説明

糖化タンパク質の測定のための方法および組成物

【課題】糖化タンパク質の測定のための方法および組成物を提供すること。
【解決手段】1つの態様においては、本発明は、単離されたキメラタンパク質に関する。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。別の態様においては、本発明は、キメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸に関する。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。この核酸を含む組み換え細胞、およびこの核酸を使用してキメラタンパク質を生産するための方法もまた提供される。。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
糖化タンパク質は、タンパク質を構成するアミノ酸のアミノ基の、アルドースのような還元糖のアルデヒド基との非酵素的な不可逆的結合によって生じる物質である。例えば、米国特許第6,127,138号を参照のこと。このような非酵素的な不可逆的結合反応は、「アマドリ転位」とも呼ばれ、したがって、上記の糖化タンパク質は、場合によっては「アマドリ化合物」とも呼ばれる。
【0002】
タンパク質の非酵素的糖化は、特定の疾患、例えば、糖尿病性合併症および老化のプロセスの発症に関与している(Takahashi et al.,J.Biol.Chem.272(19):12505−7(1997);およびBaynes and Monnier,Prog.Clin.Biol.Res.,304:1−410(1989))。この反応は、糖付加物および架橋の形成を通じて標的分子の機能不全を導く。インビトロおよびインビボでの非酵素的糖化の間の最も重要な「初期」修飾物であるアマドリ生成物に、相当な関心が集まっている。
【0003】
糖化タンパク質についての種々のアッセイが知られている。例えば、米国特許第6,127,138号には、糖化タンパク質を含む試料をプロテアーゼXIVまたはアスパラジラス属(Aspergillus)に由来するプロテアーゼで処理し、その後(または、上記のプロテアーゼで試料を処理しながら)、FAOD(フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ)反応によって消費された酸素の量、または得られる反応産物の量を測定するためにFAODを試料と反応させ、それによって糖化タンパク質を測定することが開示されている。
【0004】
別の例においては、米国特許第6,008,006号には、試料中の糖化タンパク質の量を、試料を、プロテアーゼとペルオキシダーゼの組み合わせである第1の試薬と、ケトアミンオキシダーゼを含む第2の試薬と反応させることによって定量できることが開示されている。米国特許第6,008,006号には、また、ペルオキシダーゼ/プロテアーゼ混合酵素試薬とケトアミンオキシダーゼを含むキットも、開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
1つの態様においては、本発明は、単離されたキメラタンパク質に関する。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。
【0006】
別の態様においては、本発明は、キメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸に関する。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。この核酸を含む組み換え細胞、およびこの核酸を使用してキメラタンパク質を生産するための方法もまた提供される。
【0007】
さらに別の態様においては、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための方法に関する。この方法には、a)アッセイされる試料をプロテアーゼと接触させて、糖化タンパク質(これが上記の試料中に含まれている場合)から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生じさせること;b)上記の生じた糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を、N末端からC末端の方向に、i)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびii)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片を含むキメラタンパク質と接触させて、上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させること;ならびに、c)上記のキメラタンパク質による上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、上記試料中に上記の糖化タンパク質が存在すること、および/またはその量を決定することが含まれる。
【0008】
さらに別の態様においては、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのキットに関する。このキットには、a)糖化タンパク質(これが試料中に含まれている場合)から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生じさせるためのプロテアーゼ;b)上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させるための上記のキメラタンパク質;ならびに、c)上記のキメラタンパク質による上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、上記試料中に上記糖化タンパク質が存在すること、および/またはその量を決定するための手段が含まれる。
【0009】
さらに別の態様においては、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための方法に関する。この方法には、a)アッセイされる試料をプロテイナーゼKと接触させて、糖化タンパク質(これが試料中に含まれている場合)から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生じさせること;b)上記の生じた糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸をアマドリアーゼと接触させて、上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させること;ならびに、c)上記のアマドリアーゼによる上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、上記試料中に糖化タンパク質が存在すること、および/またはその量を決定することが含まれる。
【0010】
さらに別の態様においては、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのキットに関する。このキットには、a)糖化タンパク質(これが試料中に含まれている場合)から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生じさせるためのプロテイナーゼK;b)上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させるためのアマドリアーゼ;ならびに、c)上記のアマドリアーゼによる上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、上記試料中に上記糖化タンパク質が存在すること、および/またはその量を決定するための手段が含まれる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
単離されたキメラタンパク質であって、該キメラタンパク質は、N末端からC末端に向かって:
a)約5個から約30個のアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む、第1のペプチジル断片;および
b)アマドリアーゼを含む、第2のペプチジル断片
を含む、単離されたキメラタンパク質。
(項目2)
前記細菌のリーダー配列が、大腸菌タンパク質のリーダー配列である、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目3)
前記リーダー配列が、配列番号1(MGGSGDDDDLAL)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも40%の同一性を有し、該パーセント同一性が、該配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して同じ大きさのアミノ酸配列の全体に関して決定される、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目4)
前記リーダー配列が、配列番号1に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗体に結合する、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目5)
前記リーダー配列が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目6)
前記第1のペプチジル断片が、約20個のアミノ酸残基を含む、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目7)
前記アマドリアーゼが、Aspergillus sp.起源である、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目8)
前記アマドリアーゼが補因子としてFADを使用する、項目7に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目9)
前記アマドリアーゼが、FAD補因子結合コンセンサス配列Gly−X−Gly−X−X−Gly(配列番号2)を有し、Xは任意のアミノ酸残基である、項目8に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目10)
前記アマドリアーゼが、アマドリアーゼIa、アマドリアーゼIb、アマドリアーゼIc、およびアマドリアーゼIIからなる群より選択される、項目7に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目11)
前記アマドリアーゼが、配列番号3:
【化1】


に示されるアミノ酸に対して少なくとも40%の同一性を有し、該パーセント同一性は、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して同じ大きさのアミノ酸配列の全体に関して決定される、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目12)
前記アマドリアーゼが、配列番号3に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗体に結合する、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目13)
前記アマドリアーゼが、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目14)
前記第1のペプチジル断片と第2のペプチジル断片とが、切断可能な連結によって連結されている、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目15)
さらに、そのC末端に、約5個から約30個のアミノ酸残基の第2の細菌のリーダー配列を含む第3のペプチジル断片を含む、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目16)
前記第2のリーダー配列が、大腸菌タンパク質のリーダー配列である、項目15に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目17)
前記第2の細菌のリーダー配列が、配列番号4(KGELEGLPIPNPLLRTG)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも40%の同一性を有し、該パーセント同一性は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して同じ大きさのアミノ酸配列の全体に関して決定される、項目15に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目18)
前記第2の細菌のリーダー配列が、配列番号4に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗体に結合する、項目15に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目19)
前記第2の細菌のリーダー配列が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、項目15に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目20)
前記第3のペプチジル断片が、約20個のアミノ酸残基を含む、項目15に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目21)
さらに、そのC末端に、ペプチドタグを含む第3のペプチジル断片を含む、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目22)
前記ペプチドタグが、FLAGタグ、HAタグ、HA1タグ、c−Mycタグ、6−Hisタグ、AU1タグ、EEタグ、T7タグ、4A6タグ、εタグ、Bタグ、gEタグおよびTy1タグからなる群より選択される、項目21に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目23)
さらに、そのC末端に、ペプチドタグを含む第4のペプチジル断片を含む、項目15に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目24)
前記ペプチドタグが、FLAGタグ、HAタグ、HA1タグ、c−Mycタグ、6−Hisタグ、AU1タグ、EEタグ、T7タグ、4A6タグ、εタグ、Bタグ、gEタグおよびTy1タグからなる群より選択される、項目23に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目25)
単離されたキメラタンパク質であって、配列番号5:
【化2】


に示されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の単離されたキメラタンパク質。
(項目26)
項目1に記載のキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
(項目27)
項目25に記載のキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
(項目28)
項目26に記載の核酸であって、配列番号6:
【化3−1】


【化3−2】


に示されるヌクレオチド配列を含む、核酸。
(項目29)
項目26に記載のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
(項目30)
項目26に記載の核酸を含む、組み換え細胞。
(項目31)
キメラタンパク質を生成する方法であって、項目26に記載の核酸を含む組み換え細胞を増殖させて、前記コードされたキメラタンパク質を該細胞によって発現させる工程、および発現されたキメラタンパク質を回収する工程を含む、方法。
(項目32)
項目31に記載の方法の生成物。
(項目33)
試料中の糖化タンパク質に関してアッセイするための方法であって:
a)アッセイされるべき試料をプロテアーゼと接触させて、糖化タンパク質が該試料中に含まれている場合、該糖化タンパク質から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生成する工程;
b)該生成した糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を、項目1に記載のキメラタンパク質と接触させて、該糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させる工程;ならびに、
c)該キメラタンパク質による該糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、該試料中における該糖化タンパク質の存在および/または量を決定する工程、
を含む、方法。
(項目34)
前記試料が血液試料である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記血液試料が、血漿試料、血清試料、赤血球試料または全血試料である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記アッセイされるべき糖化タンパク質が、グリコアルブミンまたはグリコヘモグロビンである、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記プロテアーゼが、エンド型プロテアーゼまたはエキソ型プロテアーゼである、項目33に記載の方法。
(項目38)
前記エンド型プロテアーゼが、トリプシン、α−キモトリプシン、スブチリシン、プロテイナーゼK、パパイン、カテプシンB、ペプシン、サーモリシン、プロテアーゼXVII、プロテアーゼXXI、リシル−エンドペプチダーゼ、プロレターおよびブロメラインFからなる群より選択される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記エキソ型プロテアーゼがアミノペプチダーゼまたはカルボキシペプチダーゼである、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記プロテアーゼが、プロテイナーゼK、プロナーゼE、アナニン、サーモリシン、スブチリシン、およびウシ膵臓プロテアーゼからなる群より選択される、項目33に記載の方法。
(項目41)
前記プロテアーゼが、約2個から約30個のアミノ酸残基の糖化ペプチドを生成する、項目33に記載の方法。
(項目42)
前記プロテアーゼが、糖化グリシン残基、糖化バリン残基、または糖化リジン残基、あるいは糖化グリシン残基、糖化バリン残基もしくは糖化リジン残基を含む糖化ペプチドを生成する、項目33に記載の方法。
(項目43)
前記キメラタンパク質が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、項目33に記載の方法。
(項目44)
前記キメラタンパク質が配列番号6に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、項目33に記載の方法。
(項目45)
前記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化が、酸化反応における糖化ペプチドもしくは糖化アミノ酸、HO、またはOの消費、あるいは酸化反応における酸化されたグルコース(グルコソン)、H、またはアミノ酸の形成を評価することによって評価される、項目33に記載の方法。
(項目46)
前記Oの消費が酸素電極によって評価される、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記Hの形成がペルオキシダーゼによって評価される、項目45に記載の方法。
(項目48)
前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼである、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記Hの形成が、ペルオキシダーゼとトリンダー反応とによって評価される、項目47に記載の方法。
(項目50)
前記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸が、キメラタンパク質およびペルオキシダーゼと、順次または同時に接触させられる、項目47に記載の方法。
(項目51)
前記グルコソンの形成が、グルコースオキシダーゼによって評価される、項目45に記載の方法。
(項目52)
前記グルコソンンの形成が、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼとヘキソキナーゼとの組み合わせによって評価される、項目45に記載の方法。
(項目53)
前記プロテアーゼが、前記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸と前記キメラタンパク質との間での接触の前、または該接触と同時に不活化される、項目33に記載の方法。
(項目54)
前記プロテアーゼが熱処理または該プロテアーゼの阻害因子によって不活化される、項目53に記載の方法。
(項目55)
アスコルビン酸塩による妨害が、銅(II)化合物、コール酸もしくはジスルホン酸バソフェナントロリン、またはそれらの混合物を使用して計測される、項目33に記載の方法。
(項目56)
ビリルビンによる妨害が、フェロシアン化物塩を使用して計測される、項目33に記載の方法。
(項目57)
疾患または障害の予後診断または診断に使用される、項目33に記載の方法。
(項目58)
前記疾患または障害が糖尿病である、項目57に記載の方法。
(項目59)
試料中の糖化タンパク質に関してアッセイするためのキットであって、該キットは、以下:
a)糖化タンパク質が試料中に含まれている場合に該糖化タンパク質から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生成するための、プロテアーゼ;
b)該糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化するための、項目1に記載のキメラタンパク質;ならびに、
c)該キメラタンパク質による該糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、該試料中における該糖化タンパク質の存在および/または量を決定するための手段
を含む、キット。
(項目60)
前記キメラタンパク質による前記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価するための手段が、ペルオキシダーゼを含む、項目59に記載のキット。
(項目61)
前記キメラタンパク質とペルオキシダーゼとが単一の組成物中に処方されている、項目60に記載のキット。
(項目62)
試料中の糖化タンパク質に関してアッセイするための方法であって、該方法は、以下:
a)アッセイされるべき試料をプロテイナーゼKと接触させて、糖化タンパク質が該試料中に含まれている場合、該糖化タンパク質から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生成する工程;
b)該生成された糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を、アマドリアーゼと接触させて、該糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させる工程;ならびに、
c)該アマドリアーゼによる該糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、該試料中における該糖化タンパク質の存在および/または量を決定する工程
を含む、方法。
(項目63)
前記試料が血液試料である、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記血液試料が、血漿試料、血清試料、赤血球試料、または全血試料である、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記アッセイされるべき糖化タンパク質が、グリコアルブミンまたはグリコヘモグロビンである、項目62に記載の方法。
(項目66)
前記アマドリアーゼがキメラタンパク質を含み、前記キメラタンパク質が、N末端からC末端に向かって:
a)約5個から約30個のアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む、第1のペプチジル断片;および
b)アマドリアーゼを含む、第2のペプチジル断片
を含む、項目62に記載の方法。
(項目67)
前記キメラタンパク質が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記キメラタンパク質が、配列番号6に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、項目66に記載の方法。
(項目69)
前記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化が、酸化反応における該糖化ペプチドもしくは糖化アミノ酸、HO、またはOの消費、あるいは酸化反応における酸化されたグルコース(グルコソン)、H、またはアミノ酸の形成を評価することによって評価される、項目62に記載の方法。
(項目70)
前記Oの消費が酸素電極によって評価される、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記Hの形成がペルオキシダーゼによって評価される、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼである、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記Hの形成がペルオキシダーゼとトリンダー反応とによって評価される、項目71に記載の方法。
(項目74)
前記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸が、前記アマドリアーゼおよびペルオキシダーゼと、順次または同時に接触させられる、項目71に記載の方法。
(項目75)
前記グルコソンの形成が、グルコースオキシダーゼによって評価される、項目69に記載の方法。
(項目76)
前記グルコソンンの形成が、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼとヘキソキナーゼとの組み合わせによって評価される、項目69に記載の方法。
(項目77)
前記プロテイナーゼKが、前記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸と前記アマドリアーゼとの間での接触の前、または該接触と同時に不活化される、項目62に記載の方法。
(項目78)
前記プロテイナーゼKが熱処理または該プロテイナーゼKの阻害因子によって不活化される、項目77に記載の方法。
(項目79)
アスコルビン酸塩による妨害が、銅(II)化合物、コール酸もしくはジスルホン酸バソフェナントロリン、またはそれらの混合物を使用して計測される、項目62に記載の方法。
(項目80)
ビリルビンによる妨害が、フェロシアン化物塩を使用して計測される、項目62に記載の方法。
(項目81)
疾患または障害の予後診断または診断に使用される、項目62に記載の方法。
(項目82)
前記疾患または障害が糖尿病である、項目81に記載の方法。
(項目83)
試料中の糖化タンパク質に関してアッセイするためのキットであって、該キットは、以下:
a)糖化タンパク質が該試料中に含まれている場合に該糖化タンパク質から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生成するための、プロテイナーゼK;
b)該糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させるための、アマドリアーゼ;ならびに、
c)該アマドリアーゼによる該糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、該試料中における該糖化タンパク質の存在および/または量を決定するための手段
を含む、キット。
(項目84)
前記アマドリアーゼによる前記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価するための手段が、ペルオキシダーゼを含む、項目83に記載のキット。
(項目85)
前記アマドリアーゼとペルオキシダーゼとが単一の組成物中に処方されている、項目84に記載のキット。
(項目86)
前記アマドリアーゼがキメラタンパク質を含み、該キメラタンパク質が、N末端からC末端に向かって:
a)約5個から約30個のアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む、第1のペプチジル断片;および
b)アマドリアーゼを含む、第2のペプチジル断片
を含む、項目83に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、例示的なGSPキット、およびRandoxのフルクトサミン(Fructosamine)キットの比較を示す。
【図2】図2は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための例示的な方法のアッセイについての線形性を示す。
【図3】図3は、フルクトシル−バリンを用いた用量依存性の反応を示す。
【図4】図4は、フルクトシル−バリンを用いた用量依存性の反応を示す。
【図5】図5は、プロテイナーゼで消化(5分間の消化)した患者のヘモグロビンを用いた用量依存性のシグナルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
開示を明確にするために、限定ではないが、本発明の詳細な説明を、以下のセクションに提供する。
【0013】
(A.定義)
別段の定義のない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書中で言及される全ての特許、特許出願、公開出願、および他の刊行物は、それらの全体が参照によって組み入れられる。このセクションに示される定義が、参照により本明細書中に組み入れられる特許、特許出願、公開出願、および他の刊行物の中に示される定義と正反対であるか、または別の方法で矛盾する場合には、このセクションに示される定義が、参照によって本明細書中に組み入れられる定義に対して優位であるとする。
【0014】
本明細書中で使用される場合は、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0015】
本明細書中で使用される場合は、「リーダー配列」は、標的ペプチドまたはタンパク質に融合させられた場合に、標的ペプチドまたはタンパク質の安定性および/または発現レベルを増大させるペプチド配列をいう。通常は、リーダー配列は、標的ペプチドまたはタンパク質の安定性および/または発現レベルを、少なくとも50%増大させる。好ましくは、リーダー配列は、標的ペプチドまたはタンパク質の安定性および/または発現レベルを、少なくとも1倍、2倍、5倍、10倍、または10倍以上増大させる。原核生物中でのアミノ酸の合成に関与している酵素の遺伝子発現の調節においては、リーダー配列は、調節されるアミノ酸のいくつかの残基を含むリーダーペプチドをコードする。転写は翻訳と密接に関係しており、翻訳が特異的アミノ酸についてのアミノアシルtRNAの供給が限られていることによって遅れる場合は、リーダー配列の転写の様式により、オペロン遺伝子の完全な転写が可能となる。あるいは、リーダー配列の完全な転写により、調節される遺伝子の転写が早くに終結してしまう。
【0016】
本明細書中で使用される場合は、「糖化タンパク質」は、タンパク質を構成するアミノ酸のアミノ基のアルドースのような還元糖のアルデヒド基との非酵素的な不可逆的結合によって生じる物質をいう。例えば、米国特許第6,127,138号を参照のこと。このような、非酵素的な不可逆的結合反応はまた、「アマドリ転位」とも呼ばれ、したがって、上記の糖化タンパク質は、場合によっては「アマドリ化合物」とも呼ばれる。
【0017】
本明細書中で使用される場合は、「アマドリアーゼ」は、以下の反応に示されるように、対応するアミノ酸、グルコソンと、Hを生じる、アマドリ生成物の酸化的脱糖化を触媒する酵素をいう。
【0018】
【化4】

式中、Rは、還元糖のアルドース残基を示し、Rはアミノ酸、タンパク質、またはペプチドの残基を示す。アマドリアーゼの他の異名としては、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)およびフルクトシルアミン:酸素オキシドレダクターゼ(FAOO)が挙げられる。本明細書中の目的については、名称「アマドリアーゼ」が本明細書中で使用されるが、全てのこのような化学的な異名も意図される。「アマドリアーゼ」にはまた、対応するアミノ酸、グルコソンと、Hを生じる、アマドリ生成物の酸化的脱糖化を触媒するその酵素活性をなおも実質的に保持している、機能性断片または誘導体も含まれる。通常は、機能性断片または誘導体は、そのアマドリアーゼの活性の少なくとも50%を保持している。好ましくは、機能性断片または誘導体は、そのアマドリアーゼの活性の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%を保持している。アマドリアーゼには、その活性を実質的に変化させることのない保存的アミノ酸置換が含まれていてもよい。アミノ酸の適切な保存的置換は当業者に公知であり、通常は、得られる分子の生物学的活性を変化させることなく作成され得る。一般的には、ポリペプチドの必須ではない領域の1つのアミノ酸の置換によっては、生物学的活性は実質的には変化しないと、当業者に理解されている(例えば、Watson et al.,Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Bejacmin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照のこと)。このような例示的な置換は、好ましくは、以下の表1に示される置換にしたがって作成される。
【0019】
(表1)
【0020】
【表1】

他の置換もまた許容され、経験的に、または公知の保存的置換にしたがって決定することができる。
【0021】
本明細書中で使用される場合は、「グリコヘモグロビン」は、血液中のヘモグロビンの糖化によって生じるフルクトシルアミン誘導体をいう。
【0022】
本明細書中で使用される場合は、「グリコアルブミン」は、血液中のアルブミンの糖化によって生じるフルクトシルアミン誘導体をいう。
【0023】
本明細書中で使用される場合は、「フルクトサミン」は、血液中のタンパク質の糖化によって生じる誘導体(還元能力を有しているもの)をいう。
【0024】
本明細書中で使用される場合は、「組成物」は、2つ以上の生成物または化合物の任意の混合物をいう。これは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性のもの、非水性のもの、あるいは、それらの任意の組み合わせであり得る。
【0025】
本明細書中で使用される場合は、「組み合わせ」は、2つ以上の要素の任意のつながりをいう。
【0026】
本明細書中で使用される場合は、「血漿」は、凝固後に得られる血清とは区別される、血液の流動性の細胞構造のない部分をいう。
【0027】
本明細書中で使用される場合は、「血清」は、循環している血液中の血漿とは区別される、フィブリン塊および血球の除去後に得られる血液の流動性の部分をいう。
【0028】
本明細書中で使用される場合は、「流動体」は、流れることができる任意の組成物をいう。したがって、流動体には、半固体、ペースト、水溶液、水性の混合物、ゲル、ローション、クリームの形態である組成物、および他のそのような組成物が含まれる。
【0029】
本明細書中で使用される場合は、「ペルオキシダーゼ」は、過酸化水素が特異的酸化剤であり、広範囲の基質が電子供与体の役割を果たす反応のホストを触媒する酵素をいう。その活性を実質的に変化させることのない保存的アミノ酸置換を有しているペプチドが含まれることが意図される。最重要な市販されているペルオキシダーゼは、西洋ワサビペルオキシダーゼである。
【0030】
本明細書中で使用される場合は、「グルコースオキシダーゼ」は、グルコースとHOとOからのグルコン酸とHの形成を触媒する酵素をいう。その活性を実質的に変化させることのない保存的アミノ酸置換を有しているグルコースオキシダーゼが含まれることが意図される。
【0031】
本明細書中で使用される場合は、「ヘキソキナーゼ」は、解糖系によるグルコースの代謝の最初の反応である、グルコース−6−リン酸を形成させるためのATPからグルコースへのリン酸基の移動を触媒する酵素をいう。その活性を実質的に変化させることのない保存的アミノ酸置換を有しているヘキソキナーゼが含まれることが意図される。
【0032】
本明細書中で使用される場合は、任意の保護基、アミノ酸、および他の化合物についての略号は、別段の定義のない限り、それらの一般的な使用法、認められている省略、またはIUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureに従う(Biochemistry 11:1726(1972)を参照のこと)。
【0033】
(B.アマドリアーゼを含むキメラタンパク質およびそれをコードする核酸)
1つの態様においては、本発明は、単離されたキメラタンパク質に関する。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。
【0034】
任意の適切な細菌のリーダー配列を使用することができる。米国特許第6,194,200号に開示されているように、別の遺伝子に由来するリーダー配列を伴う融合タンパク質としての目的のポリペプチドの発現には、安定性が提供されることに加えていくつかの利点がある。例えば、N末端アミノ酸の存在により、任意の種々のポリペプチドの精製のための一般的な精製技術を使用するための手段が提供される。例えば、Nタンパク質のN末端アミノ酸は抗原性であると予想され、したがって、Nタンパク質のN末端アミノ酸に対して惹起させられた特異的抗体を、Nタンパク質のN末端を含む融合タンパク質のアミノ精製に使用することができる。さらに、Nタンパク質のN末端は高い正電荷を有しており、これにより、イオン交換クロマトグラフィーによって所望のタンパク質の精製が容易であること、などがある。
【0035】
リーダー配列には、また、分泌のためのシグナル配列としての役割を果たすことができる疎水性アミノ酸配列を含めることができる。米国特許第6,194,200号を参照のこと。シグナル配列をコードするDNA配列は、目的の遺伝子の上流に、そのリーディングフレーム内に連結される。通常は、シグナル配列には、シグナル配列ペプチダーゼによって認識される切断部位が含まれる。したがって、シグナル配列切断部位のすぐ後ろに目的のポリペプチドを配置させることにより、目的のポリペプチドをシグナル配列から特異的に切断し、成熟ポリペプチドとして分泌させることができる。疎水性アミノ酸配列の例として、細菌のアルカリホスファターゼのシグナル配列;OMP−A、B、C、D、E、またはFシグナル配列;LPPシグナル配列、β−ラクタマーゼシグナル配列;および毒素シグナル配列が挙げられる。
【0036】
使用することができる他のリーダー配列としては、親水性配列、例えば、アンフィレグリンに由来するN末端の41個のアミノ酸残基が挙げられる。これは、目的のポリペプチドの機能の変更のために提供することができる。米国特許第6,194,200号を参照のこと。さらに、トキシンA鎖断片、リシンA鎖、ヘビ毒成長停止ペプチドのような細胞傷害因子、またはホルモンもしくは抗体のような標的化分子を、ほとんどの場合には目的の遺伝子産物の生物学的活性に対して最少の影響となるように、リーダー配列と共有結合させることができる。他のリーダー配列を用いる場合は、リーダー配列をコードするDNA配列は、目的の遺伝子の上流に、そのリーディングフレーム内に連結される。
【0037】
リーダー配列がシグナル配列ではなく、好都合な自然界に存在している切断部位を含まない場合は、さらなるアミノ酸を、目的の遺伝子とリーダー配列との間に挿入して、リーダーペプチドの切断のため、その後の融合タンパク質の精製、その後の成熟ポリペプチドの精製を可能にするための酵素的または化学的切断部位を提供することができる。米国特許第6,194,200号を参照のこと。例えば、融合タンパク質の2つのセグメントの間に酸に不安定なアスパルチル−プロリン結合を導入することによって、低いpHでそれらを分離することが容易にできる。この方法は、所望されるポリペプチドが酸に不安定である場合には適切ではない。融合タンパク質は、例えば、メチオニン残基のカルボキシ側に特異的である臭化シアンで切断することができる。リーダー配列と所望されるポリペプチドとの間にメチオニンを配置することにより、所望されるポリペプチドの放出が可能になる。この方法は、所望されるポリペプチドがメチオニン残基を含む場合には適切ではない。
【0038】
以下の特許、特許出願、および参考文献に開示されている他の細菌のリーダー配列もまた、使用することができる:WO00/28041およびWO89/03886;米国特許第5914250号、同第5885811号、同第5171670号、同第5030563号、同第4948729号、および同第4588684号;欧州特許第EP0,196,864号、同第EP0,186,643号、およびEP0,121,352;Michiels et al.,Trends Microbiol.,9(4):164−8(2001);Hobom et al.,Dev.Biol.Stand.,84:255−62(1995);Hardy and Randall,J.Cell.Sci.Suppl.,11:29−43(1989);Saier et al.,FASEB J.,2(3):199−208(1988);およびPeakman et al.,Nucleic Acids Res.,20(22);6111−2(1992)。好ましくは、細菌のリーダー配列は、大腸菌(E.coli)のタンパク質のリーダー配列であり、例えば、Roesser and Yanofsky,Nucleic Acids Res.,19(4):795−800(1991);およびKuhn et al.,Mol.Gen.Genet.,167(3):235−41(1979)に開示されている大腸菌(E.coli)のリーダー配列である。
【0039】
1つの例においては、リーダー配列は、配列番号1(MGGSGDDDDLAL)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも40%の同一性を有する。ここでは、パーセント同一性は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して、同じ大きさのアミノ酸配列全体に関して決定される。好ましくは、リーダー配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%の同一性を有する。ここでは、パーセント同一性は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して、同じ大きさのアミノ酸配列全体に関して決定される。また、好ましくは、リーダー配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗体に結合する。さらに好ましくは、リーダー配列には、配列番号1に示されるアミノ酸配列が含まれる。
【0040】
第1のペプチジル断片は、任意の適切な長さを有することができる。例えば、第1のペプチジル断片には、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26,27、28、29、または30個のアミノ酸残基が含まれる。好ましくは、第1のペプチジル断片には、約20個のアミノ酸残基が含まれる。
【0041】
任意の適切なアマドリアーゼを使用することができる。1つの例においては、アマドリアーゼは、アスパラジラス属(Aspergillus sp.)が起源のものである(例えば、Takahashi et al.,J.Biol.Chem.272(6):3437−43(1997)を参照のこと)。別の例においては、アマドリアーゼは、補因子としてFADを使用する。好ましくは、アマドリアーゼは、FAD補因子結合コンセンサス配列Gly−X−Gly−X−X−Gly(配列番号2)を有する。Xは任意のアミノ酸残基である。さらに別の例においては、アマドリアーゼは、アマドリアーゼIa、アマドリアーゼIb、アマドリアーゼIc、またはアマドリアーゼIIである(例えば、Takahashi et al.,J.Biol.Chem.272(6):3437−43(1997)を参照のこと)。アマドリアーゼIa、アマドリアーゼIb、アマドリアーゼIc、およびアマドリアーゼIIのN末端配列の間でのアミノ酸配列の相同性を、以下の表2に示す。これらのデータは、組み合わせたGenBank(商標)CDS translation/PDB/SwissProt/SPupdate/PIRデータベースを使用したコンピュータによる検索によって得た(Takahashi et al.,J.Biol.Chem.272(6):3437−43(1997)の表IVを参照のこと)。番号はそれぞれの配列中のアミノ酸位置を示す。保存的置換を(+)で示す。アマドリアーゼのデータは、Takahashi et al.,J.Biol.Chem.272(6):3437−43(1997)で得られたN末端配列に対応させた。
【0042】
(表2 アマドリアーゼIa、アマドリアーゼIb、アマドリアーゼIc、およびアマドリアーゼIIのN末端配列の間でのアミノ酸配列の相同性)
【0043】
【表2】

他のアマドリアーゼ、例えば、GenBank寄託番号U82830(Takahashi et al.,J.Biol.Chem.272(19):12505−12507(1997)に開示されているアマドリアーゼ、および米国特許第6,127,138号に開示されているアマドリアーゼもまた使用することができる。対応するアミノ酸、グルコソンと、Hを生じる、アマドリ生成物の酸化的脱糖化を触媒するその酵素活性をなおも実質的に保持しているアマドリアーゼの機能性断片または誘導体もまた、使用することができる。
【0044】
通常は、アマドリアーゼの機能性断片または誘導体は、その酵素活性の少なくとも50%を保持している。好ましくは、アマドリアーゼの機能性断片または誘導体は、その酵素活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%を保持している。
【0045】
アマドリアーゼの酵素活性についてのアッセイは当該技術分野で公知である(例えば、Takahashi et al.,J.Biol.Chem.272(6):3437−43(1997)、および米国特許第6,127,138号を参照のこと)。アマドリアーゼの酵素活性についての4個の例示的なアッセイが、Takahashi et al.,J.Biol.Chem.272(6):3437−43(1997)に開示されている。
【0046】
(グルコソンの形成)
このアッセイにおいては、酵素活性は、基質としてフルクトシルプロピルアミンを使用するOPDでの比色反応によって測定される、グルコソンの放出によってモニターされる。このアッセイは、120分の反応時間の後での、形成されたグルコソンの終点測定をベースとする。反応混合物には、20mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)、10mMのOPD、10mMのフルクトシルプロピルアミン、および酵素タンパク質が、1mLの最終容量の中に含められる。37℃で2時間のインキュベーションのあと、320nmでの吸光度が測定される。反応は、これらの条件下では用量依存性の様式で240分まで線形である。1単位の酵素活性は、1μmolのグルコソン/分を生じる酵素の量と定義される。合成されたグルコソンが標準物として使用される。
【0047】
(遊離アミンアッセイ)
遊離アミンの放出をアッセイするために、蛍光がフルオレサミンとの反応の後に測定される。25μlの純粋な酵素もしくは酵素を多く含む画分の溶液、15μlの20%のフルクトシルプロピルアミン水溶液、および250μlのPBSが、37℃で記載される種々の時間の間インキュベートされる。反応は、4℃でMicrocon−10(Amicon,Beverly,MA)を通して濾過することによって停止させる。1μlの純物質または1:10希釈した濾過物が、1.5mlの50mMリン酸緩衝液(pH8.0)に添加される。激しくボルテックスされた状態で、0.5mlの0.03%フルオレサミンのジオキサン溶液が迅速に添加される。5分後、蛍光が測定される(λex=390nm、λem=475nm)。標準物のプロットは、6〜150ngのプロピルアミンを用いて作成される。
【0048】
(Hアッセイ)
過酸化水素は、Sakai et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,59:487−491(1995)にしたがってキノン色素アッセイによって定量される。反応混合物には、20mMのTris−HCl(pH8.0)、1.5mMの4−アミノアンチピリン、2.0mMのフェノール、2.0単位のペルオキシダーゼ、10mMのフルクトシルプロピルアミン、および酵素タンパク質が、1mlの全容量の中に含まれる。Hの生産は、505nm(ε=5.13×10)での吸光度にしたがうキノン色素の形成によってモニターされる。0.5μmolのキノン色素の生産は、1.0μmolのHの形成に対応する。
【0049】
(酸素消費)
酸素消費は、Gerhardinger et al.,J.Biol.Chem.270:218−224(1995)に記載されているようなClarke型酸素電極が取り付けられているYSI−Beckman glucometer IIを用いて決定される。簡単に言うと、酵素(50μl)が、750μlのPBSと650μlの水を含むチャンバーに添加される。反応は、50μlの300mMのフルクトシルプロピルアミン(最終濃度10mM)の添加によって開始される。
【0050】
別の例においては、アマドリアーゼは、配列番号3:
【0051】
【化5】

に示されるアミノ酸に対して少なくとも40%の同一性を有する。ここでは、パーセント同一性は、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して、同じ大きさのアミノ酸配列全体に関して決定される。好ましくは、アマドリアーゼは、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%の同一性を有する。ここでは、パーセント同一性は、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して、同じ大きさのアミノ酸配列全体に関して決定される。また、好ましくは、アマドリアーゼは、配列番号3に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗体に結合する。また、好ましくは、アマドリアーゼには、配列番号3に示されるアミノ酸配列が含まれる。
【0052】
第1のペプチジル断片および第2のペプチジル断片は、任意の適切な連結によって連結させることができる。例えば、第1のペプチジル断片と第2のペプチジル断片を、切断することができる連結によって連結させることができる。
【0053】
単離されたキメラタンパク質には、さらに、そのC末端に、約5個から約30個までのアミノ酸残基の第2の細菌のリーダー配列を含む第3のペプチジル断片を含めることもできる。上記に記載したものを含む任意の適切な細菌のリーダー配列を使用することができる。
【0054】
1つの例においては、第2の細菌のリーダー配列は、大腸菌(E.coli)タンパク質のリーダー配列である。別の例においては、第2の細菌のリーダー配列は、配列番号4(KGELEGLPIPNPLLRTG)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも40%の同一性を有する。ここでは、パーセント同一性は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して、同じ大きさのアミノ酸配列全体に関して決定される。好ましくは、第2の細菌のリーダー配列は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%の同一性を有する。ここでは、パーセント同一性は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して、同じ大きさのアミノ酸配列全体に関して決定される。また、好ましくは、第2の細菌のリーダー配列は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗体に結合する。また、好ましくは、第2の細菌のリーダー配列には、配列番号4に示されるアミノ酸配列が含まれる。
【0055】
第3のペプチジル断片は、適切な長さを有することができる。例えば、第3のペプチジル断片には、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26,27、28、29、または30個のアミノ酸残基が含まれる。好ましくは、第3のペプチジル断片には、約20個のアミノ酸残基が含まれる。
【0056】
単離されたキメラタンパク質には、さらに、そのC末端に、ペプチドタグを含む第3のペプチジル断片を含めることができる。任意の適切なタグを使用することができる。例えば、タグは、FLAG、HA、HA1、c−Myc、6−His、AU1、EE、T7、4A6、ε、B、gE、およびTy1タグであり得る(表3を参照のこと)。
【0057】
(表3 例示的なエピトープタグシステム)
【0058】
【表3】

【0059】
【化6】

1つの例においては、単離されたキメラタンパク質には、配列番号5:
【0060】
【化7】

に示されるアミノ酸配列が含まれる。
【0061】
別の態様においては、本発明は、キメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸に関する。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。
【0062】
1つの例においては、単離された核酸には、配列5に示されるアミノ酸配列を含むキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列が含まれる。別の例においては、単離された核酸には、配列番号6:
【0063】
【化8−1】

【0064】
【化8−2】

に示されるヌクレオチド配列が含まれる。
【0065】
さらに別の例においては、単離された核酸には、キメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列が含まれる。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。
【0066】
キメラタンパク質をコードする核酸、またはその相補鎖を含む組み換え細胞が意図される。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。
【0067】
キメラタンパク質の生産方法もまた、意図される。この方法には、コードされるキメラタンパク質が細胞によって発現されるように、キメラタンパク質(キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、a)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびb)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる)をコードする核酸を含む組み換え細胞を増殖させること、および発現されたキメラタンパク質を回収することが含まれる。この方法による生成物が、さらに意図される。
【0068】
キメラタンパク質またはキメラタンパク質をコードする核酸は、任意の適切な方法、例えば、化学合成、組み換え生産、またはそれらの併用によって調製することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel et al.,eds.John Wiley & Sons,Inc.(2000)、およびSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory press(1989)を参照のこと)。
【0069】
(C.キメラタンパク質を使用して糖化タンパク質をアッセイするための方法およびキット)
さらに別の態様においては、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための方法に関する。この方法には、a)アッセイされる試料をプロテアーゼと接触させて、糖化タンパク質(これが上記の試料中に含まれている場合)から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生じさせること;b)上記の生じた糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を、N末端からC末端の方向に、i)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびii)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片を含むキメラタンパク質と接触させて、上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させること;ならびに、c)上記のキメラタンパク質による上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、上記試料中に上記の糖化タンパク質が存在すること、および/またはその量を決定することが含まれる。
【0070】
本発明の方法は、任意の適切な試料をアッセイするために使用することができる。好ましくは、試料は血液試料、例えば、血漿、血清、赤血球、または全血試料である。
【0071】
本発明の方法は、任意の適切な糖化タンパク質をアッセイするために使用することができる。好ましくは、アッセイされる糖化タンパク質はグリコアルブミンまたはグリコヘモグロビンである。
【0072】
任意の適切なプロテアーゼを、本発明の方法において使用することができる。エンド型プロテアーゼまたはエキソ型プロテアーゼのいずれも、使用することができる。例示的なエンド型プロテアーゼとして、トリプシン、α−キモトリプシン、スブチリシン、プロテイナーゼK、パパイン、カテプシンB、ペプシン、サーモリシン、プロテアーゼXVII、プロテアーゼXXI、リシル−エンドペプチダーゼ、プロレター(prolether)およびブロメラインFが挙げられる。例示的なエキソ型プロテアーゼとしては、アミノペプチダーゼまたはカルボキシペプチダーゼが挙げられる。1つの例においては、プロテアーゼは、プロテイナーゼK、プロナーゼE、アナニン、サーモリシン、スブチリシン、またはウシの膵臓のプロテアーゼである。
【0073】
プロテアーゼは、任意の適切な大きさの糖化ペプチドを生じるように使用することができる。例えば、プロテアーゼを、約2から約30個までのアミノ酸残基の糖化ペプチドを生じるように使用することができる。別の例においては、プロテアーゼは、糖化グリシン、糖化バリン、または糖化リジン残基、あるいは、糖化グリシン、糖化バリン、もしくは糖化リジン残基を含む糖化ペプチドを生じるように使用される。
【0074】
上記のセクションBに記載されたものを含む任意の適切なキメラタンパク質を、本発明の方法において使用することができる。1つの例においては、キメラタンパク質には、配列番号5に示されるアミノ酸配列が含まれる。別の例においては、キメラタンパク質は、配列番号6に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0075】
糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化は、任意の適切な方法によって評価することができる。例えば、糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化は、酸化反応における糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸、HO、またはOの消費、あるいは酸化反応における酸化されたグルコース(グルコソン)、H、またはアミノ酸の形成を評価することによって評価することができる。
【0076】
の消費は、任意の適切な方法によって評価することができる。例えば、Oの消費は、酸素電極によって評価することができる。
【0077】
の形成は、任意の適切な方法によって評価することができる。例えば、Hの形成は、ペルオキシダーゼによって評価することができる。任意のペルオキシダーゼを本発明の方法において使用することができる。より好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼが使用される。例えば、以下のGenBank寄託番号を有している西洋ワサビペルオキシダーゼを使用することができる:E01651;D90116(prxC3遺伝子);D90115(prxC2遺伝子);J05552(合成のイソ型酵素C(HRP−C));S14268(中性);OPRHC(C1前駆体);S00627(C1C前駆体);JH0150(C3前駆体);S00626(C1B前駆体);JH0149(C2前駆体);CAA00083(ホースラディッシュ(Armoracia rusticana)由来);およびAAA72223(合成の西洋ワサビペルオキシダーゼイソ酵素C(HRP−C))。別の例においては、Hの形成は、ペルオキシダーゼとトリンダー反応によって評価することができる。糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を、キメラタンパク質とペルオキシダーゼに、連続して、または同時に接触させることができる。
【0078】
グルコソンの形成は、任意の適切な方法によって評価することができる。例えば、グルコソンの形成は、グルコースオキシダーゼによって評価することができる。任意の適切なグルコースオキシダーゼを使用することができる。例えば、以下のGenBank寄託番号を有しているヌクレオチド配列によってコードされるグルコースオキシダーゼを使用することができる:AF012277(ペニシリウム・アマガサキナーゼ(Penicillium Amagasakiense)由来);U56240(タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)由来);X16061(アスパラジラス・ニガー(Aspergillus niger)gox遺伝子);X56443(アスパラジラス・ニガー(A.niger)god遺伝子);J05242(アスパラジラス・ニガー(A.niger)由来);AF012277(ペニシリウム・アマガサキナーゼ(Penicillium Amagasakiense)由来);U56240(タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)由来);X16061(アスパラジラス・ニガー(Aspergillus niger)gox遺伝子);X56443(アスパラジラス・ニガー(A.niger)god遺伝子);J05242(アスパラジラス・ニガー(A.niger)のグルコース)。好ましくは、GenBank寄託番号J05242のヌクレオチド配列(Frederick et al.,J.Biol.Chem.265(7):3793−802(1990)もまた参照のこと)、および米国特許第5,879,921号に記載されているヌクレオチド配列を、グルコースオキシダーゼをコードする核酸を得るために使用することができる。
【0079】
別の例においては、グルコソンの形成を、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼとヘキソキナーゼの組み合わせによって評価することができる。任意の適切なグルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼを使用することができる。例えば、以下の特許および特許出願において開示されているグルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼを使用することができる:WO03/042389、WO01/98472、WO93/06125、および米国特許第6,127,345号、同第6,069,297号、同第5,856,104号、同第5,308,770号、同第5,244,796号、同第5,229,286号、同第5,137,821号、および同第4,847,195号。任意の適切なヘキソキナーゼを使用することができる。例えば、以下の特許および特許出願において開示されているヘキソキナーゼを使用することができる:WO02/20795、US2002/009779、WO01/90378、WO01/90325、WO01/68694、WO01/47968、および米国特許第5,948,665号。
【0080】
所望される場合は、プロテアーゼを、糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸と、キメラタンパク質との間での接触の前、またはそれと同時に不活化させることができる。プロテアーゼは、任意の適切な方法によって不活化させることができる。例えば、プロテアーゼは、熱処理、またはプロテアーゼの阻害因子によって不活化させることができる。
【0081】
所望される場合は、アッセイの妨害を計測することができる。例えば、アスコルビン酸塩による妨害を、銅(II)化合物、コール酸、もしくはジスルホン酸バソフェナントロリン、またはそれらの混合物を使用して計測することができる。ビリルビンによる妨害は、フェロシアン化物塩を使用して計測することができる。
【0082】
本発明の方法は、任意の適切な目的のために使用することができる。好ましくは、この方法は、疾患または障害、例えば、糖尿病の予測または診断に使用される。
【0083】
さらに別の態様においては、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのキットに関する。このキットには、a)糖化タンパク質(これが試料中に含まれている場合)から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生じさせるためのプロテアーゼ;b)上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させるための、N末端からC末端の方向に、i)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびii)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片を含むキメラタンパク質;ならびに、c)上記のキメラタンパク質による上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、上記試料中に上記糖化タンパク質が存在すること、および/またはその量を決定するための手段が含まれる。
【0084】
任意の適切な手段を、本発明のキットに含めることができる。例えば、上記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の上記キメラタンパク質による酸化を評価するための手段には、ペルオキシダーゼを含めることができる。好ましくは、キメラタンパク質とペルオキシダーゼは、1つの組成物中に処方される。
【0085】
(D.プロテーナーゼKとアマドリアーゼを使用して糖化タンパク質を評価するための方法およびキット)
さらに別の態様においては、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするための方法に関する。この方法には、a)アッセイされる試料をプロテイナーゼKと接触させて、糖化タンパク質(これが上記の試料中に含まれている場合)から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生じさせること;b)上記の生じた糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を、アマドリアーゼと接触させて、上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させること;ならびに、c)上記のアマドリアーゼによる上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、上記試料中に上記の糖化タンパク質が存在すること、および/またはその量を決定することが含まれる。
【0086】
本発明の方法は、任意の適切な試料をアッセイするために使用することができる。好ましくは、試料は、血液試料、例えば、血漿、血清、赤血球、または全血試料である。
【0087】
本発明の方法は、任意の適切な糖化タンパク質をアッセイするために使用することができる。好ましくは、アッセイされる糖化タンパク質はグリコアルブミンまたはグリコヘモグロビンである。
【0088】
上記のセクションBおよびCに記載したものを含む任意の適切なアマドリアーゼを、本発明の方法において使用することができる。例えば、アマドリアーゼには、キメラタンパク質が含まれ得る。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、i)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびii)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。好ましくは、キメラタンパク質には、配列5に示されるアミノ酸配列が含まれる。キメラタンパク質が、配列番号6に示されるヌクレオチドによってコードされることもまた好ましい。
【0089】
糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化は、任意の適切な方法によって評価することができる。例えば、糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化は、酸化反応における糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸、HO、またはOの消費、あるいは酸化反応における酸化されたグルコース(グルコソン)、H、またはアミノ酸の形成を評価することによって評価することができる。
【0090】
の消費は、任意の適切な方法によって評価することができる。例えば、Oの消費は、酸素電極によって評価することができる。
【0091】
の形成は、任意の適切な方法によって評価することができる。例えば、Hの形成は、ペルオキシダーゼによって評価することができる。上記のセクションCに記載したものを含む任意のペルオキシダーゼを本発明の方法において使用することができる。より好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼが使用される。別の例においては、Hの形成は、ペルオキシダーゼとトリンダー反応によって評価することができる。糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を、キメラタンパク質とペルオキシダーゼに、連続して、または同時に接触させることができる。
【0092】
グルコソンの形成は、任意の適切な方法によって評価することができる。例えば、グルコソンの形成は、グルコースオキシダーゼによって評価することができる。上記のセクションCに記載したものを含む任意の適切なグルコースオキシダーゼを使用することができる。
【0093】
別の例においては、グルコソンの形成を、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼとヘキソキナーゼの組み合わせによって評価することができる。上記のセクションCに記載したものを含む任意の適切なグルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼを使用することができる。上記のセクションCに記載したものを含む任意の適切なヘキソキナーゼを使用することができる。
【0094】
任意の適切なプロテイナーゼKを、本発明の方法において使用することができる。例えば、以下の特許および特許出願に開示されているプロテイナーゼKを使用することができる;WO02/072634、WO02/064760、WO96/28556、ならびに、米国特許第6,451,574号および同第5,344,770号。好ましくは、トリチラキウム・アルブム(Tritirachium album)由来のプロテイナーゼKが使用される(例えば、Sigma−Aldrichカタログ番号82452)。
【0095】
所望される場合は、プロテイナーゼKは、糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸と、アマドリアーゼとの間での接触の前、またはそれと同時に不活化させることができる。例えば、プロテイナーゼKは、熱処理、またはプロテイナーゼKの阻害因子によって不活化させることができる。
【0096】
所望される場合は、アッセイの妨害を計測することができる。例えば、アスコルビン酸塩による妨害を、銅(II)化合物、コール酸、またはジスルホン酸バソフェナントロリン、またはそれらの混合物を使用して計測することができる。ビリルビンによる妨害は、フェロシアン化物塩を使用して計測することができる。
【0097】
本発明の方法は、任意の適切な目的のために使用することができる。好ましくは、疾患または障害、例えば、糖尿病の予測または診断に使用される。
【0098】
さらに別の態様においては、本発明は、試料中の糖化タンパク質をアッセイするためのキットに関する。このキットには、a)糖化タンパク質(これが試料中に含まれている場合)から糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を生じさせるためのプロテイナーゼK;b)上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸を酸化させるためのアマドリアーゼ;ならびに、c)上記アマドリアーゼによる上記の糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の酸化を評価して、上記試料中に上記糖化タンパク質が存在すること、および/またはその量を決定するための手段が含まれる。
【0099】
任意の適切な手段を、本発明のキットに含めることができる。例えば、上記糖化ペプチドまたは糖化アミノ酸の上記キメラタンパク質による酸化を評価するための手段には、ペルオキシダーゼを含めることができる。好ましくは、キメラタンパク質とペルオキシダーゼは、1つの組成物中に処方される。
【0100】
上記のセクションBおよびCに記載したものを含む任意の適切なアマドリアーゼを、本発明のキットにおいて使用することができる。例えば、アマドリアーゼには、キメラタンパク質が含まれ得る。キメラタンパク質には、N末端からC末端の方向に、i)約5個から約30個までのアミノ酸残基の細菌のリーダー配列を含む第1のペプチジル断片;およびii)アマドリアーゼを含む第2のペプチジル断片が含まれる。好ましくは、キメラタンパク質には、配列5に示されるアミノ酸配列が含まれる。キメラタンパク質が、配列番号6に示されるヌクレオチドによってコードされることもまた好ましい。
【実施例】
【0101】
(E.実施例)
(実施例1.糖化血清タンパク質の酵素アッセイキット)
意図される用途。例示的なアッセイキットは、ヒトの血清中の糖化血清タンパク質(フルクトサミン)の決定のためのものである。フルクトサミンは、グルコースとタンパク質のアミノ酸残基との間での非酵素的メイラード反応によって形成される。糖尿病患者においては、高い血中グルコース濃度はフルクトサミンの形成の増大に関係している。フルクトサミンは、糖尿病の管理の中期(2〜3週間)の指標である。
【0102】
アッセイの原理。糖化血清タンパク質(GSP)についての例示的な酵素的アッセイでは、GSPを低分子量の糖化タンパク質の断片(GPF)へと消化するためにプロテイナーゼKが使用され、そしてDiazymeの特異的フルクトサミナーゼ(商標)、微生物由来のアマドリアーゼが、PFまたはアミノ酸、グルコソンとHを生じる、アマドリ生成物GPFの酸化的消化を触媒するために使用される。放出されたHは、比色トリンダー終点反応によって測定される。550nmでの吸光度が、糖化血清タンパク質(GSP)の濃度に比例する。
【0103】
【化9】

(表4 試薬表)
【0104】
【表4】

試験試料。新しい患者の血清を使用するか、またはEDTAを処理した血漿試料を使用した。血漿は、回収後直ちに細胞と分離しなければならない。試料は、4℃では2週間、凍結すれば4週間まで保存することができる。
【0105】
再構成。試薬1の1つのバイアルを、20mLの蒸留水で再構成した。反転させて穏やかに混合し、その後、使用する前に室温に10分間、置いておいた。再構成したR1は、4℃で4週間安定である。試薬2の1つのバイアルを5mLの蒸留水で再構成した。反転させて穏やかに混合し、使用する前に室温で10分間、置いておいた。再構成したR2は、4℃で6週間安定である。
【0106】
アッセイ手順
1.予め室温に暖めておいた再構成したR1およびR2
2.機器パラメーター:
波長:550nm;参照700nm
キュベット:1cmの光路
温度:37℃
3.200μLの再構成したR1と、50μLの試料またはキャリブレーターをキュベットに添加する。混合し、5分間インキュベートする。550nmでの吸光度をAとして読み取る。
4.50μLの再構成したR2を添加し、混合し、さらに5分間インキュベートし、その後、550nmでの吸光度をAとして読み取る。
5.試薬を含まない場合(ブランク)の吸光度を、試料またはキャリブレーターの代わりに50μLのHOを使用して読み取る。
【0107】
【化10】

計算
ΔA=A−A
試料中の糖化血清タンパク質(フルクトサミン)の濃度:
フルクトサミン(μmol/L)=(ΔA試料−ΔAブランク/Δ標準物−Δブランク)×キャリブレーターの濃度

【0108】
正常値。成人(20歳〜60歳)は、122〜285μmol/Lの正常範囲を有している。それぞれの研究室において、一式の標準物を用いて予想される範囲を規定しなければならない。
【0109】
線形性および感度。このアッセイは、1200μmol/Lまで線形であり、30μmol/Lで感度がよい。Diazymeの糖化血清タンパク質(Diazyme Glycated Serum Protein)(フルクトサミン)アッセイは正確で、<3%の平均のアッセイ間CV、および<2%の平均のアッセイ内CVを有している。アッセイのデータは、別のフルクトサミン測定方法と、r=0.99の優れた相関関係を示した。
【0110】
妨害。以下の分析物濃度は、アッセイに影響を与えるとは認められなかった:
アスコルビン酸(4mg/dL)
ビリルビン(2mg/dL)
グルコース(1200mg/dL)
ヘモグロビン(100mg/dL)
トリグリセリド(250mg/dL)
尿酸(15mg/dL)
較正。フルクトサミンキャリブレーター(カタログ番号DZ112A−S)が、較正のために必要である。
【0111】
品質管理。フルクトサミン対照(低および高)(カタログ番号DZ112A−C1およびDZ112A−C3)を、対照血清として使用することが推奨される。1つの対照(低および高)を、30個の試料ごとに試験しなければならない。これらの値は特定の範囲内になければならない。これらの値がその範囲を外れ、反復により誤差が全く許されない
場合は、以下の工程を行わなければならない:
1.機器の設定と光源をチェック
2.反応温度をチェック
3.キットと内容物の有効期限をチェック;そして
4.試薬の再構成に使用した水の品質をチェック。
【0112】
(参考文献)
【0113】
【化11】

(実施例2.糖化血清タンパク質についてのアッセイの正確さおよび線形性)
(方法の比較)
1回の実行においてDiazymeのGSPキットと、Randoxのフルクトサミンキットの両方を使用して、一式のランダムな試料について2連で実行することによって決定した。Diazyme GSPキットによって決定した分析能力の特性は、実施例1に記載した条件下でアッセイを行った場合には、Randoxのフルクトサミンキットを用いて観察された特性に匹敵するものであった(図1もまた参照のこと)。
【0114】
(アッセイの線形性)
1回の実行において、一式の段階希釈した血清試料について2連で実行することによって決定した。アッセイは、40〜856μmol/Lまで線形であった(図2を参照のこと)。
【0115】
(妨害)
種々の妨害する可能性がある物質が存在しない条件下、および示した濃度でそのような種々の物質が存在する条件下で、対照試料のそれぞれについて3連で実行することによって決定した(以下の表5を参照のこと)。
【0116】
(表5 妨害についての分析)
【0117】
【表5】

(実施例3.糖化ヘモグロビンHbA1cについてのアッセイ)
(A.糖化バリンの測定)
1.10μLの170mMの糖化バリン(G−バリン)(この値を、全てのバリンについて仮定し、作業手順においてG−バリンに変換した。)を、300μLのR1(80mMのCHES、30mMのMOPS、0.9%のBRIJ)と混合した。この混合物を試料のストック溶液とした(GVR1)。
【0118】
2.分光光度計の波長を726nm、温度を37℃に設定した。150μLのR2(30mMのMES、1mMのCaCl、2mMのWST−3、1570U/mLのプロテイナーゼK)をキュベットにピペッティングし、用量応答のために、それぞれ0μL、2.5μL、5μL、10μL、15μL、20μLの上記のGRV1を添加し、試料の容量をR1中のHOで20μLとし、5分間インキュベートし、最初のO.D.を読み取り、その後、30μLのR3(0.08mMのDA−64、240mMのTris、180U/mlのHRP、20U/mlのFAOD)を添加し、3分間インキュベートし、2回目のO.D.を読み取った。対照として20μLのR1中のHOを使用して、これらの2つの読み取り値の間のO.D.の差を計算した。図3および4は、フルクトシル−バリンを用いた用量依存性の反応を示す。
【0119】
(B.糖化ヘモグロビンの測定)
1.10μLの高レベル糖化ヘモグロビン(G−hg(HHg))、10μLの中レベルG−hg(MHg)、10μlの正常レベルG−hg(NMHg)をそれぞれ、300μLのR1と混合した。
【0120】
2.分光光度計の波長を570nm、温度を37℃に設定した。150μLのR2をキュベットにピペッティングし、20μLの上記のR1中のHgを試料として添加し、R1中のHOを対照として使用して、4分間のインキュベーションの後でO.D.を読み取った。このO.D.読み取り値から、相対的なHg濃度を得た。
【0121】
3.分光光度計の波長を726nmに変更し、最初のO.D.値を読み取り、30μLのR3を添加し、5分間インキュベートし、2回目のO.D.値を得た。これらの2つの読み取り値の間のO.D.の差を計算した。これらの試料についてのこれらのO.D.の差を、それらのHg濃度を用いて較正した。図5は、プロテイナーゼで消化した患者のヘモグロビンを用いた用量依存性のシグナルを示す(5分間の消化)。
【0122】
上記の実施例は、説明の目的のためだけに含められるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。上記の実施例に対する多数の変更形態が可能である。上記の実施例に対するそのような変更形態および変形形態は当業者に明らかであり、本発明が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
(配列表)
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224025(P2011−224025A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−176345(P2011−176345)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【分割の表示】特願2006−520371(P2006−520371)の分割
【原出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(506017089)
【Fターム(参考)】