説明

糖尿病の治療方法

【課題】薬物療法未経験ヒト患者のII型糖尿病の初回治療方法の提供。
【解決手段】メトホルミンとグリブリドの組合せを用いる。インシュリン抵抗性、および/または食後ブドウ糖変動域および/またはヘモグロビンA1cを低減させ、および/または食後インシュリンを増大させ、それによって糖尿病を治療する薬物療法未経験ヒト患者の糖尿病の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の出願の引用
本出願は1999年11月3日出願の米国特許出願第09/432,465号(代理人書類番号LA0046)の一部継続出願である。
発明の分野
本発明はメトホルミンおよびグリブリドを含む低投与量製剤を用いる薬物療法未経験患者のII型糖尿病の治療方法に関するものであり、この低投与量製剤は、少なくとも実質的に、メトホルミンおよび/またはグリブリドのより高い投与量を含む製剤と比較して、II型糖尿病の処置において、少なくとも実質的に同等の効果を有しつつ、実質的に軽減された副作用を示す。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
特許文献1に開示されたビグアニド抗高血糖薬メトホルミンは、現在、塩酸塩(Glucophage(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Company)の形態で米国において市販されている。
【0003】
II型真性糖尿病の診断および管理は急速に進歩している。血糖コントロールが重要であることは現在広く認められている。今日の糖尿病治療の目的は、できるだけ正常血糖値に近づけ維持し、高血糖値による長期の微小血管および通常の血管の合併症を抑制することである。糖尿病の診断は、新しいADA診断および分類指針によって明示されているように、著しく変化している。II型真性糖尿病治療の経口治療選択肢は現在まで著しく限られていた。1995年まで、スルホニル尿素が米国における経口糖尿病薬の大黒柱であった。スルホニル尿素はベータ細胞からのインシュリン分泌を増加させることによって高血糖値の1つのメカニズムを標的にする。1995年から、3つの新しい薬物が高血糖値管理のための抗糖尿病治療に加わった。メトホルミン、ビグアニド系化合物の一種は、肝臓のブドウ糖産生を抑制し、末梢のブドウ糖の取り込みを増大させ、それによってインシュリン抵抗性を低下させることによる高血糖値の別のメカニズムを標的にする;トログリタゾン、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンなどのチアゾリジンジオン類は末梢のインシュリン抵抗性を低下させる;およびアカルボースおよびミグリトールなどのアルファ−グルコシダーゼ阻害剤は食物の炭水化物の吸収を遅延させることによって、摂取後のブドウ糖可動域の制御を助ける。これらの薬物はすべて単独療法として指示され、あるものは一般に単独療法が不充分であることが判明した後の併用療法として使用が指示される。
【0004】
1995年にメトホルミンが、スルホニル尿素単独療法で血糖コントロールが達成できなかった患者のスルホニル尿素治療に加えられたが、この2つの薬物は、血糖コントロール、すなわちヘモグロビン−A1cの低下に著しい効果があることが判明した。高血糖値を標的とする作用の異なるメカニズムは賛辞に値し、併用使用を魅力的かつ作用の合理的な指針にする。処方箋データはメトホルミン使用の約60%がスルホニル尿素との組み合わせである。
【0005】
メトホルミンとスルホニル尿素のグリブリド(グリベンクラミドともいう)との組み合わせ事例は下記の文献に記載されている:
【0006】
(1)1997年5月22日に公開された特許文献2(バレリら, Istituto Gentili S. P. A.)およびバレリらの特許文献3(以下、バレリらという)は、1:100の重量比でグリベンクラミドとメトホルミンの併用を開示しており、1日当りグリベンクラミド15mgとメトホルミン1500mgの投与量であり、糖尿病の発症から最も重篤な患者に用いられ、特に、2次挫折の事例で1:100以上の重量比のグリベンクラミド−メトホルミン HClの併用使用を記載している。
【0007】
(2)ビニェリら(非特許文献1)は、グリブリド15mg/日で2次挫折のNIDDM患者にメトホルミン1.5g/日とグリブリド15mg/日の使用を記載している。
【0008】
(3)ヒギンボサムら(非特許文献2)は、グリベンクラミド1日当り10mg〜20mgの投与をすでに受けている糖尿病患者に、1日2回メトホルミン500mgでの処置を記載している。ヒギンボサムらは、スルホニル尿素療法で症状の管理が不充分である選択された糖尿病患者では、1日2回メトホルミン500mgの低投与量で糖尿病管理に著しい改善が見られたと結論している。
【0009】
(4)特許文献4(1999年7月14日出願(1998年7月15日に出願の特許文献5に基づく)は、メトホルミンと、以下に記載の特定の粒子径のグリブリドを含む製剤を記載している。
【0010】
メトホルミンとグリピジドの併用を記載している文献は下記のものである:
(1)グリピジド/メトホルミンの併用治療は、DIDDMの動脈血プロテオグリカンに結合する低密度リポタンパク質を低下させる(非特許文献3)。
【0011】
(2)グリピジド/メトホルミンの併用は、ブドウ糖を正常にし、高インシュリン血症のインシュリン感受性を改善し、緩慢に十分制御した(非特許文献4)。
【0012】
(3)NIDDMのLDLの酸化におけるグリピジド/メトホルミンの併用処置の効果(非特許文献5)。
【0013】
(4)インシュリン感受性は、グリピジド単独療法およびメトホルミンとの併用後に改善された(非特許文献6)。
【0014】
(5)かなりの血糖から低血糖コントロールにおけるNIDDM患者のメトホルミン/スルホニル尿素併用治療(非特許文献7)。
【0015】
(6)NIDDM患者のメトホルミン/メトホルミン併用治療(非特許文献8)。
【0016】
(7)スルホニル尿素とメトホルミンによる経口抗糖尿病併用療法(非特許文献9)。
【0017】
(8)グリピジドとメトホルミン併用治療後の糖尿病患者における脂肪パターンの変化(非特許文献10)。
【0018】
(9)糖尿病患者40例におけるグリピジドとジメチルビグアニド併用の結果(非特許文献11)。
【0019】
メトホルミンと別の抗糖尿病薬の他の併用例が下記の文献に記載されている:
【0020】
(1)エフェンディクら(特許文献6)は、メトホルミンとGLP−1(7−36)アミドまたはGLP−1(7−37)またはそのフラグメントの併用を記載している。
【0021】
(2)特許文献7(SKB)は、チアゾリデンジオンとメトホルミンの併用を用いる糖尿病の治療方法を開示している。チアゾリデンジオンはトログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾンまたはエングリタゾンであってもよく、これは1日当り2〜12mgの投与量で用いることができ、一方、メトホルミンは1日当り「3000mg/日まで、500mgの単位投与量で(例えば、2〜3回/日)、または850mg(2回/日)で用いることができ、メトホルミンの投与量の1例は、5回/日まで増やして500mgである。」
【0022】
(3)特許文献8(武田)は、チアゾリデンジオンインシュリン感受性増強剤(例えば、ピオグリタゾン)とメトホルミンの併用を開示している。
【0023】
上記の文献は薬物療法未経験患者の一次治療(first line therapy)にメトホルミンを含む糖尿病薬の併用を示唆するものはない。
【0024】
メトホルミンとグリブリド(グリベンクラミド)のいくつかの固定した組合せは現在米国から販売されている。これらは、(1)メトホルミン400mg/グリベンクラミド2.5mgの組合せ(アルゼンチンのBoehringer's Bi Euglucon;イタリアのBi-Euglicon M;ドミニカ共和国およびイタリアのGuidotti/Menarini's Glibomet;ギリシアのHMR's NormellおよびイタリアのHoechst's Suguan-M;インドのSun Pharma's Glucored;インドのMonsanto's (Searle's) Benclamet;リバンのGuidotti's Glibomet;スロバキア共和国のBerlin Chemie/Menarini's Glibomet、およびウルグアイのRoche's Bi-Euglucon);(2)メトホルミン500mg/グリベンクラミド5mgの組合せ(インドのSun Pharma's Glucored;インドのMonsanto's (Searle's) Benclamet;インドのUSV's Duotrol;およびメキシコのLakeside's (Roche) Bi-Euglucon M5;(3)メトホルミン500mg/グリベンクラミド2.5mgの組合せ(イタリアのMolteni's Glucomide;メキシコのLakeside's (Roche) BiEuglucon MおよびウルグアイのSzabo's Dublex);および(4)メトホルミン1g/グリベンクラミド5mgの組合せ(メキシコのSilanes Sil-Norboral)を含む。
【0025】
医師の卓上参考書の「適応症および使用」の項に、グルコファージ(Glucophage(登録商標)(Bristol-Myers Squibb's metformin)の付箋は、スルホニル尿素に付随させて用いることができると指示されている。さらに、「投与量および投与」、「グルコファージ付随投与と経口スルホニル尿素治療」の項には、「グルコファージ最大投与で4週間患者に変化がなければ、最大投与量のグルコファージを継続しながら、経口スルホニル尿素を除々に加えることを考慮すべきである・・・。グルコファージとスルホニル尿素の併用療法では、血糖値の所望の制御は各薬物の投与量の調整によって得られる。しかし、この目的の達成のための各薬物の最大有効投与量を確認すべきである。」と記載されている。グルコファージの推奨投与計画は、1日当り500mg、2回、または1日当り850mg、1回から始まって、500mgを1週間毎または850mgを2週間毎に増やしていき、1日当り総量2000mgまで増やすというものである。
【0026】
イタリアのBi-Euglucon MおよびSuguan M(メトホルミン400mg/グリベンクラミド2.5mg)の包装箱の使用説明書は、これらの薬物併用は、スルホニル尿素に対する1次または2次抵抗の症例(すなわち、第2期または第3期治療処置)に用いられ、1日当り1/2錠の投与量を、血糖値の変化によって1回に1/2錠を増やしながら、1日当り4錠までの投与量を採用している。
【0027】
イタリアのGlibomet(メトホルミン400mg/グリベンクラミド2.5mg)およびGlucomide(メトホルミン500mg/グリベンクラミド2.5mg)の包装箱の使用説明書は、これらの併用薬物は、制御不可能、すなわち、食餌療法のみまたは食餌療法とスルホニル尿素では制御できない[すなわち、第2期治療の一次治療として]II型糖尿病の治療に用いると記載している。
【0028】
イタリアのGlibometの包装箱の使用説明書は、1日投与量2錠、すなわち、メトホルミン800mgとグリベンクラミド5mg、メトホルミン2gまでと記載している。イタリアのGlucomideの包装箱の使用説明書は、1日投与量2カプセル、すなわち、メトホルミン1000mg、メトホルミン2gまで、およびグリベンクラミド5mgと指示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】米国特許第3,174,901
【特許文献2】WO97/17975
【特許文献3】米国特許第5,922,769号
【特許文献4】米国特許出願第09/353,141号
【特許文献5】欧州特許出願第98401781.4号
【特許文献6】米国特許第5,631,224号
【特許文献7】WO98/57634
【特許文献8】米国特許第5,965,584号
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Treatment of NIDDM Patients with Secondary Failure to Glyburide: Comparison of the Addition of Either Metformin or Bed-Time NPH Insulin to Glyburide, Diabete & Metabolisme, 1991,17,232-234
【非特許文献2】Higginbotham et al, Double-Blind Trial of Metformin in the Therapy of Non-Ketotic Diabetes, The Medical Journal of Australia, August 11,1979,154-156
【非特許文献3】Edwards et al, Diabetes, 46, Suppl. 1, 45A, 1997
【非特許文献4】Cefalu et al, Diabetes, 45, Suppl. 2, 201A, 1996
【非特許文献5】Crouse et al, Circulation, 94, No. 8, Suppl., I508, 1996
【非特許文献6】Cefalu et al, Diabetologia, 39, Suppl. 1, A231,1996
【非特許文献7】Reaven et al, J. Clin. Endocrinol. Metab. 74, No. 5, 1020-26,1992
【非特許文献8】Hollenbeck et al, Diabetes, 39, Suppl. 1, 108A, 1990
【非特許文献9】Haupt et al, Med. Welt. 40, No. 5,118-23,1989
【非特許文献10】Ferlito et al, PROGR. MED. (Roma) 31/6 (289-301) 1975
【非特許文献11】Parodi et al, GAZZ. MED. ITAL. 132/5 (226-235) 1973
【発明の概要】
【0031】
発明の記載
本発明によって、薬物療法未経験ヒト患者における糖尿病、特にII型糖尿病の治療法が提供され、処置を必要とする薬物療法未経験ヒト患者に、一次治療(first line therapy)として、メトホルミンおよびグリブリドの組合せを含む治療的に有効な低投与量医薬製剤を投与する段階を含む。上記組合せは好ましくは、糖尿病治療における一次治療に一般的に許容される医療技術で処方されるようなより高い投与量で用いられるメトホルミンとグリブリドの組合せと、少なくとも実質的に等しい効果を薬物療法未経験患者の糖尿病治療にもたらすが、実質的に軽減された副作用を示す。
【0032】
本発明の方法の1つの態様において、投与されるメトホルミンの1日投与量は800mgより少ない。
【0033】
本発明の方法で用いられる低投与量製剤は、活性抗糖尿病薬成分の出発「低投与量」を含み、糖尿病治療の一次治療の医療技術で一般的に処方される当該薬物の出発投与量よりより低い出発投与量であると理解されるべきである。上記の低投与量医薬製剤は、すなわち、以下に定義される低投与量のメトホルミンおよびグリブリドを含む。
【0034】
本発明によって、薬物療法未経験患者における糖尿病治療の一次治療の効果は、メトホルミンの出発1日投与量が、糖尿病治療の一次治療について一般に許容されている医療技術で用いられるメトホルミンの出発1日投与量の約1/5の低さ(すなわち、1日当りメトホルミン160mgの低さの出発1日投与量)から、糖尿病治療の一次治療または二次治療(second line therapy)について一般に許容されている医療技術で用いられるメトホルミンの1日維持投与量まで(1日当りメトホルミン2000mgまで)を特徴とする低投与量医薬製剤を用いることによって実現される。好ましくは、メトホルミンの最大1日維持投与量は、糖尿病治療の一次治療について一般に許容されている医療技術で用いられるメトホルミンの1日維持投与量の約2/3である。
【0035】
本発明の方法の実施において、メトホルミンの出発1日投与量は、糖尿病治療の一次治療について一般に許容されている医療技術で用いられるメトホルミンの出発1日投与量の約25〜約60%の低さ(すなわち、メトホルミン160〜500mgの1日出発投与量、好ましくはメトホルミン250〜500mg)である。必要ならば、糖尿病治療の一次治療について一般に許容されている医療技術で用いられる1日維持投与量の約40〜約100%、好ましくは約40〜約60%の1日維持投与量まで漸増させることができる(すなわち、320〜2000mgの1日維持投与量、好ましくは320〜1200mg)。
【0036】
本発明の実施において、低投与量医薬製剤は、好ましくは、一次治療において1日投与量で採用され、1日当りメトホルミン約800mgより少なく、好ましくは、1日当りメトホルミン約750mgより多くなく、より好ましくは、1日当りメトホルミン約600mgより多くなく、単一または、1日当り1〜4錠の分割投与量中、1日当り約160〜約500mgの出発投与量、好ましくは1日当り、250mgまたは1日当り500mgで用いられる。
【0037】
グリブリドは、糖尿病治療の一次治療または二次治療について一般に許容されている医療技術で用いられるグリブリドの出発1日投与量の約1/5の低さの出発1日投与量で用いられる(すなわち、0.5mgの最小出発1日投与量)。必要ならば、糖尿病治療の一次治療または二次治療について一般に許容されている医療技術で用いられるグリブリドの1日維持投与量まで漸増させることができる(すなわち、1日当りグリブリド最大15mgまで)。好ましくは、グリブリドの最大1日投与量は、糖尿病治療の一次治療について一般に許容されている医療技術で用いられるグリブリドの1日維持投与量の約2/3である(1日当りグリブリド最大2.5〜10mgまで)。
【0038】
グリブリドは、好ましくは、糖尿病治療の一次治療について一般に許容されている医療技術で用いられるグリブリドの出発1日投与量の約20%〜約60%の低さの出発1日投与量である(すなわち、最小出発投与量0.5mg〜3.5mg、より好ましくは、1.25mg〜3.5mgの低さ)。グリブリドは糖尿病治療の一次治療について一般に許容されている医療技術で用いられるグリブリドの1日維持投与量の約40〜約100%、好ましくは約40%〜約60%までの1日維持投与量まで漸増させることができる(すなわち、最大1日投与量2〜15mg、好ましくは、最大1日投与量2.5mg〜10mg)。
【0039】
グリブリドの上記1日投与量は単一のまたは1日当り1〜4錠の分割投与で投与することができる。
【0040】
メトホルミンとグリブリドは1つの錠剤に製剤化することができ、単一のまたは1日に1〜4回の分割投与で用いることができる。
【0041】
この明細書で用いられる、用語「低投与量の組合せ」、「低投与量製剤」または「低投与量医薬製剤」は、最も好ましい製剤において、出発1日投与量として、メトホルミン250mg、およびグリブリド1.25mg、またはメトホルミン500mg、およびグリブリド2.5mgを含む製剤をいう。
【0042】
現在まで、メトホルミンとグリブリドの併用は、通常まれな例を除いて、II型糖尿病治療の第2治療(二次治療:second line therapy)で用いられてきた。メトホルミンとグリブリドの固定された組合せを採用する第2治療の一般に許容されている医療技術の1日投与量は、メトホルミン400〜500mgおよびグリブリド2〜2.5mgを含有する3〜4錠、すなわち1日当りメトホルミン約1200〜2000mgとグリブリド6〜10mgの範囲である。
【0043】
イタリアで市販されているGlibometおよびGlucomideに関して既述のように(メトホルミンとグリブリドの固定の組合せ)、これらの組合せは、メトホルミン800〜1000mgからメトホルミン2グラムまで、およびグリベンクラミド(グリブリド)5mgの1日投与量で一次治療(薬物療法未経験患者)として用いられる。
【0044】
上記の投与量は、用語、糖尿病治療の一次治療または二次治療について一般に許容されている医療技術で処方される投与量内に含まれる。糖尿病の難治性の症例では、グリブリド15mgまで処方することができる。
【0045】
イタリアで市販されているBoehringerのBi Euglucon MおよびHoechstのSuguan M(メトホルミンとグリブリドの固定の組合せ)に関して既述のように、これらの組合せは、1/2錠、すなわち、メトホルミン200mgとグリベンクラミド1.25mgから出発する1日投与量で第2治療(second line therapy)として用いられる。最初のすなわち出発低投与量は、患者が薬物にその薬物に耐え得るかどうかを決めるために用いられる。さらに、これらの出発投与量の使用を支持する有効な一次治療の臨床的研究は明らかに知られていない。これらの出発投与量は、有効投与量に到達するまで、1日当り4錠まで1回につき1/2錠徐々に増やされる。1/2錠、すなわち、メトホルミン200mgとグリベンクラミド1.25mgの最初のすなわち出発一日投与量は、ここでは、「糖尿病治療の一般に許容されている医療技術で処方される投与量」とは解釈されていない。
【0046】
驚くべきことに、本発明によるメトホルミンとグリブリドの併用(組合せ)使用は下記の利点をもたらすことが判明した。低投与量メトホルミンはインシュリン増感剤であり、肝臓のインシュリン抵抗性を減少させる。低投与量のメトホルミン−グリブリドの併用は、ブドウ糖増感剤としてすい臓に作用する;それはすい臓におけるブドウ糖毒を減少させ、すい臓の機能を改善する。
【0047】
さらに、本発明によって、薬物療法未経験ヒト患者における糖尿病、特にII型糖尿病の治療方法が提供され、処置を必要とする薬物未経験ヒト患者に一次治療として、メトホルミンとグリブリドの組合せを含む出発低投与量医薬製剤を投与する段階を含む。この出発低投与量の組合せは、糖尿病治療における一次治療について、一般的に許容される医療技術で処方される投与量(出発投与量を含む)で用いられるメトホルミンとグリブリドの組合せと実質的に等しい効果を薬物療法未経験患者の糖尿病治療にもたらすが、実質的に低減した副作用を示す。
【0048】
メトホルミンの出発1日投与量は、糖尿病治療の一次治療で一般に許容されている医療技術で用いられるメトホルミンの出発1日投与量の約20%の低さであり、好ましくは約160〜約500mgの出発1日投与量であり、より好ましくは250mgまたは500mgの出発1日投与量である。
【0049】
グリブリドの出発1日投与量は、糖尿病治療の一次治療で一般に許容されている医療技術で用いられるグリブリドの出発1日投与量の約20%の低さであり、好ましくは約0.625〜約5mgの出発1日投与量であり、より好ましくは1.25mgまたは2.5mgの出発1日投与量である。
【0050】
さらに、本発明によって、ヒト糖尿病患者における空腹時血漿中ブドウ糖を減少、インシュリン抵抗性を減少、ヘモグロビン−A1cを減少、食後のインシュリンを増加および/または食後のブドウ糖変動域を減少させる方法が提供され、この方法は、一次治療として、薬物療法未経験ヒト患者に、メトホルミンとグリブリドの組合せを含む低投与量医薬製剤を投与する段階を含む。
【0051】
糖尿病の薬物療法未経験患者を治療するために、メトホルミンとグリブリドを含有する好ましい出発低投与量医薬製剤を用いる本発明の方法の実施において、薬物療法未経験患者の治療における効果は、少なくとも実質的に等しく、副作用(消化管副作用および低血糖)の発生率は、メトホルミンとグリブリドのより高い1日投与量(糖尿病治療の一般に許容されている医療技術で処方される出発投与量)の患者の場合と比較して驚くべきことに著しくかつ実質的に減少した。すなわち、測定時間中の基準値(baseline)からのヘモグロビン−A1c(HbA1c)の減少、空腹時血漿ブドウ糖(FEG)の減少、食後インシュリン濃度の増加および食後ブドウ糖(PPG)変動域の減少によって測定される薬物療法未経験患者の治療効果は、ここで用いられる低投与量医薬製剤を用いたときと、実質的により高い1日投与量を用いたときの上記患者において、本質的にかつ実質的に等しく、実質的により高い投与量で処置された薬物療法未経験患者における低血糖症および腸管副作用の発生率は、低投与量医薬製剤で処置された患者より実質的に高い。
【0052】
ここで用いられる最も好ましい投与量は、メトホルミン250mg/グリブリド1.25mg、およびメトホルミン500mg/グリブリド2.5mgである。
【0053】
メトホルミンおよびグリブリドの低投与量医薬製剤は、II型糖尿病患者の血糖コントロールを改善させるための食事および運動の補助手段としての最初の治療として採用される。
【0054】
ADAは、冠状心疾患および微小合併症を含むII型糖尿病の合併症の危険を低減するためにHbA1cの治療目標値<7%を推奨している(ADA. Diabetes Care 21 [Suppl. 1] : S23-S31, 1998)。
【0055】
好ましいメトホルミン−グリブリドの組合せは効果と許容性の療法に基づいて個別的に配慮されなければならない。好ましくは食事とともに投与され、低投与量で開始し、次第に投与量を増加すべきである。理想的には、治療に対する応答を、FPG単独より長期の血糖コントロールのよりよい指標であるHbA1c(グリコシル化ヘモグロビン)を用いて評価しすべきである。すべてのII型糖尿病患者の治療目的は、FPG、食後のブドウ糖およびHbA1cの値をできるだけ正常値に近づけることを含む血糖コントロールを改善させることである。患者は最大推奨投与量までの投与勧告に従ってHbA1c<7%のADAの目標値に到達するまで除々に増量投与される(ADA. Diabetes Care 21 [Suppl. 1] : S23-S32, 1998)。
【0056】
最初の治療として、メトホルミン−グリブリドの組合せの好ましい初回投与量は、食事とともに1日1回250/1.25mgである。最低値HbA1c>9%または空腹時ブドウ糖>200mg/dLの患者については、朝夕食とともに1日2回250/1.25mgの推奨初回投与量が好ましい。投与量は好ましくは、十分な血糖コントロールを達成するために必要な有効最小限投与量まで、2週間ごとに250/1.25mgずつ増加させる。さらに血糖コントロールが必要な患者について、250mg/1.25mg投与量を500mg/2.5mgに切りかえる。
【0057】
好ましい低投与量メトホルミン−グリブリド製剤を下記に記載する。
【表1】

【0058】
特に好ましい低投与量メトホルミン−グリブリド製剤は下記のものである:
【表2】

【0059】
メトホルミン−グリブリド含有低投与量医薬製剤は、好ましくは欧州特許出願第98401781.4号(1998年7月15日出願)を優先権主張の基礎とする米国特許出願第09/353,141号(1999年7月14日出願)に記載の指示書によって製剤化され、米国特許出願をここに引用してこの明細書の記載とする。
【0060】
本発明の方法で用いられる錠剤などの固形の経口形態の好ましい低投与量医薬製剤は、米国特許出願第09/353,141号(1999年7月14日出願)に記載のメトホルミン−グリブリドの組合せを含み、メトホルミンとグリブリドの別々の投与で得られるグリブリドの生物学的利用率に匹敵するグリブリドの生物学的利用率を有するグリブリドを含む。これは所定の粒径分布のグリブリドを用いることによって実現される。すなわち、メトホルミンとグリブリドの製剤は、グリブリドの大きさが、多くても粒子の10%が2μmより小であり、多くても粒子の10%が60μmより大である、メトホルミンとグリブリドの組合せを含む。より好ましくは、グリブリドの大きさが、多くても粒子の10%が3μmより小であり、多くても粒子の10%が40μmより大である、メトホルミンとグリブリドの組合せのものである。グリブリドの具体的な大きさの範囲は篩分けまたは空気ジェット製粉によって得ることができる。
【0061】
第2の具体例では、低投与量固形経口投与形態は、グリブリドの大きさが、多くても粒子の25%が11μm以下であり、粒子の最大25%が46μm以上である、メトホルミンとグリブリドの組合せのものである。
【0062】
好ましくは、粒子の50%が23μm以下である。
最も好ましくは、メトホルミンとグリブリドの組合せであり、約25%のグリブリドが粒径6μm以下であり、約50%のグリブリドが粒径7〜10μm以下であり、約75%のグリブリドが粒径23μm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用(組合せ)製剤の錠剤数による、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の変化を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図2】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の錠剤数による、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の変化を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図3】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の経時変化を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図4】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の経時変化を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図5】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の経時変化を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図6】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の錠剤数による、空腹時血漿ブドウ糖(FPG)の変化を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図7】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の基準値および食後インシュリン値を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図8A】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の、基準値時のPPG変動域を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図8B】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の、投与20週間投与後のPPG変動域を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図9】次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の、低血糖症状を示した被験者数を、グリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【図10】一次治療で用いたメトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の、胃腸副作用の頻度をグリブリドとメトホルミンのそれぞれ単独治療と対比して示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
発明の詳細な記載
この明細書で用いられる用語「糖尿病」は、II型糖尿病、すなわち、インシュリン−非依存性糖尿病(NIDDM)をいう。
【0065】
この明細書で用いられる用語「メトホルミン」は、メトホルミンまたは、塩酸塩、メトホルミン(2:1)フマール酸塩、1999年3月4日に出願の米国特許出願第09/262,526号に開示されているメトホルミン(2:1)コハク酸塩、臭化水素酸塩、p−クロロフェノキシアセテートまたはエムボネート、および米国特許第3,174,901号に開示のものを含む公知のメトホルミン一塩基または二塩基酸塩などの医薬的に許容され得るそれらの塩をいい、これらすべての塩を一まとめにしてメトホルミンという。好ましくは、ここに用いられるメトホルミンはメトホルミン塩酸塩であり、グルコファージ(登録商標)(ブリストル−マイヤーズ・スクイブ・カンパニーの登録商標)である。
【0066】
この明細書で用いられる「実質的に軽減された副作用」とは、より高投与量であるが、本発明の医薬製剤の同じ活性成分に対する患者と比較して、薬物療法未経験患者における低投与量医薬製剤の使用による、低血糖および、下痢、吐き気および/または嘔吐、腹痛を含む腸管の副作用症状の発生が低減されることをいう。
【0067】
この明細書で用いられるII型糖尿病における「少なくとも実質的に等しい効果」とは、より高投与量であるが、本発明の医薬製剤の同じ活性成分によって処置される患者と比較して、ヘモグロビンA1c(グリコシル化ヘモグロビン)を7%以下に減少または維持、(食後のインシュリン濃度増大による)インシュリン抵抗性を減少および/または食後のブドウ糖(PPG)の変動域を減少させる、薬物療法未経験患者の処置における低投与量医薬製剤の効果をいう。
【0068】
この明細書で用いられる用語「食後の変動域(post-prandial excursion)」とは、食後のブドウ糖(PPG)と空腹時血漿ブドウ糖(FPG)の差をいう。
【0069】
グリブリドと組合せるメトホルミンを含有する低投与量医薬製剤は、同一の投与剤または別の経口投与剤として経口投与されるか、または注射によって投与され得る。
【0070】
グリブリドと組合せるメトホルミンの使用は、これらの医薬単独のそれぞれから生じる可能性のある効果、およびこれらの医薬の併用によって生じる相加的な抗−高血糖作用より大きい抗高血糖効果を生じさせる。
【0071】
メトホルミンはグリブリドとの重量比で、約1000:1〜約10:1、好ましくは約400:1〜約50:1、より好ましくは約200:1〜約100:1の範囲内で用いられる。
【0072】
本発明の方法の実施において、低投与量医薬製剤または組成物は、医薬的担体または希釈剤とともにメトホルミンおよびグリブリドを含んで用いられる。低投与量医薬製剤は、通常の固体または液体の担体または希釈剤および所望の投与方法に適した種類の医薬的添加物を用いて製剤化され得る。低投与量医薬製剤は、ヒト、サル、犬を含む哺乳動物に、錠剤、カプセル、顆粒または粉末などの形態で経口投与によって投与されるか、または注射製剤の形態で非経口投与され得る。薬物療法未経験患者に対する投与量は上記に記載されており、単一投与または1日当り1−4回の分割投与が可能である。
【0073】
上記の投与剤形はまた、必要な生理学的に許容され得る担体物質、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、抗菌剤、増量剤(たとえばマンニトール)、酸化防止剤(アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム)等も含有していてもよい。
【0074】
投与用量は、患者の年令、体重および症状、および投与経路、投与剤形、生活規制および所望成果に応じて、注意深く調整しなければならない。
【0075】
メトホルミンまたはその塩とグリブリドの組合せは、通常の処方手順を用いて、それぞれ別々に、あるいは可能な場合には1つの製剤で調合することができる。
【0076】
本発明の各種製剤は、所望により、約0〜90重量%、好ましくは約1〜80重量%範囲内の量の1種以上の充填剤または賦形剤、たとえばラクトース、糖、コーンスターチ、変性コーンスターチ、マンニトール、ソルビトール、無機塩(炭酸カルシウムなど)および/またはセルロース誘導体(木材セルロース、微結晶セルロースなど)を含有してもよい。
【0077】
上記充填剤に加えてまたは代えて、1種以上の結合剤を、組成物全量中約0〜35重量%、好ましくは約0.5〜30重量%範囲内の量で存在させてもよい。本発明の使用に好適な上記結合剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン(分子量約5000〜80000、好ましくは約40000)、ラクトース、スターチ(コーンスターチ、変性コーンスターチなど)、糖、アラビアゴム等、および微粉末形状(500ミクロン以下)のワックス結合剤、たとえばカルナバワックス、パラフィン、鯨ろう、ポリエチレンまたは微結晶ワックスが挙げられる。
【0078】
組成物が錠剤の形態である場合、組成物は、組成物全量中約0.2〜約8重量%、好ましくは約0.5〜約2重量%範囲内の量の1種以上の錠剤成形用滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、滑石、カルナバワックス等を含有する。所望により存在させうる他の通常の成分としては、保存剤、安定化剤、粘着防止剤もしくはシリカ流動調節剤または滑剤(glidants)、たとえばSyloidブランド二酸化珪素並びにFD&C着色剤が挙げられる。
【0079】
また錠剤は、錠剤組成全量中0〜約15重量%を含むコーティング層を有することができる。包埋された内部固体相の粒子を含有する外部固体相に塗布されるコーティング層は、通常のコーティング配合物を含むことができ、1種以上のフィルム形成剤または結合剤、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーやエチルセルロース、および/またはメタアクリル酸エステル中性ポリマー、エチルセルロース、セルロースアセテート、ポリビニルアルコール−無水マレイン酸コポリマー、β−ピネンポリマー、ウッドレジン(wood resins)のグリセリルエステルなどの疎水性ポリマー等、および1種以上の可塑剤、たとえばトリエチルシトレート、ジエチルフタレート、プロピレングリコール、グリセリン、ブチルフタレート、ヒマシ油等を含有する。錠剤コアとコーティング配合物は共に、着色のためアルミニウムレーキを含有し得る。
【0080】
フィルム形成剤は、1種以上の溶剤を含有する溶剤系から採用され、かかる溶剤としては、水;メチルアルコール、エチルアルコールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール;アセトンまたはエチルメチルケトンなどのケトン;塩化メチレン、ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンなどの塩素化炭化水素が挙げられる。
【0081】
着色剤を用いる場合、着色剤はフィルム形成剤、可塑剤および溶剤組成物といっしょに塗布される。
【0082】
最終の投与形態は圧縮錠剤かまたはゼラチン硬カプセルであり、好ましくは錠剤である。錠剤は所望によりフィルムでコーティングされていてもよい。単位投与形態当りの薬物の量は、患者に都合のよい大きさの投与形態を提供する量である。
【0083】
錠剤の形態の低投与量医薬製剤は米国特許出願第09/353.141号(1999年7月14日出願)に開示されており、下記の工程を含む方法によって得ることができる。
a)メトホルミンとグリブリドの混合物の湿式造粒による顆粒の形成
b)顆粒と錠剤補助剤および希釈剤との混合
c)得られた混合物を錠剤に打錠
【0084】
顆粒形成に用いられる混合物は顆粒結合剤を含む。顆粒結合剤は好ましくは、ポリビニルピロリドンであって、例えば、分子量45,000のポリビニルピロリドンなどである。ポリビニルピロリドンは最終錠剤の2〜4重量%の比率で用いることができる。
【0085】
造粒工程後、顆粒は篩にかけられ、乾燥される。
【0086】
顆粒はついで、希釈剤および補助剤と混和される。希釈剤は、微結晶セルロースなどの通常錠剤の製造に用いられる充填剤であってもよい。錠剤補助剤はステアリン酸マグネシウムなどの通常用いられる材料である。
【0087】
このようにして得られた錠剤は所望により、親水性セルロースポリマーおよび滑石でコーティングされる。親水性セルロースポリマーは好ましくは2−ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は本発明の好ましい態様を示す。
実施例1〜3
メトホルミン/グリブリドの組み合わせを含有する錠剤を以下のようにして調製した。
メトホルミン塩酸塩/グリブリド錠剤組成物
250mg/1.25mg、500mg/2.5mgおよび500mg/2.5mg
【表3】

* 99.5%メトホルミンHClおよび0.5%(w/w)Mgステアレート含有
** HPMC基材とするフィルム皮膜を用いた。
【0089】
メトホルミン塩酸塩−グリブリド錠剤製剤、250mg/1.25mg、500mg/2.5mgおよび500mg/5mgを同じ造粒物から圧縮成形した。低濃度の錠剤は、メトホルミン塩酸塩−グリブリド 500mg/2.5mg錠剤の半分の重量で圧縮成形した。臨床試験用に製造した錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)フィルム皮膜でフィルム・コーティングした。フィルム皮膜は非機能性で、きれいにする目的で付した。臨床用製剤に付したフィルム皮膜は透明であった。
【0090】
臨床用製剤の製造工程は以下のとおりであった。
クロスカルメロースナトリウムとグリブリドを一緒に分散させ、メトホルミン塩酸塩/ステアリン酸マグネシウム(99.5%:0.5%w/w)と高速攪拌機で混合した。得られた乾燥混合物をポビドン水溶液に加えて高速攪拌造粒機で造粒し、流動層造粒乾燥機を用いて約60℃で乾燥し、乾燥減量により測定した指定の水分含量とした。乾燥した造粒物をスクリーニング(篩)ミルで小さくし、回転式ミキサーを用いて微結晶性セルロースと混合した。滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを、回転式ミキサーを用いて混合し、最終圧縮混合物を得た。
【0091】
得られた混合物を圧縮成形して錠剤とし、適当な錠剤圧を用い、製造過程の水分含量測定を基にして所望の重量とした。理論的錠剤重量(水分含量を調整することなく、処方組成を基にした)は250mg/1.25mg濃度製剤には300mg、500/2.5mg濃度製剤には600mgであった。
【0092】
所望量のフィルム皮膜がコーティングされるまで、錠剤を穴の開いたコーティングパン内で、適当な非機能性HPMCを基材とする水溶性のフィルムコーティング系でフィルム・コーティングした。錠剤に付すフィルム皮膜の標準的な濃度は2%w/wであった。
【0093】
基本形の併用錠剤処方のインビボ評価により、臨床プログラムでの使用を目的とした粒径分布を同定し、併用製剤からミクロナーゼ(Micronase)に匹敵するバイオアベイラビリティを得た。グリブリドのいずれのロットにおいても粒径分布は3種類の粒径累積値基準、25%の粒径以下値(undersize value)、50%の粒径以下値(中央粒子径(mass median particle size, MMPS)としても知られている)、および75%の粒径以下値で示した。臨床プログラムは、25%のグリブリドが粒径4〜7μmの範囲、50%のグリブリドが粒径8〜14μmの範囲、および75%のグリブリドが粒径17〜26μmの範囲である、合計6種類のグリブリド原薬ロットを用いた。これらすべてのグリブリドの6ロットは同一の製造供給元、プロファルマコ(Profarmaco)により製造され、これらの4つはプロファルマコにより微製粉化された。この得られた4ロットの粒径分布は以下の表に詳細に記載する。
【0094】
グリブリド原薬の粒径データ
臨床プログラムで用いたバッチ
【表4】

粒径Aはレーザー光分散、照会#CRM8532(#SM 248533)法で測定した。
【0095】
提案する粒径規格は、許容できる中央粒子径(50%の粒径以下値)およびそれより低い四分位の上限(25%の粒径以下値)、および上位四分位(75%の粒径以下値)の範囲の、上記の3つの累積粒径標準を含んでいた。グリブリド用に設定された粒径規格は、バイオアバイラビリティ試験に用いたグリブリドの粒径、多様な臨床用ロットの経験、市販のグリブリドの粒径分布とよく似かよった特徴、および粒径方法精度に基づく。下記の粒径基準は、メトホルミン塩酸塩−グリブリド錠剤からのグリブリドの溶出とバイオアバイラビリティを確実なものにした。
【0096】
25%が粒径6μm以下である。
50%が粒径7〜10μmの範囲である。
75%が粒径23μm以下である。
【0097】
実施例4
A.5種類の臨床プロトコールの概要
(1)目的
以下の実験は、II型糖尿病の患者で食事療法と運動療法では充分な血糖コントロールが得られない、薬物療法未経験患者における、プラセボと、メトホルミン/グリブリドの固定併用製剤の2つの投与濃度(実施例1および2で記載)の血糖コントロールを比較するために行った。評価した固定併用製剤の投与濃度は、メトホルミン250mgとグリブリド1.25mg、およびメトホルミン500mgとグリブリド2.5mgであった。血糖コントロールは長期間血糖コントロールの一番の基準指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)で判断した。20週間治療期間(4週間は1日1回安定投与、4週間は徐々に増量し、ついで12週間は安定投与)後の、HbA1c値の基準値(baseline)からの平均変化を比較した。治療段階はさらに12週間継続して薬効の持続性を評価した。
【0098】
固定併用製剤の個々の成分の寄与を、4週間の1日1回安定投与後の、併用治療群と単独治療群の、短期間血糖パラメーターを比較して評価した。スルホニル尿素と比較して、規定投与量の併用製剤での低血糖と同様の発生率で、あるいはメトホルミン単独治療と比較して、胃腸への副作用の減少傾向により、血糖コントロールを達成した。各薬剤単独治療と比較して、有害作用の減少傾向で血糖コントロールを達成した。低血糖、胃腸症状、および乳酸塩値の動向を評価した。
【0099】
(2)実験場所および被験者集団
適格被験者は薬物療法未経験か、あるいはスクリーニング前2ヶ月間は経口抗高血糖治療を受けていないものであった。米国で約100の実験拠点と最大で約800人の被験者を募った。適格被験者は、30歳〜78歳までの確立したII型糖尿病の患者で、食事療法や運動療法では充分な血糖コントロールが出来ない糖耐性障害あるいは空腹時血糖障害の履歴がある男女を含んでいた。
【0100】
(3)実験計画およびその期間
この実験は34週間、多施設・無作為化・プラセボ比較・二重盲検・平行臨床試験で、任意の長時間で、非盲検(open-label)治療相で行った。
【0101】
(4)結果指標
32週間の無作為化治療期間で得られたすべてのデータを入手後、第B相および第C相試験の結果指標の分析を行った。
【0102】
有効性の評価の可能な一次効果は、無作為化治療20週間後のプラセボと比較した、2つの併用治療のHbA1cの基準値からの変化である。
【0103】
二次結果は以下のものを包含する:
・20週間と32週間の無作為化治療後、有害作用、特に低血糖と胃腸副作用の発生を治療群間で比較した。
・20週間と32週間の無作為化治療後、治療的血糖応答を示した被験者数と割合を治療群間で評価した。
・20週間と32週間の無作為化治療後、空腹時および食後2時間血糖値とインシュリン値の減少を治療群間で判断した。
【0104】
B.理論的解釈
メトホルミンとグリブリドなどのスルホニル尿素は、II型糖尿病の治療において、公知の有効な併合治療剤である。この2つの薬剤は併用するとブドウ糖低下に相乗作用を示す。これらの薬剤はいずれも単独で初回単独治療に用いられている。またこれらの薬剤は、いずれも単独治療が不十分な場合に、互いに併用して用いられている。初回使用のための低投与量併用治療の使用に関してのデータは現在のところ無い。
【0105】
食事療法や運動療法では十分な血糖コントロールが得られないII型糖尿病の被験者において、固定投与の組合せ錠剤による治療は、一次治療として血糖コントロールを改善することが期待されていた。低投与量で、単独治療よりも、各々の薬剤に匹敵するかまたはそれより弱い副作用で、および投与の簡便さで、血糖コントロールが達成されると期待されていた。
【0106】
食事療法や運動療法では十分な血糖コントロールが得られないII型糖尿病患者に対する、この無作為化・二重盲検・プラセボ比較実験により以下の仮定につき試験した。
1.食事療法や運動療法では十分な血糖コントロールが得られないII型糖尿病患者に、固定投与量のメトホルミン/グリブリドの併用製剤を20週間(第B相では1日1回安定投与を4週間、および第C相での治療を16週間)投与することにより、プラセボと比較してHbA1cを有意に減少させる。
【0107】
2.食事療法や運動療法では十分な血糖コントロールが得られないII型糖尿病患者に、固定投与量のメトホルミン/グリブリド併用製剤を32週間被験者へ投与は、充分に容認される。
【0108】
C.目的
(1)一次
経口投与20週間後、HbA1c値減少に対する血糖コントロールのために徐々に増量した、固定併用製剤メトホルミン/グリブリド錠剤の2つの投与濃度(実施例1および2)の効果を、プラセボと比較すること。
【0109】
(2)二次(以下のものを含む)
1.無作為化治療の20週および32週後、治療群間の安全性および許容性を評価すること。固定投与量の併用製剤での血糖コントロールは、スルホニル尿素単独治療と比べて低血糖の発生率が同程度、またはメトホルミン単独治療と比べて胃腸に対する副作用が減少して達成される。
【0110】
2.メトホルミン単独治療、グリブリド単独治療、およびプラセボ処置と比較して、各メトホルミン/グリブリド併用処置の経口投与により、血糖コントロールの治療応答を示す患者の割合を、20週後または32週後に評価すること。治療的血漿ブドウ糖応答をFPG<126mg/dL(FPGに関する現行のADAガイドラインに基づいて)として定義する。HbA1cの治療的応答はHbA1c<7%として定義する。
【0111】
3. 20週後および32週後に、メトホルミン単独治療、グリブリド単独治療およびプラセボによる空腹時血糖、食後2時間血糖およびインシュリン値の減少と比較して、各固定のメトホルミン/グリブリド併用の処置の経口投与後、空腹時血糖、食後2時間血糖およびインシュリン値の減少を評価すること。
【0112】
4.固定のメトホルミン/グリブリド併用製剤の投与32週間後の、HbA1c値の減少の持続性を評価すること。
【0113】
5.固定のメトホルミン/グリブリド併用製剤の、長期間安全性および薬効を評価すること。
【0114】
D.実験計画
これは、食事療法や運動療法で充分な血糖コントロール(HbA1c<7%)が得られないII型糖尿病患者に対する一次治療として、固定のメトホルミン/グリブリド併用錠剤の抗高血糖活性の、多地点・無作為化・5治療群・平行群・2重盲検・プラセボ比較試験であった。患者は薬物療法未経験であるか、スクリーニング前2ヶ月間は経口抗高血糖治療を受けていないものであった。約100の米国の施設で、食事・運動療法で充分な血糖コントロール(7〜11%のHbA1c値で規定)が得られなかった、最大800人のII型糖尿病患者が参加した。一次効果を得るために必要な最小患者数は各群につき総数500人〜100人であった。しかしながら、更に安全な情報を得るために、募集を6ヶ月間継続して行い、各群につき最大150人の患者を募集した。治療計画は以下の3段階を含む。
【0115】
(1)A期間−2週間の食餌療法およびプラセボ導入段階
この初期段階は、ADAガイドラインに沿ったカロリーと体重維持糖尿病用制限食、または炭水化物約55%、タンパク質20%、および脂質25%からなる完全栄養食での食事療法指示を含んでいた。多数のカプセルや錠剤投与の許容性をプラセボと比較して判断した。家庭用ブドウ糖メーター(home glucose meter)はその使用説明書とともに配給された。
【0116】
(2)B期間−4週間の2重盲検1日1回安定投与段階
B段階は、無作為化、2重盲検、平行4重ダミー治療段階から始まった。適格な患者を、プラセボ、グリブリド単独治療、メトホルミン単独治療、および投与濃度が異なるメトホルミン/グリブリドの併用製剤が2種類(実施例1および2)からなる、5治療群の1群に無作為分類した。被験者を4週間1日1回投薬し、併用製剤の各成分の寄与を短期間血糖パラメーターで評価した。
【0117】
1日1回安定投与のこの4週間段階は、短期間糖パラメーターを用いて、固定の併用製剤の個々の成分の寄与を示した。血糖コントロールはフルクトサミンおよび空腹時血糖値で評価した。
【0118】
(3)C期間−28週間の2重盲検漸増(titration)および安定投薬段階
C期間は、無作為化、2重盲検治療段階の続きである。最初の4週間をかけて、被験者に血糖コントロールのために徐々に増量して投与し、ついで投与量を24週間安定投与治療期間の間一定に保った。一次効果、つまりプラセボに対する2種の併用治療(実施例1および2)でのHbA1cの基準値からの変化を、20週間の無作為化・2重盲検治療後の、C期間の16週目に分析した。これは、プラセボ処理の患者の多くが治療期間の延長による不充分な血糖コントロールのため、無作為化実験投薬を中断せざるを得ないであろうと予想されるので、HbA1cの安定化に十分な時間であり、かつその安全性の理由から、この時点で行なった。薬効の欠如のため無作為化実験投薬を中断する必要のない被験者に対しては、合計24週間の安定投薬を継続し、薬効の持続性を評価し、さらなる安全性と許容性のデータを集めた。実験は盲検のままとし、薬効の欠如により無作為化実験投薬を中断した被験者は、固定の併用製剤の、長時間・非盲検治療段階の開始に適していた。
【0119】
この28週間段階は、血糖コントロールを改善するため投与量を徐々に増量していく最初の4週間増量期間、ついで24週間の安定投薬期間から成っていた。一次効果の分析をC期間の16週間目に行った。被験者は、ビジット(visit)C1から始まりC85までの血糖コントロールの不足による無作為化実験投薬の中止につき評価した。被験者はビジットC113、および無作為化治療の終了までそれ以後のすべてのビジット時点で、薬効の不足を評価した。無作為化実験投薬の割り当ては盲検のままに保った。無作為化実験投薬に残った被験者は合計28週間の安定投薬期間を継続し、薬効の持続性の判定および追加の安全性および許容性のデータを集めた。ビジットC1(0週目、C期間)におけるまたはそれ以後の血糖コントロールの欠如による実験投薬の中止につき、被験者を評価した。
【0120】
投薬
この実験での治験薬は以下のように定義する:プラセボ、グリブリド、メトホルミン、メトホルミン/グリブリド 250/1.25mgおよびメトホルミン/グリブリド 500/2.5mg。盲検の目的のため、本実験は4重ダミー投与計画を採用した。A期間の血糖基準を満たし、いかなる臨床試験除外基準にふれることなく試験対象患者基準に合致する患者がA期間への参加に適していた。
【0121】
A期間:
この期間は、四重ダミー投与計画に対する適応性を評価することに加えて、多数のカプセルおよび錠剤を摂取することに対する患者の許容性をテストするための単純盲検プラセボ導入部であった。患者は、被験薬物に相当するプラセボ4ボトルを含むキットを受け取った。
【0122】
第0週(ビジットA1)−被験者は、午前中の第1食時に各ボトルから1カプセルまたは1錠を飲むよう指示された。
【0123】
第1週(ビジットA8)−被験者は、1日の第1食時に各ボトルから1カプセルまたは1錠を飲み、夕食時に各ボトルから第2のカプセルまたは錠剤を飲むよう指示された。
【0124】
B期間:
単純盲検プラセボ導入部期(A期間)の終了後、無作為化二重盲検処置段階(期間B)における療法を開始する被験者を選んだ。ビジットA15/B1では、プラセボ、グリブリド2.5mg、メトホルミン500mg、メトホルミン−グリブリド250/1.25mgまたはメトホルミン−グリブリド500/2.5mgの毎日朝食時1回投与に、被験者を無作為に区分けした。毎日1回投与を全部で4週間持続した。
【0125】
C期間:
4週間安定毎日1回投与期(期間B)終了後、28週漸増/安定投与処置において、被験者に同じ無作為化療法を行った(期間C)。被験薬物をビジットC1、C15およびC29で漸増させた。薬物投与は、最初の朝食時および夕食時に行った。到達可能な最大投与量は、グリブリド10mg、メトホルミン2000mg、メトホルミン−グリブリド1000/5mg、メトホルミン−グリブリド2000/10mgであった。期間Cにおける4週漸増相後、被験者は、期間Cの残りは被験薬物の安定投与を継続した。
【0126】
適切な血糖コントロールが達成されるかまたは最大投与量に到達したら、被験薬物は増加せず、記録された低血糖症にしたがって減少させただけであった。
【0127】
結果
上記実験から得られた結果は、低投与量の本発明メトホルミン−グリブリド(250/1.25)製剤が、高投与量のメトホルミン−グリブリド(500/2.5)製剤と少なくとも本質的に同等の血糖コントロールを達成したことを示す。その証拠は以下の通りである:
【0128】
(1)ヘモグロビンA1cについての治療的応答、すなわち、20週(図1、2および3)、20ならびに32週および最終ビジット(図4および5)における7%以下(平均基準値(baseline)8.2%から)のHbA1cの減少
【0129】
(2)空腹時血糖(FPG)についての治療的応答、すなわち、20週後における126mg/dl以下(基準値約175mg/dlから)のFPGの低下(図6に示すように)
【0130】
(3)食後インシュリン濃度についての治療的応答、すなわち、19〜25μiu/ml(マイクロイターナショナルユニット/ml)の食後インシュリンの増加(図7)
【0131】
(4)食後血糖変動域(PPG)(すなわち、食後血糖と空腹時血糖との間の差異)についての治療的応答、すなわち、第20週において、メトホルミン15.2、グリブリド6.8に対する、500/2.5mgの組合せでは17.7および250/1.25mgの組合せでは20.8という食後血糖変動域における減少(図8Aおよび8B)。
【0132】
同時に、本発明低投与量製剤を用いる場合の上記効果の結果から、副作用の発生率の低下が達成された(図9および10)。
【0133】
図9からわかるように、本発明の低投与量製剤を用いる場合(実施例1)の低血糖の発生率は、糖尿病の治療用に一般に認められている医療技術に用いられる先行技術の高投与量製剤を用いる場合(実施例2)に起こる副作用の約1/3以下である。
【0134】
図10からわかるように、本発明の低投与量製剤を用いる場合(実施例1)の腸管副作用の発生率は、糖尿病の治療用に一般に認められている医療技術に用いられる先行技術の高投与量製剤を用いる場合(実施例2)に起こる副作用の20%以下である。
上記結果の検討を以下に示す。
【0135】
結果の検討
II型糖尿病の進行には時間がかかり、ほとんどの患者が、糖尿病と診断される時点で、既に多くの生理学的欠陥を有している。ここ2、3年まで、II型糖尿病の治療のための経口療法上の選択肢は、非常に限定されていた。さらに、長期間にわたる持続的な疾患の進行において、すべての経口抗高血糖療法は、効果が低くなり、患者にとって不十分な血糖コントロールに至ることが予測される。
【0136】
血糖のコントロールにおいて、最初の単独薬剤療法が効果的でないことがわかった場合(“一次挫折(primary failure)”と呼ばれる)または最初は有効であった薬剤が効果的でないことがわかった場合(“二次挫折(secondary failure)”と呼ばれる)、組合せ療法が第2方針として伝統的に指示されてきた。効き目がなくなっている1つの単独療法から別の単独療法への切り替えは、血糖コントロールの達成において効果的であることが証明されていない;
【0137】
異なる作用メカニズムをもつ第2の薬剤の追加のみが、血糖コントロールを改善することがわかっている。インシュリン抵抗性および相対的インシュリン分泌不全の組合せがII型糖尿病の病態生理学的基盤であるとすれば、薬剤の組合せが、より大きい治療的可能性を提供することが予測される。したがって、臨床的経験および病態生理学的証拠の両方が、疾患プロセスの初期における組合せ療法の使用を支持している。
【0138】
メトホルミンとグリブリドの固定組合せ剤は、新規な概念ではなく、前記で検討したように、その異なる形態が初回および第2の治療として米国以外で利用可能であるが、薬物療法未経験患者における一次治療としての低投与量または中投与量での組合せ療法の使用は、大規模にコントロールされた臨床試験では、これまでに研究されていない。ADAによって推奨されているように、HbA1c<7%という正常血糖値に近い目標へ向けての治療が、いずれの抗高血糖療法もがめざす目標である。しかし、糖尿病の期間およびこの疾患の進行しだいで、単独薬物は、新たに診断された患者に彼らの標的目標に至るのに必要な効果をもたらさないかもしれない。この概要において示されたデータは、低投与量のメトホルミン−グリブリドの固定の組合せ製剤が、安全であり、ほとんどの薬物療法未経験患者にADAの推奨する血糖目標値に至るのに必要かつ有効な抗高血糖能力をもたらすという証拠を提供する。
【0139】
メトホルミン−グリブリドが200:1の比率であるメトホルミン−グリブリドの固定組合せ単一製剤という一次治療を、低投与量(メトホルミン−グリブリド250/1.25mg)および中投与量(メトホルミン−グリブリド500/2.5mg)の2つの異なる投与量濃度を用いて評価した。固定の組合せメトホルミン−グリブリド製剤の2つの投与量濃度を、二重盲検法にて、プラセボ、グリブリド単独療法およびメトホルミン単独療法と比較した。各治療群において達成された平均最終投与量は、グリブリド約5.3mg、メトホルミン1307mg、低投与量(250/1.25)固定組合せメトホルミン−グリブリド557/2.78mgおよび中投与量(500/2.5)固定組合せメトホルミン−グリブリド818/4.1mgであった。一次治療として用いる場合、メトホルミン−グリブリド固定併用治療は、血糖コントロールにおいてメトホルミン−グリブリドまたはプラセボと比較して統計的に有意な改善を達成した。暫定てき非盲検治療のデータから、“血糖値の多様な”患者集団およびより長期間における固定併用療法の臨床的有用性が確認された。
【0140】
安全性
一次治療の使用について、2つの投与量濃度のメトホルミン−グリブリドを評価した;低投与量(250/1.25)および中投与量(500/2.5)濃度をプラセボ、グリブリドおよびメトホルミンと比較した。この実験の二重盲検期において、下痢が、メトホルミン単独または組合せ療法を受けている被験者において最も頻繁に起こる副作用(AE:Adverse Effects)であった。しかし、重要なことには、腸管AEの発生率は、メトホルミン単独療法群よりも低投与量固定組合せ剤群において、より低かった(図10からわかるように)。AEによる中止も、低投与量固定組合せ剤群において、他の有効治療のいずれと比較しても最も低い頻度で起こった。血糖コントロールがなされないことによる中止は、両方の固定組合せ剤群において最も低く、重篤な低血糖は、この実験では観察されなかった。低血糖の発症を報告する被験者の頻度は、中投与量固定組合せ剤処置群において最も高かったが、低投与量群における発生率は、グリブリド単独療法群よりも低かった(図9)。すべてのメトホルミン群において乳酸塩濃度の緩やかな増加が観察されたが、この実験において乳酸アシドーシスは報告されなかった。
【0141】
被験者は、二重盲検実験に参加するための血糖的基準を満たさない場合、実験の非盲検相に直接登録することができた。被験者は、血糖コントロールがなされないことにより二重盲検相を早期に中止した場合、あるいは二重盲検相を終了した後に、非盲検(open-label)相に参加することもできた。実験の非盲検相においては、AEプロフィールは、二重盲検相で観察されたものと類似しており、同じ身体系において最も頻繁にAEが起こった。低投与量組合せ群は、中投与量群と比較して、やはり好ましい全体的に安全なプロフィールを示した。
【0142】
新たに診断された被験者ならびに不十分なコントロール被験者の両方において、二重盲検実験において観察された安全性および許容性の全体的像は、メトホルミンおよびグリブリドを用いた臨床経験から予測されたものであった。新たな、あるいは不慮の作用または実験に関する異常は、この臨床プログラムでは観察されなかった。長期間の非盲検の延長の暫定的分析から、実験の短期間相で観察された有利な安全性プロフィールが支持された。特に、低投与量固定組合せ剤は、このプログラムで用いた他の処方と比較して、有利な安全性/許容性プロフィールを示した。
【0143】
効果
二重盲検、一次治療は、両方の固定組合せ剤処置において、ヘモグロビンA1c(HbA1c)について、プラセボから1.3%の統計的に有意な平均減少および基準値から1.5%の平均減少を示した。すべての有効な療法処置群が、許容し得る血糖コントロールを達成したが、メトホルミン療法またはグリブリド療法と比較した場合、両方の固定組合せ剤処置においてHbA1cにおける大きな平均減少が達成された。目標値7%より低い二重盲検療法の第20週(6.64%、6.79%、6.68%、6.44%)から第32週(6.78%、6.96%、6.87%、6.68%)の平均HbA1c濃度の維持によって明らかなように、すべての有効療法群(グリブリド、メトホルミン−グリブリド250/1.25mg、メトホルミン−グリブリド500/2.5mg)において抗高血糖維持が観察された(図3および図4)。
【0144】
暫定的な非盲検一次治療のデータから、直接登録された被験者では、基準値の平均HbA1cは10.6%であり、有効なデータの被験者の部分集合(subset)ではHbA1cの平均減少3.5%が、26週で平均HbA1c7.1%で達成されることが示された。非盲検療法に直接登録された被験者のうち、87%が初期療法として中投与量500/2.5mgの固定組合せ剤の投与を受け、暫定的な報告時において、固定組合せ剤療法の平均投与量は、メトホルミン−グリブリド1569/7.85mgであった。二重盲検処置相を終了し、非盲検処置相を継続している、有効な非盲検データをもつ被験者では、基準値における平均HbA1cは8.32%であった。治療13週に達しているすべての被験者では、平均HbA1cは6.56%で、HbA1cの平均減少1.76%が達成された。二重盲検相を終了し、非盲検処置相を継続している被験者のうち、78%が一次治療として低投与量(250/1.25mg)固定組合せ剤の投与を受け、22%が中投与量(500/2.5mg)の固定組合せ剤を受けた。固定組合せ剤療法の平均投与量は、メトホルミン−グリブリド696/3.48mgであった。
【0145】
一次治療としていずれの固定組合せメトホルミン/グリブリドによる二重盲検試験の基準値からHbA1cの応答に関して、部分集団(年齢、性別、人種)のいずれにおいても、臨床的に顕著なパターンのより大きな軽減効果はなかった。
【0146】
この臨床プログラムでは、短期間血糖コントロールのパラメーターとして、空腹時血糖も評価した。二重盲検実験におけるFPGの結果は、HbA1cの結果に一致した。一次治療として、プラセボおよびメトホルミンと比較して、両方の固定組合せ剤処置群のFPGにおいて、統計的および臨床的に有意に大きな平均減少が達成された(図6)。固定組合せ剤療法については早期応答が観察された;被験者がまだ最初の漸増処置をうけており、可能性のある最大投与量の半分のみを投薬されている場合、二重盲検療法の第2週までに処置群間の差異が明らかであった。単独療法難治性患者集団における最大投薬の半分投与時の、この早期応答は、患者にとっての組合せ療法の利点および疾患プロセスにおける早期段階での組合せ療法の使用の利点を証明する。
【0147】
ヘモグロビンAlcは、総合的血糖コントロールの有力な標準的尺度であり、長期合併症と相関関係にあることが見出されている血糖マーカーである。糖尿病の診断のための現在の標準である空腹時血糖は、時間のかからない簡便なマーカーであるが、日内(circadian)血糖コントロールの最適評価を提供しない。II型糖尿病においては、FRGよりも非空腹時血糖が糖尿病コントロールのより良いマーカーであることが示されており、直感的に理解されている;非−空腹時血糖は、HbA1cとも良好な相関関係にある。食後高血糖は、II型糖尿病において見出される代謝性欠陥の早期マーカーであり、β細胞不全の一因となる。食後血糖値と心臓血管疾患の間の重要な関連が証明されている。もし、標準的血糖症が糖尿病の長期合併症の予防における目標であるならば、食後血糖を監視し、低下させることが、代謝機能の改善および総合的血糖コントロールの達成における合理的な方策である。
【0148】
一次治療では、プラセボ群と比較して、食後血糖絶対値の統計的に有意な大きな平均減少(63〜65mg/dl)が、両方の固定組合せ剤処置群において観察された。PPG絶対値の大きな平均減少は、グリブリド(16〜18mg/dl)およびメトホルミン(18〜20mg/dl)単独療法と比較しても達成された(図8Aおよび8B)。低投与量(22.5mg)および中投与量(23.9mg/dl)の両方の固定組合せ剤処置群における空腹時基準値からの食後2時間血糖変動域は、プラセボ56%〜59%(40.3mg/dl)、グリブリド59%〜63%(38.2mg/dl)およびメトホルミン75%〜81%(29.5mg/dl)のみであった。絶対値よりもむしろ変動域を評価すると、グリブリドがプラセボに類似しており、メトホルミンが、グリブリドおよびプラセボと比較して、より良い食後血糖低下を達成し、低投与量の組合せが食後血糖変動域の低下において最も強力であることを示す。薬物療法未経験患者集団において実験された組合せ療法の公表された臨床データがないのであるから、これらの結果は、この疾患のこの段階での治療選択肢に影響する知識に新たな洞察を加えた。実際に、この結果は、多くの実験の第2療法集団で観察される変化から予測することができなかった。
【0149】
一次治療実験において、空腹時および食後状態のインシュリン濃度を評価した(図7)。両方の固定組合せ剤処置群において、プラセボと比較して、ブドウ糖負荷下でのインシュリン応答に統計的に有意な増加があった(24〜28.8μiu/ml)。グリブリド単独療法群と比較した場合、低投与量固定組合せ剤処置群において、ブドウ糖負荷下でのインシュリン応答の大きな増加(14.6μiu/ml)およびメトホルミン単独療法群と比較した場合、両方の固定組合せ剤処置群において、ブドウ糖負荷下でのインシュリン応答の大きな増加(21〜25.8μiu/ml)が観察された。処置群ごとの有効療法の平均投与量を考慮すると、固定組合せ剤療法に関し、インシュリン応答をスルホニル尿素成分単独によって説明することはできない。この臨床データによって、メトホルミンが膵島細胞の高血糖性脱感作を予防することが示唆されている場合に、単離された膵島細胞を用いる臨床前研究が支持される。生理的および適切に増加するインシュリン応答とブドウ糖変動域における対応する大きな減少の組合せは、この組合せがブドウ糖負荷への応答における膵臓の効率を改善し、β細胞の機能を保護し、インシュリン感受性を改善していることを示唆する。
【0150】
積極的に高血圧および高脂質を治療することに加えて、II型糖尿病の患者の管理における最も重要な目標は、できるだけ正常に近い血糖値に到達すること、すなわち、血糖治療目的値に到達することである。治療目標に達している被験者数が多いことやHbA1c絶対値における減少が大きいことに関し、固定組合せ剤療法に大きな反応があった。一次治療では、二重盲検療法20週後に、固定組合せ剤療法の被験者において、スルホニル尿素単独療法(60%)、メトホルミン単独療法(50%)およびプラセボ(20%)と比較して、HbA1c≦7%という血糖値目標に達した数値が高かった(66%〜71%)。各単独療法群が16%〜17%であり、プラセボが3%であるのに比べて、各固定組合せ剤群の被験者では、約28%においてHbA1cが基準値から2.0%以上減少した。注目すべきことは、単純に薬物の投与総量を多くすることでこれらの標的が達成されたのではなく、低投与量の補足的成分によって達成されたことである。各一次治療群において達成された平均最終投与量は、およそ、グリブリド5.3mg、メトホルミン1307mg、低投与量固定組合せ剤557/2.78mgおよび中投与量固定組合せ剤818/4.1mgであった。錠剤の数によるHbA1cの変化に関し、固定組合せ剤療法において観察されたパターンは、病態生理学的観点からは予測されなかったものである。それは、すべての投与量濃度で目標への明らかな応答があり、高投与量を必要とすることはHbA1cの基準値が高いことに相関関係があることを示している。総投与量7.5mgまでのグリブリドについて類似のパターンが見られる;メトホルミン療法については明確なパターンは見られなかった。
【0151】
示されたデータは、初回療法剤として低投与量メトホルミン−グリブリド固定組合せ剤が、たとえいかにHbA1cの基準値が高くても、最も患者に治療目標を達成させるように思われるということを支持する。両方の固定組合せ剤療法では、HbA1cの基準値からの平均減少は、基準値濃度の高い被験者の方が大きい。この現象は、グリブリド、メトホルミンまたはプラセボでは観察されなかったし、他の単独療法でも見られることが予期されないものである。このことは、HbA1cの基準値濃度が9%よりも大きい場合の治療的血糖目標を達成するのに必要な成分の寄与を証明する。単独療法は、HbA1cの基準値濃度が<9%で血糖値応答のプラトーを示すが、固定組合せ剤療法は、HbA1cの基準値濃度が<9%で、さらに減少が継続することが示された。
【0152】
少なくとも2つの時点の有効なデータをもつ非盲検一次治療相に登録されたすべての被験者で、基準値(baseline)における平均HbA1cは、9.45%であった。第13、26および39週までに、約50〜55%の被験者が、7%以下のHbA1cを達成し、さらに30%が、<8%のHbA1cを達成した。この応答の割合およびHbA1c低下における変化の大きさは、固定組合せ剤療法では予想することができるが、単独療法抗高血糖剤ではめったに見られない。重要な結論は、初期の抗高血糖治療により、最大の割合の患者において、HbA1c<7%の血糖目標が達成されるということである。このデータは、現在のII型糖尿病治療パラダイムを再評価し、疾患の進行の早期に組合せ剤療法を使用するように転換する必要を強調するものである。
【0153】
体重増加は、メトホルミン単独療法以外のすべての抗高血糖剤において典型的に見られる。改善された血糖コントロールにおいては、代謝コントロールが不充分であることからカロリーが損失されるよりもむしろ保存されるので、現実に体重増加が予期される。この臨床プログラムにおいては、血糖コントロールが改善されるので、固定組合せ剤療法において初期に約1〜2kgという最小の体重増加が見られた;このことは、一次治療のグリブリド単独療法において見られた2kgの体重増加に匹敵した。二重盲検療法においては、初期の最小増加の後、体重は安定し、時間とともに増加しつづけるということはなかった。
【0154】
全体として、血漿脂質プロフィールにおける変化に関し、いずれの処置群の間にも臨床的あるいは統計的に有意な差異はなかった。最も重篤な患者は、プラセボコントロール試験から排除されたので、治療に応答するより小さな変化は検知されなかった。一次治療の患者集団は、不十分な血糖コントロールであったがが、食餌療法および運動によって、すでに平均HbA1c8.2の到達に成功していた。固定組合せ剤療法を処置された被験者では、血漿脂質プロフィール(総コレステロール、LDL、HDLおよびトリグリセリド)における副作用およびプラセボまたはグリブリドおよびメトホルミン単独療法のいずれかと比べた場合の有意な差異はなかった。
【0155】
糖尿病コントロールと長期合併症の関係のよりよい理解において、今日、糖尿病管理の目標は、できるだけ正常に近い血糖値に到達し、維持することである。作用の相乗的または補足的メカニズムの薬剤を用いて多数の欠点を目的とすることによって治療上の血糖値目標に到達することが直感的に理解される。II型糖尿病の自然な進行に関する理解が改善されたことにより、より積極的な治療方策を行う前に“挫折(failure)”が起こり得る現行の治療パラダイムが再評価されるべきであることが示唆される。低投与量組合せ剤療法の早期使用、特に低投与量を使用することは、より良い許容性を生み、したがって、もし、目標を達成し、コンプライアンスが維持されるのであれば、重要な治療手段であることは明らかである。この実験で評価された固定組合せ剤は、低投与量で使用でき、1回投与における使用を容易にする。
【0156】
低投与量固定組合せ剤メトホルミン−グリブリド療法は、食餌および運動療法では不適切な血糖コントロールしか得られないII型糖尿病の患者の血糖コントロールの達成および維持において安全であり、効果的である。糖尿病の疾患進行の初期における組合せ剤療法の使用が、より積極的であるが臨床的に安全な治療方策を始める前に段階的療法の挫折を引き起こす古典的な治療パラダイムに代わる臨床的に適切な選択肢であることは明らかである。今回の短期実験では評価していないが、できるだけ正常に近い血糖値目標に到達するための方策は、糖尿病の疾患プロセスの進行の遅延化に影響を与え、長期糖尿病合併症の始まりを遅らせるのに有望である。難治性の単独療法を受けている患者集団の場合、有害な代謝的影響または安全性懸念の形跡もなく、メトホルミンとグリブリドの固定組合せ剤は血糖コントロールにおいて臨床的に有意な改善と相関した。臨床的に有意な低血糖や血漿脂質における否定的な影響はなく、早期体重増加が制限され、時間とともに体重は安定した。メトホルミンとスルホニル尿素の組合せの相乗効果は、確定したものである;メトホルミンとグリブリドの固定組合せ剤は、血糖コントロールの改善において効果的であり、抗高血糖全医療技術における合理的な選択である。固定組合せ剤は投薬を単純化し、さらに簡便であり、したがって、療法に対するコンプライアンスをより良くし得るものである。
【0157】
低投与量(250/1.25mg)の固定組合せ剤は、薬物療法未経験被験者における一次治療として、最初の出発投与となる。次いで、これをHbA1c<7%に達することように、漸増すべきである。
【0158】
総括的結論
II型糖尿病の患者における一次治療として固定組合せ剤メトホルミン−グリブリドを評価するこの臨床プログラムから得られた安全性および効力データから、以下のことが確立される:
【0159】
高血糖という理由により治療を中止する被験者のパーセントは、メトホルミン−グリブリドおよびプラセボよりも固定組合せ剤メトホルミン−グリブリドの方が低かった。
【0160】
一次治療としての低血糖および低血糖の徴候は(図9)、メトホルミン−グリブリド500/2.5mgおよびグリブリドよりもメトホルミン−グリブリド250/1.25mgの方が少ない頻度で起こった。
【0161】
一次治療では、固定組合せ剤に関連した胃腸管の副作用の発生率は、メトホルミン−グリブリド500/2.5mgおよびグリブリドと比較してメトホルミン−グリブリド250/1.25mgにおいて最も低かった(図10)。
【0162】
長期非盲検固定組合せ剤メトホルミン−グリブリドを受けた被験者において、新たあるいは予期しない副作用または実験に関する異常は起こらなかった。
【0163】
プラセボ、グリブリドおよびメトホルミン療法と比較して、すべての血糖パラメーター(HbA1c、食後血糖値、空腹時血糖値およびフルクトサミン)のより大きな減少によって証明される、いずれの投与量でも固定組合せ剤メトホルミン−グリブリドの顕著に優れた効果。
【0164】
食後血漿血糖値およびインシュリン変動域によって証明される、β細胞機能およびインシュリン感受性を改善し、代謝機能および血糖コントロールを改善するために多くの代謝欠陥を標的とする、低投与量組合せ剤の相乗効果。
【0165】
固定組合せ剤メトホルミン−グリブリド療法による、血糖値HbA1c≦7%に到達する高い患者数。
【0166】
プラセボ、グリブリドおよびメトホルミン療法と比較して、いずれの基準値HbA1cについても治療目標への効果的な血糖低下。一次治療として、グリブリドおよびメトホルミンは、基準値HbA1c濃度>9%に対して血糖応答のプラトー形成があることがわかったが、固定組合せ剤メトホルミン−グリブリド療法は、基準値HbA1c濃度>9%に対してさらなるHbA1cの減少があった。
【0167】
グリブリド単独療法と比較して、血糖コントロールの改善と平行して起こる早期のわずかな体重増加;しかし、時間とともに体重は安定。
【0168】
固定組合せ剤療法は、脂質プロフィール(総コレステロール、LDL、HDLおよびトリグリセリド)における副作用はなく、プラセボまたはグリブリドおよびメトホルミン単独療法のいずれかとの有意な差異はない。
【0169】
固定組合せ剤メトホルミン−グリブリド250/1.25mgの有利な効果および許容性は、一次治療における初期出発投薬としてのその使用を示唆する。
【0170】
上記結果は、本発明の低投与量メトホルミン−グリブリド製剤(250mg/1.25mg)が、より高い投与量剤形(500mg/2.5mg)に対して、効果においては少なくとも等しく、一方、副作用については、より少ないことを明確に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物療法未経験ヒト患者のII型糖尿病の初回治療の方法であって、処置を必要とする薬物療法未経験ヒト患者に、メトホルミンとグリブリドの低投与量の組合せを初回治療として投与することを特徴とする方法。
【請求項2】
投与されるメトホルミンの1日投与量が、800mgより少ない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
メトホルミンとグリブリドの低投与量の組合せが、糖尿病治療の初回治療のために一般的に許容されている医療技術で処方される実質的により高い1日投与量で用いられるメトホルミンと上記グリブリドの組合せと、薬物療法未経験患者の糖尿病治療において、少なくとも実質的に等しい効果を示すが、実質的に軽減された副作用を示す、請求項1記載の方法。
【請求項4】
メトホルミンの出発1日投与量が、糖尿病治療の初回治療のために一般的に許容されている医療技術で用いられるメトホルミンの出発1日投与量の約1/5の低さである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
用いられるメトホルミンの1日維持投与量が、糖尿病治療の初回治療のために一般的に許容されている医療技術で用いられるメトホルミンの1日維持投与量までである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
グリブリドの出発1日投与量が、糖尿病治療の初回治療または2次治療のために一般的に許容されている医療技術で用いられるグリブリドの出発1日投与量の約1/5の低さである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
グリブリドの1日維持投与量が、糖尿病治療の初回治療のために一般的に許容されている医療技術で用いられるグリブリドの1日維持投与量までである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
メトホルミンが、約160mg〜約750mgの範囲内の量の1日投与量で投与され、グリブリドが、約0.5〜約15mgの範囲内の量の1日投与量で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
メトホルミンとグリブリドの低投与量の組合せが単一の投与形態として製剤化される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
メトホルミンが、グリブリドに対して重量比で約400:1〜約50:1の範囲内で用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
メトホルミンとグリブリドが、互いに重量比で約200:1〜約100:1の範囲内で用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
メトホルミンが、1日1〜4回に、約125〜約750mgの範囲内の量で、ただし、メトホルミンの最大1日投与量が1日当り約750mgであるが、約225mgより多くなく投与され、グリブリドが、1日1〜4回に、約0.75mg〜約5mgの範囲内の量で、1日当り最大15mgで投与される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
メトホルミンが、約250〜約500mgの範囲内の量で投与され、グリブリドが、約1.25mg〜約5mgの範囲内で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
メトホルミン/グリブリドの組合せが、メトホルミン250mg/グリブリド1.25mgを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
メトホルミン/グリブリドの組合せが、メトホルミン500mg/グリブリド2.5mgを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
メトホルミン/グリブリドの組合せが、メトホルミン500mg/グリブリド5mgを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
メトホルミン/グリブリド、250mg/1.25mgの投与量が、1日1回または1日2回投与される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
メトホルミン/グリブリド、250mg/1.25mg投与量が、HbA1c基準値>9%または空腹時ブドウ糖>200mg/dLの患者に、1日2回投与され、必要ならば、十分な血糖コントロールに到達するのに必要な最小有効1日投与量まで、2週間毎に250mg/1.25mgずつ増加する投与量で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
上記メトホルミンが、糖尿病治療の初回治療または2次治療のための一般に許容される医療技術で用いられる1日投与量で用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
グリブリドが、糖尿病治療の初回治療または2次治療のための一般に許容される医療技術で用いられる1日投与量で用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項21】
メトホルミン250mgおよびグリブリド1.25mgを含み、糖尿病治療において、ヘモグロビンA1cの減少、インシュリン抵抗性の減少、食後インシュリン濃度の増加および/または食後ブドウ糖変動域の減少に関して、メトホルミン500mgおよびグリブリド2.5mgを含む製剤と、少なくとも実質的に等しい効果を有するが、低血糖および腸管副作用である有害副作用の発生率の実質的減少をもたらすことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項22】
薬物療法未経験ヒト患者のII型糖尿病の初回治療の方法であって、処置を必要とする薬物療法未経験ヒト患者に、初回治療として、出発1日投与量がメトホルミン250mgおよびグリブリド1.25mgである、メトホルミンとグリブリドの低投与量の組合せを投与することを特徴とする方法。
【請求項23】
薬物療法未経験ヒト患者のII型糖尿病の初回治療の方法であって、処置を必要とする薬物療法未経験ヒト患者に、初回治療として、出発1日投与量が、1日2回メトホルミン250mgおよびグリブリド1.25mg、または1日1回メトホルミン500mgおよびグリブリド2.5mgである、メトホルミンとグリブリドの治療的に有効な低投与量の組合せを投与することを特徴とする方法。
【請求項24】
薬物療法未経験ヒト患者のII型糖尿病の初回治療の方法であって、処置を必要とする薬物療法未経験ヒト患者に、初回治療として、出発1日投与量が、メトホルミン500mgおよびグリブリド5mgである、メトホルミンとグリブリドの治療的に有効な低投与量の組合せを投与することを特徴とする方法。
【請求項25】
薬物療法未経験ヒト患者のII型糖尿病の初回治療の方法であって、処置を必要とする薬物療法未経験ヒト患者に、初回治療として、グリブリドの生物学的利用率が、メトホルミンとグリブリドの別々の投与で得られるグリブリドの生物学的利用率に匹敵するようなグリブリドである、メトホルミンとグリブリドの治療的に有効な低投与量の組合せを投与することを特徴とする方法。
【請求項26】
メトホルミンとグリブリドの組合せにおいて、グリブリドの粒径分布が、粒子の多くても10%が2μmより小であり、粒子の多くても10%が60μmより大である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
グリブリドが、多くても10%が3μmより小であり、多くても10%が40μmより大である粒径分布を有する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
グリブリドが、多くても25%が11μmより小であり、多くても25%が46μmより大である粒径分布を有する、請求項25記載の方法。
【請求項29】
グリブリドの粒子の50%が23μmより小である、請求項25記載の方法。
【請求項30】
約25%のグリブリドが粒径6μm以下であり、約50%のグリブリドが粒径7〜10μm以下であり、約75%のグリブリドが粒径23μm以下である粒径分布を有する、請求項25記載の方法。
【請求項31】
出発1日投与量が、メトホルミン250mg/グリブリド1.25mgまたはメトホルミン500mg/グリブリド2.5mgである、請求項25記載の方法。
【請求項32】
実質的に低減される副作用が、低血糖および/または、下痢、吐き気/嘔吐および/または腹痛である腸管の副作用である、請求項3記載の方法。
【請求項33】
低投与量メトホルミン−グリブリドの組合せの使用による薬物療法未経験患者の低血糖症の発生率が、低投与量メトホルミン−グリブリド中に存在するメトホルミン−グリブリドの2倍を投与された患者の1/3以下である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
低投与量メトホルミン−グリブリドの組合せの使用による薬物療法未経験患者の腸管副作用の発生率が、低投与量メトホルミン−グリブリド中に存在するメトホルミン−グリブリドそれぞれの量の2倍を投与された患者の20%より少ない、請求項32記載の方法。
【請求項35】
高血糖症ヒト患者の血糖を低下させる方法であって、処置を必要とする薬物療法未経験ヒト患者に、初回治療として請求項1に記載の低投与量医薬製剤の治療的有効量を投与することを特徴とする方法。
【請求項36】
糖尿病ヒト患者におけるインシュリン抵抗性を減少させ、および/またはヘモグロビンA1cを減少させ、および/または食後インシュリン濃度を増加させ、および/または食後ブドウ糖変動域を減少させる方法であって、処置を必要とする薬物療法未経験ヒト患者に、請求項1に記載の医薬製剤を投与することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−28631(P2013−28631A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−211400(P2012−211400)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2001−534362(P2001−534362)の分割
【原出願日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】