説明

糖及びアルコール由来のフルフラールと5−(アルコキシメチル)フルフラール誘導体との混合物

酸触媒の存在下でC5及びC6糖含有出発材料をアルコールと反応させ、その後のフルフラールと5−(アルコキシメチル)フルフラールとの混合物の水素化及び/又はエーテル化により、5−(アルコキシメチル)フルフラールとフルフラールとの両方のアルデヒド官能基をアルコキシメチル官能基又はメチル官能基に変換させることによって、フルフラールと5−(アルコキシメチル)フルフラール誘導体との混合物を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペントース(C5糖)とヘキソース(C6糖)との両方を含有する混合供給材料(feed)からフルフラールと5−(アルコキシメチル)フルフラール(RMF)誘導体との混合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、グルコース又はグルコース含有出発材料を用いるアルコキシメチルフルフラール及びレブリン酸アルキルエステルの調製が知られている。例えば、グルコースとフルクトース(両方ともC6糖)との二糖であるサッカロースが用いられている。この反応は主にレブリン酸誘導体を提供する。
【0003】
燃料、燃料添加剤及び石油化学産業で用いられる様々な化学製品は、全て有限資源である石油、ガス及び石炭に由来している。一方でバイオマスは、再生可能な資源であると考えられている。バイオマスは、燃料の生産、又は例えば繊維、化学製品若しくは熱の工業的生産に用いることができる生物学的材料(生分解性廃棄物を含む)である。バイオマスには、地質学的プロセスによって石炭又は石油等の物質に転換されている有機材料は含まれない。
【0004】
食品以外の用途でのバイオマス由来の製品の生産は成長産業である。バイオ系燃料は、関心が非常に高まっている用途の一例である。
【0005】
バイオマスは、付加価値製品に変換され得る糖(ヘキソース及びペントース)を含有する。現在の糖由来のバイオ燃料に関する取り組み(biofuel activities)は主に、スクロース又はグルコースのエタノールへの発酵に関する、又は合成ガス(Syngas)を介した合成液体燃料への完全分解によるものである。特許文献2は、粒子状物質の放出を低減するための、炭化水素から成る燃料組成物及び/又は少なくとも1つのグリセロールエーテルを含有する植物油誘導体の使用を記載している。
【0006】
最近になって、関心の高い中間体としてHMFを生成するフルクトースの酸触媒反応が再検討されている。研究されたほとんどのプロセスには、HMFが、その形成に要求される反応条件であまり安定ではないという欠点がある。糖出発材料と酸触媒とを含有する水相からの迅速除去が、この課題に対する解決策として見なされてきた。ウィスコンシン大学マディソン校の研究員らが、フルクトースからHMFを生成するプロセスを開発している。HMFは、プラスチック、石油又は燃料増量剤のためにモノマーへと、又はさらに燃料自体へと変換することができる。ジェームス・ドュメシック(James Dumesic)教授及び共同研究者らによるプロセスは初めに、酸触媒(塩酸又は酸性イオン交換樹脂)の使用によって、水相中でフルクトースを脱水させる。塩を添加し、抽出相にHMFを塩析させる。抽出相には水相からのHMFの抽出に有利に働く不活性有機溶媒を用いる。二相プロセスは、高いフルクトース濃度(10wt%〜50wt%)で作動し、高収率を達成し(フルクトース変換90%でHMF選択率80%)、分離しやすい(separation-friendly)溶媒中でHMFを送達する(非特許文献1)。このプロセスによるHMFの収率は興味深いが、フルクトースよりも安価で且つ反応性が低いヘキソース(例えばグルコース又はスクロース)を出発材料として用いる場合、複合溶媒プロセスには、比較的複雑なプラント設計のため、且つ理想収率を下回るため、コスト的欠点がある。HMFは、室温で固体であり、その後の工程で有用な生成物に変換する必要がある。ドュメシック教授は、HMFをジメチルフラン(DMF)に変換する統合水素化分解プロセス工程を報告しており、これは興味深いガソリン添加剤であると予測される。
【0007】
特許文献3では、1回24時間で、又は17時間連続してカラム溶出を介して、酸触媒を用いて60℃でフルクトースを5−エトキシメチルフルフラール(EMF)に変換する方法を提供している。EMFの用途は考慮されていなかった。
【0008】
また、同時係属出願である特許文献4では、燃料又は燃料添加剤としてのHMFエーテルの使用を含むかかるエーテルの製造を記載している。実際、メチルエーテル及びエチルエーテル(メトキシメチルフルフラール即ちMMF;エトキシメチルフルフラール即ちEMF)の両方が調製及び試験された。しかしながら、特許文献4の発明は、好ましくは第1級のC1〜C5アルコールを有するヘキソース原料(feedstock)の使用に限定されていた。第2級及び第3級アルコールを有するヘキソース及びペントース混合供給材料の使用は考慮されていないが、第1級分枝状アルコールの例だけは考慮されていた。5−アルコキシメチルフルフラール誘導体が燃料又は燃料添加剤として有用であるが、本発明者らは、特にガソリン、ケロシン、ディーゼル、バイオディーゼル又はグリーンディーゼル等の燃料とのより高濃度のブレンド中で用いられる場合、エーテルには改善の余地が残されていることを見出した。本発明者らは、燃料ブレンド特性に対するフルフラール及びその誘導体のアルデヒド官能基の負の効果に対応するさらなる誘導体化経路を開発しており、これによりペントースから得られる燃料可溶性が低いフルフラールが、それぞれアルデヒドのアルコールへの水素化/エーテル化又はアルデヒドのCHへの水素化の間、同時により良好な可溶性のフルフリルエーテル又はメチルフランに変換されるので、混合ペントース/ヘキソース供給材料から始めることが可能になる。したがって、混合ペントース/ヘキソースバイオマス供給材料からのペントースの除去はもはや要求されていない。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、5−アルコキシメチルフルフラール由来の誘導体とフルフラールの誘導体、好ましくは対応するフルフラール誘導体との組合せが、5−アルコキシメチルフルフラール単独又は5−アルコキシメチルフルフラールとフルフラールとのブレンドに比べて優れたブレンド特性を有することを見出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第635783号明細書
【特許文献2】欧州特許第0641854号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/063220号パンフレット
【特許文献4】国際出願PCT/EP2007/002145号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】DUMESIC, James A, et al. "Phase modifiers promote efficient production of Hydroxymethylfurfural from fructose" . Science. 30 juni 2006, vol.312, no.5782, p.1933-1937
【非特許文献2】Mr. Lewkowski: "Synthesis, chemistry and applications of 5-hydroxymethylfurfural and its derivatives",Arkivoc. 2001, p.17-54.
【非特許文献3】Claude Moreau et al:"Dehydration of fructose and sucrose into 5-hydroxymethylfurfural in the presence of 1-H-3-methyl imidazolium chloride acting both as solvent and catalyst",Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 253 (2006) 165-169.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
【0012】
したがって本発明は、酸触媒の存在下でC5及びC6糖含有出発材料をアルコールと反応させ、その後のフルフラールと5−(アルコキシメチル)フルフラールとの混合物の水素化及び/又はエーテル化により、5−(アルコキシメチル)フルフラールとフルフラールとの両方のアルデヒド官能基をアルコキシメチル官能基又はメチル官能基に変換させることによって、フルフラールと5−(アルコキシメチル)フルフラール誘導体との混合物を製造する方法を提供する。
【0013】
上記方法の反応生成物が燃料、燃料添加剤へのその後の変換のための出発材料として、又は燃料若しくは燃料添加剤中間体として用いられる場合、必ずしも反応生成物が純粋である必要はない。実際、バイオマスからの燃料及び燃料添加剤の調製では、反応生成物はレブリン酸誘導体等の非干渉成分を含有し得る。しかしながら、参照しやすいように、方法及び反応生成物は、フルフラールと5−(アルコキシメチル)フルフラールとの混合物を生じる、混合ペントース/ヘキソース含有出発材料の反応に関して記載される。本発明は、燃料又は燃料添加剤として本発明に従って生成される反応生成物の使用も提供する。本発明の生成物とブレンドする燃料としては、ガソリン及びガソリン−エタノールブレンド、ケロシン、ディーゼル、バイオディーゼル(植物油のエステル交換によって生成された、短鎖アルキル(メチル又はエチル)エステルから成る非石油系ディーゼル燃料を表し、(単独で又は従来の石油ディーゼルとブレンドして)使用することができる)、フィッシャー・トロプシュ液(例えばGTL(gas−to−liquids)、CTL(coal−to−liquids)又はBTL(biomass to liquids)プロセスから得られる)、ディーゼル−バイオディーゼルブレンド及びグリーンディーゼル、並びにディーゼル及び/又はバイオディーゼルとグリーンディーゼルとのブレンド(グリーンディーゼルは、バイオマス由来の油、脂肪、グリース又は熱分解油を水素処理することによって得られた炭化水素であり、例えば米国エネルギー省に提出されたUOPのレポート、OPPORTUNITIES FOR BIORENEWABLES IN OIL REFINERIES FINAL TECHNICAL REPORT(DOE助成金(Award)番号:DE−FG36−05GO15085)を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。生成物は、硫黄を含有せず、且つ90〜100のセタン数を有する高級なディーゼル燃料である)。本発明の生成物とブレンドする燃料は、1つ又は複数の他のフラニクス(furanics)も含んでいてもよく、フラニクスという表現は、フラン及びテトラヒドロフランの全ての誘導体を包含するように用いられる。本発明は、上記のような燃料要素と、本発明に従って生成される反応生成物とを含む燃料組成物も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
バイオマス資源は既知である。バイオマス中の対象となる成分は、ヘキソースと少なくとも5%のペントースとの混合物を放出することができる供給材料である(以下、混合ペントース及びヘキソース含有出発材料と称される)。有機化学ではヘキソースは、化学式がC12である、6つの炭素原子を有する単糖である。ヘキソースは官能基によって、1位にアルデヒドを有するアルドヘキソースと、任意の位置にケトンを有するケトヘキソースとに分類される。好適な6炭素単糖としては、これらに限定されないが、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、並びにこれらの酸化誘導体、還元誘導体、エーテル化誘導体、エステル化誘導体及びアミド化誘導体、例えばアルドン酸又はアルジトールが挙げられ、グルコースが最も豊富にあり、最も経済的であるためフルクトースよりも反応性が低いにもかかわらず最も好ましい単糖である。ペントースは、化学式がC10である、5つの炭素原子を有する単糖である。ペントースは、1位にアルデヒド官能基(アルドペントース)、又は2位にケトン官能基(ケトペントース)を有する。好適な5炭素単糖としては、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、並びにこれらの酸化誘導体、還元誘導体、エーテル化誘導体、エステル化誘導体及びアミド化誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
また一方で、本発明はスクロースを変換させることにも成功しており、またこれは非常に大量に利用可能である。用いられ得る他の二糖としては、マルトース、セロビオース及びラクトースが挙げられる。用いられ得る多糖としては、セルロース、イヌリン(ポリフルクタン)、デンプン(ポリグルカン)及びヘミセルロースが挙げられる。多糖及び二糖は、これらの単糖成分(複数可)に変換され、5−HMFエーテル生成中に脱水される。
【0016】
本発明の方法に用いられるアルコールは好ましくは単一のヒドロキシル基を保有し、これは第1級、第2級又はさらには第3級の位置にあってもよい。アルコールは、1個〜20個の炭素原子、好ましくは1個〜8個の炭素原子を含んでいてもよく、4個以上の炭素原子を有するアルコールは好ましくは分枝状炭素骨格を有する。
【0017】
本発明の方法に用いられる好ましいアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、イソアミルアルコール、イソオクチルアルコールが挙げられる。またアルコール、例えばイソブタノール及びtert−ブタノールのブレンドが用いられ得る。
【0018】
本発明のHMFエーテル製造中に用いられるアルコールの量は原料のヘキソース含量に対して少なくとも等モル量であるのが好ましいが、典型的には非常に過剰量で用いられる。実際、アルコール(例えばtert−ブタノール)が溶媒又は共溶媒として用いられ得る。このような場合、HMFエーテルを生成するのに十分な量のアルコールが存在する。
【0019】
本発明の方法における酸触媒は、(ハロゲン化)有機酸、無機酸、ルイス酸、イオン交換樹脂及びゼオライト、又はこれらの組合せ及び/又は混合物の中から選択することができる。酸触媒は、均一系触媒でもよいが、不均一系触媒(固体触媒を意味する)が精製上の理由から好ましい。HMFエーテルはプロトン酸、ブレンステッド酸若しくは代替的にはルイス酸を用いて、又は2つ以上のこれらの酸性官能基を有する触媒を用いて生成することができる。
【0020】
プロトン酸は有機であっても又は無機であってもよい。例えば有機酸は、シュウ酸、レブリン酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸(トリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid))、メタンスルホン酸又はパラ−トルエンスルホン酸の中から選択することができる。代替的に無機酸は、任意選択的にin situで生成される、(ポリ)リン酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、ヨウ化水素酸の中から選択することができる。
【0021】
或る特定の塩を触媒として用いてもよく、この塩は、(NHSO/SO、リン酸アンモニウム、塩化ピリジニウム、リン酸トリエチルアミン、ピリジニウム塩、リン酸ピリジニウム、塩酸/臭化水素酸/過臭素酸ピリジニウム、DMAP、アルミニウム塩、Thイオン及びZrイオン、リン酸ジルコニウム、酢酸塩又はトリフルオロ酢酸(トリフルオロメタンスルホン酸)塩としてのSm及びY等のScイオン及びランタニドイオン、Crイオン、Alイオン、Tiイオン、Caイオン、Inイオン、ZrOCl、VO(SO、TiO、V−ポルフィリン、Zr−ポルフィリン、Cr−ポルフィリン、Ti−ポルフィリンのいずれか1つ又は複数であり得る。
【0022】
脱水触媒として選択されるルイス酸は、ZnCl、AlCl、BFのいずれか1つであり得る。
【0023】
イオン交換樹脂は好適な脱水触媒であり得る。例としては、Amberlite(商標)及びAmberlyst(商標)、Diaion(商標)及びLevatit(商標)が挙げられる。用いられ得る他の固体触媒としては、天然クレイ鉱物、ゼオライト、鉱酸を含浸したシリカ等の担持酸、熱処理炭、金属酸化物、金属硫化物、金属塩及び混合酸化物、並びにこれらの混合物が挙げられる。以下で規定されるように、高い反応温度が用いられる場合、触媒はこれらの温度で安定であるべきである。
【0024】
本発明の方法で用いられ得る触媒の概要は、非特許文献2によって作成された総説の表1に見出され得る。触媒の量は、触媒又は触媒混合物の選択に応じて変わり得る。例えば触媒は、供給材料のヘキソース含量に応じて0.01mol%〜40mol%、好ましくは0.1mol%〜30mol%、より好ましくは1mol%〜20mol%と様々な量で反応混合物に添加することができる。
【0025】
好ましい実施形態において、触媒は不均一系触媒である。
【0026】
反応を行う温度は様々であり得るが、概して反応は、50℃〜300℃、好ましくは125℃〜250℃、より好ましくは150℃〜225℃の温度で実施するのが好ましい。概して、300℃を超える温度は、反応の選択性を低減し、また多くの副生成物が生じ、特に糖のカラメル化が起こるのであまり好ましくない。また最低温度未満で反応を行うことも、反応速度が低くなるのであまり好ましくない。水の煮沸温度を超えて反応を実施する場合、反応を、例えば10バール(窒素)以上の圧力下で実施するのが好ましい。
【0027】
混合ペントース/ヘキソース出発材料は典型的に、反応を容易にするために、アルコール反応物でもあり得る溶媒中に溶解又は懸濁される。溶媒系は、水、スルホキシド、好ましくはDMSO、ケトン、好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びアセトン、エチレングリコールエーテル、好ましくはジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)又は反応性アルコールから成る群から選択される1つ又は複数のものであり得る。またいわゆるイオン性液体を用いてもよい。後者は、融点が低い不活性イオン性化合物の一群を指し、このため溶媒として用いることができる。これらの例としては例えば、非特許文献3で考慮された1−H−3−メチルイミダゾリウム塩化物が挙げられる。
【0028】
溶媒の量は、出発材料を溶解又は懸濁するのに十分であり、且つ不要な副反応を防止するのに十分な量で存在するのが好ましい。
【0029】
本発明の方法は、反応温度を制御する生成物流(の一部)を再利用(熱交換器を介し再利用)して又は再利用せずに、バッチプロセス又は連続プロセスで実施してもよい。例えば、本発明の方法を連続フロープロセスで行うことができる。かかる方法では、均一系触媒を用いてもよく、連続フロープロセスでの反応物の滞留時間は、0.1秒〜10時間、好ましくは1秒〜1時間、より好ましくは5秒〜20分である。
【0030】
代替的に連続フロープロセスは、固定床連続フロープロセス、又は不均一系酸触媒による反応性(触媒性)蒸留プロセスであり得る。不均一系酸触媒を開始若しくは再生するために、又は性能を改善するために、無機酸又は有機酸を固定床連続フロープロセス又は反応性蒸留連続フロープロセスの供給材料に添加してもよい。固定床プロセスでは、液空間速度(LHSV)は1/分〜1000/分、好ましくは5/分〜500/分、より好ましくは10/分〜250/分、及び最も好ましくは25/分〜100/分であり得る。
【0031】
上記のプロセスにより、安定なHMFエーテルとフルフラールとの混合物が得られ、それから混合物を燃料及び/又は燃料添加剤として用いる前に、さらなる誘導体に変換することができる。
【0032】
本発明はさらに、得られた生成物を燃料又は燃料成分として用いるために、5−(アルコキシメチル)フルフラールとフルフラールとの両方のアルデヒド官能基をアルコキシメチル官能基に変換するための、水素化/エーテル化プロセスにおける5−(アルコキシメチル)フルフラールとフルフラールとの混合物の使用に関する。本発明はさらに、燃料及び/又は燃料成分として用いるために、好ましくは5−(アルコキシメチル)フルフラールとフルフラールとの両方のアルデヒド官能基をCH官能基に変換するための、水素化プロセスにおける5−(アルコキシメチル)フルフラールとフルフラールとの混合物の使用に関する。特にディーゼル、バイオディーゼル、又は「グリーンディーゼル」におけるエーテルの使用が対象となるが、これはエタノールよりもそれらの中での可溶性が(非常に)大きいことを前提とする。ディーゼル燃料に関する従来の添加剤及びブレンド剤は、上述の燃料成分に加えて、本発明の燃料組成物中に存在してもよい。例えば、本発明の燃料は、例えばセタン改良剤、摩擦調整剤、洗浄剤、抗酸化剤及び熱安定剤等の従来の添加剤を従来量含有していてもよい。本発明の特に好ましいディーゼル燃料製剤は、例えばジ−tert−ブチル過酸化物、硝酸アミル及び硝酸エチルヘキシル等の過酸化改良剤又は硝酸セタン改良剤と共に、上記されるように、ディーゼル燃料炭化水素とHMFエーテルとを含む。
【0033】
ディーゼル燃料への本発明のエーテルの添加により、同程度のNO数が生じ、CO排出のわずかな上昇が起こるが、十分量のセタン改良剤の添加を利用して、基となる参照燃料をはるかに下回ってNO及びCOの排出を低減させることができる。
【0034】
実施例は、本発明の方法、及び燃料として本発明の方法により調製される生成物の適合性を明らかにするために包含されている。実施例は、本発明の範囲を限定するように意図されない。
【0035】
以下の略語が用いられる:
F=フルフラール
HMF=5−(ヒドロキシメチル)フルフラール
MMF=5−(メトキシメチル)フルフラール
EMF=5−(エトキシメチル)フルフラール
nBuMF=5−n−(ブトキシメチル)フルフラール
FME=フルフリルメチルエーテル
FEE=フルフリルエチルエーテル
DMMF=ジ(メトキシメチル)フラン
DEMF=ジ(エトキシメチル)フラン
基質変換率及び選択率及び収率は以下の式に従って算出した:
変換率=100×[n(基質)−n(基質)]/n基質
選択率=100×n(生成物)/[n(基質)−n(基質)]
収率=100×n(生成物)/n基質
(式中、n − 最初のモル数
− 時間「t」での化合物のモル数)。
【実施例】
【0036】
実施例1
典型的な実験において、キシロース32.5mg、グルコース又はフルクトース32.5mg及びエタノール0.8mlを、内側をテフロン(登録商標)でコーティングした反応器に添加した。混合物を、固体酸触媒の存在下(6.5mg)、窒素下(12.5バール)、150℃で、1時間反応させた。UVスペクトルで観察された3つの主ピークは、フルフラール(F)、5−(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)及び5−(エトキシメチル)フルフラール(EMF)と同定された。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例2
典型的な実験において、キシロース32.5mg、グルコース又はフルクトース32.5mg及びメタノール0.8mlを、内側をテフロンでコーティングした反応器に添加した。混合物を、固体酸触媒の存在下(6.5mg)、窒素下(12.5バール)、150℃で、1時間反応させた。UVスペクトルで観察された3つの主ピークは、フルフラール(F)、5−(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)及び5−(メトキシメチル)フルフラール(MMF)と同定された。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例3
典型的な実験において、キシロースと、グルコースと、フルクトースとの混合物(1:1:1、質量比)65mg及び固体酸触媒6.5mgを、内側をテフロンでコーティングした反応器内で混合した。アルコール混合物(1/2/1の体積比でメタノール、エタノール及びn−ブタノール)0.8mlを添加し、窒素を用いて12.5バールで加圧した。混合物を150℃で1時間反応させた。UVスペクトルで観察された主ピークは、F、HMF、EMF、MMF及びnBuMFと同定された。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例4
様々なフラニクス/ディーゼル混合物の相分離/結晶化温度(0℃)
合成フラン化合物及びこれらの混合物を、従来のディーゼル燃料と1:1の体積比でブレンドした。ブレンドの混和性を、Avantium Technologies(Amsterdam)によって開発された複合反応器システムCrystal 16(商標)において評価した。そのため、サンプルを、磁気撹拌棒を用いて、700rpmで連続撹拌しながら0.375℃/分の速度で冷却した。相分離及び/又は結晶化を濁度測定によって記録した。フルフラール(F)及びエトキシメチルフルフラール(EMF)は、1/1の比ではディーゼルと混和性ではなかった。DMMFは、40%未満の添加で室温で完全に混和性である。ジエーテル単独に比べて、C5関連モノエーテルの存在が、特にメタノールをエーテル化剤として用いる場合に混和性を改善させる。
【0043】
【表4】

【0044】
実施例5
ディーゼル、FEE及びDEMFによる排気エンジン試験
シトロエン・ベルランゴー(Citroen(登録商標)Berlingo(登録商標))の試験車のD9Bディーゼルエンジンにおいて、通常の市販のディーゼル燃料(実験1)と、それぞれ25vol.%のFEE(実験2)又は25vol%のDEMF(実験3)を添加した同じ市販のディーゼル燃料とを用いて比較試験を行った。FEE及びDEMFを液体として添加し、用いたブレンド比では全く混合問題又は凝集問題は起こらない。エンジンを、初めに従来のディーゼル燃料で定常的に作動させ、その後燃料供給をそれぞれ、25vol%のFEE−ディーゼルブレンドと25vol%のDEMF−ディーゼルブレンドとに切り替える。
【0045】
市販のディーゼル燃料、並びに25vol%のFEE及び25vol%のDEMFのブレンドによる定常作動の間、以下の測定を行った:総粒子状物質、体積、O、CO、CO、NO(NO+NO)及び総炭化水素。
【0046】
総粒子状物質をNEN−EN13284−1に従ってサンプリングした。
【0047】
粒径分布をVDI2066−5に従ってサンプリングした。
【0048】
体積をISO10780に従って測定した。
【0049】
ガスをISO10396に従ってサンプリングした。
【0050】
、CO及びCOをNEN−ISO12039に従って解析した。
【0051】
NO(NO+NO)をNEN−ISO10849に従って解析した。
【0052】
総炭化水素をNEN−EN13526に従って解析した。
【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
【表9】

【0058】
【表10】

【0059】
実施例6
ディーゼル、FME及びDMMFによる排出エンジン試験
実施例5と同様に、シトロエン・ベルランゴーの試験車のD9Bディーゼルエンジンにおいて、通常の市販のディーゼル燃料(実験4)と、それぞれ25vol.%のFME(実験5)又は12.5vol%のDMMF(実験6)を添加した同じ市販のディーゼル燃料とを用いて比較試験を行った。FME及びDMMFを液体として添加し、用いたブレンド比では全く混合問題又は凝集問題は起こらない。エンジンを、初めに従来のディーゼル燃料で定常的に作動させ、その後燃料供給をそれぞれ、25vol%のFME−ディーゼルブレンドと12.5vol%のDMMF−ディーゼルブレンドとに切り替える。
【0060】
測定結果を表11〜表15に列挙する。
【0061】
【表11】

【0062】
【表12】

【0063】
【表13】

【0064】
【表14】

【0065】
【表15】

【0066】
【表16】

【0067】
実施例7.ディーゼル燃料用途
燃料可溶性
燃料可溶性が、ディーゼル燃料用途に対する主な懸念事項である。全ての高極性オキシジェネートが現在市販されているディーゼル燃料で良好な可溶性を有するとは限らない。結果は、2,5−ジ(エトキシメチル)フラン及び2−(エトキシメチル)フラン(混合C6/C5出発材料から調製されるエーテル化生成物)と市販のディーゼルとの混合物、並びに5−(エトキシメチル)−2−メチルフラン及び2−メチルフラン(混合C6/C5出発材料から調製される水素化生成物)と市販のディーゼルとの混合物が全ての比で完全に混和性であることを示している。比較実験組では、エトキシメチルフルフラール(EMF)(C6出発材料から調製される)は市販のディーゼルとの5vol%ブレンドでは完全に混和性であるが、EMFとディーゼルとの25vol%ブレンド及び40vol%ブレンドで相分離が起こることが示された。EMF/フルフラールブレンドによる結果は、EMF単独のものよりも悪い。
【0068】
参考文献
・ DE 635783
・ DUMESIC, James A, et al. "Phase modifiers promote efficient production of Hydroxymethylfurfural from fructose" . Science. 30 June 2006, vol.312, no.5782, p.1933-1937.
・ WO 2006/063220
・ Chapter 15 of Advanced Organic Chemistry, by Jerry March, and in particular under reaction 5-4. (3rd ed., (Copyright) 1985 by John Wiley & Sons, pp. 684-685).
・ LEWKOWSKI, Jaroslaw. Synthesis, chemistry and applications of 5- hydroxymethylfurfural and its derivatives. Arkivoc. 2001 , p.17-54. '
・ MOREAU, Claude, et al. "Dehydration of fructose and sucrose into 5- hydroxymethylfurfural in the presence of 1-H-3-methyl imidazolium chloride acting both as solvent and catalyst", Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 253 (2006) p. 165-169.
・ EP 0641 854
・ UOP report OPPORTUNITIES FOR BIORENEWABLES IN OIL REFINERIES FINAL TECHNICAL REPORT, SUBMITTED TO: U.S. DEPARTMENT OF ENERGY (DOE Award Number: DE-FG36-05GO15085))
・ Adv. Synth. Catal. 2001 , 343, 220-225
・ EP 0 356 703
・ FR 2 669 634

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフラールと5−アルコキシメチルフルフラール誘導体との混合物を製造する方法であって、酸触媒の存在下でヘキソース及びペントース含有出発材料を、脂肪族C1〜C20アルコールと反応させることにより、フルフラールと5−(アルコキシメチル)フルフラールとの混合物を得て、その後の該フルフラールと5−アルコキシメチルフルフラールとの混合物の水素化及び/又はエーテル化により、5−(アルコキシメチル)フルフラールとフルフラールとの両方のアルデヒド官能基をアルコキシメチル官能基又はメチル官能基に変換させることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記アルコールが第1級、第2級又は第3級、好ましくは第1級又は第2級、より好ましくは第1級のモノアルコールであり、好ましくは、4個以上の炭素原子を有するモノアルコールが分枝状炭素骨格を有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記モノアルコールが、2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール(イソブタノール)、2−メチル−2−プロパノール(tert−ブタノール)、2−ペンタノール(s−アミルアルコール);2−メチル−1−ブタノール(p−アミルアルコール);2−メチル−2−ブタノール(t−アミルアルコール);3−メチル−1−ブタノール(イソアミルアルコール);2,2−ジメチル−1−プロパノール(ネオペンチルアルコール);2−ヘキサノール;及び2−エチル−1−ヘキサノール(イソオクチルアルコール)を含むC3〜C8アルコールから成る群の1つ又は複数、好ましくはイソブタノール、tert−ブタノール、イソアミルアルコール、イソオクチルアルコールから、好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、イソアミルアルコール、イソオクチルアルコール及びこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法において、前記酸触媒が、固体有機酸、無機酸、塩、ルイス酸から選択される均一系又は不均一系の酸、イオン交換樹脂、ゼオライト又はこれらの混合物及び/又は組合せから成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記酸触媒が固体ブレンステッド酸であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記酸触媒が固体ルイス酸であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法において、前記反応を、50℃〜300℃、好ましくは125℃〜250℃、より好ましくは150℃〜225℃の温度で行うことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法において、前記ヘキソースが、
デンプン、アミロース、ガラクトース、セルロース、ヘミセルロース、
スクロース、マルトース、セロビオース、ラクトース等のグルコース含有二糖、好ましくはグルコース含有二糖、より好ましくはスクロース、グルコース又はフルクトース並びにこれらの酸化誘導体、還元誘導体、エーテル化誘導体、エステル化誘導体及びアミド化誘導体から成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法において、前記ペントースが、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、並びにこれらの酸化誘導体、還元誘導体、エーテル化誘導体、エステル化誘導体及びアミド化誘導体から成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法において、溶媒の存在下で行い、前記溶媒(単数又は複数)が、水、スルホキシド、好ましくはDMSO、ケトン、好ましくはメチルエチルケトン、イオン性液体、メチルイソブチルケトン及び/又はアセトン、エステル、エーテル、好ましくはエチレングリコールエーテル、より好ましくはジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)又は請求項2又は3に記載の反応物としてのアルコール、並びにこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法において、連続フロープロセスで行うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記連続フロープロセスにおける滞留時間が、0.1秒〜10時間、好ましくは1秒〜1時間、より好ましくは5秒〜20分であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記連続フロープロセスが固定床連続フロープロセスであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記固定床が不均一系酸触媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記連続フロープロセスが反応蒸留プロセス又は触媒性蒸留プロセスであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、不均一系酸触媒に加えて、無機酸触媒又は有機酸触媒を、前記固定床連続フロープロセス又は触媒性蒸留連続フロープロセスの供給材料に加えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法において、液空間速度(「LHSV」)が1〜1000、好ましくは5〜500、より好ましくは10〜250、及び最も好ましくは25〜100であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法によって生成されるエーテルをエンジン用の燃料又は燃料添加剤として用いることを特徴とするエーテルの使用。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法によって生成されるエーテルを含む燃料又は燃料組成物であって、任意選択的にガソリン及びガソリン−エタノールブレンド、ケロシン、ディーゼル、バイオディーゼル、フィッシャー・トロプシュ液、ディーゼル−バイオディーゼルブレンド及びグリーンディーゼル、並びにディーゼル及び/又はバイオディーゼルとグリーンディーゼルとのブレンド、並びにフラン及びテトラヒドロフランの他の誘導体の1つ又は複数とブレンドして、エンジン用の燃料成分として用いられることを特徴とする燃料又は燃料組成物。

【公表番号】特表2010−538033(P2010−538033A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523345(P2010−523345)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007428
【国際公開番号】WO2009/030511
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(508273728)フラニックス テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ (7)
【Fターム(参考)】