説明

糸屑回収ダクトを備えた繊維機械

【課題】ダクトの内部状況を必要に応じて手軽に点検し、ダクトの内部に発生している糸屑塊などをより少ない手間で除去できる糸屑回収ダクトを備えた繊維機械を提供する。
【解決手段】負圧供給源5に接続されて、繊維機械で発生した糸屑を吸引し、吸引空気とともに負圧供給源5へ向けて搬送する糸屑回収ダクトにおいて、ダクト周壁26にダクト内部の糸屑の付着状況を確認する点検窓27を開口する。点検窓27を開閉する窓蓋28をダクト周壁26に装着する。窓蓋28は透明材で形成して、窓蓋28を点検窓27に装着した状態のままで、ダクト内部の糸屑の付着状況を確認できるようにする。窓蓋28は、点検窓27に差込まれるプラグ部34と、プラグ部34の周囲に張り出されるフランジ部35とを備えており、ダクト周壁26とフランジ部35との間に設けた掛止構造で装着状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械の稼動時に発生する糸屑を回収するための糸屑回収ダクトを備えた繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のダクトは、例えば特許文献1に開示してあり、そこでは、一群の自動ワインダーの背部に糸屑回収ダクトを配置している。糸屑回収ダクトは、一定長さの単位ダクトを接続して構成してある。単位ダクトは、基本形状が断面四角形状のダクトの対向する隅部分を傾斜壁で形成して、断面形状が六角形状に形成してあり、上側の傾斜壁と対向する縦壁の上部に、サクションマウスに連通する第1吸引口が開口してある。また、下側の傾斜壁には中継ぎパイプおよびマガジンパイプに連通する第2、第3の吸引口が開口してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−70883号公報(段落番号0039、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の糸屑回収ダクトによれば、第1吸引口から吸込まれる空気の流れを、上側の傾斜壁で下向きに案内して、ダクトの内部に螺旋状のサイクロン流を生じさせることができる。また、各吸引口から吸込まれた糸屑をサイクロン流に巻き込んでブロアボックスへと搬送することができる。しかし、自動ワインダーの稼働時間が長くなるのに伴って、ダクト内部で糸屑どうしが絡み合って堆積し、ロープ状に連続する糸屑塊を生じることがある。このように、ダクトの内部にロープ状の糸屑塊が形成されると、ダクトの吸引圧が低下して自動ワインダーにおける糸屑の除去機能が低下し、パッケージ品質が低下する。
【0005】
定期的に単位ダクトを分解して、ダクト内部に付着している糸屑、あるいは糸屑塊を除去すればよいが、その作業に多くの手間と時間が掛かる。また、糸屑回収ダクトを分解してからでないと、糸屑の付着状況を確認できないので、点検作業が無駄になることがある。
【0006】
本発明の目的は、ダクトの内部状況を必要に応じて手軽に点検し、さらに、ダクトの内部に発生している糸屑塊などをより少ない手間で除去でき、従ってメンテナンス作業を簡便に行える糸屑回収ダクトを備えた繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、負圧供給源5に接続されて、発生した糸屑を吸引し、吸引空気とともに負圧供給源5へ向けて搬送する糸屑回収ダクトを備えた繊維機械を対象とする。ダクト周壁26には、ダクト内部の糸屑の付着状況を確認するための点検窓27が開口してあり、点検窓27を開閉する窓蓋28がダクト周壁26に装着されている。
【0008】
窓蓋28は透明材で形成して、窓蓋28を点検窓27に装着した状態のままで、ダクト内部の糸屑の付着状況を窓蓋28を介して確認できるようにする。本発明における「透明材」とは、完全透明のみならず半透明材および、着色された透明材或いは半透明材を含む概念であり、要はダクトの内部を視認できる素材であればよい。
【0009】
窓蓋28は、点検窓27に差込まれるプラグ部34と、プラグ部34の周囲に張り出されるフランジ部35とを備えている。図4に示すように、窓蓋28を点検窓27に装着した状態においては、プラグ部34の差込面がダクト周壁26の内面と同一平面上に位置している。
【0010】
窓蓋28を支持する複数の掛止軸29は、軸体部30と軸頭部31とで構成されて、点検窓27の周囲壁に固定してある。フランジ部35に、掛止軸29の軸頭部31に対応する部分円弧状の着脱溝37を形成する。着脱溝37の一端に、掛止軸29の軸頭部31の通過を許す取付部38を設ける。着脱溝37の他端側に、掛止軸29の軸体部30を受止めて、窓蓋28を閉止位置に位置保持する係止突起39を形成する。点検窓27、およびプラグ部34のそれぞれを円形に形成する。着脱溝37の両端間で窓蓋28を回動操作することにより、窓蓋28を点検窓27に着脱できるようにする。
【0011】
軸体部30および軸頭部31は、同一線上にその軸方向を合わせて形成された円柱状部材からなる。軸頭部31の直径は、軸体部30の直径より大きい。取付部38は、着脱溝37の溝幅より直径の大きな円形穴で形成する。
【0012】
糸屑回収ダクト3は、ダクト内部にサイクロン流を発生させるサイクロン流発生機構を備えている。
【0013】
糸屑回収ダクト3を構成する単位ダクト19の基本形状は断面四角形状に形成し、対向する隅部のそれぞれを傾斜壁20・21で形成して、単位ダクト19の断面形状を六角形状に形成する。上側の傾斜壁21と対向する縦壁に、サクションマウス17に連通する第1吸気管22を接続し、下側の傾斜壁20に、中継ぎパイプ16に連通する第2吸気管23と、マガジンパイプに連通する第3吸気管24を接続する。六角形状の断面形状と、各吸気管22・23・24とによりサイクロン流発生機構を構成する。上側の傾斜壁21に連続するダクト周壁26に点検窓27を開口し、点検窓27を開閉する窓蓋28をダクト周壁26に装着する。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、糸屑回収ダクト3のダクト周壁26に点検窓27を開口し、この点検窓27を窓蓋28で開閉できるようにした。このように、ダクト周壁26に窓蓋28で開閉される点検窓27が設けられていると、窓蓋28を点検窓27から分離するだけで、ダクトの内部状況を必要に応じて手軽に点検して、糸屑の付着状況を的確に確認することができる。また、ダクトの内部に発生している糸屑塊を点検窓27から取出すことができるので、ダクト内に堆積した糸屑をより少ない手間で除去でき、従ってメンテナンス作業を簡便に行うことが可能な糸屑回収ダクトを備えた繊維機械を提供できる。
【0015】
窓蓋28を透明材で形成すると、窓蓋28を点検窓27に装着した状態のままで、ダクト内部の糸屑の付着状況を窓蓋28を介して確認することができる。従って、窓蓋28を点検窓27から分離して点検を行う場合に比べて、ダクト内部の糸屑の付着状況を手軽に確認でき、ダクト内部の点検に要する手間を省くことができる。また、繊維機械を稼働した状態のままで、ダクト内部の糸屑の付着状況を点検できるので、点検を行うごとに繊維機械を停止する必要がなく、繊維機械の稼働率を向上できる。
【0016】
点検窓27に差込まれるプラグ部34と、フランジ部35とを備えた窓蓋28によれば、窓蓋28を点検窓27に装着した状態において、ダクト内部の負圧と大気圧との差圧によってフランジ部35をダクト周壁26に密着させることができる。従って、窓蓋28をダクト周壁26に固定するための締結構造などを別途設ける必要がなく、窓蓋28が点検窓27から脱落しない程度の、より簡単な掛止構造を設けるだけで済む。外部の空気が点検窓27と窓蓋28との間からダクト内へ流入することもない。点検窓27に装着した状態のプラグ部34の内面は、ダクト周壁26の内面と同一平面上に位置している。従って、糸屑がプラグ部34の周縁に引掛かって堆積するのを防止して、窓蓋28を常に視認しやすい状態に維持することができる。
【0017】
点検窓27の周囲壁に掛止軸29を設け、窓蓋28のフランジ部35に着脱溝37を形成する掛止構造によれば、窓蓋28を回動操作するだけの簡単な操作で、窓蓋28を点検窓27に着脱できる。また、窓蓋28とともに回動するプラグ部34を円形の点検窓27で案内できるので、窓蓋28を回動して着脱する操作を円滑に行える。着脱溝37の一端に取付部38を設けるので、窓蓋28の掛止軸29に対する組付けを簡便に行える。さらに、着脱溝37に係止突起39を設けるので、係止突起39で軸体部30の周面を保持して、窓蓋28が取付穴38の側へ回動するのを防止できる。従って、糸屑回収ダクト3が振動する場合でも窓蓋28の取付け状態を確実に維持して、窓蓋28が点検窓27から脱落するのを防止できる。
【0018】
軸体部30および軸頭部31を、同一線上にその軸方向を合わせて円柱状部材として形成すると、掛止軸29の構造を単純なものとして、そのコストを削減できる。軸頭部31の直径を、軸体部30の直径より大きく設定し、さらに、取付部38を着脱溝37の溝幅より直径の大きな円形穴で形成すると、軸頭部31と取付部38の中心位置が合致した状態でのみ、窓蓋28を点検窓27から分離できる。従って、仮に掛止突起39が掛止軸29の軸体部30を乗越えて、着脱溝37の溝端が軸体部30から分離することがあっても、窓蓋28が掛止軸29から直ちに脱落することはなく、点検窓27を閉止し続けることができる。
【0019】
ダクト内部にサイクロン流を発生させるサイクロン流発生機構を備えた糸屑回収ダクト3を備えた繊維機械によれば、サイクロン流によってダクト内部に留まろうとする糸屑があっても、効果的に除去することができる。
【0020】
単位ダクト19の断面形状を六角形状に形成し、上側の傾斜壁21と対向する縦壁に第1吸気管22を接続する糸屑回収ダクト3を備えた繊維機械によれば、第1吸気管22から流入した空気を傾斜壁21で一定の方向へ案内できる。さらに変向された空気流を、ダクト内部を負圧供給源5へ向けて流れる空気流に合流させて、螺旋状のサイクロン流を形成できる。つまり、ダクトの断面を六角形状に形成し、第1吸気管22から流入する空気流を傾斜壁21で変更するだけの簡単な構造で螺旋状のサイクロン流を形成できる。また、各吸気管22・23・24を平坦なダクト壁面に接続すればよいので、繊維機械の設けられる吸引通路と糸屑回収ダクト3との接続部の構造を簡素化できる。さらに、螺旋状のサイクロン流が流れる状況では、糸屑同士が絡まってロープ状に連続する糸屑塊に成長することがある。ロープ状に連続する糸屑塊は、その一部に手が届けば糸屑塊の全体を取り出すことができる。従って、ダクト周壁26に開口した点検窓27からダクト内部に腕を差込んで、糸屑塊を掴み出すことにより、ダクト内部の糸屑塊を効果的に取除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る点検窓と窓蓋の構造を示す背面図である。
【図2】自動ワインダーの概略正面図である。
【図3】巻取りユニットの正面図である。
【図4】糸屑回収ダクトの縦断側面図である。
【図5】点検窓と窓蓋の分解斜視図である。
【図6】窓蓋の装着途中状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施例) 図1から図6は、本発明に係る糸屑回収ダクトを繊維機械である自動ワインダーに搭載した実施例を示している。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図3および図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0023】
図2において、自動ワインダーは、ベースフレーム1の長手方向に沿って配置される一群の巻取りユニット2で構成されており、巻取りユニット2の後部には、巻取りユニット2で発生した糸屑を回収するための糸屑回収ダクト3が配置されている。糸屑回収ダクト3の側端は、ブロアボックス4を介して負圧供給源5に接続されており、負圧供給源5を構成する遠心式のブロワ6の吸引作用で糸屑回収ダクト3内に負圧が供給される。ブロアボックス4の内部には、糸屑回収ダクト3で搬送された糸屑をろ過するフィルターが設けられている。
【0024】
図3において、巻取りユニット2は、起立する縦長箱状の本体フレーム8を基体にして構成されており、給糸ボビン9の糸Yを巻き直してパッケージ10を形成する。本体フレーム1の左側面には、下から上へ延びる糸道に沿って解舒補助装置11と、テンション装置12と、糸継装置13と、スラブキャッチャ14と、巻取部15などの各機器が配置されている。解舒補助装置11とテンション装置12との間には中継ぎパイプ16が配置され、テンション装置12と糸継装置13との間にはサクションマウス17が配置されている。中継ぎパイプ16およびサクションマウス17によって、糸継装置13で切断された糸欠陥を含む糸などが吸引されて、吸引空気とともに単位ダクト19へと搬送される。図示していないが、給糸ボビン9を巻取りユニット2に供給するボビン供給マガジンの部分にも、糸屑を吸引空気とともに単位ダクト19へと搬送するマガジンパイプが設けられている。図2および図3において符号18は、本体フレーム8が固定されるフレーム枠である。
【0025】
糸屑回収ダクト3は、一定長さの単位ダクト19を直線状に接続して構成されている。図4に示すように、単位ダクト19は、基本形状が断面正四角形状に形成されており、前側の縦壁の下隅と後側の縦壁の上隅のそれぞれを平行な傾斜壁20・21で形成して、全体の断面形状を六角形状に形成している。上下の横壁、前後の縦壁、および両傾斜壁20・21は、それぞれ単位ダクト19の中央を中心とする円弧に外接する状態で形成されている。前側の縦壁の上部に、サクションマウス17に連通する第1吸気管22が接続され、下隅の傾斜壁20に、中継ぎパイプ16に連通する第2吸気管23と、マガジンパイプに連通する第3吸気管24が接続されている。
【0026】
第1吸気管22の直径は、第2、第3の吸気管23・24の直径より大きく設定されており、第1吸気管22およびサクションマウス17を介して吸引される空気量は、第2吸気管23および第3吸気管24から吸引される空気量より多い。第1吸気管22から吸引された空気流は、上隅の傾斜壁21に案内されて下向きに変向され、糸屑回収ダクト3内を負圧供給源5へ向けて流れる空気流に合流する。また、第2吸気管23および第3吸気管24から吸引された空気流は、単位ダクト19の下半部へ向けて吸引されて、糸屑回収ダクト3内を負圧供給源5へ向けて流れる空気流に合流する。その結果、糸屑回収ダクト3内には図4に矢印で示すように、下流側から見て反時計回転方向へ捻れる螺旋状のサイクロン流が形成される。このように、糸屑回収ダクト3はサイクロン発生機構を備えている。サイクロン発生機構は、単位ダクト19の断面形状を六角形状に形成することと、第1から第3の各吸気管22・23・24を所定の位置に接続し、第1吸気管22から吸引される空気量を他の吸気管23・24より大きく設定することで、螺旋状のサイクロン流をダクト内部に形成することができる。
【0027】
単位ダクト19の内部を必要に応じて点検し、さらに、単位ダクト19の内部に発生している糸屑塊などを除去するために、単位ダクト19の後側の縦壁からなるダクト周壁26に点検窓27を開口し、点検窓27の外面を開閉可能な窓蓋28で閉止している。単位ダクト19の左右長さは約4mであるが、個々の単位ダクト19の長手方向中央のダクト周壁26に点検窓27が形成してある。点検窓27は円形の開口として形成してあり、その開口径を100mmとして、作業者が腕を自由に出入れできる大きさにしてある。点検窓27の周縁壁の上下には、窓蓋28を装着するための掛止軸29が固定してある。掛止軸29は丸軸からなる軸体部30の外端に、なべ頭形の軸頭部31を設けたリベット状の軸体からなり、その内端がダクト周壁26にかしめ固定される。軸体部30および軸頭部31は、同一線上にその軸方向を合わせて形成された円柱状部材からなり、軸頭部31の直径は、軸体部30の直径より大きく設定してある。
【0028】
図4および図5に示すように、窓蓋28は、点検窓27に嵌合する円形のプラグ部34と、プラグ部34の周囲に張り出されるフランジ部35とを一体に備えており、全体が透明なプラスチック材で形成される。透明なプラスチック材としては、アクリル、ポリカーボネイト、ポリ塩化ビニルなどを適用できる。プラグ部34の厚み寸法は、ダクト周壁26の厚み寸法に一致している。フランジ部35の上下には掛止部36が設けられており、掛止部36の中央から、掛止部36の一側端の近傍にわたって部分円弧状の着脱溝37が形成されている。着脱溝37の一端には、軸頭部31が通過できる取付穴(取付部)38が設けられている。取付穴38は、着脱溝37の溝幅より直径の大きな円形穴で形成してある。また、着脱溝37の他端側の上下には、軸体部30を受止める係止リブ(係止突起)39が形成されている。着脱溝37、取付穴38、係止リブ39と、先に説明した掛止軸29で、窓蓋28を点検窓27に掛止するための掛止構造が構成される。
【0029】
着脱溝37の溝幅は軸体部30の直径より僅かに大きく設定されており、取付穴38の直径は軸頭部31の直径より僅かに大きく設定されている。また、係止リブ39の対向間隔は、軸体部30の直径より僅かに小さく設定されており、図1に示すように、軸体部30が着脱溝37の係止リブ39側の溝端に接当する状態では、上下の係止リブ39が軸体部30の周面に接当して窓蓋28の遊動を規制する。
【0030】
図6に示すように、窓蓋28は、取付穴38が軸頭部31と正対する状態で掛止軸29に掛止し、そのプラグ部34を点検窓27に差込む。次に、窓蓋28の全体を図6に矢印で示すように反時計回転方向へ回動させて、着脱溝37の溝端を軸体部30に接当させ、軸体部30の周面を溝端と上下の係止リブ39とで保持させる。このように、窓蓋28を回動操作するときは、円形のプラグ部34の周面が、円形の点検窓27の内周面で案内されるので、窓蓋28の着脱操作を円滑に行うことができる。着脱溝37の溝端が軸体部30に接当する過程では、係止リブ39が軸体部30で弾性変形されながら軸体部30の上下周面を乗越えて、図1に示すように窓蓋28を閉止位置に位置保持する。
【0031】
上記のように、窓蓋28を点検窓27に装着した状態では、糸屑回収ダクト3の内部に作用する負圧と大気圧との差圧によって、窓蓋28のフランジ部35がダクト周壁26に押付けられて密着するので、空気が点検窓27からダクト内へ流入することはない。また、点検窓27に装着したプラグ部34の差込面(内面)は、ダクト周壁26の内面と同一平面上に位置しているので、プラグ部34に糸屑が引掛かって堆積することはない。通常の点検時には、点検窓27に装着した窓蓋28を介してダクト内部を覗き込むだけで、糸屑の付着状況を簡単に確認することができる。
【0032】
先に説明したように、自動ワインダーが稼動している状態では、糸屑回収ダクト3の内部に螺旋状のサイクロン流が形成されている。そのため、ダクト内に堆積する糸屑の量が増えてくると、例えば隣接する単位ダクト19の接続部分に糸屑の一部が引っ掛かって、ロープ状に連続する糸屑塊に成長する。このように、ダクト内にロープ状の糸屑塊が形成されている場合には、自動ワインダーおよびブロワ6を停止したのち、窓蓋28を掛止軸29から取外して、開放された点検窓27からダクト内部に腕を差込んで糸屑塊を掴み出す。ロープ状の糸屑塊は、その一部に手が届けば全て取除くことができるので、腕を出し入れできる程度の比較的小さな点検窓27であっても、ダクト内部に堆積する糸屑塊を効果的に取除くことができる。
【0033】
上記の実施例では、点検窓27および窓蓋28のプラグ部34をそれぞれ円形に形成したが、窓蓋28の掛止構造によっては、点検窓27およびプラグ部34の外形形状は多角形あるいは楕円形などに形成することができる。例えば、窓蓋28の周縁一側をヒンジで開閉自在に支持して、窓蓋28をダクト周壁26に対して接近あるいは離間する向きへ揺動可能とする場合には、点検窓27およびプラグ部34の外形形状を非円形とすることができる。
【0034】
必要があれば、フランジ部35のダクト周壁26との接合面にパッキン、あるいはシールリングなどのシール材を設けて、シール機能を高めることができる。また、窓蓋28の外面に把手、あるいはハンドルを設けて、窓蓋28の回動操作を容易化することができる。その場合の把手、あるいはハンドルは、窓蓋28の視認性を妨げない位置に設けるとよい。点検窓27は、単位ダクト19の後側の縦壁に設ける必要はなく、第1吸気管〜第3吸気管が接続される壁面を除く任意のダクト周壁に設けることができる。掛止突起39はリブ状に形成する必要はなく、軸体部30を受止めることが可能な突起であればよい。本発明に係る糸屑回収ダクト3は、自動ワインダー以外の繊維機械、例えば、空気紡績等の紡績部を備えた巻取装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
3 糸屑回収ダクト
5 負圧供給源
6 ブロワ
19 単位ダクト
26 ダクト周壁
27 点検窓
28 窓蓋
29 掛止軸
34 プラグ部
35 フランジ部
37 着脱溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧供給源に接続されて、発生した糸屑を吸引し、吸引空気とともに負圧供給源へ向けて搬送する糸屑回収ダクトを備えた繊維機械であって、
ダクト周壁に、ダクト内部の糸屑の付着状況を確認するための点検窓が開口されており、
前記点検窓を開閉する窓蓋が、前記ダクト周壁に装着されている糸屑回収ダクトを備えた繊維機械。
【請求項2】
前記窓蓋が透明材で形成されており、
前記窓蓋を前記点検窓に装着した状態のままで、ダクト内部の糸屑の付着状況を前記窓蓋を介して確認できる請求項1に記載の糸屑回収ダクトを備えた繊維機械。
【請求項3】
前記窓蓋が、前記点検窓に差込まれるプラグ部と、前記プラグ部の周囲に張り出されるフランジ部とを備えており、
前記窓蓋を前記点検窓に装着した状態において、前記プラグ部の差込面が前記ダクト周壁の内面と同一平面上に位置している請求項1または2に記載の糸屑回収ダクトを備えた繊維機械。
【請求項4】
前記窓蓋を支持する複数の掛止軸が、軸体部と軸頭部とで構成されて、前記点検窓の周囲壁に固定されており、
前記フランジ部に、前記掛止軸の軸体部に対応する部分円弧状の着脱溝が形成されており、
前記着脱溝の一端に、前記掛止軸の軸頭部の通過を許す取付部が設けられており、
前記着脱溝の他端側に、前記掛止軸の軸体部を受止めて、前記窓蓋を閉止位置に位置保持する係止突起が形成されており、
前記点検窓、および前記プラグ部のそれぞれが円形に形成されており、
前記着脱溝の両端間で前記窓蓋を回動操作することにより、前記窓蓋を前記点検窓に着脱できる請求項3に記載の糸屑回収ダクトを備えた繊維機械。
【請求項5】
前記軸体部および軸頭部は、同一線上にその軸方向を合わせて形成された円柱状部材であり、
前記軸頭部の直径は、前記軸体部の直径より大きく、
前記取付部は、前記着脱溝の溝幅より直径の大きな円形穴で形成してある請求項4に記載の糸屑回収ダクトを備えた繊維機械。
【請求項6】
前記糸屑回収ダクトは、ダクト内部にサイクロン流を発生させるサイクロン流発生機構を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載の糸屑回収ダクトを備えた繊維機械。
【請求項7】
前記糸屑回収ダクトを構成する単位ダクトの基本形状が断面四角形状に形成され、対向する隅部のそれぞれを傾斜壁で形成して、単位ダクトの断面形状が六角形状に形成されており、
上側の前記傾斜壁と対向する縦壁に、サクションマウスに連通する第1吸気管が接続され、下側の前記傾斜壁に、中継ぎパイプに連通する第2吸気管と、マガジンパイプに連通する第3吸気管が接続されており、
前記六角形状の断面形状と、各吸気管とにより前記サイクロン流発生機構が構成され、
上側の前記傾斜壁に連続する前記ダクト周壁に前記点検窓が開口され、前記点検窓を開閉する前記窓蓋が前記ダクト周壁に装着されている請求項6に記載の糸屑回収ダクトを備えた繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67870(P2013−67870A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205274(P2011−205274)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】