説明

糖尿病の治療又は予防のためのジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤としてのアミノテトラヒドロピラン

本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤であり、糖尿病、特に2型糖尿病のような、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾患の治療又は予防に有用な、構造式(I)の新規の置換アミノテトラヒドロピランに関する。本発明は、また、このような化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する前記疾患の予防又は治療における、これらの化合物及び組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DPP−4阻害剤」)であり、糖尿病、特に2型糖尿病のような、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾患の治療又は予防に有用である、新規の置換アミノテトラヒドロピランに関する。本発明は、また、このような化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する前記疾患の予防又は治療における、これらの化合物及び組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、複数の原因因子に由来し、空腹状態又は経口グルコース負荷試験の際のグルコースの投与後における血漿グルコースレベルの上昇又は高血糖により特徴づけられる疾病過程を意味する。持続的又は制御不能な高血糖は、増加した早期の罹患及び死亡に関連している。多くの場合に異常なグルコース恒常性が、脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質代謝の変化、並びに他の代謝及び血行動態疾患に、直接的及び間接的に関連している。従って、2型糖尿病の患者においては、冠動脈性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧症、腎症、神経障害及び網膜症を含む、大血管性及び微小血管性合併症の危険性が特に増加する。従って、グルコース恒常性、脂質代謝及び高血圧の治療制御は、糖尿病の臨床管理及び治療において極めて重要である。
【0003】
一般的に認識されている2種の糖尿病の形態がある。1型糖尿病又はインシュリン依存性糖尿病(IDDM)では、患者は、グルコース利用を調節するホルモンであるインシュンをほとんど生成しないか、又は全く生成しない。2型糖尿病又はインシュリン非依存性糖尿病(NIDDM)では、患者は多くの場合において非糖尿病被験者と比べて同じであるか又は上昇さえしている血漿インシュリンレベルを有するが、これらの患者は、筋肉、肝臓及び脂肪組織である主なインシュリン感受性組織におけるグルコース及び脂質代謝に対するインシュリン刺激効果への抵抗性を発生し、血漿インシュリンレベルは上昇しているが、顕著なインシュリン抵抗性を克服するには不十分である。
【0004】
インシュリン抵抗性は、主に、インシュリン受容体の数が減少することに起因するのではなく、未だに理解されていない、インシュリン受容体結合後欠陥に起因する。このインシュリンの反応性に対する抵抗性は、筋肉内へのグルコースの取り込み、酸化及び貯蔵における不十分なインシュリン活性化、並びに脂肪組織における脂肪分解及び肝臓におけるグルコース生成及び分泌の不十分なインシュリンの抑制をもたらす。
【0005】
2型糖尿病に利用できる治療には、長年実質的に変わっていないが、限界があることが認識されている。運動及び食事カロリー摂取量の低減は糖尿病の病状を劇的に改善するが、この治療のコンプライアンスは、十分に定着した座りがちな生活様式及び過剰の食物消費、特に多量の飽和脂肪を含有する食物の消費のために非常に悪い。膵臓β細胞を刺激して多量のインシュリンを分泌させるスルホニル尿素(例えば、トルブタミド及びグリピザイド)又はメグリチニドを投与することにより及び/又はスルホニル尿素若しくはメグリチニドの効果がなくなった時にインシュリンを注入することにより、インシュリンの血漿レベルを上昇させることは、まさにインシュリン抵抗性組織を刺激するのに十分に高い濃度のインシュリンをもたらすことができる。しかし、危険なほど低いレベルの血漿グルコースは、インシュリン又はインシュリン分泌促進剤(スルホニル尿素又はメグリチド)の投与に起因し、より高い血漿インシュリンレベルに起因する、より上昇したレベルのインシュリン抵抗性が生じ得る。ビグアニド類はインシュリン感受性を増大し、高血糖にある程度の修正をもたらす。しかし、2種のビグアニド類、フェンホルミン及びメトホルミンは、乳酸アシドーシス及び嘔気/下痢を誘発し得る。メトホルミンは、フェンホルミンよりも副作用が少なく、2型糖尿病の治療においてしばしば処方されている。
【0006】
グリタゾン類(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は、2型糖尿病の多くの症状を改善する可能性のある化合物の更なるクラスを構成する。これらの薬剤は、いくつかの2型糖尿病の動物モデルにおいて、筋肉、肝臓及び脂肪組織でインシュリン感受性を実質的に増加させ、低血糖症を起こすことなく、上昇したグルコース血漿レベルに部分的又は完全な修正をもたらす。現在市販されているグリタゾン類は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)、主にPPAR−ガンマサブタイプのアゴニストである。PPAR−ガンマアゴニズムは、一般に、グリタゾン類で観察される改善されたインシュリン感作の原因であると考えられている。2型糖尿病の治療のために試験されている新規なPPARアゴニストは、アルファ、ガンマ若しくはデルタサブタイプ又はこれらの組み合わせのアゴニストであり、多くの場合、グリタゾン類と化学的に異なっている(すなわち、これらは、構造においてチアゾリジンジオンではない)。重篤な副作用(例えば、肝臓毒性)が、トログリタゾンのような一部のグリタゾン類で生じている。
【0007】
この疾患を治療する追加の方法は、依然として研究中である。最近導入された、又は依然として開発中の新たな生化学的手法には、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)、GLP−1模倣薬(例えば、エキセナチド及びリラグルチド)、グルカゴン受容体アンタゴニスト、グルコキナーゼ活性化剤及びGPR−119アゴニストが含まれる。
【0008】
ジペプチジルペプチダーゼIV(「DPP−4」)酵素の阻害剤である化合物は、糖尿病、特に2型糖尿病の治療に有用であることもわかっている。[WO97/40832;WO98/19998;米国特許第5,939,560号;米国特許第6,303,661号;米国特許第6,699,871号;米国特許第6,166,063号;Bioorg.Med.Chem.Lett.,6:1163−1166(1996);Bioorg.Med.Chem.Lett.,6:2745−2748(1996);D.J.Drucker in Exp.Opin.Invest.Drugs,12:87−100(2003);K.Augustyns,et al.,Exp.Opin.Ther.Patents,13:499−510(2003);Ann E.Weber,J.Med.Chem.,47:4135−4141(2004);J.J.Holst,Exp.Opin.Emerg.Drugs,9:155−166(2004);D.Kim,et al.,J.Med.Chem.,48:141−151(2005);K.Augustyns,Exp.Opin.Ther.Patents,15:1387−1407(2005);H.−U.Demuth in Biochim.Biophys.Acta,1751:33−44(2005)及びR.Mentlein,Exp.Opin.Invest.Drugs,14:57−64(2005)を参照されたい。
【0009】
糖尿病の治療に有用なDPP−4阻害剤を開示する、追加の特許公報には、WO2006/009886(2006年1月26日);WO2006/039325(2006年4月13日);WO2006/058064(2006年6月1日);WO2006/127530(2006年11月30日);WO2007/024993(2007年3月1日);WO2007/070434(2007年6月21日);WO2007/087231(2007年8月2日);WO07/097931(2007年8月30日);WO07/126745(2007年11月8日);WO07/136603(2007年11月29日)及びWO08/060488(2008年5月22日)が含まれる。
【0010】
2型糖尿病の治療におけるDPP−4阻害剤の有用性は、DPP−4がインビボでグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)及び胃阻害性ペプチド(GIP)を容易に不活性化するという事実に基づいている。GLP−1及びGIPはインクレチンであり、食物が消費される時に生成する。インクレチンはインシュリンの生成を促進する。DPP−4の阻害は、インクレチンの不活性化の減少をもたらし、このことは、次に膵臓によるインシュリンの生成を促進するインクレチンの有効性の増大をもたらす。従って、DPP−4の阻害は血清インシュリンレベルの増加をもたらす。有利なことに、インクレチンは、食物が消費される時にのみ身体により生成されるので、DPP−4の阻害は、過剰な低血糖(低血糖症)をもたらす可能性がある食間のような不適切なときにインシュリンレベルを増加しないと予想される。従って、DPP−4の阻害は、インシュリン分泌促進薬の使用に関連する危険な副作用である低血糖症の危険性を増加することなく、インシュリンを増加すると予想される。
【0011】
DPP−4阻害剤は、本明細書に記載されているように、他の治療的有用性をも有する。改善されたDPP−4阻害剤を糖尿病、並びに潜在的には他の疾患及び病状の治療のために見出すことができるように、新規な化合物が必要である。特に、静止細胞プロリンジペプチダーゼ(QPP)、DPP8及びDPP9を含むセリンペプチダーゼのファミリーの他のメンバーに対して選択的であるDPP−4阻害剤が必要である(G.Lankas,et al.,「Dipeptidyl Peptidase−IV Inhibition for the Treatment of Type 2 Diabetes:Potential Importance of Selectivity Over Dipeptidyl Peptidases 8 and 9」,Diabetes,54:2988−2994(2005);N.S.Kang,et al.,「Docking−based 3D−QSAR study for selectivity of DPP4,DPP8,and DPP9 inhibitors」,Bioorg.Med.Chem.Lett.,17:3716−3721(2007)を参照されたい)。
【0012】
2型糖尿病の治療におけるDPP−4阻害剤の治療可能性は、(i)D.J.Drucker,Exp.Opin.Invest.Drugs,12:87−100(2003);(ii)K.Augustynsら,Exp.Opin.Ther.Patents,13:499−510(2003);(iii)J.J.Holst,Exp.Opin.Emerg.Drugs,9:155−166(2004);(iv)H.−U.Demuthら,Biochim.Biophys.Acta,1751:33−44(2005);(v)R.Mentlein,Exp.Opin.Invest.Drugs,14:57−64(2005);(vi)K.Augustyns,「プロリン特異的ジペプチジルペプチダーゼの阻害剤:2型糖尿病の治療のための新規アプローチとしてのDPP IV阻害剤」、Exp.Opin.Ther.Patents,15:1387−1407(2005);(vii)D.J.Drucker及びM.A.Nauck,「インクレチンシステム:2型糖尿病におけるGLP−1受容体アゴニスト及びジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤」,The Lancet,368:1696−1705(2006);(viii)T.W.von Geldern及びJ.M.Trevillyan,「「The Next Big Thing」in Diabetes:DPP−IV阻害剤における臨床的進行」,Drug Dev.Res.,67:627−642(2006);(ix) B.D.Greenら,「2型糖尿病の治療としてのジペプチジルペプチダーゼIV活性の阻害」,Exp.Opin.Emerging Drugs,11:525−539(2006);(x)J.J.Holst及びC.F.Deacon,「糖尿病治療における新しい展望」,Immun.,Endoc.& Metab.Agents in Med.Chem.,7:49−55(2007);(xi)R.K.Campbell,「ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤についての理論的解釈:2型糖尿病の治療のための新しいクラスの経口剤」,Ann.Pharmacother.,41:51−60(2007);(xii)Z.Pei,「ベンチから病室へ:ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、新規なクラスの抗高血糖剤」,Curr.Opin.Drug Discovery Development,11:512−532(2008)及び(xiii)J.J.Holstら,「グルカゴン様ペプチド−1,グルコース恒常性及び糖尿病」,Trends in Molecular Medicine,14:161−168(2008)において議論されている。2型糖尿病の治療のために既に承認されているか又は臨床試験中である特定のDPP−4阻害剤には、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、カルメグリプチン、メログリプチン及びデュトグリプチンが含まれる。
【発明の概要】
【0013】
発明の要旨
本発明は、新規置換3−アミノテトラヒドロピランに関し、これは、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DPP−4阻害剤」)であり、糖尿病、特に2型糖尿病のような、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾患の治療又は予防に有用である。本発明は、また、このような化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する前記疾患の予防又は治療における、これらの化合物及び組成物の使用に関する。
【0014】
発明の詳細な記載
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害剤として有用な新規置換3−アミノテトラヒドロピランに関する。本発明の化合物は、構造式I:
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、Vは:
【0017】
【化2】

からなる群から選択され;
Arは、1〜5個のR置換基で置換されていてもよいフェニルであり;
各Rは、独立して:
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル、及び
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルコキシ、からなる群から選択され;
各Rは、独立して:
水素、
ハロゲン、
シアノ、
アルコキシが独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、C1−10アルコキシ、
アルキルが独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、C1−10アルキル、
アルケニルが独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、C2−10アルケニル、
アリールが独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、(CH−アリール(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、
ヘテロアリールが独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、(CH−ヘテロアリール(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、
ヘテロシクリルが独立してオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、(CH−ヘテロシクリル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、
シクロアルキルが独立してハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、(CH−C3−6シクロアルキル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR、及び
(CH−NRCO、からなる群から選択され、
ここで、(CH中の任意の個々のメチレン(CH)炭素原子は、独立してフッ素、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
3a及びR3bは、それぞれ独立して、水素又は1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3−6シクロアルキル、及び
1−6アルキル、からなる群から選択され、
ここで、アルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、フェニル及びシクロアルキルは、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
又は、R及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成し、ここで、前記複素環は、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
各Rは、独立してC1−6アルキルであり、ここでアルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシルから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく;
は、水素又はRであり;
は:
−SO1−6アルキル、
−SO3−6シクロアルキル、
−SO−アリール、
−SO−ヘテロアリール、
−C(O)C1−6アルキル、
−C(O)C3−6シクロアルキル、
−C(O)−アリール、
−C(O)−ヘテロアリール、
−C(O)OC1−6アルキル、
−C(O)OC3−6シクロアルキル、
−C(O)O−アリール、
−C(O)O−ヘテロアリール、
−C(O)NHC1−6アルキル、
−C(O)NHC3−6シクロアルキル、
−C(O)NH−アリール、及び
−C(O)−NH−ヘテロアリール、からなる群から選択され、
ここで、アルキル及びシクロアルキルは、1〜5個のフッ素で置換されていてもよく、アリール及びヘテロアリールは、独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシからなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
各nは独立して0、1、2又は3であり;そして
各mは独立して0、1又は2である]の化合物又は薬学的に許容されるその塩により記載される。
【0018】
本発明の化合物の一実施態様においては、Arは、独立してフッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい。この実施態様の一クラスにおいては、Arは2,5−ジフルオロフェニル又は2,4,5−トリフルオロフェニルである。
【0019】
本発明の化合物の第2の実施態様においては、R3a及びR3bはいずれも水素である。
【0020】
本発明の化合物の第3の実施態様においては、Vは、
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R及びRは前記で定義した通りである)からなる群から選択される。この実施態様の一クラスにおいては、Rは水素である。この第3の実施態様の他のクラスにおいては、Vは
【0023】
【化4】

である。このクラスの一サブクラスにおいては、Rは水素である。
本発明の化合物の第4の実施態様においては、Rは、
−SO1−6アルキル、
−SO3−6シクロアルキル、
−SO−アリール、及び
−SO−ヘテロアリール、からなる群から選択され、
ここで、アルキル及びシクロアルキルは、1〜5個のフッ素で置換されていてもよく、アリール及びヘテロアリールは、独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシからなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい。この第4の実施態様の一クラスにおいては、Rは、−SO1−6アルキル又は−SO3−6シクロアルキルであり、アルキル及びシクロアルキルは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい。
【0024】
本発明の化合物の第5の実施態様においては、で印を付けた2個の不斉テトラヒドロピラン炭素原子上のAr及びNH置換基のトランス配向性を有する、示された立体配置の構造式Ia及びIb:
【0025】
【化5】

(式中、Ar及びVは前記の通りである)の化合物が提供される:
【0026】
この第5の実施態様の一クラスにおいては、で印を付けた2個の不斉テトラヒドロピラン炭素原子上のAr及びNH置換基のトランス配向性を有する、示された絶対立体配置の構造式Ia:
【0027】
【化6】

の化合物が提供される。
【0028】
第5の実施態様の第2のクラスにおいては、で印を付けた3個の不斉テトラヒドロピラン炭素原子上のAr及びNH置換基のトランス配向性、Ar及びV置換基のトランス配向性並びにNH及びV置換基のシス配向性を有する、示された立体配置の構造式Ic及びId:
【0029】
【化7】

の化合物が提供される。
【0030】
このクラスの一サブクラスにおいては、で印を付けた3個の不斉テトラヒドロピラン炭素原子上のAr及びNH置換基のトランス配向性、Ar及びV置換基のトランス配向性並びにNH及びV置換基のシス配向性を有する示された絶対立体配置の構造式Ic:
【0031】
【化8】

の化合物が提供される。
【0032】
このクラスの一サブクラスにおいては、Vは:
【0033】
【化9】

(式中、R及びRは前記で定義した通りである)からなる群から選択される。このサブクラスの一サブクラスにおいては、Rは水素であり、Rは−SO1−6アルキル又は−SO3−6シクロアルキルであり、ここでアルキル及びシクロアルキルは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい。
【0034】
この第5の実施態様の第3のクラスにおいては、で印を付けた3個の不斉テトラヒドロピラン炭素原子上のAr及びNH置換基のトランス配向性、Ar及びV置換基のシス配向性並びにNH及びV置換基のトランス配向性を有する示された立体配置の構造式Ie及びIf:
【0035】
【化10】

の化合物が提供される。
【0036】
このクラスの一サブクラスにおいては、で印を付けた3個の不斉テトラヒドロピラン炭素原子上のAr及びNH置換基のトランス配向性、Ar及びV置換基のシス配向性並びにNH及びV置換基のトランス配向性を有する示された絶対立体配置の構造式Ie:
【0037】
【化11】

の化合物が提供される。
【0038】
このサブクラスの一サブクラスにおいては、Vは:
【0039】
【化12】

(式中、R及びRは前記で定義した通りである)からなる群から選択される。このサブクラスの一サブクラスにおいては、Rは水素であり、Rは−SO1−6アルキル又は−SO3−6シクロアルキルであり、ここでアルキル及びシクロアルキルは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい。
【0040】
本発明の化合物の第6の実施態様においては、各Rは、独立して
水素、
アルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよい、C1−6アルキル、及び
シクロアルキルが独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C3−6シクロアルキル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、からなる群から選択される。
【0041】
本発明の化合物の、この第6の実施態様の一クラスにおいては、各Rは、独立して水素、C1−3アルキル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びシクロプロピルからなる群から選択される。このクラスの一サブクラスにおいては、各Rは水素である。
【0042】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤として有用な本発明の化合物の非限定的な例は、3個の不斉テトラヒドロフラン炭素原子における、示された絶対立体配置を有する以下の構造及び薬学的に許容されるその塩である:
【0043】
【化13−1】

【0044】
【化13−2】

【0045】
本明細書で用いられる場合、以下の定義が適用される。
【0046】
「アルキル」並びにアルコキシ及びアルカノイルのような接頭辞「アルカ(alk)」を有する他の基は、炭素鎖を特に定義しない限り、直鎖又は分岐鎖、並びにそれらの組み合わせである炭素鎖を意味する。アルキル基の具体例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル等が含まれる。例えば、C3−10のように、特定の数の炭素原子が許容される場合、用語アルキルは、シクロアルキル基、シクロアルキル構造と組み合わせた、直鎖又は分岐鎖アルキル鎖の組み合わせをも含む。炭素原子の数が特定されていない場合、C1−6を意味する。
【0047】
「シクロアルキル」はアルキルのサブセットであり、特定の数の炭素原子を有する、飽和炭素環を意味する。シクロアルキルの具体例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が含まれる。シクロアルキル基は、特に示さない限り、一般に単環式である。シクロアルキル基は、特に示さない限り飽和である。
【0048】
「アルコキシ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルコキシ)又はこの範囲内の任意の数の直鎖又は分岐鎖アルコキシド[すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシ等]を意味する。
【0049】
「アルキルチオ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−10アルキルチオ)又はこの範囲内の任意の数の直鎖又は分岐鎖アルキルスルフィド[すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオ等]を意味する。
【0050】
「アルキルアミノ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルアミノ)又はこの範囲内の任意の数の直鎖又は分岐鎖アルキルアミン[すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ等]を意味する。
【0051】
「アルキルスルホニル」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルスルホニル)又はこの範囲内の任意の数の直鎖又は分岐鎖アルキルスルホン[すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル等]を意味する。
【0052】
「アルキルオキシカルボニル」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルオキシカルボニル)又はこの範囲内の任意の数の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖又は分岐鎖エステル[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニル又はブチルオキシカルボニル等]を意味する。
【0053】
「アリール」は、炭素環原子を含む、単環式又は多環式芳香族環構造を意味する。好ましいアリールは、単環式又は二環式の6〜10員環芳香族環構造である。フェニル及びナフチルが好ましいアリールである。最も好ましいアリールはフェニルである。
【0054】
「ヘテロシクリル」なる用語は、O、S及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子、更にイオウの酸化形態、すなわちSO及びSOを含む、飽和又は不飽和の非芳香族環又は環構造を意味する。複素環の具体例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリン、ピロリジノン、オキサゾリジン−2−オン、イミダゾリジン−2−オン、ピリドン等が含まれる。
【0055】
「ヘテロアリール」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む、芳香族又は部分芳香族複素環を意味する。ヘテロアリールには、アリール、シクロアルキル及び芳香族でない複素環のような他の種類の環と縮合したヘテロアリールも含まれる。ヘテロアリール基の具体例には、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、2−オキソ−(1H)−ピリジニル(2−ヒドロキシ−ピリジニル)、オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][4,3−a]ピリジニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][1,5−a]ピリジニル、2−オキソ−1,3−ベンゾキサゾリル、4−オキソ−3H−キナゾリニル、3−オキソ−[1,2,4]−トリアゾロ[4,3−a]−2H−ピリジニル、5−オキソ−[1,2,4]−4H−オキサジアゾリル、2−オキソ−[1,3,4]−3H−オキサジアゾリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾリル、3−オキソ−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾリル等が含まれる。ヘテロシクリル及びヘテロアリール基については、3〜15個の原子を含み、1〜3個の環を形成する環及び環構造が含まれる。
【0056】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。塩素及びフッ素が、一般的に好ましい。アルキル又はアルコキシ基上においてハロゲンが置換される場合、フッ素が最も好ましい(例えば、CFO及びCFCHO)。
【0057】
本発明の化合物は、1個以上の不斉中心を含み、その結果、ラセミ体、ラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオ混合物及び個々のジアステレオマーとして存在し得る。特に、本発明の化合物は、式Ia、Ib、Ic、Id、Ie及びIfにおいてで印を付けた不斉炭素原子において不斉中心を有する。分子上の種々の置換基の性質に依存し、更なる不斉中心が存在し得る。このような各不斉中心は、独立して2種の光学異性体を生成し、これは、混合物において及び純粋な又は部分的に精製された化合物として、可能な全ての光学異性体及びジアステレオマーが本発明の範囲に包含されることを意味する。本発明は、これらの化合物のこのような全ての異性体形態を包含することを意味する。
【0058】
本明細書に記載される化合物のいくつかはオレフィン二重結合を含み、特に指定がない限り、E及びZ幾何異性体のいずれをも含むことを意味する。
【0059】
本明細書に記載される化合物のいくつかは、1個以上の二重結合シフトに付随する水素の異なる結合点を有する互変異性体として存在し得る。例えば、ケトン及びそのエノール形態はケト−エノール互変異性体である。個々の互変異性体及びその混合物は、本発明の化合物に包含される。本発明の化合物に包含されることを意図する互変異性体の例を以下に示す:
【0060】
【化14】

【0061】
式Iは、好ましい立体化学を示さない化合物のクラスの構造を示す。式Ia及びIbは、テトラヒドロピラン環におけるNH及びAr基と結合する不斉炭素原子における好ましい立体化学を示す。式Ic及びIdは、テトラヒドロピラン環におけるNH、Ar及びV基と結合する不斉炭素原子上における好ましい立体化学を示す。
【0062】
これらのジアステレオマーの独立的な合成又はそれらのクロマトグラフィーによる分離は、本明細書に記載される方法の適切な修飾により、当該技術分野において公知のようにして達成することができる。絶対立体化学は、公知の絶対配置の不斉中心を含む試薬を用い、結晶性生成物又は必要であれば誘導化される結晶性中間体のX線結晶学により決定することができる。
【0063】
所望であれば、化合物のラセミ混合物を、個々の鏡像異性体が単離するように分離することができる。この分離は、化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物とカップリングしジアステレオマー混合物を形成し、次いで個々のジアステレオマーを分別結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的な方法により分離することのような、当該技術分野において周知の方法により実施することができる。カップリング反応は、鏡像異性的に純粋な酸又は塩基を用いて塩を形成する場合が多い。次いで、ジアステレオマー誘導体を、添加したキラル残基の開裂により純粋な鏡像異性体に変換することができる。化合物のラセミ混合物を、キラル固定相を利用するクロマトグラフィー法により直接分離することもでき、この方法は当該技術分野において周知である。
【0064】
また、化合物の任意の鏡像異性体を、当該技術分野において周知の方法により光学的に純粋な出発原料又は公知の立体配置の試薬を用いて、立体選択的合成によって得ることができる。
【0065】
一般式Iの化合物において、原子はその天然の同位体多数を示し、又は1種以上の原子は、同じ原子番号を有する特定の同位元素が人工的に濃縮されているが、原子質量又は質量数は、主に天然に見られる原子質量又は質量数とは異なっている。本発明は、一般式Iの化合物の全ての適切な同位体変異体を含むことが意図される。例えば、水素(H)の異なる同位体形態には、プロチウム(H)及び重水素(H)が含まれる。プロチウムは、天然に見られる主な水素の同位体である。重水素の濃縮は、特定の治療上の利点、例えば、インビボにおける半減期の増加又は投与量要求量の減少を提供し、又は生体試料の特徴づけのための標準として有用な化合物を提供し得る。一般式I中の同位体濃縮された化合物は、当業者に周知の従来の方法により、又は適切な同位体濃縮された試薬及び/又は中間体を用い、本明細書のスキーム及び実験に記載されたものと類似の方法により、過度の実験なしで調製することができる。
【0066】
本明細書で用いられる場合、構造式Iの化合物に対する言及には、薬学的に許容される塩も含まれ、また、遊離化合物若しくはその薬学的に許容される塩に対する前駆体として、又は他の合成操作に用いられる場合は、薬学的に許容されない塩も含まれることを意味することが理解されよう。
【0067】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。「薬学的に許容される塩」なる用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩を意味する。「薬学的に許容される塩」なる用語の範囲内に包含される塩基性化合物の塩は、本発明の化合物の非毒性塩を意味し、これは、一般に遊離塩基を適切な有機又は無機酸と反応させることにより調製される。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモエート(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシレート、トリエチオジド及び吉草酸塩が含まれるが、これらに限定されない。更に、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、適切な薬学的に許容されるその塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等を含む無機塩基から誘導される塩が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、第一級、第二級及び第三級アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩が含まれる。
【0068】
また、カルボン酸(−COOH)又はアルコール基が本発明の化合物中に存在する場合、薬学的に許容される、メチル、エチル若しくはピバロイルオキシメチルのようなカルボン酸誘導体エステル又はO−アセチル、O−ピバロイル、O−ベンゾイル及びO−アミノアシルのようなアルコールのアシル誘導体を使用することができる。含まれるものは、持続性放出又はプロドラッグ製剤として用いられる、可溶性又は加水分解特性を修飾することが当該技術分において知られているエステル及びアシル基である。
【0069】
構造式Iの化合物の溶媒和物、特に水和物も同様に本発明に含まれる。
【0070】
本発明を例示するものは、実施例及び本明細書に開示されている化合物の使用である。
【0071】
本発明の化合物は、化合物の有効量を投与することを含む、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素の阻害が必要な哺乳動物のような患者における前記阻害を行う方法において有用である。本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害剤として明細書に開示されている化合物の使用に関する。
【0072】
ヒトのような霊長類に加え、多種多様な他の哺乳動物を本発明の方法によって治療することができる。例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット又は他のウシ科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、げっ歯類若しくはネズミ科の種が含まれるが、これらに限定されない哺乳動物を治療することができる。しかし、本発明の方法は、鳥類(例えば、ニワトリ)のような他の種で実施することもできる。
【0073】
本発明は、更に、本発明の化合物を薬学的に許容される担体又は稀釈剤と組み合わせることを含む、ヒト及び動物においてジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性を阻害する医薬の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、哺乳動物において高血糖症、2型糖尿病、肥満症及び脂質障害からなる群から選択される病状を治療するのに用いられる医薬の製造における構造式Iの化合物の使用に関し、ここで脂質障害は、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される。
【0074】
本発明の方法において治療される患者は、一般に、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害が望ましい哺乳動物、好ましくは男性又は女性のヒトである。「治療的有効量」なる用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により求められる、組織、系、動物又はヒトにおける生物学的又は医学的反応を引き起こす、本発明の化合物の量を意味する。
【0075】
本明細書で用いられる場合、「組成物」なる用語は、特定の量で特定の成分を含む生成物、並びに特定の成分の特定の量での組み合わせにより直接的又は間接的に得られる任意の生成物を包含することを意図する。医薬組成物に関するそのような用語は、活性成分及び担体を構成する不活性成分を含む生成物、並びに、任意の2種以上の成分の組み合わせ、複合体化若しくは凝集、又は1種以上の成分の解離又は1種以上の成分の他の種類の反応、若しくは相互作用により、直接的又は間接的に得られる任意の生成物を包含することを意図する。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を薬学的に許容される担体と混合して製造される任意の組成物を包含する。「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他の成分と適合性がなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0076】
化合物の「投与」又は化合物を「投与する」なる用語は、本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを治療の必要な個体に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0077】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害剤としての本発明の化合物の有用性は、当該技術分野において公知の方法によって立証することができる。阻害定数は、下記のように決定される。DPP−4により開裂されて蛍光AMC遊離基を放出する基質Gly−Pro−AMCを用いた、連続蛍光定量分析を使用する。この反応を記載する動力学的パラメーターは以下の通りである:K=50μM;kcat=75s−1;kcat/K=1.5×10−1−1。典型的な反応は、約50pMの酵素、50μMのGly−Pro−AMC及びバッファー(100mM HEPES、pH7.5、BSA 0.1mg/mL)を総反応容量の100μL中に含む。AMCの放出は、励起波長360nm及び発光波長460nmを用いて96ウェルのプレート蛍光光度計において連続的に測定する。これらの条件下で、約0.8μMのAMCが25℃、30分間で生成される。これらの研究で用いた酵素は、バキュロウイルス発現系(Bac−To−Bac,Gibco BRL)内で産生される可溶性(膜貫通ドメイン及び細胞質拡張を除く)ヒトタンパク質である。Gly−Pro−AMC及びGLP−1の加水分解の速度定数は、天然の酵素についての文献での値と一致していることがわかった。化合物の解離定数を測定するために、DMSO中の阻害剤の溶液を、酵素及び基質を含む反応に加えた(最終DMSO濃度は1%である)。全ての実験は、上記に記載された標準的反応条件を用いて、室温で実施した。解離定数(K)を決定するために、反応速度を競合的阻害のMichaelis−Menton式に非線形回帰により適合させた。解離定数の再現における誤差は、通常は2倍未満である。
【0078】
構造式(I)の化合物、特に、下記に示す実施例1〜17の化合物は、前記アッセイにおいて、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素を阻害する活性を有し、通常、約1μM未満、更には0.1μM未満のIC50を有していた。このような結果は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害剤としての使用のための本発明の化合物の本質的な活性を示す。
【0079】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素(DPP−4)は細胞表面タンパク質であり、広範囲の生物学的機能に関与している。広範囲な組織分布(腸、腎臓、肝臓、膵臓、胎盤、胸腺、脾臓、上皮細胞、血管内皮、リンパ系及び骨髄細胞、血清)を有し、特定の組織及び細胞型発現レベルを有する。DPP−4は、T細胞活性化マーカーCD26と同一であり、多くの免疫調節ペプチド、内分泌ペプチド及び神経ペプチドをインビトロで分解することができる。これは、ヒト又は他の種における多種多様な疾患過程における、このペプチダーゼの潜在的な役割を示唆している。
【0080】
従って、本発明の化合物は、以下の疾病、疾患及び病状の予防又は治療方法に有用である。
【0081】
2型糖尿病及び関連する疾患:インクレチンGLP−1及びGIPは、DPP−4によりインビボで急速に不活性化されることが十分に確立されている。DPP−4(−/−)欠損マウスを用いた研究及び予備臨床試験は、DPP−4阻害がGLP−1及びGIPの定常状態濃度を上昇し、グルコース耐性の改善をもたらすことを示す。GLP−1及びGIPに対する類推により、グルコース調節に関与する他のグルカゴンファミリーペプチドもDPP−4により不活性化されると思われる(例えば、PACAP)。DPP−4によるこれらのペプチドの不活性化は、グルコース恒常性においても役割を果たしている。従って、本発明のDPP−4阻害剤は、2型糖尿病の治療において、並びにX症候群(代謝症候群としても知られている)、反応性低血糖症及び糖尿病性脂質異常症を含む、多くの場合に2型糖尿病に付随して起こる多数の病状の治療及び予防において有用である。下記で議論する肥満症は、本発明の化合物を用いた治療に反応し得る、2型糖尿病でしばしば見出される別の病状である。
【0082】
以下の疾病、疾患及び病状:すなわち(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性の病状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)X症候群、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、並びにインシュリン抵抗性を要素とする他の疾患は2型糖尿病に関連し、従って、本発明の化合物を用いた治療によって治療、抑制又は場合によっては予防することができる。代謝症候群としても知られているX症候群においては、肥満は、インシュリン抵抗性、糖尿病、脂質異常症、高血圧症及び心血管の危険性の増大を促進すると考えられる。従って、DPP−4阻害剤は、この病状に関連する高血圧症の治療にも有用であり得る。
【0083】
肥満症:DPP−4阻害剤は、肥満症の治療に有用であり得る。これは、GLP−1及びGLP−2の食物摂取及び胃排出において観察された阻害効果に基づいている。ヒトにおけるGLP−1の外部からの投与は、有意に食物摂取を減少させ、胃排出を遅延させる(Am.J.Physiol.,277:R910−R916(1999))。ラット及びマウスにおけるGLP−1の脳室内投与(ICV)も、食餌摂取に対して顕著な効果を有する(Nature Medicine,2:1254−1258(1996))。この食餌摂取の阻害は、GLP−1R(−/−)マウスにおいては観察されず、これらの効果が脳GLP−1受容体を通して媒介されることを示す。GLP−1に対する類推により、GLP−2もDPP−4によって調節されていると思われる。GLP−2のICV投与も、GLP−1で観察された効果と同様に食餌摂取を阻害する(Nature Medicine,6:802−807(2000))。更に、DPP−4欠損マウスによる研究は、これらの動物が食餌誘発肥満及び関連する病理(例えば高インスリン血症)に抵抗性であることを示唆している。
【0084】
心血管疾患:GLP−1は、急性心筋梗塞の後で患者に投与する場合に有益であることが示されており、一次血管形成術の後で改善された左心室機能及び死亡率の低減がもたらされる(Circulation,109:962−965(2004))。GLP−1投与は、拡張型心筋症のイヌにおける左心室収縮不全及び虚血性誘発左心室不全の治療にも有用であり、その結果、心不全の患者の治療において有用であることを証明することができる(米国特許公開第2004/0097411号)。DPP−4阻害剤は、内在性GLP−1を安定化する能力によって同様の効果を示すと予想される。
【0085】
成長ホルモン欠乏症:DPP−4阻害は、下垂体前葉からの成長ホルモンの放出を促進するペプチドである成長ホルモン放出因子(GRF)が、DPP−4酵素によりインビボで開裂されるという仮説に基づいて、成長ホルモン欠乏症の治療に有用であり得る(WO00/56297)。以下のデータは、GRFが内在性基質であるという証拠をもたらす:(1)GRFはインビトロで効率的に開裂され、不活性生成物GRF[3−44]を生成する(BBA 1122:147−153(1992));(2)GRFは血漿中で急速に分解されて、GRF[3−44]となる;これは、DPP−4阻害剤ジプロチンAにより阻止される;(3)GRF[3−44]は、ヒトGRFトランスジェニックブタの血漿中に見出される(J.Clin.Invest.,83:1533−1540(1989))。従って、DPP−4阻害剤は、成長ホルモン分泌促進剤が考慮される適応症と同じ範囲において有用であり得る。
【0086】
腸管損傷:腸管障害の治療にDPP−4阻害剤を用いる可能性は、DPP−4の内在性基質の可能性があるグルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)が、腸管上皮に栄養効果を示す場合があることを指摘する研究の結果により示唆される(Regulatory Peptides,90:27−32(2000))。GLP−2の投与は、げっ歯類において小腸量を増大させ、大腸炎及び腸炎のげっ歯類モデルにおいて腸管損傷を減少させた。
【0087】
免疫抑制:DPP−4阻害は、DPP−4酵素のT細胞活性化及びケモカインプロセッシングへの関与について、並びに疾患のインビボモデルにおけるDPP−4阻害剤の有効性についての研究に基づき、免疫反応の調節に有用であり得る。DPP−4は、活性化免疫細胞の細胞表面マーカーであるCD26と同一であることが示されている。CD26の発現は、免疫細胞の分化及び活性化状態によって調節される。CD26はT細胞活性化のインビトロモデルにおいて共刺激分子として機能することが、一般に認められている。多数のケモカインは、おそらく非特異性アミノペプチダーゼによる分解から保護するために、最後から2番目の位置にプロリンを含む。これらの多くは、DPP−4によりインビトロで処理されることが示されている。いくつかの場合において(RANTES、LD78−ベータ、MDC、エオタキシン、SDF−1アルファ)、開裂は、走化性及びシグナリングアッセイにおいて変化した活性をもたらす。受容体選択性も、いくつかの場合において(RANTES)修飾されると思われる。DPP−4加水分解の予測された生成物を含む、多数のケモカインの複数のN末端切断形態が、インビトロ細胞培養系で同定されている。
【0088】
DPP−4阻害剤は、移植及び関節炎の動物モデルにおいて有効な免疫抑制剤であることが示されている。DPP−4の不可逆的阻害剤である、プロジピン(Pro−Pro−ジフェニル−ホスホネート)は、ラットにおいて7日から14日へと、心臓同種移植の生存期間を二倍にしたことが示された(Transplantation,63:1495−1500(1997))。DPP−4阻害剤が、ラットでコラーゲン及びアルキルジアミン誘発関節炎について試験され、このモデルにおいて後足膨張が統計的に有意に減少することが示された[Int.J.Immunopharmacology,19:15−24(1997)及びImmunopharmacology,40:21−26(1998)]。DPP−4は、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、グレーブス病及び橋本甲状腺炎を含む、多数の自己免疫性疾患において上方制御される(Immunology Today,20:367−375(1999))。
【0089】
HIV感染:HIV細胞の進入を阻害する多数のケモカイン類がDPP−4の基質である可能性があるので、DPP−4阻害はHIV感染又はAIDSの治療又は予防に有用であり得る(Immunology Today 20:367−375(1999))。SDF−1アルファの場合、開裂は抗ウイルス活性を減少する(PNAS,95:6331−6(1998))。従って、DPP−4の阻害を介したSDF−1アルファの安定化は、HIVの感染力を減少させると予想される。
【0090】
造血:DPP−4が造血に関与し得るので、DPP−4阻害は造血の治療又は予防に有用であり得る。DPP−4阻害剤であるVal−Boro−Proが、シクロホスファミド誘発性好中球減少症のマウスモデルで造血を促進した(WO99/56753)。
【0091】
神経障害:種々の神経プロセスに関与する多数のペプチドがDPP−4によりインビトロで開裂されるので、DPP−4阻害は種々の神経又は精神障害の治療又は予防に有用であり得る。従って、DPP−4阻害剤は、神経障害の治療において治療上の利益を有し得る。エンドモルフィン−2、ベータ−カゾモルフィン及びサブスタンスPは、全てDPP−4のインビトロにおける基質であることが示されている。全ての場合において、インビトロ開裂は極めて効率的であり、kcat/Kは、約10−1−1以上である。ラットにおける電気ショックジャンプ試験鎮痛モデルにおいて、DPP−4阻害剤は、外来性エンドモルフィン−2の存在に関係なく、有意な効果を示した(Brain Research,815:278−286(1999))。DPP−4阻害剤の神経保護及び神経再生効果も、阻害剤の、興奮毒性細胞死から運動ニューロンを保護する能力、MPTPと同時に投与された時のドーパミン作動性ニューロンの線条体神経支配を保護する能力、及びMPTP治療後に治療的方法で与えられた時の線条体神経支配の密度の回復を促進する能力により実証された(Yong−Q.Wu,et al.,「Neuroprotective Effects of Inhibitors of Dipeptidyl Peptidase−IV In Vitro and In Vivo」,Int.Conf.On Dipeptidyl Aminopeptidases:Basic Science and Clinical Applications,September 26−29,2002(Berlin,Germany)を参照されたい)。
【0092】
不安:生まれつきDPP−4を欠いているラットは、抗不安表現型を有する(WO02/34243;Karl et al.,Physiol.Behav.2003)。DPP−4欠損マウスは、ポルソルト及び明/暗モデルを用いた抗不安表現型も有する。従って、DPP−4阻害剤は、不安及び関連する障害の治療に有用であることを証明することができる。
【0093】
記憶及び認識力:GLP−1アゴニストは、Duringらにより実証されているように、学習(受動的回避、モリス水迷路)及び神経障害(カイネート誘発神経細胞アポトーシス)のモデルにおいて活性である(Nature Med.9:1173−1179(2003))。結果は、学習及び神経保護におけるGLP−1の生理学的役割を示唆している。DPP−4阻害剤によるGLP−1の安定化は、同様の効果を示すと予想される。
【0094】
心筋梗塞:GLP−1は、急性心筋梗塞の後に患者に投与された時に有益であることが示されている(Circulation,109:962−965(2004))。DPP−4阻害剤は、内在性GLP−1を安定化する能力によって同様の効果を示すと予想される。
【0095】
腫瘍浸潤及び転移:DPP−4を含むいくつかのエクトペプチダーゼの発現の増加又は減少が正常な細胞の悪性表現型への転換の際に観察されるので(J.Exp.Med.,190:301−305(1999))、DPP−4阻害は腫瘍浸潤及び転移の治療又は予防に有用であり得る。このタンパク質の上方又は下方制御は、組織及び細胞型に特異的であると思われる。例えば、CD26/DPP−4の発現の増加が、T細胞リンパ腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病、細胞由来甲状腺癌、基底細胞癌及び乳癌において観察されている。従って、DPP−4阻害剤は、そのような癌の治療に有用性を有し得る。
【0096】
良性前立腺肥大症:DPP−4活性の増大がBPH患者の前立腺組織で指摘されたので(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,30:333−338(1992))、DPP−4阻害は良性前立腺肥大症の治療に有用であり得る。
【0097】
精子運動性/男性避妊:精液中の、精子の運動性に重要な前立腺由来細胞小器官であるプロスタトソームが非常に高いレベルのDPP−4活性を有するので(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,30:333−338(1992))、DPP−4阻害は精子運動性を変えるため及び男性避妊のために有用であり得る。
【0098】
歯肉炎:DPP−4活性が歯肉溝液で見出され、いくつかの研究において、歯周病の重篤度と相関していたので(Arch.Oral Biol.,37:167−173(1992))、DPP−4阻害は歯肉炎の治療に有用であり得る。
【0099】
骨粗鬆症:GIP受容体が骨芽細胞に存在するので、DPP−4阻害は骨粗鬆症の治療又は予防に有用であり得る。
【0100】
幹細胞移植:ドナー幹細胞に対するDPP−4阻害は、骨髄のホーミング効率及び移植の増強、並びにマウスの生存期間の増大をもたらすことを示した(Christopherson,et al.,Science,305:1000−1003(2004))。従って、DPP−4阻害剤は骨髄移植に有用であり得る。
【0101】
本発明の化合物は、以下の病状又は疾病、すなわち:(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性の病状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)X症候群、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、(25)2型糖尿病、(26)成長ホルモン欠乏症、(27)好中球減少症、(28)神経障害、(29)腫瘍転移、(30)良性前立腺肥大症、(32)歯肉炎、(33)高血圧症、(34)骨粗鬆症、(35)不安、(36)記憶欠損、(37)認知欠損、(38)脳卒中、(39)アルツハイマー病、並びにDPP−4の阻害により治療又は予防することができる他の病状の1種以上の治療又は予防に有用性を有する。
【0102】
本発明の化合物は、更に、上記の疾病、疾患及び病状を、他の薬剤と組み合わせて予防又は治療する方法において有用である。
【0103】
本発明の化合物は、式Iの化合物又は他の薬剤が有用性を有する場合がある疾病又は病状の治療、予防、抑制又は改善において、1種以上の他の薬剤と組み合わせて用いることができ、薬剤と一緒に組み合わせることは、いずれかの薬剤単独の場合よりも安全であるか又はより効果的である。そのような他の薬剤は、それに一般に用いられる経路及び量で、式Iの化合物と同時に又は連続して投与することができる。式Iの化合物が1種以上の他の薬剤と同時に使用される場合、そのような他の薬剤及び式Iの化合物を含有する、特に薬学的に許容される担体と組み合わせた単位投与形態の医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法は、式Iの化合物及び1種以上の他の薬剤が異なる重複スケジュールで投与される療法をも含み得る。1種以上の他の活性成分と組み合わせて用いる場合、本発明の化合物及び他の活性成分は、それぞれ単独で用いられる場合よりも低い用量で用いることができることも考慮される。従って、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物に加えて、1種以上の他の活性成分を含有するものが含まれる。
【0104】
本発明の化合物を、1種以上の他の薬剤と同時に用いる場合、本発明の化合物に加え、1種以上のこのような他の薬剤を含む医薬組成物が好ましい。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加え、このような1種以上の他の活性成分をも含む。
【0105】
第二の活性成分に対する本発明の化合物の重量比は変えることができ、それぞれの成分の有効投与量に依存するであろう。一般に、それぞれの有効投与量が用いられる。従って、例えば、本発明の化合物を他の薬剤と併用する場合、他の薬剤に対する本発明の化合物の重量比は約1000:1〜約1:1000であり、好ましくは約200:1〜約1:200である。本発明の化合物及び他の活性成分の併用は、一般に前記範囲内であるが、各ケースにおいて、それぞれの活性成分の有効投与量を用いるべきである。
【0106】
本発明の化合物及び他の活性成分は、このような併用において別個に又は一緒に投与することができる。更に、一成分の投与は、他の薬剤の投与の前、同時又は後であってもよい。
【0107】
別々に投与されるか、同一の医薬組成物内で投与されるかのいずれかで式Iの化合物と組み合わせて投与することのできる他の活性成分の例には、
(1)(i)グリタゾン類(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、ネトグリタゾン、リボグリタゾン及びバラグリタゾン)のようなPPARγアゴニスト、及び他のPPARリガンド((1)ムラグリタザル、アレグリタザル、ソデルグリタザル及びナバグリタザルのようなPPARα/γ二重アゴニスト、(2)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、シプロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラート)のようなPPARαアゴニスト、(3)WO02/060388、WO02/08188、WO2004/019869、WO2004/020409、WO2004/020408及びWO2004/066963に開示された化合物のような選択的PPARγモジュレータ(SPPARγM’s)及び(4)PPARγ部分アゴニスト);(ii)メトホルミン及び薬学的に許容されるその塩、特にメトホルミン塩酸塩のようなビグアニド類、並びにGlumetza(登録商標)、Fortamet(登録商標)及びGlucophageXR(登録商標)のような、それらの徐放製剤、(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、を含むインシュリン増感剤;
(2)インシュリンlispro、インシュリンdetemir、インシュリンglargine、インシュリンglulisine及びそれぞれの吸入可能製剤のような、インシュリン及びインシュリン類似体又は誘導体;
(3)メトレレプチンのような、レプチン及びレプチン誘導体、アゴニスト及び類似体;
(4)アミリン;ダバリンチドのようなアミリン類似体、及びプラムリンチドのようなアミリンアゴニスト;
(5)トルブタミド、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、ミチグリニドのようなスルホニル尿素及び非スルホニル尿素インシュリン分泌促進剤、並びにナテグリニド及びレパグリニド等のメグリチニド類;
(6)α−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース及びミグリトール):
(7)WO98/04528、WO99/01423、WO00/39088及びWO00/69810に開示された化合物のようなグルカゴン受容体アンタゴニスト;
(8)GLP−1、GLP−1類似体、誘導体及び模倣薬のようなインクレチン模倣薬(例えば、WO2008/011446、米国特許第5545618号、米国特許第6191102及び米国特許第56583111号を参照されたい);オキシントモジュリン、並びにその類似体及び誘導体(例えば、WO2003/022304、WO2006/134340、WO2007/100535を参照されたい)、グルカゴン、並びにその類似体及び誘導体(例えば、WO2008/101017を参照されたい)、鼻腔内、経皮及びそれらの週1回製剤、例えばエキセナチドQWを含む、エキセナチド、リラグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド、AVE0010、CJC−1134−PC、NN9535、LY2189265、LY2428757及びBIM−51077のようなGLP−1受容体アゴニスト;
(9)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチン)、(ii)胆汁酸金属イオン封鎖剤(例えば、コレスチラミン、コレスチミド、塩酸コレセベラム、コレスチポール及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)エゼチミブのようなコレステロール吸収の阻害剤、(iv)アバシミブのようなアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤のような、LDLコレステロール低下剤;
【0108】
(10)ナイアシン又はその塩、並びにそれらの徐放型;ナイアシンの徐放型及びDP−1アンタゴニストのMK−524の組み合わせであるMK−524A;並びにニコチン酸受容体アゴニストのような、HDL増加剤;
(11)抗肥満化合物;
(12)アスピリン、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)、グルココルチコイド及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤のような、炎症状態において用いられることを意図する薬剤;
(13)ACE阻害剤(例えば、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、カプトプリル、キナプリル及びタンドラプリル)、A−II受容体遮断薬(例えば、ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタンメドキソミル、バルサルタン、テルミサルタン及びエプロサルタン)、レニン阻害剤(例えば、アリスキレン)、ベータ遮断薬(例えば、カルシウムチャンネル遮断薬)のような、抗高血圧薬;
(14)LY2599506のようなグルコキナーゼ活性化剤(GKAs);
(15)米国特許第6,730,690号;WO03/104207;及びWO04/058741に開示された化合物のような、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の阻害剤;
(16)トルセトラピブ及びMK−0859のような、コレステリルエステル転移タンパク質(CETP)の阻害剤;
(17)米国特許第6,054,587号;第6,110,903号;第6,284,748号;第6,399,782号及び第6,489,476号に開示された化合物のような、フルクトース1,6−ビスホスファターゼの阻害剤;
(18)アセチルCoAカルボキシラーゼ−1又は2(ACC1又はACC2)の阻害剤;
(19)AMP活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)活性化剤;
(20)G−蛋白質共役受容体のアゴニスト:GPR−109、GPR−116、GPR−119及びGPR−40;
(21)WO2009/011836に開示された化合物のようなSSTR3アンタゴニスト;
(22)ニューロメジンU(NMU)及びニューロメジンS(NMS)並びにそれらの類似体及び誘導体を含むがこれらに限定されない、WO2007/109135及びWO2009/042053に開示された化合物のような、ニューロメジンU受容体1(NMUR1)及び/又はニューロメジンU受容体2(NMUR2)アゴニスト;
(23)ステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ(SCD)の阻害剤;
(24)WO2009/000087に開示された化合物のようなGPR−105(P2YR14)アンタゴニスト;
(25)SGLT−1のようなナトリウム−グルコーストランスポーター(SGLT)阻害剤及びその種々のアイソマー;ダパグリフロジン及びレモグリフロジンのようなSGLT−2;並びにSGLT−3のような、グルコース摂取の阻害剤;
(26)アシル補酵素A:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1及び2(DGAT−1及びDGAT−2)の阻害剤;
(27)脂肪酸シンターゼの阻害剤;
(28)アシル補酵素A:モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1及び2(MGAT−1及びMGAT−2)の阻害剤;
(29)TGR5受容体のアゴニスト(GPBAR1、BG37、GPCR19、GPR131及びM−BARとしても知られている);
(30)ブロモクリプチンメシラート及びその急速放出製剤;
(31)ヒスタミンH3受容体アゴニスト、及び
(32)α2−アドレナリン作動性又はβ3−アドレナリン作動性受容体アゴニスト、
が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
式Iの化合物と併用することのできる抗肥満化合物には、トピラメート;ゾニサミド;ナルトレキソン;フェンテルミン;ブプロピオン;ブプロピオン及びナルトレキソンの組み合わせ;ブプロピオン及びゾニサミドの組み合わせ;トピラメート及びフェンテルミンの組み合わせ;フェンフルラミン;デクスフェンフルラミン;シブトラミン;オーリスタット及びセチリスタットのようなリパーゼ阻害剤;メラノコルチン受容体アゴニスト、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト;CCK−1アゴニスト;メラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニスト;神経ペプチドY又はYアンタゴニスト(例えばMK−0557);CB1受容体インバースアゴニスト及びアンタゴニスト(例えば、リモナバント及びタラナバント);β3アドレナリン作動性受容体アゴニスト;グレリンアンタゴニスト;ボンベシン受容体アゴニスト(例えば、ボンベシン受容体サブタイプ−3アゴニスト);ヒスタミンH3受容体インバースアゴニスト;5−ヒドロキシトリプタミン−2c(5−HT2c)アゴニスト、例えばロルカセリン、並びに脂肪酸シンターゼ(FAS)の阻害剤が含まれる。本発明の化合物と併用することのできる抗肥満化合物の総説については、S. Chaki et al.,「Recent advances in feeding suppressing agents:potential therapeutic strategy for the treatment of obesity」,Expert Opin.Ther.Patents,11:1677−1692(2001);D.Spanswick and K.Lee,「Emerging antiobesity drugs」,Expert Opin.Emerging Drugs,8:217−237(2003);J.A.Fernandez−Lopez,et al.,「Pharmacological Approaches for the Treatment of Obesity」,Drugs,62:915−944(2002);and K.M.Gadde,et al.,「Combination pharmaceutical therapies for obesity」,Exp.Opin.Pharmacother.,10:921−925(2009)を参照されたい。
【0110】
式Iの化合物と併用することのできるグルカゴン受容体アンタゴニストには、
N−[4−((1S)−1−{3−(3,5−ジクロロフェニル)−5−[6−(トリフルオロメトキシ)−2−ナフチル]−1H−ピラゾール−1−イル}エチル)ベンゾイル]−β−アラニン;
N−[4−((1R)−1−{3−(3,5−ジクロロフェニル)−5−[6−(トリフルオロメトキシ)−2−ナフチル]−1H−ピラゾール−1−イル}エチル)ベンゾイル]−β−アラニン;
N−(4−{1−[3−(2,5−ジクロロフェニル)−5−(6−メトキシ−2−ナフチル)−1H−ピラゾール−1−イル]エチル}ベンゾイル)−β−アラニン;
N−(4−{(1S)−1−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−5−(6−メトキシ−2−ナフチル)−1H−ピラゾール−1−イル]エチル}ベンゾイル)−β−アラニン;
N−(4−{(1S)−1−[(R)−(4−クロロフェニル)(7−フルオロ−5−メチル−1H−インドール−3−イル)メチル]ブチル}ベンゾイル)−β−アラニン、及び
N−(4−{(1S)−1−[(4−クロロフェニル)(6−クロロ−8−メチルキノリン−4−イル)メチル]ブチル}ベンゾイル)−β−アラニン;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
式Iの化合物と併用することのできるステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ(SCD)の阻害剤には、
[5−(5−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)−2H−テトラゾール−2−イル]酢酸;
(2’−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−2,5’−ビ−1,3−チアゾール−4−イル)酢酸;
(5−{3−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]イソキサゾール−5−イル}−2H−テトラゾール−2−イル)酢酸;
(3−{3−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル}−1H−ピロール−1−イル)酢酸;
(5−{5−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]ピラジン−2−イル}−2H−テトラゾール−2−イル)酢酸、及び
(5−{2−[4−(5−ブロモ−2−クロロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]ピリミジン−5−イル}−2H−テトラゾール−2−イル)酢酸;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
式Iの化合物と併用することのできるグルコキナーゼ活性化剤には、
3−(6−エタンスルホニルピリジン−3−イルオキシ)−5−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシ)−N−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ベンズアミド;
5−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エトキシ)−3−(6−メタンスルホニルピリジン−3−イルオキシ)−N−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ベンズアミド;
5−(1−ヒドロキシメチル−プロポキシ)−3−(6−メタンスルホニルピリジン−3−イルオキシ)−N−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ベンズアミド;
3−(6−メタンスルホニルピリジン−3−イルオキシ)−5−(1−メトキシメチル−プロポキシ)−N−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ベンズアミド;
5−イソプロポキシ−3−(6−メタンスルホニルピリジン−3−イルオキシ)−N−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ベンズアミド;
5−(2−フルオロ−1−フルオロメチル−エトキシ)−3−(6−メタンスルホニルピリジン−3−イルオキシ)−N−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ベンズアミド;
3−({4−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]フェニル}チオ)−N−(3−メチル−1,2,4−チアジアゾール−5−イル)−6−[(4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チオ]ピリジン−2−カルボキサミド;
3−({4−[(1−メチルアゼチジン−3−イル)オキシ]フェニル}チオ)−N−(3−メチル−1,2,4−チアジアゾール−5−イル)−6−[(4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チオ]ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(3−メチル−1,2,4−チアジアゾール−5−イル)−6−[(4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チオ]−3−{[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]チオ}ピリジン−2−カルボキサミド、及び
3−[(4−{2−[(2R)−2−メチルピロリジン−1−イル]エトキシ}フェニル)チオ−N−(3−メチル−1,2,4−チアジアゾール−5−イル)−6−[(4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チオ]ピリジン−2−カルボキサミド;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
式Iの化合物と併用することのできるGPR−119受容体のアゴニストには、
rac−シス5−クロロ−2−{4−[2−(2−{[5−(メチルスルホニル)ピリジン−2−イル]オキシ}エチル)シクロプロピル]ピペリジン−1−イル}ピリミジン;
5−クロロ−2−{4−[(1R,2S)−2−(2−{[5−(メチルスルホニル)ピリジン−2−イル]オキシ}エチル)シクロプロピル]ピペリジン−1−イル}ピリミジン;
racシス−5−クロロ−2−[4−(2−{2−[4−(メチルスルホニル)フェノキシ]エチル}シクロプロピル)ピペリジン−1−イル]ピリミジン;
5−クロロ−2−[4−((1S,2R)−2−{2−[4−(メチルスルホニル)フェノキシ]エチル}シクロプロピル)ピペリジン−1−イル]ピリミジン;
5−クロロ−2−[4−((1R,2S)−2−{2−[4−(メチルスルホニル)フェノキシ]エチル}シクロプロピル)ピペリジン−1−イル]ピリミジン;
racシス−5−クロロ−2−[4−(2−{2−[3−(メチルスルホニル)フェノキシ]エチル}シクロプロピル)ピペリジン−1−イル]ピリミジン、及び
racシス−5−クロロ−2−[4−(2−{2−[3−(5−メチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェノキシ]エチル}シクロプロピル)ピペリジン−1−イル]ピリミジン;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
式Iの化合物と併用することのできる選択的PPARγモジュレータ(SPPARγM’s)には、
(2S)−2−({6−クロロ−3−[6−(4−クロロフェノキシ)−2−プロピルピリジン−3−イル]−1,2−ベンズイソキサゾール−5−イル}オキシ)プロパン酸;
(2S)−2−({6−クロロ−3−[6−(4−フルオロフェノキシ)−2−プロピルピリジン−3−イル]−1,2−ベンズイソキサゾール−5−イル}オキシ)プロパン酸;
(2S)−2−{[6−クロロ−3−(6−フェノキシ−2−プロピルピリジン−3−イル)−1,2−ベンズイソキサゾール−5−イル]オキシ}プロパン酸;
(2R)−2−({6−クロロ−3−[6−(4−クロロフェノキシ)−2−プロピルピリジン−3−イル]−1,2−ベンズイソキサゾール−5−イル}オキシ)プロパン酸;
(2R)−2−{3−[3−(4−メトキシ)ベンゾイル−2−メチル−6−(トリフルオロメトキシ)−1H−インドール−1−イル]フェノキシ}ブタン酸;
(2S)−2−{3−[3−(4−メトキシ)ベンゾイル−2−メチル−6−(トリフルオロメトキシ)−1H−インドール−1−イル]フェノキシ}ブタン酸;
2−{3−[3−(4−メトキシ)ベンゾイル−2−メチル−6−(トリフルオロメトキシ)−1H−インドール−1−イル]フェノキシ}−2−メチルプロパン酸、及び
(2R)−2−{3−[3−(4−クロロ)ベンゾイル−2−メチル−6−(トリフルオロメトキシ)−1H−インドール−1−イル]フェノキシ}プロパン酸;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
式Iの化合物と併用することのできる11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型の阻害剤には、
3−[1−(4−クロロフェニル)−トランス−3−フルオロシクロブチル]−4,5−ジシクロプロピル−r−4H−1,2,4−トリアゾール;
3−[1−(4−クロロフェニル)−トランス−3−フルオロシクロブチル]−4−シクロプロピル−5−(1−メチルシクロプロピル)−r−4H−1,2,4−トリアゾール;
3−[1−(4−クロロフェニル)−トランス−3−フルオロシクロブチル]−4−メチル−5−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−r−4H−1,2,4−トリアゾール;
3−[1−(4−クロロフェニル)シクロブチル]−4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール;
3−{4−[3−(エチルスルホニル)プロピル]ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル}−4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール;
4−メチル−3−{4−[4−(メチルスルホニル)フェニル]ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル}−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール;
3−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−5−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,2,4−オキサジアゾール;
3−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−5−(3,3,3−トリフルオロエチル)−1,2,4−オキサジアゾール;
5−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−3−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,2,4−オキサジアゾール;
5−(1−フルオロ−1−メチルエチル)−3−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,2,4−オキサジアゾール;
2−(1,1−ジフルオロエチル)−5−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,3,4−オキサジアゾール;
2−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−5−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,3,4−オキサジアゾール、及び
5−(1,1−ジフルオロエチル)−3−(4−{4−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}ビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)−1,2,4−オキサジアゾール;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
式Iの化合物と併用することのできるソマトスタチンサブタイプ受容体3(SSTR3)アンタゴニストには、
【0117】
【化15】

;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
式Iの化合物と併用することのできるAMP−活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)活性化剤には、
【0119】
【化16】

;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
式Iの化合物と併用することのできるアセチル−CoAカルボキシラーゼ−1及び2(ACC−1及びACC−2)の阻害剤には、
3−{1’−[(1−シクロプロピル−4−メトキシ−1H−インドール−6−イル)カルボニル]−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−6−イル}安息香酸;
5−{1’−[(1−シクロプロピル−4−メトキシ−1H−インドール−6−イル)カルボニル]−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−6−イル}ニコチン酸;
1’−[(1−シクロプロピル−4−メトキシ−1H−インドール−6−イル)カルボニル]−6−(1H−テトラゾール−5−イル)スピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−4−オン;
1’−[(1−シクロプロピル−4−エトキシ−3−メチル−1H−インドール−6−イル)カルボニル]−6−(1H−テトラゾール−5−イル)スピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−4−オン;
5−{1’−[(1−シクロプロピル−4−メトキシ−3−メチル−1H−インドール−6−イル)カルボニル]−4−オキソ−スピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−6−イル}ニコチン酸;
4’−({6−(5−カルバモイルピリジン−2−イル)−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−1’−イル}カルボニル)−2’,6’−ジエトキシビフェニル−4−カルボン酸;
2’,6’−ジエトキシ−4’−{[6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−1’−イル]カルボニル}ビフェニル−4−カルボン酸;
2’,6’−ジエトキシ−3−フルオロ−4’−{[6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−1’−イル]カルボニル}ビフェニル−4−カルボン酸;
5−[4−({6−(3−カルバモイルフェニル)−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−1’−イル}カルボニル)−2,6−ジエトキシフェニル]ニコチン酸;
ナトリウム4’−({6−(5−カルバモイルピリジン−2−イル)−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−1’−イル}カルボニル)−2’,6’−ジエトキシビフェニル−4−カルボキシレート;
メチル4’−({6−(5−カルバモイルピリジン−2−イル)−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−1’−イル}カルボニル)−2’,6’−ジエトキシビフェニル−4−カルボキシレート;
1’−[(4,8−ジメトキシキノリン−2−イル)カルボニル]−6−(1H−テトラゾール−5−イル)スピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−4−オン;
(5−{1’−[(4,8−ジメトキシキノリン−2−イル)カルボニル]−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−6−イル}−2H−テトラゾール−2−イル)メチルピバレート;
5−{1’−[(8−シクロプロピル−4−メトキシキノリン−2−イル)カルボニル]−4−オキソスピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−6−イル}ニコチン酸;
1’−(8−メトキシ−4−モルホリン−4−イル−2−ナフトイル)−6−(1H−テトラゾール−5−イル)スピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−4−オン、及び
1’−[(4−エトキシ−8−エチルキノリン−2−イル)カルボニル]−6−(1H−テトラゾール−5−イル)スピロ[クロマン−2,4’−ピペリジン]−4−オン;並びに薬学的に許容されるそれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
本発明の化合物は、経口的、非経口的(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈、ICV、嚢内注射又は注入、皮下注射又はインプラント)により、吸入スプレー、経鼻、膣、直腸、舌下又は局所投与経路によって投与することができ、各投与経路に適した、通常の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及び媒体を含む適切な投与単位製剤に単独又は一緒に製剤化することができる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル等の温血動物の治療に加え、本発明の化合物はヒトにおける使用について有効である。
【0122】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は、好都合なことに投与単位形態中に存在し、薬学の分野において周知の任意の方法により調製することができる。全ての方法は、活性成分を、1種以上の補助的成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、医薬組成物は、活性成分を液体担体若しくは微粉固体担体又はその両者と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要であれば、生成物を所望の剤形に成形することにより調製される。医薬組成物において、目的の活性化合物は、疾患過程又は疾患の症状において所望の効果をもたらすのに十分な量で含まれる。本明細書で用いられる場合、「組成物」なる用語は、特定の成分を特定の量で含む生成物、並びに、特定の成分の特定の量での組み合わせから、直接的又は間接的にもたらされる任意の生成物を包含することを意味する。
【0123】
活性成分を含む医薬組成物は、経口的使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、薬用キャンディー、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、エマルション、硬カプセル若しくは軟カプセル、又はシロップ又はエリキシル剤であり得る。経口使用を意図する組成物は、医薬組成物の製造のための技術分野において公知の任意の方法により調製することができ、このような組成物は、薬学的に優雅で及び味のよい製剤を提供するために、甘味料、着香料、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種以上の薬剤を含んでいてもよい。錠剤は、錠剤の製造に適した、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と一緒に活性成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;コーンスターチ又はアルギン酸のような造粒剤又は崩壊剤;デンプン、ゼラチン又はアラビアゴムのような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクのような滑沢剤であり得る。錠剤はコーティングされていないか、又は胃腸管中での分解及び吸収を遅延し、それによって長期間にわたって持続する作用をもたらすために公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートのような時間遅延物質を使用してもよい。錠剤を、米国特許第4,256,108号、米国特許第4,166,452号及び米国特許第4,265,874号に記載されている技術によってコーティングし、放出を制御するための浸透治療錠剤を形成してもよい。
【0124】
経口使用のための製剤は、活性成分が不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水若しくは油性媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして存在することもできる。
【0125】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と一緒に活性材料を含む。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムであり、分散又は湿潤剤は、天然ホスファチド、例えば、レシチンであってもよく、脂肪酸とアルキレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンであってもよく、長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールであってもよく、脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールであってもよく、脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであってもよい。水性懸濁液は、1種以上の保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピル、1種以上の着色剤、1種以上の着香料及び1種以上の甘味料、例えば、ショ糖又はサッカリンを含有してもよい。
【0126】
油性懸濁液は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油又はヤシ油、又は鉱物油、例えば、流動パラフィン中に活性成分を懸濁させることにより生成することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有してもよい。前述したような甘味料及び着香料を添加して、味のよい経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤を加えることにより保存することができる。
【0127】
水の添加による水性懸濁液の調製に適する分散性粉末及び顆粒は、分散又は湿潤剤、懸濁化剤及び1種以上の保存剤との混合物の活性成分をもたらす。適切な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤は、例えば前述したものである。追加の賦形剤、例えば甘味料、着香料及び着色剤を存在させてもよい。
【0128】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルションの形態であってもよい。この油相は、植物油、例えば、オリーブ油若しくはラッカセイ油であってもよく、鉱物油、例えば、流動パラフィンであってもよく、これらの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えば、アラビアゴム又はトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば、大豆、レシチン、並びに脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、並びにエチレンオキシドと前記部分エステルとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。エマルションは、甘味料及び着香料を含んでもよい。
【0129】
シロップ及びエリキシル剤は、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はショ糖を用いて製剤化することができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、着香料及び着色剤を含有してもよい。
【0130】
医薬組成物は、無菌の注射用の水性又は油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、前述した、適切な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、公知の技術によって製剤化することができる。無菌の注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のような、無菌注射用溶液又は非毒性で非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の懸濁液であってもよい。使用することができる許容可能な媒体及び溶媒は、水、リンゲル溶液及び等張塩化ナトリウム溶液である。更に、無菌不揮発油が溶媒又は懸濁媒体として従来使用されている。この目的のためには、合成モノ又はジグリセリドを含む任意の無菌不揮発油を使用することができる。更に、オレイン酸のような脂肪酸が注射用の製剤において用いられることが知られている。
【0131】
本発明の化合物は、薬物の直腸内投与用の坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、薬物を、常温で固体であるが直腸内温度では液体であり、その結果、直腸内で溶解してこの薬物を放出する、適切な無刺激賦形剤と混合することにより、調製することができる。このような材料は、カカオ脂及びポリエチレングリコールである。
【0132】
局所使用のためには、本発明の化合物を含むクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液等が使用される。(この適用の目的のため、局所適用はマウスウォッシュ及びうがい薬を含むべきである。)
【0133】
本発明の医薬組成物及び方法は、前述した病的症状の治療において通常に適用される、本明細書に示すような他の治療活性化合物を更に含んでもよい。
【0134】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害を必要とする病状の治療又は予防において、適切な投与レベルは、一般に、1日あたり患者の体重1kgに対して約0.01〜500mg(1回又は複数投与で投与することができる)である。好ましくは、投与レベルは、1日あたり約0.1〜約250mg/kgであり;更に好ましくは1日あたり約0.5〜約100mg/kgである。適切な投与レベルは、1日あたり約0.01〜250mg/kg、1日あたり約0.05〜100mg/kg、又は1日あたり約0.1〜50mg/kgであってもよい。この範囲内で、投与量は、1日あたり0.05〜0.5、0.5〜5、又は5〜50mg/kgであってもよい。経口投与のためには、組成物は、治療すべき患者に対する投与量を症状によって調整するために、好ましくは、1.0〜1000mgの活性成分、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0及び1000.0mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供される。化合物は、1日に1〜4回、好ましくは1日に1又は2回の投与レジメで投与することができる。
【0135】
糖尿病及び/又は高血糖症又は高トリグリセリド血症、又は本発明の化合物が指示される他の疾病を治療又は予防する場合、一般に本発明の化合物を、動物の体重1kgあたり約0.1mg〜約100mgの1日投与量で投与する(好ましくは1日1回投与、又は1日に2〜6回の分割投与量で、又は持続放出形態で与える)時に満足な結果が得られる。大半の大動物について、全1日投与量は約1.0mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約50mgである。70kgの成人の場合、全1日投与量は、一般に約7mg〜約350mgである。この投与レジメは、最適な治療応答をもたらすように調整することができる。
【0136】
しかし、任意の特定の患者に対する具体的な投与レベル及び投与頻度は、変わる場合があり、及び使用される具体的な化合物の活性、この化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性、食事、投与の様式及び時間、排泄率、薬の組み合わせ、特定の病状の重症度、並びに治療を受ける宿主を含む、種々の因子に依存することが理解されるであろう。
【0137】
本発明の化合物を調製するための合成法を下記スキーム及び実施例に示す。出発材料は市販されているか、又は当該技術分野において公知の方法により、又は本明細書に示すように製造することができる。
【0138】
本発明の化合物は、標準的な還元的アミノ化条件、それに続く脱保護を用いることにより、式II及びIII
【0139】
【化17】

(式中、Ar及びVは前記で定義した通りであり、Pは、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)のような適切な窒素保護基である)の化合物のような中間体から調製することができる。これらの中間体の調製を下記スキームに示す。
【0140】
【化18】

【0141】
式IIの中間体は文献において公知であるか、又は当業者によく知られている種々の方法により都合良く調製することができる。1つの一般的な経路をスキーム1に示す。N,N−ジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下、置換ハロゲン化ベンゾイルをフェノールで処理し、エステルを得る。水素化ナトリウムを用いてニトロメタンから生成したアニオンでを処理し、ニトロケトンを得る。また、ニトロケトンは、塩基の存在下でアルデヒド1aをニトロメタンと反応させ、得られたニトロアルコール1bをジョーンズ試薬のような酸化剤を用いて酸化させることによって製造することができる。ニトロケトンを、3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エンと共に加熱してピランを得、水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)のような塩基を用いて異性化し、トランスピランが得られる。の鏡像異性体は、当業者に公知の種々の方法によりこの段階で分離することができる。好都合なことに、キラルカラムを用いたHPLCによりラセミ体を分割することができる。次いで、例えば、亜鉛及び塩酸のような酸を用いてニトロ置換ピランを還元し、例えば、得られたアミンをジ−tert−ブチルジカルボネートを用いた処理により、そのBOC誘導体として保護し、を得る。を、四酸化オスミウム及びN−メチルモルホリンN−オキシドで処理してジオールを得、これを過ヨウ素酸ナトリウムで処理して中間体ピラノンIIaを得る。
【0142】
【化19】

【0143】
式IIIの中間体は文献において公知であるか、又は当業者によく知られている種々の方法により都合良く調製することができる。テトラヒドロピロロピラゾールIIIaを調製するための1つの一般的な経路をスキーム2に示す。トリチル−又はBoc保護ピロリジノールを、当該技術分野において通常に知られている種々の方法、例えばSwern法により酸化してケトン10を得、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF−DMA)と処理して加熱し、11を得る。次いで、所望の中間体IIIaは、場合によりナトリウムエトキシドのような塩基の存在下、適切な溶媒、例えばエタノール中で、11の溶液をヒドラジン12と共に加熱し、次いで、酸により保護基を除去することにより、容易に得ることができる。
【0144】
【化20】

【0145】
スキーム3に示すように、構造式(I)の本発明の化合物は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン又はメタノールのような溶媒中、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、デカボラン又はナトリウムトリアセトキシボロハイドライドのような試薬を用いて、中間体IIIの存在下で、中間体IIの還元的アミノ化により中間体IVを提供することにより調製することができる。場合により、反応は、四塩化チタン又はオルトチタン酸テトライソプロピルのようなルイス酸の存在下で実施される。反応は、酢酸のような酸を加えることによっても促進され得る。ある場合には、中間体IIIは、塩酸塩又はトリフルオロ酢酸塩のような塩であってもよく、これらの場合には、反応混合物に、塩基、一般的にN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加えることが好都合である。次いで、保護基を、例えば、Bocの場合にはトリフルオロ酢酸又はメタノール性塩化水素を用い、Cbzの場合にはパラジウム−炭素及び水素ガスを用いて除去して所望のアミンIを得る。必要に応じて、生成物を、再結晶、粉砕、分取用薄層クロマトグラフィー、Biotage(登録商標)装置を用いたもののようなシリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィー又はHPLCにより精製する。HPLCにより精製された化合物は、対応する塩として単離することができる。
【0146】
ある場合には、前記スキームに示される生成物I又は合成中間体は、例えば、Ar又はV上の置換基の操作により、更に修飾してもよい。これらの操作には、一般的に当業者に公知の還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応が含まれるが、これらに限定されない。ある場合には、反応を促進するために又は望ましくない反応生成物を回避するために、前記反応スキームを実施する順番を変えてもよい。
【0147】
本発明の構造式Iの化合物は、適切な材料を用いて、以下のスキーム及び実施例の方法に従って調製することができ、以下の特定の実施例により更に例示する。しかし、実施例に示す化合物は、本発明として認められる種類のみを形成するとして解釈されるべきではない。実施例は、本発明の化合物の調製の詳細をさらに示す。当業者は、以下の調製手順の条件及び手段の公知の変形が、これらの化合物を調製するために用いることができることを容易に理解するであろう。本発明の化合物は、通常、本明細書に前述したような薬学的に許容される塩の形態で単離される。単離される塩に対応するフリーのアミン塩基は、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのような適切な塩基による中和、遊離したアミンフリー塩基の有機溶媒中への抽出、それに続く蒸発により生成することができる。この方法で単離されたアミンフリー塩基は、有機溶媒中への溶解、それに続く適切な酸の添加、並びにそれに続く蒸発、沈殿又は結晶化により更に他の薬学的に許容される塩に変換することができる。特に示さない限り、全ての温度は摂氏温度である。質量スペクトル(MS)は、エレクトロンスプレイイオン質量分析により測定した。
【0148】
以下は、以下に示す中間体の合成及び実施例の説明において用いられる略語のリストである。
【0149】
【化21】

【0150】
中間体1
【0151】
【化22】

【0152】
tert−ブチル[(2R,3S)−5−オキソ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート
工程A:フェニル2,4,5−トリフルオロベンゾアート
フェノール(13.3g、141mmol)の無水ジクロロメタン(370mL)中の溶液を氷浴中で冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(34mL、193mmol)で処理し、次いで、2,4,5−トリフルオロベンゾイルクロライド(25g、129mmol)を15分間かけて滴下して加えた。氷浴を取り除き、室温で撹拌を2時間継続し、次いで、溶液を分液漏斗に移し、有機層を塩酸溶液(2N、150mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)及び食塩水(150mL)で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、得られた固形生成物を、ヘキサン、次いでヘキサン中0〜5%エーテルの勾配様式で連続的に溶出し、シリカ上で何回に分けて精製し、フェニル2,4,5−トリフルオロベンゾアートを白色固体として得た。
【0153】
工程B:2−ニトロ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)エタノン
水素化ナトリウム(12g、油中60%、297mmol)をヘキサンで洗浄し(4×100mL)、無水窒素を吹きつけ、N,N−ジメチルホルムアミド(350mL)中に懸濁し、次いでニトロメタン(44mL、81mmol)で処理した。得られた混合物を室温で2.5時間撹拌し、0℃まで冷却し、次いでフェニル2,4,5−トリフルオロベンゾアート(22.8g、90.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(180mL)中の溶液で2時間処理した。反応混合物を同じ温度に一晩維持し、室温で更に1時間、撹拌を続けた。混合物を濃塩酸(48mL)と一緒に氷(400g)に注ぎ入れた。水性混合物を酢酸エチル(3×250mL)で抽出した。一緒にした有機層を食塩水(40mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をエーテル−ヘキサン(1:1、240mL)及び水(200mL)に溶解した。有機層を分離し、冷凍庫内に静置し、冷却して生成された結晶をろ過により回収し、乾燥し、2−ニトロ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)エタノンを灰色がかった白色固体として得た。
【0154】
工程C:3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン
3−クロロ−2−(クロロメチル)プロパ−1−エン(1.0g、8mmol)及びヨウ化ナトリウム(6.6g、44mmol)の混合物を、アセトン(60mL)中、室温で20時間撹拌し、減圧下で濃縮し、ジクロロメタン(150mL)及び水(50mL)に溶解した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エンを赤みがかった油状物質(2.45g)として得た。2−ニトロ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)エタノン(110mg、0.5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)及び3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エン(170mg、0.55mmol)中の溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.20mL)を加え、混合物を60℃で2.5時間加熱し、濃縮し、Biotage Horizon(登録商標)システム上でクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン中0〜30%ジクロロメタンの勾配)により精製し、3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを得た。
【0155】
工程D:(2R,3S)−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン
3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(798mg、2.94mmol)のクロロホルム(42mL)及びイソプロピルアルコール(7.8mL)中の溶液に、シリカゲル(5.1g)及び水素化ホウ素ナトリウム(420mg,11.1mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、塩酸(6mL、2N)を滴下して加えることにより、反応混合物の反応を停止し、ろ過した。得られた固体の残渣を酢酸エチル(100mL)で洗浄した。一緒にしたろ液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた褐色の油状物質(802mg)をテトラヒドロフラン(15mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、40μL)を加えた。溶液を105分間撹拌し、次いで酢酸エチル(100mL)及び1N塩酸(50mL)を含む分液漏斗に移した。有機層を食塩水で洗浄し、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン中、8〜10%エーテル)により精製し、トランス−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,4,5トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピランを得た。この生成物(388mg)の一部をHPLC(ChiralCel OD、ヘプタン中1.5%イソプロピルアルコール)により分割し、遅く移動する鏡像異性体、(2R,3S)−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピランを得た。
【0156】
工程E:(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
(2R,3S)−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン(200mg、0.73mmol)及び亜鉛粉末(561mg、8.59mmol)のエタノール(7mL)中の激しく撹拌した懸濁液に6N塩酸(2.3mL、14mmol)を加えた。1時間後、混合物をエーテル(100mL)及び水酸化ナトリウム水溶液(2.5N、40mL)で処理した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミンを得、これは更に精製することなく次の工程で用いた。
【0157】
工程F:tert−ブチル[(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート
(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン(177mg、0.73mmol)のジクロロメタン(5mL)中の溶液に、ジ−tert−ブチルジカルボネート(239mg、1.1mmol)を加え、混合物を室温で2.5時間撹拌した。減圧下で溶液を濃縮し、tert−ブチル[(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメートを白色固体として得た。これを、更に精製することなく次の工程で用いた。
【0158】
工程G:tert−ブチル[(2R,3S)−5−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート
tert−ブチル[(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート(203mg、0.59mmol)のtert−ブチルアルコール(6mL)、アセトン(3mL)及び水(1.5mL)中の溶液に、四酸化オスミウム(tert−ブチルアルコール中2.5%溶液、0.113mL、0.009mmol)を加えた。得られた混合物を室温で10分間撹拌し、次いでN−メチルモルホリンN−オキシド(92mg、0.79mmol)で処理し、撹拌した。2日後、反応混合物を亜硫酸水素ナトリウム水溶液(5mL、2.0N)、10分後に酢酸エチルで処理した。有機層を、2N塩酸及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、tert−ブチル[(2R,3S)−5−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメートを得、これは更に精製することなく次の工程で用いた。
【0159】
工程H:tert−ブチル[(2R,3S)−5−オキソ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート
tert−ブチル[(2R,3S)−5−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート(223mg、0.59mmol)のテトラヒドロフラン(4mL)中の溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム(143mg,0.67mmol)の水(1.3mL)中の溶液を加え、混合物を3時間撹拌した。混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、クロロホルム中5〜20%酢酸エチルの勾配)により精製し、tert−ブチル[(2R,3S)−5−オキソ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメートを白色固体として得た。
中間体2
【0160】
【化23】

【0161】
tert−ブチル[(2R,3S)−5−オキソ−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート
工程A:1−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−ニトロエタノール
5℃で、水酸化ナトリウム(1N、3L)及びメタノール(1500mL)に、2,5−ジフルオロベンズアルデヒド(350g、2.46mol)及びニトロメタン(157mL、2.9mol)のメタノール(350mL)中の溶液を1時間かけて滴下して加えた。次いで、反応混合物を氷酢酸(165mL)で中和した。ジエチルエーテル(1500mL)を加え、層を分離した。有機層を、飽和炭酸ナトリウム水溶液(1000mL)及び飽和食塩水(1000mL)で連続的に洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、1−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−ニトロエタノールを得、これは更に精製することなく工程Bで用いた。
【0162】
工程B:2−ニトロ−1−(2,5−ジフルオロフェニル)エタノン
10℃で、デス−マーチンペルヨージナン(125g)のジクロロメタン(600mL)中の溶液を、工程Aで製造したニトロアルコールの溶液(46.3g)に30分間かけて加えた。撹拌を2時間続け、次いで、反応混合物を、水(3L)中の炭酸水素ナトリウム(300g)及びチオ硫酸ナトリウム(333g)の混合物に注ぎ入れた。所望の生成物をメチルt−ブチルエーテル(MTBE)(2L)で抽出した。水層をHCl(2N、1.5L)で中和し、MTBE(3L)で抽出した。一緒にした有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタンで溶出)により精製し、所望のニトロケトンを得た。
【0163】
工程C:3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エン
3−クロロ−2−(クロロメチル)プロパ−1−エン(1.0g、8mmol)及びヨウ化ナトリウム(6.6g、44mmol)の混合物を、アセトン(60mL)中、室温で20時間撹拌し、減圧下で濃縮し、ジクロロメタン(150mL)及び水(50mL)で分配した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エンを赤みがかった油状物質として得た。
【0164】
工程D:3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(184mL)を、2−ニトロ−1−(2,5−ジフルオロフェニル)エタノン(92.7g、461mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(1000mL)及び3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エン(156g、507mmol)の溶液に加えた。混合物を60℃で2時間加熱し、濃縮し、クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中0〜30%ジクロロメタンの勾配)により精製し、3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,5−ジフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを得た。
【0165】
工程E:(2R,3S)−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン
この化合物は、3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,5−トリフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを用い、中間体1、工程Dに記載されたのと同じ方法に従って製造した。
【0166】
工程F:(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
この化合物は、(2R,3S)−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピランを用い、中間体1、工程Eに記載されたのと同じ方法に従って製造した。
【0167】
工程G:tert−ブチル[(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート
この化合物は、(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミンを用い、中間体1、工程Fに記載されたのと同じ方法に従って製造した。
【0168】
工程H:tert−ブチル[(2R,3S)−5−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート
この化合物は、tert−ブチル[(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメートを用い、中間体1、工程Gに記載されたのと同じ方法に従って製造した。
【0169】
工程I:tert−ブチル[(2R,3S)−5−オキソ−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート
0℃で、tert−ブチル[(2R,3S)−5−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−(2,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメート(10.5g)のメタノール(100mL)中の溶液に、ピリジン(7.8mL)及び四酢酸鉛(21.7g)を加えた。反応混合物を20分間撹拌した。酢酸エチルによる水性の処理により、粗生成物を与え、これをクロマトグラフィー(シリカ、0〜50%酢酸エチル/ヘプタン)により精製し、tert−ブチル[(2R,3S)−5−オキソ−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]カルバメートを白色固体として得た。
【0170】
中間体3
【0171】
【化24】

【0172】
工程A:tert−ブチル(3Z)−3−[(ジメチルアミノ)メチレン]−4−オキソピロリジン−1−カルボキシレート
tert−ブチル3−オキソピロリジン−1−カルボキシレート(40g、216mmol)の溶液をDMF−DMA(267g、2241mmol)で処理し、105℃で40分間加熱した。溶液を冷却し、減圧下で濃縮し、得られた橙色の固体をヘキサン(200mL)で処理し、冷凍庫内で3日間冷却した。このようにして得られた黄褐色の固体をろ過により集め、乾燥し、更に精製することなく次の工程で用いた。
【0173】
工程B:1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
ヒドラジン(3mL)及びtert−ブチル(3Z)−3−[(ジメチルアミノ)メチレン]−4−オキソピロリジン−1−カルボキシレート(19.22g)のエタノール(40mL)中の溶液を、密封チューブ内、85℃で4時間加熱した。減圧下で溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(160mL)及び酢酸エチル(15mL)で粉砕した。得られた固体をろ過した。ろ液を濃縮し、得られた固体を再度粉砕し、ろ過した。一緒にした固体を、メタノール中の4N塩酸(250mL)で処理し、6時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、乾燥させた。得られた固体を、メタノール中の4N塩酸(250mL)で、再度6時間処理した。濃縮し、乾燥させた後、得られた塩酸塩をメタノール中のアンモニア(2N、300mL)及び水中の水酸化アンモニウム溶液(28%、30mL)で処理し、濃縮し、乾燥させた。得られた固体をメタノール(70mL)及び水(5mL)で処理し、Biotage Horizon(登録商標)システム(シリカ、酢酸エチル中10%濃縮水酸化アンモニウムを含む5〜17%のメタノールの勾配)による3回のバッチで精製し、1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾールを得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ4.04(d,4H);7.39(s,1H)。
【0174】
中間体4
1−(シクロペンチルスルホニル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
2−(シクロペンチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
【0175】
【化25】

【0176】
工程A:tert−ブチル1−(シクロペンチルスルホニル)−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボキシレート(A)及びtert−ブチル2−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−カルボキシレート(B)
N−Boc−ピラゾロピロリジン(中間体3、工程B)(316mg、1.51mmol)のジクロロメタン中の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.791mL)、次いでシクロペンタンスルホニルクロライド(0.299mL、2.265mmol)を加えた。混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物をBiotage(商標)カラムに乗せ、ヘキサン中の50%酢酸エチルでクロマトグラフに付し、中間体A及びBを、いずれも灰色がかった白色固体として得た。LC−MS:342.09(M+1)。
【0177】
工程B:1−(シクロペンチルスルホニル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
前記工程で調製した中間体A(84mg)を、ジクロロメタン(4.0mL)中、トリフルオロ酢酸(4.0mL)で室温で2時間処理した。反応混合物を濃縮し、ジクロロメタン中の2.5〜5%メタノール及び0.25〜0.5%水酸化アンモニウムで溶出するBiotage(商標)カラムにより精製し、標題の化合物を茶色のシロップとして得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.60−1.81(m,4H);1.92−2.11(m,4H);3.92(m,2H);4.05(m,1H);4.12(m,2H);及び7.60(s,1H)。LC−MS:242.10(M+1)。
【0178】
2−(シクロペンチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
前記工程Aで調製した中間体B(275mg)を、ジクロロメタン(4.0mL)中、トリフルオロ酢酸(4.0mL)で、室温で2時間処理した。反応物を濃縮し、残渣を、ジクロロメタン中の5%メタノール及び0.5%水酸化アンモニウムで溶出するシリカゲルカラムで精製し、標題の化合物を茶色のシロップとして得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.60−1.75(m,4H);1.89−2.07(m,4H);3.93−4.01(m,5H)及び7.84(s,1H)。LC−MS:242.05(M+1)。
【0179】
中間体5
【0180】
【化26】

【0181】
2−(メチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
工程A:tert−ブチル1−(メチルスルホニル)]−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボキシレート(A)及びtert−ブチル2−(メチルスルホニル)]−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−カルボキシレート(B)
N−Boc−ピラゾロピロリジン(中間体3、工程B)(27.16g、130mmol)の無水アセトニトリル(1.0L)中の懸濁液を温度計及び添加漏斗を取り付けた2.0Lの三ツ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(油中、60%分散液、6.23g、156mmol)で一度に処理した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、得られた白色の懸濁液を氷浴中で冷却し、塩化メタンスルホニル(25.2mL、324mmol)を添加漏斗を通してゆっくりと加えた。次いで、氷浴を取り除き、混合物を室温で1時間撹拌した。水(500mL)を用いて反応混合物の反応を停止し、層を分離した。次いで、水層を2×500mLのジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、生成物A及びBの混合物を無色のシロップとして得た。CDOD中のNMRは、生成物A中のピラゾール環のプロトンが7.70ppmに現れるが、生成物B中のプロトンが7.95ppmに現れる、2種の生成物の1:1混合物であることを示した。LC−MS:288.08(M+1)。
【0182】
工程B:2−(メチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
0℃で、前記工程で調製した中間体A及びB(48.4g、168mmol)をジクロロメタン(400mL)中に含む溶液に、トリフルオロ酢酸(200mL)をゆっくりと加えた。加えた後、冷却槽を取り除き、反応物を室温で2時間撹拌させた。減圧下で溶媒を除去し、次いで、得られたトリフルオロ酢酸塩を、ジクロロメタン中の25%メタノール及び2.5%水酸化アンモニウム500mLで中和した。溶媒を除去した後、ジクロロメタン中、2.5〜12.5%メタノール及び0.25〜1.25%水酸化アンモニウムで溶出するBiotage(商標)カラム(2×340g)によるクロマトグラフィーの後に、所望の中間体5を得た。LC−MS:109.85(M+1)。
【0183】
中間体6
1−(シクロプロピルスルホニル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
2−(シクロプロピルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
【0184】
【化27】

【0185】
工程A:tert−ブチル1−(シクロプロピルスルホニル)−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボキシレート(A)及びtert−ブチル2−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−カルボキシレート(B)
室温で、窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(油中、60%分散液、1.55g、38.7mmol)の無水アセトニトリル(200mL)中の懸濁液を、N−Boc−ピラゾロピロリジン(中間体3、工程B)(5.3g、25.5mmol)に一度に加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。得られた白色の懸濁液に、シクロプロパンスルホニルクロライド(6.9g、49.1mmol)をゆっくりと加え、混合物を室温で18時間撹拌し、水(120mL)により反応を停止し、層を分離した。次いで、水層を2×100mLのジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(300g Biotage(商標)カラム)により粗生成物を精製し、ヘキサン中15〜80%酢酸エチルで溶出して原料を精製し、化合物A及び化合物Bを、いずれも白色固体として得た。LC−MS:314.21(M+1)。
【0186】
工程B:1−(シクロプロピルスルホニル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
室温で、化合物A(60mg、0.19mmol)のジクロロメタン(1.0mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸(1.0mL)で処理した。1.5時間後、反応物を濃縮し、ジクロロメタン中の5〜10%メタノール及び0.5〜1%NHOHを用いるシリカゲルカラムにより精製し、標題の化合物を琥珀色の泡状物質として得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.14−1.23(m,2H);1.31−1.38(m,2H);2.91−2.97(m,1H);4.01−4.05(m,2H);4.20−4.24(m,2H);7.60(s,1H)。LC−MS:214.13(M+1)。
【0187】
2−(シクロプロピルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
【0188】
室温で、化合物B(205mg、0.65mmol)のジクロロメタン(4.0mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸(4.0mL)で処理した。1.5時間後、反応物を濃縮し、メタノール中の2N水酸化アンモニウムで中和し、標題の化合物を茶色のシロップとして得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.17−1.23(m,2H);1.31−1.38(m,2H);2.84−2.91(m,1H);3.96−3.99(m,4H);7.82(s,1H)。LC−MS:214.13(M+1)。
【0189】
実施例1
【0190】
【化28】

【0191】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(メチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(メチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル}カルバメート
中間体2(26.3g、80mmol)及び2−(メチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(中間体5)(15.07g、80mmol)の混合物を、無水メタノール(1.5L)中、室温で2時間撹拌した。得られた白色の懸濁液に、デカボラン(2.95g、24.15mmol)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。メタノールを除去し、残渣を、ジクロロメタン中5〜50%酢酸エチルで溶出する、2本の65i Biotage(商標)カラムにより精製し、標題の化合物を白色固体として得た。LC−MS:499.10(M+1)。
【0192】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(メチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
室温で、ジクロロメタン(200mL)中のトリフルオロ酢酸(100mL)を用い、工程A由来の生成物(13.78g、27.67mmol)中のBOC基の除去を実施した。2時間撹拌した後、反応物を濃縮し、ジクロロメタン中の25%MeOH及び2.5%水酸化アンモニウムで中和した。減圧下で溶媒を除去し、ジクロロメタン中の1.25〜5%MeOH及び0.125〜0.5%水酸化アンモニウムで溶出する65i Biotage(商標)カラムにより、得られた粗生成物を精製した。単離した物質を、60℃で5:1のEtOAc/CHClから再結晶することにより更に精製した。結晶性生成物を、冷却した2:1のEtOAc/ヘキサンで洗浄し、標題の化合物を淡褐色の固体として得た。H NMR(500MHz,CDOD):1.71(q,1H,J=12Hz),2.56−2.61(m,1H),3.11−3.18(m,1H),3.36−3.40(m,1H),3.48(t,1H,J=12Hz),3.88−3.94(m,4H),4.30−4.35(m,1H),4.53(d,1H,J=12Hz),7.14−7.23(m,2H),7.26−7.30(m,1H),7.88(s,1H)。LC−MS:399.04(M+1)。
【0193】
実施例2
【0194】
【化29】

【0195】
(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(メチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(メチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル}カルバメート
中間体1(516mg、1.5mmol)及び2−(メチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(中間体5)(280mg、1.5mmol)の混合物を、無水メタノール(70mL)中、30分間撹拌した後、デカボラン(54.8mg、0.45mmol)を加えた。反応物を室温で18時間撹拌した。反応物を濃縮し、微量の異性体を洗い流すために、ジクロロメタン中0〜10%酢酸エチルで溶出し、ジクロロメタン中1.25%メタノールで溶出する40M Biotage(商標)シリカカラムにより精製し、白色固体として得られる標題の化合物を溶出した。LC/MS:517.05(M+1)。
【0196】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(メチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
室温で、前記工程Aで得られた中間体(379mg、0.734mmol)を、ジクロロメタン(20mL)中、トリフルオロ酢酸(10mL)で処理した。2時間後、反応物を濃縮し、ジクロロメタン中の10%NHOHを含む0〜2%メタノールで溶出するシリカゲルカラム(40S Biotage(商標))により粗生成物を精製し、標題の化合物を白色固体として得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.50(q,1H,J=12Hz);2.43−2.49(m,1H);2.88(td,1H,J=12,6Hz);3.11−3.18(m,1H);3.34(s,3H);3.40(t,1H,J=12Hz);3.48−3.92(m,4H);4.23−4.28(m,2H);7.14−7.20(m,1H);7.36−7.42(m,1H);7.86(s,1H)。LC−MS:417.12(M+1)。
【0197】
実施例3
【0198】
【化30】

【0199】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[1−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[1−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル}カルバメート
中間体2(50.1mg、0.15mmol)及び1−(シクロペンチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(中間体4)(35mg、0.15mmol)の混合物を、無水メタノール(1.0mL)中、30分間撹拌した後、デカボラン(5.32mg、0.044mmol)を加えた。室温で18時間撹拌した後、反応混合物を濃縮し、ジクロロメタン中50%酢酸エチルで溶出する分取用薄層クロマトグラフィープレートにより精製し、標題の化合物を無色のフィルムとして得た。LC−MS:553.46(M+1)。
【0200】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[1−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
室温で、前記工程Aで得られた中間体(49mg、0.089mmol)のジクロロメタン(4mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸(2mL)で処理した。1.5時間後、反応混合物を濃縮し、ジクロロメタン中の10%NHOHを含む5%メタノールで溶出する分取用薄層クロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物を得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ1.54(q,1H,J=12Hz);1.62−1.77(m,4H);1.92−2.08(m,4H);2.42−2.49(m,1H);2.98−3.06(m,1H);3.07−3.14(m,1H);3.40(t,1H,J=12Hz);3.87−3.91(m,2H);4.01−4.08(m,1H);4.09−4.17(m,2H);4.20−4.27(m,1H);4.34(d,1H,J=10Hz);7.08−7.18(m,2H);7.20−7.25(m,1H);7.64(s,1H)。LC−MS:453.10(M+1)。
【0201】
実施例4
【0202】
【化31】

【0203】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル}カルバメート
中間体2(92mg、0.28mmol)及び2−(シクロペンチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(中間体4)(68mg、0.28mmol)の混合物を、無水メタノール(2.0mL)中、30分間撹拌した後、デカボラン(10.3mg、0.085mmol)を加えた。室温で18時間撹拌した後、反応混合物を濃縮し、ジクロロメタン中30%酢酸エチルで溶出する分取用薄層クロマトグラフィープレートにより精製し、標題の化合物を白色固体として得た。LC−MS:553.37(M+1)。
【0204】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
室温で、前記工程Aで得られた中間体(90mg、0.16mmol)のジクロロメタン(6mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸(3mL)で処理した。1.5時間後、反応混合物を濃縮し、標題の化合物を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.61−1.74(m,4H);1.92−2.08(m,4H);2.11(q,1H,J=12Hz);2.78−2.84(m,1H);3.68(td,1H,J=12,4Hz);3.78(t,1H,J=12Hz);3.88−3.96(m,1H);4.02−4.10(m,1H);4.49−4.67(m,5H);4.71(d,1H,J=12Hz);7.19−7.27(m,2H);7.28−7.33(m,1H);8.09(s,1H)。LC−MS:453.04(M+1)。
【0205】
実施例5
【0206】
【化32】

【0207】
(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル}カルバメート
中間体1(97mg、0.28mmol)及び2−(シクロペンチルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(中間体4)(68mg、0.28mmol)の混合物を、無水メタノール(2.0mL)中、30分間撹拌した後、デカボラン(10.3mg、0.085mmol)を加えた。室温で18時間撹拌した後、反応混合物を濃縮し、ジクロロメタン中30%酢酸エチルで溶出する分取用薄層クロマトグラフィープレートにより精製し、標題の化合物を白色固体として得た。LC−MS:571.34(M+1)。
【0208】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(シクロペンチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
室温で、前記工程Aで得られた中間体(93mg、0.16mmol)のジクロロメタン(6mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸(3mL)で処理した。1.5時間後、反応物を濃縮し、標題の化合物を得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ1.71−1.76(m,4H);1.92−2.08(m,4H);2.12(q,1H,J=12Hz);2.79−2.85(m,1H);3.64(td,1H,J=10,6Hz);3.79(t,1H,J=12Hz);3.90−3.98(m,1H);4.02−4.10(m,1H);4.48−4.54(m,1H);4.57−4.72(m,5H);7.24−7.33(m,1H);7.46−7.54(m,1H);8.10(s,1H)。LC−MS:471.04(M+1)。
【0209】
実施例6
【0210】
【化33】

【0211】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[1−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[1−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル}カルバメート
中間体2(26mg、0.08mmol)及び1−(シクロプロピルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(中間体6)(18mg、0.084mmol)の混合物を、無水メタノール(1.0mL)中、30分間撹拌した後、デカボラン(2.9mg、0.024mmol)を加えた。室温で18時間撹拌した後、反応混合物を濃縮し、ジクロロメタン中50%酢酸エチルで溶出する分取用薄層クロマトグラフィープレートにより精製し、標題の化合物を白色固体として得た。LC−MS:525.2(M+1)。
【0212】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[1−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
室温で、前記工程Aで得られた中間体(52mg、0.099mmol)のジクロロメタン(2mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸塩(1mL)で処理した。1.5時間後、反応混合物を濃縮し、0.05TFAv/vを含むHO/アセトニトリルを用いる逆相HPLCにより精製し、標題の化合物を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.21−1.27(m,2H);1.38−1.43(m,2H);2.06(q,1H,J=14Hz);2.73−2.79(m,1H);2.29−3.06(m,1H);3.57−3.64(m,1H);3.74(t,1H,J=12Hz);3.81−3.90(m,1H);4.44−4.54(m,3H);4.69(d,1H,J=12Hz);4.71−4.81(m,2H);7.18−7.26(m,2H);7.27−7.32(m,1H);7.74(s,1H)。LC−MS:425.21(M+1)。
【0213】
実施例7
【0214】
【化34】

【0215】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル}カルバメート
中間体2(1.10g、3.38mmol)及び2−(シクロプロピルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(中間体6)(600mg、2.81mmol)の混合物を、無水メタノール(80mL)中、30分間撹拌した後、デカボラン(206mg、1.7mmol)を加えた。室温で18時間撹拌した後、反応物を濃縮し、ジクロロメタン中の5%メタノール及び1%NHOHで溶出する分取用薄層クロマトグラフィープレートにより精製し、標題の化合物を白色固体として得た。LC−MS:425.01(M+1)。
【0216】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−[2−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
室温で、前記工程Aからの中間体(93mg、0.16mmol)のジクロロメタン(6mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸(3mL)で処理した。1.5時間後、反応混合物を濃縮し、標題の化合物を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.17−1.23(m,2H);1.34−1.40(m,2H);2.08(q,1H,J=12Hz);2.80(d,1H,J=12Hz);2.91−2.97(m,1H);3.58−3.66(m,1H);3.76(t,1H,J=12Hz),3.82−3.90(m,1H);4.47−4.62(m,5H);4.70(d,1H,J=10Hz);7.18−7.26(m,2H);7.28−7.32(m,1H);8.05(s,1H)。LC−MS:425.01(M+1)。
【0217】
実施例8
【0218】
【化35】

【0219】
(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル}カルバメート
中間体1(94mg、0.27mmol)及び2−(シクロプロピルスルホニル)−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(中間体6)(58mg、0.27mmol)の混合物を、無水メタノール中、30分間撹拌した後、デカボラン(10mg、0.083mmol)を加えた。室温で18時間撹拌した後、反応混合物を濃縮し、ジクロロメタン中50%酢酸エチルで溶出する分取用薄層クロマトグラフィープレートにより精製し、標題の化合物を白色固体として得た。LC−MS:543.30(M+1)。
【0220】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−5−[2−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミントリフルオロ酢酸塩
室温で、前記工程Aで得られた生成物(74mg、0.14mmol)のジクロロメタン(6mL)中の溶液をトリフルオロ酢酸(3mL)で処理した。1.5時間後、反応混合物を濃縮し、標題の化合物を得た。H NMR(500MHz,CDOD):δ1.18−1.24(m,2H);1.35−1.40(m,2H);2.12(q,1H,J=12Hz);2.79−2.86(m,1H);2.92−2.98(m,1H);3.64(td,1H,J=12,6Hz);3.79(t,1H,J=12Hz);3.90−3.98(m,1H);4.48−4.54(m,1H);4.57−4.72(m,5H);7.25−7.32(m,1H);7.46−7.53(m,1H);8.08(s,1H)。LC−MS:443.04(M+1)。
【0221】
以下の追加実施例を、基本的に実施例1〜8について記載した方法に従って製造した。
【0222】
【化36】

【0223】
医薬製剤の実施例
経口医薬組成物の具体的な実施態様として、100mgの力価の錠剤を、実施例のいずれか1つに記載されたもの100mg、微結晶性セルロース268mg、クロスカルメロースナトリウム20mg及びステアリン酸マグネシウム4mgから構成する。活性成分、微結晶性セルロース及びクロスカルメロースを最初に混合する。次いで、ステアリン酸マグネシウムで混合物を滑沢とし、錠剤に圧縮する。
【0224】
本発明を、特定の実施態様を参照して開示及び説明したが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、手順及びプロトコールの種々の適合、変更、修飾、置換、削除又は追加を実施し得ることと理解する。例えば、本明細書に前述された特定の投与量以外の有効投与量を、前述する任意の本発明の化合物により適応症が治療される哺乳動物の応答性における変化の結果として適用することができる。観察される特定の薬理学的反応は、選択される特定の活性化合物、又は薬学的担体が存在するか否か、並びに使用される製剤のタイプ及び投与方法に従って、及び依存して変化する場合があり、結果におけるこのような予測される変化又は相違は、本発明の目的及び実施に従って考慮される。従って、本発明は、後述する特許請求の範囲により定義され、このような請求項は、妥当である限り広く解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化1】

[式中、Vは:
【化2】

からなる群から選択され;
Arは、1〜5個のR置換基で置換されていてもよいフェニルであり;
各Rは、独立して:
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル、及び
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルコキシからなる群から選択され;
各Rは、独立して:
水素、
ハロゲン、
シアノ、
アルコキシが独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、C1−10アルコキシ、
アルキルが独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、C1−10アルキル、
アルケニルが独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、C2−10アルケニル、
アリールが独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい、(CH−アリール(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、
ヘテロアリールが独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、(CH−ヘテロアリール(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、
ヘテロシクリルが独立してオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、(CH−ヘテロシクリル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、
シクロアルキルが独立してハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、(CH−C3−6シクロアルキル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR、及び
(CH−NRCOからなる群から選択され、
ここで、(CH中の任意の個々のメチレン(CH)炭素原子は、独立してフッ素、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
3a及びR3bは、それぞれ独立して、水素又は1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3−6シクロアルキル、及び
1−6アルキルからなる群から選択され、
ここで、アルキルは独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、フェニル及びシクロアルキルは、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
又はR及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成し、ここで、前記複素環は、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
各Rは、独立してC1−6アルキルであり、ここでアルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシルから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく;
は水素又はRであり;
は:
−SO1−6アルキル、
−SO3−6シクロアルキル、
−SO−アリール、
−SO−ヘテロアリール、
−C(O)C1−6アルキル、
−C(O)C3−6シクロアルキル、
−C(O)−アリール、
−C(O)−ヘテロアリール、
−C(O)OC1−6アルキル、
−C(O)OC3−6シクロアルキル、
−C(O)O−アリール、
−C(O)O−ヘテロアリール、
−C(O)NHC1−6アルキル、
−C(O)NHC3−6シクロアルキル、
−C(O)NH−アリール、及び
−C(O)NH−ヘテロアリールからなる群から選択され、
ここで、アルキル及びシクロアルキルは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく、アリール及びヘテロアリールは、独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシからなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
各nは独立して0、1、2又は3であり;そして
各mは独立して0、1又は2である]の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
Arが、独立してフッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Arが、2,5−ジフルオロフェニル又は2,4,5−トリフルオロフェニルである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
3a及びR3bがいずれも水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Vが、
【化3】

からなる群から選択される、請求項1記載の化合物
【請求項6】
が水素である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Vが
【化4】

であり、Rが水素である、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
が、
−SO1−6アルキル、
−SO3−6シクロアルキル、
−SO−アリール、及び
−SO−ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、アルキル及びシクロアルキルは、1〜5個のフッ素で置換されていてもよく、アリール及びヘテロアリールは、独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシからなる群から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
が、−SO1−6アルキル又は−SO3−6シクロアルキルであり、ここでアルキル及びシクロアルキルは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
で印を付けた2個の不斉炭素原子において、示された立体配置を有する、構造式Ia又はIb
【化5】

で表わされる、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
で印を付けた2個の不斉炭素原子において、示された絶対立体配置を有する、構造式Ia
【化6】

で表わされる、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
で印を付けた3個の不斉炭素原子において、示された立体配置を有する、構造式Ic及びId
【化7】

で表わされる、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
で印を付けた3個の不斉炭素原子において、示された絶対立体配置を有する、構造式Ic
【化8】

で表わされる、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
Vが、
【化9】

からなる群から選択される、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
が水素であり、Rが−SO1−6アルキル又は−SO3−6シクロアルキルであり、ここでアルキル及びシクロアルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよい、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
各Rが、独立して
水素、
アルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル、及び
シクロアルキルが独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C3−6シクロアルキル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項17】
各Rが水素である、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
【化10−1】

【化10−2】

からなる群から選択される化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項19】
請求項1記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項20】
治療を必要とする哺乳動物における、インシュリン抵抗性、高血糖症、2型糖尿病からなる群から選択される病状の治療に用いるための薬剤の製造における、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項21】
更にメトホルミン又はピオグリタゾンを含む、請求項19記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2012−508746(P2012−508746A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536433(P2011−536433)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【特許番号】特許第4854825号(P4854825)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/063976
【国際公開番号】WO2010/056708
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】