説明

糖化ヘモグロビン検出法

本発明の特定の態様は、ヘモグロビンβ鎖中に存在することができるアミノ酸配列の変異の存在によって影響されない、たとえばヒト全血中の糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法に関する。方法は、試料中のすべての糖化ヘモグロビンを、糖化されたヘモグロビンの形態にかかわりなく検出し、したがって、糖化されたヒトヘモグロビンA、ヘモグロビンS及びヘモグロビンSを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の特定の態様は、血液中のヘモグロビン変異体の存在によって影響されない、たとえばヒト全血中の糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
赤血球中に存在するヘモグロビンは、ヘモグロビンのβ鎖のアミノ末端へのグルコース分子の非酵素的付加によって糖化されうる。ひとたびヘモグロビン分子が糖化されると、その分子は糖化されたままであり、赤血球内の糖化ヘモグロビンの蓄積が、赤血球がそのライフサイクル中に接触したグルコースの平均レベルを反映する。したがって、個人の血液中に存在する糖化ヘモグロビンのレベルは、血液中のグルコースのレベルに比例し、その個人の直前の4週〜3ヶ月の間の平均1日血中グルコース濃度の指標である。
【0003】
ヒト血液中の糖化ヘモグロビンのレベルを測定する方法が数多く存在し、その大多数は、ヘモグロビンA(HbA)がヒト血液中に存在するヘモグロビンの主要形態であるという事実により、血液中に存在する糖化ヘモグロビンA(HbA1c)の相対量を計算することを含む。そのような方法では、血液中に存在するヘモグロビンの他の形態から自らを区別する糖化ヘモグロビンAの物理的及び/又は化学的性質を利用する、高速液クロマトグラフィー及び免疫親和性選択のような技術が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヘモグロビンβ鎖の6位のアミノ酸残基でヘモグロビンAとは異なる、ヘモグロビンS(HbS)及びヘモグロビンC(HbC)のようなヘモグロビンの変異形態が存在する。ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの形態のヘモグロビンは糖化されえ、糖化されたヘモグロビンS及びヘモグロビンCは、糖化ヒトヘモグロビンを定量化する現在の方法の大多数に干渉して、結果において最大40%の上昇を生じさせることが示されている。したがって、ヘモグロビン変異体によって生じる干渉を受けない、糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
特定の実施態様において、本発明は、糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法であって、糖化ヒトヘモグロビンに関して試験される試料をエンドペプチダーゼと接触させること、エンドペプチダーゼ処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させること、及びヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを検出することを含む方法に関する。
【0006】
他の実施態様において、本発明は、糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法であって、糖化ヒトヘモグロビンに関して試験される試料を、凝集試薬と接触させると同時に、接触させる前に又は接触させた後に、エンドペプチダーゼと接触させること、エンドペプチダーゼ及び凝集試薬処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させること、及びヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを凝集阻止イムノアッセイ法(凝集阻止免疫学的測定法)によって検出することを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】14日間にわたり凝集試薬(ヒトヘモグロビンのポリアスパルトアミドコンジュゲートβ鎖アミノ末端糖化セキサペプチド)の様々な調合物によって生じた、マウスモノクロナール抗HbA1c抗体でコートされたラテックスの凝集の速度を示す。調合物は、凝集試薬をエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びプロリン特異的エンドペプチダーゼの両方を有さずに含有するもの、凝集試薬をEDTAのみとともに含有するもの及び凝集試薬をEDTA及びプロリン特異的エンドペプチダーゼの両方とともに含有するものであった。
【図2】18日間にわたり凝集試薬(ヒトヘモグロビンのポリアスパルトアミドコンジュゲートβ鎖アミノ末端糖化セキサペプチド)の様々な調合物によって生じた、マウスモノクロナール抗HbA1c抗体でコートされたラテックスの凝集の速度を示す。調合物は、凝集試薬及びプロリン特異的エンドペプチダーゼをEDTA及びBSAの両方とともに含有するもの又は凝集試薬及びプロリン特異的エンドペプチダーゼをBSAのみとともに含有するものであった。
【図3】ADVIA(登録商標)1650HbA1c法を使用して計算された、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法を使用して計算された、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合に対してプロットした相関傾きを示す。
【図4】ADVIA(登録商標)1650計器を使用して、凝集試薬及び0.0U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼと反応した、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料中に存在することが測定された糖化ヘモグロビンの割合を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法を使用して測定された、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合に対してプロットした相関傾きを示す。
【図5】ADVIA(登録商標)1650計器を使用して、凝集試薬及び0.1U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼと反応した、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料中に存在することが測定された糖化ヘモグロビンの割合を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法を使用して測定された、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合に対してプロットした相関傾きを示す。
【図6】ADVIA(登録商標)1650計器を使用して、凝集試薬及び0.2U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼと反応した、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料中に存在することが測定された糖化ヘモグロビンの割合を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法を使用して測定された、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合に対してプロットした相関傾きを示す。
【図7】ADVIA(登録商標)1650計器を使用して、凝集試薬及び0.33U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼと反応した、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料中に存在することが測定された糖化ヘモグロビンの割合を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法を使用して測定された、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合に対してプロットした相関傾きを示す。
【図8】ADVIA(登録商標)1650計器を使用して、凝集試薬及び0.43U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼと反応した、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料中に存在することが測定された糖化ヘモグロビンの割合を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法を使用して測定された、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合に対してプロットした相関傾きを示す。
【図9】ADVIA(登録商標)1650計器を使用して、凝集試薬及び0.54U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼと反応した、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料中に存在することが測定された糖化ヘモグロビンの割合を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法を使用して測定された、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合に対してプロットした相関傾きを示す。
【図10】プロリン特異的エンドペプチダーゼ濃度に対してプロットした、図3〜9に示す相関傾きの値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例示的実施態様の詳細な説明
本発明の特定の態様は、ヘモグロビンβ鎖中に存在することができるアミノ酸配列の変異によって影響されない、ヒト血液中に存在する糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法に関する。方法は、試料中のすべての糖化ヘモグロビンを、糖化されたヘモグロビンの形態にかかわりなく検出し、したがって、糖化されたヘモグロビンA、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを検出する。
【0009】
ヘモグロビンS及びヘモグロビンCは、ヒトヘモグロビンβ鎖の6位に点変異を含む。ヘモグロビンAのβ鎖の6位のグルタミン酸残基が、ヘモグロビンC中ではリシン残基によって置換されており、ヘモグロビンS中ではバリン残基によって置換されている。ヒトヘモグロビンA、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCのβ鎖の糖化アミノ末端18アミノ酸を以下に示す。
【0010】
【表1】

【0011】
プロリン特異的エンドペプチダーゼ(PSE)は、ヒトヘモグロビンβ鎖の5位のプロリン残基のカルボキシ側を選択的に開裂させる。したがって、プロリン特異的エンドペプチダーゼによる、ヘモグロビンA、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有する試料の消化は、ヘモグロビンA、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCそれぞれの場合で同じ糖化ペンタペプチドを生じさせる。
【0012】
本発明の特定の実施態様は、エンドペプチダーゼ処理されたヒトヘモグロビン含有試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼで消化して、ヒトヘモグロビンβ鎖の糖化又は非糖化アミノ末端ペンタペプチドを解放することを含む方法に関する。そして、試料中の糖化ペンタペプチドのレベルを定量化して、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの量を表示することを提供することができる。
【0013】
本明細書で使用される語「検出」、「検出すること」及びそのすべての変化形は、試料中に存在する糖化ヒトヘモグロビン又は糖化ヒトヘモグロビンのアミノ末端ペンタペプチドの量にかかわらず、また、そのペプチドが由来する試料中のヘモグロビンの形態にかかわらず、試料中に存在する糖化ヒトヘモグロビン又は糖化ヒトヘモグロビンのアミノ末端ペンタペプチドの存在を定量的に決定するために使用される任意の方法をいう。
【0014】
本明細書に使用される語「糖化ヒトヘモグロビン」とは、酵素の作用なしでグルコース分子がヘモグロビンのβ鎖のアミノ末端に結合している、任意の形態のヒトヘモグロビンをいう。語「ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチド」とは、酵素の作用なしでグルコース分子がペンタペプチドのアミノ末端に結合している、任意の形態のヒトヘモグロビンのβ鎖のアミノ末端ペンタペプチドをいう。
【0015】
本明細書で使用される語「接触すること」、「接触」及びそのすべての変化形は、部分又は成分が互いに物理的に接触するような、部分又は成分の集った配置を直接的又は間接的に生じさせる任意の手段をいう。たとえば、接触は、部分又は成分を容器の中にいっしょに入れる、部分又は成分を結合する、部分又は成分を混合するような物理的行為を含む。
【0016】
本明細書で使用される語「エンドペプチダーゼ」とは、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質中のペプチド結合を加水分解する任意の酵素をいう。
【0017】
本明細書で使用される語「酸エンドペプチダーゼ」とは、酸性環境においてペプチド、ポリペプチド又はタンパク質中のペプチド結合を加水分解する任意の酵素をいう。
【0018】
本明細書で使用される語「混合すること」、「混合」及び「付加」ならびにそれらのすべての変化形は、部分又は成分が互いに隣接するような、部分又は成分の集った配置を直接的又は間接的に生じさせる任意の手段をいう。これらの語は、部分又は成分を容器の中にいっしょに入れる、部分又は成分を結合する、部分又は成分を接触させる、部分又は成分をいっしょにかく拌する、渦をまかせる、又は振盪するような行為を含む。語「混合物」とは、隣接して集って配置された部分又は成分をいう。
【0019】
本発明の特定の態様は、糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法であって、糖化ヒトヘモグロビンに関して試験される試料をエンドペプチダーゼと接触させること、エンドペプチダーゼ処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させること、及び試料中に存在するヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを検出することを含む方法に関する。
【0020】
本発明の好ましい実施態様において、試料はヒト全血である。
【0021】
本発明の特定の実施態様においては、試料中の糖化ヒトヘモグロビンの割合を測定する。そのような方法においては、試料中の糖化ヒトヘモグロビンの濃度を測定し、また、糖化ヘモグロビン及び非糖化ヘモグロビンの両方を含む全ヘモグロビンの濃度を測定する。糖化ヘモグロビンの濃度を全ヘモグロビンの濃度で割ることにより、試料中の糖化ヒトヘモグロビンの割合を計算する。
【0022】
試料中の全ヘモグロビン濃度は、たとえば、参照により全部が本明細書に組み込まれるWolf, H.U., et al, Clin Chim Acta, 1984, 136, 95-104及びZander R., et al., Clin Chim Acta, 1984, 136, 83-93に記載されているような、非イオン洗浄剤のアルカリ性溶液を用いる処理によって全ヘモグロビン誘導体をアルカリ性ヘマチンに転換することに基づくアッセイ(測定)法をはじめとする、当業者には周知の方法を使用して測定することができる。アルカリ性ヘマチンは600nmで所定の吸収スペクトルを有し、ヘマチン含量は、600nmでの吸収を測定することによって計測することができる。
【0023】
はじめに、任意のエンドペプチダーゼを使用して試料中に存在するヒトヘモグロビンを消化したのち、プロリン特異的エンドペプチダーゼで消化することができる。エンドペプチダーゼ消化は、手作業で実施することもできるし、試料希釈が可能である化学システム上で自動的に実施することもできる。
【0024】
本発明の特定の実施態様において、エンドペプチダーゼは酸エンドペプチダーゼである。本発明の好ましい実施態様において、酸エンドペプチダーゼは、ペプシン、アスペルギロペプシンII、カテプシンD、サッカロペプシン、ムコールペプシン、キモシン、ガストリシン又はphysirolisinである。特に好ましい実施態様において、酸エンドペプチダーゼはペプシンである。本発明の特定の態様においては、試料は、約5U/mL〜約10,000U/mLのペプシンで消化される。好ましい実施態様においては、試料は、約4,800U/mL〜約8,600U/mLのペプシンで消化される。特に好ましい実施態様においては、試料は、約6,000U/mL〜約7,000U/mLのペプシンで消化される。本発明の特定の実施態様において、ペプシン消化は、約1.0〜約5.0の範囲のpHで実施される。本発明の好ましい実施態様において、ペプシン消化は、約2.0〜約4.0の範囲のpHで実施される。本発明の特に好ましい実施態様において、ペプシン消化は、約2.3〜約2.5の範囲のpHで実施される。
【0025】
本発明の特定の実施態様において、エンドペプチダーゼ消化ののち、試料はプロリン特異的エンドペプチダーゼで消化される。特定の実施態様においては、そのような試料は、約0.1U/mL〜約30U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼで処理される。好ましい実施態様において、そのような試料は、約0.3U/mL〜約5.0U/mLプロリン特異的エンドペプチダーゼで処理される。特に好ましい実施態様において、そのような試料は、約0.5U/mL〜約0.8U/mLプロリン特異的エンドペプチダーゼで処理される。本発明の特定の実施態様において、そのようなプロリン特異的エンドペプチダーゼ消化は、約5.0〜約9.0の範囲のpHで実施される。本発明の好ましい実施態様において、そのようなプロリン特異的エンドペプチダーゼ消化は、約6.0〜約8.0の範囲のpHで実施される。本発明の特に好ましい実施態様において、そのようなプロリン特異的エンドペプチダーゼ消化は、約6.9〜約7.1の範囲のpHで実施される。
【0026】
エンドペプチダーゼ及びプロリン特異的エンドペプチダーゼ消化ののち解放されるヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドは、たとえば、高速液クロマトグラフィーの使用を含む方法又は糖化ペンタペプチドへの少なくとも一つの抗体(ポリクロナール又はモノクロナール)の結合を含む方法をはじめとする任意の方法によって検出することができる。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドは、たとえば、参照により全部が本明細書に組み込まれる米国特許第4,847,209号に記載されているような凝集阻止イムノアッセイ法によって検出される。そのようなアッセイ法の具体的な例においては、ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを含有する試料を凝集試薬、たとえば、ポリアスパルトアミドにコンジュゲートした糖化val-his-leu-thr-tyr-cysセキサペプチドと混合する。また、試料を抗体と混合する。本発明の好ましい実施態様において、抗体は、ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチド及び凝集試薬の両方に特異的に結合する。本発明の特定の態様においては、少なくとも一つの抗体分子が一つ以上のラテックス粒子に結合している。好ましい抗体としては、たとえば、ラテックスコートされたマウスモノクロナール抗HbA1c抗体がある。
【0028】
そのような凝集阻止イムノアッセイ法において、試料中のヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化ペンタペプチドは、抗体結合部位を求めて凝集試薬と競合し、凝集速度を低下させ、この凝集速度の低下は、凝集試薬がラテックスコートされた抗体に結合するときに起こる。試料中に存在するヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化ペンタペプチドが多ければ多いほど、凝集速度は遅くなる。したがって、凝集速度は、試料中に存在するヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化ペンタペプチドの濃度の指標を提供する。
【0029】
エンドペプチダーゼ消化、プロリン特異的エンドペプチダーゼ消化及び凝集阻止イムノアッセイ法は、様々な方法で実施することができる。たとえば、本発明の特定の実施態様においては、まず、試料をエンドペプチダーゼで消化し、次に、エンドペプチダーゼ処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと反応させ、その後、試料を凝集試薬と接触させ、次いで抗体と接触させる。本発明の他の実施態様においては、まず、試料をエンドペプチダーゼで消化し、次に、エンドペプチダーゼ処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと凝集試薬との混合物と接触させ、その後、抗体と接触させる。本発明のさらなる実施態様においては、まず、試料をエンドペプチダーゼで消化し、次に、エンドペプチダーゼ処理された試料を凝集試薬と接触させ、その後、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させ、次いで抗体と接触させる。
【0030】
したがって、本発明の特定の態様は、試料をエンドペプチダーゼと接触させること、及びエンドペプチダーゼ処理された試料を、凝集試薬と接触させると同時に、接触させる前に又は接触させた後に、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させることを含む方法に関する。
【0031】
本発明の好ましい実施態様においては、エンドペプチダーゼ処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと凝集試薬との混合物と接触させる。そのような実施態様の特定の例において、プロリン特異的エンドペプチダーゼと凝集試薬との混合物は、約0.1g/dL〜約5.0g/dLのウシ血清アルブミン及び約0.5mmol/L〜約10.0mmol/Lのエチレンジアミン四酢酸を含み、約6.0〜約8.0の範囲のpHを有する。そのような実施態様の好ましい例において、プロリン特異的エンドペプチダーゼと凝集試薬との混合物は、約1.0g/dL〜約2.0g/dLのウシ血清アルブミン及び約1.0mmol/L〜約5.0mmol/Lのエチレンジアミン四酢酸を含み、約6.0〜約8.0の範囲のpHを有する。そのような実施態様の特に好ましい例において、プロリン特異的エンドペプチダーゼと凝集試薬との混合物は、約1.4g/dL〜約1.6g/dLのウシ血清アルブミン及び約2.9mmol/L〜約3.1mmol/Lのエチレンジアミン四酢酸を含み、約6.0〜約8.0の範囲のpHを有する。
【0032】
本発明の特定の実施態様は、試料を、エンドペプチダーゼ及び凝集試薬と接触させたのち、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させる、糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法に関する。そのような方法における試料がヒト全血であるならば、場合によっては試料をはじめにたとえば生理食塩水で希釈してもよい。
【0033】
したがって、本発明の特定の態様は、試料を、エンドペプチダーゼと凝集試薬との混合物と接触させたのち、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させ、次いで抗体と接触させることを含む方法に関する。本発明の他の実施態様は、試料を、エンドペプチダーゼと凝集試薬との混合物と接触させたのち、プロリン特異的エンドペプチダーゼと抗体との混合物と接触させることを含む方法に関する。本発明のさらなる実施態様は、試料を、凝集試薬と接触させたのち、ペプシンと接触させ、その後、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させ、次いで抗体と接触させることを含む方法に関する。本発明のさらなる態様は、試料を、凝集試薬と接触させたのち、ペプシンと接触させ、その後、プロリン特異的エンドペプチダーゼと抗体との混合物と接触させることを含む方法に関する。本発明の他の態様は、試料を、ペプシンと接触させたのち、凝集試薬と接触させ、その後、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させ、その後、抗体と接触させることを含む方法に関する。本発明の特定のさらなる実施態様は、試料を、ペプシンと接触させたのち、凝集試薬と接触させ、その後、プロリン特異的エンドペプチダーゼと抗体との混合物と接触させることを含む方法に関する。
【0034】
したがって、本発明の態様は、糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法であって、糖化ヒトヘモグロビンに関して試験される試料を、凝集試薬と接触させると同時に、接触させる前に又は接触させた後に、エンドペプチダーゼと接触させること、エンドペプチダーゼ及び凝集試薬処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させること、及びヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを凝集阻止イムノアッセイ法によって検出することを含む方法に関する。そのような方法の好ましい実施態様においては、試料を、好ましくは約3U/mL〜約100U/mLのペプシンを含み、約1.0〜約4.0の範囲のpHを有する、ペプシンと凝集試薬との混合物と接触させる。
【0035】
本発明のさらなる態様は、糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法であって、糖化ヒトヘモグロビンに関して試験される試料を、凝集試薬と接触させると同時に、接触させる前に又は接触させた後に、エンドペプチダーゼと接触させること、エンドペプチダーゼ及び凝集試薬処理された試料を、ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチド及び凝集試薬の両方に特異的に結合する抗体と接触させると同時に又は接触させる前に、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させること、及びヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを凝集阻止イムノアッセイ法によって検出することを含む方法に関する。そのような方法の好ましい実施態様においては、エンドペプチダーゼ及び凝集試薬処理された試料を、好ましくは約2.0U/mL〜約30.0U/mLプロリン特異的エンドペプチダーゼを含み、約7.0〜約8.0の範囲のpHを有する、プロリン特異的エンドペプチダーゼと抗体との混合物と接触させる。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、本発明の特定の実施態様を例示するものであるが、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0037】
実施例1:ペプシン及びプロリン特異的エンドペプチダーゼによるヒト全血試料の消化
DCA N(正常対照、DCA(登録商標)2000アナライザ試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)又はDCA AB(異常対照、DCA(登録商標)2000アナライザ試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)7.5μLを、250U/mLのペプシンを含有する150μLの試料変性試薬(ADVIA(登録商標)HbA1c試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)とともに、室温で20分間インキュベート(培養)した。0.1mol/Lのリン酸緩衝液(pH7.0)中の150μLのプロリン特異的エンドペプチダーゼ(30U/mL)を、ペプシン処理された試料の半分に加え、プロリン特異的エンドペプチダーゼ処理された試料を室温で30分間インキュベートした。残りのペプシン処理された試料は、プロリン特異的エンドペプチダーゼでは処理せず、0.1mol/Lのリン酸緩衝液(pH7.0)150μLをこれらの試料に加えた。
【0038】
次いで、すべての試料を、マウスモノクロナール抗HbA1c抗体でコートされたラテックスの混合物(ADVIA(登録商標)HbA1c試薬キットR1、Siemens Medical Solutions Diagnostics)に加えたのち、ポリアスパルトアミドにコンジュゲートしたヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化セキサペプチド(凝集試薬、ADVIA(登録商標)HbA1c試薬キットR2、Siemens Medical Solutions Diagnostics)を加えることにより、ADVIA(登録商標)1650計器上で、凝集阻止イムノアッセイ法で試験した。試料中のヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化ペンタペプチドは、抗体結合部位を求めて凝集試薬と競合し、凝集速度を低下させ、この凝集速度の低下は、凝集試薬がラテックスコートされた抗体に結合するときに起こる。試料のヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化ペンタペプチドが多ければ多いほど、凝集速度は遅くなる。反応を694nmでモニタリング(観測)し、被処理試料と生理食塩水ブランクとの間の凝集速度の差を測定した。実験結果が以下の表1に示され、ペプシンでの処理ののち、プロリン特異的エンドペプチダーゼの付加がより高い凝集阻止を生じさせて、ヘモグロビンのβ鎖末端糖化ペンタペプチドが放出されることを示す。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例2:プロリン特異的エンドペプチダーゼ含有凝集試薬の調合
実施例1で使用された凝集剤(ポリアスパルトアミドにコンジュゲートしたヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化セキサペプチド)及びプロリン特異的エンドペプチダーゼを含有する試薬の安定な調合のためのpH7.0の条件を決定した。
【0041】
0.02mol/Lのモルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、0.05%のNaN3及び0.2%のTween-20を含有する凝集剤(約1.5μg/mL)の溶液(pH7)を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び0.4U/mLプロリン特異的エンドペプチダーゼなしで、1.1mmol/L EDTAとともに、又は1.1mmol/L EDTA及び0.4U/mLプロリン特異的エンドペプチダーゼの両方とともに調製した。そして、14日の期間にわたりマウスモノクロナール抗HbA1c抗体でコートされたラテックスの凝集を生じさせる、様々な調合物における凝集剤の能力を測定して、凝集剤の安定性を経時的に評価した。まず試料を上記凝集試薬(R1)に加え、次にマウスモノクロナール抗HbA1c抗体でコートされたラテックス(ADVIA(登録商標)HbA1c試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)を試料に加えることにより、試料を、ADVIA(登録商標)1650機器上で、凝集試薬イムノアッセイ法で試験した。試料中のヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化セキサペプチドは、抗体結合部位を求めて凝集試薬と競合し、凝集速度を低下させ、この凝集速度の低下は、凝集試薬がラテックスコートされた抗体に結合するときに起こる。試料中のヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化ペンタペプチドが多ければ多いほど、凝集速度は遅くなる。反応を694nmでモニタリングし、凝集速度を測定した。図1は、凝集剤がEDTAのみの存在でもっとも安定であり、EDTA及びプロリン特異的エンドペプチダーゼの両方の存在でもっとも不安定であったことを示す。
【0042】
0.4U/mLプロリン特異的エンドペプチダーゼ、0.02mol/Lモルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、0.05%のNaN3及び0.2%のTween-20を含有する凝集剤(約1.5μg/mL)のさらなる溶液(pH7)を、1.1mmol/L EDTA及び1%のBSAの両方とともに、又は1%のBSAのみとともに調製した。そして、経時的にマウスモノクロナール抗HbA1c抗体でコートされたラテックスの凝集を生じさせる、様々な調合物中の凝集剤の能力を再び測定した。図2は、プロリン特異的エンドペプチダーゼの存在における凝集剤が、BSAのみを含有する溶液よりもウシ血清アルブミン(BSA)及びEDTAの両方を含有する溶液中でより安定であったことを示す。図1及び2に提供されたデータは、EDTA及びBSAが相乗的に作用して、プロリン特異的エンドペプチダーゼ含有凝集試薬溶液を安定化させることを示す
【0043】
実施例3:ペプシン消化条件の決定
様々な濃度のHbA1cを含有する凍結乾燥ヒト全血(全血HbA1cカリブレータ、Aalto Scientific)の2μL試料を、250U/mLペプシン(試料変性試薬、ADVIA(登録商標)HbA1c試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)148μLで10分間、手動で消化させるか、0.02mmol/Lのシトレート、0.2%のTriton X100、pH2.4溶液中の約6000U/mLのペプシンで9秒間、自動的に消化させるか、0.02mmol/Lシトレート、0.2%のTriton X100、pH2.4溶液中の約6000U/mLのペプシンで10分間、自動的に消化させるかした。そして、試料を、R1が0.4U/mLプロリン特異的エンドペプチダーゼを含有する凝集試薬である実施例2に記載したように、ADIVA(登録商標)1650計器上で、凝集阻止イムノアッセイ法で評価した。以下の表2で試料ごとに異なる変性条件に関してリストする凝集速度の間変化がないことは、約6000U/mLを含有するペプシン変性剤の場合には、ヘモグロビンを消化するのに9秒で十分であることを示す。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例4:糖化ヘモグロビンの割合を計算するときのヘモグロビンS及びヘモグロビンCによって生じる干渉を減少させるヒト全血のペプシン及びプロリン特異的エンドペプチダーゼ消化:凝集試薬の存在におけるプロリン特異的エンドペプチダーゼ消化
ヘモグロビンS(HbS)又はヘモグロビンC(HbC)を含有するヒト全血試料を、実施例2で記載したように、ADIVA(登録商標)1650計器上で、凝集阻止イムノアッセイ法で試験して、試料中の糖化ヘモグロビンの濃度を測定した。エンドペプチダーゼ試薬は、0.02mol/Lシトレート緩衝液(pH2.4)、0.2%Triton X100中、約6000U/mLのペプシンを含有するものであった。凝集試薬は、約1.5μg/mL凝集剤(ポリアスパルトアミドにコンジュゲートしたヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化セキサペプチド)及び漸増濃度のプロリン特異的エンドペプチダーゼ(0U/mL、0.1U/mL、0.2U/mL、0.33U/mL、0.43U/mL及び0.54U/mL)の混合物を、0.02mol/LのMOPS(pH7.0)、0.05%NaN3、0.2%のTween-20、3mmol/LのEDTA及び1.5%のBSAの溶液中に含有するものであった。
【0046】
試料中の、糖化ヘモグロビン及び非糖化ヘモグロビンを含む全ヘモグロビン濃度を、ADVIA(登録商標)全ヘモグロビン試薬(ADVIA(登録商標)HbA1c試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)を使用して、非イオン洗浄剤のアルカリ性溶液を用いる処理によって全ヘモグロビン誘導体をアルカリ性ヘマチンに転換することに基づくアッセイ法で測定した。試料を全ヘモグロビン試薬に加え、ヘモグロビン種を、596nmで所定の吸収スペクトルを有するアルカリ性ヘマチンに転換した。596nmでの吸収を測定することによってヘマチン含量を計測した。
【0047】
試料ごとに計算された糖化ヒトヘモグロビンの濃度を、その試料に関して測定された全ヘモグロビンの濃度で割ることにより、各試料中に存在する糖化ヒトヘモグロビンの割合を測定した。
【0048】
また、比較のために、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料中の糖化ヘモグロビンの割合を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法(DCA(登録商標)2000アナライザ及び試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)を使用して測定した。DCA(登録商標)2000アッセイ法は、ヘモグロビンC及びヘモグロビンS変異体の存在からの干渉を受けないことが知られている。また、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合を、ADVIA(登録商標)1650HbA1c法(Siemens Medical Solutions Diagnostics)を使用して実施される標準的HbA1cアッセイ法を使用して測定した。以下の表3に示すパラメータをADVIA(登録商標)1650計器で使用して、ヘモグロビン変異体干渉に対するプロリン特異的エンドペプチダーゼの効果を評価した。R1は、0.02mol/L MOPS(pH7.0)、0.05%NaN3、0.2%Tween-20、3.0mmol/L EDTA及び1.5%BSAの溶液中、凝集剤(ポリアスパルトアミドにコンジュゲートしたヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化セキサペプチド)及び0.0〜0.54U/mLプロリン特異的エンドペプチダーゼの混合物であった。R2は、マウスモノクロナール抗HbA1c抗体でコートされたラテックス(ADVIA(登録商標)HbA1c試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)であった。
【0049】
【表4】

【0050】
実験結果を以下の表4に示す。表中、「NV」は、そのデータ点で値が得られなかったことを示し、「>>>>」は、値が高すぎて計器で計測できなかったことを示す。表の1列目の数値の後の「C」は、試料がヘモグロビンCを含有することを示し、1列目の数値の後の「S」は、試料がヘモグロビンSを含有することを示す。ADVIA(登録商標)1650HbA1c法を使用して実施されたHbA1cアッセイ法で得られた結果は、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法で得られた結果と比較して、試料中のヘモグロビンS及びヘモグロビンCの存在によって大きく影響されている。異なるプロリン特異的エンドペプチダーゼ濃度を使用して実施された実験の結果と、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法及びADVIA(登録商標)1650計器を使用して実施された実験の結果との比較は、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCによって生じる糖化ヘモグロビンの計測における干渉が0.54U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼ濃度で排除されることを示す。
【0051】
【表5】

【0052】
異なるプロリン特異的エンドペプチダーゼ濃度を使用してADVIA(登録商標)1650計器を用いて実施された実験から計算された試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合(表4、3〜8列目)及びADVIA(登録商標)1650HbA1c法を使用して実施された実験から計算された試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合(表4、9列目)を、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ法を使用して計算された糖化ヘモグロビンの割合(表4、2列目)に対してプロットして、プロリン特異的エンドペプチダーゼ濃度ごとに計算された糖化ヘモグロビン割合及びADVIA(登録商標)1650HbA1c法を使用して計算された割合に関する相関傾きを得た。結果が図3〜9に示され、プロリン特異的エンドペプチダーゼ濃度が高まるにつれ、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCによって生じる、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合の計算における干渉が減少し、最後には排除されるということを示す。
【0053】
前段落で記載したように測定され、図3〜9に示された相関傾きの値をプロリン特異的エンドペプチダーゼ濃度に対してプロットすると(図10)、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料のペプシンによる消化、次いで凝集試薬の存在における少なくとも0.43U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼによる消化が、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合を計算するときの、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCによって生じる干渉を排除するということが示された。
【0054】
実施例5
ヒト全血のペプシン及びプロリン特異的エンドペプチダーゼ消化は、糖化ヘモグロビンの割合を計算するときの、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCによって生じる干渉を減少させる。凝集試薬の存在におけるペプシン消化
ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含有するヒト全血試料を、ADVIA(登録商標)1650計器上、表5に示すパラメータを使用して、生理食塩水で希釈した。
【0055】
【表6】

【0056】
次いで、生理食塩水希釈した試料を、0.02mol/Lのシトレート緩衝剤(pH2.4)中に約1.5μg凝集剤(ポリアスパルトアミドにコンジュゲートしたヒトヘモグロビンのβ鎖アミノ末端糖化セキサペプチド)及び6U/mLのペプシンを含有する凝集試薬と混合し、混合物を5分間インキュベートした。次いで、漸増濃度のプロリン特異的エンドペプチダーゼ(0.0、1.0、2.0、3.0、4.0又は5.0U/mLを含有する、マウスモノクロナール抗HbA1c抗体でコートされたラテックス(ADVIA(登録商標)HbA1c試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics))の溶液(pH7)を凝集試薬/ペプシン溶液に加え、混合物を5分間インキュベートした。ADVIA(登録商標)1650計器を使用して694nmでの凝集速度を測定し、その凝集速度を使用して、試料中の糖化ヘモグロビンS又はヘモグロビンCの濃度を計算した。
【0057】
また、比較のために、DCA(登録商標)2000HbA1cアッセイ(DCA(登録商標)2000アナライザ及び試薬キット、Siemens Medical Solutions Diagnostics)を使用して、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合を測定した。
【0058】
実施例4に記載した手順にしたがって試料中の全ヘモグロビン濃度を測定し、実施例4に記載したようにして各試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合を測定した。実験の結果が以下の表6に示され、凝集試薬の存在におけるペプシンによるヒト全血試料の消化、次いでプロリン特異的エンドペプチダーゼによる消化が、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの割合を計算するときの、試料中に存在するヘモグロビンS及びヘモグロビンCによって生じる干渉を有意に減少させることを示す。
【0059】
【表7】

【0060】
本明細書で引用又は記載される各特許、特許出願及び刊行物の全開示が参照によって本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法であって、
糖化ヒトヘモグロビンに関して試験される試料をエンドペプチダーゼと接触させること、
前記エンドペプチダーゼ処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させること、及び
ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを検出すること
を含む方法。
【請求項2】
前記試料がヒト全血である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試料中の糖化ヒトヘモグロビンの割合を測定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記エンドペプチダーゼが、ペプシン、アスペルギロペプシンII、カテプシンD、サッカロペプシン、ムコールペプシン、キモシン、ガストリシン及びphysirolisinからなる群より選択される酸エンドペプチダーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記酸エンドペプチダーゼがペプシンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記試料を、約1.0〜約5.0の範囲のpHで約5U/mL〜約10,000U/mLペプシンと接触させることを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記エンドペプチダーゼ処理された試料を、約5.0〜約9.0の範囲のpHで約0.1U/mL〜約30U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを、高速液クロマトグラフィーの使用を含む方法又は前記糖化ペンタペプチドへの少なくとも一つの抗体の結合を含む方法によって検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを凝集阻止イムノアッセイ法によって検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記凝集阻止イムノアッセイ法で使用される前記凝集試薬が、ポリアスパルトアミドにコンジュゲートした糖化val-his-leu-thr-tyr-cysセキサペプチドである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記エンドペプチダーゼ処理された試料を、凝集試薬と接触させると同時に、接触させる前に又は接触させた後に、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させることを含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記エンドペプチダーゼ処理された試料を、プロリン特異的エンドペプチダーゼと前記凝集試薬との混合物と接触させることを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
プロリン特異的エンドペプチダーゼと前記凝集試薬との前記混合物が、約0.1g/dL〜約5.0g/dLウシ血清アルブミン及び約0.5mmol/L〜約10.0mmol/Lエチレンジアミン四酢酸を含み、約6.0〜約8.0の範囲のpHを有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記エンドペプチダーゼ、プロリン特異的エンドペプチダーゼ及び凝集剤で処理された試料を、ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチド及び前記凝集試薬の両方に特異的に結合する抗体と接触させることをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの抗体分子が一つ以上のラテックス粒子に結合している、請求項14記載の方法。
【請求項16】
糖化ヒトヘモグロビンを検出する方法であって、
糖化ヒトヘモグロビンに関して試験される試料を、凝集試薬と接触させると同時に、接触させる前に又は接触させた後に、エンドペプチダーゼと接触させること、
前記エンドペプチダーゼ及び凝集試薬処理された試料をプロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させること、及び
ヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチドを凝集阻止イムノアッセイ法によって検出すること
を含む方法。
【請求項17】
前記エンドペプチダーゼが、ペプシン、アスペルギロペプシンII、カテプシンD、サッカロペプシン、ムコールペプシン、キモシン、ガストリシン又はphysirolisinからなる群より選択される酸エンドペプチダーゼである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記酸エンドペプチダーゼがペプシンである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記試料をペプシンと前記凝集試薬との混合物と接触させることを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ペプシンと前記凝集試薬との前記混合物が、約3U/mL〜約100U/mLのペプシンを含み、約1.0〜約4.0の範囲のpHを有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記のエンドペプチダーゼ及び凝集試薬処理された試料を、前記試料をヒトヘモグロビンの糖化β鎖アミノ末端ペンタペプチド及び前記凝集試薬の両方に特異的に結合する抗体と接触させると同時に又は接触させる前に、プロリン特異的エンドペプチダーゼと接触させることをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記のエンドペプチダーゼ及び凝集試薬処理された試料を、プロリン特異的エンドペプチダーゼと前記抗体との混合物と接触させることを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記混合物が、約2.0U/mL〜約30.0U/mLのプロリン特異的エンドペプチダーゼを含み、約7.0〜約8.0の範囲のpHを有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一つの抗体分子が一つ以上のラテックス粒子に結合している、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−503632(P2011−503632A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535022(P2010−535022)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/083847
【国際公開番号】WO2009/067421
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(507269175)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
【Fターム(参考)】