説明

糖尿病性腎症の進行度の検出方法及び糖尿病性腎症の進行度の診断キット並びに糖尿病性腎症の進行度の指標となる物質及びその選別方法

【課題】早期の糖尿病性腎症の有用な早期診断法は確立されていないのが現状であり、その方法の確立が望まれていた。本発明が解決しようとする課題は、糖尿病患者における糖尿病性腎症の進行度、特に初期腎症のより良い診断を行える方法やキット並びに糖尿病性腎症の進行度の指標となる物質及びその選別方法を提供することである。
【解決手段】本発明では、被検体由来サンプルに対して、レクチンとの相互作用測定を行って、前記レクチンと親和性を有する糖鎖の量を測定し、測定された糖鎖の量により糖尿病性腎症の進行度を検出する糖尿病性腎症の進行度の検出方法を提案するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性腎症の進行度の検出方法及び糖尿病性腎症の進行度の診断キット並びに糖尿病性腎症の進行度の指標となる物質及びその選別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は種々の慢性血管合併症を起こすことが知られており、その予後はその合併症により左右される。中でも糖尿病性腎症は生命予後にとって重要であるため、その発症を早期に診断し進行を阻止することが望まれている。
【0003】
従来は、微量アルブミン尿が糖尿病の早期臨床マーカーとして用いられているが、微量アルブミン尿は、高血圧、肥満、糖尿病性腎症以外の腎疾患でも陽性となるため、早期腎症の特異的なマーカーであるとは言い難い。
【0004】
そこで従来から、マーカー物質により糖尿病性腎症の進行の診断を行う各種の方法やキットが提案されている。例えば特許文献1は、尿中のプレアルブミン濃度を、抗ヒトプレアルブミン抗体を感作したラテックスを用いて検出している。また特許文献2は尿中の顆粒内タンパク成分、及び糸球体基底膜を構成する細胞外マトリックス成分を測定対象としている。更に特許文献3では、尿検体におけるヘパラン硫酸の量的と質的の少なくとも一方側の変化を特定している。
【0005】
しかしながら、早期の糖尿病性腎症の有用な早期診断法は確立されていないのが現状であり、その方法の確立が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2668448号公報
【特許文献2】特許第3599895号公報
【特許文献3】特許第3936063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、糖尿病患者における糖尿病性腎症の進行度、特に初期腎症のより良い診断を行える方法やキット並びに糖尿病性腎症の進行度の指標となる物質及びその選別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために、被検体由来サンプルに対して、レクチンとの相互作用測定を行って、前記レクチンと親和性を有する糖鎖の量を測定し、測定された糖鎖の量により糖尿病性腎症の進行度を検出する糖尿病性腎症の進行度の検出方法を要旨とするものである。
【0009】
また本発明は、被検体由来サンプルに対して、複数種類のレクチンとの相互作用測定を行って、夫々の前記レクチンと親和性を有する糖鎖の量を測定し、測定された糖鎖の量により糖尿病性腎症の進行度を検出する糖尿病性腎症の進行度の検出方法を要旨とするものである。
【0010】
上述した本発明の方法を適用する被検体由来サンプルは、血液、血清、骨髄液、尿、唾液などの体液、病理標本から抽出した組織可溶化物、生組織可溶化物、細胞可溶化物から適宜選択することができる。
【0011】
また上述した本発明の方法における糖鎖は被検体由来サンプル中の糖タンパク質に含まれる糖鎖や、被検体由来サンプル中の糖脂質に含まれる糖鎖である。
【0012】
そして上述した本発明の方法では、相互作用測定において、被検体由来サンプル中のタンパク質濃度が一定の値となるように調整する工程を設けることができる。
【0013】
また上述した本発明の方法では、被検体由来サンプルに対して測定された糖鎖の量を、糖タンパク質等の標準物質に対して糖鎖結合能を有するレクチンとの相互作用測定により測定された標準の量と比較する工程を設けることができる。
【0014】
また上述した本発明の方法では、測定方法は、吸光度測定、蛍光測定、化学発光測定、放射線測定から選択される少なくとも1つの測定工程を有することができる。
【0015】
また上述した本発明の方法に適用するレクチンとしては、まず、ガラクトース/N-アセチルガラクトサミンを含む糖に対する結合能を持つレクチンを選択することができる。
【0016】
このようなレクチンとしては、デイコマメレクチン(ECA, Erythrina Cristagalli Agglutinin)、ヒママメレクチン(RCA120, Ricinus Communis Agglutinin I)、ムラサキモクワンジュレクチン(BPL, Bauhinia Purpurea Alba Lectin)、スピンドルツリーレクチン(EEL, Euonymus Europaeus Lectin)、マッシュルームレクチン(ABA, Agarucus bisporus Agglutinin)、ジャックフルーツレクチン(Jacalin, Artocarpus integrifolia Lectin)、ピーナッツレクチン(PNA, Arachis Hypogaea Agglutinin)、フジレクチン(WFA, Wisteria Floribunda Agglutinin)、センニンコクレクチン(ACA, Amaranthus Caudatus Agglutinin)、アメリカハリグワレクチン(MPL, Maclura pomifera Lectin)、エスカルゴレクチン(HPA , Helix Pomatia Agglutinin )、カラスノエンドウレクチン(VVA, Vicia Villosa Agglutinin)、ドリコスマメレクチン(DBA, Dolichos biflorus Agglutinin)、ダイズレクチン(SBA, Glycine Max Agglutinin)、シカクマメレクチン(PTL-I, Psophocarpus Tetragonolobus Lectin-I)、 バンデリアマメレクチンI A4 (GSL-I A4, Griffonia Simplicifolia Lectin I A4)、 バンデリアマメレクチン I B4 ( GSL-I B4, Griffonia Simplicifolia
Lectin I B4)、インゲンマメレクチン(L)(PHA(L), Phaseolus Vulgaris LeucoAgglutinin)、インゲンマメレクチン(E)(PHA(E), Phaseolus Vulgaris ErythroAgglutinin)、チューリップレクチン(TxLC I, Tulipa gesneriana Lectin I)から成る群から選択することができる。
【0017】
また上述した本発明の方法に適用するレクチンとしては、マンノースを含む糖に対する結合能を持つレクチンを選択することができる。
【0018】
このようなレクチンとしては、ラッパズイセンレクチン(NPA, Narcissus Pseudonarcissus Agglutinin)、ナタマメレクチン(Con A, Canavalia ensiformis Agglutinin)、ユキノハナレクチン(GNA, Galanthus Nivalis Agglutinin)、アマリリスレクチン(HHL, Hippeastrum Hybrid Lectin)、ヒロハヒルガオレクチン(Calsepa, Calystega Sepiem Lectin)から成る群から選択することができる。
【0019】
また上述した本発明の方法に適用するレクチンとしては、シアル酸を含む糖に対する結合能を持つレクチンを選択することができる。
【0020】
このようなレクチンとしては、イヌエンジュレクチン-I (MAL-I, Maackia Amurensis Lectin I)、ニワトコレクチン(SNA, Sambucus Nigra Agglutinin)、ニホンニワトコレクチン(SSA, Sambucus Sieboldiana Agglutinin)、キカラスウリレクチン-I (TJA-I, Trichosanthes Japonica Agglutinin-I)、イヌエンジュレクチンII (MAH,
Maackia Amurensis Hemagglutitnin)、ヤナギマツタケレクチン(ACG, Agrocybe cylindracea Galectin)から成る群から選択することができる。
【0021】
また上述した本発明の方法に適用するレクチンとしては、フコースを含む糖に対する結合能を持つレクチンを選択することができる。
【0022】
このようなレクチンとしては、ロータスレクチン ( LTL, Lotus Tetragonolobus Lectin )、エンドウマメレクチン ( PSA, Pisum Sativum Agglutinin )、レンズマメレクチン ( LCA, Lens Culinaris Agglutinin )、ハリエニシダレクチン-I ( UEA-I, Ulex Europaeus Agglutinin I )、コウジカビレクチン( AOL, Aspergillus Oryzae Lectin )、ヒイロチャワンタケレクチン ( AAL, Aleuria Aurantia Lectin )、キカラスウリレクチン-II ( TJA-II, Trichosanthes aponica Agglutinin-II )から成る群から選択することができる。
【0023】
また上述した本発明の方法に適用するレクチンとしては、N-アセチルアセチルグルコサミンを含む糖に対する結合能を持つレクチンを選択することができる。
【0024】
このようなレクチンとしては、チョウセンアサガオレクチン ( DSA, Datura Stramonium Agglutinin )、バンデリアマメレクチンII ( GSL-II, Griffonia Simplicifolia Lectin II )、トマトレクチン ( LEL, Lycopersicon Esculentum Lectin )、ジャガイモレクチン ( STL, Solanum tuberosum Lectin )、セイヨウイラクサレクチン ( UDA, Urtica dioica Agglutinin )、アメリカヤマゴボウレクチン ( PWM, Phytolacca americana Agglutinin )、コムギレクチン ( WGA, Triticum Unlgaris Agglutinin )から成る群から選択することができる。
【0025】
そして本発明では、以上の方法を行うために、少なくとも所定のレクチンが固定された手段を有する糖尿病性腎症の進行度の診断キットを提供することができる。
【0026】
この場合、レクチンが固定された手段としては、ELISAプレート、マイクロアレイ又は磁気ビーズを適用することができる。
【0027】
更に本発明においては、以上の方法及び診断キットを用いて、糖尿病性腎症の進行度の指標となる物質を選別する方法と、その選別方法により選別された糖尿病性腎症の進行度の指標となる物質を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明者らは、糖尿病性腎症の新規な診断方法を確立すべく、鋭意研究の結果、糖尿病及び糖尿病合併症の発症や進展に糖鎖異常が関与しているとの報告に着目し、被検体由来サンプルとしての尿検体に対して、レクチンとの相互作用測定を行い、糖尿病性腎症患者と健常者の尿中の糖タンパク質の持つ糖鎖の量の比較を行った。その結果、糖尿病性腎症病期の進行に伴い相互作用する糖タンパク質が増加または減少する複数のレクチンのあることが見出された。
【0029】
上記知見に基づき、本発明では、被検体由来サンプルに対して、レクチンとの相互作用測定を行って、前記レクチンと親和性を有する糖鎖の量を測定し、測定された糖鎖の量により糖尿病性腎症の進行度を検出することができる。
【0030】
また、本発明では、被検体由来サンプルに対して、複数種類のレクチンとの相互作用測定を行って、夫々の前記レクチンと親和性を有する糖鎖の量を測定し、測定された糖鎖の量により、より精度の良い糖尿病性腎症の進行度の検出を行うことができる。
【0031】
本発明の方法では、相互作用測定において、被検体由来サンプル中のタンパク質濃度が一定の値となるように調整する工程を設けることにより、被検体由来サンプル中の糖鎖量のバランスの変化を検出することが可能となる。
【0032】
被検体由来サンプルに対して測定された糖鎖の量を、糖タンパク質等の標準物質に対して糖鎖結合能を有するレクチンとの相互作用測定により測定された標準の量と比較する工程を設けることにより、被検体由来サンプル中の糖鎖量を定量的に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による相互作用測定において、ユキノハナレクチン(GNA)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度(縦軸)を健常者(Control)、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図2】本発明による相互作用測定において、アマリリスレクチン(HHL)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図3】本発明による相互作用測定において、ナタマメレクチン(Con A)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図4】本発明による相互作用測定において、エンドウマメレクチン(PSA)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図5】本発明による相互作用測定において、レンズマメレクチン(LCA)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図6】本発明による相互作用測定において、ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図7】本発明による相互作用測定において、コウジカビレクチン(AOL)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図8】本発明による相互作用測定において、ニホンニワトコレクチン(SSA)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図9】本発明による相互作用測定において、ニワトコレクチン(SNA)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【図10】本発明による相互作用測定において、キカラスウリレクチン-I (TJA-I)に結合した糖タンパク質から得られた蛍光強度を健常者、糖尿病性腎症病期により並べた図面である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
糖尿病及び糖尿病合併症の発症や進展に糖鎖異常が関与しているとの知見は、被検体由来サンプル中に存在する糖鎖の量の変化を測定することにより、糖尿病性腎症の新規な診断が行える可能性を示している。
【0035】
被検体由来サンプル中に存在する糖鎖の量の変化を測定する方法としては、糖鎖結合性タンパク質であるレクチンまたは抗糖鎖抗体を用いた相互作用測定の他、HPLCによるマッピング分析法、レクチンブロッティング法、さらには質量分析法があるが、本発明者らは、レクチンとの相互作用測定を鋭意行うことにより、本発明を想到するに至った。
【0036】
相互作用により、レクチンに結合する糖鎖は必ずしも単一の構造を持つものではないが、その結合認識能からは、ある一定の糖鎖群を規定することができる。すなわち、レクチンの持つ特異性により規定される糖鎖群が存在し、糖鎖を含む被検体由来サンプルとレクチンとの結合測定を行うことにより、そのレクチンに結合する糖鎖群の量を測定することができる。そして、レクチンの糖鎖に対する認識能は夫々に異なっているが、その認識能の特異性からレクチンを上述したようにグループ分けすることができる。
【0037】
本発明においては、少なくとも所定のレクチンが固定された手段を有する糖尿病性腎症の進行度の診断キットを提供することができ、この診断キットにより糖尿病性腎症の進行度を簡便に、しかも正確に診断することができる。
【0038】
この場合、レクチンが固定された手段としては、ELISAプレート、マイクロアレイ又は磁気ビーズを適用することができる。
【0039】
一方、レクチンと結合した糖タンパク質は、レクチンを固定化したアガロースや磁気ビーズなどにより精製が可能である。好ましくはアガロースであり、被検体由来サンプルとレクチン固定化アガロースを反応させた後、競合糖を混合することによりレクチンに結合した糖タンパク質を溶出して精製することができる。この場合、競合糖はレクチンの結合性に応じて選択することができる。
【0040】
このようにして精製される糖タンパク質は、複数種の混合物として得られるが、それをSDS-PAGE、質量分析にかけることにより、病期に応じて糖鎖の質又は量が変化している糖タンパク質を特定することが可能となる。
【0041】
こうして、レクチン固定化アガロースを用いて被検体由来サンプル中より糖タンパク質を精製し、それを質量解析することによって、糖タンパク質を同定することができる。
【0042】
この糖タンパク質は糖尿病性腎症の進展によって増加又は減少するもので、糖尿病性腎症の進展に関与している鍵分子であると考えられ、バイオマーカーとして利用可能である。
【0043】
こうしてこの糖タンパク質に対する抗体、糖タンパク質上の糖鎖、糖鎖結合タンパク、siRNA、RNAアプタマー、この物質の機能を修飾する低分子化合物は、糖尿病性腎症の予防・治療効果を持つ物質として利用できる可能性があり、そして本発明は、このような物質を選別可能なスクリーニング方法を提供することができる。
【実施例1】
【0044】
(測定手順)
被検体由来サンプルとして、健常者3例と糖尿病性腎症患者(1期4例、2期2例、3期6例)の尿サンプルを採取し、フィルターによるろ過、限外ろ過による濃縮を行った。
次いで、マルチプルアフィニティ除去カラム(Agilent社製)により、Albumin, IgG, IgA, transferin, haptoglobin, antitrypsinを除去した後、全てのサンプルのタンパク質濃度を50μg/mLに調製した。
次いで、サンプル溶液20μLとCy3-NHS(GE Healthcare社製)を混合することによりサンプル中のタンパク質の標識を行い、結合していない遊離のCy3分子をゲルろ過により除去した。
次いで、蛍光標識されたタンパク質が2μg/mL, 1μg/mL, 500ng/mL, 250ng/mL, 125ng/mL, 62.5ng/mL, 31.25ng/mLとなるように調製し、45種類のレクチンを固定したレクチンマイクロアレイLecChip(Moritex社製)により、45種類のレクチンとの相互作用測定を行った。
16時間のインキュベーション後、エバネッセント励起マイクロアレイスキャナーGlycoStationReader1200(Moritex社製)により、夫々のレクチンに結合した糖タンパク質の蛍光強度を測定した。
【0045】
(測定結果)
健常者と糖尿病性腎症患者において、タンパク質濃度125ng/mLのサンプルにおいて夫々のレクチンから得られた蛍光強度を比較した結果、図1〜図7に示すように、ユキノハナレクチン(Galanthus nivalis, GNA)、アマリリスレクチン(Hippeastrum Hybrid, HHL)、ナタマメレクチン(Canavalia ensiformis, ConA)、エンドウマメレクチン(Pisum sativum, PSA)、レンズマメレクチン(Lens culinaris, LCA)、ヒイロチャワンタケレクチン(Aleuria aurantia, AAL)、コウジカビレクチン(Aspergillus oryzae, AOL)に結合する糖タンパク質の量は糖尿病性腎症の進行に従い減少した。
【0046】
また、図8〜図10に示すように、ニホンニワトコレクチン(Sambucus sieboldiana, SSA)、ニワトコレクチン(Sambucus Nigra, SNA)、キカラスウリレクチン−I(Trichosanthes japonica
- I, TJA-I)に結合する糖タンパク質の量は糖尿病性腎症の進行に伴い増加した。
【0047】
このように糖タンパク質の量が糖尿病患者の尿検体中において変化していること、そしてその変化を、レクチンとの相互作用測定により検出できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は以上のとおりであるので、糖尿病性腎症の発症や進行度を判別できる、簡便かつ正確な検査方法として利用可能で、更に診断キット、さらにはマーカー物質の特定方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体由来サンプルに対して、レクチンとの相互作用測定を行って、前記レクチンと親和性を有する糖鎖の量を測定し、測定された糖鎖の量により糖尿病性腎症の進行度を検出することを特徴とする糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項2】
被検体由来サンプルに対して、複数種類のレクチンとの相互作用測定を行って、夫々の前記レクチンと親和性を有する糖鎖の量を測定し、測定された糖鎖の量により糖尿病性腎症の進行度を検出することを特徴とする糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項3】
被検体由来サンプルが、血液、血清、骨髄液、尿、唾液などの体液、病理標本から抽出した組織可溶化物、生組織可溶化物、細胞可溶化物から選択されるものである請求項1又は2に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項4】
糖鎖は被検体由来サンプル中の糖タンパク質に含まれる糖鎖である請求項1又は2に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項5】
糖鎖は被検体由来サンプル中の糖脂質に含まれる糖鎖である請求項1又は2に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項6】
相互作用測定において、被検体由来サンプル中のタンパク質濃度が一定の値となるように調整する工程を有する請求項1又は2に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項7】
被検体由来サンプルに対して測定された糖鎖の量を、標準物質に対して糖鎖結合能を有するレクチンとの相互作用測定により測定された標準の量と比較する工程を有する請求項1又は2に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項8】
標準物質が糖タンパク質である請求項7に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項9】
測定方法が、吸光度測定、蛍光測定、化学発光測定、放射線測定から選択される少なくとも1つの測定工程を有する請求項1又は2に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項10】
レクチンが、ガラクトース/N-アセチルガラクトサミンを含む糖に対する結合能を持つレクチンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項11】
レクチンが、デイコマメレクチン、ヒママメレクチン、ムラサキモクワンジュレクチン、スピンドルツリーレクチン、マッシュルームレクチン、ジャックフルーツレクチン、ピーナッツレクチン、フジレクチン、センニンコクレクチン、アメリカハリグワレクチン、エスカルゴレクチン、カラスノエンドウレクチン、ドリコスマメレクチン、ダイズレクチン、シカクマメレクチン、バンデリアマメレクチンI A4 、バンデリアマメレクチンI B4
、インゲンマメレクチン(L)、インゲンマメレクチン(E)、チューリップレクチンから成る群から選択されるレクチンである請求項2に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項12】
レクチンが、マンノースを含む糖に対する結合能を持つレクチンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項13】
レクチンが、ラッパズイセンレクチン、ナタマメレクチン、ユキノハナレクチン、アマリリスレクチン、ヒロハヒルガオレクチンから成る群から選択されるレクチンである請求項12に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項14】
レクチンが、シアル酸を含む糖に対する結合能を持つレクチンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項15】
レクチンが、イヌエンジュレクチン-I
、ニワトコレクチン、ニホンニワトコレクチン、キカラスウリレクチン-I 、イヌエンジュレクチンII 、ヤナギマツタケレクチンから成る群から選択されるレクチンである請求項14に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項16】
レクチンが、フコースを含む糖に対する結合能を持つレクチンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項17】
レクチンが、ロータスレクチン、エンドウマメレクチン、レンズマメレクチン、ハリエニシダレクチン-I 、コウジカビレクチン、ヒイロチャワンタケレクチン、キカラスウリレクチン-II から成る群から選択されるレクチンである請求項16に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項18】
レクチンが、N-アセチルアセチルグルコサミンを含む糖に対する結合能を持つレクチンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項19】
レクチンが、チョウセンアサガオレクチン(、バンデリアマメレクチンII 、トマトレクチン、ジャガイモレクチン、セイヨウイラクサレクチン、アメリカヤマゴボウレクチン、コムギレクチンから成る群から選択されるレクチンである請求項18に記載の糖尿病性腎症の進行度の検出方法。
【請求項20】
少なくとも所定のレクチンが固定された手段を有する、請求項1〜19のいずれかに記載の検出方法を行うための糖尿病性腎症の進行度の診断キット。
【請求項21】
レクチンが固定された手段が、ELISAプレート、マイクロアレイ、ラテックスビーズ又は磁気ビーズである請求項20に記載の糖尿病性腎症の進行度の診断キット。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれかに記載の検出方法又は請求項20又は21のいずれかに記載の糖尿病性腎症の進行度の診断キットを用いた糖尿病性腎症の進行度の指標となる物質の選別方法。
【請求項23】
請求項22に記載の選別方法により選別された糖尿病性腎症の進行度の指標となる物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−256132(P2010−256132A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105513(P2009−105513)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(509131742)株式会社GPバイオサイエンス (5)
【Fターム(参考)】