糖尿病の処置方法
【課題】糖尿病の対象を処置する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、糖尿病の対象を処置する方法を提供し、該方法は、対象にグルコシルセラミド合成酵素阻害剤を対象に投与することを含む。
【解決手段】本発明は、糖尿病の対象を処置する方法を提供し、該方法は、対象にグルコシルセラミド合成酵素阻害剤を対象に投与することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年11月10日に出願された米国仮出願第60/626,448号(全体の引用により本明細書に取り込まれる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的には糖尿病の分野に関するものである。特定の実施態様において、本発明は、糖尿病に罹患している対象を処置する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
糖尿病(以下、「糖尿病」)は、ますます大きくなる世界的な健康問題である。1億3千5百万人より多くの人々が、該疾患に罹患していると推定される。非インスリン依存性糖尿病(NIDD)または成人発症型糖尿病としても知られる2型糖尿病は、これらの患者の約90〜95%のパーセンテージを占める。この数は、年々4〜5%増大すると予測される。糖尿病に付随する重篤な健康問題は、失明、腎疾患、ニューロパシー、切断、心血管疾患、脳卒中、および死亡率の増大したリスクを含む。米国単独における糖尿病の処置費用は、1年当たり約1320億ドルであると推定される。資金が限られていることから、臨床医達は、糖尿病患者に総合的な医療を提供しようと挑戦している(Florence et al., American Family Physician 59(10):2835 (1999))。従って、糖尿病をより効果的に処置することが大変必要である。
【0004】
2型糖尿病は肥満と結びつけられ、インスリン抵抗性、またはそのヒト自身のインスリンに正確に応答する能力がないことにより特徴付けられる。非糖尿病対象において、インスリンは、細胞の血液からのグルコースの取り込みを促進し、それにより、血液の糖レベルを低下させ、同時に、グリコーゲン、脂肪酸、およびタンパク質の細胞合成のような同化作用を促進する(Stryer, 1981, Biochemistry, W. H. Freeman and Company, San Francisco)。
【0005】
インスリンの代謝作用に対する抵抗性は、2型糖尿病の顕著な特徴である。インスリン抵抗性は、脂肪細胞および骨格筋のようなインスリン感受性標的器官におけるグルコースの取り込みおよび利用の障害、ならびに肝グルコース放出の阻害の障害により特徴付けられる。機能性インスリン欠乏、およびインスリンが肝グルコース放出を抑制できないことは、高血糖の加速をもたらす。初め、膵β細胞は、増大したレベルのインスリンを分泌することによりインスリン抵抗性を補う。しかしながら、β細胞は、インスリンの高放出を維持することができず、最終的には、グルコース誘導性インスリン分泌は降下し、これにより、グルコースホメオスタシスの悪化、続いて明らかな糖尿病の発症を導く。
【0006】
2型糖尿病の正確な原因は依然として未知であるが、インビトロの結果により、インスリン誘導性シグナル伝達カスケードの遮断が、ガングリオシドGM3レベルの上昇と関連し得ることが示唆されている。インスリン抵抗性に関与するサイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF−α)は、GMS発現の増大をもたらすことも示唆されている(Tagami et al., J. Biol. Chem. 277(5):3085 (2002))。興味深いことに、GM3合成酵素を欠損し、従ってGM3を欠く変異マウスは、高脂肪食餌により引き起こされるインスリン抵抗性から守られている(Yamashita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:3445-3449 (2003))。
【0007】
GM3のようなガングリオシドは、セラミドおよび少なくとも1種類の酸性糖を含むスフィンゴリピドである。一般に、ガングリオシドは、細胞膜の外葉において見られる(Nojri et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:782 (1986))。それらは、細胞シグナル伝達に関与し、受容体活性のモジュレーターとして作用する(Yamashita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(6):3445 (2003))。
【0008】
GM3は、ガラクトースに結合しているグルコース(順に、ガラクトースは酸性糖N−アセチルノイラミネートに結合している)からなる三糖類に結合しているセラミド分子からなる。GM3は、細胞において、活性化糖分子のセラミド分子への酵素的段階的付加により合成される。GM3の生合成の第1段階は、グルコースをセラミドに付加し、グルコシルセラミドを形成させることである。この段階は、酵素であるグルコシルセラミド合成酵素により触媒される。第2段階において、ガラクトース部分が付加され、ラクトシルセラミドが形成され、続いて、シアル酸をラクトシルセラミドの末端ガラクトース残基に付加され、GM3が形成される。
【0009】
例えば、グルコシルセラミド合成酵素の阻害によるGM3レベルの調節が、ゴーシェ病の処置方法として提案されてきた(例えば、米国特許第6,569,889号参照)。ゴーシェ病のようなリソソーム蓄積症の処置のための2タイプのグルコシルセラミド合成酵素阻害剤が記載されてきた。両方が、酵素活性部位に結合し、基質の結合を妨げる、酵素基質アナログである。第1のタイプの阻害剤は、セラミドアナログである(例えば、米国特許第6,569,889号;第6,255,336号;第5,916,911号;第5,302,609号;Lee et al., J. Biol. Chem. 274(21):14662 (1999)を参照)。第2のタイプの阻害剤は、糖アナログである(例えば、米国特許第6,660,749号;第6,610,703号;第5,472,969号;第5,525,616号;Overkleef et al., J. Biol. Chem. 273(41):26522 (1998)を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,569,889号
【特許文献2】米国特許第6,569,889号
【特許文献3】米国特許第6,255,336号
【特許文献4】米国特許第5,916,911号
【特許文献5】米国特許第5,302,609号
【特許文献6】米国特許第6,660,749号
【特許文献7】米国特許第6,610,703号
【特許文献8】米国特許第5,472,969号
【特許文献9】米国特許第5,525,616号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Florence et al., American Family Physician 59(10):2835 (1999)
【非特許文献2】Stryer, 1981, Biochemistry, W. H. Freeman and Company, San Francisco
【非特許文献3】Tagami et al., J. Biol. Chem. 277(5):3085 (2002)
【非特許文献4】Yamashita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:3445-3449 (2003)
【非特許文献5】Nojri et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:782 (1986)
【非特許文献6】Yamashita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(6):3445 (2003)
【非特許文献7】Lee et al., J. Biol. Chem. 274(21):14662 (1999)
【非特許文献8】Overkleef et al., J. Biol. Chem. 273(41):26522 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、糖尿病の治療剤としてグリコスフィンゴリピド合成の阻害剤を用いて糖尿病を処置する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある種の実施態様において、本発明は、糖尿病、例えば、2型糖尿病を有する対象を処置する方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより糖尿病を処置する少なくとも1種類の治療上有効量の化合物を対象に投与することを含む。
【0014】
ある種の他の実施態様において、本発明は、糖尿病、例えば、2型糖尿病を有する対象を処置する方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより糖尿病を処置する少なくとも1種類の治療上有効量の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0015】
本発明の他の実施態様は、対象における血糖を低下させる方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより該対象における血糖レベルを低下させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象における血糖を低下させる方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象における血糖レベルを低下させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0016】
なお他の実施態様において、本発明は、対象における耐糖能を改善する方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより対象における耐糖能を改善する少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象における耐糖能を改善する方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象における耐糖能を改善する少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0017】
本発明の他の実施態様は、対象における血漿TNF−αレベルを低減させる方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3を阻害し、それにより対象におけるTNF−αレベルを低減させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象における血漿TNF−αレベルを低減させる方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象における血漿TNF−αレベルを低減させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0018】
本発明のなお他の実施態様は、対象における糖化ヘモグロビンレベルを低減させる方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより対象における糖化ヘモグロビンレベルを低減させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象における血漿糖化ヘモグロビンレベルを低減させる方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象における血漿糖化ヘモグロビンレベルを低減させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0019】
なお他の実施態様において、本発明は、対象におけるインスリン感受性を増大させる方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより化合物を服用していない対象と比較して、対象におけるインスリン感受性を増大させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象におけるインスリン感受性レベルを増大させる方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象におけるインスリン感受性を増大させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0020】
本発明のさらなる目的および利点は、一部は以下の説明において説明され、一部は記載から明らかであろうし、あるいは本発明の実施により確認されてもよい。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘されている要素および組合せにより、十分に理解され、達成されるだろう。
【0021】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示および説明であり、請求の範囲に記載される本発明を制限するものではないことは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤の濃度の増大に応答したGM3発現3T3−L1細胞のパーセンテージを示すグラフである。
【図2】図2は、分化した3T3−L1脂肪細胞の免疫蛍光発光を示す写真である。上方のパネルは、GM3について染色した細胞を示す。図2aは、GM3の発現について染色した未感作(未刺激)3T3−L1細胞を示す。図2bは、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤での処置後、GM3の発現について染色した未感作3T3−L1細胞を示す。図2cは、TNF−αで刺激後、GM3の発現について染色した3T3−L1を示す。図2dは、TNF−αで刺激し、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤で処置した後、GM3の発現について染色した3T3−L1細胞を示す。下方のパネルは、それぞれの上方のパネルの対応部分と同じフィールドであり、細胞数についての対照として4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を用いて染色している。
【図3】図3は、グルコシルセラミド合成酵素阻害で処置した、あるいは代わりに水を与えたZucker糖尿病肥満(ZDF)ラットの肝臓におけるグルコシルセラミドレベルを比較するグラフである。水を与えたやせ形ラットの肝臓におけるグルコシルセラミドレベルを対照として示す。
【図4】図4aは、3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットについての経時平均体重を示すグラフである。図4bは、図4aについて上述した3群のラットにおける経時食物摂取を示すグラフである。結果を、薬物の代わりに水を与えたZDFラットにおける食物摂取に対するパーセンテージとして表す。
【図5】図5aは、3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットにおける体重のパーセンテージとして、肝臓の重量を示すグラフである。図5bは、図5aにおいて記載したのと同じ3群のラットにおける体重のパーセンテージとして、腎臓の重量を示すグラフである。
【図6】図6aは、3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットについての経時的血糖レベルを示すグラフである。図6bは、図6aにおいて記載したのと同じ3群のラットについての経時インスリンレベルを示すグラフである。
【図7】図7は、耐糖能試験の結果を示すグラフである。各パネルは、療法開始時と比較した、グルコース負荷後の異なる時間ポイントでの血糖レベルを比較するものである。3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットを研究した。図7aは、任意の薬物療法開始前のラットにおける結果を示す。図7b、7c、および7dは、それぞれ、薬物療法の2、4、および6週間後の結果を示す。
【図8】図8は、3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットにおける糖化ヘモグロビンレベルを示すグラフである。
【図9】図9は、インスリン受容体抗体で免疫沈降したラット筋肉細胞ホモジネートのウエスタンブロットである。最上部のパネルは、ヒトインスリンあり、またはなし、かつグルコシルセラミド合成酵素阻害剤あり、またはなしで注射したZDFラットにおけるインスリン受容体のリン酸化を示す。ヒトインスリンの注射あり、またはなしの正常やせ形ラット由来のインスリン受容体も示す。下方のパネルは、各試料に存在するインスリン受容体のレベルを示す。
【図10】図10は、食餌誘発肥満マウス(DIO)およびやせ形正常対照の2群の身体的パラメーターを示すグラフである。図10aは、平均体重を示す。図10bは、平均血糖レベルを示す。図10cは、平均インスリン血液レベルを示す。
【図11】図11aは、3群のマウス:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける経時体重を示すグラフである。図11bは、図11aにおいて記載したのと同じ3群のマウスにおける経時食物摂取を示すグラフである。
【図12】図12は、3群のマウス:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水で処置したDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける血漿TNF−αレベルを示すグラフである。
【図13】図13は、3群のマウス;グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける血糖レベルを示すグラフである。
【図14】図14は、3群のマウス;グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける経時インスリンレベルを示すグラフである。
【図15】図15は、耐糖能試験の結果を示すグラフである。各パネルは、療法開始時と比べて、グルコース負荷後の異なる時間ポイントでの血糖レベルを比較するものである。3群のマウス:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスを研究した。図15a、15b、および15cは、それぞれ、薬物療法の4.5、7.5、および9.5週後の結果を示す。
【図16】図16は、3群のマウス:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける糖化ヘモグロビンのレベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施態様の説明
本発明は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤のような、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成の阻害剤を用いて、糖尿病、例えば、2型糖尿病が処置され得るという発見に一部基づくものである。
【0024】
A.グリコスフィンゴリピド合成阻害剤
グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害する化合物は、糖尿病、例えば、2型糖尿病を処置するための治療剤として意図される。特定の実施態様において、該化合物は、酵素であるグルコシルセラミド合成酵素を阻害する。一例として、該化合物は、グルコシルセラミド合成酵素の基質または基質の一部のアナログ、例えば、セラミドアナログであってもよい。適当なセラミドアナログは、米国特許第6,569,889号;第6,255,366号;第6,051,598号;第5,916,911号;Inokuchi et al., J. Lipid Res. 28:565 (1987);Shayman et al., J. Biol. Chem. 266:22968 (1991);およびBell et al. Ed., 1993, Advances in Lipid Research: Sphingolipids in Signaling (Academic Press, San Diego)に記載されているものを含む。
【0025】
ある実施態様において、本発明は、以下で説明される式Ia:
【化1】
を含むグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤を提供する。
【0026】
ある種の実施態様において、R1は、芳香環、例えば、フェニル基である。フェニル基は、置換されていてもよく、あるいは置換されていなくてもよい。適当な置換基の例は、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオ基を含むが、これらに限定されない。置換基は、結合して、シクロアルキル、またはヘテロシクリル環、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、およびプロピレンジオキシを含むジオキサンを形成していてもよい。置換基がアルキル、またはアルケニル鎖である場合、鎖は、C2−C12炭素鎖、またはC2−C6炭素鎖のようなC2からC20炭素鎖であってもよい。アルキルまたはアルケニル鎖は、直鎖または分枝炭素鎖を含むものであってもよい。1つの実施態様において、アルケニル鎖は、式Iaの−C(H)(OH)−単位に結合している炭素原子上に2重結合を有していてもよい。脂肪族鎖は、式Iaの2つの不斉中心から離れて位置する1個または2個の炭素原子を有していてもよい。
【0027】
ある種の実施態様において、R2は、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖、例えば、C2からC20炭素鎖である。ある実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C6からC10炭素鎖である。ある実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C7からC18炭素鎖である。ある特定の実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C7鎖である。他の特定の実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C8鎖である。ある種の実施態様において、アルキル鎖は、必要に応じてヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0028】
ある種の実施態様において、R3は、アミン基、例えば、第三級アミンである。ある実施態様において、アミン基は、環状アミン、例えば、ピロリジン、アゼチジン、ピペリジンである。ある特定の実施態様において、アミン基はモルホリン基ではない。
【0029】
ある実施態様において、R3のアミン基の窒素原子は、式Iaの−CH2基に結合している。これらの実施態様において、R3は、以下の式II:
【化2】
に示される構造を有し得る。
【0030】
R18およびR19は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホニル、およびチオから選択され得る。
【0031】
別法として、R18およびR19は、Nと一緒になって、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオから独立して選択される少なくとも1個の置換基に結合したヘテロシクリル基を形成し得る。
【0032】
式Iaの化合物は、それらのラセミ化合物、ラセミ混合物、純エナンチオマー、ジアステレオマー、およびそれらの混合物の形態で存在してもよい。上述の化合物の4種類の立体配置異性体(例えば、D−トレオ、L−トレオ、D−エリトロ、L−エリトロ)は全て、本発明の範囲内であることが意図され、個々に、または組合せて用いられ得る。
【0033】
特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールである。別の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−オクタノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールである。
【0034】
本発明は、さらに、以下で説明される式Ib:
【化3】
を含むグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤を提供するものである。
【0035】
ある種の実施態様において、R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環である。芳香環または複素環は、置換されていてもよく、あるいは置換されていなくてもよい。適当な置換基の例は、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオ基を含むが、これに限定されない。置換基は、結合して、シクロアルキル、またはヘテロシクリル環、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、およびプロピレンジオキシを含むジオキサンを形成していてもよい。置換基が、アルキル、またはアルケニル鎖である場合、鎖は、C2−C12炭素鎖、またはC2−C6炭素鎖のようなC2からC20炭素鎖であってもよい。アルキル、またはアルケニル鎖は、直鎖または分枝炭素鎖を含むものであってもよい。1つの実施態様において、アルケニル鎖は、式Ibの−C(H)(OH)−単位に結合している炭素原子上に2重結合を有していてもよい。脂肪族鎖は、ヒドロキシル基、例えば、式Ibの2つの不斉中心から離れて位置する1個以上の炭素原子を有していてもよい。
【0036】
ある種の実施態様において、R1は、例えば、ヒドロキシ、メトキシ、クロロ、またはフルオロで置換されているフェニルのような置換フェニルである。例えば、R1は、3,4−メチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−プロピレンジオキシフェニル、2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2−ブロモフェニル、3−ブロモフェニル、4−ブロモフェニル、2−ヨードフェニル、3−ヨードフェニル、または4−ヨードフェニルであってもよい。
【0037】
ある種の実施態様において、R2は、必要に応じて置換されているアルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖、例えば、C2からC20炭素鎖である。ある実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C6からC10炭素鎖である。ある実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C7からC18炭素鎖である。特定の実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C7鎖である。他の特定の実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C8鎖である。ある種の実施態様において、アルキル鎖は、必要に応じてヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0038】
具体的な実施態様において、R2は、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオから独立して選択される少なくとも1個の置換基で置換されているアルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖である。R2が1−ヘプチル鎖である実施態様において、1−ヘプチル鎖は、必要に応じて例えば、1位および/または6位で置換されていてもよく、R2が1−オクチル鎖である実施態様において、1−オクチル鎖は、必要に応じて例えば、1位および/または7位で置換されていてもよい。例えば、R2は、1−(1−ヒドロキシヘプチル)(式III)、1−(6−ヒドロキシヘプチル)(式IV)、1−(1−ヒドロキシオクチル)(式V)、または1−(7−ヒドロキシオクチル)(式VI)であってもよい。
【化4】
【0039】
ある種の実施態様において、R3は、必要に応じて置換されているアミン基、例えば、第三級アミンである。ある実施態様において、アミン基は、環状アミン、例えば、ピロリジン、アゼチジン、ピペリジンである。他の実施態様において、R3は、例えば、ピペラジン、モルホリン、またはヘキサメチレンイミンのような環状アミンである。ある特定の実施態様において、アミン基は、モルホリン基ではない。例えば、R1が非置換フェニルであり、そしてR2がn−ノニルである実施態様において、R3はモルホリン基ではない。
【0040】
ある実施態様において、R3のアミン基の窒素原子は、式Ibの2−アミノ−1−プロパノール骨格の炭素3(−CH2−基)に結合している。これらの実施態様において、R3は、以下の式II:
【化5】
に示される構造を有し得る。
【0041】
R18およびR19は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホニル、およびチオから選択され得る。
【0042】
あるいは、R18およびR19は、Nと一緒になって、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオから独立して選択される少なくとも1個の置換基に結合しているヘテロシクリル基を形成し得る。
【0043】
式Ibの化合物は、それらのラセミ化合物、ラセミ混合物、純エナンチオマー、ジアステレオマー、およびそれらの混合物の形態で存在してもよい。任意の不斉中心のキラリティーは、RまたはSのいずれかであり得る。例えば、式Ibの2−アミノ−1−プロパノール骨格の位置1および2に関して、4種類の立体配置異性体(例えば、D−トレオ、L−トレオ、D−エリトロ、L−エリトロ)は全て、本発明の範囲内であると意図され、個々に、または組合せて用いられ得る。
【0044】
特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノール(式VII)である。
【化6】
【0045】
例えば、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1(R)−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2(R)−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールであってもよい。別の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−オクタノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノール(式VIII)である。
【化7】
【0046】
例えば、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1(R)−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2(R)−オクタノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールであってもよい。
【0047】
式Iaまたは式Ibの化合物は、プロドラッグとして投与されてもよい。式Iaまたは式Ibの化合物は、遊離塩基形態で、あるいは医薬的に許容される塩として提供されてもよい。医薬的に許容される塩は、以下により詳細に記載される。
【0048】
上述のグルコシルセラミド合成酵素阻害剤の製造方法は、例えば、米国特許第6,569,889号;第6,255,336号;第5,916,911号;第5,302,609号;Lee et al., J. Biol. Chem. 274(21) (1999):14662;Abe et al., J. Biochem. 111:191 (1992);Inokuchi et al., J. Lipid Res. 28:565 (1987)に記載されている。
【0049】
本明細書で用いられる用語「アルカノイル」は、アルキル基に結合しているカルボニル基を意味する。
【0050】
本明細書で用いられる用語「アルカノイルオキシ」は、酸素に結合しているアルカノイル基、例えば、−C(O)−アルキル−O−を意味する。
【0051】
本明細書で用いられる用語「アルケニル」は、2〜12、2〜10、または2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝鎖基のような、少なくとも1個の炭素−炭素間二重結合を有する2〜20個の炭素原子の不飽和直鎖または分枝鎖を意味する。
【0052】
本明細書で用いられる用語「アルコキシ」は、酸素に結合しているアルキル基を意味する。「アルコキシ」基は、必要に応じて、アルケニル(「アルケノキシ」)またはアルキニル(「アルキノキシ」)基を含有することができる。
【0053】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、1〜12、1〜10、または1〜8個の炭素原子の直鎖または分枝鎖基のような、1〜20個の炭素原子の飽和直鎖または分枝鎖を意味する。
【0054】
「飽和および不飽和炭化水素」としてまとめて言及される「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」基は、アルデヒド、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホネート、スルホニル、チオ、O、S、およびNから選択される少なくとも1個の基で必要に応じて置換されるか、あるいは割り込まれ得る。
【0055】
本明細書で用いられる用語「アルキニル」は、2〜12、2〜10、または2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝鎖基のような、少なくとも1個の炭素−炭素間三重結合を有する2〜20個の炭素原子の不飽和直鎖または分枝鎖基を意味する。
【0056】
本明細書で用いられる用語「アミド」は、形態−R5C(O)N(R6)−、−R5C(O)N(R6)R7−、または−C(O)NR6R7(R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルカノイル、アルケニル、アルコキシ、アルキニル、アリール、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、チオ、およびスルホニルから選択され、そしてR5は、水素、アルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ハロゲン、ヒドロキシ、ケトン、およびチオから選択される)のラジカルを意味する。アミドは、炭素、窒素、R5、R6、またはR7を通じて別の基に結合していてもよい。アミドは環状であってもよく、例えば、R6およびR7、R5およびR6、またはR5およびR7は、結合して、3から10員環のような3から12員環を形成していてもよい。用語「アミド」は、アルカノイルアミノアルキル、アミドアルキル(アルキルを通じて親分子の基に結合している)、アルキルアミド(アミドを通じて親分子の基に結合している)、アリールアミド、アミドアリール、スルホンアミドなどのような基を包含する。用語「アミド」はまた、尿素、カルバメート、およびその環状バージョンのような基を包含する。
【0057】
本明細書で用いられる用語「アミノ」は、形態−NR8R9、−N(R8)R9−、または−R9N(R8)R10−(R8、R9、およびR10は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルカノイル、アルコキシ、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、チオ、およびスルホニルから選択される)のラジカルを意味する。アミノは、窒素、R8、R9、またはR10を通じて親分子の基に結合していてもよい。アミノは環状であってもよく、例えば、R8、R9、およびR10のいずれか2つが一緒に結合して、あるいはNと結合して、3から12員環、例えば、モルホリノまたはピペリジニルを形成していてもよい。用語「アミノ」は、アミノアルキル(アルキルを通じて親分子の基に結合している)、アルキルアミノ(アミノを通じて親分子の基に結合している)、アリールアミノ、アミノアリール、スルホンアミノなどのような基を包含する。用語「アミノ」は、任意のアミノ基の対応する第四アンモニウム塩、例えば、−[N(R8)(R9)(R10)]+も含む。
【0058】
本明細書で用いられる用語「アリール」は、モノ−、ビ−、または他の複数−炭素環、芳香環系を意味する。アリール基は、必要に応じて、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから選択される1個以上の環に融合していてもよい。アリール基は、アルキル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミノ、アミド、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホネート、スルホニル、およびチオから選択される基で必要に応じて置換されていてもよい。
【0059】
本明細書で用いられる用語「アリールオキシ」は、酸素原子に結合しているアリール基を意味する。
【0060】
本明細書で用いられる用語「カルボニル」は、ラジカル−C(O)−を意味する。
【0061】
本明細書で用いられる用語「カルボキシ」は、ラジカル−COOHを意味する。用語「カルボキシ」は、−COONaなどのような塩も含む。
【0062】
本明細書で用いられる用語「シアノ」は、ラジカル−CNを意味する。
【0063】
本明細書で用いられる用語「シクロアルコキシ」は、酸素に結合しているシクロアルキル基、例えば、−O−シクロアルキル−を意味する。
【0064】
本明細書で用いられる用語「疾患または状態」は、糖尿病を意味する。
【0065】
本明細書で用いられる用語「エステル」は、構造−C(O)O−、−C(O)OR11−、−R12C(O)O−R11−、または−R12C(O)O−(R11は水素ではなく、そしてOは水素に結合していない)を有するラジカルを意味する。R11またはR12は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ケトン、およびチオから選択されてもよい。R12は水素であってもよい。エステルは、環状であってもよく、例えば、炭素原子とR11、酸素原子とR12、またはR11とR12が結合して、3から12員環を形成していてもよい。例えば、エステルは、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキルなどを含む。エステルは、カルボン酸無水物、および酸ハロゲン化物も含む。
【0066】
本明細書で用いられる用語「エーテル」は、構造−R13O−R14−(R13およびR14は水素ではない)を有するラジカルを意味する。エーテルは、R13またはR14を通じて親分子の基に結合していてもよい。R13またはR14は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルから選択されてもよい。例えば、エーテルは、アルコキシアルキル、およびアルコキシアリール基を含む。エーテルは、ポリエーテル(例えば、R13およびR14の一方または両方がエーテルである)も含む。
【0067】
本明細書で用いられる用語「ハロ」、または「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0068】
本明細書で用いられる用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環の」は、同意語であり、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1、2、または3個のヘテロ原子を含有する飽和または不飽和3、4、5、6、または7員環を意味する。複素環は、芳香族性(ヘテロアリール)または非芳香族性であってもよい。複素環は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルデヒド、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、オキソ、ニトロ、スルホネート、スルホニル、およびチオを含む1個以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよい。
【0069】
複素環は、二環式、三環式、および四環式の基(上述の複素環のいずれかが、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから独立して選択される1個以上の環に融合している)も含む。例えば、複素環は、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ビオチニル、シンノリニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、フリル、ホモピペリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリジン−2−オニル、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、キノキサロイル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、チオピラニル、およびトリアゾリルを含む。
【0070】
複素環はまた、架橋二環式の基(単環式の複素環基が、
【化8】
のようなアルキレン基により、架橋されていてもよい)を含む。
【0071】
複素環はまた、式
【化9】
[式中、X*およびZ*は、独立して、−CH2−、−CH2NH−、−CH2O−、−NH−、および−O−から選択される、但し、X*およびZ*の少なくとも1つは、−CH2−ではなく、そしてY*は、−C(O)−および−(C(R’’)2)v−(R’’は、水素またはC1−4アルキルであり、そしてvは、1〜3を含む整数である)から選択される]の化合物を含む。これらの複素環は、1,3−ベンゾジオキソリル、1,4−ベンゾジオキサニル、および1,3−ベンゼンイミダゾール−2−オンを含む。
【0072】
本明細書で用いられる用語「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」は、ラジカル−OHを意味する。
【0073】
本明細書で用いられる「耐糖能」は、グルコース、またはグルコースに変換され得るいくつかの他の糖を投与した後、あるいはグルコース、または消費後、グルコースに変換され得るもののいずれかを含有する食品を消費した後、グルコースホメオスタシスを維持する対象の能力を意味する。グルコースホメオスタシスは、生理学的に許容される範囲内で血糖レベルを維持するための細胞のグルコースの取り込みにより、維持され得る。
【0074】
本明細書で用いられる「インスリン感受性」は、グルコースを取り込むよう細胞を刺激するインスリンの能力を意味する。
【0075】
本明細書で用いられる用語「ケトン」は、構造−R15−C(O)−R16−を有するラジカルを意味する。ケトンは、R15またはR16を通じて別の基に結合していてもよい。R15またはR16は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはアリールであってもよい。別法として、R15またはR16は、結合して、3から12員環を形成していてもよい。例えば、ケトンは、アルカノイルアルキル、アルキルアルカノイルなどを含む。
【0076】
本明細書で用いられる用語「ニトロ」は、ラジカル−NO2を意味する。
【0077】
本明細書で用いられる用語「オキソ」は、別の原子に二重結合している酸素原子を意味する。例えば、カルボニルは、オキソ基を有する炭素原子である。
【0078】
本明細書で用いられる用語「ペルフルオロアルキル」は、全ての水素原子がフッ素原子により置換されたアルキル基を意味する。
【0079】
本明細書で用いられる用語「フェニル」は、1個の芳香環を有する単環式の炭素環系を意味する。フェニル基は、シクロヘキサンまたはシクロペンタン環に融合していてもよい。フェニル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルデヒド、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホネート、スルホニル、およびチオを含む1個以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよい。
【0080】
本明細書用いられる「医薬的に許容される賦形剤」は、医薬上の投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などを意味する。
【0081】
本明細書で用いられる用語「プロドラッグ」は、例えば、血液における加水分解により、本明細書に記載される式の化合物にインビボで迅速に変換される化合物を表す。詳細は、Han AAPS Pharmsci 2(1):6 (2000)、およびRoche, ed., 1987, Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Pressにおいて提供されている。
【0082】
本明細書で用いられる「対象」は、任意の哺乳類を意味し、ヒトを含むが、これに限定されない。
【0083】
本明細書で用いられる用語「チオ」は、構造R17S−(R17は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アミノ、およびアミドから選択され得る)を有するラジカル、例えば、アルキルチオ、アリールチオ、チオールなどを意味する。「チオ」はまた、酸素がイオンによって置換されているラジカルを意味し、例えば、−N−C(S)−は、チオアミドまたはアミノチオカルボニルであり、アルキル−S−は、チオアルコキシ(アルキルチオと同義)である。
【0084】
本明細書で用いられる用語「処置する」、「処置」、および「処置すること」は、次のいずれかを意味する:疾患または状態の重症度の低減;疾患経過期間の低減;疾患または状態に付随する1つ以上の症状の改善;必ずしも疾患または状態の治癒ではないが、疾患または状態を有する対象への有益な効果の提供;疾患または状態に付随する1つ以上の症状の予防。本明細書で用いられる用語「処置する」、「処置」、および「処置すること」は、別段に明示的に定められた場合を除き、糖尿病性腎症に付随する腎肥大および過形成の処置を含まない。
【0085】
B.医薬組成物
本発明の方法で用いるための医薬組成物が提供される。本発明の組成物は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤、および医薬的に許容される担体または賦形剤を含む。適当な医薬担体の例は、例えば、E.W. Martin, 1990, Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., Mack Pub. Co., Easton, PAに記載されている。適当な賦形剤は、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、ラチン、モルト、ライス、穀粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。本発明の組成物はまた、pH緩衝化試薬、および湿潤剤または乳化剤を含有していてもよい。組成物は、さらに、治療作用の補足、追加、または増強をもたらす他の活性化合物を含有していてもよい。医薬組成物はまた、容器、箱、またはディスペンサー内に投与の指示書と共に入れられていてもよい。
【0086】
医薬的に許容される塩は、出発または基本の化合物と比較して水溶解性が増大しているため、医薬的適用に特に適するものであり得る。1つの実施態様において、これらの塩は、医薬的に許容されるアニオンまたはカチオンを有し得る。本発明の化合物の医薬的に許容される酸付加塩のうち適当なものは、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸)、および有機酸(例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グリコール酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸、および酒石酸)の塩を含む。適当な医薬的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムおよびカリウム塩)、およびアルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウムおよびカルシウム塩)を含む。
【0087】
C.投与および投薬方法
経口投与のため、本発明の医薬組成物は、通常の方法により製造される錠剤またはカプセル剤の形態をとってもよい。一般に、経口用組成物は、不活性な希釈剤または可食担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル内に取り込まれるか、あるいは錠剤内に圧縮され得る。経口治療投与の目的上、式Iaまたは式Ibの化合物は、賦形剤と共に取り込まれ、錠剤またはカプセル剤の形態で用いられ得る。医薬的に適合する結合剤、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、ピル、カプセル剤などは、次の成分;微結晶セルロース、ゴム、トラガカント、またはゼラチンのような結合剤;スターチまたはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesのような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;スクロースまたはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料のような香料、または類似の性質の化合物のいずれかを含有し得る。
【0088】
本発明の組成物はまた、液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として調製されてもよい。液剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または可食硬化油脂)、乳化剤(レシチン、またはアラビアゴム)、非水性ビークル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油)、および保存剤(例えば、メチル−またはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)を含んでいてもよい。製剤はまた、香料、着色剤、および甘味料を含んでいてもよい。別法として、組成物は、水または他の適当なビークルを用いて構成するための乾燥製品として提示されてもよい。口腔投与および舌下投与のため、組成物は、通常のプロトコールによる、錠剤、トローチ剤、または速溶性フィルムの形態をとってもよい。
【0089】
吸入による投与のため、本発明により用いられる化合物は、適当な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適当なガスと共に、加圧型パックまたは噴霧器(例えば、PBS中)からエアゾールスプレーの形態で都合よくもたらされる。加圧型エアゾールの場合に、投薬単位は、定量をもたらすバルブを用意することにより、決定され得る。吸入剤または吸入器において用いるため、化合物、およびラクトースまたはスターチのような適当な粉末基材の粉末混合物を含有する、例えば、ゼラチンのカプセル剤およびカートリッジが製剤されてもよい。
【0090】
本発明の医薬組成物は、ボーラス投与による非経腸投与(すなわち、静脈内または筋肉内)のために、製剤されてもよい。注射用製剤は、添加保存剤と共に、例えば、アンプル剤またはマルチドース容器中、単位投薬形態で提示されてもよい。組成物は、油性または水性ビークル中の懸濁剤、溶剤、または乳剤のような形態をとってもよく、かつ懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤のような調剤用の剤を含有していてもよい。別法として、有効成分は、適当なビークル、例えば、パイロジェンフリーの水を用いて構成するための粉末形態であってもよい。
【0091】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような通常の座剤基材を含有する、座剤または停留浣腸として直腸投与用に製剤されてもよい。
【0092】
一般的にはM3阻害剤、そして具体的にはグルコシルセラミド合成酵素阻害剤の用量は、対象および用いられる具体的な投与経路に依存して変動するだろう。投薬量は、1日当たり、0.1から500mg/体重1kgの範囲であり得る。1つの実施態様において、投与範囲は、1〜20mg/kg/日である。GM3阻害剤は、継続して、あるいは特定の指定された間隔で投与され得る。例えば、毎日または1日2回用の製剤のような、GM3阻害剤が、1日当たり1、2、3、または4回投与されてもよい。市販のアッセイを利用して、最適な用量範囲、および/または投与スケジュールが決定され得る。血糖レベルを測定するアッセイは、商業化されている(例えば、OneTouch(登録商標)Ultra(登録商標), Lifescan, Inc. Milpitas, CA)。ヒトインスリンレベルを測定するためのキットも商用化されている(Linco Research, Inc. St. Charles, MO)。
【0093】
加えて、有効用量は、動物モデルから得られた用量反応曲線から推定され得る。糖尿病動物モデルの使用は、以下に記載される。他の動物モデルが当該分野において知られている(例えば、Comuzzie et al., Obes. Res. 11(1):75 (2003);Rubino et al., Ann. Surg. 240(2):389 (2004);Gill-Randall et al., Diabet. Med. 21(7):759 (2004)を参照)。1種類の動物モデルで達成される治療上有効な投薬量は、ヒトを含む別の動物で使用するため、当該技術分野において知られている変換係数(例えば、Freireich et al., Cancer Chemother. Reports 50(4):219 (1996)、および以下の等価表面積投薬量係数についての表2を参照)を用いて、変換され得る。
【0094】
【表1】
【0095】
D.併用療法
本発明は、糖尿病を処置するための併用療法も意図している。該併用療法は、本明細書で記載される化合物のいずれか、および糖尿病の処置に適した少なくとも1種類の他の化合物を含み得る。2型糖尿病を処置するために用いられる化合物の例は、インスリン(Novolin(登録商標)、Novolog(登録商標);Velosulin(登録商標)、Novo Nordisk A/S)、スルホニル尿素(Diabinese(登録商標)、Glucotrol(登録商標)、Glucotrol XL(登録商標);Pfizer, New York, NY)(Diabeta(登録商標)、Amaryl(登録商標);Aventis, Bridgewater, NJ)、メトホルミン、α−グルコシダーゼ阻害剤(Glyset(登録商標);Pharmacia, New York, NY)、チアゾリジインジオン(thiazolidiinedione)(Actos(登録商標);Takeda Pharmaceuticals America, Inc, Lincolnshire, IL)(Avandia(登録商標);GlaxoSmithKline, Upper Merrian, PA)、グリブリド(Orinase(登録商標)、Tolinase(登録商標)、Micronase(登録商標)、Glynase(登録商標);Pharmacia Corp., New York, NY)、ナテグリニド(Starlix(登録商標);Novartis Pharmaceuticals, Cambridge, MA)、レパグリニド(Prandin(登録商標);Novo Nordisk, Princeton, NJ)、およびAvandamet(登録商標)(GlaxoSmithKline, Upper Merrian, PA)のような複合薬を含むが、これらに限定されない。
【実施例】
【0096】
実施例1:3T3−L1細胞におけるGM3の阻害
未分化3T3−L1前脂肪細胞を、濃度0、16、64、250、および1000nMのD−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールで48時間処置した。細胞を回収し、1/100希釈のマウスモノクローナル抗GM3 IgM抗体(Seikagaku America, Falmouth, MA)、次に、1/100希釈の蛍光標識ヤギ抗マウスIgM(Alexa Fluor 488(登録商標))(Molecular Probes, Eugene, OR)とインキュベーションした。GM3陽性細胞のパーセンテージを、蛍光標示式細胞分取器(FACS)分析により決定した。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、250nMまで用量に依存してGM3レベルを低減することを示した(図1)。
【0097】
実施例2:分化した脂肪細胞におけるTNF−α誘導性GM3の阻害
3T3−L1細胞を、10% 仔ウシ血清(Invitrogen/Gibco, Carlsbad, CA)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Invitrogen/Gibco, Carlsbad, CA)においてコンフレントまで増殖させた。培地を、10% ウシ胎児血清(FBS)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、1μM デキサメタゾン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、および1.7μM インスリン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加したDMEMに交換することにより、分化を誘導した。72時間後、培地を、10% FBS、および100ng/ml インスリンを添加したDMEMに交換した。分化誘導の10日後、90%より多くの細胞が、脂肪細胞(Oil Redを用いた染色、脂質については組織化学染色により決定)に分化していた。次に、脂肪細胞を、0.2nM TNF−α、または5μM D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールの存在下または不存下で、共に96時間インキュベーションした。次に、処理した細胞を、GM3について免疫染色(図2 上方のパネル)するか、あるいはDAPIで対比染色(図2 下方のパネル)した。ぞれぞれ図2cおよび2dに示すように、0.2nM TNF−αは、分化した脂肪細胞におけるGM3の発現を誘導し、そして5μM D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールは、この効果を排除した。
【0098】
実施例3:インビボでのグルコシルセラミドレベルの低減
Zucker糖尿病肥満(ZDF)fa/faラットは、認められた2型糖尿病の動物モデルである(Hunt et al., Fed. Proc. 35(5):1206 (1976))。4週齢のZDFラット、ならびにやせ形対照同腹仔をCharles River Laboratories(Wilmington, MA)より得た。ラットを24℃、12時間毎の明暗サイクルで飼育し、Purina 5008餌(Purina Mills, LLC, St. Louis MO)を与えた。ラットを、研究前の1週間順応させた。次に、ラットに7日間毎日、水を経口経管栄養で与え、経口経管栄養法に順応させた。最初の7日間経過後、75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールを6週間毎日、経口経管栄養でマウスに与えた。年齢の同じZDFラットおよびやせ形ラットの対照群に、水を経口経管栄養で与えた。研究の最後に、肝臓を回収し、グルコシルセラミド(GL1)を抽出し、薄層クロマトグラフィーによりアッセイした。GL1のレベルを、500nmol 無機リン酸塩(Pi)当量に対して標準化した(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果(図3)は、薬物で処置したラットのみでなく、無処置ZDFラットも、無処置やせ形ラットより低いGL1レベルを有することを示した。
【0099】
各群のラットを、いくつかの生理学的パラメーターについてモニターした。D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールは、ZDFラットの体重または食物消費に有意には影響しなかった。各群の体重および食物摂取を、1週間に2、3回モニターした。各群についての平均体重(図4a)、および水で処置されたZDF対照群に対する各群の消費食物のパーセンテージ(図4b)を示す(N=1群当たり6匹のラット)。
【0100】
D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールは、ZDFラットにおいて、糖尿病に付随する症状である関連する腎臓および肝臓の重量を低減した。薬物または水での処置の6週間後、肝臓(図5a)および腎臓(図5b)を解剖し、重量を測定した(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果を、総体重のパーセンテージとして表す。水を与えたやせ形ラットを対照として用いた。
【0101】
実施例4:ZDFラットにおける血糖レベルの低減および血液インスリンレベルの同時維持
ZDFラットを、75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノール、または水で毎日処置した。やせ形対照ラットには水を与えた。処置開始の4日前、および11、25、および39日後、午前8時から9時の間に尾静脈を傷つけて(tail vein nick)、血液を採取し、グルコースをAccu-Chek Compact Meter(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN)を用いて測定した。尾静脈採血と同時に眼窩後神経叢穿刺(retroorbital plexus puncture)により、血液を採取した。血漿インスリンレベルを、ELISAキット(Crystal Chem, Inc., Downers Grove, IL)によりアッセイした(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、ZDFラットにおいて血糖レベルを低減することを示した(図6a)。薬物はまた、同じラットのインスリンレベルを維持した(図6b)。
【0102】
実施例5:ZDFラットにおける耐糖能
処置前、および75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールでの処置の開始の2、4、および6週後に、各群のラットにおいて耐糖能試験を行った。経口経管栄養により毎日薬物を投与した。各試験の前一晩、動物を絶食にし、各注入の直前にベースラインのグルコースレベルを測定した。グルコース溶液(2g/kg)(Sigma, St. Louis, MO)を動物に腹腔内注射し、注射の20、40、60、および120分後に、尾静脈を傷つけて血液を採取した。グルコースレベルをAccu-Chek Compact Meter(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN)を用いて測定した(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果は、薬物での処置の4および6週間後に、ZDFラットにおいて耐糖能が改善することを示した(図7)。
【0103】
実施例6:ZDFラットにおける糖化ヘモグロビンレベル
各群のラットの血糖レベルの別の指標として、糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを測定した。75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールでの処置(経口経管栄養により毎日投与)の6週間後、ハンドヘルドのA1C Now(登録商標)モニター(Metrika, Inc., Sunnyvale, CA)を用いて、血中HbA1cレベルを測定した(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果は、薬物がZDFラットにおいてHbA1cレベルを低減することを示した(図8)。
【0104】
実施例7:ZDFラットの筋組織におけるインスリン受容体のリン酸化
75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノール(経口経管栄養により毎日投与)で6週間処置したZDFラットを対照群ラットと共に一晩絶食にした。翌朝、ラットを麻酔し、ヒトインスリン(Humulin、5U)(Eli Lily and Company, Indianapolis, IN)を肝門静脈内に注射した。注射の2分後、大腿四頭筋を回収し、直ちに液体窒素にて凍結した。抗IRβ抗体(IRAb)(Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)を用いて、筋肉ホモジネートからインスリン受容体(IR)を免疫沈降し、次に、免疫沈降物を、リン酸化レベルを測定するために抗ホスホチロシン抗体(pY20 Ab)(BD Bioscience, San Diego, CA)、またはIRタンパク質レベルを測定するために抗IRβ抗体(IR Ab)(Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)のいずれかを用いて分析した。化学発光(ECL Western Kit, Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を用いて、ブロットを視覚化し、X線フィルムに曝露させた。結果は、薬物が、無処置対照群と比較して、インスリン受容体のリン酸化を増大させることを示し、ゆえに、薬物での処置が、インスリンで刺激された後のZDFラットにおけるIRシグナル伝達能を増強することが示唆される(図9)。
【0105】
実施例8:2型糖尿病の食餌誘導性肥満(DIO)マウスモデルにおける生理学的パラメーター
4週齢のオスのC57BL/6JマウスをThe Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入した。それらを20〜24℃、12時間毎の明暗サイクルで飼育した。食餌を与える前に1週間、マウスを小屋に順応させた。第1の群のマウスに高脂肪食餌(D12451i 45% kcal)(Research Diets, Inc., New Brunswick, NJ)を与えた。第2の群のマウスに通常の餌(Purina 5K52 6%)(Purina Mills, LLC, St. Louis MO)を与えた。体重を毎週測定した。マウスに7日間餌を与え、次に、食後血糖およびインスリンレベルを測定した。高脂肪食餌を与えたマウスのうち、肥満になり、中程度の高血糖および高インスリン血症を示すものをさらなる研究のため選択し、対照群と処置群に分けた。処置群および対照群は平均体重、グルコースおよびインスリンレベルの点で一致させた。通常の餌を与えたマウスをやせ形対照として用いた。DIOマウス2群およびやせ形対照の体重、グルコース、およびインスリンレベルを図10に示す。
【0106】
処置群には、125mg/kg/日 D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールを10週間、経口経管栄養にて与えた。対照群には、水を10週間、経口経管栄養にて与えた。体重および食物摂取を毎週モニターした(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。薬物は、食物消費に影響しなかった(図11b)が、DIOマウスの体重増加を低減した(図11a)。
【0107】
実施例9:DIOマウスにおけるTNF−αレベル
処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)開始の9週間後、血液を眼窩後神経叢穿刺により採取し、ELISAキット(R&D Systems)を用いて、血漿TNF−αを測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールでの処置が、DIOマウスにおいてTNF−αレベルを阻害することを示した(図12)。
【0108】
実施例10:DIOマウスにおける血糖レベル
処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)開始の0、25、46、および63日後に、尾静脈を傷つけて血液を採取した。午前8時から9時の間に試料を採取し、グルコースをAccu-Chek Compact(登録商標)Meter(Roche Diagnostics Corp., St. Louis, MO)を用いて測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、無処置対照と比較してDIOマウスにおいて血糖レベルを低減し、かつ差は経時的に増大することを示した。
【0109】
実施例11:DIOマウスにおけるインスリンレベル
0日目、および処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)の開始後25日および46日目に、眼窩後神経叢穿刺により血液を採取した。血漿インスリンレベルをELISAキット(Crystal Chem. Inc., Downers Grove, IL)により測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、無処置対照と比較してDIOマウスにおいてインスリンレベルを低減することを示した(図14)。
【0110】
実施例12:DIOマウスにおける耐糖能
処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)の開始の4.5、7.5、および9.5週後に試験を行った。各試験の前一晩、動物を絶食にした。注射の直前にベースラインのグルコースレベルを測定した。動物にグルコース溶液(2g/kg,Sigma, St. Louis, MO)を腹腔内注射し、注射の20、40、60、および120分後に、尾静脈を傷つけて血液を採取した。グルコースレベルをAccu-Chek Compact Meter(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN)を用いて測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、DIOマウスにおいて耐糖能を改善することを示した(図15)。
【0111】
実施例13:DIOマウスにおける糖化ヘモグロビンレベル
各群のマウスにおける血糖レベルの別の指標として、糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを測定した。D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールでの処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)の10週間後に、血中の糖化ヘモグロビンHbA1cレベルをハンドヘルドのA1C Now(登録商標)モニター(Metrika, Inc., Sunnyvale, CA)を用いて測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、薬物処置が、HbA1cレベルを正常やせ形マウスのレベルまで正常化するこをと示した(図16)。
【0112】
本明細書で引用される参考文献は全て、全体として引用により本明細書に取り込まれる。引用により取り込まれる刊行物、および特許または特許出願が本明細書に含まれる記載と矛盾する範囲では、本明細書が、任意のかかる矛盾する構成要素に優先し、および/または勝ることが意図されている。
【0113】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる成分の量、反応条件などを表す数字は全て、用語「約」により全ての場合で修飾されることは理解されるべきことである。従って、それとは反対に示されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において説明される数値パラメーターは、本発明により得られることが求められる所望の特性に依存して変動し得る近似値である。本請求の範囲の範囲と均等な主義の出願を制限することの試みとしてではなく、少なくとも、各数値パラメーターは、有効数字の数および通常の四捨五入方法に照らして解釈されるべきである。
【0114】
本発明の多くの修飾およびバリエーションは、その精神および範囲から逸脱することなく成され、ならびにそれは当業者に明らかであろう。本明細書に記載の特定の実施態様は、例示のみの目的で提供され、決して制限することを意味するものではない。本明細書および実施例は、例示のみとみなされ、本発明の真の範囲および精神は、添付の請求の範囲により示されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年11月10日に出願された米国仮出願第60/626,448号(全体の引用により本明細書に取り込まれる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的には糖尿病の分野に関するものである。特定の実施態様において、本発明は、糖尿病に罹患している対象を処置する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
糖尿病(以下、「糖尿病」)は、ますます大きくなる世界的な健康問題である。1億3千5百万人より多くの人々が、該疾患に罹患していると推定される。非インスリン依存性糖尿病(NIDD)または成人発症型糖尿病としても知られる2型糖尿病は、これらの患者の約90〜95%のパーセンテージを占める。この数は、年々4〜5%増大すると予測される。糖尿病に付随する重篤な健康問題は、失明、腎疾患、ニューロパシー、切断、心血管疾患、脳卒中、および死亡率の増大したリスクを含む。米国単独における糖尿病の処置費用は、1年当たり約1320億ドルであると推定される。資金が限られていることから、臨床医達は、糖尿病患者に総合的な医療を提供しようと挑戦している(Florence et al., American Family Physician 59(10):2835 (1999))。従って、糖尿病をより効果的に処置することが大変必要である。
【0004】
2型糖尿病は肥満と結びつけられ、インスリン抵抗性、またはそのヒト自身のインスリンに正確に応答する能力がないことにより特徴付けられる。非糖尿病対象において、インスリンは、細胞の血液からのグルコースの取り込みを促進し、それにより、血液の糖レベルを低下させ、同時に、グリコーゲン、脂肪酸、およびタンパク質の細胞合成のような同化作用を促進する(Stryer, 1981, Biochemistry, W. H. Freeman and Company, San Francisco)。
【0005】
インスリンの代謝作用に対する抵抗性は、2型糖尿病の顕著な特徴である。インスリン抵抗性は、脂肪細胞および骨格筋のようなインスリン感受性標的器官におけるグルコースの取り込みおよび利用の障害、ならびに肝グルコース放出の阻害の障害により特徴付けられる。機能性インスリン欠乏、およびインスリンが肝グルコース放出を抑制できないことは、高血糖の加速をもたらす。初め、膵β細胞は、増大したレベルのインスリンを分泌することによりインスリン抵抗性を補う。しかしながら、β細胞は、インスリンの高放出を維持することができず、最終的には、グルコース誘導性インスリン分泌は降下し、これにより、グルコースホメオスタシスの悪化、続いて明らかな糖尿病の発症を導く。
【0006】
2型糖尿病の正確な原因は依然として未知であるが、インビトロの結果により、インスリン誘導性シグナル伝達カスケードの遮断が、ガングリオシドGM3レベルの上昇と関連し得ることが示唆されている。インスリン抵抗性に関与するサイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF−α)は、GMS発現の増大をもたらすことも示唆されている(Tagami et al., J. Biol. Chem. 277(5):3085 (2002))。興味深いことに、GM3合成酵素を欠損し、従ってGM3を欠く変異マウスは、高脂肪食餌により引き起こされるインスリン抵抗性から守られている(Yamashita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:3445-3449 (2003))。
【0007】
GM3のようなガングリオシドは、セラミドおよび少なくとも1種類の酸性糖を含むスフィンゴリピドである。一般に、ガングリオシドは、細胞膜の外葉において見られる(Nojri et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:782 (1986))。それらは、細胞シグナル伝達に関与し、受容体活性のモジュレーターとして作用する(Yamashita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(6):3445 (2003))。
【0008】
GM3は、ガラクトースに結合しているグルコース(順に、ガラクトースは酸性糖N−アセチルノイラミネートに結合している)からなる三糖類に結合しているセラミド分子からなる。GM3は、細胞において、活性化糖分子のセラミド分子への酵素的段階的付加により合成される。GM3の生合成の第1段階は、グルコースをセラミドに付加し、グルコシルセラミドを形成させることである。この段階は、酵素であるグルコシルセラミド合成酵素により触媒される。第2段階において、ガラクトース部分が付加され、ラクトシルセラミドが形成され、続いて、シアル酸をラクトシルセラミドの末端ガラクトース残基に付加され、GM3が形成される。
【0009】
例えば、グルコシルセラミド合成酵素の阻害によるGM3レベルの調節が、ゴーシェ病の処置方法として提案されてきた(例えば、米国特許第6,569,889号参照)。ゴーシェ病のようなリソソーム蓄積症の処置のための2タイプのグルコシルセラミド合成酵素阻害剤が記載されてきた。両方が、酵素活性部位に結合し、基質の結合を妨げる、酵素基質アナログである。第1のタイプの阻害剤は、セラミドアナログである(例えば、米国特許第6,569,889号;第6,255,336号;第5,916,911号;第5,302,609号;Lee et al., J. Biol. Chem. 274(21):14662 (1999)を参照)。第2のタイプの阻害剤は、糖アナログである(例えば、米国特許第6,660,749号;第6,610,703号;第5,472,969号;第5,525,616号;Overkleef et al., J. Biol. Chem. 273(41):26522 (1998)を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,569,889号
【特許文献2】米国特許第6,569,889号
【特許文献3】米国特許第6,255,336号
【特許文献4】米国特許第5,916,911号
【特許文献5】米国特許第5,302,609号
【特許文献6】米国特許第6,660,749号
【特許文献7】米国特許第6,610,703号
【特許文献8】米国特許第5,472,969号
【特許文献9】米国特許第5,525,616号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Florence et al., American Family Physician 59(10):2835 (1999)
【非特許文献2】Stryer, 1981, Biochemistry, W. H. Freeman and Company, San Francisco
【非特許文献3】Tagami et al., J. Biol. Chem. 277(5):3085 (2002)
【非特許文献4】Yamashita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:3445-3449 (2003)
【非特許文献5】Nojri et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:782 (1986)
【非特許文献6】Yamashita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(6):3445 (2003)
【非特許文献7】Lee et al., J. Biol. Chem. 274(21):14662 (1999)
【非特許文献8】Overkleef et al., J. Biol. Chem. 273(41):26522 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、糖尿病の治療剤としてグリコスフィンゴリピド合成の阻害剤を用いて糖尿病を処置する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある種の実施態様において、本発明は、糖尿病、例えば、2型糖尿病を有する対象を処置する方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより糖尿病を処置する少なくとも1種類の治療上有効量の化合物を対象に投与することを含む。
【0014】
ある種の他の実施態様において、本発明は、糖尿病、例えば、2型糖尿病を有する対象を処置する方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより糖尿病を処置する少なくとも1種類の治療上有効量の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0015】
本発明の他の実施態様は、対象における血糖を低下させる方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより該対象における血糖レベルを低下させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象における血糖を低下させる方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象における血糖レベルを低下させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0016】
なお他の実施態様において、本発明は、対象における耐糖能を改善する方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより対象における耐糖能を改善する少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象における耐糖能を改善する方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象における耐糖能を改善する少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0017】
本発明の他の実施態様は、対象における血漿TNF−αレベルを低減させる方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3を阻害し、それにより対象におけるTNF−αレベルを低減させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象における血漿TNF−αレベルを低減させる方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象における血漿TNF−αレベルを低減させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0018】
本発明のなお他の実施態様は、対象における糖化ヘモグロビンレベルを低減させる方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより対象における糖化ヘモグロビンレベルを低減させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象における血漿糖化ヘモグロビンレベルを低減させる方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象における血漿糖化ヘモグロビンレベルを低減させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0019】
なお他の実施態様において、本発明は、対象におけるインスリン感受性を増大させる方法を提供し、該方法は、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害し、それにより化合物を服用していない対象と比較して、対象におけるインスリン感受性を増大させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。本発明のなお他の実施態様は、対象におけるインスリン感受性レベルを増大させる方法を提供し、該方法は、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、それにより対象におけるインスリン感受性を増大させる少なくとも1種類の化合物を対象に投与することを含む。ある種の特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤はセラミドアナログである。
【0020】
本発明のさらなる目的および利点は、一部は以下の説明において説明され、一部は記載から明らかであろうし、あるいは本発明の実施により確認されてもよい。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘されている要素および組合せにより、十分に理解され、達成されるだろう。
【0021】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示および説明であり、請求の範囲に記載される本発明を制限するものではないことは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤の濃度の増大に応答したGM3発現3T3−L1細胞のパーセンテージを示すグラフである。
【図2】図2は、分化した3T3−L1脂肪細胞の免疫蛍光発光を示す写真である。上方のパネルは、GM3について染色した細胞を示す。図2aは、GM3の発現について染色した未感作(未刺激)3T3−L1細胞を示す。図2bは、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤での処置後、GM3の発現について染色した未感作3T3−L1細胞を示す。図2cは、TNF−αで刺激後、GM3の発現について染色した3T3−L1を示す。図2dは、TNF−αで刺激し、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤で処置した後、GM3の発現について染色した3T3−L1細胞を示す。下方のパネルは、それぞれの上方のパネルの対応部分と同じフィールドであり、細胞数についての対照として4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を用いて染色している。
【図3】図3は、グルコシルセラミド合成酵素阻害で処置した、あるいは代わりに水を与えたZucker糖尿病肥満(ZDF)ラットの肝臓におけるグルコシルセラミドレベルを比較するグラフである。水を与えたやせ形ラットの肝臓におけるグルコシルセラミドレベルを対照として示す。
【図4】図4aは、3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットについての経時平均体重を示すグラフである。図4bは、図4aについて上述した3群のラットにおける経時食物摂取を示すグラフである。結果を、薬物の代わりに水を与えたZDFラットにおける食物摂取に対するパーセンテージとして表す。
【図5】図5aは、3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットにおける体重のパーセンテージとして、肝臓の重量を示すグラフである。図5bは、図5aにおいて記載したのと同じ3群のラットにおける体重のパーセンテージとして、腎臓の重量を示すグラフである。
【図6】図6aは、3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットについての経時的血糖レベルを示すグラフである。図6bは、図6aにおいて記載したのと同じ3群のラットについての経時インスリンレベルを示すグラフである。
【図7】図7は、耐糖能試験の結果を示すグラフである。各パネルは、療法開始時と比較した、グルコース負荷後の異なる時間ポイントでの血糖レベルを比較するものである。3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットを研究した。図7aは、任意の薬物療法開始前のラットにおける結果を示す。図7b、7c、および7dは、それぞれ、薬物療法の2、4、および6週間後の結果を示す。
【図8】図8は、3群のラット:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したZDFラット;薬物の代わりに水を与えたZDFラット;および水を与えたやせ形ラットにおける糖化ヘモグロビンレベルを示すグラフである。
【図9】図9は、インスリン受容体抗体で免疫沈降したラット筋肉細胞ホモジネートのウエスタンブロットである。最上部のパネルは、ヒトインスリンあり、またはなし、かつグルコシルセラミド合成酵素阻害剤あり、またはなしで注射したZDFラットにおけるインスリン受容体のリン酸化を示す。ヒトインスリンの注射あり、またはなしの正常やせ形ラット由来のインスリン受容体も示す。下方のパネルは、各試料に存在するインスリン受容体のレベルを示す。
【図10】図10は、食餌誘発肥満マウス(DIO)およびやせ形正常対照の2群の身体的パラメーターを示すグラフである。図10aは、平均体重を示す。図10bは、平均血糖レベルを示す。図10cは、平均インスリン血液レベルを示す。
【図11】図11aは、3群のマウス:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける経時体重を示すグラフである。図11bは、図11aにおいて記載したのと同じ3群のマウスにおける経時食物摂取を示すグラフである。
【図12】図12は、3群のマウス:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水で処置したDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける血漿TNF−αレベルを示すグラフである。
【図13】図13は、3群のマウス;グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける血糖レベルを示すグラフである。
【図14】図14は、3群のマウス;グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける経時インスリンレベルを示すグラフである。
【図15】図15は、耐糖能試験の結果を示すグラフである。各パネルは、療法開始時と比べて、グルコース負荷後の異なる時間ポイントでの血糖レベルを比較するものである。3群のマウス:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスを研究した。図15a、15b、および15cは、それぞれ、薬物療法の4.5、7.5、および9.5週後の結果を示す。
【図16】図16は、3群のマウス:グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(すなわち、薬物)で処置したDIOマウス;薬物の代わりに水を与えたDIOマウス;および水を与えたやせ形マウスにおける糖化ヘモグロビンのレベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施態様の説明
本発明は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤のような、グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成の阻害剤を用いて、糖尿病、例えば、2型糖尿病が処置され得るという発見に一部基づくものである。
【0024】
A.グリコスフィンゴリピド合成阻害剤
グリコスフィンゴリピド合成、例えば、GM3合成を阻害する化合物は、糖尿病、例えば、2型糖尿病を処置するための治療剤として意図される。特定の実施態様において、該化合物は、酵素であるグルコシルセラミド合成酵素を阻害する。一例として、該化合物は、グルコシルセラミド合成酵素の基質または基質の一部のアナログ、例えば、セラミドアナログであってもよい。適当なセラミドアナログは、米国特許第6,569,889号;第6,255,366号;第6,051,598号;第5,916,911号;Inokuchi et al., J. Lipid Res. 28:565 (1987);Shayman et al., J. Biol. Chem. 266:22968 (1991);およびBell et al. Ed., 1993, Advances in Lipid Research: Sphingolipids in Signaling (Academic Press, San Diego)に記載されているものを含む。
【0025】
ある実施態様において、本発明は、以下で説明される式Ia:
【化1】
を含むグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤を提供する。
【0026】
ある種の実施態様において、R1は、芳香環、例えば、フェニル基である。フェニル基は、置換されていてもよく、あるいは置換されていなくてもよい。適当な置換基の例は、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオ基を含むが、これらに限定されない。置換基は、結合して、シクロアルキル、またはヘテロシクリル環、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、およびプロピレンジオキシを含むジオキサンを形成していてもよい。置換基がアルキル、またはアルケニル鎖である場合、鎖は、C2−C12炭素鎖、またはC2−C6炭素鎖のようなC2からC20炭素鎖であってもよい。アルキルまたはアルケニル鎖は、直鎖または分枝炭素鎖を含むものであってもよい。1つの実施態様において、アルケニル鎖は、式Iaの−C(H)(OH)−単位に結合している炭素原子上に2重結合を有していてもよい。脂肪族鎖は、式Iaの2つの不斉中心から離れて位置する1個または2個の炭素原子を有していてもよい。
【0027】
ある種の実施態様において、R2は、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖、例えば、C2からC20炭素鎖である。ある実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C6からC10炭素鎖である。ある実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C7からC18炭素鎖である。ある特定の実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C7鎖である。他の特定の実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C8鎖である。ある種の実施態様において、アルキル鎖は、必要に応じてヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0028】
ある種の実施態様において、R3は、アミン基、例えば、第三級アミンである。ある実施態様において、アミン基は、環状アミン、例えば、ピロリジン、アゼチジン、ピペリジンである。ある特定の実施態様において、アミン基はモルホリン基ではない。
【0029】
ある実施態様において、R3のアミン基の窒素原子は、式Iaの−CH2基に結合している。これらの実施態様において、R3は、以下の式II:
【化2】
に示される構造を有し得る。
【0030】
R18およびR19は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホニル、およびチオから選択され得る。
【0031】
別法として、R18およびR19は、Nと一緒になって、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオから独立して選択される少なくとも1個の置換基に結合したヘテロシクリル基を形成し得る。
【0032】
式Iaの化合物は、それらのラセミ化合物、ラセミ混合物、純エナンチオマー、ジアステレオマー、およびそれらの混合物の形態で存在してもよい。上述の化合物の4種類の立体配置異性体(例えば、D−トレオ、L−トレオ、D−エリトロ、L−エリトロ)は全て、本発明の範囲内であることが意図され、個々に、または組合せて用いられ得る。
【0033】
特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールである。別の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−オクタノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールである。
【0034】
本発明は、さらに、以下で説明される式Ib:
【化3】
を含むグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤を提供するものである。
【0035】
ある種の実施態様において、R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環である。芳香環または複素環は、置換されていてもよく、あるいは置換されていなくてもよい。適当な置換基の例は、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオ基を含むが、これに限定されない。置換基は、結合して、シクロアルキル、またはヘテロシクリル環、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、およびプロピレンジオキシを含むジオキサンを形成していてもよい。置換基が、アルキル、またはアルケニル鎖である場合、鎖は、C2−C12炭素鎖、またはC2−C6炭素鎖のようなC2からC20炭素鎖であってもよい。アルキル、またはアルケニル鎖は、直鎖または分枝炭素鎖を含むものであってもよい。1つの実施態様において、アルケニル鎖は、式Ibの−C(H)(OH)−単位に結合している炭素原子上に2重結合を有していてもよい。脂肪族鎖は、ヒドロキシル基、例えば、式Ibの2つの不斉中心から離れて位置する1個以上の炭素原子を有していてもよい。
【0036】
ある種の実施態様において、R1は、例えば、ヒドロキシ、メトキシ、クロロ、またはフルオロで置換されているフェニルのような置換フェニルである。例えば、R1は、3,4−メチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−プロピレンジオキシフェニル、2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2−ブロモフェニル、3−ブロモフェニル、4−ブロモフェニル、2−ヨードフェニル、3−ヨードフェニル、または4−ヨードフェニルであってもよい。
【0037】
ある種の実施態様において、R2は、必要に応じて置換されているアルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖、例えば、C2からC20炭素鎖である。ある実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C6からC10炭素鎖である。ある実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C7からC18炭素鎖である。特定の実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C7鎖である。他の特定の実施態様において、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖は、C8鎖である。ある種の実施態様において、アルキル鎖は、必要に応じてヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0038】
具体的な実施態様において、R2は、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオから独立して選択される少なくとも1個の置換基で置換されているアルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖である。R2が1−ヘプチル鎖である実施態様において、1−ヘプチル鎖は、必要に応じて例えば、1位および/または6位で置換されていてもよく、R2が1−オクチル鎖である実施態様において、1−オクチル鎖は、必要に応じて例えば、1位および/または7位で置換されていてもよい。例えば、R2は、1−(1−ヒドロキシヘプチル)(式III)、1−(6−ヒドロキシヘプチル)(式IV)、1−(1−ヒドロキシオクチル)(式V)、または1−(7−ヒドロキシオクチル)(式VI)であってもよい。
【化4】
【0039】
ある種の実施態様において、R3は、必要に応じて置換されているアミン基、例えば、第三級アミンである。ある実施態様において、アミン基は、環状アミン、例えば、ピロリジン、アゼチジン、ピペリジンである。他の実施態様において、R3は、例えば、ピペラジン、モルホリン、またはヘキサメチレンイミンのような環状アミンである。ある特定の実施態様において、アミン基は、モルホリン基ではない。例えば、R1が非置換フェニルであり、そしてR2がn−ノニルである実施態様において、R3はモルホリン基ではない。
【0040】
ある実施態様において、R3のアミン基の窒素原子は、式Ibの2−アミノ−1−プロパノール骨格の炭素3(−CH2−基)に結合している。これらの実施態様において、R3は、以下の式II:
【化5】
に示される構造を有し得る。
【0041】
R18およびR19は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホニル、およびチオから選択され得る。
【0042】
あるいは、R18およびR19は、Nと一緒になって、水素、アルキル、アルケニル、アルケノキシ、アルキニル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボニル−含有基、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エーテル、エステル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、オキソ、ペルフルオロアルキル、スルホニル、スルホネート、およびチオから独立して選択される少なくとも1個の置換基に結合しているヘテロシクリル基を形成し得る。
【0043】
式Ibの化合物は、それらのラセミ化合物、ラセミ混合物、純エナンチオマー、ジアステレオマー、およびそれらの混合物の形態で存在してもよい。任意の不斉中心のキラリティーは、RまたはSのいずれかであり得る。例えば、式Ibの2−アミノ−1−プロパノール骨格の位置1および2に関して、4種類の立体配置異性体(例えば、D−トレオ、L−トレオ、D−エリトロ、L−エリトロ)は全て、本発明の範囲内であると意図され、個々に、または組合せて用いられ得る。
【0044】
特定の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノール(式VII)である。
【化6】
【0045】
例えば、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1(R)−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2(R)−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールであってもよい。別の実施態様において、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−オクタノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノール(式VIII)である。
【化7】
【0046】
例えば、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤は、1(R)−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2(R)−オクタノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールであってもよい。
【0047】
式Iaまたは式Ibの化合物は、プロドラッグとして投与されてもよい。式Iaまたは式Ibの化合物は、遊離塩基形態で、あるいは医薬的に許容される塩として提供されてもよい。医薬的に許容される塩は、以下により詳細に記載される。
【0048】
上述のグルコシルセラミド合成酵素阻害剤の製造方法は、例えば、米国特許第6,569,889号;第6,255,336号;第5,916,911号;第5,302,609号;Lee et al., J. Biol. Chem. 274(21) (1999):14662;Abe et al., J. Biochem. 111:191 (1992);Inokuchi et al., J. Lipid Res. 28:565 (1987)に記載されている。
【0049】
本明細書で用いられる用語「アルカノイル」は、アルキル基に結合しているカルボニル基を意味する。
【0050】
本明細書で用いられる用語「アルカノイルオキシ」は、酸素に結合しているアルカノイル基、例えば、−C(O)−アルキル−O−を意味する。
【0051】
本明細書で用いられる用語「アルケニル」は、2〜12、2〜10、または2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝鎖基のような、少なくとも1個の炭素−炭素間二重結合を有する2〜20個の炭素原子の不飽和直鎖または分枝鎖を意味する。
【0052】
本明細書で用いられる用語「アルコキシ」は、酸素に結合しているアルキル基を意味する。「アルコキシ」基は、必要に応じて、アルケニル(「アルケノキシ」)またはアルキニル(「アルキノキシ」)基を含有することができる。
【0053】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、1〜12、1〜10、または1〜8個の炭素原子の直鎖または分枝鎖基のような、1〜20個の炭素原子の飽和直鎖または分枝鎖を意味する。
【0054】
「飽和および不飽和炭化水素」としてまとめて言及される「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」基は、アルデヒド、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホネート、スルホニル、チオ、O、S、およびNから選択される少なくとも1個の基で必要に応じて置換されるか、あるいは割り込まれ得る。
【0055】
本明細書で用いられる用語「アルキニル」は、2〜12、2〜10、または2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝鎖基のような、少なくとも1個の炭素−炭素間三重結合を有する2〜20個の炭素原子の不飽和直鎖または分枝鎖基を意味する。
【0056】
本明細書で用いられる用語「アミド」は、形態−R5C(O)N(R6)−、−R5C(O)N(R6)R7−、または−C(O)NR6R7(R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルカノイル、アルケニル、アルコキシ、アルキニル、アリール、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、チオ、およびスルホニルから選択され、そしてR5は、水素、アルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ハロゲン、ヒドロキシ、ケトン、およびチオから選択される)のラジカルを意味する。アミドは、炭素、窒素、R5、R6、またはR7を通じて別の基に結合していてもよい。アミドは環状であってもよく、例えば、R6およびR7、R5およびR6、またはR5およびR7は、結合して、3から10員環のような3から12員環を形成していてもよい。用語「アミド」は、アルカノイルアミノアルキル、アミドアルキル(アルキルを通じて親分子の基に結合している)、アルキルアミド(アミドを通じて親分子の基に結合している)、アリールアミド、アミドアリール、スルホンアミドなどのような基を包含する。用語「アミド」はまた、尿素、カルバメート、およびその環状バージョンのような基を包含する。
【0057】
本明細書で用いられる用語「アミノ」は、形態−NR8R9、−N(R8)R9−、または−R9N(R8)R10−(R8、R9、およびR10は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルカノイル、アルコキシ、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、チオ、およびスルホニルから選択される)のラジカルを意味する。アミノは、窒素、R8、R9、またはR10を通じて親分子の基に結合していてもよい。アミノは環状であってもよく、例えば、R8、R9、およびR10のいずれか2つが一緒に結合して、あるいはNと結合して、3から12員環、例えば、モルホリノまたはピペリジニルを形成していてもよい。用語「アミノ」は、アミノアルキル(アルキルを通じて親分子の基に結合している)、アルキルアミノ(アミノを通じて親分子の基に結合している)、アリールアミノ、アミノアリール、スルホンアミノなどのような基を包含する。用語「アミノ」は、任意のアミノ基の対応する第四アンモニウム塩、例えば、−[N(R8)(R9)(R10)]+も含む。
【0058】
本明細書で用いられる用語「アリール」は、モノ−、ビ−、または他の複数−炭素環、芳香環系を意味する。アリール基は、必要に応じて、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから選択される1個以上の環に融合していてもよい。アリール基は、アルキル、アルデヒド、アルカノイル、アルコキシ、アミノ、アミド、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホネート、スルホニル、およびチオから選択される基で必要に応じて置換されていてもよい。
【0059】
本明細書で用いられる用語「アリールオキシ」は、酸素原子に結合しているアリール基を意味する。
【0060】
本明細書で用いられる用語「カルボニル」は、ラジカル−C(O)−を意味する。
【0061】
本明細書で用いられる用語「カルボキシ」は、ラジカル−COOHを意味する。用語「カルボキシ」は、−COONaなどのような塩も含む。
【0062】
本明細書で用いられる用語「シアノ」は、ラジカル−CNを意味する。
【0063】
本明細書で用いられる用語「シクロアルコキシ」は、酸素に結合しているシクロアルキル基、例えば、−O−シクロアルキル−を意味する。
【0064】
本明細書で用いられる用語「疾患または状態」は、糖尿病を意味する。
【0065】
本明細書で用いられる用語「エステル」は、構造−C(O)O−、−C(O)OR11−、−R12C(O)O−R11−、または−R12C(O)O−(R11は水素ではなく、そしてOは水素に結合していない)を有するラジカルを意味する。R11またはR12は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、エステル、エーテル、ヘテロシクリル、ケトン、およびチオから選択されてもよい。R12は水素であってもよい。エステルは、環状であってもよく、例えば、炭素原子とR11、酸素原子とR12、またはR11とR12が結合して、3から12員環を形成していてもよい。例えば、エステルは、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキルなどを含む。エステルは、カルボン酸無水物、および酸ハロゲン化物も含む。
【0066】
本明細書で用いられる用語「エーテル」は、構造−R13O−R14−(R13およびR14は水素ではない)を有するラジカルを意味する。エーテルは、R13またはR14を通じて親分子の基に結合していてもよい。R13またはR14は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルから選択されてもよい。例えば、エーテルは、アルコキシアルキル、およびアルコキシアリール基を含む。エーテルは、ポリエーテル(例えば、R13およびR14の一方または両方がエーテルである)も含む。
【0067】
本明細書で用いられる用語「ハロ」、または「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0068】
本明細書で用いられる用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環の」は、同意語であり、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1、2、または3個のヘテロ原子を含有する飽和または不飽和3、4、5、6、または7員環を意味する。複素環は、芳香族性(ヘテロアリール)または非芳香族性であってもよい。複素環は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルデヒド、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、オキソ、ニトロ、スルホネート、スルホニル、およびチオを含む1個以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよい。
【0069】
複素環は、二環式、三環式、および四環式の基(上述の複素環のいずれかが、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから独立して選択される1個以上の環に融合している)も含む。例えば、複素環は、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ビオチニル、シンノリニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、フリル、ホモピペリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリジン−2−オニル、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、キノキサロイル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、チオピラニル、およびトリアゾリルを含む。
【0070】
複素環はまた、架橋二環式の基(単環式の複素環基が、
【化8】
のようなアルキレン基により、架橋されていてもよい)を含む。
【0071】
複素環はまた、式
【化9】
[式中、X*およびZ*は、独立して、−CH2−、−CH2NH−、−CH2O−、−NH−、および−O−から選択される、但し、X*およびZ*の少なくとも1つは、−CH2−ではなく、そしてY*は、−C(O)−および−(C(R’’)2)v−(R’’は、水素またはC1−4アルキルであり、そしてvは、1〜3を含む整数である)から選択される]の化合物を含む。これらの複素環は、1,3−ベンゾジオキソリル、1,4−ベンゾジオキサニル、および1,3−ベンゼンイミダゾール−2−オンを含む。
【0072】
本明細書で用いられる用語「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」は、ラジカル−OHを意味する。
【0073】
本明細書で用いられる「耐糖能」は、グルコース、またはグルコースに変換され得るいくつかの他の糖を投与した後、あるいはグルコース、または消費後、グルコースに変換され得るもののいずれかを含有する食品を消費した後、グルコースホメオスタシスを維持する対象の能力を意味する。グルコースホメオスタシスは、生理学的に許容される範囲内で血糖レベルを維持するための細胞のグルコースの取り込みにより、維持され得る。
【0074】
本明細書で用いられる「インスリン感受性」は、グルコースを取り込むよう細胞を刺激するインスリンの能力を意味する。
【0075】
本明細書で用いられる用語「ケトン」は、構造−R15−C(O)−R16−を有するラジカルを意味する。ケトンは、R15またはR16を通じて別の基に結合していてもよい。R15またはR16は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはアリールであってもよい。別法として、R15またはR16は、結合して、3から12員環を形成していてもよい。例えば、ケトンは、アルカノイルアルキル、アルキルアルカノイルなどを含む。
【0076】
本明細書で用いられる用語「ニトロ」は、ラジカル−NO2を意味する。
【0077】
本明細書で用いられる用語「オキソ」は、別の原子に二重結合している酸素原子を意味する。例えば、カルボニルは、オキソ基を有する炭素原子である。
【0078】
本明細書で用いられる用語「ペルフルオロアルキル」は、全ての水素原子がフッ素原子により置換されたアルキル基を意味する。
【0079】
本明細書で用いられる用語「フェニル」は、1個の芳香環を有する単環式の炭素環系を意味する。フェニル基は、シクロヘキサンまたはシクロペンタン環に融合していてもよい。フェニル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルデヒド、アルコキシ、アミド、アミノ、アリール、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、スルホネート、スルホニル、およびチオを含む1個以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよい。
【0080】
本明細書用いられる「医薬的に許容される賦形剤」は、医薬上の投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などを意味する。
【0081】
本明細書で用いられる用語「プロドラッグ」は、例えば、血液における加水分解により、本明細書に記載される式の化合物にインビボで迅速に変換される化合物を表す。詳細は、Han AAPS Pharmsci 2(1):6 (2000)、およびRoche, ed., 1987, Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Pressにおいて提供されている。
【0082】
本明細書で用いられる「対象」は、任意の哺乳類を意味し、ヒトを含むが、これに限定されない。
【0083】
本明細書で用いられる用語「チオ」は、構造R17S−(R17は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アミノ、およびアミドから選択され得る)を有するラジカル、例えば、アルキルチオ、アリールチオ、チオールなどを意味する。「チオ」はまた、酸素がイオンによって置換されているラジカルを意味し、例えば、−N−C(S)−は、チオアミドまたはアミノチオカルボニルであり、アルキル−S−は、チオアルコキシ(アルキルチオと同義)である。
【0084】
本明細書で用いられる用語「処置する」、「処置」、および「処置すること」は、次のいずれかを意味する:疾患または状態の重症度の低減;疾患経過期間の低減;疾患または状態に付随する1つ以上の症状の改善;必ずしも疾患または状態の治癒ではないが、疾患または状態を有する対象への有益な効果の提供;疾患または状態に付随する1つ以上の症状の予防。本明細書で用いられる用語「処置する」、「処置」、および「処置すること」は、別段に明示的に定められた場合を除き、糖尿病性腎症に付随する腎肥大および過形成の処置を含まない。
【0085】
B.医薬組成物
本発明の方法で用いるための医薬組成物が提供される。本発明の組成物は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤、および医薬的に許容される担体または賦形剤を含む。適当な医薬担体の例は、例えば、E.W. Martin, 1990, Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., Mack Pub. Co., Easton, PAに記載されている。適当な賦形剤は、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、ラチン、モルト、ライス、穀粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。本発明の組成物はまた、pH緩衝化試薬、および湿潤剤または乳化剤を含有していてもよい。組成物は、さらに、治療作用の補足、追加、または増強をもたらす他の活性化合物を含有していてもよい。医薬組成物はまた、容器、箱、またはディスペンサー内に投与の指示書と共に入れられていてもよい。
【0086】
医薬的に許容される塩は、出発または基本の化合物と比較して水溶解性が増大しているため、医薬的適用に特に適するものであり得る。1つの実施態様において、これらの塩は、医薬的に許容されるアニオンまたはカチオンを有し得る。本発明の化合物の医薬的に許容される酸付加塩のうち適当なものは、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸)、および有機酸(例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グリコール酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸、および酒石酸)の塩を含む。適当な医薬的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムおよびカリウム塩)、およびアルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウムおよびカルシウム塩)を含む。
【0087】
C.投与および投薬方法
経口投与のため、本発明の医薬組成物は、通常の方法により製造される錠剤またはカプセル剤の形態をとってもよい。一般に、経口用組成物は、不活性な希釈剤または可食担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル内に取り込まれるか、あるいは錠剤内に圧縮され得る。経口治療投与の目的上、式Iaまたは式Ibの化合物は、賦形剤と共に取り込まれ、錠剤またはカプセル剤の形態で用いられ得る。医薬的に適合する結合剤、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、ピル、カプセル剤などは、次の成分;微結晶セルロース、ゴム、トラガカント、またはゼラチンのような結合剤;スターチまたはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesのような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;スクロースまたはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料のような香料、または類似の性質の化合物のいずれかを含有し得る。
【0088】
本発明の組成物はまた、液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として調製されてもよい。液剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または可食硬化油脂)、乳化剤(レシチン、またはアラビアゴム)、非水性ビークル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油)、および保存剤(例えば、メチル−またはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)を含んでいてもよい。製剤はまた、香料、着色剤、および甘味料を含んでいてもよい。別法として、組成物は、水または他の適当なビークルを用いて構成するための乾燥製品として提示されてもよい。口腔投与および舌下投与のため、組成物は、通常のプロトコールによる、錠剤、トローチ剤、または速溶性フィルムの形態をとってもよい。
【0089】
吸入による投与のため、本発明により用いられる化合物は、適当な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適当なガスと共に、加圧型パックまたは噴霧器(例えば、PBS中)からエアゾールスプレーの形態で都合よくもたらされる。加圧型エアゾールの場合に、投薬単位は、定量をもたらすバルブを用意することにより、決定され得る。吸入剤または吸入器において用いるため、化合物、およびラクトースまたはスターチのような適当な粉末基材の粉末混合物を含有する、例えば、ゼラチンのカプセル剤およびカートリッジが製剤されてもよい。
【0090】
本発明の医薬組成物は、ボーラス投与による非経腸投与(すなわち、静脈内または筋肉内)のために、製剤されてもよい。注射用製剤は、添加保存剤と共に、例えば、アンプル剤またはマルチドース容器中、単位投薬形態で提示されてもよい。組成物は、油性または水性ビークル中の懸濁剤、溶剤、または乳剤のような形態をとってもよく、かつ懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤のような調剤用の剤を含有していてもよい。別法として、有効成分は、適当なビークル、例えば、パイロジェンフリーの水を用いて構成するための粉末形態であってもよい。
【0091】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような通常の座剤基材を含有する、座剤または停留浣腸として直腸投与用に製剤されてもよい。
【0092】
一般的にはM3阻害剤、そして具体的にはグルコシルセラミド合成酵素阻害剤の用量は、対象および用いられる具体的な投与経路に依存して変動するだろう。投薬量は、1日当たり、0.1から500mg/体重1kgの範囲であり得る。1つの実施態様において、投与範囲は、1〜20mg/kg/日である。GM3阻害剤は、継続して、あるいは特定の指定された間隔で投与され得る。例えば、毎日または1日2回用の製剤のような、GM3阻害剤が、1日当たり1、2、3、または4回投与されてもよい。市販のアッセイを利用して、最適な用量範囲、および/または投与スケジュールが決定され得る。血糖レベルを測定するアッセイは、商業化されている(例えば、OneTouch(登録商標)Ultra(登録商標), Lifescan, Inc. Milpitas, CA)。ヒトインスリンレベルを測定するためのキットも商用化されている(Linco Research, Inc. St. Charles, MO)。
【0093】
加えて、有効用量は、動物モデルから得られた用量反応曲線から推定され得る。糖尿病動物モデルの使用は、以下に記載される。他の動物モデルが当該分野において知られている(例えば、Comuzzie et al., Obes. Res. 11(1):75 (2003);Rubino et al., Ann. Surg. 240(2):389 (2004);Gill-Randall et al., Diabet. Med. 21(7):759 (2004)を参照)。1種類の動物モデルで達成される治療上有効な投薬量は、ヒトを含む別の動物で使用するため、当該技術分野において知られている変換係数(例えば、Freireich et al., Cancer Chemother. Reports 50(4):219 (1996)、および以下の等価表面積投薬量係数についての表2を参照)を用いて、変換され得る。
【0094】
【表1】
【0095】
D.併用療法
本発明は、糖尿病を処置するための併用療法も意図している。該併用療法は、本明細書で記載される化合物のいずれか、および糖尿病の処置に適した少なくとも1種類の他の化合物を含み得る。2型糖尿病を処置するために用いられる化合物の例は、インスリン(Novolin(登録商標)、Novolog(登録商標);Velosulin(登録商標)、Novo Nordisk A/S)、スルホニル尿素(Diabinese(登録商標)、Glucotrol(登録商標)、Glucotrol XL(登録商標);Pfizer, New York, NY)(Diabeta(登録商標)、Amaryl(登録商標);Aventis, Bridgewater, NJ)、メトホルミン、α−グルコシダーゼ阻害剤(Glyset(登録商標);Pharmacia, New York, NY)、チアゾリジインジオン(thiazolidiinedione)(Actos(登録商標);Takeda Pharmaceuticals America, Inc, Lincolnshire, IL)(Avandia(登録商標);GlaxoSmithKline, Upper Merrian, PA)、グリブリド(Orinase(登録商標)、Tolinase(登録商標)、Micronase(登録商標)、Glynase(登録商標);Pharmacia Corp., New York, NY)、ナテグリニド(Starlix(登録商標);Novartis Pharmaceuticals, Cambridge, MA)、レパグリニド(Prandin(登録商標);Novo Nordisk, Princeton, NJ)、およびAvandamet(登録商標)(GlaxoSmithKline, Upper Merrian, PA)のような複合薬を含むが、これらに限定されない。
【実施例】
【0096】
実施例1:3T3−L1細胞におけるGM3の阻害
未分化3T3−L1前脂肪細胞を、濃度0、16、64、250、および1000nMのD−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールで48時間処置した。細胞を回収し、1/100希釈のマウスモノクローナル抗GM3 IgM抗体(Seikagaku America, Falmouth, MA)、次に、1/100希釈の蛍光標識ヤギ抗マウスIgM(Alexa Fluor 488(登録商標))(Molecular Probes, Eugene, OR)とインキュベーションした。GM3陽性細胞のパーセンテージを、蛍光標示式細胞分取器(FACS)分析により決定した。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、250nMまで用量に依存してGM3レベルを低減することを示した(図1)。
【0097】
実施例2:分化した脂肪細胞におけるTNF−α誘導性GM3の阻害
3T3−L1細胞を、10% 仔ウシ血清(Invitrogen/Gibco, Carlsbad, CA)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Invitrogen/Gibco, Carlsbad, CA)においてコンフレントまで増殖させた。培地を、10% ウシ胎児血清(FBS)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、1μM デキサメタゾン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、および1.7μM インスリン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加したDMEMに交換することにより、分化を誘導した。72時間後、培地を、10% FBS、および100ng/ml インスリンを添加したDMEMに交換した。分化誘導の10日後、90%より多くの細胞が、脂肪細胞(Oil Redを用いた染色、脂質については組織化学染色により決定)に分化していた。次に、脂肪細胞を、0.2nM TNF−α、または5μM D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールの存在下または不存下で、共に96時間インキュベーションした。次に、処理した細胞を、GM3について免疫染色(図2 上方のパネル)するか、あるいはDAPIで対比染色(図2 下方のパネル)した。ぞれぞれ図2cおよび2dに示すように、0.2nM TNF−αは、分化した脂肪細胞におけるGM3の発現を誘導し、そして5μM D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールは、この効果を排除した。
【0098】
実施例3:インビボでのグルコシルセラミドレベルの低減
Zucker糖尿病肥満(ZDF)fa/faラットは、認められた2型糖尿病の動物モデルである(Hunt et al., Fed. Proc. 35(5):1206 (1976))。4週齢のZDFラット、ならびにやせ形対照同腹仔をCharles River Laboratories(Wilmington, MA)より得た。ラットを24℃、12時間毎の明暗サイクルで飼育し、Purina 5008餌(Purina Mills, LLC, St. Louis MO)を与えた。ラットを、研究前の1週間順応させた。次に、ラットに7日間毎日、水を経口経管栄養で与え、経口経管栄養法に順応させた。最初の7日間経過後、75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールを6週間毎日、経口経管栄養でマウスに与えた。年齢の同じZDFラットおよびやせ形ラットの対照群に、水を経口経管栄養で与えた。研究の最後に、肝臓を回収し、グルコシルセラミド(GL1)を抽出し、薄層クロマトグラフィーによりアッセイした。GL1のレベルを、500nmol 無機リン酸塩(Pi)当量に対して標準化した(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果(図3)は、薬物で処置したラットのみでなく、無処置ZDFラットも、無処置やせ形ラットより低いGL1レベルを有することを示した。
【0099】
各群のラットを、いくつかの生理学的パラメーターについてモニターした。D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールは、ZDFラットの体重または食物消費に有意には影響しなかった。各群の体重および食物摂取を、1週間に2、3回モニターした。各群についての平均体重(図4a)、および水で処置されたZDF対照群に対する各群の消費食物のパーセンテージ(図4b)を示す(N=1群当たり6匹のラット)。
【0100】
D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールは、ZDFラットにおいて、糖尿病に付随する症状である関連する腎臓および肝臓の重量を低減した。薬物または水での処置の6週間後、肝臓(図5a)および腎臓(図5b)を解剖し、重量を測定した(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果を、総体重のパーセンテージとして表す。水を与えたやせ形ラットを対照として用いた。
【0101】
実施例4:ZDFラットにおける血糖レベルの低減および血液インスリンレベルの同時維持
ZDFラットを、75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノール、または水で毎日処置した。やせ形対照ラットには水を与えた。処置開始の4日前、および11、25、および39日後、午前8時から9時の間に尾静脈を傷つけて(tail vein nick)、血液を採取し、グルコースをAccu-Chek Compact Meter(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN)を用いて測定した。尾静脈採血と同時に眼窩後神経叢穿刺(retroorbital plexus puncture)により、血液を採取した。血漿インスリンレベルを、ELISAキット(Crystal Chem, Inc., Downers Grove, IL)によりアッセイした(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、ZDFラットにおいて血糖レベルを低減することを示した(図6a)。薬物はまた、同じラットのインスリンレベルを維持した(図6b)。
【0102】
実施例5:ZDFラットにおける耐糖能
処置前、および75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールでの処置の開始の2、4、および6週後に、各群のラットにおいて耐糖能試験を行った。経口経管栄養により毎日薬物を投与した。各試験の前一晩、動物を絶食にし、各注入の直前にベースラインのグルコースレベルを測定した。グルコース溶液(2g/kg)(Sigma, St. Louis, MO)を動物に腹腔内注射し、注射の20、40、60、および120分後に、尾静脈を傷つけて血液を採取した。グルコースレベルをAccu-Chek Compact Meter(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN)を用いて測定した(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果は、薬物での処置の4および6週間後に、ZDFラットにおいて耐糖能が改善することを示した(図7)。
【0103】
実施例6:ZDFラットにおける糖化ヘモグロビンレベル
各群のラットの血糖レベルの別の指標として、糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを測定した。75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールでの処置(経口経管栄養により毎日投与)の6週間後、ハンドヘルドのA1C Now(登録商標)モニター(Metrika, Inc., Sunnyvale, CA)を用いて、血中HbA1cレベルを測定した(N=1群当たり6匹のラット±SEM)。結果は、薬物がZDFラットにおいてHbA1cレベルを低減することを示した(図8)。
【0104】
実施例7:ZDFラットの筋組織におけるインスリン受容体のリン酸化
75mg/kg D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノール(経口経管栄養により毎日投与)で6週間処置したZDFラットを対照群ラットと共に一晩絶食にした。翌朝、ラットを麻酔し、ヒトインスリン(Humulin、5U)(Eli Lily and Company, Indianapolis, IN)を肝門静脈内に注射した。注射の2分後、大腿四頭筋を回収し、直ちに液体窒素にて凍結した。抗IRβ抗体(IRAb)(Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)を用いて、筋肉ホモジネートからインスリン受容体(IR)を免疫沈降し、次に、免疫沈降物を、リン酸化レベルを測定するために抗ホスホチロシン抗体(pY20 Ab)(BD Bioscience, San Diego, CA)、またはIRタンパク質レベルを測定するために抗IRβ抗体(IR Ab)(Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)のいずれかを用いて分析した。化学発光(ECL Western Kit, Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を用いて、ブロットを視覚化し、X線フィルムに曝露させた。結果は、薬物が、無処置対照群と比較して、インスリン受容体のリン酸化を増大させることを示し、ゆえに、薬物での処置が、インスリンで刺激された後のZDFラットにおけるIRシグナル伝達能を増強することが示唆される(図9)。
【0105】
実施例8:2型糖尿病の食餌誘導性肥満(DIO)マウスモデルにおける生理学的パラメーター
4週齢のオスのC57BL/6JマウスをThe Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入した。それらを20〜24℃、12時間毎の明暗サイクルで飼育した。食餌を与える前に1週間、マウスを小屋に順応させた。第1の群のマウスに高脂肪食餌(D12451i 45% kcal)(Research Diets, Inc., New Brunswick, NJ)を与えた。第2の群のマウスに通常の餌(Purina 5K52 6%)(Purina Mills, LLC, St. Louis MO)を与えた。体重を毎週測定した。マウスに7日間餌を与え、次に、食後血糖およびインスリンレベルを測定した。高脂肪食餌を与えたマウスのうち、肥満になり、中程度の高血糖および高インスリン血症を示すものをさらなる研究のため選択し、対照群と処置群に分けた。処置群および対照群は平均体重、グルコースおよびインスリンレベルの点で一致させた。通常の餌を与えたマウスをやせ形対照として用いた。DIOマウス2群およびやせ形対照の体重、グルコース、およびインスリンレベルを図10に示す。
【0106】
処置群には、125mg/kg/日 D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールを10週間、経口経管栄養にて与えた。対照群には、水を10週間、経口経管栄養にて与えた。体重および食物摂取を毎週モニターした(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。薬物は、食物消費に影響しなかった(図11b)が、DIOマウスの体重増加を低減した(図11a)。
【0107】
実施例9:DIOマウスにおけるTNF−αレベル
処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)開始の9週間後、血液を眼窩後神経叢穿刺により採取し、ELISAキット(R&D Systems)を用いて、血漿TNF−αを測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールでの処置が、DIOマウスにおいてTNF−αレベルを阻害することを示した(図12)。
【0108】
実施例10:DIOマウスにおける血糖レベル
処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)開始の0、25、46、および63日後に、尾静脈を傷つけて血液を採取した。午前8時から9時の間に試料を採取し、グルコースをAccu-Chek Compact(登録商標)Meter(Roche Diagnostics Corp., St. Louis, MO)を用いて測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、無処置対照と比較してDIOマウスにおいて血糖レベルを低減し、かつ差は経時的に増大することを示した。
【0109】
実施例11:DIOマウスにおけるインスリンレベル
0日目、および処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)の開始後25日および46日目に、眼窩後神経叢穿刺により血液を採取した。血漿インスリンレベルをELISAキット(Crystal Chem. Inc., Downers Grove, IL)により測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、無処置対照と比較してDIOマウスにおいてインスリンレベルを低減することを示した(図14)。
【0110】
実施例12:DIOマウスにおける耐糖能
処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)の開始の4.5、7.5、および9.5週後に試験を行った。各試験の前一晩、動物を絶食にした。注射の直前にベースラインのグルコースレベルを測定した。動物にグルコース溶液(2g/kg,Sigma, St. Louis, MO)を腹腔内注射し、注射の20、40、60、および120分後に、尾静脈を傷つけて血液を採取した。グルコースレベルをAccu-Chek Compact Meter(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN)を用いて測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールが、DIOマウスにおいて耐糖能を改善することを示した(図15)。
【0111】
実施例13:DIOマウスにおける糖化ヘモグロビンレベル
各群のマウスにおける血糖レベルの別の指標として、糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを測定した。D−トレオ−1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールでの処置(125mg/kgにて経口経管栄養により毎日投与)の10週間後に、血中の糖化ヘモグロビンHbA1cレベルをハンドヘルドのA1C Now(登録商標)モニター(Metrika, Inc., Sunnyvale, CA)を用いて測定した(N=1群当たり10匹のマウス±SEM)。結果は、薬物処置が、HbA1cレベルを正常やせ形マウスのレベルまで正常化するこをと示した(図16)。
【0112】
本明細書で引用される参考文献は全て、全体として引用により本明細書に取り込まれる。引用により取り込まれる刊行物、および特許または特許出願が本明細書に含まれる記載と矛盾する範囲では、本明細書が、任意のかかる矛盾する構成要素に優先し、および/または勝ることが意図されている。
【0113】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる成分の量、反応条件などを表す数字は全て、用語「約」により全ての場合で修飾されることは理解されるべきことである。従って、それとは反対に示されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において説明される数値パラメーターは、本発明により得られることが求められる所望の特性に依存して変動し得る近似値である。本請求の範囲の範囲と均等な主義の出願を制限することの試みとしてではなく、少なくとも、各数値パラメーターは、有効数字の数および通常の四捨五入方法に照らして解釈されるべきである。
【0114】
本発明の多くの修飾およびバリエーションは、その精神および範囲から逸脱することなく成され、ならびにそれは当業者に明らかであろう。本明細書に記載の特定の実施態様は、例示のみの目的で提供され、決して制限することを意味するものではない。本明細書および実施例は、例示のみとみなされ、本発明の真の範囲および精神は、添付の請求の範囲により示されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型糖尿病を有する対象の処置方法であって、式Ib
【化1】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、R2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
R1が必要に応じて置換されている芳香環である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1が必要に応じて置換されているフェニル基である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
R1がフェニル基であり;R2がアルキル基であり;そしてR3が第三級環状アミンであり、かつ該第三級環状アミンがモルホリン基ではない、請求項3記載の方法。
【請求項5】
R1が置換フェニル基である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
R1が(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
R3がピロリジンである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
R2が少なくとも7個の炭素原子を含むものである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
R2が必要に応じて置換されているC7−C18アルキル基である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
R2が、必要に応じて置換されているC7アルキル基である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
R2が1−(1−ヒドロキシヘプチル)および1−(6−ヒドロキシヘプチル)から選択されるものである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
R2が必要に応じて置換されているC8アルキル基である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
R2が1−(1−ヒドロキシオクチル)および1−(7−ヒドロキシオクチル)から選択されるものである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
式Ibの化合物が遊離塩基の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
式Ibの化合物が医薬的に許容される塩の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
医薬的に許容される塩が、クエン酸塩、酒石酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、およびp−トルエンスルホン酸塩(トシラート)から選択されるものである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
式Ibの化合物がD−トレオ異性体である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
式Ibの化合物がL−トレオ異性体である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
式Ibの化合物がL−エリトロ異性体である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
式Ibの化合物がD−エリトロ異性体である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
式Ibの化合物が酒石酸塩であり、かつR1がD−トレオ−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルであり、R3がピロリジンであり、そしてR2がC7アルキル基である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
式Ibの化合物が酒石酸塩であり、かつR1がD−トレオ−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルであり、R3がピロリジンであり、そしてR2がC8アルキル基である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
組成物が医薬的に許容される賦形剤をさらに含むものである、請求項1記載の方法。
【請求項24】
式Ibの化合物が経口投与されるものである、請求項1記載の方法。
【請求項25】
式Ibの化合物の対象への投与が、化合物で処置されていない対象と比較して、対象における血糖レベルを低減させるものである、請求項1記載の方法。
【請求項26】
式Ibの化合物の対象への投与が、化合物で処置されていない対象と比較して、対象における血液インスリンレベルを増大させるものである、請求項1記載の方法。
【請求項27】
スルホニル尿素、メトホルミン、α−グルコシダーゼ阻害剤、トログリタゾン、グリブリド、ナテグリニド、チアゾリジインジオン(thiazolidiinedione)、およびレパグリニドから選択される少なくとも1種類の化合物を対象に投与することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
式Ibの化合物が、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールである、請求項1記載の方法。
【請求項29】
式Ibの化合物が、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−オクタノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールである、請求項1記載の方法。
【請求項30】
R1が置換フェニル基である、請求項4記載の方法。
【請求項31】
置換フェニル基が(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
R3がピロリジンである、請求項4記載の方法。
【請求項33】
R2が少なくとも7個の炭素原子を含むものである、請求項4記載の方法。
【請求項34】
R2がC7−C18アルキル基である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
アルキル基がC7アルキル基である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
R2がC8アルキル基である、請求項33記載の方法。
【請求項37】
化合物が遊離塩基の形態である、請求項4記載の方法。
【請求項38】
化合物が医薬的に許容される塩の形態である、請求項4記載の方法。
【請求項39】
塩が、クエン酸塩、酒石酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、およびp−トルエンスルホン酸塩(トシラート)から選択されるものである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
化合物がD−トレオ異性体である、請求項4記載の方法。
【請求項41】
化合物がL−トレオ異性体である、請求項4記載の方法。
【請求項42】
化合物がL−エリトロ異性体である、請求項4記載の方法。
【請求項43】
化合物がD−エリトロ異性体である、請求項4記載の方法。
【請求項44】
化合物が酒石酸塩であり、かつR1がD−トレオ−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルであり、R3がピロリジンであり、そしてR2がC7アルキル基である、請求項4記載の方法。
【請求項45】
化合物が酒石酸塩であり、かつR1がD−トレオ−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルであり、R3がピロリジンであり、そしてR2がC8アルキル基である、請求項4記載の方法。
【請求項46】
組成物が、医薬的に許容される賦形剤をさらに含むものである、請求項4記載の方法。
【請求項47】
化合物が経口投与されるものである、請求項4記載の方法。
【請求項48】
化合物の対象への投与が、化合物で処置されていない対象と比較して、対象における血糖レベルを低減させるものである、請求項4記載の方法。
【請求項49】
化合物の対象への投与が、化合物で処置されていない対象と比較して、対象における血液インスリンレベルを増大させるものである、請求項4記載の方法。
【請求項50】
スルホニル尿素、メトホルミン、α−グルコシダーゼ阻害剤、トログリタゾン、グリブリド、ナテグリニド、チアゾリジインジオン、およびレパグリニドから選択される少なくとも1種類の化合物を対象に投与することをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項51】
対象における血糖を低下させる方法であって、治療上有効量の式Ib
【化2】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項52】
対象における耐糖能を改善する方法であって、式Ib
【化3】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項53】
対象における血漿TNF−αを低減させる方法であって、式Ib
【化4】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項54】
対象における糖化ヘモグロビンレベルを低減させる方法であって、式Ib
【化5】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項55】
糖尿病性腎症に付随する腎肥大または過形成を有する対象を処置する方法であって、式Ib
【化6】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項56】
2型糖尿病の処置のための医薬の製造における、式Ib
【化7】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物の使用。
【請求項1】
2型糖尿病を有する対象の処置方法であって、式Ib
【化1】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、R2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
R1が必要に応じて置換されている芳香環である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1が必要に応じて置換されているフェニル基である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
R1がフェニル基であり;R2がアルキル基であり;そしてR3が第三級環状アミンであり、かつ該第三級環状アミンがモルホリン基ではない、請求項3記載の方法。
【請求項5】
R1が置換フェニル基である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
R1が(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
R3がピロリジンである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
R2が少なくとも7個の炭素原子を含むものである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
R2が必要に応じて置換されているC7−C18アルキル基である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
R2が、必要に応じて置換されているC7アルキル基である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
R2が1−(1−ヒドロキシヘプチル)および1−(6−ヒドロキシヘプチル)から選択されるものである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
R2が必要に応じて置換されているC8アルキル基である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
R2が1−(1−ヒドロキシオクチル)および1−(7−ヒドロキシオクチル)から選択されるものである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
式Ibの化合物が遊離塩基の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
式Ibの化合物が医薬的に許容される塩の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
医薬的に許容される塩が、クエン酸塩、酒石酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、およびp−トルエンスルホン酸塩(トシラート)から選択されるものである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
式Ibの化合物がD−トレオ異性体である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
式Ibの化合物がL−トレオ異性体である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
式Ibの化合物がL−エリトロ異性体である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
式Ibの化合物がD−エリトロ異性体である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
式Ibの化合物が酒石酸塩であり、かつR1がD−トレオ−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルであり、R3がピロリジンであり、そしてR2がC7アルキル基である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
式Ibの化合物が酒石酸塩であり、かつR1がD−トレオ−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルであり、R3がピロリジンであり、そしてR2がC8アルキル基である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
組成物が医薬的に許容される賦形剤をさらに含むものである、請求項1記載の方法。
【請求項24】
式Ibの化合物が経口投与されるものである、請求項1記載の方法。
【請求項25】
式Ibの化合物の対象への投与が、化合物で処置されていない対象と比較して、対象における血糖レベルを低減させるものである、請求項1記載の方法。
【請求項26】
式Ibの化合物の対象への投与が、化合物で処置されていない対象と比較して、対象における血液インスリンレベルを増大させるものである、請求項1記載の方法。
【請求項27】
スルホニル尿素、メトホルミン、α−グルコシダーゼ阻害剤、トログリタゾン、グリブリド、ナテグリニド、チアゾリジインジオン(thiazolidiinedione)、およびレパグリニドから選択される少なくとも1種類の化合物を対象に投与することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
式Ibの化合物が、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−ノナノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールである、請求項1記載の方法。
【請求項29】
式Ibの化合物が、1−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニル−2−オクタノイルアミノ−3−ピロリジノ−1−プロパノールである、請求項1記載の方法。
【請求項30】
R1が置換フェニル基である、請求項4記載の方法。
【請求項31】
置換フェニル基が(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
R3がピロリジンである、請求項4記載の方法。
【請求項33】
R2が少なくとも7個の炭素原子を含むものである、請求項4記載の方法。
【請求項34】
R2がC7−C18アルキル基である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
アルキル基がC7アルキル基である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
R2がC8アルキル基である、請求項33記載の方法。
【請求項37】
化合物が遊離塩基の形態である、請求項4記載の方法。
【請求項38】
化合物が医薬的に許容される塩の形態である、請求項4記載の方法。
【請求項39】
塩が、クエン酸塩、酒石酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、およびp−トルエンスルホン酸塩(トシラート)から選択されるものである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
化合物がD−トレオ異性体である、請求項4記載の方法。
【請求項41】
化合物がL−トレオ異性体である、請求項4記載の方法。
【請求項42】
化合物がL−エリトロ異性体である、請求項4記載の方法。
【請求項43】
化合物がD−エリトロ異性体である、請求項4記載の方法。
【請求項44】
化合物が酒石酸塩であり、かつR1がD−トレオ−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルであり、R3がピロリジンであり、そしてR2がC7アルキル基である、請求項4記載の方法。
【請求項45】
化合物が酒石酸塩であり、かつR1がD−トレオ−(3’,4’−エチレンジオキシ)フェニルであり、R3がピロリジンであり、そしてR2がC8アルキル基である、請求項4記載の方法。
【請求項46】
組成物が、医薬的に許容される賦形剤をさらに含むものである、請求項4記載の方法。
【請求項47】
化合物が経口投与されるものである、請求項4記載の方法。
【請求項48】
化合物の対象への投与が、化合物で処置されていない対象と比較して、対象における血糖レベルを低減させるものである、請求項4記載の方法。
【請求項49】
化合物の対象への投与が、化合物で処置されていない対象と比較して、対象における血液インスリンレベルを増大させるものである、請求項4記載の方法。
【請求項50】
スルホニル尿素、メトホルミン、α−グルコシダーゼ阻害剤、トログリタゾン、グリブリド、ナテグリニド、チアゾリジインジオン、およびレパグリニドから選択される少なくとも1種類の化合物を対象に投与することをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項51】
対象における血糖を低下させる方法であって、治療上有効量の式Ib
【化2】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項52】
対象における耐糖能を改善する方法であって、式Ib
【化3】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項53】
対象における血漿TNF−αを低減させる方法であって、式Ib
【化4】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項54】
対象における糖化ヘモグロビンレベルを低減させる方法であって、式Ib
【化5】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項55】
糖尿病性腎症に付随する腎肥大または過形成を有する対象を処置する方法であって、式Ib
【化6】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物を含む治療上有効量の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項56】
2型糖尿病の処置のための医薬の製造における、式Ib
【化7】
[式中、
R1は、必要に応じて置換されている芳香環、または必要に応じて置換されている複素環であり;R2は、必要に応じて置換されているアルキル基であり;そしてR3は、必要に応じて置換されている第三級環状アミンである、
但し、R1が非置換フェニルであり、かつR2がn−ノニルであるとき、R3はモルホリンではない]
の化合物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−32377(P2013−32377A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−225142(P2012−225142)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【分割の表示】特願2007−541294(P2007−541294)の分割
【原出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225142(P2012−225142)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【分割の表示】特願2007−541294(P2007−541294)の分割
【原出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【Fターム(参考)】
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