説明

糖尿病判断機能付き血糖計

【課題】 糖尿病の判断は、従来、健康診断の際の採血血液を測定することによって血糖値の測定と共に行っているが、個々の測定毎に比較的多量の血液を必要とし、かなりの苦痛を伴うものである。
【解決手段】 制御手段3が測定開始受付キー5の入力を受けると表示手段4に測定開始を表示し、所定時間間隔で、発光手段1と受光手段2によって吸光度を測定し、吸光度の変化のデータから血糖値の算出と糖尿病の可能性とを判断できる糖尿病判断機能付き血糖計としているものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は毎回の血液の採取が不要な簡単な方法で血糖値を測定できると共に、糖尿病の可能性の判断もできる糖尿病判断機能付き血糖計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、糖尿病の判断は、健康診断の際の採血血液を測定することによって血糖値の測定と共に行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしこの方法は、個々の測定毎に比較的多量の血液を必要とし、かなりの苦痛を伴うものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、制御手段が指示するタイミングで、発光手段と受光手段によって吸光度を測定し、吸光度の変化のデータから、採血を伴うことなく血糖値と糖尿病の可能性とを判断できる糖尿病判断機能付き血糖計としているものである。
【0005】
【発明の実施の形態】請求項1に記載した発明は、制御手段は測定開始受付キーの入力を受けると、表示手段に測定開始を表示し、所定時間間隔で受けた受光手段からの受光データを演算することによって、採血を伴うことなく、血糖値を算出すると共に、記憶手段が記憶した吸光度のデータから糖尿病の可能性を判断するものである。
【0006】請求項2に記載した発明は、制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の変化を演算し、予めプログラムされた値と比較して前記吸光度の変化が大きい場合には糖尿病であると判断するものである。
【0007】請求項3に記載した発明は、制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の時間変化の勾配が予めプログラムされた値より大きい場合には糖尿病であると判断するものである。
【0008】請求項4に記載した発明は、制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の時間変化の勾配を演算し、所定時間後の血糖値を予測して、この予測値に基づいて糖尿病であるかどうかを判断するものである。
【0009】請求項5に記載した発明は、発光素子は、グルコース糖の成分濃度の変化だけに対応して吸光度が変化する波長の光を含んだ光を照射するようにして、正確な糖尿病の判断が出来るものである。
【0010】請求項6に記載した発明は、発光素子は、1450nm±20nmの波長の光を照射するようにして、半導体レーザを使用することができ、小型化した糖尿病判断機能付き血糖計とできるものである。
【0011】
【実施例】(実施例1)以下本発明の第1の実施例について説明する。図1は本実施例の構成を示すブロック図である。1は人体に照射する光を放射する発光手段で、発光素子等で構成している。2は発光手段が照射した光の内人体を透過した透過光あるいは人体に反射された反射光を受光する受光手段で、受光素子等によって構成している。3は、測定開始受付キーの入力信号を受けて表示手段4に使用者に対する指示を表示し、受光手段2の受光信号を受けて表示手段4に測定結果を表示する制御手段である。制御手段3は、使用者が操作する前記測定開始受付キー5と、測定終了受付キー6と、前記受光手段2から受けた信号から吸光度と血糖値を演算する演算手段7と、演算手段7が演算した吸光度を記憶する記憶手段8と、記憶手段8が記憶した吸光度のデータから糖尿病の可能性を判断する判断手段9と、時間を測定するタイマー手段12を備えている。
【0012】以下本実施例の動作について説明する。使用者はこの装置を空腹状態で使用する。すなわち、前夜から断食状態を継続した状態で朝食前等のタイミングでこの装置を使用する。すなわち、まず、電源スイッチ10をオンにする。電源スイッチ10がオンされると、制御手段3が動作を開始して表示手段4に使用者に測定開始を指示する。つまり、測定開始受付キー5を押して、図示していないプローブ内に指を挿入し測定スイッチ11を押すように表示するものである。測定スイッチ11が押されると、発光手段1が発光し、受光手段2が指を透過した発光手段1の光を受光する。この測定が終了すると、制御手段3は自動的に表示手段4に、グルコース糖を規定量の水に溶かして飲むように表示する。使用者はこの指示に従って規定量の濃度のグルコース糖の水溶液を飲み、再び測定開始受付キー5を押す。制御手段3はこの情報を受けると、タイマー手段12を駆動して所定時間を計時する。同時に、演算手段7によって血糖値を演算し、記憶手段8にこのデータを記憶させる。所定時間が経過すると、制御手段3は表示手段4に再度の吸光度の測定を指示する。この指示に従って使用者は再び測定スイッチ11を押して、前記吸光度の測定を繰り返すものである。こうして、演算手段7は血糖値を演算し、記憶手段8にこのデータを記憶させる。この操作を所定回数繰り返すことによって、記憶手段8は所定時間閣の吸光度のデータが記憶される。
【0013】使用者はこの測定の間食物等を一切口にしていないため、血液中にはグルコース糖だけが増加するものである。グルコース糖を飲んでから1時間から2時間の間は、血糖値は増加することが知られており、従って使用者が測定する吸光度は、1回目よりも2回目、2回目より3回目というように増加していくものである。この増加は、前記したようにグルコース糖による血糖値の増加によるものである。
【0014】本実施例では、判断手段9は、図2に示すような吸光度と血糖値との関係をプログラムとして記憶している。つまり、吸光度の変化分と血糖値とは1次関数の関係にある。従って、吸光度の変化分が決定されれば血糖値も確定できるものである。
【0015】またこのとき、本実施例では、発光手段1が発光する光の波長をλ1とλ2とに設定しているものである。波長λ1の光は、グルコース糖の濃度による影響を受けない波長であり、波長λ2の光はこの影響を受ける一般的な光である。発明者らがグルコース糖の水溶液を使用した実験によれば、前記波長λ1・λ2の光の吸光度は、図3に示すような特性となっているものである。つまり波長λ1での吸光度はArと一定であり、波長λ2での吸光度はグルコース糖の濃度に応じて例えばAsのように変化するものである。このAsとArとの差は、前記図2に示している吸光度の変化分に対応するものである。従って、グルコース糖の濃度が既知である水溶液を使用して、AsとArを求めれば、図2に示している勾配θを演算でき、演算手段7は記憶手段8が記憶している吸光度の時間変化のデータから血糖値を演算できるものである。制御手段3は、この演算した血糖値を表示手段4に表示する。
【0016】また図4は、発明者らが行った実験結果を示している。すなわち、糖尿病患者の血液に類似したグルコース糖の水溶液と、健常者の血液に類似したグルコース糖の水溶液とを使用して、波長λ2の光の吸光度の時間変化の特性を示しているものである。糖尿病患者の吸光度の特性は、図4にBとして示しているように立ち上がりが速く立ち下がりが遅い特性を有しているものである。また健常者のものは、Aとして示しているように、立ち上がりが遅く立ち下がりが速いものである。本実施例の判断手段9は、この変化パターンを記憶しているものである。従って、判断手段9は記憶手段8が記憶している吸光度の時間変化を解析して、AとBのどちらのパターに近いかを判断して、糖尿病であるかどうかを判断するものである。制御手段3は、この判断手段9の判断を表示手段4に表示するものである。
【0017】以上のように本実施例によれば、制御手段3が指示するタイミングで、グルコース糖の水溶液を飲用し、発光手段と受光手段によって所定時間間隔で吸光度を測定することによって、採血を伴うことなく、血糖値と糖尿病の可能性とを判断できる糖尿病判断機能付き血糖計を実現するものである。
【0018】(実施例2)続いて本発明の第2の実施例について説明する。図5は、本実施例の制御手段の構成を示すブロック図である。本実施例では、制御手段3は勾配検知手段10を備えている。勾配検知手段10は、記憶手段8が記憶している吸光度の時間変化のデータから、吸光度の変化の勾配を演算するものである。
【0019】以下本実施例の動作について説明する。図4R>4で説明したように、糖尿病患者の吸光度の特性は、図4R>4にBとして示しているように立ち上がりが速く立ち下がりが遅い特性を有しているものであり、健常者のものは、Aとして示しているように、立ち上がりが遅く立ち下がりが速いものである。図6は、前記ず4にしめしたものを勾配の変化で示したものである。つまり、k1は特性Aが有している初期時の勾配を、k2は特性Bが有している初期時の勾配を示している。当然勾配k2は勾配k1よりも大きいものである。本実施例では、判断手段9はプログラムとして、勾配k1の値を有しているものである。そこで、判断手段9は勾配検知手段10が検知した勾配がk1より大きいか小さいかを判断することによって、糖尿病であるかどうかを判断するものである。制御手段3は、この判断結果を表示手段4に表示するものである。
【0020】以上のように本実施例によれば、吸光度の変化の勾配を基に糖尿病であるかどうかを判断しているため、糖尿病の判定に要する時間を短縮できるものである。
【0021】(実施例3)続いて本発明の第3の実施例について説明する。図7は本実施例の制御手段の構成を示すブロック図である。本実施例では、制御手段3は血糖値予測手段11を備えている。つまり、前記図6で説明したと同様の理由で、記憶手段8が記憶した吸光度の初期時の勾配から、最終的な吸光度を予想するものである。従って本実施例によれば、血糖値の決定が速くでき、使い勝手の良い糖尿病判断機能付き血糖計を実現するものである。
【0022】(実施例4)本実施例は、発光手段1が発光する光の波長を限定するものである。すなわち、血糖値の測定を目的としている場合には、発光手段1が発光する光の波長を、グルコース糖の成分濃度の変化だけに対応して吸光度が変化する波長の光を含んだ光を照射する構成とすれば効率的である。すなわち、前記図3で説明した波長λ2をグルコース糖の帰属波長とすると、発光手段1が発光する光の波長はλ1とλ2とすることが適切なものである。
【0023】このとき、前記λ2として、1450nm付近の波長を選択した場合には、半導体レーザを使用することができ、小型化した糖尿病判断機能付き血糖計とできるものである。
【0024】すなわち、発明者らの実験によれば、1450nm付近の波長は水の水酸基の第1倍音となっているものである。従ってこの波長域では自由な水分子が生じ、蛋白やヘモグロビンのNH基と結合しやすくなる。このため、成分の濃度に応じて吸光度も大きく変化するものである。しかも本実施例では、被験者は空腹状態からグルコース糖を飲用しており、測定の期間中は何も飲食していないため、血液中の蛋白やヘモグロビンによる影響は生じないものである。つまりグルコース糖の濃度変化だけに反応するものである。
【0025】
【発明の効果】請求項1に記載した発明は、人体に照射する光を放射する発光手段と、発光手段が照射した光の内人体を透過した透過光あるいは人体に反射された反射光を受光する受光手段と、受光手段の信号を受ける制御手段と、制御手段からの指示内容を表示する表示手段とを備え、前記制御手段は測定開始受付キーと、受光手段から受けた信号から吸光度と血糖値を演算する演算手段と、演算手段が演算した吸光度を記憶する記憶手段と、記憶手段が記憶した吸光度のデータから糖尿病の可能性を判断する判断手段とを備え、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度、表示手段に使用者に対する指示を表示する構成として、採血を伴うことなく、血糖値を算出すると共に、記憶手段が記憶した吸光度のデータから糖尿病の可能性を判断できる糖尿病判断機能付き血糖計を実現するものである。
【0026】請求項2に記載した発明は、制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の変化を演算し、予めプログラムされた値と比較して前記吸光度の変化が大きい場合には糖尿病であると判断する構成として、採血を伴うことなく、血糖値と糖尿病の可能性とを判断できる糖尿病判断機能付き血糖計を実現するものである。
【0027】請求項3に記載した発明は、制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の時間変化の勾配を演算し、予めプログラムされた値と比較して前記時間変化の勾配が大きい場合には糖尿病であると判断する構成として、採血を伴うことなく、血糖値と糖尿病の可能性とを判断できる糖尿病判断機能付き血糖計を実現するものである。
【0028】請求項4に記載した発明は、制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の時間変化の勾配を演算し、前記時間変化の勾配から所定時間後の血糖値を予測し、この予測値に基づいて糖尿病であるかどうかを判断する構成として、採血を伴うことなく、血糖値と糖尿病の可能性とを判断できる糖尿病判断機能付き血糖計を実現するものである。
【0029】請求項5に記載した発明は、発光素子は、グルコース糖の成分濃度の変化だけに対応して吸光度が変化する波長の光を含んだ光を照射する構成として、採血を伴うことなく、血糖値と、正確な糖尿病の判断が出来る糖尿病判断機能付き血糖計を実現するものである。
【0030】請求項6に記載した発明は、発光素子は、1450nm±20nmの波長の光を照射する構成として、半導体レーザを使用することができ、小型化した糖尿病判断機能付き血糖計を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例である糖尿病判断機能付き血糖計の構成を示すブロック図
【図2】同、制御手段が有している吸光度と血糖値との関係を示す特性図
【図3】同、発明者らが実験した波長と吸光度との関係を示す特性図
【図4】同、発明者らが実験した糖尿病患者の血液に類似したグルコース糖の水溶液と、健常者の血液に類似したグルコース糖の水溶液とを使用した波長と吸光度との関係を示す特性図
【図5】本発明の第2の実施例である糖尿病判断機能付き血糖計に使用している制御手段の構成を示すブロック図
【図6】同、発明者らが実験した糖尿病患者の血液に類似したグルコース糖の水溶液と、健常者の血液に類似したグルコース糖の水溶液とを使用した波長と吸光度との関係を示す特性図
【図7】本発明の第3の実施例である糖尿病判断機能付き血糖計に使用している制御手段の構成を示すブロック図
【符号の説明】
1 発光手段
2 受光手段
3 制御手段
4 表示手段
5 測定開始受付キー
7 演算手段
8 記憶手段
9 判断手段
10 勾配検知手段
11 血糖値予測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 人体に照射する光を放射する発光手段と、発光手段が照射した光の内人体を透過した透過光あるいは人体に反射された反射光を受光する受光手段と、受光手段の信号を受ける制御手段と、制御手段からの指示内容を表示する表示手段とを備え、前記制御手段は測定開始受付キーと、受光手段から受けた信号から吸光度と血糖値を演算する演算手段と、演算手段が演算した吸光度を記憶する記憶手段と、記憶手段が記憶した吸光度のデータから糖尿病の可能性を判断する判断手段とを備え、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度、表示手段に使用者に対する指示を表示する糖尿病判断機能付き血糖計。
【請求項2】 制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の変化を演算し、予めプログラムされた値と比較して前記吸光度の変化が大きい場合には糖尿病であると判断する請求項1記載の糖尿病判断機能付き血糖計。
【請求項3】 制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の時間変化の勾配を演算し、予めプログラムされた値と比較して前記時間変化の勾配が大きい場合には糖尿病であると判断する請求項1記載の糖尿病判断機能付き血糖計。
【請求項4】 制御手段は、測定開始受付キーが押されてから所定時間が経過する都度受光手段から受けた受光信号から吸光度の時間変化の勾配を演算し、前記時間変化の勾配から所定時間後の血糖値を予測し、この予測値に基づいて糖尿病であるかどうかを判断する請求項1記載の糖尿病判断機能付き血糖計。
【請求項5】 発光素子は、グルコース糖の成分濃度の変化だけに対応して吸光度が変化する波長の光を含んだ光を照射する請求項1記載の糖尿病判断機能付き血糖計。
【請求項6】 発光素子は、1450nm±20nmの波長の光を照射する請求項1記載の糖尿病判断機能付き血糖計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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