説明

糖尿病の治療又は予防のためのジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターとしてのアミノテトラヒドロピラン

本発明は構造式Iの新規置換アミノテトラヒドロピランを対象とし、これは、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素のインヒビターであり、糖尿病、特に2型糖尿病のような、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素が関与する疾患の治療又は予防に有用である。本発明は、また、これらの化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼIV酵素が関与する疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用を対象とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規置換アミノテトラヒドロピランに関し、これは、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素のインヒビター(「DPP−4インヒビター」)であり、糖尿病、特に2型糖尿病のような、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素が関与する疾患の治療又は予防に有用である。本発明は、また、これらの化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼIV酵素が関与する疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、複数の原因因子に由来する疾患過程であり、絶食時又は経口グルコース負荷試験の際のグルコースの投与後での血漿グルコースレベルの上昇又は高血糖により特徴づけられる。持続的又は制御不能な高血糖は、高い早期の罹患率及び死亡率に関連している。多く場合に異常なグルコースホメオスタシスが、脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質の代謝の変化、並びに他の代謝疾患及び血行動態疾患に、直接的にも間接的にも関連している。したがって、2型糖尿病の患者では、冠動脈性心疾患、発作、末梢血管疾患、高血圧症、腎症、神経障害及び網膜症を含む、大血管及び微小血管の合併症の危険性が特に増加する。したがって、グルコースホメオスタシス、脂質代謝及び高血圧の治療は、糖尿病の臨床管理及び治療において極めて重要である。
【0003】
一般的に認識されている2つの糖尿病の形態がある。1型糖尿病すなわちインスリン依存性糖尿病(IDDM)では、患者は、グルコース利用を調節するホルモンであるインスリンをほとんど又は全く産生しない。2型糖尿病すなわちインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)では、患者は多くの場合で非糖尿病被験者と比べて同じか又は上昇さえしている血漿インスリン濃度を有するが、これらの患者は、主要なインスリン感受性組織である、筋肉、肝臓及び脂肪組織において、グルコース及び脂質代謝に対するインスリン刺激作用に抵抗性を示し、血漿インスリン濃度が高くても、顕著なインスリン抵抗性を克服するには不十分である。
【0004】
インスリン抵抗性は、主に、インスリンレセプターの数が減少することに起因するのではなく、未だに理解されていない、インスリンレセプター結合後欠陥に起因する。このインスリンの応答性に対する抵抗性は、筋肉内へのグルコースの取り込み、酸化及び貯蔵における不十分なインスリンの活性化、並びに脂肪組織における脂質分解及び肝臓におけるグルコース産生並びに不適切な分泌のインスリンによる抑制をもたらす。
【0005】
長年実質的に変わっていない2型糖尿病に利用可能な治療には限界があることが認識されている。運動及び食事カロリー摂取量の低減は、糖尿病の状態を劇的に改善するが、この治療のコンプライアンスは、十分に定着した座りがちな生活習慣及び過剰食物消費、特に多量の飽和脂肪を含有する食物の消費のため、極めて不十分である。膵臓β細胞を刺激してより多くのインスリンを分泌させるスルホニル尿素(例えば、トルブタミド及びグリピシド)又はメグリチニドの投与によりインスリンの血漿レベルを上昇すること、及び/又はスルホニル尿素若しくはメグリチニドの効果がなくなったときに、インスリンの注入によって、まさにインスリン抵抗性組織を刺激するのに十分に高い濃度のインスリンをもたらすことができる。しかし、危険なほど低いレベルの血漿グルコースが、インスリン又はインスリン分泌促進薬(スルホニル尿素又はメグリチド)の投与によりもたらされ、より高い血漿インスリンレベルに起因するより増大したレベルのインスリン抵抗性が生じる可能性がある。ビグアナイド剤はインスリン感受性を増大し、高血糖にいくらかの修正をもたらす。しかし、2つのビグアニド剤、フェンホルミン及びメトホルミンは、乳酸アシドーシス及び嘔気/下痢を誘導する可能性がある。メトホルミンは、フェンホルミンよりも少ない副作用を有し、2型糖尿病の治療においてしばしば処方されている。
【0006】
グリタゾン(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は、2型糖尿病の多くの症状を改善する可能性のある最近になって記載されている種類の化合物である。これらの作用物質は、幾つかの2型糖尿病の動物モデルにおいて、筋肉、肝臓及び脂肪組織でインスリン感受性を実質的に増加し、低血糖症を起こすことなく、上昇したグルコース血漿レベルに部分的又は完全な修正をもたらす。現在市販されているグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)、主にPPARガンマサブタイプのアゴニストである。PPARガンマアゴニズムは、一般に、グリタゾンで観察される改善されたインスリン感作の原因であると考えられる。II型糖尿病の治療のために試験されているより新しいPPARアゴニストは、アルファ、ガンマ若しくはデルタサブタイプ、又はこれらの組み合わせのアゴニストであり、多くの場合、グリタゾンと化学的に異なっている(すなわち、これらはチアゾリジンジオンではない)。重篤な副作用(例えば、肝臓毒性)が、トログリタゾンのような一部のグリタゾンで生じている。
【0007】
この疾患を治療する追加的な方法は、依然として研究中である。最近導入された又は依然として開発中の新たな生化学的手法には、アルファ−グルコシダーゼインヒビター(例えば、アカルボース)及びタンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)インヒビターを用いた治療が挙げられる。
【0008】
ジペプチジルペプチダーゼIV(「DPP−4」)酵素のインヒビターである化合物は、また、糖尿病、特に2型糖尿病の治療に有用でありうる薬剤として研究中である。WO97/40832;WO98/19998;米国特許第5,939,560号、米国特許第6,303,661号;米国特許第6,699,871号;米国特許第6,166,063号;Bioorg.Med.ChemLett.,6:1163−1166(1996);Bioorg.Med.Chem.Lett.,6:2745−2748(1996);Ann E.Weber,J.Med.Chem.,47:4135−4141(2004);D.Kim,et al.,J.Med.Chem.,48:141−151(2005)、及びK.Augustyns,Exp.Opin.Ther.Patents,15:1387−1407(2005)を参照されたい。2型糖尿病の治療におけるDPP−4インヒビターの有用性は、DPP−4がin vivoでグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)及び胃阻害性ペプチド(GIP)を容易に不活性化するという事実に基づいている。GLP−1及びGIPはインクレチンであり、食物が消費されたときに生成される。インクレチンは、インスリンの生成を刺激する。DPP−4の阻害は、インクレチンの不活性化の減少をもたらし、このことは、次に膵臓によるインスリンの生成を刺激するインクレチンの有効性の増大をもたらす。したがって、DPP−4の阻害は血清インスリンレベルの増加をもたらす。有利なことには、インクレチンは食物が消費されたときだけ体によって生成されるので、DPP−4の阻害は、過剰な低血糖をもたらす可能性がある(低血糖症)食事の間のような不適切なときにインスリンレベルを増加するとは予測されない。したがって、DPP−4の阻害は、インスリン分泌促進薬の使用に関連する危険な副作用である低血糖症の危険性を増加することなく、インスリンを増加することが予測される。
【0009】
DPP−4インヒビターは、本明細書に記載されているように、他の治療有効性も有する。DPP−4インヒビターは、現在まで広範に研究されておらず、特に糖尿病以外の有効性に関して研究されていない。改善されたDPP−4インヒビターを糖尿病、並びに他の潜在的な疾患及び状態の治療のために見出すことができるような、新たな化合物が必要である。特に、静止細胞プロリンジペプチダーゼ(QPP)、DPP8及びDPP9を含むセリンペプチダーゼのファミリーの他のメンバー(G.Lankas,et al.,“Dipeptidyl Peptidase−IV Inhibition for the Treatment of Type 2 Diabetes,”Diabetes,54:2988−2994(2005)を参照)よりも選択的であるDPP−4インヒビターが必要である。2型糖尿病の治療におけるDPP−4インヒビターの治療可能性は、D.J.DruckerによりExp.Opin.Invest.Drugs,12:87−100(2003)において、K.Augustyns,et al.によりExp.Opin.Ther.Patents,13:499−510(2003)において、J.J.HolstによりExp.Opin.Emerg.Drugs,9:155−166(2004)において、H.−U.DemuthによりBiochim.Biophys.Acta,1751:33−44(2005)において、R.MentleinによりExp.Opin.Invest.Drugs,14:57−64(2005)において考察されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は新規置換3−アミノテトラヒドロピランを対象とし、これは、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素(「DPP−4インヒビター」)インヒビターであり、糖尿病、特に2型糖尿病のような、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素が関与する疾患の治療又は予防に有用である。本発明は、また、これらの化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼIV酵素が関与する疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIVのインヒビターとして有用である新規置換3−アミノテトラヒドロピランに関する。本発明の化合物は、構造式I:
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、
nは、それぞれ独立して、0、1、2又は3であり;
Vは、
【0014】
【化2】

【0015】
からなる群より選択され;
Arは、1〜5つのR置換基で置換されていてもよいフェニルであり;
は、それぞれ独立して、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1〜5つのフッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル、及び
1〜5つのフッ素で置換されていてもよいC1−6アルコキシ
からなる群より選択され;
は、それぞれ独立して、
水素、
ヒドロキシ、
ハロゲン、
シアノ、
アルコキシが、フッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい、C1−10アルコキシ、
アルキルが、フッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい、C1−10アルキル、
アルケニルが、フッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい、C2−10アルケニル、
アリールが、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−アリール、
ヘテロアリールが、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−ヘテロアリール、
ヘテロシクリルが、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−ヘテロシクリル、
シクロアルキルが、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−C3−6シクロアルキル、
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR、及び
(CH−NRCO
からなる群より選択され;
ここで、(CH中の個別のメチレン(CH)炭素原子は、いずれも、フッ素、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立して選択される1〜2つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシは、1〜5つのフッ素で置換されていてもよく;
3a及びR3bは、それぞれ独立して、水素、又は1〜5つのフッ素で置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3−6シクロアルキル、及び
アルキルが、フッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい、C1−6アルキルからなる群より選択され、ここで、フェニル及びシクロアルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5つのフッ素で置換されていてもよいか;或いは
及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成し、ここで、該複素環は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5つのフッ素で置換されていてもよく;
は、それぞれ独立してC1−6アルキルであり、ここでアルキルは、フッ素及びヒドロキシルから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよく;
は、水素又はRである〕及びその薬学的に許容される塩によって記載される。
【0016】
本発明の化合物の第1の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシからなる群より選択される。
【0017】
本発明の化合物の第2の実施形態において、R3a及びR3bは、共に水素である。
【0018】
本発明の化合物の第3の実施形態において、を付けた2つの立体形成(stereogenic)テトラヒドロピラン炭素原子でAr及びNH置換基のトランス配置を有する立体化学配置が示されている構造式Ia及びIb:
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、Ar及びVは上記で記載されたとおりである)で示される化合物が提供される。
【0021】
この第3の実施形態の部類において、を付けた2つの立体形成(stereogenic)テトラヒドロピラン炭素原子でAr及びNH置換基のトランス配置を有する絶対立体化学配置が示されている構造式Iaの化合物が提供される。
【0022】
【化4】

【0023】
この第3の実施形態の第2の部類において、を付けた3つの立体形成(stereogenic)テトラヒドロピラン炭素原子で、Ar及びNH置換基のトランス配置、Ar及びV置換基のトランス配置、並びにNH及びV置換基のシス配置を有する立体化学配置が示されている構造式Ic及びIdの化合物が提供される。
【0024】
【化5】

【0025】
この部類の下位分類において、を付けた3つの立体形成(stereogenic)テトラヒドロピラン炭素原子で、Ar及びNH置換基のトランス配置、Ar及びV置換基のトランス配置、並びにNH及びV置換基のシス配置を有する絶対立体化学配置が示されている構造式Icの化合物が提供される。
【0026】
【化6】

【0027】
この下位分類の下位分類において、Vは、
【0028】
【化7】

【0029】
からなる群より選択され、ここでRはそれぞれ上記で定義されたとおりである。
【0030】
この下位分類の更なる下位分類において、Vは、
【0031】
【化8】

【0032】
であり、ここでRは、水素、メチル、トリフルオロメチル及びシクロプロピルからなる群より選択される。
【0033】
この第3の実施形態の第3の部類において、を付けた3つの立体形成(stereogenic)テトラヒドロピラン炭素原子で、Ar及びNH置換基のトランス配置、Ar及びV置換基のシス配置、並びにNH及びV置換基のトランス配置を有する立体化学配置が示されている構造式Ie及びIfの化合物が提供される。
【0034】
【化9】

【0035】
この部類の下位分類において、を付けた3つの立体形成(stereogenic)テトラヒドロピラン炭素原子で、Ar及びNH置換基のトランス配置、Ar及びV置換基のシス配置、並びにNH及びV置換基のトランス配置を有する絶対立体化学配置が示されている構造式Ieの化合物が提供される。
【0036】
【化10】

【0037】
この下位分類の下位分類において、Vは、
【0038】
【化11】

【0039】
からなる群より選択され、ここでRはそれぞれ上記で定義されたとおりである。
【0040】
この下位分類の更なる下位分類において、Vは、
【0041】
【化12】

【0042】
であり、ここでRは、水素、メチル、トリフルオロメチル及びシクロプロピルからなる群より選択される。
【0043】
本発明の化合物の第4の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、
水素、
アルキルが、1〜5つのフッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル、及び
シクロアルキルが、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−C3−6シクロアルキルからなる群より選択され;
ここで、(CH中の個別のメチレン(CH)炭素原子は、いずれも、非置換であるか又はフッ素、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立して選択される1〜2個の基で置換されており、ここでアルキル及びアルコキシは1〜5つのフッ素で置換されていてもよい。
【0044】
本発明の化合物の第4の実施形態の部類において、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル、トリフルオロメチル及びシクロプロピルからなる群より選択される。
【0045】
ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターとして有用な本発明の化合物の非限定的な例は、3つの立体形成(stereogenic)テトラヒドロピラン炭素原子で絶対立体化学配置が示されている以下の構造式:
【0046】
【化13】

【0047】
並びにそれらの薬学的に許容される塩である。
【0048】
本明細書で使用されるとき、以下の定義が適用される。
【0049】
「アルキル」並びにアルコキシ及びアルカノイルのような接頭辞「アルク(alk)」を有する他の基は、炭素鎖が別なように定義されていない限り、直鎖又は分岐鎖及びその組み合わせでありうる炭素鎖を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどが挙げられる。炭素原子の特定の数が許される場合、例えばC3−10の場合、アルキルという用語には、シクロアルキル基、及びシクロアルキル構造と組み合わされる直鎖又は分岐鎖アルキル鎖の組み合わせも挙げられる。炭素原子の数が特定されない場合は、C1−6が意図される。
【0050】
「シクロアルキル」は、アルキルのサブセットであり、炭素原子の特定の数を有する飽和炭素環を意味する。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。シクロアルキル基は、特に記載されない限り、一般に単環式である。シクロアルキル基は、特に定義されない限り、飽和である。
【0051】
用語「アルコキシ」は、炭素数が特定されている(例えば、C1−10アルコキシ)又はこの範囲内の任意の数〔すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシなど〕の直鎖又は分岐鎖アルコキシドを意味する。
【0052】
用語「アルキルチオ」は、炭素数が特定されている(例えば、C1−10アルキルチオ)又はこの範囲内の任意の数〔すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオなど〕の直鎖又は分岐鎖アルキルスルフィドを意味する。
【0053】
用語「アルキルアミノ」は、炭素数が特定されている(例えば、C1−6アルキルアミノ)又はこの範囲内の任意の数〔すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノなど〕の直鎖又は分岐鎖アルキルアミンを意味する。
【0054】
用語「アルキルスルホニル」は、炭素数が特定されている(例えば、C1−6アルキルスルホニル)又はこの範囲内の任意の数〔すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど〕の直鎖又は分岐鎖アルキルスルホンを意味する。
【0055】
用語「アルキルオキシカルボニル」は、炭素数が特定されている(例えば、C1−6アルキルオキシカルボニル)又はこの範囲内の任意の数〔すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニル又はブチルオキシカルボニル〕の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖又は分岐鎖エステルを意味する。
【0056】
「アリール」は、炭素環原子を含む単環式又は多環式芳香族環系を意味する。好ましいアリールは、単環式又は二環式6員〜10員芳香族環系である。フェニル及びナフチルが好ましいアリールである。最も好ましいアリールはフェニルである。
【0057】
用語「ヘテロシクリル」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、酸化形態の硫黄、すなわちSO及びSOを更に含む飽和又は不飽和の非芳香族環又は環系を意味する。複素環の例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリン、ピロリジノン、オキサゾリジン−2−オン、イミダゾリジン−2−オン、ピリドンなどが挙げられる。
【0058】
「ヘテロアリール」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む、芳香族又は部分的に芳香族の複素環を意味する。ヘテロアリールには、アリール、シクロアルキル及び芳香族ではない複素環などの他の種類の環に縮合しているヘテロアリールも挙げられる。ヘテロアリール基の例には、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、2−オキソ−(1H)−ピリジニル(2−ヒドロキシ−ピリジニル)、オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリジニル、〔1,2,4−トリアゾロ〕〔4,3−a〕ピリジニル、ピラゾロ〔1,5−a〕ピリジニル、〔1,2,4−トリアゾロ〕〔1,5−a〕ピリジニル、2−オキソ−1,3−ベンゾオキサゾリル、4−オキソ−3H−キナゾリニル、3−オキソ−〔1,2,4〕−トリアゾロ〔4,3−a〕−2H−ピリジニル、5−オキソ−〔1,2,4〕−4H−オキサジアゾリル、2−オキソ−〔1,3,4〕−3H−オキサジアゾリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾリル、3−オキソ−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾリルなどが挙げられる。ヘテロシクリル及びヘテロアリール基には、3〜15個の原子を含む環及び環系が挙げられ、1〜3個の環を形成する。
【0059】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。塩素及びフッ素が一般に好ましい。フッ素は、ハロゲンがアルキル又はアルコキシ基で置換されている場合に最も好ましい(例えば、CFO及びCFCHO)。
【0060】
本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心を含み、したがって、ラセミ化合物、ラセミ混合物、単独の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物及び個別のジアステレオマーとして生じることができる。特に、本発明の化合物は、式Ia、Ib、Ic、Id、Ie及びIfにおいてを付けた立体形成(stereogenic)炭素原子で不斉中心を有する。追加的な不斉中心が、分子の多様な置換基の性質に応じて存在することができる。そのような不斉中心は、それぞれ独立して、2つの光学異性体を生じ、混合物中の可能な光学異性体及びジアステレオマー、並びに純粋又は部分的に精製された化合物は、全て本発明の範囲内に含まれることが意図される。本発明は、これら化合物のそのような異性体形態を全て包含することを意味する。
【0061】
本明細書で記載される化合物の幾つかは、特に指定のない限り、オレフィン性二重結合を含有し、それは、EとZの両方の幾何異性体を含むことを意味する。
【0062】
本明細書に記載される幾つかの化合物は、互変異性体として存在することができ、それは、1つ以上の二重結合シフトを伴う水素の異なる結合点を有する。例えば、ケトン及びそのエノール形態は、ケト−エノール互変異性体である。個別の互変異性体、並びにその混合物は、本発明の化合物に包含される。
【0063】
式Iは、好ましい立体化学のない化合物の部類の構造を示す。式Ia及びIbは、テトラヒドロピラン環のNH及びAr基が結合している立体形成(stereogenic)炭素原子で好ましい立体化学を示す。式Ic及びIdは、テトラヒドロピラン環のNH、Ar及びV基が結合している立体形成(stereogenic)炭素原子で好ましい立体化学を示す。
【0064】
これらのジアステレオマーの個別の合成又はクロマトグラフ分離は、本明細書に開示されている方法論の適切な変更により、当該技術で知られているようにして達成することができる。これらの絶対立体化学は、既知の絶対配置の不斉中心を含む試薬を用いて、結晶質生成物又は必要であれば誘導体化された結晶質中間体のX線結晶学により決定することができる。
【0065】
望ましい場合、化合物のラセミ混合物を、個別の鏡像異性体が単離するように分離することができる。この分離は、化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物とカップリングして、ジアステレオマー混合物を形成すること、続いて個別のジアステレオマーを分別結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的な方法により分離することのような、当該技術で周知の方法により実施することができる。カップリング反応は、多くの場合、鏡像異性的に純粋な酸又は塩基を使用して塩を形成する。次にジアステレオマー誘導体を、添加したキラル残基の開裂により純粋な鏡像異性体に変換することができる。化合物のラセミ混合物を、キラル固定相を利用するクロマトグラフィー法により直接分離することもでき、この方法は当該技術においてよく知られている。
【0066】
あるいは、化合物の任意の鏡像異性体を、当該技術で周知の方法により光学的に純粋な出発材料又は既知の立体配置の試薬を使用して、立体選択的合成によって得ることができる。
【0067】
本明細書で使用されるとき、構造式Iの化合物に参照されるものには、薬学的に許容される塩も含まれ、また、遊離化合物に対する前駆体として使用される場合は、薬学的に許容されない塩、又はその薬学的に許容される塩若しくは他の合成的に操作されたものが含まれることを意味することが理解される。
【0068】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。用語「薬学的に許容される塩」は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩を意味する。用語「薬学的に許容される塩」の範囲内に包含される塩基性化合物の塩は、本発明の化合物の非毒性塩を意味し、これは、一般に遊離塩基を適切な有機又は無機酸と反応させて調製される。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムケート、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモエート(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシレート、トリエチオジド及び吉草酸塩。更に、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、その適切な薬学的に許容される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを含む無機塩基から誘導される塩が挙げられるが、これらに限定はされない。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、第一級、第二級及び第三級アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。
【0069】
また、カルボン酸(−COOH)又はアルコール基が本発明の化合物に存在する場合、メチル、エチル若しくはピバロイルオキシメチルのようなカルボン酸誘導体、又はO−アセチル、O−ピバロイル、O−ベンゾイル及びO−アミノアシルのようなアルコールのアシル誘導体の薬学的に許容されるエステルを用いることができる。含まれるものは、持続性放出又はプロドラッグ製剤として使用される、可溶性又は加水分解特性を変更することが当該技術で知られているエステル及びアシル基である。
【0070】
構造式Iの化合物の溶媒和物、特に水和物も同様に本発明に含まれる。
【0071】
本発明を例示するものは、実施例及び本明細書に開示されている化合物の使用である。
【0072】
主題の化合物は、化合物の有効量を投与することを含む、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素の阻害を、そのような阻害の必要性のある哺乳動物のような患者で行う方法において有用である。本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性のインヒビターとして明細書に開示されている化合物の使用を対象とする。
【0073】
ヒトのような霊長類に加えて、多様な他の哺乳動物を本発明の方法に従って処置することができる。例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット又は他のウシ科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、齧歯類、若しくはネズミ科の種が挙げられるが、これらに限定はされない哺乳動物を処置することができる。しかし、本方法は、鳥類(例えば、ニワトリ)のような他の種で実施することもできる。
【0074】
本発明は、更に、本発明の化合物を薬学的に許容される担体又は稀釈剤と組み合わせることを含む、ヒト及び動物においてジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性を阻害する薬剤の製造方法を対象とする。より詳細には、本発明は、哺乳動物において高血糖症、2型糖尿病、肥満及び脂質障害からなる群より選択される状態を治療するのに使用する薬剤の製造における構造式Iの化合物の使用を対象とし、ここで脂質障害は、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群より選択される。
【0075】
本発明の方法で治療される被験者は、一般に、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害が望ましい、哺乳動物、好ましくは男性又は女性のヒトである。用語「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により追求される組織、系、動物又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応を誘発する、主題化合物の量を意味する。
【0076】
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、特定の量で特定の成分を含む生成物、並びに特定の量で特定の成分の直接的又は間接的な組み合わせによりもたらされる任意の生成物を包含する。医薬組成物に関するそのような用語は、活性成分及び担体を構成する不活性成分を含む生成物を包含し、並びに任意の2つ以上の成分の組み合わせ、錯化若しくは凝集、又は1つ以上の成分の解離、又は1つ以上の成分の他の種類の反応、若しくは相互作用により、直接的又は間接的にもたらされるあらゆる生成物を包含することを意図する。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を薬学的に許容される担体と混合して作製されるあらゆる組成物を包含する。「薬学的に許容される」とは、担体、稀釈剤又は賦形剤は、製剤の他の成分と適合性がなければならず、摂取者に有害であってはならないことを意味する。
【0077】
化合物の「投与」又は化合物を「投与する」という用語は、本発明の化合物又は本発明化合物のプロドラッグを治療の必要性がある個人に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0078】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性のインヒビターとしての本発明の化合物の有用性は、当該技術で既知の方法論によって実証することができる。阻害定数は以下のように決定される。DPP−4で開裂されて蛍光AMC遊離基を放出する基質Gly−Pro−AMCよって、連続蛍光定量分析を用いた。この反応を記載する動力学的パラメーターは以下である:K=50μM;kcat=75s−1;kcat/K=1.5×10−1−1。典型的な反応は、およそ50pMの酵素、50μMのGly−Pro−AMC及び緩衝剤(100mMのHEPES、pH7.5、0.1mg/mLのBSA)を総反応容量の100μlで含む。AMCの放出は、励起波長360nm及び発光波長460nmを使用して96ウエルプレート蛍光光度計において連続的にモニタリングした。これらの条件下で、およそ0.8μMのAMCが25℃、30分間で生成された。これらの研究で使用した酵素は、バキュロウイルス発現系(Bac−To−Bac,Gibco BRL)で産生される可溶性(膜貫通ドメイン及び細胞質延長を除く)ヒトタンパク質であった。Gly−Pro−AMC及びGLP−1の加水分解の動力学的定数は、天然の酵素についての文献での値と一致していることが見出された。化合物の解離定数を測定するために、DMSO中のインヒビターの溶液を、酵母及び基質を含む反応に加えた(最終DMSO濃度は1%である)。全ての実験は、上記で記載された標準的反応条件を使用して、室温で実施された。解離定数(K)を決定するために、反応速度を競合的阻害のミカエリス−メンテン式に非直線回帰により適合した。解離定数の再現における誤差は、典型的には2倍未満である。
【0079】
特に、以下の実施例の化合物は、上記のアッセイにおいて、一般に約1μM未満のIC50でジペプチジルペプチダーゼIV酵素を阻害する活性を有した。そのような結果は、ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性のインヒビターとして使用される本化合物の固有の活性を示す。
【0080】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素(DPP−4)は細胞表面タンパク質であり、広範な生物学的機能に関与してきた。それは、広範な組織分布を有し(腸、腎臓、肝臓、膵臓、胎盤、胸腺、脾臓、上皮細胞、血管内皮、リンパ系及び骨髄細胞、血清)、特定の組織及び細胞型発現レベルを有する。DPP−4は、T細胞活性化マーカーCD26と同一であり、多数の免疫調節ペプチド、内分泌ペプチド及び神経ペプチドをin vitroで開裂することができる。これは、ヒト又は他の種での多様な疾患の進行におけるこのペプチダーゼの潜在的な役割を示唆している。
【0081】
したがって、主題化合物は、以下の疾患、障害及び症状の予防又は治療の方法に有用である。
II型糖尿病及び関連する障害:インクレチンGLP−1及びGIPは、DPP−4によりin vivoで急速に不活性化されることが十分に確立されている。DPP−4(−/−)欠損マウスを用いた研究及び予備臨床試験は、DPP−4阻害がGLP−1及びGIPの定常状態濃度を増加させ、グルコース耐性の改善をもたらすことを示す。GLP−1及びGIPと同様に、グルコース調節に関与する他のグルカゴンファミリーペプチドもDPP−4により不活性化される可能性がある(例えば、PACAP)。DPP−4によるこれらのペプチドの不活性化は、グルコースホメオスタシスにおいても役割を演じる場合がある。したがって、本発明のDPP−4インヒビターは、II型糖尿病の治療において、並びに症候群X(代謝症候群としても知られている)、反応性低血糖症及び糖尿病性脂質異常症を含む、多くの場合にII型糖尿病に伴って起こる多数の症状の治療及び予防において有用である。下記で考察される肥満は、本発明の化合物による治療に反応しうる、II型糖尿病でしばしば見出される別の症状である。
【0082】
以下の疾患、障害及び状態は2型糖尿病に関連し、したがって、本発明の化合物による治療で治療、制御、又は幾つかの場合では予防することができる:(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローマ性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸管症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性症状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)X症候群、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、並びにインスリン抵抗性が成因である他の疾患。代謝症候群としても知られているX症候群において、肥満は、インスリン抵抗性、糖尿病、異脂肪血症、高血圧症及び心血管の危険性の増大を促進すると考えられる。したがって、DPP−4インヒビターは、この症状に関連する高血圧症の治療にも有用でありうる。
肥満:DPP−4インヒビターは、肥満の治療に有用でありうる。これは、GLP−1及びGLP−2の食物摂取及び胃排出に対して観察された阻害効果に基づいている。ヒトへのGLP−1の外因性投与は、有意に食物摂取を減少させ、胃排出を遅延させる(Am.J.Physiol.,277:R910−R916(1999))。ラット及びマウスへのGLP−1のICV投与も、食餌摂取に対して顕著な効果を有する(Nature Medicine,2:1254−1258(1996))。この食餌摂取の阻害は、GLP−1R(−/−)マウスでは観察されず、これらの効果は脳GLP−1レセプターを通して仲介されていることを示す。GLP−1と同様に、GLP−2もDPP−4によって調節されている可能性がある。GLP−2のICV投与も、GLP−1で観察された効果と同様に食餌摂取を阻害する(Nature Medicine,6:802−807(2000))。加えて、DPP−4欠損マウスによる研究は、これらの動物が食餌誘発肥満及び関連する病理(例えば、高インスリン血症)に抵抗性であることを示唆している。
心血管疾患:GLP−1は、急性心筋梗塞の後で患者に投与する場合に有益であることが示されており、一次血管形成(術)の後に左心室機能の改善及び死亡率の低減がもたらされる(Circulation,109:962−965(2004))。GLP−1投与は、拡張型心筋症イヌにおける左心室収縮不全及び虚血性誘発左心室不全の治療にも有用であり、したがって、心不全の患者の治療において有用であることを証明することができる(米国特許第2004/0097411号)。DPP−4インヒビターは、内在性GLP−1を安定化する能力によって同様の効果を示すことが予測される。
成長ホルモン欠乏症:DPP−IV阻害は、下垂体前葉から成長ホルモンの放出を刺激するペプチドである、成長ホルモン放出因子(GRF)が、DPP−4酵素によりin vivoで開裂されるという仮説に基づいて、成長ホルモン欠乏症の治療に有用でありうる(WO00/56297)。以下のデータは、GRFが内在性基質であるという証拠を提供する:(1)GRFはin vitroで効率的に開裂され、不活性生成物GRF〔3−44〕を生成する(BBA 1122:147−153(1992));(2)GRFは血漿で急速に分解されて、GRF〔3−44〕となる;これは、DPP−4インヒビタージプロチンAにより防止される;(3)GRF〔3−44〕は、ヒトGRFトランスジェニックブタの血漿で見出される(J.Clin.Invest.,83:1533−1540(1989))。したがって、DPP−4インヒビターは、成長ホルモン分泌促進薬が考慮される適応症と同じ範囲において有用でありうる。
腸管障害:腸管障害の治療にDPP−4インヒビターを使用する可能性は、DPP−4の内在性基質の可能性があるグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)が、腸管上皮に栄養効果を示す場合があることを指摘する研究の結果により示唆される(Regulatory Peptides,90:27−32(2000))。GLP−2の投与は、齧歯類で小腸量の増大をもたらし、大腸炎及び腸炎の齧歯類モデルにおいて腸管障害の減少をもたらす。
免疫抑制:DPP−4阻害は、DPP−4酵素がT細胞活性及びケモカインプロセッシングに関与していることについて、並びに疾患のin vivoモデルにおけるDPP−4インヒビターの効能についての研究に基づいて、免疫系の調節に有用でありうる。DPP−4は、活性化された免疫細胞の細胞表面マーカーであるCD26と同一であることが示されている。CD26の発現は、免疫細胞の分化及び活性化状態によって調節される。CD26はT細胞活性化のin vitroモデルで共刺激分子として機能することが、一般的に受け入れられている。多数のケモカインは、おそらく非特異性アミノペプチダーゼによる分解から保護するために、最後から2番目の位置にプロリンを含む。これらの多くは、DPP−4によりin vitroで処理されることが示されている。幾つかの場合において(RANTES、LD78−ベータ、MDC、エオタキシン、SDF−1アルファ)、開裂は、走化性及びシグナリングアッセイにおいて変化した活性をもたらす。レセプター選択性も、幾つかの場合において(RANTES)修飾されると考えられる。DPP−4加水分解の予測された生成物を含む、多数のケモカインの複数のN末端切断型が、in vitro細胞培養系で同定されている。
【0083】
DPP−4インヒビターは、移植及び関節炎の動物モデルにおいて有効な免疫抑制剤であることが示されている。DPP−4の非可逆的インヒビターである、プロジピン(プロ−プロ−ジフェニル−ホスホネート)は、ラットで7日目から14日目までに心臓同種移植の生存期間を二倍にしたことを示した(Transplantation,63:1495−1500(1997))。DPP−4インヒビターが、ラットでコラーゲン及びアルキルジアミン誘発関節炎について試験され、このモデルにおいて後足膨張を統計的に有意に減少することを示した〔Int.J.Immunopharmacology,19:15−24(1997)及びImmunopharmacology,40:21−26(1998)〕。DPP−4は、リュウマチ様関節炎、多発性硬化症、グレーブス病及び橋本甲状腺炎を含む、多数の自己免疫性疾患において上方制御される(Immunology Today,20:367−375(1999))。
HIV感染:DPP−4阻害は、HIV細胞進入を阻害する多数のケモカインがDPP−4の基質として可能性があるので、HIV感染又はAIDSの治療又は予防に有用でありうる(Immunology Today 20:367−375(1999))。SDF−1アルファの場合、開裂は抗ウイルス活性を減少させる(PNAS,95:6331−6(1998))。したがって、DPP−4の阻害を介したSDF−1アルファの安定化は、HIV感染力を減少させることが予測される。
造血:DPP−4阻害は、DPP−4が造血に関与する場合があるので、造血の治療又は予防に有用でありうる。DPP−4インヒビターであるVal−Boro−Proが、シクロホスファミド誘発好中球減少のマウスモデルで造血を刺激した(WO99/56753)。
神経障害:DPP−4阻害は、多様な神経プロセスに関与する多数のペプチドがDPP−4によりin vitroで開裂されるので、多様な神経又は精神障害の治療又は予防に有用でありうる。したがってDPP−4インヒビターは、神経障害の治療において治療上の利益を有することができる。エンドモルフィン2、ベータ−カゾモルフィン及びサブスタンスPは、全てDPP−4のin vitro基質であることを示した。全ての場合において、in vitro開裂は極めて効率的であり、kcat/Kは、約10−1−1以上である。ラットの電気ショックジャンプ試験鎮痛モデルにおいて、DPP−4インヒビターは、外来性エンドモルフィン2の存在に関係なく、有意な効果を示した(Brain Research,815:278−286(1999))。DPP−4インヒビターの神経保護及び神経生成効果も、インヒビターの、興奮毒性細胞死から運動ニューロンを保護する能力、MPTPと同時投与されたとき、ドーパミン作動性ニューロンの線条体神経支配を保護する能力、及びMPTP治療後に治療的方法で与えられたとき、線条体神経支配の密度の回復を促進する能力により実証された〔Yong−Q.Wu,et al.,“Neuroprotective Effects of Inhibitors of Dipeptidyl peptidase−IV In Vitro and In Vivo,”Int.Conf.On Dipeptidyl Aminopeptidases:Basic Science and Clinical Applications,September 26−29,2002(Berlin,Germany)を参照〕。
不安:天然にDPP−4を欠いているラットは、抗不安表現型を有する(WO02/34243;Karl et al.,Physiol.Behav.2003)。DPP−4欠損マウスは、ポルソルト及び明/暗モデルを使用した抗不安表現型も有する。したがって、DPP−4インヒビターは、不安及び関連する障害の治療に有用であることを証明することができる。
記憶及び認識力:GLP−1アゴニストは、Duringらにより実証されているように、学習(受動的回避、モリス水迷路)及び神経障害(カイネート誘発神経細胞アポトーシス)のモデルにおいて活性である(Nature Med.9:1173−1179(2003))。結果は、学習及び神経保護におけるGLP−1の生理学的役割を示唆している。DPP−4インヒビターによるGLP−1の安定化は、同様の効果を示すことが予測される。
心筋梗塞:GLP−1は、急性心筋梗塞の後に患者に投与されたときに有益であることが示されている(Circulation,109:962−965(2004))。DPP−4インヒビターは、内在性GLP−1を安定化する能力によって同様の効果を示すことが予測される。
腫瘍浸潤及び転移:DPP−4阻害は、DPP−4を含む幾つかのエクトペプチダーゼの発現の増加又は減少が正常な細胞の悪性表現型への転換の際に観察されるので、腫瘍浸潤及び転移の治療又は予防に有用でありうる(J.Exp.Med 190:301−305(1999))。このタンパク質の上方又は下方調節は、組織及び細胞型特的であると思われる。例えば、CD26/DPP−4発現の増加が、T細胞リンパ腫、T細胞急性リンパ性白血病、細胞由来甲状腺癌、基底細胞癌、及び乳癌で観察されている。したがって、DPP−4インヒビターは、そのような癌の治療に有用性を有することができる。
良性前立腺肥大症:DPP−4阻害は、DPP−4活性の増大がBPH患者の前立腺組織で注目されたので、良性前立腺肥大症の治療に有用でありうる(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,30:333−338(1992))。
精子運動性/男性避妊:DPP−4阻害は、精液中の、精子運動性に重要な前立腺由来細胞小器官であるプロスタトソーム(prostatosome)が高レベルのDPP−4活性を有するので、精子運動性を変えるため及び男性避妊のために有用でありうる(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,30:333−338(1992))。
歯肉炎:DPP−4阻害は、DPP−4活性が歯肉溝液で見出され、幾つかの研究において、歯周病の重篤度と相関していたので、歯肉炎の治療に有用でありうる(Arch.Oral Biol.,37:167−173(1992))。
骨粗鬆症:DPP−4阻害は、GIPレセプターが骨芽細胞に存在するので、骨粗鬆症の治療又は予防に有用でありうる。
幹細胞移植:ドナー幹細胞に対するDPP−4阻害は、骨髄のホーミング効率及び移植の増強、並びにマウスで生存期間の増大をもたらすことを示した(Christopherson,et al.,Science,305:1000−1003(2004))。したがって、DPP−4インヒビターは、骨髄移植に有用でありうる。
【0084】
本発明の化合物は、以下の状態又は疾患の1つ以上の治療又は予防に有用性を有する:(1)高血糖症、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸管症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)他の炎症性状態、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)X症候群、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、(25)2型糖尿病、(26)成長ホルモン欠乏症、(27)好中球減少、(28)神経障害、(29)腫瘍転移、(30)良性前立腺肥大症、(31)歯肉炎、(33)高血圧症、(34)骨粗鬆症、(35)不安、(36)記憶欠損、(37)認知欠損、(38)発作、(39)アルツハイマー病、並びにDPP−4の阻害により治療又は予防することができる他の疾患。
【0085】
主題化合物は、更に、上記の疾患、障害及び症状を他の作用物質と組み合わせて予防又は治療する方法において有用である。
【0086】
本発明の化合物は、式Iの化合物又は他の薬剤が有用性を有する場合がある疾患又は症状の治療、予防、抑制又は改善において、1つ以上の他の薬剤と組み合わせて使用することができ、薬剤と一緒に組み合わせることは、いずれかの薬剤の単独よりも安全であるか又はより効果的である。そのような他の薬剤は、それに一般的に使用される経路及び量によって、式Iの化合物と同時に又は連続して投与することができる。式Iの化合物が1つ以上の他の薬剤と同時に使用される場合、そのような他の薬剤及び式Iの化合物を含有する投与単位形態の医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法は、式Iの化合物及び1つ以上の他の薬剤が異なる重複スケジュールで投与される療法を含むこともできる。1つ以上の他の活性成分と組み合わせて使用する場合、本発明の化合物及び他の活性成分は、それぞれ単独で使用されるときよりも低い用量で使用することができることも考慮される。したがって、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物に加えて、1つ以上の他の活性成分を含有するものが挙げられる。
【0087】
式Iの化合物と組み合わせて投与することができ、別々に投与する又は同じ医薬組成物で投与することができる他の活性成分の例には、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:
(a)他のジベプチジルペプチダーゼIV(DPP−4)インヒビター;
(b)(i)グリタゾン(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン、バラグリタゾンなど)のようなPPARγアゴニスト、及びKRP−297、マルグリタザール、ナベグリタザール、テサグリタザール、TAK−559のようなPPARα/γ二重アゴニストを含む他のPPARリガンド;フェノフィブル酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベザフィブレート)のようなPPARαアゴニスト;及びWO02/060388、WO02/08188、WO2004/019869、WO2004/020409、WO2004/020408及びWO2004/066963に開示されているような選択的PPARγモジュレーター(SPPARγM);(ii)メトホルミン及びフェンホルミンのようなビグアナイド剤、並びに(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)インヒビターを含むインスリン増感剤;
(c)インスリン又はインスリン模倣剤;
(d)トルブタミド、グリブリド、グリピザイド、グリメピリドのようなスルホニル尿素及び他のインスリン分泌促進薬、並びにナテグリニド及びレパグリニドのようなメグリチニド;
(e)αグルコシダーゼインヒビター(例えば、アカルボース及びミグリトール);
(f)WO97/16442;WO98/04528;WO98/21957;WO98/22108;WO98/22109;WO99/01423;WO00/39088及びWO00/69810;WO2004/050039;並びにWO2004/069158に開示されているグルカゴンレセプターアンタゴニスト;
(g)GLP−1、GLP−1類似体又は模倣体、並びにエキセンジン4(エクセナチド)、リラグルチド(NN−2211)、CJC−1131、LY−307161及びWO00/42026とWO00/59887に記載されているようなGLP−1レセプターアゴニスト;
(h)WO00/58360に開示されているGIP及びGIP模倣体、並びにGIPレセプターアゴニスト;
(i)PACAP、PACAP模倣体、及びWO01/23420に開示されているPACAPレセプターアゴニスト;
(j)コレステロール低下剤、例えば(i)HMG−CoAレダクターゼインヒビター(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチン、及び他のスタチン)、(ii) 捕捉剤(コレスチラミン、コレスチポール、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベザフィブレート)のようなPPARαアゴニスト、(v)ナベグリタザール及びマルグリタザーのようなPPARα/γ二重アゴニスト、(v)ベータ−シトステロール及びエゼチミブのようなコレステロール吸収インヒビター、(vii)アバシミベのようなアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼインヒビター、並びに(viii)プロブコールのような酸化防止剤;
(k)WO97/28149に開示されているPPARδアゴニスト;
(l)フェンフルラミン、デクスフェンフラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、CB1レセプターインバースアゴニスト及びアンタゴニスト、βアドレナリン作動性レセプターアゴニスト、メラノコルチンレセプターアゴニスト、特にメラノコルチン4レセプターアゴニスト、グレリンアンタゴニスト、ボンベシンレセプターアゴニスト(例えば、ボンベシンレセプターサブタイプ3アゴニスト)、コレシストキニン1(CCK−1)レセプターアゴニスト及びメラニン凝集ホルモン(MCH)レセプターアンタゴニストのような抗肥満性化合物;
(m)回腸胆汁酸トランスポーターインヒビター;
(n)アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、グルココルチコイド、アズルフィジン及びシクロオキシゲナーゼ2(COX−2)選択的インヒビターのような、炎症性条件で使用されることが意図される作用物質;
(o)ACEインヒビター(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、タンドラプリル)、A−IIレセプターブロッカー(ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン及びエプロサルタン)、ベータブロッカー、並びにカルシウムチャンネルブロッカーのような抗高血圧剤;
(p)WO03/015774;WO04/076420;及びWO04/081001に開示されているグルコキナーゼ活性化物質(GKA);
(q)米国特許第6,730,690号;WO03/104207;及びWO04/058741に開示されている11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型のインヒビター;
(r)トルセトラピブのようなコレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)のインヒビター;及び
(s)米国特許第6,054,587号;同第6,110,903号;同第6,284,748号;同第6,399,782号;及び同第6,489,476号に開示されているフルクトース1,6−ビスホスファターゼのインヒビター。
【0088】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターには、米国特許第6,699,871号;WO02/076450(2002年10月3日);WO03/004498(2003年1月16日);WO03/004496(2003年1月16日);EP1 258 476(2002年11月20日);WO02/083128(2002年10月24日);WO02/062764(2002年8月15日);WO03/000250(2003年1月3日);WO03/002530(2003年1月9日);WO03/002531(2003年1月9日);WO03/002553(2003年1月9日);WO03/002593(2003年1月9日);WO03/000180(2003年1月3日);WO03/082817(2003年10月9日);WO03/000181(2003年1月3日);WO04/007468(2004年1月22日);WO04/032836(2004年4月24日);WO04/037169(2004年5月6日);及びWO04/043940(2004年5月27日)に開示されているものが挙げられる。特定のDPP−4インヒビター化合物には、イソロイシンチアゾリジド(P32/98);NVP−DPP−728;ビルダグリプチン(LAF237);P93/01;及びサクサグリプチン(BMS477118)が挙げられる。
【0089】
構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満化合物には、フェンフルラミン、デクスフェンフラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、カンナビノイドCB1レセプターアンタゴニスト又はインバースアゴニスト、メラノコルチンレセプターアゴニスト、特にメラノコルチン−4レセプターアゴニスト、グレリンアンタゴニスト、ボンベシンレセプターアゴニスト、及びメラニン凝集ホルモン(MCH)レセプターアンタゴニストが挙げられる。構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満化合物の検討には、S. Chaki et al.,“Recent advances in feeding suppressing agents:potential therapeutic strategy for the treatment of obesity,”Expert Opin.Ther.Patents,11:1677−1692(2001);D.Spanswick and K.Lee,“Emerging antiobesity drugs,”Expert Opin.Emerging Drugs,8:217−237(2003);及びJ.A.Fernandez−Lopez,et al.,“Pharmacological Approaches for the Treatment of Obesity,”Drugs,62:915−944(2002)を参照されたい。
【0090】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるニューロペプチドY5アンタゴニストには、米国特許第6,335,345号(2002年1月1日)及びWO01/14376(2001年3月1日)に開示されているものが挙げられ、特定の化合物は、GW59884A;GW569180A;LY366377;及びCGP−71683Aとして同定されている。
【0091】
式Iの化合物と組み合わせることができるカンナビノイドCB1レセプターアンタゴニストには、PCT公開公報WO03/007887;米国特許第5,624,941号(例えば、リモナバン);PCT公開公報WO02/076949(例えば、SLV−319);米国特許第6,028,084号;PCT公開公報WO98/41519;PCT公開公報WO00/10968;PCT公開公報WO99/02499;米国特許第5,532,237号;米国特許第5,292,736号;PCT公開公報WO05/000809号;PCT公開公報WO03/086288;PCT公開公報WO03/087037;PCT公開公報WO04/048317;PCT公開公報WO03/007887;PCT公開公報WO03/063781;PCT公開公報WO03/075660;PCT公開公報WO03/077847;PCT公開公報WO03/082190;PCT公開公報WO03/082191;PCT公開公報WO03/087037;PCT公開公報WO03/086288;PCT公開公報WO04/012671;PCT公開公報WO04/029204;PCT公開公報WO04/040040;PCT公開公報WO01/64632;PCT公開公報WO01/64633;及びPCT公開公報WO01/64634に開示されているものが挙げられる。
【0092】
本発明に有用なメラノコルチン−4レセプター(MC4R)アゴニストには、米国特許第6,294,534号、米国特許第6,350,760号、同第6,376,509号、同第6,410,548号、同第6,458,790号、米国特許第6,472,398号、米国特許第5837521号、米国特許第6699873号(これらはその全体が参照として本明細書に組み込まれる);米国特許出願公開第2002/0004512号、同第2002/0019523号、同第2002/0137664号、同第2003/0236262号、同第2003/0225060号、同第2003/0092732号、同第2003/109556号、同第2002/0177151号、同第2002/187932号、同第2003/0113263号(これらはその全体が参照として本明細書に組み込まれる);並びにWO99/64002、WO00/74679、WO02/15909、WO01/70708、WO01/70337、WO01/91752、WO02/068387、WO02/068388、WO02/067869、WO03/007949、WO2004/024720、WO2004/089307、WO2004/078716、WO2004/078717、WO2004/037797、WO01/58891、WO02/070511、WO02/079146、WO03/009847、WO03/057671、WO03/068738、WO03/092690、WO02/059095、WO02/059107、WO02/059108、WO02/059117、WO02/085925、WO03/004480、WO03/009850、WO03/013571、WO03/031410、WO03/053927、WO03/061660、WO03/066597、WO03/094918、WO03/099818、WO04/037797、WO04/048345、WO02/018327、WO02/080896、WO02/081443、WO03/066587、WO03/066597、WO03/099818、WO02/062766、WO03/000663、WO03/000666、WO03/003977、WO03/040107、WO03/040117、WO03/040118、WO03/013509、WO03/057671、WO02/079753、WO02//092566、WO03/−093234、WO03/095474及びWO03/104761に開示されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0093】
糖尿病の治療のためのグルコキナーゼ(GKA)の安全で有効なアクチベーターの潜在的な有用性は、J.Grimsby et al.,”Allosteric Activators of Glucokinase:Potential Role in Diabetes Therapy,”Science,301:370−373(2003)で議論されている。
【0094】
本発明の化合物が1つ以上の他の薬剤と同時に使用される場合、本発明の化合物に加えてそのような他の薬剤を含有する医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて、1つ以上の他の活性成分を含有するものが挙げられる。
【0095】
本発明の化合物と第2の活性成分との重量比は、変わることができ、それぞれの成分の有効用量に依存する。一般に、それぞれの有効用量が使用される。したがって、例えば、本発明の化合物が別の作用物質と組み合わされる場合、本発明の化合物と他の作用物質との重量比は、一般に約1000:1〜約1:1000、好ましくは約200:1〜約1:200の範囲である。また、本発明の化合物と他の活性成分の組み合わせは、一般に上記の範囲内であるが、それぞれの場合において、それぞれの活性成分の有効用量が使用されるべきである。
【0096】
そのような組み合わせにおいて、本発明の化合物及び他の活性作用物質を、別々又は一緒に投与することができる。加えて、一つの構成成分の投与は、別の作用物質の投与の前、同時に、又は後であってもよい。
【0097】
本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、嚢内注射若しくは注入、皮下注射若しくは移植)、吸入噴霧、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下、又は局所経路の投与によって投与することができ、単独又は一緒に、それぞれの投与経路に適した従来の非毒性で薬学的に許容される担体、佐剤及びビヒクルを含有する適切な投与単位製剤に配合することができる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サルなどのような温血動物の治療に加えて、本発明の化合物はヒトでの使用に有効である。
【0098】
本発明の化合物の投与用の医薬組成物は、投与単位形態で都合よく存在することができ、薬剤学の技術で周知の方法のいずれかによって調製することができる。全ての方法は、活性成分と、1つ以上の補助成分を構成する担体とを組み合わせる工程を含む。一般に、医薬組成物は、活性成分を液体担体と又は微粉化固体担体と又はその両方と均一かつ十分に混和し、次に必要であれば生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。医薬組成物において、活性の目的化合物は、疾患の過程又は状態に対して所望の効果を生じるのに十分な量で含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、特定の量で特定の成分を含む生成物、並びに特定の量で特定の成分の直接的又は間接的な組み合わせによりもたらされるあらゆる生成物を包含する。
【0099】
活性成分を含有する医薬組成物は、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性若しくは油性懸濁剤、分散性粉末剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬質若しくは軟質カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤のような経口使用に適切な剤形であることができる。経口使用が意図される組成物は、医薬組成物の製造における当該技術で既知のあらゆる方法に従って調製することができ、そのような組成物は、薬学的に洗練された口当たりのよい調合剤を提供するため、甘味料、風味剤、着色剤及び防腐剤からなる群より選択される1つ上の作用物質を含有することができる。錠剤は、活性成分を、錠剤の製造に適切である非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合して含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン又はアカシア、並びに滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであることができる。錠剤は被覆されていなくてもよいか、又はこれらは、胃腸管で崩壊又は吸収を遅延させ、それにより長期間にわたって持続的作用を提供するために、既知の技術で被覆されていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質を用いることができる。これらを、米国特許第4,256,108号、同第4,166,452号及び同第4,265,874号に記載されている技術により被覆して、放出制御用の浸透性治療錠剤を形成することもできる。
【0100】
経口使用の製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合している硬質ゼラチンカプセル剤として、又は活性成分が水若しくは油媒質、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合している軟質ゼラチンカプセル剤として存在することもできる。
【0101】
水性懸濁剤は、活性物質を水性懸濁剤の製造に適切な賦形剤と混合して含有する。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムであり、分散剤又は湿潤剤は、天然ホスファチド、例えば、レシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、例えばポリオキシエチレンステアレート、若しくはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコール類との縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、若しくはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、若しくはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートであることができる。水性懸濁剤は、また、1種以上の防腐剤、例えば、エチル又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1種以上の着色剤、1種以上の風味剤、及び1種以上のショ糖又はサッカリンのような甘味料を含有してもよい。
【0102】
油状懸濁剤は、活性成分を植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはココナッツ油、又は流体パラフィンのような鉱油中に懸濁することにより処方することができる。油状懸濁剤は、増粘剤、例えば、蜜ロウ、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有してもよい。甘味料、例えば上記で記載されたようなもの及び風味剤を添加して、口当たりのよい経口調合剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸のような酸化防止剤の添加により保存することができる。
【0103】
水の添加による水性懸濁剤の調製に適切な分散性粉末及び顆粒は、活性成分を、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種以上の防腐剤との混合で提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、上記で既に記載されているもので例示されている。追加の賦形剤、例えば、甘味料、風味剤及び着色剤もまた存在することができる。
【0104】
本発明の医薬組成物は、また、水中油型乳剤の形態であることができる。油相は、植物油、例えばオリーブ油若しくはラッカセイ油、又は鉱油、例えば流体パラフィン、或いはこれらの混合物であることができる。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えばアラビアゴム又はトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば大豆、レシチン、脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステル若しくは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、並びに前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであることができる。乳剤は、甘味料及び風味剤を含有することもできる。
【0105】
シロップ剤及びエリキシル剤は、甘味料、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール又はショ糖で処方することができる。そのような製剤は、粘滑剤、防腐剤、風味剤及び着色剤を含有することもできる。
【0106】
医薬組成物は、滅菌の注射用水性又は油性懸濁剤の形態であることができる。この懸濁剤は、上記で記載されたこれらの適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って処方することができる。滅菌注射用調合剤は、また、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用液剤又は懸濁剤、例えば1,3−ブタンジオール中の液剤であってもよい。許容されるビヒクル及び溶媒のうち用いてもよいものは、水、リンゲル液及び塩化ナトリウム等張液である。加えて、滅菌の固定油が溶媒又は懸濁媒質として都合よく用いられる。このために、合成モノ−又はジグリセリドを含む任意の無刺激固定油を用いることができる。加えて、オレイン酸のような脂肪酸には、注射用の調製における用途が見出される。
【0107】
本明細書の化合物を、薬剤の直腸内投与のために坐剤の剤形で投与することもできる。これらの組成物は、薬剤と、通常の温度で固体であるが、直腸内の温度で液体となり、したがって直腸で溶融して薬剤を放出する適切な非刺激性の賦形剤とを混合することによって、調製できる。そのような物質は、カカオバター及びポリエチレングリコールである。
【0108】
局所使用には、本発明の化合物を含有する、クリーム剤、軟膏、ゲル剤、液剤又は懸濁剤などが用いられる。(本明細書の目的では、局所用途には、洗口剤及びうがい薬が含まれる。)
【0109】
本発明の医薬組成物及び方法は、上記の病理状態の治療で通常適用される、本明細書で示されている他の治療上活性な化合物を更に含むことができる。
【0110】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害を必要とする状態の治療又は予防において、適切な投与量レベルは、一般に、1日あたり患者の体重1kgで約0.01〜500mgであり、単回又は多回用量で投与することができる。好ましくは、投与量レベルは、1日あたり約0.1〜約250mg/kg、より好ましくは1日あたり約0.5〜約100mg/kgである。適切な投与量レベルは、1日あたり約0.01〜250mg/kg、1日あたり約0.05〜100mg/kg、又は1日あたり約0.1〜50mg/kgであることができる。この範囲内で、投与量は、1日あたり0.05〜0.5、0.5〜5、又は5〜50mg/kgであることができる。経口投与では、組成物は、好ましくは、1.0g〜1000mgの活性成分、特に、1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0及び1000.0mgの治療される患者へ用量を症状に応じて調整した活性成分を含有する錠剤の剤形で提供される。化合物を、1日あたり1〜4回、好ましくは1日あたり1回〜2回の投与計画で投与することができる。
【0111】
糖尿病及び/又は、高血糖症若しくは高トリグリセリド血症、又は本発明の化合物が指示される他の疾患を治療又は予防する場合、本発明の化合物が、好ましくは、単回1日用量で、又は1日に2〜6回の分けた用量で、又は持続放出の形態で、動物の体重1kgあたり約0.1mg〜約100mgの1日投与量で投与されるとき、一般に満足できる結果が得られる。ほとんどの大型哺乳動物では、総1日用量は、約1.0mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約50mgである。70kgの成人の場合は、総1日用量は、一般に約7mg〜約350mgである。この投与計画は、最適な治療反応が提供できるように調整し得る。
【0112】
しかし、任意の特定の患者のための特定の用量レベル及び投与頻度は、変わることができ、用いられる特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、身体全体の健康状態、性別、食事、投与様式及び時間、排泄回数、薬剤の組み合わせ、特定の状態の重篤度、並びに治療を受ける宿主を含む多様な要素により左右されることが理解される。
【0113】
本発明の化合物を調製する合成方法が、以下のスキーム及び実施例で例示される。出発原料は、市販されているか、又は当該技術で既知の方法に従って若しくは本明細書で例示されているようにして製造することができる。
【0114】
本発明の化合物は、標準的な還元的アミノ化条件、それに続く脱保護を使用して、式II及びIIIの中間体から調製することができ、
【0115】
【化14】

【0116】
式中、Ar及びVは、上記で定義されたとおりであり、そしてPは、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)のような適切な窒素保護基である。これらの中間体の調製を以下のスキームにおいて説明する。
スキーム1
【0117】
【化15】

【0118】
式IIの中間体は、文献により知られているか又は当業者によく知られている種々の方法により都合よく調製することができる。一つの一般的な経路がスキーム1に例示されている。置換ハロゲン化ベンゾイル1をN,N−ジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下、フェノールで処理して、エステル2を形成する。2を、水素化ナトリウムを使用してニトロメタンから生じたアニオンで処理することによって、ニトロケトン3を得る。ニトロケトン3を3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エンと共に加熱してピラン4を得て、それを水素化ホウ素ナトリウムで還元し、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン(DBU)のような塩基で異性化して、トランスピラン5を得る。鏡像異性体を、この段階で、当業者に既知の種々の多様な方法により分離することができる。都合よくは、ラセミ化合物を、キラルカラムを使用してHPLCにより分割することができる。次にニトロ置換ピラン5を、例えば亜鉛及び塩酸のような酸を使用して還元し、得られたアミン6を、例えばジ−tert−ブチルジカーボネートによる処理で、BOC誘導体として保護し、7を得る。7を、四酸化オスミウム及びN−メチルモルホリンN−オキシドで処理することによって、ジオール8を形成し、それを過ヨウ素酸ナトリウムで処理することによって、中間体ピラノンIIを得る。
スキーム2
【0119】
【化16】

【0120】
式IIIの中間体は、文献により知られているか又は当業者によく知られている種々の方法により都合よく調製することができる。ピロロピリミジンIIIaを調製する一つの一般的な経路がスキーム2に例示されている。トリチル−又はBoc保護ピロリジノール9を、当業者に周知のSwern手順のような種々の方法により酸化して、ケトン10を得ることができ、それをN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF−DMA)と共に加熱処理して、11を得る。次に目的の中間体IIIaを、11の溶液11をアミジン12と共に、場合によりナトリウムエトキシドのような塩基の存在下、エタノールのような適切な溶媒中で加熱することによって容易に得ることができる。
スキーム3
【0121】
【化17】

【0122】
スキーム3に例示されているように、構造式(I)の本発明の化合物は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン又はメタノールのような溶媒中、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、デカボラン又はトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのような試薬を使用する、中間体IIIの存在下での中間体IIの還元的アミノ化により中間体IVを得ることによって調製することができる。反応は、場合により、四塩化チタン又はチタンテトライソプロポキシドのようなルイス酸の存在下で行われる。反応は、酢酸のような酸の添加によって促進することもできる。幾つかの場合において、中間体IIIは、塩酸塩又はトリフルオロ酢酸塩のような塩であることができ、そのような場合には、塩基、一般的にはN,N−ジイソプロピルエチルアミンを反応混合物に添加することが好都合である。次に保護基を、例えば、Bocの場合はトリフルオロ酢酸若しくは塩化水素メタノール、又はCbzの場合はパラジウム炭素及び水素ガスにより除去して、目的のアミンIを得る。必要であれば、再結晶化、粉砕、分取薄層クロマトグラフィー、Biotage(登録商標)装置を用いるシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー又はHPLCにより生成物を精製する。HPLCにより精製された化合物を、対応する塩として単離することができる。
【0123】
幾つかの場合において、上記のスキームで例示されている生成物I又は合成中間体は、例えば、Ar又はVの置換基を操作することによって更に変更することができる。これらの操作には、当業者に一般的に知られている還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応を挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0124】
幾つかの場合において、前述の反応スキームを実施する順番は、反応を促進するため又は不要な反応生成物を避けるために変えることができる。以下の実施例は、本発明をより完全に理解できるように提供される。これらの実施例は、説明のみであり、本発明をけっして制限するものとして考慮すべきではない。
【0125】
中間体1
【0126】
【化18】

【0127】
〔(2R、3S)−5−オキソ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル
工程A:2,4,5−トリフルオロ安息香酸フェニル
無水ジクロロメタン(370mL)中のフェノール(13.3g、141mmol)の溶液を氷浴で冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(34mL、129mmol)で処理し、続いて2,4,5−トリフルオロベンゾイルクロリドを15分間かけて滴加した。氷浴を取り外し、撹拌を室温で2時間続け、次に溶液を分液漏斗に移し、有機層を、塩酸溶液(2N、150mL)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液及びブラインで連続して洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。残渣をヘキサンで粉砕して、蒸発させると、オフホワイトの固体生成物を得て、得られた固体生成物の高温ヘキサン可溶性画分を、ヘキサン、次にヘキサン中0〜5%エーテルの勾配で連続して溶離することによりシリカゲルで少量ずつ精製して、2,4,5−トリフルオロ安息香酸フェニルを白色の固体として得た。
【0128】
工程B:2−ニトロ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)エタノン
水素化ナトリウム(12g、油中60%、297mmol)をヘキサン(4×100mL)ですすぎ、無水窒素でフラッシュし、N,N−ジメチルホルムアミド(3500mL)に懸濁し、ニトロメタン(44mL、81mmol)で処理した。得られた混合物を室温で2.5時間撹拌し、0℃に冷却し、次にN,N−ジメチルホルムアミド(180mL)中の2,4,5−トリフルオロ安息香酸フェニル(22.8g、9.0mmol)の溶液で2時間かけて処理した。反応混合物を同じ温度で一晩保持し、撹拌を室温で更に1時間続けた。混合物を濃塩酸(48mL)と共に氷(400g)に注いだ。水性混合物を酢酸エチル(3×250mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(40mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で蒸発させた。粗生成物を、エーテル−ヘキサン(1:1、240mL)及び水(200mL)に溶解した。有機層を分離し、放置し冷凍庫で冷却して形成させた結晶を濾過により収集し、乾燥して、2−ニトロ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)エタノンをオフホワイトの固体として得た。
【0129】
工程C:3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン
アセトン(60mL)中の3−クロロ−2−(クロロメチル)プロパ−1−エン(1.0g、8mmol)及びヨウ化ナトリウム(6.6g、44mmol)の混合物を室温で20時間撹拌し、減圧下で蒸発させ、ジクロロメタン(150mL)及び水(50mL)に溶解した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて、3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エンを、赤みを帯びた油状物(2.45g)として得た。N,N−ジメチルホルムアミド(3mL)中の2−ニトロ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)エタノン(110mg、0.5mmol)の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.20mL)及び3−ヨード−2−(ヨードメチル)プロパ−1−エン(170mg、0.55mmol)を加え、混合物を60℃で2.5時間加熱し、蒸発させ、Biotage Horizon(登録商標)システム(シリカ、ヘキサン中0〜30%ジクロロメタンの勾配)のクロマトグラフィーにより精製して、3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピランを得た。
【0130】
工程D:(2R,3S)−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン
クロロホルム(42mL)及びイソプロピルアルコール(7.8mL)中の3−メチレン−5−ニトロ−6−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(798mg、2.94mmol)の溶液に、シリカゲル(5.1g)及び水素化ホウ素ナトリウム(420mg、37.8mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。次に反応混合物を塩酸(6mL、2N)の滴加により停止させ、濾過した。得られた固体残渣を酢酸エチル(100mL)で洗浄した。合わせた濾液を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液及びブラインで連続して洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。得られた琥珀色の油状物(802mg)をテトラヒドロフラン(15mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン(DBU、40μL)を加えた。溶液を105分間撹拌し、次に酢酸エチル(100mL)及び1N塩酸(50mL)を含有する分液漏斗に移した。有機層をブラインで洗浄し、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて粗生成物を得て、それをフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン中8〜10%エーテル)により精製して、トランス−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピランを得た。この生成物の一部(388mg)をHPLC(ChiralCel OD、ヘプタン中1.5%イソプロピルアルコール)により分割して、遅く移動する鏡像異性体(2R,3S)−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピランを得た。
【0131】
工程E:(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン
エタノール(7mL)中の(2R,3S)−5−メチレン−3−ニトロ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン(200mg、0.73mmol)及び亜鉛粉末(561mg、8.59mmol)の激しく撹拌した懸濁液に、6N塩酸(2.3mL、14mmol)を加えた。1時間後、混合物をエーテル(100mL)及び水酸化ナトリウム水溶液(2.5N、40mL)で処理した。有機層を飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させて、(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミンを得て、それを更に精製することなく次の工程に使用した。
【0132】
工程F:〔(2R、3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル
ジクロロメタン(5mL)中の(2R,3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン(177mg、0.73mmol)の溶液に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(239mg、1.1mmol)を加え、混合物を室温で2.5時間撹拌した。溶液を減圧下で蒸発させて、〔(2R、3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチルを白色の固体として得た。これを更に精製することなく次の工程に使用した。
【0133】
工程G:〔(2R、3S)−5−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル
tert−ブチルアルコール(6mL)、アセトン(3mL)及び水(1.5mL)中の〔(2R、3S)−5−メチレン−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル(203mg、0.59mmol)の溶液に、四酸化オスミウム(tert−ブチルアルコール中2.5%溶液0.113mL、0.009mmol)を加えた。得られた混合物を室温で10分間撹拌し、次にN−メチルモルホリンN−オキシド(92mg、0.79mmol)で処理し、2日間撹拌した。2日後、反応混合物を飽和重亜硫酸ナトリウム水溶液(5mL、2.0N)で処理し、続いて10分後に酢酸エチルで処理した。有機層を、2N塩酸及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液で連続して洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させて、〔(2R,3S)−5−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチルを得て、それを更に精製することなく次の工程に使用した。
【0134】
工程H:〔(2R、3S)−5−オキソ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル
テトラヒドロフラン(4mL)中の〔(2R,3S)−5−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル(223mg、0.59mmol)の溶液に、水(1.3mL)中の過ヨウ素酸ナトリウム(143mg、0.67mmol)の溶液を加え、混合物を3時間撹拌した。混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン中5〜20%酢酸エチルの勾配)により精製して、〔(2R、3S)−5−オキソ−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチルを白色の固体として得た。
【0135】
中間体2
〔(2R、3S)−5−オキソ−2−(2,5−ジフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル
この中間体は、対応する2,5−ジフルオロベンゾイルクロリドから中間体1について記載されたとおりに合成した。
【0136】
中間体3
〔(2R、3S)−5−オキソ−2−(2−フルオロ−4−クロロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル
この中間体は、対応する2−フルオロ−5−クロロベンゾイルクロリドから中間体1について記載されたとおりに合成した。
【0137】
中間体4
〔(2R、3S)−5−オキソ−2−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル
この中間体は、対応する2−フルオロ−5−メチルベンゾイルクロリドから中間体1について記載されたとおりに合成した。
【0138】
中間体5
【0139】
【化19】

【0140】
2−(トリフルオロメチル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン
工程A:3−〔(ジメチルアミノ)メチレン〕−4−オキソピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−ピロリドン(4.10g)及びN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(30.0mL)の溶液を140℃で1時間加熱した。得られた混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を最小量のジクロロメタンに再溶解し、ヘキサンで粉砕して、黄色の沈殿物を得た。LC−MS=241.1(M+1)。
【0141】
工程B:2−(トリフルオロメチル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン
無水エタノール(25mL)中の工程Aの生成物(500mg)の溶液に、ナトリウムエトキシド(2.33mL、エタノール中21%)を加えた。5分間撹拌した後、トリフルオロアセトアミジン(700mg)を加え、得られた混合物を1時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈した。有機層を、5%クエン酸水溶液及びブラインで連続して洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、粗生成物を得て、それを1N塩化水素メタノールに1時間溶解することによって脱保護した。得られた溶液を濃縮し、Biotage(登録商標)システムのクロマトグラフィー(シリカゲルカートリッジ、メタノール/ジクロロメタン中の10%濃水酸化アンモニウム水溶液の10%〜18%の勾配)に付して、表題化合物を得た。LC−MS=190.0(M+1)。
【0142】
中間体6
【0143】
【化20】

【0144】
2−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン
工程A:1−トリチルピロリジン−3−オン
温度計を有する三頚フラスコ中の無水ジクロロメタン(35.0mL)の撹拌した溶液に、塩化オキサリル(1.5mL)を加え、得られた溶液を−60℃に冷却した。ジクロロメタン(7.5mL)中のジメチルスルホキシド(2.6mL)の溶液を10分間かけて加え、次にジクロロメタン(15.0mL)中の(3R)−1−トリチルピロリジン−3−オール(5.0g)を10分間かけて加えた。得られた溶液を−60℃で15分間撹拌し、次にトリエチルアミン(10.6mL)を5分間かけて加えた。5分後、冷却浴を取り外し、混合物を室温に温めた。水(45mL)を加えた。混合物を更に30分間撹拌し、次にジクロロメタンで抽出した。有機相を、5%クエン酸水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、表題化合物を得た。LC−MS=243.1(M+1)。
【0145】
工程B:4−〔(ジメチルアミノ)メチレン〕−1−トリチルピロリジン−3−オン
無水DMF(36.0mL)中の工程Aの1−トリチルピロリジン−3−オン(4.9g)の懸濁液を、窒素下、80℃で10分間加熱して溶解した。澄明な溶液を、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(18.0mL)で処理し、80℃で12時間加熱した。得られた暗褐色の溶液を減圧下で蒸発した。残渣を、Biotage(登録商標)システムのクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中酢酸エチル50%〜100%の勾配)に付して、表題化合物を得た。LC−MS=243.1(M+1)。
【0146】
工程C:2−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン
無水エタノール(400mL)中のアセトアミド塩酸塩(12.8g、135mmol)及びナトリウムエトキシド(59mL、157.5mmol)の溶液を、窒素下で15分間撹拌し、工程Bの4−〔(ジメチルアミノ)メチレン〕−1−トリチルピロリジン−3−オン(17.2g、45mmol)を加えた。得られた混合物を85℃で3.5時間加熱し、5%クエン酸水溶液(50mL)で停止させ、蒸発乾固した。残渣を酢酸エチル(500mL)に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。水層と有機層の間にいくらかの不溶性の固体物質が存在し、それをセライトパッドで十分に濾過し、酢酸エチルで洗浄した。合わせた水層を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム水溶液及びブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣を、Biotage Horizon(登録商標)システムのクロマトグラフィー(シリカゲル、10〜75%の酢酸エチル/ジクロロメタンの勾配)により精製して、目的生成物のN−トリチル保護誘導体を得た。このトリチル保護生成物の一部(1.9g、5.0mmol)を4N塩化水素メタノール(20mL)に溶解し、室温で2.5時間撹拌した。溶液を蒸発させ、残渣を、Biotage Horizon(登録商標)システムのクロマトグラフィー(シリカゲル、メタノール/ジクロロメタン中の10%濃水酸化アンモニウム溶液の4.5〜14%の勾配)により精製して、目的生成物を得た。LC−MS=136.0(M+1)。
【0147】
【表1−1】

【0148】
【表1−2】

【0149】
中間体17
【0150】
【化21】

【0151】
6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ〔3,4−d〕ピラジン
テトラクロロメタン(30mL)中の2,3−ジメチルピラジン(1.33g、12.3mmol)の溶液に、N−ブロモスクシンイミド(6.6g、37mmol)及び2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(0.2g、1.2mmol)を加えた。窒素下で16時間環流した後、混合物を濾過し、テトラクロロメタンで洗浄した。濾液を濃縮し、残渣をBiotageシリカゲルカートリッジ(ヘキサン中2〜20%酢酸エチルの勾配)により精製して、2,3−ジ(ブロモメチル)ピラジンを得た。N,N−ジメチルホルムアミド(100mL)中の2,3−ジ(ブロモメチル)ピラジン(2.0g、7.7mmol)の0℃の溶液を、N,N−ジメチルホルムアミド中のトリチルアミン(6.0g、23.0mmol)の溶液と混合した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、60℃で3時間加熱し、次に水に注ぎ、酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。有機層を水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣をBiotageシリカゲルカートリッジ(ヘキサン中2〜50%酢酸エチルの勾配)により精製して、N−トリチル−ピロロピラジンを得た。この生成物の一部(420mg、1.2mmol)を、メタノール中4Nの塩酸で2時間処理した。溶媒を除去した後、残渣をBiotageシリカゲルカートリッジ(ジクロロメタン中1%水酸化アンモニウム含有メタノールの0〜12%の勾配)により精製して、中間体17を得た。
【0152】
実施例1
【0153】
【化22】

【0154】
(2R,3S,5R)−5−〔2−(トリフルオロメチル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン−6−イル〕−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン二塩酸塩
工程A:〔(2R,3S,5R)−5−〔2−(トリフルオロメチル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン−6−イル〕−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチル
メタノール(5mL)中の中間体1(50mg、0.145mmol)及び中間体2(30mg、0.159mmol)の撹拌溶液に、デカボラン(6mg、0.048mmol)を加え、混合物を15時間撹拌した。生成物(TLC移動性の少ないジアステレオ異性体)を、(最初に、1:1酢酸エチル/ジクロロメタンで溶離するシリカ、次に、ジクロロメタン中5%メタノールで溶離するシリカ)の分取薄層クロマトグラフィーにより精製して、〔(2R,3S,5R)−5−〔2−(トリフルオロメチル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン−6−イル〕−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチルを得た。LC−MS519.17(M+1)。
【0155】
工程B:(2R,3S,5R)−5−〔2−(トリフルオロメチル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン−6−イル〕−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン二塩酸塩
〔(2R,3S,5R)−5−〔2−(トリフルオロメチル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン−6−イル〕−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル〕カルバミン酸tert−ブチルを、塩化水素(1mL、酢酸エチル中3N)の溶液に溶解し、2時間後に蒸発させて、(2R,3S,5R)−5−〔2−(トリフルオロメチル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ〔3,4−d〕ピリミジン−6−イル〕−2−(2,4,5−トリフルオロフェニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3−アミン二塩酸塩を無定形の固体として得た。LC−MS419.12(M+1)。
【0156】
以下の実施例は、実施例1に記載されたものと実質的に同じ手順に従って作製した。
【0157】
【化23】

【0158】
【表2−1】

【0159】
【表2−2】

【0160】
【表2−3】

【0161】
【表2−4】

【0162】
医薬製剤の例
経口医薬組成物の特定の実施形態として、100mgの力価の錠剤を、実施例1 100mg、微晶質セルロース268mg、クロスカルメロースナトリウム20mg、及びステアリン酸マグネシウム4mgから構成する。活性成分、微晶質セルロース及びクロスカルメロースを最初に混合する。次に混合物をステアリン酸マグネシウムで潤滑にし、錠剤に圧縮する。
【0163】
本発明は、特定の特別の実施形態を参照して記載及び説明してきたが、当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、手順及びプロトコールの多様な適合、変更、修正、置換、削除、又は追加を行えることを理解する。例えば、本明細書の上記で記載された特定の投与量以外の有効投与量を、上記で示される本発明の化合物によりいずれかの適応症が治療される哺乳動物の反応が異なる場合にも適用することができる。観察される特定の薬理学的反応は、選択される特定の活性化合物又は医薬担体の有無、ならびに用いられる製剤及び投与形態に応じて変動し得るものであり、結果におけるそのような予測される変動又は差異は、本発明の目的及び実施に従って考慮される。したがって、本発明は、特許請求の範囲により定義され、そのような特許請求の範囲は、合理的である限りできるだけ広義に解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化1】

〔式中
nは、それぞれ独立して、0、1、2又は3であり;
Vは、
【化2】

からなる群より選択され;
Arは、1〜5つのR置換基で置換されていてもよいフェニルであり;
は、それぞれ独立して、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1〜5つのフッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル、及び
1〜5つのフッ素で置換されていてもよいC1−6アルコキシ
からなる群より選択され;
は、それぞれ独立して、
水素、
ヒドロキシ、
ハロゲン、
シアノ、
アルコキシが、フッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい、C1−10アルコキシ、
アルキルが、フッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい、C1−10アルキル、
アルケニルが、フッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい、C2−10アルケニル、
アリールが、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−アリール、
ヘテロアリールが、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−ヘテロアリール、
ヘテロシクリルが、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−ヘテロシクリル、
シクロアルキルが、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシが1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、(CH−C3−6シクロアルキル、
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR、及び
(CH−NRCO
からなる群より選択され;
ここで、(CH中の個別のメチレン(CH)炭素原子は、いずれも、フッ素、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立して選択される1〜2つの置換基で置換されていてもよく、ここでアルキル及びアルコキシは、1〜5つのフッ素で置換されていてもよく;
3a及びR3bは、それぞれ独立して、水素、又は1〜5つのフッ素で置換されていてもよい、C1−4アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、
水素、
(CH−フェニル、
(CH−C3−6シクロアルキル、及び
アルキルが、フッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい、C1−6アルキルからなる群より選択され、ここで、フェニル及びシクロアルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5つのフッ素で置換されていいてもよいか;或いは
及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成し、ここで、該複素環は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、アルキル及びアルコキシは1〜5つのフッ素で置換されていてもよく;
は、それぞれ独立してC1−6アルキルであり、ここでアルキルは、フッ素及びヒドロキシルから独立して選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよく;そして
は、水素又はRである〕で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
が、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
3a及びR3bが共に水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
を付けた2個の立体形成(stereogenic)炭素原子で立体化学配置が示されている構造式Ia及びIb:
【化3】

で示される、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
を付けた2個の立体形成(stereogenic)炭素原子で絶対立体化学配置が示されている構造式Ia:
【化4】

で示される、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
を付けた3個の立体形成(stereogenic)炭素原子で立体化学配置が示されている構造式Ic及びId:
【化5】

で示される、請求項3記載の化合物。
【請求項7】
を付けた3個の立体形成(stereogenic)炭素原子で絶対立体化学配置が示されている構造式Ic:
【化6】

で示される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
Vが、
【化7】

からなる群より選択される、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
Vが、
【化8】

であり、そしてRが、水素、メチル、トリフルオロメチル及びシクロプロピルからなる群より選択される、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
【化9】

からなる群より選択される請求項9記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
請求項1記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
治療の必要性のある哺乳動物でインスリン抵抗性、高血糖症、2型糖尿病からなる群より選択される症状を治療するのに使用される薬剤の製造における、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項13】
メトホルミンをさらに含む、請求項11記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2009−526848(P2009−526848A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555288(P2008−555288)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003558
【国際公開番号】WO2007/097931
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】