説明

糖尿病性神経障害の治療用医薬品を製造するための3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素Aレダクターゼ阻害剤の使用

【課題】糖尿病性神経障害の改善、特に糖尿病に罹患している患者の神経伝達速度及び神経血流量を改善するスタチン薬の新しい使用法を提供する。
【解決手段】スタチン薬と、アルドースレダクターゼ阻害剤(ARI)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、又はアンジオテンシンII(AII)拮抗薬のような糖尿病性神経障害を改善することが知られている他の薬物との医薬組み合わせは、糖尿病合併症の予防及び治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、糖尿病性神経障害の改善、特に糖尿病に罹患している患者の神経伝達速度及び神経血流量を改善することにおけるスタチン薬の新しい使用、特定すると、スタチン薬と、アルドースレダクターゼ阻害剤(ARI)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤又はアンジオテンシンII(AII)拮抗薬のような、糖尿病性神経障害を改善することが知られている他の薬物との医薬組み合わせに関するが、前記組み合わせは、糖尿病合併症の予防及び治療に有用である。
【0002】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体の刺激を介して肝臓のコレステロール合成を効果的に阻害する。上記の薬剤は、比較的稀に発生する同型接合の家族性高コレステロール血症を除く、すべての高コレステロール血症の治療において現在傑出している。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を用いた治療はアテローム性動脈硬化性の血管病巣を退縮させ得るし、いくつかのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤は死亡率を減少させることが証明されている。様々なHMG−CoAレダクターゼ阻害剤が販売され、「スタチン」と総称されている。
【0003】
我々は、スタチン薬、特に(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩(以下、「作用薬」;このカルシウム塩を以下の図1に開示する)、及びアトルバスタチンが糖尿病性神経障害の動物モデルにおいて神経伝達速度(NCV)及び神経血流量の改善をもたらすことを発見した。従って、スタチン薬は、糖尿病のI型又はII型でも、糖尿病性神経障害を改善するために使用し得る。
【0004】
従って、我々は、本発明の第一の特徴として、糖尿病に罹患している患者へスタチン薬を投与することを含んでなる、前記患者の神経障害を治療する方法を提示する。
【0005】
本発明の好ましい特徴として、我々は、糖尿病性神経障害に罹患している患者へスタチン薬を投与することを含んでなる、前記患者の神経伝達速度及び/又は神経血流量を改善する方法を提示する。
【0006】
本発明のさらなる特徴には、上記病態のいずれかの治療に使用する医薬品の製造におけるスタチン薬の使用が含まれる。
スタチン薬の例には、例えば、プラバスタチン(PRAVACHOLTM)、ロバスタチン(MEVACORTM)、シンバスタチン(ZOCORTM)、セリバスタチン(LIPOBAYTM)、フルバスタチン(LESCOLTM)、アトルバスタチン(LIPITORTM)及び「作用薬」が含まれ、これらの構造は図1に示されている。好ましくは、スタチン薬はアトルバスタチン又は「作用薬」である。好ましくは、「作用薬」は1日5〜80mgの用量で使用される。
【0007】
「作用薬」は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoAレダクターゼ(HMG−CoAレダクターゼ)の阻害剤として、ヨーロッパ特許出願、公開第0521471号、及び Bioorganic and Medicinal Chemistry, (1997), 5 (2), 437-444 に開示されている。好ましくは、図1に示されるようにカルシウム塩として使用される。
【0008】
アトルバスタチンは、米国特許第5,273,995号に開示され;ロバスタチンは、米国特許第4,231,938号に開示され;シンバスタチンは、米国特許第4,450,171号及び米国特許第4,346,227号に開示され;プラバスタチンは、米国特許第4,346,227号に開示され;フルバスタチンは、米国特許第4,739,073号に開示され;セリバスタチンは、米国特許第5,177,080号及び米国特許第5,006,530号に開示されている。
【0009】
HMG−CoAレダクターゼに対する阻害活性を有する他の化合物は、当技術分野で周知のアッセイを使用することによって容易に同定され得る。そのようなアッセイの例が米国特許第4,231,938号、6縦行とWO84/02131号、30〜33頁に開示されている。
【0010】
本発明により、糖尿病、又は神経障害、腎障害、網膜障害及び白内障のような糖尿病の合併症を治療するのに使用される他の薬物と組み合わせてスタチン薬を投与し得ることが了解されよう。そのような治療薬の例には、インスリン増感剤、インスリン及び経口の血糖低下薬(これは、スルホニル尿素、ビグアニド、食事血糖調節剤及びα−グルコシダーゼ阻害剤という4種の薬剤クラスに分けられる)が含まれる。インスリン増感剤の例には、例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、MCC−555、(S)−2−エトキシ−3−[4−(2−{4−メタンスルホニルオキシフェニル}エトキシ)フェニル]プロパン酸及び3−{4−[2−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノフェニル)エトキシ]フェニル}−(S)−2−エトキシプロパン酸が含まれる。スルホニル尿素の例は、グリメピリド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン及びトラザミドである。ビグアニドの例はメトホルミンである。α−グルコシダーゼ阻害剤の例はアカルボースである。食事血糖調節剤の例はレパグリニドである。
【0011】
他の治療薬も糖尿病性神経障害におけるNCVを改善することが知られていて、これらは、そのまま本発明の好ましい組み合わせを表す。そのような治療薬の例には、アルドースレダクターゼ阻害剤、ACE阻害剤及びAII拮抗薬が含まれる。
【0012】
NCVを改善することと糖尿病性神経障害を治療することにおけるアルドースレダクターゼ阻害剤又はACE阻害剤の使用がPCT/GB98/01959号に開示されている。NCVを改善することと糖尿病性神経障害を治療することにおけるAII拮抗薬の使用がWO93/20816号に開示されている。
【0013】
好適なアルドースレダクターゼ阻害剤には、例えば、エパルレスタット、トルレスタット、ポノルレスタット、ゾポルレスタット、AD−5467、SNK−860、ADN−138、AS−3201、ゼナレスタット、ソルビニル、メトソルビニル、イミレスタット及びミナルレスタット(WAY−121509)が含まれる。
【0014】
好適なACE阻害剤には、例えば、べナゼプリル、べナゼプリラット、カプトプリル、デラプリル、フェンチアプリル、フォシノプリル、イミドプリル、リベンザプリル、モエキシプリル、ペントプリル、ペリンドプリル、ピボプリル、キナプリル、キナプリラット、ラミプリル、スピラプリル、スピラプリラット、トランドラプリル、ゾフェノプリル、セロナプリル、エナラプリル、インドラプリル、リシノプリル、アラセプリル及びシラザプリルが含まれる。好ましいACE阻害剤には、例えば、リシノプリル、又はその製剤的に許容される塩が含まれる。
【0015】
好適なAII拮抗薬には、例えば、ロサルタン、イルべサルタン、バルサルタン及びカンデサルタンが含まれる。好ましいAII拮抗薬はカンデサルタンである。
【0016】
本発明の独立した側面には、上記に同定したスタチン薬のいずれか1つ、好ましくは「作用薬」又はアトルバスタチン、及び上記に同定した名のあるACE阻害剤のいずれか1つ、又は上記に同定したアルドースレダクターゼ阻害剤のいずれか1つ、又は上記に同定したAII拮抗薬のいずれか1つを含んでなる、医薬組み合わせが含まれる。従って、本発明のさらに独立した側面には以下が含まれる:
(1)「作用薬」及びリシノプリルを含んでなる、医薬組み合わせ;
(2)アトロバスタチン及びリシノプリルを含んでなる、医薬組み合わせ;
(3)フルバスタチン及びリシノプリルを含んでなる、医薬組み合わせ;
(4)プラバスタチン及びリシノプリルを含んでなる、医薬組み合わせ;
(5)セリバスタチン及びリシノプリルを含んでなる、医薬組み合わせ;
(6)「作用薬」及びカンデサルタンを含んでなる、医薬組み合わせ;及び
(7)「作用薬」、又はアトルバスタチン、及び(S)−2−エトキシ−3−[4−(2−{4−メタンスルホニルオキシフェニル}エトキシ)フェニル]プロパン酸又は3−{4−[2−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノフェニル)エトキシ]フェニル}−(S)−2−エトキシプロパン酸を含んでなる、医薬組み合わせ。
【0017】
「医薬組み合わせ」は、組み合わせの各成分薬を、一緒に又は連続的に投与される個別の剤形において別々に患者へ投薬することによって達成され得る。他のやり方では、「医薬組み合わせ」は、同一の単位剤形において一緒になり得る。
【0018】
従って、本発明のさらなる側面として、本明細書の上記に述べたような医薬組み合わせを製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物を提示する。
【0019】
本発明の独立した側面には、上記に同定したスタチン薬のいずれか1つ、好ましくは「作用薬」又はアトルバスタチン、及び上記に同定した名のあるACE阻害剤のいずれか1つ、又は上記に同定したアルドースレダクターゼ阻害剤のいずれか1つ、又は上記に同定したAII拮抗薬のいずれか1つを、製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物が含まれる。従って、本発明のさらに独立した側面には以下が含まれる:
(1)「作用薬」及びリシノプリルを製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物;
(2)アトロバスタチン及びリシノプリルを製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物;
(3)フルバスタチン及びリシノプリルを製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物;
(4)プラバスタチン及びリシノプリルを製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物;
(5)セリバスタチン及びリシノプリルを製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物;
(6)「作用薬」及びカンデサルタンを製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物;及び
(7)「作用薬」、又はアトルバスタチン、及び(S)−2−エトキシ−3−[4−(2−{4−メタンスルホニルオキシフェニル}エトキシ)フェニル]プロパン酸又は3−{4−[2−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノフェニル)エトキシ]フェニル}−(S)−2−エトキシプロパン酸を製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含んでなる、医薬組成物。
【0020】
本発明の好ましい医薬組成物は、「作用薬」又はアトルバスタチン、及びACE阻害剤(上記に特に名づけたACE阻害剤のいずれか1つ、特にリシノプリルが含まれる)を、製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含む。
【0021】
本発明の好ましい医薬組成物は、「作用薬」又はアトルバスタチン、及びアルドースレダクターゼ阻害剤(上記に特に名づけたものが含まれる)を、製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含む。
【0022】
本発明の好ましい医薬組成物は、「作用薬」又はアトルバスタチン、及びAII拮抗薬(上記に特に名づけたものが含まれ、好ましくはカンデサルタン)を、製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤とともに含む。
【0023】
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル、丸剤、散剤、水性又は油性の溶液又は懸濁液、乳液、無菌の注射し得る水性又は油性の溶液又は懸濁液のような従来の全身用の剤形を使用して、標準的な方法、例えば経口又は腸管外の投与により投与し得る。これらの剤形には、必要な担体素材、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、増量剤、抗酸化剤、分散剤等が含まれる。特に、経口投与用の組成物が好ましい。
【0024】
本発明により投与し得るスタチン薬、アルドースレダクターゼ阻害剤、AII拮抗薬又はACE阻害剤の用量は、いくつかの要因、例えば年齢、体重、及び治療される病態の重症度、並びに投与経路、剤形及び治療方式、及び所望される結果、さらには組成物に利用されるスタチン薬、アルドースレダクターゼ阻害剤、AII拮抗薬及びACE阻害剤の効力に依存する。さらに、ACE阻害剤では、推奨される最大1日投与量が考慮されるべきである。
【0025】
ACE阻害剤を治療有効量で長期にわたり投与すると、有害であるか、又はある患者では副作用を生じる可能性がある。例えば、それにより、腎機能の著しい悪化を招いたり、高カリウム血症、好中球減少症、血管神経性浮腫、発疹又は下痢を誘発したり、空咳を生じる場合がある。ARIの投与も、アルドースレダクターゼ酵素を十分阻害して顕著に有益な治療効果を生むのに必要な用量で、有害な効果や副作用を生じる場合がある。本発明はARI又はACE阻害剤の単独投与に関連した上記の問題を軽減する、及び/又は単剤を単独投与したときに他の方法で得られるものより有意に大きい治療効果を得るための手段を提供する。さらに、糖尿病性神経障害には複雑な機序又は数多くの機序が関わり、それは構造変化を次々と導く生化学的変化のカスケードを開始させる。従って、本発明は、特定の患者集団のニーズに応じた治療法の調整を可能にするという追加の利点を提供する。
【0026】
スタチン、好ましくはアトルバスタチン又は「作用薬」をACE阻害剤、好ましくはリシノプリルと組み合わせると、糖尿病患者における神経障害、特にNCV又は神経血流量の治療における効果において相加的又は相乗的である。
【0027】
スタチン、好ましくはアトルバスタチン又は「作用薬」をAII拮抗薬、好ましくはカンデサルタンと組み合わせると、糖尿病患者における神経障害、特にNCV又は神経血流量の治療における効果において相加的であるか又は相乗的である。
【0028】
錠剤又はカプセルのような単位投与製剤は、通常、例えば、1mg〜100mgのスタチン薬、又は/及び0.1mg〜500mgのアルドースレダクターゼ阻害剤、又は/及び0.1mg〜500mgのACE阻害剤を含有する。好ましくは、単位投与製剤は、5mg〜80mgのスタチン薬、又は/及び0.1mg〜100mgのアルドースレダクターゼ阻害剤、又は/及び0.1mg〜100mgのAII拮抗薬、及び/又は0.1mg〜100mgのACE阻害剤を含有する。
【0029】
本発明は、糖尿病性神経障害の治療において同時、個別又は連続に使用するための、スタチン及びアルドースレダクターゼ阻害剤、AII拮抗薬又はACE阻害剤の医薬組み合わせ(又は含有する製品)を網羅する。本発明の1つの側面では、「作用薬」の薬物、及びアルドースレダクターゼ阻害剤又はAII拮抗薬又はACE阻害剤が1つの医薬剤形のなかで混合して提示される。もう1つの側面では、本発明は、所望の治療効果を達成するために、「作用薬」、及びアルドースレダクターゼ阻害剤又はAII拮抗薬又はACE阻害剤の個別の単位投与量を投与することを網羅する。そのような個別の単位用量は、臨床医により決定されるように、同時にか又は連続的に投与され得る。本発明はまた、製剤的に許容される担体及び/又は希釈剤、及び有効成分としてのスタチン薬、好ましくは「作用薬」又はアトルバスタチン、及びアルドースレダクターゼ阻害剤又はAII拮抗薬又はACE阻害剤を、相乗的な治療効果を生じる量において含んでなる、糖尿病性神経障害を治療する薬剤を網羅する。
【0030】
本発明のもう1つの側面では、糖尿病性神経障害の複合療法についての医薬組成物の組み合わせが提供され、この組み合わせは、スタチン薬を含んでなる医薬組成物と、アルドースレダクターゼ阻害剤を含んでなる医薬組成物又はAII拮抗薬を含んでなる医薬組成物又はACE阻害剤を含んでなる医薬組成物から構成される。
【0031】
本発明のさらなる側面は、糖尿病性神経障害の治療に使用する医薬組成物の製造における、スタチン薬、及びアルドースレダクターゼ阻害剤又はAII拮抗薬又はACE阻害剤の使用を含む。
【0032】
本発明のさらなる側面は、治療有効量のスタチン薬がアルドースレダクターゼ阻害剤又はAII拮抗薬又はACE阻害剤と組み合わせて、経口又は腸管外のように全身的に投与される、糖尿病性神経障害を治療する方法である。治療される患者が正常血圧であれば、ACE阻害剤又はAII拮抗薬は、好ましくは血圧低下を起こすのに必要とされるより少ない量で投与され得る。治療される患者が高血圧であれば、ACE阻害剤又はAII拮抗薬は、好ましくは高血圧を治療するのに通常利用される量で使用され得る。
【0033】
本発明の医薬組成物の効果は、当技術分野でよく知られている1種又はそれ以上の公知の糖尿病性神経障害モデルを使用することによって試験され得る。本発明の医薬組成物は、糖尿病患者に見出される神経機能における欠損の予防、発達の軽減、又は逆転に特に有用である。このことは、例えば、神経伝達速度、神経血流量、神経誘発電位較差、定量的官能検査、自律機能検査及び形態計測変化のようなマーカー測定することによって明示され得る。実験的には、Diabetologia, 1992, Vol. 35, pages 12-18, 及び 1994, Vol. 37, pages 651-663 に類似の試験が実行され得る。
【0034】
本発明のさらなる側面は、(ヒトを含む)温血動物の減損した神経伝達速度に関連した病態の発達を治療又は予防する方法であって、上記の医薬組み合わせ又は組成物の治療有効量を前記動物へ投与することを含んでなる治療が必要とされる。
【0035】
本発明のさらなる側面は、(ヒトを含む)温血動物の減損した神経伝達速度を逆転させる方法であって、上記の医薬組み合わせ又は組成物の治療有効量を前記動物へ投与することを含んでなる治療が必要とされる。
【0036】
「作用薬」の投与量は、所望されるコレステロール低下効果により、5〜80mg/日の範囲から単位用量の任意回数で投与され得る。
本明細書で述べたスタチン、ACE阻害剤、アルドースレダクターゼ阻害剤又はAII拮抗薬の好適な投与量は実用的に利用し得るものであり、本明細書に示唆されるか、又は Monthly Index of Medical Specialities (P. O. BOX 43, Ruislip, Middlesex, UK) のような公表物で助言されているように、さらに減らすことも可能である。
【0037】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明するのに役立つ。
【実施例】
【0038】
実施例1
アルドースレダクターゼ阻害剤(ARI)の好適な医薬組成物には以下が含まれる:
錠剤1 mg/錠
ARI 100
ラクトース Ph.Eur. 182.75
クロスカルメロースナトリウム 12.0
トウモロコシデンプンペースト 2.25
(5%w/vペースト)
ステアリン酸マグネシウム 3.0

錠剤2
ARI 50
ラクトース Ph.Eur. 223.75
クロスカルメロースナトリウム 6.0
トウモロコシデンプン 15.0
ポリビニルピロリドン 2.25
(5%w/vペースト)
ステアリン酸マグネシウム 3.0

錠剤3
ARI 1.0
ラクトース Ph.Eur. 93.25
クロスカルメロースナトリウム 4.0
トウモロコシデンプンペースト 0.75
(5%w/vペースト)
ステアリン酸マグネシウム 1.0

カプセル1
ARI 10
ラクトース Ph.Eur. 488.5
ステアリン酸マグネシウム 1.5

実施例2
ACE阻害剤の好適な医薬組成物には以下が含まれる:
錠剤1 mg/錠
ACE阻害剤 100
コーンスターチ 50
ゼラチン 7.5
微結晶性セルロース 25
ステアリン酸マグネシウム 2.5

錠剤2
ACE阻害剤 20
ゼラチン化デンプン 82
微結晶性セルロース 82
ステアリン酸マグネシウム 1

実施例3
カプセル mg
「作用薬」 5.0
ラクトース 42.5
コーンスターチ 20.0
微結晶性セルロース 32.0
ゼラチン化デンプン 3.3
ヒドロタルシット 1.1
ステアリン酸マグネシウム 1.1

「作用薬」1、2.5又は10mgを含有するカプセルは、全量を105mgとするために多少のラクトースを適宜使用して、同様に得られる。

実施例4
「作用薬」及びACE阻害剤を単一剤形に含有する好適な医薬組成物には以下が含まれる:
カプセル mg
「作用薬」 5.0
リシノプリル 10.0
ラクトース 42.5
コーンスターチ 20.0
微結晶性セルロース 32.0
ゼラチン化デンプン 3.3
ヒドロタルシット 1.1
ステアリン酸マグネシウム 1.1

実施例5
糖尿病性神経障害の治療を必要とする患者は、「作用薬」(10mg)及びリシノプリル(10mg)で治療される。リシノプリルは1日2回投与され、「作用薬」は1日1回投与される。

実施例6
試験開始時に19週齢の雄性スプレーグ・ドーリーラットを非糖尿病動物(正常対照群)とストレプトゾトシン(40〜45mg/kg、滅菌水に用時溶かしたもの)の腹膜内投与により糖尿にした動物へ分けた。糖尿であることは、24時間後に高血糖と糖尿を評価することによって証明した(Visidex II and Diastix;Ames,スラウ、英国)。糖尿のラットを週ごとに検査し、体重を毎日測定した.血漿グルコース濃度が20mM未満であるか体重が3日続けて増加した動物は却下した。血漿グルコース定量(GOD−Perid法;ベーリンガーマンハイム、マンハイム、ドイツ)の最終実験の後で、尾静脈又は頚動脈からサンプルを採取した。糖尿病を6週間未処置にした後で、次の2週間、飲料水に溶かした「作用薬」でラットの群を処置した。
【0039】
処置期間の最後に、チオブタバルビトンの腹膜内注射(50〜100mg/kg)でラットを麻酔した。人工換気のために気管にカニューレを挿入し、頚動脈カニューレを使用して平均全身血圧をモニターした。
【0040】
運動神経の伝達速度は、(Cameron et al., Diabetologia, 1993, Vol. 36, pages 299-304 によりかつて記載されたように)糖尿病及び処置効果への感受性に関して坐骨神経全体を代表する、前脛骨筋神経枝における坐骨切痕と膝の間で測定した。
【0041】
伏在神経における感覚神経の伝達速度は、(Cameron et al., Quarterly Journal of Experimental Physiology, 1989, vol. 74, pages 917-926 によりかつて記載されたように)鼡径部と踝の間で測定した。
【0042】
坐骨血流量は、(Cameron et al., Diabetologia, 1994, vol. 37, pages 651-663 によりかつて記載されたように)水素クリアランス微小電極ポーラログラフィにより測定した。坐骨切痕と膝の間の神経を曝露し、切開部付近の皮膚に金属リングを縫合し、形成された貯留部をパラフィン油で満たし、これを放射熱により35〜37℃に維持した。ガラスで絶縁された白金の微小電極をこの坐骨神経の中央部へ挿入し、皮下の基準微小電極に関して250mVで分極した。吸入ガスへ10%の水素を加え、窒素及び酸素の比率をそれぞれ70%及び20%へ調整した。電極に記録される水素流が安定化し、動脈血との平衡を示したときに、水素供給を閉じ、窒素供給を適宜増加させた。5分間にわたり電流が一様に低下しないことと定義される基準線に至るまで、水素クリアランス曲線を記録した。血流量を評価するために、クレアランス曲線を数字で表示し、非線形回帰を使用して、このデータへコンピュータにより指数曲線を適合させた。最良の適合指数により神経血流量の程度を得た。

データ
全データは群の平均±SEM(使用したラットの数)として表した。

坐骨神経の運動伝達速度
対照値
非糖尿病対照 64.04±0.46(10)
8週糖尿+担体 50.35±0.93(6)
アトルバスタチン
糖尿+2週間、20mg/kgで投薬 61.53±0.76(6)
糖尿+2週間、50mg/kgで投薬 65.59±0.69(6)
「作用薬」
糖尿+2週間、20mg/kgで投薬 63.34±0.61(8)
各群8匹のラット、5群、0.3〜20mg/kgの用量範囲:
ED50=2.3mg/kg

伏在神経の感覚伝達速度
対照値
非糖尿病対照 61.09m/s±0.67(10)
8週糖尿+担体 52.77m/s±0.79(6)
アトルバスタチン
糖尿+2週間、20mg/kgで投薬 59.77m/s±0.93(6)
糖尿+2週間、50mg/kgで投薬 60.72m/s±0.94(6)
「作用薬」
糖尿+2週間、20mg/kgで投薬 60.57m/s±0.83(8)
各群8匹のラット、5群、0.3〜20mg/kgの用量範囲:
ED50=0.9mg/kg

坐骨神経の血流量
対照値
非糖尿病対照 17.89ml/分/100g(神経組織) ±0.65(10)
8週糖尿+担体 8.82ml/分/100g±0.56(6)
アトルバスタチン
糖尿+2週間、50mg/kgで投薬
16.96±1.39ml/分/100g(6)
「作用薬」
糖尿+2週間、20mg/kgで投薬
16.19±0.51ml/分/100g(8)
【0043】
【化1】

【0044】
【化2】

【0045】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性神経障害の治療に使用する医薬品の製造におけるスタチン薬の使用。
【請求項2】
糖尿病性神経障害を有する患者の神経伝達速度又は神経血流量の改善に使用する医薬品の製造におけるスタチン薬の使用。
【請求項3】
スタチン薬がプラバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン及び(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はそれらの製剤的に許容される塩から選択される、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の使用。
【請求項4】
スタチン薬が糖尿病又は糖尿病の合併症を治療するのに使用される少なくとも1つの他の薬物と組み合わせて使用される、請求項1、2又は3に記載の使用。
【請求項5】
糖尿病又は糖尿病の合併症を治療するのに使用される薬物がインスリン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、MCC−555、(S)−2−エトキシ−3−[4−(2−{4−メタンスルホニルオキシフェニル}エトキシ)フェニル]プロパン酸及び3−{4−[2−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノフェニル)エトキシ]フェニル}−(S)−2−エトキシプロパン酸、グリメピリド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン及びトラザミド、メトホルミン、アカルボース及びレパグリニドから選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
スタチン薬が糖尿病性神経障害に罹患している患者の神経伝達速度を改善させることにも有用である、アルドースレダクターゼ阻害剤、ACE阻害剤及びAII拮抗薬から選択される第二の薬物と組み合わせて使用される、請求項1又は3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
第二の薬物がエパルレスタット、トルレスタット、ポノルレスタット、ゾポルレスタット、AD−5467、SNK−860、ADN−138、AS−3201、ゼナレスタット、ソルビニル、メトソルビニル、イミレスタット及びミナルレスタット(WAY−121509)、べナゼプリル、べナゼプリラット、カプトプリル、デラプリル、フェンチアプリル、フォシノプリル、イミドプリル、リベンザプリル、モエキシプリル、ペントプリル、ペリンドプリル、ピボプリル、キナプリル、キナプリラット、ラミプリル、スピラプリル、スピラプリラット、トランドラプリル、ゾフェノプリル、セロナプリル、エナラプリル、インドラプリル、リシノプリル、アラセプリル、シラザプリル、ロサルタン、イルべサルタン、バルサルタン及びカンデサルタンから選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩とリシノプリルを含んでなる、組み合わせ医薬品。
【請求項9】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩、及びロサルタン、イルべサルタン、バルサルタン及びカンデサルタンから選択されるAII拮抗薬を含んでなる、組み合わせ医薬品。
【請求項10】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩とカンデサルタンを含んでなる、請求項9に記載の組み合わせ医薬品。
【請求項11】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩、又はアトルバスタチン、及び(S)−2−エトキシ−3−[4−(2−{4−メタンスルホニルオキシフェニル}エトキシ)フェニル]プロパン酸又は3−{4−[2−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノフェニル)エトキシ]フェニル}−(S)−2−エトキシプロパン酸を含んでなる、組み合わせ医薬品。
【請求項12】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩、リシノプリル、及び製剤的に許容される希釈剤又は担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項13】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩、又はアトルバスタチン、及び(S)−2−エトキシ−3−[4−(2−{4−メタンスルホニルオキシフェニル}エトキシ)フェニル]プロパン酸、又は3−{4−[2−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノフェニル)エトキシ]フェニル}−(S)−2−エトキシプロパン酸、及び製剤的に許容される担体又は希釈剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項14】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩、及びロサルタン、イルべサルタン、バルサルタン及びカンデサルタンから選択されるAII拮抗薬、及び製剤的に許容される希釈剤又は担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩、カンデサルタン、及び製剤的に許容される希釈剤又は担体を含んでなる、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項11に記載の医薬組み合わせを含んでなる、単位投与製剤。
【請求項17】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩;及びカンデサルタンの、糖尿病合併症の治療及び予防用の医薬品を製造するための使用。
【請求項18】
請求項10に記載の医薬組み合わせを含んでなる、単位投与製剤。
【請求項19】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩;及びリシノプリルの、糖尿病合併症の治療及び予防用の医薬品を製造するための使用。
【請求項20】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩;及びインスリン増感剤を含んでなる、組み合わせ医薬品。
【請求項21】
(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノン酸又はその製剤的に許容される塩;インスリン増感剤;及び製剤的に許容される希釈剤又は担体を含んでなる、医薬組成物。

【公開番号】特開2012−51898(P2012−51898A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213694(P2011−213694)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2000−596938(P2000−596938)の分割
【原出願日】平成12年2月1日(2000.2.1)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【出願人】(501306999)ザ・ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アバディーン (6)
【Fターム(参考)】