説明

糠を主体とした調味料材料又は食品材料の製造方法及び前記材料を用いた調味料及び食品

【課題】 糠を主体とした調味料,食品及びこれらの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】 発酵調味糠を主成分とする調味料及び食品の製造方法であって、
糠と調味料とを混ぜた調味糠を準備する工程と、前記調味糠にタンパク成分を投入し、前記タンパク成分の発酵を促して発酵調味糠を生成する工程と、一定期間経過後に、余分な前記タンパク成分と前記発酵調味糠とを分離する工程と、前記余分なタンパク成分を分離した前記発酵調味糠を所定の環境下に置き、さらに発酵を促進させる工程と、前記発酵調味糠から水分を除去、乾燥させて粉砕し、パウダー状又は顆粒状にする工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糠を主体とした調味料材料又は食品材料の製造方法及び前記材料を用いた調味料及び食品に関し、特に、糠に豊富に含まれる各種ビタミン,各種ミネラル,食物繊維以外に、カルシウム,タンパクやタンパク分解成分(アミノ酸,ペプチド)を豊富に含む調味料材料又は食品材料の製造方法及び前記材料を用いた調味料及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
糠(ぬか)は、米,麦,そば等の穀物を精白した際に発生するもので、それ自体が食されることはない。漬け物等の糠床や糠油の原料として使用されることはあるが、漬け物等を上げた後又は糠油を搾取した後は、廃棄されているのが通常である。
一方、糠は、鉄分やマグネシウム,マンガン等のミネラルや、各種ビタミン(特にビタミンE)、食物繊維が豊富な他、人体に有用な他の栄養成分も多量に含まれていることから、近年、食品として利用することに注目されている。
しかし、糠は食感,匂い及び味覚等が悪く、そのままでは食品として利用することはできない。
そのため、従来より、糠を食品として利用できるようにした提案が種々なされている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
特許文献1では、米糠にリンゴ酢等の調味料を加えて攪拌しつつ煮詰め、ペースト状にして米糠食品を得ている。
また、特許文献2では、遠心脱水した脱脂米糠及び/又は脱脂米胚芽にマグネシウムを添加した後、凍結乾燥して、脱脂米糠の乾燥粉末を得ている。
さらに特許文献3では、米糠を煎って雑菌を取り除き、カプセル又はソフトカプセルで包んで錠剤状にしたサプリメントとしたり、調味料で味付けして焼き固めて健康食品としたりしている。
【特許文献1】特開2004−147623号公報
【特許文献2】特開2005−204518号公報
【特許文献3】特開2007−68523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の方法は、いずれも糠を食品化するものとして注目に値する。
本発明は、糠の食品化をさらに推進するためになされたもので、糠の調味料及び食品としての利用の可能性を拡げ、特に、糠に本来的に含まれる成分以外に、血圧降下や疲労回復などに効果のあるとされるタンパク分解成分(アミノ酸,ペプチド)を豊富に含む糠を主体とした調味料材料,食品材料の製造方法及びこの製造方法に製造された調味料及び食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、発酵調味糠を主成分とする調味料材料及び食品材料の製造方法であって、糠と調味料とを混ぜた調味糠を準備する工程と、前記調味糠にタンパク成分を投入し、前記タンパク成分の発酵を促して発酵調味糠を生成する工程と、一定期間経過後に、余分な前記タンパク成分と前記発酵調味糠とを分離する工程と、前記余分なタンパク成分を分離した前記発酵調味糠を所定の環境下に置き、さらに発酵を促進させる工程と、前記発酵調味糠から水分を除去、乾燥させて粉砕し、パウダー状又は顆粒状にする工程とを有する方法である。
【0006】
前記余分なタンパク成分を分離した前記発酵調味糠を一定期間天日干しして水分を除去するとともに発酵を促進させてもよいし、前記余分なタンパク成分を分離した前記発酵調味糠の発酵促進の後に、前記発酵調味糠を焙煎又はフリーズドライ法により前記発酵調味糠から水分を除去するようにしてもよい。
なお、前記タンパク成分は、鯖、鰺、鰯、秋刀魚等の青魚の身又は切り身若しくは粉砕片を用いることができる。このようなタンパク成分を用いることで、鯖、鰺、鰯、秋刀魚等の糠漬けを生産しつつ、本発明の調味料材料や食品材料を得ることができる。
【0007】
本発明の調味料又は食品は、請求項1〜4のいずれかに記載の方法によって製造される発酵調味糠を主成分とする調味料又は食品であって、前記パウダー状又は顆粒状の前記発酵調味糠をそのまま又は所定の具材を加えて調味料とし若しくは前記顆粒状の前記発酵調味糠を固形化して食品としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、調味糠に漬けたタンパク成分が一定期間の間に発酵することで、発酵調味糠にタンパク成分の他アミノ酸やペプチド(うまみ成分)が多く含まれるに至る。特に、本発明では、発酵調味糠をさらに一定期間所定の環境下において発酵を促進させるので、アミノ酸やペプチドを豊富に含んだ調味料材料及び食品材料を簡単かつ低コストで得ることができる。また、例えば、鯖等の青魚の糠漬けに使用した発酵調味糠を、有効に活用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
なお、この実施形態では、鯖のへしこを生産しつつ本発明の発酵調味糠を生産するものとして説明する。
(1) 調味糠の生成
糠は米糠を用いた。米糠に調味料(醤油、みりん、うまみ調味料、たかのつめ等)と食塩を添加して調味糠を作る。なお、調味料の分量は、一般的な鯖のへしこを生産するのに用いられる分量でよい。
また、この際に適宜に乳酸菌や酵母菌等の発酵促進細菌を投入して一定期間(1週間〜2週間程度)置き、調味糠を予発酵させるものとしてもよい。
【0010】
(2) タンパク成分の準備
この実施形態においてタンパク成分は鯖である。鯖はよく水洗いした後、内臓とエラを取って、漬け込みやすいように切り身にする。この工程は、一般的な鯖のへしこを生産する工程における切り身の準備工程と同じである。
(3) 漬け込み,発酵
調味糠又は予発酵させた調味糠を糠樽に投入し、糠樽内の調味糠に(2)の鯖の切り身を投入して漬け込む。漬け込みの手順及び温度や湿度等の漬け込みの条件は一般的な鯖のへしこの生産工程と同じである。
【0011】
(4) 分離
一定期間(通常は半年から一年)経過後に、鯖の切り身を調味糠から取り出し、調味糠と鯖とを分離する。このとき、鯖のへしこが生産されるとともに、調味糠は相当程度発酵が進み、発酵調味糠となっている。
(5) 天日干し
鯖の切り身を取り出した発酵調味糠を糠樽から取り出し、天日干しする。
天日干しの目安は、1週間から10日程度である。
これにより、発酵調味糠から40%〜50%程度の水分が抜け、かつ、発酵が促進される。
【0012】
(6) 焙煎又はフリーズドライ
(5)の発酵調味糠を焙煎又はフリーズドライ加工した後、粉砕してパウダー状又は顆粒状にする。
(7) 調味料又は食品
パウダー状の発酵調味糠はそのままで塩の代用として、各種料理に使用することができる。また、ごまやのり,乾燥卵等を添加して、ふりかけとすることができる。
さらに、顆粒状の発酵調味糠をタブレット状に固化して、サプリメントとすることができるほか、また、顆粒状の発酵調味糠は、ビスケット等の菓子やパンに混ぜて使用することも可能である。
【0013】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記の説明では、鯖のへしこの生産工程を例に挙げて説明したが、鰺や鰯等の他の魚の糠漬けの生産工程で本発明の発酵調味糠を得るようにしてもよい。
また、米糠に限らず、麦,そば等の穀物の糠を使用してもよい。
さらに、上記の説明では鯖を切り身としたが、身そのものであってもよく、例えば乾燥させた鯖等の魚の身を粉砕した粉砕片であってもよい。なお、粉砕片や小片化した切り身の場合、発酵調味糠との分離が困難であるので、粉砕片や切り身をそのまま具材として用いるとよい。
また、上記の説明では焙煎又はフリーズドライ法により発酵調味糠から水分を除去するようにしているが、天日干し等のような乾燥作業を持続させることで、焙煎又はフリーズドライ法によることなく発酵調味糠から水分を除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、若狭地方の特産である鯖のへしこのように、青魚の糠漬けに使用した糠の有効活用に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵調味糠を主成分とする調味料材料及び食品材料の製造方法であって、
糠と調味料とを混ぜた調味糠を準備する工程と、
前記調味糠にタンパク成分を投入し、前記タンパク成分の発酵を促して発酵調味糠を生成する工程と、
一定期間経過後に、余分な前記タンパク成分と前記発酵調味糠とを分離する工程と、
前記余分なタンパク成分を分離した前記発酵調味糠を所定の環境下に置き、さらに発酵を促進させる工程と、
前記発酵調味糠から水分を除去、乾燥させて粉砕し、パウダー状又は顆粒状にする工程と、
を有することを特徴とする糠を主体とした調味料材料又は食品材料の製造方法。
【請求項2】
前記余分なタンパク成分を分離した前記発酵調味糠を一定期間天日干しして水分を除去するとともに発酵を促進させることを特徴とする請求項1に記載の発酵調味糠を主成分とする調味料材料又は食品材料の製造方法。
【請求項3】
前記余分なタンパク成分を分離した前記発酵調味糠の発酵促進の後に、前記発酵調味糠を焙煎又はフリーズドライ法により前記発酵調味糠から水分を除去することを特徴とする請求項1に記載の発酵調味糠を主成分とする調味料材料又は食品材料の製造方法。
【請求項4】
前記タンパク成分が鯖、鰺、鰯、秋刀魚等の青魚の身又は切り身若しくは粉砕片であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発酵調味糠を主成分とする調味料材料又は食品材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法によって製造される発酵調味糠を主成分とする調味料又は食品であって、前記パウダー状又は顆粒状の前記発酵調味糠をそのまま又は所定の具材を加えて調味料とし若しくは前記顆粒状の前記発酵調味糠を固形化して食品としたことを特徴とする調味料及び食品。


【公開番号】特開2010−94097(P2010−94097A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269244(P2008−269244)
【出願日】平成20年10月18日(2008.10.18)
【出願人】(500470781)有限会社毘沙門寿司 (1)
【Fターム(参考)】