説明

糸巻取機

【課題】ボビンストッカのボビン残量を確認し易く、しかも、ボビンストッカがストックしているボビンを作業台車に対してシンプルな構成で供給することができる糸巻取機を提供する。
【解決手段】紡績ユニット6は、機台本体2の長手方向に沿って並設され、巻取ボビン16に紡績糸15を巻き取ってパッケージ17を形成する。ボビンストッカ4は、紡績ユニット6で使用される巻取ボビン16を保管する。玉揚台車67は、紡績ユニット6とボビンストッカ4との間を走行可能に設けられ、巻取ボビン16を紡績ユニット6に供給する。ボビンストッカ4が保管している巻取ボビン16に対して、少なくとも正面側からアクセス可能であるように、当該ボビンストッカ4が構成されている。玉揚台車67は、ボビンストッカ4が保管している巻取ボビン16を、機台本体2の正面側のボビン供給位置77において受け取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、糸巻取機が備えるボビンストッカのレイアウトに関する。
【背景技術】
【0002】
巻取ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取機が知られている。この種の糸巻取機としては、例えば、特許文献1に記載の紡績機、特許文献2に記載の自動ワインダなどがある。特許文献1及び特許文献2が開示しているように、この種の糸巻取機は、糸を巻き取るための多数の糸巻取ユニットを機台本体に並べて備えている。
【0003】
このような糸巻取機において、糸巻取ユニットでパッケージが満巻(パッケージに規定量の糸が巻き取られた状態)になったときには、当該糸巻取ユニットから満巻パッケージを回収する玉揚作業を行うとともに、新しく空の巻取ボビンを取り付けるというボビンセット作業が行われる。特許文献1及び特許文献2に記載の糸巻取機は、玉揚作業及びボビンセット作業を自動的に行う玉揚台車(作業台車)を備えている。このように、パッケージが完成した糸巻取ユニットに新しい空の巻取ボビンを自動的に取り付けることで、当該糸巻取ユニットによる糸の巻取りを継続することができる。
【0004】
作業台車がボビンセット作業を行うためには、当該作業台車が糸巻取ユニットに供給するための空の巻取ボビンが必要である。そこで、特許文献1及び2に開示されている糸巻取機は、空の巻取ボビンを大量にストックしておくことができるボビンストッカを備えている。ボビンストッカは、自身がストックしている空の巻取ボビンを、必要に応じて作業台車に供給できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−246275号公報
【特許文献2】米国特許第4865260号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、その図2に示されているように、ボビンストッカは機台の背面側に配置されている。従って、特許文献1に記載の紡績機のオペレータは、ボビンストッカの巻取ボビンの残量を確認するために機台背面側にまわらなければならない。このため、ボビン残量をオペレータが容易に確認できないという問題がある。なお、特許文献1の精紡機は、作業台車を、その軌道の延長線上に抜き出し可能に構成されている。このため、特許文献1の紡績機においては、前記軌道の延長線を避けるようにボビンストッカを配置しなければならず、ボビンストッカのレイアウトが制限されるという事情がある。このため、特許文献1の構成では、ボビンストッカを機台の背面側に配置するしかなかったのである。
【0007】
一方、特許文献2の構成では、その図1に示されているように、ボビンストッカ(アキュムレータ10)が機台正面側を向いて配置されている。従って、特許文献2に記載の自動ワインダのオペレータは、ボビンストッカのボビン(チューブ14)の残量を、機台正面側から容易に確認することができる。
【0008】
しかし、特許文献2の構成は、ボビンストッカが機台正面側を向いて配置されているにもかかわらず、当該ボビンストッカからボビンを受け取る作業台車(ドッフィングデバイス20)は、糸巻取ユニット(ワインディングステーション8)の背面側を走行するように構成されている。このように、従来の糸巻取機では、ボビンストッカと、当該ボビンストッカからボビンを受け取る作業台車と、の配置が整理されていなかったため、ボビンストッカから作業台車までのボビンの供給方法が複雑になる傾向があった。例えば特許文献2では、ボビンストッカがストックしている空ボビンを、無端ベルトからなる搬送機構によって作業台車まで供給するように構成されている。しかし、このように無端ベルトで空ボビンを搬送して供給する構成では、作業台車が空ボビンを受け取るまでに時間がかかるため、効率が悪いという問題がある。また、空ボビンの搬送機構を設ける必要があるため、糸巻取装置全体の構成が複雑化してしまう。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ボビンストッカのボビン残量を確認し易く、しかも、ボビンストッカがストックしているボビンを作業台車に対してシンプルな構成で供給することができる糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、機台本体と、複数の糸巻取ユニットと、ボビン保管装置と、作業台車と、を備える。前記糸巻取ユニットは、前記機台本体の長手方向に沿って並設され、巻取ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記ボビン保管装置は、前記糸巻取ユニットで使用される前記巻取ボビンを保管する。前記作業台車は、前記糸巻取ユニットと前記ボビン保管装置との間を走行可能に設けられ、前記巻取ボビンを前記糸巻取ユニットに供給する。前記糸巻取ユニットの並設方向に沿った方向を左右方向、前記左右方向及び上下方向に直交する方向を前後方向とし、前記前後方向において前記機台本体から見て前記糸巻取ユニットが巻き取る糸が走行している側を正面側、反対側を背面側としたときに、前記ボビン保管装置が保管している前記巻取ボビンに対して、少なくとも前記正面側からアクセス可能であるように、当該ボビン保管装置が構成されている。前記作業台車は、前記ボビン保管装置が保管している前記巻取ボビンを、前記機台本体の前記正面側のボビン供給位置において受け取る。
【0012】
このように、ボビン保管装置のアクセス可能な側と、作業台車が巻取ボビンを受け取る位置(ボビン供給位置)と、を同じ側に配置したことにより、ボビン保管装置から作業台車に供給される巻取ボビンの経路の長さを短縮することができる。その結果、簡単な構成により、巻取ボビンを作業台車に効率良く供給することができる。
【0013】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記機台本体の前記正面側に配置され、前記作業台車の走行を可能とする走行経路を更に備える。前記走行経路を挟んで、前記糸巻取ユニット及び前記ボビン保管装置の反対側に、作業者が作業を行う作業通路が設けられる。
【0014】
即ち、ボビン保管装置は、作業通路側を向いて配置されている。これにより、作業者は、ボビン保管装置のボビン保管状況を、作業通路から容易に確認できる。
【0015】
上記の糸巻取機において、前記ボビン保管装置は、前記巻取ボビンの軸方向端部が前記作業通路側を向くように、前記巻取ボビンを複数保管するように構成されることが好ましい。
【0016】
これにより、ボビン保管装置は、巻取ボビンを多数保管することができる。
【0017】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、糸屑回収部と、糸屑排出部と、を更に備える。前記糸屑回収部は、前記作業台車に設けられ、糸屑を回収する。前記糸屑排出部は、前記ボビン保管装置の近傍に配置され、前記ボビン供給位置に停止した前記作業台車の前記糸屑回収部に溜まっている糸屑を、当該糸屑回収部から排出させる。
【0018】
この構成によれば、作業台車は、ボビン供給位置において、巻取ボビンの受領と糸屑の廃棄を同時に行うことができる。これにより、糸巻取機の効率が向上する。
【0019】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記糸巻取ユニットが巻き取る糸よりも前記背面側において、前記糸の糸継作業を行う糸継台車を備える。前記機台本体は、当該機台本体の前記背面側と、前記糸継台車の作業空間と、を連通する開口部を有している。
【0020】
これにより、糸継台車を機台の背面側からメンテナンスすることができる。従って、従来技術のように、糸継台車のメンテナンスのために当該糸継台車を機台側方から抜く必要がないので、ボビン保管装置を正面側に寄せて配置することができる。
【0021】
上記の糸巻取機において、前記ボビン保管装置は、前記機台本体の高さ方向の全域にわたって設けられることが好ましい。
【0022】
即ち、糸継台車を機台の側方から抜く必要がなくなった結果、糸継台車を抜くためのスペースを機台側方に設ける必要が無くなった。この結果、ボビン保管装置のレイアウトの自由度が向上し、当該ボビン保管装置を機台本体の上下方向の全域にわたって設けることができる。これにより、ボビン保管装置が保管可能な巻取ボビンの数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】精紡機の平面図。
【図3】精紡機の側面断面図。
【図4】空気紡績装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る糸巻取機としての精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。図1に示すように、精紡機1は、機台本体2と、ドライブエンドボックス3と、ボビンストッカ(ボビン保管装置)4と、ブロアボックス5と、を備えている。
【0025】
機台本体2には、その長手方向に沿って、複数の紡績ユニット(糸巻取ユニット)6が並設して設けられている。図3に示すように、各紡績ユニット6は、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置10と、紡績部11と、糸貯留装置12と、巻取部13と、を主要な構成として備えている。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での繊維束14及び紡績糸15の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。各紡績ユニット6は、ドラフト装置10が供給する繊維束14を紡績部11で紡績して紡績糸15を生成し、当該紡績糸15を巻取部13で巻取ボビン16に巻き取るように構成されている。なお、このように紡績糸15が巻き取られた巻取ボビン16を、パッケージ17と称する。
【0026】
なお、以下の説明で、紡績ユニット6が並設されている方向(図1及び図2に「右」と「左」の矢印で示す方向)を、単に「左右方向」と呼ぶことがある。また、左右方向及び上下方向(鉛直方向)に直交する方向(図1及び図3に「前」と「後」の矢印で示す方向)を、単に「前後方向」と呼ぶことがある。図3に示すように、左右方向で見たときに、紡績ユニット6で生成される紡績糸15は、機台本体2の前後方向の一側を走行する。そこで、前後方向で、機台本体2から見たときに紡績糸15が走行する側(図3の左側)を正面側、反対側を背面側と呼ぶことがある。
【0027】
ドライブエンドボックス3は、機台本体2の左右方向の一側の端部に配置されている。ドライブエンドボックス3内には、トラバース機構60(後述)を往復駆動するための駆動源などが配置されている。また、ドライブエンドボックス3には、図略の圧空源から圧縮空気供給パイプ33を介して圧縮空気が供給されている。ドライブエンドボックス3内には、前記圧縮空気(エア)を適切に調整して精紡機1の各部へと供給するレギュレータ等が配置されている。前記レギュレータ等によって適切な空気圧に調整された圧縮空気は、図略のダクト又はチューブなどを介して、精紡機1の各部に供給される。
【0028】
また図1に示すように、ドライブエンドボックス3の正面側には、操作部18が設けられている。この操作部18は、各紡績ユニット6に関する情報を表示可能な表示画面、各種設定を行う設定操作具(操作ボタン、操作ダイヤルなど)などを備えている。操作部18は、各紡績ユニット6と通信可能に構成されており、精紡機1が備える複数の紡績ユニット6に関する情報を集中的に管理している。また、操作部18は、精紡機1が備える複数の紡績ユニット6に対して一括して、或いは個別に制御信号を送信することができる。従って、精紡機1のオペレータは、複数の紡績ユニット6を、操作部18によって集中的に操作することができる。
【0029】
機台本体2の左右方向で、ドライブエンドボックス3とは反対側の端部には、ボビンストッカ4が配置されている。このボビンストッカ4は、空の巻取ボビン16を複数保持可能に構成されている。
【0030】
図2に示すように、ボビンストッカ4の背面側には、ブロアボックス5が配置されている。ブロアボックス5内には、図略の負圧源が配置されている。図3に示すように、機台本体2には、左右方向に沿って負圧ダクト19,20,21が配設されている。この負圧ダクト19,20,21は前記負圧源に接続されており、当該負圧ダクト19,20,21の内部は、前記負圧源によって負圧に保たれている。この負圧ダクト19,20,21を介して、精紡機1の各部に負圧を供給することができる。
【0031】
ドラフト装置10は、機台本体2の上端近傍に設けられている。ドラフト装置10は、図略のスライバケースからスライバガイドを介して供給されるスライバ(繊維束の原料)22を、所定の幅になるまでドラフト(繊維を引き伸ばすこと)する。
【0032】
ドラフト装置10は、複数のドラフトローラを備えている。各ドラフトローラは、2つ1組でドラフトローラ対を構成している。ドラフト装置10は、上流側から順に、バックローラ対23,27、サードローラ対24,28、ミドルローラ対25,29、及びフロントローラ対26,30の4つのドラフトローラ対を有する4線式のドラフト装置として構成されている。各ドラフトローラ対において、前後方向で正面側に位置するドラフトローラをトップローラ、背面側に位置するドラフトローラをボトムローラと称する。トップローラは、図3に示すように上流側から順に、バックトップローラ23、サードトップローラ24、ゴム製のエプロンベルトを装架したミドルトップローラ25、及びフロントトップローラ26となっている。一方、ボトムローラは、上流側から順に、バックボトムローラ27、サードボトムローラ28、ゴム製のエプロンベルトを装架したミドルボトムローラ29、及びフロントボトムローラ30となっている。
【0033】
上記ボトムローラ27,28,29,30は、図略の駆動源によって回転駆動される。一方、各トップローラ23,24,25,26は、図略の軸受等を介して、その軸線を中心に回転自在に支持されている。また、各トップローラ23,24,25,26は、図略の付勢部材によって、これに対向するボトムローラ27,28,29,30に向けてそれぞれ付勢されている。
【0034】
以上の構成で、ドラフト装置10は、回転するトップローラ23,24,25,26とボトムローラ27,28,29,30の間でスライバ22を挟み込み、当該スライバ22を下流側に向けて搬送することができる。ドラフト装置10は、下流側のドラフトローラ対ほど回転速度が速くなるように構成されている。従って、繊維束14(又はスライバ22)は、ドラフトローラ対とドラフトローラ対との間で搬送される間に引き伸ばされ(ドラフトされ)ていく。各ボトムローラ27,28,29,30の回転速度を適宜設定することにより、繊維束14がドラフトされる程度を変更できるので、ドラフト装置10は、所望の繊維幅となるように繊維束14をドラフトすることができる。なお、各ローラの回転速度は、繊維の種類や、紡績する紡績糸15の太さなどの紡績条件(巻取条件)応じて適宜変更される。
【0035】
フロントローラ対26,30のすぐ下流側には、紡績部11が配置されている。ドラフト装置10でドラフトされた繊維束14は、紡績部11に供給される。この紡績部11は、旋回気流を利用して繊維束14に撚りを与える空気紡績装置41を備えている。空気紡績装置41は、ドラフト装置10から供給された繊維束14に撚りを加えて、紡績糸15を生成する。
【0036】
空気紡績装置41は、図4に示すように、ノズルブロック43と、中空ガイド軸体44と、繊維案内部45と、を主に備えている。
【0037】
ノズルブロック43と中空ガイド軸体44の間には、紡績室46が形成されている。ノズルブロック43には、紡績室46内に空気を噴出する空気噴出ノズル47が形成されている。繊維案内部45には、紡績室46内に繊維束14を導入する導入口48が形成されている。空気噴出ノズル47は、紡績室46内に空気を噴出して旋回気流を発生させることができるように構成されている。この構成で、ドラフト装置10から供給された繊維束14は、導入口48を有する繊維案内部45によって紡績室46内に案内される。紡績室46内において、繊維束14は、旋回気流によって中空ガイド軸体44の周囲を振り回されることにより、撚りが加えられて紡績糸15となる。撚りが加えられた紡績糸15は、中空ガイド軸体44の軸中心に形成された糸通路49を通って、下流側の糸出口(図略)から空気紡績装置41の外部に送出される。
【0038】
なお、前記導入口48には、その先端を紡績室46内向けて配置された針状のガイドニードル50が配置されている。導入口48から導入される繊維束14は、このガイドニードル50に巻きかかるようにして紡績室46内に案内される。これにより、紡績室46内に導入される繊維束14の状態を安定させることができる。また、このようにガイドニードル50に巻きかかるように繊維束14が案内されるので、紡績室46内で繊維に撚りが加えられても、繊維案内部45よりも上流側に撚りが伝播することが防止される。これにより、紡績部11による加撚がドラフト装置10に影響を与えることを防止できる。ただし、ガイドニードル50を省略して、繊維案内部45の下流側端部により、ガイドニードル50の機能を果たしても良い。
【0039】
紡績部11の下流側であって機台本体2の下部には、巻取部13が配置されている。巻取部13は、クレードルアーム58と、巻取ドラム59と、を備えている。クレードルアーム58は、支軸57まわりに揺動可能に構成されている。このクレードルアーム58は、紡績糸15を巻回するための巻取ボビン16を回転可能に支持することができる。巻取ドラム59は、前記巻取ボビン16やそれに紡績糸15を巻回して形成されるパッケージ17の外周面に接触して駆動できるように構成されている。巻取ドラム59を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム59に接触する巻取ボビン16(又はパッケージ17)を回転させ、紡績糸15を巻取ボビン16に巻き取ることができる。
【0040】
図1に示すように、精紡機1は、各紡績ユニット6の巻取部13によって巻き取られる紡績糸15の綾振り(トラバース)を行うためのトラバース機構60を、機台本体2の下部に備えている。このトラバース機構60は、複数のトラバースガイド61と、トラバースロッド62と、を有している。
【0041】
各トラバースガイド61は、各紡績ユニット6の巻取部13の近傍にそれぞれ配置されるとともに、当該巻取部13で巻き取られる紡績糸15に係合するように構成されている。前記トラバースロッド62は、長手方向が左右方向に沿うように配設され、精紡機1が備える全紡績ユニット6にわたって配置されている。各トラバースガイド61は、トラバースロッド62に固定されている。このトラバースロッド62は、ドライブエンドボックス3内の図略の駆動源によって左右に往復駆動される。これにより、全紡績ユニット6で一斉にトラバースガイド61を往復駆動させることができる。紡績糸15を係合させた状態のトラバースガイド61を往復動させつつ、巻取部13によって巻取ボビン16を回転させることで、紡績糸15を綾振りしつつ巻き取り、適切な形状のパッケージ17を形成することができる。
【0042】
紡績部11と巻取部13との間には、糸貯留装置12が設けられている。糸貯留装置12は、図3に示すように、糸貯留ローラ63と、当該糸貯留ローラ63を回転駆動する電動モータ64と、を備えている。
【0043】
糸貯留ローラ63は、その外周面に一定量の紡績糸15を巻き付けて一時的に貯留することができるように構成されている。糸貯留ローラ63の外周面に紡績糸15を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ63を所定の回転速度で回転させることにより、紡績部11の空気紡績装置41から紡績糸15を所定の速度で引き出して下流側に搬送することができる。また、糸貯留ローラ63の外周に紡績糸15を一時的に貯留するように構成されているので、糸貯留装置12を一種のバッファとして機能させることができる。これにより、紡績部11における紡績速度と、巻取部13における巻取速度と、が何らかの理由により一致しない場合の不具合(例えば紡績糸15の弛みなど)を解消することができる。
【0044】
紡績部11と糸貯留装置12との間の位置には、糸品質測定器65が設けられている。紡績部11で紡出された紡績糸15は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記糸品質測定器65を通過する。糸品質測定器65は、走行する紡績糸15の太さを、図略の静電容量式センサによって監視するように構成されている。糸品質測定器65は、紡績糸15の糸欠点(紡績糸15の太さなどに異常がある箇所)を検出した場合に、糸欠点検出信号を図示しないユニットコントローラへ送信するように構成されている。なお、糸品質測定器65は静電容量式のセンサに限らず、例えば光透過式のセンサで紡績糸15の太さを監視する構成であっても良い。また、糸品質測定器65は、紡績糸15に含まれる異物を糸欠点として検出するように構成されていても良い。
【0045】
糸品質測定器65の近傍には、紡績糸15の糸欠点が検出された際に直ちに紡績糸15を切断するためのカッタ(図略)が配置されている。なお、紡績ユニット6は、このカッタの代わりに、紡績部11への空気の供給を停止して、紡績糸15の生成を中断することにより当該紡績糸15を切断しても良い。
【0046】
また図1等に示すように、精紡機1は、糸継台車66と玉揚台車(作業台車)67を備えている。
【0047】
機台本体2には、左右方向に沿って糸継台車走行レール68が敷設されている。この糸継台車走行レール68は、紡績糸15の糸道よりも背面側に位置している。前記糸継台車66は、糸継台車走行レール68に沿って走行することができるように構成されている。
【0048】
糸継台車66は、図1及び図3に示すように、糸継装置69と、サクションパイプ70と、サクションマウス71と、を備えている。ある紡績ユニット6において糸切れや糸切断などにより紡績部11と巻取部13の間の紡績糸15が分断状態になると、糸継台車66は、前記糸継台車走行レール68上を前記紡績ユニット6まで走行し、停止する。前記サクションパイプ70は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績部11から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉して糸継装置69へ案内する。サクションマウス71は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取部13に支持されたパッケージ17から糸端を吸引しつつ捕捉して糸継装置69へ案内する。糸継装置69は、案内された糸端同士を、圧縮空気によって発生させた旋回気流によって撚り合わせることにより糸継ぎを行う。これにより、紡績部11と巻取部13との間の紡績糸15を連続状態とし、パッケージ17への紡績糸15の巻き取りを再開することができる。
【0049】
前述のように、糸継台車走行レール68は糸道よりも背面側に敷設されているので、糸継台車66は糸道よりも背面側を走行し、当該背面側の位置から糸継作業を行う。このように、糸継台車66は、糸道よりも背面側(即ち、機台本体2の奥まった位置)にあるので、メンテナンスを行いにくい。そこで本実施形態の精紡機1においては、糸継台車66を、機台本体2の背面から抜き出すことができるように構成されている。より具体的には、図3に示すように、負圧を供給するための負圧ダクト19,20,21を、糸継台車66よりも高い位置、又は低い位置に配設することにより、糸継台車66の背面側に負圧ダクトが配置されてない構成としている。そして、機台本体2の背面側の一部には、糸継台車66が糸継作業を行う空間と連通する開口部110が形成されている。これにより、糸継台車66を、開口部110を介して機台本体2に着脱することができる。従って、糸継台車66を機台本体2の背面側から抜き出してメンテナンスを行うことができる。
【0050】
なお、糸継台車66にメンテナンスを行う場合、当該糸継台車66の背面側にアクセスすることができれば、十分なメンテナンスを行うことができる場合がある。このような場合は、糸継台車66を機台本体2に取り付けたままで、開口部110を介してメンテナンス作業を行うことができる。従って、開口部110の開口面積は、糸継台車66を抜き出すことができる程度に大きく形成されていなくても良く、作業者がメンテナンスを行うのに十分な程度の開口面積が確保されていれば良い。
【0051】
また機台本体2の正面側には、左右方向に沿って玉揚台車走行レール(走行経路)39が敷設されている。前記玉揚台車67は、玉揚台車走行レール39に沿って走行することができるように構成されている。
【0052】
玉揚台車67は、満巻になったパッケージ17の玉揚作業と、空の巻取ボビン16を供給するボビンセット作業を行うように構成されている。図1及び図3に示すように、玉揚台車67は、空ボビン収容部38と、クレードル操作アーム72と、糸引き出しアーム73と、空ボビン供給アーム74と、を備えている。空ボビン収容部38は、複数の空の巻取ボビン16を収容することができるように構成されている。糸引き出しアーム73は、図略のエアシリンダ機構により伸縮可能に構成されている。当該糸引き出しアーム73の先端には、エアサッカ装置として構成された捕捉部が設けられている。捕捉部は、吸引空気流を発生させて、紡績糸15を吸引捕捉することができるように構成されている。糸引き出しアーム73の先端には、前記捕捉部が吸引捕捉している紡績糸15を切断するための図略のカッタが設けられている。
【0053】
まず、玉揚作業について説明する。ある紡績ユニット6で巻き取っているパッケージ17が満巻(規定量の紡績糸15を巻き取った状態)になると、玉揚台車67は、玉揚台車走行レール39上を前記紡績ユニット6まで走行して停止する。次に、クレードル操作アーム72は、紡績ユニット6のクレードルアーム58を操作することにより、前記満巻のパッケージ17をクレードルアーム58から取り外す。取り外された満巻パッケージ17は、紡績ユニット6と、玉揚台車走行レール39と、の間に敷設されパッケージコンベア75の上に落下して受け止められる。なお、玉揚台車67に搬送機構を設け、当該搬送機構によって満巻パッケージ17を巻取部13からパッケージコンベア75へと搬送ように構成しても良い。図2に示すように、パッケージコンベア75は左右方向に沿って配設されている。このパッケージコンベア75は、満巻のパッケージ17を前記左右方向に沿って搬送するように構成されている。パッケージコンベア75による満巻パッケージ17の搬送方向の端部には、図略のパッケージ回収部が配置されている。以上の玉揚作業により、満巻のパッケージ17を自動的に回収することができる。
【0054】
次に、ボビンセット作業について説明する。玉揚台車67は、空ボビン収容部38にストックされている空の巻取ボビン16を空ボビン供給アーム74によって把持するとともに、当該空ボビン供給アーム74を回動させて、前記巻取ボビン16を紡績ユニット6のクレードルアーム58に装着する。これと前後して、玉揚台車67の糸引き出しアーム73は、紡績部11で紡出された紡績糸15を吸引捕捉するとともに、当該捕捉した紡績糸15を、クレードルアーム58に装着された前記空の巻取ボビン16の近傍まで案内する。この状態で、公知のバンチ巻きなどの方法により、紡績部11から引き出された紡績糸15を巻取ボビン16に固定する。
【0055】
上記バンチ巻きが終了すると、玉揚台車67は、上記カッタを作動させることにより糸引き出しアーム73の捕捉部が吸引捕捉している紡績糸15を切断する。これにより、バンチ巻きで余った紡績糸15が切断されるとともに、捕捉部の吸引空気流によって吸引除去される。玉揚台車67は、糸引き出しアーム73によって吸引除去した糸屑を回収するための糸屑回収ボックス(糸屑回収部)78を備えている。糸屑回収ボックス78は図略のエアフィルタを備えており、前記捕捉部が発生させた吸引空気流と、前記吸引空気流に乗って飛ばされてくる糸屑とを分離し、糸屑のみを回収できるように構成されている。
【0056】
以上で説明した玉揚台車67のボビンセット作業が終了すると、紡績ユニット6の巻取部13は、紡績部11から引き出された紡績糸15が巻取ボビン16に固定された状態で、巻取ボビン16の回転を開始する。これにより、新しい巻取ボビン16に対する紡績糸15の巻き取りを開始することができる。
【0057】
玉揚台車67の空ボビン収容部38にストックできる空の巻取ボビン16の数は限られているので、適宜のタイミングで巻取ボビン16を補充する必要がある。そこで玉揚台車67は、適宜のタイミングで、前記ボビンストッカ4から巻取ボビン16の供給を受けるように構成されている。即ち、図2に示すように、前記玉揚台車走行レール39は、ボビン供給位置77(図1及び図2に二点鎖線で示す位置)まで伸びて敷設されている。図1及び図2に示すように、ボビン供給位置77は、機台本体2の正面側に位置しており、ボビンストッカ4に隣接して配置されている。玉揚台車67は、必要に応じて、ボビン供給位置77まで走行して停止する。ボビン供給位置77に停止した玉揚台車67に対して、ボビンストッカ4から巻取ボビン16が供給される。
【0058】
なお、図2に示すように、玉揚台車走行レール39の正面側には、作業者が通行するための作業通路80が設けられている。作業者は、この作業通路80において、精紡機1の正面側の様子を確認することができる。また作業者は、作業通路80において、精紡機1の正面側に配置されている紡績ユニット6などのメンテナンス作業等を行うことができる。
【0059】
次に、ボビンストッカ4の構成について説明する。
【0060】
このボビンストッカ4は、巻取ボビン16を取り付けることができるペグ81を複数有している。このペグ81は棒状の部材として構成されている。周知のように、紡績糸15を巻き取るための巻取ボビン16は筒体として構成されているので、巻取ボビン16の内部にペグ81を挿入することにより、当該巻取ボビン16をペグ81に取り付けることができる。
【0061】
ボビンストッカ4は、巻取ボビン16を、その軸方向端部が作業通路80側を向くように複数保管するように構成されている。即ち、各ペグ81は、その長手方向が略前後方向に沿って配置されており、かつ、その先端が正面側を向くように配置されている。従って、当該ペグ81に巻取ボビン16を取り付けることにより、巻取ボビン16を、軸線が略水平な姿勢で支持することができる。このように、ボビンストッカ4は、巻取ボビン16を水平姿勢に保った状態で保管するように構成されているので、巻取ボビン16をスペース効率良く収容することができる。
【0062】
また、ボビンストッカ4の正面側は開放されており、各ペグ81の先端は、ボビンストッカ4の正面側に露出するように構成されている。即ち、本実施形態の精紡機1においては、ボビンストッカ4が正面側を向いて配置されている。これにより、ボビンストッカ4が保持している巻取ボビン16の様子を、作業通路80から確認することができる。これにより、作業者は、ボビンストッカ4のボビン残量などを、作業通路80から容易に確認することができる。また、ペグ81が正面側を向いているので、当該ペグ81に対する巻取ボビン16の取り付け作業を、作業通路80から行うことができる。これにより、ボビンストッカ4に対する巻取ボビン16の補給作業を簡単に行うことができる。以上のように、本実施形態の精紡機1では、ボビンストッカ4が保管している巻取ボビン16に対して、正面側から(作業通路80から)容易にアクセスすることが可能となっている。
【0063】
ボビンストッカ4は、ペグ81の長手方向と略直行する平面(垂直面)内を循環駆動される無端チェーン82を備えている。前記複数のペグ81は、無端チェーン82に固定されている。従って、無端チェーン82を一方向に向けて連続的又は間欠的に循環駆動させることにより、ペグ81に取り付けられた巻取ボビン16を、無端チェーン82の長手方向に沿って搬送することができる。
【0064】
ボビンストッカ4における巻取ボビン16の搬送経路の途中には、ボビン取外し部83が設けられている。ボビン取外し部83は、ペグ81に取り付けられている巻取ボビン16に接触可能な取外しレバー(図略)を備えており、当該取外しレバーによって巻取ボビン16をペグ81から取り外すことができるように構成されている。
【0065】
ボビン取外し部83によってペグ81から取り外された巻取ボビン16は、ボビン案内通路84に落とされる。ボビン案内通路84は、ボビン取外し部83と、ボビン供給部85とを結ぶように形成されている。ボビン案内通路84に落とされた巻取ボビン16は、当該ボビン案内通路84を通ってボビン供給部85まで案内される。なお、ボビン案内通路84は湾曲して形成されており、ボビン案内通路84を通る巻取ボビン16の方向転換を行うように構成されている。即ち、巻取ボビン16は、ペグ81から取り外された時点では軸線が前後方向に向いた姿勢であるが、ボビン案内通路84を通過する間に方向が変えられて、ボビン供給部85に到達した時点では当該巻取ボビン16の軸線が略左右方向を向いた姿勢となるように構成されている。
【0066】
ボビン供給部85は、前記ボビン供給位置77に停止する玉揚台車67の直上の位置に形成されている。このボビン供給部85は、図略のボビン繰出し機構を備えている。ボビン繰出し機構は、ボビン案内通路84を案内されてきた巻取ボビン16を堰き止めることができるとともに、堰き止めている巻取ボビン16を一つずつ繰り出すことができるようになっている。繰り出された巻取ボビン16は、ボビン供給部85から落下する。
【0067】
以上の構成で、ボビン供給位置77に停止している玉揚台車67に対して、巻取ボビン16を供給することができる。
【0068】
前述のように、本実施形態の精紡機1において、玉揚台車67がボビンストッカ4から巻取ボビン16の供給を受ける位置(ボビン供給位置77)は、機台本体2の正面側に設定されている。一方で、ボビンストッカ4は正面側を向いており、これによりボビンストッカ4が保管している巻取ボビン16に対して正面側からアクセスできるように構成されている。このように、ボビンストッカ4の正面側とボビン供給位置77とを同じ側に配置したことにより、ボビンストッカ4が保管している巻取ボビン16を玉揚台車67に供給するための構成(ボビン案内通路84など)を短くシンプルに構成することができる。
【0069】
なお、例えば特許文献1に記載されているように、従来の精紡機では、糸継台車(作業台車)のメンテナンスを行うために、当該糸継台車を機台本体の側方から抜き出すように構成されていた。従ってこの従来の紡績機において、機台本体の側方に配置されるボビンストッカは、糸継台車の抜出し通路に干渉しないように配置されなければならない。そこで、従来の精紡機では、前記抜出し通路よりも正面側又は背面側にボビンストッカを配置することになる。しかし、抜出し通路の正面側にはボビンストッカを配置するための十分なスペースが無いため、結局、当該ボビンストッカは抜出し通路の背面側に配置せざるを得なかった。
【0070】
この点、本実施形態の精紡機1では前述のように、糸継台車66は、機台本体2の背面側から抜き出してメンテナンスを行えるように構成している。従って、本実施形態の構成によれば、糸継台車66を機台本体2の側方から抜き出す必要がない。即ち、本実施形態の精紡機1は、糸継台車66の抜出し通路を避けてボビンストッカ4を配置しなければならないという制限が無い。これにより、本実施形態の精紡機1では、ボビンストッカ4を正面側に向けて配置することが可能となったのである。
【0071】
また上記のように、本実施形態ではボビンストッカ4の配置の制限が無いため、当該ボビンストッカ4を、正面側に寄せて配置している。これにより、ボビンストッカ4の背面側のスペースを有効利用できる結果、当該背面側にブロアボックス5を配置することができるようになり、合理的な配置が可能となった。また、上記のようにボビンストッカ4を正面側に寄せて配置することにより、当該ボビンストッカ4を玉揚台車走行レール39に近づけることができる。即ち、ボビンストッカ4と玉揚台車67との距離を短くすることができる。これにより、ボビンストッカ4から玉揚台車67に巻取ボビン16を供給するための構成を、短くシンプルに構成することができる。
【0072】
ただし、本願発明の適用は、機台本体2の背面から糸継台車66を抜き出す構成の精紡機1(上記実施形態の構成)に限定されるわけではない。機台本体2の側方から糸継台車66を抜き出す構成(特許文献1のような構成)であっても、例えば糸継台車66の抜出し通路の上方にボビンストッカ4を配置することで、本願発明の構成を適用することができる。即ち、このようにボビンストッカ4を配置するのであれば、当該ボビンストッカ4の下方を通して糸継台車66を抜き出すことができるので、ボビンストッカ4の前後方向での配置が制限されることがない。従って、当該ボビンストッカ4を正面側に寄せて配置し、かつ当該ボビンストッカ4を正面側に向けることができる。これにより、ボビンストッカ4から玉揚台車67まで巻取ボビン16を供給するための構成を短くシンプルにするという、本発明の効果を得ることができる。ただしこの場合、ボビンストッカ4の下方に糸継台車66の抜出し通路を形成しなければならないため、当該ボビンストッカ4が巻取ボビン16を収容できるスペースが上下方向で狭くなり、ボビンストッカ4に収容可能な巻取ボビン16の数が少なくなってしまう。
【0073】
この点、本実施形態の精紡機1は、糸継台車66を機台本体2の背面から抜き出す構成であるから、ボビンストッカ4の下方に糸継台車66の通路を形成しなければならないという制限が無い。そこで本実施形態の精紡機1では、ボビンストッカ4を、機台本体2の上下方向の全域にわたって設けている(即ち、ボビンストッカ4は、機台本体2の上下方向の全域にわたって巻取ボビン16を収容することができる)。これにより、ボビンストッカ4に多数の巻取ボビン16を保管することができる。
【0074】
また、ボビンストッカ4の正面側には、糸屑排出部79が形成されている。この糸屑排出部79は、玉揚台車67の前記糸屑回収ボックス78に溜まった糸屑を、吸引流によって吸引除去するためのものである。糸屑排出部79による糸屑の吸引除去を定期的に行うことで、玉揚台車67の糸屑回収ボックス78が糸屑で詰まってしまうことを防止できる。
【0075】
図1に示すように、糸屑排出部79は、ボビン供給位置77に停止した玉揚台車67の糸屑回収ボックス78に対して、前後方向で対面する位置に設けられている。この糸屑排出部79は、吸引空気流を発生させることができるように構成されている。一方、玉揚台車67の前記糸屑回収ボックス78は、糸屑排出部79に対面する部分が開放可能に構成されている。以上の構成で、糸屑排出部79は、ボビン供給位置77に停止した玉揚台車67の糸屑回収ボックス78から糸屑を吸引除去することができるようになっている。
【0076】
そして、糸屑排出部79は、玉揚台車67がボビン供給位置77に停止して、ボビンストッカ4から巻取ボビン16の供給を受けている間に、前記糸屑の吸引除去を行うように構成されている。このように、本実施形態の精紡機1では、玉揚台車67に対する巻取ボビン16の供給と、当該玉揚台車67の糸屑回収ボックス78からの糸屑の排出と、を同時に行う事ができる。従って、玉揚台車67の動作効率を向上させることができる。しかも、玉揚台車67に対する巻取ボビン16の供給は随時行われるので、糸屑回収ボックス78からの糸屑の排出もそのつど行うことができる。これにより、糸屑回収ボックス78が糸屑で詰まってしまうことを確実に防止できる。なお、精紡機1の機台効率は低下するが、糸屑排出部79を別の箇所に設けて、糸屑回収ボックス78からの糸屑の排出を行っても良い。
【0077】
以上で説明したように、本実施形態の精紡機1は、機台本体2と、複数の紡績ユニット6と、ボビンストッカ4と、玉揚台車67と、を備えている。紡績ユニット6は、機台本体2の長手方向に沿って並設され、巻取ボビン16に紡績糸15を巻き取ってパッケージ17を形成する。ボビンストッカ4は、紡績ユニット6で使用される巻取ボビン16を保管する。玉揚台車67は、紡績ユニット6とボビンストッカ4との間を走行可能に設けられ、巻取ボビン16を紡績ユニット6に供給する。ボビンストッカ4が保管している巻取ボビン16に対して、少なくとも正面側からアクセス可能であるように、当該ボビンストッカ4が構成されている。玉揚台車67は、ボビンストッカ4が保管している巻取ボビン16を、機台本体2の正面側のボビン供給位置77において受け取る。
【0078】
このように、ボビンストッカ4のアクセス可能な側と、玉揚台車67が巻取ボビン16を受け取る位置(ボビン供給位置77)と、を同じ側に配置したことにより、ボビンストッカ4から玉揚台車67に供給される巻取ボビン16の経路の長さを短縮することができる。その結果、簡単な構成により、巻取ボビン16を玉揚台車67に効率良く供給することができる。
【0079】
本実施形態の精紡機1は、機台本体2の正面側に配置され、玉揚台車67の走行を可能とする玉揚台車走行レール39を更に備えている。玉揚台車走行レール39を挟んで、紡績ユニット6及びボビンストッカ4の反対側に、作業者が作業を行う作業通路80が設けられている。
【0080】
即ち、ボビンストッカ4は、作業通路80側を向いて配置されている。これにより、作業者は、ボビンストッカ4のボビン保管状況を、作業通路80から容易に確認できる。
【0081】
本実施形態の精紡機1において、ボビンストッカ4は、巻取ボビン16の軸方向端部が作業通路80側を向くように、巻取ボビン16を複数保管するように構成されている。
【0082】
これにより、ボビンストッカ4は、巻取ボビン16を多数保管することができる。
【0083】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、この精紡機1は、糸屑回ボックス78と、糸屑排出部79と、を更に備えている。糸屑回収ボックス78は、玉揚台車67に設けられ、糸屑を回収する。糸屑排出部79は、ボビンストッカ4の近傍に配置され、ボビン供給位置77に停止した玉揚台車67の糸屑回収ボックス78に溜まっている糸屑を、当該糸屑回収ボックス78から排出させる。
【0084】
この構成によれば、玉揚台車67は、ボビン供給位置77において、巻取ボビン16の受領と糸屑の廃棄を同時に行うことができる。これにより、精紡機1全体の効率も向上させることができる。
【0085】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、精紡機1は、紡績ユニット6が巻き取る紡績糸15よりも背面側において、前記紡績糸15の糸継作業を行う糸継台車66を備える。機台本体2は、当該機台本体2の背面側と、前記糸継台車66の作業空間と、を連通する開口部110を有している。
【0086】
これにより、糸継台車66を機台本体2の背面側からメンテナンスすることができる。従って、従来技術のように、糸継台車のメンテナンスのために当該糸継台車を機台側方から抜く必要がないので、ボビンストッカ4を正面側に寄せて配置することができる。
【0087】
本実施形態の精紡機1において、ボビンストッカ4は、機台本体2の高さ方向の全域にわたって設けられている。
【0088】
即ち、糸継台車66を機台本体2の側方から抜く必要がなくなった結果、糸継台車66を抜くためのスペースを機台側方に設ける必要が無くなった。この結果、ボビンストッカ4のレイアウトの自由度が向上し、当該ボビンストッカ4を機台本体2の上下方向の全域にわたって設けることができる。これにより、ボビンストッカ4が保管可能な巻取ボビン16の数を増加させることができる。
【0089】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0090】
上記実施形態では、糸貯留装置12の糸貯留ローラ63を回転させることにより、紡績部11から紡績糸15を引き出す構成とした。これに代えて、例えば特開2005−220484号公報に記載されているように、デリベリローラとニップローラとによって紡績糸を挟み込んで回転することにより、紡績装置から紡績糸を引き出す糸送り装置を設けても良い。
【0091】
上記実施形態では、紡績ユニット6と玉揚台車67の走行経路との間にパッケージコンベア75を設けた構成としたが、紡績ユニット6、玉揚台車67の走行経路、パッケージコンベア75の順で配置されていても良い。もっとも、パッケージコンベア75によって満巻パッケージ17を自動的に回収する構成は省略しても良い。この場合、上記実施形態でパッケージコンベア75が配置されている位置には、満巻パッケージ17を一時的に保管しておくためのパッケージ載置部が形成される。この場合、作業者は、パッケージ載置部に載置されている満巻パッケージを手作業で回収する。
【0092】
上記実施形態では、玉揚台車(作業台車)67が玉揚作業とボビンセット作業の両方を行っているが、本発明に係る作業台車は、必ずしも玉揚作業を行うように構成されている必要はない。即ち、作業台車は、ボビンセット作業だけを行うように構成されていても良い。この場合、各巻取部13で満巻きとなったパッケージ17は、作業台車とは別の適宜の手段によって回収される。
【0093】
上記の空気紡績装置41に限らず、他の形式の紡績装置を備えた紡績機にも本願発明の構成を適用することができる。また、本発明の構成は、紡績機に限らず、自動ワインダなどの他の種類の糸巻取機にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 精紡機(糸巻取機)
2 機台本体
4 ボビンストッカ(ボビン保管装置)
6 巻取ユニット
15 紡績糸(糸)
16 巻取ボビン
67 玉揚台車(作業台車)
77 ボビン供給位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台本体と、
前記機台本体の長手方向に沿って並設され、巻取ボビンに糸を巻き取ってパッケージを形成する複数の糸巻取ユニットと、
前記糸巻取ユニットで使用される前記巻取ボビンを保管するボビン保管装置と、
前記糸巻取ユニットと前記ボビン保管装置との間を走行可能に設けられ、前記巻取ボビンを前記糸巻取ユニットに供給する作業台車と、
を備え、
前記糸巻取ユニットの並設方向に沿った方向を左右方向、前記左右方向及び上下方向に直交する方向を前後方向とし、前記前後方向において前記機台本体から見て前記糸巻取ユニットが巻き取る糸が走行している側を正面側、反対側を背面側としたときに、
前記ボビン保管装置が保管している前記巻取ボビンに対して、少なくとも前記正面側からアクセス可能であるように当該ボビン保管装置が構成されているとともに、
前記作業台車は、前記ボビン保管装置が保管している前記巻取ボビンを、前記機台本体の前記正面側のボビン供給位置において受け取ることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記機台本体の前記正面側に配置され、前記作業台車の走行を可能とする走行経路を更に備え、
前記走行経路を挟んで、前記糸巻取ユニット及び前記ボビン保管装置の反対側に、作業者が作業を行う作業通路が設けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項2に記載の糸巻取機であって、
前記ボビン保管装置は、前記巻取ボビンの軸方向端部が前記作業通路側を向くように、前記巻取ボビンを複数保管するように構成されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記作業台車に設けられ、糸屑を回収する糸屑回収部と、
前記ボビン保管装置の近傍に配置され、前記ボビン供給位置に停止した前記作業台車の前記糸屑回収部に溜まっている糸屑を、当該糸屑回収部から排出させる糸屑排出部と、
を更に備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記糸巻取ユニットが巻き取る糸よりも前記背面側において、前記糸の糸継作業を行う糸継台車を備え、
前記機台本体は、当該機台本体の前記背面側と、前記糸継台車の作業空間と、を連通する開口部を有していることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項5に記載の糸巻取機であって、
前記ボビン保管装置は、前記機台本体の高さ方向の全域にわたって設けられていることを特徴とする糸巻取機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−67883(P2013−67883A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206231(P2011−206231)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】