説明

糖調節ペプチドの制御放出に適した生分解性マイクロスフェア組成物及びその製造方法

本発明は、糖調節ペプチドを生分解性高分子担体を含むマイクロスフェア内に封入して、糖調節ペプチドを持続制御放出するようにした生分解性高分子マイクロスフェア及び、その製造方法に関するものである。本発明によって製造された生分解性高分子マイクロスフェアは、初期過多放出がなくて、0次放出パターンを有し、不完全な放出なしに糖調節ペプチドを持続的に放出するので、薬物の治療効果を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖調節ペプチドを生分解性高分子担体を含むマイクロスフェア内に封入して糖調節ペプチドを持続制御放出するようにした、生分解性高分子マイクロスフェア及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にタンパク質及びペプチド薬物は、大多数が経口投与時に胃の酸性環境下で活性構造を失ったり酵素的分解によって破壊され、また胃または腸の粘膜で吸収される割合も非常に低い。そのため大部分のタンパク質及びペプチド薬物は、非経口投与、すなわち注射によって投与される。大部分の非経口投与されたタンパク質及びペプチド薬物は、生体内での短い半減期及び低い生体使用率のため、投与後にも反覆的に継続して注射しなければならず、数ヶ月間の長期間投与を要する場合が多い。このような問題点を解決するために、生体内で徐々に分解される性質を有した生分解性高分子担体内に薬物を封入して、高分子の分解が進行されるにつれて体内にタンパク質及びペプチド薬物を放出する生体分解性高分子を使用した持続性、徐放性剤形の研究が活発に進行されている[Heller,J.等,.Controlled release of water-soluble macromolecules from bioerodible hydrogels,Biomaterials,1983年,第4巻,262-266頁;Langer,R.,New methods of drug delivery,Science,1990年,第249巻,1527-1533頁;Langer,R.,Chem.Eng.Commun.,1980年,第6巻,1-48頁;Langer,R.S.and Peppas,N.A.,Biomaterials,1981年,第2巻,201-214頁;Heller,J.,CRC Crit.Rev.Ther.Drug Cattrier Syst.,1984年,第1(1)巻,39-90頁;Holland,S.J.Tighe,B.J.and Gould,P.L.,J.Controlled Release,1986年,155-180頁]。
【0003】
現在、タンパク質及びペプチド薬物において、高分子担体で開発されて使用されている脂肪族ポリエステルは、すでにその生体適合性が認められてアメリカ食品医薬局(FDA)によって承認を受け、薬物伝達用担体または手術用縫合糸などの用途で広く使用されている。脂肪族ポリエステルの具体的な例では、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−D−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−L−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸(以下「PLGA」とする)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリヒドロキシブチレート及びポリヒドロキシバレレートなどが含まれる[Peppas,L.B.,Int.J.Pharm.,1995年,第116巻,1-9頁]。
【0004】
最近、高分子量のペプチドやタンパク質など、新しい治療薬物が開発されるにつれて、これら薬物を高分子担体内に封入させて持続的に放出させようとする努力が多様に試みられているが、前述した脂肪族ポリエステルからなるマイクロスフェアにタンパク質薬物を封入した剤形の場合、薬物の初期過多放出(initial burst effect)、または多くの要因の影響で一定期間の間、薬物の放出率が一定した速度に調節されず、封入された薬物が100%放出されないという不完全な放出(Incomplete release)のような大きな難しさを有している。
【0005】
例えば、牛の血清アルブミン、リゾチームなどのモデルタンパク質薬物の場合、初期に多量の薬物が放出された後、最終放出量が50%前後で[Crotts,G.and Park,T.G.,J.Control.Release,1997年,第44巻,123-134頁;Leonard,N.B.,Michael,L.H.,Lee,M.M.J.Pharm.Sci.,第84巻,707-712頁]、組換え人間成長ホルモンを脂肪族ポリエステルを担体に使用してマイクロスフェアに封入した場合、30〜50%のタンパク質薬物が初期に過多放出され、以後40〜60%程度の量が放出されずにマイクロスフェア内に残っているということが報告された[Yan,C.,等,.J.Control.Release,1994年,第32巻,231-241頁;Kim,H.K.and Park,T.G.,Biotechnol.Bioeng.,1999年,第65巻,659-667頁]。
【0006】
このような薬物の初期過多放出は、マイクロスフェア表面及び孔に凝集または吸着していたタンパク質薬物が、初期に早い拡散によって放出が起きるからである。
【0007】
一方、タンパク質薬物がマイクロスフェアの製造工程中、水と有機溶媒による界面の影響で変性などによる非可逆的凝集が生じて不完全な放出が発生するようになり、このような現象は、タンパク質薬物の持続性伝達に大きな問題点となっている。このような界面の影響によるタンパク質薬物の変性を防止するために、界面活性剤(例えば、非イオン系界面活性剤系列のツイーン、プルロニックF68(Pluronic F68)、ブリッジ35(Brij 35))と安定化剤(例えば、マンニトール、ゼラチン、トレハロース(Trehalose)、カルボキシメチルセルロース)の使用が試みられていて、また一方では、水を排除した有機溶媒のみを使用してマイクロスフェアを製造することで、タンパク質変性の原因を除去したという報告がある[Gombotz,W.R.,Healy,M.,Brown,L.,米国特許第5019400号]。
【0008】
また、一定期間の間、薬物放出率が一定速度に調節されないで、封入された薬物が100%放出されないという不完全な放出問題を改善するため、分解速度が早い高分子と分解速度が遅い高分子を混合して、それらに薬物を封入する方法[Ravivarapu,H.B.,Burton,K.,Deluca,P.P.,Eur J Pharm Biopharm,2000年,第50(2)巻,263-270頁;韓国特許出願第1998-0062142号]及び、薬物を分解速度が異なる二種類以上の高分子にそれぞれ封入して得たマイクロスフェアを適当な割合で混合して所望する期間の間、薬物が持続的に放出されるマイクロスフェア[米国特許第4897268号]を得る方法で研究が進行された。しかし、このような方法によるマイクロスフェア製造は、分解速度が早い高分子から由来した分解産物すなわち、乳酸とグリコール酸の影響によってpHが低くなり、分解速度が遅い高分子の分解がより早く進行して、それぞれの高分子に封入された薬物の放出速度の平均値とは異なる結果をもたらし、一つの剤形商品化のためにふたつ以上のマイクロスフェアを製造しなければならない工程上及び経済的に非効率的な短所がある[韓国特許出願第2000-0036178号]。
【0009】
マイクロスフェアの一般的な製造方法は、相分離法[米国特許第4673595号、韓国特許出願第2007-0031304号]、噴霧乾燥法[韓国特許出願第2003-0023130号]そして、有機溶媒蒸発法[米国特許第4389330号]が知られている。相分離法の場合、メチレンクロライド溶媒以外に、シリコンオイル、ヘプテン、エチルアルコールなどを一緒に使用しなければならないので、使用されたすべての有機溶媒を全て除去しなければならないなどの工程が複雑な短所を有していて、噴霧乾燥法の場合、高温で有機溶媒とともに60℃以上の高温で噴霧乾燥させることにより、タンパク質及びペプチドの変性をもたらし得る。したがって、一般的にタンパク質及びペプチドのマイクロスフェア製造には、有機溶媒蒸発法が最も多く使用されている。この方法では、薬物の封入率(Encapsulation efficiency)が技術的に重要な部分であると言える[韓国特許出願第2003-0081179号]。
【0010】
ゆえに、タンパク質あるいはペプチド含有徐放性マイクロスフェアを製造するにおいて、薬物の初期過多放出がなく、安定性放出期間に関係なく薬物放出を0次放出に維持しながら、薬物が100%放出されないという不完全な放出なしに、製造方法が単純で、薬物の封入率が高く、封入された薬物の安定性が良く、経済的に効率的な製造方法が要求されている。
【0011】
糖調節ペプチドは、インスリン依存性糖尿病、妊娠性糖尿病またはインスリン非依存性糖尿病の治療、肥満症の治療そして脂質代謝異常症の治療において、治療的な潜在力を有するとみられてきたペプチドの一分類群である[米国特許第6506724号]。例としては、エキセンディン−3(Exendin-3)、エキセンディン−4(Exendin-4)及びこれらの類似体及びアゴニスト、またはグルカゴン、グルカゴン類似ペプチド(例えば、GLP−1、GLP−2)及びこれらの類似体及びアゴニストを挙げることができる[韓国特許出願第2006-7015029号]。
【0012】
エキセンディン−4は、39個のアミノ酸で構成されたペプチドであり、ヘロデルマ・ホリヅム(Heloderma horridum)またはヘロデルマ・ススペクツム(Heloderma suspectum)というトカゲの唾腺から分離した生理活性ペプチドである。エキセンディン−4は、膵臓ベータ細胞によるインスリン分泌を促進させて、増加したグルカゴンの分泌を低めて、食欲を抑制して糖尿病及び肥満等の治療に有用である[Eng.J.等,1990年;Raufman,J.P.1992年;Goeke,R.1993;Thorens,B.1993年]。
【0013】
糖尿病の効果的な予防及び治療効果を提供するために、マイクロスフェアを通じた持続的なエキセンディン−4の伝達研究が進行された[韓国特許出願第2006-7023921号]。しかし、相分離法による製造によって多くの有機溶媒使用及び除去のための複雑な工程、超音波工程の高エネルギーによる製造中のペプチド分解のような安定性問題、そして糖のような安定化剤及び放出率を好ましい特性として促進しようと放出率促進剤(例えば、無機酸及び無機塩)など、多くの賦形剤が使用されるなどの複雑で、非効率的な短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、多くの有機溶媒を使用せず、超音波工程のような高エネルギー処理がなく、放出率促進剤を使用しない、複雑ではない方法で、糖調節ペプチドの初期過多放出がなく、0次放出を維持して、不完全な放出がなく、封入率が高くて、封入された糖調節ペプチドの安定性が高い、糖調節ペプチドを含む生分解性高分子マイクロスフェア及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために本発明は、糖調節ペプチドを生分解性高分子担体を含むマイクロスフェア内に封入して、糖調節ペプチドを持続制御放出することができる糖調節ペプチド含有生分解性高分子マイクロスフェアを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記生分解性高分子マイクロスフェアの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による生分解性高分子マイクロスフェアは、エキセンディン−4徐放性製剤の初期過多放出がなくて、0次放出を維持して、不完全な放出がなくて、単純な製造工程で封入率が高くて、封入されたエキセンディン−4の安定性が良く、イン・ビトロ(in vitro)及びイン・ビボ(in vivo)でマイクロスフェアからエキセンディン−4が3週以上持続的に放出されるようにする特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1によって薬物分散体製造工程を経て製造されたマイクロスフェアのイン・ビトロでの放出パターン試験結果を示したグラフである。
【図2】本発明の実施例4〜8で製造されたマイクロスフェアのイン・ビトロでの放出パターン試験結果を示したグラフである。
【図3】本発明の比較例1〜2で製造されたマイクロスフェアのイン・ビトロでの放出パターン試験結果を示したグラフである。
【図4】本発明の実施例1−1で製造されたマイクロスフェアの実験動物での放出パターン試験結果を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例1−1で製造されたマイクロスフェアでエキセンディン−4を抽出して、逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)で分析したエキセンディン−4のクロマトグラムである。
【0019】
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、糖調節ペプチドを生分解性高分子担体を含むマイクロスフェア内に封入して、糖調節ペプチドを持続制御放出することができる生分解性高分子マイクロスフェアを提供する。
【0021】
本発明に使用できる糖調節ペプチドの例としては、天然型、組換えあるいは合成エキセンディン−3、エキセンディン−4及びこれらの類似体、アゴニスト、またはグルカゴン、グルカゴン類似ペプチド(例えば、GLP−1、GLP−2)及びこれらの類似体、アゴニストを挙げることができ、好ましくは、合成エキセンディン−3、エキセンディン−4及びこれらの類似体、アゴニストを挙げることができ、最も好ましくは、合成エキセンディン−4を挙げることができる。
【0022】
マイクロスフェアでの糖調節ペプチドの含量は、用法用量、タンパク質特性によって適切に選択することができる。
【0023】
生分解性ポリエステル系高分子は、マイクロスフェアの形態を維持しながら内部に糖調節ペプチドを含み、高分子が徐々に分解されながら内部の糖調節ペプチドを放出する役割をし、その例としては、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−D−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−L−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリヒドロキシブチレートまたはポリヒドロキシバレレートを挙げることができるが、必ずこれに限定されるのではなく、当該分野で通常使用される生分解性ポリエステル系高分子なら特別に制限されない。好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−L−乳酸−コ−グリコール酸及びポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)からなる群から選択される1種以上の高分子を挙げることができ、より好ましくは、ポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)単独またはポリ−L−乳酸を含んだ2種以上の混合高分子である。
【0024】
また、本発明は、前記糖調節ペプチドを持続制御放出することができる生分解性高分子マイクロスフェアの製造方法を提供する。
【0025】
本発明による生分解性高分子マイクロスフェアは、
高分子に有機溶媒を添加して高分子溶液を製造する工程(工程1);
前記工程1で製造した高分子溶液に糖調節ペプチドを添加して糖調節ペプチドが高分子溶液に分散した薬物分散体を製造した後、アルコールまたはアルコールと有機酸の混合物を添加して薬物分散溶液を製造する工程(工程2);及び
前記工程2で製造された薬物分散溶液を使用してマイクロスフェアを製造する工程(工程3)とを含む方法で製造することができる。
【0026】
以下、前記製造方法を各工程別に具体的に説明する。
【0027】
まず、工程1は、高分子溶液を製造する工程である。
【0028】
工程1では、高分子に有機溶媒を添加して溶解させる。ここで使用される高分子には、生分解性高分子担体を使用することができ、好ましくは、生分解性ポリエステル系高分子を使用することができる。有機溶媒は、生分解性高分子担体に対する溶媒性と蒸発による除去容易性がともに優れた揮発性有機溶媒なら特別に制限されない。ここで、本発明に使用される有機溶媒は、高分子を溶解させる溶解剤の役割だけではなく、糖調節ペプチドを高分子溶液に均一に分散させる分散剤としても作用する。
【0029】
本発明の有機溶媒では、メチレンクロライド、エチルアセテート、クロロホルム、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、メチルエチルケトンまたはアセトニトリル及びこれらの混合溶媒等があり、メチレンクロライド、エチルアセテート、クロロホルムが好ましく、メチレンクロライドを使用することが最も好ましい。
【0030】
次に、工程2は、薬物分散溶液を製造する工程である。
【0031】
工程2では、有機溶媒に高分子が溶解された高分子溶液に糖調節ペプチドを添加して、薬物分散体を作る。糖調節ペプチドは、上述したとおりであり、好ましくは合成エキセンディン−4を添加して薬物分散体を作る。前記薬物分散体で、糖調節ペプチド:高分子(w/w)の割合は、糖調節ペプチドを溶解させることができる範囲で選択される。
【0032】
次に、得た薬物分散体にアルコールまたはアルコールと有機酸の混合物を添加して薬物分散体を溶解させる。アルコールまたはアルコールと有機酸の混合物は、高分子と糖調節ペプチドを同時に溶解することができる溶解剤として作用する。ここで、添加剤として安定化剤または界面活性剤をさらに添加することができる。
【0033】
本発明の製造方法において、薬物分散溶液を製造する工程では、高分子に有機溶媒を加えた後、糖調節ペプチドを添加後、アルコールまたはアルコールと有機酸の混合物を添加しなければならない前記製造方法の手順が非常に重要である。手順を変えて高分子に有機溶媒、アルコールまたはアルコールと有機酸の混合物の順序で添加した後、糖調節ペプチドを溶解させた溶液でマイクロスフェアを作ったり、高分子を有機溶媒に溶解させた溶液に糖調節ペプチドをアルコールまたはアルコールと有機酸の混合物に溶解させた溶液を添加して製造したりした溶液でマイクロスフェアを作る場合、不完全放出傾向を有するようになる。
【0034】
アルコールでは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどがあるが、好ましくは前記生分解性高分子担体と糖調節ペプチドに対する溶解性が優れたアルコールであるメチルアルコールを使用することができる。薬物分散体を溶解させるために添加するアルコールは、薬物分散体を溶解させることができる最少用量で使用することが好ましく、添加用量はアルコールの種類によって適当な割合で選択することができる。メチルアルコールの場合、薬物分散体に対して1:1〜6:1(薬物分散体:アルコール、v/v)の割合で添加して薬物分散体を完全に溶解させることが好ましく、3:1〜4:1の割合で添加することがさらに好ましい。
【0035】
また、有機酸では、高分子担体及び糖調節ペプチドに対する溶解性を有したものであれば特に制限されない。例えば、シュウ酸、オキサロ酢酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、ブチル酸、パルミチン酸、酒石酸、アスコルビン酸、尿酸、スルホン酸、スルフィン酸、ギ酸、クエン酸、イソクエン酸、αケトグルタル酸、核酸等があるが、好ましくは、酢酸とギ酸、またはそれらの混合物が使用できる。添加する有機酸の用量は、アルコールと同様に有機酸の種類によって適当な割合で選択することができる。
【0036】
添加剤としては、薬物分散体を溶解させることができ、薬物分散体を溶解させることができる溶媒に対する溶解性を有したものなら特別に制限されない。例えば、ポリエチレングリコール類(ソルトルHS−15(登録商標)、TPGS(登録商標)、ゲルシア(登録商標))、オイル類(ラブラフィル(登録商標)、ラブラソール(登録商標)、中鎖トリグリセリド(登録商標))、タンパク質類(レクチン)、界面活性剤(N−メチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ツイーン(登録商標)、スパン(登録商標)、クレモフォア(登録商標)、ポロクサマー(登録商標)、ブリッジ(登録商標)、サンソフト818H(登録商標))及びヒドロプロピルメチルセルロースなどを挙げることができ、使用量は、溶解剤での濃度で0.01〜15%(w/v)、好ましくは0.1〜12.5%(w/v)で使用する。
【0037】
次に、工程3は、前記工程2で製造された薬物分散溶液を使用してマイクロスフェアを製造する工程である。
【0038】
ここで、マイクロスフェアを製造する方法では、前記薬物分散溶液を乳化剤が溶解された水溶液に分散させて製造するか、噴霧乾燥器を使用して製造する方法を用いることができる。
【0039】
前記薬物分散溶液を乳化剤が溶解された水溶液に分散させてマイクロスフェアを製造する場合、スターラー及びホモジナイザーを使用してマイクロスフェアを形成及び乾燥させることにより製造することができる。ここで、使用される乳化剤は、有機溶媒に分散する親油性乳化剤または水溶液に分散する親水性乳化剤を使用することができる。親水性乳化剤の例としては、ツイーン、トリトン、ブリッジ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを挙げることができ、好ましくはポリビニルアルコールを挙げることができる。乳化剤は、有機溶媒が飽和されなかったり飽和された形態で使用することができ、有機溶媒では、メチレンクロライド、エチルアセテート、クロロホルムが好ましく、メチレンクロライドを使用することが最も好ましい。前記乳化剤の使用量は、水溶液での濃度で0.01〜5.0%(w/v)、好ましくは0.5〜2%(w/v)で使用することができる。
【0040】
前記工程で乾燥は、凍結乾燥または真空乾燥が用いられ、凍結乾燥法でマイクロスフェアを製造する時は、遠心分離法を通じて、真空乾燥法でマイクロスフェアを製造する時は、真空フィルターシステムを通じてマイクロスフェアを回収した後、それぞれの乾燥法でマイクロスフェアを乾燥させることができる。
【0041】
このような方法で製造されたマイクロスフェアは、O/W型のマイクロスフェアが製造され、平均粒子サイズは、注射に相応しい5〜70μm、好ましくは10〜30μmを有する。ここで、粒子サイズは、薬物分散溶液であるオイル相と乳化剤が溶解された水溶液である水相の体積比を調節して多様に製造することができる。
【0042】
前記薬物分散溶液を噴霧乾燥器を使用してマイクロスフェアを製造する場合には、前記薬物分散溶液を噴霧乾燥器に入れて噴霧させることで直ちにマイクロスフェアを製造することができる。ここで効果的なマイクロスフェアの製造のために噴霧乾燥器に流入する温度と放出する温度は、それぞれ115〜125℃、80〜90℃であることが好ましい。以後、噴霧乾燥製造されたマイクロスフェアから残留溶媒を除去するために上述した凍結乾燥、真空乾燥のような乾燥過程をさらに経ることができる。
【0043】
また、本発明による生分解性高分子マイクロスフェアは、
高分子に有機溶媒を添加して高分子溶液を製造する工程(工程1);
前記工程1で製造した高分子溶液に界面活性剤が含まれた糖調節ペプチド水溶液を添加して1次乳化溶液を製造する工程(工程2’);及び
前記工程2’で製造された1次乳化溶液を使用してマイクロスフェアを製造する工程(工程3’)とを含む方法で製造することができる。
【0044】
工程1では、高分子に有機溶媒を添加して溶解させる。ここで使用される高分子には、生分解性高分子担体を使用することができ、好ましくは生分解性ポリエステル系高分子を使用することができる。有機溶媒は、生分解性高分子担体に対する溶媒性と蒸発による除去容易性がともに優れた揮発性有機溶媒なら特別に制限されない。ここで、本発明に使用される有機溶媒は、高分子を溶解させる溶解剤の役割だけではなく糖調節ペプチドを高分子溶液に均一に分散させる分散剤としても作用する。
【0045】
本発明の有機溶媒では、メチレンクロライド、エチルアセテート、クロロホルム、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、メチルエチルケトンまたはアセトニトリル及びこれらの混合溶媒等があり、メチレンクロライド、エチルアセテート、クロロホルムが好ましく、メチレンクロライドを使用することが最も好ましい。
【0046】
工程2’では、有機溶媒に高分子が溶解された高分子溶液に界面活性剤が含まれた糖調節ペプチド水溶液を添加した後、スターラーあるいはホモジナイザーを使用して1次乳化溶液を製造する。ここで、糖調節ペプチドには、合成エキセンディン−4を添加することが好ましい。高分子溶液に前記界面活性剤が含まれた糖調節ペプチド水溶液を添加する場合には、最終的にW/O/W型の二重乳化マイクロスフェアが形成される。
【0047】
前記工程2’で糖調節ペプチド水溶液に界面活性剤をさらに添加することができる。ここで添加する界面活性剤は、糖調節ペプチドを溶解させて水溶液を製造することができるものならどんな形態も可能であり、例えば、ツイーン、トリトン、ブリッジ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを使用することができる。
【0048】
工程3’では、前記工程2’で得られた1次乳化溶液を乳化剤が溶解された水溶液に分散させて、スターラー及びホモジナイザーを使用してマイクロスフェアを形成及び乾燥させることでマイクロスフェアを製造する。ここで、使用される乳化剤は、有機溶媒に分散する親油性乳化剤または水溶液に分散する親水性乳化剤を使用することができる。親水性乳化剤の例では、ツイーン、トリトン、ブリッジ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを挙げることができ、好ましくはポリビニルアルコールを挙げることができる。乳化剤は、有機溶媒が飽和されなかったり飽和された形態で使用することができ、有機溶媒としては、メチレンクロライド、エチルアセテート、クロロホルムが好ましく、メチレンクロライドを使用することが最も好ましい。前記乳化剤の使用量は、水溶液での濃度で0.01〜5.0%(w/v)、好ましくは、0.5〜2%(w/v)で使用することができる。
【0049】
前記工程で乾燥は、凍結乾燥または真空乾燥を用いることができ、凍結乾燥法でマイクロスフェアを製造する時は遠心分離法を通じて、真空乾燥法でマイクロスフェアを製造する時は真空フィルターシステムを通じてマイクロスフェアを回収した後、それぞれの乾燥法でマイクロスフェアを乾燥させることができる。
【0050】
前記方法で製造されたマイクロスフェアは、エキセンディン−4徐放性製剤の初期過多放出がなく、0次放出を維持して、不完全な放出がなくて、単純な製造工程で封入率が高くて、封入されたエキセンディン−4の安定性が良く、イン・ビトロ及びイン・ビボのマイクロスフェアからエキセンディン−4が3週以上持続的に放出されるようにでき、エキセンディン−4徐放性製剤として有用に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が実施例によって限定されるのではない。
【0052】
<実施例1>高分子種類及び混合比によるマイクロスフェアの製造(O/W型)
高分子(ベーリンガーインゲルハイム社)300mgをメチレンクロライドに完全に溶解させて高分子溶液を製造し、エキセンディン−4(アメリカンペプタイド社)9mgを高分子溶液に入れてエキセンディン−4分散体を製造した。高分子は、下記表1に示したように1種の高分子または分子量や特性が異なる高分子2種を混合比を異にして製造した。高分子の種類及び混合比を異にして製造された薬物分散体にメチルアルコールを薬物分散体の割合で1:4(v/v)で添加して薬物分散溶液を製造した後、薬物分散溶液10mlをメチレンクロライドで飽和させた250mlのポリビニルアルコール1%水溶液(w/v)に注入してスターラーあるいはホモジナイザーを使用して乳化させてマイクロスフェアを形成させた。このように形成したマイクロスフェアを数時間、常温、常圧下で撹拌してメチレンクロライドを空気中に徐々に蒸発させながら硬化させてそれを遠心分離した後、蒸留水で洗浄した後、−70℃で凍結した後、adVantage(VirTis社,NY,米国)モデルを使用して常温、50mTorrで3日間凍結乾燥して、最終的にO/W形態のエキセンディン−4が持続的に放出されるマイクロスフェア剤形を製造した。
【0053】
【表1】

【0054】
<実施例2>薬物分散体に対するアルコールの割合によるマイクロスフェアの製造(O/W型)
高分子(RG502H、ベーリンガーインゲルハイム社)300mgをメチレンクロライドに完全に溶解させて高分子溶液を製造して、エキセンディン−4(アメリカンペプタイド社)9mgを高分子溶液に入れてエキセンディン−4分散体を製造した。このように製造された薬物分散体に、下記表2に示したようにメチルアルコールをエキセンディン−4分散体の割合で1:1〜1:7(v/v)範囲で添加して薬物分散溶液を製造し、これを乳化させてマイクロスフェアを製造、乾燥する工程は実施例1と同様に製造した。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示したように、薬物分散体に対するメチルアルコールの体積比が7以上の場合には、溶液を形成しないこともあることを確認した。
【0057】
<実施例3>添加剤を含有した薬物分散溶液を使用したマイクロスフェアの製造(O/W型)
実施例1−1と同一の方法でマイクロスフェアを製造した。但し、製造された薬物分散溶液に下記表3に示したように多様な添加剤を溶媒体積対比0.1または12.5%取って薬物分散溶液と混合して、混合有無を表3に示した。
【0058】
【表3】

【0059】
表3に示したように、薬物分散溶液に多様な添加剤が広い濃度範囲で混合することができることを確認した。
【0060】
<実施例4>有機溶媒で飽和されない乳化剤水溶液を使用したマイクロスフェアの製造(O/W型)
実施例1−1と同一の方法でマイクロスフェアを製造した。但し、製造された薬物分散溶液をメチレンクロライドが飽和されない250mlのポリビニルアルコール1%水溶液(w/v)に注入してスターラーあるいはホモジナイザーを使用して乳化させた。
【0061】
<実施例5>粒子サイズが異なるマイクロスフェアの製造(O/W型)
実施例1−1と同一の方法でマイクロスフェアを製造した。但し、メチレンクロライドで飽和させたポリビニルアルコール1%水溶液(w/v)と薬物分散溶液の体積比すなわち、水相対油相の体積比を表4に示したように異なるようにして粒子サイズが異なるマイクロスフェアを製造した。
【0062】
【表4】

【0063】
<実施例6>乾燥方法によるマイクロスフェアの製造(O/W型)
実施例1−1と同一の方法で製造されたマイクロスフェアを数時間、常温、常圧下で撹拌してメチレンクロライドを空気中に徐々に蒸発させながら硬化させて、それを真空フィルターシステムでろ過、蒸留水で洗浄、マイクロスフェア以外の水を除去してサンプルを準備した後、最終乾燥は、adVantage(VirTis社,NY,米国)モデルを使用して常温で50mTorrの圧力で3日間真空乾燥した。
【0064】
<実施例7>噴霧乾燥法を使用したマイクロスフェアの製造(O/W型)
実施例1−1と同一の方法で製造された薬物分散溶液を乳化剤水溶液と混合しないで分当り2.5mlで噴霧乾燥器(Buchi Mini spray dryer,B-290)に注入しながら0.7mmノズルを通じて400Nl/hで噴霧乾燥した。この噴霧乾燥製造されたマイクロスフェアから残留溶媒を除去するために、真空乾燥してエキセンディン−4が持続的に放出されるマイクロスフェア剤形を製造した。ここで、噴霧乾燥器に流入する温度と放出される温度は、それぞれ120±2℃と85±2℃であった。
【0065】
<実施例8>薬物水溶液を使用したマイクロスフェアの製造(W/O/W型)
高分子(RG502H,ベーリンガーインゲルハイム社)300mgをメチレンクロライドに完全に溶解させて高分子溶液を製造して、エキセンディン−4(アメリカンペプタイド社)9mgを0.3mlのポリビニルアルコール0.5%水溶液(w/v)に溶解させたエキセンディン−4水溶液を高分子溶液に入れて、ホモジナイザーを使用して1次乳化溶液を製造した。このように製造された1次乳化溶液10mlをメチレンクロライドで飽和させた250mlのポリビニルアルコール1%水溶液(w/v)に注入して、スターラーあるいはホモジナイザーを使用して2次乳化させてマイクロスフェアを形成させた。このように形成されたマイクロスフェアを数時間、常温、常圧下で撹拌してメチレンクロライドを空気中に徐々に蒸発させながら硬化させて、それを遠心分離した後、蒸留水で洗浄した後、−70℃で凍結した後、adVantage(VirTis社,NY,米国)モデルを使用して常温、50mTorrで3日間凍結乾燥して、最終的にW/O/W形態のエキセンディン−4が持続的に放出されるマイクロスフェア剤形を製造した。
【0066】
<比較例1>薬物分散体過程を経ないO/W型マイクロスフェアの製造(1)
高分子(RG502H,ベーリンガーインゲルハイム社)300mgをメチレンクロライドに完全に溶解した後、メチルアルコールをメチレンクロライド体積比(メチルアルコール:メチレンクロライド、v/v)で1:4の割合で添加して高分子/メチレンクロライド/メチルアルコール溶液を製造した。この溶液にエキセンディン−4を9:300(エキセンディン−4:高分子、w/w)の割合で取った後、高分子/メチレンクロライド/メチルアルコール溶液に入れて、薬物分散体過程を経ない薬物分散溶液を製造することを除き実施例1と同一の方法でマイクロスフェアを製造した。
【0067】
<比較例2>薬物分散体過程を経ないO/W型マイクロスフェアの製造(2)
エキセンディン−4 9mgをメチルアルコール0.2mlに完全に溶解した後、高分子(RG502H,ベーリンガーインゲルハイム社)300mgを完全に溶解した0.8mlの高分子/メチレンクロライド溶液に先で製造したエキセンディン−4/メチルアルコール溶液を添加してエキセンディン−4分散体を経ない薬物分散溶液を製造することを除き実施例1と同一の方法でマイクロスフェアを製造した。
【0068】
<実験例1>マイクロスフェア内のエキセンディン−4の封入効率確認
実施例1及び4〜8で製造されたエキセンディン−4含有マイクロスフェア30mgを取ってポリスチレン容器に入れて、0.5mlのDMSO溶液に充分に溶解させた後、1.5mlの蒸留水を加えて12時間以上撹拌してエキセンディン−4を水相(蒸留水)で抽出した。このように抽出されたエキセンディン−4の量を定量した後、封入効率を計算した。封入効率は、理論封入量に対する実際封入量の百分率である。
計算結果を表5に示した。
【0069】
【表5】

【0070】
表5に示したように、本発明によって製造されたマイクロスフェアの封入効率は、80%以上であり、薬物の封入効率が非常に高いことを確認した。
【0071】
<実験例2>マイクロスフェアの平均粒子サイズ測定
実施例1及び4〜8で製造されたエキセンディン−4含有マイクロスフェア30mgを取って、ツイーン20が0.02%(v/v)入っている蒸留水1lに分散させた後、粒度分析機でマイクロスフェアの平均粒子サイズを測定した。測定結果を表6に示した。
【0072】
【表6】

【0073】
表6に示したように、本発明によって製造されたマイクロスフェアの平均粒子サイズは、8〜65μmであり、注射投与時に針の直径が小さな注射針も使用することができることを確認した。
【0074】
<実験例3>製造されたマイクロスフェアのイン・ビトロ放出
下記の条件で実施例及び比較例で製造されたエキセンディン−4含有マイクロスフェアのイン・ビトロエキセンディン−4放出特性評価を行なった。
【0075】
ポリスチレン容器内に30mgの乾燥したマイクロスフェアを0.02%(w/v)のツイーン20を含んだ1.5mlのPBS(pH7.4)溶液で分散させた後、37℃で培養(Incubation)しながら時間経過によって遠心分離してマイクロスフェアを沈澱させて、上澄み液中の薬物の濃度を測定してマイクロスフェアから放出されるエキセンディン−4の量を測定した。沈澱させたマイクロスフェアは、また新しい緩衝溶液(PBS)に分散させて放出実験を継続した。培養日にしたがって測定されたマイクロスフェアから放出されるエキセンディン−4の放出量(%)を図1〜図3に示した。
【0076】
図1及び図2は、それぞれ本発明によってエキセンディン分散体製造工程を経て製造された実施例1及び実施例4〜8のエキセンディン−4含有マイクロスフェアのイン・ビトロ放出実験結果で、図3はエキセンディン分散体製造工程を経ない比較例1及び2のエキセンディン−4含有マイクロスフェアのイン・ビトロ放出実験結果であり、時間経過によってエキセンディン−4を含んだマイクロスフェアから放出されたエキセンディン−4の量を示したグラフである。
【0077】
図1及び図2に示したように、本発明によってエキセンディン分散体製造工程を経て製造されたマイクロスフェアは、初期過多放出がなく(1日で3%のエキセンディン−4が放出)21日間、0次放出されて不完全放出が起きないことを確認した。
【0078】
これと比較して図3に示したように、エキセンディン分散体製造工程を経ないで製造したマイクロスフェアの場合には、21日間に83%(比較例1)、49%(比較例2)のみ放出され、不完全な放出が起きることを確認した。
【0079】
したがって、本発明によって製造されたエキセンディン−4含有マイクロスフェアは、エキセンディン−4の初期過多放出がなく、0次放出を維持して、不完全な放出がなくて、エキセンディン−4が3週以上持続的に放出されるので、エキセンディン−4徐放性製剤として有用に使用することができる。
【0080】
<実験例4>製造されたマイクロスフェアの薬物速度論的評価
下記の条件で実施例及び比較例で製造されたエキセンディン−4含有マイクロスフェアのイン・ビボエキセンディン−4放出特性及び薬物速度論的評価を行なった。
【0081】
実施例1、4〜8、及び比較例1〜2で製造されたマイクロスフェアをエキセンディン−4の量を基準に、140μgを取って、1.5%CMC、0.5%ツイーン20、そして0.9%塩化ナトリウムを含んだ水溶性懸濁液に懸濁して各用量を5匹のスプラグ−ドーリーラットにそれぞれ約0.2mlずつ皮下注射した。その後、適当な時間間隔で血液を採取して血清中のエキセンディン−4の量をELISAを使用して測定してマイクロスフェアから放出されるエキセンディン−4の放出量を測定して図4に示した。図4は、実施例1−1で製造されたマイクロスフェアの実験動物でのエキセンディン−4の放出パターンを示したグラフである。
【0082】
図4に示したように、本発明によって製造されたマイクロスフェアの実験動物でのエキセンディン−4の放出パターンは、図1のイン・ビトロ放出結果と類似に初期放出がなく、20日以上エキセンディン−4が0次で持続放出され、不完全な放出がないことを確認した。
【0083】
また、測定されたエキセンディン−4の放出量からWinNonlinプログラムを使用して実験動物で薬物動態学的パラメーターである血中最高濃度(Cmax)及びAUC0−14dを計算して表7に示した。
【0084】
【表7】

【0085】
表7に示すように、実施例1−1〜1−7、4、5−1〜5−3、6〜8すべてCmax及びAUC測定値が比較例1及び2と比較して高く示されることが分かる。このことから、本発明の製造方法によって製造された高分子マイクロスフェアは、エキセンディン−4の放出に優れていることが分かる。
【0086】
結論的に、図4及び表7の結果を参照すると、本発明は、エキセンディン−4を2〜4週以上持続的に放出するのみならず、エキセンディン−4の放出程度も優秀であり、薬物が放出されない期間(lag-phase)もない、優れたエキセンディン−4含有生分解性高分子マイクロスフェア剤形を製造することができることが分かる。
【0087】
<実験例5>エキセンディン−4含有マイクロスフェア内のエキセンディン−4の安定性評価
実施例1−1で製造されたエキセンディン−4含有マイクロスフェア10mgを取ってポリスチレン容器に入れて、1mlのDMSO溶液に充分に溶解させた。この溶液を重炭酸アンモニウムで1/5希釈後、逆相高性能液体クロマトグラフィー分析(RP−HPLC)を実施して、エキセンディン−4のピーク及び検出時間を観察した。その結果を図5に示した。
【0088】
図5は、実施例1−1で製造されたエキセンディン−4含有マイクロスフェアで得られたエキセンディン−4のクロマトグラムである。図5に示したように、エキセンディン−4の単一ピークを確認することができ、維持時間も比較物質と一致することを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された様式で糖調節ペプチドを放出することができる、生分解性マイクロスフェアであって、生分解性高分子担体と、それに封入された糖調節ペプチドを含む、前記生分解性マイクロスフェア。
【請求項2】
糖調節ペプチドが、合成エキセンディン−3、エキセンディン−4及びこれらの類似体及びアゴニストからなる群から選択される、請求項1に記載の生分解性マイクロスフェア。
【請求項3】
糖調節ペプチドが、エキセンディン−4である、請求項2に記載の生分解性マイクロスフェア。
【請求項4】
生分解性高分子が、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−L−乳酸−コ−グリコール酸およびポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸からなる群から選択される、請求項1に記載の生分解性マイクロスフェア。
【請求項5】
生分解性高分子が、ポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸である、請求項4に記載の生分解性マイクロスフェア。
【請求項6】
請求項1に記載の生分解性マイクロスフェアの製造方法であって、
高分子に有機溶媒を添加して高分子溶液を製造する工程(工程1);
工程1の高分子溶液に糖調節ペプチドを分散し、薬物分散体を製造し、該薬物分散体に、アルコールまたはアルコールと有機酸との混合物を添加して、薬物分散溶液を製造する工程(工程2);及び
工程2の薬物分散溶液からマイクロスフェアを製造する工程(工程3)
を含む、前記製造方法。
【請求項7】
有機溶媒が、メチレンクロライド、エチルアセテートおよびクロロホルムからなる群から選択される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
工程2のアルコールが、メチルアルコールである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
工程2のアルコールが、アルコール:高分子溶液=1:1〜1:6の割合で用いられる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
工程2で製造された薬物分散溶液に対する添加剤をさらに含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
添加剤が、ポリエチレングリコール、ラブラフィル、ラブラソール、中鎖トリグリセリド、レシチン、N−メチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロプロピルメチルセルロース、ツイーン、スパン、クレモフォア、ポロクサマー、ブリッジ、サンソフト818Hからなる群から選択される、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
添加剤が、溶液の体積の0.01〜15%(w/v)の量で用いられる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
工程3が、工程2の薬物分散溶液を乳化剤を含む水溶液に分散させ、スターラーまたはホモジナイザーを用いてマイクロスフェアを形成し、凍結乾燥法または真空乾燥法で乾燥させることによって行われる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項14】
乳化剤が、トリトン、ブリッジ、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
乳化剤が、メチレンクロライド、エチルアセテートおよびクロロホルムからなる群から選択される有機溶媒に飽和されている、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
工程3が、工程2の薬物分散溶液を噴霧乾燥器を用いて噴霧させることで行われる請求項6に記載の製造方法。
【請求項17】
噴霧乾燥器が、薬物分散溶液の流入する温度を115〜125℃に、放出される温度を80〜90℃に設定されている、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
噴霧乾燥後、凍結乾燥または真空乾燥をさらに行う、請求項16に記載の製造方法。
【請求項19】
生分解性高分子マイクロスフェアの製造方法であって、高分子に有機溶媒を添加して高分子溶液を製造する工程(工程1);
工程1の高分子溶液を、界面活性剤を含む糖調節ペプチド水溶液で乳化し、1次乳化溶液を製造する工程(工程2’);及び
工程2’の1次乳化溶液を、乳化剤を含む水溶液に分散させて、スターラー及びホモジナイザーで攪拌してマイクロスフェアを形成し、凍結乾燥法または真空乾燥法でマイクロスフェアを乾燥させる工程(工程3’)
を含む、前記製造方法。
【請求項20】
工程1の有機溶媒が、メチレンクロライド、エチルアセテート及びクロロホルムからなる群から選択される、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
界面活性剤が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ラブラフィル、ラブラソール、中鎖トリグリセリド、レシチン、N−メチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロプロピルメチルセルロース、ツイーン、スパン、クレモフォア、ポロクサマー、ブリッジ及びサンソフト818Hからなる群から選択される、請求項19に記載の製造方法。
【請求項22】
乳化剤が、トリトン、ブリッジ、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項19に記載の製造方法。
【請求項23】
乳化剤が、メチレンクロライド、エチルアセテートおよびクロロホルムからなる群から選択される有機溶媒に飽和されている、請求項19に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項6〜23のいずれかに記載の製造方法によって製造された、糖調節ペプチドを制御放出するための生分解性高分子マイクロスフェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−524924(P2010−524924A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503980(P2010−503980)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002216
【国際公開番号】WO2008/130158
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(501187848)ドン・ア・ファーム・カンパニー・リミテッド (20)
【Fターム(参考)】