説明

糖残基含有アクリル酸エステル類の取り扱い方法

【課題】 一般式(1)
【化1】


(式中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は水素原子、対イオンまたは有機残基を表し、Gは糖残基を表す)で表される新規な糖残基含有アクリル酸エステル類を貯蔵、輸送、移送などの取り扱いにおいて安定的に取り扱うことを可能とする方法を提供する。
【解決手段】1次酸化防止剤を添加し、かつその気相部の分子状酸素濃度を0.1〜10容量%にする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は糖残基含有アクリル酸エステル類の取り扱い方法に関する。詳しくは、一般式(1):
【0002】
【化2】


【0003】(式中の記号の定義は後記のとおりである)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類を安定的に取り扱う方法に関する。
【0004】
【従来の技術および問題点】上記一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類は本発明者らによって創製された新規化合物であり、アクリル酸エステル類と糖類またはアルキルグリコシド類とを酸触媒の存在下に反応させることにより得られる(特願平7−66306号明細書参照)。この糖残基含有アクリル酸エステル類は、エステル結合を介さずに側鎖に糖残基が導入されているため、耐加水分解性に優れているという特徴を有することから、このような性質が求められる各種分野に利用することができる。特に、それを重合して得られるアクリル酸エステル系重合体は、側鎖に糖残基を安定して有し、またグリコシド結合は生体内や自然界に存在する結合であることから、親水性、生分解性および生体適合性に特に優れ、表面処理剤、医療用材料、吸水性樹脂、界面活性剤などの種々の用途に好適に用いることができる。
【0005】しかし、本発明者らの研究によれば、上記一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類は重合性が高いため、その取り扱いの際に、特に過酷な条件に曝された時に重合してしまうなどの問題を生じることが判明した。また、この糖残基含有アクリル酸エステル類は空気中の酸素によって酸化を受け易く、酸化により変質する場合もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類を重合などの問題を生じることなく安定的に取り扱う方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類に1次酸化防止剤を添加し、かつその気相部の分子状酸素濃度を0.1〜10容量%の範囲に調整すると安定的に取り扱えることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、一般式(1):
【0009】
【化3】


【0010】(式中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は水素原子、対イオンまたは有機残基を表し、Gは糖残基を表す)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類を1次酸化防止剤の存在下、かつその気相部の分子状酸素濃度を0.1〜10容量%にして取り扱うことからなる糖残基含有アクリル酸エステル類の取り扱い方法である。
【0011】本発明における「取り扱う」との用語は、糖残基含有アクリル酸エステル類をタンクローリーなどによる輸送、タンクなどでの貯蔵、パイプ、バルブ、ノズルなどを含めた配管(例えば、貯蔵槽から反応系への供給ライン)での移送などを意味する。
【0012】
【発明の実施の形態】一般式(1)において、R1によって表される有機残基とは、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン化(例えば、塩素化、臭素化またはフッ素化)アルキル基、またはアリール基である。これらのうち、炭素数1〜2の低級アルキル基(メチルまたはエチル)およびアリール基(例えば、フェニル)が好適に用いられる。
【0013】R2で表される有機残基とは、上記R1の有機残基と同じであり、これらのうち炭素数1〜8の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシルまたはシクロヘキシル)およびアリール基(例えば、フェニル)が好適に用いられる。
【0014】R2で表される対イオンの代表例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛、銀などの遷移金属、およびアンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアンモニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、特にナトリウム、カリウム、マグネシウムなどが好適に用いられる。
【0015】Gで表される糖残基は、後記一般式(3)で示される糖類に由来するものであり、この糖類とは、特に制限はなく全ての糖類、すなわち単糖類、少糖類および多糖類などの糖類を基本骨格とする末端にヘミアセタール水酸基を含有する糖類の全てを包含する。そして、一般式(3)における−Hとは、これら糖類の1位の水酸基の水素を意味する。また、後記一般式(4)における−Rとは、これら糖類の1位の水酸基の水素とアルキル(R)置換したものを意味する。なお、本発明で使用する糖類は、その1位の水酸基以外の水酸基の一部または全部がアセチル基などのエステル結合、イソプロピリデン基などのアセタール結合、臭素などのハロゲン原子などにより保護されていてもよい。
【0016】上記単糖類の代表例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルマンノサミンなどの六炭糖類、キシロース、リボース、アラビノースなどの五炭糖類などを挙げることができる。少糖類の代表例としては、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソロホースなどの2糖類、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マンノトリオース、マンニノトリオースなどの3糖類、マルトテトラオースなどの4糖類、マルトペンタオースなどの5糖類などを挙げることができる。また、多糖類の代表例としては、セルロース、アミロース(デンプン)、チキン、キトサン(chitosan)などを挙げることができる。これらのうち、グルコース、ガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、マルトース、ラクトース、マルトトリオースおよびアミロース(デンプン)が好適に用いられる。これらは単独でも、あるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0017】本発明の一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類のなかでも、R1が水素原子、炭素数1〜2の低級アルキル基(メチルまたはエチル)またはアリール基(例えば、フェニル)、好ましくは水素原子であり、R2が水素原子、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウムまたはカルシウム)、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシルまたはシクロヘキシル)またはアリール基(例えば、フェニル)、好ましくは炭素数1〜8の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である糖残基含有アクリル酸エステル類が特に好ましい。さらに、Gがグルコース、ガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、マルトース、ラクトース、マルトトリオースまたはアミロース(デンプン)に由来するものである糖残基含有アクリル酸エステル類が特に好ましい。かくして、R1が水素原子、R2が炭素数1〜8のアルキル基、そしてGがグルコース、ガラクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、マルトース、ラクトース、マルトトリオースまたはアミロース(デンプン)に由来するものである糖残基含有アクリル酸エステル類が特に好ましい。 これら特に好適な糖残基含有アクリル酸エステル類を挙げると次のとおりである。
【0018】メチル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、メチル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、メチル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、メチル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、メチル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、メチル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、メチル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、メチル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;エチル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、エチル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、エチル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、エチル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、エチル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、エチル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、エチル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、エチル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;プロピル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、プロピル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、プロピル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、プロピル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、プロピル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、プロピル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、プロピル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、プロピル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;イソプロピル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、イソプロピル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、イソプロピル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、イソプロピル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、イソプロピル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、イソプロピル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、イソプロピル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、イソプロピル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;n−ブチル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、n−ブチル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、n−ブチル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、n−ブチル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、n−ブチル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、n−ブチル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、n−ブチル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、n−ブチル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;イソブチル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、イソブチル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、イソブチル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、イソブチル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、イソブチル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、イソブチル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、イソブチル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、イソブチル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;tert−ブチル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、tert−ブチル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、tert−ブチル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、tert−ブチル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、tert−ブチル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、tert−ブチル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、tert−ブチル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、エチル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;ペンチル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、ペンチル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、ペンチル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、ペンチル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、ペンチル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、ペンチル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、ペンチル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、ペンチル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;ヘキシル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、ヘキシル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、ヘキシル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、ヘキシル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、ヘキシル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、ヘキシル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、ヘキシル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、ヘキシル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;2−エチルヘキシル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(アミロシドメチル)アクリレート;シクロヘキシル−α−(グルコシドメチル)アクリレート、シクロヘキシル−α−(ガラクトシドメチル)アクリレート、シクロヘキシル−α−(マンノシドメチル)アクリレート、シクロヘキシル−α−(2−アセトアミド−2−デオキシグルコシドメチル)アクリレート、シクロヘキシル−α−(マルトシドメチル)アクリレート、シクロヘキシル−α−(ラクトシドメチル)アクリレート、シクロヘキシル−α−(マルトトリオシドメチル)アクリレート、シクロヘキシル−α−(アミロシドメチル)アクリレート。
【0019】本発明の一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類は、例えば一般式(2):
【0020】
【化4】


【0021】(式中、R1およびR2は一般式(1)の定義と同じである)で表されるアクリル酸エステル類と一般式(3):G−H(式中、Gは一般式(1)の定義と同じである)で表される糖類、または一般式(4):G−R3(式中、Gは一般式(1)の定義と同じであり、R3は低級アルキル基を表す)で表されるアルキルグリコシド類とを酸触媒の存在下に反応させて製造することができる。
【0022】一般式(2)において、R1およびR2で表される有機残基は前記と同じであり、一般式(2)で表されるアクリル酸エステル類の代表例としては、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、プロピル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、イソプロピル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、n−ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、イソブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、tert−ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ペンチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ヘキシル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、2−エチルヘキシル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、メチル−α−(1−ヒドロキシエチル)アクリレート、エチル−α−(1−ヒドロキシエチル)アクリレート、n−ブチル−α−(1−ヒドロキシエチル)アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(1−ヒドロキシエチル)アクリレートなどを挙げることができる。これらは単独でも、あるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0023】一般式(3)および(4)において、Gで表される糖残基は前記と同じである。また、一般式(4)においてR3で表されるアルキル基とは炭素数が1〜5の低級アルキル基であり、代表例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などを挙げることができる。一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類の代表例としては、メチルグルコシド、メチルガラクトシド、メチルマンノシド、メチル−N−アセチルグルコサミド、メチルマルトシド、メチルラクトシド、メチルマルトトリオシド、メチルアミロシド、エチルグルコシド、エチルガラクトシド、エチルマンノシド、プロピルグルコシド、イソプロピルグルコシド、n−ブチルグルコシド、n−ブチルガラクトシド、n−ブチルマンノシドなどが挙げられる。これらは単独でも、あるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0024】前記の一般式(2)のアクリル酸エステル類に対する一般式(3)の糖類または一般式(4)のアルキルグリコシド類の使用量は特に制限はないが、通常、アクリル酸エステル類1モルに対し0.01〜1モルである。
【0025】なお、一般式(2)で表されるアクリル酸エステル類は、例えば相当するアクリレート化合物とアルデヒド化合物とを塩基性イオン交換樹脂などの触媒の存在かで反応させる方法(特開昭6−135896号公報)など従来公知の方法により容易に得ることができる。
【0026】酸触媒の代表例としては、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの鉱酸およびその部分中和塩;タングストリン酸、モリブドリン酸、タングストケイ酸、モリブドケイ酸などのヘテロポリ酸およびその部分中和塩;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの有機スルホン酸等のプロトン酸;フッ化ホウ素、塩化ホウ素、塩化アルミニウム、二塩化スズ、四塩化スズなどのルイス酸;ベースレジンがフェノール系またはスチレン系樹脂であり、その形態がゲル型、ポーラス型またはマクロポーラス型のいずれかであり、交換基としてスルホン酸基およびアルキルスルホン酸基が単独または2種以上組み合わせて用いられる酸性イオン交換樹脂などを挙げることができる。これらは単独でも、あるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。酸触媒の使用量は、用いる一般式(2)のアクリル酸エステル類の種類にもよるが、通常、アクリル酸エステル類の重量基準で0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
【0027】上記反応は無溶媒でも行うことができるが、溶媒中で行うこともできる。溶媒としては、反応を阻害しないものであればいずれも使用することができるが、その代表例としては、ジプロピルエーテルなどのエーテル類、およびベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどの炭化水素類を挙げることができる。
【0028】また、上記反応を効果的に行うには、反応により生成する水または低級アルコールを系外へ除去するのがよい。反応により生成する水または低級アルコールを系外へ除去する方法としては、例えば減圧下で反応を行う方法、共沸溶媒を用いて反応を行う方法、乾燥剤の存在下で反応を行う方法などを挙げることができる。
【0029】上記反応を行う際の条件については特に制限はないが、通常、0〜150℃、好ましくは30〜120℃の範囲の温度で行うのがよい。また、反応圧力は常圧、加圧または減圧のいずれでもよい。
【0030】一般式(2)のアクリル酸エステル類と一般式(3)の糖類または一般式(4)のアルキルグリコシド類との反応により一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類が得られるが、この糖残基含有アクリル酸エステル類中には不純物が含まれており、多量の不純物を含む糖残基含有アクリル酸エステル類をそのまま重合するとゲル化が起こって目的とする重合体を得ることができなくなったり、また着色の原因となって、糖残基含有アクリル酸エステル類およびそれを重合して得られるアクリル酸エステル系重合体の商品価値が著しく損なわれる場合もある。そこで、一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類を取り扱う際には、これら不純物を予め除去して、その純度を高めておくのがよい。
【0031】このような不純物含量を低減させた、高純度の一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類を得る方法の一つとして、原料としての一般式(2)のアクリル酸エステル類中の不純物を予め除去して高純度のアクリル酸エステル類を用いる方法があるが、このような高純度アクリル酸エステル類を得ることは困難であり、また経済的にも不利である。他の方法としては、反応終了後に生成した糖残基含有アクリル酸エステル類をシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの精製手段により精製して不純物を除去する方法があるが、この方法は高価であって、経済的に不利であり、工業的に実施するには適していない。
【0032】工業的には、一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類を水と非混和性の有機溶剤と接触させることにより、糖残基含有アクリル酸エステル類中の不純物を抽出除去するのがよい。ここにいう有機溶剤とは、0〜3、好ましくは0.02〜2.8、更に好ましくは0.2〜2.5の範囲にある双極子モーメントを有し、水と2層を形成できる有機溶剤である。双極子モーメントが3以上の有機溶剤の場合、一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類も溶解して取り込むので、糖残基含有アクリル酸エステル類の収率が低下して好ましくない。
【0033】上記有機溶剤の代表例を挙げると次のとおりである。
【0034】脂肪族炭化水素類:ペンタン、シクロペンタン、1−ペンテン、3−ペンタノン、ヘキサン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキサノン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、オクタン、エチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、1−オクテン、デカン、1−ノネン、1−デセン、ドデカンなど。
【0035】芳香族炭化水素類:ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、スチレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンなど。
【0036】ハロゲン化炭化水素類:ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、3−クロロプロペン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、ブロモフォルム、ブロモエタン、1,2−ジブロモエタン、1,1,2,2−テトラブロモエタン、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードエタン、1−ヨードプロパン、2−ヨードプロパンなど。
【0037】ハロゲン化芳香族炭化水素類:フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、o−フルオロトルエン、m−フルオロトルエン、p−フルオロトルエン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、ブロモベンゼン、1−ブロモナフタレンなど。
【0038】エーテル類:エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ペンチルエーテル、イソペンチルエーテル、フェニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルビニルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロピラン、ビス(2−クロロエチル)エーテルなど。
【0039】脂肪族アルコール類:n−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−ヘプタノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノールなど。
【0040】芳香族アルコール類:フェノール、ベンジルアルコールなど。
【0041】エステル類:ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、酢酸ビニル、酢酸2−メトキシエチル、酢酸2−エトキシエチル、エチレングリコール二酢酸、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、ステアリン酸n−ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ベンジル、サリチル酸メチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マロン酸エチル、ケイ皮酸エチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、シュウ酸エチル、セバシン酸n−ブチルなど。
【0042】アセタール類:メチルアセタール、エチルアセタール、ジメトキシメタンなど。
【0043】ケトン類:2−ブタノンなど。
【0044】これらのうち、脂肪酸エステル類が好ましく、特にギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチルなどが好適に用いられる。
【0045】一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類を上記有機溶剤と接触させて糖残基含有アクリル酸エステル類中の不純物を有機溶剤で抽出除去するが、具体的には一般式(2)のアクリル酸エステル類と一般式(3)の糖類または一般式(4)のアルキルグルコシド類とを反応させて得られる一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類を含む反応液を水および有機溶剤と混合して糖残基含有アクリル酸エステル類を水層に、一方不純物は上記有機溶剤層へ移行させ、次いで水層と有機溶剤層とを分離する。この糖残基含有アクリル酸エステル類と水および有機溶剤との混合は種々の方法で行うことができる。すなわち、(a)反応液に水を添加して混合した後に有機溶剤を添加して混合する方法、(b)反応液に有機溶剤を添加して混合した後に水を添加して混合する方法、(c)反応液に水と有機溶剤とを添加して混合する方法、(d)水に反応液を添加して混合した後に有機溶剤を添加して混合する方法、(e)有機溶剤に反応液を添加して混合した後に水を添加して混合する方法、および(f)水と有機溶剤との混合物に反応液を添加して混合する方法のいずれも採用することができる。なお、上記のようにして得られる、糖残基含有アクリル酸エステル類を含む水層に上記有機溶剤を添加して精製操作を繰り返し行ってもよい。
【0046】上記精製操作における水および有機溶剤の使用量については特に制限はなく、水は生成する一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類を十分溶解し得る量で、また有機溶剤は不純物を十分抽出除去できる量で使用すればよい。
【0047】上記精製操作後の一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類はその水溶液として得られるが、必要に応じて、さらに水を、例えば減圧蒸留により除去してオイル状または固体状の糖残基含有アクリル酸エステル類とすることもできる。
【0048】かくして、本発明における、一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類の取り扱いの具体的方法としては、(a)オイル状または固体状の糖残基含有アクリル酸エステル類として取り扱う方法、(b)糖残基含有アクリル酸エステル類の水溶液として取り扱う方法、(c)糖残基含有アクリル酸エステル類を有機溶剤に溶解した溶液として取り扱う法などを挙げることができる。
【0049】上記(b)の水溶液として取り扱う場合、糖残基含有アクリル酸エステル類の濃度については特に制限はなく、その用途、取り扱いの種類などによって適宜決定できるが、0.5〜99重量%、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%の範囲で取り扱うのがよい。また、上記(c)の有機溶剤溶液として取り扱う場合、有機溶剤としては一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類を溶解し、かつ不活性な有機溶剤であればいずれも使用することができるが、その代表例としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノンなどのケトン類;クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの極性溶剤などを挙げることができる。この有機溶剤中の糖残基含有アクリル酸エステル類の濃度については特に制限はないが、0.5〜99重量%、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。
【0050】一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類の取り扱い温度についても特に制限はなく適宜決定できるが、上記(a)の場合は、0〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは0〜80℃、特に好ましくは0〜60℃の範囲で取り扱うのがよい。上記(b)の場合は、0〜80℃、好ましくは0〜60℃、特に好ましくは0〜40℃の範囲で取り扱うのがよい。また、上記(c)の場合は、0〜80℃、好ましくは0〜60℃、特に好ましくは0〜40℃の範囲で取り扱うのがよい。
【0051】本発明の方法によれば、一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類の取り扱いを1次酸化防止剤の存在下、かつその気相部の分子状酸素濃度を0.1〜10容量%の範囲に調整して行う。
【0052】1次酸化防止剤を存在させる方法に関しては、上記(a)の場合、オイル状または固体状の糖残基含有アクリル酸エステル類に1次酸化防止剤を粉体状として添加し混合してもよいし、オイル状または固体状の糖残基含有アクリル酸エステル類を水または有機溶剤に溶解して水溶液または有機溶剤溶液とし、これに1次酸化防止剤を添加して十分混合した後に水または有機溶剤を除去してもよい。なお、前記のように、糖残基含有アクリル酸エステル類中の不純物を有機溶剤と接触させて抽出除去する際に得られる糖残基含有アクリル酸エステル類の水溶液中に1次酸化防止剤を添加し、その後水を除去してオイル状または固体状にしてもよい。上記(b)または(c)の場合、糖残基含有アクリル酸エステル類の水溶液または有機溶剤溶液中に1次酸化防止剤を添加するのがよい。
【0053】本発明で使用できる1次酸化防止剤の代表例としては次のものを挙げることができる。
【0054】キノン系1次酸化防止剤:ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、クロラニル、2−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2−tert−ブチルメトキシヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミノヒドロキノンなど。
【0055】アルキルフェノール系1次酸化防止剤:2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,6−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−2−ジメチルアミノ−p−クレゾール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、スチリネートフェノール、α−トコフェノール、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2,2’−エチリデンビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−(4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、トリエチレングリコールビス[(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル))プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、2,2−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル−6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシヒドロ−シナモイルオキシル)エチル]イソシアヌレート、トリス(4−tert−ブチル−2,6−ジ−メチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、カルシウム−ビス(エチル−3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシベンジルフォスフェート、プロピル−3,4,5−トリヒドロキシベンゼンカルボネート、オクチル−3,4,5−トリヒドロキシベンゼンカルボネート、ドデシル−3,4,5−トリヒドロキシベンゼンカルボネート、2,2’−メチレンビス(4−m−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど。
【0056】アミン系1次酸化防止剤:アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンポリマー、アルドール−α−ナフチルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、フェノチアジンなど。
【0057】ジチオカルバミン酸銅系1次酸化防止剤:ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、エチレンジチオカルバミン酸銅、テトラメチレンジチオカルバミン酸銅、ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ヘキサメチレンジチオカルバミン酸銅、オキシジエチレンジチオカルバミン酸銅など。
【0058】これら1次酸化防止剤は単独でも、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これら1次酸化防止剤のなかでも、キノン系およびアルキルフェノール系1次酸化防止剤、特にヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコールなどのキノン系1次酸化防止剤および2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、スチリネートフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのアルキルフェノール系1次酸化防止剤が好適に用いられる。
【0059】上記1次酸化防止剤の使用量は、用いる上記一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類の種類にもよるが、この糖残基含有アクリル酸エステル類の0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲内となるように添加すればよい。1次酸化防止剤の使用量が0.001重量%よりも少ない場合には、前記の重合を十分抑制することができなくなる。一方、1次酸化防止剤の総量を5重量%よりも多くしても、1次酸化防止剤の増加に比例した重合防止効果の更なる向上は望めず、添加した1次酸化防止剤の一部が無駄になり、経済的に不利となる。
【0060】上記1次酸化防止剤とともに、一般に2次酸化防止剤として知られている酸化防止剤を共存させると糖残基含有アクリル酸エステル類の重合を更に効果的に防止することができる。
【0061】上記2次酸化防止剤の代表例を挙げれば次のとおりである。
【0062】硫黄系2次酸化防止剤:硫黄、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、テトラキス−メチレン−3−(ラウリルチオ)プロピオネートメタン、ジステアリル−3,3’−メチル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、β−ラウリルチオプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾールなど。
【0063】リン系2次酸化防止剤:トリス(イソデシル)フォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、フェニルジイソオクチルフォスファイト、フェニルジイソデシルフォスファイト、フェニルジ(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルイソオクチルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、ジフェニルトリデシルフォスファイト、フォスフォン酸[1,1−ジフェニル−4,4’−ジイルビステトラキス−2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エステル、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(ビフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)ジフォスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタントリフォスファイト、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフェートジエチルエステル、ソディウム−ビス(4−tert−ブチルフェニル)フォスフェート、ソディウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスフェート、1,3−ビス(ジフェノキシフォスフォニルオキシ)ベンゼンなど。これらの2次酸化防止剤は、単独でも、あるいは2種以上を適宜混合して用いてもよい。これらのうち、硫黄系2次酸化防止剤、特に硫黄、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートなどが好適に用いられる。
【0064】1次酸化防止剤と2次酸化防止剤との合計使用量は、前記の1次酸化防止剤単独の場合と同様に、糖残基含有アクリル酸エステル類の0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜1重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。そして、2次酸化防止剤の量は1次酸化防止剤の1〜200重量%の範囲内とすればよい。
【0065】さらに、1次酸化防止剤、または1次酸化防止剤および2次酸化防止剤にキレート剤を共存させることにより、重合を更に効果的に防止できるとともに、酸化防止剤の使用量を減らすことができる。
【0066】上記キレート剤の代表例を挙げれば次のとおりである。
【0067】キレート剤:エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、2,2’−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]など。
【0068】これらのキレート剤は、単独でも、あるいは2種以上を適宜混合して用いてもよい。これらのうち、特にエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが好適に用いられる。
【0069】上記キレート剤の使用量は、1次酸化防止剤、または1次酸化防止剤と2次酸化防止剤との合計量の0.0005〜100重量%、好ましくは0.005〜25重量%、特に好ましくは0.01〜10重量%の範囲内となるようにすればよい。キレート剤の使用量が0.0005重量%よりも少ない場合には、前述した重合を効果的に抑制できなくなる。また、キレート剤の使用量を100重量%よりも多くしても、キレート剤の増加に比例した重合防止効果のさらなる向上や、酸化防止剤の使用量のさらなる減少は望めず、添加したキレート剤の一部が無駄になり、経済的に不利となる。
【0070】1次酸化防止剤と2次酸化防止剤および/またはキレート剤とを組み合せ使用する場合、次の組み合せが好適に用いられる。
【0071】1次酸化防止剤+硫黄系2次酸化防止剤(特に、ヒドロキノン+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ヒドロキノン+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、メトキシヒドロキノン+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、メトキシヒドロキノン+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ベンゾキノン+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ベンゾキノン+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートなどの組み合せ。)
1次酸化防止剤+キレート剤(特に、ヒドロキノン+エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキノン+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、メトキシヒドロキノン+エチレンジアミン四酢酸、メトキシヒドロキノン+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゾキノン+エチレンジアミン四酢酸、ベンゾキノン+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール+エチレンジアミン四酢酸、2、6−ジ−tert−ブチルフェノール+2,2−オキシアミドビス[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン+エチレンジアミン四酢酸、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などの組み合せ。)
1次酸化防止剤+2次酸化防止剤+キレート剤(特に、ヒドロキノン+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート+エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキノン+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、メトキシヒドロキノン+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート+エチレンジアミン四酢酸、メトキシヒドロキノン+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゾキノン+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート+エチレンジアミン四酢酸、ベンゾキノン+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート+エチレンジアミン四酢酸、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン+ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート+エチレンジアミン四酢酸、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン+ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート+2,2−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などの組み合せ。)
本発明の方法によれば、上記のような1次酸化防止剤、あるいは1次酸化防止剤と2次酸化防止剤および/またはキレート剤とを一般式(1)の糖残基含有アクリル酸エステル類に存在させ、かつその気相部の分子状酸素濃度を0.1〜10容量%、好ましくは1〜8容量、更に好ましくは2〜7容量%にする。なお、この「気相部」とは、糖残基含有アクリル酸エステル類を取り扱う際にタンクローリー、タンクなどに充填したときの気相部を意味する。気相部の分子状酸素濃度を0.1〜10容量%にするには、窒素、アルゴンなどの不活性ガスと酸素との混合ガスで気相部を置換すればよい。
【0072】気相部の分子状酸素濃度が0.1容量%より少ないと糖残基含有アクリル酸エステル類の重合を効果的に防止することができない。なお、分子状酸素濃度が10容量%を超えると酸化により不純物が生成し、着色などの品質低下を引き起こす恐れがあるため気相部の分子状酸素濃度は10容量%以下に調整しなければならない。
【0073】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0074】なお、実施例および比較例で用いたエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレートは次の合成例により製造したものである。
【0075】合成例温度計および撹拌装置を取り付けた300mlの反応容器にエチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート130gおよびテトラキス[メチレン−3−(3,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.03gを仕込んで撹拌した。次に、上記の反応容器にグルコース36gとp−トルエンスルホン酸一水和物1.9gとを添加した後、撹拌しながら徐々に加熱した。次いで、反応溶液を100℃で1.5時間撹拌することにより反応を完了させた。そして、反応終了後、60℃に冷却し、反応溶液を無水炭酸ナトリウムで中和した後、ろ過した。得られた反応溶液に水60gを加えた後、撹拌しながら酢酸エチル120gを徐々に加えた。次いで、得られる混合溶液を室温で30分撹拌した後、静置し、水層および酢酸エチル層に分液した。分離した水層に、さらに酢酸エチル120gを加えて同様の操作を繰り返すことによりエチル−α−(グルコシドメチル)アクリレートの水溶液を得た。
【0076】8020型高速液体クロマトグラフィー(東ソー(株)製;以下「HPLC」という)により測定したエチル−α−(グルコシドメチル)アクリレートの収率は75モル%であり、純度は99重量%であった。なお、テトラキス[メチレン−3−(3,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの存在は認められなかった。
【0077】実施例1試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレート20gおよび1次酸化防止剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテル4.0mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相部の分子状酸素濃度7容量%)。
【0078】以上のように調整した試験管を50℃の油浴中で24時間振とうした後、HPLCおよびHLC8120型ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製;以下「GPC」という)によりエチル−α−(グルコシドメチル)アクリレートを分析した。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0079】実施例2試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレート20gおよび1次酸化防止剤としてのテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン4.0mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相部の分子状酸素濃度7容量%)。
【0080】以上のように調整した試験管を用いて実施例1と同様の操作・分析を行った。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0081】実施例3試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレートの50重量%水溶液20gおよび1次酸化防止剤としてのヒドロキノン2.0mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相部の分子状酸素濃度7容量%)。
【0082】以上のように調整した試験管を用いて実施例1と同様の操作・分析を行った。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0083】実施例4試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレート20g、1次酸化防止剤としてのテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン1.0mgおよびキレート剤としての2,2’−オキシアミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]1.0mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相部の分子状酸素濃度7容量%)。
【0084】以上のように調整した試験管を用いて実施例1と同様の操作・分析を行った。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0085】実施例5試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレートの50重量%水溶液20g、1次酸化防止剤としてのp−tert−ブチルカテコール1.0mgおよびキレート剤としてのエチレンジアミン四酢酸1.0mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相部の分子状酸素濃度7容量%)。
【0086】以上のように調整した試験管を用いて実施例1と同様の操作・分析を行った。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0087】実施例6試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレート20g、1次酸化防止剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテル1.0mgおよび2次酸化防止剤としてのジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート1.0mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相物の分子状酸素濃度7容量%)。
【0088】以上のように調整した試験管を用いて実施例1と同様の操作・分析を行った。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0089】実施例7試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレートの50重量%水溶液20g、1次酸化防止剤としてのテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン1.0mgおよび2次酸化防止剤としてのジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート1.0mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相部の分子状酸素濃度7容量%)。
【0090】以上のように調整した試験管を用いて実施例1と同様の操作・分析を行った。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0091】実施例8試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレート20g、1次酸化防止剤としてのヒドロキノン2.0mgおよび2次酸化防止剤としてのジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート0.2mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相部の分子状酸素濃度7容量%)。
【0092】以上のように調整した試験管を用いて実施例1と同様の操作・分析を行った。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0093】実施例9試験管にエチル−α−(グルコキシドメチル)アクリレートの50重量%水溶液20g、1次酸化防止剤としてのp−tert−ブチルカテコール0.2mg、2次酸化防止剤としてのジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート0.2mgおよびキレート剤としてのニトリロ三酢酸0.2mgを添加した。次いで、気相部を酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスにより置換した後、試験管を密栓した(気相部の分子状酸素濃度7容量%)。
【0094】以上のように調整した試験管を用いて実施例1と同様の操作・分析を行った。不純物の生成および重合はなく、品質の低下は認められなかった。
【0095】比較例1実施例1において、1次酸化防止剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテルを添加しないほかは同様の操作を行ったところ、2時間で重合が起こった。
【0096】比較例2実施例2において、1次酸化防止剤としてのテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを添加しないほかは同様の操作を行ったところ、2時間で重合が起こった。
【0097】比較例3実施例1において、酸素/窒素=7/93(vol/vol)の混合ガスの代わりに窒素ガスを用いたほかは実施例1と同様の操作を行ったところ(気相部の分子状酸素濃度0容量%)、2時間で重合が起こった。
【0098】
【発明の効果】本発明の方法によれば、一般式(1)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類を、その重合などによる品質劣化を引き起こすことなく、安定的に取り扱うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1):
【化1】


(式中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は水素原子、対イオンまたは有機残基を表し、Gは糖残基を表す)で表される糖残基含有アクリル酸エステル類を1次酸化防止剤の存在下、かつその気相部の分子状酸素濃度を0.1〜10容量%にして取り扱うことからなる糖残基含有アクリル酸エステル類の取り扱い方法。
【請求項2】 さらに2次酸化防止剤および/またはキレート剤を共存させる請求項1記載の方法。