糸条支持装置及び糸条支持方法
【課題】二本の繊維糸条同士を容易に引き揃え、各々繊維糸条の幅を均一な状態で重ね合わせることができ、これによって、繊維糸条を均一に交絡させることで耐炎化工程中の繊維糸条の破断や焼き切れを防止し、耐炎化処理温度の低下幅を小さくすることができる糸条支持装置及び糸条支持方法を提供する。
【解決手段】一方の集合トウ2aの一部を挟持する一対の第一糸条挟持部30,31と、他方の集合トウ2bの一部を挟持する一対の第二糸条挟持部34,35とを一方の集合トウ2aの一部と他方の集合トウ2bの一部とが離れた状態から重なり合うべく互いに接近離反可能に設けた。
【解決手段】一方の集合トウ2aの一部を挟持する一対の第一糸条挟持部30,31と、他方の集合トウ2bの一部を挟持する一対の第二糸条挟持部34,35とを一方の集合トウ2aの一部と他方の集合トウ2bの一部とが離れた状態から重なり合うべく互いに接近離反可能に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭素繊維等の二本の糸条同士を重ね合わせて支持する糸条支持装置及び糸条支持方法に関し、特に複数の小トウに幅方向に分割可能な集合トウである炭素繊維前躯体の一方の小トウの終端部と他方の小トウの始端部とを重ね合わせて支持する糸条支持装置及び糸条支持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭素繊維の製造工程(耐炎化工程)における操業性を向上させるために、その炭素繊維の前躯体となるアクリル系等の繊維糸条の端部同士を重ね合わせて支持し、この重ね合わせた部分を交絡させて接合し、連続的に炭素繊維の製造工程に繊維糸条を供給するための糸継ぎ装置が知られている。
この糸継ぎ装置は、繊維糸条が重ね合わせた部分に圧縮流体を噴射して交絡させる交絡装置を備え、その交絡装置の両側には、一対の糸条把持部が設けられている。この糸条把持部は、交絡させようとする二本の繊維糸条同士を重ね合わせて把持するためのものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2003−503871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、糸条把持部が一対しかないため、二本の繊維糸条同士を重ね合わせるときに、各々繊維糸条を引き揃えることが困難であるばかりか、仮に繊維糸条同士を均一に重ね合わせたとしても、糸条把持部にその重ね合わせた部分をセットする際に、重ね合わせた部分がずれてしまうおそれがある。このため、交絡させた部分の幅が不均一なものとなり、その後の工程(耐炎化工程等)で繊維糸状が捩れてしまう。すると、この捩れ部分の蓄熱が大きくなり、破断や焼き切れを起こすおそれがあるため、耐炎化処理温度を低下させなければならないという課題がある。
【0004】
また、二本の繊維糸条を引き揃え、その揃えた部分の弛み寸法を個々に規制していても、例えば、複数の小トウに幅方向に分割可能な集合トウの各小トウの端部同士を接続する場合には、それぞれを別個に糸継ぎすると個々の接続位置が異なってしまい、集合トウの交絡部分の長さが不揃いになる。このため、その交絡部分が捩れやすくなるという課題がある。
さらに、例えば、図13に示すように、各々集合トウ50の幅が違うまま重ね合わせて交絡すると、小トウ51,51,51が各々ずれた状態で接続されるため、小トウ51に捩れ部52を形成してしまう。よって、その後の工程で、その捩れ部52の蓄熱量が大きくなり、小トウ51の破断や焼き切れが発生してしまうおそれがあるという課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、二本の繊維糸条同士を容易に引き揃え、各々繊維糸条の幅を均一な状態で重ね合わせることができ、これによって、繊維糸条を均一に交絡させることで耐炎化工程中の繊維糸条の破断や焼き切れを防止し、耐炎化処理温度の低下幅を小さくすることができる糸条支持装置及び糸条支持方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、交絡装置によって一方の繊維糸条と他方の繊維糸条とを交絡させる際に用いられる糸条支持装置であって、前記一方の繊維糸条の一部を挟持する一対の第一糸条挟持部と、前記他方の繊維糸条の一部を挟持する一対の第二糸条挟持部とを前記一方の繊維糸条の一部と前記他方の繊維糸条の一部とが離れた状態から重なり合うべく互いに接近離反可能に設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記第一糸条挟持部間及び前記第二糸条挟持部間には、前記一方の繊維糸条の幅と、前記他方の繊維糸条の幅を規制する糸幅調整バーがそれぞれ設けられ、該糸幅調整バーはそれぞれ対応する前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部と同期して移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部の何れか一方、又は前記第一糸条挟持部と前記第二糸条挟持部との双方を、前記繊維糸条の幅方向に沿って移動して互いに接近させ、各々繊維糸条の一部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を前後で挟持する一対の第三糸条挟持部を備えたことを特徴とする。
この場合、前記第三糸条挟持部の一方は、前記繊維糸条を弛める方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0009】
そして、本発明は、前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部の何れか一方、又は前記第一糸条挟持部と前記第二糸条挟持部との双方を、上下方向に沿って移動し、互いに連結可能に構成したことを特徴とする。
この場合、連結された一方の前記第一糸条挟持部と一方の前記第二糸条挟持部は、前記繊維糸条を弛める方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0010】
また、本発明は、前記繊維糸条は複数の小トウに幅方向に分割可能に束ねられた集合トウであって、前記第一糸条挟持部は前記小トウのうち一方の小トウの終端部を挟持し、前記第二糸条挟持部は前記小トウのうち他方の小トウの始端部を挟持し、これら第一糸条挟持部及び第二糸条挟持部によって前記一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを重ね合わせることを特徴とする。
この場合、前記一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを予め耐炎化処理してもよい。
【0011】
さらに、本発明は、交絡装置によって一方の繊維糸条と、他方の繊維糸条とを交絡させる際に用いられる糸条支持方法であって、前記一方の繊維糸条の一部を一対の第一糸条挟持部で挟持し、前記他方の繊維糸条の一部を一対の第二糸条挟持部で挟持し、これら第一糸条挟持部と第二糸条挟持部とを互いに接近させて前記一方の繊維糸条の一部と前記他方の繊維糸条の一部とを重ね合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一方の繊維糸条の一部を一対の第一糸条挟持部で挟持し、また、他方の繊維糸条の一部を一対の第二挟持部で挟持し、これら第一糸条挟持部と第二糸条挟持部とが互いに接近することで各々繊維糸条の一部を重ね合わせることができる。このため、各々繊維糸条の幅を均一に引き揃えて重ね合わせることが可能になる。
【0013】
また、本発明によれば、第一糸条挟持部間及び第二糸条挟持部間に各々繊維糸条の幅を規制する糸幅調整バーがそれぞれ設けられているため、より確実に各々繊維糸条の幅を均一に引き揃えて重ね合わせることが可能になる。特に、第一糸条挟持部間及び第二糸条挟持部間に交絡装置を設ける場合においては、その交絡装置近傍の繊維糸条の幅を確実に均一に保つことができ、繊維糸条の交絡部分の捩れを防止することが可能になる。
【0014】
さらに、本発明によれば、繊維糸条の重ね合わせた部分を前後で挟持する第三糸条挟持部が設けられているため、各繊維糸条を重ね合わせた後にその重ね合わせた部分を挟持しなおす必要がなくなる。よって、重ね合わせた部分がずれるおそれがない。さらに、例えば、第三糸条挟持部間に交絡装置を設けた場合、その第三糸条挟持部の一方を繊維糸条を弛める方向に移動させることで交絡装置近傍に適正な弛緩量を付与することができる。よって、確実に交絡部分の形状を均一にすることが可能になり、耐炎化工程中の繊維糸条の破断や焼き切れを防止し、耐炎化処理温度の低下幅を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明によれば、第一糸条挟持部と第二糸条挟持部とが互いに連結するため、各繊維糸条の重ね合わせた部分がずれるおそれがなくなるだけでなく、例えば、各々連結した糸条挟持部間に交絡装置を設けた場合、その連結した糸条挟持部の一方を繊維糸条を弛める方向に移動させることで、交絡装置近傍に適正な弛緩量を付与することができる。よって、省スペースで容易に交絡部分の形状を均一にすることが可能になる。
【0016】
そして、本発明によれば、複数本の小トウが幅方向に分割可能に束ねられた集合トウの一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを重ね合わせる場合に、それぞれ終端部と始端部とを予め耐炎化処理するため、より確実に耐炎化工程中の繊維糸条の破断や焼き切れを防止し、耐炎化処理温度の低下幅を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第一実施形態)
次に、この発明の第一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1〜図6は、糸継ぎ装置1を示し、この糸継ぎ装置1は、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部とを挟持する糸条支持装置を備えている。この糸条支持装置にはその主要部を成す第一糸条挟持部30,31、第二糸条挟持部34,35、第三糸条挟持部38,39が設けられている。尚、図示都合上糸条支持装置は特徴部分であるこれら第一糸条挟持部30,31、第二糸条挟持部34,35、第三糸条挟持部38,39以外の部分については図示を省略する。また、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
図1、図2に示すように、一対の第一糸条挟持部30,31と、一対の第二糸条挟持部34,35は、それぞれ並設され、第一糸条挟持部30,31が一方の集合トウ2aの終端部を、第二糸条挟持部34,35が他方の集合トウ2bの始端部を挟持するようになっている。
集合トウ2a,2bは、小トウ5a,5bをそれぞれ幅方向に分割可能に3個並列して束ねられたものである。この集合トウ2a,2bとしては、通常アクリル系繊維糸条が用いられる。このアクリル系繊維糸条は、アクリロニトリルを主成分として含有するアクリル繊維であれば特に限定されるものでないが、アクリロニトリル単位85%質量以上、より好ましくは90%以上を含有するアクリロニトリル系重合体を使用するアクリル繊維であることが好ましい。このアクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリルの単独重合体、又は共重合体、或いはこれらの重合体の混合重合体を使用し得る。さらに、アクリロニトリル系重合体はアクリロニトリルと共重合しうる単量体とアクリロニトリルの共重合成生成物であり、アクリロニトリルと共重合しうる単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の酸類、及びそれらの塩類や、マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸ソーダ、アリルスルホン酸ソーダ、β−スチレンスルホン酸ソーダ、メタアリルスルホン酸ソーダ等のスルホン基を含む重合性不飽和単量体、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のピリジン基を含む重合性不飽和単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
第一糸条挟持部30,31は、それぞれ二つの挟持部材30a,30b,31a,31bからなり、一方の挟持部材30a,31aが他方の挟持部材30b,31bに対して上下方向に当接離反可能に設けられている。これら第一糸条挟持部30,31は、一方の集合トウ2aの幅方向(図1における矢印A方向)に沿うように図示しないガイドによって移動可能に構成されている。また、一方の集合トウ2aの終端側(図1における左側)に設けられている第一糸条挟持部31は、その始端側(図1における右側)に設けられている第一糸条挟持部30と比較して高い(上方)位置に配置されている。
【0020】
第一糸条挟持部30,31間には、第一糸幅調整バー32と第二糸幅調整バー33とが設けられている。これら第一糸幅調整バー32、第二糸幅調整バー33は、第一糸条挟持部30,31間の一方の集合トウ2aを引張し、弛みをなくすと共に、一方の集合トウ2aのトウ幅WAを規制するためのものであって、第一糸条挟持部30,31と同期して一方の集合トウ2aの幅方向(図1における矢印A方向)に沿って移動可能に構成されている。
【0021】
図7に詳示するように、第一糸幅調整バー32と第二糸幅調整バー33は段付円柱状に形成されたものであって、それぞれ長手方向が一方の集合トウ2aの幅方向に沿うように配置されている。これら糸幅調整バー32,33は、長手方向の両端に形成された大径部40,40と、その大径部40,40間に設けられた小径部41とが一体成形されたものである。この小径部41の軸径は、大径部40の軸径と比較して小さく設定されている。一方の集合トウ2aは、この小径部41に配索され、大径部40,40によってトウ幅WAが規制されるようになっている。つまり、大径部40,40間の間隔がトウ幅WAとなる。
【0022】
尚、集合トウ2a,2bのトウ幅WA(図1参照)は、0.002mm/texから0.005mm/texであることが好ましい。
トウ幅WAが0.002mm/texより小さい場合には、集合トウ2a,2bを各糸条挟持部30,31,34,35に挟持させる際に捩れが生じやすい。このため、耐炎化工程で集合トウ2a,2bが捩れによりその厚みが厚くなり蓄熱しやすく、集合トウ2a,2bが破断や焼き切れを起こしやすくなるので好ましくない。また、トウ幅WAが0.005mm/texより大きい場合には、集合トウ2a,2bを開繊するのが困難となり、接続部(交絡部)でのムラが発生し、接続強度が低下するために好ましくない。
【0023】
図1、図2に示すように、第一糸幅調整バー32は、小径部41の外周面の一部が第一糸条挟持部30の他方の挟持部材30bの上端と同じ高さになるように配置されている。一方、第二糸幅調整バー33は、小径部41の外周面の一部が第一糸条挟持部31の他方の挟持部材31bの上端と同じ高さになるように配置されている。
したがって、一方の集合トウ2aの終端部は、第一糸条挟持部30から第一糸幅調整バー32までの間で略水平状態に、第一糸幅調整バー32から第二糸幅調整バー33までの間で斜め上方に向かって屈曲した状態に、第二糸幅調整バー33から第一糸条挟持部31までの間で再び略水平状態になるように配置され、第一糸条挟持部30,31によって挟持されている。
【0024】
一方、第二糸条挟持部34,35は、それぞれ二つの挟持部材34a,34b,35a,35bからなり、一方の挟持部材34a,35aが他方の挟持部材34b,35bに対して上下方向に当接離反可能に設けられている。また、他方の集合トウ2bの終端側(図1における左側)に設けられている第二糸条挟持部35が他方の集合トウ2bの始端側(図1における右側)に設けられている第二糸条挟持部34と比較して高い(上方)位置に配置されている。
【0025】
さらに、第二糸条挟持部34,35間にも第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37とが設けられている。これら第一糸幅調整バー36、第二糸幅調整バー37は、第二糸条挟持部34,35間の他方の集合トウ2bを引張し、弛みをなくすと共に、他方の集合トウ2bのトウ幅WAを規制するためのものであって、それぞれ他方の集合トウ2bの幅方向に沿うように設けられている。これら糸幅調整バー36,37の形状は前述した第一糸幅調整バー32及び第二糸幅調整バー33と略同一形状であるため、ここでの説明は省略する。
他方の集合トウ2bは、一方の集合トウ2aと同様に第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37の小径部41(図7参照)に配索され、大径部40,40によってトウ幅WAが規制されるようになっている。
【0026】
第一糸幅調整バー36は、小径部41の外周面の一部が第二糸条挟持部34の他方の挟持部材34bの上端と同じ高さになるように配置されている。一方、第二糸幅調整バー37は、小径部41の外周面の一部が第二糸条挟持部35の他方の挟持部材35bの上端と同じ高さになるように配置されている。
したがって、他方の集合トウ2bの始端部は、第二糸条挟持部34から第一糸幅調整バー36までの間で略水平状態に、第一糸幅調整バー36から第二糸幅調整バー37までの間で斜め上方に向かって屈曲した状態に、第二糸幅調整バー37から第二糸条挟持部35までの間で再び略水平状態になるように配索され、第二糸条挟持部34,35によって挟持されている。
【0027】
このように第一糸条挟持部30,31と第二糸条挟持部34,35とでそれぞれ挟持された一方の集合トウ2aと他方の集合トウ2bとは、第一糸条挟持部30,31が第二糸条挟持部34,35に向かって集合トウ2a,2bの幅方向に沿って移動する(図1における矢印A方向に向かって移動する)ことで重なり合うようになっている(図2参照)。
【0028】
ここで、図2に示すように、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部は、それぞれ第二糸幅調整バー33と第一糸幅調整バー36との間で重なり合うようになっている。また、一方の集合トウ2aの高低差(第一糸幅調整バー32と第二糸幅調整バー33との高低差)H1は、第二糸条挟持部34に干渉しない大きさに設定されている。さらに、他方の集合トウ2bの高低差(第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37との高低差)H2は、第一糸条挟持部31に干渉しない大きさに設定されている。
【0029】
第二糸条挟持部34,35間には、集合トウ2a,2bの重ね合わせた部分(第二糸幅調整バー33と第一糸幅調整バー36との間)を前後で挟持する一対の第三糸条挟持部38,39が設けられている。第三糸条挟持部38,39は、それぞれ二つの挟持部材38a,38b,39a,39bからなり、一方の挟持部材38a,39aが他方の挟持部材38b,39bに対して上下方向に当接離反可能に設けられている。これら第三糸条挟持部38,39のうち、他方の集合トウ2bの始端側にある第三糸条挟持部38は、集合トウ2a,2bの重ね合わされた部分を弛める方向に向かって(図2における左方向に向かって)移動可能に構成されている。
【0030】
第三糸条挟持部38,39間には、交絡装置7が集合トウ2a,2bの長手方向に沿うように移動可能に設けられている。
交絡装置7は、集合トウ2a,2bの重ね合わせた部分を保持して交絡させるためのものである。尚、以下の説明において、交絡装置7に保持されて交絡される集合トウ2a,2bの重ね合わされた部分を交絡部6という。
【0031】
図8は、交絡装置7に集合トウ2a,2bの交絡部6をセットした状態を示す、交絡装置7の縦断面図である。
同図に示すように、交絡装置7は、圧縮流体である圧縮空気等を噴射する第一ノズル8と第二ノズル9とを備え、各々第一ノズル8と第二ノズル9とが互いに当接離反可能に重なり合っている。集合トウ2a,2bの各交絡部6は、この第一ノズル8と第二ノズル9との間に分割された状態(小トウ5a,5b毎の状態)でそれぞれ収容されるようになっている。
第一ノズル8は、その内部に圧縮空気が導入される通路10が形成されている。第一ノズル8の一側面には、この通路10に連通する圧縮空気導入口12が設けられ、この圧縮空気導入口12が不図示の圧縮機に接続されている。
【0032】
第一ノズル8の第二ノズル9との合わせ面14には、各小トウ5a,5bを収容して保持する小トウ保持部15,15,15が小トウ5a,5bの個数に対応するように間隔をあけて三箇所形成されている。各小トウ保持部15は凹状であって、小トウ5a,5bの長手方向に沿うように形成されており、それぞれ側面16と底面17とを有している。
この底面17と通路10との間には複数の細孔18が幅方向に沿うように等間隔に一列で形成されている。これら細孔18から圧縮空気が第二ノズル9側に向かって噴射するようになっている。
【0033】
第二ノズル9は、第一ノズル8の各小トウ保持部15を覆うように第一ノズル8に重ね合わされている。第二ノズル9は、第一ノズル8と同様にその内部に圧縮空気が導入される通路11がそれぞれ形成されている。第二ノズル9の一側面には、この通路11に連通する圧縮空気導入口13が設けられ、これら圧縮空気導入口13が不図示の圧縮機に接続されている。
第二ノズル9の第一ノズル8との合わせ面19と通路11との間には複数の細孔20が第一ノズル8に形成されている細孔18に対応する部分に形成されている。これら細孔20から圧縮空気が第一ノズル8側に向かって噴射するようになっている。
【0034】
したがって、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部は、一方の小トウ5aの終端部と他方の小トウ5bの始端部とを各々重ね合わせた状態で小トウ保持部15に収容され、小トウ保持部15の側面16と底面17及び第二ノズル9の合わせ面19とで周囲を略矩形状に囲まれた状態で小トウ保持部15毎に各ノズル8,9によって扁平状に交絡される(糸継ぎされる)ようになっている。
【0035】
次に、この発明の第一実施形態の糸継ぎ装置1の糸条支持方法と糸継ぎ動作について図1〜図6に基づいて説明する。
まず、図1に示すように、一方の集合トウ2aのトウ幅WAを糸幅調整バー32,33によって引き揃え、第一糸条挟持部30,31によって弛みのない状態で挟持する。また、他方の集合トウ2bのトウ幅WAを糸幅調整バー36,37によって引き揃え、第二糸条挟持部34,35によって弛みのない状態で挟持する。尚、それぞれ小トウ5aの終端部と小トウ5bの始端部は、予め耐炎化処理されている。
【0036】
次に、第一糸条挟持部30,31及び糸幅調整バー32,33を一方の集合トウ2aを挟持したままの状態で、第二糸条挟持部34,35に向かって(図1における矢印A方向)移動する。そして、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bとを重ね合わせる(図2参照)。このとき、第三糸条挟持部38,39のそれぞれ挟持部材38a,38b,39a,39bは離反した状態になっており、また、交絡装置7の第一ノズル8と第二ノズル9もそれぞれ離反した状態になっているため、一方の集合トウ2aがこれら第三糸条挟持部38,39及び交絡装置7に干渉することがない。
【0037】
次に、図3に示すように、第三糸条挟持部38,39が集合トウ2a,2bの重なり合った部分(第二糸幅調整バー33と第一糸幅調整バー36との間)を前後で挟持する。また、交絡装置7に集合トウ2a,2bの各小トウ5a,5bをセットする。セットの方法としては、交絡装置7の第一ノズル8に形成されている小トウ保持部15にそれぞれ小トウ5a,5bを収容し、その後第二ノズル9を第一ノズル8に移動して固定する。
【0038】
第三糸条挟持部38,39によって集合トウ2a,2bを挟持し、交絡装置7に各小トウ5a,5bをセットした後、図4に示すように、第一糸条挟持部30,31の一方の挟持部材30a,31aが他方の挟持部材30b,31bに対して離反し、第一糸条挟持部30,31による一方の集合トウ2aの挟持状態を解除する。同様に、第二糸条挟持部34,35の一方の挟持部材34a,35aが他方の挟持部材34b、35bに対して離反し、第二糸条挟持部34,35による他方の集合トウ2bの挟持状態を解除する。
【0039】
そして、第三糸条挟持部38を小トウ5a,5bを挟持しつつ小トウ5a,5bを弛める方向(矢印B方向)に向かって移動し、交絡装置7の近傍に弛緩部分を形成する。このとき、挟持部3の移動距離(弛緩量)L1は1〜5mmであることが好ましい。尚、L1が1mm未満の場合では交絡が十分でなく糸継ぎ効果が得られない。一方、L1が5mmを超える場合では交絡させた交絡部の厚みが厚くなり、例えば、耐炎化工程中にその交絡部が蓄熱しやすくなり破断や焼き切れを起こすおそれがあるため、好ましくない。
【0040】
次に、交絡装置7の第一ノズル8と第二ノズル9から圧縮空気を噴射する(図8参照)。すると、交絡装置7に保持されている交絡部6が交絡され、弛緩部分がなくなる。
尚、圧縮空気のエア圧は、0.3〜0.6MPaであることが好ましい。エア圧が0.3MPaよりも低い場合は交絡が十分でないおそれがある。エア圧が0.6MPaを超える場合は糸切れが生じるおそれがある。また、圧縮空気の噴射時間は5秒以上が好ましい。
【0041】
次に、図5に示すように、交絡装置7を小トウ5a,5bの長手方向に沿って第三糸条挟持部38側(矢印C方向)に向かって移動する。そして、再び第三糸条挟持部38を小トウ5a,5bを弛める方向に向かって距離L1移動し、交絡装置7の近傍に弛緩部分を形成する。その後、再び交絡装置7の第一ノズル8、第二ノズル9から圧縮空気を噴射し、交絡装置7に保持されている交絡部6が交絡される。
【0042】
尚、交絡装置7の移動距離L2は、30〜70mmであることが望ましい。30mm未満では、交絡部6がそれぞれ重なってしまい、十分な糸継ぎ効果が得られないおそれがある。一方、交絡部6の相互の間隔が70mmを超えると必要以上に接続長さ(糸継ぎ長さ)を延ばし、接続部の接続低下、作業性の低下を伴い、接続するための装置(糸継ぎ装置1)が大きくなるため好ましくない。
【0043】
このように、交絡装置7を小トウ5a,5bの長手方向に沿って移動し、それに応じて第三糸条挟持部38を小トウ5a,5bを弛める方向に向かって移動して各小トウ5a,5bを交絡させる作業を複数回(この第一実施形態においては三回)繰り返し行う(図6参照)。尚、この交絡作業を順次三回以上繰り返し行うことが好ましい。
図6に示すように、各小トウ5a,5bの重ね合わせた部分を交絡装置7によって扁平状に交絡させた後、一方の集合トウ2aの終端部分(第一糸条挟持部31近傍)をハサミ等で切断する。また、他方の集合トウ2bの始端部分(第二糸条挟持部34近傍)もハサミ等で切断する。そして、第三糸条挟持部38,39を解除し、糸継ぎ装置1から交絡された集合トウ2a,2bを取り出し、糸継ぎ作業(交絡作業)を終了する。
【実施例】
【0044】
次に、この発明の第一実施形態の実施例と比較例を具体的に示して糸条支持方法と糸継ぎを説明する。尚、本発明の実施例は以下に記載された事項によって限定されるものではない。
(実施例)
まず、単糸繊度1.2dTex/フィラメント、フィラメント数50000のアクリル繊維(小トウ)を三本集合させた集合トウ(フィラメント数150000)である炭素繊維前躯体を二つ用意し、一方の炭素繊維前躯体の終端部と、他方の炭素繊維前躯体の始端部とを耐炎化処理として240℃の熱風が循環している炉内で6.5m/texの張力下で70分処理を行い、密度1.36g/cm3とした。
【0045】
次に、一方の炭素繊維前躯体において、糸幅調整バー32,33によって終端部の各々小トウのトウ幅が17.5mmになるように引き揃え、第一糸条挟持部30,31によって弛みのないように挟持する。また、他方の炭素繊維前躯体において、糸幅調整バー36,37によって始端部の各々小トウのトウ幅が18mmになるように引き揃え、第二糸条挟持部34,35によって弛みのないように挟持する。
【0046】
そして、各々炭素繊維前躯体を重ね合わせ、第三糸条挟持部38,39によってその炭素繊維前躯体の重ね合わせた部分を前後で挟持した。
尚、この実施例においては、小トウのトウ幅をそれぞれ17.5mm、18mmとして、重ね合わせるそれぞれの小トウのトウ幅に多少の誤差(0.5mmの誤差)がある場合について実施し、その誤差によって問題が発生するかどうかを確認したが、当然のことながらそれぞれのトウ幅は同等であることが望ましい。
【0047】
次に、交絡装置7の小トウ保持部15(図8参照)に小トウをセットし、第三糸条挟持部38を移動させ、小トウを弛緩させた。尚、挟持部3の移動距離(弛緩量)L1は2mmとした。次に、第一ノズル8、第二ノズル9より0.5MPaの圧縮空気を5秒噴射させ、一方の炭素繊維前躯体の終端部と他方の炭素繊維前躯体の始端部とを扁平状に交絡させた。これを繰り返し五回行い、小トウを五箇所交絡させた。尚、交絡装置7の一回毎の移動距離L2は60mmとした。
【0048】
このように糸継ぎ(交絡)した炭素繊維前躯体を227〜248℃の熱風が循環している耐炎化炉にて工程張力が24.5mN/texで60分間の耐炎化処理し、300〜600℃、1150〜1250℃の温度分布を有する窒素雰囲気中で5mN/tex、16mN/texで各1.5分間の炭素化処理を行い、工程通過性を確認した。その結果、それぞれ重なり合う小トウのトウ幅に多少の誤差が合った場合であっても、糸の切断等はなかった。
【0049】
(比較例1)
実施例に対して、一方の炭素繊維前躯体及び他方の炭素繊維前躯体の各々小トウのトウ幅を規制せずにそれぞれ炭素繊維前躯体同士を重ね合わせ、それ以外の工程は実施例と同様の条件とした。
その結果、それぞれ炭素繊維前躯体同士を重ね合わせた際のトウ幅の差が3mmとなり、その後の工程である耐炎化炉に炭素繊維前躯体を給糸する給糸工程と、耐炎化炉にて炭素繊維前躯体を耐炎化処理する耐炎化工程との間で炭素繊維前躯体の捩れが発生し、その捩れ部分が蓄熱したため、耐炎化工程で糸が切断した。
【0050】
したがって、上述の第一実施形態によれば、一方の集合トウ2aの終端部を第一糸条挟持部30,31で挟持し、他方の集合トウ2bの始端部を第二糸条挟持部34,35で挟持し、そして、第一糸条挟持部30,31が集合トウ2a,2bの幅方向に沿うように第二糸条挟持部34,35に向かって移動するため、集合トウ2a,2b同士を重ね合わせることができる。よって、集合トウ2a,2bの小トウ5a,5bのフィラメント数が48000本以上の太い炭素繊維前躯体であっても、それぞれ集合トウ2a,2bのトウ幅を均一に引き揃えて重ね合わせることが可能になる。
【0051】
また、第一糸条挟持部30,31間、第二糸条挟持部34,35間にそれぞれ設けられた第一糸幅調整バー32,36、第二糸幅調整バー33,37によって、集合トウ2a,2bのトウ幅をそれぞれ均一、且つ一定に保ちつつ交絡させることが可能になる。このため、例えば、耐炎化炉に炭素繊維前躯体を給糸する給糸工程と、耐炎化炉にて炭素繊維前躯体を耐炎化処理する耐炎化工程との間で小トウが捩れることを防止することができる。
【0052】
さらに、第三糸条挟持部38,39によって、集合トウ2a,2bの重ね合わせた部分を前後で挟持するため、重ね合わせた集合トウ2a,2bを挟持しなおす必要がなくなり、その重ね合わせた部分がずれるおそれがない。
そして、第三糸条挟持部38が移動することによって交絡装置7の近傍に弛緩部分を形成し、その弛緩部分の形成毎に交絡装置7が交絡部6を交絡させるため、均一な交絡部6を形成することができる。よって、耐炎化工程中の交絡部6の蓄熱を防止し、糸切れを防止することができる。
【0053】
また、小トウ保持部15によって確実に小トウ5a,5b毎に交絡することができるため、複数本に分割可能な糸(例えば、本実施形態の集合トウ2a,2b)の糸継ぎ作業を迅速化させることができ、分割可能な糸での接続後(交絡後)の糸の長さの不揃いをなくすことができる。
さらに、予め一方の小トウ5aの終端部と他方の小トウ5bの始端部を耐炎化処理し、その後糸継ぎ装置1によって交絡させることで確実に耐炎化工程で破断や糸切れを起こすことなく耐炎化工程通過を可能にすることができる。よって、耐炎化処理温度を低下させる必要がなくなる。
【0054】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図7、図8を援用し、図9〜図12に基づいて説明する。尚、第一実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
この第二実施形態において、糸継ぎ装置60は、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部とを挟持する糸条支持装置を備え、その主要部を成す第一糸条挟持部30,31、第二糸条挟持部34,35が設けられている点、交絡装置7は第一ノズル8と第二ノズル9とを備えたものである点等の基本的構成は、前記第一実施形態と同様である。また、第一実施形態と同様に、図示都合上糸条支持装置は特徴部分である第一糸条挟持部30,31、第二糸条挟持部34,35以外の部分については図示を省略する。
【0055】
図9に示すように、第一糸条挟持部30,31と第二糸条挟持部34,35は、互いに上下方向に配置され、各々連結可能に設けられている。
第一糸条挟持部30,31間には、第一糸幅調整バー32と第二糸幅調整バー33とが設けられている。これら第一糸幅調整バー32、第二糸幅調整バー33は、第一糸条挟持部30,31よりも高い(上方)位置に配置されている。したがって、一方の集合トウ2aの終端部は、第一糸条挟持部30から第一糸幅調整バー32までの間で斜め上方に向かって屈曲した状態に、第一糸幅調整バー32から第二糸幅調整バー33までの間で略水平状態に、第二糸幅調整バー33から第一糸条挟持部31までの間で斜め下方に向かって屈曲した状態に配索され、第一糸条挟持部30,31によって挟持されている。
【0056】
一方、第二糸条挟持部34,35間にも第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37とが設けられている。これら第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37は、第二糸条挟持部34,35よりも低い(下方)の位置に配置されている。したがって、他方の集合トウ2bの始端部は、第二糸条挟持部34から第一糸幅調整バー36までの間で斜め下方に向かって屈曲した状態に、第一糸幅調整バー36から第二糸幅調整バー37までの間で略水平状態に、第二糸幅調整バー37から第二糸条挟持部35までの間で斜め上方に向かって屈曲した状態に配置され、第二糸条挟持部34,35によって挟持されている。
【0057】
また、第二糸条挟持部34,35及び糸幅調整バー36,37は、第一糸条挟持部30,31及び糸幅調整バー32,33にそれぞれ対応するように同間隔に配置されている。さらに、第二糸条挟持部34,35及び糸幅調整バー36,37は、互いに同期して上下方向に沿うように図示しないガイドによって移動可能に設けられている。さらに、第一糸条挟持部30,31と第二糸条挟持部34,35との連結時には各々第一糸幅調整バー32,36と第二糸幅調整バー33,37も互いに連結するようになっている。
【0058】
このように構成することで、図10に示すように、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部とが、それぞれ糸条挟持部30,31,34,35同士の干渉なく、第一糸幅調整バー32,36と第二糸幅調整バー33,37との間で重ね合わさるようになっている。尚、第一糸条挟持部30,31と第一糸幅調整バー32及び第二糸幅調整バー33とによって形成された一方の集合トウ2aの高低差H3、並びに第二糸条挟持部34,35と第一糸幅調整バー36及び第二糸幅調整バー37とによって形成された他方の集合トウ2bの高低差H4は、それぞれ集合トウ2a,2b同士が重なり合い、且つそれぞれ糸条挟持部30,31,34,35が連結可能な高低差に設定されている。
【0059】
それぞれ第一糸幅調製バー32,36と第二糸幅調製バー33,37との間には、交絡装置7が集合トウ2a,2bの長手方向に沿うように三箇所等間隔に設けられ、第一ノズル8が一方の集合トウ2aの下方に、第二ノズル9が他方の集合トウ2bの上方にそれぞれ対向配置されている。尚、各交絡装置7,7,7の間隔L3は、30〜70mmであることが望ましい。
各交絡装置7,7,7の近傍には、弛緩部21,21,21が設けられている。この弛緩部21は、各交絡装置7毎に集合トウ2a,2bの各交絡部6,6,6近傍に弛緩部分を形成するためのものであって、それぞれ断面略矩形のベース部材22と重錘23とで構成され、重錘23がベース部材22に対して上下方向に着脱自在になっている。
【0060】
図11に示すように、連結された第一糸条挟持部30、第二糸条挟持部34及び第一糸幅調整バー32,36は、弛緩部21,21,21によって形成される弛緩部分の弛緩量に基づいてそれぞれ同期して交絡装置7側(図11における矢印G方向)に向かって移動可能に構成されている。尚、連結された第一糸条挟持部30、第二糸条挟持部34及び第一糸幅調整バー32,36の移動距離L4は、交絡部一つあたり1〜5mmが好ましい。この第二実施形態においては、交絡装置7によって交絡させる箇所が三箇所である(交絡部が三つである)ため、移動距離L4は、3〜15mmであることが好ましい。
【0061】
次に、この発明の第二実施形態の糸継ぎ装置60の糸条支持方法と糸継ぎ動作について図9〜図12に基づいて説明する。
まず、図9に示すように、一方の集合トウ2aのトウ幅WAを糸調整バー32によって引き揃え、第一糸条挟持部30,31によって弛みのない状態で挟持する。また、他方の集合トウ2bのトウ幅WAを糸調整バー36によって引き揃え、第二糸条挟持部34,35によって弛みのない状態で挟持する。尚、それぞれ小トウ5aの終端部と小トウ5bの始端部は、予め耐炎化処理されている。
【0062】
次に、第二糸条挟持部34,35及び糸幅調整バー36,37を他方の集合トウ2bを挟持したままの状態で、第一糸条挟持部30,31に向かって(図9における矢印F方向)移動する。そして、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bとを重ね合わせる(図10参照)。また、交絡装置7に集合トウ2a,2bの各小トウ5a,5bをセットする。
【0063】
次に、図11に示すように、各交絡装置7,7,7に隣接して設けられている弛緩部21,21,21によって各交絡部6,6,6の近傍にそれぞれ弛緩部分を形成する。具体的には、弛緩部21,21,21の重錘23を用いて各小トウ5a,5bをその重錘23の重みでベース部材22の上面まで弛ませる。このとき、連結されている第一糸条挟持部30、第二糸条挟持部34及び第一糸幅調整バー32,36が各交絡部6,6,6の弛緩量に基づいて交絡装置7側(矢印G方向)に向かってそれぞれ同期して移動する。
【0064】
次に、交絡装置7,7,7のそれぞれに対応する弛緩部21,21,21の重錘23を順次外し、それに対応する交絡装置7の各ノズル8,9から圧縮空気を噴射する(図8参照)。すると、各交絡装置7,7,7内に保持されている交絡部6,6,6が交絡され、弛緩部分がなくなる(図12参照)。
図12に示すように、各小トウ5a,5bの交絡部6,6,6を各交絡装置7,7,7によって扁平状に交絡させた後、一方の集合トウ2aの終端部分(第一糸条挟持部31近傍)をハサミ等で切断する。また、他方の集合トウ2bの始端部分(第二糸条挟持部34近傍)もハサミ等で切断する。そして、第一糸条挟持部30と第二糸条挟持部35を解除し、糸継ぎ装置60から交絡された集合トウ2a,2bを取り出し、糸継ぎ作業(交絡作業)を終了する。
【0065】
したがって、上述の第に実施形態によれば、前述した第一実施形態と同様の効果に加え、第一糸条挟持部30,31と第二糸条挟持部34,35とが連結するため、集合トウ2a,2bの重ね合わさった部分を前後で挟持する部品を別途設ける必要がなくなる。よって、糸継ぎ装置60をさらに小型化することが可能になる。
【0066】
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
また、上述した実施形態では、第一糸幅調整バー32,36及び第二糸幅調整バー33,37は、長手方向の両端に形成された大径部40,40と、その大径部40,40間に設けられた小径部41とが一体成形されたものである場合について説明したが、大径部40と小径部41とが別体で構成されていてもよいし、小トウ毎にトウ幅を規制できるように、小径部41上に大径部40を小トウの個数に応じて等間隔に複数個設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一実施形態における糸条支持装置を備えた糸継ぎ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態における一方の集合トウと他方の集合トウとを重ね合わせた状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第一実施形態における第三糸条挟持部が各集合トウを重ね合わせ他部分を前後で挟持している状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第一実施形態における交絡作業の説明図である。
【図5】本発明の第一実施形態における交絡作業の説明図である。
【図6】本発明の第一実施形態における交絡作業の説明図である。
【図7】本発明の実施形態における糸幅調整バーを示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態における交絡装置の縦断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態における糸条支持装置を備えた糸継ぎ装置の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第二実施形態における一方の集合トウと他方の集合トウとを重ね合わせた状態を示す側面図である。
【図11】本発明の第二実施形態における交絡作業の説明図である。
【図12】本発明の第二実施形態における交絡作業の説明図である。
【図13】従来の糸継ぎ装置を用いて集合トウの小トウを交絡させた場合の交絡部分の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…糸継ぎ装置
2a…一方の集合トウ(繊維糸条)
2b…他方の集合トウ(繊維糸条)
5a…一方の小トウ
5b…他方の小トウ
6…交絡部
7…交絡装置
30,31…第一糸条挟持部
32,36…第一糸幅調整バー(糸幅調整バー)
33,37…第二糸幅調整バー(糸幅調整バー)
34,35…第二糸条挟持部
38,39…第三糸条挟持部
40…大径部
41…小径部
60…糸継ぎ装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭素繊維等の二本の糸条同士を重ね合わせて支持する糸条支持装置及び糸条支持方法に関し、特に複数の小トウに幅方向に分割可能な集合トウである炭素繊維前躯体の一方の小トウの終端部と他方の小トウの始端部とを重ね合わせて支持する糸条支持装置及び糸条支持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭素繊維の製造工程(耐炎化工程)における操業性を向上させるために、その炭素繊維の前躯体となるアクリル系等の繊維糸条の端部同士を重ね合わせて支持し、この重ね合わせた部分を交絡させて接合し、連続的に炭素繊維の製造工程に繊維糸条を供給するための糸継ぎ装置が知られている。
この糸継ぎ装置は、繊維糸条が重ね合わせた部分に圧縮流体を噴射して交絡させる交絡装置を備え、その交絡装置の両側には、一対の糸条把持部が設けられている。この糸条把持部は、交絡させようとする二本の繊維糸条同士を重ね合わせて把持するためのものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2003−503871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、糸条把持部が一対しかないため、二本の繊維糸条同士を重ね合わせるときに、各々繊維糸条を引き揃えることが困難であるばかりか、仮に繊維糸条同士を均一に重ね合わせたとしても、糸条把持部にその重ね合わせた部分をセットする際に、重ね合わせた部分がずれてしまうおそれがある。このため、交絡させた部分の幅が不均一なものとなり、その後の工程(耐炎化工程等)で繊維糸状が捩れてしまう。すると、この捩れ部分の蓄熱が大きくなり、破断や焼き切れを起こすおそれがあるため、耐炎化処理温度を低下させなければならないという課題がある。
【0004】
また、二本の繊維糸条を引き揃え、その揃えた部分の弛み寸法を個々に規制していても、例えば、複数の小トウに幅方向に分割可能な集合トウの各小トウの端部同士を接続する場合には、それぞれを別個に糸継ぎすると個々の接続位置が異なってしまい、集合トウの交絡部分の長さが不揃いになる。このため、その交絡部分が捩れやすくなるという課題がある。
さらに、例えば、図13に示すように、各々集合トウ50の幅が違うまま重ね合わせて交絡すると、小トウ51,51,51が各々ずれた状態で接続されるため、小トウ51に捩れ部52を形成してしまう。よって、その後の工程で、その捩れ部52の蓄熱量が大きくなり、小トウ51の破断や焼き切れが発生してしまうおそれがあるという課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、二本の繊維糸条同士を容易に引き揃え、各々繊維糸条の幅を均一な状態で重ね合わせることができ、これによって、繊維糸条を均一に交絡させることで耐炎化工程中の繊維糸条の破断や焼き切れを防止し、耐炎化処理温度の低下幅を小さくすることができる糸条支持装置及び糸条支持方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、交絡装置によって一方の繊維糸条と他方の繊維糸条とを交絡させる際に用いられる糸条支持装置であって、前記一方の繊維糸条の一部を挟持する一対の第一糸条挟持部と、前記他方の繊維糸条の一部を挟持する一対の第二糸条挟持部とを前記一方の繊維糸条の一部と前記他方の繊維糸条の一部とが離れた状態から重なり合うべく互いに接近離反可能に設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記第一糸条挟持部間及び前記第二糸条挟持部間には、前記一方の繊維糸条の幅と、前記他方の繊維糸条の幅を規制する糸幅調整バーがそれぞれ設けられ、該糸幅調整バーはそれぞれ対応する前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部と同期して移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部の何れか一方、又は前記第一糸条挟持部と前記第二糸条挟持部との双方を、前記繊維糸条の幅方向に沿って移動して互いに接近させ、各々繊維糸条の一部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を前後で挟持する一対の第三糸条挟持部を備えたことを特徴とする。
この場合、前記第三糸条挟持部の一方は、前記繊維糸条を弛める方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0009】
そして、本発明は、前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部の何れか一方、又は前記第一糸条挟持部と前記第二糸条挟持部との双方を、上下方向に沿って移動し、互いに連結可能に構成したことを特徴とする。
この場合、連結された一方の前記第一糸条挟持部と一方の前記第二糸条挟持部は、前記繊維糸条を弛める方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0010】
また、本発明は、前記繊維糸条は複数の小トウに幅方向に分割可能に束ねられた集合トウであって、前記第一糸条挟持部は前記小トウのうち一方の小トウの終端部を挟持し、前記第二糸条挟持部は前記小トウのうち他方の小トウの始端部を挟持し、これら第一糸条挟持部及び第二糸条挟持部によって前記一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを重ね合わせることを特徴とする。
この場合、前記一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを予め耐炎化処理してもよい。
【0011】
さらに、本発明は、交絡装置によって一方の繊維糸条と、他方の繊維糸条とを交絡させる際に用いられる糸条支持方法であって、前記一方の繊維糸条の一部を一対の第一糸条挟持部で挟持し、前記他方の繊維糸条の一部を一対の第二糸条挟持部で挟持し、これら第一糸条挟持部と第二糸条挟持部とを互いに接近させて前記一方の繊維糸条の一部と前記他方の繊維糸条の一部とを重ね合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一方の繊維糸条の一部を一対の第一糸条挟持部で挟持し、また、他方の繊維糸条の一部を一対の第二挟持部で挟持し、これら第一糸条挟持部と第二糸条挟持部とが互いに接近することで各々繊維糸条の一部を重ね合わせることができる。このため、各々繊維糸条の幅を均一に引き揃えて重ね合わせることが可能になる。
【0013】
また、本発明によれば、第一糸条挟持部間及び第二糸条挟持部間に各々繊維糸条の幅を規制する糸幅調整バーがそれぞれ設けられているため、より確実に各々繊維糸条の幅を均一に引き揃えて重ね合わせることが可能になる。特に、第一糸条挟持部間及び第二糸条挟持部間に交絡装置を設ける場合においては、その交絡装置近傍の繊維糸条の幅を確実に均一に保つことができ、繊維糸条の交絡部分の捩れを防止することが可能になる。
【0014】
さらに、本発明によれば、繊維糸条の重ね合わせた部分を前後で挟持する第三糸条挟持部が設けられているため、各繊維糸条を重ね合わせた後にその重ね合わせた部分を挟持しなおす必要がなくなる。よって、重ね合わせた部分がずれるおそれがない。さらに、例えば、第三糸条挟持部間に交絡装置を設けた場合、その第三糸条挟持部の一方を繊維糸条を弛める方向に移動させることで交絡装置近傍に適正な弛緩量を付与することができる。よって、確実に交絡部分の形状を均一にすることが可能になり、耐炎化工程中の繊維糸条の破断や焼き切れを防止し、耐炎化処理温度の低下幅を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明によれば、第一糸条挟持部と第二糸条挟持部とが互いに連結するため、各繊維糸条の重ね合わせた部分がずれるおそれがなくなるだけでなく、例えば、各々連結した糸条挟持部間に交絡装置を設けた場合、その連結した糸条挟持部の一方を繊維糸条を弛める方向に移動させることで、交絡装置近傍に適正な弛緩量を付与することができる。よって、省スペースで容易に交絡部分の形状を均一にすることが可能になる。
【0016】
そして、本発明によれば、複数本の小トウが幅方向に分割可能に束ねられた集合トウの一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを重ね合わせる場合に、それぞれ終端部と始端部とを予め耐炎化処理するため、より確実に耐炎化工程中の繊維糸条の破断や焼き切れを防止し、耐炎化処理温度の低下幅を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第一実施形態)
次に、この発明の第一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1〜図6は、糸継ぎ装置1を示し、この糸継ぎ装置1は、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部とを挟持する糸条支持装置を備えている。この糸条支持装置にはその主要部を成す第一糸条挟持部30,31、第二糸条挟持部34,35、第三糸条挟持部38,39が設けられている。尚、図示都合上糸条支持装置は特徴部分であるこれら第一糸条挟持部30,31、第二糸条挟持部34,35、第三糸条挟持部38,39以外の部分については図示を省略する。また、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
図1、図2に示すように、一対の第一糸条挟持部30,31と、一対の第二糸条挟持部34,35は、それぞれ並設され、第一糸条挟持部30,31が一方の集合トウ2aの終端部を、第二糸条挟持部34,35が他方の集合トウ2bの始端部を挟持するようになっている。
集合トウ2a,2bは、小トウ5a,5bをそれぞれ幅方向に分割可能に3個並列して束ねられたものである。この集合トウ2a,2bとしては、通常アクリル系繊維糸条が用いられる。このアクリル系繊維糸条は、アクリロニトリルを主成分として含有するアクリル繊維であれば特に限定されるものでないが、アクリロニトリル単位85%質量以上、より好ましくは90%以上を含有するアクリロニトリル系重合体を使用するアクリル繊維であることが好ましい。このアクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリルの単独重合体、又は共重合体、或いはこれらの重合体の混合重合体を使用し得る。さらに、アクリロニトリル系重合体はアクリロニトリルと共重合しうる単量体とアクリロニトリルの共重合成生成物であり、アクリロニトリルと共重合しうる単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の酸類、及びそれらの塩類や、マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸ソーダ、アリルスルホン酸ソーダ、β−スチレンスルホン酸ソーダ、メタアリルスルホン酸ソーダ等のスルホン基を含む重合性不飽和単量体、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のピリジン基を含む重合性不飽和単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
第一糸条挟持部30,31は、それぞれ二つの挟持部材30a,30b,31a,31bからなり、一方の挟持部材30a,31aが他方の挟持部材30b,31bに対して上下方向に当接離反可能に設けられている。これら第一糸条挟持部30,31は、一方の集合トウ2aの幅方向(図1における矢印A方向)に沿うように図示しないガイドによって移動可能に構成されている。また、一方の集合トウ2aの終端側(図1における左側)に設けられている第一糸条挟持部31は、その始端側(図1における右側)に設けられている第一糸条挟持部30と比較して高い(上方)位置に配置されている。
【0020】
第一糸条挟持部30,31間には、第一糸幅調整バー32と第二糸幅調整バー33とが設けられている。これら第一糸幅調整バー32、第二糸幅調整バー33は、第一糸条挟持部30,31間の一方の集合トウ2aを引張し、弛みをなくすと共に、一方の集合トウ2aのトウ幅WAを規制するためのものであって、第一糸条挟持部30,31と同期して一方の集合トウ2aの幅方向(図1における矢印A方向)に沿って移動可能に構成されている。
【0021】
図7に詳示するように、第一糸幅調整バー32と第二糸幅調整バー33は段付円柱状に形成されたものであって、それぞれ長手方向が一方の集合トウ2aの幅方向に沿うように配置されている。これら糸幅調整バー32,33は、長手方向の両端に形成された大径部40,40と、その大径部40,40間に設けられた小径部41とが一体成形されたものである。この小径部41の軸径は、大径部40の軸径と比較して小さく設定されている。一方の集合トウ2aは、この小径部41に配索され、大径部40,40によってトウ幅WAが規制されるようになっている。つまり、大径部40,40間の間隔がトウ幅WAとなる。
【0022】
尚、集合トウ2a,2bのトウ幅WA(図1参照)は、0.002mm/texから0.005mm/texであることが好ましい。
トウ幅WAが0.002mm/texより小さい場合には、集合トウ2a,2bを各糸条挟持部30,31,34,35に挟持させる際に捩れが生じやすい。このため、耐炎化工程で集合トウ2a,2bが捩れによりその厚みが厚くなり蓄熱しやすく、集合トウ2a,2bが破断や焼き切れを起こしやすくなるので好ましくない。また、トウ幅WAが0.005mm/texより大きい場合には、集合トウ2a,2bを開繊するのが困難となり、接続部(交絡部)でのムラが発生し、接続強度が低下するために好ましくない。
【0023】
図1、図2に示すように、第一糸幅調整バー32は、小径部41の外周面の一部が第一糸条挟持部30の他方の挟持部材30bの上端と同じ高さになるように配置されている。一方、第二糸幅調整バー33は、小径部41の外周面の一部が第一糸条挟持部31の他方の挟持部材31bの上端と同じ高さになるように配置されている。
したがって、一方の集合トウ2aの終端部は、第一糸条挟持部30から第一糸幅調整バー32までの間で略水平状態に、第一糸幅調整バー32から第二糸幅調整バー33までの間で斜め上方に向かって屈曲した状態に、第二糸幅調整バー33から第一糸条挟持部31までの間で再び略水平状態になるように配置され、第一糸条挟持部30,31によって挟持されている。
【0024】
一方、第二糸条挟持部34,35は、それぞれ二つの挟持部材34a,34b,35a,35bからなり、一方の挟持部材34a,35aが他方の挟持部材34b,35bに対して上下方向に当接離反可能に設けられている。また、他方の集合トウ2bの終端側(図1における左側)に設けられている第二糸条挟持部35が他方の集合トウ2bの始端側(図1における右側)に設けられている第二糸条挟持部34と比較して高い(上方)位置に配置されている。
【0025】
さらに、第二糸条挟持部34,35間にも第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37とが設けられている。これら第一糸幅調整バー36、第二糸幅調整バー37は、第二糸条挟持部34,35間の他方の集合トウ2bを引張し、弛みをなくすと共に、他方の集合トウ2bのトウ幅WAを規制するためのものであって、それぞれ他方の集合トウ2bの幅方向に沿うように設けられている。これら糸幅調整バー36,37の形状は前述した第一糸幅調整バー32及び第二糸幅調整バー33と略同一形状であるため、ここでの説明は省略する。
他方の集合トウ2bは、一方の集合トウ2aと同様に第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37の小径部41(図7参照)に配索され、大径部40,40によってトウ幅WAが規制されるようになっている。
【0026】
第一糸幅調整バー36は、小径部41の外周面の一部が第二糸条挟持部34の他方の挟持部材34bの上端と同じ高さになるように配置されている。一方、第二糸幅調整バー37は、小径部41の外周面の一部が第二糸条挟持部35の他方の挟持部材35bの上端と同じ高さになるように配置されている。
したがって、他方の集合トウ2bの始端部は、第二糸条挟持部34から第一糸幅調整バー36までの間で略水平状態に、第一糸幅調整バー36から第二糸幅調整バー37までの間で斜め上方に向かって屈曲した状態に、第二糸幅調整バー37から第二糸条挟持部35までの間で再び略水平状態になるように配索され、第二糸条挟持部34,35によって挟持されている。
【0027】
このように第一糸条挟持部30,31と第二糸条挟持部34,35とでそれぞれ挟持された一方の集合トウ2aと他方の集合トウ2bとは、第一糸条挟持部30,31が第二糸条挟持部34,35に向かって集合トウ2a,2bの幅方向に沿って移動する(図1における矢印A方向に向かって移動する)ことで重なり合うようになっている(図2参照)。
【0028】
ここで、図2に示すように、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部は、それぞれ第二糸幅調整バー33と第一糸幅調整バー36との間で重なり合うようになっている。また、一方の集合トウ2aの高低差(第一糸幅調整バー32と第二糸幅調整バー33との高低差)H1は、第二糸条挟持部34に干渉しない大きさに設定されている。さらに、他方の集合トウ2bの高低差(第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37との高低差)H2は、第一糸条挟持部31に干渉しない大きさに設定されている。
【0029】
第二糸条挟持部34,35間には、集合トウ2a,2bの重ね合わせた部分(第二糸幅調整バー33と第一糸幅調整バー36との間)を前後で挟持する一対の第三糸条挟持部38,39が設けられている。第三糸条挟持部38,39は、それぞれ二つの挟持部材38a,38b,39a,39bからなり、一方の挟持部材38a,39aが他方の挟持部材38b,39bに対して上下方向に当接離反可能に設けられている。これら第三糸条挟持部38,39のうち、他方の集合トウ2bの始端側にある第三糸条挟持部38は、集合トウ2a,2bの重ね合わされた部分を弛める方向に向かって(図2における左方向に向かって)移動可能に構成されている。
【0030】
第三糸条挟持部38,39間には、交絡装置7が集合トウ2a,2bの長手方向に沿うように移動可能に設けられている。
交絡装置7は、集合トウ2a,2bの重ね合わせた部分を保持して交絡させるためのものである。尚、以下の説明において、交絡装置7に保持されて交絡される集合トウ2a,2bの重ね合わされた部分を交絡部6という。
【0031】
図8は、交絡装置7に集合トウ2a,2bの交絡部6をセットした状態を示す、交絡装置7の縦断面図である。
同図に示すように、交絡装置7は、圧縮流体である圧縮空気等を噴射する第一ノズル8と第二ノズル9とを備え、各々第一ノズル8と第二ノズル9とが互いに当接離反可能に重なり合っている。集合トウ2a,2bの各交絡部6は、この第一ノズル8と第二ノズル9との間に分割された状態(小トウ5a,5b毎の状態)でそれぞれ収容されるようになっている。
第一ノズル8は、その内部に圧縮空気が導入される通路10が形成されている。第一ノズル8の一側面には、この通路10に連通する圧縮空気導入口12が設けられ、この圧縮空気導入口12が不図示の圧縮機に接続されている。
【0032】
第一ノズル8の第二ノズル9との合わせ面14には、各小トウ5a,5bを収容して保持する小トウ保持部15,15,15が小トウ5a,5bの個数に対応するように間隔をあけて三箇所形成されている。各小トウ保持部15は凹状であって、小トウ5a,5bの長手方向に沿うように形成されており、それぞれ側面16と底面17とを有している。
この底面17と通路10との間には複数の細孔18が幅方向に沿うように等間隔に一列で形成されている。これら細孔18から圧縮空気が第二ノズル9側に向かって噴射するようになっている。
【0033】
第二ノズル9は、第一ノズル8の各小トウ保持部15を覆うように第一ノズル8に重ね合わされている。第二ノズル9は、第一ノズル8と同様にその内部に圧縮空気が導入される通路11がそれぞれ形成されている。第二ノズル9の一側面には、この通路11に連通する圧縮空気導入口13が設けられ、これら圧縮空気導入口13が不図示の圧縮機に接続されている。
第二ノズル9の第一ノズル8との合わせ面19と通路11との間には複数の細孔20が第一ノズル8に形成されている細孔18に対応する部分に形成されている。これら細孔20から圧縮空気が第一ノズル8側に向かって噴射するようになっている。
【0034】
したがって、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部は、一方の小トウ5aの終端部と他方の小トウ5bの始端部とを各々重ね合わせた状態で小トウ保持部15に収容され、小トウ保持部15の側面16と底面17及び第二ノズル9の合わせ面19とで周囲を略矩形状に囲まれた状態で小トウ保持部15毎に各ノズル8,9によって扁平状に交絡される(糸継ぎされる)ようになっている。
【0035】
次に、この発明の第一実施形態の糸継ぎ装置1の糸条支持方法と糸継ぎ動作について図1〜図6に基づいて説明する。
まず、図1に示すように、一方の集合トウ2aのトウ幅WAを糸幅調整バー32,33によって引き揃え、第一糸条挟持部30,31によって弛みのない状態で挟持する。また、他方の集合トウ2bのトウ幅WAを糸幅調整バー36,37によって引き揃え、第二糸条挟持部34,35によって弛みのない状態で挟持する。尚、それぞれ小トウ5aの終端部と小トウ5bの始端部は、予め耐炎化処理されている。
【0036】
次に、第一糸条挟持部30,31及び糸幅調整バー32,33を一方の集合トウ2aを挟持したままの状態で、第二糸条挟持部34,35に向かって(図1における矢印A方向)移動する。そして、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bとを重ね合わせる(図2参照)。このとき、第三糸条挟持部38,39のそれぞれ挟持部材38a,38b,39a,39bは離反した状態になっており、また、交絡装置7の第一ノズル8と第二ノズル9もそれぞれ離反した状態になっているため、一方の集合トウ2aがこれら第三糸条挟持部38,39及び交絡装置7に干渉することがない。
【0037】
次に、図3に示すように、第三糸条挟持部38,39が集合トウ2a,2bの重なり合った部分(第二糸幅調整バー33と第一糸幅調整バー36との間)を前後で挟持する。また、交絡装置7に集合トウ2a,2bの各小トウ5a,5bをセットする。セットの方法としては、交絡装置7の第一ノズル8に形成されている小トウ保持部15にそれぞれ小トウ5a,5bを収容し、その後第二ノズル9を第一ノズル8に移動して固定する。
【0038】
第三糸条挟持部38,39によって集合トウ2a,2bを挟持し、交絡装置7に各小トウ5a,5bをセットした後、図4に示すように、第一糸条挟持部30,31の一方の挟持部材30a,31aが他方の挟持部材30b,31bに対して離反し、第一糸条挟持部30,31による一方の集合トウ2aの挟持状態を解除する。同様に、第二糸条挟持部34,35の一方の挟持部材34a,35aが他方の挟持部材34b、35bに対して離反し、第二糸条挟持部34,35による他方の集合トウ2bの挟持状態を解除する。
【0039】
そして、第三糸条挟持部38を小トウ5a,5bを挟持しつつ小トウ5a,5bを弛める方向(矢印B方向)に向かって移動し、交絡装置7の近傍に弛緩部分を形成する。このとき、挟持部3の移動距離(弛緩量)L1は1〜5mmであることが好ましい。尚、L1が1mm未満の場合では交絡が十分でなく糸継ぎ効果が得られない。一方、L1が5mmを超える場合では交絡させた交絡部の厚みが厚くなり、例えば、耐炎化工程中にその交絡部が蓄熱しやすくなり破断や焼き切れを起こすおそれがあるため、好ましくない。
【0040】
次に、交絡装置7の第一ノズル8と第二ノズル9から圧縮空気を噴射する(図8参照)。すると、交絡装置7に保持されている交絡部6が交絡され、弛緩部分がなくなる。
尚、圧縮空気のエア圧は、0.3〜0.6MPaであることが好ましい。エア圧が0.3MPaよりも低い場合は交絡が十分でないおそれがある。エア圧が0.6MPaを超える場合は糸切れが生じるおそれがある。また、圧縮空気の噴射時間は5秒以上が好ましい。
【0041】
次に、図5に示すように、交絡装置7を小トウ5a,5bの長手方向に沿って第三糸条挟持部38側(矢印C方向)に向かって移動する。そして、再び第三糸条挟持部38を小トウ5a,5bを弛める方向に向かって距離L1移動し、交絡装置7の近傍に弛緩部分を形成する。その後、再び交絡装置7の第一ノズル8、第二ノズル9から圧縮空気を噴射し、交絡装置7に保持されている交絡部6が交絡される。
【0042】
尚、交絡装置7の移動距離L2は、30〜70mmであることが望ましい。30mm未満では、交絡部6がそれぞれ重なってしまい、十分な糸継ぎ効果が得られないおそれがある。一方、交絡部6の相互の間隔が70mmを超えると必要以上に接続長さ(糸継ぎ長さ)を延ばし、接続部の接続低下、作業性の低下を伴い、接続するための装置(糸継ぎ装置1)が大きくなるため好ましくない。
【0043】
このように、交絡装置7を小トウ5a,5bの長手方向に沿って移動し、それに応じて第三糸条挟持部38を小トウ5a,5bを弛める方向に向かって移動して各小トウ5a,5bを交絡させる作業を複数回(この第一実施形態においては三回)繰り返し行う(図6参照)。尚、この交絡作業を順次三回以上繰り返し行うことが好ましい。
図6に示すように、各小トウ5a,5bの重ね合わせた部分を交絡装置7によって扁平状に交絡させた後、一方の集合トウ2aの終端部分(第一糸条挟持部31近傍)をハサミ等で切断する。また、他方の集合トウ2bの始端部分(第二糸条挟持部34近傍)もハサミ等で切断する。そして、第三糸条挟持部38,39を解除し、糸継ぎ装置1から交絡された集合トウ2a,2bを取り出し、糸継ぎ作業(交絡作業)を終了する。
【実施例】
【0044】
次に、この発明の第一実施形態の実施例と比較例を具体的に示して糸条支持方法と糸継ぎを説明する。尚、本発明の実施例は以下に記載された事項によって限定されるものではない。
(実施例)
まず、単糸繊度1.2dTex/フィラメント、フィラメント数50000のアクリル繊維(小トウ)を三本集合させた集合トウ(フィラメント数150000)である炭素繊維前躯体を二つ用意し、一方の炭素繊維前躯体の終端部と、他方の炭素繊維前躯体の始端部とを耐炎化処理として240℃の熱風が循環している炉内で6.5m/texの張力下で70分処理を行い、密度1.36g/cm3とした。
【0045】
次に、一方の炭素繊維前躯体において、糸幅調整バー32,33によって終端部の各々小トウのトウ幅が17.5mmになるように引き揃え、第一糸条挟持部30,31によって弛みのないように挟持する。また、他方の炭素繊維前躯体において、糸幅調整バー36,37によって始端部の各々小トウのトウ幅が18mmになるように引き揃え、第二糸条挟持部34,35によって弛みのないように挟持する。
【0046】
そして、各々炭素繊維前躯体を重ね合わせ、第三糸条挟持部38,39によってその炭素繊維前躯体の重ね合わせた部分を前後で挟持した。
尚、この実施例においては、小トウのトウ幅をそれぞれ17.5mm、18mmとして、重ね合わせるそれぞれの小トウのトウ幅に多少の誤差(0.5mmの誤差)がある場合について実施し、その誤差によって問題が発生するかどうかを確認したが、当然のことながらそれぞれのトウ幅は同等であることが望ましい。
【0047】
次に、交絡装置7の小トウ保持部15(図8参照)に小トウをセットし、第三糸条挟持部38を移動させ、小トウを弛緩させた。尚、挟持部3の移動距離(弛緩量)L1は2mmとした。次に、第一ノズル8、第二ノズル9より0.5MPaの圧縮空気を5秒噴射させ、一方の炭素繊維前躯体の終端部と他方の炭素繊維前躯体の始端部とを扁平状に交絡させた。これを繰り返し五回行い、小トウを五箇所交絡させた。尚、交絡装置7の一回毎の移動距離L2は60mmとした。
【0048】
このように糸継ぎ(交絡)した炭素繊維前躯体を227〜248℃の熱風が循環している耐炎化炉にて工程張力が24.5mN/texで60分間の耐炎化処理し、300〜600℃、1150〜1250℃の温度分布を有する窒素雰囲気中で5mN/tex、16mN/texで各1.5分間の炭素化処理を行い、工程通過性を確認した。その結果、それぞれ重なり合う小トウのトウ幅に多少の誤差が合った場合であっても、糸の切断等はなかった。
【0049】
(比較例1)
実施例に対して、一方の炭素繊維前躯体及び他方の炭素繊維前躯体の各々小トウのトウ幅を規制せずにそれぞれ炭素繊維前躯体同士を重ね合わせ、それ以外の工程は実施例と同様の条件とした。
その結果、それぞれ炭素繊維前躯体同士を重ね合わせた際のトウ幅の差が3mmとなり、その後の工程である耐炎化炉に炭素繊維前躯体を給糸する給糸工程と、耐炎化炉にて炭素繊維前躯体を耐炎化処理する耐炎化工程との間で炭素繊維前躯体の捩れが発生し、その捩れ部分が蓄熱したため、耐炎化工程で糸が切断した。
【0050】
したがって、上述の第一実施形態によれば、一方の集合トウ2aの終端部を第一糸条挟持部30,31で挟持し、他方の集合トウ2bの始端部を第二糸条挟持部34,35で挟持し、そして、第一糸条挟持部30,31が集合トウ2a,2bの幅方向に沿うように第二糸条挟持部34,35に向かって移動するため、集合トウ2a,2b同士を重ね合わせることができる。よって、集合トウ2a,2bの小トウ5a,5bのフィラメント数が48000本以上の太い炭素繊維前躯体であっても、それぞれ集合トウ2a,2bのトウ幅を均一に引き揃えて重ね合わせることが可能になる。
【0051】
また、第一糸条挟持部30,31間、第二糸条挟持部34,35間にそれぞれ設けられた第一糸幅調整バー32,36、第二糸幅調整バー33,37によって、集合トウ2a,2bのトウ幅をそれぞれ均一、且つ一定に保ちつつ交絡させることが可能になる。このため、例えば、耐炎化炉に炭素繊維前躯体を給糸する給糸工程と、耐炎化炉にて炭素繊維前躯体を耐炎化処理する耐炎化工程との間で小トウが捩れることを防止することができる。
【0052】
さらに、第三糸条挟持部38,39によって、集合トウ2a,2bの重ね合わせた部分を前後で挟持するため、重ね合わせた集合トウ2a,2bを挟持しなおす必要がなくなり、その重ね合わせた部分がずれるおそれがない。
そして、第三糸条挟持部38が移動することによって交絡装置7の近傍に弛緩部分を形成し、その弛緩部分の形成毎に交絡装置7が交絡部6を交絡させるため、均一な交絡部6を形成することができる。よって、耐炎化工程中の交絡部6の蓄熱を防止し、糸切れを防止することができる。
【0053】
また、小トウ保持部15によって確実に小トウ5a,5b毎に交絡することができるため、複数本に分割可能な糸(例えば、本実施形態の集合トウ2a,2b)の糸継ぎ作業を迅速化させることができ、分割可能な糸での接続後(交絡後)の糸の長さの不揃いをなくすことができる。
さらに、予め一方の小トウ5aの終端部と他方の小トウ5bの始端部を耐炎化処理し、その後糸継ぎ装置1によって交絡させることで確実に耐炎化工程で破断や糸切れを起こすことなく耐炎化工程通過を可能にすることができる。よって、耐炎化処理温度を低下させる必要がなくなる。
【0054】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図7、図8を援用し、図9〜図12に基づいて説明する。尚、第一実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。
この第二実施形態において、糸継ぎ装置60は、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部とを挟持する糸条支持装置を備え、その主要部を成す第一糸条挟持部30,31、第二糸条挟持部34,35が設けられている点、交絡装置7は第一ノズル8と第二ノズル9とを備えたものである点等の基本的構成は、前記第一実施形態と同様である。また、第一実施形態と同様に、図示都合上糸条支持装置は特徴部分である第一糸条挟持部30,31、第二糸条挟持部34,35以外の部分については図示を省略する。
【0055】
図9に示すように、第一糸条挟持部30,31と第二糸条挟持部34,35は、互いに上下方向に配置され、各々連結可能に設けられている。
第一糸条挟持部30,31間には、第一糸幅調整バー32と第二糸幅調整バー33とが設けられている。これら第一糸幅調整バー32、第二糸幅調整バー33は、第一糸条挟持部30,31よりも高い(上方)位置に配置されている。したがって、一方の集合トウ2aの終端部は、第一糸条挟持部30から第一糸幅調整バー32までの間で斜め上方に向かって屈曲した状態に、第一糸幅調整バー32から第二糸幅調整バー33までの間で略水平状態に、第二糸幅調整バー33から第一糸条挟持部31までの間で斜め下方に向かって屈曲した状態に配索され、第一糸条挟持部30,31によって挟持されている。
【0056】
一方、第二糸条挟持部34,35間にも第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37とが設けられている。これら第一糸幅調整バー36と第二糸幅調整バー37は、第二糸条挟持部34,35よりも低い(下方)の位置に配置されている。したがって、他方の集合トウ2bの始端部は、第二糸条挟持部34から第一糸幅調整バー36までの間で斜め下方に向かって屈曲した状態に、第一糸幅調整バー36から第二糸幅調整バー37までの間で略水平状態に、第二糸幅調整バー37から第二糸条挟持部35までの間で斜め上方に向かって屈曲した状態に配置され、第二糸条挟持部34,35によって挟持されている。
【0057】
また、第二糸条挟持部34,35及び糸幅調整バー36,37は、第一糸条挟持部30,31及び糸幅調整バー32,33にそれぞれ対応するように同間隔に配置されている。さらに、第二糸条挟持部34,35及び糸幅調整バー36,37は、互いに同期して上下方向に沿うように図示しないガイドによって移動可能に設けられている。さらに、第一糸条挟持部30,31と第二糸条挟持部34,35との連結時には各々第一糸幅調整バー32,36と第二糸幅調整バー33,37も互いに連結するようになっている。
【0058】
このように構成することで、図10に示すように、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bの始端部とが、それぞれ糸条挟持部30,31,34,35同士の干渉なく、第一糸幅調整バー32,36と第二糸幅調整バー33,37との間で重ね合わさるようになっている。尚、第一糸条挟持部30,31と第一糸幅調整バー32及び第二糸幅調整バー33とによって形成された一方の集合トウ2aの高低差H3、並びに第二糸条挟持部34,35と第一糸幅調整バー36及び第二糸幅調整バー37とによって形成された他方の集合トウ2bの高低差H4は、それぞれ集合トウ2a,2b同士が重なり合い、且つそれぞれ糸条挟持部30,31,34,35が連結可能な高低差に設定されている。
【0059】
それぞれ第一糸幅調製バー32,36と第二糸幅調製バー33,37との間には、交絡装置7が集合トウ2a,2bの長手方向に沿うように三箇所等間隔に設けられ、第一ノズル8が一方の集合トウ2aの下方に、第二ノズル9が他方の集合トウ2bの上方にそれぞれ対向配置されている。尚、各交絡装置7,7,7の間隔L3は、30〜70mmであることが望ましい。
各交絡装置7,7,7の近傍には、弛緩部21,21,21が設けられている。この弛緩部21は、各交絡装置7毎に集合トウ2a,2bの各交絡部6,6,6近傍に弛緩部分を形成するためのものであって、それぞれ断面略矩形のベース部材22と重錘23とで構成され、重錘23がベース部材22に対して上下方向に着脱自在になっている。
【0060】
図11に示すように、連結された第一糸条挟持部30、第二糸条挟持部34及び第一糸幅調整バー32,36は、弛緩部21,21,21によって形成される弛緩部分の弛緩量に基づいてそれぞれ同期して交絡装置7側(図11における矢印G方向)に向かって移動可能に構成されている。尚、連結された第一糸条挟持部30、第二糸条挟持部34及び第一糸幅調整バー32,36の移動距離L4は、交絡部一つあたり1〜5mmが好ましい。この第二実施形態においては、交絡装置7によって交絡させる箇所が三箇所である(交絡部が三つである)ため、移動距離L4は、3〜15mmであることが好ましい。
【0061】
次に、この発明の第二実施形態の糸継ぎ装置60の糸条支持方法と糸継ぎ動作について図9〜図12に基づいて説明する。
まず、図9に示すように、一方の集合トウ2aのトウ幅WAを糸調整バー32によって引き揃え、第一糸条挟持部30,31によって弛みのない状態で挟持する。また、他方の集合トウ2bのトウ幅WAを糸調整バー36によって引き揃え、第二糸条挟持部34,35によって弛みのない状態で挟持する。尚、それぞれ小トウ5aの終端部と小トウ5bの始端部は、予め耐炎化処理されている。
【0062】
次に、第二糸条挟持部34,35及び糸幅調整バー36,37を他方の集合トウ2bを挟持したままの状態で、第一糸条挟持部30,31に向かって(図9における矢印F方向)移動する。そして、一方の集合トウ2aの終端部と他方の集合トウ2bとを重ね合わせる(図10参照)。また、交絡装置7に集合トウ2a,2bの各小トウ5a,5bをセットする。
【0063】
次に、図11に示すように、各交絡装置7,7,7に隣接して設けられている弛緩部21,21,21によって各交絡部6,6,6の近傍にそれぞれ弛緩部分を形成する。具体的には、弛緩部21,21,21の重錘23を用いて各小トウ5a,5bをその重錘23の重みでベース部材22の上面まで弛ませる。このとき、連結されている第一糸条挟持部30、第二糸条挟持部34及び第一糸幅調整バー32,36が各交絡部6,6,6の弛緩量に基づいて交絡装置7側(矢印G方向)に向かってそれぞれ同期して移動する。
【0064】
次に、交絡装置7,7,7のそれぞれに対応する弛緩部21,21,21の重錘23を順次外し、それに対応する交絡装置7の各ノズル8,9から圧縮空気を噴射する(図8参照)。すると、各交絡装置7,7,7内に保持されている交絡部6,6,6が交絡され、弛緩部分がなくなる(図12参照)。
図12に示すように、各小トウ5a,5bの交絡部6,6,6を各交絡装置7,7,7によって扁平状に交絡させた後、一方の集合トウ2aの終端部分(第一糸条挟持部31近傍)をハサミ等で切断する。また、他方の集合トウ2bの始端部分(第二糸条挟持部34近傍)もハサミ等で切断する。そして、第一糸条挟持部30と第二糸条挟持部35を解除し、糸継ぎ装置60から交絡された集合トウ2a,2bを取り出し、糸継ぎ作業(交絡作業)を終了する。
【0065】
したがって、上述の第に実施形態によれば、前述した第一実施形態と同様の効果に加え、第一糸条挟持部30,31と第二糸条挟持部34,35とが連結するため、集合トウ2a,2bの重ね合わさった部分を前後で挟持する部品を別途設ける必要がなくなる。よって、糸継ぎ装置60をさらに小型化することが可能になる。
【0066】
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
また、上述した実施形態では、第一糸幅調整バー32,36及び第二糸幅調整バー33,37は、長手方向の両端に形成された大径部40,40と、その大径部40,40間に設けられた小径部41とが一体成形されたものである場合について説明したが、大径部40と小径部41とが別体で構成されていてもよいし、小トウ毎にトウ幅を規制できるように、小径部41上に大径部40を小トウの個数に応じて等間隔に複数個設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一実施形態における糸条支持装置を備えた糸継ぎ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態における一方の集合トウと他方の集合トウとを重ね合わせた状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第一実施形態における第三糸条挟持部が各集合トウを重ね合わせ他部分を前後で挟持している状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第一実施形態における交絡作業の説明図である。
【図5】本発明の第一実施形態における交絡作業の説明図である。
【図6】本発明の第一実施形態における交絡作業の説明図である。
【図7】本発明の実施形態における糸幅調整バーを示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態における交絡装置の縦断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態における糸条支持装置を備えた糸継ぎ装置の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第二実施形態における一方の集合トウと他方の集合トウとを重ね合わせた状態を示す側面図である。
【図11】本発明の第二実施形態における交絡作業の説明図である。
【図12】本発明の第二実施形態における交絡作業の説明図である。
【図13】従来の糸継ぎ装置を用いて集合トウの小トウを交絡させた場合の交絡部分の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…糸継ぎ装置
2a…一方の集合トウ(繊維糸条)
2b…他方の集合トウ(繊維糸条)
5a…一方の小トウ
5b…他方の小トウ
6…交絡部
7…交絡装置
30,31…第一糸条挟持部
32,36…第一糸幅調整バー(糸幅調整バー)
33,37…第二糸幅調整バー(糸幅調整バー)
34,35…第二糸条挟持部
38,39…第三糸条挟持部
40…大径部
41…小径部
60…糸継ぎ装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交絡装置によって一方の繊維糸条と他方の繊維糸条とを交絡させる際に用いられる糸条支持装置であって、前記一方の繊維糸条の一部を挟持する一対の第一糸条挟持部と、前記他方の繊維糸条の一部を挟持する一対の第二糸条挟持部とを前記一方の繊維糸条の一部と前記他方の繊維糸条の一部とが離れた状態から重なり合うべく互いに接近離反可能に設けたことを特徴とする糸条支持装置。
【請求項2】
前記第一糸条挟持部間及び前記第二糸条挟持部間には、前記一方の繊維糸条の幅と、前記他方の繊維糸条の幅を規制する糸幅調整バーがそれぞれ設けられ、該糸幅調整バーはそれぞれ対応する前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部と同期して移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の糸条支持装置。
【請求項3】
前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部の何れか一方、又は前記第一糸条挟持部と前記第二糸条挟持部との双方を、前記繊維糸条の幅方向に沿って移動して互いに接近させ、各々繊維糸条の一部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を前後で挟持する一対の第三糸条挟持部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の糸条支持装置。
【請求項4】
前記第三糸条挟持部の一方は、前記繊維糸条を弛める方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の糸条支持装置。
【請求項5】
前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部の何れか一方、又は前記第一糸条挟持部と前記第二糸条挟持部との双方を、上下方向に沿って移動し、互いに連結可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の糸条支持装置。
【請求項6】
連結された一方の前記第一糸条挟持部と一方の前記第二糸条挟持部は、前記繊維糸条を弛める方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の糸条支持装置。
【請求項7】
前記繊維糸条は複数の小トウに幅方向に分割可能に束ねられた集合トウであって、前記第一糸条挟持部は前記小トウのうち一方の小トウの終端部を挟持し、前記第二糸条挟持部は前記小トウのうち他方の小トウの始端部を挟持し、これら第一糸条挟持部及び第二糸条挟持部によって前記一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを重ね合わせることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の糸条支持装置。
【請求項8】
前記一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを予め耐炎化処理することを特徴とする請求項7に記載の糸条支持装置。
【請求項9】
交絡装置によって一方の繊維糸条と、他方の繊維糸条とを交絡させる際に用いられる糸条支持方法であって、前記一方の繊維糸条の一部を一対の第一糸条挟持部で挟持し、前記他方の繊維糸条の一部を一対の第二糸条挟持部で挟持し、これら第一糸条挟持部と第二糸条挟持部とを互いに接近させて前記一方の繊維糸条の一部と前記他方の繊維糸条の一部とを重ね合わせることを特徴とする糸条支持方法。
【請求項1】
交絡装置によって一方の繊維糸条と他方の繊維糸条とを交絡させる際に用いられる糸条支持装置であって、前記一方の繊維糸条の一部を挟持する一対の第一糸条挟持部と、前記他方の繊維糸条の一部を挟持する一対の第二糸条挟持部とを前記一方の繊維糸条の一部と前記他方の繊維糸条の一部とが離れた状態から重なり合うべく互いに接近離反可能に設けたことを特徴とする糸条支持装置。
【請求項2】
前記第一糸条挟持部間及び前記第二糸条挟持部間には、前記一方の繊維糸条の幅と、前記他方の繊維糸条の幅を規制する糸幅調整バーがそれぞれ設けられ、該糸幅調整バーはそれぞれ対応する前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部と同期して移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の糸条支持装置。
【請求項3】
前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部の何れか一方、又は前記第一糸条挟持部と前記第二糸条挟持部との双方を、前記繊維糸条の幅方向に沿って移動して互いに接近させ、各々繊維糸条の一部を重ね合わせ、この重ね合わせた部分を前後で挟持する一対の第三糸条挟持部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の糸条支持装置。
【請求項4】
前記第三糸条挟持部の一方は、前記繊維糸条を弛める方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の糸条支持装置。
【請求項5】
前記第一糸条挟持部若しくは前記第二糸条挟持部の何れか一方、又は前記第一糸条挟持部と前記第二糸条挟持部との双方を、上下方向に沿って移動し、互いに連結可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の糸条支持装置。
【請求項6】
連結された一方の前記第一糸条挟持部と一方の前記第二糸条挟持部は、前記繊維糸条を弛める方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の糸条支持装置。
【請求項7】
前記繊維糸条は複数の小トウに幅方向に分割可能に束ねられた集合トウであって、前記第一糸条挟持部は前記小トウのうち一方の小トウの終端部を挟持し、前記第二糸条挟持部は前記小トウのうち他方の小トウの始端部を挟持し、これら第一糸条挟持部及び第二糸条挟持部によって前記一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを重ね合わせることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の糸条支持装置。
【請求項8】
前記一方の小トウの終端部と前記他方の小トウの始端部とを予め耐炎化処理することを特徴とする請求項7に記載の糸条支持装置。
【請求項9】
交絡装置によって一方の繊維糸条と、他方の繊維糸条とを交絡させる際に用いられる糸条支持方法であって、前記一方の繊維糸条の一部を一対の第一糸条挟持部で挟持し、前記他方の繊維糸条の一部を一対の第二糸条挟持部で挟持し、これら第一糸条挟持部と第二糸条挟持部とを互いに接近させて前記一方の繊維糸条の一部と前記他方の繊維糸条の一部とを重ね合わせることを特徴とする糸条支持方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−95232(P2008−95232A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277494(P2006−277494)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
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