説明

糖残基を有する組織細胞に特異的な化合物

【課題】本発明は、糖構造を特異的に認識する細胞にオリゴヌクレオチドや薬剤を特異的に移行させることができる化合物を提供するものである。
【解決手段】本発明は、下記一般式(I)、
【化1】


(上記式中、X−W−基は、オリゴヌクレオチドもしくはその誘導体又は薬剤を含有する部分を表し、T1、T2は、スペーサー部分を表し、T3、T4、およびT5は、同一または異なっていてもよく、それぞれ−CONH−、−NHCO−、または−O−を表し、T6は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、又は、−O−基を表し、F1およびF2は、糖を含有する部分を表し、mは、0〜10の整数を表し、nは、0〜4の整数を表し、pは、0〜4の整数を表し、qは、0〜4の整数を表し、そしてrは、1を表す)で表される化合物、その塩又はその溶媒和物に関する。本発明の化合物は、組織細胞に特異的な、抗ウイルス剤や抗腫瘍剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、その末端に糖残基を有する組織細胞に特異的な化合物に関し、更に詳細にはこの化合物はオリゴヌクレオチド等が導入されたオリゴヌクレオチド等の誘導体であり、アンチセンスなどによる組織、特に臓器に特異的な治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、オリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチド、を用いて目的とする遺伝子の発現を抑制等する試みがなされている。しかしながら、オリゴヌクレオチドを生体に直接投与すると、血液中で容易に分解されるか、またはその大部分が尿中に容易に排泄されてしまうことが指摘されていた。また、オリゴヌクレオチドは、目的とする病変臓器細胞に取り込まれず、分解または排泄されてしまうことも指摘されていた。かかる問題を解決するため、アシアロオロソムコイドとポリ−L−リジンのコンジュゲートを作成し、ヒトB型肝炎ウイルスに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドとイオン的相互作用に基づいた複合体を形成させることにより、そのウイルス性タンパク質の生合成抑制効果を増強できること(G. Y. Wu and C. H. Wu.(1992) J. Biol. Chem. 267, 12436) および同様な複合体を用いてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を肝臓に送達し、発現させ得ること(G. Y. Wu and C. H. Wu.(1991) Biotherapy 3, 879)が報告されている。これらの技術はWO93/04701号および同92/20316号に記載されている。また、遺伝子の二重らせん構造内に入り込む化合物(すなわち、インターカレータ)を糖誘導体に共有結合させ遺伝子と混合することにより調整した複合体が、糖を特異的に認識する細胞に取り込まれ、効率よく遺伝情報を発現させる上で有用であることがWO93/19768号に記載されている。Nakaiらは、アンチセンス核酸の複合体を静注し、この複合体の肝臓移行量をシュミレーションした結果、複合体が血中で解離しやすいため、これら非共有結合による複合体では、十分な肝移行性を得られないことを示した。(D. Nakai, T. Seita, andY. Sugiyama.(1995) PHARM JAPAN, 11, 27)。
【0003】一方、カルボキシメチル化したデキストランにガラクトースを導入したもの(M. Nishikawa, et al.(1993) Pharmaceutical Research 10 1253)およびポリ−L−グルタミン酸にガラクトースを導入したもの(H. Hirabayashi, et al. (1994)日本薬学会第114年会 一般講演30(6)15−4)が、肝実質細胞に選択的に分布することが知られている。また、本発明者らは、オリゴヌクレオチドと、その末端に単糖残基を有するアミダイト誘導体との複合体が、臓器特異的な移行性を示し、かつ、臓器細胞における特定遺伝子の発現を抑制等をすることを報告してきた(WO96/30386)。しかし、このアミダイド誘導体は親水性の部分が多く含まれているため吸湿性が高く、水分の混入しやすかった。そのため、水分による分解が生じやすく不安定であり、アンチセンス核酸とのコンジュゲートの生成量がかならずしも一定ではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、水分などに対して安定で、かつ、アンチセンス核酸とのコンジュゲートの生成量が一定している、オリゴヌクレオチドを臓器、特に肝臓、細胞内に取り込ませることができる化合物を提供することをその目的とする。
【0005】
【課題を解決する手段】本発明は、下記の一般式(I)、
【0006】
【化11】


(前記化1と同じ)
【0007】(上記式中、Wは、炭素数1〜10の直鎖又は分枝したアルキレン基を表し、Xは、下記式(II)、
【0008】
【化12】


(前記化2と同じ)
【0009】(上記式中、Zは、オリゴヌクレオチドまたはその誘導体を表す)で表される基を表すか、又は、Xと隣接するWが一緒になって薬剤を表し、T1は、−(CH2)s−(ここで、sは2〜10の整数を表す)、または、−(CH2CH2O)t−(CH22−(ここで、tは1〜3の整数を表す)を表し、T2は、−(CH2)u−(ここで、uは2〜10の整数を表す)、−(CH2CH2O)v−(CH22−(ここで、vは1〜3の整数を表す)、または、下記式(III)、
【0010】
【化13】


(前記化3と同じ)
【0011】(上記式中、T1*およびT1**は、前記したT1において定義された内容と、そしてn*、p*、q*、T3*、T4*、およびF3は後述するn、p、q、T3、T4、およびF1において定義された内容と、それぞれ同一の内容を表すが、これらとは同一または異なっていてもよい)で表される基を表し、T3、T4、およびT5は、同一または異なっていてもよく、それぞれ−CONH−、−NHCO−、または−O−を表すが、但し、T3、T4、およびT5のいずれかが−O−を表すときは、他の2つの基は−O−以外の基を表し、T6は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、又は、−O−基を表し、F1およびF2は、同一または異なっていてもよく、単糖類もしくはこれらの誘導体、またはこれらからなる多糖類を表し、
【0012】mは、0〜10の整数を表し、nは、0〜4の整数を表し、pは、0〜4の整数を表し、qは、0〜4の整数を表し、そしてrは、1を表す)で表される化合物、その塩又はその溶媒和物に関する。本発明の一般式(I)で表される化合物は、オリゴヌクレオチドや薬剤を臓器、特に肝臓、や組織細胞内に特異的に取り込ませることができ、組織に特異的な医薬として有用である。したがって、本発明は、前記一般式(I)で表される化合物及び製薬上許容される担体とからなる医薬組成物に関する。また、本発明は、一般式(IV)、
【0013】
【化14】


【0014】(式中に示される各置換基は、前記一般式(I)と同じである。)で表される化合物、その塩又はその反応性誘導体に関する。本発明の一般式(IV)で表される化合物は、前記一般式(I)で表される化合物を製造する際の中間体として有用である。
【0015】本発明の一般式(I)における置換基F1、F2、およびF3は、単糖類若しくはその誘導体又はそれらからなる多糖類であり、これらの糖残基は組織細胞に特異的な受容体に結合し得るものであれば特に制限はなく、受容体に結合し、目的の臓器又は組織細胞に一般式(I)の置換基Xの部分に結合しているオリゴヌクレオチドや薬剤を取り込ませることができる糖残基であればよい。また、これらの誘導体としては、例えば、糖残基中の水酸基やアミノ基のN−またはO−アシル誘導体(例えばN−又はO−アセチル誘導体)、N−又はO−アルキル誘導体(このアルキル基はさらに置換されていてもよい。例えば、カルボキシメチル基などのようなカルボキシル基で置換されていてもよい。)、それらの硫酸、リン酸またはカルボン酸等の無機酸又は有機酸とのエステル誘導体(例えば硫酸エステル誘導体)などが挙げられる。
【0016】置換基F1、F2、およびF3の糖類としては、例えば、ガラクトース、マンノース、ラクトース、グルコース、メリビオース、ゲンチビオース、イソマルトトリオース、フェニルグルコシド、ガラクトサミン、N−ベンゾイルガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、グルコサミン、N−ベンゾイルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン、ラクトサミン、N−アセチルラクトサミンなどを挙げることができる。好ましくは、ガラクトサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミンンを挙げることができ、より好ましくは、N−アセチルガラクトサミンを挙げることができる。
【0017】置換基F1、F2およびF3の糖残基の中の、反応に関与しない水酸基又はアミノ基は保護されていてもよい。このような保護基としてはアシル基が挙げられ、好ましくは直鎖状または分枝鎖状のC16(好ましくはC14)アルキルカルボニル基、より好ましくはアセチル基、である。また、これらの糖残基の中の反応に関与しない水酸基は保護されていてもよいが、これらの水酸基は保護されていないことが好ましい。ここで糖残基は、その糖分子が有する水酸基(好ましくはアノマー位の水酸基)の水素原子が一つの除かれたものを意味する。この場合、F1、F2およびF3と、T1、T2およびT1**との結合は、αグリコシド結合であってもβグリコシド結合であってもよい。
【0018】置換基T1およびT2は、糖残基と分岐部分とをつなぐスペーサー部分に相当し、適度の水溶性を与える部分であり、かつ、糖残基と分岐部分との適度の距離を保たせるための部分である。したがって、このような機能を有すれば特に制限されるものではないが、エチレングリコール単位で0〜10程度、また、アルキルスペーサーとして炭素数0〜10個程度が好ましく、前記で定義したsおよびuでは2〜10、より好ましくは2〜8の整数を表し、同様にtおよびvは1〜3、より好ましくは2の整数を表す。本発明による化合物は、一般式(I)のT2において前記した式(III)を有していてもよい。この式(III)で表される基は、一般式(I)において、X−(CH2)m−(T5)r−および−F2の部分を除いた部分と実質的に同一の意味を有する()但し、式(III)中では、F1がF3になっている。)。従って、T1*およびT1**はT1において定義された内容と同じ内容を表すが、これらとT1は同一または異なっていてもよい。また、n*、p*、およびq*は、n、p、およびqにおいて定義された内容と同じ範囲の整数を表すが、これらとn、p、およびqとは同一または異なっていてもよい。さらに、T3*、T4*、およびF3は、T3、T4、およびF1において定義された内容と同一の内容を表すが、これらとT3、T4、およびF1とは同一または異なっていてもよい。
【0019】一般式(I)において、T3、T4、およびT5は、同一または異なっていてもよく、それぞれ−CONH−、−NHCO−、または−O−を表し、好ましくは−CONH−を表す。但し、T3、T4、およびT5のいずれかが−O−を表すときは、他の2つの基は−O−以外の基を表すものであるが、好ましくは、−CONH−又は−NHCO−基をあげることができる。T6は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、又は、−O−基を表し、好ましくは−CONH−、−NHCO−、−COO−又は−OCO−基であり、より好ましくは−CONH−基である。Wは、炭素数1〜20の直鎖又は分枝したアルキレン基を表し、好ましくは炭素数1〜10のものであり、より好ましくは炭素数3〜8のもである。F1およびF2は、同一または異なっていてもよく、単糖類もしくはこれらの誘導体、またはこれらからなる多糖類を表し、
【0020】また、一般式(I)中の整数値mは、0〜1の整数を表し、好ましくは0または2〜10、より好ましくは3〜9の整数を表し、nは、0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2、より好ましくは0であり、pは、0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2、より好ましくは0であり、qは、0〜4の整数を表し、好ましくは1または2、より好ましくは2の整数を表し、そして、rは、0または1の整数を表し、好ましくは1の整数を表す。ここで、rが0の場合には、−(T5)r−のT5は存在せず、この基は単結合を表すことになる。
【0021】式(II)においてZが表すオリゴヌクレオチドとしては、オリゴデオキシリボヌクレオチド(DNA)およびオリゴリボヌクレオチド(RNA)が挙げられる。また、その塩基配列および塩基数は特に限定されず、化合物の用途に応じて適宜決定することができる。ヌクレオチドの誘導体としては、下記式で表されるようにリン酸エステル結合部分の一つまたは二つの酸素原子が他の原子または基と置換されたものが挙げられる。
【0022】
【化15】


【0023】A1およびA2の組み合わせ、並びにその誘導体名は以下の通りである。
【0024】
【表1】


【0025】表中、Rはアルキル基を表す。なお、置換はヌクレオチド中のリン酸エステル結合の全部または一部において行われていてもよく、また、リン酸エステル結合ごとに異なる原子または基により置換がなされていてもよい。合成が簡便なオリゴヌクレオチド誘導体としては、天然型のホスホジエステルの他にホスホロチオエート誘導体が挙げられる。Zが表すオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。アンチオリゴヌクレオチドとしては、抗ウイルス作用を示すもの、具体的にはB型肝炎ウイルスの表面抗原(HBsAg)に対するもの(Goodarzi, G., et al. (1990) J. Gen. Virol. 71. 3021)、およびエンベロープタンパク質(HBeAg)に対するもの(Blum, H. E., et al. (1991) Lancet 337, 1230)等が挙げられる。これら以外にもインターフェロンの抗ウイルス作用の本態として知られている2’,5’−オリゴアデニレート、または癌遺伝子の発現を抑制するものが挙げられる。
【0026】Zが表すオリゴヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1〜4に記載されるDNA配列が挙げられる。配列番号1に記載の配列は、マウス肝炎ウイルスJHM−X株遺伝子RNAのリーダー部分にに相補的な配列を有する20merのオリゴデオキシヌクレオチド(アンチセンス配列)である。配列番号2に記載の配列は、ヒトc−myc遺伝子由来のメッセンジャーRNAの翻訳開始コドンから3′端側へ5コドンまでの部分の塩基配列と同じ配列を有する15merのオリゴデオキシヌクレオチド(センス配列)である。配列番号3に記載の配列は、ヒトc−myc遺伝子由来のメッセンジャーRNAの翻訳開始コドンから3′端側へ5コドンまでの部分の塩基配列に相補的な配列を有する15merのオリゴデオキシヌクレオチド(アンチセンス配列)である。配列番号4に記載の配列は、ラット上皮細胞成長因子受容体タンパク質のメッセンジャーRNAの3′未満から33番目〜50番目までの塩基配列に相補的な配列を有する18merのオリゴデオキシヌクレオチド(アンチセンス配列)である。
【0027】本発明の一般式(I)で表される化合物の置換基X−W−は、オリゴヌクレオチドを含有するのみならず、基Xと基Wが一緒になって生理活性を有する薬剤であってもよい。ここで使用できる薬剤としては、組織、臓器に特異的に作用するものであって、分子中に一般式(IV)の末端のカルボキシル基などの反応性の官能基と化学結合をし得る反応性の官能基、例えば、アミノ基や水酸基などの官能基を有するものであれば特に制限はない。これらの薬剤としては、例えば、ヒドロクロロチアジド、トリクロロメチアジド、プラバスタチン、エチレフリン、アムリノン、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ドキソルビシン、エピルビシン、ニムスチン、ペンフルチド、メトトレキセート、アシクロビル、ビダラビン、ara-A、ara-AMP、ara-C、アマンタジン、リマンタジン、アラノシン、シネファンジン、アジドチミジン、セフォタキシム、セフォジジムなどが挙げられる。
【0028】本発明の一般式(I)で表される化合物の塩としては無機酸又は有機酸との塩などをあげることができ、また、溶媒和物としては水和物などが挙げられる。本発明の一般式(I)で表される化合物は、その末端に糖残基を有する。従って、本発明の一般式(I)で表される化合物は、特定の糖構造を特異的に認識する細胞に特異的に移行させることができる。そして、一般式(I)で表される化合物が有している置換基Zの部分のオリゴヌクレオチド又は薬剤を、特定の組織細胞に特異的に取り込ませることが可能となる。
【0029】本発明による好ましい化合物群としては、式(I)で表される化合物であって、T1が、−(CH2)s−(ここで、sは2〜8の整数を表す)、または−(CH2CH2O)2−(CH22−を表し、T2が、−(CH2)u−(ここで、uは2〜8の整数を表す)、−(CH2CH2O)2−(CH22−、または前記基(IV)(基中、T1*およびT1**は前記したT1と、そしてn*、p*、q*、T3、T4*およびF3は後述するn、p、q、T3、T4、およびF1と、それぞれ同一の意味を表すが、これらとは同一または異なっていてもよい)を表し、T3、T4、およびT5が、−CONH−を表し、F1およびF2が、同一または異なっていてもよく、それぞれガラクトース、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、ラクトース、ラクトサミン、またはN−アセチルラクトサミンを表し、mが、0または2〜10の整数を表し、nが、0〜2の整数を表し、pが、0〜2の整数を表し、qが、0〜2の整数を表し、そしてrが、1を表すもの、が挙げられる。更に好ましい本発明による化合物は、次の一般式(Ia)で表される化合物である。
【0030】
【化16】


【0031】(上記式中、Xは、下記式(II)、
【0032】
【化17】


【0033】(上記基中、Zは、オリゴヌクレオチドまたはその誘導体を表す)で表される基を表し、T1は、−(CH2)s−(ここで、sは2〜8の整数を表す)、または−(CH2CH2O)2−(CH22−を表し、T2は、−(CH2)u−(ここで、uは2〜8の整数を表す)、−(CH2CH2O)2−(CH22−、または、下記式(III)、
【0034】
【化18】


【0035】(上記式中、T1*およびT1**は前記したT1において定義された内容と、そしてF3は後述するF1において定義された内容と、それぞれ同一の内容を表すが、これらとは同一または異なっていてもよい)を表し、F1およびF2は、同一または異なっていてもよく、ガラクトース、グルコース、およびガラクトサミンから選択される単糖もしくはこれら単糖の誘導体、またはこれら単糖および/または単糖の誘導体からなる二糖類を表し、これら単糖およびその誘導体並びに二糖類の反応に関与しない水酸基は保護されていてもよく、そしてmは、3〜9の整数を表す)
【0036】本発明のより好ましい一般式(I)で表される化合物の例としては、次の一般式(Ib)、
【0037】
【化19】


【0038】(式中、各置換基は前記と同様のものを示す。)で表される化合物をあげることができる。また、さらに好ましい一般式(I)で表される化合物の例としては、次の一般式(Ic)、
【0039】
【化20】


【0040】(式中の各置換基は、前記のものと同様のものを意味する。)で表される化合物をあげることができる。
【0041】本発明の一般式(I)で表される化合物のうち、置換基T6がカルボキシル基から誘導される基、例えば−CONH−基などの場合の化合物は、一般式(IV)で示される化合物と、次式(V)又は(VI)、X−W−NH2 (V)
X−W−OH (VI)
(式中、置換基X及びWは前記したものを示す。)で表される化合物とを、通常のカップリング反応によりカップリングさせることにより製造することができる。本発明の一般式(IV)で表される化合物の反応性誘導体としては、混合酸無水物や酸ハロゲン化物、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)などの反応性を有するカルボン酸誘導体が挙げられる。
【0042】本発明の一般式(I)で表される化合物のうち、置換基T6が単原子の官能基から誘導される基、例えば−O−基、−NHCO−基などの場合の化合物は、一般式(VII)、
【0043】
【化21】


【0044】(式中、置換基R1は脱離基、水酸基又はアミノ基を示し、その他の置換基は前記と同様のものを示す。)で表される化合物と、前記式(V)若しくは(VI)又は次式(VIII)、X−W−COOH (VIII)
(式中、置換基X及びWは前記したものを示す。)で表される化合物とを、通常のカップリング反応によりカップリングさせることにより製造することができる。これらのカップリング反応は、通常のエステル化、アミド化又はエーテル化などの方法により行うことができるが、好ましくはペプチド化学で行われる方法があげられる。
【0045】前記の一般式(IV)又は(VII)で表される化合物は、種々の方法で製造することができる。例えば、次の(1)〜(3)の方法を示すことができる。
(1)下記式(IX)、
【0046】
【化22】


【0047】(上記式中、R1ハロゲン原子または保護されたもしくは保護されていない水酸基、アミノ基もしくはカルボキシル基を表し、T14、F1、F2、n、p、およびqは前記と同一内容を表すが、F1およびF2の反応に関与しない官能基は保護されているのが好ましい)で表される化合物と、下記式(X)、R2−(CH2m−R1 (X)
(上記式中、R2はハロゲン原子、又は、保護されていてもよい水酸基、アミノ基若しくはカルボキシル基を表し、R1は前記と同一内容を表し、mは前記と同一内容を表す。)で表される2官能性化合物、例えば、ジカルボン酸、ジアミン、アミノ酸など化合物の片方の官能基を反応に関与しないようにペプチド化学などに使用される保護基で保護しておき、他の官能基を反応性の基に活性化させた反応性の化合物と反応させることにより製造することができる。例えば、アミド結合させる場合には縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド)の存在下で行う縮合法、クロル炭酸イソブチル等の存在下で行う混合酸無水物法、またはヒドロキシコハク酸イミド等を用いる活性エステル法によって反応させることにより得ることができる。また、エーテル結合させる場合には、対応するハロゲン化合物とアルコキシドとの縮合反応によって得ることができる。この場合、反応温度および反応時間はこれらの方法に通常用いられている条件を適用することができる。より具体的に示せば、上記式(IX)の化合物の置換基R1がアミノ基のものは、そのBoc(ベンジルオキシカルボニル基)保護基を定法によりトリフルオロ酢酸で除去することにより得ることができ、これを別に調製したモノベンジル基で片方のカルボキシル基を保護したアジピン酸の活性エステルとカップリングさせることによりモノベンジル基で保護されたカルボン酸誘導体を得ることができる。上記式(IX)の化合物は、下記式(XI)、
【0048】
【化23】


【0049】(上記式中、R1、n、p、およびqは前記と同一内容を表す。)で表される化合物と、下記式(XII)、R1−T1−F1 (XII)
(上記式中、R1、T1、およびF1は前記と同一の内容を表す。)で表される化合物とを、上記と同様に縮合反応等によって反応させ、場合によっては脱保護することによって得ることができる。また、式(IX)においてT2が前記基(III)で表される場合は、上記式(XI)の化合物同士(これらは互いに同一であっても異なっていてもよい)を同様に縮合反応等によって反応させ、場合によっては脱保護し、次いで式(XII)で表される化合物を反応させることによって得ることができる。
【0050】より具体的には、N−Boc−グルタミル−γ−グルタミン酸の3個のカルボキシル基の保護基のベンジル基を接触還元などにより除去し、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどとして活性化し、これを別に調製した前記式(XII)の置換基R1がアミノ基である化合物と通常の方法で反応させることにより、前記式(IX)で表される化合物のアミド誘導体を得ることができる。また、式(XII)で表される化合物は、市販の糖のアセチル誘導体、又は無保護の糖を定法によりアセチル化した糖のアセチル誘導体等の保護された糖類や還元末端を定法により選択的に活性化した糖類の保護体と、末端の官能基が耐酸性の保護基で保護されたスペーサー用のアルコール誘導体を、必要に応じて活性化させて、通常の方法にしたがって、酸触媒(例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、トリフルオロメタンスルホン酸など)の存在下に、グリコシル化することにより製造することができる。
(2)下記式(XIII)、
【0051】
【化24】


【0052】(上記式中、R1、R2、T5、m、n、p、およびqは前記と同一内容を表す。)で表される化合物と、前記式(XII)で表される化合物とを、上記と同様に縮合反応等によって反応させ、場合によっては脱保護することにより得ることができる。上記式(XIII)の化合物は、前記式(XI)の化合物と前記式(X)の化合物とを上記と同様に縮合反応等によって反応させ、場合によっては脱保護することにより得ることができる。また、式(I)においてT2が前記基(III)で表される化合物は、上記式(X)の化合物と上記式(XIII)の化合物とを同様に縮合反応等によって反応させ、場合によっては脱保護し、次いで式(XII)の化合物を反応させることによって得ることができる。
(3)下記式(XIV)
【0053】
【化25】


【0054】(上記式中、T15、R2、m、n、p、q、およびrは前記と同一内容を表す。)で表される化合物と、下記式(XV)の化合物:D−F* (XV)
(上記式中、Dはハロゲン原子、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基)、またはCCl3C(=NH)O−などの脱離基を表し、F*は前記F1またはF2を表す。)で表される化合物とを、−20℃〜室温の反応温度および10分〜24時間の反応時間のもとでグリコシル化反応を行い、場合によっては脱保護することにより得ることができる。上記式(XIV)の化合物は、上記式(XIII)の化合物と下記式(XVI)の化合物:R3−T1−R2 (XVI)
(上記式中、R2、R3およびT1は前記と同一内容を表す。)とを、同様に縮合反応等によって反応させ、場合によっては脱保護することによって得ることができる。
【0055】前記の一般式(V)、(VI)又は(VIII)で表される化合物は、前記の一般式(I)における置換基Xがオリゴヌクレオチドである場合には、ヌクレオチドとを、通常用いられるDNAの合成方法、例えばβシアノエチルホスホルアミダイド法によって結合させることによって得ることができる。β−シアノエチルホスホロアミダイド法は、まず、ヌクレオチドを固相に固定し、次いでこのヌクレオチドに活性化試薬(テトラゾール等)によって活性化されたアミダイトモノマー(結合に関与しない水酸基等は保護されていることが好ましい)をカップリングさせ、更に酸化剤(例えばヨウ素水溶液)で酸化し、固相から切り出し、場合によっては脱保護することによって行われる。固相に固定する天然型のホスホジエステル型オリゴヌクレオチドは、この反応を繰り返し行うことによって事前に得ることができる。
【0056】また、ホスホロチオネート型オリゴヌクレオチドは、酸化反応に遊離の硫黄原子を発生しうる試薬(例えばBeaucage試薬等)を用いることにより、合成することができる。また、種々のリン酸エステル結合は、リン酸部分の酸素原子を種々の官能基で置き換えたアミダイトを用いることで形成できる。例えば、5′−ジメトキシトリチルデオキシヌクレオシド3′−(ジメチルアミノ)ホスホロチオアミダイトを用い、硫黄原子で酸化することによりホスホロジチオネート型オリゴヌクレオチドを得ることができる(W. K. D. Bill, et al. (1989) J. Am. Chem. Soc. 111, 2321)。また、5′−ジメトキシトリチルデオキシヌクレオシド 3′−メチルホスホネートとメシチレンスルホニル−3−ニトロトリアゾールを用いることによりメチルホスホネート型リン酸エステル結合を形成させることができる(P. S. Miller, et al. (1983) Nucleic Acid Rec. 11, 6225)。また、5′−ジメトキシトリチルデオキシヌクレオシド 3′−O−エチル−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイトを用いることによりエチルホスホトリエステル型リン酸エステル結合を形成させることができる(K. A. Gallo, et al. (1986) Nucleic Acid Res. 14, 7405)。
【0057】合成終了後の化合物の精製は、分配クロマトグラフィー(例えば、オクタデシルシリカゲルカラム)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換カラム)、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、RCAレクチンアフィニティーカラム)等によって行うことができる。
【0058】本発明の一般式(I)で表される化合物の置換基X−W−の部分を、1級又は2級のアミノ基などの反応性の官能基を有する薬剤から当該官能基、例えば、アミノ基、を除いた基とすることもできる。この場合には、薬剤の例えば、アミノ基を必要に応じて活性化させておき、前記一般式(IV)で表される化合物と通常のアミド化反応により、一般式(I)で表される化合物を製造することができる。この場合に使用する薬剤としては、1級又は2級のアミノ基を有する薬剤であればよいが、組織細胞に特異的な作用を有する薬剤が好ましい。
【0059】さらに、本発明の化合物の製造法をより具体的に説明するが、本発明の化合物がこれらの具体的な化合物に限定されるものではない。まず、原料化合物3は、次式で示される反応式により製造することができる。
【0060】
【化26】


【0061】この反応式で表される糖誘導体の製造法を以下にさらに具体的に説明する。上記製造法は、アセチル基で保護したガラクトース誘導体をアジドアルコールと反応させ化合物を得るものである。アセチル基で保護したガラクトース誘導体の1ミリモルに対して1.1〜3ミリモル程度のアジドアルコールを、ルイス酸(例BF3OEt2)2〜12ミリモル程度とモレキュラーシーブスを用い、溶媒としてハロゲン化炭素類(例塩化メチレン、クロロホルム)、エーテル類(例ベンゼン、トルエン)、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルホルムアミドそしてジメチルスルホキシドを用いることができるが、この中でも望ましくは塩化メチレンを用い、−78℃〜80℃程度、望ましくは0℃〜25℃程度で通常反応時間0.5〜20時間程度、望ましくは2〜12時間程度反応させて化合物を得ることができる。
【0062】糖部分がガラクトサミンである原料化合物3’は、前記の反応と同様な方法、即ち、次式で示される反応式により製造することができる。
【0063】
【化27】


【0064】この反応式で表される糖誘導体の製造法を以下にさらに具体的に説明する。市販のガラクトサミン塩酸塩を文献公知あるいはそれに準ずる方法によりアセチル化し、このアセチル基で保護したN−アセチルガラクトサミン誘導体1ミリモルに対して2ミリモル〜10ミリモルのルイス酸(例トリメチルシリルトリフラート、3塩化鉄など)を用い、溶媒としてハロゲン化炭素類(例塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン)、エーテル類(例ベンゼン、トルエン)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドを用いることができるが望ましくはジクロロエタンを用い、−78℃〜80℃程度、望ましくは0℃〜60℃程度で通常反応時間1〜24時間程度、望ましくは2〜6時間程度反応させて中間体としてオキサゾリン誘導体を得る。このオキサゾリン誘導体1ミリモルに対して1.1ミリモル〜10ミリモルのアルコールと酸触媒として(例トリメチルシリルトリフラート、カンファースルホン酸)を用い、溶媒としてハロゲン化炭素類(例塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン)、エーテル類(例ベンゼン、トルエン)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドを用いることができるが望ましくはジクロロエタンを用い、−78℃〜80℃程度、望ましくは0℃〜60℃程度で通常反応時間1〜24時間程度、望ましくは5〜15時間程度反応させて化合物3’を得ることができる。
【0065】化合物7は、次式で示される反応式により製造することができる。
【0066】
【化28】


【0067】この反応式で表されるBOC誘導体の製造法を以下にさらに具体的に説明する。この製造法は、アセチル基で保護したガラクトース誘導体をBOC基で保護したグルタミルグルタミン酸誘導体のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させ化合物を得るものである。化合物の1ミリモルに対して触媒量〜2倍量程度の触媒(リンドラー触媒、パラジウム炭素)と1ミリモル〜1.5ミリモル程度の酸触媒(例パラトルエンスルホン酸)を用い、溶媒としてアルコール類(例メタノール、エタノール)、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドを用いることができるが、この中でも望ましくはエタノールを用い、0℃〜50℃程度、望ましくは室温程度で通常反応時間0.5〜8時間程度、望ましくは2〜4時間程度反応させて化合物を得る。一方、文献公知の方法で得られる化合物5に対して触媒量〜0.1当量程度の触媒(例パラジウム炭素)を用い、溶媒として酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アルコール類(例メタノール、エタノール)を用いることができるが、この中でも望ましくは酢酸エチルとテトラヒドロフランの混合溶媒を用い、0℃〜50℃程度、望ましくは室温程度で通常反応時間1〜24時間程度、望ましくは12〜18時間程度反応させて化合物の脱ベンジル体を得る。
【0068】脱ベンジル体1ミリモルに対して1.1〜1.5ミリモル程度のN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu,HOBt)と1.1〜1.5ミリモル程度のジシクロヘキシルカルボジイミドを用い、溶媒としてアセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドを用いることができるが、この中でも望ましくはアセトニトリルを用い、−20℃〜25℃程度、望ましくは0℃〜5℃程度で通常反応時間1〜24時間程度、望ましくは5〜16時間程度反応させて化合物を得る。上記に示した方法により得られる化合物1ミリモルに対して3.3〜4.5ミリモル程度の化合物を用い、塩基としてN−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ヒューニッヒ塩基を用いることができるが、この中で望ましくはN−メチルモルホリンを用い、−20℃〜60℃程度、望ましくは0℃〜25℃程度で通常反応時間1〜24時間程度、望ましくは5〜16時間程度反応させて化合物を得る。
【0069】化合物11は、次式で示される反応式により化合物10を得、これを前記した化合物と反応させることにより製造することができる。
【化29】


【0070】この反応式で表される化合物10の製造法を以下にさらに具体的に示す。この製造法は、アジピン酸から中間体化合物を経由して化合物10を得るものである。化合物1ミリモルに対して1〜2ミリモルのベンジルアルコールと1.1〜2.5ミリモルの塩基(例NaH、トリエチルアミン、ピリジンなど)を用い、溶媒としてジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、ベンゼンなどを用いることができるが、望ましくはジメチルホルムアミドを用い、−20℃〜80℃程度、望ましくは0℃程度で通常反応時間0.5〜24時間程度、望ましくは2〜8時間程度反応させてモノベンジルエステル化合物を得る。更に、化合物の1ミリモルに対して1.1〜1.5ミリモル程度のN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu,HOBt)と1.1〜1.5ミリモル程度のジシクロヘキシルカルボジイミドを用い、溶媒としてアセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドを用いることができるが、この中でも望ましくはアセトニトリルを用い、−20℃〜25℃程度、望ましくは0℃〜5℃程度で通常反応時間1〜24時間程度、望ましくは5〜16時間程度反応させて化合物10を得る。得られた化合物10を、次式で示される反応式により化合物11を製造することができる。
【0071】
【化30】


【0072】この反応式で表されるカルボン酸誘導体のベンジル保護体の製造法を以下にさらに具体的に示す。この製造法は、アセチル基で保護したガラクトースの3分岐型BOC誘導体から化合物11を得るものである。化合物を公知あるいはそれに準ずる方法により、脱BOC化した後、これに上記に示した化合物10を当量用い、塩基としてN−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ヒューニッヒ塩基を用いることができるが、この中で望ましくはN−メチルモルホリンを用い、−20℃〜60℃程度、望ましくは0℃〜25℃程度で通常反応時間1〜24時間程度、望ましくは5〜16時間程度反応させて化合物11を得ることができる。化合物12は、次式で示される反応式により製造することができる。
【0073】
【化31】


【0074】この反応式で表されるカルボン酸誘導体の製造法を以下にさらに具体的に説明する。この製造法は、アセチル基で保護したガラクトースの3分岐型モノベンジル誘導体11を選択的にベンジル基を脱保護して化合物12を得るものである。化合物11に対して触媒量〜0.1当量の触媒(例パラジウム炭素、二酸化白金)を用い、溶媒として酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アルコール類(例メタノール、エタノール)を用いることができるが、この中でも望ましくは酢酸エチルとエタノールの混合溶媒を用い、0℃〜50℃程度、望ましくは室温程度で通常反応時間1〜24時間程度、望ましくは12〜18時間程度反応させて次式で表される化合物12を得ることができる。
【0075】
【化32】


【0076】この化合物12のカルボン酸とカップリングさせる基質は、第一級アミンもしくは第2級アミンが望ましく、文献公知もしくはそれに準ずる方法を用いることにより容易に糖誘導体を導入した医薬品を製造することができる。この方法は、例えば、第4版実験化学講座22有機合成 酸、アミノ酸、ペプチド、第137頁〜第258頁に開示されている方法を参照することができる。
【0077】本発明の一般式(I)で表される化合物は、その末端に単糖類若しくは多糖類又はそれらの誘導体からなる糖残基を有する。従って、本発明の一般式(I)で表される化合物を、特定の糖構造を認識する細胞に特異的に移行させることができる。また、本発明の一般式(I)で表される化合物は、オリゴヌクレオチド若しくは薬剤又はその誘導体をその末端に有することができる。このオリゴヌクレオチドは、標的器官の細胞において特定遺伝子の発現を抑制することができるもの、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。従って、本発明による化合物は、種々の疾患の治療に用いることができる。特に、本発明の一般式(I)で表される化合物は、糖レセプターの特性でもあるクラスター効果を考慮して化学合成した分岐型オリゴ糖を用いることにより、生体内に存在するグルコースレセプター、ガラクトースレセプターそしてマンノースレセプターなどの糖誘導体を認識するレセプターを利用して、医薬品分子を標的部位にまで送達でき、さらに細胞内に導入することができる。また、中性の医薬品に対してはポリヒドロキシル体としての糖誘導体が水溶液に対する溶解性を高める効果をもたらし、その結果医薬品の有効性を高めるなどの数多くの利点を賦与することができる。
【0078】本発明による化合物は、例えば、ウイルスに感染した肝細胞に抗ウイルス剤として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達し、抗ウイルス作用を増強することができる。また、本発明による化合物は、例えば、ガン化した肝細胞に抗悪性腫瘍剤として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達し、抗ガン作用を増強することができる。
【0079】本発明の他の面によれば、本発明による化合物を製薬学的に許容される担体とともに含んでなる医薬組成物が提供される。ここで、上記医薬組成物は、悪性腫瘍治療剤(例えば、ガン治療剤)、抗ウイルス剤、抗リウマチ剤(例えば、腫瘍壊死因子の産生抑制剤)、抗炎症剤、抗アレルギー剤や免疫抑制剤(例えば、免疫担当細胞の炎症部位への遊走阻害剤)、循環機能改善剤(例えば、冠血管の再閉塞に関わる血管平滑細胞の増殖阻害剤)、内分泌機能改善薬(例えば、異常分泌されるホルモンの分泌阻害薬)、またはある特定のタンパク質の異常発現あるいは機能異常によって生じ、そのタンパク質の発現を抑制することにより症状の改善が認められる疾患に対する治療薬(例えば、細胞の受容体タンパク質の異常発現の抑制)として用いることができる。医薬組成物が悪性腫瘍治療剤である場合、一般式(I)中のZはガン遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。医薬組成物が抗ウイルス剤である場合、Zは抗ウイルス作用を示すアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。
【0080】本発明による医薬組成物は、経口または非経口(例えば、静注、筋注、皮下投与、直腸投与、経皮投与、経鼻投与等)のいずれかの投与経路で、ヒトまたはヒト以外の動物に投与することができる。本発明による医薬組成物は、例えばその用途に応じて、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠などの経口剤、静注および筋注などの注射剤、直腸投与剤、油脂性坐剤、水溶性坐剤などのいずれかの製剤形態に調製することができる。これらの各種製剤は、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、潤滑剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。使用可能な無毒性の上記添加剤としては、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、必要により本発明による化合物以外の有効成分を含んでいても良い。
【0081】投与量は、用法、患者の年齢、性別、症状の程度などを考慮して適宜決定されてよく、通常成人1日あたり約0.05〜250mg、好ましくは約0.5〜50mg程度とすることができ、これを1日1回または数回に分けて投与することができる。本明細書において「治療」とは、確定した疾患の治療のみならず予防を含む意味で用いられるものとする。本発明の他の面によれば、本発明による化合物をヒトを含む動物(例えば、ホ乳類)に投与することを含んでなる、悪性腫瘍、ウイルス感染症、炎症性疾患、アレルギー性疾患、免疫性疾患、循環器系疾患、および内分泌系疾患からなる群から選択される疾患の治療法が提供される。本発明の他の面によれば、本発明による化合物の悪性腫瘍治療剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、循環機能改善剤および内分泌機能改善剤からなる群から選択される薬剤の製造のための使用が提供される。
【0082】
【実施例】本発明を以下の実施例などによって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下次の略号用いる。Boc:ベンジルオキシカルボニル基、THF:テトラヒドロフラン、DMF:ジメチルホルムアミド、、EDC:1(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、DMAP:4−ジメチルアミノピリジン、TLC:薄層クロマトグラフィー、DMT基:ジメチルトリチル基、TEAA:トリエチルアンモニウムアセテート、ODSカラム:オクタデシルシリカゲルカラム。
【0083】合成例1 アジピン酸無水物の合成アジピン酸25g(0.17mol)を塩化メチレン125mlに溶解し、さらにジシクロヘキシルカルボジイミド35.3g(0.17mol)の塩化メチレン125ml溶液を加えて2時間、室温で攪拌した。白色析出物をセライトで濾去し、ろ液を減圧下濃縮することにより標題化合物(25.9g,q.y.)を得た。この化合物は更に精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=2.50(m,4H)、1.93(m,4H)。
【0084】合成例2 5−ベンジルオキシカルボニル−ペンタン酸の合成合成例1の化合物25.9g(0.17mol)にベンジルアルコール28ml(0.27mol)を加えて、90℃(オイルバス)で激しく5時間攪拌した。その後、過剰のベンジルアルコールを減圧下溜去した。残査をジエチルエーテル500mlで希釈し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(250ml×2)で抽出した。水層を2N−塩酸水溶液で酸性にし、塩化メチレン(250ml×2)で抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下溜去することにより標題化合物(11.1g,28%)を得た。この化合物は更に精製することなく次の反応に用いた。
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.37−7.34(m,5H)、5.12(s,2H)、2.41−2.36(m,4H)、1.73−1.66(m,4H)。
【0085】合成例3 5−ベンジルオキシカルボニル−ペンタン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
【0086】
【化33】


【0087】合成例2の化合物1.0g(4.23mmol)を酢酸エチル12.5mlに溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド0.49g(4.23mmol)とジシクロヘキシルカルボジイミド0.87g(4.23mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。析出物をセライト濾去し、濾液を減圧下濃縮した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル 2:1〜1:1)による精製により標題化合物(740mg,53%)を得た。
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.37−7.34(m,5H)、5.12(s,2H)、2.89(br s,4H)、2.63(t,2H,J=7.2Hz)、 2.41(t,2H,J=7.2Hz)、1.79−1.77(m,4H)。
【0088】合成例4 N−t−ブトキシカルボニル−γ−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリ2−(2′,3′,4′,6′−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル−1)エトキシエトキシエチルアミドの合成
【0089】
【化34】


【0090】Boc−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリベンジルエステル2.323g(3.59mmol)を酢酸エチルとテトラヒドロフランの混合溶媒(1:1.45ml)に溶解し、10%パラジウム−炭素0.2gを加えて14時間常圧水素気流下攪拌した。触媒を濾去、溶媒を減圧下留去し、N−t−ブトキシカルボニル−γ−L−グルタミル−γ−L−グルタミル酸を無色非晶質として得た。次いでこの粗生成物を乾燥アセトニトリル50mlに溶解し、氷冷下攪拌した。ここに、N−ヒドロキシスクシンイミド1.49g(12.9mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.44g(11.9mmol)を加え、その温度で、32時間攪拌した。この溶液を溶液1とした。1−O−[2−{2−(2−アジドエトキシ)エトキシ}エトキシ]−2′,3′,4′,6′−テトラ−アセチル−ガラクトース5.61g(11.1mmol)をエタノール85mlに溶解し、リンドラー触媒6.0gとパラトルエンスルホン酸・一水和物2.74g(14.4mmol)を加え、中圧水素気流下室温で2時間攪拌した。その後、リンドラー触媒3.0gを加え、更に2時間攪拌した。触媒を濾去、溶媒を減圧下留去して1−O−[2−{2−(2−アミノエトキシ)エトキシ}エトキシ]−2′,3′,4′,6′−テトラ−アセチル−ガラクトース パラトエンスルホナートを白色非晶質として得た。これを乾燥アセトニトリル10mlに溶解し、氷冷下攪拌した。これを溶液2とした。この溶液にN−メチルモルホリン1.59mlを加え、5分間攪拌した。これに先に調製した溶液1を加え、更に、18時間氷冷下攪拌した。析出したDCウレアを濾去、溶媒を減圧下留去した。残留物を酢酸エチル200mlで希釈し、1:1飽和食塩水−水100mlで洗浄、無水硫酸マグネシウム上で乾燥、減圧下濃縮した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール 50:1)により精製を行い標題化合物(4.91g,78%)を無色透明無定型物質として得た。
【0091】
[α]D19=−11.14(c1.03,CHCl3
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.70−7.68(m,1H)、7.26(m,2H)、6.94(br s,1H)、5.47(br d,1H)、5.39(br d,3H)、5.22−5.16(m,3H)、5.06−2.01(m,4H)、4.58−4.55(m,3H)、 4.40−4.33(m,1H)、4.18(dd,3H)、4.15−4.10(m,3H)、3.98−3.94(m,6H)、3.76−3.32(m,33H)、2.40−2.25(m,4H)、 2.16(s,9H)、2.06−2.05(m,18H)、1.99(s,9H)、2.20−1.94(m,4H)、1.42(s,9H)。
FAB−MS(positive):[M+H]+;m/z1761,[M+Na]+;m/z1783,[M+K]+;m/z1799FAB−MS(negative):[M−H]−;m/z1759
【0092】実施例1 N−(5−ベンジルオキシカルボニル−1−ペンタノイル)−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリ−{2−(2′,3′,4′,6′−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル−1)エトキシ}エトキシエチルアミドの合成
【0093】
【化35】


【0094】合成例4の化合物1.77g(1.01mmol)に、氷冷下トリフルオロ酢酸6.0mlを加えそのまま2時間攪拌した。トリフルオロ酢酸を減圧下留去し、減圧下室温で乾燥させた。これを塩化メチレン100mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mlで洗浄、無水硫酸マグネシウム上で乾燥、減圧下濃縮した。得られた残査を乾燥アセトニトリル6.0mlに溶解し、氷冷下攪拌した。これにN−メチルモルホリン0.22ml(1.98mmol)と合成例3の化合物0.33g(0.10mmol)のアセトニトリル6ml溶液を加え、24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下溜去した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール 50:1)により精製を行い標題化合物(1.14g,61%)を無色無定型物質として得た。
[α]D21=−12.00(c1.04,CHCl3
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.83(br t,1H)、7.37−7.30(m,1H)、7.26(br d,1H)、7.13(br t,1H)、7.08(br t,1H)、6.61(br d,1H)、5.39(br d,3H)、5.22−5.17(m,3H)、5.11(s,2H)、5.07−5.02(m,3H)、4.57−4.55(m,3H)、4.46−4.34(m,1H)、4.20−4.10(m,7H)、3.98−3.92(m,6H)、3.76−3.32(m,33H)2.40−2.36(m,2H)、2.34−2.30(m,4H)、2.24−2.20(m,2H)、2.15(s,9H)、2.06−2.05(m,18H)、2.02−1.96(m,4H)、1.99(s,9H)、1.67−1.65(m,4H)。
FAB−MS(positive):[M+H]+;m/z1878,[M+Na]+;m/z1900
【0095】実施例2 N−(5−ヒドロキシカルボニル−1−ペンタノイル)−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリ−{2−(2′,3′,4′,6′−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル−1)エトキシ}エトキシエチルアミドの合
【0096】
【化36】


【0097】実施例1の化合物0.5g(0.27mmol)を酢酸エチルとエタノールの混合溶媒(1:1,15ml)に溶解し、10%パラジウム−炭素50mgを加えて22時間常圧水素気流下攪拌した。触媒を濾去し、濾液を減圧下濃縮した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール 50:1)により精製を行い標題化合物(350mg,74%)を無色油状物質として得た。
[α]D22=−10.57(c1.07,CHCl3
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.87(brs,1H)、7.52(br d,1H)、7.35(br s,1H)、7.21(br t,1H)、7.11(br t,1H)、6.94(br d,1H)、5.39(br d,3H)、5.22−5.18(m,3H)、5.07−5.02(m,3H)、4.59−4.55(m,3H)、4.47−4.43(m,1H)、4.21−4.11(m,7H)、4.00−3.93(m,6H)、3.76−3.38(m,33H)、2.38−2.22(m,8H)、2.16(s,9H)、2.07−2.05(m,18H)、2.00−1.89(m,4H)、1.99(s,9H)、1.70−1.65(m,4H)。
FAB−MS(positive):[M+H]+;m/z1788,[M+Na]+;m/z1810
【0098】実施例3 N−(5−ヒドロキシカルボニル−1−ペンタノイル)−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリ{2−(2′,3′,4′,6′−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル−1)エトキシ}エトキシエチルアミドのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
【0099】
【化37】


【0100】実施例2の化合物350mg(0.2mmol)を乾燥アセトニトリルに溶解し、氷冷下N−ヒドロキシスクシンイミド23mg(0.2mmol)とジシクロヘキシルカルボジイミド40mg(0.2mmol)を加え2.5時間攪拌した。その後、反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール 50:1)により精製を行い標題化合物(332mg,90%)を無色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.70(br t,1H)、7.20(br d,1H)、7.10(br s,2H)、6.68(br d,1H)、5.39(br d,3H)、5.22−5.13(m,3H)、5.07−5.02(m,3H)、4.58−4.55(m,3H)、4.47−4.36(m,2H)、4.20−4.10(m,6H)、3.99−3.93(m,6H)、3.75−3.35(m,33H)、2.86(br s,4H)、2.64(br t,2H)、2.43−2.27(m,6H)、2.16(s,9H)、2.06−2.05(m,18H)、2.02−1.89(m,4H)、1.99(s,9H)、1.78−1.64(m,4H)。
【0101】合成例5 N−t−ブトキシカルボニル−γ−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリ{2−(2′,3′,4′,6′−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−1)エトキシ}エトキシエチルアミドの合成
【0102】
【化38】


【0103】Boc−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリベンジルエステル0.5g(0.77mmol)を酢酸エチルとテトラヒドロフランの混合溶媒(1:1,10ml)に溶解し、10%パラジウム−炭素0.05gを加えて17時間常圧水素気流下攪拌した。触媒を濾去、溶媒を減圧下留去し、N−t−ブトキシカルボニル−γ−L−グルタミル−γ−L−グルタミン酸を無色非晶質として得た。次いでこの粗生成物を乾燥アセトニトリル12.5mlに溶解し、氷冷下攪拌した。ここに、N−ヒドロキシスクシンイミド0.32g(2.7mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド0.53g(2.5mmol)を加え、その温度で、27時間攪拌した。この溶液を溶液1とした。1−O−[2−{2−(2−アジドエトキシ)エトキシ}エトキシ]−2′,3′,4′,6′−テトラアセチル−グルコース5.14g(10.2mmol)をエタノール80mlに溶解し、リンドラー触媒6.0gとパラトルエンスルホン酸・一水和物2.5g(2.4mmol)を加え、中圧水素気流下室温で2時間攪拌した。その後、リンドラー触媒3.0gを加え、更に2時間攪拌した。触媒を濾去、溶媒を減圧下留去して1−O−[2−{2−(2−アミノエトキシ)エトキシ}エトキシ]−2′,3′,4′,6′−テトラアセチル−グルコースパラトエンスルホナートを白色非晶質として得た。これを乾燥アセトニトリル10mlに溶解し、氷冷下攪拌した。これを溶液2とした。この溶液2にN−メチルモルホリン1.45mlを加え、5分間攪拌した。これに先に調製した溶液1を加え、更に、18時間氷冷下攪拌した。析出したDCウレアを濾去、溶媒を減圧下留去した。残留物を酢酸エチル200mlで希釈し、1:1飽和食塩水−水100mlで洗浄、無水硫酸マグネシウム上で乾燥、減圧下濃縮した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール 50:1)により精製を行い標題化合物(1.26g,93%)を無色透明無定型物質として得た。
【0104】
[α]D19=−13.31(c1.04,CHCl3
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.75(br s,1H)、7.30(br s,1H)、7.20(br s,1H)、6.97(br s,1H)、5.46(br s,1H)、5.21(br t,3H)、5.09(br t,3H)、5.00(br t,3H)、4.61−4.59(m,3H)、4.39(m,1H)、4.27(dd,3H,J=4.8,12.0Hz)、4.15(dd,3H,J=2.0,12.0Hz)、4.11(m,1H)、3.97−3.94(m,3H)、3.74−3.25(m,36H)、2.40−2.20(m,4H)2.09(s,9H)、2.06(s,3H)、2.05(s,6H)、2.03(s,9H)、2.01(s,9H)、2.16−1.92(m,4H)、1.42(s,9H)。
FAB−MS(positive):[M+H]+;m/z1761,[M+Na]+;m/z1783,[M+K]+;m/z1799FAB−MS(negative):[M−H]−;m/z1759
【0105】実施例4 N−(5−ベンジルオキシカルボニル−1−ペンタノイル)−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリ{2−(2′,3′,4′,6′−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−1)エトキシ}エトキシエチルアミドの合成
【0106】
【化39】


【0107】合成例5の化合物1.26g(0.72mmol)に、氷冷下トリフルオロ酢酸6.0mlを加えそのまま2時間攪拌した。トリフルオロ酢酸を減圧下留去し、減圧下室温で乾燥させた。これを塩化メチレン100mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mlで洗浄、無水硫酸マグネシウム上で乾燥、減圧下濃縮した。得られた残査を乾燥アセトニトリル6.0mlに溶解し、氷冷下攪拌した。これにN−メチルモルホリン0.14ml(1.29mmol)と合成例3の化合物0.22g(0.65mmol)のアセトニトリル6.0ml溶液を加え、14時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下溜去した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール 50:1)により精製を行い標題化合物(630mg,52%)を無色無定型物質として得た。
【0108】
[α]D27=−14.84(c1.05,CHCl3
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.86(br t,1H)、7.37−7.33(m,5H)、7.25(br d,1H)、7.16(br t,1H)、7.09(br t,1H)、6.59(br d,1H)、5.31(s,2H)、5.25−5.19(m,3H)、5.12−5.07(m,3H)、5.02−4.97(m,3H)、4.62−4.59(m,3H)、4.45−4.38(m,2H)、4.27(dd,3H,J=4.4,12.0Hz)、4.15(dd,3H,J=0.5,12.0Hz)、3.98−3.93(m,3H)、3.74−3.35(m,36H)、2.44−2.36(m,2)、2.33−2.28(m,4H)、2.24−2.16(m,2H)、2.10(s,9H)、2.06(s,3H)、2.05(s,6H)、2.03(s,9H)、2.01(s,9H)、2.16−1.92(m,4H)、1.68−1.66(m,4H)。
FAB−MS(positive):[M+H]+;m/z1879,[M+Na]+;m/z1901FAB−MS(negative):[M−H]−;m/z1876.9
【0109】実施例5 N−(5−ヒドロキシカルボニル−1−ペンタノイル)−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリ{2−(2′,3′,4′,6′−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−1)エトキシ}エトキシエチルアミドの合成
【0110】
【化40】


【0111】実施例4の化合物0.43g(0.23mmol)を酢酸エチルとエタノールの混合溶媒(1:1,12ml)に溶解し、10%パラジウム−炭素43mgを加えて27時間常圧水素気流下攪拌した。触媒を濾去し、濾液を減圧下濃縮した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール 50:1)により精製を行い標題化合物(195mg,48%)を無色無定型物質として得た。
[α]D27=−11.67(c1.01,CHCl3
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.51(br d,1H)、7.32(br t,2H)、7.08(br t,1H)、6.97(br d,1H)、5.25−5.19(m,3H)、5.12−5.07(m,3H)、5.02−4.97(m,3H)、4.63−4.59(m,3H)、4.48−4.41(m,2H)、4.27(dd,3H,J=4.8,12.4Hz)、4.15(dd,3H,J=1.6,12.4Hz)、3.98−3.94(m,3H)、3.76−3.35(m,36H)、2.39−2.33(m,6H)、2.31−2.25(m,2H)2.09(s,9H)、2.06−2.05(m,9H)、2.03(s,9H)、2.01(s,9H)、2.16−1.84(m,4H)、1.74−1.69(m,4H)。
FAB−MS(positive):[M+H]+;m/z1789,[M+Na]+;m/z1811,[M+2Na]+;m/z1833
【0112】実施例6 N−(5−ヒドロキシカルボニル−1−ペンタノイル)−L−グルタミル−L−グルタミン酸−α′,α,γ−トリ{2−(2′,3′,4′,6′−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−1)エトキシ}エトキシエチルアミドのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成実施例5の化合物45mg(25μmol)を乾燥アセトニトリルに溶解し、氷冷下N−ヒドロキシスクシンイミド3mg(25μmol)とジシクロヘキシルカルボジイミド5mg(25μmol)を加えX時間攪拌した。その後、反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残査をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:メタノール 20:1〜10:1)により精製を行い標題化合物(36mg,76%)を無色無定型物質として得た。
1H−NMR(400MHz in CDCl3)δTMS=7.72(br t,1H)、7.18(br d,2H)、7.08(m,2H)、6.64(br d,1H)、5.24−5.19(m,3H)、5.11−5.07(m,3H)、5.01−4.97(m,3H)、4.61−4.59(br d,3H)、4.47−4.37(m,2H)、4.26(dd,3H,J=4.8,12.4Hz)、4.14(dd,3H,J=2.4,12.4Hz)、3.99−3.93(m,3H)、3.74−3.34(m,36H)、2.86(br s,4H)、2.64(m,2H)、2.42−2.25(m,6H)、2.17−1.89(m,4H)、2.09(s,9H)、2.05(m,9H)、2.03(s,9H)、2.01(s,9H)、1.79−1.78(m,4H)。
【0113】合成例6アンチセンス核酸(化合物A)の合成。
定法であるホスホロアミダイト(phosphoramidite)法により5′−AGG−AAG−TGC−CGT−TTA−TAA−AG−3′の塩基配列を有する20メル(mer)のオリゴデオキシヌクレオチド ホスホロチオエート類縁体(oligodeoxynucleotide phosphorothioate analogue)を自動DNA合成機(Milligene製)を用いて固相合成した。ホスホロチオエート(phosphorothioate)化にはビューケイジ(Beaucage)試薬(Glen Research製)を用いた。合成用カラムは15μmol合成用のカラムを用いた。以上の反応は総て試薬及び機器に添付されている取り扱い説明書に従って行った。カラムから支持体を取り出して風乾した後、28%アンモニア水7mlに懸濁し、24時間室温で放置した。ガラスフィルター付ロートで濾過して支持体を取り除き、濾液を回収した。この濾液に等容量のイオン交換水を添加した後、1M 酢酸トリエチルアンモニウム(triethylammonium-acetate)(pH7.0)で平衡化したオリゴ−パック SP(Oligo-Pak SP)(Millipore製アンチセンス核酸精製用カラム)を通過させた。通過液を再びカラムに通した後、カラムに3%アンモニア水を通過させた。次いでイオン交換水を通過させた後、2%トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)を通し、2分間放置した。直ちにカラムをイオン交換水を通過させた。カラムに30%アセトニトリル(acetonitrile)を通過させ、通過液を回収した。通過液の溶媒を遠心エバポレーターを用いて除去し、白色固体34.5mgを得た。マススペクトル分析結果:m.w.6511.1±1.5。
【0114】実施例7ガラクトース誘導体−アンチセンス核酸(化合物B)の合成。
【0115】
【化41】


【0116】定法であるホスホロアミダイト(phosphoramidite)法により5′−AGG−AAG−TGC−CGT−TTA−TAA−AG−3′の塩基配列を有する20メル(mer)のオリゴデオキシヌクレオチド ホスホロチオエート類縁体(oligodeoxynucleotide phosphorothioate analogue)を自動DNA合成機(Milligene製)を用いて固相合成した。ホスホロチオエート(phosphorothioate)化にはビューケイジ(Beaucage)試薬(Glen Research製)を用いた。合成用カラムは15μmol合成用のカラムを用いた。固相合成した類縁体(analgue)の5′末端に、5′−修飾用物(Aminomodifier)(Glen Research製)を用いて6−アミノヘキサニル(6−aminohexanyl)基を付加した。以上の反応は総て試薬及び機器に添付されている取り扱い説明書に従って行った。反応の終了した合成カラムに1%(v/v)トリエチルアミン(Triethylamine)/DMF10mlを通し、さらにDMF20mlを通した。合成カラムから支持体を取り出して無水DMF3mlに懸濁し、これにガラクトース誘導体の活性エステル(実施例3)300mgを溶解したDMF2mlおよびトリエチルアミン(Triethylamine)50μlを添加した後、室温で24時間、緩やかに振とうした。支持体をアセトニトリル10mlで3回洗浄して風乾した後、28%アンモニア水7mlに懸濁し、24時間室温で放置した。ガラスフィルター付ロートで濾過して支持体を取り除き、濾液を遠心エバポレーターを用いて乾固させた。得られた白色固体にイオン交換水2mlを加えて良く攪拌した後、不溶性物質を遠心分離により除いた。上清0.2mlに等容量のホルムアミド(fomamide)と0.05% キシレンシアノールFF(Xylene cyanol FF)10μlおよび0.05%ブロモフェノールブルー(Bromophenol Blue)10μlを添加し、60℃で2分間加温した。氷水で急冷した後、5M 尿素(Urea)を含むポリアクリルアミド(polyacrylamide)ゲル(15cm×15cm×2mm)を用い、200Vで電気泳動した。
【0117】ブロモフェノールブルー(Bromophenol Blue)がゲルの先端まで移動した時点で電気泳動を終了した。蛍光物質を含むTLCプレート上にゲルを乗せてUV灯点灯下で観察しながら、蛍光発光せずに暗く抜ける部分をゲルから切り出した。これを電気泳動用の電極液とともに透析チューブ(分画分子量約3,000)に入れ、サブマリン型泳動漕を用いて100Vで12時間泳動した。チューブ内の電極液を回収し、凍結乾燥を行った。得られた白色固体を1M 酢酸トリエチルアンモニウム(triethylammonium-acetate)(pH7.0)2mlに溶解し、イオン交換水で平衡化したNAPS−25カラムを用いてゲルを濾過した。各フラクションをHPLCにより分析し、ガラクトース誘導体−アンチセンス核酸が含まれるフラクションを取り出し、凍結乾燥した。白色無定型固体22.4mgを得た。
マススペクトル分析結果:m.w.7971.6±1.1
【0118】合成例7アンチセンス核酸(化合物C)の合成。
合成例6と同様の方法で合成した。ただし、1μmol合成スケールのカラムを用い、5′−AACGTTGAGGGGCAT−3′の塩基配列(文献既知)を有するチオ化オリゴヌクレオチドを合成した。白色無定型固体3.65mgを得た。
【0119】実施例8ガラクトース誘導体−アンチセンス核酸(化合物D)の合成。
合成例7と同様の方法で合成した。ただし、アンチセンス核酸としては5′−AACGTTGAGGGGCAT−3′(15mer)の塩基配列を有するオリゴデオキシヌクレオチド ホスホロチオエート類縁体(oligodeoxynucleotide phosphorothioate analogue)とし、1μmol合成用のカラムを用いて合成した。白色無定型固体1.73mgを得た。
【0120】導入量の評価糖誘導体の活性エステルとアンチセンス核酸を固相合成支持体上で反応させた後、支持体を洗浄・風乾し、アンモニア水を加えて支持体から切り出した。反応溶液を一部採取し、溶媒を留去した後、5M尿素(Urea)を含むポリアクリルアミド(polyacrylamide)ゲル(10cm×10cm×1mm)を用い、20mAで電気泳動した。ゲルの銀染色を行い、スキャナーで染色像をコンピューターに取り込み、NIH Image(画像解析用プログラム)を用いて糖誘導体が導入されたアンチセンス核酸と導入されていないアンチセンス核酸の染色像の定量的解析を行った。この結果を表2に示す。
【0121】
【表2】


【0122】その結果、活性エステル法における使用した誘導体当たりの導入量は、従来の方法であるアミダイト法(WO96/30386)のそれに比較して3倍以上であり、反応のばらつきを示すCV値も小さかった。本発明の方法による糖誘導体のアンチセンス核酸への導入はアミダイト法よりも優れていることが示された。
【0123】薬理効果の評価この評価に使用した化合物A〜Dは前記の実施例及び合成例に記載のものであり、これに従来のアミダイト法での化合物Eを加えて評価した。これらの化合物A〜Eをまとめて示すと次の通りとなる。
化合物A:マウス肝炎ウイルスの増殖抑制効果を示すアンチセンス核酸化合物B:化合物Aに活性エステル法でガラクトース誘導体を導入したもの化合物C:human c-myc proto-oncogeneに対するアンチセンス核酸化合物D:化合物Cに活性エステル法でガラクトース誘導体を導入したもの化合物E:化合物Cにアミダイト法でガラクトース誘導体を導入したもの(WO96/30386の実施例19−2に記載のもの)
【0124】1)in vitro評価BALB/cマウス(6週令、雄)から単離し、96−wellマイクロプレートを用いて培養した肝実質細胞と、化合物Aあるいは化合物Bを0.1−1000nmol/Lの濃度で37℃で1時間インキュベートした。次いでマウス肝炎ウイルスJHM−X株100PFU/wellを添加し、更に37℃で1時間インキュベートした。細胞を新鮮な培地で洗浄した後に、新鮮な培地0.1mlを添加し、24時間培養した。培地を採取し、適宜希釈した。マウス肝炎ウイルスに対して感受性が高いマウス神経細胞腫由来のDBT細胞(DelayedBrain Tumor cell)を、あらかじめ6−wellマイクロプレートに培養してサブコンフルエントとし、これに希釈した培地0.1mLを添加して、37℃で1時間インキュベートした。更に0.5%メチルセルロース(methylcellulose)を含む培地2mlを添加し、24時間培養した。各ウエル(well)に形成されたプラークの数を計測し、これをウエル当たりのPFU(plaque-forming unit([PFU/well]treated))とした。同時に、化合物AあるいはBを添加していない場合のPFU(plaque-forming unit([PFU/well]control))を計測し、以下の式に従って複製阻害率(%Inhibition)を算出した。
【0125】複製阻害率(%Inhibition)=([PFU/well]control×希釈率−[PFU/well]treated×希釈率)/([PFU/well]control×希釈率)×100
【0126】その結果を第1図に示す。マウス肝炎ウイルスJHM−X株の増殖に対する抑制効果については、化合物Bは化合物Aに比べて著しく強い活性を示した(図1参照)。この効果は、ガラクトース誘導体をアンチセンス核酸に導入することにより、肝実質細胞に於けるアンチセンス核酸の抗ウイルス効果が増強されることを示している。
【0127】2)in vito評価BALB/cマウス(4週令、雄)に化合物Aあるいは化合物Bを0.1−1000μg/headの投与量で尾静脈から投与した。24時間後に再び投与し、直ちに腹腔内にマウス肝炎ウイルスJHM−X株1,000PFU/headを接種した。ウイルス接種から48時間後にマウスをエーテル麻酔下で放血致死せしめ、直ちに肝臓を摘出し、生理食塩水を用いて10%ホモジネートを調製した。ホモジネートを濾過滅菌した後に適宜希釈し、前記のインビトロ(in vitro)評価と同様な方法でプラーク数([PFU/well]treated)を計測した。同時に化合物AあるいはBを投与していない場合のplaque-forming unit([PFU/well]control)を計測した。得られた数値を以下の式に従って計算し、複製阻害率(%inhibition)を算出した。
【0128】複製阻害率(%inhibition)=([PFU/well]control×希釈率/肝重量−[PFU/well]treated×希釈率/肝重量)/([PFU/well]control)×希釈率/肝重量)×100
【0129】その結果を第2図に示す。マウス肝における肝炎ウイルスJHM−X株の増殖について、化合物Bの抑制効果は化合物Aに比べて約2倍に増強された(図2R>2参照)。この結果は、肝炎ウイルスに対するアンチセンス核酸の抗ウイルス効果がガラクトース誘導体の導入によって増強されることを示している。
【0130】3)先行特許実施例との活性の比較ヒト肝細胞癌由来の培養細胞株であるHepG2細胞を96well microplateに一晩培養した後、化合物Cあるいは化合物Dを培地中に図に表記した濃度で加えて96時間培養した。細胞数計測キット(Cell Counting Kit, 和光純薬製)を用いて生細胞数を計測し、下記の式に従って増殖阻害活性を測定した。
【0131】細胞増殖率(%Cell Growth)=(化合物添加時の細胞数)/(化合物非添加時の細胞数)×100
【0132】その結果を第3図に示す。HepG2細胞においては、ガラクトース誘導体(実施例3)を導入していない化合物Cに比べてガラクトース誘導体を活性エステル法で導入した化合物Dの増殖抑制効果は強く、その50%阻害濃度は約1.5μmol/Lであった(図3R>3参照)。
【0133】これらの試験結果から、アンチセンス核酸などの生理活性物質に活性エステル法を用いてガラクトース誘導体を導入することにより生物学的活性を増強することが可能であり、より有効性の高いアンチセンス核酸の開発が可能となることが示された。
【配列表】
配列番号:1配列の長さ:20塩基配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸(Other nucleic acid) 合成DNAアンチセンス:Yes 配列AGG AAG TGC CGT TTA TAA AG 20配列番号:2配列の長さ:15塩基配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸(Other nucleic acid) 合成DNAアンチセンス:NO 配列ATG CCC CTC AAC GTT 15配列番号:3配列の長さ:15塩基配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸(Other nucleic acid) 合成DNAアンチセンス:Yes 配列AAC GTT GAG GGG CAT 15配列番号:4配列の長さ:18塩基配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸(Other nucleic acid) 合成DNAアンチセンス:Yes 配列GGA CTC AGA CTC GCG TCC 18
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の糖残基を含有した化合物Bと、糖残基を含有していない化合物Aの、マウス肝実質細胞における抗ウイルス作用の試験の結果を示す。
【図2】本発明の糖残基を含有した化合物Bと、糖残基を含有していない化合物Aの、BALB/cマウスの肝臓における抗ウイルス作用の試験の結果を示す。
【図3】本発明の糖残基を含有した化合物Dと、糖残基を含有していない化合物Cの、HepG2細胞の増殖抑制試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】下記の一般式(I)、
【化1】


(上記式中、 Wは、炭素数1〜20の直鎖又は分枝したアルキレン基を表し、Xは、下記式(II)、
【化2】


(上記基中、Zは、オリゴヌクレオチドまたはその誘導体を表す)で表される基を表すか、又は、Xは隣接するWと一緒になって薬剤の活性部分を表し、T1は、−(CH2)s−(ここで、sは2〜10の整数を表す)、または、−(CH2CH2O)t−(CH22−(ここで、tは1〜3の整数を表す)を表し、T2は、−(CH2)u−(ここで、uは2〜10の整数を表す)、−(CH2CH2O)v−(CH22−(ここで、vは1〜3の整数を表す)、または、下記式(III):
【化3】


(上記基中、T1*およびT1**は、それぞれ同一又は異なって、前記のT1と同じであり、そしてn*、p*、q*、T3*、T4*およびF3は、それぞれ同一又は異なって、後述するn、p、q、T3、T4およびF1と同じことを意味する。)を表し、T3、T4、およびT5は、同一または異なっていてもよく、それぞれ−CONH−、−NHCO−、または−O−を表すが、但し、T3、T4、およびT5のいずれかが−O−を表すときは、他の2つの基は−O−以外の基を表し、T6は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、又は、−O−基を表し、F1およびF2は、同一または異なっていてもよく、単糖類もしくはこれらの誘導体、またはこれらからなる多糖類を表し、または、基X−W−は一緒になって薬剤を表わし、mは、0〜10の整数を表し、nは、0〜4の整数を表し、pは、0〜4の整数を表し、qは、0〜4の整数を表し、そしてrは、1を表す)で表される化合物、その塩又はその溶媒和物。
【請求項2】T3、T4、T5、T6、T3*、又は、T4*が−CONH−又は−NHCO−基である請求項1に記載の化合物、その塩又はその溶媒和物。
【請求項3】下記の一般式(Ia)
【化4】


(上記式中、Wは、炭素数1〜20の直鎖又は分枝したアルキレン基を表し、Xは、下記式(II)、
【化5】


(上記基中、Zは、オリゴヌクレオチドまたはその誘導体を表す。)で表される基を表すか、又は、基X−W−は一緒になって薬剤を表わし、T1は、−(CH2)s−(ここで、sは2〜8の整数を表す)、または−(CH2CH2O)2−(CH22−を表し、T2は、−(CH2)u−(ここで、uは2〜8の整数を表す)、−(CH2CH2O)2−(CH22−、または下記式(III):
【化6】


(上記基中、T1*およびT1**は前記したT1において定義された内容と、そしてF3は後述するF1において定義された内容と、それぞれ同一の内容を表すが、これらとは同一または異なっていてもよい)を表し、T6は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、又は、−O−基を表し、F1およびF2は、同一または異なっていてもよく、単糖類もしくはこれらの誘導体、またはこれらからなる多糖類を表し、そして、mは、3〜9の整数を表す)で表される化合物、その塩又はその溶媒和物
【請求項4】F1、F2、又は、F3が、同一または異なっていてもよく、ガラクトース、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、ラクトース、ラクトサミン、またはN−アセチルラクトサミンを表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、その塩又はその溶媒和物。
【請求項5】Zが、オリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチド、並びにこれらのホスホロチオエート誘導体およびメチルホスフェート誘導体から選択されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物、その塩又はその溶媒和物。
【請求項6】Zがアンチセンスオリゴヌクレオチドである請求項5に記載の化合物、その塩又はその溶媒和物。
【請求項7】Zが、配列番号1〜4に記載の配列から選択されるオリゴヌクレオチドである請求項5または6に記載の化合物、その塩又はその溶媒和物。
【請求項8】基X−W−が、生理活性を有する薬剤の反応性の官能基を除いた部分である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物、その塩又はその溶媒和物。
【請求項9】次の一般式(IV)、
【化7】


(上記式中、T1は、−(CH2)s−(ここで、sは2〜10の整数を表す)、または、−(CH2CH2O)t−(CH22−(ここで、tは1〜3の整数を表す)を表し、T2は、−(CH2)u−(ここで、uは2〜10の整数を表す)、−(CH2CH2O)v−(CH22−(ここで、vは1〜3の整数を表す)、または、下記式(III):
【化8】


(上記基中、T1*およびT1**は、それぞれ同一又は異なって、前記のT1と同じであり、そしてn*、p*、q*、T3*、T4*およびF3は、それぞれ同一又は異なって、後述するn、p、q、T3、T4およびF1と同じことを意味する。)を表し、T3、T4、およびT5は、同一または異なっていてもよく、それぞれ−CONH−、−NHCO−、または−O−を表すが、但し、T3、T4、およびT5のいずれかが−O−を表すときは、他の2つの基は−O−以外の基を表し、F1およびF2は、同一または異なっていてもよく、単糖類もしくはこれらの誘導体、またはこれらからなる多糖類を表し、mは、0〜10の整数を表し、nは、0〜4の整数を表し、pは、0〜4の整数を表し、qは、0〜4の整数を表し、そしてrは、1を表す)で表される化合物、その塩又はその反応性誘導体。
【請求項10】T3、T4、T5、T3*、又は、T4*が−CONH−又は−NHCO−基である請求項8に記載の化合物。
【請求項11】下記の一般式(IVa)
【化9】


(上記式中、T1は、−(CH2)s−(ここで、sは2〜8の整数を表す)、または−(CH2CH2O)2−(CH22−を表し、T2は、−(CH2)u−(ここで、uは2〜8の整数を表す)、−(CH2CH2O)2−(CH22−、または下記式(III):
【化10】


(上記基中、T1*およびT1**は前記したT1において定義された内容と、そしてF3は後述するF1において定義された内容と、それぞれ同一の内容を表すが、これらとは同一または異なっていてもよい)を表し、F1およびF2は、同一または異なっていてもよく、単糖類もしくはこれらの誘導体、またはこれらからなる多糖類を表し、そして、mは、3〜9の整数を表す)で表される化合物、その塩又はその反応性誘導体。
【請求項12】F1、F2、又は、F3が、同一または異なっていてもよく、ガラクトース、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、ラクトース、ラクトサミン、またはN−アセチルラクトサミンを表す、請求項8〜10のいずれか1項に記載の化合物、その塩又はその反応性誘導体。
【請求項13】請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を含有してなる医薬組成物。
【請求項14】悪性腫瘍治療剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、循環機能改善剤および内分泌機能改善剤からなる群から選択される医薬である請求項12に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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