説明

糸状菌の分野における新規発現調節配列および発現産物

【課題】糸状菌、特にクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株に由来する新規酵素の提供。
【解決手段】特定のアミノ酸配列とそれぞれ70および75%の最少アミノ酸同一性を表すファミリー7および10のクリソスポリウム(Chrysosporium)のグリコシルヒドロラーゼに対応する新規タンパク質、および特定のアミノ酸配列と少なくとも86%のアミノ酸同一性を表すクリソスポリウム(Chrysosporium)のグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼに対応するタンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸状菌、特にクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株に由来する新規酵素、およびこれら酵素のコード配列および発現−調節配列に関する。本発明は本優先日前には公開されていない1999年10月6日に出願された国際公開第00/20555号(PCT/NL99/00618)明細書を拡張するものである。この開示は引用により本明細書に編入する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現用の多数の宿主および形質転換法は従来技術で開示されてきた。細菌、例えば大腸菌(E.coli)が挙げられることは多いが、大腸菌(E.coli)は多くのタンパク質またはポリペプチドを分泌できず、しかもそれ自体は宿主細胞として工業レベルでのタンパク質またはポリペプチドの生産には望ましくない。一般に細菌には有効である大腸菌(E.coli)のさらなる欠点は、原核生物は活性形で生産されるべき真核生物の多数のタンパク質またはポリペプチドに必要なさらなる修飾を提供できない点にある。タンパク質のグリコシル化およびタンパク質の正しい折り畳みは、活性なタンパク質またはポリペプチドが確実に生産されるために必要なプロセッシングの例である。そのようなプロセッシングを確実とするために、しばしば哺乳動物細胞が使用される;しかしそのような細胞の欠点は、それらを維持することが難しく、そして高価な培地を必要とする点である。したがってそのような形質転換系は、工業レべルでのタンパク質またはポリペプチドの生産には現実的ではない。それらは比較的少量の、しかし明らかに工業用ではない酵素を必要とする高価な医薬化合物から経済効果はあるかもしれない。
【0003】
多数の真菌発現系(例えばアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス ニドランス(Aspergillus nidulans)、トリコデルマ レッセイ(Trichoderma reesei))が開発された。多くの他の真菌が推薦されたが、様々な理由から広く認められ、または使用されることはなかった。一般的な意味で理想的な宿主は多くの基準を満たさなければならない:
−理想的な宿主は廉価な培地を使用して容易に発酵されなければならない。
−理想的宿主は培地を効率的に使用すべきである。
−理想的な宿主はポリペプチドまたはタンパク質を高収量で生産し、すなわち高いタンパク質対バイオマス比を表さなければならない。
−理想的な宿主はタンパク質またはポリペプチドの効率的分泌ができるべきである。
−理想的な宿主は所望のタンパク質またはポリペプチドの容易な単離および精製が可能でなければならない。
−理想的な宿主は、さらなる活性化または修飾工程を必要とせずに活性形で生産されるように、所望するタンパク質またはポリペプチドをプロセッシングしなければならない。
−理想的な宿主は容易に形質転換されるべきである。
−理想的な宿主は広範な発現調節要素の使用を可能とし、これにより容易な応用および汎用性を確実とする。
−理想的な宿主は廉価に使用される容易に選択可能なマーカーの使用を可能とするべきである。
−理想的な宿主は、安定な形質転換体を生成するべきである。
−理想的な宿主は、タンパク質またはポリペプチド産物に有害ではない条件下での培養を可能とするべきである(例えば低粘度、低剪断)。
【0004】
ノボ ノルディスク(Novo Nordisk)への特許文献1、特許文献2:米国特許第5,602,004号、特許文献3、特許文献4は、アスペルギルス(Aspergillus)およびトリコデルマ(Trichoderma)系の欠点を記載し、そして他の真菌に関する培養条件は大規模タンパク質生
産により適し得ると示唆した。形質転換した培養物について提供された唯一の例は、ミセリオファソーラ サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、アクレモニウム アラバメンス(Acremonium alabamense)、チエラビア テレストリス(Thielavia terrestris)およびスポロトリクム セルロフィルム(Sporotrichum cellulophilum)株に関するものである。スポロトリクム属(Sporotrichum)の株は溶解し、そして発酵条件下で他の株ではもたらされない緑の色素を生産すると報告されている。チエラビア テレストリス(Thielavia terrestris)の非−胞子形成突然変異体は、その形態により選択される微生物であると記載されている。しかしチエラビア(Thielavia)およびアクレモニウム(Acremonium)(これにより使用されたアクレモニウム属(Acremonium)の株は使用したチエラビア属(Thielavia)の株の不完全状態であった)のプロトプラスト形成効率は低く、そしてヒグロマイシンは選択マーカーとして有用ではないとも述べている。他の大部分はそれらの形態から有用となる可能性があると示唆しているが、それらの形質転換は記載されていない。提案された株はコリナスクス属(Corynascus)、サーモアスクス属(Thermoascus)、ケタマカビ属(Chaetomium)、シテノマイセス属(Ctenomyces)、スキタリジウム属(Scytalidium)およびアオカビ(Talaromyces)に属するものである。形質転換した宿主は、低レベルの導入したフミコーラ(Humicola)キシラナーゼを生産するだけで、チエラビア(Thielavia)は最低量を生産し;しかしこの情報は曖昧であり、そして実際にはチエラビア(Thielavia)が最高の態様であったと推定できた。この技術文献の命名は、1994年の工業用真菌のATCC名に基づく。このように高度なヘテロロガス発現は達成されず、そして実際には推定される形態と発現の程度との間から引き出すことができた陽性の相関は無いことが明らかである。もし相関を作ることができるならば、より容易に陰性になるであろう。1996年のATCCの真菌分類によれば、スポロトリクム サーモフィリルム(Sporotrichum thermophilum)ATCC 20493は、ミセリオファソーラ サーモフィラ(Myceliophthorathermophila)株である。現在でもこの株はミセリオファソーラ サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)と同定されている。この技術の予想不可能性は、これらの最近の開示から明らかである。
【0005】
ノボ ノルディスク(Novo Nordisk)の特許文献5は、ヘテロロガスなポリペプチドの生産のために改良された特性を有する糸状菌の親細胞の突然変異体を得る方法を提案する。この方法は最初に特別に改変した形態を見いだし、続いて形質転換体が親よりもより多くのヘテロロガスがポリペプチドを生産するかどうかを評価することを含んで成る。この方法はフザリウム(Fusarium)A3/5およびアスペルギルス オリーゼ(Aspergillus oryzae)の株についてのみ具体的に説明している。この方法はアスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、チエラビア(Thielavia)、フザリウム(Fusarium)、ニューロスポーラ(Neurospora)、アクレモニウム(Acremonium)、トリプロカジウム(Tolyplocadium)、フミコーラ(Humicola)、スキタリジウム(Scytalidium)、ミセリオファソーラ(Myceliophthora)およびケカビ(Mucor)に応用できると示唆している。上記のように、この技術の予想不可能性および引用した応用の方法の予想不可能性は、成功への合理的な予想の元に一般に応用可能な教示を提供しない。
【0006】
特許文献6で、我々は上記の要件を満たす上に挙げたアスペルギルス(Aspergillus)およびトリコデルマ(Trichoderma)の簡単な使用による別の真菌発現系を記載した。この新規な系は、しばしば使用されるトリコデルマ レッセイ(Trichoderma reesei)の系よりも形質転換率が高いというさらなる利点を提供する。さらに培養条件はポリペプチド産物に有利となるさらなるボーナス(bonus)を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第96/02563号明細書
【特許文献2】米国特許第5,602,004号明細書
【特許文献3】米国特許第5,604,129号明細書
【特許文献4】米国特許第5,695,985号明細書
【特許文献5】国際公開第97/26330号明細書
【特許文献6】国際公開第00/020555号明細書
【発明の概要】
【0008】
我々はクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株に由来する多数の工業的に興味深い酵素を完全な配列情報と共に記載する。また我々は、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株に由来し、そしてホモロガスおよびヘテロロガスな遺伝子を発現するために有用な新規プロモーター系を記載する。
【0009】
本発明は、特にアミノ酸配列ならびにこれら酵素タンパク質に由来するペプチドにより同定される、ファミリー7(例えばセロビオヒドラーゼ)および10(例えばキシラナーゼ)のグリコシルヒドロラーゼおよびグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ、およびこれらペプチドおよびタンパク質をコードする核酸配列、ならびに特にこれら遺伝子に関連する調節配列に関する。
【0010】
特に本発明は、上記に示した3種の単離された、または組換え酵素的タンパク質またはそれらの活性部分に関し、更なる開示および特許請求の範囲で特定される少なくともある程度の同一性を有するそれらの突然変異体、ならびにこれらのタンパク質またはそれらの部分をコードする核酸配列、および/またはそれらの発現を調節する核酸配列を含む。これらの酵素は特に:(1)配列番号2の配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、またはさらに少なくとも85%のアミノ酸同一性を有するファミリー7のグリコシルヒドロラーゼ(セロビオヒドラーゼ);(2)配列番号4の配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、またはさらに少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するファミリー10のグリコシルヒドロラーゼ(エンド-キシラナーゼ XYL1);および(3)配列番号6の配列と少なくとも86%、好ましくは少なくとも90%、またはさらに少なくとも93%のアミノ酸同一性を有するグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼである。配列番号2、4および6の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個の連続するアミノ酸を有するポリペプチドおよびこれらポリペプチドをコードする核酸も、本発明の好適な部分である。対応するヌクレオチド配列はそれぞれ配列番号1(cbh1)、3(xyl1)および5(gpd1)に表す。
【0011】
組換え酵素は本質的に完全なタンパク質または酵素活性の少なくとも一部を有する短縮タンパク質を含んで成る。そのような短縮化された部分は触媒ドメインであるか、またはそれらの少なくとも約75%のアミノ酸であることができる。例として、本発明によるCBH1の触媒ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸20−495を含んで成り、そして本発明によるXYL1の触媒ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列のアミノ酸54−384を含んで成る。この触媒ドメインは、他のタンパク質に由来するシグナル配列および/または他の酵素的タンパク質に由来する炭水化物−結合ドメインと合わせても合わせなくてもよい。あるいは本発明の酵素のセルロース結合ドメイン(CBH1およびXYL1)は、他の酵素的タンパク質を触媒部分に融合することができる。
【0012】
本発明の核酸配列は、完全なタンパク質コード領域またはオリゴヌクレオチド、または好ましくは発現−調節配列であることができる。オリゴヌクレオチドは配列番号1、3および5の遺伝子に同一ではないが対応する遺伝子を同定するためのプローブとして使用することもでき;これらの遺伝子は本明細書に定める同一性の基準の百分率を満たす時、ならびにそれらのコードおよび非コード部分およびそれらの発現産物も本発明の一部である。オリゴヌクレオチドは好ましくは15〜75、最も好ましくは20〜50個のヌクレオチド長である。
【0013】
また本発明は、別の目的のタンパク質をコードする遺伝子に融合した任意の3種類のタンパク質のいずれかの発現-調節領域(プロモーターを含む)、あるいは別の発現調節領域に融合した任意の3種のタンパク質のコード領域、または発現−調節領域およびこれら新規タンパク質のタンパク質−コード領域の両方のいずれかを含んで成る発現系(カセット)に関する。発現−調節領域は、配列番号1、3および5の5'-非コード領域の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、またはさらに80%、特にこれら5'-非コード領域の少なくとも40個の連続するヌクレオチドを含んで成る。ホモロガスまたはヘテロロガスな遺伝子のいずれかと組み合わせた、本発明の遺伝子の3'-非コード領域に同様に由来する終結配列も発現カセットにおいて有用である。
【0014】
本発明のポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3および5の対応する配列と最少の配列同一性を有することができ、あるいはこれらの与えられた配列と緊縮条件下でハイブリダイズすることができる。緊縮なハイブリダイゼーション条件は当該技術分野で理解されている条件であり、例えば6×SSC(1000mlあたり20×SSC:175.3g NaCl、107.1g クエン酸ナトリウム.5H2O、pH7.0)、0.1% SDS、0.05% ピロリン酸ナトリウム、5*デンハーツ溶液および20μg/ml 変性ニシン精子DNA中で56℃にて18〜24時間のハイブリダイゼーション、続いて5×SSC、0.1% SDS中で56℃にて30分ずつ2回の洗浄、そして2×SSC、0.1% SDS中で56℃にて30分ずつ2回の洗浄。
【0015】
これらの発現系は、クリソスポリウム ロックンオウンズ属(Chrysosporium lucknowense)の宿主のようなクリソスポリウム属(Chrysosporium)の宿主、または他の非真菌または好ましくは真菌宿主で得ることがことができる。他の真菌宿主の例は、他のクリソスポリウム属(Chrysosporium)の種または株、フザリウム属(Fusarium)の種、アスペルギルス属(Aspergillus)の種である。目的のタンパク質の回収が簡易になるように、そのような宿主は有利にはそれ自体が本来は、または培養条件の結果により目的のタンパク質に対応するタンパク質を生産することはできない宿主であり得る。
【0016】
本明細書および前述の特許請求の範囲で、本発明の発現系の産物として「ポリペプチド」または「ペプチド」または「目的のポリペプチド」または「目的のペプチド」と言う場合、この用語はタンパク質、すなわち特定の機能および/または2次および/または3次構造を有するポリペプチドも含んで成る。アミノ酸同一性の割合と言う場合、そのような同一性は、完全なタンパク質または通常使用されるBLASTアルゴリズムにより決定される最初の、および最後のアミノ酸番号により定める特定の部分に関する。
【0017】
特許文献6に記載された真菌発現系では、培養基のpHは中性またはアルカリ性であることができ、これによりもはや生産されたタンパク質またはポリペプチドを過激な、そして不活性化する可能性がある酸性pHにさらさない。タンパク質またはポリペプチドが酸性の環境により適している場合、pH4のような酸性pHで培養することも可能である。適当な培養は4.0〜10.0の間のpHで起こることができる。しかし好適であるのは、宿主株が例えば6から9の間のpHのようなpHでより良い成長を現すので中性からアルカリ性のpHである。pH8から上、そしてさらに10でもあり得るアルカリ性pHでの成長も、場合により良好な選択である。そのような宿主株の培養温度は、生産されるポリペプチドの種類の安定性に有利となる。培養温度は適当には23〜43℃の温度である。明らかにそのような条件は、哺乳動物のポリペプチドの生産に特に興味深い。選択される温度は培養の経済的効果およびポリペプチドまたは培養株の感度に依るだろう。
【0018】
粘度に関連するバイオマスおよび生産されるタンパク質の量が、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の宿主に非常に好適であることが確認された。トリコデルマ ロンギブラキアタム(Trichodermalongibrachiatum)(正式にはトリコデルマ レッセイ(Trichoderma
reesei)として知られる)およびアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)を用いて比較を行った。それぞれの最適条件下でトリコデルマ ロンギブラキアタム(Trichodermalongibrachiatum)は、2.5〜5g/リットルのバイオマスを与え、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)は5〜10g/リットルのバイオマスを与え、そしてクリソスポリウム属(Chrysosporium)の宿主は0.5〜1g/リットルのバイオマスを与えた。これは市販の使用する株よりも5〜10倍の向上を与える。本発明はヘテロロガスなタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る発現系を対象とし、該核酸配列は以下に記載の発現調節領域および任意に分泌シグナルをコードする配列および/またはキャリアータンパク質をコードする配列に操作可能に連結されている。好ましくは本発明の組換え株は、目的のポリペプチドを分泌する。これは目的のポリペプチドを単離するために細胞を破壊する必要性を回避し、そしてまた宿主細胞の他の成分による発現産物の分解の危険性を最少とする。
【0019】
クリソスポリウム(Chrysosporium)は、Barnett and Hunter 1972、不完全菌類の属の説明(Illustrated Genera of Imperfect Fungi)、第3版、ブルゲス(Burgess)出版社に開示された形態と一致する形態により定めることができる。クリソスポリウム属(Chrysosporium)の真菌の分類に関する詳細を提供する他の情報源は知られており、例えばSuttonの分類(Van Oorschot,C.A.N.(1980)「クリソスポリウム属(Chrysosporium)の改定および近縁属(A revision of Chrysosporiumand allied genera)」、CBSの菌類の研究の第20で、バーン(Baarn)The Netherlands p1-36)である。CBSはブタペスト条約の寄託機関の1つである。これらの教示に従い、クリソスポリウム(Chrysosporium)属はヒホミケス目(Hyphomycetales)に属するモニリア(Moniliaceae)ファミリー内にある:以下の系統をクリソスポリウム(Chrysosporium)と定めるが、クリソスポリウム(Chrysosporium)はこれらの系統に限らない:C.ボトリオイデス(botryoides)、C.カルミケーリ(carmichaelii)、C.クラッシツニカタム(Crassitunicatum)、C.オイローパ(europae)、C.エボルセアンヌイ(evolceannui)、C.ファリニコーラ(farinicola)、C.ファスチジウム(fastidium)、C.フィリホルメ(filiforme)、C.ゲオルギエ(georgiae)、C.グロビフェルム(globiferum)、C.グロビフェルム変種アーチクラタム(globiferumvar.articulatum)、C.グロビフェルム変種ニベウム(globiferum var.niveum)、C.ヒルンド(hirundo)、C.ヒスパニクム(hispanicum)、C.ホルミー(holmii)、C.インジクム(indicum)、C.イノプス(inops)、C.ケラチノフィラム(keratinophilum)、C.クレイセリー(kreiselli)、C.クズロビアヌム(kuzurovianum)、C.リグノラム(lignorum)、C.ロバタム(lobatum)、C.ロックンオウンズ(lucknowense)、C.ロックンオウンズ(lucknowense)Garg 27K、C.メディウム(medium)、C.メディウム変種スピッセセンス(medium var.spissescens)、C.メフィチクム(mephiticum)、C.メルダリウム(merdarium)、C.メルダリウム変種ロゼウム(merdariumvar.roseum)、C.マイナー(minor)、C.パンニコーラ(pannicola)、C.パルブム(parvum)、C.パルブム変種クレッセンス(parvumvar.crescens)、C.ピロスム(pilosum)、C.シュードメルダリウム(pseudomerderium)、C.ピリホルミス(pyriformis)、C.クイーンズランジクム(queenslandicum)、C.シグレリ(sigleri)、C.スルフレウム(sulfureum)、C.シンクロヌム(synchronum)、C.トロピクム(tropicum)、C.アンドラタム(undulatum)、C.バルレナレンズ(vallenarense)、C.ベスペルチリウム(vespetrilium)、C.ゾナタム(zonatum)。
【0020】
C.ロックンオウンズ(lucknowense)は、セルラーゼタンパク質の自然な高い生産体を提供したので、特に興味が持たれたクリソスポリウム(Chrysosporium)種の1つの形成する(国際公開第98/15633号明細書および関連する米国特許第5,811,381号明細書)。このクリソスポリウム ロックンオウンズ(Chrysosporium lucknowense)の特徴は:
Sabouraud グルコース寒天上で14日に55mmの直径に達するコロニーは、クリーム色のフェルト状および綿毛状;集密および3〜5mmの高さ;境界を明瞭に示す、整然として毛縁がある:後ろは淡い黄色からクリーム色。菌糸はヒアリンで、滑らか−そして薄い壁があり、少し分枝している。気生菌糸はほとんど受精能力があり、そして約1〜3.5μmの幅の
接近した状態で離れている。潜入菌糸は受精能力が無く、約1〜4.5μmの幅で、薄い菌糸はしばしば回旋状である。分生子は末端および横であり、ほとんどが着性または短く、そしてしばしば円錐状に突出するか、または短い側枝がある。分生子は単生であるが、互いに近位にあり、1〜4個の分生子が1つの菌糸細胞から発生し、半透明(subhyaline)の、わずかに薄い-そして滑らかな壁があり、ほとんどがほぼ球状(subglobose)の、またバット形のオロボボイド(orobovoid)、1細胞化、2.5-11×1.5-6μm、広い基底痕がある。節間に分生子は無い。厚膜胞子は無い。ATCC44006、CBS 251.72、CBS143.77およびCBS 272.77はクリソスポリウム ロックンオウンズ(Chrysosporium lucknowense)株の例であり、そして他の例は国際公開第98/15633号明細書(米国特許第5,811,381号明細書)に提供されている。
【0021】
さらなる株はセルラーゼのより高い生産能力を持つ種から単離された。この株は内部での命名によりC1と呼ばれ、そしてブタペスト条約に従う寄託として、1996年8月29日に113184、ロシア、モスクワ、バクルシナ通り8のロシアアカデミーオブサイエンス(Russian
Academy of Science)の微生物の国際寄託機関であるオール ロシアン コレクションに、寄託番号VKM F-3500Dに寄託した。これはクリソスポリウム ロックンオウンズ(Chrysosporium lucknowense)Garg 27Kと呼ぶ。このC1株の特徴は以下の通り:
ジャガイモ-デキストロース寒天上で約7日に約55−66mmの直径に達するコロニーは;白−クリーム色のフェルト状、中心が2〜3μmの高さ;境界を明瞭に示す、整然として毛縁がある:後ろは淡クリーム色。菌糸はヒアリンで、滑らか−そして薄い壁があり、少し分枝している。気生菌糸は受精能力があり、そして約2〜3mmの幅で離れている。潜入菌糸は受精能力が無い。分生子は末端および横であり;着性または短い側枝がある;無い;単生であるが、互いに近位にあり、ガラス質の、薄く-そして滑らかな壁があり、ほぼ球状の、またバット形または倒卵形の、1-細胞化、4-10μm。厚膜胞子は無い。節間に分生子は無い。
【0022】
C1株の単離法は、国際公開第98/15633号明細書、関連する米国特許第5,811,381号明明細書および米国特許第6,015,707号明細書に記載されている。クリソスポリウム(Chrysosporium)の定義内には、自然にまたは誘導した突然変異のいずれかにより幾らか突然変異したものを含むクリソスポリウム(Chrysosporium)の祖先に由来する株を含む。クリソスポリウム(Chrysosporium)の突然変異体は、誘導した突然変異、特に照射および化学的突然変異誘発法の組み合わせにより得ることができる。
【0023】
例えばC1株はそれを紫外線光にさらして突然変異させ、UV13-6株を生成した。この株は続いてさらにN-メチル-N'-ニトロソグアニジンで突然変異させてNG7C-19を生成した。この株を次いで紫外線光にさらして突然変異させ、UV18-25株を生成した。この突然変異工程中に、形態学的特徴は液体またはプレート上の培養ならびに顕微鏡下で幾分変動した。各々の連続する突然変異誘発法で、培養物はコロニーが平らで、そしてマット状の外観に達するまで、クリソスポリウム(Chrysosporium)の特徴として記載したプレート上の毛羽だった、そしてフェルト状の外観の喪失を示した。幾つかの培地中で野生型の株で観察された茶色い色素も、突然変異した株では少なかった。液体培養では、突然変異体UV18-25は野生型C1株および突然変異体UV13-6およびNG7C-19よりも顕著に粘性が低かった。すべての株はクリソスポリウム属(Chrysosporium)のおおざっぱな顕微鏡的特徴を維持する一方、菌糸は各連続的突然変異で狭くなり、そしてUV18-25で顕著な菌糸の断片化が観察できた。この菌糸の断片化はUV18-25の培養に付随する低い粘度が原因と思われる。株が胞子形成する能力は、各突然変異工程で低下した。上記はクリソスポリウム属(Chrysosporium)に属する株が上記の形態学的定義から幾らかずれていることを説明している。各突然変異工程で、セルラーゼおよび細胞外タンパク質の生産はさらに上昇したが、幾つかの突然変異はプロテアーゼ発現の低下をもたらした。菌類の分類学で決定できる基準は、例えばCBS、VKMFおよびATCCから入手可能である。クリソスポリウム属(Chrysosporium)のC1株
、UV13-6株、NG7C-19株およびUV18-25と国内で命名されている株は、ブタペスト条約に従い、モスクワのオール ロシアン コレクション(VKM)寄託機関に寄託した。野生型C1株は29-08-1996に番号VKM F-3500Dで寄託され、C1 UV13-6突然変異体はVKM F-3632D(02-09-1998)として寄託され、C1 NG7c-19突然変異体はVKM F-3633D(02-09-1998)として寄託され、そしてC1 UV18-25突然変異体はVKM F-3631D(02-09-1998)として寄託された。
【0024】
当該技術分野で番号が知られている非-毒性のクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株を使用することは、大規模生産で環境への危険性を下げ、そして簡便な生産手法は同時に経費の低減になるので好ましい。
【0025】
発現−調節領域は宿主のクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株が発現のために認識するDNA配列である。これは発現すべきポリペプチドをコードする核酸配列に操作可能に連結されたプロモーター配列を含んで成る。プロモーターは発現する配列の開始コドンに関係する配置が発現を可能とするように連結される。プロモーター配列は構成的または誘導性であことができる。クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株からポリペプチドの発現を可能とする任意の発現調節配列またはそれらの組み合わせを構想する。発現調節配列は、適当には真菌の発現調節領域、例えば子嚢菌類の調節領域である。適当には真菌の発現調節領域は、以下の真菌の属に由来する調節領域に由来する:アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、ハンセニューラ(Hansenula)、ケカビ(Mucor)、ピヒア(Pichia)、ニューロスポーラ(Neurospora)、トリプロカジウム(Tolyplocadium)、リゾムコール(Rizomucor)、フザリウム(Fusarium)、ペニシリウム(Penicillium)、サッカロミセス(Saccharomyces)、アオカビ(Talaromyces)、あるいはエメリセラ(Emericella)、ハイポクレア(Hypocrea)のようなそれらの性的形態、例えばトリコデルマ(Trichoderma)に由来するセロビオヒドラーゼプロモーター、アスペルギルス(Aspergillus)に由来するグルコアミラーゼプロモーター、(Aspergillus)に由来するグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、(Aspergillus)に由来するアルコールデヒドロゲナーゼAおよびアルコールデヒドロゲナーゼRプロモーター、(Aspergillus)に由来するTAKAアミラーゼプロモーター、ニューロスポーラ(Neurospora)のホスホグリセレートおよびクロスパスウエイ(cross-pathway)制御プロモーター、リゾムコール ミーヘイ(Rizomucor miehei)のアスパラギン酸プロティナーゼプロモーター、リゾムコール ミーヘイ(Rizomucor miehei)のリパーゼプロモーターおよびペニシリウム カネセンス(Penicillium canescens)のベータ-ガラクトシダーゼプロモーター。宿主株と同じ属に由来する発現調節配列は、特定の宿主に特別に最も適しているので、極めて適する。すなわち好ましくは発現調節配列が、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株に由来するものである。
【0026】
好ましくは選択した宿主中での高い発現を可能とする発現−調節領域が適用される。これは好ましくは本発明によるクリソスポリウム(Chrysosporium)に由来する発現−調節領域である。当該技術分野で周知なヘテロロガスな宿主に由来する高い発現−調節領域でもよい。大量に発現することが知られ、したがって本発明に適当な発現調節配列を提供するタンパク質の具体的な例は、限定するわけではないがヒドロホビン(hydrophobin)、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、エステラーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、セルラーゼ(例えばエンド−グルカナーゼ、セロビオヒドラーゼ)およびポリガラクツロナーゼである。高生産は固体状態および液内発酵条件の両方で確認された。そのようなタンパク質の存在または生産を評価するためのアッセイは、当該技術分野で周知である。例えばシグマ(Sigma)およびメガザイム(Megazyme)のカタログは、多数の例を提供する。メガザイムがアイルランドのウィックロウ カントリー、ブレイのブレイビジネスパークにある。シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)は、世界中に多くの系列会社があり、例えばそれは米国、ミズーリ州、セントルイスの私書箱14508である。セルラーゼに関して、CMCaseアッセイ、エンドビスコメトリック(endoviscometric)アッセイ、Avic
elaseアッセイ、ベータ−グルカナーゼアッセイ、RBBCMCaseアッセイ、Cellazymeアッセイのような市販の利用できるアッセイを言う。キシラナーゼアッセイも市販されている(例えば、DNSおよびメガザイム)。代替は当業者に周知であり、そして主題に関連する一般的技術文献から見いだすことができ、そしてそのような情報は引用により本明細書に編入する。例として我々は、“Methods in Enzymology”第1巻、1955右から1988年の297〜299巻を示す。適当にクリソスポリウム(Chrysosporium)プロモーター配列を適用して、宿主によるそれらの良い認識を確実にする。
【0027】
我々は、ヘテロロガスな発現調節配列が自然なクリソスポリウム(Chrysosporium)配列としてクリソスポリウム(Chrysosporium)中で効率的に働くことを見いだした。これはクリソスポリウム(Chrysosporium)の形質転換に使用される周知の構築物およびベクタ−を可能とし、ならびにこの新規な発現および分泌宿主中で良好な発現率を可能とする他のベクタ−を構築する多くの可能性を提供する。例えば標準的なアスペルギルス(Aspergillus)の形質転換法は、例えばChristiansen et alのBio/Technol.6:1419-1422(1988)に記載されているように使用することができる。アスペルギルス(Aspergillus)の形質転換ベクターの詳細を提供する他の文書、例えば米国特許第4,816,405号、米国特許第5,198,345号、米国特許同第5,503,991号、米国特許第5,364,770号および米国特許第5,578,463号明細書、欧州特許第215,594号明細書(トリコデルマ(Trichoderma)にも関する)およびそれらの内容は、引用により本明細書に編入する。セルラーゼに関する大変高い発現率が、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株で確認され、そのようなタンパク質の発現調節領域は特に好適である。我々は具体例として既に挙げた寄託したクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株に言及する。
【0028】
クリソスポリウム(Chrysosporium)、好ましくはクリソスポリウム ロックンオウンズ(Chrysosporium lucknowense)に由来する核酸発現調節領域またはそれらの誘導体を含んで成る核酸構築物は、発現されるポリペプチドをコードする遺伝子に操作可能に連結されるそのような核酸を含んで成る突然変異体のクリソスポリウム(Chrysosporium)のように、本発明の好適な態様を形成する。そのような核酸構築物は以下に詳細に記載するように、セルラーゼまたはキシラナーゼ発現、好ましくはセロビオヒドラーゼ発現またはダリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ発現に関係するクリソスポリウム(Chrysosporium)に由来する発現調節領域となるだろう。本発明の核酸配列はクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株から適切に得ることができ、そのような株は本明細書中のいたるところで特定されている。プロモーター配列を決定できる様式は多数であり、そして当該技術分野では周知である。関連する遺伝子の始めのATGコドンの上流領域のヌクレアーゼ欠失実験は、そのような配列を提供するだろう。また例えば、コンセンサス配列の分析により、目的遺伝子を見いだすことを導くことができる。ハイブリダイゼーションおよび増幅技法を使用して、当業者は対応するプロモーター配列に容易に到達することができる。
【0029】
C1エンドヌクレアーゼのプロモーター配列は、対応する遺伝子をクローニングすることによりこの様式で同定した。酵素が独持のプロモーターで高レベルで発現されるので、本発明に従い好適なプロモーターは55kDaセロビオヒドラーゼ(CBH11)プロモーター、30KDaキシラナーゼ(Xyl1)プロモーターであり、およびグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼプロモーターである。対応するプロモーター配列は、それぞれ配列番号1(CBH1について)および配列番号3(Xyl1について)に与える配列情報を使用して、特許文献16:国際公開第00/20555号明細書に記載されているようにクローニングすることにより簡単な様式で同定される。クリソスポリウム(Chrysosporium)の炭水化物−分解酵素のプロモーター、特にC1プロモーターは、宿主生物、特に真菌または他の微生物宿主中で所望するポリペプチドの発現に有利に使用することができる。配列番号1、3および5に与える配列と、または他のクリソスポリウム(Chrysosporium)の遺伝子について見いだされる配列と、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも75%のヌク
レオチド配列同一性を有するプロモーター配列は、本発明の一部である。
【0030】
本発明の組換え株および核酸配列の特定の態様についても、我々は実施例で言及する。我々はまた、組換え株について高い発現プロモーター配列、例えばアスペルギルス(Aspergillus)およびトリコデルマ(Trichoderma)について開示されるような特に真菌での高い発現を提供する配列を記載する従来技術も言及する。従来技術は、多数の発現調節領域をアスペルギルス(Aspergillus)で使用するために提供する(例えばノボ(Novo)の米国特許第5,252,726号明細書およびUnileverの米国特許第5,705,358号明細書)。そのような従来技術の内容は引用により本明細書に編入する。
【0031】
ハイドロホビン遺伝子は、高度に発現される真菌の遺伝子である。これは好ましくはクリソスポリウム(Chrysosporium)に由来するハイドロホビン遺伝子のプロモーター配列が、本発明の適切な態様において発現調節配列として適当に適用できることを示唆している。ハイドロホービンに関するトリコデルマ レッセイ(Trichoderma reesei)およびトリコデルマ ハージアナム(Trichoderma harzianm)の遺伝子配列は、例えば従来技術に開示され、ならびにアスペルギルス フミガタス(Aspergillus fumigatus)およびアスペルギルス ニドランス(Aspergillus nidulans)の遺伝子配列および関連する配列情報は引用により本明細書に編入する(Munoz et al,Curr.Genet.1997,32(3):225-230; Nakarai-Setala T.et al,Eur.J.Biochem.1996 15:235(1-2):248-255, M.Parta et al,Infect.Immun.1994 62(10):4389-4395およびStringer M.A.et al.Mol.Microbiol.1995 16(1):33-34)。この配列情報を使用して、当業者はすでに上記に示唆したような標準技法に従い実験せずにクリソスポリウム(Chrysosporium)のハイドロホビン遺伝子の発現調節配列を得ることができる。本発明の組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株は、目的のポリペプチドをコードする配列に機能的に連結されたハイドロホビン−調節領域を含んで成ることができる。
【0032】
発現調節配列はさらにエンハンサーまたはサイレンサーを含んで成ることができる。これらは従来技術において周知であり、そして通常はプロモーターから幾分離れて配置される。発現調節配列は、アクチベーター結合部位およびリプレッサー結合部位を含むプロモーターも含んで成ることができる。場合により、そのような部位を修飾してこの種の調節を排除してもよい。creA部位が存在する糸状菌プロモーターが記載された。そのようなcreA部位を突然変異させて、正常には非-突然変異部位の存在から生じるグルコース抑制を確実に排除することができるGist-Brocadesの国際公開第94/13820号明細書は、この原理を具体的に説明する。そのようなプロモーターの使用により、グルコースの存在下でプロモーターにより調節される核酸配列によりコードされるポリペプチドの生産が可能となる。同じ原理は、国際公開第97/09438号明細書からも明らかである。これらのプロモーターはそれらのcreA部位を用いて、または用いずに使用することができる。creA部位が突然変異した突然変異体は、本発明に従い発現調節配列として組換え株中で使用することができ、そしてそれを調節する核酸配列が次いでグルコースの存在下で発現し得る。そのようなクリソスポリウム属(Chrysosporium)のプロモーターは、国際公開第97/09438号明細書で具体的に説明した様式と類似する様式で抑制解除を確実にする。creA部位の同一性は、従来技術から知られている。あるいは突然変異していないCreA結合部位を持つプロモーターを、いずれかの抑制系(例えばcreA遺伝子自体)に突然変異を有する宿主株に適用して、creA結合部位の存在が際立つこの株がグルコースの存在下でタンパク質またはポリペプチドを生産できるようにすることも可能である。
【0033】
ターミネーター配列も発現調節配列であり、そして発現する配列の3'末端に操作可能に連結されている。任意の真菌ターミネーターが本発明の宿主クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株中で機能的となるだろう。例はA.ニドランス(nidulans) trpCターミネーター(1)、A.ニガー(niger)アルファ-グルコシダーゼターミネーター(2)、A.ニガー(niger
)グルコアミラーゼ ターミネーター(3)、ムコール ミーヘイ(Mucor miehei)カルボキシプロテアーゼ ターミネーター(米国特許第5,578,463号明細書)、およびトリコデルマ レッセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドラーゼターミネーターである。当然、クリソスポリウム(Chrysosporium)ターミネーター配列は、クリソスポリウム(Chrysosporium)中で十分に機能し、そして適当である(例えばCBH1ターミネーター)。
【0034】
本発明に従い使用される適当な組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株は、シグナル配列として定められるアミノ酸配列をコードする配列に操作可能に連結された発現すべき核酸配列を有する。シグナル配列は、発現するポリペプチドのアミノ酸発現に操作可能に連結された時、宿主真菌からそれらの分泌を可能とするアミノ酸配列である。そのようなシグナル配列はヘテロロガスなポリペプチドに通常付随する配列か、または宿主に自然な配列であり得る。また宿主およびポリペプチドの両方に対して外来であることもできる。シグナル配列をコードする核酸配列は、枠内に配置されてシグナル配列およびヘテロロガスなポリペプチドの翻訳を可能としなければならない。クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株からポリペプチドの分泌を可能とすることができる任意のシグナル配列を構想する。そのようなシグナル配列は適当な真菌シグナル配列、好ましくは子嚢菌類のシグナル配列である。
【0035】
シグナル配列の適当な例は、一般的な酵母または任意の以下の真菌の具体的な属に由来することができる:アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、ピヒア(Pichia)、ニューロスポーラ(Neurospora)、リゾムコール(Rizomucor)、ハンセニューラ(Hansenula)、フミコーラ(Humicola)、ケカビ(Mucor)、トリプロカジウム(Tolyplocadium)、フザリウム(Fusarium)、ペニシリウム(Penicillium)、サッカロミセス(Saccharomyces)、アオカビ(Talaromyces)、あるいはエメリセラ(Emericella)、ハイポクレア(Hypocrea)のようなそれらの性的形態。特に有用なシグナル配列は、しばしば以下のタンパク質、セロビオヒドラーゼ、エンドグルカナーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、エステラーゼ、ハイドロホビン、プロテアーゼまたはアミラーゼに自然に付随する配列である。例にはアスペルギルス(Aspergillus)またはハンセニューラ(Hansenula)のアミラーゼまたはグルコアミラーゼ(4)、アスペルギルス オリーゼ(Aspergillus oryzae)のTAKAアミラーゼ、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)のアルファ-アミラーゼ、ケカビ(Mucor)のカルボキシペプチダーゼ(米国特許第5,578,463号明細書)、リゾムコール ミーヘイ(Rizomucor miehei)のリパーゼまたはプロティナーゼ、トリコデルマ(Trichoderma)のセロビオヒドラーゼ(5)、ペニシリウム カネッセンス(Penicillium canescens)のベータ-ガラクトシダーゼおよびサッカロミセス(Saccharomyces)のアルファ-接合因子を含む。
【0036】
あるいはシグナル配列は、バチルス属(Bacillus)の株のアミラーゼまたはスブチリシン遺伝子に由来することができる。宿主株と同じ属に由来するシグナル配列は、特定の宿主に特別に最も適合すると思われるので大変適しており、すなわち好ましくはシグナル配列は上記で言うクリソスポリウム(Chrysosporium)、特にクリソスポリウム属(Chrysosporium)のC1株、UV13-6株、NG7C-19株およびUV18-25株のシグナル配列である。糸状菌、酵母および細菌に由来するシグナル配列も有用である。非-真菌起源、特に細菌、植物および哺乳動物のシグナル配列も有用であると考えられる。
【0037】
本発明の任意の態様に従い使用される組換え宿主は、さらに選択可能なマーカーを含んで成ることができる。そのような選択可能なマーカーは、形質転換した、またはトランスフェクトした細胞の容易な選択を可能とする。選択可能なマーカーはしばしば遺伝子産物をコードし、非形質転換株に対して外来の特別な種類の耐性を提供する。この細胞は一般に重金属、抗生物質および殺生物剤に対して耐性であることができる。原栄養性も非−抗生物質の種類の有用な選択可能マーカーである。非−抗生物質の選択可能マーカーは、目
的のタンパク質またはポリペプチドが食品または医薬品に使用される場合、そのような産物のより迅速または複雑ではない規制の認可の観点から好適であり得る。GRAS指標がそのようなマーカーに使用されることが大変多い。当業者は多数のそのようなマーカーを利用することができる。例えばFDAはそのリストを提供している。最もよく使用されるのは、薬剤に対する耐性または栄養的欠失の解除を付与する群、例えばamdS(アセトアミダーゼ)、hph(ヒグロマイシン ホスホトランスフェラーゼ)、pyrG(オルニチン-5'-リン酸デカルボキシラーゼ)、trpC(アントラニレート シンターゼ)、argB(オルニチン カルバモイルトランスフェラーゼ)、sC(スルフェート アデニルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシン アセチルトランスフェラーゼ)、グルホシネート耐性、niaD(硝酸レダクターゼ)、ブレオマイシン耐性遺伝子、より詳細にはSh ble、スルホニルウレア耐性、例えばアセトラクテートシンターゼ突然変異ilv1から成る群から選択される選択可能マーカーである。選択マーカーが別のベクター上にある場合、または選択マーカーが目的のポリペプチドについてポリペプチドをコードする配列と同じ核酸フラグメント上にある場合、選択はまた同時形質転換により行うこともできる。
【0038】
本明細書で使用する用語であるヘテロロガスなポリペプチドとは、本発明に従い発現に使用するクリソスポリウム属(Chrysosporium)の宿主株により通常は発現または分泌されないタンパク質またはポリペプチドである。このポリペプチドは、宿主株中で生じない限り植物または動物(脊椎動物または無脊椎動物)起源、例えば哺乳動物、魚、昆虫または微生物起源であることができる。哺乳動物にはヒトを含むことができる。微生物にはウイルス、細菌、古細菌、および真菌、すなわち糸状菌および酵母を含んで成る。Bergeyの細菌決定学の手引き(Manual for Bacterial Determinology)は細菌および古細菌の十分なリストを提供している。医薬的目的には、ヒトのタンパク質が好まれることが大変多く、すなわち好適な態様を形成する本発明の組換え体宿主は、ポリペプチドがヒト起源である宿主となるだろう。食品製造のような目的には、適当にはヘテロロガスなポリペプチドは動物、植物または藻類起源のものとなるだろう。したがってそのような態様は本発明の適当な例であると考えられる。あるいは有用である態様には、任意の細菌、酵母、ウイルス、古細菌および真菌起源のヘテロロガスなポリペプチドを含む。真菌起源が最も好適である。
【0039】
本発明の適当な態様は、適合したコドン使用頻度を含むヘテロロガスな核酸配列を含んで成る。そのような配列は宿主に由来する自然なアミノ酸配列をコードするが、異なる核酸配列を有し、すなわち中の特定のコドンが発現のために宿主株によりより容易に使用される同じアミノ酸配列をコードする他のコドンに置き換えられている。これによりヘテロロガスな核酸配列のより良い発現を導ことができる。これは当業者には一般的な事柄である。この適合したコドン使用頻度は、非−真菌のコドンの利用に比べて真菌の既知のコドン使用頻度に基づき行うことができる。さらに特別にクリソスポリウム(Chrysosporium)自体のコドン使用頻度に適合させることもできる。この類似性はトリコデルマ(Trichoderma)、フミコーラ(Humicola)およびアスペルギルス(Aspergillus)で観察されるコドン使用頻度が、コドン使用頻度を適合せずにそのような微生物の配列の交換を可能にできるはずとなるものである。当業者はこれら真菌のコドン使用頻度に関する詳細を入手することができ、そしてそれは引用により本明細書に編入する。
【0040】
本発明は上に挙げた組換え体のクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株に限定されず、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株のホモロガスなタンパク質をコードする核酸配列を含んで成る組換え体のクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株も網羅し、該核酸配列は発現調節配列に操作可能に連結され、そして該組換え体株は同じ条件下では対応する非−組換え体株よりもより多く該タンパク質を発現する。目的のホモロガスなポリペプチドの場合、それは好ましくは本明細書にいたるところに記載しているヒドロラーゼ、プロテアーゼまたは炭水化物分解酵素のような中性またはアルカリ性酵素である。ポ
リペプチドは酸性でよい。好ましくは組換え体株は非−組換え体株よりも大量にポリペプチドを発現するだろう。ヘテロロガスなポリペプチドに関して述べたすべての解説は、ホモロガスなポリペプチドであるセルラーゼにも有効(個々の違いは考慮して)である。
【0041】
このように本発明は遺伝的に操作された微生物株も網羅、ここで導入される配列はクリソスポリウム(Chrysosporium)起源である。しかしそのような株は、例えばクリソスポリウム(Chrysosporium)を形質転換またはトランスフェクトするために使用する核酸配列中に存在するヘテロロガスな配列により、または目的のポリペプチドをコードする配列の多数のコピーが存在するという事実により、またはこれらが同一条件下で操作していない株を上回る量で発現されるという事実により、または発現が通常は非発現の条件で起こるという事実により、自然に存在する株と識別することができる。非組換え体の状況、または操作していない株で誘導する因子とは別の因子が発現を誘導する場合と対照的に、これは誘導性プロモーターが目的配列を調節する場合であり得る。本発明は古典的な遺伝子技法または遺伝子操作法のいずれかを使用した操作を通して誘導された株を対象とする。
【0042】
本発明に従い発現系およびそれらを含む宿主株は、炭水化物分解酵素(セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ、マンノシダーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、例えばグルコアミラーゼ、α-アミラーゼ、α-およびβ-ガラクトシダーゼ、α-およびβ-グルコシダーゼ、β-グルカナーゼ、キチナーゼ、キタナーゼ)、プロテアーゼ(エンドプロテアーゼ、アミノ-プロテアーゼ、アミド-およびカルボキシ-ペプチダーゼ、ケラチナーゼ)、他のヒドロラーゼ(リパーゼ、エステラーゼ、フィターゼ(phytase))、酸化還元酵素(カタラーゼ、グルコース-オキシダーゼ)およびトランスフェラーゼ(トランスグリコシラーゼ、トランスグルタミナーゼ、イソメラーゼおよびインベルターゼ)から選択されるヘテロロガスなタンパク質をコードする核酸配列を含んで成ることができる。
【0043】
本発明に従い生産される最も興味深い産物は、セルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼであり、ここでセルラーゼおよびキシラナーゼは、ベータ-1,4-結合を開裂し、そしてセルラーゼはエンドグルカナーゼ、セロビオヒドラーゼおよびベータ-グルコシダーゼを含んで成る。これらのタンパク質は当該技術分野で知られている種々の工業的プロセスに大変有用である。特にセルラーゼに関して、我々は例えばセロビオヒドラーゼおよびエンドグルカナーゼの使用を記載する国際公開第98/15633号明細書を言及する。該出願内容は引用により本明細書に編入する。
【0044】
本発明による組換え体は、目的のポリペプチドをコードする核酸配列を有することができ、酸性pH、すなわち6未満のpH、さらにpH5.5未満、より適当にはpH5未満、そしてさらにpH4以下のpHで不活性化または不安定であるポリペプチドをコードする。一般に開示されている真菌の発現系は中性からアルカリ性の条件下では培養されず、酸性pHで培養されるので、これは特に興味深い態様である。すなわち本発明による系は、酸性pHでは不活性化されるか、または不安定になり易いタンパク質またはポリペプチドの安全な真菌発現系を提供する。
【0045】
本発明による任意の態様で定める極めて特別な組換え株は(ここで目的のポリペプチドをコードする核酸配列は、5より高いpHで、好ましくは中性もしくはアルカリ性のpHで(すなわち7より高い)かつ/または6より高いpHで最適活性および/または安定性を表すタンパク質またはポリペプチドをコードする)、本発明の好適な態様であると考える。そのようなpH値で、50%より多く、70%より多く、そしてさらに90%より多い最適活性が特に有用な態様であると思われる。培養条件下ぜ発現するポリペプチドは、培養条件で活性である必要は無く、実際には活性状態が宿主に対して害となり得るので、不活性である培養条件下で培養することが有利となり得る。しかし必要なことは、培養条件下でタンパク質またはポリペプチドが安定であるということである。安定性は、熱安定性であり得る。
これはまた例えば目的のポリペプチドまたはタンパク質の生産または応用の組成物または方法に存在するような、特別な組成物または化学物質に対する安定性でもあり得る。セルラーゼまたはリパーゼ等を含んで成る界面活性剤組成物中のLASは、タンパク質にしばしば有害な化学物質である。応用で使用する期間は、短期から長期の暴露で変動するので、安定性は応用毎に変わる変動する時間の長さにわたる。当業者は場合毎に正しい条件を確認することができるだろう。種々の酵素産物の最適活性を決定するために、多数の市販されているアッセイを利用することができる。例えばシグマおよびメガザイムのカタログにはそれらが示されている。具体的な試験例は、本明細書のいたるところで挙げている。製造元は応用に関する指針を提供する。
【0046】
クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株は、発現すべき目的の配列で形質転換またはトランスフェクトするために適当に使用されることができ、そしてそのような株は比較的低いバイオマスを現す。我々は、発酵の終わりに200〜600cPの粘度までに培養した時、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株はトリコデルマ レッセイ(Trichoderma reesei)よりも2〜5倍低いバイオマスを有し、そして対応する条件下で1500〜2000cPの粘度までに培養した時、アスペルギルス ニガー(Aspergillusniger)よりも10〜20倍低いバイオマスを現し、すなわちそれらの各々の最適培養条件が高レベルの発現を提供できることを見いだした。この発現レベルは大変少ないバイオマスおよび大変低い粘度で2種の市販の参照株をはるかに上回る。これはそのようなクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株の発現の収量が、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)およびトリコデルマ レッセイ(Trichoderma reesei)の収量よりもかなり高いことを意味する。そのように形質転換またはトランスフェクトしたクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株は、本発明の適当な態様を形成する。
【0047】
上記の条件下で、トリコデルマ レッセイ(Trichoderma reesei)に関して2,5〜5,0g/リットル、そしてアスペルギルス ニガー(Aspergillusniger)に関して5〜10のバイオマスに対して、クリソスポリウム属(Chrysosporium)のC1(18-25)株に関しては0,5〜1.0g/リットルのバイオマスを見いだした。実施例ではこの方法の詳細を提供する。
【0048】
適当な態様では、対応する、または同一の条件、すなわち各々の最適培養条件下で、組換え体クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株はUV13-6またはC-19により生産されるセルラーゼのリットルあたりのモル生産に少なくとも等しい量で、そして最も好ましくはUV18-25株により生産される量に少なくとも等しいか、より多くのタンパク質またはポリペプチドを生産する。
【0049】
我々は発現および分泌率が、UV18-25株の菌糸の形態、すなわち分断した短い菌糸を現すクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株を使用した時に非常に高いことも見いだした。このように本発明の組換え株は好ましくはそのような形態を現す。しかし本発明はこの新規および強い特徴を現す非-組換え株または他の操作したクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株も網羅する。また本発明はさらに、等しい発酵条件下で、C1に比べて、好ましくはUV13-6株よりも低い、好ましくはNG7C-19よりも低い、好ましくはUV18-25よりも低い、減少した胞子形成を現す本発明により記載される任意の態様の組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株も網羅する。また本発明はさらに、等しい発酵条件下で少なくともC1に匹敵する、好ましくは任意のUV13-6、NG7C-19およびUV18-25に匹敵するバイオマスに対するタンパク質生産量比を現す本発明に従い記載された任意の態様における組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株を網羅する。しかし本発明は、そのままで、または他の任意の他の態様と組み合わせてこの新規および強い特徴を現す非-組換え株あるいは他の操作したクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株も網羅する。
【0050】
本発明の別の魅力的な態様はまた、対応するもしくは同一の醗酵槽条件下で株NG7C-19
のものより下、好ましくはUV18-25のものより下の粘度を表す組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株も包含する。本発明は、しかしながら、それ自体もしくは他の態様のいずれかと組合せでこの新規かつ発明の特徴を表すクリソスポリウム属(Chrysosporium)の非組換え株もしくは別の方法で工作された株もまた包含する。われわれは、UV18-25の培養物の粘度が、200〜600cPの次数のものであるトリコデルマ レエセイ(Trichoderma reesei)のものと対照的に10cPより下である(黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)のものは醗酵の終了時にそれらのそれぞれの至適の培養条件下で1500〜2000cPの次数のものである)ことを決定した。こうした決定に使用された方法を実施例に提供する。
【0051】
粘度は多くの場合に視覚的モニタリングにより評価することができる。物質の流動性は、それがほぼ固体、ソース様もしくは液体であることができるくらい大きな程度まで変動することができる。粘度はまた、ブルックフィールド回転粘度測定、運動学的粘度管の使用、落下球体粘度計もしくはカップ型粘度計により容易に確かめることもできる。こうした低粘度培養物からの収量は、時間単位および細胞あたりで、商業的な既知のより高粘度の培養物からより大きい。
【0052】
本発明のこうした低粘度の培養物の加工は、とりわけ培養物がスケールアップされる場合に有利である。低粘度をもつ主題のクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株は、約150,000リットルの培養物までの培養物中で非常に良好に機能する。従って、150,000リットルまでのいかなる培養物の大きさも、本発明の有用な一態様を提供する。いかなる他の慣習的な大きさの醗酵も、本発明の株を用いて良好に実施されるはずである。これの後ろにある論法は、大スケール生産において、濃厚すぎる菌糸体を有しかつ/もしくは不均一に分布される凝集物の形成を伴う問題を生じる可能性があることである。培地は、結果として、培養の間効率的に利用されることができず、従って、とりわけ大スケールの醗酵において、すなわち150,000リットルを越えて、非効率的な生産工程につながる。通気および混合が問題になり、酸素および栄養素の窮乏、そして従って培養の間の生産的バイオマスの低下された濃度およびポリペプチドの低下された収量につながり、かつ/またはより長い醗酵時間をもたらす可能性がある。加えて、高粘度および高剪断は商業的醗酵工程で望ましくなく、そして、現在の商業的工程において、それらは生産制限因子である。全部のこれらの負の局面は、この点で商業的に使用されるトリコデルマ レエセイ(Trichoderma reesei)、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)および麹菌(Aspergillus oryzae)よりずっとより良好な特徴を表す、すなわちより良好なタンパク質産生レベルおよび粘度の特性ならびにバイオマスの形状を表す、本発明のクリソスポリウム属(Chrysosporium)の宿主により克服することができる。
【0053】
本発明の前述の態様のいずれかのクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株(前記株は、上に挙げられた炭水化物分解酵素、プロテアーゼ、他の加水分解酵素、酸化還元酵素および転移酵素から選択される真菌酵素の1種もしくはそれ以上の産生をさらに表す)は、本発明のとりわけ有用な一態様を考慮される。最も興味深い産物は、とりわけ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼである。しかしながら、中性もしくはアルカリ性の至適の安定性および/または活性、好ましくはアルカリ性の至適の安定性および/もしくは活性を表す1種もしくはそれ以上の真菌酵素の産生を表すクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株もまた本発明の態様として有用であり、前記酵素は、炭水化物分解酵素、加水分解酵素およびプロテアーゼ、好ましくは加水分解酵素および炭水化物分解酵素から選択される。非組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)の場合には、こうした酵素は、適しては国際特許出願第WO 98/15633号明細書に開示されるところのセルラーゼ以外である。とりわけ興味深い酵素は、キシラナーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルカナーゼおよびペクチナーゼである。酵素は前述されたものに制限されない。記述中の別の場所の安定性および活性に関する批評はここでもまた妥当である。
【0054】
本発明はまた目的のポリペプチドの製造方法も包含し、前記方法は、ポリペプチドの発現および好ましくはその分泌を可能にする条件下で、本発明の態様のいずれかにおいて、宿主株(例えば、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ハンセヌラ属(Hansenula)、ケカビ属(Mucor)、ピキア属(Pichia)、ニューロスポラ属(Neurospora)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、リゾムコール属(Rhizomucor)、フサリウム属(Fusarium)、ペニシリウム属(Penicillium)のもののような真菌の、もしくは細菌の、または他の微生物の)を培養すること、ならびにその後目的の産生されたポリペプチドを回収することを含んで成る。
【0055】
タンパク質もしくはポリペプチドが挙げられる場合、非突然変異体の活性を表す変異体および突然変異体、例えば天然に存在するタンパク質の置換、挿入もしくは欠失突然変異体を包含することを意図している。同じことが対応する核酸配列に関して妥当である。遺伝子シャッフリング、タンパク質工学、ならびに進化分子工学(directed evolution)部位特異的突然変異誘発およびランダム突然変異誘発のような方法は、それによりこうしたポリペプチド、変異体もしくは突然変異体を得ることができる方法である。米国特許第5,223,409号、同第5,780,279号および同第5,770,356号明細書は進化分子工学の教示を提供する。この方法を使用すれば、例えばerror prone PCRを介する遺伝子シャッフリングにより創製された無作為に突然変異された遺伝子配列のライブラリーは、いかなる細胞型中ででも生じる。各遺伝子は、分泌領域、および生じるタンパク質が分泌されかつ宿主表面に固定されて留まるようなそれに結合された固定化領域を有する。その後、特定のポリペプチドの生物学的活性を必要とする条件が創製される。これが多数の周期の間起こり、最終的に所望の特徴をもつ最終的な遺伝子に至る。言い換えれば進化の加速された指図された過程。米国特許第5,763,192号明細書もまた、確率的に生成された配列を結合する合成ポリペプチドによってDNA、RNA、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質を得る方法、宿主へのその導入、次いで対応する予め決められた特徴をもつ宿主細胞の選択を記述する。
【0056】
本発明の方法の別の応用は「進化分子工学」の過程にあり、ここで、新規タンパク質をコードするDNA配列が生成され、コードされたタンパク質が宿主細胞中で発現され、そして所望の特徴を有するタンパク質をコードするそれらの配列が突然変異されかつ再度発現される。該過程を、所望の特徴をもつタンパク質が得られるまで多数の周期の間反復する。遺伝子シャッフリング、タンパク質工学、erro−prone PCR、部位特異的突然変異誘発、ならびにコンビナトリアルおよびランダム突然変異誘発は、それにより外因性タンパク質をコードする新規DNA配列を生成させることができる方法の例である。米国特許第5,223,409号、同第5,780,279号および同第5,770,356号明細書は進化分子工学の教示を提供する。KuchnerとArnold、Trends in Biotechnology、15:523−530(1997);Schmidt−DannertとArnold、Trends in Biotech.、17:135−136(1999);ArnoldとVolkov、Curr.Opin.Chem.Biol.、3:54−59(1999);Zhaoら、Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology、第2版(DemainとDavies編)pp.597−604、ASM プレス(ASM Press)、ワシントンDC、1999;ArnoldとWintrode、Encyclopedia of Bioprocess Technology:Fermentation,Biocatalysis,and Bioseparation,(FlickingerとDrew編)pp.971−987、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、199
9;およびMinshullとStemmer、Curr.Opin.Chem.Biol.3:284−290もまた参照されたい。
【0057】
コンビナトリアル突然変異誘発の一応用が、Huら、Biochemistry.1998 37:10006−10015に開示される。米国特許第5,763,192号明細書は、合成配列を確率的に生成させること、それらを宿主中に導入すること、および所望の特徴をもつ宿主細胞を選択することによる、新規タンパク質をコードするDNA配列を得る方法を記述する。人工的遺伝子組換えを遂げる方法(DNAシャッフリング)は、ランダムプライミング組換え(Z.Shaoら、Nucleic Acids Res.、26:681−683(1998))、付着伸長プロセス(H.Zhaoら、Nature Biotech.、16:258−262(1998))、およびヘテロ二重鎖組換え(A.Volkovら、Nucleic Acids Res.27:e18(1999))を包含する。error−prone PCRはなお別のアプローチである(SongとRhee、Appl.Environ.Microbiol.66:890−894(2000))。
【0058】
進化分子工学の方法での選択段階の2つの広範に実施される実施方法が存在する。一方法において、目的のタンパク質活性は、なんらかの形で宿主細胞の生存に不可欠にされる。例えば、所望の活性がpH8でのセルラーゼ活性である場合、セルラーゼ遺伝子を突然変異させかつ宿主細胞中に導入することができる。形質転換体を、単独の炭素源としてセルロースを用いて成長させ、そして数個のみの生存体が残存するまでpHを徐々に上昇させる。比較的高いpHで活性のセルラーゼをおそらくコードする、生存体からの突然変異されたセルラーゼ遺伝子を、もう1回の突然変異にかけ、そしてpH8でセルロースで成長することができる形質転換体が得られるまで該方法を反復する。酵素の熱安定性の変異体を、遺伝子突然変異および宿主細胞の高温培養の周期により、同様に進化させることができる(Liaoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:576−580(1986);Giverら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:12809−12813(1998))。
【0059】
大きく平行な「最も適合するものの生存(survival of the fittest)」アプローチへの一代替は連続スクリーニングである。このアプローチにおいて、個々の形質転換体を、表示培地上で成長するコロニーの周囲の浄化された(cleared)もしくは着色された領域の観察、比色もしくは蛍光測定的酵素アッセイ、イムノアッセイ、結合アッセイなどのような伝統的方法によりスクリーニングする。例えば、Jooら、Nature 399:670−673(1999)(補助因子としてNADHを必要としないチトクロームP450モノオキシゲナーゼを突然変異およびスクリーニングの周期により進化させた);Mayら、Nature Biotech.18:317−320(2000)(逆転された立体選択性のヒダントイナーゼを類似の様式で進化させた);ならびにMiyazakiら、J.Mol.Biol.297:1015−1026(2000)(熱安定性のズブチリシンを進化させた)を参照されたい。
【0060】
標準的なクローニングおよびタンパク質もしくはポリペプチド単離技術を使用して、必要とされる配列情報に到達することができる。既知の配列の一部を、他の属および株中の他の相同物を単離するためのプローブとして使用することができる。例えば、特定の酵素活性をコードする核酸配列を使用して、クリソスポリウム属(Chrysosporium)のライブラリーをスクリーニングすることができる。当業者はどのハイブリダイゼーション条件が適切であるかを十分に理解することができる。ライブラリーの核酸ハイブリダイゼーションの構築のための慣習的方法およびクローニング技術は、“Molecular Cloning.A Laboratory Manual”コールド スプリング ハーバー(Cold Spring Harbor)、プレス プレインビュー(P
ress Plainview)、ニューヨーク中、Sambrookら(編)(1989)、およびAusubelら(編)“Current Protocols in Molecular Biology”(1987)ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨーク中に記述される。関連する情報は、より最近の手引書および特許、ならびに当該分野の多様な商業的に入手可能なキットに由来することもまたできる。
【0061】
代替の一態様において、前記方法は、タンパク質もしくはポリペプチドまたはそれらの前駆体の発現および好ましくは分泌を可能にする条件下で本発明の株を培養すること、ならびにその後、産生されたポリペプチドを回収すること、ならびに、場合によっては前駆体を付加的な単離および精製段階にかけて目的のポリペプチドを得ることを含んで成る。こうした方法は、適しては、前駆体の目的のポリペプチドもしくは前駆体への切断段階を含んでよい。切断段階は、例えばプロテアーゼ切断部位が十分に分泌されるタンパク質キャリアおよび目的のポリペプチドを連結する場合は、Kex−2様プロテアーゼ、いずれかの塩基性アミノ酸と対にされるプロテアーゼ、もしくはKex−2での切断であることができる。こうしたものについてのコンセンサス配列の詳細が入手可能であり、また、多数の代替(例えばフリン)が既に開示されているため、当業者はKex−2様プロテアーゼ配列を容易に見出すことができる。
【0062】
適しては、本発明の態様のいずれかのポリペプチドの製造方法において、培養は5、好ましくは5−10、より好ましくは6−9より高いpHで起こる。適しては、こうした方法において、培養は、25〜43℃の間の温度、好ましくは30〜40℃で起こる。本発明の方法で使用される株は、極めて適しては、組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)株もしくは他の真菌または非真菌株である。本発明の方法は、こうした場合に、本発明の組換え株の製造の段階によりさらに先行されることができる。適切な条件の選択は発現されるべきポリペプチドの性質に依存することができ、そして、こうした選択は当業者の通常の活動の範囲内に十分にある。
【0063】
本発明の組換え株の製造方法もまた主題の発明の一部である。該方法は、異種もしくは同種のポリペプチドをコードする核酸配列を適する宿主株に安定に導入することを含んで成り、前記核酸配列は発現を制御する領域に操作可能に連結され、前記導入は糸状菌の形質転換についてそれ自体既知の様式で起こる。上に述べられたとおり、これについての多数の参考文献が入手可能であり、かつ、少数の選択されたものが引用されている。提供される情報は、当業者が過度の負担なしで該方法を実施することを可能にするのに十分である。該方法は、それ自体もしくは組合せで本発明の組換え株の多様な態様で記述された核酸要素のいずれかを含んで成る核酸配列の導入を含んで成る。
【0064】
例として、導入はプロトプラスト形質転換法を使用して起こることができる。該方法を実施例に記述する。代替のプロトプラストもしくはスフェロプラスト形質転換法が既知であり、かつ、他の糸状菌について従来技術に記述されているとおり使用することができる。こうした方法の詳細は引用された参考文献の多くで見出すことができ、そして従って引用することにより組み込まれる。本発明の方法は、適しては、目的のポリペプチドをコードする所望の配列の導入のための出発原料として非組換え株を使用することを含んで成る。
【0065】
主題の発明はまた、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の酵素の製造方法も包含し、前記方法は、中性およびアルカリ性のpH範囲の例として5、好ましくは5〜10、より好ましくは6〜9、適しては6〜7.5、7.5〜9より高いpHの培地中もしくは培地上でクリソスポリウム属(Chrysosporium)もしくは他の株を培養することを含んで成る。
【0066】
より一般的には、本発明は、中性もしくはアルカリ性の至適活性および/もしくは安定性、好ましくはアルカリ性の至適活性および/もしくは安定性を表す酵素の製造方法をさらに包含する。pHに対する好ましい範囲および至適の活性、ならびにそれを用いてこうしたものを決定するためのアッセイは、記述中の別の場所に提供されている。該酵素は、上述されたとおり、炭水化物分解酵素、プロテアーゼ、他の加水分解酵素、酸化還元酵素および転移酵素から選択されるべきであり、前記方法は、対応する酵素をコードする核酸配列で形質転換もしくはトランスフェクトされた宿主細胞を培養することを含んで成る。適しては、こうした酵素はクリソスポリウム属(Chrysosporium)の酵素であることができる。これのような適する一方法は、とりわけセルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼの製造を含んで成り、ここで、セルラーゼおよびキシラナーゼはβ−1,4−結合を切断し、また、セルラーゼはエンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼおよびβ−グルコシダーゼを含んで成る。本発明の方法は、こうした前述の酵素をコードする核酸を含んで成る本発明のいずれかのクリソスポリウム属(Chrysosporium)の宿主を培養することを含むことができる。適しては、本発明の非組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)宿主の製造は、炭水化物分解酵素、加水分解酵素およびプロテアーゼの製造に向けられる。こうした場合には、酵素は適してはセルラーゼ以外である。単離方法は、国際特許出願第WO 98/15633号明細書に記述されるものに類似であり、そして引用することにより組み込まれる。
【0067】
本発明により製造される酵素もまた本発明により包含される。本発明の非組換えクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株から単離することができるところのクリソスポリウム属(Chrysosporium)起源の酵素もまた包含される。それらは前述の安定性、活性の特徴を表す。適しては、それらはLASの存在下で安定である。とりわけ、前述の安定性、活性の特徴をもつ、pI 4〜9.5をもつプロテアーゼ、25〜95kDのMWをもつプロテアーゼ、4.0と9.5との間のpIをもつキシラナーゼ、25と65kDとの間のMWをもつキシラナーゼ、3.5と6.5との間のpIをもつエンドグルカナーゼ、25〜55kDaのMWをもつエンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼ、4〜4.5のpIをもつα,β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、45〜50kDaのMWをもつα,β−ガラクトシダーゼ、pI 4〜5のセロビオヒドロラーゼ、MW 45〜75kDaのセロビオヒドロラーゼ、例えば55kDのMWおよびpI 4.4、4.0〜5.0のpIをもつポリガラクツロナーゼ、60〜70kDa、例えば65kDaのポリガラクツロナーゼ、pI 4〜5をもつエステラーゼ、ならびに95〜105kDaのMWをもつエステラーゼが特許請求される。分子量(MW)はSDS−PAGEにより決定されるものである。非組換えの、すなわち天然に存在する酵素は、国際特許出願第WO 98/15633号明細書に開示されるところのセルラーゼ以外である。上に挙げられたpI値および分子量の組合せをもつ酵素もまた包含される。
【0068】
本発明はまた、本発明の突然変異体(組換え)株による非タンパク質産物の(過剰)産生にも関する。こうした非タンパク質産物は、有機酸、アミノ酸のような一次代謝物、ならびに抗生物質、例えばペニシリンおよびセファロスポリン、ならびに他の治療薬のような二次代謝物を包含する。これらの産物は、目的の数種の真菌遺伝子を必要とする生化学的経路の複合の結果である。真菌の一次および二次代謝物、ならびに真菌生物体中でのこれらの代謝物を産生させるための手順は当該技術分野で公知である。一次代謝物の産生の例は、Mattey M.、The Production of Organic Acids、Current Reviews in Biotechnology、12、87−132(1992)により記述されている。二次代謝物の産生の例は、Penalvaら The Opimization of Penicillin Biosynthesis in Fungi、Trends in Biotechnology
16、483−489(1998)により記述されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】発明にかかる、pUT1064の地図である。
【図2】発明にかかる、pUT1065の地図である。
【実施例】
【0070】
クリソスポリウム属(Chrysosporium)、トリコデルマ属(Tricoderma)およびトリポクラジウム ゲオデス(Tolypocladium geodes)を比較した形質転換の例
2種の形質転換されないクリソスポリウム属(Chrysosporium)のC1株、および1種のトリコデルマ レエセイ(Trichoderma reesei)の参照株を、2種の培地(Gs pH6.8およびプリダム(Pridham)アガー、PA、pH6.8)上で試験した。抗生物質耐性レベルを試験するために、胞子を7日齢のPDAプレートから収集した。選択プレートを32℃でインキュベートし、そして2、4および5日後に記録した(score)。C−1株NG7C−19およびUV18−25は、フレオマイシンおよびヒグロマイシン双方に対する低い基礎の耐性レベルを明白に有したということになった。このレベルは、参照のT.レエセイ(T.reesei)の普遍的に使用される実験室株のものに匹敵する。従って、これら2種の標準的な真菌の選択可能なマーカーを、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の株で十分に使用することができる明白な表示が存在する。他の標準的な真菌の選択可能なマーカーでの問題は期待されないはずである。
【0071】
Sh−ble(フレオマイシン耐性)の形質転換されたクリソスポリウム属(Chrysosporium)の株の選択を、50μg/mlで成功裏に実施した。これはまたT.レエセイ(T.reesei)に使用された選択レベルでもあり、かように、示差的選択がクリソスポリウム属(Chrysosporium)において容易に達成することができることを示した。同一の批評が、150μg/mlのレベルでヒグロマイシン耐性をもつ形質転換された株について妥当である。
【0072】
プロトプラスト形質転換技術を、最も一般に適用される真菌形質転換技術に基づいて、クリソスポリウム属(Chrysosporium)で使用した。1枚の90mmPDAプレートからの全部の胞子を8mlのIC1中に回収し、そして35℃かつ200rpmで15時間のインキュベーションのため、50mlのIC1培地の振とうフラスコに移した。これの後、培養物を遠心分離し、ペレットをMnPで洗浄し、10mlのMnPおよび10mg/mlのケイラーゼ(Caylase)C3中の溶液に戻し、そして攪拌(150rpm)を伴い35℃で30分間インキュベートした。
【0073】
該溶液を濾過し、そして濾液を3500rpmで10分間の遠心分離にかけた。ペレットを10mlのMnPCa2+で洗浄した。これを25℃で10分間遠心分離した。その後、50マイクロリットルの冷MPCを添加した。混合物を氷上で30分間保ち、その後2.5mlのPMCを添加した。室温で15分後に、500マイクロリットルの処理されたプロトプラストを3mlのMnR Softに混合し、そして直ちに、選択剤としてフレオマイシンもしくはヒグロマイシンを含有するMnRプレート上でプレート培養した。30℃で5日間のインキュベーション後に、形質転換を分析した(クローンは48時間後に見えるようになる)。形質転換効率を、10マイクログラムの参照プラスミドpAN8−119を使用して決定した。結果を以下の表1に提示する。
【0074】
【表1】

【0075】
クリソスポリウム属(Chrysosporium)の形質転換体の生存率はトリコデルマ属(Trichoderma)のものより優れている。これらの株の形質転換可能性は比較可能であり、そして、従って、1回の実験で得られた形質転換体の数は、T.レエセイ(T.reesei)についてよりクリソスポリウム属(Chrysosporium)について4倍より高く存する。従って、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の形質転換系は、普遍的に使用されるT.レエセイ(T.reesei)系に同等であるのみならず、しかしそれを凌ぎさえする。この改善は、pAN8−1より少なく形質転換が効率的であるベクターにとりわけ有用と判明する可能性がある。こうしたより少なく効率的な形質転換ベクターの例は、一般に10倍より少ない形質転換体を生じさせる非真菌タンパク質の産生のためのタンパク質キャリアベクターである。
【0076】
多数の他の形質転換および発現ベクターを、同種のクリソスポリウム属(Chrysosporium)のタンパク質をコードする配列、およびまたクリソスポリウム属(Chrysosporium)を用いる形質転換実験での使用のために異種タンパク質をコードする配列を用いて構築した。
【0077】
発現系の例は、キシラナーゼの読取り枠と同じ読み枠でキシラナーゼシグナル配列に連結されたクリソスポリウム属(Chrysosporium)のキシラナーゼXyl1プロモーターフラグメント、次いでキシラナーゼターミネーター配列を包含する。形質転換体の選択は、選択可能なベクターを用いる共形質転換を使用することにより実施する。
【0078】
別の例は、ペニシリウム属(Penicillium)のエンドグルカナーゼ3の読取り枠と同じ読み枠のペニシリウム属(Penicillium)のエンドグルカナーゼ3のシグナル配列に連結されたクリソスポリウム ルクノウェンセ(Chrysosporium lucknowense)のセロビオヒドロラーゼプロモーター、次いでクリソスポリウム属(Chrysosporium)のセロビオヒドロラーゼターミネーター配列である。加えて、このベクターは、選択マーカー、すなわちアセトアミダーゼS遺伝子(AmdS遺伝子)を含む第二の発現カセットを担持する。
【0079】
さらなる一例は、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)のグルコアミラーゼのシグナル配列に連結されたクリソスポリウム属(Chrysosporium)のグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素1のプロモーター、およびヒトインターロイキン6の読取り枠に融合されたグルコアミラーゼの読取り枠を含んで成る。加えて、このベクターは、選択マーカー、すなわちAmdS遺伝子を含む第二の発現カセットを担持する。
【0080】
なおさらなる一例は、エンドグルカナーゼ5の読取り枠に連結されたアスペルギルス
ニズランス(Aspergillus nidulans)のグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素Aのプロモーター、次いでアスペルギルス ニズランス(Aspergillus nidulans)のターミネーター配列である。
【0081】
クリソスポリウム属(Chrysosporium)の形質転換体の異種および同種発現の例
C1株(NG7C−19および/もしくはUV18−25)を、多様な異種タンパク質、すなわち、細菌タンパク質(ストレプトアロテイクス ヒンズスタヌス(Streptoalloteichus hindustanus)のフレオマイシン耐性タンパク質、Sh ble)、真菌タンパク質(トリコデルマ レエセイ(Trichoderma
reesei)のキシラナーゼII、XYN2)およびヒトタンパク質(ヒトリゾチーム、HLZ)を分泌するそれらの能力について試験した。
【0082】
トリコデルマ レエセイ(Trichoderma reesei)のキシラナーゼII(XYN2)のC1分泌。
C1株UV18−25をプラスミドpUT1064およびpUT1065により形質転換した。
【0083】
pUT1064は2種の以下の真菌発現カセットを与える。すなわち、
第一のカセットはフレオマイシン耐性の形質転換体の選択を可能にする:
・ニューロスポラ クラサ(Neurospora crassa)の交差経路制御遺伝子1(cpc−1)プロモーター14
・ストレプトアロテイクス ヒンズスタヌス(Streptoalloteichus hindustanus)のフレオマイシン耐性遺伝子Sh ble4
・アスペルギルス ニズランス(Aspergillus nidulans)のトリプトファン合成酵素(trpC)ターミネーター5
第二のカセットはキシラナーゼ産生カセットである:
・T.レエセイ(T.reesei)のTR2株のcbh1プロモーター15
・T.レエセイ(T.reesei)のTR2株のxyn2遺伝子(そのシグナル配列を包含する)16
・T.レエセイ(T.reesei)のTR2株のcbh1ターミネーター15
該ベクターはまた、プラスミドpUC19からの大腸菌(E.coli)の複製起点も担持する6。該プラスミドの詳述された地図を図1に提供する。
【0084】
pUT1065は以下の真菌発現カセットを与える:
・A.ニズランス(A.niculans)のグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(gpdA)プロモーター2
・合成のT.レエセイ(T.reesei)のセロビオヒドロラーゼI(cbh1)シグナル配列1,3
・キャリアタンパク質10として使用されるS.ヒンズスタヌス(S.hindustanus)のフレオマイシン耐性遺伝子Sh ble4
・KEX−2様プロテアーゼ切断部位を特徴とするリンカーペプチド(SGERK)1
・T.レエセイ(T.reesei)のTR2株のxyn2遺伝子(シグナル配列を含まない)16
・A.ニズランス(A.nidulans)トリプトファン合成酵素(trpC)ターミネーター5
該ベクターはまた、β−ラクタマーゼ遺伝子(bla)、およびプラスミドpUC18からの大腸菌(E.coli)の複製起点も担持する6。該プラスミドの詳述された地図を図2に提供する。
【0085】
C1プロトプラストを、上の例で既に記述されたと同一の手順に従って、プラスミドpUT1064もしくはpUT1065で形質転換した。プラスミドpUT1065中の融合タンパク質(Sh ble::XYN2)はフレオマイシン耐性に関して機能的であり、従ってC1形質転換体の容易な選択を可能にする。さらに、フレオマイシン耐性のレベルはxyn2発現のレベルとおおまかに相関する。pUT1064において、xyn2をそれ自身のシグナル配列とともにクローン化した。
【0086】
C1形質転換体(フレオマイシン耐性クローン)のキシラナーゼ産生を、以下のようなキシラナーゼ活性アッセイにより分析した。すなわち、一次形質転換体を、GS+フレオマイシン(5μg/ml)プレート(耐性確認)に、およびまたXYLANプレート(浄化領域の可視化によるキシラナーゼ活性検出17)上に、つまようじで移した。プレートを32℃で5日間成長させた。それぞれの妥当性が確認されたクローンをXYLANプレートにサブクローニングした。形質転換体あたり2個のサブクローンを使用して、液体培養の開始のための胞子を得るためにPDAプレートに接種した。IC1+5g/l フタル酸カリウム中の液体培養物を27℃(180rpmで振とうする)で5日間成長させた。その後、培養物を遠心分離(5000g、10分)した。これらのサンプルから、キシラナーゼ活性を、Millerら18によるDNS技術により測定した。
【0087】
【表2】

【0088】
これらのデータは:
1)実施例2からの点1ないし4が確認される。
2)C1は異種真菌タンパク質の分泌のための宿主として使用することができる。
ことを示す。
【0089】
実施例に対する付録:培地
【0090】
【表3】

【0091】
50μg/mlのフレオマイシンもしくは100〜150μg/mlのヒグロマイシンを補充された再生培地(MnR)を使用して、形質転換体を選択する。5μg/mlのフレオマイシンを補充されたGS培地を使用して抗生物質耐性を確認する。
【0092】
PDAは迅速な成長および良好な胞子形成のための完全な培地である。液体培地に、1/20の胞子懸濁液(5mlの0.1%トゥイーン(Tween)中の1枚の90mmのPDAプレートからの全胞子)を接種する。こうした培養物を、振とうフラスコ(200rpm)中27℃で成長させる。
【0093】
C1遺伝子の単離および特徴づけ、ならびにCBH1、XYL1およびGPDの遺伝子発現配列
UV18−25のBlueSTAR遺伝子ライブラリーの構築
UV18−25の染色体DNAをSau3Aで部分的に消化し、12〜15kbのフラグメントを単離し、そしてクローニングベクターBlueSTARのBamHI部位に連
結した。ライゲーション混合物の20%のパッケージングは、4.6×104個の独立したクローンの遺伝子ライブラリーをもたらした。このライブラリーを増やしそして4℃および−80℃で保存した。ライゲーション混合物の残部もまた4℃で保存した。
【0094】
cbh1、xyl1およびgpd1の遺伝子の単離のためのUV18−25の遺伝子ライブラリーのスクリーニング
多様な遺伝子の単離のため、プローブあたり全体で±7.5×104個の別個のBlueSTARファージを二重で(in duplo)ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションは、同種条件(65℃;0.2×SSC)でcbh1およびxyl1のPCRフラグメント(国際特許出願第WO 00/20555号明細書に記述されるところの)を用いて、ならびに異種条件(53℃;0.5×SSC)で黒色アスペルギルス(A.niger)のgpd1遺伝子を用いて実施した。陽性のシグナルの数を表3に示す。陽性クローンを再スクリーニングし、そして各クローンについて、2個の個別のファージをさらなる実験に使用した。異なるクローンのDNAを制限分析により分析して、各遺伝子から単離される異なるクローンの数を決定した(結果を表3に示す)。
【0095】
3種の遺伝子のそれぞれについて4〜6個の異なるクローンが単離されたため、われわれは、一次遺伝子ライブラリー(±4〜5×104個のクローン)がUV18−25のおよそ5×ゲノムを表すことを結論する。この結果から、われわれは、UV18−25の完全なゲノムが9×103個のクローン中に表されることを結論する。13kbという平均のゲノム挿入物に基づけば、これは±120Mbのゲノムの大きさを示すとみられ、それはアスペルギルス属(Aspergillus)のゲノムの大きさの3倍である。
【0096】
プラスミド上に存在する遺伝子に特異的なプライマー(単離されたPCRフラグメントからの以前に配列決定に基づく)、ならびにpBlueSTARのポリリンカー中に存在するT7およびT3プライマーを用いるPCR反応、われわれは多数のクローン中での該遺伝子の位置を決定することが可能であった。各遺伝子から、プラスミドを該遺伝子の配列決定のために使用した。
【0097】
【表4】

【0098】
表3:cbh1遺伝子およびxyl1遺伝子についてのUV18−25のPCRフラグメント(同種条件)、ならびに黒色アスペルギルス(A.niger)のgpdA遺伝子(異種条件)を用いる、UV18−25の遺伝子ライブラリーの7.5×104個のファージのスクリーニング。DNAの単離および制限分析を使用して、異なるクローンの数を決定した。
【0099】
クローン化された遺伝子の配列分析
cbh1、xyl1およびgpd1遺伝子について、配列決定の結果をそれぞれ配列番号1、3および5に表す。また、該タンパク質の推定されるアミノ酸配列をこれらの配列番号2、4および6に表す。該タンパク質のいくつかの特性を表4に示す。翻訳の開始およびイントロンの位置は、同一のファミリーからの遺伝子との相同性に基づく(すなわち
論文遺伝学(paper genetics))ことが言及されるべきである。
【0100】
CBH1
CBH1のアミノ酸配列から、われわれは、該タンパク質が大きさが約63kDであること、および該タンパク質のC末端部分にセルロース結合ドメイン(CBD)が存在することを結論した。興味深いことに、単離された55kDの主要タンパク質中にCBDの存在の証拠は見出されなかった。しかしながら、コードされるCBH1タンパク質(配列番号1、2)中での、この55kDの主要タンパク質からの単離されたペプチドの存在は、該55kDのタンパク質がクローン化された遺伝子によりコードされることを確認する。これらの結果の可能な説明は、該55kDのタンパク質がCBDを欠くCBH1タンパク質の短縮されたバージョンであることである。
【0101】
セロビオヒドロラーゼCBH1は、MUF−セロビオシド、MUFラクトシド、FPおよびアビセルに対する、また、p−ニトロフェニルβ−グルコシド、セロビオースおよびp−ニトロフェニルラクトシドに対する活性を有する。MUFセロビオシドに対するその活性は、0.4mMの阻害定数を伴い、セロビオースにより阻害される。MUFセロビオシドに対するミカエリス定数は0.14mMであり、MUFラクトシドに対しては4mMであり、そしてCMCに対して3.6g/lであった。pHの至適は4.5から7までである。CMCに対して最大活性の50%、およびRBB−CMCに対して80%の活性がpH8で保たれる。pH5〜8以内の70〜80%の活性が25時間のインキュベーションの間保たれる。温度の至適は60〜70℃である。CBH1は、セロビオヒドロラーゼファミリー7の1メンバーである。本発明の好ましい一態様である対応するCBHプロモーターを配列番号1に示す。
【0102】
Xyl1
Xyl1のアミノ酸配列から、われわれは、またここにCBDが、このタンパク質中でN末端側に(すなわち、シグナル配列にもしくはそれから5アミノ酸未満の距離に直接結合されて)存在することを結論した。文献では、CBDをもつもう少しのキシラナーゼのみが既知である(フサリウム オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フミコラ グリセア(Humicola grisea)およびネオカリマスティクス パトリシアルム(Neocallimastix patriciarum))。Xyl1タンパク質の推定される大きさは43kDであり、そして30kDのキシラナーゼから単離されるいくつかのペプチドはこのタンパク質から発する(配列番号3、4)。いくつかの単離されたペプチドはコードされる配列中で見出すことができなかった。これは、代替のキシラナーゼタンパク質がUV18−25中に存在することを示す可能性がある。以前の分析で、この30kDのタンパク質中でのCBDの存在の証拠は見出されなかった。また、これらの結果から、われわれは、該タンパク質のCBDがタンパク質分解により切断されることを仮定した。この仮説は今後分析されるであろう(活性、異なるC1株、すなわちC1野性型、NG7C、UV13−6、UV18−25、およびUV18−25のプロテアーゼ突然変異体中の異なるタンパク質のN末端配列および大きさの決定により)。また、酵素活性に対するCBDの存在もしくは非存在の影響を、より詳細に分析する。多様なC1宿主中での完全長の遺伝子の過剰発現を考慮してもよい。
【0103】
セルロース結合ドメイン(CBD)の存在は、この酵素の特定の一特徴である。N末端のCBDを有する唯一の他の既知のファミリー10の解糖酵素(キシラナーゼ)は、フサリウム オキシスポルム(Fusarium oxysporum)XylFである。クリソスポリウム ルクノウェンセ(Chrysosporium lucknowense)のXyl1タンパク質のCBDは、配列:WGQCG GQGWT GPTTC VSGAQFVN DWYSQ CV(配列番号4のアミノ酸22−53)を有する。この配列は、米国特許第5,763,254号明細書(ノボ(Novo))に記述され
るCBDのコンセンサス配列に従わない。米国特許第5,763,254号明細書のこのコンセンサス配列は:W/Y−G/A−Q−C−G G−Q/I/N−G/N−W/F/Y−S/T/N/Q G−P/A/C−T/R/K−T/C/N−C X−X−G/P−S/T/F/L/A/− −T/K C−V/T/R/E/K−K/Q/A−Q/I−N
Q/D/A−W/F/Y−Y−Y/S/H/A−Q C−L/I/Q/V/Tであり、ここでW/YはWもしくはYなどのいずれかを意味し、Xはいかなるアミノ酸も意味し、そして−は非存在を意味する。最も縮重のコンセンサス配列を伴う4つの差異がXyl1中に存在し、それは上の配列7中で下線をつけられる。本発明は、従って、このコンセンサスCBDと異なるN末端CBDを有しかつフサリウム オキシスポルム(Fusarium oxysporum)キシラナーゼ以外のキシラナーゼに関する。より具体的には、本発明のキシラナーゼは、上の配列7と最低55%、とりわけ最低65%、好ましくは最低75%の配列の同一性を有するCBDを有する。好ましくは、CBDは、位置23のアミノ酸Phe、TyrおよびTrpの1種、もしくは4種のアミノ酸、位置20のVal、位置22のGln、位置23のPheおよび位置24のValの最低1種を含有する。好ましい配列は、Cys−Xaa−Phe、Xaa−Phe−Val、Cys−Xaa−Phe−Val、Cys−Gln−Phe、Val−Cys−Xaa−Phe、Gln−Phe−Val、Gln−Trp−Val、Gln−Tyr−Val、Val−Cys−Gln、Val−Cys−Gln−Phe、およびVal−Cys−Xaa−Phe−Valを含んで成り、ここでXaaはいずれかのアミノ酸、または好ましくはVal、Thr、Arg、Glu、GlnもしくはLys、または最も好ましくはGlnもしくはGluである。
【0104】
該キシラナーゼはMUFセロビアーゼ活性を所有せず、そして従って真のキシラナーゼである。それは5から8の広範なpH範囲内で高い活性を所有し、pH9〜10で最大活性の65%を維持し;それはキシラナーゼFファミリーの1メンバーである。本発明の好ましい一態様である対応するキシラナーゼプロモーターを配列番号3に示す。カバのキシランに対するミカエリス定数は、30kDのキシラナーゼについて4.2g/lである。温度の至適は高く、そして該キシラナーゼについて70℃に等しい。
【0105】
Gpd1
gpd1遺伝子のC末端部分のDNA配列は決定されていない。この遺伝子のプロモーター配列は本発明の好ましい一態様であり、そして配列番号5に描かれる。
【0106】
4種のクリソスポリウム属(Chrysosporium)の遺伝子の発現レベルをノーザン分析により研究した。多様な株のC.ルクノウェンセ(C.lucknowense)を、セルロースおよび乳糖とともにファーメディア(pharmedia)を含有する豊富培地(培地1)、もしくはファーメディアおよびブドウ糖を含有する豊富培地(培地2)中、33℃で成長させた。48時間後に、菌糸体を収穫しかつRNAを単離した。RNAを、4種の異なるプローブ、すなわちEG5、EG6、Xyl1およびCBHとハイブリダイズさせた。曝露後に、ノーザンブロットを細長い形に切り、そしてブロット上のmRNAの量に対する対照としてリボソームL3に対するプローブと再度ハイブリダイズさせた。大部分の株は、培地1中でCBHに対する非常に高い応答、およびXyl1に対する高い応答を示し;培地2中では、株の半分が全部の遺伝子について高い応答を示し、また、他の半分が低い応答を示した。発現の強さの順序は、これらのデータからCBH>Xyl1>EG5>EG6と推定された。
【0107】
C.ルクノウェンセ(C.lucknowense)のタンパク質Xyl1は、ジェンバンク(Genbank)データベース(DATABASE)中のその最も近い相同物に67%同一(72%相同)である(表4)。その関係するフミコラ グリセア(Humicola grisea)相同物に対するCBH1タンパク質の強い相同性(74%同一
/82%相同)は注目すべきである。全部の場合で、最も近い相同物は、フサリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)もしくは他の核菌類(Sordariamycetous)の真菌から発する(表4)一方、クリソスポリウム属(Chrysosporium)はNCBIのデータベースによれば不整子嚢菌類(Eurotiomycetous)の真菌に属する(表4)こともまた注目される。従って、本発明はまた、不整子嚢菌類の真菌由来のグリカン分解(glycanolytic)酵素、とりわけCBDを含んで成るセロビオヒドロラーゼおよびキシラナーゼにも関する。
【0108】
【表5】

【0109】
参考文献(これらの内容は組み込まれる)
【0110】
【表6】

【0111】
【表7】

【0112】
配列表
【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
【表10】

【0116】
【表11】

【0117】
【表12】

【0118】
【表13】

【0119】
【表14】

【0120】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸配列と[BLASTアルゴリズムで決定した時に]少なくとも75%のアミノ酸同一性を表すクリソスポリウム(Chrysosporium)のグリコシルヒドロラーゼ ファミリー7に対応するタンパク質、または配列番号2のアミノ酸配列1−246または396−526の対応する部分に同一である少なくとも20個の連続するアミノ酸を有するそれらの部分。
【請求項2】
配列番号4のアミノ酸配列と[BLASTアルゴリズムで決定した時に]少なくとも70%のアミノ酸同一性を表すクリソスポリウム(Chrysosporium)のグリコシルヒドロラーゼ ファミリー10に対応するタンパク質、または配列番号4のアミノ酸配列1−133または252−383の対応する部分に同一である少なくとも20個の連続するアミノ酸を有するそれらの部分。
【請求項3】
配列番号4のアミノ酸配列と[BLASTアルゴリズムで決定した時に]少なくとも65%のアミノ酸同一性を表すクリソスポリウム(Chrysosporium)のグリコシルヒドロラーゼ ファミリー10に対応するタンパク質、または配列番号4のアミノ酸配列1−383の対応する部分に同一である少なくとも20個の連続するアミノ酸を有するそれらの部分。
【請求項4】
グリコシルヒドロラーゼ ファミリー10に対応し、そして配列番号4のアミノ酸配列22−53と少なくとも55%のアミノ酸同一性を有し、かつ/またはアミノ酸配列22−53から少なくとも20個の連続するアミノ酸を有し、かつ/または相対位置44にアミノ酸F、WおよびYの1つを有するセルロース−結合ドメインを含んで成るタンパク質。
【請求項5】
配列番号6の部分的アミノ酸配列と[BLASTアルゴリズムで決定した時に]少なくとも86%のアミノ酸同一性を表すクリソスポリウム(Chrysosporium)のグリセルアルデヒド リン酸 デヒドロゲナーゼに対応するタンパク質、または配列番号6のアミノ酸配列1−277の対応する部分に同一である少なくとも20個の連続するアミノ酸を有するそれらの部分。
【請求項6】
請求項1に記載の酵素の使用を含んで成る、β-グルコシド結合の加水分解法。
【請求項7】
請求項2、3または4に記載の酵素の使用を含んで成る、β-キシロシド結合の加水分解法。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸配列。
【請求項9】
配列番号1、3および5の任意の1つの核酸配列の5'-非コード領域に含まれる少なくとも70%のヌクレオチドを含んで成る核酸配列。
【請求項10】
目的のポリペプチドをコードする核酸配列に機能的に連結された配列番号1、3および5の任意の1つの核酸配列の5'-非コード領域に含まれる、クリソスポリウム(Chrysosporium)に由来する核酸発現−調節領域を含んで成る核酸構築物。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項に記載の核酸配列を含み、そしてコード核酸配列によりコードされるポリペプチドを発現することができる、組換え微生物株、好ましくは真菌株。
【請求項12】
請求項10に記載の構築物または請求項11に記載の微生物株を使用するポリペプチドの生産法。
【請求項13】
配列番号1、3および5のいずれか1つの核酸配列の少なくとも15個の連続するヌクレオチド、またはその相補体を含んで成るオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項14】
プローブが20〜50ヌクレオチド長である、請求項13に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項15】
プローブが検出可能な標識により標識されている、請求項13または14に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−234729(P2011−234729A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156864(P2011−156864)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2001−577490(P2001−577490)の分割
【原出願日】平成13年4月17日(2001.4.17)
【出願人】(508369652)ダイアデイツク・インターナシヨナル(ユーエスエイ)インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】