説明

糸条束集積方法および集積装置

【課題】直線状の糸条束を集積するにあたって、連続的に供給される糸条を所定の長さに切断し、糸条集積溝内に降下させる際に、糸乱れを発生させることなく整然と積み重ね、真っ直ぐな糸条束を製造するとともに、糸束本数や糸束長さが異なる品種への対応が容易で生産性が高く、品質に対する信頼性の高い糸条束集積方法及び集積装置を提供する。
【解決手段】糸条4を繰り出し、糸条束18に集積する糸条束集積方法において、糸条繰り出し機構10の糸条挟持手段11で前記糸条4を挟持して繰り出し、糸条移載機構12の一対の糸条把持手段13a,13bで前記糸条4を所定の間隔に把持した状態で、前記糸条4の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段13a,13bの外側で前記糸条4を切断し、かつ、前記一対の糸条把持手段13a,13bの内側または外側の前記糸条4を加熱手段15で溶着し束ね、前記糸条4を収容する、という一連の操作を繰り返すことにより所定数の糸条束18に集積することを特徴とする糸条束集積方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条を所定長さの糸条束に集積するための糸条束集積方法および集積装置に関するものである。特に飲料水に用いられる中空糸濾過膜用の中空糸濾過膜集合体(以下、糸条束という)を形成する糸条束集積方法及び集積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水器用濾過膜等の中空糸束は、連続した中空糸を一定の長さに切断し、所定本数の束にして作られている。
【0003】
具体的には、例えば図4に示すように、連続して生産される中空糸1をリール状のカセ枠2にカセ取りして太い環状の糸条束3を作り、これを所定長さに切断して直線状の糸条束を得る方法である(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、カセのコーナー部に巻かれた糸条束が屈曲し、製品の品質を低下させる場合があることから、コーナー部分に除去装置もしくは後処理工程における修正操作を必要としていた。そこでかかる生産性の低下を改善するために、連続して直線状に供給される糸条を屈曲させることなく、一定長さに切断し束ねる方法が提案されている。
【0005】
具体的には、糸条の先端部を把持して、糸条を横方向に繰り出し、繰り出した糸条を所定の長さにて切断してから糸条束集積部材に自由落下させ、糸条束を集積する方法である(特許文献2参照)。
【0006】
この方法によれば、多角形のカセに巻き取る必要がなく、連続した糸条を屈曲させることなく所定本数毎に集積することが可能であるので、屑となる糸条を低減することができ、さらに自動化により生産性を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、上記の糸条束集積方法においては、所定長に切断した糸条を自由落下させて集積させるため、自由落下の際に中空糸膜がバラバラになり、整然とした糸条束を形成することができず、品質上の問題があった。
【0008】
すなわち、図5に示すように、繰り出しを一時停止し、糸条4を一方の挟持部材5のクランプ6aで挟持した後、繰り出した糸条4の途中をカッター7で切断し、他方の挟持部材5のクランプ6bを開いて糸条4の先端部を放している。したがって、所定の長さに切断された糸条4は自重により糸条束集積部材8の集積溝9に降下させているので糸乱れを生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−189305号公報
【特許文献2】特許第4148541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、以上の問題点に鑑み、直線状の糸条束を集積するにあたって、連続的に供給される糸条を所定の長さに切断し、糸条集積溝内に降下させる際に、糸乱れを発生させることなく整然と積み重ね、真っ直ぐな糸条束を製造するとともに、糸束本数や糸束長さが異なる品種への対応が容易で生産性が高く、品質に対する信頼性の高い糸条束集積方法及び集積装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を解決するために本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)糸条を繰り出し、糸条束に集積する糸条束集積方法において、糸条繰り出し機構の糸条挟持手段で前記糸条を挟持して繰り出し、糸条移載機構の一対の糸条把持手段で前記糸条を所定の間隔に把持した状態で、前記糸条の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段の外側で前記糸条を切断し、かつ、前記一対の糸条把持手段の内側または外側の前記糸条を加熱手段で溶着し束ね、前記糸条を収容する、という一連の操作を繰り返すことにより所定数の糸条束に集積することを特徴とする糸条束集積方法。
(2)前記糸条を切断した後、前記糸条移載機構を前記糸条移載機構の軸周りに回転させることにより切断された前記糸条を溶着部へ移動させ、前記糸条を溶着し束ね、さらに前記糸条移載機構を前記糸条移載機構の軸周りに回転させることにより糸条束集積部材に前記糸条を収容することを特徴とする請求項1に記載の糸条束集積方法。
(3)糸条を繰り出し、糸条束に集積する糸条束集積装置において、前記糸条を挟持して繰り出す糸条繰り出し機構と、糸条把持手段を具備する糸条移載機構で構成し、一対の前記糸条把持手段で把持された前記糸条を前記糸条の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段の外側で前記糸条を切断する繰り出し糸切断手段と、切断された前記糸条の端部を溶着する加熱手段と、前記糸条を収容し集積する糸条束集積部材を設けたことを特徴とする糸条束集積装置。
(4)前記糸条把持手段を具備する前記糸条移載機構が、前記糸条移載機構の軸周りに回転駆動するよう構成されることを特徴とする請求項3に記載の糸条束集積装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記の構成とすることにより以下の優れた効果を奏することができる。すなわち、
請求項1に記載の発明によれば、糸条を繰り出し、糸条束に集積する糸条束集積方法において、糸条繰り出し機構の糸条挟持手段で前記糸条を挟持して繰り出し、糸条移載機構の一対の糸条把持手段で前記糸条を所定の間隔に把持した状態で、前記糸条の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段の外側で前記糸条を切断し、かつ、前記一対の糸条把持手段の内側または外側の前記糸条を加熱手段で溶着し束ね、前記糸条を収容する、という一連の操作を繰り返すことにより所定数の糸条束に集積することにより、糸乱れがなく整然と積み重ねられた真っ直ぐで品質の高い糸条束を得ることができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記糸条を切断した後、前記糸条移載機構を前記糸条移載機構の軸周りに回転させることにより切断された前記糸条を溶着部へ移動させ、前記糸条を溶着し束ね、さらに前記糸条移載機構を前記糸条移載機構の軸周りに回転させることにより糸条束集積部材に前記糸条を収容することにより、作業工程が分割され複数の作業を同時に進めることができるので、タクトタイムが短縮され生産効率を高めることができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、糸条を繰り出し、糸条束に集積する糸条束集積装置において、前記糸条を挟持して繰り出す糸条繰り出し機構と、糸条把持手段を具備する糸条移載機構で構成し、一対の前記糸条把持手段で把持された前記糸条を前記糸条の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段の外側で前記糸条を切断する繰り出し糸切断手段と、切断された前記糸条の端部を溶着する加熱手段と、前記糸条を収容し集積する糸条束集積部材を設けたことにより、糸乱れがなく整然と積み重ねられた真っ直ぐで品質の高い糸条束を得ることができる糸条束集積装置が実現できる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記糸条把持手段を具備する前記糸条移載機構が、前記糸条移載機構の軸周りに回転駆動するよう構成されることにより、作業工程が分割され複数の作業を同時に進めることができるので、タクトタイムが短縮され生産効率を高めることができる糸条束集積装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる糸条束集積装置の一例を示す斜視図である。
【図2(A)】本発明にかかる糸条溶着部の一例(離間時)を示す斜視図である。
【図2(B)】本発明にかかる糸条溶着部の一例(圧着時)を示す斜視図である。
【図3(A)】本発明にかかる糸条溶着部の糸条受け台の一例を示す斜視図である。
【図3(B)】本発明にかかる糸条溶着部の糸条受け台の一例を示す斜視図である。
【図4】所定本数になるまで中空糸を巻き取る従来技術の六角カセの正面図である。
【図5】従来技術の糸条束集積装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の例を中空糸濾過膜用の糸条束集積装置に適用した場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。中空糸濾過膜とは、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂等を原料とした濾過性能を有する多孔質膜である。
【0018】
図1は本発明にかかる糸条束集積装置の一例を示す斜視図である。糸条束集積装置の左側より糸条が供給される。
【0019】
図2(A)及び図2(B)は本発明にかかる糸条溶着部の一例を示す斜視図である。
【0020】
図3(A)及び図3(B)は本発明にかかる糸条溶着部の糸条受け台の一例を示す斜視図である。
【0021】
図4は所定本数になるまで中空糸を巻き取る従来技術の六角カセの正面図である。
【0022】
図5は従来技術の糸条束集積装置の概略構成を示す斜視図である。
【0023】
本発明の糸条束集積方法の好ましい一態様例は、糸条を繰り出し、糸条束に集積する糸条束集積方法において、糸条繰り出し機構の糸条挟持手段で前記糸条を挟持して繰り出し、糸条移載機構の一対の糸条把持手段で前記糸条を所定の間隔に把持した状態で、前記糸条の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段の外側で前記糸条を切断し、かつ、前記一対の糸条把持手段の内側または外側の前記糸条を加熱手段で溶着し束ね、前記糸条を収容する、という一連の操作を繰り返すことにより所定数の糸条束に集積することを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の糸条束集積装置の好ましい一態様例は、糸条を繰り出し、糸条束に集積する糸条束集積装置において、前記糸条を挟持して繰り出す糸条繰り出し機構と、糸条把持手段を具備する糸条移載機構で構成し、一対の前記糸条把持手段で把持された前記糸条を前記糸条の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段の外側で前記糸条を切断する繰り出し糸切断手段と、切断された前記糸条の端部を溶着する加熱手段と、前記糸条を収容し集積する糸条束集積部材を設けたことを特徴とするものである。
【0025】
図1に示す実施態様例では、左側より糸条4が供給されるよう糸条束集積装置が配置されており、糸条繰り出し機構10の糸条挟持手段11で前記糸条4を挟持して繰り出し、糸条移載機構12の一対の糸条把持手段13a,13bで前記糸条4を所定の間隔に把持した状態で、前記糸条4の繰り出し側であって前記糸条把持手段13aの外側で前記糸条4を繰り出し糸切断手段14により切断し、かつ、前記一対の糸条把持手段13a,13bの外側の前記糸条4を加熱手段15で溶着し束ね、糸条束集積部材16の集積溝17内に収容し、前記糸条4の収容動作を繰り返すことにより所定数の糸条束18を集積するよう構成される。なお、加熱手段15は、前記一対の糸条把持手段13a,13bの内側でも好ましい。
【0026】
ここで、前記糸条繰り出し機構10には駆動手段として位置決めが容易なロボシリンダを用いれば良いが、圧空を駆動源とするリニアアクチュエーター等を用いても良い。
【0027】
前記糸条4の繰り出しに用いる前記糸条挟持手段11及び前記糸条把持手段13a,13bには、圧空を駆動源とするエアチャックを用いるのが装置をコンパクトにまとめるのに好ましく、チャック先端のツメには前記糸条4を傷付けず耐摩耗性にも優れるウレタンゴムを焼き付けたものを用いるのが好ましい。
【0028】
また、前記繰り出し糸切断手段14には、圧空を駆動源として刃の開閉を行うことができるエアハサミを用いるのが装置をコンパクトにまとめるのに好ましい。
【0029】
さらに、前記糸条移載機構12の一対の糸条把持手段13a,13bで前記糸条4が所定の間隔に把持された後にも連続して繰り出される前記糸条4の弛みを吸収するためアキューム機構20が設けられている。
【0030】
本発明の糸条束集積装置は、好ましい一態様例として、前記糸条把持手段を具備する前記糸条移載機構が、前記糸条移載機構の軸周りに回転駆動するよう構成されることを特徴とする。同時に、好ましい一態様例として、前記糸条を切断した後、前記糸条移載機構を前記糸条移載機構の軸周りに回転させることにより切断された前記糸条を溶着部へ移動させ、前記糸条を溶着し束ね、さらに前記糸条移載機構を前記糸条移載機構の軸周りに回転させることにより糸条束集積部材に前記糸条を収容することを特徴とする。
【0031】
前記糸条移載機構12は4インデックスのターレット構造とし、ロータリーアクチュエーターを用いて90°位相で前記糸条移載機構12の軸周りに回転駆動するように構成されるが、既製のインデキシングドライブ機構などを用いても良く、位相角度も90°に限定されない。すなわち間欠的に回転駆動することにより移動した各ポジションで一定時間内に各操作が終了するよう構成される。また、前記糸条把持手段13a,13bには、受け取った前記糸条4を前記加熱手段15に対向する糸条受け台23に近接するため、エアシリンダ等の直動駆動手段24を備える。さらに、前記糸条把持手段13a,13bは切断される前記糸条の幅変更に対応できるように位置調整機構を備えるが、任意の間隔に調整が可能なスライド機構が好ましい。
【0032】
また、前記糸条移載機構12を構成するために、前記糸条繰り出し機構10に付設される糸条挟持手段11は、前記糸条移載機構12の一対の糸条把持手段13a,13bに対し前記糸条4を受け渡した後、続いて繰り出される前記糸条4の先端部を掴んで待機している糸条挟持手段21の位置まで戻る際に、前記糸条把持手段13a,13bと前記糸条挟持手段21と干渉することがないように退避できるようエアシリンダ等の直動駆動手段22を備える。
【0033】
また、図2(A)及び図2(B)に示す糸条溶着部の前記加熱手段15は熱伝導性の高いアルミニウム等の金属からなるヒーターブロック25にヒーター26を取り付けて構成されるが、前記ヒーター26は前記ヒーターブロック25に差し込み効率よく加熱可能なカートリッジヒーターが好ましい。また、前記ヒーター26の設定条件は生産効率を高めるためにも2秒以内に加熱が終了するように前記糸条4の融点よりも10℃から30℃高めに設定するのが好ましい。例えばポリエチレンの場合、融点は136℃なので146℃から166℃の範囲とすることが好ましい。
【0034】
前記糸条受け台23は前記糸条4を収束し溶着後の糸外れを防止するためのV型溝27と、溶着後の前記糸条4の離型性を高めるための離型シート28で構成される。前記離型シート28の材質はシリコンゴムやフッ素ゴムが好ましい。ここで、図2(A)は前記ヒーターブロック25が前記糸条受け台23から離間した状態、図2(B)は前記ヒーターブロック25が前記糸条受け台23へ圧着した状態を示す。さらに、図3(A)及び図3(B)に示すように前記糸条受け台23の前記V型溝27と前記離型シート28で構成される有効溝幅(s)を変えることで前記糸条4は糸条数に応じた最適な溶着状態が得られる。
【0035】
また、前記糸条束集積部材16から前記糸条束18を排出するため、前記糸条束集積部材16を搬送する糸条束搬送機構19を設けても良い。
【0036】
前記糸条束集積部材16の前記集積溝17は、前記糸条束18の断面が略円形状に集積されるよう、U字型に形成されるのが好ましい。ここで、前記糸条搬送機構19は、連続して前記糸条束集積部材16が搬送されるように、回転移動するコンベア方式とすることや、前記糸条移載機構12と排出部の中間点を中心に点対称となる位置に一対の前記糸条束集積部材16を設け、180°旋回移動するように構成することもできる。
【0037】
ところで、図1に示した実施態様例では、糸条移載機構12以降糸条集積部材16までを1系列設けたが、前記糸条4の繰り出し方向に直列に複数系列設けることにより、生産性をさらにいっそう高めることができる。
【0038】
さらに、前記糸条4の供給方法は、紡糸装置から直接供給するのではなく、紡糸した前記糸条4を一旦ボビンに巻き取り、ボビンからの繰り出しとすることにより、糸条束集積部で装置が停止するようなトラブルが発生した場合でも、紡糸工程を停止する必要がなく、大量の糸条屑が発生することを防止することも可能となる。
【実施例】
【0039】
以上の糸条束集積装置を用いて糸条束を製造した結果を説明する。
【0040】
実施例1
本実施例では、生産性を高めるため糸条移載機構12以降糸条集積部材16までを糸条4の繰り出し方向に直列に2系列設けた。
【0041】
糸条にはポリスルホン製で外径0.5mmの濾過膜分離器用中空糸20糸条を用い、給糸速度9.0m/分、糸条繰り出し速度1.0m/秒、繰り出し張力10g/糸条の条件で、糸条4(中空糸)を繰り出し、糸条移載機構12の一対の糸条把持手段13a,13bで糸条4を300mmの間隔に把持した状態で糸条4を繰り出し側との間で切断し、4インデックスターレット構造である糸条移載機構12を糸条移載機構12の軸周りに90°回転し溶着部へと移動する。続いて、加熱手段15であるカートリッジタイプのヒーター26で200℃に加熱したヒーターブロック25と、V型溝27と離型シート28で構成される有効溝幅sを5mmとした糸条受け台23で、切断された糸条4の両端部を圧着することにより溶着し束ね、さらに糸条移載機構12を糸条移載機構12の軸周りに90°回転し、一対の糸条把持手段13a,13bから糸条4を開放し、糸条束集積部材16の集積溝内17に糸条4を収容する。このようにして糸条4の収容を繰り返すことにより50束の糸条4からなる糸条束18に集積し、2系列の糸条束集積部材16からそれぞれ糸条束18を排出した。
【0042】
また、糸条繰り出し部に設けたアキューム機構20(ダンサーロール)により、糸条4が糸条移載機構12の一対の糸条把持手段13a,13bで把持された後も連続して繰り出される糸条4の弛みを吸収することができ、停止することなく3時間連続して安定した運転を行うことができた。
【0043】
最後に、集積した糸条束18の外観を検査したが、糸乱れがなく整然と積み重ねられた真っ直ぐで品質の高い糸条束を得ることができた。
実施例2
本実施例では、生産性を高めるため糸条移載機構12以降糸条集積部材16までを糸条4の繰り出し方向に直列に2系列設けた。
【0044】
また、糸条4の繰り出しは、紡糸した糸条4を一旦ボビンに巻き取り、前記ボビンから繰り出す方法で行った。
【0045】
糸条にはポリエチレン製で外径0.6mmの濾過膜分離器用中空糸2糸条を用い、給糸速度9.0m/分、糸条繰り出し速度1.0m/秒、繰り出し張力200g/糸条の条件で、糸条4(中空糸)を繰り出し、糸条移載機構12の一対の糸条把持手段13a,13bで糸条4を300mmの間隔に把持した状態で糸条4を繰り出し側との間で切断し、4インデックスターレット構造である糸条移載機構12を糸条移載機構12の軸周りに90°回転し溶着部へと移動する。続いて、加熱手段15であるカートリッジタイプのヒーター26で150℃に加熱したヒーターブロック25と、V型溝27と離型シート28で構成される有効溝幅sを1mmとした糸条受け台23で、切断された糸条4の両端部を圧着することにより溶着し束ね、さらに糸条移載機構12を糸条移載機構12の軸周りに90°回転し、一対の糸条把持手段13a,13bから糸条4を開放し、糸条束集積部材16の集積溝内17に糸条4を収容する。このようにして糸条4の収容を繰り返すことにより200束の糸条4からなる糸条束18に集積し、2系列の糸条束集積部材16からそれぞれ糸条束18を排出した。
【0046】
また、糸条繰り出し部に設けたアキューム機構20(ダンサーロール)により、糸条4が糸条移載機構12の一対の糸条把持手段13a,13bで把持された後も連続して繰り出される糸条4の弛みを吸収することができ、停止することなく3時間連続して安定した運転を行うことができた。
【0047】
最後に、集積した糸条束18の外観を検査したが、糸乱れがなく整然と積み重ねられた真っ直ぐで品質の高い糸条束を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、中空糸濾過膜分離器用の糸条束集積装置に限らず、連続したモノフィラメントの連続繊維を一定の長さに切断して作られるブラシなどの糸条集積装置などにも応用することができるが、その応用範囲が、これに限られるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1:中空糸
2:カセ枠
3:糸条束
4:糸条
5:挟持部材
6a:クランプ
6b:クランプ
7:カッター
8:糸条束集積部材
9:集積溝
10:糸条繰り出し機構
11:糸条挟持手段
12:糸条移載機構
13a:糸条把持手段
13b:糸条把持手段
14:繰り出し糸切断手段
15:加熱手段
16:糸条束集積部材
17:集積溝
18:糸条束
19:糸条束搬送機構
20:アキューム機構
21:糸条挟持手段
22:直動駆動手段
23:糸条受け台
24:直動駆動手段
25:ヒーターブロック
26:ヒーター
27:V型溝
28:離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸条を繰り出し、糸条束に集積する糸条束集積方法において、糸条繰り出し機構の糸条挟持手段で前記糸条を挟持して繰り出し、糸条移載機構の一対の糸条把持手段で前記糸条を所定の間隔に把持した状態で、前記糸条の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段の外側で前記糸条を切断し、かつ、前記一対の糸条把持手段の内側または外側の前記糸条を加熱手段で溶着し束ね、前記糸条を収容する、という一連の操作を繰り返すことにより所定数の糸条束に集積することを特徴とする糸条束集積方法。
【請求項2】
前記糸条を切断した後、前記糸条移載機構を前記糸条移載機構の軸周りに回転させることにより切断された前記糸条を溶着部へ移動させ、前記糸条を溶着し束ね、さらに前記糸条移載機構を前記糸条移載機構の軸周りに回転させることにより糸条束集積部材に前記糸条を収容することを特徴とする請求項1に記載の糸条束集積方法。
【請求項3】
糸条を繰り出し、糸条束に集積する糸条束集積装置において、前記糸条を挟持して繰り出す糸条繰り出し機構と、糸条把持手段を具備する糸条移載機構で構成し、一対の前記糸条把持手段で把持された前記糸条を前記糸条の繰り出し側であって前記一対の糸条把持手段の外側で前記糸条を切断する繰り出し糸切断手段と、切断された前記糸条の端部を溶着する加熱手段と、前記糸条を収容し集積する糸条束集積部材を設けたことを特徴とする糸条束集積装置。
【請求項4】
前記糸条把持手段を具備する前記糸条移載機構が、前記糸条移載機構の軸周りに回転駆動するよう構成されることを特徴とする請求項3に記載の糸条束集積装置。

【図1】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102428(P2012−102428A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251552(P2010−251552)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】