説明

糖尿病管理方法及びシステム

【課題】グルコース濃度の変動性及び低血糖症及び高血糖症における履歴に関する情報を提供できる方法及び装置の提供。特に該情報は測定装置等から得られる時間ごとの血糖データに基づいて提供され、HbA1c濃度の実際の測定値が必要とされない。
【解決手段】一定時間に収集された複数の血糖データを準備するステップ、少なくとも一つの除外基準を有する第一の所定アルゴリズムを使用して複数の血糖データから特異質のHbA1c濃度を推定するステップ、少なくとも一つの除外基準を有する第二の所定アルゴリズムを使用して複数の血糖データからの糖血症の特異質の変動性指数を算出するステップ、及び特異質の糖血症の変動性指数及び特異質のHbA1c濃度を比較するステップを含む血糖データを管理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖尿病管理に関する。具体的には、本発明は糖尿病治療の効果をモニターする方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者が抱える根本的な問題として、細胞膜における血糖の透過輸送に関するものが挙げられる。これにより、身体における血糖濃度の正常濃度への維持が困難となる。糖尿病治療において、患者は、定期的に自動テストキットを用いて血糖濃度を検査する。自己試験の結果を、正常とされる血糖濃度と比較することによって、患者はインシュリンの量を推定することが可能となり、それは血糖濃度を正常値付近に維持するために行うべきことである。異常に高い血糖値(例えばインシュリンをほとんど注入していない患者の場合)又は一定量を超える摂食は高血糖と定義され、一方異常に低い血糖(例えばインシュリンを多く注入している患者の場合)は低血糖と定義される。これらは、糖尿病の短期合併症であると考えられ、急性症状を引き起こすか、又は長期合併症の発症の要因となりうる。糖尿病患者はまた、長期間の場合にのみ表れる症状に起因する問題で苦しむこともありうる。これらの問題は、血糖の過剰な濃度が原因によって生じ、他の原因も相まって、糖がタンパク質と結合して糖タンパク質を形成する結果となる。糖タンパク質は実質的に不溶性で、静脈及び動脈壁の肥大化、及び神経の髄鞘の肥大化を引き起こす。
【0003】
糖タンパク質の一つの特定形は、糖化ヘモグロビンである。糖化ヘモグロビンは血液に残留する傾向があるため、それは血液中の糖タンパク質の濃度、すなわち患者が行っていた治療法の効果の優れた指標となり、同様に、患者がいかにその療法に従順かを示す指標ともなる。
【0004】
糖化ヘモグロビンは、HbA1a、HbA1b及びHbA1cの3つに分けられる。糖尿病患者の血液のHbA1cの濃度が正常であるときは、治療法が効果的であるか、また糖尿病の二次合併症の危険度が低いことを示す良好な指標であることが示されている。健常人の血液中のHbA1cの濃度は、全ヘモグロビンの4%〜6%の間であり、一方糖尿病患者においては濃度が例えば8%超に顕著に高まることもありうる。通常、糖尿病患者の血液のHbA1cの濃度を6%〜7%の間に下げようと考える。HbA1c濃度は、HbA1c測定の前に数ヶ月の期間にわたる血糖治療に特異的な(すなわち患者特異的な)効果を反映する。HbA1c濃度は、研究室での試験で一般に測定され、糖尿病治療の長期間効果に関連する情報を提供する。
【0005】
HbA1cタンパク質濃度は有益な情報を提供するものの、患者のHbA1c濃度を測定することは普通少なく、患者の血糖コントロールと関連する変動性、又は低血糖症若しくは高血糖症の傾向を示す指標とはならない。例えば、患者のHbA1c濃度は4%〜7%の間が許容範囲であるが、低血糖及び/又は高血糖の履歴は、HbA1c濃度においては反映されないため、それらの症状が頻繁に見られる。
【0006】
変動性に関する情報は、多くの理由により、糖尿病患者又は臨床医にとって有用でありえる。高い変動性は、不安定型糖尿病を示すものであり、患者において適切に低血糖症及び高血糖症が補償されていないことを示しうる。高い変動性は高度の低血糖症、糖尿病性ケトアシドーシス及び他の急性合併症の危険性の増加を示すと考えられ、ゆえに変動性の大きい患者はより精密にモニターする必要があり、また、この情報は食餌療法を調整するときに考慮されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はすなわち、グルコース濃度の変動性及び低血糖症及び高血糖症における履歴に関する情報を提供できる方法及び装置の提供に関する。本発明においては、情報は測定装置等から得られる時間ごとの血糖データに基づいて提供され、HbA1c濃度の実際の測定値が必要とされない。すなわち、本発明においては、推定HbA1c濃度が測定され、用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上より、本発明の一態様において、血糖データを管理する方法が提供される。該方法は、一定時間に収集された複数の血糖データを準備するステップ、少なくとも一つの除外基準を有する第一の所定アルゴリズムを使用して複数の血糖データから特異質のHbA1c濃度を推定するステップ、少なくとも一つの除外基準を有する第二の所定アルゴリズムを使用して複数の血糖データからの糖血症の特異質の変動性指数を算出するステップ、及び糖血症及び特異質のHbA1c濃度の特異質の変動性指数を比較するステップを含む。該除外基準には、好ましくはテストの履歴、一日当たりの試験頻度、及び日ベースのデータの無作為度が含まれる。
【0009】
本発明の他の態様において、ユーザーは、所望のベース(例えば毎週)で、各人の血糖測定装置又は血糖データ管理システム上で、新しい変動性情報にアクセスすることができる。本発明の血糖データ管理システムは、データの収納に用いるあらゆる個人使用の装置又はソフトウエアプログラム(例えば血糖モニター、PDA、携帯電話、ポケット版コンピュータ、インシュリンポンプ、インシュリンブルドーザ、インターネットインタフェース又はコンピュータプログラム)を含めてもよい。変動性指数に関する情報及びインターフェース要素は、モバイル機器のソフトウェア又は他のソフトウェアのアップグレードのため、データモジュール又は「スマートチップ」中に収納してもよい。
【0010】
本発明の他の態様において、ユーザーは、一つ以上の血糖分析ツールの健康概要又は状況リストから変動性指数にアクセスすることができる。選択されると、測定装置又は血糖データ管理システムは変動性指数を計算できる。測定装置のデータがテスト頻度に関する特定の除外基準を満たす場合、指数値が生じないのが好ましい。例えば、ある一週間でそれが生じた場合、測定装置は好ましくはその推定値を出力する。推定値が以前に特定の週に発生せず、除外基準が適用されて推定値が生じなかった場合、測定装置又は血糖データ管理システムは、推定値が生じなかった理由に関する(すなわち、どの除外基準がデータセットによって作動したかに関する)情報を好ましくは出力する。
【0011】
本発明の更に他の態様において、ユーザーは、一週間又はそれ以上にわたる傾向、一ヶ月間のグラフ解析、変動性に関する前後関係の情報、並びに推奨される行動及びフィードバックのための、変動性指数の現在値及び履歴を分析する様々なツールにアクセスすることができる。一週間の傾向に関して、データ管理システムは、毎週又は他の所望のベースにおけるHbA1c濃度の傾向を出力できるのが好ましい。これにより、ユーザーは、治療法の変化によるグルコース変動性の時間変化を知ることができ、またそれが低下又は上昇している場合には随時フィードバックを得ることができる。濃度の変動傾向の表示は、ユーザーによる選択に応じて月ベースで表示することもできる。データ管理システムはまた、好ましくは月ベース又は他の所望のベースにて、変動性指数の概要を出力することもできる。これにより、患者及びその担当医師は、一年間のうちに患者にとり問題となりうる時期がある場合、グルコース濃度制御を維持するため、グルコース濃度測定値の変動性の、季節変化又は月変化を測定できる。変動性指数はまた、特異質の変動性がより広い母集団にどのように匹敵するかに関する前後関係の情報によって、あるいはそれらが属するグルコース変動性指数群における急性合併症の危険性を解析することによって示すことができる。表示はまた、変動性指数又は変動性指数のトレンドに基づいて推奨された行動又はフィードバックを出力することもできる。例えば、上記システムは、変動性が改善している場合に患者にポジティブなメッセージを週ごとに、月ごとに、又は他のベースにて出力できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1では、糖血症の変動性指数及び推定HbA1c濃度の計算用のプログラム112を含む、本発明に係るシステム100を例示する。システム100は好ましくは、データ送信装置102、通信リンク104、一つ以上のデータ入力デバイス108に接続している処理ステーション106、可視ディスプレイ110、及び出力装置114を含む。データ送信装置102の例として、限定されないが、米国特許出願第10/432827号(2003年12月29日出願、Docket番号DDI12.1 USNP)(全ての目的において全内容が参照により本願明細書に援用される)に開示のように、血液又は間質液のグルコース検出するためのあらゆる体液(例えば血液、尿、間質液など)中の他の検出対象又はインジケーター(例えばコレステロール又はHbA1c)を検出するための測定システムが挙げられる。データ送信装置102は、好ましくは通信リンク104を介して処理ステーション106に接続している。通信リンク104の例として、限定されないが、プロトコル(例えば802.11、赤外線又はBluetooth)を用いた直接的なシリアルケーブル又はUSBケーブル、TCP/IP又はイーサネット(登録商標)ネットワーク接続及びワイヤレス接続が挙げられる。処理ステーション106は、好ましくは、本発明で使用する情報を保存、格納するためのモジュール(例えばデータベース、図示せず)、及びアルゴリズムを使用してデータ送信装置102からのデータを処理するためのモジュール(例えば中央処理装置又はCPU)を含む。処理ステーション106の例としては、限定されないが、パーソナルコンピューター又はネットワークコンピュータ、パーソナル携帯情報機器(PDA)、血糖測定装置又は携帯電話が挙げられる。本明細書で使用される「携帯電話」の用語は、従来の移動電話及び複合移動電話/パーソナル携帯情報機器(PDA)装置を含む無線電話コミュニケーションを利用したあらゆる携帯機器を意味する。入力装置108の例としては、限定されないが、キーボード、キーパッド、マウス、ジョイスティック及びスタイレットが挙げられる。可視ディスプレイ110の例としては、限定されないが、パーソナルコンピューター又はネットワークコンピュータ用のディスプレイモニター、パーソナル携帯情報機器(PDA)、携帯電話又は血糖測定装置用の液晶ディスプレイ(LCD)が挙げられる。出力装置114の例としては、限定されないが、プリンタ、ファックス、電子メールメッセージ、テキストメッセージ及び処理ステーション106に格納されるファイルが挙げられる。
【0013】
本発明に係る処理ステーション106は、好ましくは更に糖血症の変動性指数及び推定HbA1c濃度の計算用プログラム112を含む。変動性指数は、多くの方法によって算出できる。標準的な統計方法が使用でき、標準偏差、分散係数、所望の範囲外のパーセント、偏差、範囲及び四分位数間の領域を含むが、これらに限定されない。これらの方法にはまた、グルコースデータに由来するより複雑な指数を含めてもよく、それにより更に臨床に即した変動が表される。これらの指数にはまた、複合アルゴリズム(血糖指数の高低、グルコース及び他の要因の変化率を組み込んだアルゴリズムを含むがこれに限らない)を組み込んでもよい。例えば、標準偏差が、変動性指数として用いられる。したがって、方程式(1)は、好ましくは標準偏差を算出するために用いられる。
【数1】

式中、
Σ=合計
X=特定のグルコース値
M=グルコースの平均値
及び、n=グルコース値の個数。
【0014】
推定HbA1c濃度は、当業者に公知の多くの方法で算出できる。HbA1cの推定に使用できる方法の例としては、限定されないが、国際特許出願第PCT/US01/09884号(2001年10月4日出願、国際公開第01/72208号として公開)及びPCT/US2003/025053号(2004年2月19日出願、国際公開第2004/015539号として公開)(両方とも全ての目的において全内容が本願明細書に参照により援用される)に記載されるものが挙げられる。
【0015】
本発明に係る、HbA1c濃度推定のための典型的な方法は、好ましくは以下の3つのステップを含む。
1)データを前処理するステップ;
2)四つのうちの少なくとも一つの予め定められた式を用いてHbA1cを推定するステップ及び
3)サンプル選択分類基準を通じて推定値を検証するステップ。
データは好ましくは血糖データを含み、そのデータは第一所定期間にわたり収集される。第一所定期間は、好ましくは約45日〜約90日以上、より好ましくは約45日〜約60日の期間である。
【0016】
第一ステップにおいて、各患者のデータの前処理は、好ましくは、
血糖(BG)(mg/dL)の、血漿の場合から全血の場合への変換;
mg/dLにて測定されたBGのmmol/L単位への変換;
及び低血糖指数(RLO1)及び高血糖指数(RHI1)の計算を含む。各患者のデータの前処理は、好ましくは、
BG=PLASBG(mg/dL)/1.12の式による、血漿の場合からの全血の場合へのBG(mg/dL)変換;
BGMM=BG/18の式による、mg/dLにて測定されたBGのmmol/L単位への転換;
及びRLO1及びRHI1の計算を含む。データの前処理は、好ましくは更に定義される式:
Scale=[ln(BG)]1.0845−5.381(式中、BGはmg/dLの単位にて測定);
Risk1=22.765(Scale)(式中、RiskLO=Risk1(BGが約112.5未満)及びそれによりLBGIの危険度が存在、さもなくばRiskLO=0);
RiskHI=Risk1(BGが約112.5超)及びそれによりHBGIの危険度が存在、さもなくばRiskHI=0);
BGMM1=患者あたりの平均BGMM;
RLO1=患者あたりの平均RiskLO;
RHI1=患者あたりの平均RiskHI;
L06=コンピュータのみの平均RiskLO(夜間にリーディングされる。さもなくば測定ミス。);
N06、N12、N24は一定時間中におけるSMBGリーディングのパーセンテージ;
NC1=第一所定期間におけるSMBGリーディングの総数;
及びNDAYS=第一所定期間におけるSMBGリーディングの日数;を用いて行う。
N06、N12及びN24は、それぞれおよそ0:00〜6:59の時間、7:00〜12:59の時間、及び18:00〜23:59の時間のSMBGリーディングのパーセンテージ、又は他の所望のパーセンテージ及び時間間隔である。
【0017】
上記方法には好ましくは、更に予め定められた基準を用いた患者のコンピュータの高BG指数に応じた、グループ割り当てが含まれる。
該基準は、
RHI1≦約5.25又はRHI1≧約16の場合、グループ=0とする;
RHI1>約5.25及びRHI1<約7.0の場合、グループ=1とする;
RHI1≧約7.0及びRHI1<約8.5の場合、グループ=2とする;及び
RHI1≧約8.5及びRHI1<約16の場合、グループ=3とする;
のように定義される。
次に、上記方法は更に、予め定義された以下の式を用いて推定値を提供することを含んでもよい:
E0=0.55555×BGMM1+2.95;
E1=0.50567×BGMM1+0.074×L06+2.69;
E2=0.55555×BGMM1−0.074×L06+2.96;
E3=0.44000×BGMM1+0.035×L06+3.65;
及び、Group=1である場合はEST2=E1、又はGroup=2である場合はEST2=E2、Group=3である場合はEST2=E3、それ以外の場合はEST2=E0。
【0018】
ステップ2に関して、上記方法は好ましくは、予め定義された以下の基準を使用して推定値の更なる修正を提供することを含む。
失敗(L06)である場合、EST2=E0;
RLO1≦約0.5及びRHI1≦約2.0である場合、EST2=E0−0.25;
RLO1≦約2.5及びRHI1>約26である場合、EST2=E0−1.5×RLO1;
(RLO1/RHI1)<約0.25及びL06>1.3である場合、EST2=EST2−0.08。
【0019】
第一所定期間に回収されるBDデータに基づく患者のHbA1c推定値は、定義される4つの予め定められた式のうち少なくとも一つを使用してHbA1cを推定することにより可能となる。
HbA1c=上記で定義又は修正されたEST2;
HbA1c=0.809098×BGMM1+0.064540×RLO1−0.151673×RFI1+1.873325(式中、BGMM1が平均BG(mmol/L)であり、RLO1が低BG指数であり、RHI1が高BO指数である);
HbA1c=0.682742×HBA0+0.054377×RHI1+1.553277(式中、HBA0は、推定に先立ち、第二所定期間又は持続期間に取られた事前の参照HBA1cリーディングであり、RHI1が高BG指数である);又は、
HbA1c=0.41046×BGMM+4.0775(式中、BGMM1が平均BG(mmol/L)である)。第二所定期間は、好ましくは約2.5ヵ月〜6ヵ月、より好ましくは約2.5ヵ月〜約3.5ヵ月、又は任意の期間である。
【0020】
好ましくは、第一所定期間サンプルが以下の4つの基準のうちの少なくとも一つを満たす場合にのみ、HbA1c推定値のサンプル選択基準を使用して推定値の確証が行われる。
試験頻度基準(第一所定期間におけるサンプルが一日当たり少なくとも平均1.5試験〜2.5試験を含む);
他の試験頻度基準(その所定期間サンプルが約1.8リーディング/日(又は他の任意)の平均頻度によるリーディングを有する少なくとも第三の所定のサンプル期間又は持続期間を含む場合のみ);
データ基準の無作為性−1(RLO1/RHI1比率が≧約0.005である場合にのみHbA1c推定値が確認又は表示される(RLO1が低BG指数であり、RHI1が高BG指数である));及び、
データ基準の無作為性(N06≧約3%であり、N06が夜間のリーディングのパーセンテージである場合にのみ、HbA1c推定値が確認又は表示される)。第三の所定期間は好ましくは少なくとも35日、好ましくは約35日〜約40日、又は約35日〜第一所定期間の長さ分、又は任意の期間である。
【0021】
本発明において、プログラム112は、好ましくは処理ステーション106を制御し、一つ以上のステップを実行させる。プログラム112は、好ましくは標準のユーザーインタフェース(例えばメニュー及びダイアログ)を適用し、ユーザーがその機能にアクセスできるようにする。プログラム112は、設計の際いかなるコンピュータ言語でも作製でき、いかなるコンピュータ可読のメモリー装置(例えばコンピュータ処理装置に連結するハードディスク)にも格納できる。
【0022】
プログラム112は、好ましくは分析部及び報告部を含む。プログラム112から、エキスパートシステムツールと同様にデータ保存及び分析のアルゴリズムにアクセスが行われ、ユーザーによるプログラム112の処理の制御を援助する。データ送信装置102からの入力データはプログラム112に組み込まれ、分析装置は入力データを分析し、特異的な除外基準(表1を参照)が満たされるかどうかを決定する。除外基準が満たされない場合、後述するように、報告ユニットは好ましくは患者又は業務ユーザー(例えば医師、糖尿病の専門家又は看護婦)への報告を生じさせる。除外基準が満たされる場合、コンピュータプログラム112は好ましくは処理ステーション106及び/又は測定システムの可視ディスプレイ110に、報告がなぜ生じなかったかを示すテキストメッセージを送信する。例えば、特定の時間、非常に少数の血糖検査結果が記録され、処理ステーション106中に記録される場合は、報告がなされない。好ましくは、全ての所望の除外基準が満たされず、上記の通り算出される推定HbA1c濃度を含むときに、報告がなされる。推定HbA1c濃度は、約4%〜約12%であってよい。
【0023】
表1は、患者又は業務ユーザーが定義できる(左欄)、又は製造業者(右欄)によって設定されうる除外基準のリストを表す。
【表1】

除外基準のリスト
【0024】
図2は、本発明に係る、血糖コントロールのために生じる典型的な出力200であり、プログラム112によって処理ステーション106及び/又は測定システム上の可視ディスプレイ110に送信できる。出力200には、図示のように、グラフィック形式202、及び任意に表形式204が含まれる。グラフィック形式202は好ましくは、プログラム112によって算出される、対応する推定HbA1c濃度206の関数として、変動性指数208を報告する。
【0025】
グラフィック形式202は、図示のように、標的ゾーン210、警告ゾーン212及び危険ゾーン214の3つの領域を含む。グラフィック形式202の領域は、患者又は業務ユーザーの簡便性のために色付きでもよい。標的ゾーン210は、好ましくは約4%〜約7%のHbA1c濃度及び約0mg/dL〜約25mg/dLの変動性として定義される。警告ゾーン212は、好ましくは約7%〜約8%のHbA1c濃度及び約25mg/dL〜約75mg/dLの変動性として定義される。危険ゾーン214は、好ましくは約8%〜約12%のHbA1c濃度及び約75mg/dL〜約125mg/dLの変動性として定義される。
【0026】
結果が危険ゾーン214に位置する場合、患者は変動性及びHbA1c濃度を低下させるために担当の医師のアドバイスに従わなければならない。HbA1c濃度及び変動性が高い場合、患者は最初に変動性を減少させようとしうる。なぜなら、HbA1c濃度を低下させるための長期のプログラムの幾つかは、変動性を更に助長するからである。変動性を減らすため、患者は、一日のうち可変性の大きい時間帯の確認を試み、その時に糖尿病管理の処置がどのようなものであったかを知ることができる。例えば、処置後の可変性が非常に大きい場合は、患者はその時間帯により多くの試験を行うか、又はその患者が行っている処置を変更することができる。あるいは、患者は炭水化物の適切な定量ができない食事を摂取しているため、可変性が大きいこともありうるが、その場合には、注入するインシュリン量をより容易に算出できるよう、患者は定量化がより容易な食品を選択する必要がある。
【0027】
表形式204は好ましくは、それぞれ現在及び事前における、推定HbA1c濃度216、218それぞれ、並びに変動性指数220、222それぞれに関する数値を提供する。表形式204は、患者又は業務ユーザーによる使用における簡便化のため、グラフィック形式202の領域と同様に、色分けされてもよい。推定HbA1c濃度及び変動性指数は好ましくは、週間ベース及び/又は月間ベースで算出される。患者又は業務ユーザーは、プログラム112がHbA1c濃度及び変動性指数を算出する特定の日を設定できる。飽くまで典型例であるが、グラフィック形式は、現在のデータポイント224及び以前のデータポイント226を含み、表形式204にリスト化される(図2参照)。
【0028】
図3は、本発明に係る、プログラム112の使用方法のステップの典型的な配列を例示する流れ図である。方法300は、図1及び2に関して上記したように、またステップ310にて説明したように、第一に設置されたコンピュータシステム100を含む。設置されたコンピュータシステム100は、後述するように好ましくは糖尿病管理と関連した情報を入力、処理及び報告するための方法を含む。方法300の間、血糖検査成績は、好ましくはプログラム112に、例えばアップロード又はアクセス等をされることで取り込まれる。プログラム112は、後述するように、それから分析部を使用して情報を分析し、報告部を使用して結果を報告する。
【0029】
次に、一定期間中に収集された複数の血糖データは、ステップ320にて述べたようにコンピュータシステム100にロードされる。各血糖試験による日付及び時間ごとの記録を含むいかなる血糖測定システムも、複数の血糖データを収集するデータ送信装置102として使用でき、プログラム112を含む処理ステーション106との通信リンク104を介して転送できる。プログラム112は、血糖検査結果と共に時間及び日付を記録できる、いかなる血糖測定システムに組み込んでもよい。
【0030】
プログラム112は好ましくはその後、ステップ330によって述べたように、複数の血糖データを分析して特異質のHbA1c濃度を推定し、糖血症の特異質の変動性指数を提供する。患者又は業務ユーザーが設定した一定間隔(例えば毎週又は毎月)で、プログラム112は前の期間において入力された血糖データに基づいて特異質のHbA1c濃度の推定値の計算を行う。プログラム112はまた、好ましくは業務ユーザーによって定義される特異質の変動性指数の計算を行う。
【0031】
最後に、プログラム112は好ましくは、HbA1c濃度の関数として変動性指数を比較し、ステップ340で上記したように、また図2で示すように任意にテーブルを生成する。プログラム112は好ましくは、ユーザーが視認する処理ステーション106上の可視ディスプレイ110に出力200を送信する。出力200には、グラフィック形式202及び表形式204が含まれてもよい。グラフィック形式202は、好ましくは標的ゾーン210、警告ゾーン212及び危険ゾーン214の3つの領域を含む。グラフィック形式202の領域を色分けし、患者又は業務ユーザーの使用を簡便化してもよい。標的ゾーン210は、好ましくは約4%〜約7%のHbA1c濃度及び約0mg/dL〜約25mg/dLの変動性として定義される。警告ゾーン212は、好ましくは約7%〜約8%のHbA1c濃度及び約25mg/dL〜約75mg/dLの変動性として定義される。危険ゾーン214は、好ましくは約8%〜約12%のHbA1c濃度及び約75mg/dL〜約125mg/dLの変動性として定義される。表形式204は好ましくは、それぞれ現在及び事前における、推定HbA1c濃度216、218それぞれ、並びに変動性指数220、222それぞれに関する数値を提供する。表形式204は、患者又は業務ユーザーによる使用における簡便化のため、グラフィック形202の領域と同様に、色分けされてもよい。推定HbA1c濃度及び変動性指数は好ましくは、週間ベース及び/又は月間ベースで算出されてもよく、あるいは任意の期間としてもよい。
【0032】
以上、本発明に係る幾つかの実施態様を記載した。本願明細書において挙げられたいかなる特許又は特許出願の全開示内容は、本願明細書に参照により援用される。上記の詳細な説明及び実施例は、理解を明確にする目的でのみ記載している。そこからは何ら不必要な限定が認識されることはない。多くの変形が、本発明の範囲内において、記載された実施態様において可能であることは当業者に自明である。すなわち、本発明の範囲は本願明細書に記載される構造によっては限定されず、請求項の用語によって記載される構造、及びそれらの構造の均等物によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る、糖血症及び推定HbA1c濃度の変動性指数を提供できるシステム例を示すブロック線図。
【図2】本発明に係る、出力データが生じ、ディスプレイに送信され、それを血糖管理に使用する様子を示す例。
【図3】本発明に係る血糖管理のステップの典型的な配列例を示す流れ図。
【符号の説明】
【0034】
100 コンピュータシステム
102 データ送信装置
104 通信リンク
106 処理ステーション
108 データ入力装置
110 可視ディスプレイ
112 コンピュータプログラム
114 出力装置
200 出力
202 グラフィック形式
204 表形式
206 濃度
208 変動性指数
210 標的ゾーン
212 警告ゾーン
214 危険ゾーン
216 濃度
218 濃度
220 変動性指数
222 変動性指数
224 データポイント
226 データポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血糖データを管理する方法であって、
一定期間にわたり収集した複数の血糖データを準備するステップ、
少なくとも一つの除外基準を有する第一の所定のアルゴリズムを使用して複数の血糖データから特異質のHbA1c濃度を推定するステップ、
少なくとも一つの除外基準を有する第二の所定のアルゴリズムを使用して複数の血糖データから糖血症の特異質の変動性指数を算出するステップ、及び
糖血症の特異質の変動性指数及び特異質のHbA1c濃度を比較するステップ、を含んでなる方法。
【請求項2】
第一及び第二の前記アルゴリズムの一方又は両方における少なくとも一つの除外基準が、不十分なテストの履歴、1日あたりの指定された試験回数を超える頻度、及び日ベースにおけるデータの特定の無作為性の要件、のうちの少なくとも一つを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一及び第二の前記アルゴリズムの一方又は両方における少なくとも一つの除外基準が満たされないときに、糖血症の特異質の前記変動性指数及び特異質の前記HbA1c濃度を報告することを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記報告のステップが、特異質のHbA1c濃度と関連して糖血症の特異質の変動性指数を報告することを含んでなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記報告のステップが、週ベースにて、特異質のHbA1c濃度と関連して糖血症の特異質の変動性指数を提供することを含んでなる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記報告のステップが、月ベースにて、特異質のHbA1c濃度と関連して糖血症の特異質の変動性指数を提供することを含んでなる、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記報告のステップが、糖血症の特異質の変動性指数及び特異質のHbA1c濃度を表形式にて表示することを含んでなる、請求項3記載の方法。
【請求項8】
血糖データを管理する方法であって、
一定期間にわたり収集した複数の血糖データを準備するステップ、
少なくとも一つの除外基準を有する第一の所定アルゴリズムを使用して複数の血糖データから特異質のHbA1c濃度を推定するステップ、
少なくとも一つの除外基準を有する第二の所定アルゴリズムを使用して複数の血糖データから糖血症の特異質の変動性指数を算出するステップ、
特異質のHbA1c濃度の関数として、糖血症の特異質の変動性指数を決定するステップ、及び
報告された糖血症の特異質の変動性指数及び特異質のHbA1c濃度を提供し、一方で血糖コントロールの少なくとも一つの態様を表示するステップ、を含んでなる前記方法。
【請求項9】
血糖コントロールの少なくとも一つの前記態様が、血糖コントロールの標的ゾーン、警告ゾーン及び危険ゾーンを含んでなる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
第一及び第二のアルゴリズムの一方又は両方の少なくとも一つの除外基準が、試験の履歴、一日当たりの試験頻度、及び日ベースでのデータの無作為性のうちの少なくとも一つを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記決定のステップが、週ベースでの特異質のHbA1c濃度の関数として、糖血症の特異質の変動性指数を決定することを含んでなる、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記決定のステップが、月ベースでの特異質のHbA1c濃度の関数として、糖血症の特異質の変動性指数を決定することを含んでなる、請求項8記載の方法。
【請求項13】
血糖データを管理するシステムであって、
一定期間中に収集された複数の血糖データを受信し、
複数の血糖データから特異質のHbA1c濃度の推定値を提供し、
複数の血糖データから糖血症の特異質の変動性指数の算出値を提供し、及び
少なくとも一つの除外基準が満たされない場合には糖血症の特異質の変動性指数及び特異質のHbA1c濃度を報告するようプログラムされているプロセッサーを含む、前記システム。
【請求項14】
少なくとも一つの前記除外基準が、一日ベースでの試験履歴、一日当たりの試験頻度、及びデータの無作為性を含む、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサーが、糖血症の特異質の変動性指数を一週間ベースでの特異質のHbA1c濃度の関数として報告するようにプログラムされている、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサーが、糖血症の特異質の変動性指数を一ヶ月ベースでの特異質のHbA1c濃度の関数として報告するようにプログラムされている、請求項13記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサーが、表形式で糖血症の特異質の変動性指数及び特異質のHbA1c濃度を報告するようにプログラムされている、請求項13記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサーが、事前に測定されたHbA1c濃度から特異質のHbA1c濃度を推定するようにプログラムされている、請求項13記載のシステム。
【請求項19】
血糖測定装置を更に含んでなる、請求項13記載のシステム。
【請求項20】
記憶装置を更に含んでなる、請求項13記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−304088(P2007−304088A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−91128(P2007−91128)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】