説明

糸又は糸前駆体における欠陥箇所を光学的に検出する装置

【課題】糸もしくは糸前駆体の欠陥箇所を光学的に検出する際の測定精度を高めること。
【解決手段】糸(10)の欠陥箇所を検出するための装置は糸の品質を光学的に測定する測定チャンバー(14)を有する。測定チャンバー(14)の側方に、糸(10)を測定チャンバー(14)へ導入するための導入スリット(15)を設けた。導入スリット(15)を介して周囲光及び/又は汚染物質が侵入するのを防ぐため、閉鎖手段(16)を設けた。閉鎖手段は弾性変形又は駆動手段(25)によって開放することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸又は糸前駆体における欠陥箇所を光学的に検出する装置に関する。
【0002】
ここで使用する語「糸前駆体」は製糸の過程で生ずる繊維組織、例えば、カーディング処理後の繊維ウェブ又は本来の紡糸工程の前の繊維束を意味する。
【背景技術】
【0003】
糸を製造及び使用する際には、連続的な品質管理を実施しなければならない。そのために糸もしくは糸前駆体の品質を測定できる種々の方法が知られている。これらの方法では、細い箇所、太い箇所、瘤、異質繊維、変色などの光学的に認識可能な欠点を検出できるように、例えば、糸の光学的透過率又は反射率が測定される。
【0004】
米国特許第4739176号明細書は糸の欠陥箇所を光学的に検出する装置を記述している。前記装置は1つ又は2つの光源及び1つの光検出器が設置されている測定チャンバーを有する。光源が糸に測定光を当て、そして、センサーが糸からの反射光を測定する。側方から測定チャンバーへの糸の導入を可能にする導入スリットが、測定チャンバーに設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような装置の測定精度を高めることが課題となる。
【問題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、請求項1に記載の装置によって解決される。即ち、本明細書中の請求項に記載されるように、少なくとも部分的に光不透過性の閉鎖手段を導入スリットに設ける。前記閉鎖手段によって、正確な測定を可能にする条件である測定チャンバーからの周囲光遮断効果を向上させる。
【0007】
閉鎖手段を駆動手段によって操作できるか、又は閉鎖手段が糸もしくは糸前駆体の導入に伴って変形可能な弾性閉鎖部材を含むことが好ましい。このような構成であれば、糸を自動的に導入スリットから進入させることが必要であり、例えば、自動化された糸精練設備用としても本発明の装置は極めて好適である。
【0008】
本発明は糸精練設備での使用に特に好適である。但し、糸もしくは糸前駆体のモニタリングを必要とするその他の場所にも使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のその他の好ましい実施態様は、本明細書の従属請求項に記載の通りであり、その詳細を添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【0010】
本発明の装置の第1実施例を図1に示す。これは、光源11と光検出器12とに間に糸10が位置する態様である。前記構成の装置は、当業者に公知である。前記装置は、糸10の射影によって糸10の太さを測定する装置である。但し、本発明はこのような態様の装置に限定されない。即ち、本発明は、これらとは異なるタイプの光学的又は一部光学的な測定装置、例えば、糸からの反射光を検出する装置にも適用することができる。光源及び光検出器の数を適宜選択することも可能である。例えば、2つ以上の光源及び/又は光検出器を備えた構成は当業者に公知である。
【0011】
図1に示す装置は、測定すべき糸10が延びている測定チャンバー14を画定する透光性ハウジング13を有する。測定チャンバー14は図1の図示平面に対して垂直に延び、その両端において一部又は全部が閉鎖されていてもよい。測定チャンバー14の側面には測定チャンバー14の全長に亘って延びる導入スリット15が設置されている。導入スリット15は測定チャンバー14へ側方から糸10を導入するためのものである。
【0012】
導入スリット15には閉鎖手段16が設けてある。これは測定チャンバー14へ周囲光及び汚染物質が侵入するのを困難にするか又は防止するための手段である。
【0013】
図1に示す実施態様では、それぞれのブラシ毛が両側から導入スリット15へ突出し、互いに重なり合うように設置される1対のブラシ17で構成されている。導入スリット15へ糸10が導入される際に、ブラシ毛18は、変形して糸10の通過を可能にする弾性的な閉鎖部材を形成する。
【0014】
ブラシ17は図示平面に対して垂直な方向に、スリット15の全長に亘って延び、測定チャンバー14をできる限り完全に保護することが好ましい。
【0015】
本発明の第2実施態様を図2に示す。閉鎖手段16を閉鎖フラップ20で形成したことを除いて、図示の装置の構成は、図1に示される構成と同じである。導入スリット15と平行に延びる旋回軸を有するヒンジ21を中心軸として、閉鎖フラップ20が旋回自在である。通常、ヒンジばね22が閉鎖フラップ20を閉鎖状態に保持する。この閉鎖状態において、閉鎖フラップ20は、導入スリット15にかぶさってこれを閉鎖する。ヒンジばね22の力によって、閉鎖フラップ20の前縁部23が、導入スリット15のヒンジ21とは反対の側へ当接する。導入スリット15へ糸10が導入されると、閉鎖フラップ20は糸10の力に抗しながらヒンジ21を中心に旋回し、導入スリット15が開放される。糸10が導入された後、閉鎖フラップ20はばね22の作用下に自動的に閉じる。
【0016】
図2に示す実施態様では、糸10を導入スリット15へ導入することはできても、図1に示した実施態様とは異なり、導入スリット15を介して糸10を取り出すことはできない。
【0017】
以上に述べた本発明の実施態様はいずれも、糸10の力で閉鎖手段16を操作するという解決策である。
【0018】
図3は閉鎖手段16を駆動手段25によって積極的に移動させる解決策を示す。図示の実施態様では、導入スリット15へ摺動可能な閉鎖スライダー26を設ける。駆動手段25は、印加される電圧に応じて長さを変化させながら旋回レバー28を操作する圧電式操作部27からなる。旋回レバー28はその一端が旋回軸受29に枢着され、他端が閉鎖スライダー26を引いたり押したりできるように閉鎖スライダー26に連結されている。このほかに、操作部27及び閉鎖スライダー26に抗して旋回レバー28を導入スリット15へ押すばね30をも設ける。
【0019】
操作部27が電圧を印加されて膨張すると、旋回レバー28が旋回し、閉鎖スライダー26が導入スリット15から引っ込められ、導入スリット15を開放する。この状態を図4に示す。
【0020】
操作部27は旋回レバーの旋回軸受29に比較的近い位置で作用するから、操作部27の比較的小さい往復行程が旋回レバー28の自由端における充分に長い旋回運動に変換される。
【0021】
圧電式操作部27の代わりに、例えば、電磁式駆動手段を設けることもできる。閉鎖手段は閉鎖スライダー26の代わりに、例えば、駆動手段によって操作可能な旋回フラップを備えることもできる。
【0022】
本発明は糸の欠陥箇所を移動的に切除する糸精練設備用として特に好適である。このような糸精錬装置は欠陥箇所を切除した後、糸10を再び測定チャンバーへ導入しなければならないが、このことは上記実施態様によっては容易に達成される。糸10の導入を手動で行なう場合には、例えば、手動で開放可能なフラップのような手動式閉鎖手段を設ければよい。
【0023】
いずれの場合にも、測定チャンバー14を周囲光から遮断することができるように、閉鎖手段16は少なくとも部分的に光不透過性でなければならない。
【0024】
冒頭に述べたように、本発明の装置は糸だけでなく、例えば、紡糸装置におけるカーディング処理後の繊維束のような糸前駆体にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の装置の第1実施態様の断面図である。
【図2】図2は本発明の装置の第2実施態様の断面図である。
【図3】図3は本発明の装置の第3実施態様の断面図である。
【図4】図4は導入スリットを開放した状態で図3の装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10・・・糸;11・・・光源;12・・・光検出器;13・・・ハウジング;
14・・・測定チャンバー;15・・・導入スリット;16・・・閉鎖手段;
17・・・ブラシ;18・・・ブリッスル;20・・・閉鎖フラップ;
21・・・ヒンジ;22・・・ヒンジばね;25・・・駆動手段;
26・・・閉鎖スライダー;27・・・操作部;28・・・旋回レバー;
29・・・旋回軸受;30・・・ばね。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸もしくは糸前駆体に測定光を当てるための少なくとも1つの光源(11)と、糸もしくは糸前駆体によって影響される測定光を測定するための少なくとも1つの光検出器(12)とが設置される測定チャンバー(14)、並びに、糸を測定チャンバー(14)へ導入するための導入スリット(15)を有する、糸もしくは糸前駆体における欠陥箇所を光学的に検出する装置であって、
導入スリット(15)に少なくとも部分的に光不透過性の閉鎖手段(16)を設置することを特徴とする、前記装置。
【請求項2】
閉鎖手段(16)が可動的である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
閉鎖手段(16)を駆動手段(25)によって操作できる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
駆動手段(16)が圧電式である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
閉鎖手段(16)が少なくとも1つの旋回自在な閉鎖フラップ(20)を備えている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
閉鎖手段(16)が少なくとも1つの摺動自在な閉鎖スライダー(26)を備えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
閉鎖手段(16)が糸もしくは糸前駆体を導入することにより導入スリット(15)を開放するために変形可能な少なくとも1つの弾性閉鎖部材(18,22)を備えている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
閉鎖手段(16)が、導入スリット中へ突出する多数の弾性ブラシ毛を備えている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置を有する糸精練設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−274533(P2008−274533A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115784(P2008−115784)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(595137491)ゲブリューダー レプフェ アクチェンゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】