説明

糠臭が取り除かれた米糠浸出物の製造方法、糠臭が取り除かれた米糠浸出物、及びγ−アミノ酪酸の製造方法

【課題】工程が簡略化され、有用酵素群の吸着を抑制しながら糠臭の原因物質である脂肪酸群を選択的且つ連続的に除去可能な米糠浸出物の製造方法、糠臭が取り除かれた米糠浸出物、及びγ−アミノ酪酸を含有する糠臭が取り除かれた溶液を製造する方法を提供する。
【解決手段】米糠を溶媒に含浸させ、米糠由来の粗酵素を含有する浸出液を作製する米糠浸出液作製工程と、米糠浸出液作製工程により得られた浸出液を、イオン交換基にあらかじめ特定のイオンが吸着されたイオン交換樹脂と接触させて、イオン交換樹脂に糠臭物質を吸着させる糠臭物質除去工程を経ることにより、糠臭が選択除去された米糠浸出物を得る。更に、当該米糠浸出物を、グルタミン酸を含有する溶液に添加し、浸出物に含まれる酵素反応により、効率的にγ−アミノ酪酸を含有する溶液を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠由来の糠臭が取り除かれた米糠浸出物の製造方法、当該製造方法により得られた米糠浸出物、当該米糠浸出物を用いたγ−アミノ酪酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素は我々の生活を支える重要な物質であり、洗剤をはじめとする日用品から医薬品の製造まで幅広く利用されている。中でも、酵素を利用して製造された食品は、化学調味料を使用して製造した食品とは異なり、種々の生理活性を有する化合物が含有されることから、近年機能性健康食品としての需要が年々増加している。例えば、グルタミン酸の酵素反応によって製造されるγ−アミノ酪酸は、降圧効果あるいはリラックスをもたらす効果があるアミノ酸として最近着目され、現在では種々の食品、サプリメントなどに添加されるに至っている。
【0003】
一方、米を精米する過程で生じる米糠中には様々な酵素が存在し、グルタミン酸脱炭酸酵素のほか、アミラーゼなど複数の酵素の存在が報告されている。そのため、これまで廃棄物として処理されていた物質を有効に利用するという観点から、これら米糠中に存在する酵素を利用してγ−アミノ酪酸等の有用な物質を製造する手法、技術について研究されている(例えば、特許文献1−5)。
【0004】
米糠中に含まれる酵素を用いて酵素反応を行う場合、得られる溶液や生成物に米糠特有の糠臭が残ることが問題となる。そのため、当該糠臭を低減する手段が研究されている(例えば、特許文献6、7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−201651号公報
【特許文献2】特開2003−245093号公報
【特許文献3】特開2007−49910号公報
【特許文献4】特開平09−140361号公報
【特許文献5】特開平08−280394号公報
【特許文献6】特開平08−280341号公報
【特許文献7】特開2007−185156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜5等に記載された手法の多くは米糠に基質溶液を直接含浸してγ−アミノ酪酸を製造する方法であるが、糠臭を取り除くことについては何ら考慮されていない。また、γ−アミノ酪酸製造時に投入される米糠の固体濃度は17質量%程度しかなく、高濃度での反応が行われていないこと、分離精製の工程が複雑であること、などの問題点がある。このような操作条件を選択せざるを得ない原因の一つとして、米糠粒子のハンドリングの難しさが考えられる。
【0007】
米糠粒子は、玄米を機械的に研磨して生じる米の削りかすの一部であることから、その粒子径は比較的小さく、また吸湿性に富むものである。従って、米糠を水中に懸濁させると多量の水分を吸収し、粘度が高いスラリーが形成される。その結果、γ−アミノ酪酸の分離工程の際に米糠をろ過等によって除去することが困難になるばかりでなく、固体濃度が高い場合には懸濁液の撹拌さえも行うことが困難になってしまう。
【0008】
一方、米糠由来の糠臭は、主にリノール酸等の不飽和脂肪酸の酸化反応により生成すると考えられることから、温和な条件において酵素反応を行う場合には、酵素反応によるγ−アミノ酪酸等の生成反応と不飽和脂肪酸の液相酸化反応も同時に進行することになり、結果系内への糠臭の蓄積が生じる。従って、生成するγ−アミノ酪酸等を様々な用途に応用する場合には、酵素反応前に糠臭の原因となる脂肪酸を選択的に除去するか、又は酵素反応終了後に脂肪酸酸化物を選択的に除去する操作を必要とする。従来において、液相中において水溶性の物質を除去する場合、活性炭をはじめとするさまざまな吸着剤を利用した吸着操作が工業的に広く用いられているが、当該活性炭は吸着剤としては優れているものの、多成分が混在する系においては選択性が低く、除去対象である脂肪酸類の他、必要な酵素類まで吸着してしまい、酵素群の損失を生ずる。これに対し、特許文献6に開示されているように、乳酸発酵処理と、ガス体接触処理、超音波処理、又は放射線照射処理と、を有する製造方法とした場合、糠臭をある程度除去できるものの、製造工程が煩雑となる他、所望の粗酵素が得られない虞がある。また、超音波処理を行う場合には、超音波照射により溶液中にヒドロキシラジカルが生成することから、有機物の酸化分解が逐次的に進行し、場合によっては人体に対し毒性を示す分解中間体が生成する虞がある。放射線処理を行った場合も同様に分子鎖の断片化が生じて分解される。よって、特許文献6に開示された手段は、糠臭物質を分解処理するものであり、糠臭物質を選択的に除去するものではない。従って、食品等に応用する場合には、これらの分解生成物を除去する操作が必要となり、工程が煩雑となってしまう。一方、特許文献7に記載されたような新たに食用油を配合する製造方法としても、特許文献6と同様に、米糠由来の糠臭物質を選択的に除去できるわけではなく、より効率的に糠臭物質を選択除去できる製造方法が求められている。
【0009】
そこで本発明は、工程が簡略化されるとともに、有用酵素群の吸着を抑制しながら糠臭の原因物質である脂肪酸群を選択的且つ連続的に除去可能な米糠浸出物の製造方法、糠臭が取り除かれた米糠浸出物、及びγ−アミノ酪酸を含有する糠臭が取り除かれた溶液を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、イオン交換反応により、有用酵素等を含む溶液から、選択的に不飽和脂肪酸等の糠臭物質を選択除去できることを知見し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、第一の本発明は、米糠を溶媒に含浸させ、米糠由来の粗酵素を含有する浸出液を作製する、米糠浸出液作製工程と、米糠浸出液作製工程により得られた浸出液を、イオン交換基にあらかじめ特定のイオンが吸着されたイオン交換樹脂と接触させて、当該イオン交換樹脂に糠臭物質を吸着させるとともに、糠臭物質が除去された米糠浸出物を得る、糠臭物質除去工程と、を有する、米糠浸出物の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0012】
ここに「米糠浸出液」とは、米糠を溶媒に含浸させ、米糠から浸出する成分を含む溶液のことであり、当該溶液にコロイド等の不溶物質が含まれていてもよい概念である。「糠臭物質」とは、米糠に含まれる有用酵素以外の、米糠由来の糠臭の原因となる物質のことであり、上記不飽和脂肪酸や脂肪酸酸化物等を例示することができる。「米糠浸出物」とは、糠臭物質除去の有無に関わらず、米糠を溶媒に含浸させて得られる米糠浸出液を用いてなるものをいうが、第一の本発明においては、糠臭物質除去工程により糠臭物質が除去された米糠浸出液(以下、「糠臭除去浸出液」という場合がある。)とした後、当該糠臭除去浸出液をそのまま米糠浸出物として用いる他、糠臭除去浸出液を凍結乾燥等によって乾燥させた米糠浸出物や、糠臭除去浸出液を凍結させた氷結体の米糠浸出物等を含む概念である。また、「特定のイオン」とは、イオン交換反応により糠臭物質を選択除去可能なイオンのことをいう。例えば、反応系内がアルカリ性雰囲気とはならないような陰イオンであって、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の陰イオン、又は酢酸イオン、クエン酸イオン等の有機酸由来の陰イオンのいずれかを用いることができる。このうち、食品へ適用する観点からは、塩化物イオン、硫酸イオン、又は有機酸由来の陰イオンを用いることが好ましく、食品への適用性及び糠臭物質の選択除去性を効果的に両立させる観点から、塩化物イオンを用いることが特に好ましい。尚、本願において、「糠臭物質が除去された」等の表現については、糠臭物質が低減されていればよく、必ずしも完全除去を意味しない。
【0013】
第一の本発明において、イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂であることが好ましい。含有アミノ酸の吸着を抑制しながら糠臭物質である脂肪酸の選択吸着をより効率的に行うことができるからである。
【0014】
第一の本発明において、イオン交換樹脂相のイオン交換基には、あらかじめ塩化物イオンが吸着されていることが好ましい。あらかじめイオン交換基に塩化物イオンを吸着させた後に粗酵素等を含む米糠浸出液を通液すると、含有アミノ酸の吸着を抑制しながらイオン交換反応が効率的に行われ、糠臭物質である脂肪酸をより効率的に選択吸着できるからである。
【0015】
第一の本発明において、糠臭物質除去工程を経たイオン交換樹脂を、前処理したのち洗浄し、塩化物イオン含有溶液と接触させて、イオン交換樹脂を再生する、再生工程をさらに有することが好ましい。「前処理」としては例えば、アルカリ処理を挙げることができる。イオン交換樹脂に前処理を施した上で、洗浄と塩化物イオン含有溶液による接触とを行うことで、イオン交換樹脂を効率的に再生することができるとともに、再度イオン交換樹脂を使用するにあたり、含有アミノ酸の吸着を抑制しながらイオン交換反応を効率的に行うことができ、且つ、糠臭物質である脂肪酸をより効率的に選択吸着できる。また、吸着完了後イオン交換樹脂をいちいち取り外して再生処理する必要がなく、反応系に用いられる装置をそのまま利用できるため、製造工程が複雑化することがない。
【0016】
第二の本発明は、上記第一の本発明にかかる製造方法により製造された、糠臭が取り除かれた米糠浸出物を提供して前記課題を解決するものである。
【0017】
第三の本発明は、上記第二の本発明にかかる米糠浸出物を、グルタミン酸を含有する溶液に添加する工程を備えてなる、γ−アミノ酪酸を含有する溶液を製造する方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0018】
第四の本発明は、米糠を溶媒に含浸させ、米糠由来の粗酵素を含有する浸出液を作製する、米糠浸出液作製工程と、米糠浸出液作製工程により得られた浸出液から米糠浸出物を作製する、米糠浸出物作製工程と、米糠浸出物作製工程により得られた米糠浸出物を、グルタミン酸を含有する溶液に添加して、γ−アミノ酪酸を生成させる、酵素反応工程と、酵素反応工程により得られた、γ−アミノ酪酸を含む溶液を、イオン交換基にあらかじめ特定のイオンが吸着されたイオン交換樹脂と接触させて、該イオン交換樹脂に糠臭物質を吸着させる、糠臭物質除去工程と、を有する、γ−アミノ酪酸を含有する溶液を製造する方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0019】
第四の本発明において、「米糠浸出液作製工程により得られた浸出液から米糠浸出物を作製する」とは、米糠浸出液を乾燥させて粉末状の米糠浸出物とする場合や、浸出液を凍結させて氷結体の米糠浸出物とする場合の他、浸出液をそのまま用いて米糠浸出物とする場合も含む概念である。「特定のイオン」とは、上記第一の本発明における特定のイオンと同様のものが用いられる。
【発明の効果】
【0020】
第一の本発明によれば、有用酵素群の吸着が抑制されるとともに糠臭の原因物質である脂肪酸群を選択的且つ連続的に除去しながら、酵素活性を有する米糠浸出物を製造することができる。
第二の本発明によれば、糠臭が取り除かれるとともに、高い酵素活性を有する米糠浸出物とすることができる。
第三の本発明又は第四の本発明によれば、糠臭が取り除かれたγ−アミノ酪酸を含む溶液を製造することができ、食品等に好適に用いることができる。また、米糠を直接酵素反応に用いず、米糠浸出物を用いるため、ハンドリングが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】イオン交換樹脂へ通液する前後における米糠浸出液に含まれる成分を示す図である。
【図2】イオン交換樹脂へ通液する前後における米糠浸出液に含まれる成分、及びイオン交換樹脂に吸着された成分を示す図である。
【図3】イオン交換樹脂によりイオン交換された米糠浸出物とグルタミン酸とを用いて酵素反応を行った場合における、生成したGABAの濃度を示す図である。
【図4】酵素反応終了後の溶液をイオン交換樹脂で処理した場合と、処理しない場合とについて、溶液中に含まれるγ−アミノ酪酸の濃度を比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するためには、米糠浸出液、及び、イオン交換基にあらかじめイオンが吸着されたイオン交換樹脂を必須とし、任意に、イオン交換樹脂を調整するための溶液(以下、「溶液A」という場合がある。)、イオン交換樹脂を再生する際の前処理用の溶液(以下、「溶液B」ということがある。)、及びイオン交換樹脂を洗浄するための溶液(以下、「溶液C」という場合がある。)を用いることが好ましい。
【0023】
以下、本発明の一実施形態について詳述する。
【0024】
<米糠浸出液>
本実施形態に用いられる米糠浸出液は、米糠を溶媒に含浸させ、所定時間静置した後、固液分離操作により浸出液を回収することによって得られる。米糠を含浸させる溶媒としては特に限定されず、米糠中の酵素を浸出させることができるものであればよい。但し、食品や医薬品等を製造する場合の安全性を考慮すると、水を用いることが好ましい。米糠と溶媒の比率、含浸温度、含浸時間等については、そのパラメーターの組み合わせによって適宜最適化されるが、含浸温度については、目的の酵素が失活しない温度域となるように制御される。米糠の含浸によって酵素を浸出させたのち、米糠残渣を分離することによって酵素を含有する浸出液とされる。固液分離操作については特に制限はなく、例えば遠心分離操作や圧搾操作が挙げられる。
【0025】
上述の米糠を溶媒に含浸する際に、あらかじめ米糠を網状の物質に内包させておくと、固液分離、抽出操作が容易となるため好ましい。網状の物質としては、例えば200メッシュのナイロン製網などが挙げられる。溶媒に溶解せず、米糠残渣がメッシュから漏れないようなものであれば、材質、メッシュサイズはこれに限るものではない。米糠を網状の物質に内包させている場合、溶媒含浸物から米糠残渣を分離することによって浸出液を得る操作は、遠心分離による脱水操作が簡便であるが、圧搾操作による溶液の回収も可能である。得られる浸出液は、米糠残渣の分離方法にもよるが、通常、コロイド状態の微小固体物質が分散された、白濁した溶液である。
【0026】
得られた浸出液には上記のようにコロイド状物質が含有されていることから、その溶液の塩濃度あるいはpHを調整することにより、コロイド状物質の析出量を増加させ、または溶解させることで、コロイド状物質の濃度を低下させてもよい。これによりタンパク質を除去する場合は、溶液のpHを除去の対象となるタンパク質の等電点に調整するとその除去効率が向上する。特にγ−アミノ酪酸の生成速度が速くなるpH付近において等電点沈澱操作を行うと、γ−アミノ酪酸の製造を効率よく行うことができるとともに、γ−アミノ酪酸の製造時にタンパク質含有量が抑制された製品を得ることができる。この場合において、pHは5以上7以下の範囲に調整されることが好ましい。米由来のタンパク質の濃度を低減することで、アレルギーのリスクを低下させ、最終製品の品質を向上させることができる。
【0027】
<イオン交換樹脂>
本実施形態に用いられるイオン交換樹脂は、グルタミン酸脱炭酸酵素やアミラーゼ等の酵素を選択的に吸着せず、糠臭物質である脂肪酸類を選択的に吸着するものであれば特に限定されないが、陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。陰イオン交換樹脂としては、例えば、強塩基性イオン交換樹脂DIAION SA−10A、SA−11Aや樹脂の豊潤収縮耐性が高いポーラスタイプのPA−308(いずれも三菱化学社製)等を用いることができる。このようなイオン交換樹脂がカラム等の容器に充填され、上記米糠浸出液のイオン交換反応に供される。
【0028】
また、本実施形態において、酵素群の細孔内への侵入を抑制し、イオン交換基に優先的に糠臭物質である脂肪酸群を吸着させる観点からは、ゲル型のイオン交換樹脂であって比較的ミクロポアの発達したもの、あるいは塩濃度の変化による膨潤、収縮に対して高い抵抗力を有し、且つ、イオン交換反応速度が速いポーラス型の樹脂を用いることが好ましい。糖類の脱色、分子量が高い有機酸の除去等を行う場合、ハイポーラス型の吸着剤を用いることがあるが、酵素に対して細孔径が大きすぎる樹脂を用いると、条件によっては有用な酵素群の損失を生じる可能性がある。また、本実施形態において低架橋度の樹脂を用いると、塩濃度に応じてゲルの膨潤、収縮が生じるため、非イオン性物質(糖質、着色成分等)の吸着、脱着が容易となる。
【0029】
<イオン交換樹脂を調整するための溶液(溶液A)>
本実施形態においては、上記イオン交換樹脂は、溶液Aにより調整されることで、あらかじめイオン交換基に特定のイオンが吸着された状態にある。当該イオンとしては、反応系内がアルカリ性雰囲気とはならないような陰イオンが好ましく、例えば、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の陰イオン、及び酢酸イオン、クエン酸イオン等の有機酸由来の陰イオンのいずれかを用いることが好ましい。このうち、食品へ適用する観点からは、塩化物イオン、硫酸イオン、又は有機酸由来の陰イオンを用いることが好ましく、食品への適用性及び糠臭物質の選択除去性を効果的に両立させる観点から、塩化物イオンとすることが特に好ましい。これらは組み合わせて用いることもできる。このことで糠臭物質の加水分解が避けられるとともに、アミノ酸の吸着を抑制することができる。例えば、上記イオン交換樹脂に塩化ナトリウム溶液等の塩化物イオンを含む溶液を通液して、イオン交換基に塩化物イオンを吸着させる。イオン交換樹脂の樹脂相は、溶液中に含まれる糠臭物質である脂肪酸類に起因するカルボキシル基が解離しやすく、且つ、当該脂肪酸類のアルカリ加水分解反応が生じない、弱酸性から中性付近のpH領域になるような物質をイオン交換させることが望ましい。具体的にはpHを3以上7以下とすることが好ましい。
【0030】
溶液Aの濃度、供給速度、供給時間については、イオン交換基にイオンが吸着する条件であれば特に限定されない。例えば、上記イオン交換樹脂を充填したカラム等の容器に、1N 塩化ナトリウム水溶液を、空間速度20で、30分通液し、樹脂相を塩化物イオン型に調整した後、同程度の空間速度、時間で蒸留水を通液することで、容器内に存在する塩化ナトリウム溶液を蒸留水で置換することにより、イオン交換樹脂が調整される。
【0031】
<イオン交換樹脂再生の際の前処理溶液(溶液B)>
本発明に用いられる溶液Bとしては、下記説明するように、イオン交換樹脂にイオン化して吸着した糠臭物質を容易に脱着可能な状態へと前処理する溶液であれば特に限定されない。例えば、疎水性タンパク質の一部を分解可能なアルカリ溶液とすることが好ましい。アルカリ溶液の具体例としては、水酸化物イオンを含む溶液であることが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属塩を含む溶液、又は、水酸化カルシウムや水酸化バリウム等のアルカリ土類金属塩を含む溶液とすることが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液とすることが特に好ましい。溶液Bの濃度としては、イオン交換樹脂のアルカリ処理が可能であれば特に限定されない。
【0032】
<イオン交換樹脂を洗浄するための溶液(溶液C)>
本実施形態において用いられる溶液Cとしては、イオン交換樹脂を洗浄することが可能な溶液であれば特に限定されない。例えば、水(イオン交換水、蒸留水等)とすることができる。また、イオン交換樹脂を溶液B及び上記溶液Aに交互に繰り返し接触させることで、イオン交換樹脂の再生の際、非イオン性物質の脱着と溶液Aに含まれるイオンの吸着とを、より効率的に行うことができる。
【0033】
以下、本発明の一実施形態にかかる米糠浸出物の製造方法について詳述する。
【0034】
<米糠浸出物の製造方法>
(米糠浸出液作製工程)
本実施形態にかかる米糠浸出物の製造方法は、米糠を溶媒に含浸させて米糠浸出液を作製する工程を備える。米糠浸出液の作製方法については、上記と同様であるため省略する。
【0035】
(糠臭物質除去工程)
得られた米糠浸出液は、上記イオン交換樹脂を充填したカラム等の容器に供給されて、固定層連続吸着操作が行われることで、糠臭物質がイオン交換樹脂に吸着され、米糠浸出液から除去される。除去対象となる糠臭物質は主に脂肪酸類であることから、これらの物質はカルボキシル基を有し、弱酸性からアルカリ性雰囲気においては陰イオンに解離する性質を有する。従って、特に、陰イオン交換樹脂を充填し、あらかじめイオン交換基に塩化物イオンなどのイオンを吸着させた後に、米糠浸出液を通液すると、脂肪酸類はイオン交換反応により樹脂相に選択的に吸着される一方、有用酵素群はイオン交換樹脂相にほとんど吸着せずに容器から、白濁したコロイド溶液として流出する。すなわち、当該コロイド溶液が、糠臭物質である脂肪酸類が低減、除去された糠臭除去浸出液である。この糠臭除去浸出液は、溶液のまま米糠浸出物とされる他、糠臭除去浸出液を乾燥させて粉体状の米糠浸出物とすることもでき、また、糠臭除去浸出液を凍結させた米糠浸出物とすることもできる。糠臭除去浸出液を乾燥する際には、凍結乾燥を行うことが好ましく、予備冷凍として寒剤による冷凍を行うことが望ましい。使用する寒剤は溶液を凍結するのに十分な冷却能力を有するものであればどのようなものを使用してもよく、メタノール−氷程度の冷却効果を有する寒剤でも十分利用可能である。これら各形態の米糠浸出物は、高い酵素活性を有するとともに、従来よりも糠臭が低減されたものであり、γ−アミノ酪酸等を生成するための、各種酵素反応に好適に用いられる。
【0036】
糠臭物質の吸着操作時には、時間の経過とともに樹脂相に濃い黄色から茶色の吸着帯が樹脂相上部から下部に向かって徐々に出現するが、この吸着帯が糠臭原因物質等を含む層に相当する。尚、吸着操作時の通液量は、全体の樹脂相長さに対する吸着帯の相対長さ等の指標により適宜判断され得る。
【0037】
イオン交換樹脂に吸着した糠臭物質等は、上記溶液A〜Cを用いて脱着され、イオン交換樹脂が再生される。以下、イオン交換樹脂の再生処理について説明する。
【0038】
(再生工程)
まず、糠臭物質である脂肪酸類を吸着したイオン交換樹脂を、溶液Bにより前処理する。イオン交換樹脂に吸着した糠臭物質等の脱着の際、溶液Bを先に通液することにより、イオン交換樹脂上で糠臭物質を脱着し易い形態へと変え、樹脂相下部から順に溶出させる。
【0039】
具体的には、例えば、糠臭物質除去工程における吸着操作の後、水を供給することにより容器内を置換してから、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を空間速度20程度の速度で供給する。そして、溶液Bの供給を続けることで、糠臭物質の一部も脱着し、徐々に容器から流出する。
【0040】
そして、前処理の後に溶液Cを通液し、残存反応物質を、洗浄、溶出した後、溶液Aを通液することで、イオン交換樹脂のイオン交換基に再度イオンが吸着された状態となる。再生工程においては、溶液Bによる前処理の後、溶液Cによる洗浄と、溶液Aによるイオン吸着とを交互に繰り返し行うことが好ましい。このことで、イオン交換樹脂の再生の際、非イオン性物質の脱着と溶液Aに含まれるイオンの吸着とを、より効率的に行うことができる。再生工程を経ることで、イオン交換樹脂は再生され、繰り返し粗酵素含有溶液を処理することが可能となる。
【0041】
具体的には、例えば、容器内を蒸留水で洗浄、置換した後、1Nの塩化ナトリウム水溶液を空間速度20で供給し、容器から流出する液を回収する。好ましくは蒸留水による洗浄操作と塩化ナトリウム水溶液による再生操作とを二回以上繰り返す。この際に得られる溶液は、糠臭原因物質等を含む溶液である。塩化ナトリウム水溶液を通液し、塩化物イオン型に再生された樹脂は、蒸留水により系内を置換したのち、再び米糠浸出液の吸着処理に使用される。
【0042】
上記説明においては、再生工程において溶液Bによる前処理を施すものとして説明したが、当該前処理を行わずに、溶液Cと溶液Aとを用いてイオン交換樹脂を洗浄、再生することも可能といえる。但し、イオン交換樹脂に吸着した物質を容易に脱着可能な形態とするとともに、再生工程を効率的に行う観点からは、洗浄、再生処理の前に前処理を施すことが好ましい。
【0043】
次に、上記工程により得られた米糠浸出物を用いた、γ−アミノ酪酸の製造方法について説明する。
【0044】
<γ−アミノ酪酸の製造方法>
上記、米糠浸出液作製工程、糠臭物質除去工程、並びに、任意に再生工程を備えることで、連続的に米糠浸出液から糠臭物質である脂肪酸類が除去され、糠臭が取り除かれた米糠浸出物が製造される。当該米糠浸出物を、グルタミン酸を含有する溶液に添加して酵素反応を行うことで、γ−アミノ酪酸を製造することができる。グルタミン酸からγ−アミノ酪酸を生成させる場合、所定の濃度、pHに調製したグルタミン酸水溶液中に所定量の米糠浸出物を添加し、酵素反応の活性を示す温度域の下で所定時間反応操作を行う。反応操作は連続型、回分型いずれの反応器を用いてもよい。中でも、高濃度のγ−アミノ酪酸を得るためには回分型反応器を用いることが好ましい。また、得られるγ−アミノ酪酸の濃度は、基質として添加したグルタミン酸の濃度、該物質の添加量、反応時間等の操作条件を変えることで制御が可能である。
【0045】
本実施形態にかかる米糠浸出物を用いてγ−アミノ酪酸を生成させる際、イオン交換膜を用いた透析を行うことで、酵素反応と分離操作とを同時に行うこともできる。特に、回分型反応器とイオン交換膜を用いた透析槽からなる組み合わせ型反応器により、γ−アミノ酪酸を含む溶液を製造すると同時に分離を行うと、非常に効率よくγ−アミノ酪酸が製造できるため好ましい。また、透析操作としては、拡散透析、電気透析等が挙げられる。透析槽は単膜または複数の膜から構成される室を有する装置で、少なくとも膜の一面に米糠浸出物を分散あるいは溶解した反応溶液を供給し、また反対側には透過物質を回収する溶液を流すことが好ましい。なお用いる膜は拡散透析法の場合には陽イオン交換膜が望ましい。
【0046】
供給側の溶液は、酵素の機能が発現する基質を含む溶液であれば、特に固定されるものではない。また、回収側の溶液は、酸、アルカリ、中性の電解質溶液いずれの溶液でも可能であるが、透過速度、膜の選択透過性は反応溶液のpHさらには回収側溶液のpHで大きく変わるため、目的に合わせた溶質を含む溶液を選択することが望ましい。
【0047】
透析槽の運転は、酵素反応の反応速度、目的物質の膜透過速度を考慮した場合、反応側回収側とも回分循環方式が好ましい。十分な溶液量および膜面積を確保できる場合には連続型の運転も可能である。
【0048】
上記において、γ−アミノ酪酸を含有する溶液に対し、さらに任意に固液分離処理や脱色処理を施してもよい。固液分離処理は従来公知のものが特に限定されず適用でき、例えば遠心分離操作により行われる。脱色処理についても従来公知のものが特に限定されず適用でき、例えば活性炭を用いた吸着により行われる。
【0049】
米糠中にはグルタミン酸脱炭酸酵素の他、アミラーゼをはじめとした複数の酵素が含まれていることが知られている。従って、例えば、でんぷん含有水溶液に本実施形態にかかる米糠浸出物を添加し、酵素反応の活性を示す温度域の下で所定時間反応操作を行えば、米糠浸出物中のアミラーゼの作用により還元糖を得ることができる。この場合における好ましい反応操作や分離操作の条件は、上述のγ−アミノ酪酸の生成分離の場合と同様である。
【0050】
また、本実施形態にかかる米糠浸出物の食品への応用を考える場合、グルタミン酸をγ−アミノ酪酸に変換すると、グルタミン酸減少による旨味の減少および、γ−アミノ酪酸の生成に伴う苦みの増加が生じ、食品の有する本来の味が変化することが考えられる。そのような場合、基質としてグルタミン酸の他に、酵素によって還元糖を生成するような、でんぷん、グリコーゲン、デキストリンなどのグルカンを主鎖とする多糖類を同時に添加、あるいはグルカンを含む穀物由来の食品に粉末を添加することで、酵素反応による還元糖の生成によりγ−アミノ酪酸の生成に伴う苦みを和らげることが可能になる。例えば、本実施形態にかかる米糠浸出物を、グルタミン酸を多く含むスープ、さらには発酵によって生成した大量のアミノ酸を含む、なれ鮨や麹漬け等の発酵食品に添加すれば、アミノ酸の含有率と種類を変えつつ、味を改善することができる。
【0051】
尚、上記説明においては、米糠浸出物の製造段階において、糠臭物質除去工程を備える一実施形態について説明した。しかしながら、糠臭が取り除かれたγ−アミノ酪酸等を含む溶液を製造する場合、必ずしもこの形態に限定されない。例えば、上記米糠浸出液作製工程から、糠臭物質が残存したままの当該米糠浸出液を用いて米糠浸出物を得て(米糠浸出物作製工程)、グルタミン酸含有溶液に添加して酵素反応を行うことでγ−アミノ酪酸を含む溶液を製造し、その後、当該γ−アミノ酪酸を含む溶液について、上記糠臭物質除去工程を行うことで、糠臭物質を取り除く形態としてもよい。尚、この実施形態において用いられる米糠浸出物についても、上記と同様に溶液状、粉体状、氷結体状等、形態を問わない。
【実施例】
【0052】
以下、上記工程により得られる種々の物質の特性を示すデータに基づき、本発明にかかる実施例について説明する。
【0053】
図1に、塩化物イオン型に調整した陰イオン交換樹脂を充填したカラムに、米糠浸出液を流して、イオン交換処理を行った溶液、及び未処理の溶液のそれぞれを乾燥して乾燥粉末とし、当該各乾燥粉末を水に溶解して、水溶性の物質について蛍光検出する逆相HPLCにより分析を行った結果を示す。図中の線Aは、イオン交換処理を行わない物質の測定結果、線Bはイオン交換処理を行った物質を測定した結果である。図より、イオン交換処理を行わない物質は2.5〜5分までの間に3つのピークが観測されているが、イオン交換処理を行った物質については、5分までの全体ピーク面積が減少するとともに、未処理物質に現れている最初のピークに相当するピークが消失していることが分かる。また、7分以降のHPLCクロマトグラムには、イオン交換処理を行った物質と未処理物質とで、大きな違いが見られない。このことから、イオン交換処理を行った物質について、7分程度までに現れる全体ピーク面積が減少したのは、イオン交換によって樹脂相に糠臭物質が吸着されたためであると考えられる。
【0054】
図2に、吸着操作の後、イオン交換樹脂に水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、前処理した後、塩化ナトリウム水溶液を用いてイオン交換樹脂に吸着している物質を脱着させた際に得られる溶液を、蛍光検出器を有する逆相HPLCにより分析を行った結果を示す。図中の線Cが、前処理や塩化ナトリウムによるイオン交換により溶出した物質を分析した結果である。図中の線A、Bについては、図1と同様である。この場合、各時間における線A、Bのピーク面積差は、樹脂相に吸着した物質量に相当する。また、水酸化ナトリウムによる化学変化を伴わないものとすると、線Cの分析結果は、線A、Bのピーク面積差に対応して増減することとなる。図2によれば、水酸化ナトリウムによる前処理を行った後に塩化ナトリウム水溶液で流出させた液においては、線Aの一つめのピークに相当するピーク1(線Bにおいてイオン交換処理により消失したピーク)に相当する物質が確認された。また、線Aの二つめ、三つめのピーク2、3に相当する物質は明確には確認されなかったが、保持時間が短時間側と長時間側にシフトした物質二種類が確認された。
【0055】
図3に、イオン交換処理を行った乾燥粉末を用いてグルタミン酸を基質としてGABAの生成実験を行った結果を示す。実験は40℃、pH5.5の下で行い、グルタミン酸の濃度を2mol/mとし、粉末添加量を0.75、1.5wt/vol%として、180分反応操作を行った。図より、いずれの実験においても、グルタミン酸からGABAが生成しており、イオン交換処理を行った場合でも米糠浸出物の酵素を高い収率で回収できたことが分かる。また、実験終了後の溶液を煮沸した溶液には、糠臭、糠の味がほとんど感じられず、イオン交換処理の効果が認められた。
【0056】
図4に、50gの米糠を100mlの蒸留水で水浸出した溶液を用い、温度40℃、pH5.5の下でグルタミン酸の濃度を2mol/mとした溶液500mlを用いてGABAの生成反応を180分行った場合の、溶液中のアミノ酪酸のクロマトグラムを示す(線D)。尚、図中には、実験終了後の溶液を塩化物イオン型の陰イオン交換樹脂で処理した場合の結果(線E)も併せて示す。図より、酵素反応終了後の溶液についてイオン交換処理を行うと、10分までに出現するアミノ酸群に関するピークの減少が若干確認されるものの、他のピークはイオン交換処理の有無に関わらずほぼ同じ強度を示すことが分かる。しかし、イオン交換処理を行った溶液からは糠臭、糠味はほとんど感じられず、塩化物イオン型の陰イオン交換樹脂を用いることで、反応終了後の溶液からアミノ酸群の損失を抑制しながら、糠臭物質を選択的に除去することができることが分かった。
【0057】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う糠臭が取り除かれた米糠浸出物の製造方法、糠臭が取り除かれた米糠浸出物、及びγ−アミノ酪酸の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、高い酵素活性を有するとともに、米糠由来の特有の糠臭、糠味が除去された米糠浸出物を製造することができる。また、本発明によれば、糠臭、糠味が除去されたγ−アミノ酪酸、還元糖等を製造することができる。よって、本発明は、γ−アミノ酪酸、還元糖等が効果的に生成されるとともに、糠臭、糠味が除去されている機能性健康食品を製造する場合に特に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠を溶媒に含浸させ、米糠由来の粗酵素を含有する浸出液を作製する、米糠浸出液作製工程と、
前記米糠浸出液作製工程により得られた前記浸出液を、イオン交換基にあらかじめ特定のイオンが吸着されたイオン交換樹脂と接触させて、該イオン交換樹脂に糠臭物質を吸着させるとともに、該糠臭物質が除去された米糠浸出物を得る、糠臭物質除去工程と、
を有する、糠臭が取り除かれた米糠浸出物の製造方法。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂が、陰イオン交換樹脂である、請求項1に記載の糠臭が取り除かれた米糠浸出物の製造方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂が、イオン交換基にあらかじめ塩化物イオンが吸着されたものである、請求項1又は2に記載の糠臭が取り除かれた米糠浸出物の製造方法。
【請求項4】
前記糠臭物質除去工程を経た前記イオン交換樹脂を、前処理したのち洗浄し、塩化物イオン含有溶液と接触させて、イオン交換樹脂を再生する、再生工程をさらに有する、請求項1〜3のいずれかに記載の糠臭が取り除かれた米糠浸出物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された製造方法により製造された、糠臭が取り除かれた米糠浸出物。
【請求項6】
請求項5に記載された米糠浸出物を、グルタミン酸を含有する溶液に添加する工程を備えてなる、γ−アミノ酪酸を含有する溶液を製造する方法。
【請求項7】
米糠を溶媒に含浸させ、米糠由来の粗酵素を含有する浸出液を作製する、米糠浸出液作製工程と、
前記米糠浸出液作製工程により得られた前記浸出液から米糠浸出物を作製する、米糠浸出物作製工程と、
前記米糠浸出物作製工程により得られた前記米糠浸出物を、グルタミン酸を含有する溶液に添加して、γ−アミノ酪酸を生成させる、酵素反応工程と、
前記酵素反応工程により得られた、前記γ−アミノ酪酸を含む溶液を、イオン交換基にあらかじめ特定のイオンが吸着されたイオン交換樹脂と接触させて、該イオン交換樹脂に糠臭物質を吸着させる、糠臭物質除去工程と、
を有する、γ−アミノ酪酸を含有する溶液を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−162006(P2010−162006A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9223(P2009−9223)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】