説明

糖尿病の治療および予防用組成物

緑茶中に見出されるカテキン、例えば(−)エピガロカテキンガラート、およびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγは糖尿病の治療および予防に有用である)を活性化するリガンドを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病、またはシンドロームXや肥満症等の耐糖能異常を伴う他の状態の治療および予防用組成物に関する。より詳細には、本発明は、緑茶中に見出されるカテキン(以下:EGCG)、特に(−)エピガロカテキンガラート、およびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(以下:PPARγ)リガンドを含む組成物に関する。他の態様において、本発明は、PPARγリガンドの投与による糖尿病または肥満症の治療または予防において随伴して消費するための機能性食品組成物の製造における、EGCGの使用に関する。さらに他の態様において、本発明は、EGCGおよびPPARγリガンドを含む組成物の有効量を、そのような処置を必要とする個体に投与する、糖尿病またはシンドロームXや肥満症等の耐糖能異常を伴う他の状態の治療または予防方法に関する。
【0002】
本明細書中で使用される用語「組成物」は、EGCGとPPARγリガンドの混合物、特に、機能性食品組成物を含む。本明細書中で使用される用語「機能性食品」は、栄養および医薬分野の用途の両方における有用性を意味する。そこで、機能性食品組成物は、食品および飲料へのサプリメントとしての、ならびに従来の医薬賦形剤および助剤を含み且つカプセルまたは錠剤等の固形処方物または溶液剤もしくは懸濁剤等の液体処方物であってもよい経腸または非経口投与用の医薬処方物としての用途を見出すことができる。
【0003】
本明細書中で使用される用語「EGCG」は、(−)エピガロカテキンガラート(狭い意味のEGCG)および/またはその1以上の誘導体(エステル化体、グリコシド、硫酸エステル)、あるいは(−)エピガロカテキン(EGC)、(−)エピカテキン−3−ガラート(ECG)、(−)エピカテキン(EC)、(+)ガロカテキンおよび(+)カテキン等の緑茶中に見出される他のカテキン、ならびにそれらの誘導体を含む。本発明で使用するのに第一に興味がもたれるものは、(−)エピガロカテキンガラートである。
【0004】
本明細書中で使用される用語「PPARγ」リガンドは、核受容体PPARγを活性化または調節する化合物を意味し、それによりインシュリン感受性が向上する。PPARγリガンドは、完全アゴニスト、部分アゴニスト(選択的モジュレーター)、またはPPARα/γ二重(dual)もしくは汎(pan)アゴニストである。
【0005】
そのようなPPARγリガンドの例は、チアゾリジンジオン(以下、TZD)、例えば、グリタゾン(Glitazones)、例えば、シグリタゾン(ciglitazone)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)またはピオグリタゾン(pioglitazone);天然由来のPPARγリガンド、例えばリグスチリド(ligustilide)およびその内容が参照の目的で本明細書に組み入れられる欧州特許出願第3010804.7号明細書に開示の他のフタリド類縁体、例えば(E)−センキュノリド(senkyunolide)E;センキュノリドC;センキュノリドB;3−ブチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3,6,7−トリヒドロキシ−1(3H)−イソベンゾフラノン;3−ブチル−1(3H)−イソベンゾフラノン;3−ブチルフタリド;3−ブチリデンフタリド;チュアンギノール(chuangxinol);リグスチリジオール(ligustilidiol);センキュノリドF;3−ヒドロキシ−センキュノリドA;アンゲロイルセンキュノリドF(angeloylsenkyunolide F);センキュノリドM;3−ヒドロキシ−8−オキソ−センキュノリドA;リグスチリド;6,7−ジヒドロ−(6S,7R)−ジヒドロキシリグスチリド;3a,4−ジヒドロ−3−(3−メチルブチリデン)−1(3H)−イソベンゾフラノン;セダノリド;およびクニジリド(cnidilide)、特に、(E)−センキュノリドE、センキュノリドC、リグスチリド、セダノリド、および3−ブチリデンフタリド;エステル化形態(例えば、トリグリセリドまたはエチルエステル)または遊離形態にあるフィタン酸または多価不飽和脂肪酸(本明細書中では、PUFAとも称する)、特にω−3多価不飽和脂肪酸、例えばエイコサペンタエン酸(5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、EPA)およびドコサヘキサエン酸(4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、DHA)、またはω−6−多価不飽和脂肪酸、例えばγ−リノレン酸(6,9,12−オクタデカトリエン酸、GLA)である。
【0006】
特に、本発明の方法は、糖尿病患者がPPARγリガンドで処置されたときに観察される、脂肪細胞分化と随伴される体重の増加の阻害に有用である。したがって、本発明の組成物は、軽度耐糖能異常(IGT)および/または肥満症のそれらの個人ならびに確定された2型糖尿病の患者における、2型糖尿病の予防および治療に特に有効である。
【0007】
糖尿病は、慢性の代謝性疾患であり、それは複数の因子により引き起こされ、主たる公衆衛生上の問題となっている。非インシュリン依存性糖尿病(NIDDM、2型糖尿病)は、糖尿病の最も一般的な形態であり、欧米諸国において診断された糖尿病症例の90%にのぼる。2型糖尿病の罹患率は、少なくとも部分的には、肥満症の関数として、急激に増加している。2型糖尿病は既に欧米人口の6%を冒しており、2010年までに、2億人以上がこの病気にかかるであろうと予測されている。2型糖尿病は、インシュリン分泌およびインシュリンの作用の異常からもたらされる、高い血中グルコース濃度すなわち高血糖症を特徴とする。心臓病、脳卒中、腎不全、網膜症、および末梢神経障害を含む多くの糖尿病合併症が、高い比率の疾病率および死亡率の原因となっている。したがって、糖(グルコース)の恒常性の調節が糖尿病の処置にとって重要である。
【0008】
2型糖尿病の理想的な処置法は存在せず、疾患が進行するにつれて、利用可能な医薬のいずれもが、単独でまたは組合せの治療で、正常な血糖値への回復に十分に有効なものではない。食事制限と運動が2型糖尿病患者に対する第一選択の治療法であるが、しばしば、薬理学的な介入が必要となる。スルホニルウレアおよびビグアニド系医薬が、数十年の間、血糖値を調節するために広く使用されている。スルホニルウレアは、膵臓からのインシュリンの放出を促進する化合物である。しかしながら、スルホニルウレアでの処置は、低血糖症を引き起こす可能性があり、長く使用すると、副作用、特にインシュリン産生の減少をもたらす膵臓細胞の脱感作および/またはアポトーシスを招来する。ビグアニドは、肝臓での糖(グルコース)の産生を減少させる化合物であり、したがって、高血糖症の処置に有効である。
【0009】
PPARγリガンドは、2型糖尿病患者における高血糖症およびインシュリン抵抗性の処置における使用が提案されている。PPARγは脂肪組織で発現され、脂肪細胞の分化の調節に極めて重要な役割を果たす。脂肪組織において、TZD系の化合物は、脂肪細胞の分化を促進する。糖尿病患者において、数週間のTZD処置が、血漿での糖値の減少に必要である。このように、脂肪細胞の分化を促進するPPARγリガンドは、脂肪蓄積の増加と体重増加に導く。事実、PPARγアゴニストは、糖の恒常性におけるそれらの有益な効果の他に、ヒトでの脂肪細胞の分化および体脂肪の蓄積を増加させる。したがって、これらのPPARγアゴニストの使用は、2型糖尿病の長期間の処置には最適ではない。肥満症には、インシュリン抵抗性の進行が高度に伴い、体重増加は、増加した体重が処置の正の効果を減殺する場合、2型糖尿病の処置に不都合と考えられる。
【0010】
本発明によれば、EGCGおよびPPARγリガンドの組合せが、体脂肪の増加に導くPPARγアゴニスト誘起の脂肪細胞分化の望ましくない副作用の改善および/または除去をもたらすことが、驚くことに見出された。そこで、TZDまたはその薬理学的に活性な誘導体等のPPARγリガンドを、EGCGと組み合わせて使用すると、糖低下効果を維持もしくは増大しながら、2型糖尿病を処置し、且つPPARγアゴニスト誘起の脂質生成を阻害/減少することができる。
【0011】
EGCGおよびPPARγリガンドの組合せは、単一の単位投与形態で、あるいは組合せの各成分を一緒にまたは逐次的に投与される個々の投与形態で別々に患者に投与することによるかのいずれかで投与することができる。組合せが二つの別個の組成物として投与される場合、二つの薬剤の投与は、患者が両方の薬剤の組合せの利益を享受する期限内で行われる。
【0012】
本発明の組成物は、経口用途(例えば、錠剤、硬カプセルもしくは軟カプセル、水性もしくは油性懸濁剤、乳剤、分散性粉剤もしくは顆粒剤、シロップ剤またはエリキシル剤)に適した形態であってもよい。本発明の組成物は、この分野で周知の慣用の医薬賦形剤を使用して、慣用の手順により得ることができる。そこで、経口用途に意図された組成物は、例えば、1以上の着色料、甘味料、風味料および/または保存料を含有していてもよい。EGCGは、また、標準のPPARγリガンド処置と共にまたは天然PPARγリガンド、例えばリグスチリドおよび類縁体、例えば3−ブチルフタリドおよび3−ブチリデンフタリド、フィタン酸または多価不飽和脂肪酸、例えばエイコサペンタエン酸(5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、EPA)およびドコサヘキサエン酸(4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、DHA)と組み合わせて消費される食品中に包含されていてもよい。
【0013】
EGCG投与量は、約0.03〜約30mg/kg体重/日、より特定的には約0.2〜約7mg/kg体重/日である。EGCGが食品または飲料中で別個に投与される場合、当該食品は、一食分当たり約5mg〜約500mgのEGCGを含むことができる。
【0014】
PUFAの投与量は、約0.1〜約60mg/kg体重/日、より特定的には約0.2〜約7mg/kg体重/日である。PUFAが食品または飲料中で別個に投与される場合、当該食品は、一食分当たり約5mg〜約1000mgのPUFAを含むことができる。
【0015】
リグスチリドの投与量は、約0.01〜約50mg/kg体重/日、より特定的には約0.1〜約20mg/kg体重/日である。リグスチリドが食品または飲料中で別個に投与される場合、当該食品は、一食分当たり約5mg〜約1000mgのリグスチリドを含むことができる。
【0016】
フィタン酸の投与量は、約0.1〜約70mg/kg体重/日、より特定的には約0.2〜約20mg/kg体重/日である。フィタン酸が食品または飲料中で別個に投与される場合、当該食品は、一食分当たり約5mg〜約1000mgのフィタン酸を含むことができる。
【0017】
PPARγリガンド、例えばシグリタゾン、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンの投与量は、規制機関、例えばFDAにより使用が認可されている量であり、FDA刊行のOrange Bookに見出すことができるか、あるいはそうでなければ、医師に提案され、公知のものである。典型的な用量は、約70kg体重の成人に対して、約1〜約1000mg、特に約1mg〜約100mg、より特定的には約1mg〜約30mgの範囲である。あるいは、本発明に係る組合せに由来する利益を受けて、より少量の投与量を使用しても良い。
【0018】
以下、本発明を実施例によりさらに説明する。
【0019】
実施例1
A.脂肪細胞分化:ロシグリタゾンまたはピオグリタゾンと組み合わせたEGCG
C3H10T1/2(American Type Culture Collectionより得られた)を、コンフルエンスにまで増殖し、表1に示したように、インシュリンのみで、インシュリンとロシグリタゾンもしくはピオグリタゾンで、またはそれらのEGCGとの組合せで、11日間処理した。11日間の処理後、細胞をオイルレッドOで染色した。これに、濃度決定のための染色の抽出が続いた。結果を表1に示す。
【0020】
C3H10T1/2細胞のロシグリタゾンとインシュリンでのまたはピオグリタゾンとインシュリンでの同時処理は、インシュリンのみよりも、オイルレッドO染色のより多い量により表現される、これらの細胞の脂肪細胞へのより高度の分化をもたらした(表1)。インシュリン、ロシグリタゾンおよびEGCGでの、またはインシュリン、ピオグリタゾンおよびEGCGでの同時処理は、脂肪細胞の分化の減少をもたらした。
【0021】
【表1】

【0022】
結果は、EGCGがTZD誘起の脂肪細胞の分化を阻害したことを示す。このように、EGCGとPPARγリガンドの組合せは、2型糖尿病の進行を抑制する薬理学的処置を可能とし、同時に、PPARγアゴニストの副作用を最小化する。
【0023】
B.脂肪細胞分化:リグスチリドと組み合わせたEGCG
C3H10T1/2(American Type Culture Collectionより得られた)を、コンフルエンスにまで増殖し、表2に示したように、インシュリンのみで、またはインシュリンおよびリグスチリドで、またはインシュリン、リグスチリドおよびEGCGの組合せで、11日間処理した。11日間の処理後、細胞をオイルレッドOで染色した。これに、濃度決定のための染色の抽出が続いた。結果を表2に示す。
【0024】
C3H10T1/2細胞のリグスチリドとインシュリンでの同時処理は、インシュリンのみよりも、オイルレッドO染色のより多い量により表現される、これらの細胞の脂肪細胞へのより高度の分化をもたらした。インシュリン、リグスチリドおよびいくつかの濃度のEGCGでの同時処理は、脂肪細胞の分化の投与量依存的な減少をもたらした。
【0025】
【表2】

【0026】
上記の結果は、EGCGがリグスチリド誘起の脂肪細胞の分化を阻害したことを示す。このように、EGCGとPPARγリガンド、リグスチリドとの組合せは、2型糖尿病の進行を抑制する処置を可能とし、同時に、PPARγリガンドの副作用を最小化する。
【0027】
C.db/dbマウスモデルにおけるEGCGとPPARγアゴニスト、ロシグリタゾンの組合せ投与の効果
体重、脂肪過多および耐糖能に対するEGCGとロシグリタゾンの組合せおよび双方の化合物単独の有効性を、C57BLKS/J db/dbマウス(n=10/群)において、4週間の検討で試験した。重篤な高血糖症と肥満症を伴った後期2型糖尿病のこのモデルは、抗糖尿病性および抗肥満症性化合物の有効性を決定するために、広く使用される。
【0028】
雄性db/dbマウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME, USA)から得られた。8週齢の成体マウスを実験に使用した。マウスを一匹づつ床敷きしたプラスチックケージに入れ、標準ネズミ用食料と生水を自由に与えた。動物室を、温度(24℃)、湿度(55%)、および明るさ(12時間の明暗サイクル)に調節した。動物を4つの群に、無作為に分けた。EGCGおよびロシグリタゾンを、餌混合物として投与した。トウモロコシセルロース(食餌の2%)は、EGCGとロシグリタゾン用の担体物質としての、また単独で使用される場合には、偽薬としての役割を果した。第1群は偽薬を摂取し、第2群は1%のEGCGを含む食餌を摂取し、第3群は、0.038%のロシグリタゾンを含む食餌を摂取し、第4群は、1%のEGCGと0.038%のロシグリタゾンを含む食餌を摂取した。体重と食餌摂取量は、検討の間中、測定した。全脂肪組織重量は、NMRで測定した。4週間処置後、経口での耐糖能試験を、一晩の絶食期間の後に行った。血糖値は、経口での糖負荷(1g/kg体重)の投与前(絶食状態での血糖値)ならびに15、30、45、60、90、120、150および180分後に測定した。曲線下の面積(AUC)を、得られた血糖値曲線から算出し、耐糖能の指標として用いた。検討の最後に、糖、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸の摂食状態での濃度を、血漿中で測定した。全てのデータを、各群の動物の平均値として表す。検討期間の間、群の間で食餌摂取量に差異はなかった。
【0029】
結果を表3、表4および表5に示す。
【0030】
各処置群の体重と脂肪組織重量を表3に示す。ロシグリタゾンの投与は、体重と脂肪組織重量を有意に増加させた。EGCGの投与は、体重と脂肪組織の重量を対照のマウスに比べて、適度に減少させた。EGCGとロシグリタゾンの組合せ投与は、ロシグリタゾン単独で誘起された体重と脂肪組織重量の増加を、全体として帳消しした。また、組合せ投与は、対照のマウスに比べて、体重と脂肪組織重量の適度な減少をもたらした。この効果は、EGCG単独での投与の効果と類似であった。
【0031】
【表3】

【0032】
絶食状態での血糖値を表4に示す。
【0033】
絶食状態での血糖値は、対照マウスに比べて、EGCG、ロシグリタゾン、およびEGCGとロシグリタゾンの組合せで処置されたマウスで有意に減少した。曲線下の面積は、全ての処置群で有意に減少し、耐糖能がEGCG、ロシグリタゾン、およびEGCGとロシグリタゾンの組合せでの処置により、有意に改善されることを示した。また、EGCGとロシグリタゾンでの組合せ処置は、ロシグリタゾンまたはEGCG単独での処置に比べて、有意に改善された耐糖能をもたらした。
【0034】
【表4】

【0035】
摂食状態での糖、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸の血漿での濃度を表5に示す。
【0036】
摂食状態での糖、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸の血漿での濃度は、EGCG、ロシグリタゾン、およびEGCGとロシグリタゾンの組合せでの処置により有意に減少した。しかしながら、ロシグリタゾンの効果は、EGCGの効果に比べて、より大きかった。EGCGとロシグリタゾンでの組合せ処置は、ロシグリタゾン単独での処置に比べて、これらのパラメーターの同様な減少をもたらした。
【0037】
db/dbモデルは、抗糖尿病性および抗肥満症性化合物の有効性を決定するために、広く使用されている。表3,4および5に示されるように、これらのマウスは、重い肥満症および高血糖症を急速に発症する。さらに、db/dbマウスは、PPARγリガンド、ロシグリタゾンでの処置に良く応答し、ロシグリタゾンで処置されたヒトの患者と同様の典型的な薬効および副作用を示す。薬効は、絶食状態での血糖値の減少、トリグリセリドと遊離脂肪酸の血漿での濃度の改善、および耐糖能の向上である。最も重大な副作用の一つは、体重と脂肪組織量の顕著な増加である。ヒトにおいて、この効果は、大部分の場合に、既に太り過ぎである糖尿病患者の協力を制限する。さらに、脂肪過多の増大は、有意な二次的な健康への脅威を引き起こす可能性がある。そこで、PPARγアゴニストでの処置の薬効を維持または向上させ、同時に副作用を防止する補助療法は、すべての抗糖尿病処置方法の成功にとって、極めて重要である。
【0038】
【表5】

【0039】
上記の結果は、PPARγリガンドでの2型糖尿病および肥満症の処置における助剤としてのEGCGが、PPARγリガンド、ロシグリタゾンでの処置の副作用を、その薬効を維持または向上さえしつつ、予期せぬことに抑制することを示している。すなわち、EGCGでの補助療法は、ロシグリタゾン処置による体重と脂肪組織重量の増加を抑制した。血漿トリグリセリドと遊離脂肪酸濃度に対するロシグリタゾンの効果は維持され、耐糖能は、EGCGの同時投与によりさらに向上した。
【0040】
実施例2
軟ゼラチンカプセル
軟ゼラチンカプセルは、以下に記した成分を用いて、従来手順で製造した。
活性成分:EGCG 300mg;ロシグリタゾン 8mg
他の成分:グリセリン、水、ゼラチン、植物油
【0041】
実施例3
硬ゼラチンカプセル
硬ゼラチンカプセルは、以下に記した成分を用いて、従来手順で製造した。
活性成分:EGCG 150mg;ロシグリタゾン 8mg
他の成分:
充填剤:十分量のラクトースまたはセルロースまたはセルロース誘導体
滑剤:必要に応じてステアリン酸マグネシウム(0.5%)
【0042】
実施例4
錠剤
錠剤は、以下に記した成分を用いて、従来手順で製造した。
活性成分:EGCG 100mg;ピオグリタゾン 15mg
他の成分:微結晶性セルロース、二酸化ケイ素(SiO2)、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム。
【0043】
実施例5
30%ジュースでのソフトドリンク
I.ソフトドリンク化合物は、以下の成分から製造した。
ジュース濃縮物および水溶性フレーバー
[g]
1.1 オレンジ濃縮物
60.3°Brix、5.15%酸性度 657.99
レモン濃縮物
43.5°Brix、32.7%酸性度 95.96
オレンジフレーバー、水溶性 13.43
アプリコットフレーバー、水溶性 6.71
水 26.46
1.2 着色料
β−カロテン10%CWS 0.89
水 67.65
1.3 酸および酸化防止剤
アスコルビン酸 4.11
クエン酸無水物 0.69
水 43.18
1.4 安定剤
ペクチン 0.20
安息香酸ナトリウム 2.74
水 65.60
1.5 油溶性フレーバー
オレンジフレーバー、油溶性 0.34
蒸留オレンジオイル 0.34
1.6 活性成分
EGCG 5.0
【0044】
フルーツジュース濃縮物と水溶性フレーバーを、空気を混入せずに混合した。着色料を脱イオン水に溶解した。アスコルビン酸とクエン酸を水に溶解した。安息香酸ナトリウムを水に溶解した。ペクチンを攪拌下に加え、沸騰させながら溶解した。溶液を冷却した。オレンジオイルと油溶性フレーバーを予備混合した。1.6に挙げた活性成分を乾式混合し、次いで、好ましくはフルーツジュース濃縮物混合物(1.1)へと攪拌した。
【0045】
ソフトドリンク化合物を製造するために、1.1〜1.6の全ての部分を一緒に混合した後、ツラックス(Turrax)、次いで、高圧ホモジナイザー(p1=200バール、p2=50バール)を用い、均質化した。
【0046】
II.瓶詰め用シロップは、以下の成分からのソフトドリンク化合物から製造された。
[g]
ソフトドリンク化合物 74.50
水 50.00
糖シロップ60°Brix 150.00
【0047】
瓶詰め用シロップの成分を一緒に混合した。瓶詰め用シロップを水で希釈して、PPARγリガンドの投与に付随して消費するための即時飲用飲料1リットルとした。
【0048】
実施例6
穀物パン
活性成分:
EGCGおよび、PUFA(EPA;DHA;GLA)、リグスチリド、フィタン酸から選択される1以上の追加成分をこの食品に混入した。
EGCG:2〜100mg/一食分
PUFA(EPA;DHA;GLA):5〜200mg/一食分
リグスチリド:2〜100mg/一食分
フィタン酸:5〜200mg/一食分
典型的な一食分:50g
【0049】
[%]
5穀物粉 56.8
水 39.8
イースト 2.3
塩 1.1
【0050】
イーストを水の一部に溶解した。全ての成分を一緒に混合して、生地を作った。塩を混練時間の最後に加えた。発酵後、生地を再加工し、分割し、一塊のパンを作った。一塊のパンを水でブラシ掛けし、小麦粉を振りかけた後、焼き上げた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶中に見出されるカテキンおよびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)リガンドを含む組成物。
【請求項2】
カテキンが(−)エピガロカテキンガラートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
PPARγリガンドが、完全アゴニスト、部分アゴニスト、選択的PPARγモジュレーター/アゴニスト、PPARγ二重アゴニストまたは汎アゴニストである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
PPARγリガンドがチアゾリジンジオンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
チアゾリジンジオンがシグリタゾン、ロシグリタゾンまたはピオグリタゾンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
PPARγリガンドが天然のPPARγアゴニストである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
PPARγリガンドがPUFAである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
PUFAがエイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
PPARγリガンドがリグスチリドである、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
PPARγリガンドがフィタン酸である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
(−)エピガロカテキンガラートが、成人に約10mg〜約2000mgの一日用量を投与するのに十分な量で存在する、請求項2〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
機能性食品組成物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
糖尿病および/または肥満症とシンドロームXの治療または予防用の機能性食品組成物の製造における、緑茶中に見出されるカテキンおよびPPARγリガンドの使用。
【請求項14】
PPARγリガンドの投与による糖尿病および/または肥満症とシンドロームXの治療または予防中に付随して消費するための機能性食品組成物の製造における、緑茶中に見出されるカテキンの使用。
【請求項15】
機能性食品組成物が、食品もしくは飲料または食品もしくは飲料用のサプリメント組成物である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
機能性食品組成物が、医薬組成物である、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
カテキンが(−)エピガロカテキンガラートである、請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
緑茶中に見出されるカテキンおよびPPARγリガンドの有効量を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、糖尿病または肥満症とシンドロームXの治療または予防方法。
【請求項19】
カテキンが(−)エピガロカテキンガラートである、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2007−505854(P2007−505854A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526578(P2006−526578)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010283
【国際公開番号】WO2005/027661
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】