用してもよいし、粉砕して細片もしくは粉末としてからエキスを抽出することもできる。
【0010】
本発明において、サラシア属植物の抽出物は、抽出後の濾液のままで、又は濃縮もしくは希釈した状態又はその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
前記抽出物の乾燥エキス末は、使用時において、そのまま、あるいは適当な溶媒に溶解して使用することができる。前記溶媒は、抽出時に用いることができる溶媒であって、調製後の薬剤又は食品中に残留した場合に人体に悪影響を及ぼさないものであればよく、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
根皮および幹の粉砕粉末及び粉末抽出したエキス末は、第15改正日本薬局方記載の乾燥減量試験法にて、乾燥減量10%以下であることが好ましく、乾燥減量8%以下であることがより好ましい。
【0011】
さらにサラシア属植物の抽出物又は粉砕物を濃縮、乾燥してペースト状、粉末状として利用することもできる。抽出物を濃縮、乾燥してペースト状、粉末状にする場合には凍結乾燥法、スプレイドライ法などが使用されるが、これに限られるものではない。ペースト状、粉末状としたサラシア属植物の抽出物はそのまま服用することもできるし、水、茶、コーヒー、ジュース、アルコールなど飲用物、ケーキ等の一般的食品等を内容組成物とするものにサラシア属植物の抽出物の乾燥エキス末をその内容組成物の0.01質量%以上90質量%以下添加、混合して食品とすることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以上80質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以上60質量%以下添加する。また外用目的で使用することもできる。
特に、飲用物は容器詰飲料とすることが好ましい。容器詰飲料の外観は長時間にわたって保存すると色調の変化が大きく、商品としては不適切なものとなる。飲料は徐々に着色が進み、時間が経つにつれて、色調が変化する。
色調の保持のために、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムのような酸化防止剤を添加することで、より一層の効果を発揮することができる。酸化防止剤の配合量は、内容組成物の0.03〜1.2質量%程度、好ましくは0.04〜1.0質量%程度、より好ましくは0.05〜0.8質量%程度である。
また、より好ましくは、スクラーゼ阻害活性の高い(IC50値の小さい)サラシア属植物の粉末物又は抽出物を含有する錠剤に炭酸カルシウム又は二酸化ケイ素を総重量の1%以上含有せしめることで、経時による変色を防止し摂取必要量が少なくすることで、摂取者の負担軽減する方法を提供する。また使用量が少量になることで、製造加工上の用途の幅も広がり製品のコストも抑えることができる。
【0012】
また、糖代謝促進剤全量に対して0.0001質量%以上3質量%以下のマンジフェリンが含有されていることが好ましい。
【0013】
マンジフェリンの含量は下記により測定できる。
マンジフェリン含量の測定
マンジフェリンの含有量はHPLCを用いて、以下の方法で測定する。
<HPLC条件>
カラム: Capcellpack C18 UG120 φ4.6×250mm(資生堂)
カラム温度: 40℃
検出: UV360
流速: 1.0mL/min
溶媒A: 1.0% 酢酸 溶媒B: メタノール
リニアグラジエント(%B): 15%(0min)→25%(20min)
サンプルは50%メタノールに溶解させた後、シリンジフィルターで不溶物を除去して調製する。
検出されたマンジフェリンのピーク面積から、標品の検量線を用いて含有量を算出する。
【0014】
本発明の糖代謝促進剤は、スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)が50μg/ml以上800μg/ml以下となることが好ましい。阻害活性がこの範囲より小さくなると消化管からのブドウ糖吸収抑制作用が弱くなり、所定の効果はやや弱くなり、大きくなると腹部膨満感やガスの発生がやや強くなる。スクラーゼ50%阻害濃度は80μg/ml以上600μg/ml以下が好ましく、100μg/ml以上450μg/ml以下が更に好ましい。
スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)は以下の方法で測定する。
【0015】
・スクラーゼIC50値の測定
サンプル溶液の準備:チューブに2mgのサンプル(糖代謝促進剤)を量り取り、水2mLを加えてよく懸濁し、1mg/mL濃度のサンプル溶液を作成する。これをそれぞれ0、50、100、250、500μg/mLとなるように水で希釈する。
基質液の準備:0.2Mマレイン酸バッファー(pH6 .0)にスクロース濃度100mMとなるようにスクロースを溶解し、これを基質液とする。
粗酵素液の準備:10mLの生理食塩水に1gのintestinal acetone powder rat(SIGMA社製)を懸濁した後、遠心分離(3,000rpm,4℃,5min)する。得られた上清を分離し、粗酵素液とする。
前述の各濃度のサンプル溶液500μLに対し、基質液400μLを添加し、水浴中37℃にて5分間予備加温する。ここにそれぞれ、粗酵素液を100μL添加し、37 ℃にて60分間反応させる。反応終了後、95℃にて2分間加温することで酵素を失活させて反応を停止させる。生成したグルコース濃度を市販のキット・ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ法(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業(株))を使用して定量を行う。
ブランクの準備:前述の各濃度のサンプル溶液250μLに対し、基質液200μL、粗酵素液50μLを添加し、直ちに95℃にて2分間加温することで酵素を熱失活させ、ブランクデータとする。
得られた値より検量線を作成し、酵素活性を50%阻害する濃度(IC50値)を求める。
【0016】
・糖代謝促進
本発明の糖代謝促進剤を摂取することで、体内で糖の代謝を促進することができる。
ヒトを含む動物の生体内において、エネルギー発生源としての代謝としては、主に解糖系による糖代謝、脂肪酸のβ酸化による脂質代謝が挙げられる。糖代謝と脂質代謝のバランスは、例えば呼吸商(RQ)を求めることにより判断することができる。具体的には、糖代謝が主とされている際にはRQが1.0に近づき、脂質代謝が主に行われている際はRQが0.7に近づくことになる。
【0017】
<その他含有物>
本発明の糖代謝促進剤は、サラシア属植物の抽出物又は粉砕物に加えて、フラボノイドを含有することが好ましい。
フラボノイドは、植物の全器官に存在する色素成分の総称であり、主に果実や野菜に含まれ、特に、緑葉や白色野菜、柑橘類の皮の中に配糖体の形で存在する。
本発明において、フラボノイドとは、植物に広く含まれる色素成分の総称で、特に、野菜や果実に多く含まれるフラバン誘導体を意味する。
【0018】
フラボノイドとしては、フラボノール類、イソフラボン類およびカテキン類が好ましい。フラボノール類は、ポリフェノール類として知られている。
フラボノイドは体内に摂取される物質であるが、一般に吸収しにくい。しかしながら、フラボノイドは少量でも有効であり、強力な抗酸化物質であるため、発ガン物質の活性を抑制したり、血行促進作用や抗血栓作用があることが知られている。
【0019】
本発明において、フラボノイドは茶、ブドウ、タマネギなどの各由来物から得ることができる。ここで、由来物とは、生体の少なくとも一部から抽出されるものを意味する。抽出には、例えば、上記サラシア属植物の抽出物を調製する方法が適用され、抽出物の形態も上記と同様のものが可能であり、例えば、抽出後の濾液のままで、又は濃縮もしくは希釈した状態又はその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
カテキン類を含む茶抽出物は、ツバキ科の常緑樹である茶の木より作製する。茶の木は、インドやスリランカ、東南アジアで栽培されているアッサミカと中国や日本で栽培されているカメリア・シネンシスのどちらも用いられる。抽出には、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、抽出溶媒として熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0020】
茶抽出物中には、ポリフェノールやカテキン類などの抗酸化物質を含有する。カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート又はエピガロカテキンガレートが含まれていることが好ましく、特に、エピガロカテキンガレートを含有することが好ましい。
本発明の糖代謝促進剤は、該茶抽出物を、0.1〜40質量%含有することが好ましく、0.5〜35質量%含有することが更に好ましく、1.0〜30質量%含有することが特に好ましい。
【0021】
また、フラボノイドのひとつであるフラボノール類には、活性酸素を除去し、動脈硬化の抑制や血流改善等の抗酸化作用を示す。フラボノール類の中でも、ポリフェノールのひとつであるレスベラトロールが抗酸化物質として着目されている。レスベラトロールは、スチルベン骨格から構成されており、ブドウの果皮に多く含まれ、そのため、ブドウから作られる赤ワインにも含有されている。
本発明は、該フラボノール類を成分として含む、ブドウエキス又はブドウ酒濃縮物を含有することが好ましい。
本発明の糖代謝促進剤は、ブドウ抽出物を、0.1〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜10質量%を含有することが更に好ましい。
【0022】
レスベラトロールは、脂肪を燃焼させる働きがあり、血管系の疾患である動脈硬化防止や、抗ガン作用、また、DNAの細胞分裂による短化を防ぎ、カロリー制限をしたのと同様の細胞延命効果があり、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0023】
本発明の糖代謝促進剤におけるレスベラトロールの含有量は、0.0001〜5.00質量%が好ましく、更には、0.001〜2.00質量%が好ましい。
【0024】
また、フラボノール類の中でも、ポリフェノールであるケルセチンが抗酸化物質として着目されている。ケルセチンは、フラバン構造を有しており、タマネギの外皮に多く含まれる。
【0025】
ケルセチンは、ビタミンCの吸収サポート、抗酸化作用、免疫作用等の生理作用が報告されており、さらには、脂肪吸収抑制に有効であることがわかっており、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0026】
本発明の糖代謝促進剤におけるケルセチンの含有量は、0.001〜15質量%が好ましく、更には、0.05〜10質量%が好ましく、更には、0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0027】
本発明の糖代謝促進剤は、特にカテキンを1〜50質量%含有することが好ましい。カテキンとしては、緑茶由来のもの等が特に好ましい。
また、本発明の糖代謝促進剤は、リパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノール類を2〜80質量%含有することが好ましい。リパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノールとしては、烏龍茶由来のもの、ブドウ由来のもの、リンゴ由来のもの、ライチ由来のもの、松樹皮由来のもの、カンカ由来のもの等が特に好ましい。
【0028】
また、本発明の糖代謝促進剤は、三価のクロムを一日摂取量として20μg〜200μg含有することが好ましい。三価クロムはピコリン酸クロムやクロム酵母として配合することができる。
【0029】
<形態>
本発明の糖代謝促進剤は、食品(たとえば飲料品、菓子類、いわゆる健康補助食品など)、食品原料(食品に添加する添加物など)、医薬品としても用いることができる。また、本発明の糖代謝促進剤は、粉末製剤、錠剤、液剤、カプセル製剤等の各種の形態をとることができる。
【0030】
本発明ではサラシア属植物の抽出エキス末の経時による変色を改善するため、乾燥剤として炭酸カルシウム又は二酸化ケイ素を錠剤又はカプセル剤にした際の質量の1%以上95%以下の量を含有することが好ましい。
更に食品あるいは食品添加物として利用可能な低吸湿原料、吸湿剤、酸化防止剤等を用いることができる。好ましくは低吸湿性原料としてセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、微結晶セルロース、乳糖、オリゴ糖、糖アルコール、トレハロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが用いられる。吸湿剤としてはケイ酸塩類、炭酸マグネシウム、フェロシアン化物、多糖類などが用いられる。より好ましくは低吸湿性原料として結晶セルロース、微結晶セルロース、乳糖が用いられる。酸化防止剤としては、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウム等が用いられる。
【0031】
本発明の粉末、固形剤又は液剤に成型するのに必要な化合物、などを適宜包含していて良い。そのような化合物の例としては、エリスリトール、マルチトール、ヒドロキシプロピルセルロース、カオリン、タルクなどが挙げられる。
【0032】
本発明において、粉末製剤、錠剤又は液剤とするための製剤化、カプセル製剤とするためのカプセル内包物の顆粒化、カプセル化、カプセル素材等は公知手段や公知素材が適用できる。
本発明のカプセル製剤は、硬カプセル、軟カプセル、シームレスカプセルマイクロカプセル、などの形態であってもよく、カプセル皮膜が、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーから選択される少なくとも一種又は二種以上によって構成されていることを特徴とする。豚皮ゼラチン、魚ゼラチンのカプセル被膜が特に好ましい。
これらのカプセル皮膜は周知慣用の方法で製することができる。ここで、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーで構成されているとは、カプセル皮膜全体質量に対して、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーの総量が30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であるものを意味する。
また、上記糖代謝促進剤は酸化防止の観点で空気との接触を避けるために包装袋又は包装容器に充填することが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を用いて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(試験例1)
サラシア・レチキュラータ(S. reticulata)の幹の部分を粉砕した茶褐色の粉末30gに5リットルの水を加え、煮沸抽出した。この熱水抽出工程を経て得られた液を濾過した後乾燥して糖代謝促進剤KTEDを得た。KTEDのスクラーゼ50%阻害濃度は90μg/mlであった。
この糖代謝促進剤の効果を、実験動物としてC57BL/6Jマウス(オス4週齢)を使用し検証した。以降、各群の値はマウス3匹の平均で表している。
1週間の予備飼育後、試験例に相当する群(以後第1群)のマウスには実験動物用固形飼料(オリエンタル酵母株式会社製:商品名MF)に上記糖代謝促進剤KTEDを0.1%混ぜた飼料を自由摂取させた(図1中のN+KTED)。比較のマウス(以後N群)はKTEDを混入しない第1群のマウスと同じ飼料を与えた(図1中のN)。
それぞれ4週間飼育の後、以下の実験を行った。
24時間にわたり1時間毎に小動物用代謝計測システム(室町機械株式会社製)にて、酸素消費量(VO2)と呼吸商(RQ:二酸化炭素濃度÷酸素濃度)を求めた。
図1に第1郡とN郡の酸素消費量(VO2)を示す。また、図2に第1郡とN郡の呼吸商(RQ)を示す。
図1の結果より、糖代謝促進剤KTEDを摂取することによりVO2が有意に増加していることがわかった。また、図2の結果より、本品摂取によりRQが平均して1.0に近づき、より糖分の代謝が進んでいることが明らかとなった。
【0035】
(試験例2)
試験例1と同様に実験動物としてC57BL/6Jマウス(オス4週齢)を使用し、1週間の予備飼育後、実施例に相当する群(以後第2群)のマウスには高脂肪食飼料(オリエンタル酵母株式会社製:商品名F2HFD2)に上記糖代謝促進剤KTEDを0.1%混ぜたを自由摂取させた。比較のマウス(以後H群)はKTEDを混入しない第2群のマウスと同じ飼料を与えた。
試験例1と同様に、小動物用代謝計測システムにて呼吸商(RQ)を求めた。
結果を図3に示す。
図3の結果より、高脂肪食摂取系では本品の摂取による効果は見られず、サラシアの摂取が糖の燃焼に関わっていることが確かめられた。
【0036】
(試験例3)
(サラシアエキス末を使用した錠剤)
表1に示す配合により、錠剤を作成しシェラックコーティングを施したサプリメントを作成した。
赤ワインポリフェノール:セダ・ハーブ製
タマネギ外皮エキス末:太邦製
緑茶抽出物:太陽化学製
ヘマトコッカス藻色素:富士化学製
クロム酵母:三輪製薬製
カルニチン:伊藤ライフサイエンス製
【0037】
【表1】
【0038】
この配合の錠剤摂取被験者より、おなかまわりがすっきりした、身体が軽くなった、などの報告を得た。更に、驚くべきことに二日酔いしにくくなったとの報告もあった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】試験例1における第1郡とN郡の酸素消費量(VO2)の経時変化を示す図である。
【図2】試験例1における第1郡とN郡の呼吸商(RQ)の経時変化を示す図である。
【図3】試験例2における第2郡とN郡の呼吸商(RQ)の経時変化を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明はサラシア属植物の粉末物又は抽出物を含有する糖代謝促進剤及びその成分を含む食品、医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
サラシア属植物の根や幹はインドやスリランカの伝統医学アーユルヴェーダにおいて天然薬物として利用されてきた。スリランカではサラシア・レティキュラータの根皮がリュウマチ、淋病、皮膚病の治療に有効であるとともに、初期糖尿病の治療に用いられると伝承されている。インドではサラシア・オブロンガの根が同様の治療に用いられるほか、サラシア・キネンシスも糖尿病の治療に用いるとされており、その作用メカニズムはα−グルコシダーゼ活性阻害に基づく糖吸収抑制作用によるものであることが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
更に、サラシアに含まれる成分は肝臓内の糖新生を抑制し空腹時の血糖降下作用を有するとの報告もある(特許文献1)が、これまでサラシアが糖燃焼を促進しているという知見は得られていなかった。
【0004】
近年、過剰に摂取した糖分や脂質が内臓脂肪に転換され、それがひきがねとなってメタボリックシンドロームを引き起こすことが問題となっている。この内臓脂肪をためないためには糖質がより代謝されにくい脂質に変換される前に燃焼させた方が効率的である。
しかし、これまで明確に糖燃焼・糖代謝を選択的に促進する効果のある素材についての報告はされていなかった。
従って、メタボリックシンドロームの対策が社会問題化している現在、糖代謝促進作用を持つ安全な素材の開発が求められている。
【特許文献1】特開2006−290860号公報
【非特許文献1】FOOD Style 21、第6巻、第5号、第72〜78頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、長期服用しても安全な天然物由来で副作用の少ない、糖の代謝を促進させて効率的に内臓脂肪の蓄積を防ぎメタボリックシンドロームを予防する糖代謝促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では上記課題を解決するため鋭意検討した結果、サラシア属植物の粉末物又は抽出物を摂取することで、糖の代謝を選択的に上昇させることが可能なことがわかった。
本発明は、下記構成よりなる。
<1>
サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を含有することを特徴とする糖代謝促進剤。
<2>
サラシア属植物が、サラシアオブロンガ(Salacia oblonga)、サラシアレチキュラータ(S. reticulata)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする<1>に記載の糖代謝促進剤。
<3>
上記<1>又は<2>に記載の糖代謝促進剤を含有する食品。
<4>
上記<1>又は<2>に記載の糖代謝促進剤を含有する食品原料。
<5>
上記<1>又は<2>に記載の糖代謝促進剤を含有する医薬品。
【発明の効果】
【0007】
今回、我々はサラシアを摂取した際の呼吸商について調べ、サラシアの摂取が糖代謝を有意に高めることを見出した。
よって本発明により、糖代謝を高め内臓脂肪の蓄積を予防することができる。これにより、長期服用しても安全な天然物由来で副作用の少ない、メタボリックシンドロームを予防する糖代謝促進剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<サラシア>
本発明の糖代謝促進剤は、サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を含有する。
サラシア属植物としては、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)、サラシア・オブロンガ(S. oblonga)等、ニシキギ科サラシア属の植物を用いることができる。特に、コタラヒムブツともよばれるサラシア・レティキュラータ(S. reticulata)を好適に利用することができる。
【0009】
本発明においては、好ましくはサラシア属植物の幹、根皮および葉からなる群から選択される少なくとも1種からの抽出物又は粉砕物を使用する。
葉は粉砕して細片もしくは粉末として用いることが好ましい。さらにそのまま服用することもできる。
根皮および幹は、粉末として用いることができる。また、エキスの抽出に用いることもできる。ここでいうエキスとはサラシア属植物の抽出物のことをいう。エキス抽出に用いる際はそのまま使用してもよいし、粉砕して細片もしくは粉末としてからエキスを抽出することもできる。
【0010】
本発明において、サラシア属植物の抽出物は、抽出後の濾液のままで、又は濃縮もしくは希釈した状態又はその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
前記抽出物の乾燥エキス末は、使用時において、そのまま、あるいは適当な溶媒に溶解して使用することができる。前記溶媒は、抽出時に用いることができる溶媒であって、調製後の薬剤又は食品中に残留した場合に人体に悪影響を及ぼさないものであればよく、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
根皮および幹の粉砕粉末及び粉末抽出したエキス末は、第15改正日本薬局方記載の乾燥減量試験法にて、乾燥減量10%以下であることが好ましく、乾燥減量8%以下であることがより好ましい。
【0011】
さらにサラシア属植物の抽出物又は粉砕物を濃縮、乾燥してペースト状、粉末状として利用することもできる。抽出物を濃縮、乾燥してペースト状、粉末状にする場合には凍結乾燥法、スプレイドライ法などが使用されるが、これに限られるものではない。ペースト状、粉末状としたサラシア属植物の抽出物はそのまま服用することもできるし、水、茶、コーヒー、ジュース、アルコールなど飲用物、ケーキ等の一般的食品等を内容組成物とするものにサラシア属植物の抽出物の乾燥エキス末をその内容組成物の0.01質量%以上90質量%以下添加、混合して食品とすることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以上80質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以上60質量%以下添加する。また外用目的で使用することもできる。
特に、飲用物は容器詰飲料とすることが好ましい。容器詰飲料の外観は長時間にわたって保存すると色調の変化が大きく、商品としては不適切なものとなる。飲料は徐々に着色が進み、時間が経つにつれて、色調が変化する。
色調の保持のために、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムのような酸化防止剤を添加することで、より一層の効果を発揮することができる。酸化防止剤の配合量は、内容組成物の0.03〜1.2質量%程度、好ましくは0.04〜1.0質量%程度、より好ましくは0.05〜0.8質量%程度である。
また、より好ましくは、スクラーゼ阻害活性の高い(IC50値の小さい)サラシア属植物の粉末物又は抽出物を含有する錠剤に炭酸カルシウム又は二酸化ケイ素を総重量の1%以上含有せしめることで、経時による変色を防止し摂取必要量が少なくすることで、摂取者の負担軽減する方法を提供する。また使用量が少量になることで、製造加工上の用途の幅も広がり製品のコストも抑えることができる。
【0012】
また、糖代謝促進剤全量に対して0.0001質量%以上3質量%以下のマンジフェリンが含有されていることが好ましい。
【0013】
マンジフェリンの含量は下記により測定できる。
マンジフェリン含量の測定
マンジフェリンの含有量はHPLCを用いて、以下の方法で測定する。
<HPLC条件>
カラム: Capcellpack C18 UG120 φ4.6×250mm(資生堂)
カラム温度: 40℃
検出: UV360
流速: 1.0mL/min
溶媒A: 1.0% 酢酸 溶媒B: メタノール
リニアグラジエント(%B): 15%(0min)→25%(20min)
サンプルは50%メタノールに溶解させた後、シリンジフィルターで不溶物を除去して調製する。
検出されたマンジフェリンのピーク面積から、標品の検量線を用いて含有量を算出する。
【0014】
本発明の糖代謝促進剤は、スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)が50μg/ml以上800μg/ml以下となることが好ましい。阻害活性がこの範囲より小さくなると消化管からのブドウ糖吸収抑制作用が弱くなり、所定の効果はやや弱くなり、大きくなると腹部膨満感やガスの発生がやや強くなる。スクラーゼ50%阻害濃度は80μg/ml以上600μg/ml以下が好ましく、100μg/ml以上450μg/ml以下が更に好ましい。
スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)は以下の方法で測定する。
【0015】
・スクラーゼIC50値の測定
サンプル溶液の準備:チューブに2mgのサンプル(糖代謝促進剤)を量り取り、水2mLを加えてよく懸濁し、1mg/mL濃度のサンプル溶液を作成する。これをそれぞれ0、50、100、250、500μg/mLとなるように水で希釈する。
基質液の準備:0.2Mマレイン酸バッファー(pH6 .0)にスクロース濃度100mMとなるようにスクロースを溶解し、これを基質液とする。
粗酵素液の準備:10mLの生理食塩水に1gのintestinal acetone powder rat(SIGMA社製)を懸濁した後、遠心分離(3,000rpm,4℃,5min)する。得られた上清を分離し、粗酵素液とする。
前述の各濃度のサンプル溶液500μLに対し、基質液400μLを添加し、水浴中37℃にて5分間予備加温する。ここにそれぞれ、粗酵素液を100μL添加し、37 ℃にて60分間反応させる。反応終了後、95℃にて2分間加温することで酵素を失活させて反応を停止させる。生成したグルコース濃度を市販のキット・ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ法(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業(株))を使用して定量を行う。
ブランクの準備:前述の各濃度のサンプル溶液250μLに対し、基質液200μL、粗酵素液50μLを添加し、直ちに95℃にて2分間加温することで酵素を熱失活させ、ブランクデータとする。
得られた値より検量線を作成し、酵素活性を50%阻害する濃度(IC50値)を求める。
【0016】
・糖代謝促進
本発明の糖代謝促進剤を摂取することで、体内で糖の代謝を促進することができる。
ヒトを含む動物の生体内において、エネルギー発生源としての代謝としては、主に解糖系による糖代謝、脂肪酸のβ酸化による脂質代謝が挙げられる。糖代謝と脂質代謝のバランスは、例えば呼吸商(RQ)を求めることにより判断することができる。具体的には、糖代謝が主とされている際にはRQが1.0に近づき、脂質代謝が主に行われている際はRQが0.7に近づくことになる。
【0017】
<その他含有物>
本発明の糖代謝促進剤は、サラシア属植物の抽出物又は粉砕物に加えて、フラボノイドを含有することが好ましい。
フラボノイドは、植物の全器官に存在する色素成分の総称であり、主に果実や野菜に含まれ、特に、緑葉や白色野菜、柑橘類の皮の中に配糖体の形で存在する。
本発明において、フラボノイドとは、植物に広く含まれる色素成分の総称で、特に、野菜や果実に多く含まれるフラバン誘導体を意味する。
【0018】
フラボノイドとしては、フラボノール類、イソフラボン類およびカテキン類が好ましい。フラボノール類は、ポリフェノール類として知られている。
フラボノイドは体内に摂取される物質であるが、一般に吸収しにくい。しかしながら、フラボノイドは少量でも有効であり、強力な抗酸化物質であるため、発ガン物質の活性を抑制したり、血行促進作用や抗血栓作用があることが知られている。
【0019】
本発明において、フラボノイドは茶、ブドウ、タマネギなどの各由来物から得ることができる。ここで、由来物とは、生体の少なくとも一部から抽出されるものを意味する。抽出には、例えば、上記サラシア属植物の抽出物を調製する方法が適用され、抽出物の形態も上記と同様のものが可能であり、例えば、抽出後の濾液のままで、又は濃縮もしくは希釈した状態又はその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
カテキン類を含む茶抽出物は、ツバキ科の常緑樹である茶の木より作製する。茶の木は、インドやスリランカ、東南アジアで栽培されているアッサミカと中国や日本で栽培されているカメリア・シネンシスのどちらも用いられる。抽出には、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、抽出溶媒として熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0020】
茶抽出物中には、ポリフェノールやカテキン類などの抗酸化物質を含有する。カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート又はエピガロカテキンガレートが含まれていることが好ましく、特に、エピガロカテキンガレートを含有することが好ましい。
本発明の糖代謝促進剤は、該茶抽出物を、0.1〜40質量%含有することが好ましく、0.5〜35質量%含有することが更に好ましく、1.0〜30質量%含有することが特に好ましい。
【0021】
また、フラボノイドのひとつであるフラボノール類には、活性酸素を除去し、動脈硬化の抑制や血流改善等の抗酸化作用を示す。フラボノール類の中でも、ポリフェノールのひとつであるレスベラトロールが抗酸化物質として着目されている。レスベラトロールは、スチルベン骨格から構成されており、ブドウの果皮に多く含まれ、そのため、ブドウから作られる赤ワインにも含有されている。
本発明は、該フラボノール類を成分として含む、ブドウエキス又はブドウ酒濃縮物を含有することが好ましい。
本発明の糖代謝促進剤は、ブドウ抽出物を、0.1〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜10質量%を含有することが更に好ましい。
【0022】
レスベラトロールは、脂肪を燃焼させる働きがあり、血管系の疾患である動脈硬化防止や、抗ガン作用、また、DNAの細胞分裂による短化を防ぎ、カロリー制限をしたのと同様の細胞延命効果があり、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0023】
本発明の糖代謝促進剤におけるレスベラトロールの含有量は、0.0001〜5.00質量%が好ましく、更には、0.001〜2.00質量%が好ましい。
【0024】
また、フラボノール類の中でも、ポリフェノールであるケルセチンが抗酸化物質として着目されている。ケルセチンは、フラバン構造を有しており、タマネギの外皮に多く含まれる。
【0025】
ケルセチンは、ビタミンCの吸収サポート、抗酸化作用、免疫作用等の生理作用が報告されており、さらには、脂肪吸収抑制に有効であることがわかっており、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0026】
本発明の糖代謝促進剤におけるケルセチンの含有量は、0.001〜15質量%が好ましく、更には、0.05〜10質量%が好ましく、更には、0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0027】
本発明の糖代謝促進剤は、特にカテキンを1〜50質量%含有することが好ましい。カテキンとしては、緑茶由来のもの等が特に好ましい。
また、本発明の糖代謝促進剤は、リパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノール類を2〜80質量%含有することが好ましい。リパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノールとしては、烏龍茶由来のもの、ブドウ由来のもの、リンゴ由来のもの、ライチ由来のもの、松樹皮由来のもの、カンカ由来のもの等が特に好ましい。
【0028】
また、本発明の糖代謝促進剤は、三価のクロムを一日摂取量として20μg〜200μg含有することが好ましい。三価クロムはピコリン酸クロムやクロム酵母として配合することができる。
【0029】
<形態>
本発明の糖代謝促進剤は、食品(たとえば飲料品、菓子類、いわゆる健康補助食品など)、食品原料(食品に添加する添加物など)、医薬品としても用いることができる。また、本発明の糖代謝促進剤は、粉末製剤、錠剤、液剤、カプセル製剤等の各種の形態をとることができる。
【0030】
本発明ではサラシア属植物の抽出エキス末の経時による変色を改善するため、乾燥剤として炭酸カルシウム又は二酸化ケイ素を錠剤又はカプセル剤にした際の質量の1%以上95%以下の量を含有することが好ましい。
更に食品あるいは食品添加物として利用可能な低吸湿原料、吸湿剤、酸化防止剤等を用いることができる。好ましくは低吸湿性原料としてセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、微結晶セルロース、乳糖、オリゴ糖、糖アルコール、トレハロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが用いられる。吸湿剤としてはケイ酸塩類、炭酸マグネシウム、フェロシアン化物、多糖類などが用いられる。より好ましくは低吸湿性原料として結晶セルロース、微結晶セルロース、乳糖が用いられる。酸化防止剤としては、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウム等が用いられる。
【0031】
本発明の粉末、固形剤又は液剤に成型するのに必要な化合物、などを適宜包含していて良い。そのような化合物の例としては、エリスリトール、マルチトール、ヒドロキシプロピルセルロース、カオリン、タルクなどが挙げられる。
【0032】
本発明において、粉末製剤、錠剤又は液剤とするための製剤化、カプセル製剤とするためのカプセル内包物の顆粒化、カプセル化、カプセル素材等は公知手段や公知素材が適用できる。
本発明のカプセル製剤は、硬カプセル、軟カプセル、シームレスカプセルマイクロカプセル、などの形態であってもよく、カプセル皮膜が、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーから選択される少なくとも一種又は二種以上によって構成されていることを特徴とする。豚皮ゼラチン、魚ゼラチンのカプセル被膜が特に好ましい。
これらのカプセル皮膜は周知慣用の方法で製することができる。ここで、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーで構成されているとは、カプセル皮膜全体質量に対して、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーの総量が30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であるものを意味する。
また、上記糖代謝促進剤は酸化防止の観点で空気との接触を避けるために包装袋又は包装容器に充填することが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を用いて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(試験例1)
サラシア・レチキュラータ(S. reticulata)の幹の部分を粉砕した茶褐色の粉末30gに5リットルの水を加え、煮沸抽出した。この熱水抽出工程を経て得られた液を濾過した後乾燥して糖代謝促進剤KTEDを得た。KTEDのスクラーゼ50%阻害濃度は90μg/mlであった。
この糖代謝促進剤の効果を、実験動物としてC57BL/6Jマウス(オス4週齢)を使用し検証した。以降、各群の値はマウス3匹の平均で表している。
1週間の予備飼育後、試験例に相当する群(以後第1群)のマウスには実験動物用固形飼料(オリエンタル酵母株式会社製:商品名MF)に上記糖代謝促進剤KTEDを0.1%混ぜた飼料を自由摂取させた(図1中のN+KTED)。比較のマウス(以後N群)はKTEDを混入しない第1群のマウスと同じ飼料を与えた(図1中のN)。
それぞれ4週間飼育の後、以下の実験を行った。
24時間にわたり1時間毎に小動物用代謝計測システム(室町機械株式会社製)にて、酸素消費量(VO2)と呼吸商(RQ:二酸化炭素濃度÷酸素濃度)を求めた。
図1に第1郡とN郡の酸素消費量(VO2)を示す。また、図2に第1郡とN郡の呼吸商(RQ)を示す。
図1の結果より、糖代謝促進剤KTEDを摂取することによりVO2が有意に増加していることがわかった。また、図2の結果より、本品摂取によりRQが平均して1.0に近づき、より糖分の代謝が進んでいることが明らかとなった。
【0035】
(試験例2)
試験例1と同様に実験動物としてC57BL/6Jマウス(オス4週齢)を使用し、1週間の予備飼育後、実施例に相当する群(以後第2群)のマウスには高脂肪食飼料(オリエンタル酵母株式会社製:商品名F2HFD2)に上記糖代謝促進剤KTEDを0.1%混ぜたを自由摂取させた。比較のマウス(以後H群)はKTEDを混入しない第2群のマウスと同じ飼料を与えた。
試験例1と同様に、小動物用代謝計測システムにて呼吸商(RQ)を求めた。
結果を図3に示す。
図3の結果より、高脂肪食摂取系では本品の摂取による効果は見られず、サラシアの摂取が糖の燃焼に関わっていることが確かめられた。
【0036】
(試験例3)
(サラシアエキス末を使用した錠剤)
表1に示す配合により、錠剤を作成しシェラックコーティングを施したサプリメントを作成した。
赤ワインポリフェノール:セダ・ハーブ製
タマネギ外皮エキス末:太邦製
緑茶抽出物:太陽化学製
ヘマトコッカス藻色素:富士化学製
クロム酵母:三輪製薬製
カルニチン:伊藤ライフサイエンス製
【0037】
【表1】
【0038】
この配合の錠剤摂取被験者より、おなかまわりがすっきりした、身体が軽くなった、などの報告を得た。更に、驚くべきことに二日酔いしにくくなったとの報告もあった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】試験例1における第1郡とN郡の酸素消費量(VO2)の経時変化を示す図である。
【図2】試験例1における第1郡とN郡の呼吸商(RQ)の経時変化を示す図である。
【図3】試験例2における第2郡とN郡の呼吸商(RQ)の経時変化を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を含有することを特徴とする糖代謝促進剤。
【請求項2】
サラシア属植物が、サラシアオブロンガ(Salacia oblonga)、サラシアレチキュラータ(S. reticulata)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の糖代謝促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糖代謝促進剤を含有する食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の糖代謝促進剤を含有する食品原料。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の糖代謝促進剤を含有する医薬品。
【請求項1】
サラシア属植物の粉砕物又は抽出物を含有することを特徴とする糖代謝促進剤。
【請求項2】
サラシア属植物が、サラシアオブロンガ(Salacia oblonga)、サラシアレチキュラータ(S. reticulata)、サラシア・キネンシス(S. chinensis)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の糖代謝促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糖代謝促進剤を含有する食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の糖代謝促進剤を含有する食品原料。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の糖代謝促進剤を含有する医薬品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2010−43036(P2010−43036A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209383(P2008−209383)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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