説明

糖鎖の合成方法

本発明の目的は、ヌクレオチド(核酸)、ペプチド(タンパク質)、糖鎖に代表される生体分子を効率良く化学合成する方法を提供することである。本発明によれば、複数種の単糖ユニットを含む少なくとも1以上の糖鎖合成反応系において複数種の糖鎖を合成する糖鎖固相合成方法において、該糖鎖合成反応系の温度を、反応系中の副反応を低下させることを指標として決定した昇温率に従って変化させることを特徴とする、糖鎖固相合成方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、重要な機能を有する生体成分の一群をなす糖鎖の化学合成、特に糖鎖の固相合成に関する。
【背景技術】
化学合成によるオリゴ糖鎖及びその複合体の合成が報告されている(Paulsen,H.(1982)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.21,155−173;Toshima,K.,Tatsuta,K.(1993)Chem.Rev.93,1503−1531;及びBoons,G.−J.(1996)Tetrahedron,52,1095−1121)。しかしながら、現存の化学合成では、操作が煩雑で時間を要する反応後のクロマトグラフィーによる単離精製操作が必要不可欠であり、操作に習熟を要する(Kanie,O.,Hindsgaul,O.(1992)Curr.Opin.Struc.Biol.2,674−681)。その解決法の一つとして固相合成がある。固相合成法はペプチドやヌクレオチド合成でも使用され、その有用性は高い。オリゴ糖鎖の合成には、カップリング反応に伴う立体選択的なグリコシド結合形成と位置選択的なグリコシル化を行うための保護基の巧みな使い分けが必要不可欠であり、近年まで困難な課題と考えられてきたが、これまでの研究の結果、幾つかの成功例が報告されている(Fr▲e▼chet,J.M.,Schuerch,C.(1972)Carbohydr.Res.22,399−412;Chiu,S.−H.L.,Anderson,L.(1976)Carbohydr.Res.50,227−238;Yan,L.,Taylor,C.M.,Goodnow,R.Jr.,Kahne,D.(1994)J.Am.Chem.Soc.116,6953−6954;Redemann,J.,Schmidt,R.R.(1997)J.Org.Chem.62,3650−3653;Heckel,A.,Mross,E.,Jung,K.−H.,Rademann,J.,Schmidt,R.R.(1998)Synlett,171−173;Nicolaou,K.C.,Winssinger,N.,Pastor,J.,DeRoose,F.(1997)J.Am.Chem.Soc.119,449−450;Nicolaou,K.C.,Watanabe,N.,Li,J.,Pastor,J.,Wissinger,N.(1998)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.37,1559−1561;Rodebaugh,R.,Joshi,S.,Fraser−Reid,B.,Geysen,H.M.(1997)J.Org.Chem.62,5660−5661;Danishefsky,S.J.,McClure,K.F.,Randolph,J.T.,Ruggeri,R.B.(1993)Science,260,1307−1309;Zheng,C.,Seeberger,P H.,Danishefsky,S.J.(1998)J.Org.Chem.63,1126−1130;Ito,Y.,Kanie,O.,Ogawa,T.(1996)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35,2510−2512;Douglas,S.P.,Whitfield,D.M.,Krepinsky,J.J.(1995)J.Am.Chem.Soc.117,2116−2117;Verduyn,R.,van der Klein,P.A.M.,Douwes,M.,van der Marel,G.A.,van Boom,J.H.(1993)J.R.Neth.Chem.Soc.112,464−466;Shimizu,H.,Ito,Y.,Kanie,O.,Ogawa,T.(1996)Bioorg.Med.Chem.Lett.6,2841−2846;Adoinolfi,M.,Barone,G.,DeNapoli,L.,Ladonisi,A.,Piccialli,G.(1996)Tetrahedron Lett.37,5007−5010;Seberger,P.H.,Beebe,X.,Sukenick,G.D.,Pochapsky,S.,Danishefsky,S.J.(1997)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,36,491−493;Kanemitsu,T.,Kanie,O.,Wong,C.−H.(1998)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.37,3415−3418;及び、WO02/16384号公報)。
そのような多数の知見に基づいて、糖鎖の合成を効率的に行うために有用と考えられている糖鎖ライブラリーの合成も数多く行われてきている。例えば、Hindsgaulらは、糖鎖化学の基礎を根底から見直し無保護の糖受容体に対するBn保護された糖供与体(イミデート)によるグリコシル化反応(ランダムグリコシル化)を試し、その結果位置選択性の無いランダムな縮合物混合物が容易に得られることを見出した。この方法は単一化合物の合成を目的としていないが、シークエンスは反応の順に従っている。さらに、与えられた混合物が糖転移酵素によりスクリーニングされ、特異的に既知反応をピックアップすることが示された(Kanie,O.,Barresi,F.,Ding,Y.,Labbe,J.,Otter,A.,Forsberg,L.S.,Ernst,B.,Hindsgaul,O.(1995)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.34,2720−2722;及びDing,Y.,Kanie,O.,Labbe,J.,Palcic,M.M.,Ernst,B.,Hindsgaul,O.“Synthesis and Biological Activity of Oligosaccharide Libraries”in Glycoimmunology,Eds.by Alavi,A.,Axford,J.S.,(1995)Avd.Exp.Med.Biol.376,Plenum press,New York,pp.259−269)。
固相上でグリコシル化とアミノ基の誘導化を行いsplit and mix法によるライブラリー合成もKahne,Stillらにより報告された。おのおののステップ毎にタッギングがなされ、固相上での脱保護の後、アッセイとデコーディングによりレクチンに対する既知リガンドよりも強力なリガンド構造が見い出された(Liang,R.,Yan,L.,Loebach,J.,Ge,M.,Uozumi,Y.,Sekanina,K.,Horan,N.,Gildersleeve,J.,Thompson,C.,Smith,A.,Biswas,K.,Still,W.C.,Kahne,D.(1996)Science 274,1520−1522)。アリル−ビニルの二重結合異性化を巧みに糖鎖合成に用いる合成法により、三糖ライブラリーがBoonsらにより合成され、今後への可能性が示された。ここでは溶液反応が用いられ、sprit and mix法により糖結合位置の決定したライブラリーを得ることに成功している(Boons,G.−J.,Heskamp,B.,Hout,F.(1996)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35,2845−2847)。Boonsらはまた、固相上での化学種選択的なグリコシル化反応を試みるとともに、ライブラリー合成も行い12の三糖のライブラリーを報告した(Johnson,M.,Arles,C.,Boons,G.−J.(1998)Tetrahedron Lett.39,9801−9804;及びZhu,T.,Boons,G.−J.(1998)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.37,1898−1900)。IchikawaらはグリカールをIDCPによって活性化し、無保護のジオール単糖受容体とカップリング、立体選択的であるが、位置選択性の無い2−deoxy糖三糖ライブラリーを合成した(Izumi,M.,Ichikawa,Y.(1998)Tetrahedron Lett.39,2079−2082)。Wongらは、オルトゴナル保護(Baranay,G.,Merrifield,R.B.,(1977)J.Am.Chem.Soc.116,7363−7365)した単糖を母核とし保護基を欲しい順に脱保護することで直鎖三糖から高度に分岐した五糖保護糖のライブラリーを合成した(Wong,C.−H.,Ye,X.−S.,Zhang,Z.(1998)J.Am.Chem.Soc.120,7137−7138)。また、化学種選択的なグリコシル化反応におけるアノメリック位保護基(チオグリコシド)の反応性を精査し、Armed−disarmedグリコシル化による。one−potグリコシル化を完成、これに基づくコンピューターによる反応の選択、オルトゴナルな保護基の除去を通じ、糖鎖ライブラリーの自動化への道を開いた(Zhang,Z.,Ollmann,I.R.,Ye,X.−S.,Wischnat,R.,Baasov,T.,Wong,C.−H.(1999)J.Am.Chem.Soc.121,734−753)。Armstrongらは1994年いち早く糖鎖ライブラリーに着目し、末端にカルボン酸をもつジエン系のオスミウム酸化と還元的環化によりC−グリコシル二糖の還元末端相当糖の水酸基の立体異性体ライブラリーを発表した(Armstrong,R.W.,Sutherlin,D.P.(1994)Tetrahedron Lett.35,7743−7745)。
また、WO96/06102号公報及びオーストラリア特許公報AU3346495号公報(発行日:1996年3月16日)には糖鎖ライブラリーの構築法が記載されている。WO96/06102号公報及びオーストラリア特許公報AU3346495号公報(発行日:1996年3月16日)においては、保護基を持たない糖受容体を用い、これに対して保護糖供与体を化学的に反応させることにより、位置ランダムの糖鎖ライブラリー合成を迅速に行っている。
また米国特許第5,721,099号公報には、レジン上に核酸、ペプチド、糖鎖等を有機合成化学的手法によって構築する方法が記載されている。米国特許第5,721,099号公報では、同一レジン上にモレキュラーコーディングを行う。ライブラリー合成はスプリット&ミックス法で行われ、したがって、1レジン−1化合物のレジン混合物を与える。合成の最後に全ての脱保護を行い、タンパク質等のバイオ分子のスクリーニングに直接用いる。合成物質が極微量であるので、ヒットしたビーズのみのデコードを行って、ビーズ上の化合物の構造を特定する。
しかし、上記したような多数の糖鎖ライブラリーの合成例、構築例は、いずれも成功例とは言いがたい。その理由としては、例えば、立体選択的、位置選択的なグリコシル化反応を行うためには数多くの単糖ユニットを必要とするが、労力もコストも膨大に必要となることからそれらを網羅的に合成することは困難だったことが挙げられる。
このような理由から、十分な数の糖鎖を含む糖鎖ライブラリーの合成を簡便に行えるような、効率の良い糖鎖固相合成方法の確立が強く望まれている。
一方、糖鎖等の合成において繁用されている固相反応方法は、前記のとおり、ペプチドやヌクレオチド合成でも広く用いられ、その有用性は高く評価されている。すなわち、反応に固相を利用することによって、単離精製操作等が簡略化され、効率も良く、熟練者でなくても操作が可能であるほか、装置の開発等への貢献も大きい。
例えば、ペプチド合成及びヌクレオチド(核酸)合成においては、基本的な合成方法はほぼ確立しており、多数の合成装置が市販されている(例えば、米国特許第5462748号公報参照)。しかし、いずれの装置も大型で、溶液を多量に必要とすることから、装置の小型化、試薬の少量化やコストダウン等については未だ改良の余地がある。また、糖鎖については、未だに合成装置は市販されていない。いくつか試みられた例はある(例えば、WO02/16384号公報参照)が、いずれも何らかの問題点を有するものであり、実用化には至っていない。これらのことから、小型で必要とする液量が少なく、効率的に固相反応を行うことのできる方法及び装置の開発、特に糖鎖の合成装置の開発が強く望まれている。
【発明の開示】
本発明は、ヌクレオチド(核酸)、ペプチド(タンパク質)、糖鎖に代表される生体分子を効率良く化学合成する方法を提供することを解決すべき課題とした。特に、本発明は、市販の合成装置が無い糖鎖の合成装置の基礎となる方法を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、先ず、糖鎖の合成、さらには糖鎖のコンビナトリアルケミストリーの効率化を可能とする各種の単糖ユニットを合成した。次いで、合成した複数種の単糖ユニットを用いて複数種の糖鎖を合成する糖鎖固相合成を行う際に反応系の昇温率を制御することに着目し、糖鎖合成反応系の温度を、反応系中の副反応を低下させることを指標として決定した昇温率に従って変化させることにより、糖鎖を効率良く化学合成できることを見出した。さらに、本発明者らは、糖鎖等の生体分子の固相合成において撹拌等のプロセスを使用することなく、拡散支配による反応を行うことによって糖鎖の固相合成を効率良く行うことができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 複数種の単糖ユニットを含む少なくとも1以上の糖鎖合成反応系において複数種の糖鎖を合成する糖鎖固相合成方法において、該糖鎖合成反応系の温度を、反応系中の副反応を低下させることを指標として決定した昇温率に従って変化させることを特徴とする、糖鎖固相合成方法。
(2)糖鎖固相合成方法が以下の工程を含む、(1)に記載の糖鎖固相合成方法。
(a)下記式(1):
P−L−O−A−X (1)
(式中、Pは固相を示し、Lはリンカーを示し、Oは単糖の非還元末端の酸素原子を示し、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、Xは脱離基Yの活性化条件下で安定な脱離基を示す。)
の単糖ユニットに、下記式(2):
HO−A−Y (2)
(式中、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、Yは脱離基Xの活性化条件下で安定な脱離基を示す。)
の単糖ユニットを脱離基Xの活性化条件下で反応させて、下記式(3):
P−L−O−A−O−A−Y (3)
の糖類を得る工程:及び
(b)上記工程(a)で得た式(3)の糖類に、下記式(4):
HO−A−X’ (4)
(式中、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、X’は脱離基Yの活性化条件下で安定な脱離基あるいは1位の水酸基または保護基を示す。)
の単糖ユニットを脱離基Yの活性化条件下で反応させて、式(5):
P−L−O−A−O−A−O−A−X’ (5)
の糖類を得る工程。
(3) 工程(b)においてX’が1位の水酸基または保護基である式(4)の単糖ユニットを使用し、3つの糖が連結した糖鎖を合成する、(2)に記載の糖鎖固相合成方法。
(4) 工程(b)で得た式(5)の糖類に対し、工程(a)と工程(b)の反応を繰り返すことを含む、(2)に記載の糖鎖固相合成方法。
(5) 式(1)、(2)及び(4)の単糖ユニットを一反応系に同時に反応させて反応を行う、(2)から(4)の何れかに記載の糖鎖固相合成方法。
(6) 脱離基Xがフェニルチオ基又はフッ素基の片方であり、脱離基Yがフェニルチオ基又はフッ素基の他方である、(2)から(5)の何れかに記載の糖類固相合成方法。
(7) フェニルチオ基の活性化をN−ヨードサクシンイミド−トリフルオロメタンスルホン酸(NIS−TfOH)またはジメチルメチルチオスルフォニウムトリフラート(DMTST)により行い、フッ素基の活性化をSn(ClO、Sn(OTf)、CpHf(ClO、またはCpHf(OTf)により行う、(6)に記載の糖鎖固相合成方法。
(8) 保護基がベンジル基である、(2)から(7)の何れかに記載の糖鎖固相合成方法。
(9) A、A及びAが示す単糖骨格が生体中に存在する単糖から選ばれる3種類の糖の単糖骨格である、(2)から(8)の何れかに記載の糖鎖固相合成方法。
(10) A、A及びAが示す単糖骨格が、マンノース、グルコース、ガラクトース、キシリトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、フルクトース又はシアル酸の単糖骨格である、(2)から(9)の何れかに記載の糖鎖固相合成方法。
(11) フェニル1−チオ−3,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド、フェニル1−チオ−2,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド、フェニル1−チオ−2,3,6−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド、フェニル1−チオ−2,3,4−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド、フェニル1−チオ−3,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル1−チオ−2,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル1−チオ−2,3,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル1−チオ−2,3,4−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル2,3−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド、フェニル3,4−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド、フェニル2,4−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド、フェニル1−チオ−2,3−ジ−O−ベンジル−β−L−フコピラノシド、フェニル2−アジド−4,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル2−アジド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル2−アジド−3,4−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル3,4,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2,4,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2,3,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2−アジド−4,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2−アジド−3,4−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2−アジド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、
メチル(フェニル1−チオ−2,3−ジ−O−ベンジル−β−D−グルコピラノシド)ウロネート、メチル(フェニル5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−チオ−β−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノシド)オネート、メチル(フェニル5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−チオ−α−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノシド)オネート、メチル(フェニル5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−2−チオ−β−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノシド)オネート、メチル(フェニル5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−2−チオ−α−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノシド)オネート、並びに上記化合物中のフェニルチオ基をフッ素基に置換した化合物から成る群から選択される少なくとも1以上の単糖誘導体を含む、(1)から(10)の何れかに記載の糖鎖固相合成方法を行うための単糖ライブラリー。
(12) 毛管現象を生じる大きさの固体細孔中で固相反応を行う方法において、固体の外表面に余剰の液相が存在しない状態で反応を行うことを特徴とする固相反応方法。
(13) 反応が拡散混合により行われることを特徴とする(12)に記載の固相反応方法。
(14) 固体が、内部に細孔を有する樹脂粒子である、(12)又は(13)に記載の固相反応方法。
(15) 固相反応が化学反応または生化学的反応である、(12)から(14)の何れかに記載の固相反応方法。
(16) 固相反応が糖鎖合成反応である、(12)から(15)の何れかに記載の固相反応方法。
(17) 固相反応が(1)から(10)の何れかに記載の糖鎖固相合成反応である、(12)から(16)の何れかに記載の固相反応方法。
(18) (1)から(10)の何れかに記載の糖鎖固相合成方法または(17)に記載の固相反応方法により合成された、生体中に存在する単糖から選ばれる3種類の糖の全ての組み合わせから成る糖鎖により構成されるライブラリー。
(19) 生体中に存在する単糖が、マンノース、グルコース、ガラクトース、キシリトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、フルクトース又はシアル酸である、(18)に記載のライブラリー。
(20) 少なくとも以下の(1)と(2)とを含む、(12)から(17)の何れかに記載の固相反応方法を行うための反応装置。
(1)液相を注入又は吸引するための導入部を有し、かつ固体を収容する空間を有する、固相反応を行うための反応部、及び
(2)反応部の温度を調節するための温度調節部
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明で用いるオルトゴナル法の概要を示す。
図2は、本発明で用いる単糖誘導体ライブラリーを示す。
図3は、樹脂ビーズの細孔を示す。
図4は、従来法による固相反応法と本発明による拡散混合固相反応法の様子を示す。
図5は、2通りのアノマー異性体を示す。
図6は、固相上でのグリコシルフルオリドの活性化によるグリコシル化反応において、3時間で−15℃から10℃への昇温(8.3℃/時間)を行った際のMALDI−TOFMSの解析結果を示す。
図7は、固相上でのグリコシルフルオリドの活性化によるグリコシル化反応において、4.5時間で−15℃から10℃への昇温(5.6℃/時間)を行った際のMALDI−TOFMSの解析結果を示す。
図8は、固相上でのグリコシルフルオリドの活性化によるグリコシル化反応において、6時間で−15℃から10℃への昇温(4.2℃/時間)を行った際のMALDI−TOFMSの解析結果を示す。
図9は、固相上でのチオグリコシドの活性化によるグリコシル化反応において、4.5時間で−15℃から10℃への昇温(5.6℃/時間)を行った際のMALDI−TOFMSの解析結果を示す。
図10は、固相上でのチオグリコシドの活性化によるグリコシル化反応において、6時間で−15℃から10℃への昇温(4.2℃/時間)を行った際のMALDI−TOFMSの解析結果を示す。
図11は、固相上でのチオグリコシドの活性化によるグリコシル化反応において、12時間で−15℃から10℃への昇温(2.1℃/時間)を行った際のMALDI−TOFMSの解析結果を示す。
図12は、供与体が結合した樹脂を受容体溶液で膨潤しプロモーターを加える方法でグリコシル化反応を行った場合の追跡結果を示す。
図13は、供与体が結合した樹脂を受容体とプロモーターの混液により膨潤する方法でグリコシル化反応を行った場合の追跡結果を示す。
図14は、樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→2)−3,4,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライドのMALDI−TOFMSを示す。
図15は、樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→3)−2,4,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライドのMALDI−TOFMSを示す。
図16は、樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→4)−2,3,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライドのMALDI−TOFMSを示す。
図17は、樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→6)−2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライドのMALDI−TOFMSを示す。
図18は、固相上で合成した三糖誘導体のMALDI−TOFMSを示す。
図19は、固相上で合成した三糖誘導体のMALDI−TOFMSを示す。
図20は、固相上で合成した三糖誘導体のMALDI−TOFMSを示す。
図21は、固相上で合成した三糖誘導体のMALDI−TOFMSを示す。
図22は、固相上で合成した三糖誘導体のMALDI−TOFMSを示す。
図23は、固相上で合成した三糖誘導体のMALDI−TOFMSを示す。
図24は、固相上で合成した三糖誘導体のMALDI−TOFMSを示す。
図25は、固相上で合成した三糖誘導体のMALDI−TOFMSを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、以下の構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容のみに特定されるものではない。なお、以下に記載する糖鎖固相合成反応、用いる固相、液相等は、特に例示した場合を除き、「固相合成ハンドブック(Novabiochem社(Merck社)刊」等に記載の公知の方法から適宜選択して行うことができる。
(1)昇温率を制御した糖鎖固相合成方法
本発明の糖鎖固相合成方法は、複数種の単糖ユニットを含む少なくとも1以上の糖鎖合成反応系において複数種の糖鎖を合成する糖鎖固相合成方法において、該糖鎖合成反応系の温度を、反応系中の副反応を低下させることを指標として決定した昇温率に従って変化させることを特徴とする方法である。
従来糖鎖合成反応においては、反応させようとする糖によって至適な反応温度が異なるために、反応系の反応温度を細かく制御する必要があることは知られていた。反応温度の制御を十分に行わないと、未反応物、脱離物等が生じ、所望の反応生成物を十分量得ることができないためである。しかし、糖には多種多様なものが存在するだけでなく、それぞれが立体異性や位置異性を有しており、それらの要因によっても反応性が異なることから、反応を行うたびに用いる糖ごとに至適反応温度を決定するとなると膨大な検討が必要になってしまう。そこで、従来は、反応数が多い場合には用いる糖ごとに至適反応温度を検討することができず、ごく一般的と考えられる平均的な温度を設定して反応を行う等の方法を用いており、そのために十分量の反応生成物を得ることが困難なことが多かった。
本発明者らは、これらの問題を鋭意検討した結果、複数種の単糖ユニットを含む少なくとも1以上の糖鎖合成反応系、好ましくは、2以上の糖鎖合成反応系を用いて反応を行う場合に、これらの反応系の温度を、反応系中の副反応を低下させることを指標として決定した昇温率に従って変化させれば、各々の単糖ユニットごとに至適な反応温度を検討する必要なく、効率的に糖鎖固相合成反応を行えることを見出した。すなわち、反応温度を変化させることによって、各反応系中に含まれる単糖ユニットがそれぞれに至適な温度に到達した時点で反応し、糖鎖合成反応が行われることを見出した。また、本発明者らによる更なる検討の結果、前記昇温率を反応系中の副反応を低下させることを指標に決定すれば、さらに効率よく糖鎖固相合成反応を行えることも明らかになった。
かくして完成された本発明の糖鎖固相合成方法は、従来大きな課題であった糖鎖固相合成反応の反応温度を逐一検討する必要なく、効率的に多種類の糖鎖を合成することができるという大きな効果を奏するものである。
本発明で行う糖鎖合成反応自体は当業者に公知の手法で行うことができ、具体的には反応に不活性な適当な溶媒中で、固相に結合した第一の単糖ユニットに、第二の単糖ユニットを含む溶液、第三の単糖ユニットを含む溶液、並びに所望によりそれ以降の単糖ユニットを含む溶液を順次添加して反応させることにより、これらの単糖ユニットをそれぞれ順番に結合させていくことができる。なお、本明細書で単に糖鎖という場合には、単糖が2以上結合して鎖状になったものを意味する。
本発明で用いる複数種の単糖ユニットの種類は単糖類である限り特に限定されないが、好ましくは生体中に存在する単糖から選ばれる単糖骨格を含むものである。特に好ましい単糖骨格は、マンノース、グルコース、ガラクトース、キシリトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、フルクトース又はシアル酸の単糖骨格である。本発明ではこれらの単糖ユニットの複数を使用して、少なくとも1以上の糖鎖合成反応系において複数種の糖鎖を合成する。糖鎖合成反応系は1反応系でもよいし、2以上の複数の反応系でもよい。
1反応系で反応を行う場合には、1種又は2種以上の単糖ユニットを結合した固相を含む1反応系に、単糖ユニットを含む1種又は2種以上の溶液を添加して糖鎖合成反応を行って2つの単糖から成る糖鎖を合成する。次いで、この反応系に、単糖ユニットを含む1種又は2種以上の溶液を添加して、次の糖鎖合成反応を行い、3つの単糖から成る糖鎖を合成することができる。以下、これを繰り返すことにより所望の長さの糖鎖を合成することができる。ただし、このように一反応系で同時に複数種類の糖鎖を合成する場合には、反応の各段階において、もしくは最終段階において、各糖鎖を分離・精製する操作が必要である。
2以上の複数の反応系で反応を行う場合には、例えば、それぞれ異なる単糖ユニット(例えばX1とX2)を結合した固相を含む2種類の反応系をそれぞれ2個ずつ用意し(合計4個の反応系)、それぞれに異なる単糖ユニット(例えばY1とY2)を含む溶液を添加して糖鎖合成反応を行って2つの単糖から成る糖鎖を合成する。これにより、4個の反応系においてはそれぞれ、X1とY1から成る二糖、X1とY2から成る二糖、X2とY1から成る二糖、及びX2とY2から成る二糖が生成する。この反応生成物をさらに半分ずつに分割して、それぞれの反応系に、異なる単糖ユニット(例えばZ1とZ2)を含む溶液を添加して、糖鎖合成反応を行って3つの単糖から成る糖鎖を合成することができる。これにより、各反応系において、X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2の全ての組み合わせの8通りの反応生成物を得ることができる。反応後に目的の糖鎖を分離・精製する必要がないことから、本発明においてはこの複数の反応系で反応を行う方法が好ましく用いられる。例えば、上記のように8種類の糖鎖を合成したい場合には1回目の反応では4つの反応系、2回目の反応では8つの反応系を予め用意し、好ましくはこれらを同時並行で反応させればよい。
本発明の特徴の一つは、上記した糖鎖合成反応系の温度を、反応系中の副反応を低下させることを指標として決定した昇温率に従って変化させることである。本明細書の実施例で示す通り、昇温率を大きくすると副生物が生成し、糖鎖合成反応の反応効率が低下することが判明した。従って、本発明においては、反応系中の副反応をできるだけ低下させることを指標にして決定した昇温率に従って糖鎖合成反応系の温度を変化させることにより、効率の良い糖鎖合成反応を行うことができる。
ここで、副反応とは、所望の糖鎖合成反応の反応効率を妨げるような副生物を生じる反応を意味し、副生物とは、例えば、脱離反応生成物(脱離物)、加水分解物等を意味する。脱離物とは、例えば、目的とする2分子間反応であるグリコシル化反応に代わって分子内反応が起こることにより生成するグリカール等である。すなわち、本発明において「副反応を低下させることを指標にする」とは、例えば、「副生物の存在または量が目的の反応を阻害しない程度に低いことを指標にすること」を意味する。特に、脱離物の量が十分に低いことが好ましい。また、反応の効率が悪いと未反応物が多く残存することから、この未反応物を低下させることもあわせて指標とすることがさらに好ましい。副生物の存在または量は、例えば、質量分析法(MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、吸光度測定、旋光度測定等により検出し確認することができる。
温度の制御は、前記したような1反応系もしくは2以上の複数の反応系の温度を、決定した昇温率に従って変化させながら糖鎖合成反応を行うことのできる方法であればいかなる方法で行われてもよい。具体的には、温度の制御は、それ自体公知の通常用いられる化学反応等に利用可能な温度調節装置等を用いればよい。1反応系を用いる場合には、該反応系の温度を予め決定した昇温率に従って変化させればよい。2以上の複数の反応系を用いる場合には、各々の反応系の温度を予め決定した昇温率に従って変化させてもよいし、複数の反応系をまとめて一つの温度調節装置により温度制御してもよい。特に糖鎖ライブラリーの合成を行う場合等には、複数の反応系をまとめて一つの温度調節装置により温度制御し、同時並行で多数の糖鎖を合成する方法が好ましく用いられる。
昇温率や反応開始温度は、用いる単糖や脱離基により適宜設定される。反応温度が高いと副反応が進行しやすいが、反応開始温度や昇温率が低すぎると反応時間が長くなる。本発明の好ましい例では、脱離基としてフッ素基またはフェニルチオ基を有する単糖ユニットを、フッ素基またはフェニルチオ基の活性化条件下で水酸基を有する別の単糖ユニットと反応させる。このとき、昇温率は、たとえば、8℃/時間以下、好ましくは7℃/時間以下、より好ましくは5.6℃/時間以下である。好ましい昇温率の範囲は、用いる脱離基や単糖により異なるので、適宜確認実験を行い決定すればよい。反応開始温度は、用いる単糖ユニットにより異なるが、系に存在する単糖のうち、最も反応性の高い(副反応を生じやすい)単糖に合わせて設定し、その温度から昇温させればよい。たとえば、本発明において好ましい例として用いる生体内に存在する9種の単糖の中でもっとも反応性の高い(すなわち、反応温度を低く設定すべき)フコースの場合で、−30℃〜−15℃程度から開始させることができる。このように、各単糖に適した昇温率および反応開始温度を設定することにより、副反応をできるだけ低下させて、目的の糖鎖合成反応を高効率で行うことができる。
糖鎖は、核酸やタンパク質に次いで第3の生体高分子と捉えられ、細胞分化、免疫、癌化、感染症等、多細胞生物の生物機能に非常に重要な役目を果たしている。核酸、タンパク質については化学合成装置が販売され、科学の進歩・発展に大きく貢献しているが、糖鎖の化学合成装置は販売されておらず早期の開発が望まれている[Plante,O.J.,Palmacci,E.R.,Seeberger,P.H.(2001)Science,291,1523−1527]。化学的手法による合成の基盤をなすのは固相合成であり、装置化の前段階としては素反応、また、総合的なプロセスの効率化を行う必要がある。この目的の達成のために本発明の糖鎖固相合成方法は非常に有用である。また、本発明の方法においては、前述の通り、糖鎖合成反応自体は公知の方法を用いることができるが、その中でも、反応性の独立性(相互選択性)を基礎とするオルトゴナルグリコシル化法(以下、これを「オルトゴナル法」と称することがある)が、最適な方法としてあげられる。[Kanie,O.,Ito,Y.,Ogawa,T.,(1994)J.Am.Chem.Soc.,116,12073−12074.b)Kanie,O.,Ito,Y.,Ogawa,T.,(1996)Tetrahedron Lett.,37,4551−4554.c)Ito,Y.,Kanie,O.,Ogawa,T.,(1996)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,35,2510−2512]
上記したオルトゴナルグリコシル化法による本発明における糖鎖固相合成反応の具体例としては、以下の工程を含む反応が挙げられる。また、その概要を図1に示す。
(a)下記式(1):
P−L−O−A−X (1)
(式中、Pは固相を示し、Lはリンカーを示し、Oは単糖の非還元末端の酸素原子を示し、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、Xは脱離基Yの活性化条件下で安定な脱離基を示す。)
の単糖ユニット(以下、これを「供与体」と称することがある)に、下記式(2):
HO−A−Y (2)
(式中、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、Yは脱離基Xの活性化条件下で安定な脱離基を示す。)
の単糖ユニット(以下、これを「受容体」と称することがある)を脱離基Xの活性化条件下で反応させて、下記式(3):
P−L−O−A−O−A−Y (3)
の糖類を得る工程:及び
(b)上記工程(a)で得た式(3)の糖類に、下記式(4):
HO−A−X’ (4)
(式中、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、X’は脱離基Yの活性化条件下で安定な脱離基あるいは1位の水酸基または保護基を示す。)
の単糖ユニットを脱離基Yの活性化条件下で反応させて、式(5):
P−L−O−A−O−A−O−A−X’ (5)
の糖類を得る工程。
すなわち、オルトゴナル法とは、上記のように2種類(上記X及びY)の互いに活性化条件が異なり、かつ、他方の活性化条件下で安定な組み合わせの脱離基の性質を利用した、連続的かつ効率的な合成方法である。本明細書においては、このような2種類の脱離基を「オルトゴナルな関係にある」という。
上記の反応において、3つの糖が連結した糖鎖を合成する場合には、工程(b)においてX’が1位の水酸基または保護基である式(4)の単糖ユニットを使用することができる。
また、上記の反応において、4つ以上の糖が連結した糖鎖を合成する場合には、工程(b)で得た式(5)の糖類に対し、工程(a)の反応、さらに工程(b)の反応を繰り返すことにより所望の長さの糖鎖を合成することができる。
Pが示す固相の具体例としては、糖鎖の固相合成に一般的に用いられるものであればよいが、各種の樹脂、たとえば、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリエーテル系樹脂、およびそれらの複合樹脂や、また、多孔性ガラス、ビーズ、微小流路(溶融シリカキャピラリー、マイクロチップ等)、セファロース等が挙げられる。これらはいずれも、固相合成に際してリンカーやスペーサー等を連結させるための足場となる、アミノ基、ブロモメチル基、水酸基、チオール基、カルボキシル基等の官能基を有しているものであって、さらに、適当な側鎖、修飾等を有するものでもよい。
Lが示すリンカーの具体例としては、固相と単糖の非還元末端の酸素原子とを連結できる基であって、合成反応の後に生成物に影響を与えないような温和な条件下で選択的に切り出すことが可能なものであればいかなるものでもよい。
Pが示す固相およびLが示すリンカーは、より具体的には、たとえば、Kanemitsu,T.and Kanie,O.,Combinatorial Chemistry & High Throughput screening,5,339−360(2002)等に記載の糖鎖の合成反応に一般的に用いられる固相およびリンカーの中から、適当なものを選択して用いることができる。
、A、及びAは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。単糖骨格の具体例は上記した通りである。水酸基の保護基としては、糖鎖合成反応の際に水酸基を保護できる基であれば特に限定されず、有機合成分野で当業者に公知の水酸基の保護基を適宜使用することができる。水酸基の保護基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(エーテル型)
メチル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、t−ブトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S−ジオキシド基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基;
1−エトキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−(フェニルセレニル)エチル基、t−ブチル基、アリル基、シンナミル基、p−クロロフェニル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−ハロベンジル基、p−シアノベンジル基、3−メチル−2−ピコリルN−オキシド基、ジフェニルメチル基、5−ジベンゾスベリル基、トリフェニルメチル基、α−ナフチルジフェニルメチル基、p−メトキシフェニルジフェニルメチル基、p−(p’−ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル基、9−アントリル基、9−(9−フェニル)キサンテニル基、9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリル基、ベンズイソチアゾリルS,S−ジオキシド基、;
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基(TBDMS基)、(トリフェニルメチル)ジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリベンジルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基;
(エステル型)
ホルメート、ベンゾイルホルメート、アセテート、クロロアセテート、ジクロロアセテート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、フェノキシアセテート、p−クロロフェノキシアセテート、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノキシアセテート、2,6−ジクロロ−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシアセテート、2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェノキシアセテート、クロロジフェニルアセテート、p−フェニルアセテート、3−フェニルプロピオネート、3−ベンゾイルプロピオネート、イソブチレート、モノスクシノエート、4−オキソペンタノエート、ピバロエート、アダマントエート、クロトネート、4−メトキシクロトネート、(E)−2−メチル−2−ブテノエート、ベンゾエート、o−(ジブロモメチル)ベンゾエート、o−(メトキシカルボニル)ベンゾエート、p−フェニルベンゾエート、2,4,6−トリメチルベンゾエート、p−ベンゾエート、α−ナフトエート;
(カーボネート型)
メチルカーボネート、エチルカーボネート、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート、イソブチルカーボネート、ビニルカーボネート、アリルカーボネート、シンナミルカーボネート、p−ニトロフェニルカーボネート、ベンジルカーボネート、p−メトキシベンジルカーボネート、3,4−ジメトキシベンジルカーボネート、o−ニトロベンジルカーボネート、p−ニトロベンジルカーボネート、S−ベンジルチオカーボネート;
(その他)
N−フェニルカルバメート、N−イミダゾリルカルバメート、ボレート、ニトレート、N,N,N’,N’−テトラメチルホスホロジアミダート、2,4−ジニトロフェニルスルフェネート:
なお、上記したような水酸基の保護基の導入法及び脱保護法は当業者に公知であり、例えば、Teodora,W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John & Wiley & Sons Inc.(1981)などに記載されている。
本発明では特に好ましくは、ベンジル基を使用することができる。
X(及びX’)が示す脱離基Yの活性化条件下で安定な脱離基、並びにYが示す脱離基Xの活性化条件下で安定な脱離基の組み合わせの具体例としては;
(1) 脱離基X(及びX’)がアリールチオ基又はアリールセレノ基、あるいはフッ素基の片方であり、脱離基Yがアリールチオ基又はアリールセレノ基、あるいはフッ素基の他方である場合、並びに
(2) 脱離基X(及びX’)がエチルチオ基(−SC)であり、脱離基Yがピリジルスルホン基(−SOPyr)である場合;
である。
ここでアリールチオ基(−S−Ar)又はアリールセレノ基(−Se−Ar)におけるアリール(Ar)部分は、活性化条件に適合する限り特に限定されないが、炭素数6以上のアリールが好ましく、例えば、フェニル又はナフタレンなどが挙げられ、フェニルが最も好ましい。
上記の中でも特に好ましいのは、(1)の場合であり、この場合、フェニルチオ基の活性化は、N−ヨードサクシンイミド−トリフルオロメタンスルホン酸(NIS−TfOH)またはジメチルメチルチオスルフォニウムトリフラート(DMTST)等により行うことができる。NIS及びTfOHを組み合わせた活性化剤(以下、これを「プロモーター」と称することがある)では、これらが反応して系内でヨードニウムイオン(I)を生成することにより活性化が行われ、高効率でヨードニウムイオンを発生することのできる組み合わせであれば、他の試薬の組み合わせも同様に活性化剤として用いることができる。DMTSTは、これをそのまま活性化剤として加えることもできるし、たとえば、MeSSMe(ジメチルジスルフィド)及びMeOTf(メチルトリフロロメタンスルホナート(メチルトリフラート))を加えることにより系内でDMTSTを生成させることもできる。
また、フッ素基の活性化は、Sn(ClO(過ヨウ素酸第一スズ)、Sn(OTf)(トリフロロメタンスルホン酸スズ(II))、CpHf(ClO(過ヨウ素酸ハフノセン(II))、またはCpHf(OTf)(トリフロロメタンスルホン酸ハフノセン(II))等により行うことができる。Sn(ClOはSnCl(塩化第一スズ)及びAgClO(過塩素酸銀)を、Sn(OTf)はSnCl及びAgOTf(銀トリフラート)を、CpHf.(ClOはCpHfCl(塩化ハフノセン(II))及びびAgClOを、CpHf(OTf)はCpHfCl及びAgOTfを加えることにより、それぞれ系内で生成させて活性化を行うことができる。
かくして合成される固相(P)に結合した糖鎖は、必要に応じて固相を適当な溶媒で洗浄し、適当な化合物、たとえばナトリウムメトキシド等により固相から切り出すことにより取得することができる。
上記したオルトゴナル法においては、カップリング反応に関与する2種の脱離基、例えば、X(アリールチオ基)はNIS−TfOH又はDMTST等により、そしてY(フッ素基)はSn(ClO、Sn(OTf)、CpHf(ClO、またはCpHf(OTf)等により、それぞれ選択的に活性化することができる(図1)。ここで、X及びYは任意の順序で活性化することができる。このようなオルトゴナル法によれば、合成は生合成とは逆方向になされ、非還元末端から還元末端方向に行われる。この時、受容体側の脱離基は供与体の活性化条件下安定であるので、保護基は不必要である。また、オルトゴナル法によれば、カップリング生成物は既に次の反応のための脱離基を有しているので、糖鎖合成において最短の工程数を達成できるという利点を有している。
上記のオルトゴナル法は本発明の糖鎖固相合成方法に応用することにより、さらにその有効性を高めることができる。即ち、非還元末端からの合成法(A法)と還元末端から合成を進める方法(B法)とを比較すれば、B法においては、カップリング反応における未反応物由来の官能基(水酸基)を保護(キャッピング)する必要があり、従って、1サイクルはカップリング、キャッピング、脱保護の3工程からなる。一方、A法においてカップリング反応毎に副生物(加水分解物、脱離反応生成物)が固相上に蓄積するものの、それらは次のカップリング反応条件においては反応しないため、キャッピングの必要が無く、従って、固相反応においても1サイクルは1工程である。固相合成法はもともと高効率化の目的で開発された方法であり、本発明の糖鎖固相合成方法はそれをさらに効率良く改良したものであるので、オルトゴナル法を組み合わせて用いることによりさらなる総合的な反応プロセスの効率化が期待される。また、本明細書中以下に記載する拡散混合による固相反応方法とさらに組み合わせることにより、反応時間の短縮、溶媒の節約、節電等のメリットもあり、糖鎖の固相合成装置の開発にも有用である。
(2)単糖ライブラリー
生体内で多彩で重要な機能を果たす糖鎖を自在合成するためには、適当に保護された単糖ユニットが必要である。また、それらを多数含む単糖ライブラリーを作製しておくことは非常に有用である。上記の(1)で述べたように糖鎖の高効率合成には総合的なプロセスの効率化が重要であるので、どのような単糖ユニットを用いるかは重要である。
また、糖鎖の合成におけるカップリング反応においては立体異性体(α/β)が生じるが、通常の合成法では目的の立体異性体を選択的に合成する方法が一般的である。しかし、生体成分の再構築のための化学合成から脱却し、例えば、積極的に創薬等を目的としコンビナトリアルケミストリーを行おうとするような場合には、立体選択的カップリングのために必要な制御因子としての保護基の存在は、必要な単糖ユニット数を倍にするばかりでなく、そのような誘導体合成に要する反応工程を数倍とし、分子が複雑となるために用いることができる反応の種類にも制約を与える。従って、コンビナトリアルケミストリーにおいては、例えば、まずは立体非選択的な合成を行って、立体異性体混合物を効率良く合成し、その後、HPLC等により分離することが望ましい。本発明の方法や単糖ライブラリーは、このような手法にも好適である。
ライブラリーに含まれる単糖ユニットとしては、具体的には、例えば、本発明の糖鎖固相合成方法、中でもオルトゴナル法を組み合わせた方法においては、前記Xとしてフェニルチオ基を使用し、Yとしてフッ素基を使用し、反応に関与しない水酸基を全てベンジル基とすることが望ましい。また、XとYはオルトゴナルな関係にあるので、より安定なフェニルチオグリコシド体として合成しておき、使用に際して適宜フルオリド体へと転換することが望ましい。使用する保護基は隣接基関与を示さないアルキル基が望ましく、有機合成反応で一般的に用いられるベンジル基が最も望ましい。2−アミノ糖の場合は、隣接基関与を示さないアジド基を用いて、2−アジド糖として与えることが望ましい。
糖鎖ライブラリーの合成を考慮して単糖ライブラリーを作製する場合、ヒトの糖鎖において多糖以外においては非還元末端にのみ存在しているシアル酸、グルクロン酸、フコースについては固相に保持させる位置の水酸基のみ遊離の誘導体を合成すればよい。その他の単糖、すなわち、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、グルコサミン、ガラクトサミンについては、単糖の各々の水酸基のみが遊離の誘導体をそれぞれ合成することができる。シアル酸、グルクロン酸、フコースについても他の単糖誘導体同様にそれぞれの水酸基を区別することもできる。
本発明者らによってデザインされ、本発明のオルトゴナル法と組み合わせた糖鎖の固相合成において活用される単糖ユニットの例(フェニルチオグリコシド体)を図2に示す。図2に記載の化合物(フェニルチオグリコシド体)、並びにこれらの化合物中のフェニルチオ基をフッ素基に置換した化合物(フルオリド体)から成る群から選択される少なくとも1以上の単糖ユニットを含む単糖ライブラリーは、上記(1)に記載した本発明の糖鎖固相合成方法を行うための単糖ライブラリーとして有用である。また、立体制御を行いたい場合にはアシル基に置換した化合物を任意に用いることもできる。図2に記載の単糖ユニットは、生体に存在する糖鎖を構成する9種の単糖について化学合成法で糖鎖やそれを含む糖鎖ライブラリーを構築するために必要不可欠な単糖ユニットである。
なお、図2に記載の単糖ユニット中、既知化合物について以下に論文を記載する。
Man−2−OH:Marzabadi,C.H.;Spilling,C.D.(1993)J.Org.Chem.58,3761−6.
Man−3−OH:Oshitari,T.;Shibasaki,M.;Yoshizawa,T.;Tomita,M.;Takao,K.;Kobayashi,S.(1997)Tetrahedron 53,10993−11006
Man−4−OH:Lemanski,G.;Ziegler,T.(2000)Helvetica Chim.Acta 83,2655−2675.
Man−6−OH:Lemanski,G.;Ziegler,T.(2000)Tetrahedron 56,563−579.
Gal−2−OH:Marzabadi,C.H.;Spilling,C.D.(1993)J.Org.Chem.58,3761−6.
Gal−3−OH:Kanie,O.;Ito,Y.;Ogawa,T.(1996)Tetrahedron Lett.37,4551−4554.
Gal−4−OH:Greenberg,W.A.;Priestley,E.S.;Sears,P.S.;Alper,P.B.;Rosenbohm,C.;Hendrix,M.;Hung,S.−C.;Wong,C.−H.(1999)J.Am.Chem.Soc.121,6527−6541.
Gal−6−OH:Magaud,D.;Granjean,C.;Doutheau,A.;Anker,D.;Shevchik,V.;Cotte−Pattat,N.;Robert−Baudouy,J.(1998)Carbohydr.Res.314,189−199.
Glc−2−OH:Ennis,S.C.;Cumpstey,I.;Fairbanks,A.J.;Butters,T.D.;Mackeen,M.;Wormald,M.R.(2002)Tetrahedron 58,9403−9411.
Glc−4−OH:Motawia,M.S.;Olsen,C.E.;Enevoldsen,K.;Marcussen,J.;Moeller,B.L.(1995)Carbohydr.Res.277,109−23.
Glc−6−OH:Pfaeffli,P.J.;Hixson,S.H.;Anderson,L.(1972)Carbohydr.Res.231,195−206.
GlcN−4−OH:Martin−Lomas,M.;Flores−Mosquera,M.;Chiara,J.L.(2000)Europ.J.Org.Chem.1547−1562.
GlcN−6−OH:Takahashi,S.;Kuzuhara,H.;Nakajima,M.(2001)Tetrahedron 57,6915−6926.
Sia:Marra,A.;Sinay,P.(1989)Carbohydr.Res.,187 35−42.
(3)拡散混合による固相反応方法
本発明はさらに、毛管現象を生じる大きさの固体細孔中で固相反応を行う方法において、固体の外表面に余剰の液相が存在しない状態で反応を行うことを特徴とする固相反応方法に関する。
固相合成は、ポリマー性生体分子、たとえば、ヌクレオチド、ペプチド、糖鎖等の合成に欠かすことのできない合成手法である。また、近年、迅速に医薬品リード化合物を合成する手法として注目を集めているコンビナトリアルケミストリーにおいても基礎となっている。固相合成の利点は、通常の溶液反応において反応行程毎に必要な反応処理とそれに続くカラムクロマトグラフィーの操作を、洗いの操作に置き換えることにより反応プロセスの簡略化を図り、結果として作業時間の短縮が達成されることである。
固相合成において反応の場を提供する固相の例として、樹脂は、無機あるいは有機ポリマーであり、実際の反応の場は内部の細孔である(図3)。細孔は広い表面積を与えるため反応の場となるが、この細孔中での分子の移動は拡散によっている。しかし、従来の固相合成においてはこのような認識はされておらず、固相合成反応は溶液反応の延長として過剰量の溶媒に樹脂を膨潤させ、撹拌、振盪、あるいは、送液化で反応を行っている(図4「従来法」)。例えば、反応剤の1つは固相に保持され、他の反応剤は溶液(液相)として与えられる。この時、液相の溶媒は樹脂が膨潤するのに必要な量に対して過剰量であるので、過剰な液相から反応剤の反応の場(固相)である樹脂の内部、すなわち細孔内へと拡散による移行が必要となる。さらに、液相として与えられる反応剤は均一であり、また、細孔中の分子の移動は拡散によっているので、撹拌等の外的物理力はおよばない。従来法では、これらのことが固相反応の反応効率を低下させていると考えられた。
そこで本発明者らは、上記したような、固相反応の実際の反応の場は細孔であるので反応は拡散により支配されると考えられること、及び、液相から細孔の内部への反応剤の移行も拡散に支配されているために過剰量の液相はかえって反応効率を下げると考えられること、の2点の問題について鋭意検討を行った。その結果、従来の固相反応は、上記の2点の改善により格段に効率化が達成されることを確認した。2つの改善点とは、(a)拡散支配による反応(拡散混合による固相反応)と、(b)必要最低限量の溶媒による反応である。(a)による効果は、例えば、液量低下や、攪拌、振盪装置等が不要となることによる合成ロボットの小型化であり、(b)による効果は、例えば、液相に含まれる反応剤の濃縮による反応時間短縮である。また、これらの改善を行うことにより、省エネルギー、廃液の削減、住(研究)環境の改善を同時に達成することができる。
これらの改善、検討の結果、本発明者らは、毛管現象を生じる大きさの固体細孔中で固相反応を行う方法において、固体の外表面に余剰の液体が存在しない状態で反応を行うことを特徴とする本発明の固相反応方法を確立した。該方法は、さらに、攪拌、振盪等による外的な力を必要とせず、拡散混合によってのみ反応を行うことを大きな特徴としている。
本発明における拡散混合による固相反応は固相反応の原理であり、糖関連の反応に限定されずにいかなる固相上の反応にも適応できる。上記した拡散混合による固相反応方法は、好ましくは化学反応または生化学的反応に適用することができる。具体的には、例えば、糖鎖合成反応、ペプチド合成反応、核酸合成反応、それらのアナログや複合体等の合成反応、有機化学合成反応、酵素反応等が挙げられ、さらに好ましくは糖鎖合成反応に適用することができ、特に好ましくは上記(1)に記載した本発明の糖鎖固相合成反応に適用することができる。
具体的には、例えば、糖鎖固相合成反応の場合には、固相に結合した第一の単糖に、第二の単糖を反応させて結合させる反応は、第一の単糖が結合している固相に第二の単糖を含む液相を添加して該固相と反応させることにより行われる。同様に、他の化学反応または生化学反応を行う場合にも、反応に関与する第一の物質をあらかじめ固相上に結合させておき、該固相に、これと反応させる第二の物質を含む液相を加えて反応を行えばよい。
本発明において固相として用いられる固体とは、その内部に毛管現象を生じる大きさの細孔を有し、その細孔中で前記したような固相反応が行えるものであればいかなるものでも用い得る。固体は、例えば糖鎖固相合成方法を行う場合には、好ましくはその表面に何らかの官能基を有しているものであって、さらにこの官能基に反応に関わる基質と結合し得るリンカーが結合している。官能基やリンカーとしては、前記(1)の糖鎖固相合成方法において詳述したもの等を用いることができる。固体の材質としても、前記(1)の糖鎖固相合成方法において詳述したもの等を用いることができ、具体的には、例えば、樹脂、シリカ、ガラス(多孔性ガラス)等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリスチレン、TG(TentaGel(Novabiochem社製))、PEGA(Acrylamide−PEG Co−polymer(Novabiochem社製))等が挙げられ、これらが内部に適当な細孔を有するように成型されたものを好ましく用いることができる。これらの内部に存在する細孔の大きさは、毛管現象を生じる大きさであればよいが、適用する反応、溶媒等に鑑みて適当なものを選択して用いればよい。
固体の大きさや形状は、用いる反応容器や装置に応じて適当なものを選択すればよい。例えば、樹脂やシリカは、種々の形状に成型されたものが市販されているが、取扱いが容易である点から、ビーズ状(粒状)に成型された樹脂ビーズ等が好ましく用いられる。樹脂ビーズの場合、例えば、その粒径は1〜1000μm程度である。また、不定形のものも用いることができる。それぞれ様々な粒径及び細孔径を有するものが市販されており、それらの中から目的の反応に適したものを選択して用いればよい。その一例を、後記表1に示す。
また、例えば、モノリス構造を有する固体も好ましく用いることができる。モノリス(monolith)とは、つなぎ目のないもの、一枚岩のようなもの、との意味を持つ言葉であって、一定の質感をもつ単一の素材によって構成されている連続体を意味する。例えば、シリカで構成される「モノリスシリカ」の場合、シリカの骨格と空隙が一つの物体の中で連続構造をとっている。このような構造によって、モノリスシリカは、例えば真球状の粒子が充填されたものと比べて高い空隙率を有し、連続構造であるために多くの貫通孔を有するため、本発明の方法に好適である。ポリスチレンモノリス等、他の材質でもモノリス構造を有する固体の形成は可能である。このようなものも、用いる反応容器や装置に適した形状や大きさのものを選択して本発明に用い得る。
さらに、本発明においては、人工的に形成された細孔を有する物体も用いることができる。例えば、人工的に上述したような細孔と同様の効果を奏するように形成された流路等を有するもの等も、同様に用いることができる。より具体的には、例えば、微小流路構造(以下、これを「マイクロチャネル」と称することがある)や、これらが配設されたチップ等を利用することができる。
ここでマイクロチャネルとは、チャネル(流路)に液体を導入した時に、マイクロ効果が現れる、すなわち液体に何らかの挙動変化が現れる断面形状を持つチャネルを意味する。本発明においては、このマイクロ効果のうち、少なくとも毛管現象が生じるものを用いる。マイクロ効果の発現には、液相として用いる溶媒の物性によっても異なるが、断面形状、すなわちチャネルの主流方向に垂直な面の形状のうち、最も短い間隔(長方形なら短辺、楕円なら短径に相当する)の長さが通常5mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下であることが適当である。この長さの下限は特に限定されず、マイクロチャネルとしての機能を有する長さであればよい。また、チップとは、流路構造を含む部分の部材を意味する。またマイクロチップとは、上記マイクロチャネルよりなる微小流路構造を備えるチップを意味する。チップの大きさ、形状は特に限定されず、用途に応じて任意に設定することができ、それ自体公知の通常用いられる手法によって作製され得る。
上記いずれの形状のものであっても、本発明において用いられる固体としては、固体の内部に存在する細孔による空隙が大きいもの、すなわち、空隙率が高いものが好ましい。特に、細孔径が小さく空隙率が高いものが好ましい。本発明の方法は細孔中の固体表面において反応が行われるので、細孔径が一定であれば、一般に空隙率が高く表面積が大きいものほど反応の効率が高いためである。
本発明において、液体の外表面に余剰の液相が存在しない状態で反応を行うとは、必ずしも液相がまったく存在しないことを意味するものではなく、あくまでも余剰もしくは過剰量の液相を用いても反応効率が低下することから、不要であることを意味している。すなわち、目的に適う反応効率が十分に達成されるものであれば多少の余剰の液相が存在してもよく、攪拌、振盪、連続的な送液等の外的な力を与えずに拡散混合のみによって効率的に反応が行われるものをすべて包含する。
液相は、細孔中での拡散が十分に起こり得る程度に細孔を満たす液量が少なくとも必要である。すなわち、少なすぎても多すぎても反応効率は低下し、また、溶媒も無駄になるので、必要かつ最小限の液相を用いるのがよい。理論上、固体細孔がちょうど満たされる最大液量で反応を行うことが最も効率が良い。
固体細孔がちょうど満たされる最大液量は、例えば、シリカビーズやシリカモノリスのように液相が添加されても膨潤しない性質の固体については、その固体に存在する細孔の空隙の量(以下、これを「空隙量」と称することがある)と理論上同じである。空隙量は、それ自体公知の通常用いられる測定方法により求めることができる。一方、多くの樹脂ビーズのように液相が添加されると膨潤する性質の固体については、例えば、次に例示するような手法により必要な液量(以下、これを「膨潤液量」と称することがある)を簡便に決定することができる。前者の膨潤しない性質の固体についても、必ずしも測定や計算により求められた空隙量と実際に必要とされる液量が一致するとは限らない場合もあるため、同様の方法により最適な液量を確認することが好ましい。
樹脂を膨潤させるために必要な液量については、以下の表1や、Bayer,E.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(1991)30,113.等を参考にして決定することができるが、次のようにして実験的に容易に確認し、知ることができる。
まず、一定量の樹脂を秤量し、これに使用する溶媒を滴下する。この時、滴下量を計測する。大まかな樹脂の膨潤は10分程度で完了するのでこれを目安に滴下を行う。必要十分量以上の溶媒が添加された時、樹脂ビーズ間の摩擦力が低下し「液状化」現象が生じる。この時の溶媒量を反応に用いる溶媒量と決定すればよい。このとき、例えば樹脂ビーズをシリンダー等の適当な実験容器に秤量し、この中で溶媒の滴下を行うと、滴下にともなって樹脂ビーズは次第に膨潤するが、膨潤液量を過ぎると必要以上の余剰の溶媒が樹脂ビーズの層の上にただ重層されるだけとなる。このようにして、膨潤液量(すなわち、細孔中に溶媒が満たされ、これ以上膨潤しない点)は実験的に容易に確認することができる。

本発明者らの実験により、固相、例えば樹脂の膨潤液量に必要な反応剤(具体的には、例えば、糖鎖合成法の場合には、反応に関わる単糖ユニット、活性化剤等)を溶解することにより、反応剤量を同一とした場合には、反応の場である樹脂の細孔内部と過剰の液相との間で拡散による移行が不要となった結果、反応時間の短縮が達成された。また、反応剤が複数ある場合、反応剤の添加は全て同時に行うことも複数回に分けて行って、細孔中で混合させることもできる。
液相として用いる溶媒としては、それぞれの固相反応に適したものであればいかなるものでも用い得るが、それ自体が目的の反応に関与しないものであって、樹脂等の固相とも反応しないものを用いる。また、固相との組み合わせにより毛管現象が生じ易いものを選択することも好ましい。
かくして選択された固相と液相を用いて、本発明の固相反応方法を行うことができる。
固相反応自体は、それ自体公知の通常用いられる手法により行われるが、本発明の方法においては、攪拌、振盪、連続的な送液等の外的な力を加えず、好ましくは静置して行われる。静置することにより、反応は拡散混合により行われる。必要に応じて、温度調節機能、送液機能等を備えていることが好ましい。
反応容器(反応槽)としては、拡散混合及び反応自体が妨げられず、十分に進行できるような状態を維持できるものであればいかなるものでもよく、目的の反応、用いる固相、液相等に適したものを選択すればよい。液相の乾燥を防ぐ目的で適度に密閉が可能なものが好ましい。
例えば、固相として用いられる固体としてビーズ状(粒状)のものを用いる場合には、反応槽は、これらを適当な密度で充填した構造とすることができる。好ましくは、液相を添加、回収できる構造を有するものを用いる。具体的には、例えば、一般的に物質の精製・分離等に用いられているカラム類と類似の構造等が挙げられる(例えば、図4「本発明」)。また、モノリス構造を有する固体を用いる場合も、同様に固体の大きさや形状に適した反応槽に収容されることが好ましい。
一方、人工的に形成された細孔を有する物体、例えば、微小流路構造(マイクロチャネル)を有するチップ等を用いる場合には、チップ自体が反応槽として用いられることができ、これに配設された流路(チャネル)に毛管現象によって液相が流入し、反応後の液相を回収可能な構造となっていればよい。また、このような構造のチップの流路内に上記のようなビーズ状もしくはモノリス構造等の固体を充填することもできるし、流路内壁をコーティングすることもできる。
前記(1)に記載の糖鎖固相合成方法は、昇温率を制御して反応系の温度を変化させることにより高効率で糖鎖の固相合成を行う方法であるので、本法のように固相反応を少量の溶媒で効率良く行うことができる方法と組み合わせることにより、さらに効率的に合成を行うことができる。特に、例えば、前記したように、コンビナトリアルケミストリーにより糖鎖ライブラリーを構築しようとする場合等には、少量でも非常に多数の組み合わせで反応を行って多種類の糖鎖を合成する必要がある。この目的のために、一度に多数の反応を同時進行させることのできる前記(1)の糖鎖固相合成方法と、少量の液相で静置しておくだけで反応を行うことができる(攪拌、振盪、連続的な送液等に関わる装置が不要な)この固相反応方法とを組み合わせることは、非常に好適である。
以下に、本法と前記(1)に詳述した本発明の糖鎖固相合成方法を組み合わせて用いる場合を例に挙げて、さらに具体的に説明する。
まず単糖ユニット(供与体)が結合した樹脂(P−L−O−A−X)を準備する。次に、たとえばこの樹脂を結合せしめる単糖ユニット(受容体;HO−A−Y)を含む溶液で膨潤し、脱離基の活性化剤(プロモーター)を加えて反応させる方法(方法1)、又は、樹脂(P−L−O−A−X)と結合せしめる単糖ユニット(HO−A−Y)と脱離基の活性化剤の混液により膨潤して反応させる方法(方法2)を繰り返すことにより、樹脂上に任意の長さの糖鎖を合成することができる。方法1又は2は、反応の進行状態に応じて、いずれの方法でも任意に選択することができる。
かくして得られる糖鎖が結合した樹脂を、前記のとおり必要に応じて適当な溶媒で洗浄し、樹脂から糖鎖を切り出すことにより、目的の糖鎖を取得することができる。
本発明による拡散混合による固相反応方法によれば、固相反応において撹拌、振盪等物理的に混合のための操作を施す必要がない。すなわち、固相反応を樹脂細孔内の分子の拡散に委ねることにより、固相反応が達成される。これにより反応装置の小型化が達成できる。従来の合成装置が反応槽、温度調節器、分注器、撹拌装置、ガス置換装置から構成されているのに対し、本発明の方法を行うための反応装置としては、(i)反応槽、温度調節器、分注器及びガス置換装置から成る装置、あるいは、(ii)反応槽、温度調節器、流路変換装置及び送液ポンプから成る装置などを利用できる。
即ち、本発明によれば、少なくとも以下の(1)と(2)とを含む、拡散混合による固相反応を行うための反応装置が提供される。
(1)液相を注入又は吸引するための導入部を有し、かつ固体を収容する空間を有する、固相反応を行うための反応部、及び
(2)反応部の温度を調節するための温度調節部
(4)本発明の糖鎖固相合成方法で得られるライブラリー
上記(1)に記載した本発明の糖鎖固相合成方法により合成された、生体中に存在する単糖から選ばれる3種類の糖の全ての組み合わせから成る糖鎖により構成されるライブラリーも本発明の範囲内である。生体中に存在する単糖としては、好ましくは、マンノース、グルコース、ガラクトース、キシリトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、フルクトース又はシアル酸を使用することができる。
糖鎖ライブラリーの重要性は今後増大すると考えられるが、そのターゲットとしては、生体に存在する9種類の単糖から任意に3種類を選択して得られる組み合わせから成る3糖ライブラリーとすることが望ましい。このようにして得られる糖鎖ライブラリーは、直接機能研究のためのプローブとして使用したり、または医薬リードとして用いたり、生体内の糖鎖を模したライブラリーとして医薬品のスクリーニング等にも用い得る。
生体内の糖鎖は、一般に1〜5個の単糖が連結したものであり、これらが免疫反応等における細胞間認識、ウィルスやバクテリアの認識等、複雑な認識現象にかかわっていることが知られている。本発明の生体内に存在する単糖から選ばれる3種類の糖のすべての組み合わせから成る糖鎖により構成されるライブラリーは、実際にヒトの生体内に存在する糖鎖を平均的に模したラブラリーとして有用である。9種の生体内に存在する単糖から成る3糖の組み合わせの数は140,824通りであるが、ライブラリーがカバーする範囲を限定することもできる。
本発明においては、本明細書中上記した任意の単糖ユニットを用い、本明細書中上記したオルトゴナルグリコシル化法に基づいて、本明細書中上記した拡散混合固相反応法に従い糖鎖の合成を行うことにより、アセタール(アノメリック)位の立体異性体(2=8)混合物が得られ、必要に応じてこれらをHPLCを用いて分離することができる。(図5)。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例で用いる化学反応および糖鎖合成反応の一般的手法、試薬等は、「固相合成ハンドブック(Novabiochem社(Merck社)刊」等の一般的実験書等に記載のものを用いることができる。
【実施例】
TLCはMerk Art 5715 Silicagel 60 F254を用い、検出はUV吸収及び発色試薬(10%HSO−エタノール)で行った。カラムクロマトグラフィーはMerk Art 7734 Silicagel 60 70−230meshを用いた。H及び13C−NMRはBUKER ACVANCE 500あるいはJEOL EX−270で測定し、ケミカルシフト値は内部標準物質(テトラメチルシラン)に対するδ値(ppm)で示した。MALDI−TOFMASはPerseptive VoygerTMで測定し、matrixには2,5−ジヒドロ安息香酸を用いた。FT−IRはHORIBA FT720を使用した。ResinはNovasyn TG amino resin HL(0.29mmol/g loading)を使用した。反応に用いたCClはAldrich 1,2dichloroethane anhydrous 99.8%を用い、EtCNはCaHにより減圧蒸留した。固相反応にはBohdan MiniblockTMを用いた。
実施例1:保護単糖ライブラリー
図1に記載の単糖ライブラリー中、Man−2−OH、Man−3−OH、Man−4−OH、Man−6−OH、Gal−2−OH、Gal−3−OH、Gal−4−OH、Gal−6−OH、Glc−2−OH、Glc−4−OH、Glc−6−OH、GlcN−4−OH、GlcN−6−OH、Siaの14種類については本明細書中上記した通り公知化合物である。
Man−2−OH、Man−3−OH、Man−4−OH、Man−6−OHの合成については、Kametani,T.;Kawamura,K.;Honda,T.(1987)J.Am.Chem.Soc.109,3010−17;Lemanski,G.;Ziegler,T.(2000)Tetrahedron 56,563−579;Lemanski,G.;Ziegler,T.(2000)Helvetica Chim.Acta 83,2655−2675;Oshitari,T.;Shibasaki,M.;Yoshizawa,T.;Tomita,M.;Takao,K.;Kobayashi,S.(1997)Tetrahedron 53,10993−11006;Marzabadi,C.H.;Spilling,C.D.(1993)J.Org.Chem.58,3761−6;Street,I.P.;Withers,S.G.(1986)Can.J.Chem.64,1400−3;Muragata,T.;K.,Masami;S.,Y.;S.,H.;Suzuki,S.;Ogawa,T Jpn.Kokai Tokkyo Koho(1994),44 pp.CODEN:JKXXAF JP 06293790 A2 19941021 Heisei.Patent written in Japanese.Application:JP 93−81955 19930408.CAN 123:83943 AN 1995:662332を参照できる。
Siaの合成については、Dasgupta,F.(Glycomed,Inc.,USA).U.S.(1992),9 pp.CODEN:USXXAM US 5138044 A 19920811 Patent written in English.Application:US 90−566682 19900813.CAN 118:81335 AN 1993:81335 CAPLUS(Copyright 2003 ACS);Marra,A.;Sinay,P.(1989)Carbohydr.Res.,187 35−42;Sharma,N.,M.;Eby,R.(1984)Carbohydr.Res.,127 201−210を参照できる。
上記以外の単糖については以下の通り合成した。
(1)ガラクトース誘導体のフッ素化物の合成
フェニル2−O−クロロアセチル−3,4,6−トリ−O−のベンジル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド

化合物28(300mg,0.55mmol)をCHCl(5.4mL)、ピリジン(0.3mL)に溶解させ、氷冷下でクロロアセチルchloride(88μL,1.11mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HClで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=15:1)で精製し、化合物38(323mg,0.52mmol)を94%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.62.H−NMR(CDCl):δ7.50−7.22(20H,m,Ph x 4),5.45(1H,t,J=9.5Hz,H−2),4.93,4.68,4.63,4.56,4.50,4.43(6H,each d,J=12.0Hz,ベンジルメチレン x 3),4.68(1H,d,H−1),4.00(1H,t,J=2.8Hz,H−4),3.97(1H,d,−CHCl),3.90(1H,d,J=15.0Hz,−CHCl),3.66−3.63(3H,m,H−3,H−5,H−6a),3.58(1H,dd,J=9.5Hz,J=3.0Hz,H−6b).
2−O−クロロアセチル−3,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシルフルオリド(39)

化合物38(308mg,0.50mmol)、をCHCl(4.0mL)に溶解させ、窒素気流下−15℃でDAST(79μL,0.60mmol)、NBS(107mg,0.60mmol)を加え、1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、化合物39(180mg,0.34mmol)を68%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.60.H−NMR(CDCl):δ.68−7.26(15H,m,Ph x 3),5.80(1H,dd,J1,2=2.8Hz,J1,F=54.6Hz,H−1),5.41(1H,dd,J=10.5Hz,J=25.0Hz,H−2),4.93,4.72,4.63,4.57,4.50,4.44(6H,each d,J=11.0Hz,ベンジルメチレン x 3),4.13(1H,t,J=6.5Hz),4.08(1H,d,H−4),4.05−4.01(2H,m,−CHCl),3.96(1H,dd,J=2.5Hz,J=10.5Hz,H−3),3.60−3.59(2H,m,H−6a,H−6b).
3,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシルフルオリド(40)

化合物39(146mg,0.28mmol)をピリジン(6.0mL)、エタノール(1.0ml)に溶解させ、チオ尿素(21mg,0.28mmol)を加え、80℃で1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HCl、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物40(94mg,0.21mmol)を75%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.31.H−NMR(CDCl):δ7.40−7.22(15H,m,Ph x 3),5.65(1H,dd,J1,2=2.8Hz,J1,F=54.7Hz,H−1),4.87,4.73,4.61,4.56,4.51,4.44(6H,each d,J=11.8Hz,ベンジルメチレン×3),4.20(1H,dd,J=10.1Hz,J=25.4Hz,H−2),4.12(1H,t,J=6.8Hz,H−5),4.06(1H,d,J=1.6Hz,H−4),3.75(1H,dd,J=2.6Hz,J=10.2Hz,H−3),3.65−3.57(2H,m,H−6a,H−6b).13C−NMR(CDCl):δ108.3,106.2,7.6,74.7,73.5,73.1,72.2,71.9,68.3,60.7
フェニル3−O−クロロアセチル−2,4,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(41)

化合物32(140mg,0.25mmol)をCHCl(2.7mL)、ピリジン(0.15mL)に溶解させ、氷冷下でクロロアセチルクロライド(41μL,0.51mmol)を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HClで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、化合物41(145mg,0.23mmol)を91%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.70.H−NMR(CDCl):δ7.58−7.15(20H,m,Ph x 4),4.98(1H,dd,J=3.0Hz,J=9.7Hz,H−3),4.83,4.68,4.57,4.53,4.52,4.45(6H,each d,J=11.1Hz,ベンジルメチレン×3),4.59(1H,d,J=7.5Hz,H−1),4.05(1H,d,J=2.9Hz,H−4),3.95(1H,t,J=9.6Hz,H−2),3.74(1H,t,J=6.6Hz,H−6a),3.66(1H,d,J=11.8Hz,−CHCl),3.58(1H,d,J=11.8Hz,−CHCl),3.63−3.54(H−4,H−5,H−6b).
3−O−クロロアセチル−2,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシルフルオリド(42)

化合物41(132mg,0.21mmol)、をCHCl(2.5mL)に溶解させ、窒素気流下−15℃でDAST(34μL,0.25mmol)、NBS(46mg,0.25mmol)を加え、1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、化合物42(110mg,0.21mmol)を98%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.68.H−NMR(CDCl):δ7.40−7.17(15H,m,Ph x 3),5.60(1H,dd,J=2.7Hz,J=53.2Hz,H−1b),5.28(1H,dd,J=4.7Hz,J=10.8Hz,H−3),5.05(1H,dd,J=6.9Hz,H−1b),4.83,4.69,4.66,4.58,4.53,4.46(6H,each d,J=11.7Hz,ベンジルメチレン x 3),4.22(1H,t,J=6.8Hz,H−5),4.14(1H,d,J=2.5Hz,H−4),4.04(1H,dd,J=2.8Hz,J=10.3Hz,H−3),4.01(1H,t,J=2.5Hz,H−2),3.94−3.89(2H,m,H−6a,H−6b),3.81(1H,d,J=14.8Hz,CHCl),3.74(1H,d,J=14.8Hz,CHCl).
2,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシルフルオライド(43)

方法1
化合物42(101mg,0.19mmol)をピリジン(6.0mL)、エタノール(1.0ml)に溶解させ、チオ尿素(16mg,0.21mmol)を加え、80℃で1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HCl、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=12:1)で精製し、化合物43(67mg,0.15mmol)を77%の収率で得た。
方法2
化合物32(191mg,0.35mmol)、をCHCl(2.5mL)に溶解させ、窒素気流下−15℃でDAST(233μL,1.72mmol)、NBS(69mg,0.39mmol)を加え、1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=12:1)で精製し、化合物43(60mg,0.13mmol)を38%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.40.H−NMR(CDCl):δ7.35−7.16(15H,m,Ph x 3),5.60(1H,dd,J1,2=2.5Hz,J1,F=53.7Hz,H−1),4.81,4.73,4.68,4.62,4.52,4.43(6H,each d,J=11.4Hz,ベンジルメチレン x 3),4.15(1H,t,J=6.8Hz,H−5),4.07(1H,dd,J=3.2Hz,J=9.6Hz,H−3),3.99(1H,d,J=2.6Hz,H−2),3.80(1H,dd,J=9.9Hz,J=25.2Hz,H−2),3.61−3.58(1H,.m,H−6a,H−6b).13C−NMR(CDCl):δ108.1,104.3,76.5,75.9,75.2,73.4,73.0,71.6,69.8,68.2
フェニル4−O−クロロアセチル−2,3,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(44)

化合物34(150mg,0.28mmol)をCHCl(2.7mL)、ピリジン(0.15mL)に溶解させ、氷冷下でクロロアセチルクロライド(44μL,0.55mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HClで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、化合物44(160mg,0.26mmol)を94%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.70.H−NMR(CDCl):δ7.61−7.13(20H,m,Ph x 4),5.70(1H,d,J=3.0Hz,H−4),4.76,4.75,4.72,4.64,4.53,4.52(6H,each d,ベンジルメチレン x 3),4.60(1H,J=7.8Hz,H−1),4.04(1H,d,J=14.9Hz,−CH2Cl),3.98(1h,d,J=14.9Hz,−CHCl),3.78(1H,t,J=6.8Hz,H−5),3.66(1H,dd,J=3.2Hz,J=9.1Hz,H−3),3.63−3.58(2H,m,H−6a,H−6b),3.51(1H,t,H−2).
4−O−クロロアセチル−2,3,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシルフルオライド(45)

化合物44(146mg,0.23mmol)、をCHCl(2.5mL)に溶解させ、窒素気流下−15℃でDAST(38μL,0.28mmol)、NBS(50mg,0.28mmol)を加え、1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、化合物45(117mg,0.22mmol)を94%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.69.H−NMR(CDCl):δ7.51−7.29(15H,m,Ph x 3),5.73(1H,d,J=2.4Hz,H−4),5.60(1H,dd,J1,2=2.6Hz,J=53.0Hz,H−1),4.82,4.77,4.67,4.58,4.54,4.30(6H,each d,J=11.8Hz,ベンジルメチレン×3),4.27(1H,t,J=6.5Hz,H−5),4.03(1H,d,J=15.3Hz,−CHCl),3.99−3.94(2H,m,H−3,−CHCl),3.71(1H,dd,J=9.7Hz,J=25.3Hz,H−2),3.54(1H,dd,J=6.2Hz,J=9.0Hz,H−6a),3.45(1H,t,J=9.3Hz,H−6b).
2,3,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシルフルオライド(46)

方法1
化合物45(108mg,0.20mmol)をピリジン(6.0mL)、エタノール(1.0ml)に溶解させ、チオ尿素(16mg,0.21mmol)を加え、80℃で1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HCl、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=12:1)で精製し、化合物46(51mg,0.11mmol)を55%の収率で得た。
方法2
化合物34(120mg,0.22mmol)、をCHCl(2.5mL)に溶解させ、窒素気流下−15℃でDAST(146μL,1.11mmol)、NBS(43mg,0.24mmol)を加え、1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=12:1)で精製し、化合物46(40mg,0.09mmol)を40%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.47.H−NMR(CDCl):7.37−7.17(15H,m,Phx3),5.40(1H,dd,J1,2=2.6Hz,J=53.0Hz,H−1α),5.15(1H,dd,J=7.2Hz,J=52.7Hz,H−1β),4.83,4.78,4.74,4.71,4.60,4.55(6H,each d,J=11.4Hz,ベンジルメチレン x 3),4.09(1H,s,H−4),4.07(1H,t,J=5.7Hz,H−5),3.91(1H,dd,J=2.5Hz,J=9.8Hz,H−3),3.81−3.64(3H,m,H−2,H−6a,H−6b).13C−NMR(CDCl)δ108.1,104.3,76.5,75.9,73.4,73.0,71.6,69.8,68.2.
フェニル6−O−クロロアセチル−2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(47)

化合物37(150mg,0.28mmol)をCHCl(2.7mL)、ピリジン(0.15mL)に溶解させ、氷冷下でクロロアセチルクロライド(44μL,0.55mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HClで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=15:1)で精製し、化合物47(171mg,0.28mmol)を定量的に得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.52.H−NMR(CDCl):δ7.56−7.18(20H,m,Ph x 4),5.00,4.83,4.79,4.74,4.63,4.62(6H,each d,J=11.8Hz,ベンジルメチレン x 3),4.74(1H,d,H−1),4.35(1H,dd,J=7.1Hz,J=11.2Hz,H−6a),4.13(1H,dd,J=5.5Hz,J=11.3Hz,H−6b),3.95−3.87(3H,m,H−3,−CHCl),3.82(1H,d,J=2.4Hz,H−4),3.61−3.59(1H,m,H−2,H−5).
6−O−クロロアセチル−2,3,4−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシルフルオライド(48)

化合物47(171mg,0.27mmol)、をCHCl(2.5mL)に溶解させ、窒素気流下−15℃でDAST(44μL,0.33mmol)、NBS(59mg,0.33mmol)を加え、1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、化合物48(119mg,0.22mmol)を82%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.50.
2,3,6−Tri−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシルフルオライド(49)

化合物48(119mg,0.23mmol)をピリジン(6.0mL)、エタノール(1.0ml)に溶解させ、チオ尿素(20.6mg,0.27mmol)を加え、80℃で1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HCl、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物49(78mg,0.17mmol)を76%の収率で得た。
Compound 49α:TLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.47.H−NMR(CDCl):δ7.41−7.15(15H,m,Ph x 3),5.60(1H,dd,J=2.3Hz,J=53.8Hz,H−1),4.95,4.88,4.83,4.72,4.68,4.64(6H,each d,J=11.6Hz,ベンジルメチレン×3),4.12(1H,dd,H−2),4.08−3.91(3H,m,H−3,H−4,H−5),3.75(1H,dd,J=9.6Hz,J=5.8Hz,H−6a),3.52(1H,dd,J=5.6Hz,H−6b).13C−NMR(CDCl):δ104.4(C−1),78.3(C−2),75.9,73.7,72.9,61.9(C−6).
Compound 49βTLCトルエン:酢酸エチル=6:1 Rf=0.40.H−NMR(CDCl):δ7.38−7.25(15H,m,Ph x 3),5.20(1H,dd,J=6.6Hz,J=53.1Hz,H−1),4.94,4.86,4.85,4.80,4.74,4.69,4.64(6H,each d,J=11.6Hz,ベンジルメチレン x 3),3.98(1H,m,H−2),3.87−3.81(2H,m,H−4,H−6a),3.60(1H,d,H−3),3.55−3.50(2H,m,H−5,H−6b).13C−NMR(CDCl):δ108.5(C−1),80.4,79.1(C−2),76.5,72.5,61.9(c−6)

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(2)キシロース誘導体の合成
フェニル2,3,4−トリ−O−アセチル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド(50)

D−キシロース(10g,0.06mol)をピリジン(30mL)に溶解させ、氷冷下、AcO(30mL)を加え室温で12時間撹拌した。反応終了後、トルエンを加えて減圧濃縮し、化合物50(17.6g,0.06mol)を定量的に得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.42.
フェニル2,3,4−トリ−O−のアセチル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド(51)

化合物50(23g,0.07mol)をCHCl(20mL)に溶解させ、PhSH(8.2mL,0.08mol)とBFEtO(18.3mL,0.14mol)を窒素気流下で氷冷しながら加え、2時間攪拌した。反応終了後、CHClで抽出し、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物51(22g,0.064mol)を83%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.50.
フェニル1−チオ−β−D−キシロピラノシド(52)

化合物51(22g,0.06mol)をメタノール(50mL)に溶解させ0.5M CHONa/メタノール(0.5mL)を加え、1時間攪拌した。反応終了後、イオン交換樹脂を加え中性に戻し、pH試験紙で確認後、ろ過をした。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物52(14g,0.06mol)を定量的に得た。TLC CHCl:メタノールt=4:1 Rf=0.49.
フェニル3,4−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド(53),フェニル2,4−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド(54),及びフェニル2,3−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド(55)

化合物52(300mg,1.2mmol)をトルエン(10mL)に溶解させ、BuSnO(340mg,1.3mmol)を加え、3時間加熱還流した後、減圧濃縮した。得られた残渣をDMF(10mL)に溶かし、CsF(900mg,7.2mmol)とBnBr(800μL,7.2mmol)を加え2時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物53(180mg,36.1%)、54(250mg,50.1%)、55(26mg,5.3%)が得られた。
Compound(53):TLCトルエン:酢酸エチル=2:1 Rf=0.73.H−NMR(CDCl)δ:7.51−7.23(15H,m,Ph x 3),5.30(1H,d,J1,2=4.7Hz,H−1),4.79,4.75,4.64,4.60(4H,d.ベンジル メチレン x 2),4.41(1H,dd,J4,5a=11.9Hz,J5a5b=11.9Hz,H−5a),3.71(1H,t,J2,3=4.9Hz,H−2),3.64(1H,q,H−4),3.51(1H,dd,J4,5b=5.2Hz,J5a,5b=11.5Hz,H−5b),3.10(1H,d,H−3).13C−NMR(CDCl)δ:86.7,77.8,73.5,73.4,71.9,68.0,65.4,64.7.
Compound(54):TLCトルエン:酢酸エチル=2:1 Rf=0.79.H−NMR(CDCl)δ:7.54−7.21(15H,m,Ph x 3),4.92(1H,d,J1,2=6.2Hz,H−1),4.83,4.76,4.65,4.61(4H,d,ベンジルメチレン x 2),4.30(1H,dd,J4,5a=11.8Hz,J5a,5b=3.1Hz,H−5a),3.72(1H,t,J=5.90Hz,H−2),3.62(1H,t,J3,4=6.1Hz,H−3),3.58(1H,q,H−4),3.57(1H,dd,J4,5b=6.0Hz,J5a,5b=2.9Hz).13C−NMR(CDCl)δ:88.1,80.4,77.9,77.3,76.7,75.2,73.1,67.5.
Compound(55):TLCトルエン:酢酸エチル=2:1 Rf=0.75.H−NMR(CDCl)δ:7.54−7.21(15H,m,Ph x 3),4.71(1H,d,J1,2=5.1Hz),4.92,4.74,4.68,4.61(4H,d,ベンジルメチレン x 2),4.04(1H,dd,J4,5a=5.0Hz,J5a,5b=11.6Hz,H−5a),3.72(1H,t,J2,3=8.8Hz,H−2),3.51(1H,q,H−4),3.30(1H,t,J3,4=9.3Hz,H−3),3.20(1H,t,J5a,5b=11.1Hz,H−5b).13C−NMR(CDCl)δ:88.9,79.2,75.9,73.9,72.4,70.8.

Lee,E.;Bruzzi,A.;O’Brien,E.;O’Colla,P.S.(1979)Carbohydr.Res.71,331−4.
Lopez,R.;Fernandez−Mayoralas,A.(1994)J.Org.Chem.59,737−45.
(3)フコース誘導体の合成
1,2,3,4,6−ペンタ−O−アセチルβ−L−フコピラノシド(56)

L−フコース(10g,0.06mol)をピリジン(30mL)に溶解させ、氷冷下、AcO(30mL)を加え室温で12時間撹拌した。反応終了後、トルエンを加えて減圧濃縮し、化合物56(17.6g,0.06mol)を定量的に得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.42.
フェニル2,3,4,6−terta−O−アセチル−1−チオ−β−L−フコピラノシド(57)

化合物56(22g,0.076mol)をCHCl(30mL)に溶解させ、PhSH(8.6mL,0.083mol)とBFEtO(19.3mL,0.152mol)を窒素気流下で氷冷しながら加え、2時間攪拌した。反応終了後、CHClで抽出し、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、化合物57(22g,0.064mol)を85%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.50.
フェニル1−チオ−β−L−フコピラノシド(58)

化合物57(18g,0.047mol)をメタノール(50mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシド/メタノールを加え、1時間攪拌した。反応終了後、イオン交換樹脂を加え中性に戻し、pH試験紙で確認後、ろ過をした。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物58(12g,0.047mol)を定量的に得た。TLC CHCl:メタノールt=4:1 Rf=0.49.
フェニル3,4−O−ベンジリデン−1−チオ−β−L−フコピラノシド(59)

化合物58(2.0g,5.9mmol)をDMF(7.0mL)に溶解させ、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(1.33mL,8.9mmol)とTsOH(112mg,0.59mmol)を加え、45℃で1時間攪拌した。反応終了後、トリエチルアミンで中和し、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し,化合物59(1.84g(a,b mixture),5.1mmol)を87%の収率で得た。
Compound 59a:TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.52.H−NMR(CDCl):δ7.54−7.26(10H,m,Ph x 2),6.19(1H,s,ベンジリデンメチン),5.17(1H,dd,J=6.8Hz,J=10.4Hz,H−2),4.67(1H,d,J=10.0Hz,H−1),4.48(1H,t,J=5.7Hz,H−4),4.11(1H,dd,J=2.9Hz,J=5.3Hz,H−3),3.87(1H,q,H−5),1.38(3H,d,J=6.5Hz,H−6).
Compound 59b:TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.49.H−NMR(CDCl):δ7.89−7.27(10H,m,Phx2),5.89(1H,s,ベンジリデンメチン),5.06(1H,dd,J=6.7Hz,J=10.0Hz,H−2),4.69(1H,d,J=10.1Hz,H−1),4.36(1H,t,J=6.3Hz,H−4),4.15(1H,dd,J=2.1Hz,J=5.8Hz,H−3),3.98(1H,q,H−5),1.38(3H,d,J=6.3Hz,H−6).
フェニル2−O−ベンジル−3,4−O−ベンジリデン−1−チオ−β−L−フコピラノシド(60)

化合物59(1.1g(a,b mixture),3.0mmol)をDMF(20mL)に溶解させ、BnBr(760μL,6.1mmol)を加え、氷冷しながらNaH(8.8mg,0.61mmol)を加え、1.5時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物60(783mg(a,b mixture),1.74mmol)を58%の収率で得た。
Compound 60a:H−NMR(CDCl):δ7.59−7.22(15H,m,Ph x 3),5.99(1H,s,ベンジリデンメチン),4.88,4.78(2H,each d,J=11.4Hz,ベンジルメチレン),4.67(1H,d,J=9.5Hz,H−1),4.55(1H,t,J=6.0Hz,H−4),4.07(1H,dd,J=9.5Hz,J=1.8Hz,H−3),3.77(1H,q,H−5),3.64(1H,dd,J=5.6Hz,J=9.8Hz,H−2),1.41(3H,d,J=6.7Hz,H−6).
Compound 60b:H−NMR(CDCl):δ7.58−7.22(15H,m,Ph x 3),5.89(1H,s,ベンジリデンメチン),4.73,4.56(2H,each d,J=11.4Hz,ベンジルメチレン),4.65(1H,d,J=10.1Hz,H−1),4.37(1H,t,J=5.8Hz,H−4),4.11(1H,dd,J=6.5Hz,J=2.5Hz,H−3),3.91(1H,q,H−5),3.52(1H,dd,J=5.6Hz,J=9.8Hz,H−2),1.46(3H,d,J=6.5Hz,H−6).
フェニル2,3−di−O−ベンジル−1−チオ−β−L−フコピラノシド(61)及びフェニル2,4−di−O−ベンジル−1−チオ−β−L−フコピラノシド(62)

化合物60(90mg(60a,b mixture),0.021mmol)をTHF(1.4mL)に溶解させ、MS3A(500mg)を加え、窒素気流下でNaBHCN/THF(110mL,0.17mmol)を加え、2時間攪拌し、HCl/ジエチルエーテル(5.0mL)を加えた。反応終了後、CHClで抽出し、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物61(45mg,0.01mmol,50%)、62(25mg,0.006mmol,27%)をで得た。
Compound 61:TLCヘキサン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.89.H−NMR(CDCl):δ7.59−7.15(20H,m,Ph x 4),4.85,4.75,4.70,4.61(6H,each,d,ベンジルメチレン x 2),4.61(1H,d,H−1),3.81(1H,t,H−4),3.69(1H,t,J2−3=9.24Hz,H−2),3.59−3.12(2H,m,H−3,H−5),1.36(3H,d,J6−5=6.3Hz,H−6),5.27(1H,s,OH).13C−NMR(CDCl):δ87.5(C−1),82.8(C−3),77.5(C−5),76.5(C−2),74.2(C−5),16.9(C−6).
Compound 62:H−NMR(CDCl):δ7.58−7.18(20H,m,Ph x 4),4.89,4.76,4.72,4.61(6H,each,d,ベンジルメチレン x 2),4.56(1H,d,J1,2=8.5Hz,H−1),3.70−3.63(2H,m,H−2,H−4),3.59−3.52(2H,m,H−3,H−5),1.36(3H,d,J6−5=6.3,H−6),5.26(1H,s,OH).13C−NMR(CDCl):δ87.1(C−1),79.3(C−3),77.9(C−5),76.0(C−2),74.5(C−5),16.6(C−6).
フェニル2−O−ベンジル−1−チオ−β−L−フコピラノシド(63)

化合物60(2.7g(mix),6.1mmol)を酢酸(80mL)に溶解させ、その後に水(20mL)を1滴ずつ加え、45℃で5時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl:メタノール=100:1)で精製し、化合物63(1.9g,5.6mmol)を91%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.22.
フェニル2,3−di−O−ベンジル−1−チオ−β−L−フコピラノシド(61)

化合物63(1.9g,5.6mmol)をトルエン(30mL)に溶解させ、BuSnO(1.66g,6.6mmol)を加え、3時間加熱還流した後、減圧濃縮した。得られた残渣をDMF(30mL)に溶かし、CsF 1.1g,6.6mmol)とBnBr(820μL,6.6mmol)を加え3時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、化合物61(1.9g,2.4mmol)を89%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.51.
フェニル2,3−di−O−ベンジル−4−O−スクシノイル−1−チオ−β−L−フコピラノシド(64)

化合物61(492mg,1.13mmol)をピリジン(5.0mL)、CHCl(5.0mL)に溶解させ、DMAP 278mg,2.25mmol)、無水コハク酸(225mg,2.25mmol)を加えて室温で12時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HClで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=2:1)で精製し、化合物64(556mg,1.02mmol)を92%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=2:1 Rf=0.32.H−NMR(CDCl):δ7.59−7.25(15H,m,Ph x 3),5.38(1H,d,H−4),4.63(1H,d,H−1),4.78,4.74,4.71,4.50(4H,each,d,J=10.6Hz,ベンジルメチレン x 2),3.70−3.31(3H,m,H−2,H−3,H−5),2.74(4H,m,COCCO),1.24(3H,d,J6−5=6.3Hz,H−6).13C−NMR(CDCl):177.5(CO),171.8(CO),87.4(C−1),70.2(C−4),16.8(C−6),81.1,76.3,71.8.

Lee,E.;Bruzzi,A.;O’Brien,E.;O’Colla,P.S.(1979)Carbohydr.Res.71,331−4.
Lopez,R.;Fernandez−Mayoralas,A.(1994)J.Org.Chem.59,737−45.
(4)ガラクトサミン誘導体の合成
フェニル2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(2)

化合物1(1.0g,2.6mmol)のCHCl(5ml)溶液にPhSH(0.2ml,2.6mmol)、SnCl(0.2ml,1.7mmol)を加え外温50℃で一晩還流した。室温に戻し酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチル抽出し、HOで洗いMgSOで脱水し溶媒留去した。得られた結晶を酢酸エチル−ヘキサンを用いて再結晶し化合物2(0.53g,46.9%)を得た。H NMR(CDCl):δ7.53−7.50(m,2H,aromatic−H),7.30−7.28(m,3H,aromatic−H),5.74(br.d,1H,J=9.2Hz,NH),5.38(d,1H,J=3.3Hz,H−4),5.23(dd,1H,J=3.3,10.7Hz,H−3),4.94(d,1H,J=10.5Hz,H−1),4.26−4.08(m,3H,H−2 and H−6),3.95(t,1H,J=6.5Hz,H−5),2.13,2.03,1.99,1.97(each 3H,s,COCH).13C NMR(CDCl):δ87.06(C−1),74.39(C−5),71.07(C−3),66.96(C−4),61.85(C−6),49.74(C−2),23.36,20.61(CH).
フェニル 2−アジド−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(3)

飽和水酸化バリウム水溶液(150ml)に化合物2(1.0g,2.4mmol)を加え外温120℃で24時間還流した後、COガスをbubblingしガラスフィルターろ過しろ液を溶媒留去した。残さをメタノール(50ml)に溶解し、DMAP(0.32g,2.6mmol),0.4M TfN CHCl溶液(15ml,0.6mmol)を加え窒素気流下2日間室温で撹拌し溶媒留去した。残さをシカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル20g)に付し、酢酸エチル溶出部より化合物3(0.92g,quant.in 2steps)を得た。H NMR(CDOD):δ7.59−7.55(m,2H,aromatic−H),7.33−7.26(m,3H,aromatic−H),4.51(d,1H,J=9.9Hz,H−1),3.85(br.s,1H,H−4),3.77(dd,1H,J=6.5,11.3Hz,H−6),3.70(dd,1H,J=5.0,11.3Hz,H−6),3.54−3.49(m,3H,H−2,3 and 5H).13C NMR(CDOD):δ88.12(C−1),80.64(C−3),75.22(C−5),69.72(C−4),64.52(C−2),62.74(C−6).
フェニル 2−アジド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(4)

化合物3(37mg,0.12mmol)のDMF(1ml)溶液にベンズアルデヒドジメチルアセタール(40μl,0.27mmol)CSA(ミクロスパーテル1杯)を加え外温60℃にて3時間撹拌した。氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に反応液を注ぎ、酢酸エチル抽出し、brineで洗い、MgSOで脱水し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル10g)に付し、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1溶出部より化合物4(47mg,97.6%)を得た。H NMR(CDCl):δ5.51(s,1H,CHPh),4.40(d,1H,J=9.8Hz,H−1),4.37(dd,1H,J=2.0,12.5Hz,H−6),4.15(d,1H,J=2.3Hz,H−4),4.00(dd,1H,J=1.8,12.6Hz,H−6),3.53(t,1H,J=9.3Hz,H−2).13C NMR(CDCl):δ101.31(CHPh),85.07(C−1),74.41(C−4),73.08(C−3 or C−5),69.82(C−3 or C−5),69.15(C−6),62.03(C−2).
フェニル 2−アジド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(5)

化合物4(0.38g,0.99mmol)のDMF(8ml)溶液に60%NaH(51mg,1.28mmol)を加え室温で1時間撹拌後PMBCl(150μl,1.1mmol)を加え室温で一晩撹拌した。氷を加えた後酢酸エチル抽出し、brineで洗いMgSOで脱水し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル10g)に付しn−ヘキサン:酢酸エチル=2:1溶出部より化合物5(0.35g,70.8%)、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1溶出部より化合物4(0.9g,23.1%)を得た。H NMR(CDCl)δ5.46(s,1H,CHPh),4.64(s,2H,ベンジルメチレン),4.39(d,1H,J=9.9Hz,H−1),4.35(dd,1H,J=1.5,12.2Hz,H−6),4.07(d,1H,J=3.3Hz,H−4),3.97(dd,1H,J=1.5,12.2Hz,H−6),3.80(t,1H,J=9.9Hz,H−2),3.80(s,3H,OCH),3.44(dd,1H,J=3.3,9.4Hz,H−3),3.37(br.s,1H,H−5).13C NMR(CDCl)δ101.06(CHPh),85.14(C−1),79.08(C−3),72.09(C−4),71.12(ベンジルメチレン),69.81(C−5),69.26(C−6),59.73(C−2),55.18(CH).
フェニル 2−アジド−2−デオキシ−3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(6)

化合物5(0.17g,0.30mmol)を90%酢酸水溶液に溶解し外温50℃で4時間撹拌し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル10g)に付し、トルエン:酢酸エチル=9:1溶出部より化合物5(0.13g,7.3%),トルエン:酢酸エチル=1:1溶出部より化合物6(0.10g,84.9%)を得た。H NMR(CDCl)δ4.63(s,2H,ベンジルメチレン),4.40(d,1H,J=10.1Hz,H−1),4.00(d,1H,J=1.9Hz,H−4),3.95(t,1H,J=5.8Hz,H−6),3.81(s,3H,CH),3.62(t,1H,J=9.9Hz,H−2),3.46(t,1H,J=5.4Hz,H−5),3.41(dd,1H,J=3.0,9.5Hz,H−3).13C NMR(CDCl)δ86.19(C−1),80.55(C−3),78.15(C−5),71.77(ベンジルメチレン),66.03(C−3),62.63(C−6),60.92(C−2).
フェニル 2−アジド−4,6−ジ−O−のベンジル−2−デオキシ−3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(7)

化合物6(0.19g,0.45mmol)のDMF(4ml)溶液に60%NaH(0.09g,2.2mmol)を加え室温で1時間撹拌後BnBr(260μl,2.2mmol)を加え室温で一晩撹拌した。氷を加え酢酸エチル希釈し、HO,brineで洗いMgSOで脱水し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル10g)に付しn−ヘキサン:酢酸エチル=4:1溶出部より化合物7(0.17g,63.4%)を得た。H NMR(CDCl)δ4.87(d,1H,J=11.4Hz,ベンジルメチレン),4.66−4.35(m,5H,ベンジルメチレン),4.39(d,1H,J=10.0Hz,H−1),3.90(d,1H,J=2.2Hz,H−4),3.81(t,1H,J=9.9Hz,H−2),3.77(s,3H,CH),3.64−6.61(m,2H,H−6),3.57−3.52(m,1H,H−5),3.39(dd,1H,J=2.7,9.8Hz,H−3).13C NMR(CDCl)δ86.31(C−1),82.05(C−3),77.32(C−5),74.32 73.50 and 71.99(ベンジルメチレン),72.13(C−4),68.48(C−6),61.40(C−2),55.19(CH).
フェニル 2−アジド−4,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(8)

化合物8(0.16g,0.27mmol)をCHCl−HO(19:1,2ml)に溶解し氷冷下DDQ(0.07g,0.32mmol)を加え室温で2時間撹拌し、セライトろ過し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル10g)に付しトルエン:酢酸エチル=9:1溶出部より化合物8(0.10g,80.7%)を得た。H NMR(CDCl)δ4.69(s,2H,ベンジルメチレン),4.55(d,1H,J=11.8Hz,ベンジルメチレン),4.48(d,1H,J=11.7Hz,ベンジルメチレン),4.42(d,1H,J=9.2Hz,H−1),3.88(d,1H,J=2.1Hz,H−4),3.73−3.66(m,3H),3.58−3.55(m,2H),2.24(br.s,1H,3−OH).13C NMR(CDCl)δ85.40(C−1),77.36(C−3 or C−5),75.25(C−4),74.30(C−3 or C−5),74.99 and 73.50(ベンジルメチレン),68.14(C−6),63.33(C−2).
フェニル 2−アジド−3−O−ベンジル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(9)

化合物4(0.58g,1.50mmol)のDMF(10ml)溶液に60%NaH(0.10g,2.4mmol)を加え室温で1時間撹拌後BnBr(0.26μl,2.1mmol)を加え室温で一晩撹拌した。氷を加えた後酢酸エチル抽出し、brineで洗いMgSOで脱水し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル20g)に付しn−ヘキサン:酢酸エチル=2:1溶出部より化合物9(0.55g,77.2%)を得た。H NMR(CDCl)δ5.43(s,1H,CHPh),4.68(s,2H,ベンジルメチレン),4.37(d,1H,J=10.0Hz,H−1),4.32(dd,1H,J=1.1,12.5Hz,H−6),4.06(d,1H,J=3.0Hz,H−4),3.93(dd,1H,J=1.5,12.5Hz,H−6),3.79(t,1H,J=9.8Hz,H−2),3.43(dd,1H,J=3.1,9.6Hz,H−3),3.33(d,1H,J=0.8Hz,H−5).13C NMR(CDC)δ101.03(CHPh),85.10(C−1),79.46(C−3),71.99(C−4),71.48(ベンジルメチレン),69.74(C−5),69.24(C−6),59.73(C−2)

Horton,D.;Rodemeyer,G.;Saeki,H.(1977)Carbohydr.Res.59,607−11.
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Mukaiyama,T.;Ikegai,K.;Jona,H.;Hashihayata,T.;Takeuchi,K.(2001)Chem.Lett.840−841.
(5)グルコース誘導体の合成
フェニル 4,6−O−ベンジリデン−3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(2)

化合物1(120mg,0.33mmol)のtoluene(4ml)溶液にBuSnO(85mg,0.34mmol)を加え窒素雰囲気下、外温150℃で3時間refluxし溶媒留去した。残さをDMF(3.3ml)に溶解しPMBCl(54μl,41mmol)、CsF(64mg,42mmol)を加え室温で一晩撹拌した。AcOEt抽出し、brineで洗いNaSOで脱水し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル11g)に付しToluene/AcOEt=20/1溶出部より化合物2(110mg,75%)を得た。
HNMR(CDCl)7.53−6.82(m,14H,Ph,SPh,PMB),5.55(s,1H,CHPh),4.87(d,1H,benzylmethlene),4.71(d,1H,benzylmethlene),4.61(1H,d,J1,2=9.7Hz,H−1),4.37(dd,1H,J5,6’=5.0Hz,J6.6’=10.5Hz,H−6’),3.79−3.75(m,4H,J6,6’=10.5Hz,H−6,CH),3.67−3.60(m,2H,H−3,H−4),3.50−3.46(m,2H,J1,2=9.7Hz,H−2,J5,6’=10.5Hz,H−5);13CNMR(CDCl)159.45,137.30,133.19,131.47,129.83,129.05,128.34,128.29,126.07,113.95(aromatic−C),101.29(CHPh),88.45(C−1),81.30,81.17,74.48(benzylmethylene),72.25(C−2),70.79(C−5),68.67(C−6),55.28(CH).
フェニル 3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(3)

化合物2(78mg,0.16mmol)の90%AcOH水溶液に溶解し外温50℃で3時間撹拌し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル10g)に付しToluene:AcOEt=1:1溶出部より化合物3(56mg,88%)を得た。
HNMR(CDOD)7.53−6.86(m,9H,SPh,PMB),4.85(d,1H,benzylmethlene),4.68(d,1H,benzylmethlene),4.45(1H,d,J1,2=9.7Hz,H−1),3.85−3.62(m,5H,H−6’,H−6,CH),3.33−3.26(m,4H,H−2,H−3,H−4,H−5),2.59(s,2H,OH);13CNMR(CDOD)132.71,130.73,129.86,128.31,114.57(aromatic−C),89.63(C−1),87.56,82.04,75.96,73.91,71.21,62.81(C−6),55.67(CH
フェニル 2,4,6−tri−O−ベンジル−3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(4)

化合物3(0.63mg,1.6mmol)のDMF(5ml)溶液に60%NaH(0.21mg,5.2mmol)を加え室温で1時間撹拌後BnBr(0.7ml,5.7mmol)を加え一晩撹拌した。氷を加えた後AcOEt抽出し、brineで洗いMgSOで脱水し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル40g)に付しAcOEt:Hex=1:5溶出部より化合物4(0.87mg,82%)を得た。
HNMR(CDCl)7.62−6.82(m,24H,Ph,SPh,PMB),4.92−4.52(m,9H),3.77(s,3H,CH)3.76−3.48(m,5H);13CNMR(CDCl)159.19,138.24,138.06,133.76,131.86,130.49,129.43,128.81,128.36,128.27,128.07,127.78,127.71,127.57,127.48,127.33,126.99,126.86,113.80(aromatic−C),87.35(C−1),86.40,80.79,79.03,76.82,76.53,75.45,75.29,74.92,73.32(benzylmethylene),68.97(C−6),55.17(CH
フェニル 2,4,6−tri−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(5)

化合物4(93mg,0.14mmol)をCHCl−HO(19:1,1ml)に溶解し氷冷下DDQ(34mg,0.15mmol)を加え室温で2時間撹拌した。セライトろ過し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル10g)に付しToluene:AcOEt=49:1溶出部より化合物5(68mg,89%)を得た。
HNMR(CDCl)7.58−7.15(m,20H,Ph,SPh),4.94−4.50(m,7H,H−1,benzylmethlene),3.85−3.68(m,3H,H−3,H−6,H−6’),3.56−3.48(m,2H,H−4,H−5),3.36(t,1H,J2,3=J3,4=9.0Hz,H−3);13CNMR(CDCl)138.20,138.06,133.80,131.73,131.61,128.99,128.86,128.73,128.54,128.43,128.28,128.16,127.98,127.89,127.78,127.66,127.53,127.37(aromatic−C),87.01(C−1),80.58(C−2),78.76,78.58(C−3),77.34,75.04,74.56,73.37(benzylmethylene),69.04(C−6)

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Mukaiyama,T.;Chiba,H.;Funasaka,S.(2002)Chem.Lett.392−393.
(6)グルコサミン誘導体の合成
フェニル 2−アジド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(2)

化合物1(90mg,0.23mmol)のDMF(2.5ml)溶液に60%NaH(18mg,0.30mmol)を加え室温で1時間撹拌後PMBCl(38μl,0.28mmol)を加え1時間撹拌した。氷を加えた後酢酸エチル抽出し、brineで洗いNaSOで脱水し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル70g)に付しトルエン溶出部より化合物2(98mg,83%)を得た。
化合物2:H NMR(CDCl)δ7.56−7.25(m,14H,Ph,SPh,PMB),5.56(s,1H,CHPh),4.83(d,1H,ベンジルメチレン),4.72(d,1H,ベンジルメチレン),4.47(1H,d,J1,2=10.2Hz,H−1),4.38(dd,1H,J5,6’=5.0Hz,J6,6’=10.5Hz,H−6’),3.80−3.76(m,4H,J6,6’=10.5Hz,H−6,CH),3.65−3.59(m,2H,H−3,H−4),3.45(m,1H,H−5),3.34(dd,1H,J1,2=10.2Hz,J2,3=8.7Hz,H−2).13CNMR(CDCl)δ159.54,137.13,133.97,130.63,130.06,129.70,129.13,128.75,128.32,126.00,113.89(aromatic−C),101.30(CHPh),86.61(C−1),81.34(C−3),80.58(C−4),74.85(ベンジルメチレン),70.55(C−5),68.53(C−6),64.67(C−2),55.28(CH).
フェニル 2−アジド−2−デオキシ−3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(3)

化合物2(0.21g,0.42mmol)の90%水溶液に溶解し外温50℃で3時間撹拌し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル18g)に付しトルエン:酢酸エチル=1:1溶出部より化合物3(0.12g,67%)を得た。
化合物3:H NMR(CDCl)δ7.53−6.86(m,9H,SPh,PMB),4.85(d,1H,ベンジルメチレン),4.68(d,1H,ベンジルメチレン),4.45(1H,d,J1,2=9.7Hz,H−1),3.85−3.62(m,5H,H−6’,H−6,CH),3.51(t,1H,H−3),3.33−3.26(m,3H,H−2,H−4,H−5),2.59(s,2H,OH).13C NMR(CDCl)δ159.54,133.16,131.26,129.82,129.80,129.07,128.40,114.08(aromatic−C),86.34(C−1),84.26(C−5),79.40(C−4),75.05(ベンジルメチレン),70.08(C−3),64.85(C−2),62.25(C−6),55.22(CH).
フェニル 2−アジド−4,6−di−O−ベンジル−2−デオキシ−3−O−p−メトキシベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(4)

化合物3(91mg,0.22mmol)のDMF(2.2ml)溶液に60%NaH(34mg,0.56mmol)を加え室温で1時間撹拌後BnBr(61μl,0.52mmol)を加え3時間撹拌した。氷を加えた後酢酸エチル抽出し、brineで洗いNaSOで脱水し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル12g)に付しトルエン溶出部より化合物4(100mg,81%)を得た。
化合物4:H NMR(CDCl)δ7.60−6.82(m,19H,Ph,SPh,PMB),4.81−4.51(m,6H,ベンジル methlene),4.40(1H,d,J1,2=10.1Hz,H−1),3.77−3.71(m,5H,H−6,H−6’,CH),3.58(m,1H,J2,3=J3,4=9.4Hz,H−3),3.51−3.44(m,2H,J3,4=9.4Hz,H−4,H−5),3.32(dd,1H,J1,2=10.1Hz,J2,3=9.4Hz,H−2).13C NMR(CDCl)δ159.55,138.30,138.02,133.70,131.27,129.96,129.87,129.02,128.51,128.41,128.38,127.90,127.82,127.64,127.60,114.00(aromatic−C),85.95(C−1),84.80(C−4),79.44(C−5),77.37(C−3),75.57,75.03,73.48(ベンジル メチレン),68.84(C−2),65.14(C−6),55.30(CH).
フェニル 2−アジド−4,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(5)

化合物4(0.10g,0.12mmol)をCHCl−HO(19:1,1.8ml)に溶解し氷冷下DDQ(0.05mg,0.20mmol)を加え室温で4時間撹拌した。セライトろ過し溶媒留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル10g)に付しトルエン溶出部より化合物5(0.05g,58%)を得た。
化合物5:H NMR(CDCl)δ7.61−7.22(m,15H,Ph,SPh),4.71−4.55(d,4H,ベンジルメチレン),4.44(1H,d,J1,2=10.1Hz,H−1),3.80(dd,1H,J5,6’=2.0Hz,J6,6’=11.0Hz,H−6’),3.76(dd,1H,J5,6=4.0Hz,J6,6’=11.0Hz,H−6),3.59(t,1H,H−3),3.51(t,1H,H−4),3.45(m,1H,H−5),3.28(dd,1H,J1,2=10.1Hz,H−2).13C NMR(CDCl)δ138.15,137.98,133.39,131.49,128.40,128.29,128.12,128.00,127.65(aromatic−C),86.10(C−1),79.11(C−5),77.34(C−3),77.26(C−4),73.53(ベンジルメチレン),68.81(C−6),65.00(C−2).

Benakli,K.;Zha,C.;Kerns,R.J.(2001)J.Am.Chem.Soc.123,9461−9462.
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(7)フェニル 2,3−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(70)

化合物68(1.9g,3.3mmol)を酢酸(120mL)に溶解させ、その後に水(24mL)を1滴ずつ加え、45℃で4時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl:メタノール=200:1)で精製し,化合物70(1.3g,2.7mmol)を81%の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=1:1 Rf=0.20.H NMR(CDCl):δ7.52−7.26(15H,m,Ph x 3),4.97−4.69(5H,m,H−1,ベンジルメチレン x 2),3.91(1H,dd,J=2.9Hz,J=7.8Hz,H−6a),3.76(1H,t,J=6.7Hz,H−4),3.59(1H,t,H−6b),3.53(1H,t,J=6.7Hz,H−3),3.48(1H,t,J=8.1Hz,H−2),3.34(1H,q,H−5).
フェニル 2,3−ジ−O−のベンジル−6−O−トリチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(71)

化合物70(696mg,1.5mmol)をピリジン(6.0mL)に溶解させ、TrCl(858mg,3.1mmol)とDMAP(188mg,1.5mmol)を加え、55℃で12時間攪拌した。反応終了後、メタノールを加え、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製し、化合物71(1.24g,2.2mmol)を72%に得た。TLCヘキサン:酢酸エチル=3:1 Rf=0.49.H NMR(CDCl):δ7.66−7.21(30H,m,Ph x 6),4.98,4.88,4.76,4.74(4H,each d,J=10.8Hz,ベンジルメチレン x 2),4.68(1H,d,J=7.7Hz,H−1),3.65(1H,t,),3.48(1H,t,J=7.7Hz,H−2),3.41(1H,dd,J=3.4Hz,H−6a),3.41−3.18(4H,m,−3,H−4,H−5,H−6b).
フェニル 4−O−クロロアセチル−2,3−di−O−ベンジル−1−チオ−β−D−glucopyranoside(72)

化合物71(550mg,0.97mmol)をCHCl(7.2mL)、ピリジン(0.4mL)に溶解させ、氷冷下でクロロアセチルクロライド(154mL,1.94mmol)を加え、12時間撹拌した。その後、メタノール(3.0mL)加えて反応を終了させ、CHClで抽出し、HCl、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。得られた残渣をCHCl(5.0mL)、メタノール(2.5mL)に溶解させ、TsOH(33mg,0.17mmol)を加え室温で3時間攪拌した。反応終了後、トリエチルアミンで中性に戻し、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=6:1)で精製し、化合物72(440mg,0.78mmol)を88%(2steps)の収率で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.51.H NMR(CDCl):δ7.55−7.22(15H,m,Ph x 3),5.00(1H,t,J=9.7Hz,H−4),4.68(1H,d,J1,2=8.0Hz,H−1),4.87,4.83,4.75,4.65(4H,each d,J=11.2Hz,ベンジルメチレン x 2),3.79−3.58(5H,m,H−3,H−6a,H−6b,−OCCl),3.53(1H,t,H−2),3.42(1H,q,H−5).
メチル(フェニル 4−O−クロロアセチル−2,3−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド)ウロネート(73)

化合物72(390mg,0.74mmol)をアセトン(10mL)に溶解させ、KCr(409mg,1.39mmol)、3.5M HSO(1.6mL)を加えて、55℃で1時間撹拌した後、CHClで抽出、MgSOで脱水し、減圧濃縮した。この残渣をHCl−メタノール(20mL)に溶解させ、室温で2時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=7:1)で精製し、化合物73(474mg,0.49mmol)を66%で得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.80.H NMR(CDCl):δ7.61−7.22(15H,m,Ph x 3),5.18(1H,t,J=9.6Hz,H−4),4.70 1H,d,H−1),4.90,4.83,4.72,4.64(4H,each d,J=11.4Hz,ベンジルメチレン x 2),3.93(1H,d,J=9.8Hz,−OCCl),3.85−3.71(3H,m,H−4,H−5,−OCCl),3.74(3H,s,OMe),3.68(1H,t,J=9.6Hz,H−3),3.58(1H,t,J=9.7Hz,H−2).
メチル(フェニル 2,3−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド)ウロネート(74)

化合物73(500mg,0.92mmol)をピリジン(10.3mL)、エタノール(1.7mL)に溶解させ、チオ尿素(70.2mg,9.2mmol)を加えて、80℃で1時間撹拌した。反応終了後、CHClで抽出し、HCl、NaHCOで洗浄、MgSOで脱水した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=3:1)で精製し、化合物74(420mg,0.92mmol)を定量的に得た。TLCトルエン:酢酸エチル=4:1 Rf=0.58.H NMR(CDCl):δ7.58−7.24(15H,m,Ph x 3),4.70(1H,d,H−1),4.89,4.83,4.72,4.66(4H,each d,J=11.2Hz,ベンジルメチレン x 2),3.87(1H,H−4),3.80(3H,s,OMe),3.57(1H,t,J=8.7Hz,H−3),3.51(1H,t,J=9.3Hz,H−2),3.02(1H,d,H−5).13C NMR(CDCl):δ169.5(C−6),88.4(C−1),85.2(C−3),79.5(C−2),77.2(C−5),71.8(C−4),52.8(O).

Trumtel,M.;Tavecchia,P.;Veyrieres,A,;Sinay,P.(1990)Carbohydr.Res.202,257−75.
実施例2:拡散混合固相反応
本発明においては、必要かつ最小限の液量で樹脂を膨潤させて反応を行うことを特徴としている。樹脂を膨潤させるための液量については、前記表1等を参考にした。かつ、実際に秤量した一定量の樹脂に、これに使用する溶媒を滴下して樹脂ビーズ間の摩擦力が低下し「液状化」現象が生じる液量を確認し、決定した。
(1)アミノレジンへのカルボン酸化合物の導入(アミド化反応)
樹脂に結合したマンノシル供与体の拡散混合固相反応法による合成

フェニル 2,3,6−トリ−O−ベンジル−4−O−スクシノイル−1−チオ−β−D−マンノピラノシド(295mg,0.46mmol)、DIPC(108μL,0.69mmol)、HOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール)(74.5mg,0.55mmol)を溶解したCHCl(5.0ml)をNovaSyn amino TG resin(511mg,15.0μmol loading)に加え、室温で14時間放置した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、DMF、CHClで洗浄し、減圧乾固した。同一行程を2回繰り返し樹脂を減圧乾固した。AcO(3.0mL)、ピリジン(3.0mL)を加え室温で12時間放置した後、CHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固することでキャッピングを行い樹脂(530mg)を得た。
FT−IR(ATR):cm−1 1739.4(OC=O),1671.9(NHC=O).
収率の算出は、切り出し反応を行って決定した。樹脂(49.0mg)をとりだし、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)で膨潤させ、0.5Mナトリウムメトキシド−メタノール(0.1mL)を加え室温で1時間放置した。その後、Amberlite IR 120Bで中和し、吸引ろ過したろ液を減圧濃縮することでフェニル 1−チオ−2,3,6−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド(4.8mg,7.7μmol,62%)を得た。
樹脂に結合したフコシル供与体の拡散混合固相反応法による合成

フェニル 2,3−ジ−O−ベンジル−4−O−スクシノイル−1−チオ−β−L−フコピラノシド(316mg,0.59mmol)、DIPC(138μL,0.88mmol)、HOBt(96mg,0.71mmol)を溶解したDMF(6.0ml)をNovaSyn amino TG resin(982mg,0.29mmol loading)に加え、室温で48時間放置した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。AcO(3.0mL)、ピリジン(3.0mL)を加え室温で12時間放置した後、CHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固することでキャッピングを行い樹脂(1.05g)が得られた。
FT−IR(ATR):cm−1 1739.4(OC=O),1671.9(NHC=O).
収率の算出は、切り出し反応を行って決定した。樹脂(30.0mg)を、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)で膨潤させ、0.5Mナトリウムメトキシド−メタノール(0.1mL)を加え、室温で2時間放置し、その後、Amberlite IR 120Bで中和し、吸引ろ過したろ液を減圧濃縮し、フェニル 2,3−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−L−フコピラノシド(3.0mg,6.9μmol,85%)を得た。
(2)固相上でのチオグリコシド体のフルオリド体への拡散混合固相反応法による変換反応
樹脂に結合したL−フコピラノシルフルオライド

DAST(26mL,0.19mmol)、NBS(35mg,0.19mmol)をCCl(1.5mL)に溶解し、樹脂の結合したフェニルチオ−L−フコピラノシド(300mg,35mg:fuc)に−15℃で加え1時間放置した後、1時間かけて0℃まで温度をあげ、0℃で8時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5Mナトリウムメトキシド(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
FT−IR(ATR):cm−1 1737.5(OC=O),1673.9(NHC=O),1041.4(C−F).
(3)固相上でのグリコシルフルオリドの活性化によるグリコシル化反応
樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→6)−フェニル−2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−チオ−α−D−ガラクトピラノシド

フェニル 2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(24.0mg,44μmol)をEtCN(0.25mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。別にAgOTf(33.8mg,0.132mmol)をCHCl(0.25mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した後、これにCpHfCl(25mg,0.066mmol)を加え5分間攪拌した。これらを−15℃で樹脂に結合したL−フコピラノシルフルオライド(100mg,9.8mg:Fuc)に加え、反応温度を10℃まで徐々に上げた。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5M NaOMe(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
FT−IR(ATR):cm−1 1737.5(OC=O),1673.9(NHC=O).
MALDI−TOFMS:Calcd for C3336:m/z 868.3 Found:m/z 891[M+Na]
反応温度を−15℃から10℃へと徐々に変化させた場合の反応を行い、昇温率について検討した。結果を表2と図6〜図8に示す。

その結果、MALDI−TOFMSの解析結果(図6〜図8)から、8.3℃/hでは脱離物(Fw:316)が僅かに存在していたのに対し、昇温率を下げるとグリコシル化反応が優先的に進行することが判明した。グリコシルフルオリドの活性化によるグリコシル化反応においては、このような昇温率を用いることができる。
(4)固相上でのチオグリコシドの活性化によるグリコシル化反応
樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→6)−2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド

2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド(23.0mg,51.6μmol)をCHCl(0.25mL)、EtCN(0.25mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した後、0℃でMeSSMe(6.9μL,77.2μmol)、MeOTf(8.7μL,77.2μmol)を加え、10分間撹拌した。この溶液を−15℃で樹脂に結合したL−フコピラノシド(88mg,14mg:Fuc)に加え、10℃まで徐々に加温した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5M NaOMe(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
FT−IR(ATR):cm−1 1735.6(OC=O),1671.9(NHC=O),1029.8(C−F),636.9.
MALDI−TOFMS:Calcd for C4751FO:m/z 778.9 Found:m/z 802.5[M+Na]
これまでチオグリコシドの活性化によるグリコシル化反応を固相上で行う際、供与体1.0に対してDMTSTを8.0当量加えていた。しかし同様の反応を液相で行った場合ではDMTSTは2.0当量で充分であることから、8.0当量以下でも反応が進行するのではないかと考えた。そこで今回、樹脂による立体的な影響を考慮して供与体に対しDMTSTの当量を3.0に固定し、グリコシル化反応の検討を行った。反応温度を−15℃から10℃へと徐々にした場合の反応について、昇温率について検討した(表3及び図9〜図11)。質量分析データの解析結果(図9〜図11)から、チオグリコシドのDMTSTによる活性化においては、昇温率が大きい場合においても副反応は進行せず、生成物量は時間に依存することが判明した。3.0当量のDMTSTを用いた場合、反応時間が本実験では不十分であったが、少なくとも糖供与体であるチオグリコシドが糖受容体であるフッ化グリコシルの存在下選択的に活性化されることが示された。また、オルトゴナルグリコシル化反応に用いることができることが明確に示された。また、反応時間に関しては、より過剰のDMTSTの添加により達成する、あるいは、さらに強力なプロモーター(例えばNIS−TfOH)の使用により克服できる。

(5)拡散混合固相反応法を基礎とするグリコシル化反応における反応剤の導入順序
(方法1)供与体が結合した樹脂を受容体とプロモーターの混液により膨潤する方法
樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→6)−2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド
2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド(16.8mg,0.04mmol)をCCl(0.2mL)、EtCN(0.2mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した後、0℃でMeSSMe(13.4μL,0.15mmol)、MeOTf(16.9μL,0.15mmol)を加え、10分間撹拌した。この溶液部を0℃で樹脂に結合したフェニルチオ−L−フコピラノシド(79mg,10mg:Fuc)に加え、12時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5Mナトリウムメトキシド(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
FT−IR(ATR):cm−1 1735.6(OC=O),1671.9(NHC=O),1029.8(C−F),636.9.
MALDI−TOFMS:Calcd for C4751FO:m/z 778.9 Found:m/z 802.5[M+Na]
このグリコシル化反応の追跡結果は図12の通りであり、8当量のDMTSTを用いた場合6時間で反応が完結し、収率も満足のいくものであった。
(方法2)供与体が結合した樹脂を受容体溶液で膨潤しプロモーターを加える方法
樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→6)−2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド

2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド(77.0mg,0.14mmol)をCCl(0.5mL)、EtCN(0.5mL)に溶解し、MS4A(200mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した後、溶液部(上清)を樹脂に結合したフェニルチオ−L−フコピラノシド(340mg,46mg:Fuc)をCHCl(0.5mL)、EtCN(0.5mL)で膨潤させた懸濁液に加えた。ここに0℃でMeSSMe(61.7μL,0.56mmol)、MeOTf(77.7μL,0.56mmol)を加え、12時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5M NaOMe(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
このグリコシル化反応の追跡結果は図13の通りであり、方法1の場合との相違点はプロモーターを同時に加えるか別途加えるかのみであるが、反応には12時間を要した。
方法1および方法2の反応時間の差は、反応剤を順序立てて加えることによる2番目以降の反応剤が添加点から全体に拡散するのに要した時間と解釈できる。
これらの実験結果より、マイクロチャンネル(樹脂内部の細孔)内で進行する固相反応の性質上、可能な限り全ての反応剤は1つの溶液として樹脂に加え膨潤するのが良い。また、反応剤のみの混合を避ける必要がある場合には、別々に加えることもできる。
この2つの方法の検討結果、方法1、2共に同様に有効であることが判明した。従って、反応剤を予め混合すると反応する場合には、順次反応剤を加える方法1を、反応剤の混合が可能な場合には方法2を用いることができる。
(6)本発明の拡散による固相反応方法と従来の固相反応方法の比較
本発明の拡散固相反応方法の有用性を確認するため、拡散によらない攪拌等の外的な力を利用した従来法との比較を行った。
それぞれの反応方法においては、比較のために濃度条件と撹拌の有無意外の条件を同一にした。また、あえて反応が完結する前に反応を止めて収率を比較した。本発明の方法(拡散固相反応方法)においては、樹脂の膨潤に必要最低限の量の溶媒を用いて撹拌などを一切行わず静置した。一方、従来法(撹拌を行う固相反応方法)では同量の溶媒では撹拌することができないので、使用した試薬量を同一とし、溶液量は倍とした。
Octyl 2,3−Di−O−benzyl−α,β−L−fucopyranoside

MeSSMe(9.2μL,101μmol)に窒素雰囲気下、MeOTf(11.6μL,101μmol)を加え室温で5分間攪拌した。これにDCE(300μL)、MeCN(300μL)を加え、0.169M−DMTSTストック溶液を調製した。次にこの溶液にAcceptor:1−Octanol(10.4μL,65.4μmol)を加え、0.109M−Acceptor/0.169M−DMTSTストック溶液を調製した。
[拡散固相反応方法]
0.109M−Acceptor/0.169M−DMTSTストック溶液(200μL,Acceptor:21.8μmol,DMTST:33.8μmol)をResin−bound−Phenyl−1−thio−L−fucopyranoside(40.5mg,11.2μmol)に窒素雰囲気下、−30℃で加え、15分間膨潤反応させた。反応終了後、樹脂をDCM、DMF、DCMで洗浄した。次に樹脂にsat.NaOMe−MeOH/THF=1/4(200μL)で室温、1時間放置することで固相から切り出し、DCMで洗浄後、減圧乾燥し、得られた残渣をH NMRで観測した。
[撹拌を行う固相反応方法(従来法)]
0.109M−Acceptor/0.169M−DMTSTストック溶液をDCE/MeCN=1/1溶液で倍希釈し、0.055M−Acceptor/0.085M−DMTSTストック溶液とし、この溶液(400μL,Acceptor:22μmol,DMTST:34μmol)をResin−bound−Phenyl−1−thio−L−fucopyranoside(40.4mg,11.2μmol)に窒素雰囲気下、−30℃で加え、15分間攪拌反応させた。以下、上記拡散固相反応方法と同様に行った。

H NMRより、4.32pm,1.35ppm付近のダブレットは主生成物のOctyl β−fucopyranoside、4.28ppm,1.18ppm付近のダブレットは副生成物のFucose−dimerである。Fucose−dimerは反応後処理の際に混入した水による加水分解物であり、また原料であるPhenyl β−fucopyranosideは完全に消失している。これより原料由来である生成物はOctyl β−fucopyranosideとFucose−dimerであるので、反応の進行度は、主生成物のOctyl β−fucopyranosideと原料由来物との比により計算できる。
本発明の拡散固相反応方法: 1.00/(1.00+0.61)=62.1%
撹拌を行う固相反応方法(従来法): 1.00/(1.00+1.30)=43.5%
この結果より、本発明の拡散固相反応方法の方が従来法よりも明らかに有利であることがわかった。すなわち、結果より、本発明の方法の方が反応が143%早いことが示された。これは、同じ試薬量で反応を行おうとする場合、必要最低限の量で攪拌等を行わずに静置して反応を行えば、非常に効率的に反応が行えることを意味している。また、もし濃度を同一とする場合には、従来法では本発明の方法の2倍の試薬が必要になり、非効率である。さらに、本発明の方法では撹拌が不要であることから、固相である樹脂を静置しておく反応容器の他は特別な装置等も不要である。
これらのことから、本発明の拡散固相反応法が非常に効率的な方法であることが示された。
実施例3:オルトゴナルグリコシル化法に基づく拡散混合固相反応法による糖鎖の合成
(1)チオグリコシドの活性化による二糖の合成
樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→2)−3,4,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド

3,4,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド(35.3mg,0.08mmol)をCCl(0.45mL)、EtCN(0.45mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した後、0℃でMeSSMe(27.0μL,0.30mmol)、MeOTf(34.0μL,0.30mmol)を加え、10分間撹拌した。この溶液部を0℃で樹脂に結合したフェニルチオ−L−フコピラノシド(169mg,20mg:Fuc)に加え、12時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5Mナトリウムメトキシド(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
FT−IR(ATR):cm−1 1735.6(OC=O),1671.9(NHC=O),1029.8(C−F),636.4.
MALDI−TOFMS:Calcd for C4751FO:m/z 778.9 Found:m/z 802.5[M+Na]
(図14)
(2)チオグリコシドの活性化による二糖の合成
樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→3)−2,4,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド

2,4,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド(35.0mg,0.08mmol)をCHCl(0.45mL)、EtCN(0.45mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した後、0℃でMeSSMe(27.0μL,0.30mmol)、MeOTf(34.0μL,0.30mmol)を加え、10分間撹拌した。この溶液部を0℃で樹脂に結合したフェニルチオ−L−フコピラノシド(169mg,20mg:Fuc)に加え、12時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5M NaOMe(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
FT−IR(ATR):cm−1 1735.6(OC=O),1671.9(NHC=O),1029.8(C−F),636.4.
MALDI−TOFMS:Calcd for C4751FO:m/z 778.9 Found:m/z 802.5[M+Na]
(図15)
(3)チオグリコシドの活性化による二糖の合成
樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→4)−2,3,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド

2,3,6−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド(34.8mg,0.08mmol)をCHCl(0.45mL)、EtCN(0.45mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した後、0℃でMeSSMe(27.0μL,0.30mmol)、MeOTf(34.0μL,0.30mmol)を加え、10分間撹拌した。この溶液部を0℃で樹脂に結合したフェニルチオ−L−フコピラノシド(169mg,20mg:Fuc)に加え、12時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5Mナトリウムメトキシド(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
FT−IR(ATR):cm−1 1735.6(OC=O),1671.9(NHC=O),1029.8(C−F),636.3.
MALDI−TOFMS:Calcd for C4751FO:m/z 778.9 Found:m/z 802.5[M+Na]
(図16)
(4)チオグリコシドの活性化による二糖の合成
樹脂に結合した2,3−ジ−O−ベンジル−L−フコピラノシル−(1→6)−2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド

2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルフルオライド(34.6mg,0.08mmol)をCHCl(0.45mL)、EtCN(0.45mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した後、0℃でMeSSMe(27.0μL,0.30mmol)、MeOTf(34.0μL,0.30mmol)を加え、10分間撹拌した。この溶液部を0℃で樹脂に結合したフェニルチオ−L−フコピラノシド(169mg,20mg:Fuc)に加え、12時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5Mナトリウムメトキシド(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
FT−IR(ATR):cm−1 1735.6(OC=O),1671.9(NHC=O),1029.8(C−F),636.9.
MALDI−TOFMS:Calcd for C4751FO:m/z 778.9 Found:m/z 802.5[M+Na]
(図17)
(5)固相上での三糖誘導体の合成
フェニル 2,3,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(41.0mg,0.074mmol)をEtCN(0.45mL)に溶解し、MS4A(20mg)を加え窒素気流下、室温で3時間撹拌した(A液)。別にAgOTf(57.0mg,0.222mmol)、MS4A(20mg)をCHCl(0.45mL)に加え窒素気流下、室温で3時間撹拌した後、0℃でCpHfCl(42.0mg,0.111mmol)を加え、5分間撹拌した(B液)。調製したA、B液を合し窒素気流下、−15℃で樹脂に結合したジサッカライド(169mg,0.037mmol)に加え、6時間かけて10℃まで上昇させた後、3時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5Mナトリウムメトキシド(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、EtCN、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
今回、先に合成した4種類の化合物について同様の操作を行った。それぞれのスキームとMALDI−TOFMSのチャートを以下及び図18から21に示す。

MALDI−TOFMS:Calcd for C808414S:m/z 1301.6 Found:m/z 1325.6[M+Na]
(図18)

MALDI−TOFMS:Calcd for C808414S:m/z 1301.6 Found:m/z 1325.6[M+Na]
(図19)

MALDI−TOFMS:Calcd for C808414S:m/z 1301.6 Found:m/z 1326.3[M+Na]
(図20)

MALDI−TOFMS:Calcd for C808414S:m/z 1301.6 Found:m/z 1325.6[M+Na]
(図21)
図18から図21のMALDI−TOFMSのチャートより、4種類の反応全てにおいて目的化合物由来の擬親ピークが確認されたことでグリコシル化反応が進行したことが明らかである。反応温度勾配を一定とし、最終到達温度を10℃高く設定することで反応を完結することができる。
1−オクタノール(92.8μL,0.30mmol)をCHCl(0.45mL)、EtCN(0.45mL)に溶解させ、MS4A(20mg)を加え窒素気流下、室温で3時間撹拌した後、0℃でMeSSMe(26.6μL,0.30mmol)、MeOTf(33.5μL,0.30mmol)を加え、10分間撹拌した。この溶液を−15℃で樹脂に結合したトリサッカライド(169mg,20mg:Fuc)に加え、6.5時間かけて20℃まで上昇させた後、8時間放置した。反応の進行は樹脂を一部取りだし、IRで測定後、CHCl(0.5mL)、メタノール(0.5mL)に加え、0.5M NaOMe(10μL)を滴下して室温で1時間放置することで固相から切り出し、これをTLC及びMALDI−TOFMSで観測した。反応終了後、樹脂をCHCl、メタノール、CHClで洗浄し、減圧乾固した。
今回、既に合成した4種類の三糖誘導体について同様の操作を行った。それぞれのスキームとMALDI−TOFMSのチャートを以下に示す。

MALDI−TOFMS:Calcd for C829515:m/z 1320.7 Found:m/z 1343.8[M+Na]
(図22)
MALDI−TOFMS:Calcd for C829515:m/z 1320.7 Found:m/z 1343.8[M+Na]
(図23)
MALDI−TOFMS:Calcd for C829515:m/z 1320.7 Found:m/z 1343.8[M+Na]
(図24)
MALDI−TOFMS:Calcd for C829515:m/z 1320.7 Found:m/z 1343.8[M+Na]
(図25)
図22から図25のMALDI−TOFMSのチャートより、4種類とも目的化合物由来のピーク(FW:1301)が確認されたことでグリコシル化反応が進行したことが明らかとなった。しかし、1367、912、694、480付近に副生成物と考えられるピークが多く見られることから更なる条件の最適化が必要とされる。
実施例4:オルトゴナルグリコシル化法に基づく拡散混合固相反応法による糖鎖ライブラリーの合成
実施例1から3の結果を用いれば、糖鎖ライブラリーの合成が可能である。
すなわち、適当に保護された生体を構成する9種の主立った単糖(実施例1)は、糖鎖ライブラリーの化学合成を達成するために必須である。さらに、糖鎖合成においてグリコシル化反応における立体制御は極めて困難な問題であり、ライブラリー合成において全てのグリコシル化反応を制御することは不可能である。従って、糖鎖ライブラリーの構築にあっては立体非選択の方法論が適している。このために、保護単糖の2位は隣接気関与の無い置換基とすることが望ましい。本実施例では、このように設計された保護単糖を安定なチオグリコシドとして合成し、必要に応じてグリコシルフルオリドへと変換可能とした。
このような単糖誘導体を用い、任意の組み合わせで反応することにより糖鎖ライブラリーが合成可能である。ライブラリー合成を行うためには適当な固相合成法が必要であるが、その1つが本発明の拡散混合による固相反応方法を利用した固相合成法である(実施例2)。本法によれば、固相反応の場である樹脂の膨潤に必要最低限の量の溶媒に反応剤を溶解し、この溶液で樹脂を膨潤することにより、反応の場である細孔内部へのすみやかな反応剤の導入を達成し、また、拡散に基づいて反応が進行するため撹拌等の物理的手段による装置からも解放されることを示した。
固相におけるオルトゴナルグリコシル化法は、糖鎖の固相合成を最短行程で達成する方法である。実施例3においては、上記実施例2でその有用性が示された拡散による固相反応方法を用いて、このオルトゴナルグリコシル化反応を行い、良好な結果を得た。
特に、実施例2および3においては、拡散混合固相反応法および固相オルトゴナルグリコシル化法を実証するのみならず、(α/β)Fuc(1−2/3/4/6)(α/β)Gal(1−4)(α/β)Glc−Octylのライブラリー合成(2x4x2x2=32)をも同時に達成した。これらの結果より、本発明の方法によれば、さらに大きなライブラリーの合成が可能であることが示された。

【産業上の利用可能性】
本発明によりヌクレオチド、ペプチド、糖鎖に代表される生体分子を効率良く化学合成する方法が提供される。昇温率を制御して反応系の温度を変化させることにより高効率で糖鎖の固相合成を行うことのできる本発明の糖鎖固相合成方法と、固相反応を少量の溶媒で効率良く行うことができる拡散による固相反応方法は、いずれも前記生体分子の化学合成に有用であり、コンビナトリアルケミストリー等においては特に有用である。また、従来合成を制御することが難しく市販の合成装置の無い糖鎖の合成には特に有用である。
本出願は、2003年6月30日付の日本特許出願(特願2003−187878)に基づく優先権を主張する出願であり、その内容は本明細書中に参照として取り込まれる。また、本明細書にて引用した文献の内容も本明細書中に参照として取り込まれる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の単糖ユニットを含む少なくとも1以上の糖鎖合成反応系において複数種の糖鎖を合成する糖鎖固相合成方法において、該糖鎖合成反応系の温度を、反応系中の副反応を低下させることを指標として決定した昇温率に従って変化させることを特徴とする、糖鎖固相合成方法。
【請求項2】
糖鎖固相合成方法が以下の工程を含む、請求項1に記載の糖鎖固相合成方法。
(a)下記式(1):
P−L−O−A−X (1)
(式中、Pは固相を示し、Lはリンカーを示し、Oは単糖の非還元末端の酸素原子を示し、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、Xは脱離基Yの活性化条件下で安定な脱離基を示す。)
の単糖ユニットに、下記式(2):
HO−A−Y (2)
(式中、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、Yは脱離基Xの活性化条件下で安定な脱離基を示す。)
の単糖ユニットを脱離基Xの活性化条件下で反応させて、下記式(3):
P−L−O−A−O−A−Y (3)
の糖類を得る工程:及び
(b)上記工程(a)で得た式(3)の糖類に、下記式(4):
HO−A−X’ (4)
(式中、Aは反応に関与しない水酸基が保護基で保護された単糖骨格を示し、X’は脱離基Yの活性化条件下で安定な脱離基あるいは1位の水酸基または保護基を示す。)
の単糖ユニットを脱離基Yの活性化条件下で反応させて、式(5):
P−L−O−A−O−A−O−A−X’ (5)
の糖類を得る工程。
【請求項3】
工程(b)においてX’が1位の水酸基または保護基である式(4)の単糖ユニットを使用し、3つの糖が連結した糖鎖を合成する、請求項2に記載の糖鎖固相合成方法。
【請求項4】
工程(b)で得た式(5)の糖類に対し、工程(a)と工程(b)の反応を繰り返すことを含む、請求項2に記載の糖鎖固相合成方法。
【請求項5】
式(1)、(2)及び(4)の単糖ユニットを一反応系に同時に反応させて反応を行う、請求項2から4の何れかに記載の糖鎖固相合成方法。
【請求項6】
脱離基Xがフェニルチオ基又はフッ素基の片方であり、脱離基Yがフェニルチオ基又はフッ素基の他方である、請求項2から5の何れかに記載の糖類固相合成方法。
【請求項7】
フェニルチオ基の活性化をN−ヨードサクシンイミド−トリフルオロメタンスルホン酸(NIS−TfOH)またはジメチルメチルチオスルフォニウムトリフラート(DMTST)により行い、フッ素基の活性化をSn(ClO、Sn(OTf)、CpHf(ClO、またはCpHf(OTf)により行う、請求項6に記載の糖鎖固相合成方法。
【請求項8】
保護基がベンジル基である、請求項2から7の何れかに記載の糖鎖固相合成方法。
【請求項9】
、A及びAが示す単糖骨格が生体中に存在する単糖から選ばれる3種類の糖の単糖骨格である、請求項2から8の何れかに記載の糖鎖固相合成方法。
【請求項10】
、A及びAが示す単糖骨格が、マンノース、グルコース、ガラクトース、キシリトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、フルクトース又はシアル酸の単糖骨格である、請求項2から9の何れかに記載の糖鎖固相合成方法。
【請求項11】
フェニル1−チオ−3,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド、フェニル1−チオ−2,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド、フェニル1−チオ−2,3,6−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド、フェニル1−チオ−2,3,4−トリ−O−ベンジル−β−D−マンノピラノシド、フェニル1−チオ−3,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル1−チオ−2,4,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル1−チオ−2,3,6−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル1−チオ−2,3,4−トリ−O−ベンジル−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル2,3−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド、フェニル3,4−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド、フェニル2,4−ジ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−キシロピラノシド、フェニル1−チオ−2,3−ジ−O−ベンジル−β−L−フコピラノシド、フェニル2−アジド−4,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル2−アジド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル2−アジド−3,4−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド、フェニル3,4,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2,4,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2,3,6−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2−アジド−4,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2−アジド−3,4−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、フェニル2−アジド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド、
メチル(フェニル1−チオ−2,3−ジ−O−ベンジル−β−D−グルコピラノシド)ウロネート、メチル(フェニル5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−チオ−β−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノシド)オネート、メチル(フェニル5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−チオ−α−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノシド)オネート、メチル(フェニル5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−2−チオ−β−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノシド)オネート、メチル(フェニル5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−2−チオ−α−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノシド)オネート、並びに上記化合物中のフェニルチオ基をフッ素基に置換した化合物から成る群から選択される少なくとも1以上の単糖誘導体を含む、請求項1から10の何れかに記載の糖鎖固相合成方法を行うための単糖ライブラリー。
【請求項12】
毛管現象を生じる大きさの固体細孔中で固相反応を行う方法において、固体の外表面に余剰の液相が存在しない状態で反応を行うことを特徴とする固相反応方法。
【請求項13】
反応が拡散混合により行われることを特徴とする請求項12に記載の固相反応方法。
【請求項14】
固体が、内部に細孔を有する樹脂粒子である、請求項12又は13に記載の固相反応方法。
【請求項15】
固相反応が化学反応または生化学的反応である、請求項12から14の何れかに記載の固相反応方法。
【請求項16】
固相反応が糖鎖合成反応である、請求項12から15の何れかに記載の固相反応方法。
【請求項17】
固相反応が請求項1から10の何れかに記載の糖鎖固相合成反応である、請求項12から16の何れかに記載の固相反応方法。
【請求項18】
請求項1から10の何れかに記載の糖鎖固相合成方法または請求項17に記載の固相反応方法により合成された、生体中に存在する単糖から選ばれる3種類の糖の全ての組み合わせから成る糖鎖により構成されるライブラリー。
【請求項19】
生体中に存在する単糖が、マンノース、グルコース、ガラクトース、キシリトース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、フルクトース又はシアル酸である、請求項18に記載のライブラリー。
【請求項20】
少なくとも以下の(1)と(2)とを含む、請求項12から17の何れかに記載の固相反応方法を行うための反応装置。
(1)液相を注入又は吸引するための導入部を有し、かつ固体を収容する空間を有する、固相反応を行うための反応部、及び
(2)反応部の温度を調節するための温度調節部

【国際公開番号】WO2005/000861
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511152(P2005−511152)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009523
【国際出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーの構築に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】