説明

糖尿病治療のための組成物及び方法

本発明は、ブタン酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸又はグルタミンを、上部消化管を介して結腸に送達することにより、インクレチン関連疾患、例えば、糖尿病、肥満症等を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年1月12日に出願した米国仮出願第61/143,951号及び2010年1月11日に出願した米国仮出願第61/293,773号の優先権の利益を主張し、それらの全体をここに引用する。
本発明は、糖尿病、メタボリックシンドローム、高トリグリセリド血症、及び肥満症を治療するための新規な方法及び組成物に関する。特に、本発明は、糖尿病、メタボリックシンドローム、高トリグリセリド血症、及び肥満症の治療に関し、下部消化管又は直腸に特異的な天然由来の化合物を送達することに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、世界中において増加している健康に対する脅威であり、先進国及び発展途上国の両方における主たる健康に対するリスクである。II型糖尿病は、糖尿病の大きな割合を占め、アメリカ合衆国において7番目の主要な死因となっている。II型糖尿病の主な発症に寄与している因子は、過体重にある。アメリカ合衆国単独で、1760万人以上が糖尿病に罹患していると見積もられており、約5700万人のアメリカ人が糖尿病予備軍であると見積もられている。
【0003】
II型糖尿病は、非インスリン依存性の糖尿病としても知られている。一般に、血糖レベルを適切に制御できない兆候が現れる。これは、膵臓によるインスリン生産の欠落により特徴付けられるI型糖尿病と反対である。他の言葉で言うと、II型糖尿病の患者は、インスリン又はインスリン耐性がほとんどないことに苦しんでいる。これらII型糖尿病に貢献していると特定されてきた因子は、肥満症、遺伝的背景、年齢、食事、及び血液化学的因子の1つ以上がある。II型糖尿病は、食事が因子であるため、しばしば成人発症型とよばれ、事実上どのような年齢でも起こりうる。
【0004】
II型糖尿病の結果、血糖及び尿糖値が血液中において上昇するので、空腹、尿意、喉の渇き、及び代謝関連の出来事を生ずる。病態を治療しなければ、心臓病、腎臓病及び失明等の共通の重大な結果を引き起こす。いくつかの治療が現在用いられている。肥満症は、しばしば糖尿病の発症原因であり、食事制限及び運動が通常第一の防衛となる。また第二の防衛としては治療剤が用いられ、インスリン又は血中の尿糖及び血糖を減少させる薬剤を含む。
【0005】
現在、インスリン分泌促進剤、糖を低下させるエフェクター、GLP-1アナログ、DPPIV、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γの活性化剤、α-グルコシダーゼ阻害剤のような、いくつかの薬物がII型糖尿病の治療に用いられている。現在のこれらの治療は、それらに関連していくつかの問題を有しているが、いまだII型糖尿病治療には、他の治療剤が必要である。
【0006】
消化管ホルモンは、胃腸のホルモンの一つの型であり、とりわけ食後、血糖値の上昇が起こる前に、ランゲルハンス島のベータ細胞からインスリン放出量を増加させる。それらは、結腸のL細胞から最も高レベルで分泌される。それらは、また胃が空になるのを減少させることにより、またおそらく直接食事の取り込みを減少させることにより栄養素の血流への吸収速度を遅らせる。グルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1)は、しばしばインクレチンと呼ばれ、L細胞より分泌される消化管ホルモンである。グルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1) (インクレチン)は、分泌が刺激されれば、糖尿病の治療に用いられうる組成物の1つとして特定されてきた。
【0007】
GLP-1は、腸内分泌L細胞から分泌されるペプチドであり、ここ20年以上にわたり非常に多くの文献に記載されてきた多様な生理学的効果を有する。より最近では、多くの研究は、病態及び疾患、例えば、糖尿病、ストレス、肥満症、食欲及び満腹感の制御、アルツハイマー病、炎症、及び中枢神経系の疾患の治療におけるGLP-1の使用に焦点があてられている。しかし、臨床治療におけるペプチドの使用は、投与の困難さ及びインビボでの安定性のため、厳しく制限されている。それゆえ、GLP-1の効果を直接ミミックした、又はGLP-1分泌を増加させることをミミックした小分子は、様々な病態又は疾患の治療におけるインクレチンの増加という治療の選択肢と考えられてきた。
【0008】
PYYは、食餌に応答して回腸及び結腸から分泌される短い(36 アミノ酸)タンパク質で消化管ホルモン(ペプチド YY)である。ヒトにおいては、食欲を減少させるように振舞う。PYYは、胃腸管の粘膜のL細胞、特に回腸及び結腸において見られる。また、1-10%の少量が食道、胃、十二指腸及び空腸に存在する。循環中におけるPYY濃度は、食後(食事の消化後)に増加し、絶食により減少する。
【0009】
GLP-2 (消化管ホルモン)は、33アミノ酸ペプチドであり、小腸及び大腸の内分泌細胞からGLP-1とともに分泌される。とりわけ、GLP-2は、小腸及び大腸において粘膜増殖を刺激し、胃が空になること及び胃酸分泌を阻害、消化管透過性を減少させ、及び小腸における血流を減少させる。
【0010】
オキシントモジュリン (消化管ホルモン)は、37アミノ酸ペプチドであり、L細胞からGLP-1とともに分泌される。GLP-1及びGLP-2の効果をミミックし、通常人においてヒトにおける胃酸分泌及び腸管運動、食欲抑制、及び食事摂取を減少させ、水の摂取において影響を受けない過体重及び肥満の個体に対して〜17%のエネルギー摂取を減少させる。
【0011】
ブタン酸は、エステル形態として天然に存在する動物及び植物油の脂肪酸である。例えば、ブタン酸のトリグリセリドは、バターの3%ないし4%を構成する。これは例えば、バター及びチーズのような酸敗した食物(rancid food)に存在し、非常に不快な臭い及び味がする。短鎖脂肪酸と呼ばれる脂肪酸のサブグループの重要な構成物である。
【0012】
胆汁酸(胆汁酸塩としても知られる)は、ステロイド酸であり、ホ乳類の胆汁酸中の大部分を占める。ヒトにおいては、タウロコール酸及びグリココール酸(コール酸誘導体) は、すべての胆汁酸の約80%を占める。2つの主要な胆汁酸はコール酸及びケノデオキシコール酸である。それら、それらの複合体、及び7-α-デヒドロキシ化誘導体は、すべてヒトの小腸の胆汁に見られる。胆汁酸の分泌促進の増加により胆汁の流れが増加する。胆汁酸の主な機能は、ミセル形成を促進することであり、これは食餌性の脂肪のプロセシングを促進する。胆汁酸塩は、カルボン酸で終わる5又は8炭素の側鎖を有する4つの環を有するステロイド構造であり、異なる数及び配向のヒドロキシル基からなる分子の大ファミリーを構成する。4つの環は、D環の炭素が、他の3つの環の炭素よりも1つ少なくなるように(通常描かれる骨格において)左から右にA、B、C、Dの順に付される。ヒドロキシル基は、2つの位置をとり得、βと呼ばれる上(又は外)向き(従来式中実線で示される)又はαと呼ばれる(従来式中破線で示される)。すべての胆汁酸は、親分子のコレステロールに由来する3位にヒドロキシル基を有する。コレステロールにおいては、4つのステロイド環は、平面上にあり、3位のヒドロキシルはβである。
【0013】
長鎖脂肪酸(LCFA)は、16炭素以上の脂肪族末端を有する脂肪酸である。脂肪酸は、飽和又は不飽和の4ないし28炭素鎖(通常、非分岐鎖であり偶数の)を通常有し、動物又は植物性脂肪、油、又はワックスに由来する、又はそれらのエステル化形態に含まれる脂肪族モノカルボン酸である。
【0014】
グルタミンは、癌を含む様々な疾患の治療に栄養補助剤として用いられるアミノ酸である。 グルタミンは、人体に最も豊富に存在する遊離アミノ酸であり、タンパク質の構成成分としての役割を有することに加え、体内において様々な機能を果たす。グルタミンは、人の細胞から作り出せるので必須アミノ酸ではない。加えて、ほとんどの食餌性タンパク質は、多量のグルタミンを含み、健常人は、食餌において必要な追加のグルタミンを摂取している。
【0015】
GPR 120、TGR5、GPR 41及びGPR43受容体を含み、消化管ホルモンを刺激すると考えられる受容体の刺激に対する多くの新しいアプローチが試みられてきた。2008年6月5日に発行された国際公開第2008/067219号公報;2007年11月8日に発行された米国特許出願2007/060759号公報;2006年3月9日に発行された特許出願第2006-630 4A号公報;及び2006年3月2日に発行された特許出願第2006-56881 A公報には、TGR5受容体である胆汁酸G-タンパク質共役受容体を刺激するようデザインされたいくつかの小分子アゴニストが開示されている。
【0016】
上述の天然由来の生産物は、特に、これらの製品は、きわめて不味く、消化管で容易に分解され及び/又は吸収され、薬理作用の標的が結腸であるため、経口投与することは困難である。
【0017】
肥満症は、世界中の国々でヒトにおける蔓延しているといえる割合の医学的病態である。また、他の疾患を誘発または生涯の活動及び生活スタイルを破壊する他の疾患に関連する病態である。肥満症は、他の疾患及び病態、例えば糖尿病、高血圧症および動脈硬化症に深刻なリスクファクターであると認識されており、血中コレステロールレベルの上昇を引き起こしうる。また肥満症による体重の増加は、関節、例えば膝関節に負担をかけ、関節炎、疼痛及び剛性を生じる。肥満症は、特定の皮膚病態、例えばアトピー性皮膚炎及び床擦れを生ずる。過食及び肥満症は、一般人において非常に問題となってきており、現在多くの人が減量(losing weight)、減量(reducing weight)及び/又は健康な体重及び生活スタイルに関心を持っている。
【0018】
高トリグリセリド血症 (hTG)は、アメリカ合衆国においてよくある疾患である。該病態は、発展途上国よりも産業化した社会、特にアメリカ合衆国において普及しており、制御不能な糖尿病、肥満症及びデスクワークにより悪化する。易学的及び予防学的研究のいずれによっても、高トリグリセリド血症は、冠動脈疾患(CAD)のリスクファクターとなっている。高トリグリセリド血症の治療は、ナイアシン、フィブラート及びスタチンとともに(3つの薬物クラス)食餌中の炭水化物及び脂肪の制限により行われる。魚脂の摂取を増やすと、実質的に個体のトリグリセリドを減少させうる。
【0019】
明らかに、下部消化管に医薬を送達するために多くの組成物がデザインされている。1つの特徴的なものとしては、3つの成分マトリクス構造、例えば2008年10月7日に発行されたVillaらによる米国特許出願第7,431,943号公報があり、ここに参照としてその全体が組み込まれる。
【0020】
アミロースによるコーティング錠剤、腸溶性コーティングキトサン錠剤、マトリックス中のマトリックス又はマルチマトリックス送達システム、又はポリ多糖錠剤を含み、所望の組成物を結腸に送達するための多くの異なる製剤が市販されている。1つのマルチマトリックス放出制御システムは、2008年10月7日に発行されたVillaらによる米国特許出願第7,431,943号公報があり、ここに参照としてその全体が組み込まれる。開示されているのは、親油性の層及び両親媒性の層が内側のマトリックスに組み込まれており、少なくとも一定の割合の活性成分が両親媒性の層に組み込まれている、マトリックス中のマトリックスデザインである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、特定の天然由来の組成物についてであり、胃及び上部消化管システムを経由して結腸又は直腸に送達され得、L細胞からの特定の消化管ホルモンの生産を増加させることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
それゆえ、1つの態様としては、本発明は
以下の工程a)とb):
a)結腸を標的とした送達システム又は直腸放出システムにおいて放出されるように製剤化された組成物であり、ブタン酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸及びグルタミンからなる群から選択されるL細胞からの消化管ホルモン分泌を引き起こす薬剤を選択すること;及び
b)望ましい結果を達成するのに、結腸において十分なL細胞からの消化管ホルモンの放出を生じるのに十分な刺激を引き起こす医薬組成物を個体に投与すること
を含む、個体における結腸におけるL細胞分泌性消化管ホルモンの生産を刺激することによる、L細胞から分泌される消化管ホルモンの放出の減少又は欠如により影響される病態又は疾患を治療又は予防する方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明は、多くの異なる形態に許容しうるが、特定の実施形態について、図面に示し、かつ本願にて詳細に説明する。本開示は、本発明の原理の例示であり、説明した特定の実施形態に本発明を限定することを意図するものではない。以下の説明にて、数個の図面中、同様の符号は同一、同様又は図面のいくつかの観点から対応する要素に使用される。この詳細な説明は、本明細書に用いられる用語の意義を定義し、及び当業者が発明を実施できるように具体的に態様を記載している。
【0024】
本明細書中、「ある(a)」又は「ある(an)」は、1以上であることと定義する。用語 「複数の」は、 本明細書中、2つ以上であると定義する。用語「他の」は、本明細書中、少なくとも2つ以上であることと定義する。用語「を含む」及び/又は 「有する」は、本明細書中、含むことと定義する(すなわち、オープンランゲージ)である。用語「結合した」とは、本明細書中、連結していることと定義するが、直接である必要はなくまた機械的である必要はない。
【0025】
本明細書を通じて「ある態様(one embodiment)」、「特定の態様」及び「ある態様(an embodiment)」又はその態様と関連して記載されている類似の用語は、特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくともある態様において含まれていることを示す。それゆえ、本明細書中、様々な場所において現れるそのようなフレーズは、必ずしもすべて同じ態様を示すことを意味しない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、限定なく1つ以上のあらゆる適切な方法により組み合わされる。
【0026】
用語「又は」は本明細書中、含むこと、又はいずれか1つ又はいかなる組み合わせであってもよいことを意味する。それゆえ、「A, B又はC」は以下を意味する:「A; B; C; A及びB; A及びC; B及びC; A, B及びC」。この定義の例外は、組み合わせた要素、機能、又はステップ又は作用が、ある意味で本質的に相互に排他的である場合に限られる。
【0027】
図面の中に描かれている特長は、本発明の特定の簡便な態様を説明するためであったとしても、それに限定されるものではない。用語「手段」とは、1つ以上の態様があり、すなわち1つ以上の方法、装置(devices)又は装置(apparatuse)望む機能を示すための操作の現在分詞である。当該分野における熟練は、これら又は本発明の観点からそれらと等価なものから選択することができ、用語「手段」の使用は、限定的に解すべきではない。
【0028】
本明細書中、用語「治療」は、個体において、特定の病態を緩和することを言及し、病態の症状を消滅又は減少させ、病態の進行を遅らせ又は消滅させ、及び病態の発症又は以前に患っていた個体における再発を妨げ又は遅らせる。
【0029】
本明細書中、「病態又は疾患」は、いかなる疾患の状態をも言及するが、特にホ乳類等において、よい意味でも悪い意味でもL細胞からの消化管ホルモンの生産の増加が起こることをいう。本明細書中に記載されている疾患が含まれるが、一般に、望ましい態様で、L細胞から消化管ホルモンが増加することによる影響を受けるいかなる状態をも含む。消化管ホルモン系は、ホ乳類において知られており、及び本発明は、それ自体によるホ乳類の治療に関連する。ある態様では、ホ乳類は、ヒトである。L細胞からの消化管ホルモンの生産の増加による病態の治療は、以下に限られないが、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満症、食欲制御、メタボリックシンドローム及び多嚢胞性卵巣症候群がある。
【0030】
本発明の消化管ホルモン分泌は、結腸のL細胞、通常消化管における栄養の存在に応答して刺激される。そのような細胞は、消化管及び他の臓器の部分にも存在するが、それらは結腸において最も高濃度に存在する。結腸におけるL細胞の刺激は、消化管ホルモンの生産の最も効果的な生産をもたらすため、最も治療効果がある。本発明のL細胞からの消化管ホルモンは、以下に限られないが、GLP-1, GP-2, PYY及びオキシントモジュリンがある。インクレチン、例えば、特にGLP-1は興味深い1つの消化管ホルモンである。
【0031】
本発明の消化管ホルモン放出を刺激する化合物は、ブタン酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸及びグルタミンから選択される天然の化合物である。これには、個々の化合物だけでなく、これらの化合物の組み合わせも含むことは理解されるであろう。
【0032】
本明細書中、本発明の「化合物」は本明細書におけるすべての化合物を含む。
【0033】
本発明の化合物は、1つ以上の形態において結晶化し得、多型として知られる特性を有し、そのような多型(「polymorphs」)は、本発明の範囲に含まれる。多型は、一般に温度、圧力又はその療法の変化に応答して起こりうる。また多型は、様々な結晶化プロセスの結果生じうる。多型は、当該分野において知られた様々な物理的特性、例えば、X線結晶回折パターン、溶解性及び融点により区別されうる。
【0034】
本明細書中に記載されているある化合物は、一つ以上のキラル中心を有している、又はそうでなければ、複数の立体異性体として存在しうる。本発明の範囲は、精製したエナンチオマー又はエナンチオ/ジアステレオリッチな混合物だけでなく、立体異性体の混合物も含む。また、本発明の範囲には、本発明の化合物の個々の異性体ならびにそれらの完全に又は部分的に平衡にある混合物を含む。また、本発明は、1つ以上のキラル中心が反転した異性体の混合物として示される個々の化合物の異性体を含む。
【0035】
典型的には、しかし完全にではないが、本明細書中の化合物は、本発明の塩および医薬的に許容される塩を含む。用語「医薬的に許容される塩」において塩は、本発明の化合物の非毒性塩を含む。本発明の化合物の塩は、酸付加塩を含む。代表的な塩は、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、クラブラン酸、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エストレート、メシル酸塩、フマル酸塩、グルセプチン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレソルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ素酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、マレイン酸モノカリウム塩、ムケート、ナプシル酸、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、パモ酸、パルミチン酸、パントテン酸、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム塩、サリチル酸塩、ナトリウム塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩(subacetate)、コハク酸、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド(thethiodide)、トリメチルアンモニウム(thmethylammonium)及び吉草酸塩がある。薬学的に許容できるものでない他の塩は、本発明の化合物の製造に役立ち得、これらはさらに本発明の態様を形成すると考えられる。
【0036】
本発明の組成物の「投与」は、経口、直腸、IV、IM等があるが、特定の投与方法に依存するものではない。本明細書のいたる所に記載されているが、本化合物は、上部消化管を経由して取り込まれるように製剤されており、結腸の胃又は直腸送達がなされる組成物である。
【0037】
本明細書中、用語「有効量」は、例えば、研究者又は臨床医によって試みられている組織、系、動物、又は人において生物学的又は医学的応答を発する薬物又は薬剤の用量を意味する。
【0038】
用語「治療上の有効量」は、その用量を投与されていない個体において、その用量を投与されると、疾患、障害又は副作用の治療の改善、治癒、予防又は緩和が認められ、疾患又は障害の進展の速度を減少させる、いかなる用量であってもよい。また該用語は、通常の生理学的機能を促進するのに有効な用量の範囲を含む。治療上の有効量は「治療効果」を奏する。
【0039】
治療用途においては、本発明の化合物ならびにそれらの塩の治療上の有効量が結腸標的送達システムにおいて放出されるように医薬組成物として製剤化されている。
【0040】
本発明は、本明細書に記載された化合物及びそれらの塩及び1つ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤の有効量を含む医薬組成物を提供する。担体、希釈剤又は賦形剤は、投与形態すなわち経口又は直腸投与に応じて、他の成分と互換性があり、及び医薬組成物の受容体において有害でないという意味において許容されるものでなければならない。
【0041】
また、本発明の他の態様として、1つ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を、本発明の化合物又はその塩と混合することを含む、医薬組成物の医薬製剤の製造のプロセスを提供する。
【0042】
本発明の化合物の治療上の有効量は、多数の因子に依存する。例えば、受容体の種、年齢、体重、必要としている治療の正確な病態及びその重症度、製剤の性質、及び結腸標的送達システムの型は、すべて考慮すべき因子である。治療上の有効量は、最終的には付添い人、医師又は獣医の判断による。消化管ホルモンの有効量にかかわらす。にもかかかわらず、糖尿病又は過体重の病態及び関連する病態の本発明の消化管ホルモン化合物の有効量は、一般に受容体の体重に対し、1日あたり0.01ないし100mg/kg (ホ乳類)である。より頻繁に用いられるのは、有効量が、体重に対し、1日あたり0.3ないし30 mg/kgである。それゆえ、70kgの成人のホ乳類の実際の用量は、通常、21ないし2100mgである。この用量は、1日1回又は何回か(2、3、4、5又はそれ以上)に分けて投与され、それゆえ、1日の合計用量は同一である。塩又はその溶媒和物の有効量は、本発明の有効量の化合物それ自体の割合によって決定される。本明細書中に言及した異なる病態の治療において類似の用量が適用されうる。
【0043】
医薬製剤は、単位用量ごとにあらかじめ定められた活性成分の用量を含有する単位投与形態で存在する。そのような単位は、非限定的な実施例として、治療されるべき病態、投与経路及び患者の年齢、体重及び状態により本発明の化合物を0.5mgないし1gである。好ましい単位投与形態は、本明細書中、上述したまたはその適切な部分に記載したように、活性成分の一日の用量又は、サブ用量を含有することである。そのような医薬製剤は、調剤学の分野においてよく知られた方法により製造される。
【0044】
本発明の化合物又はそれらの塩は、標的薬物送達システムにより投与される。ある態様としては、結腸への標的薬物送達のために送達システムが用いられる。そのような薬物送達システムは、共有結合型組成物、ポリマーコート組成物、マトリックス埋込型組成物、時間放出組成物、酸化還元に感応する組成物、生物接着性組成物、ミクロ粒子コーティング組成物及び浸透圧送達組成物がある。適切な組成物には、ポリ多糖、例えばキトサン、ペクチン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、シクロデキストリン(cyclodexthn)、デキストラン、グアーガム、インスリン、アミロース及びローカストビーンガムがある。また化合物は、可溶性ポリマーと結合していてもよい。そのようなポリマーには、ポリビニルピロリドン(PVP)、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチル-アスパルタミドフェノール、残基により置換されたパルミトイルポリエチレンオキシドポリリジンがある。さらに、化合物は、生物分解性ポリマーに分類される;例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシブタン酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリル酸、及び架橋又は両親媒性ブロックコポリマーのヒドロゲルがある。本発明のこれらの粒子の有効性は、マルチマトリックス送達システムの態様を含む。本発明において特に有効なものは、親油性の層及び両親媒性の層を含む第1のマトリクスは、親油性の層及び両親媒性の層は、第2の層に一緒に含まれ、第2のマトリックスが親水性の第1のマトリックス中に分散され、医薬組成物は少なくとも部分的に両親媒性の層を含む。マトリックス中のマトリックス製剤の例は米国特許出願第7,431,943号に開示されている。これらの分野における通常の熟練は、本発明の化合物の標的送達の目的のために、そのような組成物を用いることができることを容易に理解するであろう。そのような組成物の標的送達のための製剤の製造方法は、この開示を考慮すれば、当該分野における熟練の範囲内にある。
【0045】
本発明の化合物又はその塩は、単独で、又は他の治療剤と組み合わせて用いられる
。本発明の化合物及び他の医薬的に活性な薬剤は、一緒に又は別々に投与され、別々に投与される場合には、投与は同時であっても連続してであっても、いかなる順番であってもよい。本発明の化合物及び他の薬剤の用量及び投与のタイミングは、望ましい治療効果を達成するために選択される。本発明の化合物またはその塩またはそれらの溶媒和物と、付随して他の治療剤を組み合わせて投与するには以下の方法がある:
(1)両方の化合物を含む単一の医薬組成物;又は(2)それぞれ化合物のいずれか1つを含む、別々の医薬組成物。あるいは、組み合わせは、一方を先に及び他方を後から、又はその逆で、連続して別々に投与されうる。そのような連続投与の時間の間隔は短くても長くてもよい。
【0046】
また化合物は、直腸組成物、例えば坐剤又は停留浣腸として、例えば従来の坐剤基材、例えばココアバター又は他のグリセリドを用いて製剤化されうる。そのように製剤される組成物は、結腸及び直腸の影響する領域において有効な投与をするためにデザインされる。
【0047】
本発明の化合物は、様々な疾患及び病態の治療において用いられうる。そのようなものとしては、本発明の化合物は、他の疾患または病態の治療において用いられる他の様々な治療剤と組み合わせて用いられるものがある。上で簡単に議論したとおり、現在の糖尿病治療は、食餌、運動、インスリン、インスリン分泌促進物質、グルコース低下エフェクター、PPAR-γアゴニスト、及びα-グルコシダーゼ阻害剤がある。本発明の化合物は、本発明の化合物は、糖尿病及び関連する疾患及び病態を治療及び/又は予防するために、これら又は他の医学療法とともに組み合わせうる。上に簡単に議論したとおり、現在の糖尿病治療は、食餌、運動、インスリン、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化、神経編成疾患及び例えば炎症および脳卒中のような他の適用に用いられる。例えば、II型糖尿病の治療においては、本発明の化合物を1つ以上の薬学的に活性な薬剤と組み合わせることができ、メトホルミン, スルホニルウレア、例えばグリブリド及びグリピジド、レパグリニド、ナテグリニド、チアゾリジンジオン、例えばロシグリタゾン及びピオグリタゾン、アカルボース、ミグリトール、エクセナチド、プラムリンチド、及びインスリンがある。
【実施例1】
【0048】
消化管ホルモン作用が障害された3及び/又は消化管ホルモン分泌が障害された4,5 絶食させた10人の肥満の糖尿病性患者に直腸からグルタミン1gを含む坐剤(文献に記載の方法で製造)を投与した。薬物投与から30分後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。血液を以下の時点で集めた:-30、-5、5;10、15、30及び60分。グルコース、インスリン、GLP-1、PYY及び他のホルモンの測定のために採血した。
【実施例2】
【0049】
消化管ホルモン作用が障害された3及び/又は消化管ホルモン分泌が障害された4,5 絶食させた10人の肥満の糖尿病性患者に直腸から坐剤(文献に記載の方法で製造)又は浣腸(グルタミン1gを含む)を投与した。薬物投与から30分後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。薬物投与から30分後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。血液を以下の時点で集めた:-30、0、5、10、15、30、60、90及び120分。グルコース、インスリン、GLP-1、PYY及び他のホルモンの測定のために採血した。グルコースレベルは処置計画後に測定すると減少した。
【実施例3】
【0050】
消化管ホルモン作用が障害された3及び/又は消化管ホルモン分泌が障害された4,5 絶食させた10人の肥満の糖尿病性患者に直腸から坐剤(文献に記載の方法で製造)又は浣腸(ブタン酸2gを含む)を投与した。薬物投与から30分後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。薬物投与から30分後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。血液を以下の時点で集めた:-30、0、5、10、15、30、60、90及び120分。グルコース、インスリン、GLP-1、PYY及び他のホルモンの測定のために採血した。グルコースレベルは処置計画後に測定すると減少した。
【実施例4】
【0051】
MMX技術(グルタミン1gを含む)によって製剤化された錠剤は、文献2に記載したとおりに製造した。消化管ホルモン作用が障害された3絶食させた10人の肥満の糖尿病性患者に、MMX錠剤1錠を朝に投与した。薬物投与から4時間後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。血液を以下の時点で集めた:-30、0、5、10、15、30、60、90及び120分。グルコース、インスリン、GLP-1、PYY及び他のホルモンの測定のために採血した。グルコースレベルは処置計画後に測定すると減少した。
【実施例5】
【0052】
MMX技術(ブタン酸2gを含む)によって製剤化された錠剤は、文献2に記載したとおりに製造した。消化管ホルモン作用が障害された3絶食させた10人の肥満の糖尿病性患者に、MMX錠剤1錠を朝に投与した。薬物投与から4時間後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。血液を以下の時点で集めた:-30、0、5、10、15、30、60、90及び120分。グルコース、インスリン、GLP-1、PYY及び他のホルモンの測定のために採血した。グルコースレベルは処置計画後に測定すると減少した。
【実施例6】
【0053】
MMX技術(グルタミン1gを含む)によって製剤化された錠剤は、文献2に記載したとおりに製造した。消化管ホルモン作用が障害された3 10人の肥満の糖尿病性患者に、MMX錠剤1錠を朝食前に6週間投与した。薬物投与から4時間後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。血液を以下の時点で集めた:-30、0、5、10、15、30、60、90及び120分。血液を以下の点についてグルコース、インスリン、GLP-1、PYY及び他のホルモン。グルコースレベルは処置計画後に測定すると減少した。処置前及び処置開始後1、 2及び6週間後にHbA1c、空腹時血糖及びインスリンを測定した。さらに、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。血液を以下の時点で集めた:-30、0、5、10、15、30、60、90及び120分。グルコース、インスリン、GLP-1、PYY及び他のホルモンの測定のために採血した。グルコースレベルは処置計画後に測定すると減少した。
【実施例7】
【0054】
MMX技術(ブタン酸2gを含む)によって製剤化された錠剤は、文献2に記載したとおりに製造した。消化管ホルモン作用が障害された3 10人の肥満の糖尿病性患者に、MMX錠剤1錠を朝食前に6週間投与した。薬物投与から4時間後、患者はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った。血液を以下の時点で集めた:-30、0、5、10、15、30、60、90及び120分。グルコース、インスリン、GLP-1、PYY及び他のホルモンの測定のために採血した。グルコースレベルは処置計画後に測定すると減少した。
【0055】
文献
1. Mayo Clin. Proc. 1993, Vol 68, 978は、参照により本明細書に組み込まれる。
2. 米国特許登録7,431,943 B1は、参照により本明細書に組み込まれる。
3. Diabetes, Oesity and Metabolism, 9 (Suppl. 1), 2007, 23-31は、参照により本明細書に組み込まれる。
4. トフト-ニールセン MB、ダムホルト MB、マッズバッド Sら、II型糖尿病性患者における患者におけるグルカゴン様ペプチド-1の分泌の障害における決定要素。J Clin Endocrinol Metab 2001;86:3717-3723。
5. ラスク E、オルソン T、ソンダーバーグ Sら、混合食後における障害されたインクレチン応答は、非糖尿病性の男性におけるインスリン耐性と関連がある。Diabetes Care 2001;24:1640-1645。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程a)とb):
a)結腸標的送達システム又は直腸放出システムにおいて放出されるように製剤化された組成物であり、ブタン酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸及びグルタミンからなる群から選択されるL細胞からの消化管ホルモン分泌を引き起こす薬剤を選択すること;及び
b)望ましい結果を達成するために、十分な消化管ホルモンの放出を生じるのに十分な刺激を引き起こす医薬組成物を個体に投与すること
を含む、個体における結腸におけるL細胞分泌性消化管ホルモンの生産を刺激することによる、L細胞から分泌される消化管ホルモンの放出の減少又は欠如により影響される病態又は疾患を治療又は予防する方法。
【請求項2】
該薬剤が、グルタミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該薬剤が、ブタン酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
I型糖尿病、II型糖尿病、高トリグリセリド血症、肥満症、食欲制御、メタボリックシンドローム、及び多嚢胞性卵巣症候群の1つ以上の病態又は疾患が消化管ホルモンの放出により影響される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
結腸標的送達システムが、マトリックス送達システムにおけるマトリックスである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該結腸標的送達システムが、親油性の層及び両親媒性の層を含む、親水性の第一のマトリックスである放出制御製剤であり、該親油性の層及び両親媒性の層が、一緒に第二のマトリックスに含まれ、該第二のマトリックスが第一のマトリックス中に分散され、該薬剤が少なくとも部分的に両親媒性の層に組み込まれている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該組成物が、ブタン酸、胆汁酸、長鎖脂肪酸及びグルタミンからなる群から選択される組成物を含み、胃又は上部消化管においては放出されないように製剤化された組成物であり、結腸のL細胞から消化管ホルモンを放出することを誘発する組成物。
【請求項8】
該組成物が結腸標的薬物送達システムとして製剤化された請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
直腸投与用に製剤化された請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
グルタミンを含む請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
ブタン酸を含む請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
結腸標的送達システムが、マトリックス送達システムにおけるマトリックスである請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
該結腸標的送達システムが、親油性の層及び両親媒性の層を含む、親水性の第一のマトリックスである放出制御製剤であり、該親油性の層及び両親媒性の層が、一緒に第二のマトリックスに含まれ、該第二のマトリックスが第一のマトリックス中に分散され、該組成物が少なくとも部分的に両親媒性の層に組み込まれている、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2012−515163(P2012−515163A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545487(P2011−545487)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/020629
【国際公開番号】WO2010/081079
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(511168039)バイオキアー・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】BioKier Inc.
【Fターム(参考)】