糖度向上、糖成分調整および呈味調整に関する素材、方法および果実・野菜類
【課題】収穫後の果実や野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、および呈味が調整された果実または野菜を提供する。
【解決手段】ポリフェノールと糖質とを、通気性、浸透性および柔軟性を有するシート状の基材に含有させて成る。ポリフェノールはプロアントシアニジンから成り、基材に230乃至350mg/m2の割合で含有されていることが好ましい。また、糖質はトレハロースから成り、基材に4mg〜50000mg/m2の割合で含有されていることが好ましい。
【解決手段】ポリフェノールと糖質とを、通気性、浸透性および柔軟性を有するシート状の基材に含有させて成る。ポリフェノールはプロアントシアニジンから成り、基材に230乃至350mg/m2の割合で含有されていることが好ましい。また、糖質はトレハロースから成り、基材に4mg〜50000mg/m2の割合で含有されていることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、呈味が調整された果実または野菜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果実の糖度を上昇させるものとして、黒糖、果糖、砂糖を精製したサッカロ、ブドウ糖のうち少なくとも1種以上を水に溶解させた溶液から成り、果実の収穫前に、果実の糖度上昇溶液を土壌に散布または添加するもの(例えば、特許文献1参照)や、エチレンガス吸着材を含む果実袋(例えば、特許文献2参照)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−345340号公報
【特許文献2】特開2000−37142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の果実の糖度上昇溶液および特許文献2に記載の果実袋は、収穫前に使用されるものであり、収穫後の果実の糖度を向上させるものではないという課題があった。また、特許文献2に記載の果実袋では、エチレンガスを吸着するため、果実のエチレン生成を抑制して酸化傷害を防ぐことができるが、エチレンの生成を過剰に抑制し、果実の熟成を抑制して味覚を低下させるおそれがあるという課題もあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、収穫後の果実や野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、呈味が調整された果実または野菜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図14に示すように、野菜や果実が放出するエチレンは、植物の熟成に不可欠な植物ホルモンの一つである。植物は、熟成の過程で糖や香りを誘導する。その過程で、アミノ酸の一種であるメチオニンからエチレンを放出する。しかし、植物の体内でエチレンが過剰に生成されると、植物自身が酸化的な障害を受ける。そのため、エチレンの体内制御は、植物にとっては最も重要な機能の一つである。
【0007】
植物の体内に放出されたエチレンは、エチレン酸化酵素により分解され、体内濃度を制御しているといわれている。しかし、収穫の過程で水や酸素など栄養成分の供給が立たれると調整不能となり、エチレンが過剰に生成されて植物の体外に放出される。体外に放出されたエチレンは、自然環境(光や熱)により酸化分解され、体外から植物の酸化を促進して植物機能を低下させる。この様な現象は、摘果後に観察されるため、植物の成熟や保存にはエチレンの制御が不可欠である。
【0008】
エチレンによる酸化傷害は、エチレンガスおよび酸素ガスの反応物であるエチレンオキサイドに由来するため、抗酸化機能を有する物質を利用すれば、この二次的な酸化を防ぐことができる。本発明者らは、植物から放出されるエチレンの吸収を糖質で行い、過剰に生成されたエチレン酸化物による酸化作用をポリフェノールで抑制することにより、エチレンの制御を行う方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る糖度向上材は、ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする。また、本発明に係る糖成分調整材は、ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする。本発明に係る呈味調整材は、ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする。
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記ポリフェノールはフラボノイド系、クロロゲン酸系、フェニルカルボン酸系、エラグ酸系、リグナン系、クルクミン系、クマリン系のいずれであってもよいが、フラボノイド系が好ましい。
糖質は、例えば、グルコース、マルトース、ラクトース、フラクトースなどの還元糖であっても、砂糖(スクロース)、ラフィノースなどの非還元糖であっても、さらには、ソルビトール、キシリトール、マンニット、ラクチトール、マルチトールなどの糖アルコールであっても、パラチノース、トレハルロースなどのスクロース構造異性体であってもよい。しかしながら、本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記糖質はトレハロースから成ることが好ましい。この場合、トレハロースが植物から放出されるエチレンを吸収する。トレハロースは、3種類の異性体、α,α体、α,β体およびβ,β体のいずれであってもよい。
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記基材は通気性を有するシートから成ることが好ましい。シートは、袋状、箱状、折り畳まれた形状、ロール状、その他、いかなる形状から成っていてもよい。また、本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材は、浸透性を有することが好ましい。基材としては、ティッシュペーパー・段ボール紙・その他の紙、不織布、繊維製品、食物繊維など、材質に特に制限はなく、天然素材であっても人工素材であってもよい。基材は、物を包みやすいよう柔軟性を有することが好ましい。基材は、シートのほか、網から成っていてもよい。
本発明において、ポリフェノールおよび糖質は、それらの水溶液に基材を浸漬させる方法またはそれらの溶液を基材に噴霧させる方法などにより基材に含有させることができる。
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材は、ポリフェノールおよび糖質以外に、食塩その他のミネラル、抗菌剤、防カビ剤、脱臭剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0010】
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材は、主に収穫後の果実や野菜を包んで使用される。糖質が植物から放出されるエチレンを吸収し、ポリフェノールが過剰に生成されたエチレン酸化物による酸化作用を抑制するため、収穫後の果実や野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。また、これにより、糖成分の調整および呈味の調整もすることができる。
本発明の適用により糖度の向上、糖成分の調整または呈味の調整を行うのに適した果実の例としては、リンゴ、ナシ類、モモ、バナナ、トマト、スイカ、イチゴ、カキ、メロン、桜桃などが挙げられる。その野菜の例としては、にんじん・長いも・大根・蕪・ジャガイモ・サツマイモ等の根菜、ほうれん草・白菜・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・小松菜などの葉菜、きゅうり・トマト・ナス・オクラ・いんげん・ピーマン等の果菜が挙げられる。
【0011】
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記ポリフェノールはプロアントシアニジンから成ることが好ましい。果実や野菜は、摘果により自己防御機能が低下するため、収穫後の果実や野菜自身では腐敗菌などの増殖を防ぐことができない。しかし、本発明に係る糖度向上材および糖成分調整材では、プロアントシアニジンが高い抗菌作用を有するため、収穫後の果実や野菜に対する腐敗菌などの増殖を抑制することができ、カビ菌などの発生を防ぐことができる。このように、プロアントシアニジンの抗菌作用により、果実や野菜の自己防御機能を補うことができる。また、プロアントシアニジンにより、人体に与える影響を抑えることもできる。なお、プロアントシアニジンの原料は、ブドウの種子、黒大豆、その他、原料を問わないが、特にブドウ種子由来のプロアントシアニジンが好ましい。
【0012】
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記ポリフェノールは好適にはプロアントシアニジンから成り、前記基材に好適には10mg〜2500mg/m2、より好適には230乃至350mg/m2、さらに好適には250乃至300mg/m2の割合で含有される。前記糖質は好適にはトレハロースから成り、前記基材に好適には4mg〜50000mg/m2、より好適には4乃至8mg/m2、さらに好適には5.0g/m2の割合で含有される。これらの場合、好適な割合で含有されるほど、糖度の向上効果や、糖成分の調整作用、呈味調整作用、抗菌作用、エチレン吸収効果などをより高めることができる。
【0013】
本発明に係る糖成分調整材は、包んだ果物の糖成分の、時間の経過に伴う増減を糖の種類によって促進または抑制する効果がある。具体的には、本発明に係る糖成分調整材は、フルクトース濃度の減少を促進し、グルコース濃度の増加を促進し、スクロース濃度の減少を抑制する効果がある。この効果は、特に、リンゴを包んだ場合に顕著である。また、モモを包んだ場合にも、グルコース濃度の増加を促進する効果がある。
本発明に係る呈味調整材は、果物、特にリンゴを包んだとき、甘味、酸味、香りのバランスを改善し、呈味性を高めることができる。
【0014】
本発明に係る果物または野菜の糖度向上方法は、本発明に係る糖度向上材で果実または野菜を包むことを、特徴とする。また、本発明に係る糖度が向上した果実または野菜は、本発明に係る糖度向上材で包まれていることを、特徴とする。本発明に係る果物または野菜の糖度向上方法によれば、本発明に係る糖度が向上した果実または野菜を容易に製造することができる。
【0015】
本発明に係る果物または野菜の糖成分調整方法は、本発明に係る糖成分調整材で果実または野菜を包むことを、特徴とする。また、本発明に係る糖成分が調整された果実または野菜は、本発明に係る糖成分調整材で包まれていることを、特徴とする。本発明に係る果物または野菜の糖成分調整方法によれば、本発明に係る糖成分が調整された果実または野菜を容易に製造することができる。
【0016】
本発明に係る果物または野菜の呈味調整方法は、本発明に係る呈味調整材で果実または野菜を包むことを、特徴とする。また、本発明に係る呈味が調整された果実または野菜は、本発明に係る呈味調整材で包まれていることを、特徴とする。本発明に係る果物または野菜の呈味調整方法によれば、本発明に係る呈味が調整された果実または野菜を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収穫後の果実や野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、および呈味が調整された果実または野菜を提供することができる。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例の糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、および呈味が調整された果実または野菜について説明する。
本発明の実施例の糖度向上材は、ポリフェノールと糖質とを、通気性、浸透性および柔軟性を有するシート状の基材に含有させて成っている。
【0019】
[糖度向上試験−その1−リンゴの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、リンゴを使用して試験を行った。試験試料として、リンゴを本発明の実施例の糖度向上材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、そのままの状態のリンゴ(以下、「試験区2」という)とを準備した。
【0020】
実施例の糖度向上材は、以下の方法で準備した。
植物由来水溶性抽出ポリフェノール(ブドウ種子由来、プロアントシアニジン含有量95重量%、商品名「ロイコセレクト」、インデナ社製)3gと、トレハロース5gとを1000mlの蒸留水に溶解させて水溶液を調製した。その水溶液に、プロアントシアニジンの含有量が不織布あたり300mg/m2、トレハロースが5g/m2になるようにメッシュ状不織布(目付50g/m2)を浸した後、熱風乾燥機内で120℃で2時間乾燥させて糖度向上材を作製した。以下、特にことわらない限り、糖度向上材には、この方法で作製したものを用いた。
【0021】
各試験試料を冷蔵庫に保管し、糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の糖度を測定した。試験結果を表1および図1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1および図1に示すように、試験区1のリンゴは、保管期間全体にわたって、試験区2のリンゴと比較して、糖度が高くなることが確認された。特に、60日目には、試験区2のリンゴは腐敗して腐敗臭が高くなっているのに対し、試験区1のリンゴは腐敗しておらず、十分に食べることができる状態であった。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。また、腐敗の進行を遅らせることもできる。
【0024】
[糖度向上試験−その2−リンゴの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、リンゴを使用して同様の試験を行った。試験試料として、リンゴを本発明の実施例の糖度向上材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、酸素の通気性を低下させるために本発明の実施例の糖度向上材をポリエチレンフィルムでコートしたものでリンゴを包んだもの(以下、「試験区2」という)と、そのままの状態のリンゴ(以下、「試験区3」という)とを準備した。各試験試料を冷蔵庫に保管し、糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の糖度を測定した。各状態のリンゴを5個ずつ用意し、それぞれ平均糖度を計算して測定値を求めた。試験結果を表2および図2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2および図2に示すように、試験区1のリンゴは、保管期間全体にわたって、試験区2のリンゴおよび試験区3のリンゴと比較して、糖度が高くなることが確認された。特に、試験区3のリンゴは49日目から腐敗が始まり、試験区2のリンゴは59日目から腐敗が始まったのに対し、試験区1のリンゴは70日目に腐敗が始まったのが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。また、腐敗の進行を遅らせることもできる。
【0027】
[糖度向上試験−その3−バナナの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、バナナを使用して試験を行った。試験試料として、フィリピン産青バナナを本発明の実施例の糖度向上材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、バナナをそのままの状態でダンボールに入れたもの(以下、「試験区2」という)と、バナナをビニール袋に入れて密封したもの(以下、「試験区3」という)とを準備した。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の各試験試料の糖度を測定した。試験結果を表3および図3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
表3および図3に示すように、試験区1のバナナは、保管期間全体にわたって、試験区2および試験区3のバナナと比較して、糖度が高くなることが確認された。特に、試験区2のバナナは9日目、試験区3のバナナは7日目に腐敗し始めたのに対し、試験区1のバナナは17日目に腐敗が始まったのが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。また、腐敗の進行を遅らせることもできる。
【0030】
[糖度向上試験−その4−バナナの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、バナナを使用して試験を行った。試験試料として、フィリピン産バナナを本発明の実施例の糖度向上材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、ポリフェノールおよび糖質を含まないメッシュ状不織布でバナナを包んだもの(以下、「試験区2」という)とを準備した。試験区2のメッシュ状不織布は、蒸留水にメッシュ状不織布(目付50g/m2)を浸した後、熱風乾燥機内で120℃で2時間乾燥させて作製した。以下、この方法で作製したメッシュ状不織布を「非含有不織布」と称する。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の各試験試料の糖度を測定した。試験結果を図4に示す。
【0031】
図4に示すように、試験区1のバナナは、保管期間全体にわたって、試験区2のバナナと比較して、糖度が高くなることが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。
【0032】
[糖度向上試験−その5−バナナの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、バナナを使用して試験を行った。試験試料として、メッシュ状不織布(目付50g/m2)にトレハロース5g/m2、プロアントシアニジン0.25g/m2の割合で水溶液を含有させ乾燥させたものでバナナを包んだもの(以下、「試験区1」という)と、バナナを非含有不織布で包んだもの(以下、「試験区2」という)と、バナナを新聞紙で包んだもの(以下、「試験区3」という)とを準備した。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、測定開始日および14日経過後の各試験試料の糖度(Bx)を測定した。試験結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4に示すように、試験区1のバナナは、他のバナナと比較して、糖度(Bx)が高くなることが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。
【0035】
[糖度向上試験−その6−バナナの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、バナナを使用して試験を行った。試験試料として、本発明の実施例の糖度向上材でバナナを包んだもの(以下、「試験区1」という)と、非含有不織布でバナナを包んだもの(以下、「試験区2」という)とを準備した。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の各試験試料の糖度(Brix)を測定した。試験結果を図5に示す。
【0036】
図5に示すように、試験区1のバナナは、保管期間全体にわたって、試験区2のバナナと比較して、糖度が高くなることが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。
【0037】
[糖度向上試験−その7−野菜の場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、野菜を使用して試験を行った。野菜は、ほうれん草、にんじんを使用した。試験試料として、メッシュ状不織布(目付50g/m2)にトレハロース5g/m2、プロアントシアニジン300mg/m2の割合で水溶液を含浸させ乾燥させたもので野菜を包んだもの(以下、「試験区1」という)と、野菜を非含有不織布で包んだもの(以下、「試験区2」という)とを準備した。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の各試験試料の糖度(Brix)を測定した。ほうれん草の試験結果を図6に、にんじんの試験結果を図7に示す。
【0038】
図6および図7に示すように、試験区1の野菜は、ほぼ保管期間全体にわたって、試験区2と比較して、糖度が高くなることが確認された。このことから、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができるといえる。
【0039】
次に、本発明の実施例の糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、および糖成分が調整された果実または野菜について説明する。
糖成分調整材は、ポリフェノールと糖質とを、通気性、浸透性および柔軟性を有するシート状の基材に含有させて成っている。
【実施例2】
【0040】
[糖成分調整試験−その1−リンゴの場合]
本発明の実施例の糖成分調整材の、各糖成分を調整する効果を確認するために、リンゴを使用して試験を行った。試験試料として、リンゴを本発明の実施例の糖成分調整材のうち、シートが目付50g/m2の糖成分調整材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、非含有不織布で包んだリンゴ(以下、「試験区2」という)とを準備した。
【0041】
実施例の糖成分調整材は、以下の方法で準備した。
植物由来水溶性抽出ポリフェノール(ブドウ種子由来、プロアントシアニジン含有量95重量%、商品名「ロイコセレクト」、インデナ社製)3gと、トレハロース5gとを1000mlの蒸留水に溶解させて水溶液を調製した。その水溶液に、プロアントシアニジンの含有量が不織布あたり300mg/m2、トレハロースが5g/m2になるようにメッシュ状不織布を浸した後、熱風乾燥機内で120℃で2時間乾燥させて糖成分調整材を作製した。以下、特にことわらない限り、糖成分調整材には、この方法で作製したものを用いた。
【0042】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC;株式会社資生堂製、商品名「高速液体クロマトグラフ NANOSPACE SI-2」)により、測定開始日および10日経過後の、各試験試料の各糖成分の濃度を測定した。測定した糖成分は、フルクトース、グルコース、スクロースである。試験結果を、図8に示す。
【0043】
図8に示すように、フルクトースは、試験区2のリンゴと比較して、試験区1のリンゴで、濃度がやや低くなっていることが確認された。また、グルコースは、試験区1のリンゴで、濃度が高くなっていることが確認された。スクロースは、試験区1のリンゴで、10日間ほぼ同じ濃度が保たれていることが確認された。このように、本発明の実施例の糖成分調整材は、各糖成分を調整することができる。
【0044】
[糖成分調整試験−その2−モモの場合]
本発明の実施例の糖成分調整材の、各糖成分を調整する効果を確認するために、モモを使用して試験を行った。試験試料として、モモを本発明の実施例の糖成分調整材(目付50g/m2)で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、非含有不織布で包んだモモ(以下、「試験区2」という)とを準備した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC;株式会社資生堂製、商品名「高速液体クロマトグラフ NANOSPACE SI-2」)により、所定の期間経過後の、各試験試料の各糖成分の濃度を測定した。測定した糖成分は、グルコースである。試験結果を、図9に示す。
【0045】
図9に示すように、グルコースの濃度は、試験区2のモモと比較して、試験区1のモモで、濃度が高くなっていることが確認された。なお、試験区2のモモは、5日経過後に腐食した。このように、本発明の実施例の糖成分調整材は、各糖成分を調整することができる。
【0046】
次に、本発明の実施例の呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、および呈味が調整された果実または野菜について説明する。
呈味調整材は、ポリフェノールと糖質とを、通気性、浸透性および柔軟性を有するシート状の基材に含有させて成っている。
【実施例3】
【0047】
[呈味調整試験−リンゴの場合]
本発明の実施例の呈味調整材の、呈味を調整する効果を確認するために、リンゴを使用して試験を行った。試験試料として、リンゴを本発明の実施例の呈味調整材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、非含有不織布で包んだリンゴ(以下、「試験区2」という)とを準備した。
【0048】
実施例の呈味調整材は、以下の方法で準備した。
植物由来水溶性抽出ポリフェノール(ブドウ種子由来、プロアントシアニジン含有量95重量%、商品名「ロイコセレクト」、インデナ社製)3gと、トレハロース5gとを1000mlの蒸留水に溶解させて水溶液を調製した。その水溶液に、プロアントシアニジンの含有量が不織布あたり300mg/m2、トレハロースが5g/m2になるようにメッシュ状不織布(目付50g/m2)を浸した後、熱風乾燥機内で120℃で2時間乾燥させて呈味調整材を作製した。
【0049】
所定の期間(2日〜8週間)経過後の試験試料に対して、男女30名(平均年齢37歳)により食味官能試験を行った。各試験試料に対して、甘味、香り、酸味、総合評価を点数化し、それぞれの平均値を計算した。また、硬度(IBS)を硬度計により測定した。収穫適期前〜収穫適期後にAの木から収穫したリンゴ、収穫適期後にAの木から収穫したリンゴ、収穫適期前〜収穫適期後にBの木(Aとは別の木)から収穫したリンゴ、収穫適期後にBの木から収穫したリンゴについて、甘味、香り、酸味、総合評価、硬度の相関関係を調べ、その結果を図10乃至13に示す。
【0050】
図10に示すように、収穫適期前〜収穫適期後にAの木から収穫したリンゴでは、試験区1には、甘味、香り、総合評価に相関があったが、試験区2には相関がなかった。このことから、早摘みリンゴも適期のリンゴもともに、本発明の実施例の呈味調整材で包むことにより、甘く香りがする総合評価の高いリンゴができるといえる。また、試験区1には、硬度、香りに相関があった。これは、香りが良くなるにつれて果肉が軟らかくなることを示している。さらに、試験区1には、甘味、酸味に相関がなかったが、試験区2には相関があった。しかし、負の相関であることから、甘味が増加すると酸味が減少するため、リンゴの甘さは感じるが、味としては薄くなることを示している。
【0051】
図11に示すように、収穫適期後にAの木から収穫したリンゴでは、試験区1は、甘味、総合評価、香りに相関があったが、試験区2には相関がなかった。このことから、本発明の実施例の呈味調整材で適期のリンゴを包むことにより、甘く香りがする、より総合評価の高いリンゴができるといえる。また、試験区1には、甘味、酸味に相関がなかったが、試験区2には相関があった。しかし、負の相関であることから、甘味が増加すると酸味が減少するため、リンゴの甘さは感じるが、味としては薄くなることを示している。
【0052】
図12に示すように、収穫適期前〜収穫適期後にAとは別のBの木から収穫したリンゴでは、試験区2には、甘味、酸味、総合評価に相関があったが、試験区1には、酸味、総合評価に相関があった。また、試験区1は、甘味、総合評価には相関がないものの、甘味、総合評価で試験区2よりも全体的に点数が高い。このことから、早摘みリンゴも適期のリンゴもともに、本発明の実施例の呈味調整材で包むことにより、試験区2よりもおいしいリンゴができるといえる。
【0053】
図13に示すように、収穫適期後にBの木から収穫したリンゴでは、試験区1および試験区2とも、甘味、酸味、総合評価に相関があった。また、試験区1は、甘味、総合評価で試験区2よりも全体的に点数が高い。このことから、本発明の実施例の呈味調整材で適期のリンゴを包むことにより、試験区2よりもおいしいリンゴができるといえる。また、試験区1は、適期のリンゴでの相関が高いことから、早摘みリンゴより適期のリンゴに効果的であるといえる。
【0054】
図10乃至図13の結果から、木の個体間でバラツキがあるものの、本発明の実施例の呈味調整材でリンゴを包むことにより、甘味、酸味、香りのバランスが良くなり、総合評価が高くなる。また、本発明の実施例の呈味調整材でリンゴを包むことにより、これまでのリンゴよりも評価が高いリンゴができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例の糖度向上材の、リンゴの第1の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例の糖度向上材の、リンゴの第2の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例の糖度向上材の、バナナの第1の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例の糖度向上材の、バナナの第2の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例の糖度向上材の、バナナの第3の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例の糖度向上材の、ほうれん草の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例の糖度向上材の、にんじんの糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例の糖成分調整材の、リンゴの糖成分調整試験の結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例の糖成分調整材の、モモの糖成分調整試験の結果を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例の呈味調整材の、収穫適期前〜収穫適期後にAの木から収穫したリンゴの呈味調整試験の結果の(a)試験区1の香りと甘味、(b)甘味と総合、(c)香りと総合、(d)香りと硬度、(e)酸味と甘味、(f)試験区2の香りと甘味、(g)甘味と総合、(h)香りと総合、(i)香りと硬度、(j)酸味と甘味の相関を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例の呈味調整材の、収穫適期後にAの木から収穫したリンゴの呈味調整試験の結果の(a)試験区1の香りと甘味、(b)甘味と総合、(c)香りと総合、(d)酸味と甘味、(e)試験区2の香りと甘味、(f)甘味と総合、(g)香りと総合、(h)酸味と甘味の相関を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例の呈味調整材の、収穫適期前〜収穫適期後にAとは別のBの木から収穫したリンゴの呈味調整試験の結果の(a)試験区1の酸味と甘味、(b)甘味と総合、(c)酸味と総合、(d)香りと総合、(e)試験区2の酸味と甘味、(f)甘味と総合、(g)酸味と総合、(h)香りと総合の相関を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例の呈味調整材の、収穫適期後にAとは別のBの木から収穫したリンゴの呈味調整試験の結果の(a)試験区1の酸味と甘味、(b)甘味と総合、(c)酸味と総合、(d)香りと総合、(e)試験区2の酸味と甘味、(f)甘味と総合、(g)酸味と総合、(h)香りと総合の相関を示すグラフである。
【図14】植物の酸化分解機構を示す説明図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、呈味が調整された果実または野菜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果実の糖度を上昇させるものとして、黒糖、果糖、砂糖を精製したサッカロ、ブドウ糖のうち少なくとも1種以上を水に溶解させた溶液から成り、果実の収穫前に、果実の糖度上昇溶液を土壌に散布または添加するもの(例えば、特許文献1参照)や、エチレンガス吸着材を含む果実袋(例えば、特許文献2参照)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−345340号公報
【特許文献2】特開2000−37142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の果実の糖度上昇溶液および特許文献2に記載の果実袋は、収穫前に使用されるものであり、収穫後の果実の糖度を向上させるものではないという課題があった。また、特許文献2に記載の果実袋では、エチレンガスを吸着するため、果実のエチレン生成を抑制して酸化傷害を防ぐことができるが、エチレンの生成を過剰に抑制し、果実の熟成を抑制して味覚を低下させるおそれがあるという課題もあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、収穫後の果実や野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、呈味が調整された果実または野菜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図14に示すように、野菜や果実が放出するエチレンは、植物の熟成に不可欠な植物ホルモンの一つである。植物は、熟成の過程で糖や香りを誘導する。その過程で、アミノ酸の一種であるメチオニンからエチレンを放出する。しかし、植物の体内でエチレンが過剰に生成されると、植物自身が酸化的な障害を受ける。そのため、エチレンの体内制御は、植物にとっては最も重要な機能の一つである。
【0007】
植物の体内に放出されたエチレンは、エチレン酸化酵素により分解され、体内濃度を制御しているといわれている。しかし、収穫の過程で水や酸素など栄養成分の供給が立たれると調整不能となり、エチレンが過剰に生成されて植物の体外に放出される。体外に放出されたエチレンは、自然環境(光や熱)により酸化分解され、体外から植物の酸化を促進して植物機能を低下させる。この様な現象は、摘果後に観察されるため、植物の成熟や保存にはエチレンの制御が不可欠である。
【0008】
エチレンによる酸化傷害は、エチレンガスおよび酸素ガスの反応物であるエチレンオキサイドに由来するため、抗酸化機能を有する物質を利用すれば、この二次的な酸化を防ぐことができる。本発明者らは、植物から放出されるエチレンの吸収を糖質で行い、過剰に生成されたエチレン酸化物による酸化作用をポリフェノールで抑制することにより、エチレンの制御を行う方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る糖度向上材は、ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする。また、本発明に係る糖成分調整材は、ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする。本発明に係る呈味調整材は、ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする。
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記ポリフェノールはフラボノイド系、クロロゲン酸系、フェニルカルボン酸系、エラグ酸系、リグナン系、クルクミン系、クマリン系のいずれであってもよいが、フラボノイド系が好ましい。
糖質は、例えば、グルコース、マルトース、ラクトース、フラクトースなどの還元糖であっても、砂糖(スクロース)、ラフィノースなどの非還元糖であっても、さらには、ソルビトール、キシリトール、マンニット、ラクチトール、マルチトールなどの糖アルコールであっても、パラチノース、トレハルロースなどのスクロース構造異性体であってもよい。しかしながら、本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記糖質はトレハロースから成ることが好ましい。この場合、トレハロースが植物から放出されるエチレンを吸収する。トレハロースは、3種類の異性体、α,α体、α,β体およびβ,β体のいずれであってもよい。
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記基材は通気性を有するシートから成ることが好ましい。シートは、袋状、箱状、折り畳まれた形状、ロール状、その他、いかなる形状から成っていてもよい。また、本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材は、浸透性を有することが好ましい。基材としては、ティッシュペーパー・段ボール紙・その他の紙、不織布、繊維製品、食物繊維など、材質に特に制限はなく、天然素材であっても人工素材であってもよい。基材は、物を包みやすいよう柔軟性を有することが好ましい。基材は、シートのほか、網から成っていてもよい。
本発明において、ポリフェノールおよび糖質は、それらの水溶液に基材を浸漬させる方法またはそれらの溶液を基材に噴霧させる方法などにより基材に含有させることができる。
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材は、ポリフェノールおよび糖質以外に、食塩その他のミネラル、抗菌剤、防カビ剤、脱臭剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0010】
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材は、主に収穫後の果実や野菜を包んで使用される。糖質が植物から放出されるエチレンを吸収し、ポリフェノールが過剰に生成されたエチレン酸化物による酸化作用を抑制するため、収穫後の果実や野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。また、これにより、糖成分の調整および呈味の調整もすることができる。
本発明の適用により糖度の向上、糖成分の調整または呈味の調整を行うのに適した果実の例としては、リンゴ、ナシ類、モモ、バナナ、トマト、スイカ、イチゴ、カキ、メロン、桜桃などが挙げられる。その野菜の例としては、にんじん・長いも・大根・蕪・ジャガイモ・サツマイモ等の根菜、ほうれん草・白菜・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・小松菜などの葉菜、きゅうり・トマト・ナス・オクラ・いんげん・ピーマン等の果菜が挙げられる。
【0011】
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記ポリフェノールはプロアントシアニジンから成ることが好ましい。果実や野菜は、摘果により自己防御機能が低下するため、収穫後の果実や野菜自身では腐敗菌などの増殖を防ぐことができない。しかし、本発明に係る糖度向上材および糖成分調整材では、プロアントシアニジンが高い抗菌作用を有するため、収穫後の果実や野菜に対する腐敗菌などの増殖を抑制することができ、カビ菌などの発生を防ぐことができる。このように、プロアントシアニジンの抗菌作用により、果実や野菜の自己防御機能を補うことができる。また、プロアントシアニジンにより、人体に与える影響を抑えることもできる。なお、プロアントシアニジンの原料は、ブドウの種子、黒大豆、その他、原料を問わないが、特にブドウ種子由来のプロアントシアニジンが好ましい。
【0012】
本発明に係る糖度向上材、糖成分調整材および呈味調整材で、前記ポリフェノールは好適にはプロアントシアニジンから成り、前記基材に好適には10mg〜2500mg/m2、より好適には230乃至350mg/m2、さらに好適には250乃至300mg/m2の割合で含有される。前記糖質は好適にはトレハロースから成り、前記基材に好適には4mg〜50000mg/m2、より好適には4乃至8mg/m2、さらに好適には5.0g/m2の割合で含有される。これらの場合、好適な割合で含有されるほど、糖度の向上効果や、糖成分の調整作用、呈味調整作用、抗菌作用、エチレン吸収効果などをより高めることができる。
【0013】
本発明に係る糖成分調整材は、包んだ果物の糖成分の、時間の経過に伴う増減を糖の種類によって促進または抑制する効果がある。具体的には、本発明に係る糖成分調整材は、フルクトース濃度の減少を促進し、グルコース濃度の増加を促進し、スクロース濃度の減少を抑制する効果がある。この効果は、特に、リンゴを包んだ場合に顕著である。また、モモを包んだ場合にも、グルコース濃度の増加を促進する効果がある。
本発明に係る呈味調整材は、果物、特にリンゴを包んだとき、甘味、酸味、香りのバランスを改善し、呈味性を高めることができる。
【0014】
本発明に係る果物または野菜の糖度向上方法は、本発明に係る糖度向上材で果実または野菜を包むことを、特徴とする。また、本発明に係る糖度が向上した果実または野菜は、本発明に係る糖度向上材で包まれていることを、特徴とする。本発明に係る果物または野菜の糖度向上方法によれば、本発明に係る糖度が向上した果実または野菜を容易に製造することができる。
【0015】
本発明に係る果物または野菜の糖成分調整方法は、本発明に係る糖成分調整材で果実または野菜を包むことを、特徴とする。また、本発明に係る糖成分が調整された果実または野菜は、本発明に係る糖成分調整材で包まれていることを、特徴とする。本発明に係る果物または野菜の糖成分調整方法によれば、本発明に係る糖成分が調整された果実または野菜を容易に製造することができる。
【0016】
本発明に係る果物または野菜の呈味調整方法は、本発明に係る呈味調整材で果実または野菜を包むことを、特徴とする。また、本発明に係る呈味が調整された果実または野菜は、本発明に係る呈味調整材で包まれていることを、特徴とする。本発明に係る果物または野菜の呈味調整方法によれば、本発明に係る呈味が調整された果実または野菜を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収穫後の果実や野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、および呈味が調整された果実または野菜を提供することができる。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例の糖度向上材、果物または野菜の糖度向上方法、糖度が向上した果実または野菜、糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、糖成分が調整された果実または野菜、呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、および呈味が調整された果実または野菜について説明する。
本発明の実施例の糖度向上材は、ポリフェノールと糖質とを、通気性、浸透性および柔軟性を有するシート状の基材に含有させて成っている。
【0019】
[糖度向上試験−その1−リンゴの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、リンゴを使用して試験を行った。試験試料として、リンゴを本発明の実施例の糖度向上材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、そのままの状態のリンゴ(以下、「試験区2」という)とを準備した。
【0020】
実施例の糖度向上材は、以下の方法で準備した。
植物由来水溶性抽出ポリフェノール(ブドウ種子由来、プロアントシアニジン含有量95重量%、商品名「ロイコセレクト」、インデナ社製)3gと、トレハロース5gとを1000mlの蒸留水に溶解させて水溶液を調製した。その水溶液に、プロアントシアニジンの含有量が不織布あたり300mg/m2、トレハロースが5g/m2になるようにメッシュ状不織布(目付50g/m2)を浸した後、熱風乾燥機内で120℃で2時間乾燥させて糖度向上材を作製した。以下、特にことわらない限り、糖度向上材には、この方法で作製したものを用いた。
【0021】
各試験試料を冷蔵庫に保管し、糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の糖度を測定した。試験結果を表1および図1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1および図1に示すように、試験区1のリンゴは、保管期間全体にわたって、試験区2のリンゴと比較して、糖度が高くなることが確認された。特に、60日目には、試験区2のリンゴは腐敗して腐敗臭が高くなっているのに対し、試験区1のリンゴは腐敗しておらず、十分に食べることができる状態であった。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。また、腐敗の進行を遅らせることもできる。
【0024】
[糖度向上試験−その2−リンゴの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、リンゴを使用して同様の試験を行った。試験試料として、リンゴを本発明の実施例の糖度向上材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、酸素の通気性を低下させるために本発明の実施例の糖度向上材をポリエチレンフィルムでコートしたものでリンゴを包んだもの(以下、「試験区2」という)と、そのままの状態のリンゴ(以下、「試験区3」という)とを準備した。各試験試料を冷蔵庫に保管し、糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の糖度を測定した。各状態のリンゴを5個ずつ用意し、それぞれ平均糖度を計算して測定値を求めた。試験結果を表2および図2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2および図2に示すように、試験区1のリンゴは、保管期間全体にわたって、試験区2のリンゴおよび試験区3のリンゴと比較して、糖度が高くなることが確認された。特に、試験区3のリンゴは49日目から腐敗が始まり、試験区2のリンゴは59日目から腐敗が始まったのに対し、試験区1のリンゴは70日目に腐敗が始まったのが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。また、腐敗の進行を遅らせることもできる。
【0027】
[糖度向上試験−その3−バナナの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、バナナを使用して試験を行った。試験試料として、フィリピン産青バナナを本発明の実施例の糖度向上材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、バナナをそのままの状態でダンボールに入れたもの(以下、「試験区2」という)と、バナナをビニール袋に入れて密封したもの(以下、「試験区3」という)とを準備した。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の各試験試料の糖度を測定した。試験結果を表3および図3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
表3および図3に示すように、試験区1のバナナは、保管期間全体にわたって、試験区2および試験区3のバナナと比較して、糖度が高くなることが確認された。特に、試験区2のバナナは9日目、試験区3のバナナは7日目に腐敗し始めたのに対し、試験区1のバナナは17日目に腐敗が始まったのが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。また、腐敗の進行を遅らせることもできる。
【0030】
[糖度向上試験−その4−バナナの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、バナナを使用して試験を行った。試験試料として、フィリピン産バナナを本発明の実施例の糖度向上材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、ポリフェノールおよび糖質を含まないメッシュ状不織布でバナナを包んだもの(以下、「試験区2」という)とを準備した。試験区2のメッシュ状不織布は、蒸留水にメッシュ状不織布(目付50g/m2)を浸した後、熱風乾燥機内で120℃で2時間乾燥させて作製した。以下、この方法で作製したメッシュ状不織布を「非含有不織布」と称する。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の各試験試料の糖度を測定した。試験結果を図4に示す。
【0031】
図4に示すように、試験区1のバナナは、保管期間全体にわたって、試験区2のバナナと比較して、糖度が高くなることが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。
【0032】
[糖度向上試験−その5−バナナの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、バナナを使用して試験を行った。試験試料として、メッシュ状不織布(目付50g/m2)にトレハロース5g/m2、プロアントシアニジン0.25g/m2の割合で水溶液を含有させ乾燥させたものでバナナを包んだもの(以下、「試験区1」という)と、バナナを非含有不織布で包んだもの(以下、「試験区2」という)と、バナナを新聞紙で包んだもの(以下、「試験区3」という)とを準備した。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、測定開始日および14日経過後の各試験試料の糖度(Bx)を測定した。試験結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4に示すように、試験区1のバナナは、他のバナナと比較して、糖度(Bx)が高くなることが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。
【0035】
[糖度向上試験−その6−バナナの場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、バナナを使用して試験を行った。試験試料として、本発明の実施例の糖度向上材でバナナを包んだもの(以下、「試験区1」という)と、非含有不織布でバナナを包んだもの(以下、「試験区2」という)とを準備した。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の各試験試料の糖度(Brix)を測定した。試験結果を図5に示す。
【0036】
図5に示すように、試験区1のバナナは、保管期間全体にわたって、試験区2のバナナと比較して、糖度が高くなることが確認された。このように、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の果実の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができる。
【0037】
[糖度向上試験−その7−野菜の場合]
本発明の実施例の糖度向上材の、糖度を向上させる効果を確認するために、野菜を使用して試験を行った。野菜は、ほうれん草、にんじんを使用した。試験試料として、メッシュ状不織布(目付50g/m2)にトレハロース5g/m2、プロアントシアニジン300mg/m2の割合で水溶液を含浸させ乾燥させたもので野菜を包んだもの(以下、「試験区1」という)と、野菜を非含有不織布で包んだもの(以下、「試験区2」という)とを準備した。糖度測定器(京都電子工業株式会社製の商品名「ポータブル糖度計 RA−250シリーズ」)により、所定の期間経過後の各試験試料の糖度(Brix)を測定した。ほうれん草の試験結果を図6に、にんじんの試験結果を図7に示す。
【0038】
図6および図7に示すように、試験区1の野菜は、ほぼ保管期間全体にわたって、試験区2と比較して、糖度が高くなることが確認された。このことから、本発明の実施例の糖度向上材は、収穫後の野菜の酸化傷害を防ぐとともに、糖度を向上させることができるといえる。
【0039】
次に、本発明の実施例の糖成分調整材、果物または野菜の糖成分調整方法、および糖成分が調整された果実または野菜について説明する。
糖成分調整材は、ポリフェノールと糖質とを、通気性、浸透性および柔軟性を有するシート状の基材に含有させて成っている。
【実施例2】
【0040】
[糖成分調整試験−その1−リンゴの場合]
本発明の実施例の糖成分調整材の、各糖成分を調整する効果を確認するために、リンゴを使用して試験を行った。試験試料として、リンゴを本発明の実施例の糖成分調整材のうち、シートが目付50g/m2の糖成分調整材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、非含有不織布で包んだリンゴ(以下、「試験区2」という)とを準備した。
【0041】
実施例の糖成分調整材は、以下の方法で準備した。
植物由来水溶性抽出ポリフェノール(ブドウ種子由来、プロアントシアニジン含有量95重量%、商品名「ロイコセレクト」、インデナ社製)3gと、トレハロース5gとを1000mlの蒸留水に溶解させて水溶液を調製した。その水溶液に、プロアントシアニジンの含有量が不織布あたり300mg/m2、トレハロースが5g/m2になるようにメッシュ状不織布を浸した後、熱風乾燥機内で120℃で2時間乾燥させて糖成分調整材を作製した。以下、特にことわらない限り、糖成分調整材には、この方法で作製したものを用いた。
【0042】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC;株式会社資生堂製、商品名「高速液体クロマトグラフ NANOSPACE SI-2」)により、測定開始日および10日経過後の、各試験試料の各糖成分の濃度を測定した。測定した糖成分は、フルクトース、グルコース、スクロースである。試験結果を、図8に示す。
【0043】
図8に示すように、フルクトースは、試験区2のリンゴと比較して、試験区1のリンゴで、濃度がやや低くなっていることが確認された。また、グルコースは、試験区1のリンゴで、濃度が高くなっていることが確認された。スクロースは、試験区1のリンゴで、10日間ほぼ同じ濃度が保たれていることが確認された。このように、本発明の実施例の糖成分調整材は、各糖成分を調整することができる。
【0044】
[糖成分調整試験−その2−モモの場合]
本発明の実施例の糖成分調整材の、各糖成分を調整する効果を確認するために、モモを使用して試験を行った。試験試料として、モモを本発明の実施例の糖成分調整材(目付50g/m2)で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、非含有不織布で包んだモモ(以下、「試験区2」という)とを準備した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC;株式会社資生堂製、商品名「高速液体クロマトグラフ NANOSPACE SI-2」)により、所定の期間経過後の、各試験試料の各糖成分の濃度を測定した。測定した糖成分は、グルコースである。試験結果を、図9に示す。
【0045】
図9に示すように、グルコースの濃度は、試験区2のモモと比較して、試験区1のモモで、濃度が高くなっていることが確認された。なお、試験区2のモモは、5日経過後に腐食した。このように、本発明の実施例の糖成分調整材は、各糖成分を調整することができる。
【0046】
次に、本発明の実施例の呈味調整材、果物または野菜の呈味調整方法、および呈味が調整された果実または野菜について説明する。
呈味調整材は、ポリフェノールと糖質とを、通気性、浸透性および柔軟性を有するシート状の基材に含有させて成っている。
【実施例3】
【0047】
[呈味調整試験−リンゴの場合]
本発明の実施例の呈味調整材の、呈味を調整する効果を確認するために、リンゴを使用して試験を行った。試験試料として、リンゴを本発明の実施例の呈味調整材で包んだもの(以下、「試験区1」という)と、非含有不織布で包んだリンゴ(以下、「試験区2」という)とを準備した。
【0048】
実施例の呈味調整材は、以下の方法で準備した。
植物由来水溶性抽出ポリフェノール(ブドウ種子由来、プロアントシアニジン含有量95重量%、商品名「ロイコセレクト」、インデナ社製)3gと、トレハロース5gとを1000mlの蒸留水に溶解させて水溶液を調製した。その水溶液に、プロアントシアニジンの含有量が不織布あたり300mg/m2、トレハロースが5g/m2になるようにメッシュ状不織布(目付50g/m2)を浸した後、熱風乾燥機内で120℃で2時間乾燥させて呈味調整材を作製した。
【0049】
所定の期間(2日〜8週間)経過後の試験試料に対して、男女30名(平均年齢37歳)により食味官能試験を行った。各試験試料に対して、甘味、香り、酸味、総合評価を点数化し、それぞれの平均値を計算した。また、硬度(IBS)を硬度計により測定した。収穫適期前〜収穫適期後にAの木から収穫したリンゴ、収穫適期後にAの木から収穫したリンゴ、収穫適期前〜収穫適期後にBの木(Aとは別の木)から収穫したリンゴ、収穫適期後にBの木から収穫したリンゴについて、甘味、香り、酸味、総合評価、硬度の相関関係を調べ、その結果を図10乃至13に示す。
【0050】
図10に示すように、収穫適期前〜収穫適期後にAの木から収穫したリンゴでは、試験区1には、甘味、香り、総合評価に相関があったが、試験区2には相関がなかった。このことから、早摘みリンゴも適期のリンゴもともに、本発明の実施例の呈味調整材で包むことにより、甘く香りがする総合評価の高いリンゴができるといえる。また、試験区1には、硬度、香りに相関があった。これは、香りが良くなるにつれて果肉が軟らかくなることを示している。さらに、試験区1には、甘味、酸味に相関がなかったが、試験区2には相関があった。しかし、負の相関であることから、甘味が増加すると酸味が減少するため、リンゴの甘さは感じるが、味としては薄くなることを示している。
【0051】
図11に示すように、収穫適期後にAの木から収穫したリンゴでは、試験区1は、甘味、総合評価、香りに相関があったが、試験区2には相関がなかった。このことから、本発明の実施例の呈味調整材で適期のリンゴを包むことにより、甘く香りがする、より総合評価の高いリンゴができるといえる。また、試験区1には、甘味、酸味に相関がなかったが、試験区2には相関があった。しかし、負の相関であることから、甘味が増加すると酸味が減少するため、リンゴの甘さは感じるが、味としては薄くなることを示している。
【0052】
図12に示すように、収穫適期前〜収穫適期後にAとは別のBの木から収穫したリンゴでは、試験区2には、甘味、酸味、総合評価に相関があったが、試験区1には、酸味、総合評価に相関があった。また、試験区1は、甘味、総合評価には相関がないものの、甘味、総合評価で試験区2よりも全体的に点数が高い。このことから、早摘みリンゴも適期のリンゴもともに、本発明の実施例の呈味調整材で包むことにより、試験区2よりもおいしいリンゴができるといえる。
【0053】
図13に示すように、収穫適期後にBの木から収穫したリンゴでは、試験区1および試験区2とも、甘味、酸味、総合評価に相関があった。また、試験区1は、甘味、総合評価で試験区2よりも全体的に点数が高い。このことから、本発明の実施例の呈味調整材で適期のリンゴを包むことにより、試験区2よりもおいしいリンゴができるといえる。また、試験区1は、適期のリンゴでの相関が高いことから、早摘みリンゴより適期のリンゴに効果的であるといえる。
【0054】
図10乃至図13の結果から、木の個体間でバラツキがあるものの、本発明の実施例の呈味調整材でリンゴを包むことにより、甘味、酸味、香りのバランスが良くなり、総合評価が高くなる。また、本発明の実施例の呈味調整材でリンゴを包むことにより、これまでのリンゴよりも評価が高いリンゴができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例の糖度向上材の、リンゴの第1の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例の糖度向上材の、リンゴの第2の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例の糖度向上材の、バナナの第1の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例の糖度向上材の、バナナの第2の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例の糖度向上材の、バナナの第3の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例の糖度向上材の、ほうれん草の糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例の糖度向上材の、にんじんの糖度向上試験の結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例の糖成分調整材の、リンゴの糖成分調整試験の結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例の糖成分調整材の、モモの糖成分調整試験の結果を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例の呈味調整材の、収穫適期前〜収穫適期後にAの木から収穫したリンゴの呈味調整試験の結果の(a)試験区1の香りと甘味、(b)甘味と総合、(c)香りと総合、(d)香りと硬度、(e)酸味と甘味、(f)試験区2の香りと甘味、(g)甘味と総合、(h)香りと総合、(i)香りと硬度、(j)酸味と甘味の相関を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例の呈味調整材の、収穫適期後にAの木から収穫したリンゴの呈味調整試験の結果の(a)試験区1の香りと甘味、(b)甘味と総合、(c)香りと総合、(d)酸味と甘味、(e)試験区2の香りと甘味、(f)甘味と総合、(g)香りと総合、(h)酸味と甘味の相関を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例の呈味調整材の、収穫適期前〜収穫適期後にAとは別のBの木から収穫したリンゴの呈味調整試験の結果の(a)試験区1の酸味と甘味、(b)甘味と総合、(c)酸味と総合、(d)香りと総合、(e)試験区2の酸味と甘味、(f)甘味と総合、(g)酸味と総合、(h)香りと総合の相関を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例の呈味調整材の、収穫適期後にAとは別のBの木から収穫したリンゴの呈味調整試験の結果の(a)試験区1の酸味と甘味、(b)甘味と総合、(c)酸味と総合、(d)香りと総合、(e)試験区2の酸味と甘味、(f)甘味と総合、(g)酸味と総合、(h)香りと総合の相関を示すグラフである。
【図14】植物の酸化分解機構を示す説明図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする糖度向上材。
【請求項2】
前記ポリフェノールはプロアントシアニジンから成ることを、特徴とする請求項1記載の糖度向上材。
【請求項3】
前記糖質はトレハロースから成ることを、特徴とする請求項2記載の糖度向上材。
【請求項4】
前記基材は通気性を有するシートから成ることを、特徴とする請求項3記載の糖度向上材。
【請求項5】
前記ポリフェノールは前記基材に230乃至350mg/m2の割合で含有されており、
前記糖質は前記基材に4乃至8mg/m2の割合で含有されていることを、
特徴とする請求項4記載の糖度向上材。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の糖度向上材で果実または野菜を包むことを、特徴とする果物または野菜の糖度向上方法。
【請求項7】
請求項1、2、3、4または5記載の糖度向上材で包まれていることを、特徴とする糖度が向上した果実または野菜。
【請求項8】
ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする糖成分調整材。
【請求項9】
前記ポリフェノールはプロアントシアニジンから成ることを、特徴とする請求項8記載の糖成分調整材。
【請求項10】
前記糖質はトレハロースから成ることを、特徴とする請求項9記載の糖成分調整材。
【請求項11】
前記基材は通気性を有するシートから成ることを、特徴とする請求項10記載の糖成分調整材。
【請求項12】
前記ポリフェノールは前記基材に230乃至350mg/m2の割合で含有されており、
前記糖質は前記基材に4乃至8mg/m2の割合で含有されていることを、
特徴とする請求項11記載の糖成分調整材。
【請求項13】
請求項8、9、10、11または12記載の糖成分調整材で果実または野菜を包むことを、特徴とする果物または野菜の糖成分調整方法。
【請求項14】
請求項8、9、10、11または12記載の糖成分調整材で包まれていることを、特徴とする糖成分が調整された果実または野菜。
【請求項15】
ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする呈味調整材。
【請求項16】
請求項15記載の呈味調整材で果実または野菜を包むことを、特徴とする果物または野菜の呈味調整方法。
【請求項17】
請求項15記載の呈味調整材で包まれていることを、特徴とする呈味が調整された果実または野菜。
【請求項1】
ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする糖度向上材。
【請求項2】
前記ポリフェノールはプロアントシアニジンから成ることを、特徴とする請求項1記載の糖度向上材。
【請求項3】
前記糖質はトレハロースから成ることを、特徴とする請求項2記載の糖度向上材。
【請求項4】
前記基材は通気性を有するシートから成ることを、特徴とする請求項3記載の糖度向上材。
【請求項5】
前記ポリフェノールは前記基材に230乃至350mg/m2の割合で含有されており、
前記糖質は前記基材に4乃至8mg/m2の割合で含有されていることを、
特徴とする請求項4記載の糖度向上材。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の糖度向上材で果実または野菜を包むことを、特徴とする果物または野菜の糖度向上方法。
【請求項7】
請求項1、2、3、4または5記載の糖度向上材で包まれていることを、特徴とする糖度が向上した果実または野菜。
【請求項8】
ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする糖成分調整材。
【請求項9】
前記ポリフェノールはプロアントシアニジンから成ることを、特徴とする請求項8記載の糖成分調整材。
【請求項10】
前記糖質はトレハロースから成ることを、特徴とする請求項9記載の糖成分調整材。
【請求項11】
前記基材は通気性を有するシートから成ることを、特徴とする請求項10記載の糖成分調整材。
【請求項12】
前記ポリフェノールは前記基材に230乃至350mg/m2の割合で含有されており、
前記糖質は前記基材に4乃至8mg/m2の割合で含有されていることを、
特徴とする請求項11記載の糖成分調整材。
【請求項13】
請求項8、9、10、11または12記載の糖成分調整材で果実または野菜を包むことを、特徴とする果物または野菜の糖成分調整方法。
【請求項14】
請求項8、9、10、11または12記載の糖成分調整材で包まれていることを、特徴とする糖成分が調整された果実または野菜。
【請求項15】
ポリフェノールと糖質とを基材に含有させて成ることを、特徴とする呈味調整材。
【請求項16】
請求項15記載の呈味調整材で果実または野菜を包むことを、特徴とする果物または野菜の呈味調整方法。
【請求項17】
請求項15記載の呈味調整材で包まれていることを、特徴とする呈味が調整された果実または野菜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−45986(P2010−45986A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211206(P2008−211206)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(595159264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(595159264)
【Fターム(参考)】
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