説明

糖尿病の治療又は予防のためのジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤としてのヘテロシクリル化合物

本発明は、構造式(I)の置換6員環ヘテロシクリル化合物に関し、これは、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤であり、肥満症及び糖尿病、特に2型糖尿病のような、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾患の治療又は予防に有用である。本発明は、また、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する前記疾患の予防又は治療における、このような化合物を含む医薬組成物、並びにこれらの化合物及び組成物の使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換6員環ヘテロシクリル化合物に関し、これは、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(DPP−4阻害剤)であり、肥満症及び糖尿病、特に2型糖尿病のような、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾患の治療又は予防に有用である。本発明は、また、このような化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する前記疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は複数の原因因子に由来し、空腹状態又は経口グルコース負荷試験の際のグルコースの投与後における血漿グルコースレベルの上昇又は高血糖により特徴づけられる疾病過程を意味する。持続的又は制御不能な高血糖は、増加した早期の罹患及び死亡に関連している。多くの場合、異常なグルコース恒常性が、脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質代謝の変化、並びに他の代謝性及び血行動態疾患に、直接的及び間接的に関連している。従って、2型糖尿病の患者においては、冠動脈性心疾患、卒中、末梢血管疾患、高血圧症、腎症、神経障害及び網膜症を含む、大血管性及び微小血管性合併症の危険性が特に増加する。従って、グルコース恒常性、脂質代謝及び高血圧の治療制御は、糖尿病の臨床管理及び治療において極めて重要である。
【0003】
一般的に認識されている2種の糖尿病の形態がある。1型糖尿病又はインシュリン依存性糖尿病(IDDM)では、患者は、グルコース利用を調節するホルモンであるインシュンをほとんど生成しないか、又は全く生成しない。2型糖尿病又はインシュリン非依存性糖尿病(NIDDM)では、患者は多くの場合において非糖尿病被験者と比べて同じか又は上昇さえしている血漿インシュリンレベルを有するが、これらの患者は、筋肉、肝臓及び脂肪組織である主なインシュリン感受性組織におけるグルコース及び脂質代謝に対するインシュリン刺激効果に対する抵抗性を発生し、血漿インシュリンレベルは上昇しているが、顕著なインシュリン抵抗性を克服するには不十分である。
【0004】
インシュリン抵抗性は、主に、インシュリン受容体の数が減少することに起因するのではなく、未だに理解されていないインシュリン受容体結合後欠陥に起因する。このインシュリンの応答性に対する抵抗性は、筋肉内へのグルコースの取り込み、酸化及び貯蔵における不十分なインシュリン活性化、並びに脂肪組織における脂肪分解及び肝臓におけるグルコース生成及び分泌の不適切なインシュリンの抑制をもたらす。
【0005】
2型糖尿病に利用できる治療は、長年実質的に変わっておらず、限界があることが認識されている。運動及び食事カロリー摂取量の低減は糖尿病の病状を劇的に改善するが、この治療のコンプライアンスは、十分に定着した座りがちな生活様式及び過剰の食物消費、特に多量の飽和脂肪を含有する食物の消費のために非常に悪い。膵臓β細胞を刺激して多量のインシュリンを分泌させるスルホニル尿素類(例えば、トルブタミド及びグリピザイド)又はメグリチニドを投与することにより、及び/又はスルホニル尿素類若しくはメグリチニドの効果がなくなった時のインシュリンの注入により、インシュリンの血漿レベルを上昇させ、インシュリン抵抗性組織を刺激するのに十分に高い濃度のインシュリンをもたらすことができる。しかし、危険なほど低いレベルの血漿グルコースは、インシュリン又はインシュリン分泌促進剤(スルホニル尿素類又はメグリチド)の投与に起因し、より高い血漿インシュリンレベルに起因する、より上昇したレベルのインシュリン抵抗性が生じ得る。ビグアニド類はインシュリン感受性を増大し、高血糖にある程度の修正をもたらす。しかし、2種のビグアニド、フェンホルミン及びメトホルミンは、乳酸アシドーシス及び嘔気/下痢を誘発し得る。メトホルミンは、フェンホルミンよりも副作用が少なく、2型糖尿病の治療においてしばしば処方されている。
【0006】
グリタゾン類(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は、2型糖尿病の多くの症状を改善する可能性のある、最近記載されたクラスの化合物である。これらの薬剤は、いくつかの2型糖尿病の動物モデルにおいて、筋肉、肝臓及び脂肪組織でインシュリン感受性を実質的に増加させ、低血糖症を起こすことなく、上昇したグルコース血漿レベルに部分的又は完全な修正をもたらす。現在市販されているグリタゾン類は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)、主にPPAR−ガンマサブタイプのアゴニストである。PPAR−ガンマアゴニズムは、一般に、グリタゾン類で観察される改善されたインシュリン感作の原因であると考えられている。2型糖尿病の治療のために試験されている新規なPPARアゴニストは、アルファ、ガンマ若しくはデルタサブタイプ、又はこれらの組み合わせのアゴニストであり、多くの場合、グリタゾン類と化学的に異なっている(すなわち、これらはチアゾリジンジオンではない)。重篤な副作用(例えば、肝臓毒性)が、トログリタゾンのような一部のグリタゾン類で生じている。
【0007】
この疾患を治療する追加の方法は、依然として研究中である。最近導入された、又は依然として開発中の新たな生化学的手法には、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)及びタンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤を用いた治療が含まれる。
【0008】
ジペプチジルペプチダーゼIV(「DPP−4」)酵素の阻害剤である化合物は、また、糖尿病、特に2型糖尿病の治療に有用であるかもしれない薬剤として研究中である。WO97/40832;WO98/19998;米国特許第5,939,560号;米国特許第6,303,661号;米国特許第6,699,871号;米国特許第6,166,063号;Bioorg.Med.Chem.Lett.,6:1163−1166(1996);Bioorg.Med.Chem.Lett.,6:2745−2748(1996);Ann E.Weber,J.Med.Chem.,47:4135−4141(2004);D.Kim,et al.,J.Med.Chem.,48:141−151(2005);及びK.Augustyns,Exp.Opin.Ther.Patents,15:1387−1407(2005)を参照されたい。糖尿病の治療に有用なDPP−4阻害剤を開示する、追加の特許公報には、WO2006/009886(2006年1月26日);WO2006/039325(2006年4月13日);WO2006/058064(2006年6月1日);WO2006/127530(2006年11月30日);WO2007/024993(2007年3月1日);WO2007/070434(2007年6月21日);及びWO2007/087231(2007年8月2日)が含まれる。
【0009】
2型糖尿病の治療におけるDPP−4阻害剤の有用性は、DPP−4がインビボでグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)及び胃阻害性ペプチド(GIP)を容易に不活性化するという観察に基づいている。GLP−1及びGIPはインクレチン類であり、食物が消費される時に生成する。インクレチン類はインシュリンの生成を促進する。DPP−4の阻害は、インクレチン類の不活性化の減少をもたらし、このことは、次に膵臓によるインシュリンの生成を促進するインクレチン類の有効性の増大をもたらす。従って、DPP−4の阻害は血清インシュリンレベルの増加をもたらす。有利なことに、インクレチン類は、食物が消費される時にのみ身体に生成されるので、DPP−4の阻害は、過剰な低血糖をもたらす可能性がある(低血糖症)食事の間のような不適切なときにインシュリンレベルを増加しない。従って、DPP−4の阻害は、インシュリン分泌促進薬の使用に関連する危険な副作用である低血糖症の危険性を増加することなく、インシュリンを増加する。
【0010】
DPP−4阻害剤は、本明細書に記載されているように、他の治療的有用性をも有する。改良されたDPP−4阻害剤を糖尿病、並びに他の潜在的な疾患及び病状の治療のために見出すことができるよう、新規な化合物が必要である。特に、静止細胞プロリンジペプチダーゼ(QPP)、DPP8及びDPP9を含むセリンペプチダーゼのファミリーの他のメンバーに対して選択的なDPP−4阻害剤が必要である(G.Lankas,et al.,”Dipeptidyl Peptidase−IV Inhibition for the Treatment of Type 2 Diabetes:Potential Importance of Selectivity Over Dipeptidyl Peptidases 8 and 9,”Diabetes,54:2988−2994(2005);N.S.Kang,et al.,”Docking−based 3D−QSAR study for selectivity of DPP4,DPP8,and DPP9 inhibitors,”Bioorg.Med.Chem.Lett.,17:3716−3721(2007)を参照されたい)。2型糖尿病の治療におけるDPP−4阻害剤の治療可能性は、D.J.DruckerによりExp.Opin.Invest.Drugs,12:87−100(2003)において; K.AugustynsによりExp.Opin.Ther.Patents,13:499−510(2003)において;J.J.HolstによりExp.Opin.Emerg.Drugs,9:155−166(2004)において;H.−U.DemuthによりBiochim.Biophys.Acta,1751:33−44(2005)において;R.MentleinによりExp.Opin.Invest.Drugs,14:57−64(2005)において;K.Augustynsにより”Inhibitors of proline−specific dipeptidyl peptidases:DPP IV inhibitors as a novel approach for the treatment of Type 2 diabetes,” Exp.Opin.Ther.Patents,15:1387−1407(2005)において;D.J.Drucker及びM.A.Nauckにより”The incretin system:GLP−1 receptor agonists and dipeptidyl peptidase−4 inhibitors in type 2 diabetes,” The Lancet,368:1696−1705(2006)において;T.W.von Geldern及びJ.M.Trevillyanにより”The Next Big Thing”in Diabetes:Clinical Progress on DPP−IV Inhibitors,”Drug Dev.Res.,67: 627−642(2006)において;J.J.Holst及びC.F.Deaconにより”New Horizons in Diabetes Therapy,”Immun.,Endoc.& Metab.Agents in Med.Chem.,7:49−55(2007)において;並びにR.K.Campbellにより”Rationale for Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors:a New Class of Oral Agents for the Treatment of Type 2 Diabetes Mellitus,”Ann.Pharmacother.,41:51−60(2007)において議論されている。
【発明の概要】
【0011】
発明の要旨
本発明は、置換6員環ヘテロシクリル化合物に関し、これは、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(DPP−4阻害剤)であり、糖尿病、特に2型糖尿病のようなジペプチジルペプチダーゼ−IVが関与する疾患の治療又は予防に有用である。本発明は、また、このような化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する前記疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用に関する。
【0012】
発明の詳細な記載
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害剤として有用な置換6員環ヘテロシクリル化合物に関する。本発明の化合物は、構造式I:
【0013】
【化1】

[式中、Xは、−S−、−S(O)−、−S(O)−及び−NR−からなる群から選択され;
Vは:
【0014】
【化2−1】

【0015】
【化2−2】

【0016】
【化2−3】

【0017】
【化2−4】

からなる群から選択され;
Arは、1〜5個のR基で置換されていてもよいフェニル基であり;
各Rは、独立して、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル、
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルコキシ、からなる群から選択され;
各Rは、独立して、
水素、
ヒドロキシ、
ハロゲン、
シアノ、
アルコキシが、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいC1−10アルコキシ、
アルキルが、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいC1−10アルキル、
アルケニルが、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいC2−10アルケニル、
アリールが、独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい(CH−アリール、
ヘテロアリールが、独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH−ヘテロアリール、
ヘテロシクリルが、独立してオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH−ヘテロシクリル、
シクロアルキルが、独立してハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH−C3−6シクロアルキル、
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR、及び
(CH−NRCO、からなる群から選択され、ここで、(CH中の任意の個々のメチレン(CH)炭素原子は、独立してフッ素、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく、ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
3a、R3b及びR3cは、それぞれ独立して、水素、又は1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3−6シクロアルキル、及び
1−6アルキルからなる群から選択され、ここで、アルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、フェニル及びシクロアルキルは、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは、1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
又はR及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成し、ここで、前記複素環は、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
各Rは、独立してシクロプロピル又はC1−6アルキルであり、ここで、アルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく;
は水素又はRであり;
は、
水素、
−SO
(CH−フェニル、
(CH−C3−6シクロアルキル、及び
1−6アルキルからなる群から選択され、ここで、アルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、フェニル及びシクロアルキルは、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
は:
水素、
アルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキル、
3−6シクロアルキル、
フェニルが、独立してハロゲン、C1−4アルキル、シアノ及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH1−2−フェニル、
ヘテロアリールが、独立してフッ素、シクロプロピル、C1−4アルキル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH1−2−ヘテロアリール、からなる群から選択され;
各nは、独立して0、1、2又は3であり;
各mは、独立して0、1又は2であり;そして
各pは、独立して0又は1である]により記載される化合物及び薬学的に許容されるその塩。
【0018】
本発明の化合物の一実施態様においては、Xは−S−、−S(O)−又は−S(O)−である。この実施態様の一クラスにおいては、Xは−S−である。
【0019】
本発明の化合物の第2の実施態様においては、Xは−NR−である。この実施態様の一クラスにおいては、Rは、
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキル、
フェニルが、独立してハロゲン、C1−4アルキル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいCH−フェニル、
フェニルが、独立してハロゲン、C1−4アルキル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいCHCH−フェニル、
ピリジルが、独立してハロゲン、C1−4アルキル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいCHCH−ピリジル、からなる群から選択される。
【0020】
このクラスの一サブクラスにおいては、Rはメチルである。
【0021】
本発明の化合物の第3の実施態様においては、Vは、
【0022】
【化3−1】

【0023】
【化3−2】

からなる群から選択される。
【0024】
この実施態様の一クラスにおいては、R3a、R3b及びR3cは、それぞれ水素である。
【0025】
本発明の化合物の第4の実施態様においては、Vは、
【0026】
【化4】

からなる群から選択される。
【0027】
この実施態様の一クラスにおいては、R3a、R3b及びR3cは、それぞれ水素である。
【0028】
本発明の化合物の第5の実施態様においては、Vは、
【0029】
【化5】

からなる群から選択される。
【0030】
この実施態様の一クラスにおいては、R3a及びR3bは、それぞれ水素である。
【0031】
本発明の化合物の第6の実施態様においては、Vは、
【0032】
【化6】

からなる群から選択される。
【0033】
この実施態様の一クラスにおいては、R3a及びR3bは、それぞれ水素である。
【0034】
本発明の化合物の第7の実施態様においては、Vは、
【0035】
【化7】

からなる群から選択される。
【0036】
本発明の化合物の第8の実施態様においては、Arは、独立してフッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである。この実施態様の一クラスにおいては、Arは2,5−ジフルオロフェニル又は2,4,5−トリフルオロフェニルである。
【0037】
本発明の化合物の第9の実施態様においては、R3a、R3b及びR3cは、それぞれ水素である。
【0038】
本発明の化合物の第10の実施態様においては、各Rは、独立して、
水素、
アミノ、
アルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキル、及び
シクロアルキルが、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいC3−6シクロアルキル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、からなる群から選択される。
【0039】
本発明の化合物のこの第10の実施態様の一クラスにおいては、各Rは、独立して水素、アミノ、C1−3アルキル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びシクロプロピルからなる群から選択される。
【0040】
本発明の化合物の第11の実施態様においては、Rは:
水素、
−SO(ここで、Rは上記に定義される)、
アルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキル、及び
シクロアルキルが、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいC3−6シクロアルキル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)、からなる群から選択される。
【0041】
本発明の化合物のこの第11の実施態様の一クラスにおいては、Rは、水素、C1−3アルキル、メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル及びシクロプロピルメタンスルホニルからなる群から選択される。
【0042】
本発明の化合物の第12の実施態様においては、*で印を付けた6員環ヘテロシクリル環システムにおける2個の不斉炭素原子上のAr及びNH基のトランス配向性を有する、表示した立体配置の構造式Ia及びIbの化合物が提供される。
【0043】
【化8】

(式中、Ar、X及びVは上述した通りである)
【0044】
この第12の実施態様の一クラスにおいては、*で印を付けた6員環ヘテロシクリル環システムにおける2個の不斉炭素原子上のAr及びNH基のトランス配向性を有する、表示した絶対立体配置の構造式Iaの化合物が提供される。
【0045】
【化9】

【0046】
この第12の実施態様の第2のクラスにおいては、*で印を付けた6員環ヘテロシクリル環システムにおける3個の不斉炭素原子上のAr及びNH基のトランス配向性、Ar及びV基のトランス配向性、並びにNH及びV基のシス配向性を有する、表示した立体配置の構造式Ic及びIdの化合物が提供される。
【0047】
【化10】

【0048】
このクラスの一サブクラスにおいては、*で印を付けた6員環ヘテロシクリル環システムにおける3個の不斉炭素原子上のAr及びNH基のトランス配向性、Ar及びV基のトランス配向性、並びにNH及びV基のシス配向性を有する、表示した絶対立体配置の構造式Icの化合物が提供される。
【0049】
【化11】

【0050】
この第12の実施態様の第3のクラスにおいては、*で印を付けた6員環ヘテロシクリル環システムにおける3個の不斉炭素原子上のAr及びNH基のトランス配向性、Ar及びV基のシス配向性、並びにNH及びV基のトランス配向性を有する、表示した立体配置の構造式Ie及びIfの化合物が提供される。
【0051】
【化12】

【0052】
このクラスの一サブクラスにおいては、*で印を付けた6員環ヘテロシクリル環システムにおける3個の不斉炭素原子上のAr及びNH基のトランス配向性、Ar及びV基のシス配向性、並びにNH及びV基のトランス配向性を有する、表示した絶対立体配置の構造式Ieの化合物が提供される。
【0053】
【化13】

【0054】
本明細書で用いられる場合、以下の定義が適用される。
【0055】
「アルキル」並びにアルコキシ及びアルカノイルのような接頭辞「アルカ(alk)」を有する他の置換基は、炭素鎖を特に定義しない限り、直鎖又は分岐鎖、並びにそれらの組み合わせである炭素鎖を意味する。アルキル基の具体例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル等が含まれる。例えば、C3−10のように、特定の数の炭素原子が許容される場合、用語アルキルは、シクロアルキル基、シクロアルキル構造と組み合わせた、直鎖又は分岐鎖アルキル鎖の組み合わせをも含む。炭素原子の数が特定されていない場合、C1−6を意味する。
【0056】
「シクロアルキル」はアルキルのサブセットであり、特定の数の炭素原子を有する、飽和炭素環を意味する。シクロアルキルの具体例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が含まれる。シクロアルキル基は、特に示さない限り、一般に単環式である。シクロアルキル基は、特に示さない限り飽和である。
【0057】
「アルコキシ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルコキシ)、又はこの範囲内の任意の数の直鎖又は分岐鎖アルコキシド[すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシ等]を意味する。
【0058】
「アルキルチオ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−10アルキルチオ)、又はこの範囲内の任意の数の直鎖又は分岐鎖アルキルスルフィド[すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオ等]を意味する。
【0059】
「アルキルアミノ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルアミノ)、又はこの範囲内の任意の数の直鎖又は分岐鎖アルキルアミン[すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ等]を意味する。
【0060】
「アルキルスルホニル」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルスルホニル)、又はこの範囲内の任意の数の直鎖又は分岐鎖アルキルスルホン[すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル等]を意味する。
【0061】
「アルキルオキシカルボニル」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルオキシカルボニル)、又はこの範囲内の任意の数の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖又は分岐鎖エステル[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニル又はブチルオキシカルボニル等]を意味する。
【0062】
「アリール」は、炭素環原子を含む、単環式又は多環式芳香族環構造を意味する。好ましいアリールは、単環式又は二環式の6〜10員環芳香族環構造である。フェニル及びナフチルが好ましいアリールである。最も好ましいアリールはフェニルである。
【0063】
「ヘテロシクリル」なる用語は、O、S及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子、更にイオウの酸化形態、すなわちSO及びSOを含む、飽和又は不飽和の非芳香族環又は環構造を意味する。ヘテロシクリルの具体例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリン、ピロリジノン、オキサゾリジン−2−オン、イミダゾリジン−2−オン、ピリドン等が含まれる。
【0064】
「ヘテロアリール」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む、芳香族又は部分芳香族複素環を意味する。ヘテロアリールには、アリール、シクロアルキル及び芳香族でないヘテロシクリルのような他の種類の環と縮合したヘテロアリールも含まれる。ヘテロアリール基の具体例には、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、2−オキソ−(1H)−ピリジニル(2−ヒドロキシ−ピリジニル)、オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][4,3−a]ピリジニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][1,5−a]ピリジニル、2−オキソ−1,3−ベンゾキサゾリル、4−オキソ−3H−キナゾリニル、3−オキソ−[1,2,4]−トリアゾロ[4,3−a]−2H−ピリジニル、5−オキソ−[1,2,4]−4H−オキサジアゾリル、2−オキソ−[1,3,4]−3H−オキサジアゾリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾリル、3−オキソ−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾリル等が含まれる。ヘテロシクリル及びヘテロアリール基については、3〜15個の原子を含み、1〜3個の環を形成する環及び環構造が含まれる。
【0065】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。塩素及びフッ素が、一般的に好ましい。アルキル又はアルコキシ基上においてハロゲンが置換される場合、フッ素が最も好ましい(例えば、CFO及びCFCHO)。
【0066】
本発明の化合物は、1個以上の不斉中心を含み、その結果、ラセミ体、ラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオ混合物及び個々のジアステレオマーとして存在し得る。特に、本発明の化合物は、式Ia、Ib、Ic、Id、Ie及びIfにおいて*で印を付けた不斉炭素原子において不斉中心を有する。分子上の種々の置換基の性質に依存し、更なる不斉中心が存在し得る。このような各不斉中心は、独立して2種の光学異性体を生成し、これは、可能な全ての光学異性体及びジアステレオマーが、混合物として及び純粋な又は部分的に精製された化合物として本発明の範囲に包含されることを意味する。本発明は、これらの化合物のこのような全ての異性体形態を包含することを意味する。
【0067】
本明細書に記載される化合物のいくつかはオレフィン二重結合を含み、特に指定がない限り、E及びZ幾何異性体のいずれをも含むことを意味する。
【0068】
本発明の化合物のいくつかは、1個以上の二重結合シフトに付随する水素の異なる結合点を有する互変異性体として存在し得る。例えば、ケトン及びそのエノール形態はケト−エノール互変異性体である。個々の互変異性体及びその混合物は、本発明の化合物に包含される。本発明の化合物に包含されることを意図する互変異性体の例を以下に示す:
【0069】
【化14】

【0070】
式Iは、好ましい立体化学を示さない化合物のクラスの構造を示す。式Ia及びIbは、6員環ヘテロシクリル環におけるNH及びAr基と結合する不斉炭素原子における好ましい立体化学を示す。式Ic及びIdは、6員環ヘテロシクリル環におけるNH、Ar及びV基と結合する不斉炭素原子上における好ましい立体化学を示す。
【0071】
これらのジアステレオマーの独立的な合成又はそれらのクロマトグラフィーによる分離は、本明細書に記載される方法の適切な修飾により、当該技術分野において公知のようにして達成することができる。絶対立体化学は、公知の絶対配置の不斉中心を含む試薬を用いて、結晶性生成物又は必要であれば結晶性中間体のX線結晶学により決定することができる。
【0072】
所望であれば、化合物のラセミ混合物を、個々の鏡像異性体が単離するように分離することができる。この分離は、化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物とカップリングしジアステレオマー混合物を形成し、次いで個々のジアステレオマーを分別結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的な方法により分離するような、当該技術分野において周知の方法により実施することができる。カップリング反応は、多くの場合、鏡像異性的に純粋な酸又は塩基を用いた塩の形成である。次いで、ジアステレオマー誘導体を、付加したキラル残基の開裂により純粋な鏡像異性体に変換することができる。化合物のラセミ混合物を、キラル固定相を利用するクロマトグラフィー法により直接分離することもでき、この方法は当該技術分野において周知である。
【0073】
また、化合物の任意の鏡像異性体を、当該技術分野において周知の方法により光学的に純粋な出発原料又は公知の立体配置の試薬を用いて、立体選択的合成によって得ることができる。
【0074】
本明細書で用いられる場合、構造式Iの化合物に対する言及には、薬学的に許容される塩も含まれ、また、遊離化合物に対する前駆体として用いられる場合は、薬学的に許容されない塩、又はその薬学的に許容される塩若しくは他の合成的に操作におけるものが含まれることを意味することが理解される。
【0075】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。「薬学的に許容される塩」なる用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩を意味する。「薬学的に許容される塩」なる用語の範囲に包含される塩基性化合物の塩は、本発明の化合物の非毒性塩を意味し、これは、一般に遊離塩基を適切な有機又は無機酸と反応させることにより調製される。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシレート、トリエチオジド及び吉草酸塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
更に、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、適切な薬学的に許容されるその塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等を含む無機塩基から誘導される塩が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、第一級、第二級及び第三級アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩が含まれる。
【0077】
また、カルボン酸(−COOH)又はアルコール基が本発明の化合物中に存在する場合、メチル、エチル若しくはピバロイルオキシメチルのようなカルボン酸誘導体、又はO−アセチル、O−ピバロイル、O−ベンゾイル及びO−アミノアシルのようなアルコールのアシル誘導体の薬学的に許容されるエステルを使用することができる。含まれるものは、持続性放出又はプロドラッグ製剤として用いられる、可溶性又は加水分解特性を修飾することが当該技術分において知られているエステル及びアシル基である。
【0078】
構造式Iの化合物の溶媒和物、特に水和物も同様に本発明に含まれる。
【0079】
本発明の例示は、実施例及び本明細書に開示されている化合物の使用である。
【0080】
本発明の化合物は、化合物の有効量を投与することを含む、阻害が必要性な哺乳動物のような患者におけるジペプチジルペプチダーゼIV酵素の阻害方法において有用である。本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害剤として明細書に開示されている化合物の使用に関する。
【0081】
ヒトのような霊長類に加え、多種多様な他の哺乳動物を本発明の方法によって治療することができる。例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット又は他のウシ科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、げっ歯類、若しくはネズミ科の種を含む、哺乳動物を治療することができ、これらに限定されない。しかし、本発明の方法は、鳥類(例えば、ニワトリ)のような他の種で実施することもできる。
【0082】
本発明は、更に、本発明の化合物を薬学的に許容される担体又は稀釈剤と組み合わせることを含む、ヒト及び動物においてジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性を阻害するための医薬の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、哺乳動物において高血糖症、2型糖尿病、肥満症及び脂質障害からなる群から選択される病状を治療するのに用いられる医薬の製造における構造式Iの化合物の使用に関し、ここで脂質障害は、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される。
【0083】
本発明の方法において治療される患者は、一般に、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害が望ましい哺乳動物、好ましくは男性又は女性のヒトである。「治療的有効量」なる用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により求められる、組織、系、動物又はヒトにおいて生物学的又は医学的応答を引き起こす、本発明の化合物の量を意味する。
【0084】
本明細書で用いられる場合、「組成物」なる用語は、特定の量で特定の成分を含む生成物、並びに特定の量での特定の成分の組み合わせから直接的又は間接的に得られる任意の生成物を包含することを意図する。医薬組成物に関するそのような用語は、活性成分及び担体を構成する不活性成分を含む生成物、並びに任意の2種以上の成分の組み合わせ、複合体化若しくは凝集、又は1種以上の成分の解離、又は1種以上の成分の他の種類の反応、若しくは相互作用により、直接的又は間接的に得られる任意の生成物を包含することを意図する。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を薬学的に許容される担体と混合して製造される任意の組成物を包含する。「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他の成分と適合性がなければならず、その受容者に有害であってはならないことを意味する。
【0085】
化合物の「投与」又は化合物を「投与する」なる用語は、本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを治療の必要な個体に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0086】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害剤としての本発明の化合物の有用性は、当該技術分野において公知の方法によって立証することができる。阻害定数は、下記のように決定される。DPP−4により開裂されて蛍光AMC遊離基を放出する基質Gly−Pro−AMCを用いた連続蛍光定量分析を使用する。この反応を記載する動力学的パラメーターは以下の通りである:K=50μM;kcat=75s−1;kcat/K=1.5×10−1−1。典型的な反応は、約50pMの酵素、50μMのGly−Pro−AMC及びバッファー(100mM HEPES、pH7.5、BSA 0.1mg/mL)を総反応容量の100μLに含む。AMCの放出は、励起波長360nm及び発光波長460nmを用いて96ウェルのプレート蛍光光度計において連続的に測定する。これらの条件下で、約0.8μMのAMCが25℃、30分間で生成される。これらの試験で用いた酵素は、バキュロウイルス発現系(Bac−To−Bac,Gibco BRL)内で産生される可溶性ヒトタンパク質(膜貫通ドメイン及び細胞質拡張を除く)であった。Gly−Pro−AMC及びGLP−1の加水分解の速度定数は、天然の酵素についての文献での値と一致していることがわかった。化合物の解離定数を測定するために、DMSO中の阻害剤の溶液を、酵素及び基質を含む反応に加えた(最終DMSO濃度は1%である)。全ての実験は、上記に記載された標準的反応条件を用いて、室温で実施した。解離定数(K)を決定するために、反応速度を競合的阻害のMichaelis−Menton式に非線形回帰により適合させた。解離定数の再現における誤差は、通常は2倍未満である。
【0087】
構造式Iの化合物、特に実施例1〜13の化合物は、前記アッセイにおいて、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素を阻害する活性を有し、通常、約1μM未満、更には0.1μM未満のIC50を有していた。このような結果は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害剤としての本発明の化合物の本質的な活性を示す。
【0088】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素(DPP−4)は細胞表面タンパク質であり、広範囲の生物学的機能に関与している。広範囲な組織分布(腸、腎臓、肝臓、膵臓、胎盤、胸腺、脾臓、上皮細胞、血管内皮、リンパ系及び骨髄細胞、血清)を有し、特定の組織及び細胞型発現レベルを有する。DPP−4は、T細胞活性化マーカーCD26と同一であり、多くの免疫調節ペプチド、内分泌ペプチド及び神経ペプチドをインビトロで分解することができる。これは、ヒト又は他の種における多種多様な疾患過程における、このペプチダーゼの潜在的な役割を示唆している。
【0089】
従って、本発明の化合物は、以下の疾病、疾患及び病状の予防又は治療方法に有用である。
【0090】
II型糖尿病及び関連する疾患:インクレチン類GLP−1及びGIPは、DPP−4によりインビボで急速に不活性化されることが十分に確立されている。DPP−4(−/−)欠損マウスを用いた研究及び予備臨床試験は、DPP−4阻害がGLP−1及びGIPの定常状態濃度を上昇させ、グルコース耐性の改善をもたらすことを示す。GLP−1及びGIPに対する類推により、グルコース調節に関与する他のグルカゴンファミリーペプチドもDPP−4により不活性化されると思われる(例えば、PACAP)。DPP−4によるこれらのペプチドの不活性化は、グルコース恒常性においても役割を果たしている。従って、本発明のDPP−4阻害剤は、2型糖尿病の治療において、並びにX症候群(メタボリックシンドロームとしても知られている)、反応性低血糖症及び糖尿病性脂質異常症を含む、多くの場合に2型糖尿病に付随して起こる多数の病状の治療及び予防において有用である。下記で議論する肥満症は、本発明の化合物を用いた治療に対応し得る、2型糖尿病でしばしば見出される別の病状である。
【0091】
以下の疾病、疾患及び病状:すなわち(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性の病状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)X症候群、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、並びにインシュリン抵抗性が要素となっている他の疾患は2型糖尿病に関連し、従って、あるケースにおいては、本発明の化合物を用いた治療によって治療、抑制又予防することができる。メタボリックシンドロームとしても知られているX症候群においては、肥満は、インシュリン抵抗性、糖尿病、脂質異常症、高血圧症及び心血管の危険性の増大を促進すると考えられる。従って、DPP−4阻害剤は、この病状に関連する高血圧症の治療にも有用であり得る。
【0092】
肥満症:DPP−4阻害剤は、肥満の治療に有用であり得る。これは、GLP−1及びGLP−2の食物摂取及び胃排出において観察された阻害効果に基づいている。ヒトにおけるGLP−1の外部からの投与は、有意に食物摂取を減少させ、胃排出を遅延させる(Am.J.Physiol.,277:R910−R916(1999))。ラット及びマウスにおけるGLP−1の脳室内投与(ICV)も、食餌摂取に対して顕著な効果を有する(Nature Medicine,2:1254−1258(1996))。この食餌摂取の阻害は、GLP−1R(−/−)マウスにおいては観察されず、これらの効果が脳GLP−1受容体を通して媒介されることを示す。GLP−1に対する類推により、GLP−2もDPP−4によって調節されていると思われる。GLP−2のICV投与も、GLP−1で観察された効果と同様に食餌摂取を阻害する(Nature Medicine,6:802−807(2000))。更に、DPP−4欠損マウスによる研究は、これらの動物が食餌誘発肥満及び関連する病理(例えば高インスリン血症)に抵抗性であることを示唆している。
【0093】
心血管疾患:GLP−1は、急性心筋梗塞の後で患者に投与する場合に有益であることが示されており、一次血管形成術の後で改善された左心室機能及び死亡率の低減がもたらされる(Circulation,109:962−965(2004))。GLP−1投与は、拡張型心筋症のイヌにおける左心室収縮不全及び虚血性誘発左心室不全の治療にも有用であり、その結果、心不全の患者の治療において有用であることを証明することができる(米国特許出願第2004/0097411号)。DPP−4阻害剤は、内在性GLP−1を安定化する能力によって同様の効果を示すと予想される。
【0094】
成長ホルモン欠乏症:DPP−4阻害は、下垂体前葉からの成長ホルモンの放出を促進するペプチドである成長ホルモン放出因子(GRF)が、DPP−4酵素によりインビボで開裂されるという仮説に基づいて、成長ホルモン欠乏症の治療に有用であり得る(WO00/56297)。以下のデータは、GRFが内在性基質であるという証拠をもたらす:(1)GRFはインビトロで効率的に開裂され、不活性生成物GRF[3−44]を生成する(BBA 1122:147−153(1992));(2)GRFは血漿中で急速に分解されて、GRF[3−44]となる;これは、DPP−4阻害剤ジプロチンAにより阻止される;(3)GRF[3−44]は、ヒトGRFトランスジェニックブタの血漿中に見出される(J.Clin.Invest.,83:1533−1540(1989))。従って、DPP−4阻害剤は、成長ホルモン分泌促進剤が考慮される適応症と同じ範囲において有用であり得る。
【0095】
腸管損傷:腸管障害の治療にDPP−4阻害剤を用いる可能性は、DPP−4の内在性基質の可能性があるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)が、腸管上皮に栄養効果を示す場合があることを指摘する研究の結果により示唆される(Regulatory Peptides,90:27−32(2000))。GLP−2の投与は、げっ歯類において小腸量を増大させ、大腸炎及び腸炎のげっ歯類モデルにおいて腸管損傷を減少させた。
【0096】
免疫抑制:DPP−4阻害は、DPP−4酵素がT細胞活性化及びケモカインプロセッシングに関与していることについて、並びに疾患のインビボモデルにおけるDPP−4阻害剤の有効性についての研究に基づき、免疫反応の調節に有用であり得る。DPP−4は、活性化免疫細胞の細胞表面マーカーであるCD26と同一であることが示されている。CD26の発現は、免疫細胞の分化及び活性化状態によって調節される。CD26はT細胞活性化のインビトロモデルにおいて共刺激分子として機能することが、一般に認められている。多数のケモカインは、おそらく非特異性アミノペプチダーゼによる分解から保護するために、最後から2番目の位置にプロリンを含む。これらの多くは、DPP−4によりインビトロで処理されることが示されている。いくつかの場合において(RANTES、LD78−ベータ、MDC、エオタキシン、SDF−1アルファ)、開裂は、走化性及びシグナリングアッセイにおいて変化した活性をもたらす。受容体選択性も、いくつかの場合において(RANTES)修飾されると思われる。DPP−4加水分解の予測された生成物を含む多数のケモカインの複数のN末端切断形態が、インビトロ細胞培養系で同定されている。
【0097】
DPP−4阻害剤は、移植及び関節炎の動物モデルにおいて有効な免疫抑制剤であることが示されている。DPP−4の非可逆的阻害剤であるプロジピン(Pro−Pro−ジフェニル−ホスホネート)は、ラットにおいて7日目〜14日目までに、心臓同種移植の生存期間を二倍にしたことが示された(Transplantation,63:1495−1500(1997))。DPP−4阻害剤が、ラットでコラーゲン及びアルキルジアミン誘発関節炎について試験され、このモデルにおいて後足膨張が統計的に有意に減少することが示された[Int.J.Immunopharmacology,19:15−24(1997)及びImmunopharmacology,40:21−26(1998)]。DPP−4は、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、グレーブス病及び橋本甲状腺炎を含む、多数の自己免疫性疾患において上方制御される(Immunology Today,20:367−375(1999))。
【0098】
HIV感染:HIV細胞の進入を阻害する多数のケモカインがDPP−4の基質となる可能性があるので、DPP−4阻害はHIV感染又はAIDSの治療又は予防に有用であり得る(Immunology Today 20:367−375(1999))。SDF−1アルファの場合、開裂は抗ウイルス活性を減少する(PNAS,95:6331−6(1998))。従って、DPP−4の阻害を介したSDF−1アルファの安定化は、HIVの感染力を減少すると予想される。
【0099】
造血:DPP−4が造血に関与し得るので、DPP−4阻害は造血の治療又は予防に有用であり得る。DPP−4阻害剤であるVal−Boro−Proが、シクロホスファミド誘発性好中球減少症のマウスモデルで造血を促進した(WO99/56753)。
【0100】
神経障害:種々の神経プロセスに関与する多数のペプチドがDPP−4によりインビトロで開裂されるので、DPP−4阻害は種々の神経又は精神障害の治療又は予防に有用であり得る。従って、DPP−4阻害剤は、神経障害の治療において治療上の利益を有し得る。エンドモルフィン−2、ベータ−カゾモルフィン及びサブスタンスPは、全てDPP−4のインビトロにおける基質であることが示されている。全ての場合において、インビトロ開裂は極めて効率的であり、kcat/Kは、約10−1−1以上である。ラットにおける電気ショックジャンプ試験鎮痛モデルにおいて、DPP−4阻害剤は、外来性エンドモルフィン2の存在に関係なく、有意な効果を示した(Brain Research,815:278−286(1999))。DPP−4阻害剤の神経保護及び神経生成効果も、阻害剤の興奮毒性細胞死から運動ニューロンを保護する能力、MPTPと同時に投与された時のドーパミン作動性ニューロンの線条体神経支配を保護する能力、及びMPTP治療後に治療的方法で与えられた時の線条体神経支配の密度の回復を促進する能力により実証された[Yong−Q.Wu,et al.,”Neuroprotective Effects of Inhibitors of Dipeptidyl Peptidase−IV In Vitro and In Vivo,”Int.Conf.On Dipeptidyl Aminopeptidases:Basic Science and Clinical Applications,September 26−29,2002(Berlin, Germany)を参照されたい]。
【0101】
不安:生まれつきDPP−4を欠いているラットは、抗不安表現型を有する(WO02/34243;Karl et al.,Physiol.Behav.2003)。DPP−4欠損マウスは、ポルソルト及び明/暗モデルを用いた抗不安表現型も有する。従って、DPP−4阻害剤は、不安及び関連する障害の治療に有用であることを証明することができる。
【0102】
記憶及び認識力:GLP−1アゴニストは、Duringらにより実証されているように、学習(受動的回避、モリス水迷路)及び神経障害(カイネート誘発神経細胞アポトーシス)のモデルにおいて活性である(Nature Med.9:1173−1179(2003))。その結果は、学習及び神経保護におけるGLP−1の生理学的役割を示唆している。DPP−4阻害剤によるGLP−1の安定化は、同様の効果を示すと予想される。
【0103】
心筋梗塞:GLP−1は、急性心筋梗塞の後に患者に投与された時に有益であることが示されている(Circulation,109:962−965(2004))。DPP−4阻害剤は、内在性GLP−1を安定化する能力によって同様の効果を示すと予想される。
【0104】
腫瘍浸潤及び転移:DPP−4を含むいくつかのエクトペプチダーゼの発現の増加又は減少が正常な細胞の悪性表現型への転換の際に観察されるので(J.Exp.Med.,190:301−305(1999))、DPP−4阻害は腫瘍浸潤及び転移の治療又は予防に有用であり得る。このタンパク質の上方又は下方制御は、組織及び細胞型に特異的であると思われる。例えば、CD26/DPP−4の発現の増加が、T細胞リンパ腫、T細胞急性リンパ性白血病、細胞由来甲状腺癌、基底細胞癌及び乳癌において観察されている。従って、DPP−4阻害剤は、そのような癌の治療に有用性を有し得る。
【0105】
良性前立腺肥大症:DPP−4活性の増大がBPH患者の前立腺組織で指摘されたので(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,30:333−338(1992))、DPP−4阻害は良性前立腺肥大症の治療に有用であり得る。
【0106】
精子運動性/男性避妊:精液中の、精子の運動性に重要な前立腺由来細胞小器官であるプロスタトソームが非常に高いレベルのDPP−4活性を有するので(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,30:333−338(1992))、DPP−4阻害は精子運動性を変えるため及び男性避妊のために有用であり得る。
【0107】
歯肉炎:DPP−4活性が歯肉溝液で見出され、いくつかの研究において、歯周病の重篤度と相関していたので(Arch.Oral Biol.,37:167−173(1992))、DPP−4阻害は歯肉炎の治療に有用であり得る。
【0108】
骨粗鬆症:GIP受容体が骨芽細胞に存在するので、DPP−4阻害は骨粗鬆症の治療又は予防に有用であり得る。
【0109】
幹細胞移植:ドナー幹細胞に対するDPP−4阻害は、骨髄のホーミング効率及び移植の増強、並びにマウスの生存期間の増大をもたらすことを示した(Christopherson,et al.,Science,305:1000−1003(2004))。従って、DPP−4阻害剤は骨髄移植に有用であり得る。
【0110】
本発明の化合物は、以下の病状又は疾病、すなわち:(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性の病状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)X症候群、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、(25)2型糖尿病、(26)成長ホルモン欠乏症、(27)好中球減少症、(28)神経障害、(29)腫瘍転移、(30)良性前立腺肥大症、(32)歯肉炎、(33)高血圧症、(34)骨粗鬆症、(35)不安、(36)記憶欠損、(37)認知欠損、(38)脳卒中、(39)アルツハイマー病、並びにDPP−4の阻害により治療又は予防することができる他の病状の1種以上の治療又は予防に有用性を有する。
【0111】
本発明の化合物は、更に、上記の疾病、疾患及び病状を、他の薬剤と組み合わせて予防又は治療する方法において有用である。
【0112】
本発明の化合物は、式Iの化合物又は他の薬剤が有用性を有する疾病又は病状の治療、予防、抑制又は改善において、1種以上の他の薬剤と組み合わせて用いることができ、薬剤と一緒に組み合わせることは、いずれかの薬剤の単独よりも安全であるか又はより効果的である。そのような他の薬剤は、それに一般に用いられる経路及び量で、式Iの化合物と同時に又は連続して投与することができる。式Iの化合物が1種以上の他の薬剤と同時に使用される場合、そのような他の薬剤及び式Iの化合物を含有する単位投与形態の医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法は、式Iの化合物及び1種以上の他の薬剤が異なる重複スケジュールで投与される療法をも含み得る。1種以上の他の活性成分と組み合わせて用いる場合、本発明の化合物及び他の活性成分は、それぞれ単独で用いられる場合よりも低い用量で用いることができることも考慮される。従って、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物に加えて、1種以上の他の活性成分を含有するものが含まれる。
【0113】
別々に投与されるか、同一の医薬組成物内で投与されるかのいずれかで、式Iの化合物と組み合わせて投与することのできる他の活性成分には、
(a)(i)グリタゾン(トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、ネトグリタゾン、ロシグリタゾン、バラグリタゾン等)のようなPPARγアゴニスト、並びにムラグリタザル、ナベグリタザル、テサグリタザル、アレグリタザル、ソルデグリタザル及びファルグリタザルのようなPPARα/γ二重アゴニストを含む他のPPARリガンド;フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラート)のようなPPARαアゴニスト;及びWO02/060388、WO02/08188、WO2004/019869、WO2004/020409、WO2004/020408、WO2004/066963及びWO2006/096564に開示されたような選択的PPARγモジュレータ(SPPARγM’s);(ii)メトホルミン及び薬学的に許容されるその塩のようなビグアニド、並びに(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤;を含むインシュリン増感剤;
(b)インシュリン又はインシュリン模倣薬;
(c)トルブタミド、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、ナテグリニド及びレパグリニド等のメグリチニド類のような、スルホニル尿素及びインシュリン分泌促進剤;
(d)α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース及びミグリトール等):
(e)WO97/16442;WO98/04528,WO98/21957;WO98/22108;WO98/22109;WO99/01423,WO00/39088及びWO00/69810;WO2004/050039;WO2004/069158;WO2005/121097;WO2007/047177;WO2007/047676及びWO2008/042223に開示された化合物のような、グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(f)GLP−1類似体又は模倣薬及びGLP−1受容体アゴニスト、例えばエキセンジン−4(エクセナチド)、リラグルチド、タスポグルチド、CJC−1131、LY−307161、並びにWO00/42026及びWO00/59887に開示された化合物;
(g)以下のコレステロール低下剤:(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチン、並びに他のスタチン類)、(ii)金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラート)のようなPPARαアゴニスト、(v)ナベグリタザル及びムラグリタザルのようなPPARα/γ二重アゴニスト、(vi)ベータ−ストステロール及びエゼチミブのようなコレステロール吸収の阻害剤、(vii)アバシミブのようなアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び(viii)プロブコールのような抗酸化剤;
(h)WO97/28149に開示された化合物のようなPPARδアゴニスト;
(i)抗肥満化合物、例えばフェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、神経ペプチドY又はYアンタゴニスト、リモナバント及びタラナバントのようなCB1受容体インバースアゴニスト/アンタゴニスト、βアドレナリン作動性受容体アゴニスト、メラノコルチン−受容体アゴニスト、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト、ボンベシン受容体アゴニスト(ボンベシン受容体サブタイプ−3アゴニスト等)、コレシストキニン1(CCK−1)受容体アゴニスト、及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニスト;
(j)回腸型胆汁酸トランスポーター阻害剤;
(k)アスピリン、非ストロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、グルココルチコイド、アズルフィジン及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤のような炎症状態に用いられることを意図する薬剤;
(l)ACE阻害剤(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、タンドラプリル)、A−II受容体遮断薬(ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン及びエプロサルタン)、ベータ遮断薬及びカルシウムチャンネル遮断薬のような降圧剤;
(m)WO03/015774;WO04/076420;WO04/081001;WO05/063738;及びWO06/049304に開示された化合物のようなグルコキナーゼ活性化剤(GKAs);
(n)米国特許第6,730,690号;WO03/104207;WO03/104208; WO04/058741;及びWO07/047625に開示された化合物のような、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の阻害剤;
(o)トルセトラピブのような、コレステリルエステル転移タンパク質(CETP)の阻害剤;
(p)米国特許第6,054,587号;第6,110,903号;第6,284,748号;第6,399,782号;及び第6,489,476号に開示された化合物のような、フルクトース1,6−ビスホスファターゼの阻害剤;
(q)アセチルCoAカルボキシラーゼ−1及び/又は−2阻害剤;
(r)SSTR3アンタゴニスト;
(s)ステアロイルCo−Aデルタ−9デサチュラーゼの阻害剤;
(t)AMPK活性化因子;並びに
(u)GPR−119のアゴニストが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
構造式Iの化合物と併用することのできるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤には、米国特許第6,699,871号;WO02/076450(2002年10月3日);WO03/004498(2003年1月16日);WO03/004496(2003年1月16日);EP 1 258 476(2002年11月20日);WO02/083128(2002年10月24日);WO02/062764(2002年8月15日);WO03/000250(2003年1月3日);WO03/002530(2003年1月9日);WO03/002531(2003年1月9日);WO03/002553(2003年1月9日);WO03/002593(2003年1月9日);WO03/000180(2003年1月3日);WO03/082817(2003年10月9日);WO03/000181(2003年1月3日);WO04/007468(2004年1月22日);WO04/032836(2004年4月24日);WO04/037169(2004年5月6日);及びWO04/043940(2004年5月27日)に開示されているものが含まれる。具体的なDPP−IV阻害剤化合物には、イソロイシンチアゾリジド(P32/98);NVP−DPP−728;ビルダグリプチン(LAF237);P93/01;及びサクサグリプチン(BMS477118)が含まれる。
【0115】
構造式Iの化合物と併用することのできる抗肥満化合物には、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、神経ペプチドY又はYアンタゴニスト、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト又はインバースアゴニスト、メラノコルチン受容体アゴニスト、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト、ボンベシン受容体アゴニスト及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニストが含まれる。構造式Iの化合物と併用することのできる抗肥満化合物の概説については、S.Chaki et al.,”Recent advances in feeding suppressing agents:potential therapeutic strategy for the treatment of obesity,”Expert Opin.Ther.Patents,11:1677−1692(2001);D.Spanswick and K.Lee,”Emerging antiobesity drugs,”Expert Opin.Emerging Drugs,8:217−237(2003);及びJ.A.Fernandez−Lopez,et al.,”Pharmacological Approaches for the Treatment of Obesity,”Drugs,62:915−944(2002)を参照されたい。
【0116】
構造式Iの化合物と併用することのできる神経ペプチドY5アンタゴニストには、米国特許第6,335,345号(2002年1月1日)及びWO01/14376(2001年3月1日)に開示された化合物;及びGW 59884A;GW 569180A;LY366377;及びCGP−71683Aとして同定された特定の化合物が含まれる。
【0117】
式Iの化合物と併用することのできるカンナビノイドCB1受容体アンタゴニストには、PCT国際公開WO03/007887;リモナバントのような米国特許第5,624,941号;SLV−319のようなPCT国際公開WO02/076949;米国特許第6,028,084号;PCT国際公開WO98/41519;PCT国際公開WO00/10968;PCT国際公開WO99/02499;米国特許第5,532,237号;米国特許第5,292,736号;PCT国際公開WO05/000809;PCT国際公開WO03/086288;PCT国際公開WO03/087037;PCT国際公開WO04/048317;PCT国際公開WO03/007887;PCT国際公開WO03/063781;PCT国際公開WO03/075660;PCT国際公開WO03/077847;PCT国際公開WO03/082190;PCT国際公開WO03/082191;PCT国際公開WO03/087037;PCT国際公開WO03/086288;PCT国際公開WO04/012671;PCT国際公開WO04/029204;PCT国際公開WO04/040040;PCT国際公開WO01/64632;PCT国際公開WO01/64633;及びPCT国際公開WO01/64634に開示されるものが含まれる。具体的な実施態様にはリモナバント及びタラナバントが含まれる。
【0118】
本発明において有用なメラノコルチン−4受容体(MC4R)アゴニストには、全体として本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第6,294,534号、米国特許第6,350,760号、第6,376,509号、第6,410,548号、第6,458,790号、米国特許第6,472,398号、米国特許第5837521号、米国特許第6699873号;全体として本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許出願公開第2002/0004512号、第2002/0019523号、第2002/0137664号、第2003/0236262号、第2003/0225060号、第2003/0092732号、第2003/109556号、第2002/0177151号、第2002/187932号、第2003/0113263号;及びWO99/64002、WO00/74679、WO02/15909、WO01/70708、WO01/70337、WO01/91752、WO02/068387、WO02/068388、WO02/067869、WO03/007949、WO2004/024720、WO2004/089307、WO2004/078716、WO2004/078717、WO2004/037797、WO01/58891、WO02/070511、WO02/079146、WO03/009847、WO03/057671、WO03/068738、WO03/092690、WO02/059095、WO02/059107、WO02/059108、WO02/059117、WO02/085925、WO03/004480、WO03/009850、WO03/013571、WO03/031410、WO03/053927、WO03/061660、WO03/066597、WO03/094918、WO03/099818、WO04/037797、WO04/048345、WO02/018327、WO02/080896、WO02/081443、WO03/066587、WO03/066597、WO03/099818、WO02/062766、WO03/000663、WO03/000666、WO03/003977、WO03/040107、WO03/040117、WO03/040118、WO03/013509、WO03/057671、WO02/079753、WO02/092566、WO03/−093234、WO03/095474、及びWO03/104761に開示されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
糖尿病の治療のためのグルコキナーゼ(GKAs)の安全かつ有効な活性化因子の潜在的な有用性は、J.Grimsby et al.,”Allosteric Activators of Glucokinase:Potential Role in Diabetes Therapy,”Science,301:370−373(2003)において議論されている。
【0120】
本発明の化合物を、1種以上の他の薬剤と同時に用いる場合、本発明の化合物に加え、1種以上のこのような他の薬剤を含む医薬組成物が好ましい。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加え、このような1種以上の他の活性成分をも含む。
【0121】
第二の活性成分に対する本発明の化合物の重量比は変えることができ、それぞれの成分の有効投与量に依存するであろう。一般に、それぞれの有効濃度が用いられる。従って、例えば、本発明の化合物を他の薬剤と併用する場合、他の薬剤に対する本発明の化合物の重量比は約1000:1〜約1:1000であり、好ましくは約200:1〜約1:200である。本発明の化合物及び他の活性成分の併用は、一般に前記範囲内であるが、各ケースにおいて、それぞれの活性成分の有効濃度を用いるべきである。
【0122】
本発明の化合物及び他の活性成分のこのような併用は、別個に又は一緒に投与することができる。更に、一成分の投与は、他の薬剤の投与の前、同時又は後であってもよい。
【0123】
本発明の化合物は、経口的、非経口的(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈、ICV、嚢内注射又は注入、皮下注射又はインプラント)により、吸入スプレー、経鼻、膣、直腸、舌下又は局所投与経路によって投与することができ、各投与経路に適した、通常の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及び媒体を含む適切な投与単位において単独又は一緒に製剤化することができる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル等の温血動物の治療に加え、本発明の化合物はヒトにおける使用について有効である。
【0124】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は、投与単位形態中に好都合に存在し、薬学の分野において周知の任意の方法により調製することができる。全ての方法は、活性成分を1種以上の補助成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、医薬組成物は、活性成分を液体担体若しくは微粉固体又は両者と均一及び均質に会合させ、次いで、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。医薬組成物において、本発明の活性化合物は、疾患過程又は疾患の症状において所望の効果をもたらすのに十分な量で含まれる。本明細書で用いられる場合、「組成物」なる用語は、特定の成分を特定の量で含む生成物、並びに、直接的又は間接的に特定成分の組合せを特定の量でもたらされる任意の生成物を包含することを意味する。
【0125】
活性成分を含む医薬組成物は、経口的使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、エマルション、硬カプセル若しくは軟カプセル又はシロップ又はエリキシル剤であり得る。経口使用を意図する組成物は、医薬組成物の製造のための技術分野において公知の任意の方法により調製することができ、このような組成物は、薬学的優雅さ及び味のよい製剤を提供するために、甘味料、着香料、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種以上の薬剤を含んでいてもよい。錠剤は、錠剤の製造に適した、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と一緒に活性成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムのような不活性賦形剤;コーンスターチ又はアルギン酸のような造粒剤及び崩壊剤;デンプン又はアラビアゴムのような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクのような滑沢剤であり得る。錠剤はコーティングされていないか、又は胃腸管中での分解及び吸収を遅延し、それによって長期間にわたって持続する作用をもたらすために公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートのような時間遅延物質を使用してもよい。錠剤は、米国特許第4,256,108号、米国特許第4,166,452号及び米国特許第4,265,874号に記載されている技術によってコーティングし、放出を制御するための浸透治療錠剤を形成してもよい。
【0126】
経口使用のための製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水若しくは油性媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして存在することもできる。
【0127】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性材料を含む。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムであり;分散又は湿潤剤は、天然ホスファチド(例えば、レシチン)であってもよく、脂肪酸とアルキレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)。長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)であってもよい。水性懸濁液は、1種以上の保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピル)、1種以上の着色剤、1種以上の着香料及び1種以上の甘味料(例えば、ショ糖又はサッカリン)を含有してもよい。
【0128】
油性懸濁液は、植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油又はヤシ油)又は鉱物油(例えば、流動パラフィン)中に活性成分を懸濁させることにより製造することができる。前記油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有してもよい。前述したような甘味料及び着香料を添加して、味のよい経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤を加えることにより保存することができる。
【0129】
水の添加による水性懸濁液の調製に適する分散性粉末及び顆粒は、分散又は湿潤剤、懸濁剤および1種以上の保存剤との混合物の状態の活性成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、例えば前述したものである。追加の賦形剤、例えば甘味料、着香料及び着色剤を存在させてもよい。
【0130】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルションの形態であってもよい。この油相は、植物油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)であってもよく、鉱物油(例えば、流動パラフィン)であってもよく、これらの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、天然ゴム(例えば、アラビアゴム又はトラガカントゴム)、天然ホスファチド(例えば、大豆、レシチン)、並びに脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)、並びにエチレンオキシドと前記部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)であってもよい。エマルションは、甘味料及び着香料を含んでもよい。
【0131】
シロップ及びエリキシル剤は、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はショ糖を用いて製剤化することができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、着香料及び着色剤を含有してもよい。
【0132】
医薬組成物は、無菌の注射用の水性又は油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、前述した、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、公知の技術によって製剤化することができる。無菌の注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性で非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。使用することができる許容可能な媒体及び溶媒は、水、リンゲル溶液及び等張塩化ナトリウム溶液である。更に、滅菌固定油が溶媒又は懸濁媒体として従来使用されている。この目的のためには、合成モノ又はジグリセリドを含む任意の無菌不揮発性油を使用することができる。更に、オレイン酸のような脂肪酸が注射用の製剤として用いられることが知られている。
【0133】
本発明の化合物は、薬物の直腸内投与用の坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、薬物を、常温で固体であるが直腸内温度では液体であり、その結果、直腸内で溶解してこの薬物を放出する適切な無刺激賦形剤と混合することにより、調製することができる。このような材料は、カカオ脂及びポリエチレングリコールである。
【0134】
局所使用のためには、本発明の化合物を含むクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液等が使用される。(この用途の目的のため、局所用途はマウスウォッシュ及びうがい薬を含むべきである。)
【0135】
本発明の医薬組成物及び方法は、前述した病的状態の治療において通常に適用される、本明細書に示すような他の治療活性化合物を更に含んでもよい。
【0136】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害を必要とする病状の治療又は予防において、適切な投与レベルは、一般に、1日あたり患者の体重1kgに対して約0.01〜500mgであり、1回又は複数投与で投与することができる。好ましくは、投与レベルは、1日あたり約0.1〜約250mg/kgであり;更に好ましくは1日あたり約0.5〜約100mg/kgである。適切な投与レベルは、1日あたり約0.01〜250mg/kg、1日あたり約0.05〜100mg/kg、又は1日あたり約0.1〜50mg/kgであってもよい。この範囲内で、投与量は、1日あたり0.05〜0.5、0.5〜5、又は5〜50mg/kgであってもよい。経口投与の場合、治療すべき患者に対する投与量を症状によって調整するために、組成物を好ましくは、1.0〜1000mgの活性成分、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0及び1000.0mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供される。化合物は、1日に1〜4回、好ましくは1日に1又は2回の投与計画で投与することができる。
【0137】
糖尿病及び/又は高血糖症又は高トリグリセリド血症、又は本発明の化合物が示す他の疾病を治療又は予防する場合、一般に本発明の化合物を、動物の体重1kgあたり約0.1mg〜約100mgの1日投与量で投与する時に、好ましくは1日1回投与、又は1日に2〜6回の分割投与量で、又は持続放出形態で与えるときに満足な結果が得られる。最も大きな動物について、合計1日用量は約1.0mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約50mgである。70kgの成人の場合、合計1日用量は、一般に約7mg〜約350mgである。この投与計画は、最適な治療応答をもたらすように調整することができる。
【0138】
しかし、任意の特定の患者に対する具体的な投与レベル及び投与頻度は変化し、使用される具体的な化合物の活性、この化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性、食事、投与の様式及び時間、排泄率、薬の組み合わせ、特定の病状の重傷度、並びに治療を受ける宿主を含む、種々の因子に依存することが理解されるであろう。
【0139】
本発明の化合物の調製
【0140】
構造式(I)の化合物は、適切な材料を用いて、以下のスキーム及び実施例の方法に従って製造することができ、以下の具体的な実施例によって更に説明する。しかし、実施例に説明される化合物は、本発明として考慮される唯一の種を製造するものとして解釈されない。実施例は、更に本発明の化合物の製造の詳細を説明する。当業者は、以下の調製方法の公知の種々の条件及び工程により、これらの化合物を製造することができることを容易に理解するであろう。特に示さない限り、全ての温度は摂氏である。質量スペクトル(MS)はエレクトロスプレイイオン−質量分析(ESMS)により測定した。
【0141】
【化15】

【0142】
XがSである本発明の化合物は、標準的な還元アミノ化条件を用い、それに続くアミン保護基Pの除去により、式II及びIII
【0143】
【化16】

(式中、Ar及びVは上述した通りであり、Pは、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)のような適切な窒素保護基である)の化合物のような中間体から調製することができる。これらの中間体の調製を、以下のスキームに示す。
【0144】
XがNRである本発明の化合物は、式IIIのアミンによる式IVのδ−ラクタム中のブロモ基の求核置換による式Vのアミノδ−ラクタムの形成、それに続く、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,”Protective Groups in Organic Synthesis,”4th Ed.,John Wiley & Sons,Inc.,2007に開示された標準的方法を用いた、ケト基の還元及びアミン保護基の開裂により、式III及びIVの化合物のような中間体から調製することができる。
【0145】
【化17】

式中、Ar、V及びRは上述した通りであり、Pは、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)のような適切な窒素保護基である。これらの中間体の調製を、以下のスキームに示す。
【0146】
式IIの中間体は文献中に公知であるか、又は、当業者によく知られている種々の方法により都合よく調製することができる。6−フェニル−テトラヒドロチオピラン−3−オンの合成法は、Tetrahedron,39:1487−1498(1983);Tetrahedron Lett.,33:7597−7600(1992);及びKhimiya Geterosiklicheskikh Soedinenii,670−674(1975)に開示されている。
【0147】
式IVの中間体は文献中に公知であるか、又は、スキーム1に示すようにして都合よく調製することができる。
【0148】
【化18】

【0149】
5−ニトロ−ピペリジノン1は、還流エタノール中、メチルアミンのようなアミン(RNH)の存在下、適切な置換ベンズアルデヒドをメチル4−ニトロブチレートと縮合することにより調製することができる。所望のラセミ体のトランス異性体は、クロマトグラフィー分離により得られる。メタノール中、塩化ニッケル(II)の存在下、水素化ホウ素ナトリウムを用いた1の還元及び通常の処理により、種々の公知のアミン保護基で保護することのできる一級アミンを得る。次いで、得られるラセミ体のトランス異性体2をキラルクロマトグラフィーにより分離し、所望の鏡像異性体3を得る。テトラヒドロフランのような溶媒中、リチウムジイソプロピルアミド又はtert−ブチルリチウムのような塩基を用いて3を処理し、次いでN−ブロモ−スクシンイミドのような臭素化剤を加えることにより3の臭素化を実施することができる。生成した2種のジアステレオマーをクロマトグラフィー分離した後、ブロモ化ピペリジノン中間体4を種々のアミン(V−Hにより表わされる)で処理し、6を得る。テトラヒドロフランのような溶媒中、室温〜還流温度の範囲の温度で、保護されたピペリジノン6をボラン−硫化メチルのような試薬で還元し、ピペリジン7を得、これは、保護基Pとしてt−ブチルオキシカルボニル(Boc)基を用いた場合に塩酸又はトリフルオロ酢酸のような適切な脱保護剤を用いた処理によって脱保護し、所望のアミノピペリジン8を得ることができる。
【0150】
【化19】

【0151】
式IIIの中間体は文献中に公知であるか、又は、当業者によく知られている種々の方法により都合よく調製することができる。テトラヒドロピロロピラゾールIIIaを調製するための1種の通常の経路をスキーム2に示す。トリチル−又はBoc−保護したピロリジノールを、一般的に当業者に公知のSwern法のような種々の方法により酸化し、ケトン10を得ることができ、これをN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF−DMA)と一緒に加熱し、11を得る。次いで、所望の中間体IIIaは、エタノールのような適切な溶媒中、場合によりナトリウムエトキシドのような塩基の存在下、11の溶液をヒドラジン12と一緒に加熱し、次いで、保護基を除去することにより、容易に得ることができる。同様の方法で、シアノケトン13をヒドラジンで処理し、脱保護し、アミノピラゾールIIIbを得る。
【0152】
【化20】

【0153】
中間体IIIcは、エタノールのような適切な溶媒中、場合によりナトリウムエトキシドのような塩基の存在下、11の溶液をアミジン14と一緒に加熱し、次いで保護基を除去することにより容易に得ることができる。
【0154】
【化21】

【0155】
スキーム3に示すように、Xが−S−、−S(O)−又は−S(O)である、本発明の構造式(I)の化合物は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン又はメタノールのような溶媒中、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、デカボラン又はナトリウムトリアセトキシボロハイドライドのような試薬を用いて、中間体IIIの存在下、中間体IIを還元的アミノ化し、中間体IVを得ることにより調製することができる。反応は、場合により、四塩化チタン又はチタンテトライソプロポキシドのようなルイス酸の存在下に実施する。反応は、酢酸のような酸の添加によっても促進される。あるケースにおいては、中間体IIIは、塩酸又はトリフルオロ酢酸塩のような塩であってもよく、これらの場合には、反応混合物に、塩基、通常、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを加えることが好都合である。次いで、例えば、Bocの場合にはトリフルオロ酢酸又はメタノール性塩化水素、Cbzの場合にはパラジウムカーボン及び水素ガスを用いて保護基を除去し、所望のアミンIを得る。生成物を、必要に応じて、再結晶、粉砕、分取用薄層クロマトグラフィー、Biotage(登録商標)装置のようなシリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィー又はHPLCにより精製する。
【0156】
ある場合においては、前記スキームに示した生成物I又は合成中間体を、例えば、Ar又はVの置換基の操作により更に修飾してもよい。これらの操作には、当業者に一般に公知である還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応が含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
ある場合においては、反応を促進し、又は所望でない反応生成物を回避するため、前記反応スキームを実施する順番を変えてもよい。本発明を更に十分に理解するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は説明のためのみであり、決して本発明を限定するものとして解釈すべきでない。
【0158】
【化22】

【0159】
2−(トリフルオロメチル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン
工程A:tert−ブチル3−[(ジメチルアミノ)メチレン]−4−オキソピロリジン−1−カルボキシレート
1−(tert−ブトキシルカルボニル)−3−ピロリドン(4.10g)及びN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(30.0mL)の溶液を140℃で1時間加熱した。得られた混合物を室温まで冷却し、減圧下に濃縮した。残渣を最小量のジクロロメタンに再溶解し、ヘキサンで粉砕し、黄色の沈殿物を得た。LC−MS=241.1(M+1)。
【0160】
工程B:2−(トリフルオロメチル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン
工程Aからの生成物(500mg)の無水エタノール(25mL)中の溶液にナトリウムエトキシド(2.33mL、エタノール中21%)を加えた。5分間撹拌した後、トリフルオロアセトアミジン(700mg)を加え、得られた混合物を還流温度まで1時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチルで希釈した。有機層を、5%クエン酸水溶液及び食塩水で連続して洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、粗生成物を得、これを、1Nメタノール性塩化水素中で1時間溶解することにより脱保護した。得られた溶液を濃縮し、Biotage(登録商標)システム(シリカゲルカートリッジ、メタノール/ジクロロメタン中、10%〜18%の10%の濃水酸化アンモニウムの勾配)によりクロマトグラフに付し、標題の化合物を得た。LC−MS=190.0(M+1)。
【0161】
【化23】

【0162】
2−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン
工程A:1−トリチルピロリジン−3−オン
温度計を備えた三ツ口フラスコ中、無水ジクロロメタン(35.0mL)の撹拌溶液に、塩化オキサリル(1.5mL)を加え、得られた溶液を−60℃に冷却した。ジメチルスルホキシド(2.6mL)のジクロロメタン(7.5mL)中の溶液を10分間かけて加え、次いで、ジクロロメタン(15.0mL)中の(3R)−1−トリチルピロリジン−3−オール(5.0g)を10分間かけて加えた。得られた溶液を−60℃で15分間撹拌し、次いで、トリエチルアミン(10.6mL)を5分間かけて加えた。白色の沈殿が形成された。5分後、冷却槽を取り除き、混合物を室温まで加温した。水(45mL)を加えた。混合物を更に30分間撹拌し、次いで、ジクロロメタンで抽出した。有機層を5%クエン酸水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、標題の化合物を得た。LC−MS=243.1(M+1)。
【0163】
工程B:4−[(ジメチルアミノ)メチレン]−1−トリチルピロリジン−3−オン
工程Aからの1−トリチルピロリジン−3−オン(4.9g)の無水DMF(36.0mL)中の懸濁液を、窒素雰囲気下、80℃で10分間加熱することにより溶解した。透明な溶液を、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(18.0mL)で処理し、80℃で12時間加熱した。得られた暗褐色の溶液を減圧下に濃縮した。残渣を、Biotage(登録商標)システム(シリカゲル、ヘキサン中、50%〜100%酢酸エチルの勾配)によりクロマトグラフに付し、標題の化合物を得た。LC−MS=243.1(M+1)。
【0164】
工程C:2−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン
アセトアミジン塩酸塩(12.8g、135mmol)及びナトリウムエトキシド(59mL、157.5mmol)の無水エタノール(400mL)中の溶液を、窒素雰囲気下に15分間撹拌し、工程Bからの4−[(ジメチルアミノ)メチレン]−1−トリチルピロリジン−3−オン(17.2g、45mmol)を加えた。得られた混合物を85℃で3.5時間加熱し、5%クエン酸水溶液(50mL)を用いて反応を停止し、エバポレーションさせて乾燥した。得られた残渣を酢酸エチル(500mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。水層及び有機層の間に多少の不溶性固体物質があり、これをセライトパッドでろ過し、酢酸エチルで洗浄した。一緒にした水層を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を一緒にし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣を、Biotage Horizon(登録商標)システム(シリカゲル、10〜75%の酢酸エチル/ジクロロメタンの勾配)によるクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物のN−トリチル保護誘導体を得た。このトリチル保護生成物の一部(1.9g、5.0mmol)を4Nのメタノール性塩化水素(20mL)に溶解し、室温で2.5時間撹拌した。溶液を濃縮し、残渣を、Biotage Horizon(登録商標)システム(シリカ、メタノール中、10%の濃水酸化アンモニウム/ジクロロメタンの4.5〜14%勾配)によるクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物を得た。LC−MS=136.0(M+1)。
【0165】
【化24】

【0166】
2−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン
基本的に、中間体2の工程Cに記載された方法に従い、シクロプロピルカルバミジン塩酸塩(16.28g、135mmol)及び4−[(ジメチルアミノ)メチレン]−1−トリチルピロリジン−3−オン(17.2g、45mmol)から2−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジンを製造し、所望の生成物を得た。LC−MS=162.1(M+1)。
【0167】
【化25】

【0168】
6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン
窒素雰囲気下、ホルムアミジン塩酸塩(190mg)の無水エタノール(25.0mL)中の溶液に、ナトリウムエトキシド(エタノール中、21重量%、1.2mL)及び4−[(ジメチルアミノ)メチレン]−1−トリチルピロリジン−3−オン(300mg、中間体4、工程Bについて記載したようにして調製)を加えた。混合物を80℃で8時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチルで希釈した。有機層を、5%クエン酸水溶液及び食塩水で連続して洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗残渣を、4Nメタノール性塩化水素で2.5時間処理することにより脱保護した。混合物を濃縮し、残渣を、Biotage(登録商標)システム(シリカ、メタノール中の10%の濃水酸化アンモニウム/ジクロロメタンの15%〜25%の勾配)によるクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS=243.1(M+1)。
【0169】
【化26】

【0170】
工程A:2,2,2−トリフルオロ−N−ピラジン−2−イルアセトアミド
0℃で、アミノピラジン(22.74g、239mmol)及びトリエチルアミン(36.66mL、263mmol)のジクロロメタン(400mL)中のわずかに不均一な溶液に、トリフルオロ酢酸無水物(50.20g、239mmol)を滴下して加えた。溶液を0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。得られた白色沈殿をろ過し、次いでジクロロメタンで洗浄し、標題の化合物を白色固体として得た。HNMR(500MHz,CDOD):δ8.44−8.46(m,2H),9.33(d,1H,J=1.4Hz);LC/MS192(M+1)。
【0171】
工程B:2,2,2−トリフルオロ−N’−ヒドロキシ−N−ピラジン−2−イルエタンイミドアミド
2,2,2−トリフルオロ−N−ピラジン−2−イルアセトアミド(14.56g、76.26mmol、工程A由来)のジクロロエタン(325mL)中の懸濁液に、五塩化リン(421.73g,99.13mmol)を一部ずつ加えた。混合物を5時間還流した。ジクロロエタンをエバポレーションさせた後、残渣をテトラヒドロフラン(325mL)中に懸濁させた。前記混合物に、50%ヒドロキシルアミン水溶液(20mL)を一部ずつ加えた。室温で2時間撹拌した後、混合物を、酢酸エチル及び炭酸水素ナトリウム水溶液で分配した。水層を酢酸エチルで3回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮し、標題の化合物を黄色の固体として得た。H−NMR(500MHz,CDOD):δ8.04(m,2H),8.17(s,1H)。LC/MS207(M+1)。
【0172】
工程C:2−(トリフルオロメチル)[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン
2,2,2−トリフルオロ−N’−ヒドロキシ−N−ピラジン−2−イルエタンイミドアミド(10.5g、50.97mmol、工程B由来)及びポリリン酸(80mL)の混合物を、150℃で、撹拌しながら18時間加熱した。溶液を氷に加え、水酸化アンモニウムを加えることにより中和した。暗色の水溶液を、酢酸エチルで3回抽出し、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(50%、次いで100%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)により、標題の化合物を黄色の固体として得た。H−NMR(500MHz,CDCl):δ8.42(d,1H,J=4.6Hz),8.67(dd,1H,J=1.4and4.6Hz),9.47(d,1H,J=1.4Hz)。LC/MS189(M+1)。
【0173】
工程D:2−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン
2−(トリフルオロメチル)[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン(340mg、1.81mmol、工程C由来)を、エタノール(10mL)中、水素雰囲気下、触媒として10%パラジウムカーボン(60mg)を用いて室温で18時間かけて水素化した。セライトによりろ過し、次いで濃縮し、暗色の油状物質を得た。フラッシュクロマトグラフィー(100%酢酸エチル、次いで10%メタノール/ジクロロメタンで溶出)により、標題の化合物を白色固体として得た。H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.80(br,1H),3.40(t,2H,J=5.5Hz),4.22−4.26(m,4H);LC/MS193(M+1)。
【0174】
【化27】

【0175】
5,6,7,8−テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン
工程A:tert−ブチル4−オキソ−3−(ジメチルアミノメチリデン)−1−ピペリジンカルボキシレート
tert−ブチル4−オキソ−1−ピペリジンカルボキシレート(8.73g、44mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(5.8mL、44mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド80mL中の溶液を80℃で18時間加温した。溶液を冷却し、減圧下に濃縮し、残渣を酢酸エチル及び水で分配した。混合物をセライトのパッドでろ過し、有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮し、標題の化合物をオレンジ色の油状物質として得た。
【0176】
工程B:6−(tert−ブトキシカルボニル)−5,6,7,8−テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン
無水エタノール15.0mL中、ホルムアミジンアセテート(472mg、4.52mmol)を、ナトリウムエトキシド(エタノール中21重量%;17mL)で処理した。30分後、前記工程Aからの生成物(1.15g)の無水エタノール8mL中の溶液を加え、混合物を還流温度で18時間加温した。暗色の溶液を室温まで冷却し、減圧下に濃縮し、残渣を酢酸エチル及び水で分配した。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、オレンジ色の油状物質を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液として2%メタノール/ジクロロメタン)により精製し、標題の化合物を淡黄色のガム状物質として得た。
【0177】
工程C:5,6,7,8−テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン
前記工程Bからの生成物(730mg)のジクロロメタン10mL中の溶液を0℃まで冷却し、トリフルオロ酢酸5mLの一部ずつで処理した。溶液を室温まで加温し、1時間後、減圧下に濃縮した。残渣をメタノールに溶解し、イオン交換カラム(Varian Bond−Elut SCX、5g;メタノールであらかじめ調整)にかけた。カラムをメタノールで数回洗浄し、1.0Mアンモニア−メタノールでアミン生成物を溶出した。生成物を含む画分を減圧下に濃縮し、標題の化合物をオレンジ色の油状物質として得た。LC/MS136.1(M+1)。
【0178】
本発明の構造式Iの調製において用いられる他のH−V中間体を、全体として本明細書に参考文献として組み入れられる、米国特許第6,699,871号;PCT国際公開WO2003/082817;WO2004/007468;WO2004/032836;WO2004/058266;WO2004/064778;及びWO2004/069162に記載されたようにして調製した。
【0179】
【化28】

【0180】
工程A:tert−ブチル(3Z)−3−[(ジメチルアミノ)メチレン]−4−オキソピロリジン−1−カルボキシレート
tert−ブチル3−オキソピロリジン−1−カルボキシレート(40g、216ミリモル)の溶液をDMF−DMA(267g、2241mmol)で処理し、105℃で40分間加熱した。溶液を冷却し、減圧下に濃縮し、得られたオレンジ色の固体をヘキサン(200mL)で処理し、週末の間、冷蔵庫で冷却した。得られた黄褐色の固体をろ過により集め、乾燥し、更に精製することなく、次の工程で用いた。
【0181】
工程B:tert−ブチル4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボキシレート
ヒドラジン(3mL)及びtert−ブチル(3Z)−3−[(ジメチルアミノ)メチレン]−4−オキソピロリジン−1−カルボキシレート(19.22g)のエタノール(40mL)中の溶液を、密封チューブ中、85℃で4時間加熱した。減圧下に溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(160mL)及び酢酸エチル(15mL)で粉砕した。得られた固体をろ過した。ろ液を濃縮し、得られた固体を再度粉砕した。一緒にした固体を次の工程で用いた。
【0182】
工程C:1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
前記工程Bにおいて得られたtert−ブチル4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボキシレート(12.7g)を、メタノール中の4N塩酸(250mL)で処理し、6時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、乾燥した。この工程を繰り返した。このようにして得られたHCl塩12gを、メタノール中のアンモニア(2N、300mL)及び水中の水酸化アンモニウム水溶液(28%、30mL)で処理し、濃縮し、乾燥した。得られた固体をメタノール(70mL)及び水(5mL)で処理し、Biotage Horizon(登録商標)システム(シリカ、酢酸エチル中、10%の濃水酸化アンモニウムを含む、5〜17%メタノールの勾配)による3回のバッチ処理により精製し、1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾールを得た。HNMR(500MHz,CDOD):δ4.04(d,4H),7.39(s,1H)。
【0183】
【化29】

【0184】
1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
工程A:1−メチル−5−トリチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
メチルヒドラジン(0.11mL)及び(4Z)−4−[(ジメチルアミノ)メチレン]−1−トリチルピロリジン−3−オン(678mg)のエタノール(5mL)中の溶液を、密封チューブ中、84℃で3時間加熱した。減圧下に溶媒を除去し、残渣を、Biotage Horizon(登録商標)システム(シリカ、5%メタノール/0.5%の濃水酸化アンモニウム/94.5%ジクロロメタン)により精製し、1−メチル−5−トリチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾールを得た。
【0185】
工程B:1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
前記工程Aにおいて得られた1−メチル−5−トリチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール(670mg)を、4N塩酸(4mL)で処理した。1.5時間後、反応混合物を濃縮した。残渣を、Biotage Horizon(登録商標)システム(シリカ、ジクロロメタン中10%の濃水酸化アンモニウムを含む、10〜19%のメタノールの勾配)により精製し、1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾールを得た。LC−MS124.1(M+1)。
【0186】
表1に示すテトラヒドロピロロピラゾール類を、基本的に、中間体8を製造するために記載された方法に従い、製造した。
【0187】
【表1】

【0188】
【化30】

【0189】
3−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
工程A:tert−ブチル3−アセチル−4−オキソピロリジン−1−カルボキシレート
−78℃で、tert−ブチル3−オキソピロリジン−1−カルボキシレート(370mg)のテトラヒドロフラン(20mL)中の溶液に、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(4.18mL、テトラヒドロフラン中、1.0M)を加えた。反応混合物を1.5時間撹拌し、次いで、無水酢酸(0.21mL)で処理し、室温で20時間撹拌した。水を滴下して加えることにより、反応混合物の反応を停止し、減圧下に濃縮した。塩基性残基に、酢酸エチル(50mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)及び等量の水を加えた。水層を分離し、塩酸を慎重に加えることによりpH3に酸性化し、酢酸エチル(75mL)で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、所望の生成物を得、これは更に精製することなく次の工程で用いた。
【0190】
工程B:tert−ブチル3−メチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボキシレート
この工程は、基本的に、中間体8、工程Aからの生成物を製造するために記載された方法に従って実施した。
【0191】
工程C:3−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール
この工程は、基本的に、中間体8、工程Bからの生成物を製造するために記載された方法に従って実施した。LC−MS124.2(M+1)。
【0192】
【化31】

【0193】
1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−アミン
工程A:tert−ブチル3−アミノ−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボキシレート
N−Boc−3−シアノ−4−ピロリジノン(5g、23.78mmol)及びヒドラジン一塩酸塩(1.629g、23.78mmol)をエタノール(140mL)に溶解した。混合物を60℃で3時間加熱した。混合物を0℃まで冷却し、飽和NaHCO水溶液(50mL)をゆっくりと加え、残存する水を酢酸エチルで4回抽出した。有機層をNaSO(無水)で乾燥した。残渣を、EtOAc/MeOH/アンモニア水(0〜10%の勾配)で溶出する、シリカゲルBiotage 40Mによるカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物を黄色の泡状物質として得た。LC−MS:224.99(M+1)。
【0194】
工程B:1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−アミン
tert−ブチル3−アミノ−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボキシレート(3670mg、16.36mmol)を、TFA/CHCl(v/v=1/1)で1時間処理した。反応混合物を濃縮し、残渣をCHCl/ヘキサンで処理し、次いで濃縮して固体を得た。生成物をイオン交換樹脂Strata X−C(登録商標)に通し、標題の生成物を得た。LC−MS:125.05(M+1)
【0195】
実施例1
【0196】
【化32】

【0197】
tert−ブチル[(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−メチルピペリジン−3−アミントリス(塩酸)塩
工程A:トランス−6−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−ニトロピペリジン−2−オン
【0198】
【化33】

【0199】
2,5−ジフルオロベンズアルデヒド(0.765mL、7.04mmol)のエタノール(15mL)中の溶液に、メチル4−ニトロブチレート(0.901mL、7.04mmol)及びメチルアミン(7.04mL、14.07mmol)を加えた。混合物を、還流温度で一晩加熱した。濃縮後、残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(40%〜60%の勾配)で溶出するカラムクロマトグラフィー(シリカゲルBiotage 40M)により精製し、標題の化合物をラセミ体のトランス異性体として得た。LC−MS:271.05(M+1)。
【0200】
工程B:tert−ブチル[トランス2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート
【0201】
【化34】

【0202】
0℃で、工程Aの生成物(3.95g、14.62mmol)のMeOH(100mL)中の溶液に、塩化ニッケル(II)六水和物(0.174g、0.731mmol)を加え、混合物を5分間撹拌し、次いで、少量の水素化ホウ素ナトリウム(2.212g、58.5mmol)で処理した。混合物を室温で30分間撹拌し、ジ−tertブチルジカルボネート(15.35mL、15.35mmol)を加え、混合物を一晩撹拌した。溶液を減圧下に濃縮し、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液及び食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。粗生成物を酢酸エチル/ヘキサンで粉砕し、標題の化合物をラセミ体のトランス異性体として得た。LC−MS:284.95(M+1−56)。
【0203】
工程C:tert−ブチル[(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート
【0204】
【化35】

【0205】
工程Bからの生成物(1896mg、5.57mmol)を、Chiralcel OD(登録商標)による分取用HPLCにかけ、ヘプタン/イソプロパノール(9:1)で溶出し、標題の化合物を最初に溶出する鏡像異性体として得た。LC−MS:284.95(M+1−56)。
【0206】
工程D:tert−ブチル[(2R,3S)−5−ブロモ−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート
【0207】
【化36】

【0208】
−78℃で、工程Cからの生成物(500mg,1.469mmol)のTHF(30mL)中の溶液に、tert−ブチルリチウム(2.247mL、3.82mmol)を加えた。混合物を30分間撹拌し、次いで、THF(8.0mL)中のN−ブロモスクシンイミド(NBS)(523mg、2.94mmol)を加えた。混合物を、−78℃〜−40℃で2時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で溶液の反応を停止し、塩化メチレンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(55%〜75%の勾配)で溶出するカラムクロマトグラフィー(シリカゲルBiotage 40M)により精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:364.91(M+1−56)。
【0209】
工程E:tert−ブチル[(2R,3S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート
【0210】
【化37】

【0211】
工程Dからの生成物(233mg、0.556mmol)のアセトニトリル(25mL)中の溶液に、中間体7(91mg、0.834mmol)、次いで、トリエチルアミン(0.093mL、0.667mmol)を加えた。混合物を50℃で1日加熱し、室温で48時間撹拌した。濃縮後、残渣を、CHCl/MeOH/アンモニア水(90/9/1)で溶出する分取用TLCにより精製し、標題の化合物を2種のジアステレオ異性体の混合物として得た。LC−MS:448.01(M+1)。
【0212】
工程F:tert−ブチル[(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート
【0213】
【化38】

【0214】
工程Eからの混合物(61mg)を、ヘプタン/イソプロパノール(75:25)で溶出するChiralpak AD(登録商標)による分取用HPLCにより精製し、標題の化合物を2番目に溶出する主要な異性体として得た。LC−MS:448.01(M+1)。
【0215】
工程G:tert−ブチル[(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート
【0216】
【化39】

【0217】
窒素雰囲気下、室温で、工程Fからの生成物(22.5mg、0.050mmol)のTHF(5mL)中の溶液に、ボラン−硫化メチル錯体(0.10mL、0.202mmol)を加えた。混合物を1時間撹拌し、次いで、還流温度で4時間加熱した。メタノール(5mL)を加えて反応を停止し、混合物を還流温度で3時間加熱した。濃縮後、残渣を、CHCl/MeOH/アンモニア水(90/9/1)で溶出する分取用TLCにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:434.03(M+1)。
【0218】
工程H:tert−ブチル[(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−メチルピペリジン−3−アミントリス(塩酸)塩
【0219】
【化40】

【0220】
工程Gからの生成物をMeOH中の1.3M HClで1時間処理した。減圧下に濃縮し、次いで減圧下に乾燥し、所望の生成物を得た。HNMR(500MHz,CDOD):δ7.68(br,1H);7.50(br,1H);7.30(m,2H);4.75(br,4H);4.29(br,1H);4.03(br,1H);3.87(br,1H);3.80(br,1H);3.08(br,1H);2.87(br,1H);2.37(s,3H);2.18(br,1H);LC−MS:334.11(M+1)。
【0221】
実施例2
【0222】
【化41】

【0223】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−[2−(メチルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
室温で、tert−ブチル[(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート(55.5mg、0.128mmol)のジクロロメタン(5mL)中の溶液に、トリエチルアミン(0.045mL、0.320mmol)及び塩化メタンスルホニル(0.011mL、0.147mmol)を加えた。混合物を、室温で1時間撹拌した。残渣を、EtOAc/MeOH/NHOH(90/9/1)で溶出するシリカゲルによる分取用TLCにより精製し、異性体Aとして最初に溶出する異性体を、異性体Bとして二番目に溶出する異性体を得た。異性体AをTFA/CHCl=1:1で処理し、標題の化合物を得た。LC−MS:411.92(M+1)。
【0224】
【化42】

【0225】
実施例3
【0226】
【化43】

【0227】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−[2−[(トリフルオロメチル)スルホニル]−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
室温で、tert−ブチル[(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート(60mg、0.138ミリモル)のジクロロメタン(4mL)中の溶液に、トリエチルアミン(0.048mL、0.346mmol)及び塩化トリフルオロメタンスルホニル(0.029mL、0.277mmol)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。残渣を、CHCl/MeOH/NH水(95/4/1)で溶出するシリカゲルによる分取用TLCにより精製し、異性体Aとして最初に溶出する異性体を、異性体Bとして二番目に溶出する異性体を得た。異性体Aを、1:1のTFA/CHClで1時間処理し、標題の化合物を得た。 LC−MS:465.84(M+1)。
【0228】
【化44】

【0229】
実施例4
【0230】
【化45】

【0231】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−[2−(シクロプロピルスルホニル)−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル]ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
室温で、tert−ブチル[(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート(70mg、0.161mmol)のジクロロメタン(4mL)中の溶液に、トリエチルアミン(0.068mL、0.484mmol)及び塩化シクロプロパンスルホニル(0.037mL、0.363mmol)を加えた。混合物を、室温で4日間撹拌した。残渣を、CHCl/MeOH/NH水(95/4/1)で溶出するシリカゲルによる分取用TLCにより精製し、異性体Aとして最初に溶出する異性体を、異性体Bとして二番目に溶出する異性体を得た。異性体Aを、TFA/CHCl=1:1で1時間処理し、標題の化合物を得た。LC−MS:437.89(M+1)。
【0232】
【化46】

【0233】
実施例5
【0234】
【化47】

【0235】
5−[(3R,5S,6R)−5−アミノ−6−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチルピペリジン−3−イル]−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−アミンテトラキス(トリフルオロ酢酸)塩
工程A:tert−ブチル[(2R,3S,5S)−5−(3−アミノ−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル)カルバメート
【0236】
【化48】

【0237】
室温で、tert−ブチル[(2R,3S)−5−ヨード−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート(4196mg、9.0mmol)をDMF(20mL)に溶解した。2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−アミン(1241mg、10.0mmol)、次いで、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.14mL、18.00mmol)を加えた。反応物を55℃で8時間加熱した。減圧下にDMFをエバポレーションさせ、残渣を、CHCl/MeOH/NH水(5%〜15%の勾配)で溶出する、シリカゲルBiotage 65i(登録商標)によるカラムクロマトグラフィーにより精製し、異性体A、LC−MS:462.97(M+1)及び異性体B、LC−MS:463.02(M+1)を得た。
【0238】
【化49】

【0239】
工程B:tert−ブチル[(2R,3S,5R)−5−(3−アミノ−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチルピペリジン−3−イル]−カルバメート
【0240】
【化50】

【0241】
室温で、工程Aにおいて得られた異性体A(2259mg、4.88mmol)を、THF(60mL)に一部溶解した。ボラン−硫化メチル錯体(29.3mL、29.3mmol)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで5.5時間還流した。得られた溶液を室温まで冷却し、MeOH(24mL)を慎重に加え、減圧下に混合物を濃縮した。残渣をn−プロパノール(65mL)に溶解し、7時間還流し、減圧下に溶媒を除去した。残渣を、CHCl/MeOH/NH水(9%〜15%の勾配)で溶出するシリカゲルBiotage 65i(登録商標)によるカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:448.95(M+1)。
【0242】
工程C:5−[(3R,5S,6R)−5−アミノ−6−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチルピペリジン−3−イル]−2,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−アミンテトラキス(トリフルオロ酢酸)塩
【0243】
【化51】

【0244】
工程Bからの生成物を1:1のTFA/CHClで1時間処理した。減圧下、エバポレーションにより溶媒を除去し、残渣を減圧下に乾燥し、標題の化合物を得た。LC−MS:349.0(M+1)。
実施例6
【0245】
【化52】

【0246】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−(7H−ピロロ[3’,4’:3,4]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−8(9H)−イル)ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
室温で、tert−ブチル[(2R,3S,5R)−5−(3−アミノ−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチルピペリジン−3−イル]−カルバメート(42mg、0.094mmol)を酢酸(1.5mL)に溶解した。1,1,3,3−テトラメトキシプロパン(0.093mL、0.562mmol)を加えた。混合物を95℃で1.5時間加熱した。残渣を、アセトニトリル/水+0.1% TFAで溶出する分取用逆相HPLC(C−18カラム)により精製し、溶媒を除去した後、所望の生成物を得た。得られた生成物を1:1のTFA/CHClで1時間処理し、溶媒をエバポレーションさせ、粗生成物を、CHCl/MeOH/NH水(90/9/1)で溶出する分取用TLCクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:384.92(M+1)。
【0247】
実施例7
【0248】
【化53】

【0249】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−(7H−ピロロ[3’,4’:3,4]ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアジン−8(9H)−イル)ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
室温で、tert−ブチル[(2R,3S,5R)−5−(3−アミノ−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチルピペリジン−3−イル]−カルバメート(1473mg、3.28mmol)をDMF(20mL)に溶解した。混合物を−10℃まで冷却した。粉末の水酸化カリウム(1345mg、23.97mmol)を加えた。混合物を、−10℃〜0℃で20分間撹拌した。−10℃〜0℃で、ヒドロキシルアミン−O−スルホン酸(743mg、6.57mmol)を、30分間かけて8回に分けて加えた。混合物を5℃未満で45分間撹拌した。多少の沈殿物が生成した。LC−MSは、反応が完了したことを示した。エタノール(20.0mL)、次いで、グリオキサール(水中40%)(0.753mL、6.57mmol)を1分間かけて加えた。混合物を5℃未満で15分間撹拌し、室温まで加温し、45分間撹拌した。混合物を0℃まで冷却し、半飽和NHCl/食塩水(45mL)の1:1混合物を加え、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水NaSOで乾燥し、減圧下に溶媒を減少させた。残渣を、アセトニトリル/水+0.1%ギ酸で溶出する分取用逆相HPLC(C−18カラム)により精製し、所望の生成物を得、これを1:1のTFA/CHClで1時間処理した。残渣を、CHCl/EtOH/NH水(92/7/1)で溶出するシリカゲルによる分取用TLCにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:385.96(M+1)。
【0250】
実施例8
【0251】
【化54】

【0252】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(1,10−ジヒドロピロロ[3’,4’:3,4]ピラゾロ[1,5−a][1,3]ジアゼピン−9(8H)−イル)−1−メチルピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
室温で、tert−ブチル[(2R,3S,5R)−5−(3−アミノ−2,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(4H)−イル)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチルピペリジン−3−イル]−カルバメート(264mg、0.589mmol)を酢酸(3.0mL)に溶解した。スクシンアルデヒドビス(ジメチルアセタール)(0.213mL、1.177mmol)を加え、混合物を100℃で2.5時間加熱した。減圧下に溶媒をエバポレーションさせた後に得られた残渣を、アセトニトリル/水+0.1%TFAで溶出する分取用逆相HPLC(C−18カラム)により精製し、所望の生成物を得、これを1:1のTFA/CHClで1時間処理した。残渣を、CHCl/MeOH/NH水(90/9/1)で溶出するシリカゲル分取用TLCにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:398.97(M+1)。
【0253】
実施例9
【0254】
【化55】

【0255】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ−[1,5−a]ピラジン−7(8H)−イル]ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
【0256】
【化56】

【0257】
工程A:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−6−オキソ−5−[2−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン−7(8H)−イル]ピペリジン−3−イル}カルバメート
室温で、tert−ブチル[(2R,3S)−5−ヨード−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−6−オキソピペリジン−3−イル]カルバメート(560mg、1.201mmol)をDMF(5mL)に溶解した。2,2,2−トリフルオロ−N−ピラジン−2−イルアセトアミド(300mg、1.561mmol)、次いで、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.420mL、2.402mmol)を加えた。反応物を47℃で4.5時間加熱した。減圧下におけるエバポレーションによりDMFを除去し、残渣を、CHCl/MeOH/NH水(4%〜8%の勾配)で溶出するシリカゲルBiotage 25M(登録商標)によるカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:474.83(M+1)。
【0258】
工程B:(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−[2−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン−7(8H)−イル]ピペリジン−3−アミン
室温で、工程Aからの生成物(320mg、0.603mmol)を、THF(20mL)に一部溶解した。ボラン−硫化メチル錯体(3.62mL、3.62mmol)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで一晩還流した。ボラン−硫化メチル錯体(1.206mL、1.206mmol)を溶液に加え、混合物を室温で0.5時間撹拌し、次いで(65〜67℃で)6時間加熱した。メタノール(4mL)を慎重に加え、混合物を減圧下に濃縮した。残渣をn−PrOH(45mL)に溶解し、溶液を一晩還流した。残渣を、EtOAc/CHCl(0%〜60%の勾配)で溶出するシリカゲルBiotage 25M(登録商標)によるカラムクロマトグラフィーにより精製して所望の生成物を得、これを1:1のTFA/CHClで1時間処理した。残渣を、CHCl/MeOH/NH水(90/9/1)で溶出するシリカゲルによる分取用TLCにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:416.91(M+1)。
【0259】
実施例10
【0260】
【化57】

【0261】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−ベンジル−ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
工程A:トランス−6−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−ベンジル−5−ニトロピペリジン−2−オン
【0262】
【化58】

【0263】
2,5−ジフルオロベンズアルデヒド(1.09g、7.67mmol)のエタノール(20mL)中の溶液に、メチル4−ニトロブチレート(1.13g、7.04mmol)、ベンジルアミン(0.98mL、7.67mmol)、酢酸ナトリウム(1.26g、15.3mmol)及び酢酸(0.88mL、15.4mmol)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、次いで、還流温度で一晩加熱した。濃縮後、残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(3%〜50%の勾配)で溶出するカラムクロマトグラフィー(シリカゲルBiotage 40M(登録商標))により精製し、標題の化合物をラセミ体のトランス異性体として得た。LC−MS:347.1(M+1)。
【0264】
工程B:tert−ブチル{トランス2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−ベンジル−6−オキソピペリジン−3−イル}カルバメート
【0265】
【化59】

【0266】
0℃で、工程Aの生成物(0.52g、1.49mmol)のMeOH(10mL)中の溶液に、塩化ニッケル(II)六水和物(0.018g、0.075mmol)を加え、混合物を5分間撹拌し、次いで、少量の水素化ホウ素ナトリウム(0.224g、0.30mmol)で処理した。混合物を室温で30分間撹拌し、ジ−tert−ブチルジカルボネート(0.65g,2.99mmol)を加え、混合物を一晩撹拌した。溶液を減圧下に濃縮し、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(30%〜50%の勾配)で溶出するカラムクロマトグラフィー(シリカゲルBiotage 40M(登録商標))により精製し、標題の化合物をラセミ体のトランス異性体として得た。LC−MS:418.2(M+1)。
【0267】
工程C:tert−ブチル{トランス2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−ベンジル−5−ヨード−6−オキソピペリジン−3−イル}カルバメート
【0268】
【化60】

【0269】
0℃で、工程Bからの生成物(0.469g、1.13mmol)のCHCl(7mL)中の溶液に、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.54mL、3.56mmol)、次いで、ヨウ化トリメチルシリル(0.35mL、2.53mmol)を加えた。混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで、臭素(0.198g、1.24mmol)のCHCl(1.5mL)中の溶液を加えた。混合物を0℃で10分間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で水溶液の反応を停止し、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和チオ硫酸ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(5%〜30%の勾配)で溶出するカラムクロマトグラフィー(シリカゲルBiotage 40M(登録商標))により精製し、標題の化合物を得た。LC−MS:544.07(M+1)。
【0270】
工程D:tert−ブチル{トランス−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−ベンジル−6−オキソピペリジン−3−イル}カルバメート
【0271】
【化61】

【0272】
工程Dからの生成物(0.441g、0.813mmol)のDMF(4mL)中の溶液に、ピロロピラゾール(0.177g、1.62mmol)、次いで、ジイソプロピルアミン(0.568mL、3.25mmol)を加えた。混合物を55℃で12時間加熱した。室温まで冷却した後、反応物をEtOAcで希釈した。有機層を食塩水で洗浄し、濃縮し、残渣を、CHCl/EtOH/アンモニア水(90/9/1)で溶出する分取用TLCにより精製し、標題の化合物を2種のジアステレオ異性体の混合物として得た。LC−MS:524.15(M+1)。
【0273】
工程E:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−ベンジルピペリジン−3−イル}カルバメート
【0274】
【化62】

【0275】
窒素雰囲気下、室温で、工程Dからの生成物(0.19g、0.363mmol)のTHF(5mL)中の溶液に、水素化アルミニウムリチウム(1.09mL、0.217mmol)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、次いで、メタノール(5mL)で反応を停止し、室温で12時間撹拌した。反応混合物をセライトのパッドでろ過し、濃縮した。濃縮後、残渣を、CHCl/EtOH/アンモニア水(90/9/1)で溶出する分取用TLCにより精製し、標題の化合物を得た。LC−MS: 510.12 (M+1)。
【0276】
工程F:(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−ベンジル−ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
工程Eからの生成物をCHCl(2mL)中のTFA 2mLで1時間処理した。HNMR(500MHz,CDOD):δ7.68(br,1H);7.50(m,6H);7.30(m,2H);7.12(br,1H);4.71(br,4H);3.91(br,2H);3.87(br,2H);3.80(br,1H);3.41(br,1H);3.31(br,1H);3.22(br,1H);2.52(m,1H);2.31(m,1H);LC−MS:410.08(M+1)。
【0277】
実施例11
【0278】
【化63】

【0279】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]ピペリジン−3−アミントリス−(トリフルオロ酢酸)塩
工程A:トランス−6−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]−5−ニトロピペリジン−2−オン
【0280】
【化64】

【0281】
2,5−ジフルオロベンズアルデヒド(0.765mL、7.04mmol)のエタノール(15mL)中の溶液に、メチル4−ニトロブチレート(0.901mL、7.04mmol)を加え、混合物を5分間撹拌した。反応混合物に2−(2−フルオロフェニル)エチルアミン(0.87mL,7.04ミリモル)を加え、混合物を10分間撹拌した。混合物に酢酸ナトリウム(0.577g、7.04mmol)、次いで、氷酢酸(0.806mL、14.07mmol)を加え、混合物を還流温度で48時間加熱した。溶媒を減圧下に除去し、黄色の油状物質に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)を加え、水層を酢酸エチル(4×25mL)で抽出した。一緒にした有機層を飽和食塩水(1×25mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下に溶媒を除去した。黄色の油状物質を、酢酸エチル/ヘキサン(0%〜60%の勾配)で溶出するカラムクロマトグラフィー(シリカゲルBiotage 40S)により精製し、ラセミ体のトランスの標題の化合物を、黄色のガム状物質として得た。LC/MS379.2(M+1)。
【0282】
工程B:tert−ブチル{トランス2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]−6−オキソピペリジン−3−イル}カルバメート
【0283】
【化65】

実施例1、工程B及びCに記載したのと同じ方法に従い、この化合物を調製した。
【0284】
工程C:tert−ブチル{トランス2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]−5−ブロモ−6−オキソピペリジン−3−イル}カルバメート
【0285】
【化66】

実施例1、工程Dに記載したのと同じ方法に従い、この化合物を調製した。
【0286】
工程D:tert−ブチル{トランス2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]−6−オキソピペリジン−3−イル}カルバメート
【0287】
【化67】

実施例1、工程Eに記載したのと同じ方法に従い、この化合物を調製した。
【0288】
工程E:tert−ブチル{(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]ピペリジン−3−イル}カルバメート
【0289】
【化68】

【0290】
実施例1、工程F及びGに記載したのと同じ方法に従い、この化合物を調製した。
【0291】
このラセミ体生成物を、ヘプタン/イソプロパノール(90:10)で溶出する、Chiralpak AD(登録商標)による分取用HPLCにより精製し、tert−ブチル{(2S,3R,5S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]ピペリジン−3−イル}カルバメートを最初に溶出する異性体(LC/MS 542.2(M+1))として、また標題の化合物を二番目に溶出する異性体として得た。LC/MS542.2(M+1)。
【0292】
工程F:(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]ピペリジン−3−アミントリス−(トリフルオロ酢酸)塩
工程Eからの二番目に溶出する異性体に、塩化メチレン及びトリフルオロ酢酸の1:1混合物 1mLを加えた。混合物を1時間撹拌し、溶媒を減圧下に除去した。残渣を、逆相HPLC(YMC Pro−C18カラム、0%〜60%アセトニトリル/0.1% TFAを含む水の勾配溶出)により精製し、標題の化合物を非晶質固体として得た。LC/MS442.1(M+1)。
【0293】
実施例12
【0294】
【化69】

【0295】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−(2−ピリジン−2−イルエチル]ピペリジン−3−アミントリス−(トリフルオロ酢酸)塩
工程A:トランス−6−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−ニトロ−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)ピペリジン−2−オン
【0296】
【化70】

【0297】
2,5−ジフルオロベンズアルデヒド(2.29mL、21.1mmol)のエタノール(42mL)中の溶液にメチル4−ニトロブチレート(2.51mL、21.1mmol)を加え、混合物を5分間撹拌した。反応混合物に、2−ピリジン−2−イルエタンアミン(2.61mL,21.1mmol)を加え、混合物を10分間撹拌した。混合物に酢酸ナトリウム(1.73g、21.1mmol)、次いで氷酢酸(2.42mL、42.2mmol)を加え、混合物を還流温度で48時間加熱した。減圧下に溶媒を除去し、黄色の油状物質に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)を加え、水層を酢酸エチル(4×25mL)で抽出した。一緒にした有機層を飽和食塩水(1×25mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下に溶媒を除去した。黄色の油状物質を、酢酸エチル/ヘキサン(0%〜100%の勾配)で溶出するカラムクロマトグラフィー(シリカゲルBiotage 40S(登録商標))により精製し、ラセミ体のトランスの標題の化合物を黄色のガム状物質として得た。LC/MS362.2(M+1)。
【0298】
工程B:tert−ブチル{トランス2−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−オキソ−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)ピペリジン−3−イル}カルバメート
【0299】
【化71】

実施例1に記載したのと同じ方法に従い、この化合物を調製した。
【0300】
工程C:tert−ブチル{(2,3−トランス−2,5−シス)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−ヨード−6−オキソ−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)ピペリジン−3−イル}カルバメート
【0301】
【化72】

【0302】
0℃で、工程Bからの生成物(0.7g、1.62mmol)の溶液に、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.783mL、5.19mmol)を加え、次いで、ヨードトリメチルシラン(0.497mL、3.65mmol)をゆっくりと加えた。黄色の混合物を0℃で2時間撹拌し、塩化メチレン(1mL)中の臭素(0.092mL、1.78mmol)をゆっくりと加えた。混合物を10分間撹拌し、水(5mL)を加えた。混合物を酢酸エチル(25mL)で希釈し、層を分離し、有機層を、1M塩酸水溶液(10mL)、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(10mL)で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下に溶媒を除去した。粗生成物の黄色の固体の標題の化合物を更に精製することなく用いた。LC/MS558.2(M+1)。
【0303】
工程D:
工程Cからの生成物を、工程Fを以下のように実施した以外は、実施例1、工程E〜Hと基本的に同じ工程に従って反応させた:窒素雰囲気下、−70℃で、ラセミ体のtert−ブチル{(2,3−トランス−2,5−シス)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−6−オキソ−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)ピペリジン−3−イル}カルバメート(70mg、0.130mmol)のTHF(5mL)中の撹拌溶液に、水素化ジイソブチルアルミニウム(0.650mL、0.650mmol)をゆっくりと加えた。−70℃で15分間撹拌した後、得られた混合物を室温まで加温し、2.5時間撹拌を続けた。飽和硫酸ナトリウム水溶液(4mL)で反応混合物の反応を停止し、EtOAc(12mL)で希釈し、窒素雰囲気下20分間撹拌した。反応混合物をろ過し、減圧下に溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウム(89/10/1)で溶出する分取用TLCにより精製し、ラセミ体の生成物を得た。ラセミ体生成物を、ヘプタン/イソプロパノール(77:23)で溶出するChiralpak AD(登録商標)による分取用HPLCにより精製し、tert−ブチル[(2S,3R,5S)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)ピペリジン−3−イル]カルバメート(LC/MS 525.1(M+1)を最初に溶出する異性体として、また、tert−ブチル[(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−(4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−イル)−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)ピペリジン−3−イル]カルバメートを二番目に溶出する異性体として得た。
LC/MS 525.1(M+1)。
【0304】
実施例13
【0305】
【化73】

【0306】
(2R,3S,5R)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)−1−メチル−5−[3−(トリフルオロメチル)−1,4,6,7−テトラヒドロ−5H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−5−イル]ピペリジン−3−アミントリス(トリフルオロ酢酸)塩
基本的に、実施例1に記載したのと同じ方法に従い、この化合物を調製した。
【0307】
医薬製剤の実施例
経口医薬組成物の具体的な実施態様として、100mgの力価の錠剤を、実施例1 100mg、微結晶性セルロース1.268mg、クロスカルメロースナトリウム20mg及びステアリン酸マグネシウム4mgから構成する。活性成分、微結晶性セルロース及びクロスカルメロースを最初に混合する。次いで、ステアリン酸マグネシウムで混合物を潤滑にし、錠剤に圧縮する。
【0308】
本発明を、特定の実施態様を参照して開示及び説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、手順及びプロトコールの種々の適合、変更、修飾、置換、削除又は追加を実施し得ることを理解する。例えば、本明細書に前述された特定の投与量以外の有効投与量を、前述する任意の本発明の化合物により適応症が治療される哺乳動物の反応が異なる場合にも適用することができる。観察される特定の薬理学的反応は、選択される特定の活性化合物、又は薬学的担体が存在するか否か、並びに使用される製剤のタイプ及び投与方法に従って又は依存して変化する場合があり、結果におけるこのような予測される変化又は相違は、本発明の目的及び実施に従って考慮される。従って、本発明は、特許請求の範囲により定義され、このような請求項は、妥当である限り広く解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化1】

[式中、Xは、−S−、−S(O)−、−S(O)−及び−NR−からなる群から選択され;
Vは:
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

【化2−4】

からなる群から選択され;
Arは、1〜5個のR基で置換されていてもよいフェニル基であり;
各Rは、独立して、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル、
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−6アルコキシ、からなる群から選択され;
各Rは、独立して、
水素、
ヒドロキシ、
ハロゲン、
シアノ、
アルコキシが、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいC1−10アルコキシ、
アルキルが、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいC1−10アルキル、
アルケニルが、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいC2−10アルケニル、
アリールが、独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)から選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい(CH−アリール、
ヘテロアリールが、独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH−ヘテロアリール、
ヘテロシクリルが、独立してオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH−ヘテロシクリル、
シクロアルキルが、独立してハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH−C3−6シクロアルキル、
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR、及び
(CH−NRCOからなる群から選択され、ここで、(CH中の任意の個々のメチレン(CH)炭素原子は、独立してフッ素、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく、ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
3a、R3b及びR3cは、それぞれ独立して、水素、又は1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3−6シクロアルキル、及び
1−6アルキルからなる群から選択され、ここで、アルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、フェニル及びシクロアルキルは、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは、1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
又はR及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成し、ここで、前記複素環は、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
各Rは、独立してシクロプロピル又はC1−6アルキルであり、ここで、アルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく;
は水素又はRであり;
は、
水素、
−SO
(CH−フェニル、
(CH−C3−6シクロアルキル、及び
1−6アルキルからなる群から選択され、ここで、アルキルは、独立してフッ素及びヒドロキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、フェニル及びシクロアルキルは、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよく;
は:
水素、
アルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキル、
3−6シクロアルキル、
フェニルが、独立してハロゲン、C1−4アルキル、シアノ及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH1−2−フェニル、
ヘテロアリールが、独立してフッ素、シクロプロピル、C1−4アルキル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい(CH1−2−ヘテロアリール、からなる群から選択され;
各nは、独立して0、1、2又は3であり;
各mは、独立して0、1又は2であり;そして
各pは、独立して0又は1である)の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
Xが−S−、−S(O)−又は−S(O)−である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが−NR−である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
が、
1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキル、
フェニルが、独立してハロゲン、C1−4アルキル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいCH−フェニル、
フェニルが、独立してハロゲン、C1−4アルキル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいCHCH−フェニル、及び
ピリジルが、独立してハロゲン、C1−4アルキル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいCHCH−ピリジル、からなる群から選択される、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
がメチルである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Vが、
【化3】

からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
3a、R3b及びR3cが、それぞれ水素である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
Vが、
【化4】

からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
3a、R3b及びR3cが、それぞれ水素である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
Vが、
【化5】

からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
3a及びR3bが、それぞれ水素である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
Vが、
【化6】

からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
3a及びR3bが、それぞれ水素である、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
Vが、
【化7】

からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
Arが、独立してフッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
Arが2,5−ジフルオロフェニル又は2,4,5−トリフルオロフェニルである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
が、独立して、
水素、
アミノ、
アルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキル、及び
シクロアルキルが、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいC3−6シクロアルキル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項18】
各Rが、独立して水素、アミノ、C1−3アルキル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びシクロプロピルからなる群から選択される、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
が:
水素、
−SO
アルキルが1〜5個のフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキル、及び
シクロアルキルが、独立してハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいC3−6シクロアルキル(ここで、アルキル及びアルコキシは1〜5個のフッ素で置換されていてもよい)からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項20】
各Rが、水素、C1−3アルキル、メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル及びシクロプロピルメタンスルホニルからなる群から選択される、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
*で印を付けた2個の不斉炭素原子において、表示した立体配置を有する、構造式Ia又はIbで表わされる、請求項1記載の化合物。
【化8】

【請求項22】
*で印を付けた2個の不斉炭素原子において、表示した絶対立体配置を有する、構造式Iaで表わされる、請求項21記載の化合物。
【化9】

【請求項23】
*で印を付けた3個の不斉炭素原子において、表示した立体配置を有する、構造式Ic及びIdで表わされる、請求項21記載の化合物。
【化10】

【請求項24】
*で印を付けた3個の不斉炭素原子において、表示した絶対立体配置を有する、構造式Icで表わされる、請求項23記載の化合物。
【化11】

【請求項25】
*で印を付けた3個の不斉炭素原子において、表示した立体配置を有する、構造式Ie及びIfで表わされる、請求項21記載の化合物。
【化12】

【請求項26】
*で印を付けた3個の不斉炭素原子において、表示した絶対立体配置を有する、構造式Ieで表わされる、請求項25記載の化合物。
【化13】

【請求項27】
請求項1記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項28】
インシュリン抵抗性、高血糖症、2型糖尿病及び肥満症からなる群から選択される病状の治療の必要な哺乳動物において、前記病状の治療に用いる医薬の製造における請求項1記載の化合物の使用。
【請求項29】
更にメトホルミンを含む、請求項27記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−536853(P2010−536853A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521859(P2010−521859)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/009838
【国際公開番号】WO2009/025784
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】