説明

糖尿病の治療または予防するためのジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としてのシクロヘキシルグリシン誘導体

本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DP−IV阻害剤」)であり、糖尿病、特に2型糖尿病など、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾患の治療または予防に有用である新規なシクロヘキシルグリシン誘導体に関する。本発明はまた、これらの化合物を含む薬剤組成物およびジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与するこのような疾患の予防または治療における、これらの化合物および組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DP−IV阻害剤」)であり、糖尿病、特に2型糖尿病など、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾患の治療または予防に有用である新規なシクロヘキシルグリシン誘導体に関する。本発明はまた、これらの化合物を含む薬剤組成物およびジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与するこのような疾患の予防または治療において、これらの化合物および組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病とは、複数の原因因子から由来する疾患過程を称し、空腹状態または経口グルコース負荷試験時のグルコース投与後における血漿中グルコースまたは高血糖の高レベルを特徴とする。持続的または無制御高血糖は、罹患率および死亡率の増加および早発を伴う。異常なグルコースホメオスタシスは、直接的および間接的の双方で脂質、リポ蛋白およびアポリポ蛋白代謝の変調、ならびに他の代謝疾患および血行力学的疾患を伴うことが多い。したがって、2型真性糖尿病患者は、冠状動脈心疾患、卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎障害、神経障害、および網膜症など、大血管および微小血管の合併症の危険性が特に増加する。したがって、グルコースホメオスタシス、脂質代謝および高血圧の治療的制御は、臨床的管理と真性糖尿病の治療において極めて重要なことである。
【0003】
糖尿病には、一般的に2つの認識された形態がある。1型糖尿病、またはインスリン依存真性糖尿病(IDDM)の患者は、グルコースの利用を調節するホルモンであるインスリンを殆ど産生しないか、全く産生しない。2型糖尿病、またはインスリン非依存真性糖尿病(NIDDM)の患者は、非糖尿病対象と比較して、同じか、またはさらに高い血漿中インスリン濃度を有することが多いが、これらの患者は、筋肉、肝臓および脂肪組織である主要インスリン感受性組織におけるグルコースおよび脂質代謝に関してインスリン刺激効果に対する耐性を生じており、血漿中インスリン濃度は上昇するが、明白なインスリン耐性を克服するのに不十分である。
【0004】
インスリン耐性は、主としてインスリン受容体数の減少のためではなく、未だ理解されていないインスリン受容体結合欠陥後によるものである。インスリン応答性に対するこの耐性は、筋肉中におけるグルコースの取り込み、酸化および保存について不十分なインスリン活性化をもたらし、脂肪組織における脂肪分解およびグルコース産生ならびに肝臓における分泌の不十分なインスリン抑制をもたらす。
【0005】
長年にわたって実質的に変化していない2型糖尿病に利用できる治療は、限界が認められている。身体運動および食事取り込みにおけるカロリーの減少は、糖尿病状態を劇的に改善するが、この治療によるコンプライアンスは、十分に身を守る固着したライフスタイルおよび過剰の摂食量、特に飽和脂肪の高含量食物のため極めて乏しい。よりインスリンを分泌させるために膵臓β細胞を刺激するスルホニル尿素(例えば、トルブタミドおよびグリピジド)またはメグリチニドの投与、および/またはスルホニル尿素またはメグリチニドが、効果がなくなった場合のインスリン注射により、インスリンの血漿中濃度の増加により、かなりのインスリン耐性組織を刺激するのに十分に高い濃度インスリンを生じることができる。しかしながら、血漿中グルコースの低濃度による危険性は、インスリンまたはインスリン分泌促進物質(スルホニル尿素またはメグリチニド)の投与から生じ得、また、さらにより高い血漿中インスリン濃度によるインスリン耐性レベルの増加が生じ得る。前記ビグアニド類は、インスリン感受性を増加し、高血糖症のある程度の修正をもたらす。しかしながら、2種のビグアニド、フェンホルミンおよびメトフォルミンは、乳糖アシドーシスおよび吐き気/下痢を誘導し得る。メトフォルミンは、フェンホルミンよりも副作用が少なく、2型糖尿病の治療に処方されることが多い。
【0006】
グリタゾン類(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン類)としては、多くの症状の2型糖尿病を改善する可能性を有する化合物のクラスがごく最近記載されている。これらの薬剤は、2型糖尿病の数種の動物モデルにおける筋肉、肝臓および脂肪組織において、実質的にインスリン感受性を増加させ、高血糖の発生なしでグルコースの血漿中高濃度の部分的または完全修正をもたらす。現在市販されているグリタゾン類は、ペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)、主としてPPAR−ガンマサブタイプのアゴニストである。PPAR−ガンマアゴニズムは、グリタゾン類により見られるインスリン感受性の改善に原因があると一般に考えられている。2型糖尿病の治療に試験されているより新規なPPARアゴニスト類は、アルファ、ガンマまたはデルタサブタイプ、またはこれらの組合せのアゴニスト類であり、多くの場合、グリタゾン類とは化学的に異なる(すわち、それらはチアゾリジンジオン類ではない)。重篤な副作用(例えば、肝毒性)が、トログリタゾンなどのグルタゾン類の幾つかに発生している。
【0007】
前記疾患を治療するさらなる方法は、まだ調査中である。最近導入されているか、まだ開発中である新しい生化学的アプローチとしては、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)および蛋白チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤による治療が挙げられる。
【0008】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素(「DP−IV」または「DPP−IV」)の阻害剤である化合物もまた、糖尿病、特に2型糖尿病の治療に有用であり得る薬物として調査中である。例えば、WO 97/40832、WO 98/19998、米国特許第5,939,560号、Bioorg.Med.Chem.Lett.、6:1163〜1166ページ(1996);およびBioorg.Med.Chem.Lett.、6:2745〜2748ページ(1996)を参照されたい。2型糖尿病の治療におけるDP−IV阻害剤の有用性は、DP−IVが、ペプチド−1(GLP−1)および胃酸分泌抑制ポリペプチド(GIP)のようなグルカゴンをインビボで容易に不活化するという事実に基づいている。GLP−1およびGIPは、インクレチン類であり、食物が摂取される場合に産生する。前記インクレチン類は、インスリン産生を刺激する。DP−IVの阻害は、前記インクレチン類の不活化を減少させ、次いでこれは、膵臓によるインスリンの産生を刺激するのに前記インクレチン類の有効性を増加させる結果となる。したがって、DP−IV阻害は、血清中インスリン濃度を増加させる。都合がよいことに、前記インクレチン類は、食物が摂取される場合にのみ体内により産生されるので、DP−IV阻害は、過度に低血糖(低血糖症)に導き得る食事間など、不適切な時間にインスリン濃度を増加させることが予想されない。したがって、DP−IVの阻害は、インスリン分泌促進物質の使用に伴う危険な副作用である低血糖症の危険性を増加させることなくインスリンを増加することが期待される。
【0009】
DP−IV阻害剤はまた、本明細書に検討された他の治療的有用性を有している。DP−IV阻害剤は、特に糖尿病以外の有用性に関して、今日まで広範囲に研究されていなかった。糖尿病および可能性として他の疾患ならびに状態の治療のための改善されたDP−IV阻害剤を見出すことができるように、新規化合物が求められている。2型糖尿病の処置のため治療可能性のあるDP−IV阻害剤は、Exp.Opin.Invest.Drugs、12:87〜100ページ(2003)にD.J.Druckerにより、また、Exp.Opin.Ther.Patents、13:499〜510ページ(2003)にK.Augustynsら、により論じられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DP−IV阻害剤」)であり、糖尿病、特に2型糖尿病など、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾患の治療または予防に有用である新規なシクロヘキシルグリシン誘導体に関する。本発明はまた、これらの化合物を含む薬剤組成物およびジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与するこのような疾患の予防または治療における、これらの化合物および組成物の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤として有用な新規なシクロヘキシルグリシン誘導体に関する。本発明化合物は、構造式I:
【0012】
【化15】

により記載される。
[式中:
各nは、独立して0、1、2、または3であり:
Wは、CH、CHF、およびCFからなる群から選択され;
Xは、S、S(O)、S(O)、CH、CHF、およびCFからなる群から選択され;
YおよびZは、O、S、N、およびNRからなる群から各々独立して選択され、但し、YおよびZの少なくとも1つはNであり、;
は、水素またはシアノであり;
は、
水素
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
アルキルが非置換であるかまたは1個から5個のハロゲンで置換されているC1〜6アルキル、
アルコキシが非置換であるかまたは1個から5個のハロゲンで置換されているC1〜6アルコキシ、
(CH−COOH、
(CH−COOC1〜6アルキル、
(CH−CONR
(CH−COR
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR
(CH−NRCO
(CH−アリール、(ここで、アリールは、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルコキシから独立して選択される1つから5つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは、非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている。)。)
からなる群から選択され
における任意のメチレン(CH)炭素原子は独立して、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、および(非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている)C1〜4アルキルから独立して選択される1つから2つの基で置換されており;
およびRは独立して、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3〜6シクロアルキル、および
1〜6アルキル(ここで、アルキルは、非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている(ここで、フェニルおよびシクロアルキルは、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから5つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている。)。)。)
からなる群から選択され;
とRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、およびモルホリンから選択される複素環を形成しており(前記複素環は、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから3つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている。)。);
は、各々独立して(CH−フェニル、(CH−C3〜6シクロアルキル、およびC1〜6アルキルからなる群から選択され(ここで、アルキルは、非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている(ここで、フェニルおよびシクロアルキルは、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから5つの置換基で置換されており、式中、アルキルおよびアルコキシは非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されており、また、Rにおける任意のメチレン(CH)炭素原子は、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、および(非置換であるか、1個から5個のハロゲンで置換されている)C1〜4アルキルから独立して選択される1つから2つの基で置換されている。)。);
各Rは、水素またはRであり;
は、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3〜6シクロアルキル、および
1〜6アルキル(ここで、アルキルは、非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている(ここで、フェニルおよびシクロアルキルは、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから5つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている。)。)。)
からなる群から選択される。]
【0013】
本発明化合物の一実施形態において、*で印された炭素原子が、式IIa:
【0014】
【化16】

に示された立体配置を有する(式中、W、X、Y、Z、R、およびRは、上記に定義されたとおりである。)。
【0015】
本発明化合物の第2の実施形態において、構造式IIb:
【0016】
【化17】

に示されたとおり、Wは、CHであり、Yは、Sであり、Zは、Nである(式中、X、RおよびRは、上記に定義されたとおりである。)。
【0017】
この実施形態の一クラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFである。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素である。この実施形態の他のクラスにおいて、*で印された炭素原子は、式IIc:
【0018】
【化18】

に示された立体配置を有する。
【0019】
このクラスのサブクラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは、水素である。
【0020】
本発明化合物の第3の実施形態において、構造式IId:
【0021】
【化19】

に示されたとおり、Wは、CHであり、Yは、Nであり、Zは、Sである(式中、X、RおよびRは、上記に定義されたとおりである。)。
【0022】
この実施形態の一クラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFである。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素である。この実施形態の他のクラスにおいて、*で印された炭素原子は、式IIe:
【0023】
【化20】

に示された立体配置を有する。
【0024】
このクラスのサブクラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは、水素である。
【0025】
本発明化合物の第4の実施形態において、構造式IIf:
【0026】
【化21】

に示されたとおり、Wは、CHであり、Yは、Oであり、Zは、Nである(式中、X、RおよびRは、上記に定義されたとおりである。)。
【0027】
この実施形態の一クラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFである。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素である。この実施形態の他のクラスにおいて、*で印された炭素原子は、式IIg:
【0028】
【化22】

に示された立体配置を有する。
【0029】
このクラスのサブクラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは、水素である。
【0030】
本発明化合物の第5の実施形態において、構造式IIh:
【0031】
【化23】

に示されたとおり、Wは、CHであり、Yは、Nであり、Zは、Oである(式中、X、RおよびRは、上記に定義されたとおりである。)。
【0032】
この実施形態の一クラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFである。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素である。この実施形態の他のクラスにおいて、*で印された炭素原子は、式IIi:
【0033】
【化24】

に示された立体配置を有する。
【0034】
このクラスのサブクラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは、水素である。
【0035】
本発明化合物の第6の実施形態において、構造式IIj:
【0036】
【化25】

に示されたとおり、Wは、CHであり、Yは、Nであり、Zは、NRである(式中、X、R、RおよびRは、上記に定義されたとおりである。)。
【0037】
この実施形態の一クラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFである。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素である。この実施形態の他のクラスにおいて、*で印された炭素原子は、式IIk:
【0038】
【化26】

に示された立体配置を有する。
【0039】
このクラスのサブクラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは、水素である。
【0040】
本発明化合物の第7の実施形態において、構造式IIl:
【0041】
【化27】

に示されたとおり、Wは、CHであり、Yは、NRであり、Zは、Nである(式中、X、R、RおよびRは、上記に定義されたとおりである。)。
【0042】
この実施形態の一クラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFである。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素である。この実施形態の他のクラスにおいて、*で印された炭素原子は、式IIm:
【0043】
【化28】

に示された立体配置を有する。
【0044】
このクラスのサブクラスにおいて、Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは、水素である。
【0045】
本明細書に用いられる以下の定義が適用できる。
【0046】
「アルキル」ならびにアルコキシおよびアルカノイル接頭語「アルコ(カ)」を有する他の基は、炭素鎖が他に定義されない限り、直鎖または分子鎖、およびそれらの組合せであり得る炭素鎖を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−およびt−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどが挙げられる。特定数の炭素原子が、例えばC3〜10から許容される場合、用語のアルキルとしてはまた、シクロアルキル基、およびシクロアルキル構造と組合わされた直鎖または分子鎖アルキルの組合せが挙げられる。炭素原子数が特定されない場合、C1〜6が意図される。
【0047】
「シクロアルキル」は、アルキルのサブセットであり、特定数の炭素原子を有する飽和環状炭素を意味する。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。一般にシクロアルキル基は、他に述べられない限り単環式である。シクロアルキル基は、他に定義されない限り飽和である。
【0048】
用語の「アルコキシ」は、特定の炭素原子数の直鎖または分枝鎖アルコキシド類(例えば、C1〜10アルコキシ)、またはこの範囲内の任意の数のアルコキシド類[すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシなど]を称す。
【0049】
用語の「アルキルチオ」は、特定の炭素原子数の直鎖または分枝鎖アルキルスルフィド類(例えば、C1〜10アルキルチオ)、またはこの範囲内の任意の数のアルキルスルフィド類[すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオなど]を称す。
【0050】
用語の「アルキルアミン」は、特定の炭素原子数の直鎖または分枝鎖アルキルアミン類(例えば、C1〜6アルキルアミノ)、またはこの範囲内の任意の数のアルキルアミン類[すなわち、メチルアミノ、エチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミノなど]を称す。
【0051】
用語の「アルキルスルホニル」は、特定の炭素原子数の直鎖または分枝鎖アルキルスルホン類(例えば、C1〜6アルキルスルホニル)、またはこの範囲内の任意の数のアルキルスルホン類[すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど]を称す。
【0052】
用語の「アルキルオキシカルボニル」は、特定の炭素原子数の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖または分枝鎖エステル類(例えば、C1〜6アルキルオキシカルボニル)、またはこの範囲内の任意の数のもの[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−、エチルオキシカルボニル、またはブチルオキシカルボニル]を称す。
【0053】
「アリール」とは、炭素環原子を含有する単環式または多環式芳香族環系を意味する。好ましいアリール類は、単環式または二環式6〜10員の芳香族環系である。フェニルおよびナフチルが好ましいアリール類である。最も好ましいアリールは、フェニルである。
【0054】
「複素環」および「ヘテロシクリル」は、O、SおよびNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、さらに硫黄の酸化形態、すなわちSOおよびSOを含む、飽和または不飽和非芳香族環または環系を称す。複素環の例としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリンなどが挙げられる。
【0055】
「ヘテロアリール」とは、O、SおよびNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有する芳香族または部分的芳香族複素環を意味する。ヘテロアリール類としてはまた、アリール類、シクロアルキル類および芳香族ではない複素環類などの他の種の環に縮合したヘテロアリール類が挙げられる。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、2−オキソ−(1H)−ピリジニル(2−ヒドロキシピリジニル)、オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][4,3−a]ピリジニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][1,5−a]ピリジニル、2−オキソ−1,3−ベンズオキサゾリル、4−オキソ−3H−キナゾリニル、3−オキソ−[1,2,4]−トリアゾロ[4,3−a]−2H−ピリジニル、5−オキソ−[1,2,4]−4H−オキサジアゾリル、2−オキソ−[1,3,4]−3H−オキサジアゾリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾリル、3−オキソ−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾリル、などが挙げられる。ヘテロシクリル基およびヘテロアリール基に関して、3〜15個の原子を含有する環および環系が含まれ、1つから3つの環を形成する。
【0056】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を称す。一般に塩素とフッ素が好ましい。ハロゲンが、アルキル基またはアルコキシ基に置換される場合、フッ素が最も好ましい(例えば、CFOおよびCFCHO)。
【0057】
本発明化合物は、1つ以上の不斉中心を含有でき、したがって、ラセミ体およびラセミ混合物、単一鏡像体、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして生じ得る。本発明の化合物は、式Iaに*で印された炭素原子に1つの不斉中心を有する。さらなる不斉中心は、分子上の種々の置換基の性質に依って存在し得る。このような各不斉中心は独立して、2種の光学異性体を生じ、混合物において、また精製または部分的精製化合物として可能な光学異性体およびジアステレオマーの全てが、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本発明は、これらの化合物のこのような異性体の全てを含むことを意味する。
【0058】
本明細書に記載された化合物の幾つかは、オレフィン系二重結合を含み、他に特定しない限り、EおよびZの幾何異性体双方を含むことを意味する。
【0059】
本明細書に記載された化合物の幾つかは、1つ以上の二重結合のシフトにより伴う異なる水素結合点を有する互変異性体として存在し得る。例えば、ケトンおよびそのエノール体はケト−エノール互変異性体である。個々の互変異性体ならびにそれらの混合物は、本発明化合物と共に包含される。
【0060】
式Iは、好ましい立体化学のない化合物のクラスの構造を示している。式Iaは、これらの化合物が調製されるアルファ−アミノ酸のアミノ基を結合している炭素原子において好ましい立体化学を示している。
【0061】
これらのジアステレオマーの独立した合成またはこれらのクロマトグラフィー分離は、当業界に知られているとおり、本明細書に開示された方法論の適切な修飾により達成し得る。これらの絶対立体化学は、必要ならば、知られた絶対配置の不斉中心を含有する試薬により誘導される結晶性生成物または結晶性中間体のx線結晶学により決定できる。
【0062】
所望ならば、化合物のラセミ混合物は、個々の鏡像異性体が単離されるように分離できる。この分離は、ラセミ混合物の化合物の鏡像異性的に純粋な化合物への結合など、当業界によく知られた方法により実施でき、すなわち、ジアステレオマー混合物を形成し、次いで分別再結晶またはクロマトグラフィーなどの標準的な方法により個々のジアステレオマーを分離する。前記結合反応は、鏡像異性的に純粋な酸または塩基を用いる塩類の形成であることが多い。次にジアステレオマー誘導体は、付加されたキラル残基の開裂により純粋な鏡像異性体に変換できる。化合物のラセミ混合物はまた、当業界によく知られている方法である、キラル固定相を利用するクロマトグラフィー法により直接分離することができる。
【0063】
あるいは、化合物の任意の鏡像異性体は、当業界によく知られている方法により光学的に純粋な出発物質または知られた立体配置の試薬を用いて、立体選択的な合成により得ることができる。
【0064】
本明細書に用いられる構造式Iの化合物への考慮としては、薬剤として許容できる塩類、また、それらが、遊離化合物またはそれらの薬剤として許容できる塩類に対する前駆体として、または他の合成操作において用いられる場合、製薬的に許容できない塩類をも含むことを意味することが解されるであろう。
【0065】
本発明化合物は、薬剤として許容できる塩類の形態で投与できる。用語の「薬剤として許容できる塩」は、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む薬剤として許容できる非毒性塩基類または酸類から調製される塩類を称す。用語の「薬剤として許容できる塩」内に包含される塩基化合物の塩類は、遊離塩基と好適な有機または無機酸との反応により一般に調製される本発明化合物の非毒性塩類を称す。本発明塩基化合物の代表的な塩類としては、限定はしないが、以下のもの:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カンシレート、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシレート、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフト酸塩、ヨウ化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオネート、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、粘液酸塩、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモエート(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクチュロネート、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トシレート、トリエチオジドおよび吉草酸塩が挙げられる。さらに本発明化合物が、酸性部分を有している場合、好適な薬剤として許容できるそれらの塩類は、限定はしないが、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを含む無機塩基から誘導される塩類が挙げられる。アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、およびナトリウム塩が特に好ましい。薬剤として許容できる有機非毒性塩基類から誘導された塩類としては、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの第一級、第二級および第三級アミン類、環式アミン類、および塩基性イオン交換樹脂が挙げられる。
【0066】
また、本発明化合物に存在するカルボン酸(−COOH)基またはアルコール基の場合において、メチル、エチル、またはピバロイルオキシメチルなどのカルボン酸誘導体の薬剤として許容できるエステル類、またはアセテートまたはマレエートなどのアルコール類のアシル誘導体を使用できる。持続放出またはプロドラッグ製剤として使用のための溶解度または加水分解特性を変更するために当業界に知られているこれらのエステル類およびアシル基が含まれる。
【0067】
溶媒和、特に構造式Iの化合物の水和物は、さらに本発明に含まれる。
【0068】
本発明の例示としては、実施例および本明細書に開示された化合物の使用である。
【0069】
対象化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素を阻害する方法に有用であり、このような阻害を必要とする哺乳動物などの患者に前記化合物の有効量の投与を含む。本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害剤として本明細書に開示された化合物の使用に関する。
【0070】
ヒトなどの霊長類に加えて、種々の他の哺乳動物を、本発明の方法により治療できる。例えば、限定はしないが、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたは他のウシ種、ヒツジ種、ウマ種、イヌ種、ネコ種、げっ歯類種またはマウス種などの哺乳動物を治療できる。しかしながら、この方法は、鳥類種(例えば、ニワトリ)などの他の種にも実施できる。
【0071】
本発明はさらに、本発明化合物と薬剤として許容できる担体または希釈剤とを組み合わせることを含む、ヒトおよび動物におけるジペプチジルペプチダーゼIV酵素を阻害する薬剤の製造方法に関する。
【0072】
本発明の方法において治療を受ける対象は、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素の阻害が望まれる、一般に哺乳動物、好ましくは人間の男性または女性である。用語の「治療有効量」とは、研究者、獣医、医師または他の臨床医により求められる組織、系、動物またはヒトの生物学的応答または医学的応答を引き出す対象化合物量を意味する。
【0073】
本明細書に用いられる用語の「組成物」は、特定量の特定成分を含む製品、ならびに特定量で特定成分の組合せから直接的または間接的に生じる任意の製品を包含することが意図されている。薬剤組成物に関連するこのような用語は、有効成分(1種または複数種)および担体(1種または複数種)を構成する不活性成分を含む、ならびに任意の2種以上の成分の組合せ、複合体生成または凝集、または1種以上の成分の解離、1種以上の成分の他のタイプの反応または相互作用から直接的または間接的に生じる任意の製品を包含することが意図されている。したがって、本発明の薬剤組成物は、本発明化合物と薬剤として許容できる担体とを混合することにより作製された任意の組成物を包含する。「薬剤として許容できる」とは、製剤の他の成分と適合しなければならず、その受容個体に対し有害であってはならない担体、希釈剤または賦形剤を意味する。
【0074】
用語の化合物「の投与」およびまたは化合物を「投与する」は、本発明化合物または本発明化合物のプロドラッグを、治療を必要とする個体に提供することを意味するものと解されるべきである。
【0075】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害剤として本発明による化合物の有用性は、当業界に知られた方法論により示すことができる。阻害定数は、以下のとおり決定される。連続蛍光定量的アッセイは、蛍光AMC遊離基を遊離させるためにDP−IVにより解離される、基質Gly−Pro−AMCを使用する。この反応を記載する動力学的パラメータは、以下のとおりである:K=50μM;Kcat=75s−1;Kcat/K=1.5x10−1−1。典型的な反応は、全反応容量が100μlで約50pM酵素、50μM Gly−Pro−AMC、および緩衝液(100mM HEPES、pH7.5、0.1mg/ml BSA)を含む。AMCの遊離は、360nmの励起波長および460nmの発光波長を用いて96ウェルプレート蛍光光度計において連続的にモニターされる。これらの条件下、約0.8μM AMCが、25℃、30分で生成する。これらの試験に用いられる酵素は、バキュロウィルス発現系(Bac−To−Bac、Gibco BRL)で産生された溶解性(膜内外ドメインおよび細胞質延長部は除外)ヒト蛋白質であった。Gly−Pro−AMCおよびGLP−1の加水分解に関する速度定数は、天然酵素に関する文献値に一致することが判った。化合物の解離定数を測定するために、DMSO中の阻害剤溶液を、酵素および基質を含有する反応液に加えた(最終DMSO濃度は1%である)。全実験は、上記の標準的反応条件を用いて室温で実施された。解離定数(K)を決定するために、反応速度は、競合的阻害に関するMichaelis−Menton式に対する非線形回帰により適合させた。解離定数の再現性における誤差は、一般に2倍未満であった。
【0076】
特に、以下の例の化合物は、前述のアッセイにおいて、一般に約1μM未満のIC50を有するジペプチジルペプチダーゼIV酵素の阻害活性があった。このような結果は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性阻害剤としての使用における前記化合物の固有活性を示している。
【0077】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素(DP−IV)は、広範囲の生物学的機能に関係がある細胞表面蛋白質である。これは、広範囲の組織(腸、腎臓、肝臓、膵臓、胎盤、胸腺、脾臓、上皮細胞、血管内皮、リンパ球および骨髄細胞、血清)に分布しており、ならびに異なる組織および細胞タイプの発現レベルを有している。DP−IVは、T細胞活性化マーカーCD26と同一であり、インビトロで多数の免疫抑制、エンドクリン、および神経系ペプチド類を開裂することができる。このことは、ヒトまたは他の種における種々の疾患において、このペプチダーゼの潜在的役割を示唆している。
【0078】
したがって、対象化合物は、以下の疾患、障害および状態の予防または治療のための方法に有用である。
【0079】
II型糖尿病および関連障害:インクレチンGLP−1およびGIPは、インビボでDP−IVにより迅速に不活化されることが十分に確立されている。DP−IV(−/−)−欠損マウスによる試験および予備的臨床試験は、DP−IV阻害が、GLP−1およびGIPの定常状態濃度を増加させ、耐糖性を改善することを示している。GLP−1およびGIPと類似して、グルコース調節に関与している他のグルカゴンファミリーペプチド類もまた、DP−IV(例えば、PACAP)により不活化され易い。DP−IVによるこれらのペプチド類不活化はまた、グルコースホメオスタシスの役割を演じることができる。したがって、本発明のDP−IV阻害剤は、II型糖尿病の治療、および代謝症候群X、反応性低血糖症、および糖尿病性異脂肪血症など、II型糖尿病にしばしば伴う多数の状態の治療と予防における有用性を有する。以下に検討される肥満症は、本発明の化合物による治療に応答し得るII型糖尿病にしばしば見られる他の状態である。
【0080】
以下の疾患、障害および状態は、2型糖尿病に関連しており、したがって、本発明化合物を用いる治療によって、治療、調節または幾つかの場合において予防できる:(1)高血糖症、(2)低耐糖性、(3)インスリン耐性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDL濃度、(11)高LDL濃度、(12)アテローム性動脈硬化症およびその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏腸症候群、(15)クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性状態、(17)膵炎、(18)腹部肥満症、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎障害、(22)神経障害、(23)症候群X、(24)卵巣高アンドロゲン症(多嚢胞性卵巣症候群)、およびインスリン耐性が構成要素である他の疾患。
【0081】
肥満症:DP−IV阻害剤は、肥満症の治療に有用であり得る。これは、食物摂取に対する抑制効果の観察およびGLP−1とGLP−2の胃内容物排出に基づいている。ヒトにおけるGLP−1の外因性投与は、有意に食物摂取量を減少させ、胃内容物排出を遅らせる(Am.J.Physiol.、277:R910〜R916ページ(1999))。ラットおよびマウスにおけるGLP−1のICV投与もまた、食物摂取量に対し大きな効果がある(Nature Medicine、2:1254〜1258ページ(1996))。この摂食抑制は、GLP−1R(−/−)マウスには見られず、これらの効果は、脳GLP−1受容体を介して媒介されることを示している。GLP−1に類似して、GLP−2もまたDP−IVにより制御され易い。GLP−2のICV投与もまた、GLP−1により見られた効果と類似して食物摂取量を抑制する(Nature Medicine、6:802〜807ページ(2000))。さらに、DP−IV欠損マウスによる試験は、これらの動物が、食餌誘発性肥満症および関連病状(例えば、高インスリン血症)に抵抗性であることを示唆している。
【0082】
成長ホルモン欠損症:DP−IV阻害は、成長ホルモン放出因子(GRF)、すなわち、脳下垂体前葉からの成長ホルモンの放出を刺激するペプチドがインビボでDP−IV酵素により開裂されるという仮説に基づいて、成長ホルモン欠損症の治療に有用となり得る(WO 00/56297)。以下のデータは、GRFが、内因性物質であるという証拠を提供する:(1)GRFは、インビトロで効率的に開裂されて不活性な生成物GRF[3−44]を生じる(BBA1122:147〜153ページ(1992));(2)GRFは、血漿中でGRF[3−44]に迅速に分解される;このことは、DP−IV阻害剤ジプロチンAによって防止される;および(3)GRF[3−44]は、ヒトGRF形質転換ブタの血漿中に見られる(J.Clin.Invest.、83:1533〜1540ページ(1989))。したがって、DP−IV阻害剤は、成長ホルモン分泌促進物質に関して考慮されている、同じ適応スペクトルに有用となり得る。
【0083】
腸障害:腸障害の治療のためにDP−IV阻害剤を用いる可能性は、DP−IVに関して恐らく内因性の物質であるグルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)が腸管上皮に対して栄養効果を示し得ることを示す試験結果により示唆される(Regulatory Peptides、90:27〜32ページ(2000))。GLP−2の投与は、げっ歯類において小腸質量を増加させ、大腸炎および腸炎のげっ歯類モデルにおいて腸障害を減衰させる。
【0084】
免疫抑制:DP−IV阻害剤は、T細胞活性化ならびにケモカイン処理におけるDP−IV酵素、および疾患のインビボモデルにおけるDP−IV阻害剤有効性に関係する試験に基づいて、免疫応答の調整に関して有用であり得る。DP−IVは、活性化免疫細胞の細胞表面マーカーであるCD26と同一であることが示されている。CD26の発現は、免疫細胞の分化および活性化状態により制御される。CD26は、T細胞活性化のインビトロモデルにおける共刺激分子として作用することが一般に受け入れられている。多数のケモカイン類は、恐らく非特異的アミノペプチダーゼ類による分解を防ぐために、前末端基位置にプロリンを含有する。これらの多くは、インビトロでDP−IVにより処理されることが示されている。幾つかの場合(RANTES、LD78−ベータ、MDC、エオタキシン(eotaxin)、SDF−1アルファ)において、開裂により、化学走性およびシグナル化アッセイにおいて活性の変化が生じる。受容体選択性もまた、幾つかの場合(RANTES)において変更されると思われる。多数のケモカイン類の複数のN末端切断体は、DP−IV加水分解の予測生成物など、インビトロの細胞培養系において確認されている。
【0085】
DP−IV阻害剤は、移植術および関節炎の動物モデルにおいて有効な免疫抑制剤であることが示されている。DP−IVの不可逆的阻害剤であるプロジピン(Pro−Pro−ジフェニル−ホスフェート)は、7日目から14日目のラットにおいて心臓同種移植の生存が、倍加することが示された(Transplantation、63:1495〜1500ページ(1997))。DP−IV阻害剤は、ラットにおけるコラーゲンおよびアルキルジアミン誘導関節炎において試験され、このモデルにおける後足腫脹の統計的に有意な減衰を示した[Int.J.Immunopharmacology、19:15〜24ページ(1997)およびImmunopharmacology、40:21〜26ページ(1998)]。DP−IVは、リューマチ様関節炎、多発性硬化症、グレーブス病、および橋本甲状腺炎など多数の自己免疫疾患においてアップレギュレートされる(Immunology Today、20:367〜375ページ(1999))。
【0086】
HIV感染:HIV細胞エントリーを阻害する多くのケモカイン類が、DP−IVに関する潜在的な基質であるので、DP−IV阻害は、HIV感染またはAIDSの治療または予防に有用である(Immunology Today、20:367〜375ページ(1999))。SDF−1アルファの場合、開裂により抗ウィルス活性を減少させる(PNAS、95:6331〜6ページ(1998))。したがって、DP−IVの阻害によるSDF−1アルファの安定化により、HIV感染性を減少させることが期待されるであろう。
【0087】
造血:DP−IVは、造血に関与し得るので、DP−IV阻害は、造血の治療または予防に有用となり得る。DP−IV阻害剤であるVal−Boro−Proは、シクロホスファミド誘導好中球減少症のマウスモデルにおいて造血を刺激した。
【0088】
ニューロン障害:多種のニューロン処理に関係する多数のペプチド類がDP−IVによりインビトロで開裂されることから、DP−IV阻害は、種々のニューロン障害または精神障害の治療または予防に有用となり得る。このように、DP−IV阻害剤は、ニューロン障害の治療に治療的利点を有し得る。エンドモルフィン−2、ベータ−カソモルフィン、および物質Pの全ては、DP−IVに関するインビトロ基質であることが示されている。全ての場合において、インビトロ開裂は、10−1−1超のKcat/Kを有し、極めて効率的である。ラットにおける痛覚消失の電気ショックジャンプ試験モデルにおいて、DP−IV阻害剤は、外因性エンドモルフィン−2の存在に依存する有意な効果を示した(Brain Research、815:278〜286ページ(1999))。
【0089】
DP−IV阻害剤の神経保護効果および神経発生効果もまた、興奮毒性細胞死から運動性ニューロンを保護し、MPTPと同時投与の場合、ドーパミン作動性ニューロンの線条体の神経支配を保護し、MPTP治療後の療法様式で供与される場合、線条体の神経支配密度の回復を促進する前記阻害剤の能力により示された[Yong−Q.Wuら、「Neuroprotective Effects of Inhibitors of Dipeptidyl Peptidase−IV In Vitro and In Vivo」、Int.Conf.On Dipeptidyl Aminopeptidases:Basic Science and Clinical Applications、2002年9月26〜29日(独国ベルリン)を参照]。
【0090】
腫瘍侵襲と転移:DP−IVを含む数種のエクトペプチダーゼ類の発現増加または減少が、正常細胞の悪性表現型の変換時に見られたことから、DP−IV阻害は、腫瘍侵襲と転移の治療または予防に有用となり得る(J.Exp.Med.、190:301〜305ページ(1999))。これらの蛋白質のアップ−またはダウン−レギュレーションは、組織タイプおよび細胞タイプ特異的であると思われる。例えば、CD26/DP−IV発現増加は、T細胞リンパ腫、Tセル急性リンパ球性白血病、細胞由来甲状腺癌、基底細胞癌、および乳癌に対し見られる。したがって、DP−IV阻害剤は、このような癌の治療に有用であり得る。
【0091】
良性前立腺肥大:DP−IV活性増加が、患者の前立腺組織においてBPHにより特筆されたことから、DP−IV阻害は、良性前立腺肥大の治療または予防に有用となり得る(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.30:333〜338ページ(1992))。
【0092】
精子運動/男性避妊:精液中において、プロステートソーム、精子運動に重要な前立腺由来細胞小器官が、DP−IV活性の極めて高いレベルを有していることから、DP−IV阻害は、精子運動の変更および男性避妊に有用となり得る(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.30:333〜338ページ(1992))。
【0093】
歯肉炎:DP−IV活性が、歯肉溝液中、および歯周病重症度に関連した幾つかの研究に観察されたことから、DP−IV阻害は、歯肉炎の治療に有用となり得る(Arch.Oral Biol.、37:167〜173ページ(1992))。
【0094】
骨粗鬆症:GIP受容体が、骨芽細胞に存在することから、DP−IV阻害は、骨粗鬆症の治療または予防に有用となり得る。
【0095】
本発明の化合物は、1つ以上の以下の状態または疾患を治療または予防する上で有用性を有している:(1)高血糖症、(2)低耐糖性、(3)インスリン耐性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDL濃度、(11)高LDL濃度、(12)アテローム性動脈硬化症およびその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏腸症候群、(15)クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性状態、(17)膵炎、(18)腹部肥満症、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎障害、(22)神経障害、(23)症候群X、(24)卵巣高アンドロゲン症(多嚢胞性卵巣症候群)、(25)II型糖尿病、(26)成長ホルモン欠損症、(27)好中球減少症、(28)ニューロン障害、(29)腫瘍転移、(30)良性前立腺肥大症、(32)歯肉炎、(33)高血圧、(34)骨粗鬆症、およびDP−IVの阻害によって治療または予防され得る他の状態。
【0096】
対象化合物はさらに、他の薬剤と併用して前述の疾患、障害および状態の予防法または治療法に有用である。
【0097】
本発明の化合物は、式Iの化合物または他の薬物が有用性を有し得る疾患または状態の治療、予防、抑制または改善において1種以上の他の薬物と併用して用いることができ、前記薬物との併用が、いずれか一方の薬物単独よりも安全または有効である。したがって、このような他の薬物(1種または複数種)は、式Iの化合物と同時に、または連続的に通常使用される経路および量で投与できる。式Iの化合物が、1種以上の他の薬物と同時に用いられる場合、このような他の薬物と式Iの化合物とを含有する単位剤形の薬剤組成物が好ましい。しかしながら、前記併用療法は、式Iの化合物と1種以上の他の薬物とが、異なった重なりスケジュールで投与される療法をも含む。また、1種以上の他の有効成分と併用して用いられる場合、本発明化合物と他の有効成分が、各々が単独で用いられる場合よりも低用量で使用し得ることが考慮されている。したがって、本発明の薬剤組成物としては、式Iの化合物に加えて1種以上の他の有効成分を含有するものが挙げられる。
【0098】
式Iの化合物と併用して投与でき、また、別々に投与されるか、または同じ薬剤組成物で投与できる他の有効成分の例としては、限定はしないが、以下のものが挙げられる:
(a)他のジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤;
(b)(i)グリタゾン類(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾンなど)などのPPARγアゴニストおよびKRP−297などのPPARα/γデュアルアゴニスト、フェノフィブリック酸誘導体(ゲンフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレートおよびベンザフィブレート)などのPPARαアゴニスト、などの他のPPARリガンド類、(ii)メトフォルミンおよびフェンホルミンなどのビグアニド類、および(iii)蛋白チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤を含むインスリン感作物質;
(c)インスリンまたはインスリン擬似物質;
(d)トルブタミドグリブリド、グリピジド、グリメピリド、およびレパグリニドなどのメグリチニド類など、スルホニル尿素または他のインスリン分泌促進物質;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボースおよびミグリトールなど);
(f)WO 98/04528、WO 99/01423、WO 00/39088、およびWO 00/69810に開示されたものなどのグルカゴン受容体アンタゴニスト類;
(g)WO00/42026およびWO00/59887に開示されたものなどのGLP−1、GLP−1擬似物質、またはGLP−1受容体アゴニスト類;
(h)WO00/58360に開示されたものなどのGIP、GIP擬似物質、GIP受容体アゴニスト類;
(i)WO 01/23420に開示されたものなどのPACAP、PACAP擬似物質、またはPACAP受容体アゴニスト類;
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチン、および他のスタチン類)、(ii)金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール、および架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸またはその塩、(iv)フェノフィブリック酸誘導体(ゲンフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレートおよびベンザフィブレート)などのPPARαアゴニスト、(v)KRP−297などのPPARα/γデュアルアゴニスト、(vi)ベータ−シトステロールおよびエゼチミベなどのコレステロール吸収阻害剤、(vii)アシルCoA:アバシミベなどのコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、および(viii)プロブコールなどの抗酸化剤などのコレステロール低下剤;
(k)WO97/28149に開示されたものなどのPPARδアゴニスト類;
(l)フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドYまたはYアンタゴニスト類、CB1受容体インバースアゴニスト類およびアンタゴニスト類、βアドレナリン受容体アゴニスト類、メラノコルチン受容体アゴニスト類、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト類、グレリンアンタゴニスト類、およびメラニン濃厚ホルモン(MCH)受容体アゴニスト類;などの
抗肥満性化合物;
(m)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤;
(n)アスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、グルココルチコイド類、アズルフィジン、および選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤などの炎症状態の使用に意図された薬剤;および
(o)ACE阻害剤(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、タンドラプリル)、A−II受容体ブロッカー類(ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、エプロサルタン)、ベータブロッカー類およびカルシウムチャネルブロッカー類などの降圧剤。
【0099】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤としては、WO 03/004498(2003年1月16日);WO 03/004496(2003年1月16日);EP 1 258 476(2002年11月20日);WO 02/083128(2002年10月24日);WO 02/062764(2002年8月15日);WO 03/000250(2003年1月3日);WO 03/002530(2003年1月9日);WO 03/002531(2003年1月9日);WO 03/002553(2003年1月9日);WO 03/002593(2003年1月9日);WO 03/000180(2003年1月3日);およびWO 03/000181(2003年1月3日)に開示されているものが挙げられる。特異的なDP−IV阻害剤化合物としては、イソロイシンチアゾリジド;NVP−DPP728;P32/98;およびLAF237が挙げられる。
【0100】
構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満症化合物としては、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドYまたはYアンタゴニスト類、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト類およびインバースアゴニスト類、メラノコルチン受容体アゴニスト類、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト類、グレリンアンタゴニスト類、およびメラニン濃厚ホルモン(MCH)受容体アゴニスト類が挙げられる。構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満症化合物のレビューに関しては、S.Chakiら、「Recent advances in feeding suppressing agents:potential therapeutic strategy for the treatment of obesity」、Expert Optin.Ther.Patents、11:1677〜1692ページ(2001)ならびにD.SpanswickおよびK.Lee、「Emerging antiobesity drugs」、Expert Opin.Emerging Drugs、8:217〜237ページ(2003)を参照されたい。
【0101】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるニューロペプチドY5アンタゴニスト類としては、米国特許第6,335,345号(2002年1月1日)およびWO 01/14376(2001年3月1日)に開示されているものが挙げられ;具体的な化合物としては、GW 59884A;GW 569180A;LY366377;およびCGP−71683Aとして特定される。
【0102】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるカンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト類としては、PCT公開WO 03/007887;リモナバントなどの米国特許第5,624,941号;SLV−319などのPCT公開WO 02/076949;米国特許第6,028,084号;PCT公開WO 98/41519;PCT公開WO 00/10968;PCT公開WO 99/02499;米国特許第5,532,237号;および米国特許第5,292,736号に開示されているものが挙げられる。
【0103】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるメラノコルチン受容体アゴニスト類としては、WO 03/009847(2003年2月6日);WO 02/068388(2002年9月6日);WO 99/64002(1999年12月16日);WO 00/75679(2000年12月14日);WO 01/70708(2001年9月27日);およびWO 01/70337(2001年9月27日)に開示されたもの、ならびにJ.D.Speakeら、「Recent advances in the development of melanocortin−4 receptor agonists」、Expert Optin.Ther.Patents、12:1631〜1638ページ(2002)に開示されたものが挙げられる。
【0104】
本発明化合物が、1種以上の他の薬物と同時に用いられる場合、本発明化合物に加えてこのような他の薬物を含有する薬剤組成物が好ましい。したがって、本発明の薬剤組成物としては、本発明化合物に加えて1種以上の他の有効成分もまた含有するものが挙げられる。
【0105】
第2の有効成分に対する本発明化合物の重量比は変化し、各成分の有効用量に依存する。一般に、各々の有効用量が用いられる。したがって、例えば、本発明化合物が、他の薬剤と併用される場合、他の薬剤に対する本発明化合物の重量比は、一般に約1000:1から約1:1000、好ましくは約200:1から約1:200の範囲となる。本発明化合物と他の有効成分との組合せはまた、一般に前述の範囲内にあるが、各々の場合、各有効成分の有効用量を使用すべきである。
【0106】
このような組合せにおいて、本発明化合物および他の有効薬剤は、別々にまたは同時に投与できる。さらに、1つの要素の投与は、他の薬剤(1種または複数種)の投与前、投与と同時に、または投与後であり得る。
【0107】
本発明化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内
または輸液、皮下注射、または移植)により、また、吸入スプレー投与経路、経鼻投与経路、膣投与経路、直腸投与経路、舌下投与経路、または局所投与経路により投与でき、単独、または各投与経路に適切な従来の非毒性の薬剤として許容できる担体、アジュバントおよび媒体と一緒に製剤化できる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サルなどの温血動物に加えて、本発明の化合物は、ヒトへの使用に有効である。
【0108】
本発明化合物の投与のための薬剤組成物は、好都合に単位剤形で供与でき、当業界によく知られた任意の方法により調製できる。全ての方法は、有効成分を1種以上の補助成分を構成する担体と共に混合するステップを含んでいる。一般に、薬剤組成物は、有効成分を、液体担体または微粉固体担体または双方と均一かつ均質に混合することにより調製され、次いで必要ならば、製造物を所望の製剤に形状化する。前記薬剤組成物において、有効対象化合物は、疾患過程または疾患状態に対して所望の効果を生じさせるのに十分な量が含まれる。本明細書に用いられる用語の「組成物」とは、特定量の特定成分を含む製造物、ならびに特定量の特定成分の組合せから直接的または間接的に生じる任意の製造物を包含することが意図されている。
【0109】
有効成分を含有する薬剤組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、口内錠、水性または油性懸濁剤、分散性粉剤または顆粒剤、乳化剤、硬質カプセル剤または軟質カプセル剤、またはシロップ剤、エリキシル剤として経口使用に好適な形態であり得る。経口使用に意図された組成物は、薬剤組成物の製造に関して当業界に知られた任意の方法に従って調製でき、このような組成物は、製薬的に優れ、かつ味のよい製剤を提供するために、甘味剤、風味剤、着色剤または防腐剤からなる群から選択される1種以上の試剤を含有してもよい。錠剤は、錠剤の製造に好適な非毒性の薬剤として許容できる賦形剤と混合した有効成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;顆粒化剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシ澱粉、またはアルギン酸;結合剤、例えば、澱粉、ゼラチンまたはアラビアゴム、および潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク、であり得る。前記錠剤は、非コーティングであり得るか、または胃腸管において崩壊と吸収を遅らせるために、知られた技法によりコーティングされ、より長い時間にわたって持続作用を提供し得る。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質が使用できる。それらはまた、米国特許第4,256,108号;米国特許第4,166,452号;および米国特許第4,265,874号に記載されている技法によりコーティングし、制御放出のため浸透療法錠剤を形成し得る。
【0110】
経口使用のための製剤はまた、有効成分が、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合する硬質ゼラチンカプセルとして、または有効成分が、水媒体または油媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、またはオリーブ油と混合する軟質ゼラチンカプセルとして提供し得る。
【0111】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に好適な賦形剤と混合した有効物質を含有する。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムであり;分散剤または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと、脂肪酸類、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンとの縮合生成物、またはエチレンオキシドと、長鎖脂肪族アルコール類、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールとの縮合生成物、またはエチレンオキシドと、脂肪酸類およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどのヘキシトールから誘導された部分エステル類との縮合生成物、またはエチレンオキシドと、脂肪酸類およびヘキシトール無水物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンから誘導された部分エステル類との縮合生成物、であり得る。また、前記水性懸濁剤は、1種以上の防腐剤、例えば、エチルp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn−プロピル、1種以上の着色剤、1種以上の風味剤、およびショ糖またはサッカリンなどの1種以上の甘味剤を含むことができる。
【0112】
油性懸濁剤は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油中、または液体パラフィンなどの鉱油中、有効成分を懸濁することにより製剤化できる。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含有し得る。前述のものなどの甘味剤、および風味剤は、味のよい経口用製剤提供するために添加してもよい。これらの組成物はアスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することによって保存することができる。
【0113】
水の添加による水性懸濁剤の調製に好適な分散性粉末および顆粒は、分散化剤または湿潤剤、懸濁化剤および1種以上の防腐剤と混合した有効成分を提供する。好適な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤は、上記のものにより既に例示されている。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、風味剤および着色剤もまた存在し得る。
【0114】
本発明の薬剤組成物はまた、水中油乳化剤の形態であり得る。油相は、植物油、例えば、オリーブ油またはラッカセイ油、または鉱油、例えば、液体パラフィンまたはこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤は、天然ゴム類、例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば、大豆、レシチン、脂肪酸類およびヘキシトール無水物、例えば、モノオレイン酸ソルビタンとから誘導されたエステル類または部分エステル類、および前記部分エステル類と、エチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。前記乳化剤はまた、甘味剤および風味剤を含有し得る。
【0115】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖とで製剤化できる。このような製剤はまた、粘滑剤、防腐剤、ならびに風味剤および着色剤を含有し得る。
【0116】
前記薬剤組成物は、水性滅菌注射剤または油性懸濁剤の形態であり得る。この懸濁剤は、上に記述されているこれらの好適な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、知られた技術に従って製剤化できる。前記滅菌注射製剤は、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液としての滅菌注射剤溶液または懸濁剤であり得る。許容できる媒体および溶媒のうち、水、リンゲル液、および生理食塩液が使用できる。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来から使用される。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリド類など、任意の無刺激不揮発性油が使用できる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸類は、注射剤の調製に使用される。
【0117】
本発明の化合物はまた、薬物の直腸投与用に坐剤の形態で投与できる。前記薬物と、常温で固体であるが直腸温度で液体であり、したがって薬物を放出するために直腸内で融解する好適な非刺激性賦形剤とを混合することにより、これらの坐剤が調製できる。このような物質は、カカオバターおよびポリエチレングリコール類である。
【0118】
局所投与のため、本発明の化合物を含有するクリーム剤、軟膏、ゼリー剤、液剤または懸濁剤が使用される(この適用目的のため、局所適用は、うがい薬および含そう薬を含む)。
【0119】
本発明の薬剤組成物および方法は、上記病状の治療に通常適用される、本明細書に記載された他の治療的有効化合物をさらに含み得る。
【0120】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害を必要とする状態の治療または予防において、適切な投与量は、単回投与または頻回投与で投与できる、一般に1日につき患者体重1kg当たり約0.01mgから500mgである。好ましくは、この投与量は、1日当たり約0.1mg/kgから250mg/kgであり;より好ましくは、1日当たり約0.5mg/kgから100mg/kgである。好適な投与量は、1日当たり約0.01mg/kgから250mg/kg、1日当たり約0.05mg/kgから100mg/kg、または1日当たり約0.1mg/kgから50mg/kgであり得る。この範囲内の投与量は、1日当たり0.05mg/kgから0.5mg/kg、0.5mg/kgから5mg/kgまたは5mg/kgから50mg/kgであり得る。経口投与のため、前記組成物は、1.0mgから1000mgの有効成分、特に治療を受ける患者への症状による投与量調整のために、1.0、5.0、10.0、15.0,20.0,25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0および1000.0mgの有効成分を含有する錠剤形態で提供されることが好ましい。前記化合物は、1日当たり1回から4回、好ましくは1日当たり1回または2回の投与計画で投与できる。
【0121】
本発明化合物が適用される真性糖尿病および/または高血糖症または高トリグリセリド血症または他の疾患を治療または予防する場合、本発明化合物が、動物の体重1kg当たり約0.1mgから約100mgの毎日の投与量で投与され、好ましくは、毎日の単回投与、または1日につき2回から6回の分割投与、または持続放出形態で投与される場合に、一般に満足する結果が得られる。大動物の大部分に関して、毎日の全投与量は、約1.0mgから約1000mg、好ましくは約1mgから約50mgである。70kgの成人の場合、毎日の全投与量は、一般に約7mgから約350mgとなる。この投与計画は、最適の治療応答を提供するために調整し得る。
【0122】
しかしながら、特定の患者への具体的な投与量および投与回数は、変えることができ、使用される化合物の活性、その化合物の代謝安定性と作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性別、治療食、投与様式と投与時間、排出率、併用薬、特定の状態の重症度、および治療を受ける宿主など、種々の因子に依存することが理解されるであろう。
【0123】
本発明化合物を調製する幾つかの方法は、以下のスキームおよび実施例に例示される。出発物質は、当業界に知られた手法によるか、または本明細書に説明された手法により作製される。
【0124】
【化29】

【0125】
が水素であり、Zが窒素である式Iaの化合物の調製は、スキーム1に説明される。商品として入手できるか、または、例えば、ジ−t−ブチルジカーボネート(P=Bocに相当)を用いる保護、および塩酸などの酸を含有するメタノールまたはエタノール中のエステル化により対応するアミノ酸から容易に調製できるエステル1は、酢酸などの溶媒中、50psiまでの圧で2時間から16時間、酸化白金などの触媒を用いる接触還元に供され、シクロヘキシル類縁体2を得る。化合物2のエステル官能基を除去し、カルボン酸3を生成することができる。メチルまたはエチルなどのエステルの場合、これは、テトラヒドロフラン、メタノールまたは同様の溶媒混合混液などの極性溶媒中、水性水酸化リチウムなどの塩基を用いるけん化により達成される。酸3は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはジクロロメタンなどの溶媒中、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、および塩基、一般にN,N−ジイソプロピルエチルアミンを用いる標準的なペプチド結合条件下、周囲温度で3時間から48時間、複素環アミン4と結合させて中間体5を得る。生じたアルコールを、例えば、Dess−Martinペリオジナン試薬を用いて、ジクロロメタン中、周囲温度で1時間から5時間、ケトン体に酸化して中間体6を得る。保護ケトン6を、THFなどの溶媒中、周囲温度で5〜20時間、フェニルトリメチルアンモニウムペルブロミドで処理して中間体7を得る。次にα−ブロモケトン7を、DMFなどの溶媒中、高温で3時間から48時間、第一級アミド、第一級チオアミド、第一級アミジン8と処理して中間体9(それぞれ、Y=O、S、またはN)を得る。P=Bocである場合、複素環9は、ジクロロメタンまたはジオキサンなどの溶媒中、周囲温度で0.5時間から3時間、TFAまたはHClなどの酸と、この化合物を撹拌することにより脱保護できる。P=Cbzである場合、9は、アセトニトリルなどの溶媒中、0℃または周囲温度で0.5時間から2時間ヨードトリメチルシランで脱保護できる。9の脱保護により、Rが水素である最終化合物Iaを得る。この生成物を、必要ならば、再結晶、粉砕、分取薄層クロマトグラフィー、Biotage(登録商標)によるなどのシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー、または逆相HPLCにより、望ましくない副生成物から精製する。HPLCにより精製される化合物は、対応する塩として単離できる。ジアステレオマー混合物は、ChiralCelカラム(タイプAD、AS、OD、またはOJ)を用いて分割できる。中間体の精製は、同様の様式で達成される。当業者により解されるように、式Iaの鏡像異性的に純粋な化合物の調製に関して、鏡像異性的に純粋なアルファアミノ酸1を用いることができる。これらの化合物に関連する経路は、以下の引用文献に見ることができる:Nuttら、Peptides:Structure and Function、Proceed.of the 9th Amer.Pept.Symp.、編集者C.Deberら、Pierce Chemical社、イリノイ州ロックフォード所在、441ページ(1985)、およびBanfiら、Syn.Commun、19、1787〜1799ページ(1989)。
【0126】
第一級アミド、第一級チオアミド、第一級アミジン8は、商品として入手できるか、文献上知られているか、または当業者に通常知られている種々の方法により調製できる。
【0127】
【化30】

【0128】
がシアノであり、Zが窒素である式Ibの化合物の合成は、スキーム2に説明される。酸3は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはジクロロメタンなどの溶媒中、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、および塩基、一般にN,N−ジイソプロピルエチルアミンを用いる標準的なペプチド結合条件下、周囲温度で3時間から48時間、複素環アミン10と結合させて中間体11を得る。中間体11は、上記のスキーム1のとおり保護複素環14に変換される。次いで複素環14は、極性溶媒、例えばジメチルホルムアミド中、0℃から50℃で1時間から16時間シアヌル酸塩化物などの脱水剤で処理してニトリル体を得る。次いで保護基を、例えばジクロロメタン中、トリフルオロ酢酸により除去して所望の生成物Ibを得る。
【0129】
【化31】

【0130】
が水素であり、Yが窒素である式Icの化合物の合成は、スキーム3に説明される。商品として入手できるか、または、例えば、ジ−t−ブチルジカーボネート(P=Bocに相当)を用いる保護、および塩酸などの酸を含有するメタノールまたはエタノール中のエステル化により対応するアミノ酸から容易に調製できるエステル15は、酢酸などの溶媒中、50psiまでの圧で2時間から16時間、酸化白金などの触媒を用いる接触還元に供され、シクロヘキシル類縁体16を得る。中間体16は、上記のスキーム1に記載されたとおり、所望の複素環Icに変換される。当業者により解されるように、式Icの鏡像異性的に純粋な化合物の調製に関して、鏡像異性的に純粋なアルファアミノ酸15を用いることができる。これらの化合物に関連する経路は、以下の引用文献に見ることができる:Nuttら、Peptides:Structure and Function、Proceed.of the 9th Amer.Pept.Symp.、編集者C.Deberら、Pierce Chemical社、イリノイ州ロックフォード所在、441ページ(1985)、およびBanfiら、Syn.Commun、19、1787〜1799ページ(1989)。
【0131】
第一級アミド、第一級チオアミド、第一級アミジン21は、商品として入手できるか、文献上知られているか、または当業者に通常知られている種々の方法により調製できる。
【0132】
【化32】

【0133】
がシアノであり、Yが窒素である式Idの化合物の合成は、スキーム4に説明される。スキーム3に記載されたとおり調製された酸17は、上記のスキーム2のとおり複素環Idに変換する。
【0134】
【化33】

【0135】
複素環10は、商品として入手できるか、文献に知られているか、または当業者によく知られている種々の方法により都合よく調製し得る。1つの通常の経路は、スキーム5に説明され、Pが、BocまたはCbzなどのカルバメート保護基である酸27と、ジクロロメタンなどの溶媒中、1時間から16時間N−ヒドロキシスクシンイミドおよびEDCまたは他の好適な結合剤との処理を含む。次に、生じた生成物28を、ジオキサンなどの溶媒中、水性水酸化アンモニアで処理する。例えば、Bocの場合ジクロロメタン中TFAとの処理により、またはCbzの場合接触還元条件下で、保護基の除去により、中間体10を得る。酸誘導体27は、商品として入手できるか、文献に知られているか、または当業者によく知られている種々の方法により都合よく調製し得る。例えば、XがCHFまたはCFである場合、27のメチルエステルの合成は、Demangeら、Tetrahedron Lett.、39、1169ページ(1998)に記載されている。
【0136】
幾つかの場合、生成物Iまたは上記のスキームに説明される合成中間体は、例えば、RまたはR上の置換基の操作によりさらに修飾できる。これらの操作としては、限定はしないが、当業者に通常知られている置換反応、還元反応、酸化反応、アルキル化反応、アシル化反応、および加水分解反応が挙げられる。
【0137】
【化34】

【0138】
このような操作の1つは、スキーム6に説明されており、アミノ複素環30は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはジクロロメタンなどの溶媒中、周囲温度で3時間から48時間、ピリジンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基存在下、例えば、酸クロリド、活性カルボン酸、または塩化スルホニルによりアシル化され、R置換アミノ複素環を得る。Bocの場合、ジクロロメタン中TFAによる処理、またはCbzの場合、アセトニトリル中ヨードトリメチルシランとの処理による保護基の除去により式Ieの最終化合物を得る。
【0139】
【化35】

【0140】
他のこのような例は、スキーム7に説明される。YおよびZがNおよびN−Hである中間体31は、臭化アルキルまたはヨウ化アルキルなどのハロゲン化アルキルにより処理される。脱保護により、典型的には、異性体IfおよびIgの混合物として生成物を得る。
【0141】
幾つかの場合において、前述の反応スキームを実施する順序は、反応を促進するため、または不必要な反応生成物を避けるために変わり得る。以下の例は、本発明を十分に理解されるように提供される。これらの例は、説明のみのためであり、いかなる方法においても本発明を限定するものとして解釈してはならない。
【0142】
(実施例)
中間体1
【0143】
【化36】

【0144】
メチル(2S)−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ](4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタノエート
20mL(230mmol)の塩化アセチルの400mLメタノール溶液に、0℃で20g(120mmol)の(S)−4−ヒドロキシフェニルグリシンを加えた。この混合物を、周囲温度で16時間撹拌し、40℃で2時間加熱し、冷却して減圧濃縮した。水を加え、この混合物を、ジクロロメタンで3回抽出した。有機相を合わせて、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して粗製のメチルエステル体を得た。この物質を、400mLのジクロロメタンに溶解し、28.8g(132mmol)のジ−t−ブチルジカルボネートおよび31.4mL(180mmol)のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を加えた。混合物を周囲温度で20時間撹拌し、減圧濃縮し、400mLの酢酸エチルに溶解した。有機相を、飽和重炭酸ナトリウム溶液、水、およびブラインで連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗製の固体を、200mLの1:4のエーテル:ヘキサンで粉砕して30gのBocカルバメート体を得、これを30mLの酢酸に溶解した。この溶液に、2.2gの酸化白金(IV)を加え、この反応液を水素(48psi)雰囲気下で2時間振とうし、ろ過し、減圧濃縮した。粗製物を、酢酸エチルに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム溶液、水、およびブラインで連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中20%から40%酢酸エチル)により精製して、標題のシス化合物を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δ5.05(bd、1H、J=12Hz)、4.33〜4.27(m、1H)、4.05(bs、1H)、3.78(s、3H)、1.89〜1.78(m、2H)、1.63〜1.38(m、16H)。溶出を続けると標題のトランス化合物を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δ5.04(bd、1H、J=12Hz)、4.30〜4.23(m、1H)、3.78(s、3H)、3.59〜3.51(m、1H)、2.08〜2.00(m、2H)、1.79〜1.50(m、3H)、1.43(s、9H)、1.33〜1.04(m、4H)。
【0145】
中間体2
【0146】
【化37】

【0147】
t−ブチル[2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−オキソエチル]カルバメート
10g(35mmol)の中間体1の525mLTHF溶液に、174mL(174mmol)の1N水酸化リチウム水溶液を加えた。この反応混合物を、周囲温度で2時間撹拌してから、減圧濃縮した。残渣を400mLの5%塩酸で酸性にし、混合物を400mLの酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合わせて、500mLの5%塩酸および500mLのブラインで連続して洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。2.5gサンプル(11mmol)の粗製の酸を、100mLのジクロロメタンに溶解し、978mg(1.2g、9.2mmol)の塩酸(S)−2−フルオロピロリドン(1.8g、9.6mmol)、EDC(1.2g、9.2mmol)、HOBt(1.2g、9.2mmol)およびDIEA(1.7mL、9.6mmol)を加えた。反応混合物を、窒素下、周囲温度で12時間撹拌した。次にジクロロメタン(300mL)を加え、この反応混合物を、400mLの5%塩酸、400mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液および400mLのブラインで連続して洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、100%酢酸エチルから10%メタノール/酢酸エチルの勾配溶出)により精製して、標題化合物を得た。MS367.2(M+23)。
【0148】
中間体3
【0149】
【化38】

【0150】
t−ブチル[2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソ−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル]カルバメート
2.0g(5.9mmol)の中間体2の100mLジクロロメタン溶液に、2.7g(7.4mmol)のDess−Martinペリオジナン試薬を加えた。この反応混合物を、周囲温度で3時間撹拌してから、50mLの飽和亜硫酸ナトリウム水溶液でクエンチした。この混合物を5分間撹拌してから、50mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液を加え、この混合物をさらに15分間撹拌した。次に、有機相を、100mLの飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、100mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液、および100mLのブラインで連続して洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、勾配溶出、80%酢酸エチル/へキサンから20%メタノール/酢酸エチル)により精製して、標題化合物を得た。MS243.1(M+1−BOC)。
【0151】
中間体4
【0152】
【化39】

【0153】
ベンジル[2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソ−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル]カルバメート
1.6g(4.7mmol)の中間体3に、20mLのジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸の1:1混液を加えた。この溶液を30分間撹拌してから、減圧濃縮した。この粗製残渣に、60mLのTHFに次いで20mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液および0.67mL(4.7mmol)のクロロギ酸ベンジルを加えた。この反応混合物を、周囲温度で90分間撹拌した。酢酸エチル(200mL)を加え、この溶液を200mLの水、200mLの5%塩酸、および200mLのブラインで連続して洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、勾配溶出、60%酢酸エチル/へキサンから100%酢酸エチル)により精製して、標題化合物を得た。MS377.2(M+1)。
【0154】
中間体5
【0155】
【化40】

【0156】
ベンジル[1−(3−ブロモ−4−オキソシクロヘキシル)−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル]カルバメート
0.69g(1.8mmol)の中間体4の25mLTHF溶液に、1.32g(3.5mmol)のフェニルトリメチルアンモニウムペルブロミドを0℃で加えた。反応混合物を撹拌し、一晩ゆっくりと周囲温度に温めた。飽和重炭酸ナトリウム溶液(35mL)を加え、反応混合物を60mLの酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせて、飽和重炭酸ナトリウム水溶液およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して標題化合物を得た。MS456.2(M+1)。
【0157】
中間体6
【0158】
【化41】

【0159】
ベンジル{(1S)−1−(2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル}カルバメート
0.085g(0.19mmol)の中間体5に、2mLの無水エタノールと0.029g(0.38mmol)のチオ尿素を加え、反応混合物を、窒素下、80℃で一晩撹拌した。次いで反応混合物を室温に冷却し、減圧濃縮した。粗製物を、直接Gilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)で精製してアミノチアゾール体を得た。MS433.3(M+1)。
【0160】
中間体7
【0161】
【化42】

【0162】
t−ブチル[(1S)−1−(2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル]カルバメート
中間体7を、中間体5および6の手法に本質的に従って中間体3から形成した。ジアステレオマー混合物を、ChiralCel OJ4.6x250mm 10ミクロンカラム(70%エタノール/ヘキサン)を用いて分割した。より速い溶出のジアステレオマーに関して、MS399.5(M+1)。より遅い溶出のジアステレオマーに関して、MS399.5(M+1)。
【実施例1】
【0163】
【化43】

【0164】
6−[(1S)−1−アミノ−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−アミン、ビス−トリフルオロ酢酸塩
中間体6を、ChiralCel OJ4.6x250mm 10ミクロンカラム(70%エタノール/ヘキサン)を用いて分割して、中間体6のそれぞれの純粋なジアステレオマーを得た。
【0165】
1mLのアセトニトリルに溶解された18mg(0.042mmol)のより速い溶出ジアステレオマーに、0.036mL(0.25mmol)のヨードトリメチルシランを加えた。反応混合物を、周囲温度で30分間撹拌してから、減圧濃縮した。粗製物を、直接Gilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)で精製して1つのジアステレオマーの標題化合物を得た。MS299.0(M+1)。中間体6の遅い溶出のジアステレオマーから、同じ手法を用いて他のジアステレオマーの標題化合物を得た。MS299.0(M+1)。
【実施例2】
【0166】
【化44】

【0167】
[(1S)−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−1−(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)−2−オキソエチル]アミン、トリフルオロ酢酸塩
2mLDMF中の0.17g(0.38mmol)のα−ブロモケトン中間体5に、42mg(0.56mmol)のチオアセトアミドを加えた。反応混合物を窒素下、80℃で約16時間撹拌した。この反応混合物を、25mLの酢酸エチルで3回抽出し、有機相を、50mLの水で2回および50mLのブラインで1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、勾配溶出、25%酢酸エチル/へキサンから75%酢酸エチル/へキサン)により精製して、45mgのジアステレオマー混合物を得た。この混合物を、50%エタノール/ヘキサンと共にChiralCel OJ4.6x250mm 10ミクロンカラムを用いるHPLCにより分割した。この純粋なジアステレオマーは、本質的に実施例1に記載された手法に従ってヨードトリメチルシランを用いて脱保護した。生成物をGilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)により精製して各ジアステレオマーを得た。より速い溶出のジアステレオマーからの生成物、MS298.1(M+1)。より遅い溶出のジアステレオマーからの生成物、MS298.1(M+1)。
【実施例3】
【0168】
【化45】

【0169】
[(1S)−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソ−1−[2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル]エチル]アミン、トリフルオロ酢酸塩
2mLDMF中の0.070g(0.15mmol)のα−ブロモケトン中間体5に、47mg(0.23mmol)の4−(トリフルオロメチル)チオベンズアセトアミドを加えた。反応混合物を窒素下、100℃で約16時間撹拌してから20mLの水で希釈した。この反応混合物を、25mLの酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合わせて、50mLの水で2回および50mLのブラインで1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、勾配溶出、25%酢酸エチル/へキサンから75%酢酸エチル/へキサン)により精製して、35mgのジアステレオマー混合物を得た。この混合物を、50%エタノール/ヘキサンと共にChiralCel AS4.6x250mm 10ミクロンカラムを用いるHPLCにより分割した。この純粋なジアステレオマーは、ヨードトリメチルシランを用いて実施例1のとおり脱保護した。生成物をGilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)により精製して標題化合物の各ジアステレオマーを得た。より速い溶出のジアステレオマーからの生成物に関して、MS428.3(M+1)。より遅い溶出のジアステレオマーからの生成物に関して、MS428.3(M+1)。
【実施例4】
【0170】
【化46】

【0171】
N−[6−[(1S)−1−アミノ−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル]−4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、トリフルオロ酢酸塩
中間体6(40mg、0.092mmol)を、1mLのジクロロメタンに溶解し、0.048mL(0.28mmol)のDIEAに次いで0.021mL(0.14mmol)の塩化4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンゾイルを加えた。反応混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。この反応混合物を、200mgのPSA Bond Elut樹脂を通してろ過した。樹脂を、10mLの10%メタノール/ジクロロメタンで洗浄し、ろ液を減圧濃縮した。残渣を、Gilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)により精製した。ジアステレオマー混合物を、50%エタノール/ヘキサンと共にChiralCel AS4.6x250mm 10ミクロンカラムを用いるHPLCにより分割した。保護基は、ヨードトリメチルシランを用いて実施例1の手法に従って除去し、生成物をGilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)により精製して標題化合物の各ジアステレオマーを得た。より速い溶出のジアステレオマーからの生成物に関して、MS489.2(M+1)。より遅い溶出のジアステレオマーからの生成物に関して、MS489.2(M+1)。
【実施例5】
【0172】
【化47】

【0173】
N−[6−[(1S)−1−アミノ−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル]アセトアミド、トリフルオロ酢酸塩
中間体7(19mg、0.075mmol)のより速い溶出のジアステレオマーを、0.040mL(0.23mmol)のDIEAおよび0.011mL(0.15mmol)の塩化アセチルと共に1mLのジクロロメタンに溶解した。反応混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。この反応混合物を、200mgのPSA Bond Elut樹脂を通してろ過した。樹脂を、10mLの10%メタノール/ジクロロメタンで洗浄し、ろ液を減圧濃縮し、Gilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)により精製した。生成物を、5mLのジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸の1:1混液に溶解し、周囲温度で30分間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を、Gilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)により精製して標題化合物を得た。MS341.1(M+1)。
【実施例6】
【0174】
【化48】

【0175】
N−[6−[(1S)−1−アミノ−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル]2,2,2−トリフルオロエタンスルホンアミド、トリフルオロ酢酸塩
中間体7(60mg、0.15mmol)のより速い溶出のジアステレオマーを、1mLのジクロロメタンおよび0.24mLのピリジン(3mmol)に溶解し、次いで0.17mL(0.15mmol)の塩化2,2,2−トリフルオロエタンスルホルを加えた。反応混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。この反応混合物を、200mgのPSA Bond Elut樹脂を通してろ過した。樹脂を、10mLの10%メタノール/ジクロロメタンで洗浄し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をGilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)により精製した。生成物を、5mLのジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸の1:1混液に溶解し、この混合物を周囲温度で30分間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した。残渣を、Gilsonの逆相分取HPLC(YMC−Pack Pro C18、勾配溶出、20mL/分で9分の10%アセトニトリル/水から90%アセトニトリル/水)により精製して標題化合物を得た。MS445.1(M+1)。
【実施例7】
【0176】
【化49】

【0177】
N−[6−[(1S)−1−アミノ−2−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−2−オキソエチル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル]メタンスルホンアミド、トリフルオロ酢酸塩
標題化合物は、本質的に実施例6に記載された手法に従って、中間体7のより速い溶出のジアステレオマーおよび塩化メタンスルホニルから調製された。MS377.2(M+1)。
【0178】
製薬製剤の実施例
経口用薬剤組成物の具体的実施形態として、100mgの効力錠剤は、100mgの任意の本発明化合物、268mgの微結晶セルロース、20mgのクロスカルメロースナトリウム、および4mgのステアリン酸マグネシウムから構成される。有効成分、微結晶セルロース、およびクロスカルメロースナトリウムを先ず混合する。次いでこの混合物を、ステアリン酸マグネシウムにより潤滑し、錠剤に圧縮する。
【0179】
本発明は、そのある特定の実施形態を参照として記載され、説明されているが、当業者は、手法とプロトコルの種々の改造、変更、修飾、置換、削除、または付加が、本発明の精神と範囲から逸脱することなく成し得ることを認識するであろう。例えば、本明細書に記載された特定の投与量以外の有効な投与量は、上記に示された本発明化合物による任意の適応症に治療される哺乳動物の応答性の変化の結果、適用可能であり得る。観察される具体的な薬理学的応答は、選択された特定の有効化合物により、また依存して、または製薬用担体が存在するかどうか、ならびに製剤タイプおよび使用される投与様式に依って変化し得、その結果、このように予想される変化または相違は、本発明の目的および実践に従って考慮されている。したがって、本発明は、以下の請求項の範囲により定義され、また、このような請求項は、合理的に幅広く説明されるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iの化合物:
【化1】

[式中:
各nは、独立して0、1、2、または3であり:
Wは、CH、CHF、およびCFからなる群から選択され;
Xは、S、S(O)、S(O)、CH、CHF、およびCFからなる群から選択され;
YおよびZは、O、S、N、およびNRからなる群から各々独立して選択され、但し、YおよびZの少なくとも1つはNであり、;
は、水素またはシアノであり;
は、
水素
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
アルキルが非置換であるかまたは1個から5個のハロゲンで置換されているC1〜6アルキル、
アルコキシが非置換であるかまたは1個から5個のハロゲンで置換されているC1〜6アルコキシ、
(CH−COOH、
(CH−COOC1〜6アルキル、
(CH−CONR
(CH−NR
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR
(CH−NRCO
(CH−アリール(ここで、アリールは、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから5つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは、非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている。)。)
からなる群から選択され;
における任意のメチレン(CH)炭素原子は独立して、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、および(非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている)C1〜4アルキルから独立して選択される1つから2つの基で置換されており;
およびRは独立して、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3〜6シクロアルキル、および
1〜6アルキル(ここで、アルキルは、非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている(ここで、フェニルおよびシクロアルキルは、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから5つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている。)。)。)
からなる群から選択され;
とRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、およびモルホリンから選択される複素環を形成しており(前記複素環は、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから3つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている。)。);
各Rは、独立して(CH−フェニル、(CH−C3〜6シクロアルキル、およびC1〜6アルキルからなる群から選択され(ここで、アルキルは、非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている(ここで、フェニルおよびシクロアルキルは、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから5つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されており、また、Rにおける任意のメチレン(CH)炭素原子は、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、および(非置換であるか、1個から5個のハロゲンで置換されている)C1〜4アルキルから独立して選択される1つから2つの基で置換されている。)。);
各Rは、水素またはRであり;
は、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3〜6シクロアルキル、および
1〜6アルキル(ここで、アルキルは、非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている(ここで、フェニルおよびシクロアルキルは、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、およびC1〜6アルコキシから独立して選択される1つから5つの置換基で置換されている(ここで、アルキルおよびアルコキシは非置換であるか、または1個から5個のハロゲンで置換されている。)。)。)
からなる群から選択される。]
【請求項2】
*で印された炭素原子が、式IIa:
【化2】

に示された立体化学配置を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
構造式IIb:
【化3】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、CH、CHF、またはCFであり、Rが水素である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
*で印された炭素原子が、式IIc:
【化4】

(Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは水素である。)
に示された立体化学配置を有する請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
構造式Id:
【化5】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Xが、CH、CHF、またはCFであり、Rが水素である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
*で印された炭素原子が、式IIe:
【化6】

(Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは水素である。)
に示された立体化学配置を有する請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
構造式IIf:
【化7】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Xが、CH、CHF、またはCFであり、Rが水素である請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
*で印された炭素原子が、式IIg:
【化8】

(Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは水素である。)
に示された立体化学配置を有する請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
構造式IIh:
【化9】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Xが、CH、CHF、またはCFであり、Rが水素である請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
*で印された炭素原子が、式IIi:
【化10】

(Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは水素である。)
に示された立体化学配置を有する請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
構造式IIj:
【化11】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
Xが、CH、CHF、またはCFであり、Rが水素である請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
*で印された炭素原子が、式IIk:
【化12】

(Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは水素である。)
に示された立体化学配置を有する請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
構造式IIl:
【化13】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
Xが、CH、CHF、またはCFであり、Rが水素である請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
*で印された炭素原子が、式IIm:
【化14】

(Xは、CH、CHF、またはCFであり、Rは水素である。)
に示された立体化学配置を有する請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物および薬剤として許容できる担体を含む薬剤組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む糖尿病の治療を必要とする哺乳動物において糖尿病を治療する方法。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含むインスリン非依存性(2型)糖尿病の治療を必要とする哺乳動物においてインスリン非依存性(2型)糖尿病を治療する方法。
【請求項24】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む高血糖症の治療を必要とする哺乳動物において高血糖症を治療する方法。
【請求項25】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む肥満症の治療を必要とする哺乳動物において肥満症を治療する方法。
【請求項26】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLおよび高LDLの群から選択される1つ以上の脂質障害の治療を必要とする哺乳動物において異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLおよび高LDLの群から選択される1つ以上の脂質障害を治療する方法。
【請求項27】
治療を必要とする哺乳動物において(1)高血糖症、(2)低耐糖性、(3)インスリン耐性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDL濃度、(11)高LDL濃度、(12)アテローム性動脈硬化症およびその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏腸症候群、(15)クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性状態、(17)膵炎、(18)腹部肥満症、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎障害、(22)神経障害、(23)症候群X、(24)卵巣高アンドロゲン症(多嚢胞性卵巣症候群)、およびインスリン耐性が構成要素である他の障害からなる群から選択される1つ以上の状態の治療方法であって、請求項1に記載の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項28】
(a)第2のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤;
(b)PPARγアゴニスト、PPARα/γデュアルアゴニスト、PPARαアゴニスト、ビグアニド、および蛋白チロシンホスファターゼ−1B阻害剤からなる群から選択されるインスリン感作物質;
(c)インスリンまたはインスリン擬似物質;
(d)スルホニル尿素または他のインスリン分泌促進物質;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤;
(f)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)GLP−1、GLP−1擬似物質、またはGLP−1受容体アゴニスト;
(h)GIP、GIP擬似物質、GIP受容体アゴニスト;
(i)PACAP、PACAP擬似物質、またはPACAP受容体アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(ii)金属イオン封鎖剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸またはその塩、(iv)PPARαアゴニスト、(v)PPARα/γデュアルアゴニスト、(vi)コレステロール吸収阻害剤、(vii)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、および(viii)抗酸化剤などのコレステロール低下剤;
(k)PPARδアゴニスト;
(l)抗肥満性化合物;
(m)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤;
(n)抗炎症剤;および
(o)降圧剤
からなる群から選択される1つ以上の追加の有効成分をさらに含む請求項21に記載の薬剤組成物。
【請求項29】
PPARα/γデュアルアゴニストがKRP−297である請求項28に記載の薬剤組成物。
【請求項30】
PPARα/γデュアルアゴニストKRP−297と併用して請求項1に記載の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む糖尿病の治療を必要とする哺乳動物において糖尿病を治療する方法。
【請求項31】
インスリン感作物質またはインスリン分泌促進物質と併用して請求項1に記載の化合物の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む糖尿病の制御または治療を必要とする哺乳動物において糖尿病を制御または治療する方法。

【公表番号】特表2006−528131(P2006−528131A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517234(P2006−517234)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018718
【国際公開番号】WO2004/112701
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】