説明

糸巻取装置

【課題】インクリーズドテーパ巻きが可能であり、かつ、糸の巻取位置を調整可能な糸巻取装置において、糸の絡みつきを抑制する。
【解決手段】糸巻取装置100のクレードル調整機構70は、クレードル21を巻取ボビン22の回転軸であるボビン軸の方向に沿って移動可能かつ、ボビン軸に直交する軸方向を中心として回転可能とする。クレードル調整機構70は、軸心のずれた平行な第1軸30a及び支点30dを備えた第1回動部材30と、第1軸30aを回転自在に支持する第2回動部材31と、を有している。第1回動部材30は、支点30dをクレードル21に対してボビン軸と直交する方向に挿入することによりクレードル21を回転可能に支持する。第1軸30aを中心に支点30dを移動させることにより、クレードル21を第1軸30a及び支点30dを中心としてボビン軸方向に揺動させてクレードル21と綾振ドラム25との位置関係を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糸巻取装置では、巻取ボビンへの糸の巻き方の一つとして、コーン形状のパッケージの小径側よりも大径側の糸層を厚く巻く、いわゆるインクリーズドテーパ巻きが行われている。例えば、特許文献1及び特許文献2に、インクリーズドテーパ巻きを行う糸巻取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−88468号公報
【特許文献2】特開平5−763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッケージにおける糸の巻き取りの幅及び位置を調整するためには、巻取ボビンにおける糸の巻取位置を調整する必要がある。しかし、特許文献1及び特許文献2には、インクリーズドテーパ巻きについての開示はあるものの、糸の巻取位置を調整できる構成は開示されていない。
【0005】
本発明の課題は、インクリーズドテーパ巻きが可能であり、かつ、糸の巻取位置を調整可能な糸巻取装置において、糸の絡みつきを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係る糸巻取装置は、は、クレードルと、綾振り装置と、クレードル調整機構と、を備えている。クレードルは、糸を巻き取るための巻取ボビンを回転自在に挟持する一対のアームを有する。綾振り装置は、巻取ボビンに巻き取られる前の糸を綾振りする。クレードル調整機構は、クレードルに取り付けられ、クレードルを巻取ボビンの回転軸であるボビン軸の方向に沿って移動可能かつ、ボビン軸に直交する軸方向を中心として回転可能とする。
クレードル調整機構は、軸心のずれた平行な第1軸及び第2軸を備えた第1回動部材と、第1軸を回転自在に支持する第2回動部材と、を有している。
第1回動部材は、第2軸をクレードルに対してボビン軸と直交する方向に挿入することによりクレードルを回転可能に支持する。
第1軸を中心に第2軸を移動させることにより、クレードルを第1軸及び第2軸を中心としてボビン軸方向に揺動させてクレードルと綾振り装置との位置関係を調整する。
【0008】
糸巻取装置の第2回動部材は、巻取ボビンに糸が巻き取られてパッケージの厚みが増加するのに応じて他の部材に対して回動する。
【0009】
また、糸巻取装置では、ボビン軸方向に対する糸の巻取位置を調整できる。具体的には、第1軸を中心に支点を移動させることにより、クレードルを第1軸及び支点を中心としてボビン軸方向に揺動させてクレードルと綾振ドラムとの位置関係を調整する。そのため、糸の巻取位置を調整する際に、巻取ボビンをクレードルに対して移動させる必要が無い。つまり、糸の巻取位置を調整しても、巻取ボビンとクレードルとの位置関係は変わらない。よって、巻取位置の調整がされた場合であっても、予め定められた大きさのカバー部材を用いて、巻取ボビンの端部とクレードルとの間を確実に覆うことができる。このカバー部材は、巻取ボビン以外の部分に糸が絡みつくのを抑制する。
【0010】
第2回動部材は、第1軸と直交する方向に形成されたリフトアップ軸を有していてもよい。その場合、第2回動部材は、リフトアップ軸により、糸の巻き取りの進行に応じてクレードルが持ち上がるようにクレードルを上方旋回可能に支持している。糸巻取装置は、上方旋回に応じて、第1軸の回転角度を決定する第1軸取り付け部をさらに備えていてもよい。
【0011】
第1軸取り付け部は、クレードルの上方旋回に応じて、第1軸を回転させるインクリーズドテーパ機構であり得る。
第1回動部材は、糸の巻き取りの進行に応じて、第2回動部材に対して回動して、クレードルのアームを異なる高さに移動させる。つまり、ボビン軸の傾斜角度は糸の巻き取りの進行に応じて順次増大する。このようにしていわゆるインクリーズドテーパ巻きを行える。
【0012】
第1回動部材をクレードルに取り付ける取付機構をさらに備えていてもよい。取付機構は、第1回動部材のクレードルへの取り付けをボビン軸の方向の所定範囲で許容する取付け位置調整部を有している。
第1回動部材のクレードルに対する取付位置を、ボビン軸の方向に沿って調整することで、糸の巻取位置を調整できる。
【0013】
取付け位置調整部は、第2軸を中心とする円弧形状のスリットと、スリットに挿入される固定部材とを有している。
第1回動部材とクレードルを回動させたいずれの位置でも、スリットに固定部材を挿入して、第1回動部材をクレードルに取り付けることができる。
【0014】
第1回動部材は、クレードルと接触する平面を有する板部材をさらに有している。
第1回動部材とクレードルとは平面を介して接触する。第1回動部材とクレードルとが、点接触する場合に比べて、面接触する方が接触面積が大きくなる。よって、第1回動部材とクレードルとの固定をより確実にし、糸の巻き取りの際のがたつきを抑制できる。
【0015】
巻取ボビンの小径側端部とアームとの間を覆うカバー部材をさらに備えている。
糸は巻取ボビンの小径側に絡みつきやすいが、巻取ボビンの小径側にカバー部材を設けることで、巻取ボビンの小径側において巻取ボビン以外での糸の絡みつきを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インクリーズドテーパ巻きが可能であり、かつ、糸の巻取位置を調整可能な糸巻取装置において、糸の絡みつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】糸巻取装置の全体を示す外観図である。
【図2】第1及び第2回動部材側から見た巻取部の斜視図である。
【図3】第1及び第2回動部材側から見た巻取部の別の斜視図である。
【図4】巻取ボビン側から見た巻取部の斜視図である。
【図5】クレードル、第1回動部材、第2回動部材及び連結部材の分解斜視図である。
【図6】巻取位置の調整の様子を示す説明図である。
【図7】インクリーズドテーパ巻きが行われている様子を示す説明図である。
【図8】インクリーズドテーパ巻きを行わない場合の巻取部の斜視図である。
【図9】図8のクレードル、第1回動部材、第2回動部材及び回動阻止部材の分解斜視図である。
【図10】回動阻止部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)糸巻取装置の全体
図1は糸巻取装置の全体を示す外観図である。自動ワインダ等の糸巻取装置100は、給糸部100a、処理部100b及び巻取部100cを備えている。糸の走行方向の上流側から下流側へ向かって給糸部100a、処理部100b及び巻取部100cの順に配置される。給糸部100aは給糸ボビン20を支持して、糸20aの解舒を補助する。処理部100bは、給糸部100aから給糸された糸に所定のテンションを付与し、また糸切れ時に糸継ぎを行う。巻取部100cは、処理部100bによって処理された糸をパッケージ22aとして巻き取る。巻取部100cは、給糸された糸20aをトラバースさせる綾振ドラム25と、綾振ドラム25からの糸を巻き取る巻取ボビン22と、巻取ボビン22の両端を把持するクレードル21と、を含む。
【0019】
(2)巻取部
図2〜図7に基づいて巻取部100cの構成について説明する。図2は第1及び第2回動部材側から見た巻取部の斜視図であり、図3は第1及び第2回動部材側から見た巻取部の別の斜視図である。図4は巻取ボビン側から見た巻取部の斜視図である。図5はクレードル、第1回動部材、第2回動部材及び連結部材の分解斜視図である。図6は巻取位置の調整の様子を示す説明図である。図7はインクリーズドテーパ巻きが行われている様子を示す説明図である。
最初に、巻取部100cの概略構成について説明する。
【0020】
(2−1)巻取部の概略構成
クレードル21は、ブレーキ24及び巻取ボビン把持部23aを介して巻取ボビン22の一端を支持し、巻取ボビン把持部23bを介して巻取ボビン22の他端を支持する。綾振ドラム25の駆動により巻取ボビン22が回転し、給糸された糸が巻取ボビン22に巻き取られる。以下、クレードル21に装着された巻取ボビン22の回転軸が延びる方向を「ボビン軸方向」として説明する。
【0021】
クレードル21は、支持機構15によって巻取装置本体に支持されている。
支持機構15は、主に、図5に示す第1回動部材30と、第2回動部材31と、図3に示すインクリーズドテーパ機構29とを有している。第1回動部材30は、クレードル21に固定され、かつ、第2回動部材31に回動可能に支持されている。第2回動部材31は、フレーム37から突出して形成されている基部36に回動可能に支持されている。第2回動部材31の回転軸の延びる方向はボビン軸の方向とほぼ平行であり、第1回動部材30の回転軸の延びる方向は第2回動部材31の回転軸に直交している。インクリーズドテーパ機構29は、第1支持部材32と、第2支持部材33と、揺動部材34と、連結部材35とを有している。第1支持部材32はフレーム37に固定されており、第2支持部材33は第1支持部材32に固定されている。連結部材35は、第1回動部材30に固定されている。揺動部材34は、連結部材35と第2支持部材33を互いに連結している。
【0022】
糸の巻き取りの進行により巻取ボビン22の径が大きくなるのに応じて、第2回動部材31は基部36に対して回動する。第2回動部材31が回動するのに応じて第1回動部材30も回動し、この回動によりクレードル21が持ち上げられる。このとき、第1回動部材30は、インクリーズドテーパ機構29からの作用によって、ボビン軸の傾斜角度を増加させるようにクレードル21を揺動する。
次に、各部の構成について説明する。
【0023】
(2−2)巻取部の各部
(a)クレードル
クレードル21は、一対のアーム21b及び21cと、アーム21b及び21cの一端をそれぞれ連結するアーム基部21aと、を備えている。
アーム21bの先端には開口部21iが形成されており(図5参照)、この開口部21iにブレーキ24及び巻取ボビン把持部23aが取り付けられており(図2参照)、それらによって巻取ボビン22の一端が支持されている。一方、アーム21cの先端には開口部21jが形成されている。開口部21j内には巻取ボビン把持部23bが設けられている。巻取ボビン把持部23bは、巻取ボビン22の他端を支持している(図3参照)。このようにして、クレードル21は、アーム21bの先端とアーム21cの先端とにより巻取ボビン22を把持している。
【0024】
クレードル21のアーム基部21aは、アーム21bとアーム21cとを連結している。アーム基部21aは、アーム21bの先端とアーム21cの先端とを結ぶ軸に概ね平行である。つまり、アーム基部21aは、ボビン軸に概ね平行に設けられている。図5に示すように、アーム基部21aは、中央部に円弧状の開口部21dを有している。また、開口部21dの下部には、下方に延びる突出部21eが設けられている。突出部21eは、平面状であり、第1回動部材30の板部材30b(後述)の形状に合わせて先端に向かって幅が狭まっている。突出部21eには、中央部に開口部21fが設けられている。
ネジ部40aは、アーム基部21aの開口部21dを通って第1回動部材30の開口部30c(後述)にネジ止めされる。ネジ部40bは、突出部21eの開口部21fを通って第1回動部材30の支点30d(後述)にネジ止めされる。
【0025】
アーム基部21aの開口部21dは、所定の大きさで形成されており、ネジ部40aが開口部21dを介して開口部30cと締結可能な範囲を制限している。つまり、開口部21dは、ボビン軸方向において、第1回動部材30のクレードル21に対する取付位置を規制している。言い換えると、開口部21dは、ボビン軸方向において、クレードル21の第1回動部材30に対する取付位置を規制している。このように第1回動部材30とクレードル21との取付位置をボビン軸方向に調整できるため、巻取ボビン22における糸の巻取位置が調整される。
アーム基部21aの開口部21dは、円弧状に形成されており、円弧の中心は、例えば開口部21fの中心に一致している。
【0026】
(b)ブレーキ、巻取ボビン把持部、巻取ボビン
ブレーキ24は、アーム21bの先端に取り付けられている。綾振ドラム25は、図示しないコントローラにより制御されており、糸を巻取ボビン22に巻き取る際には綾振ドラム25を駆動して巻取ボビン22を従動回転させる。巻取ボビン把持部23aは、ブレーキ24に取り付けられており、駆動モータ及びモータ軸により回転する。また、巻取ボビン把持部23aは巻取ボビン22の一端を支持している。よって、巻取ボビン22は、綾振ドラム25からの駆動を受けてボビン軸を中心として回転する。
【0027】
また、ブレーキ24は図示しない付勢部を備えている。付勢部は、例えば付勢バネにより構成されている。付勢部は、支持解除レバー27が操作されていない状態では、巻取ボビン把持部23aを巻取ボビン把持部23b側へ付勢している。これにより、巻取ボビン22は巻取ボビン把持部23a、23bにより回転可能に支持される。支持解除レバー27が操作されると、付勢部による付勢が解除される。これにより、巻取ボビン把持部23aは巻取ボビン把持部23b側とは反対側に移動し、巻取ボビン22の巻取ボビン把持部23a、23bによる支持は解除される。よって、巻取ボビン22は取り外し可能となる。
【0028】
アーム21cの先端において巻取ボビン把持部23bが回転可能に支持されている。巻取ボビン把持部23bは巻取ボビン22の他端を支持している(図3参照)。
巻取ボビン22は、回転により綾振ドラム25によって綾振りされる糸を巻き取るための部材である。巻取ボビン22は円柱台形状である。本実施形態では、巻取ボビン22は、一例として、小径側がアーム21c側に取り付けられており、大径側がアーム21b側に取り付けられている。
【0029】
(c)カバー部材
アーム21cの先端と巻取ボビン22との間には、アーム21cの先端から突出する巻取ボビン把持部23bを覆うように円筒状のカバー部材26が取り付けられている。これにより、巻取ボビン22以外の部分に糸が絡みつくのを抑制する。特に、糸は巻取ボビン22の小径側に絡みつきやすいので、巻取ボビン22の小径側にカバー部材26を設けることの意義は大きい。
【0030】
(d)第1回動部材
第1回動部材30は、クレードル21のアーム基部21aに取り付けられた部材であり、クレードル21が、アーム21b、21cの高さを異ならせるように回動自在とするように支持されるようにすることのできる部材である。また、第1回動部材30とクレードル21との取り付けを行う取付機構71によって、綾振ドラム25に対するクレードル21のボビン軸方向の位置が調整可能となっている(後述)。以下、第1回動部材30の説明とともに、取付機構71の説明も行う。なお、取付機構71は、第1回動部材30とクレードル21とを接続するための、例えば取付け位置調整部72(後述)及び支持部73などの部材を含む。支持部73は、後述の支点30d及び開口部21fにより構成される。
図5に示すように、第1回動部材30は、第1軸30a、板部材30b及び支点30dを有している。第1軸30aは、ボビン軸に直交する方向に延びる棒状部材である。
【0031】
板部材30bは角がとれた概ね三角形状の板からなる。板部材30bは、クレードル21と接触する第1平面と、第1平面とは反対側であり、第1軸30aが突出して設けられる第2平面と、を有している。
板部材30bは、開口部30cを有しており、開口部30cは第1軸30aに対応する位置に設けられている。
【0032】
支点30dは、板部材30bの第1平面から突出するように設けられた棒状部材である。支点30dは、開口部30c及び第1軸30aより下側にずれた位置に配置されている。
支点30dは、クレードル21の開口部21fに挿入されており、支持部73を構成している。支点30dが開口部21fに挿入された状態で、クレードル21と第1回動部材30と後述の連結部材35の取付位置がボビン軸方向に沿って調整される。これにより、巻取ボビン22における糸の巻き取り位置が調整される。さらに、第1軸30aを中心として第1回動部材30をクレードル21に対して回動させることができる。これにより、ボビン軸の傾斜角度が調整される。これらの調整後、第1回動部材30とクレードル21と連結部材35はネジ止めされ締結される。この結果、糸巻取装置100では、調整された巻取位置及びボビン軸の傾斜角度に従って、糸の巻き取りが実行される。
【0033】
第1回動部材30は、板部材30bの第1平面を介してクレードル21と接触する。第1回動部材30とクレードル21とが、第1軸30aの軸部分のみにより点接触する場合に比べて、第1平面を介して面接触する方が接触面積が大きくなる。よって、第1回動部材30とクレードル21との固定をより確実にし、糸の巻き取りの際などのがたつきを抑制できる。
【0034】
また、第1回動部材30とクレードル21との取付位置の調整の際に、第1回動部材30とクレードル21とが支点30dにおいて互いに支持されている。よって、第1回動部材30とクレードル21との取付位置の調整の際のぶれを抑えることができ、調整が容易である。さらに、開口部30cのみにより第1回動部材30とクレードル21とを固定する場合よりも、支点30dの位置でさらに第1回動部材30とクレードル21とを固定することで、糸の巻き取り時に生じる第1回動部材30の振動をより抑えられる。
【0035】
第1回動部材30とクレードル21との取り付け位置を調整するための取付け位置調整部72を説明する。第1回動部材30とクレードル21との取付位置は、第1回動部材30の開口部30cをクレードル21の開口部21dに沿ってボビン軸方向に移動させることで調整される。この実施形態では、上記の調整は、支点30dが開口部21fにはまった状態において、第1回動部材30をクレードル21に対して回動させることで行われる。
クレードル21の第1回動部材30に対する取付位置が調整され、第1回動部材30の傾きが調整された後、アーム基部21aと第1回動部材30とがネジ止めされる。具体的には、ネジ部40aが開口部21dに挿入され、第1回動部材30の開口部30cに締結される。また、第1回動部材30の支点30dがアーム基部21aの開口部21fに挿入された状態で、ネジ部40bが支点30dに締結される。
【0036】
図6は、糸の巻取位置の調整を示す説明図である。図6の(a)では、ネジ部40aがクレードル21の開口部21dの一端に位置する開口部30cにネジ止めされている。一方、図6の(b)では、ネジ部40aがクレードル21の開口部21dの他端に位置する開口部30cにネジ止めされている。図6の(a)と(b)との間で、クレードル21は第1回動部材30に対してボビン軸方向において異なる位置にある。これにより綾振ドラム25に対する巻取ボビン22の位置を変更することができる。位置を移動するとき、巻取ボビン22とクレードル21とは一体となってボビン軸方向に移動する。よって、巻取ボビン22とクレードル21との位置関係は変わらない。そのため、巻取位置の調整がされた場合であっても、予め定められた大きさのカバー部材26を用いて、巻取ボビン22の端部とクレードル21との間を確実に覆うことができる。カバー部材26の大きさは、巻取ボビン22の端部とクレードル21との距離を考慮して決定される。
【0037】
(e)第2回動部材
第2回動部材31は、第1回動部材30ひいてはクレードル21を上下方向に回動可能に支持するための部材であり、パッケージ22aの厚みが増えるにつれて上方へ回動する。
図5に示すように、第2回動部材31は、リフトアップ軸31d、接続部31a、第1突起部31b及び第2突起部31cを有している。
【0038】
リフトアップ軸31dは、棒状の軸からなり、接続部31aから突出して形成されている。また、リフトアップ軸31dは、フレーム37から突出して形成されている基部36に回動可能に支持されている。リフトアップ軸31dの軸方向と第1軸30aの軸方向とは異なる方向である。例えば、第1回動部材30の第1軸30aと第2回動部材31のリフトアップ軸31dとが概ね直交するように設けられている。さらに、本実施形態では、ボビン軸と第1軸30aとが概ね直交している。
【0039】
接続部31aは、互いに異なる方向に突出するリフトアップ軸31dと、第1突起部31b及び第2突起部31cと、を接続している。第1突起部31b及び第2突起部31cは、接続部31aに対してリフトアップ軸31dとは概ね180度異なる方向に突出して形成されている。第1突起部31bには開口部31eが形成されており、第2突起部31cには開口部31fが形成されている。開口部31e、31fは、第1回動部材30の第1軸30aを回動可能に支持する。
【0040】
前述の通り、第2回動部材31は、パッケージ22aの厚みが増加するのに応じて、リフトアップ軸31dを中心に上方へ回動する。第1回動部材30は、第2回動部材31とともに、リフトアップ軸31dを中心に回動して、クレードル21を上方に移動させる。
以上に述べた第1回動部材30と第2回動部材31によってクレードル調整機構70が構成されている。クレードル調整機構70は、クレードル21に取り付けられ、クレードル21を巻取ボビン22の回転軸であるボビン軸の方向に沿って移動可能かつ、ボビン軸に直交する軸方向を中心として回転可能とする。
クレードル調整機構70は、軸心のずれた平行な第1軸30a及び支点30dを備えた第1回動部材30と、第1軸30aを回転自在に支持する第2回動部材31と、を有している。
【0041】
(f)インクリーズドテーパ機構
インクリーズドテーパ機構29は、第2回動部材31の回動に伴って第1回動部材30を回動させることで、クレードル21の一方のアームを他方のアームに対して高い位置に移動させる機構である。インクリーズドテーパ機構29は、前述のように、第1支持部材32、第2支持部材33、揺動部材34及び連結部材35を有している(図2参照)。
第1支持部材32は、ネジ部41a、41b、41c(図3)、41d(図示せず)により巻取装置本体のフレーム37に固定されている。第1支持部材32は、第2支持部材33を支持可能なようにフレーム37から突出して設けられている。
【0042】
また、第2支持部材33は、ネジ部42a及び42bにより第1支持部材32に固定されている。第2支持部材33には開口部33aが形成されており、ネジ部42bにより締結する位置を開口部33aの範囲内で調整できる。これにより、ネジ部42aを中心として、第2支持部材33の傾きを調整し、揺動部材34と連結される第2支持部材33の先端部の位置を調整可能である。第2支持部材33は、揺動部材34及び連結部材35を介して第1回動部材30と接続されている。よって、前述のように揺動部材34と連結される先端部の位置を調整することで、第1回動部材30の回動量を調整可能である。
【0043】
揺動部材34及び連結部材35は、第1回動部材30と第2回動部材31とを互いに連動して回動するように接続している。よって、第2回動部材31が糸の巻取の進行に応じてリフトアップ軸31dを中心に回動すると、第1回動部材30は第1軸30aを中心に回動する。これにより、クレードル21は、巻取の進行に応じて上方に移動するとともに、ボビン軸の傾斜角度が増加するように傾く。
【0044】
揺動部材34は、接続部34aと、接続部34aの両端の端部34b、34cと、を有している。図3に示すように、端部34cは、ボールジョイント45bを介してネジ部44bにより第2支持部材33に接続されている。ボールジョイント45bは、第2支持部材33に対して揺動部材34を揺動可能に接続する。端部34bは、ボールジョイント45aを介してネジ部44aにより連結部材35に接続されている。ボールジョイント45aは、連結部材35に対して揺動部材34を揺動可能に接続する。このような構成により、揺動部材34は、第2支持部材33及び連結部材35に対して、所定の設計範囲内で揺動可能である。
【0045】
図5に示すように、連結部材35は、U字状の第1部分35aと、第1部分35aに連結される第2部分35bと、を有する。第1部分35aは、中央部に開口部35cを有し、開口部35cから外方向に延在する溝部35dを有する。開口部35cには第1回動部材30の第1軸30aが挿入される。開口部35cは、第1軸30aが回動可能な大きさに形成されている。また、第1部分35aは、ネジ部43が挿入される開口部35eを有している。第1回動部材30の第1軸30aが開口部35cに挿入された状態で、ネジ部43を開口部35eにネジ止めすると、溝部35dの幅が狭まる。これにより、第1回動部材30の第1軸30aに連結部材35が固定される。
【0046】
連結部材35の第2部分35bは、揺動部材34と接続される突出部35fを有する。突出部35fと揺動部材34とは、ボールジョイント45aを介してネジ部44aにより接続されている。
【0047】
(3)巻取部の動作
上記の支持機構15の各部材は次のように動作する。図7は巻取部の動作を示す説明図である。図7の(a)は巻取開始時の説明図であり、(b)は巻取開始から所定時間経過後の説明図である。
綾振ドラム25がコントロールユニットからの指示に応じて駆動を開始すると、巻取ボビン22が回転し、給糸された糸の巻取を開始する。糸の巻き取りにより巻取ボビン22の厚みが大きくなるのに応じて、第2回動部材31はリフトアップ軸31dを中心として回動する。これによりクレードル21は、図7の(b)に示すように上方に押し上げられる。
【0048】
第2回動部材31がリフトアップ軸31dを中心に回動するのに応じて、第1回動部材30も第2回動部材31とともに回動する。連結部材35は第1回動部材30に固定されているので、連結部材35もまた第1回動部材30とともにリフトアップ軸31dを中心として回動する。ここで、揺動部材34は、一端を第2支持部材33に揺動可能に支持され、他端を連結部材35に揺動可能に支持されている。そして、揺動部材34は、第2支持部材33及び連結部材35の支持によって揺動可能な範囲内で揺動する。このような接続により、連結部材35が第1回動部材30とともにリフトアップ軸31dを中心として回動するときに、揺動部材34は、第1回動部材30の第1軸30aを中心として回動させる方向に、連結部材35及び第1回動部材30を移動させる。これはクレードル21の上昇における可動中心であるリフトアップ軸31dと、揺動部材34の揺動中心である端部34cの位置が異なるために生じる回動における歪みを、連結部材35が吸収するためにボビン軸方向に直交する軸中心回りに回動することによるものである。その結果、第1回動部材30が第1軸30aを中心として回動し、それによりクレードル21のアーム21b、21cの両端がそれぞれ異なる移動量で移動する。以上の結果、ボビン軸の傾斜角度は糸の巻き取りの進行に応じて順次増大し、インクリーズドテーパ巻きを行える。
【0049】
以上に述べたように、パッケージの厚みの増加に応じてクレードル21を上方に移動させるための回動と、ボビン軸の傾斜角度を順次増大するための回動と、の2つの異なる回動を、互いに概ね直交する第1軸30a及びリフトアップ軸31dの連動により達成できる。
この実施形態では、アーム21bがアーム21cより上側に移動し、その結果、巻取ボビン22の大径側が小径側より高くなる。なお、インクリーズドテーパ機構29の構造を変更すれば、アーム21cをアーム21bより上側に移動させることができる。
【0050】
(4)インクリーズドテーパ巻きの実施及び不実施を変更可能とする構成
本実施形態の巻取部100cでは、以下の通り、インクリーズドテーパ巻きを行う場合と行わない場合とを変更可能に対応できる。
【0051】
(4−1)インクリーズドテーパ巻きを行う場合
インクリーズドテーパ巻きを行う場合には、巻取部100cは前述の図2〜図7に示すように構成される。つまり、巻取部100cは、主に、クレードル21、巻取ボビン22、第1回動部材30、第2回動部材31及びインクリーズドテーパ機構29によって構成されている。
【0052】
(4−2)インクリーズドテーパ巻きを行わない場合
図2〜図7に示す巻取部100cを利用して、インクリーズドテーパ巻きを行わない構成とする。つまり、同一の巻取部100cを利用しつつ、簡単な変更でインクリーズドテーパ巻きを行う場合と行わない場合の両方に対応可能とする。
【0053】
図8はインクリーズドテーパ巻きを行わない場合の巻取部の斜視図であり、図9は図8のクレードル、第1回動部材、第2回動部材及び回動阻止部材の分解斜視図である。
【0054】
図8に示すように、インクリーズドテーパ巻きを行わない場合には図2の巻取部100cからインクリーズドテーパ機構29が取り外される。つまり、第1支持部材32、第2支持部材33、揺動部材34及び連結部材35が巻取部100cから取り外される。代わりに、巻取部100cに回動阻止部材50が取り付けられる。回動阻止部材50は、第1回動部材30が第1軸30aを中心として回動するのを妨げる。
【0055】
回動阻止部材50は、図9に示すように、第1部分50aと、第1部分50aに連結されU字状の第2部分50bと、を有する。第2部分50bは、中央部に開口部50cを有し、開口部50cから外方向に延在する溝部50dを有する。開口部50cには第1回動部材30の第1軸30aが回動可能に挿入される。また、第2部分50bは、ネジ部51aが挿入されるネジ孔50fを有している。第1回動部材30の第1軸30aが開口部50cに挿入された状態で、ネジ部51aをネジ孔50fにネジ止めすると、溝部50dの幅が狭まる。これにより、第1回動部材30の第1軸30aが回動阻止部材50に固定される。
【0056】
回動阻止部材50の第1部分50aは、U字状の第2部分50bの底部側面から、第1軸30aと概ね直交する方向に延在する突出部50gを有する。突出部50gは、第2回動部材31の接続部31aの上面に載置され、ネジ部51bがネジ孔50eにネジ止めされる。これにより、突出部50gは第2回動部材31に固定される。
【0057】
このように、回動阻止部材50は、第1回動部材30と第2回動部材31とを連結して固定する。そのため、第1回動部材30は、第2回動部材31と一体にリフトアップ軸31dを中心として回動するものの、第2回動部材31に対しては回動しない。よって、ボビン軸の傾斜角度を確実に一定に維持し、インクリーズドテーパ巻きは行われない。回動阻止部材50は、1つの部材で第1回動部材30と第2回動部材31とを固定可能であり、複数の部品を介して固定する場合に比べて、がたつきを抑制できる。
【0058】
以上の第1の方法によれば、第1支持部材32、第2支持部材33、揺動部材34及び連結部材35からなるインクリーズドテーパ機構29を巻取部100cから取り外し、代わりに回動阻止部材50を設けるだけでよい。よって、インクリーズドテーパ巻きを行う構成から行わない構成への変更が簡単である。特に、クレードル21を移動させる主要な軸である第1回動部材30及び第2回動部材31を変更する必要が無い。よって、コストを削減できる。なお、インクリーズドテーパ巻きを行わない構成から行う構成への変更も同様に簡単である。
【0059】
図10は、回動阻止部材の変形例を示す斜視図である。前述の図8及び図9では、回動阻止部材50は第2回動部材31とは別の部材である。しかし、図10では、回動阻止部材61gは第2回動部材61と一体に設けられている。第2回動部材61は、リフトアップ軸61d、接続部61a、第1突起部61b、第2突起部61c及び回動阻止部材61gを有している。第1突起部61bは開口部61e(図示せず)を有しており、第2突起部61cは開口部61fを有している。リフトアップ軸61d、接続部61a、第1突起部61b、第2突起部61c及び開口部61e(図示せず)、61fは、上記で説明したリフトアップ軸31d、接続部31a、第1突起部31b、第2突起部31c及び開口部31e、31fと同様である。
【0060】
回動阻止部材61gは、第1突起部61b及び第2突起部61cと同様に、接続部61aから突出するように形成されている。また、インクリーズドテーパ巻きを行うためのインクリーズドテーパ機構29を取付可能なように、回動阻止部材61gと第1突起部61b又は第2突起部61cとの間に隙間を有する。図10の場合、回動阻止部材61gは、第1突起部61bに隣接して設けられており、回動阻止部材61gと第2突起部61cとの間に隙間が設けられている。インクリーズドテーパ巻きを行う場合には、この隙間に連結部材35が取り付けられる。
【0061】
(5)実施形態の作用効果
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0062】
(A)糸巻取装置100(糸巻取装置の一例)は、クレードル21(クレードルの一例)と、綾振ドラム25(綾振り装置の一例)と、クレードル調整機構70(クレードル調整機構の一例)とを備えている。クレードル21は、糸を巻き取るための巻取ボビン22を回転自在に挟持する一対のアーム21b、21c(アームの一例)を有する。綾振ドラム25は、巻取ボビン22に巻き取られる前の糸を綾振りする。クレードル調整機構70は、クレードル21に取り付けられ、クレードル21を巻取ボビン22の回転軸であるボビン軸の方向に沿って移動可能かつ、ボビン軸に直交する軸方向を中心として回転可能とする。
クレードル調整機構70は、軸心のずれた平行な第1軸30a(第1軸の一例)及び支点30d(第2軸の一例)を備えた第1回動部材30(第1回動部材の一例)と、第1軸30aを回転自在に支持する第2回動部材31(第2回動部材の一例)と、を有している。
第1回動部材30は、支点30dをクレードル21に対してボビン軸と直交する方向に挿入することによりクレードル21を回転可能に支持する。
第1軸30aを中心に支点30dを移動させることにより、クレードル21を第1軸30a及び支点30dを中心としてボビン軸方向に揺動させてクレードル21と綾振ドラム25との位置関係を調整する。
【0063】
糸巻取装置100の第2回動部材31は、巻取ボビン22に糸が巻き取られてパッケージ22aの厚みが増加するのに応じて他の部材に対して回動する。これにより、クレードル21は持ち上げられ、パッケージ22aが綾振ドラム25から離れる。
【0064】
また、糸巻取装置100では、ボビン軸方向に対する糸の巻取位置を調整できる。具体的には、第1軸30aを中心に支点30dを移動させることにより、クレードル21を第1軸30a及び支点30dを中心としてボビン軸方向に揺動させてクレードル21と綾振ドラム25との位置関係を調整する。そのため、糸の巻取位置を調整する際に、巻取ボビン22をクレードル21に対して移動させる必要が無い。つまり、糸の巻取位置を調整しても、巻取ボビン22とクレードル21との位置関係は変わらない。よって、巻取位置の調整がされた場合であっても、予め定められた大きさのカバー部材26を用いて、巻取ボビン22の端部とクレードル21との間を確実に覆うことができる。カバー部材26によって、巻取ボビン22以外の部分に糸が絡みつくのが抑制される。特に、糸は巻取ボビン22の小径側に絡みつきやすいので、巻取ボビン22の小径側にカバー部材26を設ける意義は大きい。
【0065】
(B)第2回動部材31は、第1軸30aと直交する方向に形成されたリフトアップ軸31d(リフトアップ軸の一例)を有していてもよい。その場合、第2回動部材31は、リフトアップ軸31dにより、糸の巻き取りの進行に応じてクレードル21が持ち上がるようにクレードル21を上方旋回可能に支持している。糸巻取装置100は、上方旋回に応じて、第1軸30aの回転角度を決定するインクリーズドテーパ機構29(第1軸取り付け部の一例)をさらに備えていてもよい。
【0066】
(C)インクリーズドテーパ機構29は、クレードル21の上方旋回に応じて、第1軸30aを回転させてもよい。
第1回動部材30は、糸の巻き取りの進行に応じて、第2回動部材31に対して回動して、クレードル21のアーム21b、21cを異なる高さに移動させる。つまり、ボビン軸の傾斜角度は糸の巻き取りの進行に応じて順次増大する。このようにしていわゆるインクリーズドテーパ巻きを行える。
【0067】
(D)第1回動部材30をクレードル21に取り付ける取付機構71(取付機構の一例)をさらに備えていてもよい。取付機構71は、第1回動部材30のクレードル21への取り付けをボビン軸の方向の所定範囲で許容する取付け位置調整部72(取り付け位置調整部の一例)を有している。
第1回動部材30のクレードル21に対する取付位置を、ボビン軸の方向に沿って調整することで、糸の巻取位置を調整できる。
【0068】
(E)取付け位置調整部72は、支点30dを中心とする円弧形状の開口部21d(スリットの一例)と、開口部21dに挿入されるネジ部40a(固定部材の一例)とを有している。
第1回動部材30とクレードル21を回動させたいずれの位置でも、開口部21dにネジ部40aを挿入して、第1回動部材30をクレードル21に取り付けることができる。
【0069】
(F)第1回動部材30は、クレードル21と接触する平面を有する板部材30b(板部材の一例)をさらに有している。
第1回動部材30とクレードル21とは平面を介して接触する。第1回動部材30とクレードル21とが、点接触する場合に比べて、面接触する方が接触面積が大きくなる。よって、第1回動部材30とクレードル21との固定をより確実にし、糸の巻き取りの際のがたつきを抑制できる。
【0070】
(G)巻取ボビン22の小径側端部とアーム21cとの間を覆うカバー部材26(カバー部材の一例)をさらに備えている。
糸は巻取ボビン22の小径側に絡みつきやすいが、巻取ボビン22の小径側にカバー部材26を設けることで、巻取ボビン22の小径側において巻取ボビン22以外での糸の絡みつきを抑制できる。
【0071】
(6)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0072】
(a)前記実施形態では、第1回動部材30は板部材30bを含んでいる。しかし、第1回動部材30とクレードル21との取付位置を調整可能であれば、第1回動部材30は第1軸30aのみから構成されていてもよい。
【0073】
(b)前記実施形態では、クレードル21の開口部21dは、円弧状に形成されている。しかし、第1回動部材30のクレードル21に対する取付位置を所定の範囲内に制限できれば、円弧状に限定されない。
【0074】
(c)前記実施形態では、第1回動部材30の板部材30bの形状は図5に示す概ね三角形状であるが、板部材30bの形状はこれに限定されない。クレードル21と接触する第1平面をできるだけ大きくして、クレードル21と第1回動部材30との固定を確実にすることができれば、板部材30bは例えば円形状であっても矩形状であってもよい。
【0075】
(d)前記実施形態では、第2回動部材31は、第1突起部31b及び第2突起部31cにより第1回動部材30の第1軸30aを支持している。しかし、第1軸30aを支持可能であれば支持する突起部の数は2個に限定されず、例えば1個の突起部の開口部により第1軸30aを支持してもよい。また、3個以上の突起部の開口部により第1軸30aを支持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、糸巻取装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
15 支持機構
20 給糸ボビン
20a 糸
21 クレードル
21a アーム基部
21b アーム
21c アーム
21d 開口部
21e 突出部
21f 開口部
22 巻取ボビン
22a パッケージ
23a 巻取ボビン把持部
23b 巻取ボビン把持部
24 ブレーキ
25 綾振ドラム
26 カバー部材
27 支持解除レバー
29 インクリーズドテーパ機構
30 第1回動部材
30a 第1軸
30b 板部材
30c 開口部
30d 支点
31 第2回動部材
31a 接続部
31b 第1突起部
31c 第2突起部
31d リフトアップ軸
32 第1支持部材
33 第2支持部材
33a 開口部
34 揺動部材
34a 接続部
34b 端部
34c 端部
35 連結部材
35a 第1部分
35b 第2部分
35c 開口部
35d 溝部
35e ネジ孔
35f 突出部
36 基部
37 フレーム
40a ネジ部
40b ネジ部
41a ネジ部
41b ネジ部
41c ネジ部
41d ネジ部
45a ボールジョイント
45b ボールジョイント
50 回動阻止部材
50a 第1部分
50b 第2部分
50c 開口部
50d 溝部
50g 突出部
51a ネジ部
51b ネジ部
61 第2回動部材
61g 回動阻止部材
70 クレードル調整機構
71 取付機構
72 取付け位置調整部
73 支持部
100 糸巻取装置
100a 給糸部
100b 処理部
100c 巻取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き取るための巻取ボビンを回転自在に挟持する一対のアームを有するクレードルと、
前記巻取ボビンに巻き取られる前の糸を綾振りする綾振り装置と、
前記クレードルに取り付けられ、前記クレードルを前記巻取ボビンの回転軸であるボビン軸の方向に沿って移動可能かつ、前記ボビン軸に直交する軸方向を中心として回転可能とするクレードル調整機構と、
を備えた糸巻取装置であって、
前記クレードル調整機構は、
軸心のずれた平行な第1軸及び第2軸を備えた第1回動部材と、
前記第1軸を回転自在に支持する第2回動部材と、
を有しており、
前記第1回動部材は、前記第2軸を前記クレードルに対して前記ボビン軸と直交する方向に挿入することにより前記クレードルを回転可能に支持し、
前記第1軸を中心に前記第2軸を移動させることにより、前記クレードルを前記第1軸及び第2軸を中心としてボビン軸方向に揺動させて前記クレードルと前記綾振り装置との位置関係を調整することを特徴とする、
糸巻取装置。
【請求項2】
前記第2回動部材は、前記第1軸と直交する方向に形成されたリフトアップ軸を備え、
前記第2回動部材は、前記リフトアップ軸により、糸の巻き取りの進行に応じて前記クレードルが持ち上がるようにクレードルを上方旋回可能に支持しており、
前記上方旋回に応じて、前記第1軸の回転角度を決定する第1軸取り付け部をさらに備えている、請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記第1軸取り付け部は、前記クレードルの上方旋回に応じて、前記第1軸を回転させるインクリーズドテーパ機構である、請求項2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記第1回動部材を前記クレードルに取り付ける取付機構をさらに備えており、
前記取付機構は、前記第1回動部材の前記クレードルへの取り付けを前記ボビン軸の方向の所定範囲で許容する取付け位置調整部を有している、請求項3に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記取付け位置調整部は、前記第2軸を中心とする円弧形状のスリットと、前記スリットに挿入される固定部材とを有している、請求項4に記載の糸巻取装置。
【請求項6】
前記第1回動部材は、前記クレードルと接触する平面を有する板部材をさらに有する、請求項5に記載の糸巻取装置。
【請求項7】
前記巻取ボビンの小径側端部と前記アームとの間を覆うカバー部材をさらに備える、請求項1〜6のいずれかに記載の糸巻取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−67468(P2013−67468A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206413(P2011−206413)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)