説明

糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液から固形物を製造する方法

【課題】糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液(以下、糖蜜類)の固形化に際して、固形物(製品)の保存安定性が優れているとともに、糖蜜類中の有用成分が製品中で濃縮されるように行うことが必要とされる。
【解決手段】本発明は、糖蜜類から固形物を製造する方法を提供する。当該方法は、糖蜜類及び150g/l以上の見掛け比重を有する二酸化ケイ素を混合すること、当該混合物を乾燥して、上記固形物を得ることを含み、糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液の固形分重量と二酸化ケイ素の重量(水分を除く)との比が50:50〜80:20であり、及び上記固形物の水分が10重量%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液(以下、糖蜜類)から固形物を製造する方法に関する。詳しくは、本発明は、二酸化ケイ素を糖蜜類に混合して、上記固形物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甘蔗由来のエキスは、感染予防治療成分、抗エンドトキシン成分、ワクチンアジュバント成分、及び成長促進成分(下記特許文献1)、並びに抗酸化成分(下記特許文献2)などの有用物質を含むことが知られている。
【0003】
甜菜(ビート)のエキスは、ベタイン、ラフィノース、及びイノシトールなどの有用物質を含むことが知られている。ベタインは、飼料添加物、調味料、及び風味改良剤として使用されている(下記特許文献3)。ベタインの回収方法には、甜菜の廃糖蜜からクロマト分離法で回収する方法、当該廃糖蜜から更に蔗糖を回収した後のステフェン廃液から化学的に回収する方法、又はステフェン廃液若しくはクロマト廃液を原料とし、イオン交換樹脂を分離剤として用いて回収する方法がある(下記特許文献3)。ラフィノースは、ビフィズス菌を増殖させ、大腸菌、クロストリジウム属などの有害菌を抑制することによる整腸作用を有しており、当該整腸作用を期待して飼料として使用されている(下記特許文献4)。ラフィノースの回収方法には、上記廃糖蜜をクロマト分離する方法がある(下記特許文献4)。イノシトールは、水溶性のビタミン様物質であり、生体内のプラズマローゲン量を有意に増加させる機能を有しており、さらにアテローム性動脈硬化症の予防作用を有することが報告されている(下記特許文献5)。イノシトールの回収方法には、イオン交換樹脂を充填してなるイオン交換カラムに廃糖蜜を通液し、ベタインを除去した後に結晶として回収する方法がある(下記特許文献6)。また、その他に、甜菜由来の抗酸化性組成物が報告されている(下記特許文献7)。当該抗酸化性組成物は、ビートのクロマト廃液を原料として分子ふるいにより特定の分子量の画分を回収し、濃縮することによって得られる。さらに、甜菜の廃糖蜜をクロマト処理して糖分を回収した残りの画分を濃縮して得たクロマト画分濃縮物と廃糖蜜とを混合して酵母の培養培地を製造することができることが報告されている(下記特許文献8)。
【0004】
糖蜜類は液状であるために、その輸送、保存、取り扱い、乃至は摂取量の調節を容易にすることを目的としてその固形化が行われている。例えば、きびしぼりEX及びきびしぼりEX−Bは甘蔗由来の糖蜜類から製造され、またさとうきび抽出物MSX−100(いずれも三井製糖株式会社が製造及び販売)は糖蜜ではないが甘蔗汁から有効成分を含む画分を樹脂分離により濃縮した糖蜜に類似した画分から製造され、甘蔗由来の上記有用成分を含む。きびしぼりEX、きびしぼりEX−B及びさとうきび抽出物MSX−100にはそれぞれ、その製造過程において、固形化のために米ぬか、パン粉及びデキストリンが添加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−297046号公報
【特許文献2】特開2001−200250号公報
【特許文献3】特開平6−107611号公報
【特許文献4】特開平5−3758号公報
【特許文献5】特開2007−51132号公報
【特許文献6】特開2007−43940号公報
【特許文献7】特開2000−309778号公報
【特許文献8】特開平10−136975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糖蜜類は、糖類の濃度又は塩類の濃度が高い。従って、賦形剤を使わないで直接的に固形化する方法(例えば、凍結乾燥方法又はスプレードライ方法)を使用して糖蜜類を固形化することはできない。若しくは、糖蜜類を固形化することができたとしても、保存中に固形物(製品)が吸湿するために安定的に保存できない。また、吸湿によって、製品中の有用物質が分解するおそれもある。
【0007】
一方、賦形剤として例えば、上記した米ぬか、パン粉及びデキストリンを用いた場合、糖蜜類10〜20重量%に対して、90〜80重量%の賦形剤を配合する必要がある。そのために、出来た製品は、糖蜜類中の水分が賦形剤に置き換わっただけ、又は賦形剤により増量されただけであり、糖蜜類の有用成分は濃縮されず、逆に希釈される。有用成分含有量が低いと、結局は、輸送又は保存にあたり、賦形剤を実質的に輸送している又は保存しているのと同じであるともいえる。
【0008】
また、糖蜜類の固形化が賦形剤を用いて行われる場合、当該固形化は、賦形剤に糖蜜類を噴霧又は混合し、流動層造粒することによって行われる。そのために、流動層造粒において乾燥に時間を要する。
【0009】
そこで、糖蜜類の固形化は賦形剤に対して有用成分が多い方が良く、有用成分濃度が固形化された製品中でできるだけ高くなるように行われる必要がある。また、当該製品の保存安定性が優れている必要がある。さらに、当該固形化に際して、乾燥時間が短いこと、すなわち製造原価が安価である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、糖蜜類を固形化して固形物を製造する方法を提供する。当該方法は、糖蜜類及び150g/l以上の見掛け比重を有する二酸化ケイ素を混合すること、当該混合物を乾燥することを含み、上記二酸化ケイ素の固形分重量が上記糖蜜類の固形分重量に対して25〜75重量%であり、及び上記固形物の水分が当該固形物の重量に対して10重量%以下であることを特徴とする。
また、本発明は、糖蜜類と二酸化ケイ素との混合物を乾燥することにより得られた糖蜜類含有固形物を提供する。当該糖蜜類含有固形物において、上記二酸化ケイ素の固形分重量が上記糖蜜類の固形分重量に対して25〜75重量%であり、且つ上記固形物の水分含有量が当該固形物の重量に対して10重量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
糖蜜類の固形化のために賦形剤として150g/l以上の見掛け比重を有する二酸化ケイ素を使用することによって、当該賦形剤の配合量を少なくできる。結果として、当該固形物において、糖蜜類中の固形分及び有用成分が、米ぬか、パン粉及びデキストリンを賦形剤とした場合と比較して高含量である。従って、糖蜜類の有効成分当たりの輸送費の低減を図ることが可能であり、また保存及び取り扱いが容易であるという点で優れている。
また、本発明の固形化方法に従い得られた固形物は保存安定性に優れており、食品、飼料、及び肥料への応用が容易である。
さらに、製糖工場及び精製糖工場における最終糖蜜の廃棄方法としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例4で使用した試験設備の全体図を示す。
【図2】実施例7の試験No.1〜7において得られた各固形物の写真の写しである。
【図3】各種二酸化ケイ素の見掛け比重(g/l)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
糖蜜は、原料糖又は精製糖の製造工程において、副産物として生ずる糖蜜あるいは廃糖蜜であり、甘蔗由来の糖蜜(以下、「甘蔗糖蜜」ともいう)、又は甜菜由来の糖蜜(以下、「ビート糖蜜」ともいう)を含む。廃糖蜜は、モラセスともいう。
甘蔗糖蜜とは、砂糖を甘蔗から精製する際に生産される糖蜜であり、結晶化工程で得られた砂糖結晶と母液との混合物を遠心分離にかけ、砂糖結晶から分離して得られる振蜜である。甘蔗糖蜜は例えば、原糖製造工場における1番蜜、2番蜜、原糖廃蜜、或いは精製糖製造工場における洗糖蜜、1〜7番蜜、若しくは精製糖廃蜜、又はそれらの混合物である。
ビート糖蜜とは、砂糖をビートから精製する際に生産される糖蜜であり、甘蔗糖蜜と同様に、結晶化工程で得られた砂糖結晶と母液との混合物を遠心分離にかけ、砂糖結晶から分離して得られる振蜜である。
【0014】
糖蜜から糖分を除去した液とは、例えば、当該糖蜜を原料として固定担体を用いたカラムクロマトグラフィーで処理し、糖分を除去した画分(以下、「糖分除去画分」ともいう)、若しくは糖蜜のアルコール発酵液(以下、「アルコール発酵液」ともいう)、又はそれらの混合物をいう。
【0015】
糖分除去画分とは、糖蜜から、糖分、特にショ糖、グルコース及びフルクトースを除去した画分をいう。当該画分として例えば、甘蔗由来のエキスがある。甘蔗由来のエキスは、例えば上記特許文献1に記載されている方法に従い製造することができる。甜菜由来の糖分除去画分は、甘蔗由来のエキスの製造方法に準じて、甜菜の糖蜜から製造することが可能である。当該画分の他の例は、ビート工場から排出されるクロマト廃液又はステフェン廃液である。クロマト廃液とは、廃糖蜜から糖分を回収するために固定担体としてイオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーで処理して得られる非蔗糖画分である。ステフェン廃液とは、廃糖蜜に生石灰を加えることにより、糖分がカルシウムサッカレートとして沈殿することを利用して糖分を回収した残りの液である。
【0016】
アルコール発酵液とは、糖蜜に菌(例えば酵母菌)を加えて糖分からアルコールを製造する工程において、生成したアルコールを除くことにより脱糖処理したものをいう。酵母菌によって、糖蜜中の糖類(単糖類、二糖類など)が利用される。
【0017】
甘蔗由来のエキスの製造方法は下記の通りである。
甘蔗由来の糖蜜を、固定担体を充填したカラムに通液する。上記原料は、そのまま、又は水で任意の濃度に調整して、用いることができる。なお異物除去のために、カラムで処理する前に、原料をろ過、デカンテーション、又は遠心分離することが望ましい。ろ過の手法は特に限定されず、食品工業で広く使用されているスクリーンろ過、ケイソウ土ろ過、精密ろ過、限外ろ過等の手段を好ましく使用できる。固定担体としては、合成吸着剤及びイオン交換樹脂が好ましい。
【0018】
固体担体として合成吸着剤を用いる方法の好ましい態様は、以下の通りである。合成吸着剤としては、好ましくは有機系樹脂を用いることができ、例えば、芳香族系樹脂、アクリル酸系メタクリル樹脂、アクリロニトリル脂肪族系樹脂等が使用できる。さらに好ましくは芳香族系樹脂であり、特に無置換基型の芳香族系樹脂が使用できる。合成吸着剤として、例えばスチレン−ジビニルベンゼン系樹脂の芳香族系樹脂などが使用でき、芳香族系樹脂としては、例えば疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、無置換基型の芳香族系樹脂、無置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂等の多孔性樹脂が使用できる。より好ましくは無置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂が使用できる。そのような合成吸着剤は市販されており、例えばダイヤイオン(商標)HP−10、HP−20、HP−21、HP−30、HP−40、HP−50(以上、無置換基型の芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱化学株式会社製);SP−825、SP−800、SP−850、SP−875、SP−70、SP−700(以上、無置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱化学株式会社製);SP−900(芳香族系樹脂、商品名、三菱化学株式会社製);アンバーライト(商標)として、XAD−2、XAD−4、XAD−16、XAD−2000(以上、芳香族系樹脂、いずれも商品名、株式会社オルガノ製);ダイヤイオン(商標)SP−205、SP−206、SP−207(以上、疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱化学株式会社製);HP−2MG、EX−0021(以上、疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、いずれも商品名、三菱化学株式会社製);アンバーライト(商標)系として、XAD−7、XAD−8(以上、アクリル酸系エステル樹脂、いずれも商品名、株式会社オルガノ製);ダイヤイオン(商標)HP1MG、HP2MG(以上、アクリル酸系メタクリル樹脂、いずれも商品名、三菱化学株式会社製);セファデックス(商標)系としてLH20、LH60(以上、架橋デキストランの誘導体、いずれも商品名、アマシャムファルマシアバイオテク株式会社製)などが挙げられる。中でも、SP−850が特に好ましい。固定担体の量は、カラムの大きさ、溶媒の種類、固定担体の種類などによって変化する。原料の固形分に対して、0.01〜5倍湿潤体積量が好ましい。原料を上記カラムに通すことにより、原料中の有用物質は固定担体に吸着され、蔗糖、グルコース、フラクトースおよび無機塩類の大部分がそのまま流出する。固定担体に吸着された成分を、溶媒により溶出する。その前に残留する蔗糖、グルコース、フラクトースおよび無機塩類を水洗により充分に洗い流すことが好ましい。溶出溶媒は、水、メタノール、エタノール及びこれらの混合物から選ばれる。溶出溶媒は水とアルコールの混合溶媒、特にエタノール−水混合溶媒が好ましく、更に、室温において効率よく目的の効果を有する成分を溶出できるので、50/50〜60/40(体積/体積)エタノール−水混合溶媒が好ましい。更に、カラム温度を上げることにより、エタノール−水混合溶媒のエタノール混合比を減らすことができる。この場合、カラム内は常圧もしくは加圧された状態である。溶出速度はカラムの大きさ、溶媒の種類、固定担体の種類等によって変化するので特に限定されないが、SV=0.1〜10hr−1が好ましい。なお、SV(Space Velocity、空間速度)は、1時間あたり樹脂容積の何倍量の液体を通液するかという単位である。
【0019】
固定担体としてイオン交換樹脂を用いる方法の好ましい態様は、以下の通りである。イオン交換樹脂は、イオン交換の性質の観点から、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とに分類されるが、好ましくは陽イオン交換樹脂が使用できる。さらに好ましくは強酸性型、ナトリウムイオン型またはカリウムイオン型の陽イオン交換樹脂が使用できる。またイオン交換樹脂は、樹脂の形態の観点からは、ゲル型樹脂と、ポーラス型、マイクロポーラス型、ハイポーラス型などの多孔性樹脂とに分類されるが、好ましくはゲル型のイオン交換樹脂が使用できる。さらに好ましくは、強酸性型、ナトリウムイオン型またはカリウムイオン型であるゲル型の陽イオン交換樹脂が使用できる。そのようなイオン交換樹脂は市販されており、例えばダイヤイオン(商標)系としてSK1B、SK104、SK110、SK112、SK116(いずれも商品名、三菱化学株式会社)、UBK530、UBK550(クロマト分離用、いずれも商品名、三菱化学株式会社)、アンバーライト(商標)系として、アンバーライトIR120B、IR120BN、IR124、XT1006、IR118、アンバーリスト31、クロマトグラフ用アンバーライトCG120、CG6000(いずれも商品名、オルガノ株式会社)、ダウエックス(商標)系として、HCR−S、HCR−W2、HGR−W2、モノスフィアー650C、マラソンC600、50W×2、50W×4、50W×8(いずれも商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社)、ムロマック50WX(商品名、ムロマチテクノス株式会社)、ピュロライト(商標)系として、C−100E、C−100、C−100×10、C−120E、PCR433、PCR563K、PCR822、PCR833、PCR866、PCR883、PCR892、PCR945(いずれも商品名、エイエムピー・アイオネクス株式会社)等が挙げられる。中でも、UBKシリーズが特に好ましい。固定担体の量は、カラムの大きさ、固定担体の種類などによって変化する。原料の固形分に対して、好ましくは2〜10,000倍、より好ましくは5〜500倍湿潤体積量である。原料を上記カラムに通し、次に溶離液として水を用いてクロマトグラフィー処理し、得た多数の画分のうち波長420nmの光を吸収する画分を分取して目的とするエキスを得ることができる。以下において、この方法をイオンクロマト分離と言うことがある。通液条件は、原料の組成および固定担体の種類などによって変化する。溶離液として脱気処理した水を用い、単塔式回分分離法の場合、流速はSV=0.3〜1.0hr−1、サンプルの供与量は樹脂の1〜20%、温度は40〜70℃が好ましい。この分離法により得た画分の夫々について、波光420nmでの吸収、電気伝導度(塩分の量の尺度)、蔗糖、ブドウ糖及び果糖の濃度を分析し、時系列的にグラフに表すと、波長420nmでの光吸収のピーク、電気伝導度のピーク、蔗糖および還元糖のピークの順にピークが現れる。擬似移動床式連続分離法の場合、原料液供給量、溶離液流量、各画分抜き出し流量を原料の組成、固定担体の種類、樹脂量に合わせて設定するため、一般的な通液条件を示すことができない。原糖工場において2番蜜を原料として擬似移動床式連続分離法により得られる本画分の組成は、原料の種類およびイオン交換樹脂の分離能により変化するが、固形分当たりの蔗糖が6%以下、非糖分が90%以上、見掛純糖率が10%である。見掛純糖率は、固形分(ブリックス:Bx.)当たりの糖度(検糖計で測定した純蔗糖規定量に対する直接旋光度)の百分率である。また、単塔式回分分離法により得られる本画分は、2番蜜を原料として得られた画分の場合、固形分(凍結乾燥乾燥固形分)当たりのポリフェノール量が約5%、電気伝導度塩分が約44.7%、糖分は約5%である。さらに、上記波長420nmで吸収を示す画分あるいは非蔗糖画分に電気透析処理を行って、含有される塩分を減少または除去することができる。イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより得られる本画分は、塩濃度が高く、乾燥固形分あたりの硫酸灰分で約40%である。そのため、塩の味が強く、非常にしょっぱい味がするため、食品の味に影響を及ぼす。また、ヒトにおいては塩の取り過ぎは健康に害を及ぼすため、ヒトが摂取するためには塩類の濃度を低減させる必要がある。動物においてもヒトと同様に健康に影響を及ぼすため摂取できる塩類の濃度に限界がある。特に家畜においては、各種の塩類の摂取量が定められており、配合飼料などはそれに合わせた塩濃度に調整されている。電気透析による脱塩処理では陽イオンについてはナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどが、イオンの種類に関わらず、ほぼ均等に脱塩される。陰イオンについては塩素イオンおよび硫酸イオンのうち塩素イオンが選択的に脱塩され、硫酸イオンはあまり脱塩されないことが知られている。陰イオンの除去率と同等の割合で陽イオンが除去される。
【0020】
糖蜜類の脂質は一般に1重量%未満であり、例えば精製糖廃糖蜜の脂質は0gである(四訂 食品成分表、72頁、1996年)。よって、糖蜜類に含まれる脂質量は非常に少ない。
【0021】
二酸化ケイ素は、150g/l以上、好ましくは220〜290g/lの見掛け比重を有するものを糖蜜類の固形化のために使用する。見掛け比重の値は、タップ法(ISO 787-11 Tamped density not sieved)により測定したものである。二酸化ケイ素の見掛け比重が150g/l以上である場合には糖蜜類と二酸化ケイ素の混合物の粘度が低いために、乾燥させやすく、また固型化しやすい。また、二酸化ケイ素の見掛け比重が250以上である場合には、上記混合物の粘度が低く、さらに固まりやすく、乾燥されやすい。一方。二酸化ケイ素の見掛け比重が150g/l未満である場合には、上記混合物の粘度が高いために乾燥させにくく、また固型化しにくい。
二酸化ケイ素はまた、150m/g以上、好ましくは155〜195m/gの比表面積を有する。
二酸化ケイ素はまた、10〜200μmの平均粒径を有することが好ましい。
二酸化ケイ素はまた、250g/100g以上の給油量を有することが好ましい。給油量は、例えばDBP(ジブチルフタレート)給油量である。
二酸化ケイ素は、市販のものを使用することが可能であり、例えばカープレックス(商標)XR(DSL.ジャパン株式会社製)、シペルナート(商標)22(エボニック デグサ ジャパン株式会社製)を使用することができる。
二酸化ケイ素は、食品、飼料又は肥料に添加することが可能な等級のものが使用されうる。
【0022】
二酸化ケイ素の空隙率、細孔量又は測定のために、煮アマニ油又はDOPの給油量の規格が設定されている。これらはJIS K 5101-13-1(顔料試験方法―第13部:吸油量―第1節:精製あまに油法)及びJIS K 5101-13-2(顔料試験方法―第13部:吸油量―第2節:煮あまに油法)に準じている。一般に、油脂の吸収が二酸化ケイ素による固形性の指標となっている。
【0023】
本発明において、消泡剤は例えば食用油である。食用油は例えば、菜種油、ごま油、米糠油、サフラワー油、大豆油、コーン油、ひまわり油、及び綿実油である。食用油の他にも、シュガーエステル、シリコーン、グリセリン脂肪酸エステルなどの食品用消泡剤を用いることができる。
【0024】
糖蜜類と二酸化ケイ素の混合比は、いずれの糖蜜類においても、糖蜜類の固形分重量:二酸化ケイ素の重量(水分を除く)の比として、50:50〜80:20、好ましくは60:40〜80:20である。この混合物に、ブリックスが40〜60になるように、必要に応じて水を添加する。水の添加は、ホットプレート及びドラムドライヤー等の乾燥機上で適切に広がる濃度に調節するためである。また、糖蜜類と二酸化ケイ素との混合物の加熱時における発泡を抑え、且つ乾燥後における固形物の掻き取りをしやすくするために、該混合物に、必要に応じて消泡剤の添加量は、糖蜜類と二酸化ケイ素の混合液の全量(重量)当たり、0.01〜0.1重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%、さらに好ましくは0.1〜0.8重量%添加すればよい。また、消泡剤の添加量は、固形物(製品)の固形分当たり、0.01〜1.0重量%になるように添加してもよい。
二酸化ケイ素の重量(水分を除く)は、赤外水分計FD−240で測定した値である。
(1)糖蜜の場合
糖蜜の固形分重量:二酸化ケイ素の重量(水分を除く)=50〜80:50〜20(重量%)で配合し、必要に応じて消泡剤をこの混合物の全量(重量)に対して0.01〜1.0重量%添加すれば、目的品質を備えているように固形化が行える。
(2)糖分除去画分の場合
糖分除去画分の固形分重量:二酸化ケイ素の重量(水分を除く)=55〜80:45〜20(重量%)で配合し、必要に応じて消泡剤をこの混合物の全量(重量)に対して0.01〜1.0重量%添加すれば、目的品質を備えているように固形化が行える。
(3)アルコール発酵液の場合
アルコール発酵液の固形分重量:二酸化ケイ素の重量(水分を除く)=60〜80:40〜20(重量%)で配合し、必要に応じて消泡剤をこの混合物の全量(重量)に対して0.01〜1.0重量%添加すれば、目的品質を備えているように固形化が行える。
【0025】
糖蜜類と二酸化ケイ素は、糖蜜類に二酸化ケイ素を添加し、へら、又は攪拌機(ミキサー、ハンドミキサー)等で撹拌することによって混合することが可能である。
【0026】
上記混合物の乾燥方法は、ドラムドライヤー、ホットプレート、粉砕式蒸気加熱乾燥機又は攪拌式熱風乾燥機等を使用することが可能である。乾燥方法は、特には、ドラムドライヤーが好ましい。
【0027】
ドラムドライヤーは、伝導加熱型の乾燥機である。ドラムドライヤーには、シングルドラム型、ダブルドラム型及びツインドラム型がある。シングルドラム型には、トップフィード式ディップフィード式、スプラッシュフィード式、及び下部ロール転写式がある。ダブルドラム型には、内回し式、外回し式、及び真空式がある。ドラムドライヤーとして、上記のものをいずれも使用することができる。特には、ダブルドラム型が原料の投入しやすさ及び単位時間当たりの生産性の点で効率的であるので好ましい。
【0028】
ドラムドライヤーでは、回転するドラムの内部に熱媒体(一般に蒸気)を投入し、ドラムを加熱する。加熱されたドラムに上記液状の混合物を供給し、蒸発及び濃縮を行う。それと同時に、ドラムを回転させながら上記液状の混合物をドラムの表面上に薄膜状に付着させる。速やかに蒸発乾燥を行い、そしてドラムが一回転する間に乾燥物が固定されたナイフで連続的にドラム表面から掻き取られる。
風速、回転速度、及び蒸気投入速度は、ドラム表面上での加熱温度及び加熱時間に応じて値が決まるものである。糖蜜類が糖蜜であるか糖分除去後の画分であるかによって異なる。クリアランスはドラムの表面に付着させる薄膜の厚さを規定するが、糖蜜類、二酸化ケイ素及び水の混合物(原料液)のブリックスが40〜60で原料がドラムのすき間から落ちない程度にクリアランスを調節すると問題なく乾燥される。
【0029】
ホットプレートでは、糖蜜類と二酸化ケイ素との混合物をホットプレート上に広げ、加熱乾燥させる。当該混合物の水分が蒸発後に、へらで固形物を掻き取る。掻き取った固形物は、粉末状に簡単にくずれるものである。ホットプレートによる乾燥方法は、ドラムドライヤーによる乾燥方法を再現可能である。
【0030】
ホットプレートの加熱温度は、対象となる糖蜜類の種類によって適宜変更しうる。
糖蜜類が糖蜜である場合、例えばその温度を140℃以上に設定することが好ましい。温度が例えば120℃である場合、固形物がねっとりとしており、固形化が不十分であるために、掻き取りも困難であるためである。
糖蜜類がカラムクロマトグラフィーにより糖分を回収除去した画分である場合、温度は例えば110℃以上に設定することが好ましい。
糖蜜類が糖蜜のアルコール発酵液である場合、温度は例えば110℃以上に設定することが好ましい。
【0031】
ドラムドライヤーでの加熱では、ホットプレートでの加熱の場合よりも加熱面に液を薄く且つ均一に付着させることができる。よって、乾燥の効率がよい。従って、ドラムドライヤーで乾燥することによって、短時間に且つ効率良く糖蜜類を固形化することができる。
【0032】
本発明に従い製造された、糖蜜類からの固形物(以下、「固形物」という場合がある)の性状
固形物の水分は、当該固形物の0.1〜10重量%である。好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは3〜9重量%である。例えば、規格値として、6±3重量%に設定しうるがこれに限定されるものでない。水分量が低いほど粉末の流動性、取り扱い性は良くなる。しかし、水分量を低くするために過剰の熱を与えることになるために有用成分等の分解が懸念される。また、過剰の熱を与えるために、余分かコストを要するために好ましくない。水分量が10重量%を超えると固形化が不十分となる。また、固形化が不十分なために、製造又は取り扱いの面において困難になる。
【0033】
本発明に従い製造された固形物は例えば、食品、飼料、及び肥料に添加されうる。
食品は例えば、甘蔗及び/又は甜菜の有効成分を含む健康食品、エナジーバー、錠剤、ドリンク剤である。
飼料は例えば、ラット/マウス用飼料、家禽用飼料、豚用飼料、牛用飼料、愛玩動物用餌である。
【0034】
実施例
以下の実施例において、特に断らない限り、固形分、ブリックス(Brix)及び二酸化ケイ素の水分は、下記に従い測定した。
糖蜜類の固形分重量(固形分)は、ケイ砂法を用いて測定した(3g、105℃、3時間)。
ブリックスは、ブリックス計を用いて測定した。
固形物の水分は、赤外水分計FD−240(株式会社ケット科学研究所)を用いて測定した(1g、110℃、10分)。水分を測定するために、固形物をコーヒーミルで粉砕した。
二酸化ケイ素の水分は、赤外水分計FD−240を用いて測定した(1g、110℃、10分)。
【実施例1】
【0035】
(甘蔗糖蜜の固形化試験)
【0036】
1.材料
(1)糖蜜
下記糖蜜1及び糖蜜2を用いた。
糖蜜1:精糖最終糖蜜(三井製糖株式会社岡山工場)、固形分74重量%、水分26重量%、ブリックス74.8
糖蜜2:原糖最終糖蜜(宮古製糖株式会社城辺工場)、固形分77%、水分23%、ブリックス80.8
(2)二酸化ケイ素
カープレックス(商標)XR(DSL.ジャパン株式会社製)(Lot.016913、水分6.9%)を用いた。カープレックス(商標)XRの比表面積(m/g)は178であり、DBP給油量(g/100g)は273であり、見掛け比重(g/l、タップ法)は265であり、pHは6.1であり、水分(105℃、2時間)は6.6であり、伝導度は860(μs/cm)であった。また、カープレックス(商標)XRの固形分は、93.1%であった。カープレックス(商標)XRの平均粒径(μm)は、カタログ値によると100である。
(3)菜種油
キャノーラ油(味の素株式会社製)を用いた。
【0037】
2.試験方法
(1)固形化試験
1)ホットプレート(シャープ株式会社製:KX-13E2)を使用し、当該プレート上の温度が120℃に、又は150℃になるように設定した。
2)糖蜜1又は糖蜜2、二酸化ケイ素、及び水、並びに必要に応じて菜種油を、下記表1の試験No.1〜8に示す混合比で混合した。この混合物それぞれを各温度になっているホットプレートに流し込み、加熱した。所定の時間加熱後、固形物をへらを用いてホットプレートから掻き取り、糖蜜の固形物を得た。
【0038】
3.水分測定
上記で得られた各固形物の水分を測定した。水分を測定するために、当該固形物をコーヒーミルで粉砕し、目視で粉末になっていることを確認した。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
4.粘度
粘度は加熱したホットプレートに混合物を広げたときの広がり具合であり、その判断基準(×、△、○、◎)は下記の通りである。
× 高い
△ やや高い
○ やや低い
◎ 低い
【0041】
5.結果
(1)実施例
1)試験No.1では糖蜜1を用いた。二酸化ケイ素に加えて、さらに菜種油を加えた。糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する重量比を3.2とした。加熱は、150℃で、4分間行った。得られた固形物は掻き取りが容易であり、その水分は2.6重量%であった。
2)試験No.2では、糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する量比を2.7とし、菜種油の量を0.2gとし、加熱時間を3分とした以外は、試験No.1と同様にして固形化した。得られた固形物は掻き取りが容易であり、その水分は8.9重量%であった。
3)試験No.3では、糖蜜2を用いた。糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する量比を3.0とした以外は、試験No.2と同様にして固形化した。得られた固形物は掻き取りが容易であり、その水分は6.9重量%であった。
【0042】
(2)比較例
4)試験No.4では糖蜜1を用いた。糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する重量比を2.4とした。加熱は、120℃で、2分間行った。得られた固形物は、その固形化が不十分であるために掻き取りが困難であった。また、固形物はねっとりとしていた。
5)試験No.5〜7では糖蜜1を用いた。糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する量比をそれぞれ、3.0、2.4、1.5とした。加熱は、150℃で、2分間行った。得られた固形物は、その固形化が不十分であるために掻き取りが困難であった。また、固形物はねっとりとしていた。試験No.5〜7では、当該試験No順に二酸化ケイ素の量を糖蜜の量に対して増加させた。しかし、固形物の掻き取りの困難性は、二酸化ケイ素の量が増加しても改善されなかった。その理由として、混合物が加熱時に泡立ち、ホットプレート表面へ均一に付着しないことが一因として考えられた。
6)試験No.8では、糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する量比を4.1とし、菜種油の量を0.4gとし、加熱時間を3分とした以外は、試験8と同様にして固形化した。得られた固形物は、その固形化が不十分であるために掻き取りが困難であった。固形物の水分量は10重量%を超えていた。
【実施例2】
【0043】
(糖蜜のアルコール発酵液の固形化試験)
【0044】
1.材料
(1)糖蜜
糖蜜のアルコール発酵液(以下、発酵液)の原料として、実施例1の糖蜜1を用いた。
(2)酵母菌
日清スーパーカメリヤドライイースト顆粒(日清フーズ株式会社)を用いた。
(3)二酸化ケイ素
カープレックス(商標)XR(DSL.ジャパン株式会社製)(Lot.4009A、水分6.4%)を用いた。
【0045】
2.発酵液の調製
(1)糖蜜1をビーカー内でBx20に希釈した。当該希釈液6リットルに対して、酵母菌を50g添加し、攪拌した。
(2)48時間静置したところ、二酸化炭素の発生が見られなくなったので、薄層クロマトグラフィー(TLC)により、糖が資化されたかどうかを確認した。TLCの条件は、以下の通りである。
薄層プレート:TLCアルミニウムシート シリカゲル60F254(メルク社製)、0.2mm
展開溶媒:酢酸エチル:酢酸:水=3:3:1
発色剤:10%硫酸メタノール溶液
標準試薬:グルコース、フルクトース、スクロース
(3)発酵前と発酵後の糖蜜、そして標準試薬を薄層プレート上にスポッティングし、上記展開溶媒で展開した。その結果、発酵後のレーンにおいて、単糖(グルコース、フルクトース)、二糖(スクロース)のスポットの大部分が消滅していた。すなわち、単糖及び二糖の大部分が資化されていた。従って、糖蜜の発酵が充分に進んでいると判断した。
(4)発酵後の液を東洋濾紙No.2(アドバンテック東洋株式会社)で吸引濾過した。濾過助剤としてクニライト201(クニミネ工業社製)を使用した。
(5)濾液をロータリーエバポレーターでブリックス48.5になるまで濃縮した。当該濃縮液の固形分(ケイ砂法)は、43%であった。当該濃縮液が発酵液である。
【0046】
3.試験方法
(1)固形化試験
1)ホットプレート(CAVE製:K-9543)を使用し、当該プレート上の温度が約120℃になるようにつまみを調節した。
2)発酵液、二酸化ケイ素、及び水を、下記表2の試験No.1〜3に示す混合比で混合した。この混合物それぞれを上記温度になっているホットプレートに流し込み、加熱した。所定の時間加熱後、固形物をへらを用いてホットプレートから掻き取り、発酵液から固形物を得た。
【0047】
4.水分測定
上記各固形物の水分を測定した。水分を測定するために、当該固形物をミルサー(岩谷産業株式会社、IFM100)で粉砕し、引き続き500μmの目開きの篩で篩別した。篩下の固形物について水分を測定した。その結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
5.結果
(1)実施例
試験No.1では、糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する量比は3.0である。加熱は、120℃で、3分間行った。その結果、固形物の掻き取りは容易であった。当該固形物の水分は4.3重量%であった。
【0050】
(2)比較例
1)試験No.2では、加熱時間を2分とした以外は、試験No.1と同様にして固形化した。得られた固形物は掻き取りが困難であった。これは、固形物の水分量が多いためであると考えられる。なお、掻き取った固形物について粉砕が出来なかったために、固形物の水分を測定することができなかった。しかし、固形物の水分は10%を超えると想定される。
2)試験No.3では、糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する量比は4.1とした以外は、試験No.1と同様にして固形化した。得られた固形物は掻き取りが困難であった。これは、固形物の水分量が多いためであると考えられる。なお、掻き取った固形物について粉砕が出来なかったために、固形物の水分を測定することができなかった。しかし、固形物の水分は10%を超えると想定される。
【実施例3】
【0051】
(糖蜜をカラムクロマトグラフィーで処理し、糖分を除去した画分の固形化試験)
【0052】
1.材料
(1)2番蜜
当該2番蜜は、原糖工場(宮古製糖株式会社)において、結晶缶にて2回蔗糖結晶を回収し、遠心分離により結晶を除いた振蜜である。
(2)二酸化ケイ素
カープレックス(商標)XR(DSL.ジャパン株式会社製)(Lot.4009A、水分6.4%)を用いた。
(3)菜種油
日清キャノーラ油(日清オイリオグループ株式会社製)を用いた。
【0053】
2.糖分除去画分の調製
(1)原料の調製からイオン交換クロマト分離までの工程は連続的に行われるため、各工程の液の固形分濃度や組成は時間と共に若干変動するが、以下の濃度や組成は定常運転における測定値である。
(2)上記2番蜜を原料として、陽イオン交換樹脂を充填した分離塔を用いた擬似移動床式連続分離法により、イオン交換カラムクロマト分離を行った。
(3)2番蜜はブリックス(Bx.)が約85であった。この濃度はカラムクロマト処理を行うには高いので、ブリックスが約50になるように2番蜜を希釈した。これに、消石灰、炭酸ソーダを添加し不純物を凝集させ、珪藻土濾過を行った。得られた濾液は、ブリックス47.3、糖度23.6、純糖率49.9、還元糖分2.5%であった。当該濾液をイオン交換クロマトグラフィーの原料として用いた。
(4)陽イオン交換樹脂としてUBK530(三菱化学株式会社)を用いた擬似移動床式連続分離法によるイオン交換クロマトグラフィーを行った。樹脂を充填した分離塔は8分割されており、1塔当たりの樹脂量は6.5mである。原料液と溶離液(水)の供給、および蔗糖画分と非蔗糖画分の抜き出し位置を一定時間毎に切り替えることにより、連続的に供給、抜き出しを行った。定常時の既定値は、供給流量3m/時間、溶離水流量13.5m/時間、非蔗糖画分抜き出し流量12.13m/時間、蔗糖画分抜き出し流量4.37m/時間、切り替え時間267秒であった。このクロマトグラフィー処理により、蔗糖画分と非蔗糖画分が分離された。蔗糖画分は蔗糖含有量が固形分当たり約87%(HPLC分析による)であり、ブリックスは約35であった。蔗糖画分は清浄汁と混合して本工程に戻され、再び蔗糖を回収する操作を行った。また、非蔗糖画分は、蔗糖分が約0.3%(HPLC分析による)でブリックスが約8であった。この非蔗糖画分を濃縮缶により濃縮した。当該濃縮物(以下、「画分1」という)の固形分は34.9重量%であった。画分1は、ブリックス40.0、糖度2.3、純糖率5.8、還元糖分5.4重量%であった。
(5)上記画分1を、エバポレータでさらに濃縮した。当該濃縮物(以下、「画分2」という)の固形分は42.0重量%であった。
(6)上記非蔗糖画分の吸光度を測定するために、画分2を一晩凍結乾燥した。得られた凍結乾燥粉末0.25gを0.5mMリン酸バッファー(pH7.5)で100mlに調製した。当該液の吸光度を波長420nmで測定した。その吸光度は、1.11であった。
【0054】
3.試験方法
(1)固形化試験
1)ホットプレート(シャープ株式会社製:KX-13E2)を使用し、当該プレート上の温度が120℃、又は150℃になるように設定した。
2)画分1又は画分2、及び二酸化ケイ素、並びに必要に応じて菜種油を、下記表3の試験No.1〜9に示す混合比で混合した。この混合物それぞれを各温度になっているホットプレートに流し込み、加熱した。所定の時間加熱後、固形物をへらを用いてホットプレートから掻き取り、糖分除去画分の固形物を得た。
【0055】
4.水分測定
上記で得られた各固形物の水分を測定した。水分を測定するために、当該固形物をコーヒーミルで粉砕し、目視で粉末になっていることを確認した。その結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
5.結果
(1)実施例
1)試験No.1では、画分1を用いた。糖蜜(固形分)の二酸化ケイ素(固形分)に対する重量比を2.3とした。加熱は、120℃で、10分間行った。加熱時に小泡が見られた。得られた固形物は掻き取りが容易であり、その水分は2.6重量%であった。
2)試験No.2では、菜種油を0.1g添加した以外は、試験No.1と同様にして固形化した。加熱時に小泡が見られた。得られた固形物は掻き取りが容易であり、その水分は2.2重量%であった。菜種油を入れることによって、製造中の発泡による飛散が抑えられ、加熱むらがなくなる。
3)試験No.3では、加熱温度を150℃、加熱時間を5分とした以外は、試験No.1と同様にして固形化した。加熱時に発泡は見られなかった。得られた固形物は掻き取りが容易であり、その水分は2.0重量%であった。試験No.3では試験No.1と比べて加熱温度を120℃から150℃に上げたことによって、加熱時間が10分から5分に短縮された。その結果、試験No.3において、糖蜜中の有用成分の分解を試験No.1と比べて抑えることが可能である。
4)試験No.4では、加熱温度を150℃、加熱時間を3分とした以外は、試験No.2と同様にして固形化した。加熱時に発泡は見られなかった。得られた固形物は掻き取りが容易であり、その水分は2.8重量%であった。試験No.4では試験No.2と比べて加熱温度を120℃から150℃に上げたことによって、加熱時間が10分から3分に短縮された。また、試験No.4では菜種油を含むために試験No.3と比べて加熱時間が5分から3分に短縮された。その結果、試験No.3において、糖蜜中の有用成分の分解を試験No.2及びNo.3と比べて抑えることが可能である。
5)試験No.5では、菜種油を1.0g添加した以外は、試験No.4と同様にして固形化した。加熱時に発泡は見られなかった。得られた固形物は掻き取りが容易であり、その水分は5.3重量%であった。なお、試験No.5の混合物は加熱時の粘度がかなり低いために、乾燥機としてドラムドライヤーを使用した場合に展開付着しにくい可能性がある。
【0058】
(2)比較例
6)試験No.6では、画分2を用いた。加熱時間を1.5分とした以外は、試験No.1と同様にして固形化した。加熱時に泡が多く、乾燥処理が困難であった。得られた固形物は、その固形化が不十分であるために掻き取りが困難であった。当該固形物の水分は10.6%であった。なお、加熱時間をさらに増やし、固形分中の水分量を減らせば固形化はうまくいくであろうことが予測される。
7)試験No.7では、加熱温度を150℃とした以外は、試験No.6と同様にして固形化した。加熱時に泡が多く、乾燥処理が困難であった。得られた固形物は、その固形化が不十分であるために掻き取りが困難であった。当該固形物の水分は14.2%であった。なお、加熱時間をさらに増やし、固形分中の水分量を減らせば固形化はうまくいくであろうことが予測される。
8)試験No.8では、菜種油を0.1g添加した以外は、試験No.6と同様にして固形化した。得られた固形物は、その固形化が不十分であるために掻き取りが困難であった。当該固形物の水分は11.7%であった。なお、加熱時間をさらに増やし、固形分中の水分量を減らせば固形化はうまくいくであろうことが予測される。
9)試験No.9では、菜種油を1.0g添加した以外は、試験No.8と同様にして固形化した。得られた固形物は、その固形化が不十分であるために掻き取りが困難であった。当該固形物の水分は21.3%であった。なお、加熱時間をさらに増やし、固形分中の水分量を減らせば固形化はうまくいくであろうことが予測される。
【実施例4】
【0059】
(糖蜜をカラムクロマトグラフィーで処理し、糖分を除去した画分の固形化試験)
【0060】
1.材料
2番蜜、二酸化ケイ素、及び菜種油は、実施例3で使用したものと同じである。
2.糖蜜をカラムクロマトグラフィーで処理し、糖分を除去した画分の調製
実施例3と同様にして非蔗糖画分を得、当該非蔗糖画分を濃縮缶により濃縮した。当該濃縮物の固形分(以下、「画分3」という)は38.2重量%であった。画分3は、ブリックス41.9、pH5.79であった。
【0061】
3.試験方法
(1)試験機材
図1は、試験設備の全体図を示す。
ドラムドライヤー: ダブルドラムドライヤー(三菱マテリアルテクノ株式会社製)、ドラム寸法 φ311×L300×2個、伝熱面積 0.6m
フィードポンプ:モーノポンプ(兵神装備株式会社製)、ホースポンプ(株式会社イワキ製)
攪拌機:ハンドミキサー(日立工機株式会社製)
ボイラー:簡易型ボイラーSU−160(三浦工業株式会社):燃料は灯油である
(2)固形化試験
画分3及び二酸化ケイ素を、最終製品固形分中の画分3:二酸化ケイ素の重量比が70(固形分重量%):30(固形分重量%)になるように混合し、さらに菜種油0.1gを添加した。当該混合液を撹拌機で撹拌しながら、フィードポンプによりドラムドライヤーに送液した。
運転状況は下記の通りである:
回転数:2.0rpm
ドラムクリアランス:0.3mm
混合液温度:31〜34℃
熱源スチーム圧力:0.5MPaG
【0062】
4.水分測定
水分を経時的に測定した。当該固形物をコーヒーミルで粉砕し、目視で粉末になっていることを確認した。その結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
5.結果
Lot No.1〜12の生産中、混合液の供給流速が16.8/時間、単位面積当たりの生産量が約15kg/m・時間を維持するようにした。当該生産中、固形物(製品)の水分が約5%であり、固形物の安定した生産を行うことが出来た。
【実施例5】
【0065】
(糖蜜をカラムクロマトグラフィーで処理し、糖分を除去した画分の固形化試験)
【0066】
1.材料
2番蜜、二酸化ケイ素、及び菜種油は、実施例3で使用したものと同じである。
2.糖蜜をカラムクロマトグラフィーで処理し、糖分を除去した画分の調製
実施例4で調製した画分3を用いた。
【0067】
3.試験方法
(1)試験機材
実施例4で使用した試験機材を用いた。
(2)固形化試験
画分3 7.48kg及び二酸化ケイ素 1.04kgを混合し、最終製品固形分中の画分3:二酸化ケイ素の重量比が75(固形分重量%):25(固形分重量%)になるように混合し、さらに菜種油0.1g(混合液当たり0.1重量%)を添加した。当該混合液を撹拌機で撹拌しながら、フィードポンプによりドラムドライヤーに送液した。
運転状況は下記の通りである:
回転数:2.0rpm
ドラムクリアランス:0.3mm
混合液温度:32〜33℃
熱源スチーム圧力:0.5MPaG
スクレーパ部温度:105℃
【0068】
4.水分測定
当該固形物をコーヒーミルで粉砕し、目視で粉末になっていることを確認した後に水分を測定した
【0069】
5.結果
固形物の水分は6.2重量%であった。
【実施例6】
【0070】
(糖蜜の固形化試験)
【0071】
1.材料
生和糖業株式会社喜界工場の原料糖製造工程から得られる2番蜜を用いた。二酸化ケイ素及び菜種油は、実施例3で使用したものと同じである。
【0072】
2.試験方法
(1)試験機材
実施例4で使用した試験機材を用いた。
(2)固形化試験
1)試験1
糖蜜2.25kg及び二酸化ケイ素0.95kgを混合し、最終製品固形分中の糖蜜:二酸化ケイ素の重量比が70(固形分重量%):30(固形分重量%)になるように混合し、さらに菜種油0.1gを添加した。当該混合液を撹拌機で撹拌しながら、フィードポンプによりドラムドライヤーに送液し、固形物1を得た。
運転状況は下記の通りである:
回転数:2.0rpm
ドラムクリアランス:0.3mm
混合液温度:33.2℃
熱源スチーム圧力:0.5MPaG
スクレーパ部温度:87℃
2)試験2
糖蜜2.16kg及び二酸化ケイ素0.71kgを混合し(最終製品固形分中の糖蜜:二酸化ケイ素の重量比が75(固形分重量%):25(固形分重量%)、さらに菜種油0.1gを添加した。当該混合液を撹拌機で撹拌しながら、フィードポンプによりドラムドライヤーに送液し、固形物2を得た。
運転状況は下記の通りである:
回転数:2.0rpm
ドラムクリアランス:0.3mm
混合液温度:33.0℃
熱源スチーム圧力:0.5MPaG
スクレーパ部温度:92℃
【0073】
3.水分測定
当該固形物をコーヒーミルで粉砕し、目視で粉末になっていることを確認した後に水分を測定した。
【0074】
4.結果
固形物1及び固形物2の水分はそれぞれ、6.6重量%及び5.4重量%であった。
【実施例7】
【0075】
(各種二酸化ケイ素による固形化試験)
【0076】
1.材料
(1)糖分除去画分
実施例3で述べた糖分除去画分の調製と同様の方法で製造した糖分除去画分(以下、「画分4」という)を使用した。画分4の固形分は、36.4重量%、ブリックス40.3、水分63.6重量%であった。
(2)二酸化ケイ素
下記表5に示す二酸化ケイ素No.1〜7を使用した。表5は、二酸化ケイ素1〜7それぞれの固形分、水分、平均粒径、比表面積、DBP吸油量、及び見掛け比重の各データを示す。
【0077】
【表5】

【0078】
2.試験方法
(1)固形化試験
1)ホットプレート(象印マホービン株式会社製:EA-BV35-HW)を使用し、当該プレート上の温度が140℃になるように設定した。
2)画分4、各二酸化ケイ素、及び菜種油を、下記表6の試験No.1〜7に示す混合比で混合した。この混合物それぞれを各温度になっているホットプレートに流し込み、加熱した。5分間加熱後、固形物をへらを用いてホットプレートから掻き取り、画分4の各固形物を得た。
【0079】
3.水分測定など
1)上記で得られた各固形物の水分を測定した。水分を測定するために、当該固形物をコーヒーミルで粉砕し、目視で粉末になっていることを確認した。その結果を表6に示す。図2は、試験No.1〜7において得られた各固形物の写真の写しである。
2)各固形物の品温は、乾燥数分後にデジタル温度計を使用して測定した。
【0080】
4.粘度
実施例1と同じ判断基準を使用した。
【0081】
5.固まりやすさ
固まりやすさの判断基準は、以下の通りである。
× 固まりにくい
△ やや固まりにくい
○ やや固まりやすい
◎ 固まりやすい
【0082】
6.総合評価の判断基準
× 製造上及び製品として不適である
△ 製造上及び製品としてやや不満である
○ 製造上及び製品としてやや満足である
◎ 製造上及び製品として満足である
【0083】
【表6】

【0084】
5.結果
(1)実施例
1)試験No.1では乾燥時にプレート上によく広がり、得られた固形物はパラパラとしていた。該固形物の水分は、3.7重量%であった。
2)試験No.2では、得られた固形物は、試験No.1の固形物と同様に乾燥時にプレート上によく広がり、得られた固形物はパラパラとしていた。該固形物の水分は、1.6重量%であった。
3)試験No.3では、得られた固形物は固めであったが、パラパラとしていた。該固形物の水分は、3.1重量%であった。
4)試験No.4では、得られた固形物はせんべい状で、乾燥時にホットプレートによく広がったが、プレートからの剥離性が悪かった。該固形物の水分は、1.4重量%であった。
5)試験No.5では、得られた固形物は塊があり、乾燥時にホットプレートによく広がったが、粉砕性が悪かった。該固形物の水分は、1.0重量%であった。
【0085】
(2)比較例
1)試験No.6では、得られた固形物は粘度が高く、乾燥されにくいことから固まりにくかった。ただし、混合物を薄くすれば、乾燥可能であった。該固形物の水分は、18.6重量%であった。
2)試験No.7では、得られた固形物は粘度が高く、一部にべたつく固まりがあった。該固形物の水分は、25.9重量%であった。
【0086】
図3及び表6の結果から、固形化において、二酸化ケイ素の見掛け比重が150g/l以上である場合に、粘度が低かった。また、該見掛け比重が250以上である場合に粘度が低く、さらに固まりやすく、乾燥されやすかった。
また、二酸化ケイ素の平均粒径が100μmである場合に、最も粘度、固まりやすさの点でよかった。固まりにくさは、平均粒径が大きいほどよい。
【実施例8】
【0087】
(固形化エキスの分析及び保存安定性試験)
【0088】
1.試験対象
実施例4で製造したLot No.1〜12の固形物を用いた。
【0089】
2.固形物の評価
(1)糖分(スクロース、グルコース及びフラクトース)含量の測定
上記固形物は二酸化ケイ素を含むために以下の前処理を行った。各固形物0.5〜1gをミリQ水 50mLにメスアップしたこの懸濁液を5分間超音波にかけ、0.8μmのメンブランフィルター(DISMIC-25cs、アドバンテック東洋株式会社)、引き続き0.45μmのメンブランフィルター(Millex 0.45μm、日本ミリポア株式会社)でろ過した。該ろ過液を、下記条件下でHPLC分析に供した。
【0090】
HPLC分析の条件は、以下の通りである。
装置: 東ソー製HPLC8010シリーズ(ポンプ:CCPD、オーブン:CO−8010、検出器:RI−8010、オートサンプラー:AS−8010)
カラム:Shodex製Ionpack KS800P(ガードカラム)+KS801+KS802(粒径:8mm、サイズ:4.6×300mm)
溶離液:水
流速:1.0mL/分
温度:60℃
注入量:30μL/溶媒:水
検出器:示差屈折検出器(RID)、分析時間:28分
定量法:標準液(スクロース(Suc):56mg/20mL、グルコース(Glu):14mg/20mL、フルクトース(Fru):14mg/20mL)による一点検量線
【0091】
(2)二酸化ケイ素含量の測定
上記固形物は二酸化ケイ素を含むために以下の前処理を行った。各固形物1gを秤量後、140mLの水に懸濁した。この懸濁液を0.45μmのメンブランフィルター(セルロースアセテートC045A090C、アドバンテック東洋株式会社)でろ過し、さらに該フィルターを水で洗った。水で洗ったこのフィルターをろ紙ごと白金るつぼに入れて、110℃(乾燥機)で乾燥した。白金るつぼを取り出し、メッケルバーナーでろ紙を灰化後、バーナーから白金るつぼを降ろした。3gのKCO又はNaCOを白金るつぼに添加し、金属のスパーテルで混合した。再度、メッケルバーナーで予備灰化した。これを電気炉に入れて、1000℃で、30分間アルカリ融解させた。アルカリ融解後、室温まで放冷した。これを少量のミリQ水で溶解後、PP製のメスフラスコで100mLにメスアップした。当該サンプル液をモリブデンによる分光光度計法を使用した分析に供した。
上記サンプル溶液1mlをPP製の50mLメスフラスコに入れ、50倍希釈した。この希釈サンプルを10mL取り、PP製の50mLメスフラスコに入れた。1.5モル/Lの硫酸をメスフラスコに2mL添加混合後、2分間静置した。0.1g/mLのモリブデン酸アンモニウム水溶液を2mL添加後、ミリQ水で50mLにメスアップした。5分間静置後、分光光度計(U−2000、株式会社日立製作所製)で波長400nmの吸光度を測定した。ブランクのセルにはブランク溶液(ミリQ水46mL+1.5モル/Lの硫酸2mL+モリブデン酸アンモニウム2mL)を用いた。
検量線用の標準液は、次の通りである。乾燥した二酸化ケイ素(カープレックスXR)0.2gを白金るつぼに入れ、3gのKCO又はNaCOを白金るつぼに添加した。これを電気炉に入れて、1000℃で、30分間アルカリ融解させた。アルカリ溶融後、室温まで放冷した。これを少量のミリQ水で溶解後、PP製のメスフラスコで200mLにメスアップし、更に10倍希釈したものを標準液とした(50μg/mL二酸化ケイ素溶液)。
検量線は、標準液より1,3,5,10,及び15mLをそれぞれPP製の50mLメスフラスコに分注し、ミリQ水20mLを添加後に1.5モル・Lの硫酸2mLを添加した。混合後に2分間放置後、0.1g/mLのモリブデン酸アンモニウム水溶液を2mL添加し、ミリQ水で50mLにメスアップした。5分間静置後、サンプル溶液と同様に波長400nmの吸光度を測定し、検量線を作成した。二酸化ケイ素含量は以下の式より算出した。
二酸化ケイ素含量(g/kg)=C/2×W
C:サンプル中の二酸化ケイ素濃度(μg/mL)
W:サンプル採取量(g)
【0092】
(3)ポリフェノール含量の測定
上記固形物は二酸化ケイ素を含むために前処理を行った。前処理は、各固形物100mgを秤量後、純水で100mLにメスアップした。この懸濁液を5分間超音波にかけ、0.8μmのメンブランフィルター(DISMIC-25cs、アドバンテック東洋株式会社)でろ過した。該ろ過液を、フォーリン・チオカルト法を使用した分析に供した。
【0093】
(4)水分含量の測定
赤外水分計FD−240を用いて測定した(1g、110℃、10分)
【0094】
(5)セジメント(異物)の測定
各固形物5gを6Nの水酸化ナトリウム水溶液250mLに添加し、ホットプレートで加熱しながら完全に溶解させた。ポリフロンフィルターPF100(アドバンテック東洋株式会社製)をセットした吸引ろ過器でろ過後、当該フィルターを純水で洗浄した。そして、ポリフロンフィルターを取り外して、乾燥機で乾燥した。フィルター上の異物の確認を目視又は実体顕微鏡で行った。
【0095】
(6)嵩密度の測定
各固形物を粉砕機SCM−40A(柴田科学機械工業株式会社製)で粉砕後、該粉砕物を1mmメッシュ篩に通した。該通過物(サンプル)を嵩密度の測定に供した。嵩密度の測定は、ABD粉体特性測定器(筒井理化学器械製)を用いて行った。測定は3回行い、その平均値を算出した。
【0096】
ABD粉体特性測定器による測定は、下記の通りである。
各サンプル約100gを装置のホッパーよりサンプル容器へ疎充填し(容器上部ですり切り)、この時の重量を(A)とした。疎充填後、サンプル容器上部に延長枠を乗せて、測定サンプルを充填し、3分間タッピング(上下動)した。タッピング後、延長枠を外したとき(容器上部ですり切り)の重量を(B)とした。測定前にサンプル容器の重量を測定し、この重量を(C)とした。また、試料容器の容量を(D)とした。下記式により、疎充填嵩密度、密充填密度、及び圧縮度を算出した。
・測定サンプル重量=(A)−(C)
・タッピング後の測定サンプル重量=(B)−(C)
・疎充填嵩密度=測定サンプル重量/(D)
・密充填嵩密度=タッピング後の測定サンプル重量/(D)
・圧縮度=(密充填嵩密度−疎充填嵩密度)/密充填嵩密度×100
【0097】
(7)エキス含量
固形物中のエキス含量は、下記式により算出した。
エキス含量(重量%)=100−水分(重量%)−糖分(重量%)−二酸化ケイ素(重量%)
水分、糖分及び二酸化ケイ素の各含量は、上記(4)、(1)及び(2)でそれぞれ求めたものである。
【0098】
3.試験方法
Lot No.1〜12の製品それぞれをクラフト袋(内袋ビニール、PP製)に包装し、三井製糖株式会社総合研究所敷地のプレハブ内で保存した(空調、湿度管理は無し)。保存は、約4年半保存した。
その結果を表7、表8及び表9に示す。
【0099】
【表7】

【0100】
【表8】

【0101】
【表9】

【0102】
表7は、製造直後における各製品の水分含量、並びに、製造から2ヶ月後及び製造から約4年5ヶ月後における各製品の水分含量、外観及び性状を示す。
製造から2ヶ月後において、No.1〜12の製品のいずれにおいても水分含量の変化は僅かなものであり、製造時と同様に約5%であった。製造から約4年5ヶ月後において、水分含量において0.5〜2.3%の変化が認められた。しかし、その水分含量は高々6%前後であり問題ない吸湿量である。
また、製造から2ヶ月後、及び4年5ヶ月後において、No.1〜12の製品のいずれにおいても外観(茶色の粉末)及び性状(流動性のある乾燥粉末)に変化はなかった。
以上より、長期間の保存においても、固形物の水分含量及び流動性は安定していた。
【0103】
表8は、製造から2ヶ月後における水分、糖、二酸化ケイ素、画分、及びポリフェノールの各含量、並びにセジメント試験の結果を示す。
水分含量については、上記表7の説明において述べた通りである。
糖含量については、固形化前よりも減少しているが、No.1〜12の製品のいずれにおいてもそれほどばらつきがなく、平均4.6%とほぼ一定していた。
二酸化ケイ素含量については、平均28.2%であり、配合量から計算される値(画分4と二酸化ケイ素の固形分重量比7:3)付近であった。よって、固形化前の混合が均一な状態で維持されていると考えられる。
ポリフェノール含量については、製品固形分当り約3〜3.5gであり、No.1〜12の製品のいずれにおいてもそれほどばらつきがなかった。
セジメントについては、No.1〜12の製品のいずれにおいても異物が認められず、合格であった。
【0104】
表9は、製造から2ヶ月後における、嵩密度及び充填性の結果を示す。
嵩密度は疎充填で0.73g/mlであり、密充填で0.84g/mlであった。素充填の嵩密度は、グラニュ糖及びざらめで0.9、上白糖及び三温糖で0.6、小麦粉で0.5、及び食塩で1.2であることから、No.1〜12の製品は充填性がよいといえる。
【実施例9】
【0105】
(ビート廃蜜の固形化試験)
【0106】
1.材料
(1)糖蜜
ビート廃蜜は、北海道糖業株式会社本別製糖所から供与されたものを用いた。ビート廃蜜の性状は、下記の通りである:ブリックス 78;水分(重量%) 25;固形分(重量%) 75;固形分当たりの蔗糖量(重量%) 62.7;固形分当たりの蔗糖、フルクトース、グルコース、及び還元糖の量(重量%) 18.4;灰分(重量%) 0.8;その他(重量%) 18.1。
(2)二酸化ケイ素
シペルナート(商標)22(エボニック デグサ ジャパン株式会社)(水分6.9重量%)を用いた。シペルナート(商標)22の比表面積(m/g)は163であり、DBP給油量(g/100g)は269であり、見掛け比重(g/l、タップ法)は266であり、pHは6.3であり、水分(105℃、2時間)は5.4であり、伝導度は940(μs/cm)であった。また、シペルナート(商標)22の固形分は、93.2%であった。カープレックス(商標)XRの平均粒径(μm)は、カタログ値によると100である。
(3)菜種油
日清キャノーラ油(日清オイリオグループ株式会社製)を用いた。
【0107】
2.試験方法
(1)固形化試験
1)ホットプレート(象印マホービン株式会社製:EA-BV35-HW)を使用し、当該プレート上の温度が150℃になるように設定した。
2)ビート廃蜜、二酸化ケイ素、及び菜種油を、下記表10に示す混合比に水を190ml加えて混合した。この混合物をホットプレートに流し込み、5分間、加熱した。所定時間の加熱後、固形物をへらを用いてホットプレートから掻き取り、ビート廃蜜の固形物を得た。
【0108】
3.水分測定
上記で得られた固形物の水分を測定した。水分を測定するために、当該固形物をコーヒーミルで粉砕し、目視で粉末になっていることを確認した。
【0109】
【表10】

【0110】
5.結果
得られた固形物の水分は、4.7%であった。また、固形物の安定した生産を行うことができた。
【実施例10】
【0111】
(ビートのクロマト廃液の固形化試験)
【0112】
1.材料
(1)糖蜜
クロマト廃液は、北海道糖業株式会社本別製糖所から供与されたものを用いた。クロマト廃液の性状は、下記の通りである:ブリックス 55;水分(重量%) 47.5;固形分(重量%) 52.5;固形分当たりの蔗糖量(重量%) 20.2;固形分当たりの蔗糖、フルクトース、グルコース、及び還元糖の量(重量%) 1.3;灰分(重量%) 15.5;その他(重量%) 63.0。
(2)二酸化ケイ素
実施例10と同じ二酸化ケイ素を用いた。
(3)菜種油
実施例10と同じ菜種油を用いた。
【0113】
2.試験方法
1)ホットプレート(象印マホービン株式会社製:EA-BV35-HW)を使用し、当該プレート上の温度が150℃になるように設定した。
2)クロマト廃液、二酸化ケイ素、及び菜種油を、下記表11に示す混合比で混合した。この混合物をホットプレートに流し込み、5分間、加熱した。所定の時間加熱後、固形物をへらを用いてホットプレートから掻き取り、ビート廃蜜の固形物を得た。
【0114】
3.水分測定
実施例10と同じ方法で行った。
【0115】
【表11】

【0116】
5.結果
得られた固形物の水分は、4.8%であった。また、固形物の安定した生産を行うことができた。
【実施例11】
【0117】
(エナジーバー)
実施例1の試験No.1により得られた固形物(以下、固形物Aという)、実施例1の試験No.3により得られた固形物(以下、固形物Bという)、実施例4により得られたLot No.12の固形物(以下、固形物Cという)、実施例9により得られた固形物(以下、固形物Dという)、及び実施例10により得られた固形物(以下、固形物E)をそれぞれ用い、下記表12に示す配合に従いエナジーバー1〜5をそれぞれ製造した。製造方法は下記の通りである。
薄力粉及び上記固形物を混合し、調理用篩いに掛けておく。室温に戻した無塩バターに粉糖を加えてよく混ぜる。これに、少しずつ溶き卵を入れてよく混ぜる。これに、さらにレーズン及びアーモンド大豆を入れて軽く混ぜる。これに、上記ふるいに掛けた薄力粉及び上記固形物の混合物を数回に分けて入れ、切るように混ぜる。これを約1.5cmの厚さに伸ばし、170℃のオーブンで20分間焼いた。適当な大きさにカットし、エナジーバー1〜5をそれぞれ製造した。
【0118】
【表12】

【実施例12】
【0119】
(健康食品(錠剤))
固形物A〜Eをそれぞれ用い、下記表13に示す配合に従い健康食品(錠剤)をそれぞれ製造した。製造方法は下記の通りである。
表13に示す配合で材料を混合し、打錠機HT-AP18SS-II(株式会社畑鉄工所製)で打錠した。運転条件は下記の通りである:杵形状 φ8×R10;回転数(rpm) 30;充填深さ(mm) 3.88;本圧厚み(mm) 1.02;本状上杵入込(mm) 3.0;予圧厚み(mm) 1.52 ;予圧上杵入込(mm) 3.0;及び打錠圧力(kgf) 2.1。
【0120】
【表13】

【実施例13】
【0121】
(ドリンク剤)
固形物A〜Eをそれぞれ用い、下記表14に示す配合に従いドリンク剤をそれぞれ製造した。製造方法は下記の通りである。
表14に示す配合で材料を混合し、溶解した。当該溶液を、95℃で20分間殺菌した後、無菌的に120mL容のねじ口キャップ付きビン容器に充填した。
【0122】
【表14】

【実施例14】
【0123】
(ラット/マウス用飼料)
固形物A、B及びEをそれぞれ用い、下記表15に示す配合の原料を混合してラット/マウス用飼料1〜3を製造した。
【0124】
【表15】

【実施例15】
【0125】
(家禽用飼料)
固形物A、B及びEをそれぞれ用い、下記表16に示す配合の原料を混合して家禽用飼料1〜3を製造した。
【0126】
【表16】

【実施例16】
【0127】
(豚用飼料)
固形物A、B及びEをそれぞれ用い、下記表17に示す配合の原料を混合して豚用飼料1〜3を製造した。
【0128】
【表17】

【実施例17】
【0129】
(肥料)
固形物A〜Eをそれぞれ用い、下記表18に示す配合の原料を混合して肥料1〜5を製造した。
【0130】
【表18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液から固形物を製造する方法であって、
糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液と、150g/l以上の見掛け比重を有する二酸化ケイ素とを混合すること、
当該混合物を乾燥して、上記固形物を得ること
を含み、
糖蜜又は糖蜜から糖分を除去した液の固形分重量と二酸化ケイ素の重量(水分を除く)との比が50:50〜80:20であり、及び
上記固形物の水分が10重量%以下である、
前記方法。
【請求項2】
二酸化ケイ素の平均粒径が10μm以上200μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二酸化ケイ素の比表面積が150m/g以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記混合することにおいて、上記混合物の重量と消泡剤の重量との比が100:0.01〜1.0である消泡剤を混合することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
消泡剤が油である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に従い得られた固形物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に従い得られた固形物を含む飲食品。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に従い得られた固形物を含む飼料。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に従い得られた固形物を含む肥料。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−229484(P2011−229484A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104416(P2010−104416)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】