説明

糖鎖修飾が抑制された改変Stx2eタンパク質

【課題】志賀毒素(Stx)2eにより引き起こされるブタ浮腫病のワクチンに用いることができる免疫原性タンパク質の植物を用いた生産技術、具体的には、Stx2e Bサブユニットタンパク質を植物を用いて生産する技術において、糖鎖修飾が抑制されたStx2e Bサブユニットタンパク質を生産する技術を提供する。
【解決手段】特定の配列のStx2e Bサブユニットタンパク質のアミノ酸配列の55位〜57位のAsn−X−Cysからなる部分アミノ酸配列を改変した改変Stx2e Bサブユニットタンパク質をコードするDNAを、植物細胞内で発現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、志賀毒素(Stx)2eにより引き起こされるブタ浮腫病のワクチンに用いることができる免疫原性タンパク質の植物を用いた生産技術に関する。
【背景技術】
【0002】
Stx2eは、腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli)が産生するタンパク質性外毒素であり、ブタ浮腫病を引き起こす。ブタ浮腫病は、離乳後1〜2週の子豚に高発生し、その致死率は、50〜90%と極めて高い。Stx2eは、細胞への付着に関与するBサブユニット5量体と毒性を持つAサブユニット1量体からなることが知られている。
【0003】
従来、ワクチンなどに用いられる医療用タンパク質は、微生物、昆虫細胞、動物細胞等を用いて生産されてきた。Stx2eタンパク質は、例えば、従来、無毒化したStx2eタンパク質を組換え大腸菌を用いて生産させ、注射によりブタに投与する技術が知られている(非特許文献1)。
しかしながら、このような方法は、注射の労力がかかるなど高コストであることなどから、この方法を代替、補完する技術が求められていた。このような技術の一つとして、植物を用いてワクチンを生産し、ワクチン生産植物を家畜に経口投与することが検討されている。
【0004】
このような背景において、本発明者らは、Stx2e等の細菌毒素タンパク質を、トランスジェニック技術を用いて植物に効率よく生産させる技術の開発を行ってきた(特許文献1、2)。
特許文献1には、植物由来の分泌シグナルペプチドがアミノ末端に付加されたStx2e Bサブユニットタンパク質を、植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5'−非翻訳領域(ADH5’UTR)を用いて発現させることにより、Stx2e Bサブユニットタンパク質をレタス等の植物に効率良く生産させ、植物体に高濃度で蓄積させる技術が開示されている。
特許文献2には、2つ又は3つのStx2e Bサブユニットタンパク質を特定のペプチドを介してタンデムに連結したタンパク質を植物に生産させ、Stx2e Bサブユニットタンパク質を、植物体に高濃度で蓄積させる技術が開示されている。
【0005】
ところで、真核生物において、糖鎖修飾(グリコシル化、糖鎖付加)はタンパク質の翻訳後修飾の重要な過程の一つである。糖鎖修飾によりタンパク質に付加される糖鎖としては、O−結合型糖鎖及びN−結合型糖鎖が知られる。このうち、N−結合型糖鎖は、Man3GlcNAc2からなる共通のトリマンノシルコア構造を有するが、植物に由来するN−結合型糖鎖のコア糖鎖部分には、動物型には認められない植物特有のα−1,3−フコース修飾、β−1,2−キシロース修飾が存在する。このような植物特有の修飾は、動物の生体内に投与した際に、アレルゲンになる可能性が指摘されている。このような背景において、植物により生産されるタンパク質のフコース修飾を減少、抑制する方法として、GDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子発現を抑制する遺伝子断片を挿入した植物形質転換用ベクターを、植物体もしくは植物細胞に導入して該植物の形質転換を行うなどの技術が報告されている(特許文献3)。また、植物により生産されるタンパク質のα−1,3−フコース修飾、β−1,2−キシロース修飾を抑制する技術として、非還元末端アセチルグルコサミン残基へのガラクトース残基の転移反応を行い得る酵素の遺伝子および異種糖タンパク質の遺伝子を導入して植物細胞を形質転換する技術が報告されている(特許文献4)。
【0006】
一般に、N−結合型糖鎖はAsn−Y-Ser/Thr(YはPro以外のアミノ酸を示す。)という一次配列中のAsn残基に付加されるといわれている(非特許文献2)。
また、酵母や昆虫細胞においては、N−結合型糖鎖が、Asn−X−Cys(Xは任意のアミノ酸を示す。)配列中のAsn残基に付加されるという報告がある(非特許文献3〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/004842号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/133882号パンフレット
【特許文献3】特開2010−51297号公報
【特許文献4】特開2008−212161号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Makino et al., Microbial Pathogenesis, vol. 31, Number 1, pp. 1-8(08), 2001
【非特許文献2】Lerouge et al., Plant Molecular Biology, vol. 38, pp. 31-48, 1998
【非特許文献3】Sato et al., J. Biochem. vol. 127, pp. 65-72, 2000
【非特許文献4】Wang et al., Yang P, J. Dairy Sci. vol. 91, pp. 4466-4476, 2008
【非特許文献5】Borisov et al., Anal. Chem., vol. 81, pp. 9744-9754, 2009
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、これまでの研究で(特許文献1、2参照)、高効率で植物にStx2e
Bサブユニットタンパク質を生産させることに成功しているが、生産の目的とするStx2e Bサブユニットタンパク質と共に、これより分子量が僅かに大きい分子量のタンパク質も生産されていることを発見した。
本発明者らは、この分子量の大きいタンパク質について解析した結果、該タンパク質は、N−結合型糖鎖を有していることを発見した。さらに、本発明者らは、該タンパク質の糖鎖修飾部位について更に検索を行った結果、これまで酵母や昆虫細胞における糖鎖修飾部位として報告されており、植物における糖鎖修飾部位としては報告されていない部分アミノ酸配列Asn(アスパラギン)−X−Cys(システイン)(Xは、任意のアミノ酸を示す。)のAsn残基に、糖鎖が結合していることを発見した。
【0010】
植物に生産させたStx2eタンパク質を、家畜の経口ワクチンに応用することを考えると、植物により生産されるタンパク質は、本来の抗原、すなわち、大腸菌により産生されるタンパク質に近い、糖鎖が付加されていない構造を有するものが望ましいと考えられる。
特に、植物特有のα−1,3−フコース、β−1,2−キシロースを有する糖鎖は、上述の通り、家畜においてアレルゲンとなる可能性があること、さらには、ワクチンに糖鎖修飾を有するタンパク質が混在すると、本来期待するStx2e免疫原性の低下や品質の均一性の低下が起こる可能性もあることから、糖鎖修飾は回避することが望ましい。
【0011】
そこで、本発明は、Stx2e Bサブユニットタンパク質を、植物を用いて生産する技術において、糖鎖修飾が抑制されたタンパク質を生産する方法を提供すること、併せて、該方法に用いるDNAや組換えベクターを提供することを課題とする。
また、本発明は、上記方法により生産される新規なタンパク質、これを含む植物、及び
この新規なタンパク質や植物を利用したブタ浮腫病ワクチンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、Stx2e Bサブユニットタンパク質(本明細書において、「Stx2eB」ともいう。)に含まれるAsn−X−Cys(Xは、任意のアミノ酸を示す。)からなる部分配列を改変することで、Stx2e Bサブユニットタンパク質の糖鎖修飾を抑制することができることを明らかにし、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、上記の課題を解決する本発明は、下記の(A)又は(B)に示す、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質をコードする、DNAである。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の下記の部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列を有する、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X−Cys(Xは、任意のアミノ酸を示す。)
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の前記部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加したアミノ酸配列を有し、かつ、下記の部分アミノ酸配列を含まない、Stx2e免疫原性を有する改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X1−Cys(X1は、Pro又はAsp以外のアミノ酸を示す。)
【0014】
上記DNAを植物細胞内で発現させることで、糖鎖修飾が抑制されたタンパク質を植物に生産させることが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記部分アミノ酸配列の改変は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位のアミノ酸の、Serへの置換である。また、他の好ましい形態では、前記部分アミノ酸配列の改変は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の57位のアミノ酸の、Alaへの置換である。
【0016】
本発明のDNAの好ましい形態は、2つ又は3つの、上記の(A)及び/又は(B)に示す、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質が、それぞれ、下記の特徴(x)及び(y)を有するペプチドを介してタンデムに連結された、ハイブリッドタンパク質をコードする、DNAである。
(x)アミノ酸の個数が12〜30個
(y)Proの含有率が20〜35%
前記部分アミノ酸配列の改変の好ましい形態は、上述したとおりである。
【0017】
特許文献2に示されるとおり、Stx2e Bサブユニットタンパク質を特定のペプチドでタンデムに連結したハイブリッドタンパク質をコードするDNAを植物細胞内で発現させることにより、植物細胞内に、Stx2e Bサブユニットタンパク質を効率よく蓄積させることが可能となる。このことは、糖鎖が付加されたStx2e Bタンパク質の蓄積量が大きくなることを意味する。従って、上記技術において、Stx2e Bサブユニットタンパク質を、本発明の改変Stx2e Bサブユニットタンパク質に置換すれば、糖鎖修飾が抑制されたタンパク質を植物に効率よく生産させることが可能となる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記DNAは、アミノ末端に植物由来の分泌シグナルペプチド(S.P.)が付加された、前記(A)又は(B)の改変Stx2e Bサブユニットタンパク質、若しくは、前記ハイブリッドタンパク質をコードする。また、他の好ましい形態では、前記DNAは、カルボキシル末端に小胞体残留ペプチド又は液胞移行シグナルペプチドが付加された、前記タンパク質をコードする。
当該形態により、上記タンパク質の植物への効率的な蓄積を実現することが可能となる

【0019】
本発明は、上述したDNAを含む組換えベクター、及び該組換えベクターで形質転換された形質転換植物細胞又は形質転換植物を提供する。また、本発明は、該形質転換植物から得られる種子を提供する。
【0020】
また、本発明は、上記の形質転換植物細胞若しくは形質転換植物を原料とする、ブタ浮腫病ワクチンを提供する。
【0021】
本発明は、上記のDNAを、植物細胞内で発現させることを含む、Stx2e免疫原性を有するタンパク質の生産方法を提供する。
当該方法により、植物を用いたStx2e Bサブユニットタンパク質の生産における特有の問題である糖鎖修飾を抑制することが可能となる。
【0022】
また、本発明は、上記の(A)又は(B)の改変Stx2e Bサブユニットタンパク質、若しくは上記のハイブリッドタンパク質、及び該タンパク質を含む植物を提供する。
【0023】
本発明の形質転換植物細胞又は形質転換植物、本発明の植物に含まれるタンパク質は糖鎖修飾が抑制されているので、該植物を動物の経口ワクチンの原料として使用した場合に、家畜におけるアレルギー反応を抑制することが可能となることが期待される。
【発明の効果】
【0024】
本発明者らは、植物細胞で生産されるStx2e Bサブユニットタンパク質について、これまで植物に関しては報告のなかったタイプの糖鎖修飾部位(部分アミノ酸配列)を発見した。そして、この糖鎖修飾部位のアミノ酸配列を人為的に改変することで、タンパク質が糖鎖修飾を受けないよう制御することに成功した。
すなわち、本発明のDNAを植物細胞内で発現させることで、糖鎖修飾が抑制された改変Stx2e Bサブユニットタンパク質を植物に生産させることが可能となる。このようにして得られた改変Stx2e Bサブユニットタンパク質は、アレルゲン性の抑制に寄与する。また、このようなタンパク質は、期待する免疫原性、或いは品質の均一性に寄与することも期待される。
【0025】
また、本発明者らが既に開発している、植物細胞にStx2e Bサブユニットタンパク質を高生産させる技術を応用した本発明の好ましい形態では、植物への目的タンパク質の効率よい蓄積と、アレルゲン性の抑制を両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】試験例で用いた組換えベクターのデザインを示す図である。ベクターType 1は、2つのStx2e Bサブユニットタンパク質をPG12スペーサーを介してタンデムに連結したタンパク質(2×Stx2eB-PG12)をコードするDNAを含み(a)、ベクターType 2は、2つのStx2e Bサブユニットタンパク質をPG12ver2スペーサーを介してタンデムに連結したタンパク質(2×Stx2eB-PG12ver2)をコードするDNAを含み(b)、ベクターType 3は、2つの改変Stx2e Bサブユニットタンパク質をPG12ver2スペーサーを介してタンデムに連結したタンパク質(2×Stx2eBN55S-PG12ver2)をコードするDNAを含む(c)。ベクターType 4は、2つの改変Stx2e Bサブユニットタンパク質をPG12ver2スペーサーを介してタンデムに連結したタンパク質(2×Stx2eBC57A-PG12ver2)をコードするDNAを含む(d)。矢印は、翻訳開始点を示す。
【図2】図1に示すベクターType 1を用いた形質転換実験により得られた、シロイヌナズナ培養細胞形質転換体及びレタス安定形質転換体に蓄積したタンパク質の検出結果を示す写真である(GPF−)。また、上記形質転換体に蓄積したタンパク質をGPF処理した場合の検出結果も併せて示す(GPF+)。処理時間(hour)は、GPFで処理した時間を示す。
【図3】図1に示すベクターType 1、Type 2、Type 3を用いた一過性発現実験により得られた、シロイヌナズナ培養細胞プロトプラストに蓄積したタンパク質の検出結果を示す写真である(GPF−)。また、上記プロトプラストに蓄積したタンパク質をGPF処理した場合の検出結果も併せて示す(GPF+)。
【図4】図1に示すベクターType2、Type 4を用いた一過性発現実験により得られた、シロイヌナズナ培養細胞プロトプラストに蓄積したタンパク質の検出結果を示す写真である。
【図5】図1に示すベクターType 2、Type 3を用いた一過性発現実験により得られた、イネ、コマツヨイグサ、タバコの各プロトプラストに蓄積したタンパク質の検出結果を示す写真である。
【図6】図1に示すベクターType 1、Type 3を用いた形質転換実験により得られた、シロイヌナズナ培養細胞形質転換体及びレタス安定形質転換体に蓄積したタンパク質の検出結果を示す写真である。a、bは、異なるクローンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を、より詳細に説明する。
本発明のDNAは、Stx2e免疫原性を有するタンパク質をコードする。
本発明において、「Stx2e免疫原性を有する」とは、ブタに投与した場合に抗Stx2e抗体を誘導することを意味する。
本発明の一形態では、本発明のDNAがコードするタンパク質は、(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の下記の部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列を有する、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質である。
Asn−X−Cys(Xは、任意のアミノ酸を示す。)
【0028】
配列番号1は、Stx2e Bサブユニットタンパク質(GenBank Accession No. AAQ63639)の成熟領域(ペリプラズムへの分泌シグナルペプチドを除く、Ala19〜Asn87)のアミノ酸配列を示す。なお、配列番号1に示すアミノ酸配列の55位〜57位は、上記GenBank Accession No. AAQ63639に示されるアミノ酸配列の73位〜75位に対応する。また、配列番号2に、配列番号1で示されるStx2e Bサブユニットタンパク質をコードするDNAの塩基配列の一例を示す。
本明細書において、単に「Stx2e Bサブユニットタンパク質」、「Stx2eB」という場合には、上記成熟領域のアミノ酸配列からなるStx2e Bサブユニットタンパク質を指す。
【0029】
55位〜57位の前記の部分アミノ酸配列の改変は、当該配列が失われるような改変であればよく、例えば、55位及び/又は57位のアミノ酸の置換、55位〜57位の何れかのアミノ酸の欠失、55位〜57位のアミノ酸間へのアミノ酸の挿入などが挙げられる。
【0030】
改変は、改変によるタンパク質の立体構造の変化が小さくなるように行うことが好ましい。
例えば、55位のAsnを他のアミノ酸に置換する場合には、Asnと同じ親水性のアミノ酸であるSer、Gln、Thr、Asp、Gluに置換することが挙げられる。中でも、Ser、Gln、Thrに置換することが好ましく、更にはSerに置換することが好ましい。Serが特に好ましい理由は、Stx2e Bサブユニットに類似するStx2 Bサブユニットが、上記55位に相当する位置にSerを持つことから見て、置換による立体構造の変化を小さくすることができると考えられるからである。配列番号3に、配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位のAsnがSerに置換されたアミノ酸配
列を示す。
また、例えば、57位のCysを他のアミノ酸に置換する場合には、Cysと同じ親水性のアミノ酸であるTyr、Asn、Glnや、疎水性アミノ酸のうち側鎖の小さなGlyやAlaが挙げられる。配列番号4に、配列番号1で表されるアミノ酸配列の57位のCysがAlaに置換されたアミノ酸配列を示す。
【0031】
本発明の他の形態では、本発明のDNAがコードするタンパク質は、(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の前記部分アミノ酸配列(Asn−X−Cys(Xは、任意のアミノ酸を示す。))が改変されたアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加したアミノ酸配列を有し、かつ、下記の部分アミノ酸配列を含まない、Stx2e免疫原性を有する改変Stx2e Bサブユニットタンパク質である。
Asn−X1−Cys(X1は、Pro又はAsp以外のアミノ酸を示す。)
【0032】
すなわち、上記の(A)に示す改変Stx2e Bサブユニットタンパク質の変異型タンパク質であっても、他の部分に上記部分アミノ酸配列からなる糖鎖修飾部位を含まないものであれば、本発明のDNAがコードするタンパク質となり得る。ここで、Kornfeld et al., Ann. Rev. Biochem., 1985, 54: 631-664には、Asn−X−Ser/ThrにおけるXがPro又はAspの場合には、糖鎖付加効率が低いことが記載されている。これと同様に、Asn−X1−Cysにおいても、X1が、Pro又はAspの場合には、糖鎖付加効率が低いことが予測される。従って、前記変異型タンパク質は、Asn−Pro−Cys、又はAsn−Asp−Cysの部分アミノ酸配列は含んでいてもよい場合がある。
【0033】
上記(B)に示す改変Stx2e Bサブユニットタンパク質の説明において、「数個」とは、好ましくは2〜10個、更に好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個である。
また、(B)に示す改変Stx2e Bサブユニットタンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位又は57位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有するタンパク質であってもよい。
【0034】
本発明のDNAがコードするタンパク質は、上記で説明した改変Stx2e Bサブユニットタンパク質以外の構造を含んでいてもよい。すなわち、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質に、種々のペプチドを付加したタンパク質も、その付加によりStx2e免疫原性が失われない限り、本発明のDNAがコードするタンパク質に含まれる。
【0035】
また、本発明のDNAがコードするタンパク質は、一般的なN−結合型糖鎖の修飾部位であると報告されているAsn−Y−Ser/Thr(YはPro以外のアミノ酸を示す。)からなるアミノ酸配列を含まないことが好ましい。但し、後述の実施例において示すとおり、下記に説明する、2つ又は3つのStx2e Bサブユニットタンパク質が特定のペプチドを介してタンデムに連結されたハイブリッドタンパク質においては、Asn−Thr−SerはN−結合型糖鎖の修飾部位とならないため、少なくとも該配列は含んでいてもよいことが分かっている。
【0036】
例えば、本発明のDNAがコードするタンパク質として、特許文献2に記載される2つ又は3つのStx2e Bサブユニットタンパク質が、下記の特定のペプチドを介してタンデムに連結されたハイブリッドタンパク質において、Stx2e Bサブユニットタンパク質の少なくとも一つを、上述した改変Stx2e Bサブユニットタンパク質に置換した構造のハイブリッドタンパク質が挙げられる。
本発明の好ましい形態では、本発明のDNAは、2つ又は3つのStx2e Bサブユニットタンパク質が全て改変Stx2e Bサブユニットタンパク質に置換した構造のハイブリッドタンパク質をコードする。
【0037】
すなわち、本発明の好ましい形態では、本発明のDNAがコードするタンパク質は、2つ又は3つの、上記の(A)及び/又は(B)の改変Stx2e Bサブユニットタンパク質が、それぞれ、下記の特徴(x)及び(y)を有するペプチドを介してタンデムに連結された、ハイブリッドタンパク質である。
(x)アミノ酸の個数が12〜30個
(y)Pro(プロリン)の含有率が20〜35%
【0038】
前記ペプチドのアミノ酸の個数は、好ましくは12〜25個、さらに好ましくは12〜22個である。また、前記ペプチドのプロリンの含有率は、好ましくは、20〜27%、さらに好ましくは、20〜25%である。
また、前記ペプチドにおいて、プロリンは、好ましくは2つ置き、又は3つ置きに配置される。但し、この場合でも、ペプチドの末端においては、プロリン以外のアミノ酸が、5つ以内、好ましくは4つ以内の範囲で連続していてもよい。
【0039】
また、前記ペプチドにおいては、プロリン以外のアミノ酸のうち、セリン、グリシン、アルギニン、リジン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン及びアスパラギン酸の合計含有率は、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。また、前記ペプチドにおいては、プロリン以外のアミノ酸のうち、セリン、グリシン及びアスパラギンの合計含有率は、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。また、前記ペプチドにおいては、プロリン以外のアミノ酸のうち、セリン及びグリシンの合計含有率は、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。これは、これらのアミノ酸を多く含むペプチドは、二次構造(ベータシート構造やヘリックス構造)をとりにくいためである。
【0040】
一方、前記ペプチドにおいては、プロリン以外のアミノ酸のうち、アラニン、メチオニン及びグルタミン酸の合計含有率は、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。これは、これらのアミノ酸を多く含むペプチドは、ヘリックス構造をとりやすいためである。また、前記ペプチドにおいては、プロリン以外のアミノ酸のうち、トリプトファン、ロイシン、イソロインシン、チロシン、フェニルアラニン及びバリンの合計含有率は、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。これは、これらのアミノ酸を多く含むペプチドは、ベータシート構造及びヘリックス構造をとりやすいためである。
前記ペプチドは、好ましくは、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG12スペーサー)、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG12ver2スペーサー)、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG17スペーサー)、又は、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG22スペーサー)から選ばれる。
【0041】
また、上記ハイブリッドタンパク質は、さらにそのC末端に前記ペプチドが付加されていることが好ましい。
本発明のDNAがコードするハイブリッドタンパク質は、例えば、配列番号9や10で表されるアミノ酸配列を有する。配列番号9で表されるアミノ酸配列を有するハイブリッドタンパク質は、2つの改変Stx2e Bサブユニットタンパク質(55位の置換)が、PG12スペーサーを介してタンデムに連結されている。配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するハイブリッドタンパク質は、2つの改変Stx2e Bサブユニットタンパ
ク質(55位の置換)が、PG12スペーサーを介してタンデムに連結され、さらにそのC末端にPG12スペーサーが連結されている。このようなハイブリッドタンパク質は、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質として、上述した配列番号1に示すアミノ酸配列における57位が置換されたものであるものであってもよい。
前記PG12スペーサーなどのペプチドを、改変Stx2eBタンパク質を連結するためのリンカーとして使用することにより、改変Stx2eBタンパク質の植物細胞への蓄積レベルが増大する(特許文献2参照)。
【0042】
また、本発明のDNAがコードするタンパク質は、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質の構造以外に、例えば、Stx2e Aサブユニットタンパク質の構造を含んでいてもよい。すなわち、本発明のDNAがコードするタンパク質は、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質とStx2e Aサブユニットタンパク質とのハイブリッドタンパク質であってもよい。但し、Stx2e Aサブユニットタンパク質を用いる場合には、無毒化することが好ましい。
【0043】
また、本発明のDNAがコードするタンパク質は、その末端に、例えば、分泌シグナルペプチド小胞体残留シグナルペプチド、液胞移行シグナルペプチド等のシグナルペプチドが付加されていてもよい。これにより、タンパク質を発現させる植物種に応じて、タンパク質の蓄積レベルを最適化することも可能となる(特許文献1参照)。
【0044】
本発明のDNAがコードするタンパク質は、例えば、アミノ末端に植物由来の分泌シグナルペプチドが付加されている。
分泌シグナルペプチドは、好ましくはナス科(Solanaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、キク科(Asteraceae)、アカバナ科(Onagraceae)に属する植物、さらに好ましくはタバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アキノノゲシ属(Lactuca)、マツヨイグサ属(Oenothera)等に属する植物、より好ましくはタバコ(Nicotiana tabacum)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、レタス(Lactuca sativa)、コマツヨイグサ(Oenothera laciniata)等に由来する。
また、好ましくはタバコのβ−Dグルカンエキソヒドロラーゼ(β-D-glucan exohydrolase)、タバコの38kDa ペルオキシダーゼ(GenBank Accession D42064)に由来する。
前記分泌シグナルペプチドとしては、例えば、タバコのβ−Dグルカンエキソヒドロラーゼに由来する、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有しているペプチドが挙げられる。
【0045】
さらに、本発明のDNAがコードするタンパク質は、そのカルボキシル末端に、小胞体残留シグナルペプチド、液胞移行シグナルペプチド等のシグナルペプチドが付加されていてもよい。ここで、「付加」とは、シグナルペプチドが、前記ハイブリッドタンパク質のカルボキシル末端に、直接結合している場合も、他のペプチドを介して結合している場合も含む概念である。
本発明のDNAがコードするタンパク質は、そのカルボキシル末端に、好ましくは、小胞体残留シグナルペプチドが付加されている。小胞体残留シグナルペプチドとしてはHDEL配列(配列番号12)を含む小胞体残留シグナルペプチドが挙げられる。
【0046】
液胞移行シグナルペプチドとしては、好ましくはナス科(Solanaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、キク科(Asteraceae)、アカバナ科(Onagraceae)に属する植物、さらに好ましくはタバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アキノノゲシ属(Lactuca)、セイヨウワサビ属(Armoracia)、マツヨイグサ属(Oenothera)等に属する植物、より好ましくはタバコ(Nicotiana tabacum)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、レタス(Lactuca sativa)、セイヨウワサビ(Armoracia rusticana)、コマツヨイグサ((Oenothera laciniata))等に由来する。また、好ましくは、キチナーゼに由来する
。また、好ましくは、セイヨウワサビペルオキシダーゼC1a アイソザイムに由来する。
【0047】
本発明のDNAの塩基配列は、該タンパク質を生産させる宿主細胞に応じて、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質の翻訳量が増大するように、該タンパク質を構成するアミノ酸を示すコドンを適宜改変することも好ましい。
コドン改変の方法としては、例えばKang et al. (2004)の方法を参考にすることができる。また、宿主細胞において使用頻度の高いコドンを選択したり、GC含量が高いコドンを選択したり、宿主細胞のハウスキーピング遺伝子において使用頻度の高いコドンを選択したりする方法が挙げられる。
例えば、GC含量が高いコドンを選択した配列番号13で表される塩基配列を有するDNAを、本発明のDNAとして用いることができる。
【0048】
本発明のDNAの好ましい形態では、改変Stx2eタンパク質、若しくは上記のハイブリッドタンパク質のコード領域のDNAは、エンハンサーに発現可能に連結されている。ここで、「発現可能」とは、本発明のDNAが適切なプロモーターを含むベクターに挿入され、該ベクターが適切な宿主細胞に導入された場合に、宿主細胞内で上記タンパク質が生産されることをいう。また、「連結」とは、2つのDNAが直接結合している場合も、他の塩基配列を介して結合している場合も含む概念である。
エンハンサーとしては、Kozak配列や植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域が挙げられる。特に好ましくは、上記タンパク質をコードするDNAが、植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域に発現可能に連結されている。
【0049】
アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域とは、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写開始点から、翻訳開始点(ATG、メチオニン)の前までの塩基配列を含む領域をいう。該領域は、翻訳量増大機能を有している。「翻訳量増大機能」とは、構造遺伝子にコードされた情報が、転写後、翻訳されてタンパク質が産生される際に、翻訳により産生されるタンパク質量を増大させる機能をいう。前記領域は、植物に由来すればよいが、好ましくはナス科(Solanaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、キク科(Asteraceae)、アカバナ科(Onagraceae)に属する植物、さらに好ましくはタバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アキノノゲシ属(Lactuca)、マツヨイグサ属(Oenothera)等に属する植物、より好ましくはタバコ(Nicotiana tabacum)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、レタス(Lactuca sativa)、コマツヨイグサ(Oenothera laciniata)等に由来する。
前記アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域としては、例えばタバコ(Nicotiana tabacum)由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域(NtADH5'UTR)である、配列番号14で表される塩基配列からなる領域が挙げられる。
【0050】
植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域は、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼを高発現している植物培養細胞のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子から単離することができる(特開2003−79372号公報参照)。また、タバコのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域等、その塩基配列が確定しているものについては、化学合成、又は該領域の5’及び3’末端の塩基配列をプライマーとし、ゲノムDNAを鋳型としたPCRなどにより合成することもできる。また、塩基配列が確定している前記領域の一部をプローブとして用いることにより、他の植物のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域を探索し、これを単離することもできる。
【0051】
また、配列番号14の塩基配列で表されるような前記アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域は、翻訳量増大機能を保持している限り、1又は数個の塩基の置換、欠失、挿入又は付加を有していてもよい。前記「数個」としては、好ましくは2〜10
個、さらに好ましくは2〜5個、特に好ましくは2〜3個である。
また、前記アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域と好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上の同一性を有し、かつ翻訳量増大機能を保持しているDNAを使用してもよい。
【0052】
前記領域が目的とする翻訳量増大機能を有するか否かについては、例えばタバコ培養細胞においてGUS(β−グルクロニダーゼ)遺伝子又はルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子としたトランジェントアッセイ、染色体に組み込ませた形質転換細胞でのアッセイ等により確認することができる。
【0053】
このような塩基配列として、ATG近傍配列改変型タバコアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域(配列番号15)を用いることができる。
【0054】
本発明のDNAは、例えば、配列番号16〜18に表される塩基配列を有する。
配列番号16で表される塩基配列を有するDNAは、ATG近傍配列改変型タバコ由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域(NtADH5'UTRmod、配列番号15)に、2つの改変Stx2e Bサブユニットタンパク質(55位の置換)をPG12スペーサーを介してタンデムに連結したハイブリッドタンパク質をコードするDNAを連結したDNAである。
【0055】
配列番号17で表される塩基配列を有するDNAは、NtADH5'UTRmodに、2つの改変Stx2e Bサブユニットタンパク質(55位の置換)を、PG12スペーサーを介してタンデムに連結し、アミノ末端に分泌シグナルペプチドを、カルボキシル末端に小胞体残留シグナルペプチドを付加したハイブリッドタンパク質をコードするDNAを連結したDNAである。
【0056】
配列番号18で表される塩基配列を有するDNAは、NtADH5'UTRmodに、2つのStx2eB サブユニットタンパク質(55位の置換)を、PG12スペーサーを介してタンデムに連結し、アミノ末端に分泌シグナルペプチドを付加し、カルボキシル末端にPG12スペーサーを連結し、さらにそのカルボキシル末端に小胞体残留シグナルペプチドを付加したハイブリッドタンパク質をコードするDNAを連結したDNAである。
【0057】
上記で説明した、本発明のDNAは、一般的な遺伝子工学的手法により作製することができ、必要な場合は、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質をコードするDNAに、植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域、植物由来の分泌シグナルペプチドをコードするDNA、小胞体残留シグナルペプチドをコードするDNAなどのDNAを、それぞれ、適当な制限酵素により切断し、適当なリガーゼで連結すればよい。
また、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質と他のタンパク質のハイブリッドタンパク質や改変Stx2e Bサブユニットタンパク質を、上記特定のペプチドを介してタンデムに連結したハイブリッドタンパク質をコードするDNAを合成する場合には、各タンパク質をコードするDNAを終止コドンを除いて読み枠を合わせて連結すればよい。例えば、2つの改変Stx2e Bサブユニットタンパク質を、上記特定のペプチドを介してタンデムに連結したハイブリッドタンパク質をコードするDNAは、例えば、配列番号13に示す改変Stx2e Bサブユニットタンパク質をコードするDNAと、配列番号5に示すPG12スペーサーとを終止コドンを除いて読み枠を合わせて連結することにより、合成することができる。
【0058】
改変Stx2e Bサブユニットタンパク質をコードするDNAは、適当なプライマーを用いてPCRにより合成することができる。例えば、実施例において説明するStx2
e Bサブユニットタンパク質をコードするDNAの合成において、用いるプライマーの塩基配列を目的のアミノ酸配列をコードするように変更すればよい。
また、実施例において示すように、Stx2e Bサブユニットタンパク質をコードするDNAを含むプラスミドを鋳型に用い、適当なプライマーを用いて、インバースPCRを行うことにより、目的のアミノ酸に対応するコドンを規定するように塩基置換することができる。
【0059】
本発明の組換えベクターは、本発明のDNAを含むことを特徴とする。本発明の組換えベクターは、本発明のDNAが、ベクターが導入される植物細胞において発現可能なように、ベクター内に挿入されていればよい。ベクターは、植物ゲノムに安定的に遺伝子を組み込むためのバイナリープラスミドDNAや、ウィルスDNA等が挙げられる。前者のベクターは薬剤耐性遺伝子等の選択マーカーを含むことが好ましく、市販のプラスミドとして、例えば、pRI909、pBI121、pBI101、pIG121Hm等を用いることもできる。ウィルスDNAとしては、例えばpTB2(Donson et al., 1991)等を用いることができる(Donson J., Kerney CM., Hilf ME., Dawson WO. Systemic expression of
a bacterial gene by a tobacco mosaic virus-based vector. Proc. Natl. Acad. Sci.(1991) 88: 7204-7208を参照。)
【0060】
組換えベクター内で用いられるプロモーターは、ベクターが導入される植物細胞に応じて適宜選択することができる。例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(Odell et al.1985 Nature 313:810)、イネのアクチンプロモーター(Zhang et al.1991 Plant Cell 3:1155)、トウモロコシのユビキチンプロモーター(Cornejo et al.1993 Plant Mol.Biol.23:567)等が好ましく用いられる。また、ベクター内で用いられるターミネーターも、同様にベクターが導入される宿主細胞に応じて適宜選択することができる。例えば、ノパリン合成酵素遺伝子転写ターミネーター、カリフラワーモザイクウイルス35Sターミネーター、シロイヌナズナheat shock protein 18.2 遺伝子のターミネーター(HSP-T)等が好ましく用いられる。
【0061】
本発明の組換えベクターは、例えば以下のようにして作製することができる。
まず、本発明のDNAを適当な制限酵素で切断又はPCRによって制限酵素部位を付加し、ベクターの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入する。
【0062】
本発明の形質転換植物細胞又は形質転換植物は、本発明の組換えベクターで形質転換されていることを特徴とする。
形質転換の対象となる植物細胞及び植物の種類は、特に制限されないが、ナス科(Solanaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、キク科(Asteraceae)、アカバナ科(Onagraceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)に属する植物、さらに好ましくはタバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アキノノゲシ属(Lactuca)、マツヨイグサ属(Oenothera)等に属する植物、より好ましくはタバコ(Nicotiana tabacum)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、レタス(Lactuca sativa)、コマツヨイグサ(Oenothera laciniata)等が好ましく用いられる。
【0063】
本発明の形質転換植物細胞は、一般的な遺伝子工学的手法を用いて、本発明の組換えベクターを植物細胞に導入することにより作製することができる。例えば、アクロバクテリウムを利用した導入方法(Hood, et al., 1993, Transgenic, Res. 2:218,Hiei, et al.,1994 Plant J. 6:271)、エレクトロポレーション法(Tada, et al., 1990, Theor.Appl.Genet, 80:475)、ポリエチレングリコール法(Lazzeri, et al., 1991, Theor. Appl. Genet. 81:437)、パーティクルガン法(Sanford, et al., 1987, J. Part. Sci.
tech. 5:27)、ポリカチオン法(Ohtsuki)などの方法を用いることが可能である。
本発明の組換えベクターを植物細胞に導入した後、選択マーカーの表現型によって本発
明の形質転換植物細胞を選抜することができる。また、選抜した形質転換植物細胞を培養することにより、目的とするタンパク質を生産することができる。培養に用いる培地及び条件は、形質転換植物細胞の種に応じて適宜選択することができる。
また、選抜した形質転換植物細胞を常法に従って培養することにより、植物体を再生することで、本発明の形質転換植物を得ることができ、植物細胞内又は植物細胞の細胞膜外に目的とするタンパク質を蓄積させることができる。植物体を再生する方法としては、例えば、植物細胞の種類により異なるが、ジャガイモであればVisserら(Theor.Appl.Genet 78:594(1989))の方法が挙げられ、タバコであればNagataとTakebe(Planta 99:12(1971))の方法が挙げられる。
【0064】
レタスの場合は0.1 mg /lのNAA(ナフタレン酢酸)、0.05 mg/lのBA(ベンジルアデニン)および0.5 g/lのpolyvinylpyrrolidoneを含むMS培地でシュートの再生が可能であり、再生したシュートを0.5 g/lのpolyvinylpyrrolidoneを含む1/2 MS培地で培養することで発根が可能である。
【0065】
また、本発明の種子は、上記のようにして再生した植物体から種子を採取することにより得ることができる。本発明の種子は適当な方法で播種し栽培することにより、前記改変Stx2e Bサブユニットタンパク質、若しくはハイブリッドタンパク質を生産する植物体を生産することができ、このような植物体も、本発明の形質転換植物に含まれる。
【0066】
本発明のブタ浮腫病ワクチンは、本発明の形質転換植物細胞若しくは形質転換植物を原料とすることを特徴とする。本発明のブタ浮腫病ワクチンは、上記の改変Stx2e Bサブユニットタンパク質やハイブリッドタンパク質を生産する形質転換植物そのものとすることもできるが、形質転換植物細胞や形質転換植物を乾燥、粉砕するなどして、他の成分と共に加工することにより製造することもできる。また、本発明のブタ浮腫病ワクチンには、上記タンパク質の免疫原性を高めるアジュバントを配合することもできる。一般的には、安全性を考慮して水酸化アルミニウムなどがアジュバントとして用いられる。
【0067】
本発明のブタ浮腫病の防除方法は、本発明のブタ浮腫病ワクチンをブタに投与することを特徴とする。本発明のブタ浮腫病ワクチンによる免疫は、浮腫病の発生率が高い子豚に対して行うことが好ましい。免疫の方法としては、本発明のブタ浮腫病ワクチンを母豚に投与して、母豚が産生した抗体を、乳汁により子豚に与える方法、本発明ブタ浮腫病ワクチンを子豚に投与し、子豚を直接免疫する方法等が挙げられる。
本発明のブタ浮腫病ワクチンをブタに投与する方法としては、ブタの飼料に本発明のブタ浮腫病ワクチンを混合してブタに与える方法、ブタに点鼻する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
[試験例1]Stx2e Bサブユニットタンパク質の翻訳後修飾の解析
Stx2e Bサブユニットタンパク質(Stx2eB、配列番号1)の翻訳後修飾を解析するため、Stx2e B組換えベクター(ベクターType 1)で、シロイヌナズナ培養細胞、レタス子葉断片を形質転換し、形質転換体に蓄積したタンパク質を解析した。
(1)ベクターType 1の構築
2つのStx2eBをコードするDNAが、PG12スペーサー(配列番号5)をコードするDNAを介して連結されたDNAを含むベクターType 1を以下のようにして作製した。上記DNAのデザインを図1(a)に示す。
【0069】
ベクターの作製手法を以下に示す。
まず始めに、配列番号2に示す塩基配列に基づいて、GC含量が高くなるように、Stx2eBをコードするコドン改変DNAをデザインした(配列番号19)。次に、この配列番号
19に示す塩基配列に基づいて、下記の6種類の塩基配列を有するプライマーを作製した。
Stx2eB A:配列番号20
Stx2eB B:配列番号21
Stx2eB C:配列番号22
Stx2eB D:配列番号23
Stx2eB E:配列番号24
Stx2eB F:配列番号25
【0070】
上記で作製したプライマーを使用し、以下の手順でPCRを行い、Stx2eBをコードするコドン改変型のDNAを合成した。すなわち、プライマーAとB、CとD、EとFの組み合わせで1st PCRを行い、それぞれ92bp(A+B)、78bp(C+D)、86bp(E+F)の遺伝子断片を合成した。次にA+BとC+Dの組み合わせで2nd PCRを行い、153bp(A+B+C+D)の遺伝子断片を合成した。最後にA+B+C+DとE+Fの組み合わせで3rd PCRを行い、最終的に210bpの遺伝子を合成した。反応条件は最終容量が25μlとなるよう、10 pmol オリゴヌクレオチド、0.2mM dNTP、pfu DNA polymerase buffer、0.3U pfu DNA polymeraseを添加し、94℃, 5分間加熱した後、94℃, 1分間、56℃または60℃, 1分間、72℃, 1分間の加熱処理を25または30サイクル行い、最後に72℃で5分間加熱した。2nd PCR、3rd PCRには、それぞれ、1st PCR、2nd PCR後の反応液1μlをテンプレートとして使用した。得られたDNA断片をpUC118のHincIIサイトに導入した(plasmid 1)。
【0071】
ATG近傍配列改変型タバコアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5'非翻訳領域(NtADH 5’UTRmod、配列番号15)を、ADH-221(Sato et. al., J. Biosci. Bioeng., vol. 98, pp. 1-8, 2004参照)を鋳型として、ADH XbaIKpnI-F プライマー(配列番号26)及びADHmod NsiI-R プライマー(配列番号27)を用いたPCR により増幅した。β-D glucan exohydrolase(GenBank Accession No. AB017502)の分泌シグナルペプチド(S.P.、配列番号11)をコードするDNA領域(配列番号28)を、タバコゲノムDNAを鋳型にして、βD NsiI-F プライマー(配列番号29)およびβD BamHI-R プライマー(配列番号30)を用いて増幅した。得られたNtADH 5'UTRmod および分泌シグナルペプチドの各DNA断片をNsiI (TOYOBO社製)で処理し、ligation high (TOYOBO社)を用いてライゲーションした後、末端を平滑化してpBluescript II SK (Stratagene社製)のEcoRV ギャップにクローニングした(plasmid 2)。
続いて、plasmid 2をNsiI で処理し、T4 DNA polymerase (TOYOBO社製)で末端を平滑化した後セルフライゲーションして、NtADH 5'UTRmodの開始コドン(atg)と分泌シグナルペプチドの開始コドンが一致するように連結した(plasmid 3)。
【0072】
次に、NtADH 5'UTRmod 断片および分泌シグナルペプチドの連結DNAを、plasmid 3 を鋳型として用い、ADH XbaIKpnI-F プライマー(配列番号26)とβD BamHI-R プライマー(配列番号30)を用いて増幅した。得られたDNA 断片を、KpnI とBamHI で処理し、plasmid 1のKpnI-BamHI ギャップに挿入した(plasmid 4)。
【0073】
続いて、小胞体残留シグナル(配列番号12)付加のために、HDEL-Fプライマー(配列番号31)とHDEL-Rプライマー(配列番号32)をアニーリングしてT4 PNK でリン酸化し、アルカリフォスファターゼ(AP)(TaKaRa社)で脱リン酸化処理したplasmid 4のBglIIギャップに挿入した(plasmid 5)。
【0074】
Stx2eB検出用のペプチドタグとして、HAタグを付加した。HAタグの付加のために、HA-F プライマー(配列番号33)とHA-R プライマー(配列番号34) をアニーリングしてT4 PNK でリン酸化した。得られたリン酸化HA断片を、plasmid 5のBglIIギャップに挿入した(plasmid 6)。
【0075】
Stx2eBとHAタグの間にPG12スペーサー(配列番号5)を挿入するため、PG12-F プライマー(配列番号35)とPG12-R プライマー(配列番号36)をアニーリングしてT4 PNK でリン酸化した。得られたリン酸化DNA断片を、plasmid 6のBglIIギャップに挿入した(plasmid 7)。
【0076】
Stx2eBをコードするDNAとPG12スペーサーをコードするDNAが連結したDNA断片(1×Stx2eB-PG12)をBamHI-BglIIを用いてplasmid 7から切り出し、plasmid 7のBglIIギャップに挿入した(plasmid 8)。
【0077】
カリフラワーモザイクウイルス35S RNA プロモーター(35S pro.)断片を、35S XbaI-F プライマー(配列番号37)と35S SmaIKpnI-R プライマー(配列番号38)を用いてPCR増幅し、pRI909 (TaKaRa Bio Inc.)のXbaI-KpnIサイトに挿入した(plasmid 9)。
シロイヌナズナheat shock protein 18.2 遺伝子のターミネーター領域(HSP-T)断片を、HSPT-SacI-F プライマー(配列番号39)とHSPT-SpeIEcoRI-Rプライマー(配列番号40)を用いてPCR増幅し、plasmid 9のSacI-EcoRIギャップに挿入した(plasmid 10)。
NtADH5'UTRmod-S.P.-2×(Stx2eB-PG12)-HA-HDELに相当するDNA断片をKpnI-SacIを用いてplasmid 8から切り出し、plasmid 10のKpnI-SacIギャップに挿入し、2つのStx2eBがPG12スペーサーを介してタンデムに連結されたハイブリッドタンパク質2×Stx2eB-PG12をコードするDNAを含むベクターType 1を得た(図1(a))。
【0078】
(2)形質転換実験
(i)形質転換アグロバクテリウムの作製
作製したベクターType 1を、エレクトロポレーション法を用いて、Agrobacterium tumefacience EHA105(Hood et al., Transgenic Res., vol. 2, pp. 208-218, 1993参照)に導入した。
EHA105の単一コロニーを 5 mlのYEB培地(Bacto-peptone 5 g/l, Beaf extract 5 g/l, Yeast extract 1 g/l, sucrose 5 g/l, MgSO4・7H2O 0.5 g/l)に植菌し、28 ℃で1晩振盪培養した。この培養液を、500 mlのYEP培地に植菌し、600 nmにおける濁度が0.5になるまで28 ℃で振盪培養した。培養液を遠心分離 (5000 rpm, 10分, 4 ℃ ;BECKMAN JLA-10,500ローター)により集菌して上清を捨て、菌体を洗浄するため 500 ml の滅菌水を加えて懸濁し、再度遠心分離 (5000 rpm, 10分, 4 ℃; BECKMAN JLA-10,500ローター) により集菌して上清を捨てた。この操作を 2 回繰り返した後、沈殿に20 ml の冷却した滅菌 10% glycerol を加えて懸濁した。ナルゲンチューブに移し遠心分離 (5000 rpm, 10 min, 4℃ BECKMAN JLA-10,500ローター) により集菌して上清を捨てた。沈殿に3 mlの冷却した滅菌10% Glycerolを加えて懸濁し、40 μlずつ1.5 ml微小遠心管に分注して、液体窒素で凍結させてから-80 ℃で保存した。
コンピテントセルを氷中で解凍後、1〜2 μlのベクターType 1溶液を加え、氷令した2 mmキュベットに移した。エレクトロポレーター(BIO RAD、Gene Pulser)により電気パルス(2.5 KV、25 μF、400 Ω)を与え、組換えベクターを導入した。1 mlのSOC培地を加え、28 ℃で1時間振盪培養した後、スピンダウンして上清を大部分除き、残った培地に菌体を懸濁して適当な抗生物質を含む LB 寒天培地上に広げ、30 ℃で2晩培養した。
【0079】
(ii)レタス安定形質転換体の作製
レタス(Lactuca sativa L. cv. green wave)の種子を表面殺菌した後、0.8% アガーで固形化した3% スクロースを含む1/2 MS培地に播いた。25 ℃、16時間明期−8時間暗期の条件で培養し、発芽させた。子葉を0.5 cm角程度の大きさに切断して断片を作製し、これを1% (w/v) のTween 20を含むMS液体培地12 mlに浮かべた。光学密度(O.D.)が0.1程度になるまで培養したアグロバクテリウムの培養液3 mlと、終濃度 100 μM のアセトシリンゴンを添加し、10 分間静置した。余分な液をふき取った子葉を、選抜培地(0.05 mg/l
BA, 0.1 mg/l NAA, 0.5 g/l PVP, 50 mg/l カナマイシン、250 mg/l セフォタキシムを含むMS培地を0.8% アガーで固形化した培地)に静置した。25 ℃、16時間明期−8時間暗期の条件で培養し、1週間ごとに新しい選抜培地にのせかえた。4−8週間後に得られた再分化個体を、発根培地(0.5 g/l PVP、50 mg/l カナマイシン、250 mg/l セフォタキシムを含むMS培地を0.8 %アガーで固形化した培地)に移植した。
【0080】
(iii)シロイヌナズナ培養細胞の形質転換
シロイヌナズナ培養細胞は、100 mlの改変LS培地を入れた300 mlのフラスコを連続明期、22 ℃で振盪培養した。1週間ごとに、2 mlの懸濁培養液を新しい改変LS培地に植え継いだ。カナマイシン100 mg/l を含む5 mlのLB培地で28 ℃、2晩培養したアグロバテリウム培養液500 μlと終濃度100 μMのアセトシリンゴンを、培養4日目のシロイヌナズナ培養細胞懸濁液 100 mlに添加し、2日間振盪培養した。アグロバクテリウムを除くため、培養液を 50 mlの遠心管に移して遠心(500 rpm, 5分, 25 ℃)し、上清を取り除いた。250
mg/lのカルベニシリンを含む改変LS培地を入れて遠心分離(500 rpm, 5分, 25 ℃)し、細胞を洗浄した。この操作を4回繰り返し、アグロバクテリウムを除いた培養細胞を250 mg/lのカルベニシリンを含む改変LS培地 100 mlに添加し、2日間振盪培養した。培養液を 50 mlの遠心管に移して遠心(500 rpm, 5分, 25 ℃)し、上清を一部取り除いて細胞濃度を1/2 v/v程度に調整した。250 mg/lのカルベニシリンと40 mg/l のカナマイシンを含む改変
LS寒天培地にまき、22 ℃、連続明期下に静置して培養した。約2-3週間後にカルス化した細胞を新しいプレートに移植し、増殖しているクローンを選択した。250 mg/lのカルベニシリンと40 mg/lのカナマイシンを含む改変LS培地に移し、継代培養を行った。
【0081】
(3)GPF処理
上記で得られた、形質転換されたシロイヌナズナ培養細胞及びレタス子葉断片を液体窒素中で破砕し、湿重量1 gあたり1 mlの10 mM Tris-HCl pH8.0と混合した。得られた混合液を遠心し(15,000 rpm, 20分, 4 ℃)、上清を回収した(GPF未処理試料)。回収した上清の一部を、タンパク質からN−結合型糖鎖を根本から切断する酵素であるグリコペプチダーゼF(GPF、TaKaRa Bio Inc.)で処理した(GPF処理試料)。
【0082】
(4)ウェスタン解析
上記で得られたGPF未処理試料、及びGPF処理試料に、細胞湿重量1mgあたり5 μlとなるようにSDS-sample buffer を加え、95℃で10分間熱変性させ、解析用試料とした。15%アクリルアミドゲルを用いてタンパク質を分離後、エレクトロトランスファー装置を用いてPVDFメンブレン(Hybond-P; Amersham 社)上にタンパク質をブロットした。抗HA抗体(No. 11 867 423 001, Roche)を用いて、Stx2eBを検出した。
【0083】
結果を図2に示す。シロイヌナズナ培養細胞およびレタスの安定形質転換体のいずれを用いた場合にも、17 kDa(バンド1), 20 kDa(バンド2), 23 kDa(バンド3)の位置にシグナルが検出された。
タンパク質サンプルを、GPFで処理した後にウェスタン解析を行った場合には、バンド2と3のシグナル強度が減少し、バンド1のシグナル強度が増加した。
このことから、バンド2は2×Stx2eB-PG12における2つのStx2eB-PG12の何れかにN-結合型糖鎖が付加したタンパク質に相当し、バンド3は2×Stx2eB-PG12における2つのStx2eB-PG12の両方にN-結合型糖鎖が付加したタンパク質に相当し、バンド1はN-結合型糖鎖が付加していない2×Stx2eB-PG12であると考えられた。
【0084】
[試験例2]糖鎖修飾部位の探索
次に、Stx2eB-PG12のN-結合型糖鎖修飾部位について、解析した。
(1)Stx2e B組換えベクターの構築
(a)ベクターType 1の構築
試験例1の方法でベクターType 1を構築した(図1(a))。
(b)ベクターType 2の構築
一般に、N-結合型糖鎖はAsn-Y-Ser/Thr(YはPro以外のアミノ酸を示す。)という配列中のAsn残基に付加されるといわれている(非特許文献2)。Stx2eBのアミノ酸配列中にはこの配列は存在しないが、PG12スペーサーとStx2eBのつなぎ目にはAsn-Arg-Ser(AsnがStx2eBのC末端アミノ酸であり、その後にPG12スペーサーのアミノ酸配列が続く)という配列が存在する。このAsn残基にN-結合型糖鎖が付加されているかどうかを検証するために、このつなぎ目に存在するSer(配列番号5に示すアミノ酸配列の2位)をAlaに置換したPG12ver2スペーサー(配列番号6)を介して2つのStx2eBを連結したハイブリッドタンパク質をコードするDNAを含むベクターType 2を、以下の方法で作製した(図1(b))。
【0085】
上記で得たベクターType 1を鋳型として、ADH KpnI-F プライマー(配列番号26)とPG12ver2-Rプライマー(配列番号41)を用いてPCRを行い、NtADH5'UTRmod-S.P.-2×Stx2eB-PG12ver2に相当するDNA断片を増幅した。得られたDNA断片をKpnIとBglIIで処理し、ベクターType 1のKpnI-BglIIサイトに導入し、2つのStx2eBがPG12ver2スペーサーを介してタンデムに連結されたハイブリッドタンパク質2×Stx2eB-PG12ver2をコードするDNAを含む組換えベクターを得た(ベクターType 2)。
【0086】
(c)ベクターType 3の構築
酵母や昆虫細胞においてはAsn-X-CysXは任意のアミノ酸を示す。という配列中のAsn残基にN-結合型糖鎖が付加されるという報告がある(非特許文献3〜5)。Stx2eBの一次配列中にはAsn-Thr-Cysという配列が存在する。
このAsn-Thr-CysへのN-結合型糖鎖付加の有無を検証するために、上記で得たベクターType 2において、Stx2eBに存在するAsn-Thr-Cys配列(配列番号1の55〜57位に相当する配列)のAsnをSerに置換したDNAを含むベクターType 3を、以下の方法で作製した(図1(c))。
【0087】
下記の要領で、配列番号1に示すStx2eBのアミノ酸配列の55位のAsnをSerに置換した改変Stx2eB(以下、Stx2eBN55S)をコードするDNA (配列番号13)を含むベクターを作製した。
まず、上記のplasmid 2を鋳型として用い、Stx2eBN55S-Fプライマー (配列番号42)とStx2eBN55S-Rプライマー(配列番号43)を用いてインバースPCRを行い、Stx2eBのアミノ酸配列の55位のAsnを規定するコドンを構成する塩基を置換した(plasmid 11)。
続いて、Stx2eBN55Sの下流にPG12スペーサーを挿入するために、PG12-F プライマー(配列番号35)とPG12-R プライマー(配列番号36)をアニーリングしてT4 PNK でリン酸化した。得られたリン酸化DNA断片を、plasmid 11のBglIIギャップに挿入した(plasmid
12)。plasmid 12を鋳型として、Stx2eB Aプライマー(配列番号20)とPG12ver2-Rプライマー(配列番号41)を用いてPCRを行い、Stx2eBN55SとPG12スペーサーとのつなぎ目のAsn-Arg-Ser配列のSerを規定する塩基配列をAlaを規定する塩基配列に置換し、得られたDNA断片をpUC118のHincIIサイトに導入した(plasmid 13)。
plasmid 13からBamHIとBglIIを用いてStx2eBN55S-PG12ver2に相当するDNA断片を切り出し、このDNA断片を、plasmid 13のBamHIサイトに挿入して2つのStx2eBN55S-PG12ver2に相当するDNA断片を連結した(plasmid 14)。plasmid 14から、2×Stx2eBN55S-PG12ver2に相当するDNA断片を、BamHIとBglIIを用いて切り出し、ベクターType 1のBamHI-BglIIギャップに挿入した(ベクターType 3)。
【0088】
(d)ベクターType 4の構築
典型的なN-結合型糖鎖付加配列であるAsn-Y-Ser/Thr(YはPro以外のアミノ酸を示す。)においては、三番目のSerもしくはThrが重要な働きをすることが示されている。Stx2eBのAsn-Thr-Cys配列へのN-結合型糖鎖付加においても三番目のCysが重要であると予想される
。このことを検証するために、上記で得たベクターType 2において、Stx2eBに存在するAsn-Thr-Cys(配列番号1の55〜57位に相当する配列)のCysをAlaに置換したDNAを含むベクターType 4を、以下の方法で作製した(図1(d))。
下記の要領で、配列番号1に示すStx2eBのアミノ酸配列の57位のCysをAlaに置換した改変Stx2eB(以下、Stx2eBC57A)をコードするDNAを含むベクターを作製した。plasmid 2を鋳型として用い、Stx2eBC57A-Fプライマー (配列番号44)とStx2eBC57A-Rプライマー(配列番号45)を用いてインバースPCRを行い、57位のCysに相当する塩基を置換した(plasmid 15)。続いて、Stx2eB5C57Aの下流にPG12スペーサーを挿入するために、PG12-F プライマー(配列番号35)とPG12-R プライマー(配列番号36)をアニーリングしてT4 PNK でリン酸化した。得られたリン酸化DNA断片を、plasmid 15のBglIIギャップに挿入した(plasmid 16)。Plasmid 16を鋳型として、Stx2eB Aプライマー(配列番号20)とPG12ver2-Rプライマー(配列番号41)を用いてPCRを行い、リンカー領域のAsn-Arg-Ser配列をAsn-Arg-Alaに置換し、得られたDNA断片をpUC118のHincIIサイトに導入した(plasmid 17)。
plasmid 17からBamHIとBglIIを用いてStx2eBC57A-PG12ver2に相当するDNA断片を切り出し、このDNA断片を、Plasmid 17のBamHIサイトに挿入して、2つのStx2eBC57A-PG12ver2に相当するDNA断片を連結した(plasmid 18)。plasmid 18から2×Stx2eBC57A-PG12ver2に相当するDNA断片を、BamHIとBglIIを用いて切り出し、ベクターType 1のBamHI-BglIIギャップに挿入した(ベクターType 4)。
【0089】
(2)一過性発現実験
(i)プロトプラストの作製
シロイヌナズナの培養細胞懸濁液を、40 gで5分間遠心分離して、培養細胞を回収した。回収した培養細胞を50mlのプロトプラスト化酵素溶液 (1.0% cellulose RS (ヤクルト本社), 0.25% macerozyme R-10 (ヤクルト本社), 400mM マンニトール, 8mM CaCl2, and 5mM Mes-KOH, pH 5.6)に浸漬し、室温で約一時間半振盪した。続いて、プロトプラスト懸濁液を60gで5分間遠心し、プロトプラストを沈殿させた。プロトプラストを167mMマンニトールおよび133mM CaCl2を含む水溶液に再懸濁し、40gで5分間遠心した。プロトプラストを333mMマンニトールおよび66.7mM CaCl2を含む水溶液に再懸濁し、40gで5分間遠心した。プロトプラストをW5 solution (154mM NaCl, 125mM CaCl2, 5mM KCl, 2mM Mes-KOH, pH 5.6)に懸濁し、氷上に1時間静置した。プロトプラスト懸濁液を40gで5分間遠心し、プロトプラスト濃度が2×106個/mlになるように、MaMg solution (400mM マンニトール, 15mM MgCl2, and 4mM Mes-KOH, pH 5.6)に懸濁した。
【0090】
(ii)組換えベクターの導入
上記で作製したベクターType 1、Type 2、Type 3、Type 4を、それぞれ120μlのプロトプラスト懸濁液と混合した後、140μlのPEG solution (400mM マンニトール, 100mM Ca(NO3)2, and 40% PEG)を加えて穏やかに混和し、7分間インキュベートした。約20分間かけて1mlのW5 solutionをプロトプラスト懸濁液に添加した。遠心により沈殿させたプロトプラストに、400mM マンニトールとW5 solutionを4:1の割合で混ぜた溶液を1ml添加した。遠心により沈殿させたプロトプラストに、1%スクロース、400mM マンニトールおよび0.3mMカルベニシリンを含むLS培地を0.5 ml添加し、暗所25 ℃で24時間培養した。
【0091】
(3)GPF処理
上記で得られた、培養細胞を液体窒素中を用いて破砕し、実施例1と同様の方法で、GPF処理した。
【0092】
(4)ウェスタン解析
実施例1と同様の方法で、ウェスタン解析を行った。結果を図3、図4に示す。
ベクターType 1を導入した場合は、17 kDa(バンド1)と20 kDa (バンド2)の2本のバンドが検出され、23 kDaのバンドは検出限界以下であった(図3)。タンパク質サンプルをGP
Fで処理した後にウェスタン解析を行った場合、バンド2が消失しバンド1のみが検出された。このことから、一過性発現実験においても2×Stx2eB-PG12にはN-結合型糖鎖が付加されることがわかった。ベクターType 2を発現した場合も、バンド1とバンド2の2本のバンドが検出された(図3)ことから、Stx2eB C末端のAsnは主な修飾部位ではないと考えられる。一方、ベクターType 3を発現した場合にはバンド1のみが検出された(図3)。このことからStx2eBのAsn-Thr-Cys配列中のAsn(配列番号1の55位)にN-結合型糖鎖が付加されていると考えられる。同時に、Asn-Thr-Cys配列中のAsnをSerに置換することでN-結合型糖鎖付加を回避できることがわかった。また、ベクターType 4を発現した場合には、バンド1のみが検出された(図4)。このことから、三番目のCys残基がN-結合型糖鎖付加において重要であり、同時にこのCysに変異を導入することでN-結合型糖鎖の付加を回避できることがわかった。
【0093】
[試験例3]様々な植物細胞を用いた一過性発現実験
イネの培養細胞、タバコの培養細胞、コマツヨイグサの葉から作製したプロトプラストを用いてベクターType 2、ベクターType 3の一過性発現実験を行った。
【0094】
(1)一過性発現実験
(i)プロトプラストの作製
イネの培養細胞、タバコの培養細胞、コマツヨイグサの葉を用いて、試験例2と同様の方法によりプロトプラスト懸濁液を調製した。
【0095】
(ii)組換えベクターの導入
上記で作製したベクターType 2、Type 3を、それぞれ120μlのプロトプラスト懸濁液と混合した後、140μlのPEG solution (400mM マンニトール, 100mM Ca(NO3)2, and 40% PEG)を加えて穏やかに混和し、7分間インキュベートした。約20分間かけて1mlのW5 solutionをプロトプラスト懸濁液に添加した。遠心により沈殿させたプロトプラストに、400mM マンニトールとW5 solutionを4:1の割合で混ぜた溶液を1ml添加した。遠心により沈殿させたプロトプラストに、1%スクロース、400mM マンニトールおよび0.3mMカルベニシリンを含むLS培地を0.5 ml添加し、暗所25 ℃で24時間培養した。
【0096】
(2)ウェスタン解析
試験例1と同様の方法で、ウェスタン解析を行った。結果を図5に示す。
いずれの細胞を用いた場合も、ベクターType 2を導入した場合は、17 kDa(バンド1)と20 kDa (バンド2)の2本のバンドが検出されたが、ベクターType 3を発現した場合にはバンド1のみが検出された。このことから、様々な植物種において、Asn-Thr-Cys配列中のAsnにN-結合型糖鎖が付加されており、同時にAsn-Thr-Cys配列中のAsnをSerに置換することでN-結合型糖鎖付加を回避できることがわかった。
【0097】
[試験例4]様々な植物細胞を用いた形質転換実験
一過性発現実験においてN-結合型糖鎖の付加が見られなかったベクターType 3の有用性を、シロイヌナズナ培養細胞、レタス子葉断片を用いた形質転換実験で確認した。
【0098】
(1)形質転換
試験例1と同様の方法で、シロイヌナズナ培養細胞、レタス子葉断片の形質転換を行った。
【0099】
(2)ウェスタン解析
試験例1と同様の方法で、ウェスタン解析を行った。結果を図6に示す。
ベクターType 3による形質転換体では、17 kDaのバンド1に相当するシグナルのみが検出された。このことから、形質転換体においても、Stx2eBのAsn-Thr-Cys配列中のAsn(配
列番号1の55位)をSerに置換することでN-結合型糖鎖付加を回避できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、ブタ浮腫病ワクチンの開発に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)又は(B)に示す、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質をコードする、DNA。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の下記の部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列を有する、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X−Cys(Xは、任意のアミノ酸を示す)
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の前記部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加したアミノ酸配列を有し、かつ、下記の部分アミノ酸配列を含まない、Stx2e免疫原性を有する改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X1−Cys(X1は、Pro又はAsp以外のアミノ酸を示す)
【請求項2】
2つ又は3つの、下記の(A)及び/又は(B)に示す、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質が、それぞれ、下記の特徴(x)及び(y)を有するペプチドを介してタンデムに連結された、ハイブリッドタンパク質をコードする、DNA。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の下記の部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列を有する、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X−Cys(Xは、任意のアミノ酸を示す)
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の前記部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加したアミノ酸配列を有し、かつ、下記の部分アミノ酸配列を含まない、Stx2e免疫原性を有する改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X1−Cys(X1は、Pro又はAsp以外のアミノ酸を示す)
(x)アミノ酸の個数が12〜30個
(y)Proの含有率が20〜35%
【請求項3】
前記部分アミノ酸配列の改変が、前記55位のアミノ酸の、Serへの置換である、請求項1又は2に記載のDNA。
【請求項4】
前記部分アミノ酸配列の改変が、前記57位のアミノ酸の、Alaへの置換である、請求項1〜3の何れか一項に記載のDNA。
【請求項5】
アミノ末端に植物由来の分泌シグナルペプチドが付加された前記ハイブリッドタンパク質をコードする、請求項2〜4の何れか一項に記載のDNA。
【請求項6】
カルボキシル末端に小胞体残留ペプチド、又は液胞移行シグナルペプチドが付加された前記ハイブリッドタンパク質をコードする、請求項2〜5の何れか一項に記載のDNA。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のDNAを含む組換えベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換植物細胞又は形質転換植物。
【請求項9】
請求項8に記載の形質転換植物から得られる種子。
【請求項10】
請求項8に記載の形質転換植物細胞若しくは形質転換植物を原料とする、ブタ浮腫病ワクチン。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のDNAを、植物細胞内で発現させることを含む、
Stx2e免疫原性を有するタンパク質の生産方法。
【請求項12】
下記の(A)又は(B)の改変Stx2e Bサブユニットタンパク質。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の下記の部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列を有する、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X−Cys(Xは、任意のアミノ酸を示す)
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の前記部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加したアミノ酸配列を有し、かつ、下記の部分アミノ酸配列を含まない、Stx2e免疫原性を有する改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X1−Cys(X1は、Pro又はAsp以外のアミノ酸を示す)
【請求項13】
2つ又は3つの、下記の(A)及び/又は(B)に示す、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質が、それぞれ、下記の特徴(x)及び(y)を有するペプチドを介してタンデムに連結された、ハイブリッドタンパク質。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の下記の部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列を有する、改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X−Cys(Xは、任意のアミノ酸を示す)
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の55位〜57位の前記部分アミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加したアミノ酸配列を有し、かつ、下記の部分アミノ酸配列を含まない、Stx2e免疫原性を有する改変Stx2e Bサブユニットタンパク質
Asn−X1−Cys(X1は、Pro又はAsp以外のアミノ酸を示す)
(x)アミノ酸の個数が12〜30個
(y)Proの含有率が20〜35%
【請求項14】
請求項12に記載のタンパク質又は請求項13に記載のハイブリッドタンパク質を細胞内に保持する植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19719(P2012−19719A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159069(P2010−159069)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、「植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】