説明

糖衣菓子

【課題】ソフトな食感の糖衣菓子を提供する。
【解決手段】菓子類からなる芯材をソフトな糖衣層で被覆した糖衣菓子において、前記糖衣層が還元パラチノースとデンプンを含む、糖衣菓子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖衣菓子に関し、詳しくは、糖衣層が比較的ソフトな食感を有する糖衣菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
糖衣は、耐久性の向上、新食感・風味の付与が目的でチューインガム、チョコレート、ソフトキャンデーに施されるケースが多い。糖衣は、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等のシュガーレス系と、砂糖などのシュガー系が知られているが、虫歯を予防するためにシュガーレス系が一般的に用いられている(特許文献1〜3)。
【0003】
シュガーレス系の糖衣は、耐久性の向上、風味の付与などには優れているが、いずれもクリスピーな硬い食感になること、芯材となる菓子が膨張・収縮をするような素材、ソフトな物性である場合には、糖衣層の割れが生じること、等の不具合があった。
【0004】
還元パラチノースからなる糖衣は、ソフト且つ柔軟性を有するが、還元パラチノースはシロップ伸展中に結晶化するため、還元パラチノースから構成される糖衣層は表面が凹凸になること、糖衣層そのものの強度が不足しており、規模の大きな製造ラインでは、糖衣層の割れ・欠けが発生する等の不具合があった。
【0005】
非特許文献1には、アラビアガム等の増粘剤、ゼラチン等を還元パラチノースに添加することが記載されている。このような添加剤により糖衣層の強度が向上し、上記の不具合は軽減ないし解消されるが、この方法では、還元パラチノースの特長であったソフトな食感は損なわれ、クリスピーな硬い食感になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-283964
【特許文献2】特開2009-195214
【特許文献3】特開2008-199921
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】食品と開発、Vol.34、No.4、43-46頁、1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐久性の向上、風味の付与とソフトな食感を両立する糖衣層を有する糖衣菓子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、還元パラチノースを含むシロップにデンプンを固体状態で分散した分散液を用いて芯材となる菓子類をコーティングすることで、ソフトな食感を維持しつつ、耐久性の向上、風味の付与を実現できることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の糖衣菓子及びその製造方法を提供するものである。
項1. 菓子類からなる芯材をソフトな糖衣層で被覆した糖衣菓子において、前記糖衣層が還元パラチノースとデンプンを含む、糖衣菓子。
項2. 糖衣層において還元パラチノースを含むマトリクスにデンプンが島状に分散してなる、項1に記載の糖衣菓子。
項3. 前記芯材がチューインガム、チョコレート、グミ、ソフトキャンデー、錠菓、またはカプセルである、項1又は2に記載の糖衣菓子
項4. 還元パラチノースの溶液にデンプンを分散させた糖蜜液を芯材に塗布して糖衣層を形成することを特徴とする、糖衣菓子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、還元パラチノースの糖蜜(シロップ)に固体状態のデンプンを分散させて糖衣層形成用のシロップを作製し、これを用いることで、ソフトな食感を維持しつつ、表面の平滑性を向上させた糖衣錠菓を得られることを明らかにした。
【0012】
本発明によれば、ソフトな食感を有し、かつ、糖衣層により芯材となる菓子類が保護されて、菓子類の表面の吸湿、接着などが抑制された耐久性の優れた糖衣菓子が得られる。
【0013】
本発明の糖衣菓子は、ソフトな食感を有するので、子供や高齢者など咀嚼力の弱い者であっても容易に味わうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の糖衣菓子は、コア(芯材/菓子)−シェル(殻/糖衣層)構造を有する。芯材を覆う糖衣層は、還元パラチノースとデンプンが含まれる。
【0015】
還元パラチノースは、パラチノースを水素添加して得られる二糖類アルコールで、α-D-グルコピラノシル-1,6-ソルビトールとα-D-グルコピラノシル-1,6-マンニトールのほぼ等モル混合物、α-D-グルコピラノシル-1,6-ソルビトール(以下GPS)リッチ品(80±5%)があり、これらをいずれも使用できる。GPSリッチな還元パラチノースは、溶解性により優れるため、好ましい。デンプン類の分散性は、等モル混合物とGPSリッチ品のいずれも良好であり、食感も同等である。
【0016】
デンプンとしては、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、さらにはタピオカ、馬鈴薯、小麦由来等のリン酸架橋澱粉、その他の加工デンプン類が挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0017】
デンプン、還元パラチノースは、いずれも市販品を使用することができる。
【0018】
芯材となる菓子類としては、チューインガム、チョコレート、グミ、ソフトキャンデー、錠菓、カプセルなどが挙げられる。本発明では、糖衣層がソフトな食感を有するものであり、芯材は、糖衣層と同様なソフトな食感を有するものが望ましい。例えばチューンガムを本発明の糖衣層で被覆すると、板ガムと同様なソフトな食感を有するガムとなる。高齢者や子供など、咀嚼力の弱い者は、本発明のようなソフトな食感を有する糖衣菓子の方が食べやすい。
【0019】
糖衣菓子の芯材(菓子類)と糖衣層の割合は、芯材が糖衣層で覆われている限り特に限定されないが、例えば芯材は50〜90質量%程度であり、糖衣層は、10〜50質量%程度である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、糖衣層は、還元パラチノースとデンプンから主として構成され、その他の添加剤、例えば香料、色素、酸味料、高甘味度甘味料(例えばアスパルテーム、アセスルファムK,スクラロース)などの甘味料、ビタミン類やカルシウム、消臭物質などの機能性素材をさらに配合してもよい。糖衣層において、還元パラチノースは80〜99質量%程度であり、デンプンは、20〜1質量%程度である。添加剤は、糖衣層のソフトな食感を損なわない程度の量で配合され、通常は糖衣層に5質量%以下の量で配合される。
【0021】
糖衣層において、デンプンは還元パラチノースを含むマトリクスに固体状態で分散しているため、島状に分散して存在する。
【0022】
本発明の糖衣菓子は、芯材となる菓子類を、還元パラチノースシロップにデンプン類を固体状態で添加した分散液を用いて自動糖衣機でコーティングすることにより、製造することができる。デンプンは固体状態で分散させることが重要である。分散液には上記のような添加剤をさらに配合することができる。還元パラチノースシロップは、Bx65〜70程度のものが好ましく、デンプン類は、分散液に対し1〜20質量%程度配合される。デンプン類を配合することにより、糖衣層は柔軟性を維持したまま形成され、かつ、還元パラチノースの急速な結晶化が防止でき、シロップの伸展性が向上し、表面が平滑な糖衣層が形成された。また、糖衣菓子同士の付着性が軽減され、適度なスベリ性が付与されたこと、柔軟な糖衣層が維持されたことで、500kg規模以上の自動糖衣機においても製造が可能となった。
【0023】
芯材がチューインガムの場合、芯材に含まれる成分としては、ガムベース、糖アルコール(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトールなど)、高甘味度甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK,スクラロース)などの甘味成分、還元水飴、グリセリン、香料などが挙げられる。
【0024】
芯材がチョコレートの場合、チョコレートとは、常温で固体状であり、加温により溶融状態となり、冷却により固化するものであればよく、規格のチョコレートだけでなく、チョコレート類或いはチョコレート類似食品であってもよい。例えば、チョコレート類、ミルクチョコレート類、ホワイトチョコレート類、香料等により各種風味を有するチョコレート類などをいずれも好適に用いることができる。
【0025】
芯材が グミの場合、グミはゼラチンと水を含み、さらに蔗糖、水あめ、糖アルコールなどの糖質、香料、色素等の添加剤の1種または2種以上を含んでいてもよい。グミは、常法に従い、水とゼラチンを含む溶液に、必要に応じて糖質などの上記の添加剤を配合し、混合・乾燥して得ることができる。
【0026】
芯材がソフトキャンデーの場合、ソフトキャンデーは、固形分が1種以上の糖類を含み、糖類としては、砂糖、ブドウ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖、乳糖、糖アルコール、水飴及び粉飴などを1種または2種以上用いることができる。さらに、香料、色素、ゼラチンなどを配合してもよい。ソフトキャンデーには、グミなどの他の成分を配合することもできる。
【0027】
芯材が錠菓の場合、錠菓は、砂糖、ブドウ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖、乳糖、糖アルコール、水飴及び粉飴等の糖類を打錠して得ることができる。錠菓には香料、色素などを配合してもよい。
【0028】
芯材がカプセルの場合、カプセルとは、ソフトカプセル、ハードカプセル、シームレスカプセル等であり、果汁、調味料、食用油脂、エキス類、香料等をゼラチン、ペクチン、寒天等で皮膜して得ることができる。
芯材となる菓子類の大きさは、食べやすい大きさであれば特に制限はない。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1 芯材のチューインガムの調製
以下の表1に示す配合で、常法に従い芯材として使用するチューインガムを調製した。
【0030】
【表1】

【0031】
製造例2 芯材の錠菓の調製
以下の表2に示す配合で、常法に従い打錠して、芯材として使用する錠菓を調製した。
【0032】
【表2】

【0033】
製造例3〜6 糖衣蜜の調製
糖衣層を形成するための糖衣蜜を、表3〜表6の処方で製造した。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
実施例1 糖衣菓子の調製
製造例1で得られた芯材のチューインガムに対し、製造例3〜6の糖衣蜜を用い、自動糖衣機(株式会社パウレック社製ドリアコーター(DRC-2000))により糖衣層を形成した。固形分として、糖衣層の比率は約30質量%、芯材の比率は約70質量%であった。
【0039】
結果を以下の表7に示す。
【0040】
【表7】

【0041】
芯材をチューインガムに代えて製造例2の錠菓にした場合も同様な結果が得られた。
【0042】
上記表7の結果から、本発明の糖衣菓子は、ソフトな食感を有しつつ、糖衣層の表面は平滑であり、実用的な糖衣菓子が得られることが明らかになった。
【0043】
試験例1 硬度の測定
本発明の糖衣菓子がソフトな食感を有することを確認するために、ゼラチンカプセルを芯材として糖衣層を形成し、糖衣層の硬度を測定した。
(1)ゼラチンカプセル
直径3mmのゼラチンカプセルを調製した。
ゼラチンカプセル(ゼラチン膜比率20%のソフトカプセル)
内容物:ミント系香料
(2)製造手順および糖衣硬度測定
ゼラチンカプセルを芯材とし、下記の表8の比率で製造例3〜6の糖衣蜜を用いてゼラチンカプセルの糖衣コーティングを行った。
糖衣比率は、30質量%、40質量%、50質量%とし、各糖衣蜜の比率についてサンプリングし、糖衣層の硬度を測定した。最も一般的な糖衣である「マルチトール糖衣」及び「糖衣比40%」を「100」とし、相対的な比率として表8から11に硬度測定結果を示す。
【0044】
硬度は、以下の機器及び条件で測定した。
使用機器 FUDOH RHEO METER(NRM-2010J) 不動工業株式会社製
測定条件 温度:20℃、湿度:20%RH
テーブルスピード:6cm/min
プランジャー:15mm円形
【0045】
【表8】

【0046】
【表9】

【0047】
【表10】

【0048】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
菓子類からなる芯材をソフトな糖衣層で被覆した糖衣菓子において、前記糖衣層が還元パラチノースとデンプンを含む、糖衣菓子。
【請求項2】
糖衣層において還元パラチノースを含むマトリクスにデンプンが島状に分散してなる、請求項1に記載の糖衣菓子。
【請求項3】
前記芯材がチューインガム、チョコレート、グミ、ソフトキャンデー、錠菓、またはカプセルである、請求項1に記載の糖衣菓子
【請求項4】
還元パラチノースの溶液にデンプンを分散させた糖蜜液を芯材に塗布して糖衣層を形成することを特徴とする、糖衣菓子の製造方法。

【公開番号】特開2012−170328(P2012−170328A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31765(P2011−31765)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】