説明

糸巻取機

【課題】精度の高い制御等を行うことなく、給糸部から供給される糸を確実に捕捉する糸巻取機を提供する。
【解決手段】精紡機(糸巻取機)は、紡績装置9と、玉揚台車4と、捕捉部ガイド47と、を備える。紡績装置9は、紡績糸10を供給する。玉揚台車4は、紡績装置9に対して接離し、紡績装置9に接近したときに、紡績装置9が供給する紡績糸10を捕捉する捕捉部51を有し、紡績装置9と独立して設けられている。捕捉部ガイド47は、紡績装置9に捕捉部51が接近したときに、紡績糸10を捕捉するための予め定められた捕捉位置に捕捉部51が位置するように当該捕捉部51の位置決めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸部から供給される糸を捕捉する捕捉部を備えた糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糸の巻取作業の開始時や、満巻のパッケージを排出した後等に、糸が巻き付いていないボビンをクレードル等に供給して、巻取作業の開始のための準備を行う糸巻取機が知られている。特許文献1は、この種の糸巻取機を開示する。
【0003】
特許文献1の紡績機(糸巻取機)が備えるバンチ巻き装置(玉揚台車)は、パッケージが満巻になった後に、当該満巻のパッケージを排出して新たなボビンを供給する。そして、紡績装置の下流の糸を捕捉して、捕捉した糸をクレードルの近傍(新たに供給されたボビンの近傍)に移動させる。次に、バンチ巻き装置は、捕捉した糸をボビンに固定して、バンチ巻きを行うためのバンチ巻ローラをボビンに接触させてボビンを回転させることにより、バンチ巻きを行う。以上により巻取作業の開始のための準備が整い、その後に糸の巻取りが開始される。
【0004】
なお、特許文献1の紡績機では、紡績装置の下流の糸を捕捉するために、吸引流により糸を吸引して捕捉可能なサクションパイプが用いられている。このサクションパイプは、適宜の支持部材を介してバンチ巻き装置に配置されており、延伸させることで紡績装置の下流の糸を捕捉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−219880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成において、紡績装置の下流の糸はバンチ巻き装置から相当に離れているため、バンチ巻き装置側での僅かな誤差(寸法誤差、取付誤差等)がサクションパイプの先端(吸引口)の位置に大きく影響する。従って、サクションパイプの先端を正確に糸の近傍に位置させるためには、サクションパイプ及び当該サクションパイプの支持部材に対して、高い寸法精度や取付精度、及びサクションパイプを正確に移動する制御等が要求される。更に、バンチ巻き装置が例えば紡績ユニットの配列方向に沿って移動可能な場合は、バンチ巻き装置の停止位置に対しても高い精度が要求される。
【0007】
また、特許文献1の紡績機では、サクションパイプが捕捉した糸の位置に応じて、他の動作(捕捉した糸を新たに供給されたボビンに固定する動作等)が行われる構成である。そのため、サクションパイプの取付位置を調整する場合は、他の機構についても調整を行わなければならず、調整作業が繁雑になってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、精度の高い制御等を行うことなく、給糸部から供給される糸を確実に捕捉する糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、給糸部と、作業部と、位置決め部と、を備える。前記給糸部は、糸を供給する。前記作業部は、前記給糸部に対し接離し、前記給糸部に接近したときに前記給糸部が供給する糸を捕捉する捕捉部を有し、前記給糸部とは独立して設けられる。前記位置決め部は、前記給糸部に前記捕捉部が接近したときに、糸を捕捉するための予め定められた捕捉位置に前記捕捉部が位置するように当該捕捉部の位置決めを行う。
【0011】
これにより、作業部が給糸部とは独立して設けられており、給糸部に対して接離可能であっても位置決め部によって捕捉部が捕捉位置に位置決めされるので、捕捉部は、給糸部から供給される糸を確実に捕捉することができる。
【0012】
前記の糸巻取機においては、前記給糸部は、紡績糸を紡出する紡績部であることが好ましい。
【0013】
これにより、本発明の効果を紡績機において発揮させることができる。
【0014】
前記の糸巻取機においては、前記位置決め部は、前記給糸部の近傍であって糸の走行方向の下流側に配置されることが好ましい。
【0015】
これにより、捕捉位置は通常は給糸部の近傍に設けられるので、給糸部の近傍に位置決め部を配置することで、前記捕捉部は、給糸部から供給される糸を一層確実に捕捉することができる。
【0016】
前記の糸巻取機においては、前記給糸部と前記位置決め部との位置関係を一定にする位置固定部を備えることが好ましい。
【0017】
これにより、給糸部に対する位置決め部の位置がズレないため、捕捉部を捕捉位置に精度良く位置決めすることができる。従って、捕捉部は、給糸部から供給される糸を一層確実に捕捉することができる。
【0018】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記給糸部は、糸を供給する供給口を有する。前記捕捉部は、糸を吸引して捕捉する吸引口を有する。前記位置決め部は、前記供給口と前記吸引口とが対面するように前記捕捉部の位置決めを行う。
【0019】
これにより、糸の供給箇所と吸引箇所とを対面させることができるので、捕捉部は、給糸部から供給される糸を一層確実に捕捉することができる。また、糸道を屈曲させずに捕捉部が糸を捕捉することができるので、糸に無理な負荷が掛かることを防止できる。
【0020】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記作業部は、前記捕捉部を移動させる駆動部を備える。前記捕捉部は、前記駆動部により前記捕捉位置又はその近傍まで移動し、前記位置決め部により位置決めされる。
【0021】
これにより、捕捉部を移動可能な構成とすることで、作業部の位置、大きさ、レイアウト等の自由度を向上させることができる。また、駆動部が捕捉部の位置を高精度に制御できない場合でも、捕捉部は、糸の捕捉を行う際には位置決め部によって捕捉位置に精度良く位置決めされるので、糸を確実に捕捉することができる。
【0022】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記位置決め部は、案内部を備える。前記捕捉部は、前記案内部に接触することで、前記捕捉位置に案内される。
【0023】
これにより、位置決め部は、案内部により捕捉部の位置決めをスムーズに行うことができる。
【0024】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記捕捉部は、外形が円柱状である円柱部を備える。前記位置決め部は、前記円柱部の2箇所と接触することで、前記捕捉部を前記捕捉位置に位置決めする。
【0025】
これにより、捕捉部を捕捉位置に位置決めする過程において、円柱部の1箇所だけが位置決め部に接触している状態では、位置決め部は、円柱部の2箇所目が位置決め部に接触するように円柱部をスムーズに案内できる。その後、円柱部の2箇所目が位置決め部に接触すると、円柱部の軸の位置が定まるので、位置決め部は、円柱部を捕捉位置に精度良く位置決めできる。
【0026】
前記の糸巻取機においては、前記円柱部は、当該円柱部の軸を回転軸として回転可能であることが好ましい。
【0027】
これにより、円柱部が回転することで、円柱部の1箇所だけが位置決め部に接触している状態から、円柱部の2箇所目が位置決め部に接触する状態まで、当該円柱部をスムーズかつ確実に移動させることができる。
【0028】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記作業部は、第1端部と第2端部とを有する接続部を備える。前記接続部は、前記捕捉部が前記第1端部に接続され、前記第2端部を移動支点として片持ち支持される。
【0029】
これにより、接続部が長い場合は、例えば連結機構のガタ等によって捕捉部の可動範囲が大きくなる。従って、例えば作業部の位置が比較的大きくズレていた場合であっても、捕捉部を捕捉位置まで移動させて位置決め部による位置決めを行うことができる。
【0030】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記給糸部と、前記給糸部から供給された糸を巻き取る巻取部と、を有する巻取ユニットを複数備える。前記作業部は、前記巻取ユニットの配列方向に沿って走行可能である。前記位置決め部は、前記巻取ユニット毎に設けられる。
【0031】
これにより、位置決め部が巻取ユニット毎に設けられているので、作業部の停止位置の精度や作業部の寸法精度等に影響されずに、各巻取ユニットで捕捉部の位置決めを正確に行うことができる。従って、作業部の製造コストを低減しつつ、給糸部から供給される糸を捕捉部により確実に捕捉することができる。
【0032】
前記の糸巻取機においては、前記作業部が、糸を巻き取って形成されたパッケージを玉揚げする玉揚台車であるように構成することができる。
【0033】
これにより、玉揚作業を行う作業部(玉揚台車)において、本発明の効果を発揮させることができる。
【0034】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、走行路と、パッケージ受け部と、を備える。前記走行路は、前記巻取ユニットの配列方向に沿って配置され、前記作業部が走行するためのものである。前記パッケージ受け部は、前記巻取ユニットと前記走行路との間に配置され、玉揚げされたパッケージが置かれる。
【0035】
即ち、上記のように作業部と巻取ユニットの間にパッケージ受け部が配置される構成は、作業部から巻取ユニットまでの距離が長くなる。従って、作業部側で捕捉位置を制御する場合は、高い寸法精度や正確な制御が必要となる。この点、本発明の構成では、作業部と独立に設けられた位置決め部で捕捉部の位置決めを行うことにより、作業部側の寸法精度等の影響を軽減することができるので、作業部の製造コストを低下させることができる。また、作業部から巻取ユニットまでの距離が長い場合でも、捕捉部は位置決め部により捕捉位置に位置決めされるので、捕捉部は糸を確実に捕捉することができる。
【0036】
前記の糸巻取機においては、前記作業部が、前記給糸部側の糸と、前記巻取部側の糸と、の糸継作業を行う糸継台車であるように構成することができる。
【0037】
これにより、糸継作業を行う作業部(糸継台車)において、本発明の効果を発揮させることができる。
【0038】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、スライバをドラフトして繊維束とするドラフト部を備える。前記給糸部は、紡績糸を紡出する紡績部である。前記紡績部は、繊維案内部と、ノズルブロックと、中空ガイド軸体と、を備える。前記繊維案内部は、前記ドラフト部によってドラフトされた繊維束を紡績室に案内する。前記ノズルブロックは、前記紡績室に案内された前記繊維束に空気流を噴射するノズル孔を有する。前記中空ガイド軸体は、前記紡績室で紡績された紡績糸を案内する。
【0039】
これにより、上記のような紡績部を備えた紡績機において、本発明の効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示した正面図。
【図2】紡績ユニットの側面断面図。
【図3】紡績装置の断面図。
【図4】捕捉部及び捕捉部ガイドを示す図。
【図5】捕捉部がシリンダによって移動した後の様子を示す図。
【図6】捕捉部が捕捉部ガイドによって位置決めされているときの様子を示す図。
【図7】新たなボビンがクレードルに供給されたときの様子を示す図。
【図8】別の実施形態に係る巻取ユニットの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(糸巻取機)について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。図1は精紡機1の全体的な構成を示した正面図、図2は精紡機1の縦断面図である。図3は、紡績装置9の断面図である。図4(a)は、捕捉部51及び捕捉部ガイド47の形状を示す斜視図である。
【0042】
図1に示す糸巻取機としての精紡機1は、並べて配置された多数の紡績ユニット(巻取ユニット)2を備えている。精紡機1は、糸継台車(作業部)3と、玉揚台車(作業部)4と、ブロアボックス93と、原動機ボックス5と、を備えている。
【0043】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、紡績糸10の走行方向に沿って以下の順に配置された、ドラフト装置(ドラフト部)7と、紡績装置(給糸部、紡績部)9と、糸貯留装置12と、巻取装置(巻取部)13と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は、精紡機1が備えるフレーム(位置固定部)6の上端近傍に設けられている。ドラフト装置7から送られてくる繊維束8は、紡績装置9で紡績される。紡績装置9から送出された紡績糸10は、後述のヤーンクリアラ49を通過した後、糸貯留装置12を更に通過する。そして、巻取装置13によって紡績糸10がボビン48に巻き取られることにより、パッケージ45が形成される。
【0044】
ドラフト装置7は、スライバ15を延伸して繊維束8にする。ドラフト装置7は、図2に示すように、バックローラ対16、サードローラ対17、エプロンベルト18が装着されたミドルローラ対19、及びフロントローラ対20の4つのローラ対を備えている。
【0045】
紡績装置9は、フレーム6に取り付けられている。紡績装置9は、ドラフト装置7から供給された繊維束8に撚りを加えて、紡績糸10を生成する。本実施形態では、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与える空気式の紡績装置を紡績装置9として採用している。図3に示すように、紡績装置9は、繊維ガイド(繊維案内部)32と、中空ガイド軸体33と、ノズルホルダ34と、を主要な構成として備えている。
【0046】
ノズルホルダ34と中空ガイド軸体33の間には、紡績室36が形成されている。ノズルホルダ34には、紡績室36内に空気を噴出する空気噴出ノズル35が形成されている。繊維ガイド32には、紡績室36内に繊維束8を導入する糸導入口31が形成されている。空気噴出ノズル35は、紡績室36内に空気を噴出して旋回気流を発生させることができるように構成されている。この構成で、ドラフト装置7から供給された繊維束8は、糸導入口31を有する繊維ガイド32によって紡績室36内に案内される。紡績室36内において、繊維束8は、旋回気流によって中空ガイド軸体33の周囲を振り回されることにより、撚りが加えられて紡績糸10となる。撚りが加えられた紡績糸10は、中空ガイド軸体33の軸中心に形成された糸通路37を通って、下流側の供給口38から紡績装置9の外部に送出される。
【0047】
なお、前記糸導入口31には、その先端を紡績室内向けて配置された針状のガイドニードル32aが配置されている。糸導入口31から導入される繊維束8は、このガイドニードル32aに巻き掛かるようにして紡績室36内に案内される。これにより、紡績室36内に導入される繊維束8の状態を安定させることができる。また、このようにガイドニードル32aに巻き掛かるように繊維束8が案内されるので、紡績室36内で繊維に撚りが加えられても、繊維ガイド32よりも上流側に撚りが伝播することが防止される。これにより、紡績装置9による加撚がドラフト装置7に影響を与えることを防止できる。
【0048】
紡績装置9の下流には、図2に示すように、糸貯留装置12が設けられている。この糸貯留装置12は、紡績糸10に所定の張力を与えて紡績装置9から引き出す機能と、糸継台車3による糸継作業時などに紡績装置9から紡出される紡績糸10を滞留させて弛みを防止する機能と、巻取装置13側の糸張力の変動が紡績装置9側に伝わらないように糸張力を調節する機能と、を有している。糸貯留装置12は、糸貯留ローラ21と、糸係合部材22と、上流側ガイド23と、電動モータ25と、を備えている。
【0049】
糸係合部材22は、紡績糸10に係合する(引っ掛ける)ことが可能に構成されており、紡績糸10に係合した状態で糸貯留ローラ21と一体的に回転することで、当該糸貯留ローラ21の外周面に紡績糸10を案内できるように構成されている。
【0050】
糸貯留ローラ21は、その外周面に紡績糸10を巻き付けて貯留できるように構成されている。糸貯留ローラ21は、電動モータ25によって一定の回転速度で回転駆動される。
【0051】
なお、糸係合部材22は、糸貯留ローラ21に対して相対回転可能に支持されるとともに、例えば磁気的手段等からなるトルク発生手段(不図示)により、糸係合部材22が糸貯留ローラ21に対し相対回転するのに抗するトルク(抵抗トルク)が発生するように構成されている。糸係合部材22が紡績糸10と係合している場合、紡績糸10に掛かる張力がこの抵抗トルクに打ち勝つほどに強ければ、糸係合部材22は糸貯留ローラ21と独立に回転して、紡績糸10を前記糸貯留ローラ21から解舒する。反対に、紡績糸10に掛かる張力が抵抗トルクよりも弱ければ、糸係合部材22は糸貯留ローラ21と一体的に回転し、紡績糸10を前記糸貯留ローラ21に巻き付ける。
【0052】
このように、糸貯留装置12は、紡績糸10の張力が下がる(紡績糸10が弛みそうになる)と当該紡績糸10を巻き付け、紡績糸10の張力が上がると当該紡績糸10を解舒するように動作することで、紡績糸10の弛みを解消して紡績糸10に適切な張力を付与することができる。また、上記のように糸貯留装置12と巻取装置13と間の紡績糸10に掛かる張力の変動を吸収するように糸係合部材22が働くことで、当該張力の変動が、紡績装置9から糸貯留装置12までの間の紡績糸10に影響を及ぼすことを防止できる。これにより、糸貯留装置12は、紡績装置9から紡績糸10をより安定した速度で糸貯留装置12によって引き出すことができる。
【0053】
上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21のやや上流側に配置されている。上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21の外周面に対して紡績糸10を適切に案内する案内部材として構成されている。更に、上流側ガイド23は、紡績装置9から伝播してくる紡績糸10の撚りが当該上流側ガイド23よりも下流側に伝わることを防止する撚り止めの役割を兼ねている。
【0054】
精紡機1のフレーム6の前面側であって前記紡績装置9と前記糸貯留装置12との間の位置には、ヤーンクリアラ49が設けられている。紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ49を通過するようになっている。ヤーンクリアラ49は、走行する紡績糸10の太さを監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、図示しないユニットコントローラに対して、糸欠点検出信号を送信するように構成されている。なお、ヤーンクリアラ49は、紡績糸10の太さ異常に加えて、紡績糸10に含まれる異物の有無を検出するように構成されていても良い。
【0055】
ユニットコントローラは、ヤーンクリアラ49から糸欠点検出信号を受信すると、巻取装置13を駆動させたまま直ちにドラフト装置7の駆動を停止させることにより紡績糸10を切断し、更に巻取装置13による巻取りを停止させる。また、ユニットコントローラは糸継台車3に制御信号を送り、当該紡績ユニット2の前まで走行させる。その後、ユニットコントローラは、ドラフト装置7や紡績装置9等を再び駆動し、前記糸継台車3に糸継ぎを行わせて巻取装置13による巻取りを再開させる。糸貯留装置12は、紡績装置9が紡績を再開してから巻取装置13による巻取りが再開されるまでの間、紡績装置9から連続的に送出される紡績糸10を糸貯留ローラ21に滞留させて紡績糸10の弛みを取る。
【0056】
紡績装置9の下流側の近傍には、捕捉部ガイド(位置決め部)47が配置されている。捕捉部ガイド47は、適宜の部材を介してフレーム6に取り付けられている。なお、紡績装置9も位置固定部としてのフレーム6に取り付けられているため、紡績装置9及び捕捉部ガイド47は、相互の位置関係が一定となる。捕捉部ガイド47は、図4(b)に示すように、突起状の案内部47aが2つ形成された平板状の部材である。捕捉部ガイド47は、後述の吸引捕捉装置50が紡績装置9から紡出された紡績糸10を捕捉する際の位置決めのために用いられる。なお、捕捉部ガイド47による位置決めの詳細については後述する。
【0057】
巻取装置13は、クレードル70を備えている。クレードル70は、支軸73と、この支軸73を中心として回動可能なクレードルアーム71と、ボビン48の両端部を保持可能な一対のボビンホルダ72と、を備える。
【0058】
前記巻取装置13は、巻取ドラム74と、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76と、を更に備えている。巻取ドラム74は、前記ボビン48やそれに紡績糸10を巻き付けて形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。巻取装置13は、巻取ドラム74を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム74に接触するパッケージ45を回転させ、図略の駆動手段によってトラバースガイド76を往復動させながら、紡績糸10を綾振りしつつパッケージ45へと巻き取るようになっている。
【0059】
なお、クレードルアーム71には図略のバネが取り付けられており、このバネは、起立方向の付勢力を常時クレードルアーム71に加えている。従って、ボビン48に紡績糸10が巻かれてパッケージ45が巻き太るに従って、クレードルアーム71は、装置正面側に倒れ、パッケージ45の軸の位置が前方へ移動する。なお、クレードルアーム71には図示しない駆動部(例えば、シリンダ)が連結されており、図示しないユニットコントローラの指令によって、クレードルアーム71を巻取ドラム74から離れる方向及び巻取ドラム74に近づく方向に積極的に回動させるように制御することもできる。
【0060】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、走行輪42と、を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、走行輪42を駆動して、前記フレーム6に固定された走行路41上を走行する。糸継台車3は、糸切れや糸切断が発生した紡績ユニット2の前で停止して、糸継ぎを行う。
【0061】
前記サクションパイプ44は、回転軸44aを中心に上下方向に回動可能であり、紡績装置9から送出される糸(上糸)を吸い込みつつ捕捉して、スプライサ43へ案内できるように構成されている。サクションマウス46は、回転軸46aを中心に上下方向に回動可能であり、前記巻取装置13に支持されたパッケージ45から糸(下糸)を吸引しつつ捕捉して、スプライサ43へ案内できるように構成されている。スプライサ43は、案内された上糸と下糸とを糸継ぎする。なお、スプライサ43の詳細な構成については省略するが、旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせることにより、上糸と下糸とを糸継ぎするように構成されている。
【0062】
玉揚台車4は、図1及び図2に示すように、ボビンセット装置60を備える。ボビンセット装置60は、ボビンセット作業と玉揚作業とを行うことが可能に構成されている。ボビンセット作業とは、クレードル70にボビン48を供給して紡績糸10の巻取りの準備を行う作業である。玉揚作業とは、満巻になったパッケージ45をクレードル70から取り外す作業である。玉揚台車4は、その下部に走行輪92を備えている。玉揚台車4は、ある紡績ユニット2に対してボビンセット作業又は玉揚作業を行う旨の指示を受けると、前記フレーム6に形成された走行路91上を当該紡績ユニット2まで走行する。そして、玉揚台車4は、指示を受けた紡績ユニット2の前で停止し、ボビンセット作業又は玉揚作業(又はその両方の作業)を行う。
【0063】
ボビンセット装置60は、上記ボビンセット作業を行うための構成として、吸引捕捉装置50と、ボビン供給部88と、クレードル操作アーム89と、を備えている。
【0064】
吸引捕捉装置50は、図2に示すように、捕捉部51と、吸引パイプ(接続部)52と、シリンダ(駆動部)53と、を備える。捕捉部51は、図4(a)に示すように、円柱部51aと、吸引口51bと、を有している。円柱部51aは、外形が円柱状の樹脂製の部材である。円柱部51aは、当該円柱部51aの軸を回転軸として回転することができる。吸引口51bは、捕捉部51の先端に形成されており、玉揚作業後等に、紡績装置9から紡出される紡績糸10を吸引する。吸引パイプ52は、一端側(第1端部)において捕捉部51と接続されており、他端側(第2端部)において適宜の部材を介して玉揚台車4に支持されている(片持ち支持)。従って、捕捉部51は、片持ち支持の自由端側に位置しているので、固定端側の部材のガタ等の影響を大きく受けるので、可動範囲が大きくなる。吸引パイプ52は、他端側において負圧源等と接続されており、捕捉部51に吸引流を発生させることができる。シリンダ53は、空気圧の変化によって伸縮するエアシリンダとして構成されている。捕捉部51は、シリンダ53と接続されており、シリンダ53の伸縮に応じて位置を変えることができる。また、捕捉部51は、第2端部を回動支点として、吸引パイプ52及びシリンダ53とともに、回動することができる。この構成により、捕捉部51は、紡績装置9に対して接離可能である。
【0065】
ボビン供給部88は、ボビン48を保持可能であるとともに、回動軸87を中心として回動可能である。この構成により、クレードル70が備える1対のボビンホルダ72の間にボビン48を供給することができる。ボビン供給部88は、バンチ巻きを行うための図略のバンチ巻きローラを備えている。バンチ巻きとは、1つのパッケージを巻き始めるときに紡績糸10をボビン48に固定するために、ボビン48の周囲に紡績糸10を棒巻きすることをいう。
【0066】
クレードル操作アーム89は、一方のボビンホルダ72を他方のボビンホルダ72から離間させるように、クレードルアーム71を操作することができる。
【0067】
ボビンセット装置60は、上記玉揚作業を行うための構成として、前記クレードル操作アーム89のほか、案内部61を備えている。案内部61は、クレードル70から受け取った満巻のパッケージ45を、パッケージ受け部80に案内するためのものである。パッケージ受け部80は、パッケージ45を転がして移動させるための傾斜部81と、転がされたパッケージ45が一時的に載せられる載置部82と、で構成されている。
【0068】
次に、図5から図7までを参照して、ボビンセット装置60が玉揚作業及びボビンセット作業を行うときの流れ、特に捕捉部51が位置決めされる様子について説明する。初めに、玉揚作業について説明する。図5から図7までは、ボビンセット作業及び玉揚作業が行われる様子を示す図である。
【0069】
ある紡績ユニット2のパッケージ45が満巻となったことが図略のセンサによって検知された場合、当該紡績ユニット2の玉揚台車4は、紡績装置9の駆動を停止させるとともに、玉揚台車4を呼び寄せる。それとほぼ同時に、玉揚台車4は、クレードルアーム71を図5の左側(装置正面側)へ回動することにより巻取ドラム74から満巻のパッケージ45を離す制御を行う。
【0070】
その後、玉揚台車4は、一方のボビンホルダ72を他方のボビンホルダ72から離間させるようにクレードルアーム71をクレードル操作アーム89により操作して、満巻のパッケージ45をクレードル70から取り外す。なお、玉揚台車4は、ボビンホルダ72に新たなボビンが供給されるまで、ボビンホルダ72をクレードル操作アーム89により離間させたままにしておく。
【0071】
取り外された満巻のパッケージ45は、案内部61によって当該パッケージ45の重さが支持されながら、傾斜部81に案内される。案内部61は、パッケージ45を傾斜部81に沿って転がしていき、載置部82まで案内する。以上のようにして玉揚作業が行われる。
【0072】
次に、図5から図7までを参照して、ボビンセット作業について説明する。
【0073】
玉揚台車4は、玉揚作業の前後において、シリンダ53の空気圧を上昇させて、吸引捕捉装置50を上方に延伸する(図5を参照)。
【0074】
次に、玉揚台車4は、前記第2端部を回動支点として、吸引捕捉装置50を紡績装置9側(図5の右側)へ回動する。これにより、捕捉部51を紡績装置9に接近させることができる。このとき、捕捉部51が捕捉部ガイド47に接触することで当該捕捉部51の位置決めが行われる。
【0075】
以下、捕捉部51が位置決めされる様子について図4(b)を参照して説明する。図4(b)は、捕捉部ガイド47を厚み方向に垂直な面で切ったときの捕捉部ガイド47及び捕捉部51の断面図である。なお、以下の説明では、紡績装置9が紡出した紡績糸10を捕捉するための捕捉部51の予め定められた位置(具体的には捕捉部51の吸引口51bと紡績装置9の供給口38とが対面するときの捕捉部51の位置)を「捕捉位置」と称する。つまり、捕捉部ガイド47は、捕捉部51を捕捉位置に位置決めするための部材である。
【0076】
前述のように、吸引捕捉装置50を紡績装置9側に回動させると、初めに、捕捉部51の円柱部51aと、捕捉部ガイド47の案内部47aのうちの一方と、が接触する(図4(b)の鎖線を参照)。なお、本実施形態の捕捉部51は、力を受けることで位置が変わるように(ある程度の可動部分を意図的に設けて)構成されている。そのため、この状態から更に吸引捕捉装置50を紡績装置9側に回動させることで、円柱部51aが捕捉部ガイド47の中心に向かって転がるように移動し、円柱部51aと両方の案内部47aとが接触する(図4(b)の実線を参照)。円柱部51aが2箇所で支持されることにより、円柱部51aの軸の位置が定まるので、捕捉部51を精度良く位置決めすることができる。
【0077】
これにより、吸引口51bを供給口38に対面させることができるので、捕捉部51は、紡績装置9が紡出した紡績糸10を確実に捕捉することができる。なお、本実施形態では、正面側から順に、玉揚台車の走行路91、パッケージ受け部80(載置部82)、紡績ユニット2と配置されるレイアウトであるため、玉揚台車4から紡績ユニット2までの距離(即ち捕捉部51の支持部分から紡績装置9までの距離)が長くなる。従って、玉揚台車4側で捕捉位置を制御する場合は、高い寸法精度や正確な制御が必要となる。この点、本実施形態では、玉揚台車4と独立に設けられた捕捉部ガイド47で捕捉部51の位置決めを行っているため、玉揚台車4側の寸法精度等の影響を軽減することができる。従って、玉揚台車4の製造コストを低下させることができる。
【0078】
捕捉部51が捕捉位置に位置決めされる前後において、玉揚台車4は、円柱部51aに吸引流を発生させる。また、ユニットコントローラは、吸引口51bに吸引流が発生される前後(望ましくは発生させた後)において、ドラフト装置7及び紡績装置9の駆動を再開する。これにより、紡績装置9から排出される紡績糸10を捕捉部51に吸い込ませることができる。
【0079】
次に、玉揚台車4は、捕捉部51が紡績糸10を吸い込んでいる状態のまま、シリンダ53を縮めつつ捕捉部51を下方へ移動させる。このとき、玉揚台車4は、捕捉部51が吸引している紡績糸10を糸貯留装置12に巻き付かせるように制御を行う。なお、このときの捕捉部51の吸引力は小さく、糸貯留装置12の前記抵抗トルクに打ち勝つことがないため、紡績糸10は糸貯留装置12に貯留されていく。
【0080】
玉揚台車4は、捕捉部51を下方へ移動させた後に、所定位置で待機させる(図7を参照)。
【0081】
次に、玉揚台車4は、ボビンセット装置60の上部にストックされているボビン48をボビン供給部88に把持させた後に、回動軸87を中心に当該ボビン供給部88を回動させることで、クレードル70へのボビン48の供給を行う。その後、玉揚台車4は、クレードル操作アーム89により一方のボビンホルダ72を他方のボビンホルダ72に近づけることによってボビン48をクレードル70に保持させる。そして、ボビン供給部88は、バンチ巻きローラを用いてボビン48にバンチ巻きを行う。
【0082】
バンチ巻きが完了すると、玉揚台車4は、ボビン供給部88をボビンセット装置60側へ退避させる。また、その前後において、ユニットコントローラは、ボビン48の外周面が巻取ドラム74に接触するように(紡績ユニット2の背面側に)、クレードル70を回動させる。これにより、糸貯留ローラ21から徐々に紡績糸10が解舒されつつ、巻取装置13によるパッケージ45の巻取りが開始される。
【0083】
以上に説明したように、精紡機1は、紡績装置9と、玉揚台車4と、捕捉部ガイド47と、を備える。紡績装置9は、紡績糸10を供給する。玉揚台車4は、紡績装置9に対して接離し、紡績装置9に接近したときに、紡績装置9が供給する紡績糸10を捕捉する捕捉部51を有し、紡績装置9とは独立して設けられる。捕捉部ガイド47は、紡績装置9に捕捉部51が接近したときに、紡績糸10を捕捉するための予め定められた捕捉位置に捕捉部51が位置するように当該捕捉部51の位置決めを行う。
【0084】
これにより、捕捉部ガイド47によって捕捉部51が捕捉位置に位置決めされるので、捕捉部51は、紡績装置9から供給される紡績糸10を確実に捕捉することができる。
【0085】
また、本実施形態の精紡機1において、捕捉部ガイド47は、紡績装置9の近傍であって紡績糸10の走行方向の下流側に配置される。
【0086】
これにより、本実施形態では紡績装置9の近傍に捕捉位置が設けられているため、紡績装置9の近傍に捕捉部ガイド47を配置することで、捕捉部51は、紡績装置9から供給される紡績糸10を一層確実に捕捉することができる。
【0087】
また、本実施形態の精紡機1は、紡績装置9と捕捉部ガイド47との位置関係を一定にするフレーム6を備える。
【0088】
これにより、紡績装置9に対する捕捉部ガイド47の位置がズレないため、捕捉部51を捕捉位置に精度良く位置決めすることができる。従って、捕捉部51は、紡績装置9から供給される紡績糸10を一層確実に捕捉することができる。
【0089】
また、本実施形態の精紡機1において、紡績装置9は、紡績糸10を供給する供給口38を有する。捕捉部51は、紡績糸10を吸引して捕捉する吸引口51bを有する。捕捉部ガイド47は、供給口38と吸引口51bとが対面するように捕捉部51の位置決めを行う。
【0090】
これにより、紡績糸10の供給箇所と吸引箇所とを対面させることができるので、捕捉部51は、紡績装置9から供給される紡績糸10を一層確実に捕捉することができる。また、糸道を屈曲させずに捕捉部51が紡績糸10を捕捉することができるので、紡績糸10に無理な負荷が掛かることを防止できる。
【0091】
また、本実施形態の精紡機1において、玉揚台車4は、捕捉部51を移動させるシリンダ53を備える。捕捉部51は、シリンダ53により捕捉位置又はその近傍まで移動し、捕捉部ガイド47により位置決めされる。
【0092】
これにより、玉揚台車4の位置、大きさ、レイアウト等の自由度を向上させることができる。また、シリンダ53や捕捉部51を回動させるためのカム機構等(駆動部)が捕捉部51の位置を高精度に制御できない場合でも、捕捉部51は、紡績糸10の捕捉を行う際には捕捉部ガイド47によって捕捉位置に精度良く位置決めされる。従って、シリンダ53等を安価な構成にして、製造コストを低減することができる。
【0093】
また、本実施形態の精紡機1において、捕捉部51は、外形が円柱状である円柱部51aを備える。捕捉部ガイド47は、円柱部51aの2箇所と接触することで、捕捉部51を捕捉位置に位置決めする。
【0094】
これにより、捕捉部51を捕捉位置に位置決めする過程において、円柱部51aの1箇所だけが捕捉部ガイド47に接触している状態では、捕捉部ガイド47は、円柱部51aの2箇所目が捕捉部ガイド47に接触するように円柱部51aをスムーズに案内できる。その後、円柱部51aの2箇所目が捕捉部ガイド47に接触すると、円柱部51aの軸の位置が定まるので、捕捉部ガイド47は、円柱部51aを捕捉位置に精度良く位置決めできる。
【0095】
また、本実施形態の精紡機1において、円柱部51aは、当該円柱部51aの軸を中心として回転可能である。
【0096】
これにより、円柱部51aが回転することで、円柱部51aの1箇所だけが捕捉部ガイド47に接触している状態から、円柱部の2箇所目が捕捉部ガイド47に接触する状態まで、当該円柱部51aをスムーズかつ確実に移動させることができる。
【0097】
なお、円柱部51aは、回転可能でなくても良い。この場合でも、円柱部51aが捕捉部ガイド47の案内部47aに接触した際に、当該案内部47aに沿って滑るように移動することで、捕捉部51が捕捉位置に位置決めされる。
【0098】
また、本実施形態の精紡機1は、第1端部と第2端部とを有する吸引パイプ52を備える。吸引パイプ52は、捕捉部51が第1端部に接続され、第2端部を回動(移動)支点として玉揚台車4に片持ち支持される。
【0099】
これにより、本実施形態のように吸引パイプ52が長い場合は、例えば連結機構(リンク機構等)のガタ等によって捕捉部51の可動範囲が大きくなる。従って、例えば玉揚台車4の停止位置の精度が低く、所定の位置から比較的大きくズレていた場合であっても、捕捉部51を捕捉位置まで移動させて捕捉部ガイド47による位置決めを行うことができる。
【0100】
また、本実施形態の精紡機1、紡績装置9と、紡績装置9から供給された紡績糸10を巻き取る巻取装置13と、を有する紡績ユニット2を複数備える。玉揚台車4は、紡績ユニット2の配列方向に沿って走行可能である。捕捉部ガイド47は、紡績ユニット2毎に設けられる。
【0101】
これにより、捕捉部ガイド47が紡績ユニット2毎に設けられているので、玉揚台車4の停止位置の精度や玉揚台車4の寸法精度等に影響されずに、各紡績ユニット2で捕捉部51の位置決めを正確に行うことができる。従って、玉揚台車4の製造コストを低減しつつ、紡績装置9から供給される紡績糸10を捕捉部51により確実に捕捉することができる。
【0102】
また、本実施形態の精紡機1は、走行路91と、パッケージ受け部80と、を備える。走行路91は、紡績ユニット2の配列方向に沿って配置され、玉揚台車4が走行するためのものである。パッケージ受け部80は、紡績ユニット2と走行路91との間に配置され、玉揚げされたパッケージ45が置かれる。
【0103】
これにより、玉揚台車4側の寸法精度等の影響を軽減することができるので、玉揚台車4の製造コストを低下させることができる。
【0104】
次に、上記実施形態の別の実施形態を説明する。図8は、別の実施形態に係る巻取ユニットの側面図である。なお、図8において、巻取動作中(玉揚げ前)のときの紡績糸121及びパッケージ122等を鎖線で示している。本実施形態は、紡績機ではなく自動ワインダに本発明を適用した構成となっている。自動ワインダは、複数のワインダユニット(巻取ユニット)100を備えている。
【0105】
以下、ワインダユニット100の構成を簡単に説明する。ワインダユニット100は、給糸部101に保持される給糸ボビン120から解舒される紡績糸121を、巻取部106により巻き取ってパッケージ122を形成する装置である。給糸部101から巻取部106までの間には、解舒補助装置102、テンション付与装置103、糸欠点検出装置104、糸継装置105等が配置されている。
【0106】
解舒補助装置102は、給糸ボビン120から解舒される紡績糸121が振り回されて給糸ボビン120上部に形成されるバルーンに対し、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって紡績糸121の解舒を補助する。テンション付与装置103は、走行する紡績糸121に所定のテンションを付与する。糸欠点検出装置104は、紡績糸121の糸太さを監視することにより、スラブ等の糸欠陥を検出する。糸継装置105は、糸欠陥を検出して紡績糸121を切断する糸切断時、又は給糸ボビン120の交換時(玉揚作業時及びボビンセット作業時)等において、給糸ボビン120側の糸(下糸)と、巻取部106側の糸(上糸)とを糸継ぎする。また、巻取部106は、パッケージ122を支持するクレードル107と、パッケージ122に接触して回転することで当該パッケージ122を駆動する接触ローラ108と、を備えている。
【0107】
また、自動ワインダは、ワインダユニット100の上部に玉揚装置110を備えている。玉揚装置110は、各ワインダユニット100においてパッケージ122が満巻となった際に、当該ワインダユニット100の位置まで走行し、当該満巻のパッケージ122を取り外すとともに新たな給糸ボビンを供給できるように構成されている。また、玉揚装置110は、新たな給糸ボビンの紡績糸121を捕捉するための吸引捕捉装置111を備えている。吸引捕捉装置111は、先端に配置された捕捉部111aと、伸縮可能な吸引パイプ111bと、で構成されている。この構成により、捕捉部111aは、新たに供給された給糸ボビン120の上側(糸走行方向下流側)の紡績糸121を捕捉することができる。
【0108】
また、本実施形態では、この給糸ボビン120の上側には、捕捉部111aが紡績糸121を捕捉できるように位置決めするための捕捉部ガイド109が配置されている。この捕捉部111a及び捕捉部ガイド109は、上記実施形態の、円柱部51a及び捕捉部ガイド47と同じ形状であっても良いし、異なる形状でガイドを行う構成であっても良い。以上により、吸引捕捉装置111は、給糸部101から供給される紡績糸121を確実に捕捉することができる。
【0109】
玉揚装置110は、新たな給糸ボビン120の紡績糸121を捕捉した後に、吸引捕捉装置111を上方に移動させる。その上で、玉揚装置110は、当該紡績糸121を空の巻取ボビンにバンチ巻き等の公知の方法によって固定する。以上により玉揚作業が完了して巻取作業が再開され、給糸ボビン120の紡績糸121は空の巻取ボビンに巻き取られる。
【0110】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0111】
上記の精紡機1では、位置決め部としての捕捉部ガイド47は、玉揚台車4が紡績糸10を捕捉する際のガイドを行う構成であるが、位置決め部は、糸継台車3が紡績糸10を捕捉する際にガイドする構成であっても良い。なお、玉揚台車4から紡績装置9までの距離の方が、糸継台車3から紡績装置9までの距離よりも長いため、本発明の効果をより良好に発揮させることができる。
【0112】
捕捉部ガイド47は、捕捉部51の位置決めを行うことができる限り、形状及び配置は任意である。例えば捕捉部ガイド47をV字状に構成し、円柱部51aと2箇所で接触して位置決めを行う構成であっても良い。捕捉部ガイド47と接触する捕捉部51側の箇所(本実施形態では円柱部51a)の形状も円柱状に限られない。そのため、捕捉部ガイド47は、円柱以外の部材の位置決めを行うことができる形状であっても良い。
【0113】
精紡機1のレイアウトは上記に限られない。例えば、正面側から順に、パッケージの載置部(パッケージ受け部)、玉揚台車の走行路、紡績ユニットと配置されていても良い。
【0114】
紡績装置9の構成は上記に限られず、例えば繊維走行方向に沿って配置された複数のノズルを用いて紡績を行う構成であっても良い。
【0115】
本発明は、コーン巻きのパッケージを形成する場合に限らず、例えばチーズ巻きのパッケージを形成する場合にも適用することができる。
【0116】
紡績ユニット2は、糸貯留装置12により紡績装置9から紡績糸10を引き出しているが、この構成に限られない。例えば、デリベリローラとニップローラとにより紡績装置9から紡績糸10を引き出し、その後、下流側に設けた糸貯留装置12により紡績糸10を貯留するように構成した精紡機に、本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0117】
1 精紡機(糸巻取機)
2 紡績ユニット(巻取ユニット)
3 糸継台車(作業部)
4 玉揚台車(作業部)
6 フレーム(位置固定部)
9 紡績装置(給糸部、紡績部)
38 供給口
50 吸引捕捉装置
51 捕捉部
52 吸引パイプ(接続部)
53 シリンダ(駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給する給糸部と、
前記給糸部に対し接離し、前記給糸部に接近したときに前記給糸部が供給する糸を捕捉する捕捉部を有し、前記給糸部とは独立して設けられた作業部と、
前記給糸部に前記捕捉部が接近したときに、糸を捕捉するための予め定められた捕捉位置に前記捕捉部が位置するように当該捕捉部の位置決めを行う位置決め部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部は、紡績糸を紡出する紡績部であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記位置決め部は、前記給糸部の近傍であって糸の走行方向の下流側に配置されることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部と前記位置決め部との位置関係を一定にする位置固定部を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部は、糸を供給する供給口を有し、
前記捕捉部は、糸を吸引して捕捉する吸引口を有し、
前記位置決め部は、前記供給口と前記吸引口とが対面するように前記捕捉部の位置決めを行うことを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記作業部は、前記捕捉部を移動させる駆動部を備え、
前記捕捉部は、前記駆動部により前記捕捉位置又はその近傍まで移動し、前記位置決め部により位置決めされることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記位置決め部は、案内部を備え、
前記捕捉部は、前記案内部に接触することで、前記捕捉位置に案内されることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記捕捉部は、外形が円柱状である円柱部を備え、
前記位置決め部は、前記円柱部の2箇所と接触することで、前記捕捉部を前記捕捉位置に位置決めすることを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項8に記載の糸巻取機であって、
前記円柱部は、当該円柱部の軸を回転軸として回転可能であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記作業部は、第1端部と第2端部とを有する接続部を備え、
前記接続部は、前記捕捉部が前記第1端部に接続され、前記第2端部を移動支点として片持ち支持されることを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部と、前記給糸部から供給された糸を巻き取る巻取部と、を有する巻取ユニットを複数備え、
前記作業部は、前記巻取ユニットの配列方向に沿って走行可能であり、
前記位置決め部は、前記巻取ユニット毎に設けられることを特徴とする糸巻取機。
【請求項12】
請求項11に記載の糸巻取機であって、
前記作業部は、糸を巻き取って形成されたパッケージを玉揚げする玉揚台車であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項13】
請求項12に記載の糸巻取機であって、
前記巻取ユニットの配列方向に沿って配置され、前記作業部が走行するための走行路と、
前記巻取ユニットと前記走行路との間に配置され、玉揚げされたパッケージが置かれるパッケージ受け部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項14】
請求項11に記載の糸巻取機であって、
前記作業部は、前記給糸部側の糸と、前記巻取部側の糸と、の糸継作業を行う糸継台車であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項15】
請求項1から14までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
スライバをドラフトして繊維束とするドラフト部を備え、
前記給糸部は、紡績糸を紡出する紡績部であり、
前記紡績部は、
前記ドラフト部によってドラフトされた繊維束を紡績室に案内する繊維案内部と、
前記紡績室に案内された前記繊維束に空気流を噴射するノズル孔を有するノズルブロックと、
前記紡績室で紡績された紡績糸を案内する中空ガイド軸体と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−57152(P2013−57152A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197678(P2011−197678)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】