説明

糖質、有機ポリカルボン酸および反応性シリコーンを含むミネラルウール用のサイズ剤組成物、ならびに得られる絶縁製品

本発明は、ミネラルウール絶縁材料、特にグラスウールまたはロックウール用の接着剤組成物であって:少なくとも1種の糖質と;1000以下のモル質量を有する少なくとも1種の有機ポリカルボン酸と;少なくとも1種の反応性シリコーンとを含む組成物に関する。また、本発明は得られる鉱物繊維絶縁材料、およびその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明はミネラルウール、特にグラスウールまたはロックウールとホルムアルデヒドを含まない有機バインダとをベースにした熱および/または音響絶縁製品の分野に関する。
【0002】
本発明はより詳細には架橋して前記有機バインダを生成することができるサイズ剤組成物であって、少なくとも1種の糖質と1000未満のモル質量を有する少なくとも1種の有機ポリカルボン酸と少なくとも1種の反応性シリコーンとを含む組成物、前記サイズ剤組成物の製造方法およびそれから得られる絶縁製品に関する。
【0003】
ミネラルウールをベースにした絶縁製品の製造は一般にウール自体を製造する段階を含み、これは種々のプロセスによって、たとえば内部または外部遠心分離による繊維化の周知技術にしたがって行うことができる。遠心分離は、溶融した鉱物材料(ガラスまたは岩石)を複数の小さなオリフィスを備える遠心分離デバイスに導入することにあり、この材料は、遠心力の作用を受けてデバイスの周壁に向けて押し付けられて、単繊維の形態でそこから出て行く。遠心デバイスを出て行くと、単繊維は延伸され、高温および高速のガス流によって受け取り部材へと運ばれ、そこで繊維(またはミネラルウール)のウェブを形成する。
【0004】
繊維同士の集合体を提供し、ウェブがまとまりを持つことを可能にするために、熱硬化性樹脂を含むサイズ剤組成物を、遠心デバイスの出口と受け取り部材との間の経路上で繊維に向けて放出する。サイズ剤でコーティングされた繊維のウェブに、一般に100℃を超える温度での熱処理を施して樹脂の重縮合を引き起こし、それにより、特定の性質、特に寸法安定性、引張り強さ、圧縮後の厚さ回復率および均一な色を有する熱および/または音響絶縁製品が得られる。
【0005】
ミネラルウールに向けて放出されるサイズ剤組成物は一般に熱硬化性樹脂と添加剤、たとえば樹脂の架橋用の触媒、接着性向上用のシラン、防塵用の鉱油などとを含む水溶液の形態で提供される。サイズ剤組成物は一般にスプレーによって繊維に塗布される。
【0006】
サイズ剤組成物の性質は樹脂の特徴に大きく依存する。応用の観点から、サイズ剤組成物は、優れたスプレー適性を有し、繊維の表面に堆積して効率的にそれらをまとめることができることが必要である。
【0007】
樹脂は、通常樹脂と上述の添加剤と混合することにより使用時に調製されるサイズ剤組成物を作るのに使用する前の所定の期間中は安定でなければならない。
【0008】
規制レベルでは、樹脂が無公害であると見なされること、すなわちそれがヒトの健康または環境にとって有害でありうる化合物を可能な限り含まない−およびそれがサイジング段階またはその後段の間にこのような化合物を可能な限り生成しないことが必要である。
【0009】
通常使用されている熱硬化性樹脂はレゾール族に属するフェノール樹脂である。上述の熱的条件下でのそれらの優れた架橋適性に加え、これらの樹脂は水に可溶であり、鉱物繊維、特にグラスファイバに対する優れた親和性を有しており、比較的安価である。
【0010】
これらのレゾールは、フェノールとホルムアルデヒドとの間の反応を促進させ樹脂中の残留フェノールの濃度を下げるための1より大きなホルムアルデヒド/フェノール化合物のモル比での、塩基性触媒の存在下でのフェノールとアルデヒドとの縮合によって得られる。フェノールとホルムアルデヒドとの間の縮合反応は、長くて比較的水に不要であり希釈適性を下げる鎖の生成を避けるため、モノマーの縮合度を制限しながら行われる。その結果、樹脂は、所定の割合の未反応モノマー、特にホルムアルデヒドを含み、その存在はその知られている有害な効果のせいで望ましくない。
【0011】
この理由のため、レゾールベースの樹脂は一般に尿素によって処理され、尿素は遊離ホルムアルデヒドと反応してそれを不揮発性の尿素−ホルムアルデヒド縮合物の形態でトラップする。樹脂中の尿素の存在は、その低いコストの結果として所定の経済的な利点をさらにもたらす。なぜなら、樹脂の作用品質に悪影響を与えることなく、特に最終製品の機械的性質に悪影響を与えることなくそれを比較的大量に導入することが可能であり、樹脂の全体コストを著しく下げられるからである。
【0012】
しかしながら、樹脂の架橋を達成するためにウェブに施される温度条件下では、尿素−ホルムアルデヒド縮合物は安定でないことが報告されている;それらは分解してホルムアルデヒドおよび尿素に戻り、次に部分的に分解してアンモニアを与え、これが工場の周りに放出される。
【0013】
より厳しくなってきた環境保護に関する規制は、望ましくない排出物、特にホルムアルデヒドの濃度をさらに下げることが可能とする解決策を探すことを絶縁製品の製造業者に強いている。
【0014】
サイズ剤組成物においてレゾールを交換する解決策は知られており、これはカルボン酸ポリマー、特にアクリル酸ポリマーの使用に基づいている。
【0015】
US 5340868では、サイズ剤がポリカルボン酸ポリマーと、β−ヒドロキシアミドと、少なくとも三官能性の単量体カルボン酸とを含んでいる。
【0016】
ポリカルボン酸ポリマーとポリオールと触媒とを含み、触媒がリン含有触媒(US 5318990、US 5661213、US 6331350、US 2003/0008978)、フルオロボレート(US 5977232)またはシアナミド、ジシアナミドもしくはシアノグアニジン(US 5932689)であるサイズ剤組成物が提供されてきた。
【0017】
また、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアルカノールアミンとポリカルボン酸ポリマーとを含むサイズ剤組成物(US 6071994、US 6099773、US 6146746)およびこれらとコポリマーとを組み合わせたサイズ剤組成物(US 6299936)に関する説明が提供されている。
【0018】
US 2002/0091185では、ポリカルボキシルポリマーおよびポリオールを、OH基の相当物の数のCOOH基の相当物の数に対する比が0.6/1ないし0.8/1となるような量で使用する。
【0019】
US 2002/0188055では、サイズ剤組成物がポリカルボキシルポリマーと、ポリオールと、カチオン性、両性または非イオン性界面活性剤とを含む。
【0020】
US 2004/0002567では、サイズ剤組成物がポリカルボキシルポリマーと、ポリオールと、シランタイプのカップリング剤とを含む。
【0021】
US 2005/0215153には、カルボン酸およびポリオールからなるポリマーを含むプレバインダとコバインダーとしてのデキストリンとから形成されるサイズ剤が記載されている。
【0022】
さらに、ミネラルウール用のサイズ剤として使用できる熱架橋性多糖類をベースとした接着剤組成物が知られている(US 5895804)。この組成物は、少なくとも2つのカルボン酸官能基を有し分子量が少なくとも1000に等しいポリカルボキシルポリマーと、少なくとも10000に等しい分子量を有する多糖類とを含む。
【0023】
サイズ剤によってまとめられたミネラルウールをベースとした絶縁製品は、特に湿った環境でのエージングに対する優れた耐性を特に課す基準をさらに満足しなければならない。それゆえに、絶縁製品の吸水容量が可能な限り低いことが重要である。
【0024】
本発明の目的は、ホルムアルデヒドを全く含まず、絶縁製品に与える吸水容量が低い、ミネラルウールをベースにした絶縁製品用のサイズ剤組成物を提供することにある。
【0025】
この目的を達成するために、本発明は、ミネラルウール、特にグラスウールまたはロックウールをベースにした絶縁製品用のサイズ剤組成物であって:
−少なくとも1種の糖質と、
−1000以下のモル質量を有する少なくとも1種の有機ポリカルボン酸と、
−少なくとも1種の反応性シリコーンと
を含む組成物を提供する。
【0026】
糖質は単糖類でもよいし、多糖類でもよいし、またはこれらの化合物の混合物でもよい。
【0027】
単糖類は3ないし8個の炭素原子を含む単糖類、好ましくはアルドースおよび有利には5ないし7個の炭素原子を含むアルドースから選択される。特に好ましいアルドースは天然アルドース(D系列に属する)、特にヘキソース、たとえばグルコース、マンノースおよびガラクトースである。
【0028】
本発明による多糖類は100000未満、好ましくは50000未満、有利には10000未満でありさらに良好には180を超える重量平均モル質量を有する多糖類から選択される。
【0029】
有利には、多糖類は、重量平均モル質量の数平均モル質量に対する比によって定義される10以下の多分散指数(PI)を示す。
【0030】
好ましくは、多糖類は、上述のアルドースから選択される少なくとも1つの単位、有利にはグルコースを含む。主に(50重量%を超えて)グルコース単位から構成される多糖類が特に好ましい。
【0031】
好ましい実施形態によると、本発明は、特に植物から得られる単糖類および/または多糖類の混合物、特にデキストリンまたは糖蜜を使用する。
【0032】
デキストリンは一般式(C6105nに対応する化合物であり、澱粉の部分的加水分解によって得られる。デキストリンの調製方法は知られている。たとえば、デキストリンは、一般的に酸触媒の存在下で澱粉を加熱または乾燥させて、その結果前記澱粉のアミロース成分およびアミロペクチン分子を破断させて低モル質量の生成物を得ることによって調製できる。また、デキストリンは、澱粉の結合を加水分解できる1種以上のアミラーゼ、特に微生物アミラーゼで澱粉を酵素的に処理することによっても得ることができる。処理の性質(化学的または酵素的)および加水分解条件はデキストリンの平均分子量およびモル質量の分布に直接影響を与える。
【0033】
本発明によるデキストリンは、種々の植物起源の、たとえば、塊茎状の農作物、たとえばジャガイモ、マニオク、クズウコンおよびサツマイモから得られる、穀物、たとえばコムギ、トウモロコシ、ライムギ、イネ、オオムギ、キビ、カラスムギおよびモロコシから得られる、果物、たとえばセイヨウトチノキ、ヨーロッパグリおよびヘーゼルナッツから得られる、またはマメ科植物、たとえばエンドウマメおよびインゲンマメから得られる澱粉または澱粉誘導体から得ることができる。
【0034】
5以上、好ましくは10以上、有利には15以上でありさらに良好には100未満のデキストロース等量DEを有するデキストリンが特に好ましい。
【0035】
通常、デキストロース等量DEは以下の関係式によって定義される。
【数1】

【0036】
糖蜜は特にサトウキビおよびビートから抽出される糖の精製からの残留物であり、高い含有量、約40ないし60重量%の糖質を含む。スクロースが糖蜜の糖質の大部分を構成する。
【0037】
本発明による糖蜜は好ましくはスクロースで表される45ないし50重量%の総糖質を含む。
【0038】
ビート糖蜜が特に好ましい。
【0039】
用語「有機ポリカルボン酸」は、少なくとも2つのカルボキシル官能基、好ましくは多くとも4つのカルボキシル官能基および有利には多くとも3つのカルボキシル官能基を含む有機酸を意味すると理解される。
【0040】
有機ポリカルボン酸は架橋剤として働く;それは熱の作用下で糖質と反応してエステル結合を形成することができ、その結果、最終的なバインダ中で高分子ネットワークが得られる。前記ポリマーネットワークは、ミネラルウール中の繊維の接触点に結合を作ることを可能にする。
【0041】
有機ポリカルボン酸は1000以下、好ましくは750以下および有利には500以下のモル質量を有する有機ポリカルボン酸から選択される。
【0042】
好ましくは、有機ポリカルボン酸は飽和または不飽和で直鎖または分枝の環状脂肪酸、環状酸または芳香族酸である。
【0043】
有機ポリカルボン酸は、ジカルボン酸、たとえばシュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、トラウマチン酸、樟脳酸、フタル酸およびその誘導体、特に少なくとも1個のホウ素または塩素原子を含んだその誘導体、テトラヒドロフタル酸及びその誘導体、特に少なくとも1個の塩素原子を含んだその誘導体、たとえばクロレンド酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メサコン酸およびシトラコン酸など、もしくはジカルボン酸前駆体、特にその無水物、例えば無水マレイン酸、無水琥珀酸および無水フタル酸などか;トリカルボン酸、例えばクエン酸、トリカルバリル酸、1,2,4−ブタントリカルバリル酸、アコニット酸、へミメリト酸、トリメリト酸およびトリメシン酸などか;またはテトラカルボン酸、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸およびピロメリト酸でありうる。
【0044】
サイズ剤組成物では、糖質が、この糖質および有機ポリカルボン酸から構成される混合物の10ないし90重量%、好ましくは20ないし85重量%および有利には30ないし80重量%を占める。
【0045】
表現「反応性シリコーン」は、サイズ剤組成物の成分の少なくとも1種と反応できる少なくとも1つのヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基もしくは無水カルボキシル官能基、アミン官能基、エポキシ官能基またはビニル官能基を有するポリオルガノシロキサンを意味すると理解される。
【0046】
反応性シリコーンは室温で液体である;それはシリコーン流体と呼ばれるシリコーンのカテゴリーに属する。その平均分子量は一般に50000以下、好ましくは10000以下である。
【0047】
反応性シリコーンはオルガノシロキサン残基、特にアルキルシロキサン残基、好ましくはジメチルシロキサン残基および任意にフェニルシロキサン残基、特にメチルフェニルシロキサン残基からなる主鎖から構成され、シリコーンの重量に対するフェニルシロキサン単位の割合は好ましくは20重量%を超えない、特に10重量%以下である。前記主鎖は少なくとも1つの反応性のヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基もしくは無水カルボキシル官能基、アミン官能基、エポキシ官能基またはビニル官能基を末端位置(鎖の自由端のうちの1つ)または側基(もしくはグラフト)に有する。好ましくは、反応性シリコーンは少なくとも2つの末端官能基、有利にはヒドロキシル官能基を含む。
【0048】
反応性のヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基もしくは無水カルボキシル官能基、アミン官能基、エポキシ官能基またはビニル官能基は、熱の影響下で前記反応性官能基を開放する保護基によって遮蔽されていてもよい。反応性官能基の遮蔽は、オーブンでのサイズ剤の架橋のための熱処理の前に反応性シリコーンが反応しないことを保証する。このような保護遮蔽機能の例として、ヒドロキシル基を少なくとも部分的にエーテル化すること、または保護基、特にアシル基もしくは炭酸基によって遮蔽することを考えることができる。
【0049】
サイズ剤組成物中の反応性シリコーンの割合は、100重量部の糖質および有機ポリカルボン酸当たり、0.1ないし5重量部、好ましくは0.3ないし3重量部、有利には0.5ないし2重量部およびさらに良好には0.7ないし1.8重量部である。
【0050】
サイズ剤組成物は、架橋が始まる温度を調節する役割を特に有する酸性または塩基性の触媒をさらに含むことができる。
【0051】
触媒はルイス塩基およびルイス酸、たとえば粘土、コロイダルシリカまたは非コロイド性シリカ、有機アミン、四級アミン、金属酸化物、金属硫酸塩、金属塩化物、尿素サルファート、尿素塩化物および珪酸塩系触媒から選択することができる。
【0052】
また、触媒は、リン含有化合物、たとえばアルカリ金属の次亜リン酸塩、アルカリ金属の亜リン酸塩、アルカリ金属のポリリン酸塩、アルカリ金属のリン酸水素塩、リン酸またはアルキルリン酸塩でもありうる。好ましくは、アルカリ金属はナトリウムまたはカリウムである。
【0053】
また、触媒は、フッ素およびホウ素を含む化合物、たとえばテトラフルオロホウ酸またはこの酸の塩、特にアルカリ金属のテトラフルオロボラート、たとえばナトリウムテトラフルオロボラートまたはカリウムテトラフルオロボラートなど、アルカリ土類金属のテトラフルオロボラート、例えばカルシウムテトラフルオロボラートまたはマグネシウムテトラフルオロボラートなど、亜鉛テトラフルオロボラートおよびアンモニウムテトラフルオロボラートなどでもありうる。
【0054】
好ましくは、触媒は次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムおよびこれらの化合物の混合物である。
【0055】
サイズ剤組成物中に導入される触媒の量は、糖質および有機ポリカルボン酸の重量の20%まで、好ましくは10%までを占め、有利には少なくとも1%に等しい。
【0056】
本発明によるサイズ剤組成物は、以下に示す従来の添加剤を、糖質および有機ポリカルボン酸の100重量部に基づいて計算した以下の割合で更に含むことができる:
−0ないし2部のシラン、特にアミノシラン、
−0ないし20部、好ましくは4ないし15部のオイル、
−0ないし30部、好ましくは0ないし20部の尿素及び/又はグリセロール、
−0乃至30部の、リグニン誘導体、たとえばリグノスルホン酸アンモニウム(ALS)またはリグノスルホン酸ナトリウムなど、および動物性または植物性蛋白質から選択される「鎖延長剤」。
【0057】
これら添加物の役割は知られているが、簡単に再度述べると以下のようになる:シランは繊維とバインダとをカップリングさせるための試薬であり、アンチエージング剤としても働く;オイルは防塵性の疎水性試薬である;尿素およびグリセロールは可塑剤として働き、サイズ剤組成物のプレゲル化を防ぐことを可能にする;「鎖延長剤」は、水性のサイズ剤組成物中に可溶またはそれに分散可能な有機フィラーであり、サイズ剤組成物のコストを削減することを特に可能にする。
【0058】
特に配合目的のためまたはさらなる疎水性化を提供するために、非反応性のシリコーンが反応性シリコーンと共に任意に存在してもよい;その存在は好ましくは、糖質および有機ポリカルボン酸の100重量部に基づいて2重量部未満、さらに良くは1重量部未満、特に0.5重量部未満に制限される。
【0059】
サイズ剤組成物は使用する有機ポリカルボン酸によって約1ないし5、好ましくは1.5以上の酸性のpHを示す。有利には、糖質と反応できないアミノ化合物、たとえば三級アミン、特にトリエタノールアミンの添加によってpHを少なくとも2に等しい値に維持して、サイズ剤組成物の不安定性および製造ラインの腐食の問題を抑制する。アミノ化合物の量は糖質および有機ポリカルボン酸の総重量の30重量部までを占めることができる。
【0060】
サイズ剤組成物は鉱物繊維、特にガラス繊維またはロックウールに塗布することを目的としている。
【0061】
通常、サイズ剤組成物は、遠心デバイスの出口であって鉱物繊維が繊維のウェブの形態で受け取り部材に集められる前に鉱物繊維に向けて放出され、その後、ウェブがサイズ剤の架橋および不溶解性バインダの形成を可能にする温度で処理される。本発明によるサイズ剤の架橋は従来のホルムアルデヒド−フェノール樹脂のそれに匹敵する温度、110℃以上の温度、好ましくは130℃以上の温度および有利には140℃以上の温度で行われる。
【0062】
これらのサイジングされた繊維から得られる音響および/または熱絶縁製品も本発明の主題を構成する。
【0063】
これらの製品は、一般的には、ミネラルウール製、ガラス製もしくは石材製のマットもしくはフェルトの形態、またはさらには前記マットもしくはフェルト上を覆う表面を形成することを特に目的とした鉱物繊維製、グラスファイバ製もしくはロックウール製のベールの形態で提供される。
【0064】
以下の例は本発明を説明することを可能にするが、それを限定するものではない。
【0065】
これらの例では、以下のものが測定される。
【0066】
−製造後および6/1に等しい圧縮度(例1ないし4)または表2に示した圧縮度(例4ないし8)(呼び厚さの圧縮された状態の厚さに対する比として定義される)で圧縮した種々の期間後の絶縁製品の厚さ。厚さの測定は、製品の優れた寸法的挙動を評価することを可能にする。
【0067】
−ASTM C 686-71T基準による、絶縁製品から打ち抜いて切り出したサンプルに関する引張り強さ。このサンプルは円環体の形状を有しており、長さが122mmであり、幅が46mmであり、この切り出しの外縁の曲率半径が38mmに等しく、この切り出しの内縁の曲率半径が12.5mmに等しい。
【0068】
サンプルは試験機の2つの円筒形マンドレルの間に設置され、これらのマンドレルの一方は可動であって一定の速度で動かされる。サンプルの破断力F(単位:グラム重)を測定し、この破断力Fのサンプルの重量に対する比によって定義される引張り強さを算出する。
【0069】
引張り強さは、製造後(初期引張り強さ)及びオートクレーブ内で105℃の温度で相対湿度100%の下15分間に亘って促進エージングした後(TS15)に測定する。
【0070】
−絶縁製品1m2当たりに吸収された水のkgとして表される、EN1609基準の条件下での吸水性。1kg/m2未満の吸水性を示す絶縁製品は、短期(24時間)の低い吸水性を有すると見なされる;それらは、ACERMI認定による「WS」カテゴリーに属する。
【0071】
例1ないし3
表1に示されている成分を含んだサイズ剤組成物を調製した。割合は重量部で表している。
【0072】
サイズ剤組成物は、水を容れた容器内に、成分が完全に溶解するまで強く攪拌しながら糖質および続けて他の成分を連続的に導入することによって調製する。
【0073】
WO 01/96254 A1の例2、試験1に従って、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂と尿素とを含んだ従来のサイジング剤組成物(参照)も調製する。
【0074】
これらのサイズ剤組成物を使用してグラスウールをベースにした絶縁製品を形成する。
【0075】
グラスウールは2.4m幅の製造ライン上で連続的に製造する。グラスウールは内部遠心分離技術によって製造され、ここでは溶融ガラス組成物が、溶融組成物を収容するためのチャンバを形成するバスケットと複数のオリフィスによって孔が空いている外周バンドとを具備した遠心ディスクと呼ばれるツールによって繊維に変えられる:このディスクは垂直に立ったその対称軸を中心として回転し、組成物が遠心力の作用を受けてオリフィスを通して押し出され、オリフィスから出て行く材料は延伸用ガス流の補助によって延伸されて繊維となる。
【0076】
通常、サイズ剤スプレーリングが、繊維化ディスクの下に位置しており、まさに形成されたばかりのグラスウール上にサイズ剤組成物を均一に散布する。
【0077】
このようにしてサイジングされたミネラルウールは、内部採取ボックスを備えたベルトコンベア上に集められ、これらボックスはこのミネラルウールをフェルト又はウェブの形態でベルトコンベアの表面に保持する。このフェルト又はウェブを切り出し、次に290℃(参照製品の場合は260℃)に保たれたオーブン内に入れて、ここでサイズ剤の成分が重合しバインダを形成する。
【0078】
オーブンの出口で得られた絶縁製品は約82mmの厚さと、17.5kg/m3に等しい密度と、5%に等しい強熱減量とを有する。
【0079】
絶縁製品の性質を以下の表1に示す。
【表1】

【0080】
n.d.: 検出せず
(1)コーンスターチから得られたデキストリン;重量平均分子量: 3510;デキストロース等量DE: 30;参照 Roclys(登録商標) C3072SによりROQUETTE FRERESから販売されている。
(2)末端反応性ヒドロキシル官能基を有するポリジメチルシロキサン;参照DOW CORNING(登録商標) 1581によりDOW CORNING.から販売されている。
(3)反応性ポリジメチルシロキサン;参照SILRES(登録商標) BS 10421581によりWACKER SILICONESから販売されている。
【0081】
本発明による絶縁製品は低い吸水性を特に示し、例2では参照のフェノール−ホルムアルデヒドサイズ剤組成物を用いて得られた製品のそれに匹敵し、例1および3ではそれぞれ32%および90%だけ下がることが観察される。
【0082】
例4ないし8
表2に示されている成分から、例1ないし3の条件下でサイズ剤組成物を調製する。割合は重量部で表している。
【0083】
これらの組成物を使用して例1ないし3で説明した条件下でミネラルウールをベースにした絶縁製品を製造する。得られた製品は種々の呼び厚さ(60、100または160mm)と、19kg/m3に等しい密度とを有する。
【0084】
絶縁製品の性質を表2に示す。
【0085】
反応性シリコーンを含有する本発明による製品は多くとも0.6kg/m2に等しい吸水性を有する。
【0086】
例4および5からの製品は、非反応性シリコーンを含有した比較例1および2からの製品よりも吸水容量が低い。
【表2】

【0087】
n.d.: 検出せず
(1)コーンスターチから得られたデキストリン;重量平均分子量: 3510; デキストロース等量DE: 30;参照 Roclys(登録商標) C3072SによりROQUETTE FRERESから販売されている
(2)反応性ヒドロキシル官能基を有するポリジメチルシロキサン;参照DOW CORNING(登録商標) 1581によりDOW CORNING.から販売されている。
【0088】
(4)ポリジメチルシロキサン;参照 DOW CORNING (登録商標) 346によりDOW Corningから販売されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラルウール、特にロックウールまたはグラスウールをベースにした絶縁製品用のサイズ剤組成物であって:
−少なくとも1種の糖質と、
−1000以下のモル質量を有する少なくとも1種の有機ポリカルボン酸と、
−少なくとも1種の反応性シリコーンと
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記糖質が、単糖類、多糖類またはこれらの化合物の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記単糖類は3ないし8個の炭素原子、好ましくは5ないし7個の炭素原子を含む単糖類から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記単糖類がアルドースであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルドースがヘキソース、たとえばグルコース、マンノースおよびガラクトースであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記多糖類は100000未満、好ましくは50000未満、有利には10000未満でありさらに良好には180を超える重量モル質量を示すことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記多糖類は50重量%を超えるグルコース単位から構成されていることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
単糖類および/またはデキストリンおよび糖蜜から選択される多糖類の混合物を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記デキストリンは5以上、好ましくは10以上、有利には15以上でありさらに良好には100未満のデキストロース等量を示すことを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記糖蜜が40ないし60重量%、好ましくは45ないし50重量%の糖質を含むことを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機ポリカルボン酸は、少なくとも2つのカルボキシル官能基、好ましくは多くとも4つのカルボキシル官能基および有利には多くとも3つのカルボキシル官能基を含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記酸は750以下および好ましくは500以下のモル質量を示すことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記有機ポリカルボン酸が飽和または不飽和で直鎖または分枝の環状脂肪酸、環状酸または芳香族酸であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記糖質は該糖質および前記有機ポリカルボン酸から構成される混合物の10ないし90重量%、好ましくは20ないし85重量%および有利には30ないし80重量%を占めることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記反応性シリコーンは50000以下、好ましくは10000以下の分子量を有することを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記反応性シリコーンはオルガノシロキサン残基、特にアルキルシロキサン残基、好ましくはジメチルシロキサン残基および任意にフェニルシロキサン残基、特にメチルフェニルシロキサン残基からなる主鎖から構成されることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記反応性シリコーンは、少なくとも1つの反応性のヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基もしくは無水カルボキシル官能基、アミン官能基、エポキシ官能基またはビニル官能基を末端位置または側基に有し、好ましくは少なくとも2つの末端官能基を有することを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも2つの末端官能基がヒドロキシル官能基であることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
反応性シリコーンの割合は、100重量部の糖質および有機ポリカルボン酸当たり、0.1ないし5重量部、好ましくは0.3ないし3重量部、有利には0.5ないし2重量部およびさらに良好には0.7ないし1.8重量部であることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
ルイス酸およびルイス塩基、リン含有化合物ならびにフッ素およびホウ素を含む化合物から選択される触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記触媒が前記糖質および有機ポリカルボン酸の重量の20%まで、好ましくは10%まで、および有利には少なくとも1%を占めることを特徴とする請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
以下に示す添加剤を、糖質および有機ポリカルボン酸の100重量部に基づいて計算した以下の割合で更に含むことを特徴とする請求項1ないし20のいずれか1項に記載の組成物:
−0ないし2部のシラン、特にアミノシラン、
−0ないし20部、好ましくは4ないし15部のオイル、
−0ないし30部、好ましくは0ないし20部の尿素および/またはグリセロール、
−0乃至30部の、リグニン誘導体、たとえばリグノスルホン酸アンモニウム(ALS)またはリグノスルホン酸ナトリウムなど、および動物性または植物性蛋白質から選択される「鎖延長剤」。
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれか1項に記載のサイズ剤組成物を使用してサイジングしたミネラルウール、特にグラスウールまたはロックウールをベースにした音響および/または熱絶縁製品。
【請求項24】
請求項1ないし22のいずれか1項に記載のサイズ剤組成物を使用してサイジングした鉱物繊維、特にグラスウールまたはロックウールのベール。
【請求項25】
請求項23に記載のミネラルウールをベースにした音響および/または熱絶縁製品、または請求項24に記載の鉱物繊維のベールの製造方法であって、ミネラルウールまたは鉱物繊維を製造し、サイズ剤組成物を前記ウールまたは前記繊維上に放出し、前記サイズ剤の架橋および不溶解性バインダの形成を可能にする温度で前記ウールまたは繊維を処理し、前記サイズ剤組成物が:
−少なくとも1種の糖質と、
−1000未満のモル質量を有する少なくとも1種の有機ポリカルボン酸と、
−少なくとも1種の反応性シリコーンと
を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2012−528948(P2012−528948A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513659(P2012−513659)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051075
【国際公開番号】WO2010/139899
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(501085706)サン−ゴバン・イソベール (46)
【Fターム(参考)】