説明

糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための方法および組成物

糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための方法が開示されている。 この方法は、ヒトを含む哺乳動物での糖尿病性ケトアシドーシスを治療するために、エンドセリンアンタゴニストを利用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する2009年4月30日に特許出願された米国仮特許出願第61/174,283号の利益を享受するものである。
【0002】
本願発明は、エンドセリン受容体アンタゴニストを用いた糖尿病性ケトアシドーシスの治療に関する。 具体的には、本願発明は、治療の必要がある哺乳動物に対して、治療有効量のエンドセリンアンタゴニストの投与を行って糖尿病性ケトアシドーシスを治療する方法に関する。 本願発明の組成物および方法は、今日の糖尿病性ケトアシドーシスの治療に伴う諸問題や不都合を解消する。
【背景技術】
【0003】
2360万人/年もの人々が糖尿病を患い、1740億ドルの総費用が見積もられている。 その費用の半分は、入院に関するものである。 インスリン依存性I型真性糖尿病(TIDM)は、外因性インスリンによって調節することができる。 しかしながら、TIDMの管理の不徹底、インスリンを供給するインスリンポンプの機能不全、あるいは、TIDMの診断前にあっては、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と呼ばれる状態に起因して、血糖値が急激に増大してしまう。
【0004】
DKAは、糖尿病の入院期間の大部分を占めており、このことは、特に、小児患者において顕著であり、また、糖尿病が関係している全死亡事例の20%を占めている(Krane, 1988)。 DKAは、高血糖(250mg/dlを超える血中グルコース値)、アシドーシス(7.3未満のpH)、および、尿中のケトンの存在、を特徴としている。 通常、糖尿病の患者は、低血圧症に認められる脱水症状、膨圧の低下、血液の高浸透圧に起因する猛烈な口渇感を経験し、そして、後期になると、嘔吐したり、腹痛を訴えるようになる。
【0005】
DKAの診断にあっては、意識レベルを評価し、そして、血液試料を得て、血清血糖値または血漿血糖値、電解質、重炭酸塩、pCO、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、pH、ヘモグロビン、および、ヘマトクリットの数値についての計測などが行われる(Wolfsdorf et al., 2007)。 ケトンの有無を尿検査で確認し、また、カリウムイオン(K)レベルの変化に起因する心臓の異常を確認するために心電図もモニターする(Wolfsdorf et al., 2007)。 DKAの治療法として、48時間にわたる生理食塩水(0.9% NaCl)の供給による脱水症状の改善、0.1単位/kg/時間でのインスリン点滴、それに、必要に応じて、心臓血管や呼吸についての対症療法などがある。
【0006】
通常、これらの治療法は有効ではあるが、小児患者の約0.5〜3%で脳浮腫(CE)の発症が認められており、その死亡率は、20%までにも及んでいる(Krane, 1988)。 原因は明確ではないが、CEは、小児患者のみにおいて認められている。 CEの発症は、5歳未満の年齢、7.1未満のpH、低いpCO、および、高いBUNによって確定される重篤なアシドーシスなどの特定の危険因子と関連している(Wolfsdorf et al., 2007)。 頭痛の症状、徐脈、神経学的状態の変化、高血圧症、および、酸素飽和度の減少によって、一旦、診断が確定したら、DKAによって誘発されたCEのための治療を直ちに開始しなければならない(Vanelli and Chiarelli, 2003; Lam et al., 2005)。 治療にあたって、20分間かけて、0.5〜1g/kgのマンニトールを静脈投与し、輸液量を1/3に減らし、3%高張食塩水(5〜10ml/kg、30分間)を投与し、ベットの患者の頭を高くし、そして、呼吸を維持するための対症療法を施す。 CEの症状が安定した後に、運動能力、言語能力、および、学習能力についての障害など、長期的影響をもたらす神経学的後遺症を排除するために、頭部のCDスキャン検査を行うべきである(Wolfsdorf et al., 2007)。
【0007】
CEの発症メカニズムは不明であるが、これまでに幾つかの仮説、例えば、脳と血漿との間の浸透圧不均衡、水分過剰と低ナトリウム血症、アルカリ療法(重炭酸塩)によって誘発された脳内アシドーシス、および、脳血流の変化などが提唱されている(Krane, 1988; Silver et al., 1997; Lam et al., 2005; Wolfsdorf et al., 2007; Yuen et al., 2008)。 その他に考えうる理論として、CEとそれに起因する合併症、例えば、神経原性肺水腫、それに、高血圧症や心拍数の増大などの有害な心臓血管副作用を招く速効型インスリン・補水療法の関与がある(Sherry and Levitsky, 2008)。
【0008】
血管収縮作用を示す21個のアミノ酸のペプチドであるエンドセリン(ET)は、生体内で多様な活性を奏する。 ETは、心臓、肺、腎臓、および、内分泌系での生理学的調節、それに、生体の様々な器官、例えば、脳への血流の制御にも寄与している。 ETには、ET-1、ET-2、および、ET-3という三つのイソフォームがあり、その各々は、二つのGタンパク質結合受容体、ETまたはETのいずれかに結合している(Yanagisawa et al., 1988a; Yanagisawa et al., 1988b; Gulati et al., 1997b)。 すべてのイソフォームが、内皮細胞に存在するETに対して同等の親和性で結合する。 ETも、すべてのイソフォームに対して結合する。 しかしながら、ET-1とET-2は、同等の結合性を示し、また、ET-3よりも選択的な結合をする。 この受容体のサブタイプは、血管平滑筋細胞に存在している(Said et al., 2005; Sasser et al., 2007)。
【0009】
三つのすべてのイソフォームは、様々な生理系に対して作用をするものであり、また、糖尿病の病態におけるET-1の効果は、これまでにも広く研究がされている。 ある研究によれば、糖尿病に罹患していないコントロールと比較をして、TIDMの治療を施した小児患者でのET-1の濃度は低レベルであるとの報告をしているが、別の研究にあっては、TIDM患者ではET-1の増大が認められたとの報告を行っている(Malamitsi-Puchner et al., 1996; Vazquez et al., 1999)。 増大または減少したET-1の役割、それに、高血圧症、糖尿病性ネフロパシー、および、脳卒中といったTIDMが関与した合併症の発症に関して、数多くの矛盾した証拠が存在している。 ある研究では、高レベルのET-1が、高血圧症、腎臓機能の低下、年齢、それに、糖尿病状態の期間と関係しており、このことは、高レベルのET-1が、糖尿病患者に認められるこれらの一般的な合併症と関係していることを示唆している、との報告を行っている(Haak et al., 1992)。
【0010】
しかしながら、別の研究では、高レベルのET-1は、高血圧症および疾患の期間とは相関しない、との報告を行っている(Takahashi et al., 1990; Schneider et al., 2002)。 インスリンが、外因的または内因的に、ET-1レベルを高めることが示されている(Kirilov et al., 1994; Morise et al., 1995; Ferri et al., 1996)。 糖尿病におけるET-1の研究は、血漿でのET-1濃度の増大または減少について、矛盾した結果を示しているが、ET-1が、インスリン調節の効果を奏するものでないことは明らかである。
【0011】
高レベルのET-1と脳での血管収縮とが関連しているため、ET-1は、内分泌系に加えて、脳血管および脳血管系においても様々な効果を示す(Zhang et al., 2008)。 幾つかの研究によって、脳血管系の緊張度の高まりに起因する脳虚血とET-1の増大との間に正の相関が示されている。 脳卒中モデルのラットにおいて認められているように、頭蓋内圧(ICP)の増大は、高レベルのET-1と関連している。 ETブロッキング剤を投与することで、ICPが減少していることは、ICPの増大とETの増大との間の直接的な関連性を示すものである(Lo et al., 2005)。 さらに、ICPを増大するくも膜下出血が起こっている間に、ET受容体は、その活性を増大していたことが明らかにされている(Lo et al., 2005)。 ICPが増大している間にこれら受容体をブロックすると、脳虚血が起こっている間に、神経保護効果を奏することとなる(Zhang et al., 2008)。 繰り返しになるが、このことは、ET、特に、ET-1とET受容体が、脳の血流の調節に関与している、との考察を支持するものである。
【0012】
増大したET-1レベルは、ET受容体アンタゴニストであるBQ123によって改善される神経原性肺水腫とも関連している(Bonvallet et al., 1994)。 神経原性肺水腫を誘発し、また、代謝性アシドーシス、pOの減少、pCOの増大、および、全身性高血圧症などの副作用を発現したラットにおいて、気管支肺胞洗浄を行っている間に、ET-1レベルの増大が認められた。 BQ123を投与することで、低酸素症と高炭酸ガス血症の症状は緩和された(Herbst et al., 1995)。 別の研究では、ラットにET-1を髄膜(IT)注射したところ、激しい肺血管収縮や肺浮腫(PE)を招き、また、死に至るケースもあったことが実証されている。 BQ123で前処置することで、肺浮腫が予防でき、また、死亡率も50%減少した(Poulat and Couture, 1998)。 ラットの筋細胞での電気生理学的性質の変化に起因する心臓不整脈が、ストレプトゾシン(STZ)で誘発したTIDMに罹患したラットにおいて認められた(Ding et al., 2006)。 これらの研究は、増大したET-1が、CEとPEの双方に関与しており、また、ETアンタゴニストの投与によって、全身性高血圧症、高炭酸ガス血症、および、低酸素症などの副作用が軽減されるであろう、という理論を裏付けるものである。
【0013】
現在のところ、ETアンタゴニストは、研究および臨床の現場で利用がされている。 実験現場で用いられている多くのETアンタゴニストは、BQ-123、BMS-182874、および、PD-156707などのET受容体アンタゴニストである。 BQ-788およびBQ-3020は、選択的ETアンタゴニストである。 TAK-044は、非選択的ETアンタゴニストであって、ET受容体およびET受容体の双方の効果をブロックする。 非選択的ET-1アンタゴニストであるボセンタンは、ET受容体およびET受容体をブロックし、そして、現在では、肺高血圧症の治療のために利用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、糖尿病性ケトアシドーシスの治療の必要がある哺乳動物に対して、治療有効量のエンドセリンアンタゴニストを投与する、ことを含む糖尿病性ケトアシドーシスを治療する方法に関する。 本明細書は、DKAでのET-1の関与と、改善されたDKAの治療法にETアンタゴニストが利用可能である、ことを示している。
【0015】
したがって、本願発明のある実施態様では、今日の糖尿病性ケトアシドーシスの治療法で認められている副作用の発生または副作用の程度、それに、その治療法に関連する合併症を軽減しつつ、糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための方法および組成物を提供している。 その他の実施態様にあっては、糖尿病性ケトアシドーシスまたは糖尿病を治療するための第二療法と併用して、エンドセリンアンタゴニストが投与される。
【0016】
本願発明のさらに別の実施態様では、(a) 糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための指示を記した添付文書、(b) 容器、および、(c) エンドセリンアンタゴニストを含む包装された組成物を含む、ヒトの製薬学的用途のための製造品を提供している。
【0017】
本願発明の上記した実施態様およびそれ以外の実施態様は、本願発明の好適な実施態様を詳細に記載した以下の開示から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】4日間の治療期間を通して治療をしたラットと未治療のラットの体重(g)を示す棒グラフである。
【図2】4日間の治療期間を通して治療したラットと未治療のラットの血中ケトン量(mg/dl)を示す棒グラフである。
【図3】治療をしたラットと未治療のラットでの平均動脈圧(mmHg)と時間との関係を示すグラフである。
【図4】治療をしたラットと未治療のラットでの平均脈圧(mmHg)と時間との関係を示すグラフである。
【図5】治療をしたラットと未治療のラットでの心拍数(脈拍/分)と時間との関係を示すグラフである。
【図6】治療をしたラットと未治療のラットでの脳血液灌流の変化率(%)と時間との関係を示すグラフである。
【図7】治療をしたラットと未治療のラットでの肺水量(%)を示す棒グラフである。
【図8】治療をしたラットと未治療のラットでの脳水量(%)を示す棒グラフである。
【図9】(a)糖尿病性ケトアシドーシスの誘発に起因するET-1レベル(pg/ml)(図9A)、(b)インスリン治療の結果として出現したET-1レベル(pg/ml)(図9B)、および、(c)三つの異なる治療の結果から得たET-1レベルの変化率(図9C)を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に記載の方法は、糖尿病性ケトアシドーシスの治療でエンドセリンアンタゴニストを用いることで得られる効果に基づくものである。 本明細書に記載の発明の目的のために、本明細書で用いる「治療」の用語は、糖尿病性ケトアシドーシスおよびこれに関連する症状を、解消、軽減、あるいは、緩和することを指す。
【0020】
「容器」の用語は、医薬品を、貯蔵、輸送、調剤、および/または、取り扱う上で適切なレセプタクルおよびクロージャーを指す。
【0021】
「添付文書」の用語は、製品の使用に関して、医師、薬剤師、および、患者が、十分に情報を得た上で決定を行えるようにするために必要な安全性および有効性のデータに沿って、その製品の投与方法に関する説明をするために、医薬品に添付されている情報のことを指す。 この添付文書は、一般的には、医薬品の「ラベル」として見なされている。
【0022】
ETとは、非常に強力な内皮細胞由来の血管収縮因子であり(Hickey et al., 1985)、このものは、単離、配列決定、それに、クローニングがされている(Yanagisawa et al., 1988)。 エンドセリンは、21個のアミノ酸からなる、非常に強力な血管収縮作用を示すペプチドであり、二つのジスルフィド結合を有している。 エンドセリンは、プレプロエンドセリンをプロエンドセリンへと酵素的に開裂し、次いで、エンドセリン変換酵素によってエンドセリンへと酵素的に開裂することで、生物学的に製造される。 ETは、Gタンパク質に結合した7回膜貫通型受容体である細胞表面受容体に結合することによって、その生物学的効果を奏する。 エンドセリン受容体には、異なる二つのタイプ、すなわち、(a) 主に血管平滑筋に認められ、血管収縮に関与をするET-1選択的ET受容体、および、(b) 主に血管内皮細胞に認められ、血管拡張に関与をする非選択的ET受容体、がある。
【0023】
ET-1が示す血管収縮効果は、主に、Gタンパク質が結合したET受容体によって媒介されている。 また、ET-1は、前立腺癌、転移癌、および、CNSにおいても高濃度で存在する。 CNSでのETは、内皮細胞によって生産され、また、ニューロン、星状膠細胞、および、グリア細胞などの非内皮細胞によっても生産がされる。
【0024】
ETの広範な分布と脳内でのその結合部位は、ETが血管収縮薬であるということに加えて、ETが、CNSにおける重要な神経ペプチドとしての機能を果たすことをも示唆している(Gulati et al., 1992)。 エンドセリン(ET)受容体アンタゴニスト、特に、選択的ETまたは均衡アンタゴニストET/ETアンタゴニストは、鬱血性心不全(CHF)や肺高血圧症のような疾患の治療領域を示している。 BQ-123とBMS-182874は、ET受容体の特異的アンタゴニストである(Stein et al., 1994)。 エンドセリンアンタゴニストは、肺血管系と右心に対して大きな効果を示すのに対して、ACE阻害剤は、主に、末梢血管と左心に対して効果を示す。
【0025】
幾つかの研究にあっては、中枢ET受容体は、その大部分がETサブタイプであるとの報告をしている。 ラットの脳の星状膠細胞は、主に、ET型の受容体を発現することが認められており、また、グリア細胞が、ET受容体mRNAを強く発現することも認められている。 しかしながら、高選択性ET受容体アゴニストであるIRL-1620を中枢投与しても、心臓血管系に対しては何らの効果も示さず、また、中枢に投与をしたET-1の全身的循環効果および局所循環効果は、ET受容体を介したものであったことが示されている(Gulati et al., 1995; Rebello et al., 1995)。
【0026】
ET-1を脳室内に投与すると、平均動脈圧(BP)は、一時的に上昇した後に、持続的に低下した。 この圧力効果は、腎臓での交感神経活性を高め、また、血漿に含まれるカテコールアミンとアルギニン-バソプレッシンの濃度を増大させた。
【0027】
また、ET-1の中枢投与の効果は、自律神経節遮断薬によって弱まったことから、この効果が、交感神経系の活性化を媒介したものであることが示されている。 ET-1を嚢内投与すると、BPは、一時的に上昇し、腎臓での交感神経の活性と横隔神経の活性も一時的に高めた。 腎臓での交感神経の活性と横隔神経の活性の低下に伴って、BPも低下した。 中枢ET-1が誘発した血圧上昇反応の活性化が、フェノキシベンザミンを用いた前処理によって抑制されたとの結果(Ouchi et al., 1989)は、最初の血圧上昇段階での交感神経系の積極的な関与をさらに示唆するものである。
【0028】
本願発明で使用したエンドセリンアンタゴニストとして、当該技術分野で周知のいずれのエンドセリン受容体アンタゴニストでも利用可能である。 エンドセリンは、強力な血管収縮薬である。 エンドセリンアンタゴニストは、急性心不全、鬱血性/慢性心不全、肺動脈高血圧症、肺水腫、くも膜下出血、慢性閉塞性肺疾患、心筋梗塞、急性脳虚血、急性冠不全症候群、急性腎不全、肝臓手術の術後状態、および、前立腺癌を治療するために用いられている。 エンドセリンアンタゴニストを健常者に投与しても、副作用の心配はない。
【0029】
ある実施態様によれば、好ましいETアンタゴニストは、エンドセリンA(ET)受容体に対して選択性を示すものであるか、あるいは、均衡ET/エンドセリンB(ET)アンタゴニストである。 そのようなETアンタゴニストは、本明細書の別表Aおよび別表Bにそれぞれを記載してある。 しかしながら、本明細書の別表Cおよび別表Dに記載してあるエンドセリンBアンタゴニストやその他のエンドセリンアンタゴニストなども、本願発明の組成物または方法において使用することができる。 その他の有用なエンドセリンアンタゴニストは、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの内容を援用する米国公開特許公報第2002/0082285号および第2003/0232787号に開示されており、また、Wu, Exp. Opn. Ther. Patents, 10(ll):pp.1653-1668 (2000)にも開示がされている。
【0030】
本願発明において有用なエンドセリンアンタゴニストの例として、アトラセンタン、テゾセンタン、ボセンタン、シタキスセンタン、エンラセンタン、BMS-207940(ブリストル・マイヤーズ スクイブ)、BMS-193884、BMS-182874、J-104132(萬有製薬)、VML 588/Ro 61-1790(バンガード・メディカ)、T-0115(田辺製薬)、TAK-044(タケダ)、BQ-788、BQ123、YM-598、LU 135252、PD 145065、A-127722、ABT-627、A-192621、A-182086、TBC3711、BSF208075、S-0139、TBC2576、TBC3214、PD156707、PD180988、ABT-546、ABT-627、Z1611、RPRl 18031 A、SB247083、SB217242、S-Lu302872、TPC10950、SB209670、および、これらの混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0031】
BQ123は、エンドセリンAアンタゴニストの具体例であって、このものは、シクロ(D-Trp-D-Asp-Pro-D-Val-Leu)のナトリウム塩である。 BQ123は、エンドセリンAアンタゴニストの具体例であって、このものは、シクロ(D-Trp-D-Asp-Pro-D-Val-Leu)のナトリウム塩である。 BQ-788は、エンドセリンBアンタゴニストの具体例であって、このものは、N-シス-2,6-ジメチルピペリジノカルボニル-L-γ-メチルロイシル-D-1-メトキシカルボニルトリプトファニル-DNIeのナトリウム塩である(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, pp. 4892-4896 (1994)を参照されたい)。
【0032】
従来のエンドセリンアンタゴニストに加えて、内因性エンドセリンの形成を阻害する化合物も、エンドセリンアンタゴニストとして、本願発明で使用することができる。 これら化合物は、エンドセリンの形成を予防し、つまりは、エンドセリン受容体の活性を低下させるので、有用な化合物であると言える。 このような化合物のクラスの一つに、エンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤がある。
【0033】
有用なECE阻害剤として、CGS34225(すなわち、N-((1-((2(S)-(アセチルチオ)-1-オキソペンチル)-アミノ)-1-シクロペンチル)-カルボニル-S-4-フェニルフェニル-アラニンメチルエステル)、および、ホスホラミドン(すなわち、N-(a-ラムノピラノシルオキシヒドロキシホスフィニル)-ロイシン-トリプトファン)などがあるが、これらに限定されない。
【0034】
糖尿病性ケトアシドーシスを治療するために、一つまたはそれ以上のエンドセリンアンタゴニストを単独で投与することができ、あるいは、インスリン、電解質、重炭酸ナトリウム、利尿薬、ブメタニド、マンニトール、および/または、高張食塩水などのその他の糖尿病および糖尿病性ケトアシドーシスのための治療剤と組み合わせて投与することができる。 また、エンドセリンアンタゴニストを、糖尿病性ケトアシドーシスの治療のための輸液療法を用いて投与することもできる。 エンドセリンアンタゴニストは、インスリン、電解質、重炭酸ナトリウム、利尿薬、ブメタニド、マンニトール、および/または、高張食塩水を投与する以前、これらを投与した後、あるいは、これらと同時に投与することができる。
【0035】
本明細書に記載の試験方法およびデータは、エンドセリンアンタゴニストを、糖尿病性ケトアシドーシスを治療する方法において、哺乳動物に対して投与できることを示している。 本明細書に記載の「エンドセリンアンタゴニスト」の用語は、一つまたはそれ以上のエンドセリンアンタゴニストを指すものであって、すなわち、本願発明が、単一のエンドセリンアンタゴニスト、または、エンドセリンアンタゴニストの混合物の投与を含んでいることを指すものである。 これらエンドセリンアンタゴニストを、経口投与、または、非経口投与するために、適切な賦形剤を用いて製剤することができる。 そのような賦形剤は、当該技術分野において周知である。 一般的に、エンドセリンアンタゴニストは、組成物の約0.1重量%〜約75重量の量で当該組成物に取り込まれる。
【0036】
エンドセリンアンタゴニストを含む医薬組成物は、ヒトまたはその他の哺乳動物への投与に適している。 一般的に、これら医薬組成物は、滅菌済のものであり、また、投与時に副作用を引き起こす毒性化合物、発癌性化合物、または、変異原性化合物を含んでいない。
【0037】
本願発明の方法は、上記したエンドセリンアンタゴニスト、あるいは、生理学的に許容可能なその塩または溶媒和物を用いて実施することができる。 これらエンドセリンアンタゴニスト、塩類、または、溶媒和物は、純化合物として投与することができ、あるいは、それらのいずれか、または、双方を含む医薬組成物として投与することができる。
【0038】
エンドセリンアンタゴニストは、例えば、経口投与、経頬投与、吸入、舌下投与、直腸内投与、膣内投与、腰椎穿刺を介した髄腔内投与、経尿道投与、経鼻吸入、経皮的投与、すなわち、経皮投与、あるいは、(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、冠状動脈内投与などを含む)非経口投与などの適切な経路で投与することができる。 非経口投与は、針または注射器、あるいは、POWDERJECT(商品名)などの高圧技術を用いて行うことができる。 エンドセリンアンタゴニストの投与は、疼痛が発症する以前、発症している最中、または、発症した後に行うことができる。
【0039】
本願発明の医薬組成物には、所定の治療目的を達成する治療有効量のエンドセリンアンタゴニストを含んだ組成物が含まれている。 具体的には、「治療有効量」とは、糖尿病性ケトアシドーシスおよびそれに関連する症状を、緩和または解消するに効果的な量のことを指す。 治療有効量の決定は、当業者が十分に実施可能な範囲内の事項であり、特に、本明細書での開示を参照することで十分に対処可能である。
【0040】
「治療有効量」とは、所望の効果を奏するエンドセリンアンタゴニストの量のことを指す。 エンドセリンアンタゴニストの毒性や治療効果は、細胞培養物や実験動物を用いた標準的な製剤手法、例えば、 LD50(個体群の50%に対する致死用量)やED50(個体群の50%に対する治療効果用量)によって決定される。 毒性と治療効果との間の用量比は、LD50とED50との間の比率として表される治療指数である。 治療指数は、大きい方が望ましい。 これらデータから取得されるデータは、ヒトに対して用いる用量の範囲を決定するために用いられている。 エンドセリンアンタゴニストの用量は、ED50を含む循環濃度の範囲内にあり、その毒性は皆無か、あるいは、ほとんどない。 これら用量は、使用する剤形や、利用した投与経路に応じて、この範囲内で変化する。
【0041】
正確な処方、投与経路、および、用量は、患者の病態を考慮して、個々の医師によって決定される。 投与量と投与間隔は、治療効果または予防効果を維持するに十分なレベルのエンドセリンアンタゴニストを提供するために、個別に調整をすることができる。
【0042】
エンドセリンアンタゴニストの投与量は、治療を受ける対象動物、対象動物の体重、疼痛の程度、投与方法、それに、処方医師の判断によって定まることとなる。
【0043】
具体的には、糖尿病性ケトアシドーシスの治療のためにヒトに投与する場合には、エンドセリンアンタゴニストの経口投与量は、一般的に、平均的な大人の患者(70kg)にあっては、毎日、約10〜約200mgであり、通常は、1日1回、または、1日に2回または3回に分けて投与を行う。 よって、一般的な大人の患者にあっては、1日に1回または数回の単回投与または複数回投与のために、各錠剤または各カプセルは、薬学的に許容可能な適切な賦形剤または担体に約0.1〜約50mgのエンドセリンアンタゴニストを含んでいる。 一般的に、静脈内投与、経頬投与、または、舌下投与のための用量は、必要に応じて、約0.1〜約10mg/kg/単一用量となる。 実際には、医師は、個々の患者に最も適した投与計画を決定し、そして、個々の患者の年齢、体重、それに、反応性を見ながら用量を調整する。 前述した用量は、平均的な事例を例示したものでしかなく、それら用量を増減することで所定の効果を引き出す場合も当然にあるのであって、そのような事例も、本願発明の範囲内の事項である。
【0044】
エンドセリンアンタゴニストは、それ単独でも、あるいは、意図している投与経路や標準的薬務に照らして選択した薬学的担体と組み合わせて投与することができる。 よって、本願発明に従って使用する医薬組成物は、薬学的に用いることができる調製物へのエンドセリンアンタゴニストの加工を促す賦形剤や助剤を含む一つまたはそれ以上の生理学的に許容可能な担体を用いて、従来の方法によって製剤することができる。
【0045】
これら医薬組成物は、例えば、従来の混合法、溶解法、造粒法、糖衣形成法、乳化法、カプセル化法、封入法、または、凍結乾燥法などの従来技術を用いて製造することができる。 選択した投与経路に応じて適切な製剤が調製される。 有効量のエンドセリンアンタゴニストを経口投与する場合には、一般的に、組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末、溶液、または、エリキシル剤の形態となる。 錠剤の形態で投与を行う場合には、その組成物は、ゼラチンやアジュバントなどの固形担体をさらに含むことができる。 錠剤、カプセル剤、および、粉末は、約5%〜約95%の本願発明のエンドセリンアンタゴニスト、好ましくは、約25%〜約90%の本願発明のエンドセリンアンタゴニストを含む。 液剤の形態で投与を行う場合には、水、石油、または、動物または植物由来の油脂などの液体担体を加えることができる。 この液体組成物は、生理食塩水、ブドウ糖またはその他の糖溶液、または、グリコールをさらに含むことができる。 液剤の形態で投与を行う場合、この組成物は、約0.5重量%〜約90重量%のエンドセリンアンタゴニスト、好ましくは、約1%〜約50%のエンドセリンアンタゴニストを含む。
【0046】
治療有効量のエンドセリンアンタゴニストを、静脈内投与、皮膚投与、または、皮下注射によって投与する場合には、発熱物質を含まず、非経口的に許容可能な溶液の形態で投与される。 pH、等張性、安定性などが関係して非経口的に許容可能な溶液を調製することは、当該技術分野で周知の事項である。 静脈内投与、皮膚投与、または、皮下注射に適した組成物は、本願発明の化合物に加えて、等張性の賦形剤を含んでいる。
【0047】
エンドセリンアンタゴニストを、当該技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体と共に容易に組み合わせることができる。 このような担体は、治療を受ける患者の経口摂取に供するために、エンドセリンアンタゴニストを、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などに取り込んで製剤することができる。 経口投与用医薬品は、エンドセリンアンタゴニストを固形賦形剤に対して加え、得られた混合物を任意に粉砕し、そして、必要に応じて、適切な助剤を加えた後に、錠剤または糖衣錠の核材を取得するために顆粒の混合物を加工する、ことによって製造することができる。 適切な賦形剤として、例えば、増量剤やセルロース調製物などがある。 必要に応じて、崩壊剤を加えることもできる。
【0048】
エンドセリンアンタゴニストを、例えば、急速静注法や連続注入法などの注射による非経口投与のために製剤することができる。 注射用製剤は、防腐剤を加えてなる、例えば、アンプルまたは複合投与用容器に収容された単一投与量の形態で提供することができる。 これら組成物は、懸濁液、溶液、または、油性または水性賦形剤中型乳剤の形態にすることができ、また、懸濁剤、安定剤、および/または、分散剤などの調剤を含むことができる。
【0049】
非経口投与用の医薬組成物として、水溶性エンドセリンアンタゴニストの水性溶液がある。 加えて、エンドセリンアンタゴニストの懸濁液を、適切な油状注射用懸濁液として調製することができる。 適切な親油性溶媒または親油性賦形剤として、脂肪油、または、合成脂肪酸エステルなどがある。 水性注射用懸濁液に、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有させることができる。 また、これら懸濁液に、適切な安定剤や、化合物の溶解性を増大させて、高濃度溶液の調製を可能にする薬剤なども任意に含有させることができる。 あるいは、本願発明の組成物を、使用前に適切な賦形剤、例えば、滅菌した発熱物質を含まない水で溶かして使用する粉末形態にすることができる。
【0050】
エンドセリンアンタゴニストは、例えば、従来の坐薬基剤を含む坐薬または停留浣腸のような、直腸用組成物に製剤することもできる。 前述した製剤に加えて、エンドセリンアンタゴニストは、デポー製剤として製剤することもできる。 このような長期持続性製剤は、移植(例えば、 皮下または筋肉内移植)、または、筋肉内注射によって投与することができる。 よって、例えば、エンドセリンアンタゴニストを、適切な重合物質または疎水性物質(例えば、許容可能な油中型乳剤)、または、イオン交換樹脂を用いて製剤に供することができるし、あるいは、例えば、難溶性塩などの難溶性誘導体として製剤に供することができる。
【0051】
具体的には、エンドセリンアンタゴニストは、澱粉やラクトースなどの賦形剤を含む錠剤、カプセル剤または胚珠の単体あるいは賦形剤とそれらの組み合わせ、エリキシル剤、あるいは、着香料または着色剤を含んだ懸濁液の形態で、経口的、経頬的、または、舌下に投与することができる。 そのような液体製剤は、懸濁剤のような薬学的に許容可能な添加物を用いて調製することができる。 エンドセリンアンタゴニストを、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、または、冠動脈内などに、非経口的に注射することもできる。 非経口投与を行うにあたって、エンドセリンアンタゴニストは、血液に対して等張性を示す溶液を調製するために、例えば、マンニトールやグルコースなどの塩類や単糖類などのその他の物質を含有することができる滅菌した水性溶液の形態のものが最善である。
【0052】
獣医学的用途については、エンドセリンアンタゴニストは、通常の獣医学的手順にしたがって、好適な許容可能な製剤として投与される。 獣医師であれば、個々の動物に対して最適の投与計画と投与経路を容易に決定することができる。
【0053】
インスリンとの組み合わせでエンドセリンアンタゴニストを用いることで、現在の糖尿病性ケトアシドーシスの治療法で認められる副作用や合併症を招かずに、糖尿病性ケトアシドーシスの効果的な治療が可能となることが明らかになった。
【実施例】
【0054】
DKAのラットモデルでのエンドセリン(ET)の関与について研究を行った。 ストレプトゾトシン(150mg/kg)を、腹腔内に注射をしてDKAを再現した。 糖尿病性ケトアシドーシスの発症処置をして4日後には、血糖値と血中ケトン値は顕著に増大し、そして、pH値は低下していた。 すべての実験を、4日目に行った。 以下の処置の前後において、体重、血糖値、尿中ケトン値、血中ケトン値、動脈血液ガス、血中電解質、平均動脈圧、脈圧、心拍数、脳血液灌流、脳水量および肺水量を決定した。 非糖尿病・未処置試験区(コントロール);糖尿病・未処置試験区(ポジティブコントロール);糖尿病・生理食塩水処置試験区;糖尿病・生理食塩水+インスリン処置試験区;および、糖尿病・BMS-182874(ET受容体アンタゴニスト)+生理食塩水+インスリン処置試験区。 ET受容体アンタゴニストであるBMS-182874は、動脈血pH(6.82±0.02→6.91±0.02)、血中カリウムイオン濃度(4.21±0.33→2.75±0.27mmol/dL)、および、血中乳酸濃度(2.74±0.64→1.57±0.20mg/dl)において改善を示した。 また、BMS-182874は、インスリンが誘発する高血圧症を予防し、そして、脳血液の灌流量も増やした。 これら結果は、糖尿病性ケトアシドーシスの管理におけるET受容体アンタゴニストのようなエンドセリンアンタゴニストの治療用途を示唆している。
【0055】
試料および方法
動物
300〜350gの体重のオスのスプラーグドーリーラット(ハーラン社、インディアナポリス、インディアナ州)を、室温(23±1℃)、湿度(50±10%)、および、12時間明暗サイクル(午前6時〜午後6時)が調節された部屋で、使用時まで、少なくとも4日間かけて収容をした。 食餌と水は、継続的に自由に摂らせた。 実験用の動物の飼育と使用については、動物実験委員会(IACUC)の許可を得た。 すべての麻酔処置と外科処置は、動物実験委員会のガイドラインを遵守して行った。
【0056】
薬剤および化学薬品
ストレプトゾトシン、ウレタン(シグマ-アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ−州、米国);BMS-182874塩酸塩(5-ジメチルアミノ)-N-(3,4-ジメチル-5-イソキサゾリル)-1-ナフタレンスルホンアミド塩酸塩)、および、ET特異的アンタゴニストであるBQ123シクロ(D-Trp-D-Asp-Pro-D-Val-Leu)(トクリスバイオサイエンス社、エリスヴィル、ミズーリ−州、米国);エンドセリン-1(リサーチバイオケミカルズインターナショナル社、ナティック、マサチューセッツ州、米国);および、エンドセリン-1酸素免疫測定法(EIA)キット(カタログ番号900-020A、アッセイデザイン社、アナーバー、ミシガン州、米国)。 ここで用いたその他の試薬は、いずれも最上級の市販品であった。
【0057】
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の誘発
正常血圧のスプラーグドーリーラットに、水以外の摂取を禁じて、2時間の絶食をさせた。 2時間の絶食の後に、ラットの腹腔内に、150mg/kgのストレプトゾトシンを含んだ0.05mol/lのクエン酸、pH 4.3を注射して、糖尿病を誘発し(Lam et al., 2005; Yuen et al., 2008)、それとは別に、非糖尿病コントロールのラットには、腹腔内に、0.05mol/lのクエン酸緩衝液を注射した(Lam et al., 2005; Yuen et al., 2008)。 ラットに、食餌と水道水を自由に摂らせた。 毎日、ラットの体重を計量し、また、尿検査試薬紙片である1Kパラメーターを用いて尿中ケトン濃度を見積もった。 ストレプトゾトシンまたはクエン酸緩衝液の注射を行う前に、ベースラインの血中グルコース値を、カリフォルニア州、ミルピタスに所在のライフスキャン社から市販されているワンタッチウルトラ血糖値検査紙片を用いて評価をし、また、ベースラインの血中ケトン濃度は、カーディオチェック血中ケトン値分析器を用いて評価をした。 高血糖とケトアシドーシスの発症を再検証するために、3日目と4日目に、血糖値と血中ケトン濃度の測定を再度行った。 ストレプトゾトシンを注射して4日後に、(1)尿中ケトン濃度(>160mg/dl)、(2)血中ケトン濃度(>20mg/dl)、および、(3)血中グルコース濃度(>400mg/dl)の顕著な増大が認められ、このことは、ラットの糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が進行していることを示唆するものである。 ベースライン値を決定するために、処置を開始する前、処置を始めて1時間後、そして、処置の終了時(実験開始から5時間)に、大腿静脈から血液試料を取得した。
【0058】
血中ガスの決定
処置を開始する前、処置を始めて1時間後、そして、処置の終了時に、動脈血のpH、pO、pCO、ナトリウムイオン、カリウムイオン、乳酸、および、ヘマトクリットの数値をモニターした。 血中ガス採取用注射器(イノベーティブメディカルテクノロジーズ社、レーウッド、カンザス州)を用いて、動脈カニューレから血液試料を回収し、そして、GEMプレミア3000ユニット(インスツルメントラボラトリー社、レキシントン、マサチューセッツ州)を用いて分析を行った。 ベースライン値を決定するために、処置を開始する前、処置を始めて1時間後、そして、処置の終了時(実験開始から5時間)に、大腿動脈から血液試料を取得した。
【0059】
脳血液灌流の決定
ラットの頭蓋骨の正中線左側の約2ミリメートル(mm)の位置に、脳組織を傷つけないように注意を払いながら、ドリルで穿頭孔を開けた。 大脳血管の灌流を、ラットの脳の表面に取り付けた光ファイバープローブ(PF407)を介して測定をした。 このプローブは、ペリフラックスPF2b 4000レーザードップラーフロウメトリーユニット(ペリメド社、ストックホルム、スウェーデン)に接続されていた。 毛細血管を通過する赤血球を測定して、灌流を決定した。
【0060】
心臓血管パラメーターの決定
ウレタン(1.5g/kg、腹腔内投与)でラットに麻酔をかけ、次いで、血行動態パラメーターを決定するための準備を行った(Gulati et al., 1997a; Gulati et al., 1997b)。 麻酔をしたラットの剃毛を行い、そして、挿管を行うためにラットを固定した。 2〜3センチメートル(cm)の切開を、大腿静脈と大腿動脈の上部に入れ、そして、血管を切開して清浄をした。 左大腿静脈に挿管(PE-50チューブ、クレイアダムス社、パルシパニー、ニュージャージー州)を行い、そして、薬剤投与のために固定を行った。 血行動態シグナルを取得するために、先端部の側面に単一の圧力センサーを具備した超小型圧力変換器SPR-320(2Fポリウレタン)(ミラーインスツルメンツ社、ヒューストン、テキサス州)を、左大腿動脈に挿入した。 圧力変換器を、バイキングコネクター(AEC-10C)を具備したブリッジ増幅器 (ML221ブリッジ増幅器;ADインスツルメンツ社、マウンテンビュー、カリフォルニア州、米国)に接続し、次いで、ミラーパワーラボ16/30データ取得システム(ADインスツルメンツ社、マウンテンビュー、カリフォルニア州、米国)を用いて、1000S-1の採取速度で継続的にシグナルを得た。 平均動脈圧(MAP)、心拍数(HR)、および、脈圧(PP)を決定し、そして、ラボチャート-5.00ソフトウェアプログラム(ミラーインスツルメンツ社)を用いて分析を行った。 実験終了後、高用量のウレタン(3gm/kg)を動物に投与して安楽死させた。
【0061】
脳水量と肺水量の決定
脳浮腫および肺浮腫の評価を行うために、肺および脳の水分含量を決定した。 脳水量と肺水量を、以下のようにして決定した。 処置が終わった時点で、動物を屠殺し、そして、気管を即座にくくり、次いで、肺を切開した。 頭蓋骨を開け、そして、脳を切開した。 脳と肺を生理食塩水で洗浄し、そして、計量をした(湿重量)。 脳と肺を乾燥させるために、それらを、72時間、6O℃に設定したオーブン内に置き、その後、再度の計量を行った(乾燥重量)。 含水率は、以下の式を用いて算出した。
【0062】
【数1】

血漿中のET-1濃度の決定
処置を行っている間の血漿中ET-1濃度の変化を分析するために、実験の開始前および終了時に、ラットの右大腿動脈から血液試料を採取し、そして、アプロチニン(500KIU/血液ml)が入った冷却したEDTA管(1mg/血液ml)に回収した。 血液試料を、1,600×gで、15分間、0℃で遠心分離をし、そして、分析に供するまで、分離した血漿を−70℃で保存をした。 アッセイデザインズ社のエンドセリン-1酵素免疫測定アッセイキット(Nowicki et al, 2005; Brondani et al., 2007)を用いて、ET-1濃度を見積もった。 具体的には、血漿試料と標準品を、ET-1に特異的なモノクローナル抗体でコーティングをしたウェルに加えた。 そして、24時間のインキュベーションを終えた後に、プレートを洗浄し、プレートに結合したET-1だけを残した。 次いで、ET-1に対して特異的で、かつ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)でラベルがされたモノクローナル抗体の溶液を加えると、その抗体は、プレートに結合したET-1に結合する。 このプレートを、30分間かけてインキュベーションし、次いで、HRPがラベルされた過剰の抗体を除去するために洗浄を行った。 HRPによって触媒されると青色を呈する3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)基質の溶液を加えた。 基質反応を停止するために塩酸(1N)を加え、そして、得られた黄色について、DTX 800多重モード検出器を用いて、450nmにて計測を行った。 このデータを、多重モード検出ソフトウェア(ベックマンコールター社、フラートン、カリフォルニア州)で分析をした。 測定された光学密度は、標準品または血漿のいずれかでのET-1の濃度に正比例している。 処置を開始する以前、および、処置の終了時に、すべてのグループから血液試料を回収した。
【0063】
研究計画
少なくとも20分間、動物たちを安静にさせてから、以下の外科的処置を行った。 以下のグループに関して、体重、血糖値、尿中ケトン値、血中ケトン値、動脈血液ガス、血中電解質、平均動脈圧、脈圧、心拍数、脳血液灌流、脳水量、および、肺水量についての決定を行った。
【0064】
グループ1:非糖尿病・未処置試験区(非D未処置試験区): 1日目に、クエン酸緩衝液(1ml/kg、腹腔内投与)をラットに注射し、そして、4日目から試験を開始した。
【0065】
グループ2:糖尿病・未処置試験区(D未処置試験区): 糖尿病およびケトアシドーシスを誘発するために、ストレプトゾトシンを含むクエン酸緩衝液(150mg/kg、腹腔内投与)をラットに注射した。 ラットに処置は施さなかった。
【0066】
グループ3:糖尿病・生理食塩水処置試験区(D生理食塩水処置試験区): 糖尿病およびケトアシドーシスを誘発するために、ストレプトゾトシンを含むクエン酸緩衝液(150mg/kg、腹腔内投与)をラットに注射した。 生理食塩水を用いてラットを処置した。 点滴ポンプ(ハーバードアパレイタス点滴/回収ポンプ、ミリス、マサチューセッツ州)を用いて、挿管をした大腿静脈を介して、生理食塩水(0.9%NaCl;ホスピラ社、レイクホレスト、イリノイ州)を、80ml/kg/時間の点滴を1時間行った。 その後の2〜4時間に、ラットに対して、40ml/kg/時間の生理食塩水を投与した(Yuen et al., 2008)。
【0067】
グループ4:糖尿病・生理食塩水/インスリン処置試験区(D生理食塩水+インスリン処置試験区): 糖尿病およびケトアシドーシスを誘発するために、ストレプトゾトシンを含むクエン酸緩衝液(150mg/kg、腹腔内投与)をラットに注射した。 3日目に、1.5単位/kgのレギュラーインスリン(ヒューマリン(登録商標)R(レギュラーヒトインスリン、rDNA由来)で、ラットを処置した。 4日目に、生理食塩水とインスリンを用いた処置を行った。 挿管をした大腿静脈を介して、ラットに対して、生理食塩水、80ml/kg/時間の0.9%NaCl、および、1.5単位/kg/時間のレギュラーインスリンの点滴を1時間行った。 その後の2〜4時間に、ラットに対して、生理食塩水、40ml/kg/時間の0.9%NaCl、および、1.5単位/kg/時間のレギュラーインスリンを点滴した(Yuen et al., 2008)。
【0068】
グループ5:糖尿病・BMS-182874/生理食塩水/インスリン処置試験区(D-BMS+生理食塩水+インスリン処置試験区): 糖尿病およびケトアシドーシスを誘発するために、ストレプトゾトシンを含むクエン酸緩衝液(150mg/kg、腹腔内投与)をラットに注射した。 3日目に、1.5単位/kgのレギュラーインスリンで、ラットを処置した。 4日目に、選択的ET受容体アンタゴニストであるBMS-182874(9mg/kg)を大量投与し、次いで、生理食塩水とインスリンを用いた処置を行った。 挿管をした大腿静脈を介して、ラットに対して、生理食塩水、80ml/kg/時間の0.9%NaCl、および、1.5単位/kg/時間のレギュラーインスリンの点滴を1時間行った。 その後の2〜4時間に、ラットに対して、生理食塩水、40ml/kg/時間の0.9%NaCl、および、1.5単位/kg/時間のレギュラーインスリンを点滴した。
【0069】
グループ6:糖尿病・BQ123/生理食塩水/インスリン処置試験区(D-BQ+生理食塩水+インスリン処置試験区): BMS-182874(9mg/kg)に代えて、BQ123(1mg/体重kg)を利用した以外は、グループ5に記載の手順と同じ処置を行った。
【0070】
すべてのデータ値は、平均値±SEMで示してある。 一元配置分散分析(ベースライン値に関するグループ内の比較)、および、二元分散分析 (各グループから得た対応する時点に関するグループ間の比較)によって有意差の評価を行い、次いで、ダネットの多重比較検定とボンフェローニ検定の各々に適用した。 P<0.05のレベルを、有意とした。 統計値の分析は、グラフパドプリズムソフトウェアバージョン5.00によって処理を行った。
【0071】
結果
表1は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血糖値(mg/dl)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、1日前の処置との比較をしたものであり、また、P<0.05は、4日前の処置との比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、血中グルコース値を増大せしめ、また、インスリンで処置を行うことで、血糖値が顕著に減少したことを示している。 そして、外科的処置を行うことで、血中グルコース値が顕著に増大することも明らかとなった。 BMS-182874またはBQ123で処置を行っても、血糖値には顕著な影響は認められなかった。
【0072】
【表1】

表2は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血中ケトン値(mg/dl)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、1日前の処置との比較をしたものであり、また、P<0.05は、4日前の処置との比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、血中ケトン値を増大せしめ、また、インスリンで処置を行うことで、BMS-182874/BQ123の有無にかかわらず、血中ケトン値が顕著に減少したことを示している。 BMS-182874で処置を行っても、血中ケトン値には顕著な影響は認められなかった。 BQ123で処置を行ったところ、血中ケトン値は顕著に減少した。 図2を参照されたい。
【0073】
【表2】

表3は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、尿中ケトン濃度(mg/dl)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、1日目と比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、尿中ケトン濃度を増大せしめたことを示している。 尿中ケトン濃度は、処置を開始する前に決定されたため、この実験では、処置の効果については観察を行っていない。
【0074】
【表3】

表4は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血漿中ET-1濃度(pg/ml)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、前処置との比較をしたものであり、また、P<0.05は、非D未処置試験区との比較をしたものである。 (1)糖尿病性ケトアシドーシスの誘発、および、(2)インスリンを用いた処置を行うことで、血漿中ET-1濃度が増大する、との結論を導くことができた。
【0075】
そして、外科的処置を行うことで、血漿中ET-1濃度が顕著に増大するということも明らかとなった。 BMS-182874またはBQ123で処置を行っても、血漿中ET-1濃度には顕著な影響は認められなかった。
【0076】
【表4】

表5は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、動脈血pHに基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、非糖尿病・未処置のラットとの比較をしたものであり、また、P<0.05は、糖尿病・生理食塩水+インスリン処置のラットとの比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、pHを低下させており、このことは、重篤なアシドーシスに至っていることを示している。 生理食塩水、または、生理食塩水+インスリンを用いた処置では、アシドーシスについての有意な改善は認められなかった。 しかしながら、BQ123、または、BMS-182874+生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったところ、動脈血pHに有意の改善が認められた。 これらの結果は、糖尿病性ケトアシドーシスの治療を行っている間にアシドーシスを改善するために、ET受容体アンタゴニスト、例えば、BMS-182874、または、BQ123を使用できることを示すものである。 ここで用いた機器は、6.80未満のpHを計測できないものであった。
【0077】
【表5】

表6は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、動脈血pCO(mmHg)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、非糖尿病・未処置のラットとの比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、動脈血pCOを低下させていることを示している。 様々な処置を行っている間の動脈血pCOには、変化が認められなかった。
【0078】
【表6】

表7は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、動脈血pO(mmHg)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、非糖尿病・未処置のラットとの比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、動脈血pOを増大させていることを示している。 様々な処置を行っている間の動脈血pOには、変化が認められなかった。
【0079】
【表7】

表8は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血中ナトリウムイオン濃度(mmol/l)に基づく治療の効果を示している。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、血中ナトリウムイオン(Na)濃度に変化を及ぼさないことを示している。 様々な処置を行っている間の血中ナトリウムイオン濃度には、変化が認められなかった。
【0080】
【表8】

表9は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血中カリウムイオン濃度(mmol/l)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、非糖尿病・未処置のラットとの比較をしたものであり、また、P<0.05は、糖尿病・未処置のラットとの比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、血中カリウムイオン(K)濃度を増大することを示している。 生理食塩水+インスリン、または、BMS-182874+生理食塩水+インスリン、または、BQ123+生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったところ、糖尿病性ケトアシドーシスによって誘発された血中カリウムイオン濃度は、有意に減少していた。 高カリウム血症は、DKAの症例によく認められる症状であり(Fulop, 1979)、高カリウム血症になると、細胞内から細胞外の体液へとカリウムイオンの再分配が起こり、そして、EKGにおいてU波と平坦なT波とが形成されることとなる(Malone and Brodsky, 1980)。 インスリンを点滴すると、不整脈の発生リスクを高める低カリウム血症になる可能性がある。 BMS-182874とBQ123は、血行動態を安定にし、そして、好ましくない心臓血管イベントを予防するために用いることができる。
【0081】
【表9】

表10は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血中乳酸濃度(mg/dl)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、非糖尿病・未処置のラットとの比較をしたものであり、また、P<0.05は、糖尿病・未処置のラットとの比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、血中乳酸濃度を増大することを示している。 生理食塩水、生理食塩水+インスリン、または、BMS-182874+生理食塩水+インスリン、または、BQ123+生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったところ、糖尿病性ケトアシドーシスによって誘発された血中乳酸濃度は、有意に減少していた。
【0082】
【表10】

表11は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血中ヘマトクリット値(Hct;%)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、非糖尿病・未処置のラットとの比較をしたものである。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、ヘマトクリット値に変化を及ぼさなかったことを示している。 生理食塩水+インスリン、または、BMS+生理食塩水+インスリン、または、BQ123+生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったところ、ヘマトクリット値は、有意に減少していた。
【0083】
【表11】

図1は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、体重(g)に基づく治療の効果を示している。 これらの結果は、4日間の試験期間において、糖尿病性ケトアシドーシスでないコントロールのラットで、体重が増加したことを示している。 また、すべての処置グループにおいて、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスは、4日間の試験期間で、同様の体重の減少を示した。
【0084】
図2は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血中ケトン濃度(mg/dl)に基づく治療の効果を示している。 これらの結果は、ストレプトゾトシンによって誘発された糖尿病性ケトアシドーシスが、血中ケトン濃度を増大したことを示している。 生理食塩水+インスリンを用いた治療、ならびに、BQ123、あるいは、BMS+生理食塩水+インスリンを用いた治療では、血中ケトン濃度について、同様の顕著な減少を示した。 BQ123+生理食塩水+インスリンを用いた治療を行ったところ、DKAラットの血中ケトン値の特に顕著な減少が認められた。
【0085】
図3は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、平均動脈圧(mmHg)に基づく治療の効果を示している。 糖尿病性ケトアシドーシスのラットと比較して、非糖尿病・未処置のラットでの動脈圧は、高い数値を示していた。 糖尿病・未処置のラットでは、実験終了時まで、動脈圧の減少が続いた。 生理食塩水を用いた処置、生理食塩水+インスリンを用いた処置、ならびに、BQ123+生理食塩水+インスリン、あるいは、BMS+生理食塩水+インスリンを用いた処置を行ったところ、未処置のラットと比較して、動脈圧の減少は、さほど大きくなかった。 生理食塩水+インスリンを用いた処置、BQ123+生理食塩水+インスリン、または、BMS+生理食塩水+インスリンを用いた処置を行ったところ、ベースラインと比較して、動脈圧の減少は何も認められなかった。 したがって、糖尿病性ケトアシドーシスの治療を行っている間は、BQ123およびBMS-182874が、動脈圧を安定させていたものと結論づけられる。
【0086】
図4は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、脈圧(mmHg)に基づく治療の効果を示している。 糖尿病性ケトアシドーシスのラットと比較して、非糖尿病・未処置のラットでの脈圧は、高い数値を示していた。 糖尿病・未処置のラットでは、実験終了時まで、脈圧の減少が続いた。 生理食塩水を用いた処置、生理食塩水+インスリンを用いた処置、ならびに、BQ123+生理食塩水+インスリン、あるいは、BMS+生理食塩水+インスリンを用いた処置を行ったところ、未処置のラットと比較して、脈圧の減少は、さほど大きくなかった。 しかしながら、BQ123+生理食塩水+インスリンを用いた処置を行ったところ、ベースラインと比較して、脈圧の減少は何も認められなかった。 したがって、糖尿病性ケトアシドーシスの治療を行っている間は、BQ123およびBMS-182874が、脈圧を安定させていたものと結論づけられる。
【0087】
図5は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、心拍数(脈拍/分)に基づく治療の効果を示している。 糖尿病性ケトアシドーシスのラットと比較して、非糖尿病・未処置のラットでの心拍数は、高い数値を示していた。 糖尿病・未処置のラットでは、実験終了時まで、心拍数の減少が続いた。 生理食塩水を用いた処置を行ったところ、未処置のラットが示したのと同様の心拍数の減少が認められた。 生理食塩水+インスリンを用いた処置、または、BMS+生理食塩水+インスリン、あるいは、BQ123+生理食塩水+インスリンを用いた処置を行ったところ、ベースラインと比較して、心拍数の減少は何も認められず、また、その心拍数は、未処置のラット、あるいは、生理食塩水を用いて処置を行ったラットでの心拍数よりも有意(P<0.05)に大きな数値であった。 生理食塩水+インスリン、または、BMS+生理食塩水+インスリン、あるいは、BQ123+生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったグループでの心拍数は、同様の数値であった。
【0088】
図6は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、脳血液灌流(変化率)に基づく治療の効果を示している。 非糖尿病・未処置のラットでの脳血液灌流は、糖尿病性ケトアシドーシスのラットと比較して、同様の数値を示していた。 生理食塩水を用いて処置を行ったところ、脳血液灌流に関しては、何らの顕著な変化も認められなかった。 しかしながら、生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったところ、脳血液灌流に顕著(P<0.05)な変化が認められた。 この脳血液灌流の増大は、BMS-182874、または、BQ123によって、有意にブロックすることができた。 BQ、または、BMS+生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったところ、生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったラットと比較をして、脳血液灌流の増大を、有意(P<0.05)に減衰させていた。 したがって、糖尿病性ケトアシドーシスの治療を行っている間は、BQまたはBMS-182874が、脳血流を安定させていたものと結論づけられる。 糖尿病性ケトアシドーシスの治療を行っている間に生じる致命的危険要素は、脳浮腫の進行である。 脳血液灌流の増大は、脳浮腫の進行に寄与する主要因子となりうる。 ここで示した結果は、糖尿病性ケトアシドーシスのラットモデルにおいて、BQまたはBMS-182874が、インスリンが誘発した脳血液灌流の増大を予防できる、ことを初めて明らかにするものである。
【0089】
図7は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、肺水量(肺浮腫)に基づく治療の効果を示している。 非糖尿病・未処置のラットと比較して、糖尿病性ケトアシドーシスのラットでの肺水量は、有意(P<0.05)に減少をしていた。 生理食塩水、生理食塩水+インスリン、または、BQあるいはBMS+生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったところ、肺水量の改善が認められ、そして、糖尿病性ケトアシドーシスのラットと比較をして、肺水量が有意(P<0.05)に改善していたが、非糖尿病・未処置のラットで認められたのと同様の肺水量であった。 糖尿病性ケトアシドーシスが、重度の脱水症状を引き起こし、そして、肺水量の減少を招くことは周知の事項である。 生理食塩水、生理食塩水+インスリン、または、BQあるいはBMS+生理食塩水+インスリンの点滴を行うことで、肺水量を回復し、そして、いずれのグループに属するラットにも肺浮腫の兆候は認められなかった。
【0090】
図8は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、脳水量(脳浮腫)に基づく治療の効果を示している。 非糖尿病・未処置のラットと比較して、糖尿病性ケトアシドーシスのラットでの脳水量は、有意(P<0.05)に減少をしていた。 生理食塩水、生理食塩水+インスリン、または、BQ123あるいはBMS+生理食塩水+インスリンを用いて処置を行ったところ、脳水量の改善が認められ、そして、糖尿病性ケトアシドーシスのラットと比較をして、脳水量が有意(P<0.05)に改善していたが、非糖尿病・未処置のラットで認められたのと同様の脳水量であった。 糖尿病性ケトアシドーシスが、重度の脱水症状を引き起こし、そして、脳水量の減少を招くことは周知の事項である。 生理食塩水、生理食塩水+インスリン、または、BQあるいはBMS+生理食塩水+インスリンの点滴を行うことで、脳水量を回復し、そして、いずれのグループに属するラットにも脳浮腫の兆候は認められなかった。
【0091】
図9は、各グループに属するラットにおける糖尿病性ケトアシドーシスの誘発の効果と、血漿中ET-1濃度(pg/ml)に基づく治療の効果を示している。 P<0.05は、ベースラインとの比較をしたものである。 インスリンを用いて処置を行うと、血漿中ET-1濃度が増大し、そして、すべての処置方法が、血漿中ET-1濃度を同様に増大させていた、と結論づけられる。
【0092】
上記試験および上記データは、血糖値、ケトン濃度、および、尿中ケトン濃度の増大と、血液pHの減少からも実証されているように、ラットにおいて、DKAが首尾良く誘発されたことを示している。 生理食塩水とインスリンを用いた処置を行ったところ、血糖値とケトン濃度が有意に減少し、また、脳血流は増大した。 ET受容体アンタゴニスト、例えば、BQ123またはBMS182874は、DKAのラットモデルにおいて、インスリンが誘発した脳血液灌流の増大を妨げていた。
【0093】
DKAの治療を行っている間に生じる致命的危険要素は、CEの進行である。 脳血液灌流の増大は、CEの進行に寄与する主要因子となりうる。 ET受容体アンタゴニスト、例えば、BQ123またはBMS-182874が、インスリンによって誘発された脳血液灌流の増大を抑制可能であることが、初めて実証されたのである。 DKAの治療において、選択的ET受容体アンタゴニストを投与することで、患者の有病率と死亡率は、有意に減少するであろう。
【0094】
これら知見は、後藤-柿崎ラット(II型糖尿病のモデル)を選択的ET受容体アンタゴニストで長期処置を施したところ、高血糖値が顕著に減少し、また、インスリン感受性の改善にも関わる血漿グルコース除去率を正常値に回復した(Balsiger et al., 2002)との事実によっても支持されている。 その一方で、糖尿病合併症へのET-1の関与について、非インスリン依存性糖尿病患者において決定がされており、その結果、健常者と比較をして、血管障害の有無に関係なく、また、高血圧症の有無に関係なく、すべての糖尿病患者において、血漿中ET-1濃度について、有意の差異は認められていない(Bertello et al., 1994)。
【0095】
糖尿病性ケトアシドーシスとは、ケトン、アセトアセテート、および、β-ヒドロキシ酪酸塩の濃度の増大に起因するものである。 最初は、おそらくはβ-ヒドロキシ酪酸塩の利用が進まないことが原因となって、β-ヒドロキシ酪酸塩が、アセトアセテートに対して、3:1の比率で過剰に存在する(Nosadini et al., 1985)が、糖尿病性ケトアシドーシスの処置を行っている間にβ- ヒドロキシ酪酸塩は減少していく(Stephens et al., 1971)。 β-ヒドロキシ酪酸塩とアセトアセテートは、モノカルボン酸輸送系を介して血液脳関門(BBB)を越えていく(Poole and Halestrap, 1993)。 血中のケトン濃度は、BBBを越えていく経路に影響を及ぼし、また、脳の特定の領域で利用がされている(Hawkins and Biebuyck, 1979; Kreis and Ross, 1992)。 ケトンが、脳血管に対して潜在的に急性の有害作用を呈することが実証されており、このことは、アセトアセテートが誘発したET-1の生成が原因であるかもしれない(Isales et al., 1999)。
【0096】
ET-1が、ヒトの大脳血管の内皮細胞の透過性を高めることが示されている(Stanimirovic et al., 1994)。 幾つかの研究によって、ET-1がBBBを調節することが報告されている。 虚血性大脳皮質に続いて中大脳動脈閉塞症を発症したラットに対してET-1を適用することで、小分子がBBBを越えることを効率的に抑制することが可能となっていた(Chi et al., 2001)。 P-糖タンパク質は、BBBの重要な要素であり、また、ET-1が、BBBにてP-糖タンパク質が媒介した輸送を迅速に抑制することも見い出されている(Hartz et al., 2004)。 その他の研究によれば、ET-1が、P-糖タンパク質の発現に関しては効果を示さないものの、ヒトの微小脳血管内皮細胞での輸送活性を調節することが報告されている(Hembury and Mabondzo, 2008)。 内皮ET-1を過剰発現するトランスジェニックマウスは、マトリックスメタロプロテアーゼ-2の発現、含水量、および、免疫グロブリン漏出の増大を招き、また、閉塞度を緩和するに至っており、これらのことは、BBBの破壊を示している(Leung et al., 2009)。 イヌおよびラットの嚢内にET-1を反復投与することによって、BBB透過性は顕著に増大し、この作用は、ET受容体アンタゴニストであるS-0139によってブロックすることができる(Narushima et al., 2003)。 ET-1は、t-PAで処置をした急性虚血性脳卒中の患者に認められる脳浮腫の進行と関与しており、また、重篤な脳浮腫の進行に関する診断マーカーとなりうることが示唆されている(Moldes et al., 2008)。 rtPAを用いた塞栓性脳卒中のラットモデルをS-0139で処置を行った研究では、rtPAが惹起したBBBの攪乱作用を抑制することで、神経保護作用が得られることが示されている(Zhang et al., 2008)。
【0097】
上記したデータに鑑みれば、糖尿病性ケトアシドーシスの治療において、選択的ET受容体アンタゴニストを投与することで、患者の有病率と死亡率が顕著に低減されることがうかがえる。
【0098】
これまでに説明をしてきた本願発明に対して、当業者が、本願発明の趣旨と範囲を逸脱せずに、修正や変更を加えることが可能であるので、特許請求の範囲の欄に記載の限定事項のみが、本願発明に付加されるべきである。
【0099】
参照文献
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【0100】
【表12】

【0101】
【表13】

【0102】
【表14】

【0103】
【表15】

【0104】
【表16】

【0105】
【表17】

【0106】
【表18】

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【表19】

【0108】
【表20】

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【0110】
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【0111】
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【0112】
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【表25】

【0114】
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【0115】
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【0116】
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【表29】

【0118】
【表30】

【0119】
【表31】

【0120】
【表32】

【0121】
【表33】

【0122】
【表34】

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【表35】

【0124】
【表36】

【0125】
【表37】

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【表38】

【0127】
【表39】

【0128】
【表40】

【0129】
【表41】

【0130】
【表42】

【0131】
【表43】

【0132】
【表44】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性ケトアシドーシスを治療する方法であって、治療の必要がある哺乳動物に対して、治療有効量のエンドセリンアンタゴニストを投与する、ことを含む方法。
【請求項2】
前記哺乳動物が、糖尿病を治療するためにインスリン療法を受けている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンドセリンアンタゴニストが、エンドセリン-Aアンタゴニストを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エンドセリン-Aアンタゴニストが、特異的エンドセリン-Aアンタゴニストを含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エンドセリン-Aアンタゴニストが、非特異的エンドセリン-Aアンタゴニストを含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記エンドセリンアンタゴニストが、別表Aに記載の化合物1〜化合物35からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エンドセリンアンタゴニストが、別表Bに記載の化合物46〜化合物67からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エンドセリンアンタゴニストが、別表Cに記載の化合物36〜化合物45からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エンドセリンアンタゴニストが、別表Dに記載の化合物68〜化合物109からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エンドセリンアンタゴニストが、アトラセンタン、テゾセンタン、ボセンタン、ダルセンタン、シタキスセンタン、エンラセンタン、BMS-207940、BMS-193884、BMS-182874、J-104132、VML 588/Ro 61-1790、T-0115、TAK-044、BQ-788、BQ123、YM-598、LU 135252、PD 145065、A-127722、ABT-627、A-192621、A-182086、TBC3711、BSF208075、S-0139、TBC2576、TBC3214、PD156707、PD180988、ABT-546、ABT-627、Z1611、RPR118031A、SB247083、SB217242、S-Lu302872、TPC 10950、SB209670、および、これらの混合物からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エンドセリンアンタゴニストが、BMS-182874、BQ123、または、これらの混合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記エンドセリンアンタゴニストが、エンドセリン変換酵素阻害剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記エンドセリン変換酵素阻害剤が、N-((1-((2(S)-(アセチルチオ)-1-オキソペンチル)-アミノ)-1-シクロペンチル)-カルボニル-S-4-フェニルフェニル-アラニンメチルエステル)、ホスホラミドン、および、これらの混合物からなるグループから選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物が、ヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記エンドセリンアンタゴニストが、糖尿病性ケトアシドーシスのための単独療法として投与される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記エンドセリンアンタゴニストが、糖尿病を治療するための療法、および/または、糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための第二療法と併用して投与される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
糖尿病を治療するための前記療法、および、糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための前記第二療法が、インスリン、電解質、重炭酸ナトリウム、利尿薬、ブメタニド、マンニトール、高張食塩水、および、これらの混合物からなるグループから選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための前記第二療法が、輸液療法である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記エンドセリンアンタゴニストが、前記糖尿病療法、および/または、糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための前記第二療法より以前、以後、または、同時に投与される請求項16に記載の方法。
【請求項20】
製造品であって、(a) エンドセリンアンタゴニストを含む包装された組成物、(b) 哺乳動物の糖尿病性ケトアシドーシスを治療するための、(a)の投与に関する指示を記した添付文書、および、(c) (a)および(b)のための容器、を含む製造品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−525436(P2012−525436A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508762(P2012−508762)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033083
【国際公開番号】WO2010/127197
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(510048370)ミッドウェスタン ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】