説明

糖衣チューインガム及びその製造方法

【課題】口に入れた瞬間に速やかに、かつ強い味が発現する糖衣チューインガムを提供する。
【解決手段】以下の工程を含むことを特徴とする、糖衣チューインガムの製造方法:
(i)チューインガム部に糖衣掛けし、表面に凹凸を有する糖衣層を形成する工程;
(ii)前記糖衣層の凹部に、風味剤を付着させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速やかに、かつ強い味が発現する糖衣チューインガム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖衣チューインガムにおいて、従来技術では、糖衣層に、酸味料や香料等を配合し、風味付けをする方法があるが(特許文献1〜5)、添加する酸味料や香料の量に制約があった。糖衣層中に多く配合しても、食べた瞬間の味の発現は弱く、また糖衣最外層に付着させても、糖衣層が滑らかな形状であれば、一回当りの付着できる量は限定され、結果的に、食べた瞬間の味の発現は弱いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4494536号
【特許文献2】特許第3801818号
【特許文献3】特開2008-125482
【特許文献4】特許第3562660号
【特許文献5】特許第4482432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、口に入れた瞬間に速やかに、かつ強い味が発現する糖衣チューインガムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の糖衣チューインガム(以下、「糖衣ガム」と称する場合がある)は、チューインガム部を糖衣層で被覆した構造を有し、糖衣層の表面には凹凸を有する。この凹凸の凹部に風味剤を付着、充填する。本発明では、糖衣層の表面に凹部を形成し、この凹部に風味剤を埋め込んだ状態で付着させたので、隣接する糖衣チューインガムが衝突しても風味剤は多量に保持され、喫食時に風味剤の香味を強く感じることができる。従来、糖衣層は表面が平滑になるようにコーティングすることが常識であり、表面に凹凸のある糖衣層は、コーティング不良の製品であると認識されていた。ところが、本発明では糖衣層の表面の凹凸を積極的に活用して、風味剤を保持することで、強い香味を速やかに発現できることを見出した。
【0006】
本発明は、以下の糖衣チューインガムとその製造方法を提供するものである。
項1. 以下の工程を含むことを特徴とする、糖衣チューインガムの製造方法:
(i)チューインガム部に糖衣掛けし、表面に凹凸を有する糖衣層を形成する工程;
(ii)前記糖衣層の凹部に、風味剤を付着させる工程。
項2. 前記糖衣層は、チューインガム部に表面が平坦な第1糖衣層を形成し、次いで第1糖衣層の外側に、表面に凹凸を有する第2糖衣層を形成することにより作製される、項1に記載の方法。
項3. 糖衣形成用の回転釜の回転数を抑制することで糖衣層に凹凸を形成する、項1又は2に記載の方法。
項4. チューインガム部と糖衣層を有する糖衣チューインガムであって、糖衣層の表面の凹部に風味剤を付着させてなる、糖衣チューインガム。
項5. 前記糖衣層は、表面が平坦な内側の第1糖衣層と、表面に凹部を有する第2糖衣層の2層構成からなる、項4に記載の糖衣チューインガム。
項6. 前記風味剤が香料もしくは酸味料もしくは甘味料を含有したものである項4又は5に記載の糖衣チューインガム。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、糖衣の表面に凹凸を施すことで、表面積を大きくして風味剤を付着・保持しやすくする。風味剤を塗布すると凹部に入り込み、結果的に、多くの風味剤を付着させることができる。その結果、得られた糖衣チューインガムは口に入れた瞬間に速やかに、強い味を発現させることを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】実施例1で製造された糖衣チューインガムの顕微鏡写真。凹凸糖衣(風味パウダー済)表面を示す。
【図1B】凹凸糖衣(風味パウダー済)断面1を示す。溝の深さは34.08μm。
【図1C】凹凸糖衣(風味パウダー済)断面2を示す。幅は385.49μm、溝の深さは48.18μm。
【図1D】通常糖衣製品 表面を示す。
【図1E】通常糖衣製品 断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
本発明において、風味剤としては、酸味料、香料、甘味料などが挙げられ、これらの1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用することができる。酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。香料としては、、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘系香料;アップル、バナナ、チェリー、グレープ、メロン、ピーチ、パイナップル、プラム、ラズベリー、ストロベリーなどのフルーツ系香料;バニラ、コーヒー、ココア、チョコレートなどのビンズ系香料;ペパーミント、スペアミントなどのミント系香料;オールスパイス、シナモン、ナツメグなどのスパイス系香料;アーモンド、ピーナッツ、ウォルナッツなどのナッツ系香料が挙げられる。香料の成分としては、メントール類(特にl−メントール)、メントン、バニリン、エチルバニリン、桂皮酸、ピペロナール、d−ボルネオール、カンフル、アントラニル酸メチル、桂皮酸メチル、シンナミックアルコール、N−メチルアントラニル酸メチル、メチルβ−ナフチルケトン、リモネン、リナロール、イソチオシアン酸アリルなどが挙げられる。甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、ステビア、ネオテーム、ソーマチンなどの高甘味度甘味料、ぶどう糖、果糖、タガトースなどの単糖類、ショ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、パラチノースなどの二糖類、水飴、オリゴ糖、やマルチトール、ラクチトール、ソルビトール、還元パラチノース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴などの糖アルコールなどが挙げられる。好ましい甘味料としては、マルチトール、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール、アセスルファムK、アスパルテーム、スクラロースなどが挙げられる。また、酸味料、香料、甘味料などの分散性をよくするために、でん粉、加工デンプン、デキストリン、微粒酸化ケイ素、乳化剤等を適宜加えてもよい。
【0010】
風味剤は、水、エタノール等の溶剤ないしバインダーで溶液ないし液体として表面に噴霧、乾燥して糖衣層の凹部に付着させてもよく、溶解、分散、懸濁ないし湿らせて糖衣表面の凹部に塗布、乾燥して付着させてもよく、バインダーとなる溶液を噴霧後、粉末のまま表面に噴霧、乾燥して付着させることができる。風味剤の付着は、糖衣釜で行うことが好ましい。
【0011】
風味剤の糖衣層表面への付着量は、糖衣チューインガムの表面積1cm当たり200〜5000μg程度、好ましくは500〜4000μg程度である。また、糖衣層は、糖衣チューインガムに対し、10〜50質量%程度、好ましくは15〜45質量%、より好ましくは20〜40質量%程度である。チューインガム部は、糖衣チューインガムに対し、90〜50質量%程度、好ましくは85〜55質量%、より好ましくは80〜60質量%程度である。
【0012】
糖衣層は、表面に凹凸があり凹部を有する限り、1層から構成されていてもよく、2層又はそれ以上の糖衣層から構成されていてもよい。例えば2層構成の場合チューインガム部の側に表面が平滑な第1糖衣層を形成し、その外表面に凹凸ないし凹部を有する第2糖衣層を形成してもよい。
【0013】
糖衣層の凹部及び突部は、糖衣表面全体に形成される。従って、風味剤も糖衣チューインガムの表面全体に分布する。糖衣チューインガムの表面は、糖衣の凸部と風味剤がまだら模様に、あるいは一方が縞状に点在するように存在する(図1参照)。風味剤の量が多ければ、糖衣チューインガム表面の状態は風味剤が連続相を形成し、糖衣層の凸部が島状に点在するようになる。また、風味剤の量が少なければ、糖衣チューインガム表面の状態は糖衣層の凸部が連続相を形成し、凹部に付着ないし充填された風味剤が島状に点在するようになる。風味剤の量がこれらの中間の場合、いずれも連続相を形成せず、糖衣層の凸部と風味剤が入り混じったようになる。風味剤が糖衣チューインガムの表面ないし凹部に付着していることは、光学顕微鏡ないし電子顕微鏡の写真により確認することができる。
【0014】
糖衣層の外表面は凸部と凹部からなり、凹部は好ましくは溝状に形成され、内部に風味剤を多量に付着・維持することができる。凹部の表面に対する割合は、10〜75%程度、好ましくは20〜70%程度、より好ましくは25〜65%程度であり、凸部は90〜25%程度、好ましくは80〜30%程度、より好ましくは75〜35%程度である。凸部は風味剤が付着した後も外部に露出するが、付着量が多いと外部から認識できる凸部の割合は小さくなる。従って、糖衣チューインガム製品において、風味剤の占める割合は、10〜85%程度、好ましくは20〜80%程度、より好ましくは25〜75%程度である。また、凹部の深さは5〜1000μm程度、好ましくは10〜800μm程度、より好ましくは15〜600μm程度、特に好ましくは20〜400μm程度である。
【0015】
糖衣層は、糖質混合物を水に溶解した糖衣用シロップを用いてチューインガム部をコーティングする常法に従い形成することができる。糖衣用シロップは公知のものを使用でき、特に限定されないが、例えばアラビアガム、ゼラチン、プルランなどの増粘剤、酸味料、着色料、香料、高甘味度甘味料などを配合することができる。糖質混合物としては、砂糖、マルチトール、還元パラチノース、キシリトール、ラクチトール、エリスリトール、でん粉、加工デンプン、デキストリンなどが挙げられる。
【0016】
糖衣層は、糖衣用の回転釜を使用して形成することができる。好ましい回転釜としては、ピアー型回転釜、オニオン型回転釜、水平型回転釜を挙げることができる。
【0017】
回転釜で糖衣掛けをする場合、糖衣用シロップを塗布し、伸ばし、乾燥する工程が含まれる。このような工程を繰り返すことで表面が平滑な1層または2層以上の糖衣層を形成できる。一方、塗布工程と乾燥工程の間の伸ばし工程を短くするか省略することで、噴霧された糖衣用シロップは不均一に塗布され、これが乾燥すると、表面に凹凸を有する糖衣層が形成される。表面に凹凸を有する糖衣層は、従来不良品とされていたが、本発明では、この凹凸を風味剤の付着・保持に利用する。表面に凹凸を有する糖衣層を1層のみで形成させてもよいが、糖衣により被覆されない部分或いは糖衣層が非常に薄い部分が生じるおそれがあり、チューインガム部の保護、安定性の向上のためには、表面が平滑な第1糖衣層と表面に凹凸を有する第2糖衣層を組み合わせて糖衣層を形成するのが望ましい。糖衣用シロップは、例えば糖質混合部100重量部を30〜100重量部の水に溶解し、他の添加剤を適宜配合して調製することができる。乾燥工程は、20℃〜40℃程度の温風を使用するのが好ましい。
【0018】
チューインガム部は、通常に用いられるものでよく、ガムベース、甘味料、酸味料、香料、色素、乳化剤、軟化剤、安定剤などを含み、更には、増粘剤、果汁パウダー、果汁エキス、打錠物、造粒物、ハードキャンデー、ソフトキャンデーなどを含んでもよい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、以下の実施例、比較例において香味の強さ、香味の発現の速さについては専門パネラー5人による官能評価により総合的に判断した。なお、例中の「部」は、特に断らない限り、「重量部」を示す。
【0020】
(実施例1)
《ソフトキャンデーの調製》
常法に従い調製した。
《チューインガムの調製》
常法に従い調製し、約1g/1粒のペレット型チューインガムを調製した。
《凹凸を有する糖衣物の調製》
チューインガム70部をドリアコーターDRC2000機(株式会社パウレック製)に投入し、釜を3〜5回転/分のスピードで回転させながら、表1に示す糖衣用シロップを適量塗布し、適宜展延させた後、20〜40℃の送風を行って乾燥させた。この工程を数回繰り返し、糖衣チュイーンガムが85部になるまで行い、平坦な第1糖衣層を調製した。その後、釜を0.5〜3回転/分のスピードに落とした後、表1に示す糖衣用シロップを適量塗布し、展延時間を設けずに、20〜40℃の送風を行って乾燥させた。この工程を数回繰り返し、糖衣チューインガムが、100部になるまで行い、表面に凹凸を有する第2糖衣層を得た。最後に糖衣用シロップを掛けた後、表2に示す組成の風味剤を3部、噴霧し、乾燥させることで、風味剤を付着させた最終糖衣チューインガム102部を得た。風味剤1部は付着しなかった。得られた糖衣チューインガムにおいて、凹部の深さは300μm程度であり、風味剤の糖衣層表面への付着量は、最終糖衣チューインガムの表面積1cm当たり3500μgであった。
(比較例1)
実施例1と同様にチューインガムを調製した後、凹凸を有する糖衣物の調製において、表面に凹凸を有する第2糖衣層を得る工程をおこなわず、100部になるまで、釜を3〜5回転/分のスピードで回転させながら、表1に示す糖衣用シロップを適量塗布し、展延させた後、20〜40℃の送風を行って乾燥させ糖衣チューインガムを得た。最後に、表2に示す組成の風味剤を3部、噴霧し、乾燥させることで、風味剤を付着させた最終糖衣チューインガム100.3部を得た。風味剤2.7部は付着しなかった。
(比較例2)
最後に糖衣用シロップを掛けた後、表2に示す組成の風味剤を噴霧しない以外は、実施例1と同様にして行い、最終糖衣チューインガム100部を得た。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
実施例1及び比較例1−2で得られた最終糖衣チューインガムについて、香味の強さ、香味の発現の速さ味の濃さについて、専門パネラー5人による官能評価により総合的に判断した。得られた結果を表3に示した。
【0024】
【表3】

【0025】
官能評価の結果から、表面に凹凸を有する第2糖衣層を形成させた後、風味剤を付着させることで、口に入れた瞬間に速やかに、かつ強い味が発現することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする、糖衣チューインガムの製造方法:
(i)チューインガム部に糖衣掛けし、表面に凹凸を有する糖衣層を形成する工程;
(ii)前記糖衣層の凹部に、風味剤を付着させる工程。
【請求項2】
前記糖衣層は、チューインガム部に表面が平坦な第1糖衣層を形成し、次いで第1糖衣層の外側に、表面に凹凸を有する第2糖衣層を形成することにより作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
糖衣形成用の回転釜の回転数を抑制することで糖衣層に凹凸を形成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
チューインガム部と糖衣層を有する糖衣チューインガムであって、糖衣層の表面の凹部に風味剤を付着させてなる、糖衣チューインガム。
【請求項5】
前記糖衣層は、表面が平坦な内側の第1糖衣層と、表面に凹部を有する第2糖衣層の2層構成からなる、請求項4に記載の糖衣チューインガム。
【請求項6】
前記風味剤が香料もしくは酸味料もしくは甘味料を含有したものである請求項4又は5に記載の糖衣チューインガム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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