説明

糖尿及び高血糖の予防治療用飲料食品

【課題】運動不足による肥満などの弊害を生じることのないよう、継続的かつ適度な運動を組み合わせることにより、糖尿及び高血糖を効果的に予防、治療することができる飲料食品を提供する。
【解決手段】常用タイプの飲料500ミリリットル当たりの大豆イソフラボンの含有量が10mg以上500mg以下である運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料。常用タイプの食品100g当たりの大豆イソフラボンの含有量が10mg以上500mg以下である運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継続的且つ適度な運動と組み合わせることにより、糖尿及び高血糖の予防治療効果が発揮される運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の厚生労働省の実態調査によれば、日本の糖尿病患者数の推計はおよそ800万人とも言われ、これは成人の6人に1人が糖尿病であることを意味している。糖尿病予備軍、即ち高血糖な人まで含めると、およそ1,600万人にも達し、高齢化や生活様式の欧米化により、糖尿病患者数は著しい増加の一途を辿っている。
【0003】
糖尿病、特に生活習慣病であるインスリン非依存性糖尿病は骨格筋のインスリン感受性が低下することにより、血液中に代謝されないブドウ糖が溜まった状態(高血糖)が続く病気である。糖尿病はそれ自体が直接重大な結果をもたらすものではないが、適切な治療を行わないと神経障害、網膜症、腎症などの合併症を引き起こし、取り返しのつかない事態に陥ることもある恐ろしい病気である。
【0004】
糖尿病は生活習慣病の一種であり、糖尿病の主な原因としては運動不足、肥満、摂取エネルギー過多、ストレスなどが挙げられる。従って、糖尿病の予防、治療においては、規則正しい生活リズムとバランスの摂れた食生活が重要である。
【0005】
そこで、食生活の面から糖尿病の予防、治療を行うことについて検討が進められており、大豆イソフラボンの摂取による血糖値改善の試みがなされている。糖尿病の治療における大豆イソフラボン摂取の効果として、脂肪前駆細胞(培養細胞)の分化促進効果が見出されたことが、農林水産省四国農業試験場の関谷氏より報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、それを応用した糖尿病治療用組成物に関する特許出願がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この効果は培養細胞以上のレベルでは確認がとれていない。また、本来的に、脂肪細胞の糖取り込みというものは骨格筋の糖取り込みに比べて少ないことから(骨格筋の糖取り込みが全体の約80%であるのに対して、脂肪細胞の糖取り込みは全体の約20%である)、この効果を利用した脂肪細胞の増加による血糖値の改善方法は、本質的な解決方法であるとは言い難い。
【0007】
これに対して本発明者は、大豆イソフラボンが生体より摘出されたラット骨格筋での糖取り込み速度昂進効果を有することに着目し、飲料、食品、及び糖尿病治療薬への応用について研究を重ねている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。これら特許文献2及び特許文献3は、「大豆イソフラボンのグルコース輸送担体の生合成増進による骨格筋の糖取り込み活性の増強」を利用したものである。従って、特許文献2及び特許文献3に開示された飲料食品によれば、食事に由来する高血糖、糖尿病に由来する高血糖及び慢性的な高血糖を「骨格筋への糖の取り込みを促進させる」という形で改善することができる。即ち、普通の生活を営みながら糖尿病を効果的に改善することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献2及び3に開示された飲料食品によれば、運動をしなくても糖尿病の予防、治療ができてしまう結果、糖尿病患者の運動意欲の減退を招き、ひいては運動不足による肥満などの弊害が生じ得る。糖尿及び高血糖が改善できたとしても、それと引き換えに運動不足による肥満をもたらすのであっては、新たな病気を引き起こす引き金ともなり得る。
【特許文献1】特開平10−87486号公報
【特許文献2】特開2003−211号公報
【特許文献3】特開2003−196号公報
【非特許文献1】「農業及び園芸第74巻第1号」、1999年、p.108−112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、運動不足による肥満などの弊害を生じることのないよう、継続的且つ適度な運動と組み合わせることにより、糖尿及び高血糖を効果的に予防、治療することができる飲料食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような目的を達成するために、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、大豆イソフラボン(ダイゼインなど)は、運動により惹起される情報伝達系に対して糖の取り込みを増加させる効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
より具体的には、本発明は以下のような飲料食品を提供する。
【0012】
(1) 常用タイプの飲料500ml当たりの大豆イソフラボンの含有量が10mg以上500mg以下であることを特徴とする運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料。
【0013】
(2) 前記飲料は、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム、ジン、リキュール、又はカクテルである(1)記載の運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料。
【0014】
(3) 前記飲料は、穀物茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、抹茶飲料、果汁飲料、又は野菜汁飲料である(1)又は(2)記載の運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料。
【0015】
(4) (1)から(3)いずれか記載の運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料が充填され且つ運動の前後に飲用することが好ましい旨の表示が付された容器入り飲料。
【0016】
(5) 常用タイプの食品100g当たりの大豆イソフラボンの含有量が10mg以上500mg以下であることを特徴とする運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用食品。
【0017】
(6) 前記食品は、プリン、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、チョコレート、ガム、キャンディ、スナック菓子、又は焼菓子である(5)記載の運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用食品。
【0018】
(7) 運動サポート型の糖尿及び高血糖予防・治療に有効な量の大豆イソフラボンを含有することを特徴とする運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療剤。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、所定量の大豆イソフラボンを含有した飲料食品を摂取したうえで継続的且つ適度な運動を行うことにより、骨格筋や脂肪細胞への糖取り込み過程が効果的に促進されて糖尿及び高血糖の予防、治療を行うことができる。特許文献2や特許文献3では、運動をしなくても糖尿及び高血糖の予防、治療ができてしまうため、運動不足による肥満などの弊害が生じてしまうおそれがあったが、本発明によればそのような弊害が生じることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[飲料]
本発明に係る「飲料」は、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム、ジン、リキュール類、又は、カクテル類等のアルコール飲料に限られず、穀物茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、抹茶飲料、果汁飲料、又は、野菜汁飲料等のノンアルコール飲料であってもよい。本来、大豆イソフラボンは水に対しては難溶であるが、本発明で使用する大豆イソフラボン量は少量であるため、上記のノンアルコール飲料であっても問題は無い。
【0021】
本発明に係る飲料は「常用タイプ」の飲料である。「常用タイプ」とは、毎日欠かさずに飲むタイプの飲料であることを意味し、本発明の場合には、一日一本必ず飲むものであることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る飲料は、運動の前後に飲用することが好ましい旨の表示が付された容器に充填されることが好ましい。このような表示が付された容器入り飲料によれば、本発明に係る飲料が有する運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療効果がより効果的に発揮される。
【0023】
[食品]
「食品」とは、人間が日常生活で摂取するもののうち、飲料(液体を主体とするもの)以外のものを広く包括する概念である。例えば、菓子類(ポテトチップスをはじめとするスナック菓子、ビスケット・クッキーなどの焼菓子、チョコレート、ガム、キャンディ等)、デザート類(プリン、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム等)、のような嗜好食品の他、麺類(そば、うどん、ラーメン、パスタ等)、シリアルフーズ(コーンフレーク、オートミール等)のような主食に準ずるもの、調味食品(レトルトスープ、レトルトカレー、レトルトシチュー等)、農産加工品(ジャム等)、乳油食品(スプレッド類、チーズ等)、健康食品(プロテイン、ファイバー等)、カロリー調整食品などが挙げられる。
【0024】
本発明に係る食品は「常用タイプ」の食品である。「常用タイプ」とは、毎日欠かさずに食べるタイプの食品であることを意味し、本発明の場合には、一日100g必ず食するものであることが好ましい。
【0025】
なお、本発明における「運動サポート型」とは、継続的且つ適度な運動の前後に飲料食品を摂取することによって、骨格筋や脂肪細胞への糖の取り込みが効果的に促進され、糖尿及び高血糖の予防・治療を行うことができるものであることを意味する。
【0026】
[大豆イソフラボン含有量]
本発明に係る運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料においては、大豆イソフラボンの含有量は常用タイプの飲料500ml当たり10mg以上500mg以下である。より好ましくは、30mg以上50mg以下である。本発明者の研究によれば、継続的且つ適度な運動をしながら糖尿及び高血糖の予防治療を効果的に行うためには、一日当たりに必要な大豆イソフラボン摂取量は10mg以上100mg以下であることが判明している。これは、本発明に係る常用タイプの飲料500ml中に含有されている大豆イソフラボン量に相当する。
【0027】
また、本発明に係る運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用食品においては、大豆イソフラボンの含有量は食品100g当たり10mg以上500mg以下である。より好ましくは、30mg以上50mg以下である。また、上述した通り、継続的且つ適度な運動をしながら糖尿及び高血糖の予防治療を効果的に行うためには、一日当たりに必要な大豆イソフラボン摂取量は10mg以上100mg以下である。これは、本発明に係る常用タイプの食品100g中に含有されている大豆イソフラボン量に相当する。
【0028】
[大豆イソフラボン]
大豆イソフラボンとしては、ダイゼイン、グリステイン、ゲニステイン、及びこれらの配糖体であるダイジン、グリスチン、ゲニスチンの単体又は混合物を挙げることができるが、これらに限定されず、大豆に含まれるイソフラボンであれば、配糖体であるか否かを問わず大豆イソフラボンに含まれる。
【0029】
[ダイゼイン]
本発明者による研究により、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインは、筋肉細胞による血中グルコースの取り込みに関与しているといわれる酵素AMPKを活性化させる機能を有していることが明らかとなっている。この酵素AMPKは適度な運動を行うことによっても活性化するものであるため、この研究結果は、身体運動を行った場合にその前後にダイゼインを摂取すれば運動による糖取り込み増加の効果をさらに増幅する効果があることを示唆していると言える。即ち、大豆イソフラボンの摂取と継続的且つ適度な運動との組み合わせにより、糖尿病の改善効果が増強されるものと考えられる。ダイゼインが糖取り込みの機序に直接影響を与えているのか、あるいは糖取り込みの機序に関係する新たな蛋白質の発現を通してのものなのかは不明であるが、このダイゼインの機能は本発明者らが最初に発見したものであり、本発明はこの発見に基づいて完成したものである。
【0030】
ノンアルコール飲料(例えば、穀物茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、抹茶飲料、果汁飲料、及び、野菜汁飲料)、あるいはアルコール飲料(例えばビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム、ジン、リキュール類、及び、カクテル類)500ml中に10mg以上500mg以下の大豆イソフラボンを含有させたとしても、飲料本来の味や風味を損なうことはなく、味や風味を維持したまま飲料に糖尿及び高血糖の予防治療効果を付与することができる。なお、製造の際に用いる大豆イソフラボン製剤は、二次的な沈殿を抑制するために高純度のものが好ましい。
【0031】
また、大豆イソフラボンはアルコールに対する溶解性が良好であるため、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム、ジンなどの蒸留酒のように比較的アルコール濃度が高いアルコール飲料に対して大豆イソフラボン粉末を添加したとしても、飲料の外観(濁度など)を悪化させることがない。なお、大豆イソフラボンは水に対して難溶ではあるが、本発明に係る飲料で用いる大豆イソフラボン量は比較的少量であるため、ビール、ワイン、清酒、などの醸造酒や発泡酒のように比較的アルコール濃度が低いアルコール飲料、あるいは水をベースとするノンアルコール飲料に添加した場合であっても問題は無い。
【0032】
食品(例えば、アイスクリーム、チョコレート、ガム、キャンディ、スナック菓子及び焼菓子)100g中に10mg以上500mg以下の大豆イソフラボン粉末を含有させたとしても、食品本来の味や風味を損なうことはなく、味や風味を維持したまま食品に糖尿及び高血糖の予防治療効果を付与することができる。
【0033】
[運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料の製造]
例として、運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用茶飲料の製造方法を以下に述べる。先ず、高純度大豆イソフラボン製剤に対して、10w/w%の炭酸ナトリウム又はアスコルビン酸ナトリウム等のアルカリを添加した後、茶葉を加える。次いで、温度60℃以上の温水を茶葉に対して50倍量以上添加して抽出を行うことにより、運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用茶飲料が製造される。
【0034】
[運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用食品の製造]
本発明に係る運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用食品は、従来公知の製造方法において、高純度大豆イソフラボン製剤を所定量添加することにより製造される。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて大豆イソフラボンの糖尿及び高血糖の予防治療効果について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
骨格筋の糖取り込みを増加させる筋収縮の生化学的機序に関係していると考えられている5’-AMP-activated protein kinase(AMPK)の活性化物質である5-aminoimidazole-4-carboxamide ribonucleoside(AICAR)で18時間インキュベーションすると同時に、ダイゼインを添加した場合の糖取り込み増加への影響を明らかにする実験を行った。
【0037】
具体的には、前日の夕方から固形の餌を1匹当たり5gに制限したSD系ラットの前肢骨格筋epitrochlearisを、午前10時頃からペントバルビタール麻酔下で切り出した。この筋を18時間、フラスコ内でインキュベートした。インキュベーション液の内容は、AICAR(0.5mM)(比較例1)と、AICAR(0.5mM)に10μMのダイゼインを加えたもの(実施例1)とを、細胞培養用のMEMα(GIBCO BRL)の中に10% new born calf serum、 heat inactivated(非働化新生子牛血清)(GIBCO BRL)、100μU/ml penicillin(ペニシリン)(GIBCO BRL)、100μg/ml streptomycin(ストレプトマイシン)(GIBCO BRL)、0.25μg/ml fungizone(アンホテリシン B)(Cosmobio)を加えた。インキュベーション・メディウムは6時間毎に交換した。インキュベーション・メディウムは95%O、5%COガスを常時通気した。この後に糖取り込み速度を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
なお、糖取り込み速度の測定は、非代謝性グルコースである2-Deoxyglucose(2−DG)を用いて行った。前肢骨格筋であるepitrochlearisを1mM 2-[1,2-3H] DG(1.5mCi/mmol)、39mM[U-14C] mannitol(8μCi/mmol)を含むKrebs-Henseleit buffer(KHB)中において、29℃で20分間インキュベーションした。溶液は95%O、5%COのガスで通気した。インキュベーション終了後、同一のKHBを浸み込ませたろ紙でEpiに付着した水滴を除去し、さらに腱を含む筋の両末端を切り落とした後、液体窒素で冷却したクランプで挟んで凍結させ保存した。
【0039】
筋重量の測定後、1mlの0.3M過塩素酸でホモジナイズし、1000gで15分間遠心後の上清0.2mlを2mlのシンチレータ(Aquasol-2,NEN)と混合し、Hと14Cの両方を同時に測定できるシンチレーションカウンタ(LSC−3500、アロカ社製)で放射能を測定した。液体シンチレータの測定により得られた放射能(dpm)を用いて糖の取り込み速度を計算した。先ず、その基本は糖の促進拡散は水を通して行われていることから、糖の取り込み量を細胞筋漿水分量あたりで算出した。筋漿水分量は筋全体の水分量から細胞外水分量を引いて求めた。細胞外水分量は、サンプル中のマニトール(細胞外液にのみ存在する)の放射能から比例計算で求めた。細胞内のグルコースアナログの量はサンプルの放射能から同様に比例計算で得た。これらの結果から、μmol 2−DG/ml intracellular water/20minとして求めた。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示される通り、AICARにより糖取り込みが刺激された前肢骨格筋に対して、ダイゼインはさらに、約10%糖取り込み速度を増加させる効果を有していることが確認された。酵素AMPKは適度な運動を行うことにより活性化するものであることから、身体運動の前後にダイゼインを摂取することで、より効果的に糖尿及び高血糖の予防治療が可能であることが確認された。
【0042】
<実施例2>
4週齢のSD系雄性ラット(体重75〜95g)48匹を、非運動・高脂肪食群(SH)、非運動・高脂肪大豆イソフラボン食群(SHI)、浸水・高脂肪食群(IH)、浸水・高脂肪大豆イソフラボン食群(IHI)、水泳トレーニング・高脂肪食(TH)、水泳トレーニング・高脂肪大豆イソフラボン食群(THI)の計6群に各8匹ずつに分け、4週間飼育した。高脂肪食のエネルギー比率は、ラード油32%、コーン油18%、スクロース27%、カゼイン23%とした。餌にはビタミンミックス(AIN mix 76A)22g/kg、ミネラルミックス(AIN mix 76)51g/kg、及び、メチオニン4.4g/kgを添加した。大豆イソフラボン食には、この高脂肪食に純度80%の大豆イソフラボン粉末を0.5重量%(6.25g/kg)添加した。なお、ノーマル食における実験から、大豆イソフラボン食の摂取量が低下することが予想されたため、本実験では、大豆イソフラボン食群の飼育を1日早く行い、餌の摂取量を予め確認したうえで、それと同量を非イソフラボン食群に摂取させた(pair-feeding)。
【0043】
先ず、実験開始時及び終了時におけるラットの体重を測定し、実験前後におけるラットの体重の変化を調査した。ラットの体重の変化を表2及び図1に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2及び図1に示される通り、実験開始時のラットの体重は、6群間で有意差はなかった。これに対して、実験終了後のラットの体重は、特にSHI群がSH群より有意に少ないことが確認された。また、THI群もSH群に対して有意に低いことが確認された。
【0046】
ラットの摂餌量の変化も併せて調査した。摂餌量の変化を図2に示す。図2に示されるように、1匹当たりの摂餌量は、非運動の群、浸水の群、水泳トレーニングの群間で有意差は認められなかった。また、大豆イソフラボン摂取群ではpair-feedingを行ったため、非大豆イソフラボン摂取群と有意差は認められなかった。
【0047】
単位重量(体重)当たりの摂餌量についても調べた。その結果を図3に示す。図3に示されるように、単位重量(体重)当たりの摂餌量は週齢が増すに従って低下したが、各群間で有意差は認められなかった。
【0048】
また、最後の水泳トレーニングが終了して19〜26時間経過した後に、ペントバルビタール麻酔下でラットの前肢筋の滑車上筋、及び、下肢筋を摘出した。次いで、摘出したこれらの筋を液体窒素で凍結した。
【0049】
滑車上筋のグリコーゲン濃度を調査した。その結果を図4に示す。図4に示されるように、滑車上筋のグリコーゲン濃度については、非大豆イソフラボン摂取群に比して大豆イソフラボン摂取群の方が高い傾向が認められた。
【0050】
グリコーゲン濃度は次のようにして求めた。グルコースはヘキソキナーゼによってグルコース−6−リン酸とADPを生成し、生成されたグルコース−6−リン酸とNADPはグルコン酸−6−リン酸とNADPHと水素イオンを生成する。そこで生成されたNADPHの励起を波長360nmで行い、450nmの蛍光の増加量で定量した。先ず、摘出した筋組織を0.3M過塩素酸でホモジナイズし、ホモジナイズ液50μlに1mlの塩酸を加え、100℃で2時間加熱した。加熱後、1Mの水酸化ナトリウムを1ml加え、中和した。次に、F−キット グルコース(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用いて、キット試薬I1ml、サンプル2mlをセル中で合わせ、蛍光光度計(島津製作所、京都)でブランクの値を測定した。測定後、キット試薬IIを20μl加え、10分の反応後に蛍光を測定することにより、グリコーゲン濃度を求めた。
【0051】
また、筋を摘出する際に、併せて副睾丸脂肪及び腹膜後方脂肪も摘出し、その重量を測定した。その結果を図5及び図6に示す。副睾丸脂肪量については、図5に示されるように、非運動群、浸水群、水泳トレーニング群いずれにおいても、大豆イソフラボン摂取群の方が少ない傾向が認められた。特に、水泳トレーニング群においては、大豆イソフラボン摂取の有無により、統計的に有意差が認められた。これにより、大豆イソフラボンの摂取は、水泳トレーニングによる副睾丸脂肪量の低減効果を増幅する効果があることが観察された。即ち、大豆イソフラボン摂取と適度な運動との組み合わせにより、単に運動するだけよりも脂肪燃焼効果が増強されることが確認された。
【0052】
腹膜後方脂肪重量については、図6に示されるように、非運動群及び水泳トレーニング群において、大豆イソフラボンの摂取により有意な低減が観察された。一方、浸水群では有意差は見られなかった。非運動群、非大豆イソフラボン摂取群の腹膜後方脂肪重量は、他の大豆イソフラボン摂取3群よりも有意に高かった。
【0053】
以上の結果について考察する。上述したように、滑車上筋のグリコーゲン濃度は、浸水、水泳トレーニングによる影響を受けてはいなかったが、トレーニングにより動員された骨格筋では、グリコーゲン濃度が増加することが知られている。これは、骨格筋の糖代謝能を律速しているGLUT−4濃度の増加を介していると考えられる。今回、水泳トレーニングにより滑車上筋のグリコーゲン濃度が増加しなかったのは、このようなトレーニングは、骨格筋のGLUT−4濃度を増加させる刺激とはならなかったためと考えられる。さらには、今回は高脂肪食をラットに摂取させたため、水泳トレーニングの効果がブロックされた可能性も考えられる。
【0054】
また、非運動群、浸水群、水泳トレーニング群いずれにおいても、大豆イソフラボン摂取群の方が、高脂肪食群よりもグリコーゲン濃度が高い傾向が見られた。これにより、大豆イソフラボンの摂取により、骨格筋の糖代謝が改善されることが確認された。
【0055】
一方、脂質代謝という観点からは、副睾丸脂肪及び腹膜後方脂肪の2カ所の脂肪重量が、大豆イソフラボン摂取及び水泳トレーニングにより低下することが示された。特に、腹膜後方脂肪重量は、水泳トレーニングのみ群よりも水泳トレーニング+大豆イソフラボン摂取群のほうが低い値であった。これは、腹腔脂肪の低下という観点から言えば、高脂肪食摂取条件下であっても、水泳トレーニングと大豆イソフラボン摂取は相加効果があることを示していると言える。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ラットの体重の変化を示す図である。
【図2】ラットの摂餌量の変化を示す図である。
【図3】ラットの単位重量(体重)当たりの摂餌量を示す図である。
【図4】ラットの滑車上筋のグリコーゲン濃度を示す図である。
【図5】ラットの副睾丸脂肪重量を示す図である。
【図6】ラットの腹膜後方脂肪重量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常用タイプの飲料500ml当たりの大豆イソフラボンの含有量が10mg以上500mg以下であることを特徴とする運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料。
【請求項2】
前記飲料は、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム、ジン、リキュール、又はカクテルである請求項1記載の運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料。
【請求項3】
前記飲料は、穀物茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、抹茶飲料、果汁飲料、又は野菜汁飲料である請求項1又は2記載の運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料。
【請求項4】
請求項1から3いずれか記載の運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用飲料が充填され且つ運動の前後に飲用することが好ましい旨の表示が付された容器入り飲料。
【請求項5】
常用タイプの食品100g当たりの大豆イソフラボンの含有量が10mg以上500mg以下であることを特徴とする運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用食品。
【請求項6】
前記食品は、プリン、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、チョコレート、ガム、キャンディ、スナック菓子、又は焼菓子である請求項5記載の運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療用食品。
【請求項7】
運動サポート型の糖尿及び高血糖予防・治療に有効な量の大豆イソフラボンを含有することを特徴とする運動サポート型の糖尿及び高血糖予防治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−37836(P2008−37836A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217454(P2006−217454)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(596126465)アサヒ飲料株式会社 (84)
【出願人】(501379384)独立行政法人国立健康・栄養研究所 (4)
【Fターム(参考)】