説明

糸条加熱装置

【課題】糸の高速加熱処理に好適な糸条加熱装置の構成を提供する。
【解決手段】糸条加熱装置5は、糸2が掛けられるローラ6a・6bと、加熱手段としての誘導加熱用コイル22・22と、前記ローラ6a・6bを回転駆動するための電動モータ21・21と、を備える。前記ローラ6a・6bは、前記糸2が掛けられる筒部31と、前記筒部31を電動モータ21の出力軸23に連結するためのフランジ部32と、を備えている。前記誘導加熱用コイル22はローラ6a・6bの外側に配置されており、この誘導加熱用コイル22によって前記ローラ6a・6bを加熱し、これによって糸2を加熱する。前記誘導加熱用コイル22と前記ローラとの間の隙間gは5mm以上30mm以下とするのが好ましい。また、前記フランジ部32は、前記ローラ6a・6bの軸方向の中央範囲に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸をローラ周面に巻き掛けつつ加熱する糸条加熱装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の糸条加熱装置としては、例えば特許文献1に開示されるものがある。この特許文献1の糸条加熱装置は、駆動軸の先端部に嵌め合わされるボス部と、このボス部に円盤状の接続部(フランジ部)を介して一体に接続された円筒状のローラ本体部と、を備え、このローラ本体部が、前記接続部によって前記駆動軸の先端側に片持ち支持状態で取り付けられる構成になっている。また、前記ローラ本体部の径方向内側にはヒータが収容されて、このヒータのエネルギーを受けてローラ本体部が発熱するようになっている。
【特許文献1】特開2000−256936号公報(図1、0011、0014)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、同時に多数本の糸をワインダで巻き取る多エンド巻取りと、巻取速度の高速化の要望が高まっている。この点、上記特許文献1の構成は、前記接続部及びボス部が駆動軸の先端側に配置されているために、多エンド巻取りの場合、駆動軸を長くせざるを得ない。また、前記接続部及び前記ボス部が先端側に配置されることに伴ってローラの重心が接続部及びボス部から遠くに位置することとなるので、ローラ本体部回転時の系の固有振動数が低くなってしまう。従って、ローラ本体部を高速回転させることが困難であり、近年高まっている糸の多エンド高速巻取の要請に応える観点から改善の余地が残されていた。また、ローラ本体部の内側にヒータが配置されているため、設計上の制限を受け、例えば、駆動軸を太くして剛性を高めることができない等の問題があった。
【0004】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ローラ内部のレイアウトの自由度を高め、かつ良好に糸を加熱できる糸条加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0006】
本発明の第1の観点によれば、糸が掛けられるローラと、加熱手段と、前記ローラを回転駆動するためのローラ駆動部と、を備える糸条加熱装置において、前記ローラの外側に前記加熱手段としての誘導加熱用コイルを配置し、この誘導加熱用コイルによって前記ローラを加熱し、これによって糸を加熱する糸条加熱装置が提供される。
【0007】
これにより、ローラの内部レイアウトの自由度を高めることができる。また、外側に配置された誘導加熱用コイルによってローラを加熱する構成であるので、ローラの外周面が最も昇温し(表皮効果)、これにより、ローラの外周面に巻き掛かる糸を効率よく加熱することができる。また、加熱手段の配置位置に制約を受けない。更に、ローラの内部の昇温を抑制できるので、当該内部の周辺の部材の寿命を延ばすことができる。
【0008】
前記の糸条加熱装置においては、前記誘導加熱用コイルと前記ローラとの間の隙間が5mm以上30mm以下であることが好ましい。
【0009】
これにより、糸がローラに巻き付いたとしても、その巻付き糸が誘導加熱用コイルへ影響するまでに十分な時間を確保できる。
【0010】
前記の糸条加熱装置においては、前記誘導加熱用コイルが、前記ローラの周面のうち糸が掛けられる部分を避けて対面するように設けられていることが好ましい。
【0011】
これにより、糸をローラに巻き掛ける際に誘導加熱コイルが邪魔にならないので、容易に作業を行うことができる。
【0012】
あるいは、前記の糸条加熱装置においては、以下のように構成することもできる。即ち、前記誘導加熱用コイルの少なくとも一部が、前記ローラの周面のうち糸が掛けられる部分に対面するように設けられている。前記ローラの回転軸線方向において、前記誘導加熱用コイルの先端部が前記ローラの先端部よりも基端側に位置している。
【0013】
この場合、糸掛けに使うローラの先端部がコイルがなく露出していることで、糸条加熱装置へ糸を簡単にセットすることができる。
【0014】
前記の糸条加熱装置においては、前記誘導加熱用コイルに高周波電流を流すことによって前記ローラを加熱することが好ましい。ここで、高周波電流とは、50Hz、60Hzの商用電流とは異なり、概ね1kHz以上の電流のことである。
【0015】
これにより、ローラと誘導加熱用コイルとの間の隙間を十分に確保できる。
【0016】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の糸条加熱装置が提供される。即ち、糸が掛けられるローラと、加熱手段と、前記ローラを回転駆動するためのローラ駆動部と、を備える。前記加熱手段は前記ローラの外側に配置されている。前記ローラは、前記糸が掛けられる筒部と、前記筒部を前記駆動部の回転軸に連結するためのフランジ部と、を備えている。前記フランジ部は、前記ローラの軸方向の中央範囲に配置されている。
【0017】
これにより、駆動軸を短くでき、ローラの片持ち部分を短くでき、この結果、系の固有振動数を低くできる。この結果、ローラを長尺化し高速回転させても振動が生じにくい構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。図1は糸条加熱装置を備える紡糸延伸装置の全体構成を示す模式図、図2は糸条加熱装置の一部断面斜視図、図3は糸条加熱装置の一部断面側面図である。
【0019】
図1には、本実施形態の糸条加熱装置5を備える紡糸延伸装置(合成繊維糸の製造装置)の全体構成が示される。この紡糸延伸装置において、口金1から吐出された溶融ポリマーの状態にあるフィラメント糸(糸条)2は、冷却装置3からの送風によって冷却固化され、オイリング装置4を経由して、糸条加熱装置5へ送られる。この糸条加熱装置5は、上下に1つずつ配置されるとともにそれぞれが電動モータで駆動される2つのローラ6a・6bを備えており、これらのローラ6a・6bに糸2を巻き掛けつつ加熱するように構成している。糸条加熱装置5の詳細な構成は後述する。
【0020】
糸条加熱装置5の下流側には引取ローラ7が設けられており、この引取ローラ7は、主ローラ7aと補助ローラ7bからなる。主ローラ7aは図略のモータで駆動される。そして、この引取ローラ7の主ローラ7aの回転速度と前記糸条加熱装置5のローラ6a・6bの回転速度との間に所定の速度差が設定されることにより、糸条加熱装置5と引取ローラ7との間で糸2が延伸されるように構成されている。なお、この引取ローラ7の主ローラ7aは加熱ヒータ8を備えており、この加熱ヒータ8で糸2を加熱できるようになっている。この加熱ヒータ8は、糸条加熱装置5の後述の誘導加熱用コイル22と同様の構成としている。ただし、この加熱ヒータ8は省略しても良い。
【0021】
引取ローラ7の更に下流側には、糸ガイド9及び巻取装置11が配置される。この巻取装置11はスピンドル12を備え、このスピンドル12に、筒状に構成された糸巻取用の巻取ボビン13を複数本装着できるようになっており、同時に複数本の糸を巻き取れるようになっている。また、巻取装置11は接触ローラ10を備えており、巻取ボビン13の外周面や、巻取ボビン13に糸2を巻き取って形成される糸層の外周面に、前記接触ローラ10を適宜の接圧で接触させながら巻取ボビン13に糸2を巻き取るように構成されている。このときの巻取速度は、例えば6000m/分とされている。
【0022】
糸条加熱装置5の詳細な構成が図2及び図3に示され、この糸条加熱装置5は、前記2つのローラ6a・6bのほか、電動モータ(ローラ駆動部)21・21と、誘導加熱用コイル(加熱手段)22・22と、を主な構成として備えている。それぞれのローラ6a・6bは金属製とされるとともに、当該ローラ6a・6bは図2や図3に示すように、糸2を外周面に巻き掛けるための筒部31と、この筒部31の内周面から縮径方向(中心に向かう方向)に延出するように一体形成されるフランジ部(接続部)32と、このフランジ部32の中心部に形成されるボス部(連結部)33と、を備えた形状に構成されている。
【0023】
電動モータ21・21のそれぞれはハウジングを備え、このハウジングに出力軸(支持軸、駆動軸、回転軸)23を図示しない軸受を介して回転自在に備えている。この出力軸23は電動モータ21のハウジングから水平方向に突出させ、当該ハウジングに片持ち状に支持させている。そして、この出力軸23の先端に、ローラ6a・6bの前記ボス部33がナット24を介して固着されている。この結果、前記電動モータ21の出力軸23によって、前記ローラ6a・6bが片持ち状に支持される。そして、電動モータ21を駆動することにより、ローラ6a・6bを例えば周面速度6000m/分程度の高速で回転させることができる。
【0024】
それぞれのローラ6a・6bの外側には前記誘導加熱用コイル22が配置されている。この誘導加熱用コイル22は、電動モータ21のハウジングとともに、図略の支持台に固定されている。具体的には、誘導加熱用コイル22は、電動モータ21を支持する前記支持台に図略のブラケットを介して取り付けられている。図1や図2に示すように、この誘導加熱用コイル22は、各ローラ6a・6b(筒部31)の外周側を一部覆うように、断面円弧状に形成されている。また、各誘導加熱用コイル22と前記ローラ6a・6bとの間には適宜の隙間gが形成されている。
【0025】
図3に示すように、前記筒部31には、軸方向に延びるヒートパイプ35が埋設されている。このヒートパイプ35は、円周方向に間隔をあけて数本配置されている。これにより、筒部31が軸方向に均一に加熱されるようにしている。
【0026】
この構成で、オイリング装置4から送られてきた糸2は、図2に示すように、下側のローラ6bの基端近傍の下半部に巻き掛かった後、上側のローラ6aの上半部に巻き掛かり、再び下側のローラ6bの下半部に巻き掛かり、・・・というように、2つのローラ6a・6bに交互に巻回される。そして、2つのローラ6a・6bに螺旋状に複数回(例えば5〜7周)巻き付けられた後、糸2は下側のローラ6bの先端近傍から下流側の引取ローラ7へ向かって送られる。なお、図2及び図3において糸2は1本のみ示されているが、実際は複数本の糸2が平行に巻き掛けられている。
【0027】
なお、本明細書において「先端」とは、特に注記のない場合、電動モータ21の出力軸23の片持ち支持されている自由端側(電動モータ21のハウジングから遠い側)の端を意味し、「基端」とは支点側(電動モータ21のハウジング側)の端を意味する。
【0028】
本実施形態において一方の前記誘導加熱用コイル22は、上側のローラ6aの外周面の下半部を覆うように、即ち糸2が掛けられている糸掛け部を避けて対面するように設けられている。また同様に、他方の誘導加熱用コイル22は、ローラ6bの外周面の上半部を覆うように、即ち糸2が掛けられている糸掛け部を避けて対面するように設けられている。
【0029】
それぞれの誘導加熱用コイル22は給電線を介して個別の高周波電源40に接続されており、誘導加熱用コイル22に、例えば30kHz程度の高周波の交番電流(交流)を流すように構成されている。これにより、コイル22が発生させる磁界を打ち消す向きの渦電流が金属製のローラ6a・6bの表面(筒部31の外周面)に発生し、この渦電流のジュール熱によって、回転中のローラ6a・6bの表面が例えば200℃程度にまで昇温する。以上のようにローラ6a・6bの外周面が非接触で加熱され、これによって、ローラ6a・6bの外周面に巻かれる糸2を加熱することができる。
【0030】
なお、ローラ6a・6bと誘導加熱用コイル22との間の前記隙間gは、5mm以上30mm以下であることが好ましい。隙間gが5mm未満であると、何らかの理由で糸2がローラ6a・6bに巻き付いたとき、その巻付き糸が短時間で誘導加熱用コイル22へ影響を与えてしまい、誘導加熱用コイル22の破損等の恐れが大きくなる。一方、隙間gが30mmを上回ると、ローラ6a・6bの誘導加熱の効率が不十分になってしまって、糸2を十分に加熱できない恐れがある。なお、本実施形態ではg=15mmに設定している。ここで、誘導加熱用コイル22には前述したとおり高周波の交番電流を流すように構成しているので、上記の隙間gの大きさが上記の程度であってもローラ6a・6bの表面を良好に加熱することができる。
【0031】
また図3に示すように、本実施形態のローラ6a・6bのフランジ部32は、当該ローラ6a・6bの径方向に沿う視線で見たときに、誘導加熱用コイル22とローラ6a・6bの軸方向で全部重複する位置に配置されている。言い換えれば、フランジ部32の厚みtが、前記誘導加熱用コイル22の軸方向の長さwに含まれるようにオーバーラップしている。これにより、ローラ6a・6bの外周面を誘導加熱用コイル22で広く覆って効率良く均等に加熱できるとともに、ローラ6a・6bのフランジ部32(ボス部33)の位置を好適な位置に設定できる。
【0032】
なお、本実施形態においてフランジ部32はローラ6a・6bのほぼ軸方向中央位置(軸方向の中央範囲)に設定されているため、前記特許文献1の構成に比較して、ボス部33を基端寄りの位置に配置できる。従って、電動モータ21の出力軸23を短くでき、更にローラ6a・6bの重心も基端寄りに位置させることができている。この結果、ローラ6a・6b及び出力軸23からなる系の固有振動数を低くでき、ローラ6a・6bを高速回転させても振動が生じにくい構成を実現できる。
【0033】
以上に示すように、本実施形態の糸条加熱装置5は、糸2が掛けられるローラ6a・6bと、このローラ6a・6bを回転駆動するための電動モータ21・21と、を備える。そして、前記ローラ6a・6bの外側に加熱手段としての誘導加熱用コイル22を配置し、この誘導加熱用コイル22に交番電流を流すことで前記ローラ6a・6bを加熱し、これによって糸2を加熱するように構成している。従って、ローラ6a・6bの内部に加熱手段を配設する必要がなくなるので、ローラ6a・6bの内部レイアウトの自由度を高めることができる。例えば、電動モータ21・21の出力軸23の径を大にしたり、フランジ部32の位置を中央に設定することも容易である。また、外側に配置された誘導加熱用コイル22によってローラ6a・6bを加熱する構成であるから、ローラ6a・6bの外周面が(渦電流の密度が最も大きいために)最も昇温する。この表皮効果により、ローラ6a・6bの外周面に巻き掛かる糸2を効率良く加熱できる。一方で、ローラ6a・6bの内部(中心側)の昇温は相対的に抑えることができるので、出力軸23への熱の伝導を抑制し、これにより、例えば、電動モータ21において前記出力軸23を軸支する図略の軸受の寿命を延ばすことができる。
【0034】
また、前記誘導加熱用コイル22と前記ローラ6a・6bとの間の隙間gが5mm以上30mm以下となるように設定されている。従って、糸2の誘導加熱用コイル22への絡まりを防止しつつ、糸2の加熱効率に優れた糸条加熱装置5を提供できる。
【0035】
また、前記誘導加熱用コイル22は、前記ローラ6a・6bの外周面のうち糸2が掛けられている部分を避けて対面するように設けられている。従って、糸2を糸条加熱装置5にセットする際も、誘導加熱用コイル22が邪魔にならないので、セット作業が極めて容易である。なお、ローラ6a・6bは高速で回転されつつ加熱されるため、円弧状の誘導加熱用コイル22であってもローラ6a・6bの外周面は周方向で均等に昇温され、糸2の加熱ムラが生じることもない。
【0036】
また、前記ローラ6a・6bは、前記糸2が掛けられる筒部31と、前記筒部31を前記電動モータ21の出力軸23に連結するために当該筒部31から縮径方向に延出するフランジ部32と、を備えている。そして、前記フランジ部32は、前記ローラ6a・6bの軸方向で前記誘導加熱用コイル22と重複する位置に、更に言えば前記ローラ6a・6bの軸方向の中央範囲に配置されている。従って、フランジ部32(ボス部33)をローラ6a・6bの先端側に配置する必要がなくなるので、電動モータ21の出力軸23を短くでき、系の固有振動数を低くして高速回転に好適な構成とすることができる。本実施形態では、ローラ6a・6b(筒部31)の軸方向長さをほぼ二等分する位置にフランジ部32が配置されており、これによって、周面速度6000m/分となるようにローラ6a・6bを高速で回転させても振動が起こりにくい構成が実現されている。
【0037】
なお、図4や図5に示すように、各誘導加熱用コイル22・22の配置を、上側のローラ6aの上半部及び下側のローラ6bの下半部(糸が掛けられている部分)を覆うように変更することができる。なお、図4及び図5の構成は、誘導加熱用コイル22・22の形状及び配置が異なるだけであって、その他は図2及び図3と同様である。
【0038】
この変形例の場合、前記の図2及び図3の構成に比べてローラ6a・6bの外周面を一層広い面積で覆うことが容易であり、ローラ6a・6bを均等に且つ効率良く加熱することができる。
【0039】
また、図5に示すように、変形例において各誘導加熱用コイル22の先端は、ローラ6a・6bの先端よりも、糸掛けに必要な長さ分だけ若干基端側に位置している。言い換えれば、ローラ6a・6bの先端部(片持ち支持されている自由端側の端部)の外周面は、誘導加熱用コイル22で覆われずに露出している。
【0040】
これにより、糸条加熱装置5への糸2のセットを、前記露出部分に糸2を巻回するだけで行うことができる。即ち、本実施形態の糸条加熱装置5において、上側のローラ6aの回転軸線と下側のローラ6bの回転軸線は平行配置されておらず、若干角度をズラして配置されている。従って、各ローラ6a・6bを回転させながらその先端露出部に糸2を周回させると、自動的に糸2はローラ6a・6bの外周面上を基端側に向かって(誘導加熱用コイル22の内部に入り込むように)移動し、最終的には図4に示すように、等ピッチで糸2が螺旋状に2つのローラ6a・6bに巻き掛けられる状態を自動的に実現することができる。以上のように、本実施形態の糸条加熱装置5は、ローラ6a・6bの先端に糸2を掛けると、自然と全体的に糸掛けができる構成になっている。このような構成において、前記のようにローラ6a・6bの先端を露出させると、糸掛け作業が容易になるという効果がある。
【0041】
なお、前記の変形例では図5に示すように、ローラ6a・6bの筒部31にヒートパイプ35を埋め込んで配置し、このヒートパイプ35の先端部を前記露出部まで延出させることが極めて好ましい。これにより、ローラ6a・6bの先端部も含めて、糸2を均等に加熱することができる。
【0042】
以上に本発明の好適な実施形態と変形例を説明したが、上記の構成は一例であって、例えば以下のように変更することができる。
【0043】
誘導加熱用コイル22を用いることに代えて、例えば抵抗加熱ヒータ等の他の加熱手段を用いる構成に変更することができる。抵抗加熱ヒータの場合でもローラ6a・6bは外側から加熱されるため、ローラ中心部の昇温を抑えて出力軸23の軸受等の寿命を延ばすことができ、有利である。
【0044】
ローラ6a・6bは、金属製とすることに代えて、その他の導電性を有する材料で構成することができる。
【0045】
図2と図4を組み合わせた構成、即ち、ローラ6a・6bのそれぞれの上半部と下半部の両方を誘導加熱用コイル22で覆う構成に変更することができる。
【0046】
ローラ6a・6bの寸法や、その外周面に糸2を何周巻き掛けるかについては任意であり、事情に応じて適宜選択することができる。ただし、上記実施形態及び変形例の構成は、電動モータ21の出力軸23を短くして系の固有振動数を低くできる点で、軸方向の寸法が長いローラ(糸2を多数回周回可能な仕様のローラ)を用いる場合に、また、糸掛け本数が多い場合に特に適合的である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】糸条加熱装置を備える紡糸延伸装置の全体構成を示す模式図。
【図2】糸条加熱装置の一部断面斜視図。
【図3】糸条加熱装置の一部断面側面図。
【図4】変形例の糸条加熱装置の斜視図。
【図5】変形例の糸条加熱装置の斜視図。
【符号の説明】
【0048】
2 糸(糸条)
5 糸条加熱装置
6a・6b ローラ
21 電動モータ(ローラ駆動部)
22 誘導加熱用コイル(加熱手段)
23 モータの出力軸(回転軸)
31 筒部
32 フランジ部
33 ボス部
g 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸が掛けられるローラと、加熱手段と、前記ローラを回転駆動するためのローラ駆動部と、を備える糸条加熱装置において、
前記ローラの外側に前記加熱手段としての誘導加熱用コイルを配置し、この誘導加熱用コイルによって前記ローラを加熱し、これによって糸を加熱することを特徴とする糸条加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糸条加熱装置であって、前記誘導加熱用コイルと前記ローラとの間の隙間が5mm以上30mm以下であることを特徴とする糸条加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸条加熱装置であって、前記誘導加熱用コイルが、前記ローラの周面のうち糸が掛けられる部分を避けて対面するように設けられていることを特徴とする糸条加熱装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の糸条加熱装置であって、
前記誘導加熱用コイルの少なくとも一部が、前記ローラの周面のうち糸が掛けられる部分に対面するように設けられており、
前記ローラの回転軸線方向において、前記誘導加熱用コイルの先端部が前記ローラの先端部よりも基端側に位置していることを特徴とする糸条加熱装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸条加熱装置であって、前記誘導加熱用コイルに高周波電流を流すことによって前記ローラを加熱することを特徴とする糸条加熱装置。
【請求項6】
糸が掛けられるローラと、加熱手段と、前記ローラを回転駆動するためのローラ駆動部と、を備える糸条加熱装置において、
前記加熱手段は前記ローラの外側に配置されており、
前記ローラは、前記糸が掛けられる筒部と、前記筒部を前記駆動部の回転軸に連結するためのフランジ部と、を備えており、
前記フランジ部は、前記ローラの軸方向の中央範囲に配置されていることを特徴とする、糸条加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−277753(P2007−277753A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104872(P2006−104872)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】