糸状菌ペプチダーゼの生産方法
【課題】先行文献で生産が報告されているペプチダーゼ以外の、糸状菌に由来し、分子種が明らかなペプチダーゼを、糸状菌を宿主として生産するために用いる遺伝子発現カセットを提供する。
【解決手段】特定のDNAからなるプロモーター、特定のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌体内で機能するターミネーターを有する糸状菌用遺伝子発現カセット。
【解決手段】特定のDNAからなるプロモーター、特定のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌体内で機能するターミネーターを有する糸状菌用遺伝子発現カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状菌ペプチダーゼの生産方法、並びに当該方法の実施に有用な糸状菌用遺伝子発現カセット、糸状菌用発現ベクター及び形質転換体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチダーゼは、衣料用洗剤をはじめとする各種洗浄剤、化粧料、浴用剤、食品改質剤、消化補助剤或いは消炎剤といった様々な用途、分野で利用され、工業用酵素の中で最も生産量が多い。食品工業においても、食品タンパク質からの調味料としてのアミノ酸製造、食品の苦味や雑味の低減、食品へのコクや濃厚感付与のためのペプチド製造、栄養源の高い腸吸収の良いペプチド製造、血圧降下活性などの機能性食品素材としてのペプチド製造、食品に混濁する不要タンパク質の除去などにおいて、ペプチダーゼは重大な働きを有する。食品工業で使用されるペプチダーゼは、微生物由来のものが多く、アスペルギルス(Aspergillus)属、バシラス(Bacillus)属、リゾプス(Rhizopus)属のものが多い。特に、アスペルギルス属の麹菌(アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae))由来のペプチダーゼは、幅広いpHに対応できるものが多く、また液体培養や固体培養などの培養条件の違いで種々のタイプの分子種を有するペプチダーゼ酵素剤を提供できることから、食品業界で最も汎用されている。
【0003】
なかでも血圧降下活性を有する乳たんぱく質由来のVPP, IPPなどのラクトトリペプチドは、麹菌由来のペプチダーゼ酵素剤で有利に生産できることから、機能性食品材料としてのペプチド生産にも麹菌由来のペプチダーゼは非常に有用である(非特許文献1)。
【0004】
ただ、機能性ペプチド製造においては、現状の麹菌由来のペプチダーゼ酵素剤にも弱点がある。具体的には、かかる酵素剤は、麹菌の培養抽出物を組成とするため、特性が不明な複数のペプチダーゼを含んでおり、そのため、食品タンパク質に作用させた場合、目的の機能性ペプチドが過分解され、アミノ酸にまで変換されてしまう。
【0005】
上記課題を解決するために、反応時間、反応pH、反応温度、食品タンパク質と酵素剤の量比、酵素剤の併用など、ケースバイケースで対応せざるを得ないのが現状である。
【0006】
かかる課題を解決するためには、分子種が明らかなペプチダーゼ酵素剤を、安全性が高く古くから清酒や醤油などの醸造食品の製造に利用されてきた糸状菌、特に麹菌により提供できることが望ましい。しかしながら、ペプチダーゼは細胞毒性を有するため、遺伝子を導入してペプチダーゼを細胞内で高発現させること、即ち分子種が明らかなペプチダーゼを糸状菌で成功して発現させることは困難と考えられていた。また、ペプチダーゼの基質特異性は、その一次構造から推測できず、分子ごとに細胞毒性が異なることが予測され、分子ごとに高発現系を工夫しなければならない困難性があった。
【0007】
最近、麹菌由来の10種類のペプチダーゼを麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ産生させたことが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−4760号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】British Journal of Nutrition, 94, 84-91(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では10種類のペプチダーゼを麹菌を用いて産生させたことが記載されているだけであり、それ以外のペプチダーゼの産生については何ら開示がされていない。
【0011】
そこで、本発明は、特許文献1で生産が報告されているペプチダーゼ以外の、糸状菌に由来し、分子種が明らかなペプチダーゼを、糸状菌を宿主として生産する方法、特にセルフクローニング法により生産する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該ペプチダーゼの生産に用いるための材料、すなわち糸状菌用遺伝子発現カセット、糸状菌用発現ベクター及び形質転換体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、配列番号16〜25のいずれかに記載するアミノ酸配列を有する糸状菌由来のペプチダーゼを、特定のプロモーターと組み合わせることにより、糸状菌を宿主とするセルフクローニング法を用いて効率よく生産することができるという知見を得た。本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の糸状菌用遺伝子発現カセット、糸状菌用発現ベクター、糸状菌及びペプチダーゼの生産方法を提供するものである。
【0013】
(I)糸状菌用遺伝子発現カセット
(I-1) 以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌体内で機能するターミネーターを有する糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0014】
(I-2) 前記プロモーターが以下の(a1)又は(b1)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c1)又は(d1)のDNAからなることを特徴とする、(I-1)に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a1)配列番号1及び2に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b1)配列番号1及び2に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c1)配列番号6に記載される塩基配列からなるDNA
(d1)配列番号6に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0015】
(I-3) 前記プロモーターが以下の(a2)又は(b2)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c2)又は(d2)のDNAからなることを特徴とする、(I-1)に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a2)配列番号3に記載される塩基配列からなるDNA
(b2)配列番号3に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c2)配列番号6、7、8、12、13及び14に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d2)配列番号6、7、8、12、13及び14に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0016】
(I-4) 前記プロモーターが以下の(a3)又は(b3)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c3)又は(d3)のDNAからなることを特徴とする、(I-1)に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a3)配列番号4に記載される塩基配列からなるDNA
(b3)配列番号4に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c3)配列番号6〜11に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d3)配列番号6〜11に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0017】
(I-5) 前記プロモーターが以下の(a4)又は(b4)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c4)又は(d4)のDNAからなることを特徴とする、(I-1)に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a4)配列番号5に記載される塩基配列からなるDNA
(b4)配列番号5に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c4)配列番号15に記載される塩基配列からなるDNA
(d4)配列番号15に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0018】
(II)糸状菌用発現ベクター
(II-1) 糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子、及び(I-1)〜(I-5)のいずれか一項に記載の遺伝子発現カセットを有する糸状菌用発現ベクター。
【0019】
(II-2) 実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである、(II-1)に記載の糸状菌用発現ベクター。
【0020】
(II-3) 直鎖状であることを特徴とする、(II-1)又は(II-2)に記載の糸状菌用発現ベクター。
【0021】
(II-4) 糸状菌がアスペルギルス属に属する糸状菌である、(II-1)〜(II-3)のいずれか一項に記載の糸状菌用発現ベクター。
【0022】
(III)形質転換体
(III-1) (II-1)〜(II-3)のいずれか一項に記載の糸状菌用発現ベクターで形質転換されてなる糸状菌。
【0023】
(III-2) アスペルギルス属に属する糸状菌である、(III-1)に記載の糸状菌。
【0024】
(IV)ペプチダーゼの生産方法
(IV-1) (III-1)に記載の糸状菌を培地で培養し、当該培地からペプチダーゼを回収する工程を含む、ペプチダーゼの生産方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の糸状菌用遺伝子発現カセット及び生産方法によれば、分子種の明らかな糸状菌由来のペプチダーゼを、糸状菌を宿主として用いて効率よく製造することができる。このため、本発明の方法によれば、分子種の明らかな所望のペプチダーゼを工業的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ペプチダーゼ1生産株をMPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図2】ペプチダーゼ1生産株をMPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:コントロール、2及び3: PsodM、4及び5:PamyA、6:PglaA、7及び8:Phly、1−8:MPY
【図3】ペプチダーゼ2生産株をGPY又はMPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図4】ペプチダーゼ2生産株をGPY又はMPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:コントロール、2:PsodM、3及び4:PamyA、5及び6:PglaA、7及び8:Phly、1、2、7及び8:GPY、3−6: MPY
【図5】ペプチダーゼ3生産株をGPY又はMPYで30℃、40又は64時間、液体培養後に培養液上清又は菌体破砕液の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図6】ペプチダーゼ3生産株をGPY又はMPYで30℃、40又は64時間、液体培養後に培養液上清又は菌体破砕液のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2:PsodM 40 hr、3:PsodM 64 hr、4:PamyA 40 hr、5:PamyA 64 hr、6:PglaA 40 hr、7:PglaA 64 hr、8:Phly 40 hr、9:Phly 64 hr、10:コントロール 40 hr、11:コントロール 64 hr.
【図7】ペプチダーゼ4生産株をGPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清又は菌体破砕液の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図8】ペプチダーゼ4生産株をGPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2:コントロール、3、4:ペプチダーゼ4生産株
【図9】ペプチダーゼ5生産株を小麦フスマ培養(30℃、40時間)、GPY液体培養(3 ml、30℃、40時間又は10日間)、又はそれらに1 mM CoCl2を添加した培地での培養後に、小麦フスマ培養は菌体外のみ、液体培養は菌体内外の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図10】ペプチダーゼ6生産株を小麦フスマ培養(30℃、40時間)、又はGPY液体培養(3 ml、30℃、40時間又は10日間)を行った後に、小麦フスマ培養は菌体外のみ、液体培養は菌体内外の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図11】ペプチダーゼ5生産株とペプチダーゼ6生産株を100 ml GPY(ペプチダーゼ5は+1 ml CoCl2)で液体培養(30℃、150 rpm、5又は10日間)を行った後に、培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2及び3:コントロール、4及び5:ペプチダーゼ5生産株、6及び7:コントロール、8及び9:ペプチダーゼ6生産株、2、4、6及び8:5日間培養、3、5、7及び9:10日間培養
【図12】ペプチダーゼ7生産株をGPYで液体培養(3 ml、30℃、40、64又は88時間)を行った後に、培養液上清の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図13】ペプチダーゼ7生産株をGPYで液体培養(100 ml、30℃、150 rpm、88時間)を行った後に、培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2:コントロール、3:ペプチダーゼ7生産株
【図14】ペプチダーゼ8生産株とペプチダーゼ9生産株をGPY液体培養(3 ml、30℃、200 rpm、40時間)を行った後に、培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2:コントロール、3:ペプチダーゼ8生産菌、4及び5:ペプチダーゼ9生産菌
【図15】ペプチダーゼ10生産株をGPYで液体培養(5 ml、30℃、250 rpm、3日間)を行った後に、培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。M:マーカー、1:コントロール、2−8:ペプチダーゼ10生産菌
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
本発明が対象とする糸状菌としては、麹菌、及び麹菌が属する糸状不完全菌類を挙げることができる。なかでも好ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)、ムコール属(Mucor)、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ属(Trichoderma)、及びノイロスポラ属(Neurospora)に属する糸状菌であり、より好ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)に属する糸状菌である。アスペルギルス属糸状菌としては、特に制限されないが、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)などを挙げることができる。なかでも、長年清酒、醤油、味噌、みりんなどの醸造食品に利用されてきた安全な微生物であり、わが国の産業において利用頻度の高い宿主である点で、麹菌アスペルギルス・オリゼが好ましい。
【0029】
(1)糸状菌用遺伝子発現カセット
本発明の糸状菌用遺伝子発現カセットは、以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌体内で機能するターミネーターを有する:
(a)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0030】
本明細書において、上記(b)のDNAからなるプロモーター、(d)のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子をそれぞれ改変体と呼ぶことがある。
【0031】
(1-1)糸状菌ペプチダーゼ
本発明が対象とするペプチダーゼは、配列番号16〜26に記載するいずれかのアミノ酸配列を有する糸状菌由来、特に麹菌由来のペプチダーゼ又はその改変体である。これらのペプチダーゼのうち、配列番号16〜21に示すペプチダーゼはエキソペプチダーゼ、配列番号22〜25に示すペプチダーゼはエンドペプチダーゼに分類することができる。
【0032】
なお、これらの各ペプチダーゼのアミノ酸配列とこれらをコードする遺伝子(ペプチダーゼ遺伝子)の塩基配列との対応関係を、下表に記載する:
【0033】
【表1】
【0034】
また、本発明におけるペプチダーゼ遺伝子は、配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAからなるものであっても良い。
【0035】
ここで、上記のストリンジェントな条件とは、例えば、65℃で5×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mM塩化ナトリウム、15 mMクエン酸ナトリウム)中でハイブリダイズさせ、更に0.1%のSDSを含有する0.5×SSC溶液で65℃で洗浄する条件を意味する。ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションの各操作は、「Molecular Cloning (Third Edition)」 (J. Sambrook & D. W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる。
【0036】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、通常、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の同一性を有し、その同一性は、例えば70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が挙げられる。塩基配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。塩基配列の同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。
【0037】
このような改変されたペプチダーゼ遺伝子の製造は常法に従って行うことができる。
【0038】
(1-3)プロモーター
プロモーターは、配列番号1〜5に記載するいずれかの塩基配列を有する糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来するプロモーターである。これら配列番号1〜5に示すプロモーターは、それぞれ配列番号1:α−アミラーゼ遺伝子プロモーターamyA(特許第3005618号)、配列番号2:グルコアミラーゼ遺伝子プロモーターglaA(Gene,108,145-150,(1992))、配列番号3:マンガンSOD遺伝子プロモーターsodM(特開2000-224381号公報)、配列番号4:hly(特開2009-296958号公報)、配列番号5:ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ遺伝子プロモーターpdiA(特開2002-320477号公報)である。
【0039】
また、本発明におけるプロモーターは、配列番号1−5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNAからなるものであっても良い。
【0040】
ここでのストリンジェントな条件とは、上記と同様である。また、このような改変されたプロモーターの製造は常法に従って行うことができる。
【0041】
遺伝子発現カセットにおけるプロモーターの位置は、糸状菌体内でプロモーターが機能し、所望のペプチダーゼが発現し産生できる位置であれば、特に限定されないが、通常、ペプチダーゼ遺伝子配列の上流域に配置される。
【0042】
(1-4)ターミネーター
ターミネーターは、糸状菌体内、特にアスペルギルス属糸状菌体内でターミネーターとして機能するものであればよいが、好ましくは糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来するターミネーターである。好ましくはアスペルギルス属、より好ましくはアスペルギルス・オリゼに由来する、例えばα−アミラーゼ遺伝子のターミネーター、又はグルコアミラーゼ(glaB)ターミネーター(Gene. 207, 127-134,(1998))等を挙げることができる。
【0043】
(1-5)糸状菌用遺伝子発現カセット
本発明の糸状菌用遺伝子発現カセットにおけるペプチダーゼ遺伝子とプロモーターとの好ましい組み合わせを以下に示す。
・配列番号6に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号1〜4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましく、配列番号1及び2に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が更に好ましく、配列番号1に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が特に好ましい。
・配列番号7に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号3及び4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましく、配列番号3に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が特に好ましい。
・配列番号8に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号1、3及び4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましく、配列番号3及び4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が更に好ましく、配列番号3に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が更に好ましい。
・配列番号9〜11に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましい。
・配列番号12〜14に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号3に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましい。
・配列番号15に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号5に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましい。
【0044】
本発明の糸状菌用遺伝子発現カセットは、これらのプロモーター、ペプチダーゼ遺伝子、及びターミネーターが、直接連結されてなるものであってもよいが、それらの間に1〜2000塩基程度のヌクレオチドが挟まれていてもよい。但し、これらのヌクレオチドの配列は糸状菌由来、好ましくはアスペルギルス属糸状菌に由来する配列であることが望ましい。例えば、目的とするペプチダーゼが菌体内タンパク質として生産されるものである場合は、目的とするペプチダーゼの遺伝子のオープンリーディングフレームに隣接して、上流に糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌の既知分泌タンパク質の遺伝子を配置してもよく、こうすることにより、目的とするペプチダーゼは、上記分泌タンパク質との融合タンパク質として発現産生され、斯くして産生された融合タンパク質は菌体外に分泌される。また、その他のヌクレオチドとして、通常ベクターが備える制限酵素切断部位などを備えていてもよい。
【0045】
なお、アスペルギルス属糸状菌の分泌タンパク質としては、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオハイドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、キシラナーゼ、ガラクトシダーゼ、フラクトフラノシダーゼ、キシロシダーゼ、ペクチンリアーゼ、フィターゼなどが知られている。
【0046】
(2)糸状菌用発現ベクター
本発明の糸状菌用発現ベクターは、糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子、及び上記遺伝子発現カセットを有する。
【0047】
(2-1)選択マーカー遺伝子
選択マーカー遺伝子は、糸状菌体内、特にアスペルギルス属糸状菌体内で選択マーカーとして機能するもの、すなわち発現できるものであればよいが、好ましくは糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来する選択マーカー遺伝子である。かかる選択マーカー遺伝子として、例えば、niaD(Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 1795-1797(1995))、argB(Enzyme Microbiol Technol, 6, 386-389, (1984))、sC(Gene, 84, 329-334, (1989))、ptrA(Biosci Biotechnol Biochem, 64, 1416-1421, (2000))、pyrG(Biochem Biophys Res Commun, 112, 284-289, (1983))、amdS(Gene, 26, 205-221, (1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子(Mol Gen Genet, 261, 290-296, (1999))、ベノミル耐性遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869-4873, (1986))、及びハイグロマイシン耐性遺伝子(Gene, 57, 21-26, (1987))から選ばれるマーカー遺伝子を挙げることができる。
【0048】
これらの選択マーカー遺伝子は、上記文献に記載された配列に基づいて設計されたプライマーを用いて、アスペルギルス属糸状菌の染色体DNAを鋳型としてPCRを行う方法、上記文献に記載された配列に基づいて設計されたプローブを用いてアスペルギルス属糸状菌の染色体DNAライブラリーからハイブリダイゼーションにより取得する方法などにより容易に入手することができる。また、宿主の糸状菌として、例えばロイシン要求性などの栄養要求性変異株を用いる場合、選択マーカー遺伝子として当該栄養要求性を相補する野生型遺伝子を用いることもできる。例えば、宿主がロイシン要求性変異株である場合、そのロイシン要求性を相補できる選択マーカー遺伝子を用いることができ、かかる遺伝子としてはβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするアスペルギルス・ニジュランス由来の遺伝子ANleu2及びアスペルギルス・オリゼ由来の遺伝子leu2を挙げることができる。なお、これらの場合、宿主として用いる糸状菌は、選定された選択マーカーについての機能的遺伝子を有していない株を用いる必要がある。
【0049】
(2-2)糸状菌用発現ベクター
本発明の糸状菌用発現ベクターは、これらの選択マーカー遺伝子、及び遺伝子発現カセットが、直接連結されてなるものであってもよいが、それらの間に1〜2000塩基程度のヌクレオチドが挟まれていてもよい。但し、これらのヌクレオチドの配列は糸状菌由来、好ましくはアスペルギルス属糸状菌に由来する配列であることが望ましい。
【0050】
また本発明には、直鎖状の糸状菌用発現ベクター及び環状の糸状菌用発現ベクターの両者が含まれるが、(1)構築したプラスミドから1ステップのPCRで取得できるなど、環状の発現ベクターと比べて少ないステップで調製することができること、(2)宿主としてロイシン要求性変異株を使用する場合に、当該変異を直接相補することができること、及び(3)形質転換効率が環状の発現ベクターと比べて高いという点から、好ましくは直鎖状の糸状菌用発現ベクターである。
【0051】
(3)形質転換体
本発明の形質転換体は、前述する本発明の糸状菌用発現ベクターで糸状菌を形質転換したものである。
【0052】
宿主は糸状菌であればよいが、高いプロモーター活性を発現させるためには、アスペルギルス属の菌株が好ましく、特にアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・タマリ、アスペルギルス・グラウカス、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・ニジュランス等のアスペルギルス属糸状菌が好ましい。これらの中では、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・タマリ、アスペルギルス・グラウカスなどが食品産業において有用な菌種である。高いタンパク質生産能及び醸造微生物としての安全性の点で、特にアスペルギルス・オリゼを宿主とすることが好ましい。なお、宿主として用いる糸状菌は、野生株に限らず、糸状菌に由来するものであれば、その変異株であってもよい。かかる変異株としては、前述する選択マーカーに関する機能的遺伝子を有さないように変異してなる株を挙げることができ、具体的には正常にロイシンの生合成ができないようにロイシン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているロイシン要求性変異株:正常にアルギニンの生合成ができないようにアルギニン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているアルギニン要求性変異株:正常にメチオニンの生合成ができないようにメチオニン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているメチオニン要求性変異株:正常にヒスチジンの生合成ができないようにヒスチジン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているヒスチジン要求性変異株:正常に硝酸が資化できないように硝酸資化性遺伝子が変異又は欠失しているniaD変異株:正常に硝酸イオンが資化できないように硝酸イオン資化性遺伝子が欠失しているsC変異株などを挙げることができる。
【0053】
宿主の形質転換方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、Cohenらの方法(塩化カルシウム法)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69:2110 (1972))、プロトプラスト法(Mol. Gen. Genet., 168:111 (1979))、コンピテント法(J. Mol. Biol., 56:209 (1971))、エレクトロポレーション法等を挙げることができる。
【0054】
(4)ペプチダーゼの生産方法
本発明のペプチダーゼの生産方法は、前述した本発明の糸状菌の形質転換体を培養する工程と、培養物から目的タンパク質を回収する工程を含む。
【0055】
培養工程は、固体培地を用いる固体培養、又は液体培地を用いる液体培養のいずれでも行うことができる。好ましくは液体培地を用いた液体培養である。
【0056】
固体培地としては、糸状菌の培養に使用される公知の固体培地を制限なく使用することができる。固体培地とはその固形の支持担体が栄養源を含むか、又は固形の支持担体に栄養源が添加されものであり、そこに糸状菌が生育できる固形培地を指し示す。このような固体培地として主に、フスマ(小麦などの穀物の殻)、デンプン粉末、米・小麦・大豆の生あるいは蒸したもの、更にはメンブレンや多孔質の人工物(例えば園芸に使われるバーミキュライト)等に栄養源を添加したもの等が挙げられる。特にフスマ、蒸した米が好ましい。
【0057】
また、液体培地は、糸状菌の培養に使用される公知の液体培地を制限なく使用できる。例えば、用いられる培地としては、炭素源としてグルコース、マルトース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものが挙げられる。また無機もしくは有機窒素源(例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、カゼインの加水分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン、ビーフ抽出物等)が挙げられる。これらの炭素源及び窒素源は、純粋な形で使用する必要はなく、純度の低いものも微量の生育因子や無機栄養素を豊富に含んでいるので有利である。さらに所望により、他の栄養源[例えば、無機塩(例えば、二リン酸ナトリウム、二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、抗生物質(例えば、アンピシリン、カナマイシン)など]を培地中に添加してもよい。具体的な液体培地としては、例えば、ポテトデキストロース培地(ニッスイ社)、最少培地(2%グルコース(又はスターチ)、0.3% NaNO3、0.2% KCl、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4、0.002% FeSO4、pH6.0)等を挙げることができる。なお、これらは1.5%程度の寒天を添加することで、固体培地として調製することもできる。
【0058】
形質転換体の培養は、通常pH5.5〜8.5、好ましくはpH6〜8のpH条件;通常25〜42℃、好適には30〜37℃の温度条件で行うことができる。培養時間は、その他の条件によって異なるが、通常2〜7日間程度、好ましくは3〜5日間程度を挙げることができる。
【0059】
本発明の方法によれば、実施例で示すように目的とするペプチダーゼ(配列番号16〜25)を菌体外に生成することもできる。このため、ペプチダーゼの取得に際しては、培養上清を回収すればよい。また寒天培地などのように固体培地を使用する場合も培養上清としての寒天培地を回収すればよい。さらに、これらの上清を、公知のタンパク質精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティなどの各種クロマトグラフィーに供することにより目的とするペプチダーゼを単離し回収することができる。
【0060】
(5)セルフクローニングベクター及びセルフクローニング株
本発明において、好ましい糸状菌発現ベクターは、糸状菌に由来する選択マーカー遺伝子、糸状菌に由来するプロモーター、糸状菌に由来するペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌に由来するターミネーターを含む、実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである。また本発明において、好ましい形質転換体は、上記セルフクローニングベクターで形質転換してなる糸状菌である。糸状菌のなかでも好ましくは麹菌であり、麹菌のなかでも好ましくはアスペルギルス属に属する麹菌である。
【0061】
なお、本発明において「セルフクローニング株」とは、前述するように実質的に宿主糸状菌種と同種の生物由来のヌクレオチドから構成される株をいう。また糸状菌に由来しないヌクレオチドが含まれる場合も、せいぜい1〜10塩基程度、特に6〜10塩基程度である。この程度の大きさの挿入配列は、例えば制限酵素部位を導入するために挿入される場合がある。
【0062】
宿主の糸状菌としては、マーカー遺伝子、プロモーター、ターミネーター及び発現させるペプチダーゼ遺伝子が由来する糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌と同種の菌株が用いられる。形質転換株が容易に選択できるように、導入するマーカー遺伝子と同一又はそれと同機能の遺伝子が欠失又は変異した変異株を用いることが好ましい。この場合は、上記で説明した糸状菌用発現ベクターを用いて上記変異株を形質転換した後、導入されたマーカー遺伝子の発現を指標とすることによって、糸状菌用発現ベクター中の目的ペプチダーゼ遺伝子が導入された形質転換体を選択することができる。
【0063】
また、導入するマーカー遺伝子と同一又はそれと同機能の遺伝子が欠失又は変異していないアスペルギルス属糸状菌を宿主として用いることもできる。この場合は、目的とするペプチダーゼ遺伝子の発現又はその発現量の増大などを指標とすることによって形質転換体を選択することができる。形質転換方法は、特に限定されず、PEG−カルシウム法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法などの公知の方法を制限なく採用できる。
【0064】
斯くして得られるセルフクローニング株は、糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌の染色体DNA中に、前述する本発明の糸状菌用発現ベクターが組み込まれた状態で存在し、大腸菌などの異種生物由来のヌクレオチドは実質的に存在しない。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般的な実験方法は、実験書(サムブルックら(Sambrook, J.)のMolecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版)に従った。また、下記の実施例において、すべてのPCRは、PrimeSTAR(登録商標) HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。なお、下記実施例において、麹菌(アスペルギルス・オリゼ)として、OSI 1013株を使用した。
【0066】
実施例では、以下の表に示す10種類のペプチダーゼ(ペプチダーゼ1〜10)を使用した。
【0067】
【表2】
【0068】
エキソペプチダーゼ活性測定方法
以下の組成の溶液を37℃で反応させ、各反応時間毎(20分まで5分間隔)に405 nmにおける吸光度を測定した。1分間に1μmolのpNA(p-ニトロアニリド)を遊離する酵素活性を1 unitとした。
20 mM 基質/sH2O 5μl (終濃度 0.5mM)
1M バッファー 10μl (終濃度 50mM)
酵素* + sH2O 185μl
合計200μl
*培養液上清又は菌体破砕液
基質及びバッファーは測定する酵素の種類に従い以下の表に示すものを使用した。
【0069】
【表3】
【0070】
エンドペプチダーゼ活性測定方法
以下の組成の溶液を37℃で1時間反応させ、10%(w/v)TCA 1 mlを添加し、ボルテックス、遠心後、上清の325 nmにおける吸光度を測定した。1分間に吸光度を1上昇させる酵素活性を1 unitとした。
2% アゾカセイン(Azocasein)/sH2O 250μl (終濃度 1%)
1M バッファー 50μl (終濃度 100mM)
酵素* + sH2O 200μl
合計500μl
*培養液上清
バッファーは測定する酵素の種類に従い以下の表に示すものを使用した。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例1 糸状菌用発現ベクターカセット及び形質転換体の構築
特許文献1(特開2010-4760号公報)に記載のプラスミドベクターIE-232を使用し、以下のプラスミドベクターの構築を行った。
【0073】
(1)ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
(a)sodMプロモーター(配列番号3)制御下ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ1遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー3:5’- ACCAAACCACCCAAAATGAAGGTACGTCAATTCCACTGAT -3’(配列番号28)
プライマー4:5’- CACTGGAAAGTACATCTACTCCTCCAAGTCCTTCTTAGTC -3’(配列番号29)
プライマー3の5’末端15塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー4の5’末端15塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端15塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをIE-300とした。
【0074】
(b)amyAプロモーター(配列番号1)制御下ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
IE-300のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー6:5’- ATGAAGGTACGTCAATTCCACTGAT -3’(配列番号32)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりamyAプロモーター(配列番号1)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー7:5’- ACACTCCCCGCGTACGGTACGCCTCCGGGTAGTAG -3’(配列番号33)
プライマー8:5’- AATTGACGTACCTTCATAAATGCCTTCTGTGGGGT -3’(配列番号34)
プライマー7の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー8の5’末端17塩基はペプチダーゼ1遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBaAiP014とした。
【0075】
(c)glaAプロモーター(配列番号2)制御下ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
IE-300のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー6:5’- ATGAAGGTACGTCAATTCCACTGAT -3’(配列番号32)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりglaAプロモーター(配列番号2)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー9:5’- ACACTCCCCGCGTACGGGAATTCTGTAGCTGCTCT -3’(配列番号36)
プライマー10:5’- TTGACGTACCTTCATCTTGCTTCGACTTCGTTTGCTGATG -3’(配列番号37)
プライマー9の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー10の5’末端15塩基はペプチダーゼ1遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをIE-324とした。
【0076】
(d)hlyプロモーター(配列番号4)制御下ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
IE-300のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー6:5’- ATGAAGGTACGTCAATTCCACTGAT -3’(配列番号32)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりhlyプロモーター(配列番号4)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー11:5’- ACACTCCCCGCGTACGGCTACAGCATGGTCTGGAT -3’(配列番号38)
プライマー12:5’- AATTGACGTACCTTCATGGTGTTGTGGTGTGAAGG -3’(配列番号39)
プライマー11の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー12の5’末端17塩基はペプチダーゼ1遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhiP014とした。
【0077】
(2)ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
(a)sodMプロモーター(配列番号3)制御下ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ2遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー13:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGAAGTCGGTACTCAACAT -3’(配列番号40)
プライマー14:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTCACGGGTTATAATCCACAA -3’(配列番号41)
プライマー13の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー14の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(3分)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsP002とした。
【0078】
(b)amyAプロモーター(配列番号1)制御下ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
pBsP002のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー15:5’- ATGAAGTCGGTACTCAACATGGGAG -3’(配列番号42)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりamyAプロモーター(配列番号1)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー7:5’- ACACTCCCCGCGTACGGTACGCCTCCGGGTAGTAG -3’ (配列番号33)
プライマー16:5’- TTGAGTACCGACTTCATAAATGCCTTCTGTGGGGT -3’ (配列番号43)
プライマー7の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー16の5’末端17塩基はペプチダーゼ2遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBaAP002とした。
【0079】
(c)glaAプロモーター(配列番号2)制御下ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
pBsP002のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー15:5’- ATGAAGTCGGTACTCAACATGGGAG -3’(配列番号42)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりglaAプロモーター(配列番号2)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー9:5’- ACACTCCCCGCGTACGGGAATTCTGTAGCTGCTCT -3’ (配列番号36)
プライマー17:5’- TTGAGTACCGACTTCATCTTGCTTCGACTTCGTTT -3’ (配列番号44)
プライマー9の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー17の5’末端17塩基はペプチダーゼ2遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBgAP002とした。
【0080】
(d)hlyプロモーター(配列番号4)制御下ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
pBsP002のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー15:5’- ATGAAGTCGGTACTCAACATGGGAG -3’(配列番号42)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりhlyプロモーター(配列番号4)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー11:5’- ACACTCCCCGCGTACGGCTACAGCATGGTCTGGAT -3’(配列番号38)
プライマー18:5’- TTGAGTACCGACTTCATGGTGTTGTGGTGTGAAGG -3’(配列番号45)
プライマー11の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー18の5’末端17塩基はペプチダーゼ2遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhP002とした。
【0081】
(3)ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
(a)sodMプロモーター(配列番号3)制御下ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ3遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー19:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGACCATTCGTCCAATGAA -3’(配列番号46)
プライマー20:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTTATAGAGACATATTAGCCA -3’(配列番号47)
プライマー19の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー20の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsP003とした。
【0082】
(b)amyAプロモーター(配列番号1)制御下ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
pBsP003のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー21:5’- ATGACCATTCGTCCAATGAAGTTCA -3’(配列番号48)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりamyAプロモーター(配列番号1)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー7:5’- ACACTCCCCGCGTACGGTACGCCTCCGGGTAGTAG -3’(配列番号33)
プライマー22:5’- ATTGGACGAATGGTCATAAATGCCTTCTGTGGGGT -3’(配列番号49)
プライマー7の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー22の5’末端17塩基はペプチダーゼ3遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBaAP003とした。
【0083】
(c)glaAプロモーター(配列番号2)制御下ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
pBsP003のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’ (配列番号31)
プライマー21:5’- ATGACCATTCGTCCAATGAAGTTCA -3’ (配列番号48)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりglaAプロモーター(配列番号2)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー9:5’- ACACTCCCCGCGTACGGGAATTCTGTAGCTGCTCT -3’(配列番号36)
プライマー23:5’- ATTGGACGAATGGTCATCTTGCTTCGACTTCGTTT -3’(配列番号50)
プライマー9の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー23の5’末端17塩基はペプチダーゼ3遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBgAP003とした。
【0084】
(d)hlyプロモーター(配列番号4)制御下ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
pBsP003のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー21:5’- ATGACCATTCGTCCAATGAAGTTCA -3’(配列番号48)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりhlyプロモーター(配列番号4)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー11:5’- ACACTCCCCGCGTACGGCTACAGCATGGTCTGGAT -3’(配列番号38)
プライマー24:5’- ATTGGACGAATGGTCATGGTGTTGTGGTGTGAAGG -3’(配列番号51)
プライマー11の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー24の5’末端17塩基はペプチダーゼ3遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhP003とした。
【0085】
(4)ペプチダーゼ7発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ7遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー25:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGCATATGCTCTTATTTAT -3’(配列番号52)
プライマー26:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTTAGATCTTCTTCTGGCACA -3’(配列番号53)
プライマー25の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー26の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsP004とした。
【0086】
(5)ペプチダーゼ9発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ9遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー27:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGCGGGGCGCATCTCTCCT -3’(配列番号54)
プライマー28:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTTACAAAGCAAGAAGAAGAC -3’(配列番号55)
プライマー27の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー28の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsiP020とした。
【0087】
(6)ペプチダーゼ8発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ8遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー29:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGAGATTTCTTCTGTCTTT -3’(配列番号56)
プライマー30:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATCTATTTGGGGGATGCAACTC -3’(配列番号57)
プライマー29の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー30の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsP005とした。
【0088】
(7)ペプチダーゼ4発現プラスミドの構築
pBhiP014のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー31:5’- GGTGTTGTGGTGTGAAGGGTGATTGATGTG -3’(配列番号58)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ4遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー32:5’- ACCCTTCACACCACAACACCATGCGTTTCCTCCCCTGCAT -3’(配列番号59)
プライマー33:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTTACAGCGAATCTGCGAAGG -3’(配列番号60)
プライマー32の5’末端20塩基はhlyプロモーター(配列番号4)の3’末端と相同の配列で、プライマー33の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhP006とした。
【0089】
(8)ペプチダーゼ6発現プラスミドの構築
pBhiP014のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー31:5’- GGTGTTGTGGTGTGAAGGGTGATTGATGTG -3’ (配列番号58)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’ (配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ6遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー34:5’- ACCCTTCACACCACAACACCATGGCTGCCAAACTAGTAGA -3’(配列番号61)
プライマー35:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATCTAATCAATAGAGTCGTCCC -3’(配列番号62)
プライマー34の5’末端20塩基はhlyプロモーター(配列番号4)の3’末端と相同の配列で、プライマー35の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhiP021とした。
【0090】
(9)ペプチダーゼ5発現プラスミドの構築
pBhiP014のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー31:5’- GGTGTTGTGGTGTGAAGGGTGATTGATGTG -3’(配列番号58)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ5遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー36:5’- ACCCTTCACACCACAACACCATGACTTCGAAAATCGCCCA -3’(配列番号63)
プライマー37:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTCAGTCAACAAAGATTGTCT -3’(配列番号64)
プライマー36の5’末端20塩基はhlyプロモーター(配列番号4)の3’末端と相同の配列で、プライマー37の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhiP007とした。
【0091】
(10)各種ペプチダーゼ高生産形質転換株の取得
上記で構築した各プラスミドDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRにより麹菌へ導入するDNA断片を増幅した。また、コントロールとしてIE-232のプラスミドDNAを鋳型としてプライマー38とプライマー5を用いて下記条件でPCRによりleuAマーカーを増幅した。得られたPCR増幅産物をWizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いた精製、エタノール沈殿を行った。得られたDNA断片で麹菌を形質転換した。
<プライマー>
プライマー38:5’- GCGTGGTTTACTAGCTTTAGTGCTA -3’(配列番号65)
プライマー39:5’- ATCGGCTGAAGTTAGGAGCGGCCATTG -3’(配列番号66)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(8分30秒)を30サイクル
【0092】
(11)形質転換体の調製
定法であるPEG−カルシウム法(Mol Gen Genet,218,99-104,(1989))に従って、上記で調製したセルフクローニングベクターをそれぞれ用いて、ロイシン要求性変異麹菌株を形質転換した。なお、当該ロイシン要求性変異麹菌株は、麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のロイシンをコードする遺伝子を変異させて正常なロイシンが合成できないようにした菌株であり、ロイシン要求性を相補する選択マーカー遺伝子が組み込まれなければ、通常、ロイシンを含まない培地では増殖することができない。当該ロイシン要求性変異麹菌株は、アスペルギルス・オリゼleu-5として、茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている(寄託番号FERM P-20079)。
【0093】
次いで形質転換処理した菌株を、硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek-Dox)培地(2%グルコース、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で培養し、かかる培地で生育できる菌株を選択することにより、セルフクローニングベクターそれぞれについて形質転換体を得た。
【0094】
実施例2 セルフクローニングによるペプチダーゼ1の産生
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ1(推定分子量86.9 kDa)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた。
【0095】
上記で調製した各形質転換体を、30℃で64時間、MPY液体培地(2%マルトース、1%ペプトン、0.5%酵母エキス)で培養した。培養後に培養液上清の酵素活性測定とSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を図1に、SDS-PAGEの結果を図2に示す。sodM、amyA、glaA、hlyの各プロモーターで発現がみられ、特にamyAプロモーターを使用した場合に最も多くの分泌生産が確認された。
【0096】
実施例3 セルフクローニングによるペプチダーゼ2の産生
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ2(推定分子量81.1 kDa)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた。
【0097】
上記で調製した各形質転換体を、30℃で64時間、GPY液体培地(2%グルコース、1%ペプトン、0.5%酵母エキス)(PsodM、Phly)、又はMPY液体培地(PamyA、PglaA)で培養した。培養後に培養液上清の酵素活性測定とSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を図3に、SDS-PAGEの結果を図4に示す。sodM、hlyのプロモーターで発現が確認でき、特にsodMプロモーターを使用することで最も多くの分泌生産が確認された。
【0098】
実施例4 セルフクローニングによるペプチダーゼ3の産生
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ3(推定分子量78.9 kDa)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた。
【0099】
上記で調製した各形質転換体を、30℃で40又は64時間、GPY液体培地又はMPY液体培地で培養した。培養後に培養液上清及び菌体破砕液の酵素活性測定とSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を図5に、SDS-PAGEの結果を図6に示す。sodM、hlyプロモーターを使用することで、ペプチダーゼ3の菌体内での生産を、さらに、64時間培養することで菌体外での生産も確認でき、特にsodMプロモーターを使用した場合に最も多くの分泌生産が確認できた。
【0100】
実施例5 hlyプロモーターを用いた種々のペプチダーゼ遺伝子のセルフクローニング発現
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ3種類(ペプチダーゼ4、ペプチダーゼ5及びペプチダーゼ6)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ産生させた(hlyプロモーター使用)。
【0101】
(1)セルフクローニング株(ペプチダーゼ4)
上記で調製したペプチダーゼ4生産株を、30℃で64時間、GPY液体培地で培養した。培養後に培養液上清の酵素活性測定とSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を図7に、SDS-PAGEの結果を図8に示す。hlyプロモーターを使用することにより、菌体外と菌体内にペプチダーゼ4発現が確認でき、特に菌体内で著量の生産性が確認できた。
【0102】
(2)セルフクローニング株(ペプチダーゼ5)
上記で調製したペプチダーゼ5生産株を、小麦フスマ培養(30℃、40時間)、GPY液体培養(3 ml、30℃、40時間又は10日間)、又はそれらに1 mM CoCl2を添加した培地での培養を行った。培養後に小麦フスマ培養では菌体外のみ、液体培養は菌体内外の酵素活性測定を行った。酵素活性測定の結果を図9に示す。GPYを用いた液体培地では、菌体内で著量の生産を確認でき、さらに、塩化コバルトを培地に添加することでその菌体内での生産量は、3-4倍に増加した。また、小麦フスマの固体培養、及び10日間の液体培養を行うことで、菌体外への分泌発現にも成功した。
【0103】
(3)セルフクローニング株(ペプチダーゼ6)
上記で調製したペプチダーゼ6生産を、小麦フスマ培養(30℃、40時間)、又はGPY液体培養(3 ml、30℃、40時間又は10日間)を行った。培養後に小麦フスマ培養では菌体外のみ、液体培養は菌体内外の酵素活性測定を行った。酵素活性測定の結果を図10に示す。GPYを用いた液体培地では、菌体内で著量の生産を確認でき、更に、培養時間を40時間から、10日間にすることでその菌体内での生産量は、約30%増加するとともに、菌体外への分泌生産も確認できた。また、小麦フスマの固体培養を行うことで、菌体外への分泌発現にも成功した。
【0104】
(4)セルフクローニング株(ペプチダーゼ5及びペプチダーゼ6の100 ml培養)
上記で調製したペプチダーゼ5生産株とペプチダーゼ6生産株のプレートから分生子をマイクロプレート等でかきとり、3 ml GPY培地へ植菌した。30℃、200 rpm、24時間の前培養後、培養液を100 ml GPY(ペプチダーゼ5は+1 ml CoCl2)/300 ml三角フラスコへ移し、30℃、150 rpmで5日間又は10日間培養を行った。培養液上清を0.45μmフィルターで濾過後、酵素活性測定及び150μlずつ濃縮後にSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を表5及び6に、SDS-PAGEの結果を図11に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
表5から、ペプチダーゼ5については、培養時間を5日間から10日間にすることで、菌体外への分泌生産量は、約4倍に増加した。さらに、表6から、ペプチダーゼ6については、培養時間を5日間から10日間にすることで、菌体外への分泌生産量は、約6倍に増加した。また、図11から、ペプチダーゼ5、ペプチダーゼ6ともに、培養時間を5日間から10日間にすることで菌体内での生産量が著量増加していることが明らかとなった。この結果から、培養を3 mlから100 mlにスケールアップしても10日間の培養で菌体外にペプチダーゼ5及びペプチダーゼ6を生産させることができることが確認できた。
【0108】
実施例6 sodMプロモーターを用いた種々のペプチダーゼ遺伝子のセルフクローニング発現
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ3種類(ペプチダーゼ7、ペプチダーゼ8及びペプチダーゼ9)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ産生させた(sodM-プロモーター使用)。
【0109】
(1)セルフクローニング株(ペプチダーゼ7)
上記で調製したペプチダーゼ7生産株をGPY液体培養(3 ml、30℃、40、64又は88時間)した。培養後、培養液上清の酵素活性測定を行った。酵素活性測定の結果を図12に示す。その結果、sodMプロモーターを使用することにより、菌体外に著量の分泌生産が確認できた。さらに、培養時間を88時間にすることで、24時間に比べて20倍以上の生産量の増加に成功した。
【0110】
(2)セルフクローニング株(ペプチダーゼ7の100 ml培養)
上記で調製したペプチダーゼ7生産株のプレートから分生子をマイクロプレート等でかきとり、3 ml GPY培地へ植菌した。30℃、200 rpm、24時間の前培養後、培養液を100 ml GPY/300 ml三角フラスコへ移し、30℃、150 rpmで88時間培養を行った。培養液上清を0.45μmフィルターで濾過後、酵素活性測定及び150μlずつ濃縮後にSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を表7に、SDS-PAGEの結果を図13に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
その結果、培養を3 mlから100 mlにスケールアップしても菌体外にペプチダーゼ7を生産させることができることが確認できた。
【0113】
(3)セルフクローニング株(ペプチダーゼ8及びペプチダーゼ9)
上記で調製したペプチダーゼ8生産株とペプチダーゼ9生産株のプレートから分生子をマイクロプレート等でかきとり、3 ml GPY培地へ植菌し、30℃、200 rpm、40時間培養を行った。培養液上清を0.45μmフィルターで濾過後、酵素活性測定及び150μlずつ濃縮後にSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を表8及び9に、SDS-PAGEの結果を図14に示す。
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
その結果、sodMプロモーターを使用することにより、菌体外に、ペプチダーゼ8、ペプチダーゼ9の著量の分泌生産が確認できた。
【0117】
実施例7 糸状菌用発現ベクターの調製及びセルフクローニングによるペプチダーゼ10の産生
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ10遺伝子を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた(トランスイソメラーゼ(pdiA)プロモーター使用)。
【0118】
(1)糸状菌用発現ベクターの調製
(1-1)プラスミドベクター
(a)pdiAプロモーターとペプチダーゼ10遺伝子の融合遺伝子の調製
pdiAプロモーターについては、麹菌ゲノムDNAを鋳型として、プライマー40(5'-cctttttgaccttggtggttgatagaacgg-3'(配列番号67))とプライマー41(5'-agggtcgcattttgagatgctgaatcggataa-3'(配列番号68))を用いて、KODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、日本)により下記PCR条件で増幅させた。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(1分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0119】
ペプチダーゼ10遺伝子については、麹菌ゲノムDNAを鋳型として、プライマー42(5'-gattcagcatctcaaaatgcgacccttgtctcatctttc-3'(配列番号69))とプライマー43(5'-ctaaggcagatcaagccacaacttcaacatc-3'(配列番号70))を用いて、KODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、日本)により下記PCR条件で増幅させた。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(2分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0120】
上記pdiAプロモーターPCR増幅産物と、上記ペプチダーゼ10遺伝子PCR増幅産物を混合し、下記PCR条件で、5'-末端がリン酸化されたプライマー40と5'-末端がリン酸化されたプライマー43を用いて、KODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、日本)によりPCRを行った。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、68℃(3分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0121】
得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、インサートを調製した。
【0122】
(b)上記融合遺伝子のサブクローニング
特開2010-4760号公報([0055])に記載のpUCLT1に、上記で調製した融合遺伝子をサブクローニングした。具体的には、上記pUCLT1を鋳型として、プライマー44(5'-ccgtacgcgg ggagtgtgct taaggcgatg-3'(配列番号71))とプライマー45(5'-atgtactttc cagtgcgtgt agtctactc -3'(配列番号72))を用いてKODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、日本)によりPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、ベクターを調製した。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(8分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0123】
上記ベクターと上記融合遺伝子を、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングし、得られたプラスミドをpUCLTPA1とした。
【0124】
(1-2)セルフクローニングベクター
上記で得られたプラスミドベクターpUCLTPA1を鋳型として、プライマー46(5’-gcgtggttta ctagctttag tgctaccaaa-3'(配列番号73))とプライマー47(5’-ctgcagatcg gctgaagtta ggagcggcca ttgtc-3'(配列番号74))を用いてPCRを行い、得られたPCR増幅産物をQIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて精製し、これをセルフクローニングベクターPUCLTPA1とした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(9分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0125】
(2)形質転換体の調製
定法であるPEG−カルシウム法(Mol Gen Genet,218,99-104,(1989))に従って、上記で調製したセルフクローニングベクターPUCLTPA1を用いて、ロイシン要求性変異麹菌株(アスペルギルス・オリゼleu-5(寄託番号:FERM P-20079))を形質転換した。
【0126】
次いで形質転換処理した菌株を、硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek-Dox)培地(2%グルコース、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で培養し、かかる培地で生育できる菌株を選択することにより、セルフクローニングベクターPUCLTPA1について形質転換体を得た。
【0127】
(3)ペプチダーゼ10の産生
上記で調製したペプチダーゼ10生産菌を5 mlのGPY液体培地に植菌後、30℃、250 rpmで3日間ディスポの試験管で培養した。培養後、100μlの培養液上清を遠心濃縮し、20μlのサンプルバッファーに懸濁し、100℃で3分間煮沸後、20μlをアプライし、SDS-PAGEを行った。コントロールは、特開2010-4760号公報([0055])に記載のプラスミドpUCLT1を用いて、OSI1013Leu要求性変異株を形質転換した株を用いた。SDS-PAGEの結果を図15に示す。その結果、pdiAプロモーターを使用することにより、N結合型糖鎖が付加されたブロードなバンドとして、菌体外にg/L-brothレベルの著量のペプチダーゼ10が分泌生産された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状菌ペプチダーゼの生産方法、並びに当該方法の実施に有用な糸状菌用遺伝子発現カセット、糸状菌用発現ベクター及び形質転換体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチダーゼは、衣料用洗剤をはじめとする各種洗浄剤、化粧料、浴用剤、食品改質剤、消化補助剤或いは消炎剤といった様々な用途、分野で利用され、工業用酵素の中で最も生産量が多い。食品工業においても、食品タンパク質からの調味料としてのアミノ酸製造、食品の苦味や雑味の低減、食品へのコクや濃厚感付与のためのペプチド製造、栄養源の高い腸吸収の良いペプチド製造、血圧降下活性などの機能性食品素材としてのペプチド製造、食品に混濁する不要タンパク質の除去などにおいて、ペプチダーゼは重大な働きを有する。食品工業で使用されるペプチダーゼは、微生物由来のものが多く、アスペルギルス(Aspergillus)属、バシラス(Bacillus)属、リゾプス(Rhizopus)属のものが多い。特に、アスペルギルス属の麹菌(アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae))由来のペプチダーゼは、幅広いpHに対応できるものが多く、また液体培養や固体培養などの培養条件の違いで種々のタイプの分子種を有するペプチダーゼ酵素剤を提供できることから、食品業界で最も汎用されている。
【0003】
なかでも血圧降下活性を有する乳たんぱく質由来のVPP, IPPなどのラクトトリペプチドは、麹菌由来のペプチダーゼ酵素剤で有利に生産できることから、機能性食品材料としてのペプチド生産にも麹菌由来のペプチダーゼは非常に有用である(非特許文献1)。
【0004】
ただ、機能性ペプチド製造においては、現状の麹菌由来のペプチダーゼ酵素剤にも弱点がある。具体的には、かかる酵素剤は、麹菌の培養抽出物を組成とするため、特性が不明な複数のペプチダーゼを含んでおり、そのため、食品タンパク質に作用させた場合、目的の機能性ペプチドが過分解され、アミノ酸にまで変換されてしまう。
【0005】
上記課題を解決するために、反応時間、反応pH、反応温度、食品タンパク質と酵素剤の量比、酵素剤の併用など、ケースバイケースで対応せざるを得ないのが現状である。
【0006】
かかる課題を解決するためには、分子種が明らかなペプチダーゼ酵素剤を、安全性が高く古くから清酒や醤油などの醸造食品の製造に利用されてきた糸状菌、特に麹菌により提供できることが望ましい。しかしながら、ペプチダーゼは細胞毒性を有するため、遺伝子を導入してペプチダーゼを細胞内で高発現させること、即ち分子種が明らかなペプチダーゼを糸状菌で成功して発現させることは困難と考えられていた。また、ペプチダーゼの基質特異性は、その一次構造から推測できず、分子ごとに細胞毒性が異なることが予測され、分子ごとに高発現系を工夫しなければならない困難性があった。
【0007】
最近、麹菌由来の10種類のペプチダーゼを麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ産生させたことが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−4760号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】British Journal of Nutrition, 94, 84-91(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では10種類のペプチダーゼを麹菌を用いて産生させたことが記載されているだけであり、それ以外のペプチダーゼの産生については何ら開示がされていない。
【0011】
そこで、本発明は、特許文献1で生産が報告されているペプチダーゼ以外の、糸状菌に由来し、分子種が明らかなペプチダーゼを、糸状菌を宿主として生産する方法、特にセルフクローニング法により生産する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該ペプチダーゼの生産に用いるための材料、すなわち糸状菌用遺伝子発現カセット、糸状菌用発現ベクター及び形質転換体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、配列番号16〜25のいずれかに記載するアミノ酸配列を有する糸状菌由来のペプチダーゼを、特定のプロモーターと組み合わせることにより、糸状菌を宿主とするセルフクローニング法を用いて効率よく生産することができるという知見を得た。本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の糸状菌用遺伝子発現カセット、糸状菌用発現ベクター、糸状菌及びペプチダーゼの生産方法を提供するものである。
【0013】
(I)糸状菌用遺伝子発現カセット
(I-1) 以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌体内で機能するターミネーターを有する糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0014】
(I-2) 前記プロモーターが以下の(a1)又は(b1)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c1)又は(d1)のDNAからなることを特徴とする、(I-1)に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a1)配列番号1及び2に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b1)配列番号1及び2に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c1)配列番号6に記載される塩基配列からなるDNA
(d1)配列番号6に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0015】
(I-3) 前記プロモーターが以下の(a2)又は(b2)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c2)又は(d2)のDNAからなることを特徴とする、(I-1)に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a2)配列番号3に記載される塩基配列からなるDNA
(b2)配列番号3に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c2)配列番号6、7、8、12、13及び14に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d2)配列番号6、7、8、12、13及び14に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0016】
(I-4) 前記プロモーターが以下の(a3)又は(b3)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c3)又は(d3)のDNAからなることを特徴とする、(I-1)に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a3)配列番号4に記載される塩基配列からなるDNA
(b3)配列番号4に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c3)配列番号6〜11に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d3)配列番号6〜11に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0017】
(I-5) 前記プロモーターが以下の(a4)又は(b4)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c4)又は(d4)のDNAからなることを特徴とする、(I-1)に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a4)配列番号5に記載される塩基配列からなるDNA
(b4)配列番号5に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c4)配列番号15に記載される塩基配列からなるDNA
(d4)配列番号15に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0018】
(II)糸状菌用発現ベクター
(II-1) 糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子、及び(I-1)〜(I-5)のいずれか一項に記載の遺伝子発現カセットを有する糸状菌用発現ベクター。
【0019】
(II-2) 実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである、(II-1)に記載の糸状菌用発現ベクター。
【0020】
(II-3) 直鎖状であることを特徴とする、(II-1)又は(II-2)に記載の糸状菌用発現ベクター。
【0021】
(II-4) 糸状菌がアスペルギルス属に属する糸状菌である、(II-1)〜(II-3)のいずれか一項に記載の糸状菌用発現ベクター。
【0022】
(III)形質転換体
(III-1) (II-1)〜(II-3)のいずれか一項に記載の糸状菌用発現ベクターで形質転換されてなる糸状菌。
【0023】
(III-2) アスペルギルス属に属する糸状菌である、(III-1)に記載の糸状菌。
【0024】
(IV)ペプチダーゼの生産方法
(IV-1) (III-1)に記載の糸状菌を培地で培養し、当該培地からペプチダーゼを回収する工程を含む、ペプチダーゼの生産方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の糸状菌用遺伝子発現カセット及び生産方法によれば、分子種の明らかな糸状菌由来のペプチダーゼを、糸状菌を宿主として用いて効率よく製造することができる。このため、本発明の方法によれば、分子種の明らかな所望のペプチダーゼを工業的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ペプチダーゼ1生産株をMPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図2】ペプチダーゼ1生産株をMPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:コントロール、2及び3: PsodM、4及び5:PamyA、6:PglaA、7及び8:Phly、1−8:MPY
【図3】ペプチダーゼ2生産株をGPY又はMPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図4】ペプチダーゼ2生産株をGPY又はMPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:コントロール、2:PsodM、3及び4:PamyA、5及び6:PglaA、7及び8:Phly、1、2、7及び8:GPY、3−6: MPY
【図5】ペプチダーゼ3生産株をGPY又はMPYで30℃、40又は64時間、液体培養後に培養液上清又は菌体破砕液の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図6】ペプチダーゼ3生産株をGPY又はMPYで30℃、40又は64時間、液体培養後に培養液上清又は菌体破砕液のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2:PsodM 40 hr、3:PsodM 64 hr、4:PamyA 40 hr、5:PamyA 64 hr、6:PglaA 40 hr、7:PglaA 64 hr、8:Phly 40 hr、9:Phly 64 hr、10:コントロール 40 hr、11:コントロール 64 hr.
【図7】ペプチダーゼ4生産株をGPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清又は菌体破砕液の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図8】ペプチダーゼ4生産株をGPYで30℃、64時間、液体培養後に培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2:コントロール、3、4:ペプチダーゼ4生産株
【図9】ペプチダーゼ5生産株を小麦フスマ培養(30℃、40時間)、GPY液体培養(3 ml、30℃、40時間又は10日間)、又はそれらに1 mM CoCl2を添加した培地での培養後に、小麦フスマ培養は菌体外のみ、液体培養は菌体内外の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図10】ペプチダーゼ6生産株を小麦フスマ培養(30℃、40時間)、又はGPY液体培養(3 ml、30℃、40時間又は10日間)を行った後に、小麦フスマ培養は菌体外のみ、液体培養は菌体内外の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図11】ペプチダーゼ5生産株とペプチダーゼ6生産株を100 ml GPY(ペプチダーゼ5は+1 ml CoCl2)で液体培養(30℃、150 rpm、5又は10日間)を行った後に、培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2及び3:コントロール、4及び5:ペプチダーゼ5生産株、6及び7:コントロール、8及び9:ペプチダーゼ6生産株、2、4、6及び8:5日間培養、3、5、7及び9:10日間培養
【図12】ペプチダーゼ7生産株をGPYで液体培養(3 ml、30℃、40、64又は88時間)を行った後に、培養液上清の酵素活性を測定した結果を示すグラフである。
【図13】ペプチダーゼ7生産株をGPYで液体培養(100 ml、30℃、150 rpm、88時間)を行った後に、培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2:コントロール、3:ペプチダーゼ7生産株
【図14】ペプチダーゼ8生産株とペプチダーゼ9生産株をGPY液体培養(3 ml、30℃、200 rpm、40時間)を行った後に、培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。1:マーカー、2:コントロール、3:ペプチダーゼ8生産菌、4及び5:ペプチダーゼ9生産菌
【図15】ペプチダーゼ10生産株をGPYで液体培養(5 ml、30℃、250 rpm、3日間)を行った後に、培養液上清のSDS-PAGEを行った結果を示す図である。M:マーカー、1:コントロール、2−8:ペプチダーゼ10生産菌
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
本発明が対象とする糸状菌としては、麹菌、及び麹菌が属する糸状不完全菌類を挙げることができる。なかでも好ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)、ムコール属(Mucor)、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ属(Trichoderma)、及びノイロスポラ属(Neurospora)に属する糸状菌であり、より好ましくはアスペルギルス属(Aspergillus)に属する糸状菌である。アスペルギルス属糸状菌としては、特に制限されないが、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)などを挙げることができる。なかでも、長年清酒、醤油、味噌、みりんなどの醸造食品に利用されてきた安全な微生物であり、わが国の産業において利用頻度の高い宿主である点で、麹菌アスペルギルス・オリゼが好ましい。
【0029】
(1)糸状菌用遺伝子発現カセット
本発明の糸状菌用遺伝子発現カセットは、以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌体内で機能するターミネーターを有する:
(a)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0030】
本明細書において、上記(b)のDNAからなるプロモーター、(d)のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子をそれぞれ改変体と呼ぶことがある。
【0031】
(1-1)糸状菌ペプチダーゼ
本発明が対象とするペプチダーゼは、配列番号16〜26に記載するいずれかのアミノ酸配列を有する糸状菌由来、特に麹菌由来のペプチダーゼ又はその改変体である。これらのペプチダーゼのうち、配列番号16〜21に示すペプチダーゼはエキソペプチダーゼ、配列番号22〜25に示すペプチダーゼはエンドペプチダーゼに分類することができる。
【0032】
なお、これらの各ペプチダーゼのアミノ酸配列とこれらをコードする遺伝子(ペプチダーゼ遺伝子)の塩基配列との対応関係を、下表に記載する:
【0033】
【表1】
【0034】
また、本発明におけるペプチダーゼ遺伝子は、配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAからなるものであっても良い。
【0035】
ここで、上記のストリンジェントな条件とは、例えば、65℃で5×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mM塩化ナトリウム、15 mMクエン酸ナトリウム)中でハイブリダイズさせ、更に0.1%のSDSを含有する0.5×SSC溶液で65℃で洗浄する条件を意味する。ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションの各操作は、「Molecular Cloning (Third Edition)」 (J. Sambrook & D. W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる。
【0036】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、通常、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の同一性を有し、その同一性は、例えば70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が挙げられる。塩基配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。塩基配列の同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。
【0037】
このような改変されたペプチダーゼ遺伝子の製造は常法に従って行うことができる。
【0038】
(1-3)プロモーター
プロモーターは、配列番号1〜5に記載するいずれかの塩基配列を有する糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来するプロモーターである。これら配列番号1〜5に示すプロモーターは、それぞれ配列番号1:α−アミラーゼ遺伝子プロモーターamyA(特許第3005618号)、配列番号2:グルコアミラーゼ遺伝子プロモーターglaA(Gene,108,145-150,(1992))、配列番号3:マンガンSOD遺伝子プロモーターsodM(特開2000-224381号公報)、配列番号4:hly(特開2009-296958号公報)、配列番号5:ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ遺伝子プロモーターpdiA(特開2002-320477号公報)である。
【0039】
また、本発明におけるプロモーターは、配列番号1−5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNAからなるものであっても良い。
【0040】
ここでのストリンジェントな条件とは、上記と同様である。また、このような改変されたプロモーターの製造は常法に従って行うことができる。
【0041】
遺伝子発現カセットにおけるプロモーターの位置は、糸状菌体内でプロモーターが機能し、所望のペプチダーゼが発現し産生できる位置であれば、特に限定されないが、通常、ペプチダーゼ遺伝子配列の上流域に配置される。
【0042】
(1-4)ターミネーター
ターミネーターは、糸状菌体内、特にアスペルギルス属糸状菌体内でターミネーターとして機能するものであればよいが、好ましくは糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来するターミネーターである。好ましくはアスペルギルス属、より好ましくはアスペルギルス・オリゼに由来する、例えばα−アミラーゼ遺伝子のターミネーター、又はグルコアミラーゼ(glaB)ターミネーター(Gene. 207, 127-134,(1998))等を挙げることができる。
【0043】
(1-5)糸状菌用遺伝子発現カセット
本発明の糸状菌用遺伝子発現カセットにおけるペプチダーゼ遺伝子とプロモーターとの好ましい組み合わせを以下に示す。
・配列番号6に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号1〜4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましく、配列番号1及び2に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が更に好ましく、配列番号1に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が特に好ましい。
・配列番号7に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号3及び4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましく、配列番号3に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が特に好ましい。
・配列番号8に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号1、3及び4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましく、配列番号3及び4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が更に好ましく、配列番号3に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が更に好ましい。
・配列番号9〜11に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号4に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましい。
・配列番号12〜14に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号3に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましい。
・配列番号15に記載する塩基配列を有するペプチダーゼ遺伝子及びその改変体は、配列番号5に記載する塩基配列を有するプロモーター及びその改変体が好ましい。
【0044】
本発明の糸状菌用遺伝子発現カセットは、これらのプロモーター、ペプチダーゼ遺伝子、及びターミネーターが、直接連結されてなるものであってもよいが、それらの間に1〜2000塩基程度のヌクレオチドが挟まれていてもよい。但し、これらのヌクレオチドの配列は糸状菌由来、好ましくはアスペルギルス属糸状菌に由来する配列であることが望ましい。例えば、目的とするペプチダーゼが菌体内タンパク質として生産されるものである場合は、目的とするペプチダーゼの遺伝子のオープンリーディングフレームに隣接して、上流に糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌の既知分泌タンパク質の遺伝子を配置してもよく、こうすることにより、目的とするペプチダーゼは、上記分泌タンパク質との融合タンパク質として発現産生され、斯くして産生された融合タンパク質は菌体外に分泌される。また、その他のヌクレオチドとして、通常ベクターが備える制限酵素切断部位などを備えていてもよい。
【0045】
なお、アスペルギルス属糸状菌の分泌タンパク質としては、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオハイドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、キシラナーゼ、ガラクトシダーゼ、フラクトフラノシダーゼ、キシロシダーゼ、ペクチンリアーゼ、フィターゼなどが知られている。
【0046】
(2)糸状菌用発現ベクター
本発明の糸状菌用発現ベクターは、糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子、及び上記遺伝子発現カセットを有する。
【0047】
(2-1)選択マーカー遺伝子
選択マーカー遺伝子は、糸状菌体内、特にアスペルギルス属糸状菌体内で選択マーカーとして機能するもの、すなわち発現できるものであればよいが、好ましくは糸状菌、特にアスペルギルス属糸状菌に由来する選択マーカー遺伝子である。かかる選択マーカー遺伝子として、例えば、niaD(Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 1795-1797(1995))、argB(Enzyme Microbiol Technol, 6, 386-389, (1984))、sC(Gene, 84, 329-334, (1989))、ptrA(Biosci Biotechnol Biochem, 64, 1416-1421, (2000))、pyrG(Biochem Biophys Res Commun, 112, 284-289, (1983))、amdS(Gene, 26, 205-221, (1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子(Mol Gen Genet, 261, 290-296, (1999))、ベノミル耐性遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869-4873, (1986))、及びハイグロマイシン耐性遺伝子(Gene, 57, 21-26, (1987))から選ばれるマーカー遺伝子を挙げることができる。
【0048】
これらの選択マーカー遺伝子は、上記文献に記載された配列に基づいて設計されたプライマーを用いて、アスペルギルス属糸状菌の染色体DNAを鋳型としてPCRを行う方法、上記文献に記載された配列に基づいて設計されたプローブを用いてアスペルギルス属糸状菌の染色体DNAライブラリーからハイブリダイゼーションにより取得する方法などにより容易に入手することができる。また、宿主の糸状菌として、例えばロイシン要求性などの栄養要求性変異株を用いる場合、選択マーカー遺伝子として当該栄養要求性を相補する野生型遺伝子を用いることもできる。例えば、宿主がロイシン要求性変異株である場合、そのロイシン要求性を相補できる選択マーカー遺伝子を用いることができ、かかる遺伝子としてはβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするアスペルギルス・ニジュランス由来の遺伝子ANleu2及びアスペルギルス・オリゼ由来の遺伝子leu2を挙げることができる。なお、これらの場合、宿主として用いる糸状菌は、選定された選択マーカーについての機能的遺伝子を有していない株を用いる必要がある。
【0049】
(2-2)糸状菌用発現ベクター
本発明の糸状菌用発現ベクターは、これらの選択マーカー遺伝子、及び遺伝子発現カセットが、直接連結されてなるものであってもよいが、それらの間に1〜2000塩基程度のヌクレオチドが挟まれていてもよい。但し、これらのヌクレオチドの配列は糸状菌由来、好ましくはアスペルギルス属糸状菌に由来する配列であることが望ましい。
【0050】
また本発明には、直鎖状の糸状菌用発現ベクター及び環状の糸状菌用発現ベクターの両者が含まれるが、(1)構築したプラスミドから1ステップのPCRで取得できるなど、環状の発現ベクターと比べて少ないステップで調製することができること、(2)宿主としてロイシン要求性変異株を使用する場合に、当該変異を直接相補することができること、及び(3)形質転換効率が環状の発現ベクターと比べて高いという点から、好ましくは直鎖状の糸状菌用発現ベクターである。
【0051】
(3)形質転換体
本発明の形質転換体は、前述する本発明の糸状菌用発現ベクターで糸状菌を形質転換したものである。
【0052】
宿主は糸状菌であればよいが、高いプロモーター活性を発現させるためには、アスペルギルス属の菌株が好ましく、特にアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・タマリ、アスペルギルス・グラウカス、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・ニジュランス等のアスペルギルス属糸状菌が好ましい。これらの中では、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・タマリ、アスペルギルス・グラウカスなどが食品産業において有用な菌種である。高いタンパク質生産能及び醸造微生物としての安全性の点で、特にアスペルギルス・オリゼを宿主とすることが好ましい。なお、宿主として用いる糸状菌は、野生株に限らず、糸状菌に由来するものであれば、その変異株であってもよい。かかる変異株としては、前述する選択マーカーに関する機能的遺伝子を有さないように変異してなる株を挙げることができ、具体的には正常にロイシンの生合成ができないようにロイシン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているロイシン要求性変異株:正常にアルギニンの生合成ができないようにアルギニン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているアルギニン要求性変異株:正常にメチオニンの生合成ができないようにメチオニン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているメチオニン要求性変異株:正常にヒスチジンの生合成ができないようにヒスチジン生合成を担う遺伝子が変異又は欠失しているヒスチジン要求性変異株:正常に硝酸が資化できないように硝酸資化性遺伝子が変異又は欠失しているniaD変異株:正常に硝酸イオンが資化できないように硝酸イオン資化性遺伝子が欠失しているsC変異株などを挙げることができる。
【0053】
宿主の形質転換方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、Cohenらの方法(塩化カルシウム法)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69:2110 (1972))、プロトプラスト法(Mol. Gen. Genet., 168:111 (1979))、コンピテント法(J. Mol. Biol., 56:209 (1971))、エレクトロポレーション法等を挙げることができる。
【0054】
(4)ペプチダーゼの生産方法
本発明のペプチダーゼの生産方法は、前述した本発明の糸状菌の形質転換体を培養する工程と、培養物から目的タンパク質を回収する工程を含む。
【0055】
培養工程は、固体培地を用いる固体培養、又は液体培地を用いる液体培養のいずれでも行うことができる。好ましくは液体培地を用いた液体培養である。
【0056】
固体培地としては、糸状菌の培養に使用される公知の固体培地を制限なく使用することができる。固体培地とはその固形の支持担体が栄養源を含むか、又は固形の支持担体に栄養源が添加されものであり、そこに糸状菌が生育できる固形培地を指し示す。このような固体培地として主に、フスマ(小麦などの穀物の殻)、デンプン粉末、米・小麦・大豆の生あるいは蒸したもの、更にはメンブレンや多孔質の人工物(例えば園芸に使われるバーミキュライト)等に栄養源を添加したもの等が挙げられる。特にフスマ、蒸した米が好ましい。
【0057】
また、液体培地は、糸状菌の培養に使用される公知の液体培地を制限なく使用できる。例えば、用いられる培地としては、炭素源としてグルコース、マルトース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものが挙げられる。また無機もしくは有機窒素源(例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、カゼインの加水分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン、ビーフ抽出物等)が挙げられる。これらの炭素源及び窒素源は、純粋な形で使用する必要はなく、純度の低いものも微量の生育因子や無機栄養素を豊富に含んでいるので有利である。さらに所望により、他の栄養源[例えば、無機塩(例えば、二リン酸ナトリウム、二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、抗生物質(例えば、アンピシリン、カナマイシン)など]を培地中に添加してもよい。具体的な液体培地としては、例えば、ポテトデキストロース培地(ニッスイ社)、最少培地(2%グルコース(又はスターチ)、0.3% NaNO3、0.2% KCl、0.1% KH2PO4、0.05% MgSO4、0.002% FeSO4、pH6.0)等を挙げることができる。なお、これらは1.5%程度の寒天を添加することで、固体培地として調製することもできる。
【0058】
形質転換体の培養は、通常pH5.5〜8.5、好ましくはpH6〜8のpH条件;通常25〜42℃、好適には30〜37℃の温度条件で行うことができる。培養時間は、その他の条件によって異なるが、通常2〜7日間程度、好ましくは3〜5日間程度を挙げることができる。
【0059】
本発明の方法によれば、実施例で示すように目的とするペプチダーゼ(配列番号16〜25)を菌体外に生成することもできる。このため、ペプチダーゼの取得に際しては、培養上清を回収すればよい。また寒天培地などのように固体培地を使用する場合も培養上清としての寒天培地を回収すればよい。さらに、これらの上清を、公知のタンパク質精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティなどの各種クロマトグラフィーに供することにより目的とするペプチダーゼを単離し回収することができる。
【0060】
(5)セルフクローニングベクター及びセルフクローニング株
本発明において、好ましい糸状菌発現ベクターは、糸状菌に由来する選択マーカー遺伝子、糸状菌に由来するプロモーター、糸状菌に由来するペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌に由来するターミネーターを含む、実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである。また本発明において、好ましい形質転換体は、上記セルフクローニングベクターで形質転換してなる糸状菌である。糸状菌のなかでも好ましくは麹菌であり、麹菌のなかでも好ましくはアスペルギルス属に属する麹菌である。
【0061】
なお、本発明において「セルフクローニング株」とは、前述するように実質的に宿主糸状菌種と同種の生物由来のヌクレオチドから構成される株をいう。また糸状菌に由来しないヌクレオチドが含まれる場合も、せいぜい1〜10塩基程度、特に6〜10塩基程度である。この程度の大きさの挿入配列は、例えば制限酵素部位を導入するために挿入される場合がある。
【0062】
宿主の糸状菌としては、マーカー遺伝子、プロモーター、ターミネーター及び発現させるペプチダーゼ遺伝子が由来する糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌と同種の菌株が用いられる。形質転換株が容易に選択できるように、導入するマーカー遺伝子と同一又はそれと同機能の遺伝子が欠失又は変異した変異株を用いることが好ましい。この場合は、上記で説明した糸状菌用発現ベクターを用いて上記変異株を形質転換した後、導入されたマーカー遺伝子の発現を指標とすることによって、糸状菌用発現ベクター中の目的ペプチダーゼ遺伝子が導入された形質転換体を選択することができる。
【0063】
また、導入するマーカー遺伝子と同一又はそれと同機能の遺伝子が欠失又は変異していないアスペルギルス属糸状菌を宿主として用いることもできる。この場合は、目的とするペプチダーゼ遺伝子の発現又はその発現量の増大などを指標とすることによって形質転換体を選択することができる。形質転換方法は、特に限定されず、PEG−カルシウム法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法などの公知の方法を制限なく採用できる。
【0064】
斯くして得られるセルフクローニング株は、糸状菌、好ましくはアスペルギルス属糸状菌の染色体DNA中に、前述する本発明の糸状菌用発現ベクターが組み込まれた状態で存在し、大腸菌などの異種生物由来のヌクレオチドは実質的に存在しない。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般的な実験方法は、実験書(サムブルックら(Sambrook, J.)のMolecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版)に従った。また、下記の実施例において、すべてのPCRは、PrimeSTAR(登録商標) HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。なお、下記実施例において、麹菌(アスペルギルス・オリゼ)として、OSI 1013株を使用した。
【0066】
実施例では、以下の表に示す10種類のペプチダーゼ(ペプチダーゼ1〜10)を使用した。
【0067】
【表2】
【0068】
エキソペプチダーゼ活性測定方法
以下の組成の溶液を37℃で反応させ、各反応時間毎(20分まで5分間隔)に405 nmにおける吸光度を測定した。1分間に1μmolのpNA(p-ニトロアニリド)を遊離する酵素活性を1 unitとした。
20 mM 基質/sH2O 5μl (終濃度 0.5mM)
1M バッファー 10μl (終濃度 50mM)
酵素* + sH2O 185μl
合計200μl
*培養液上清又は菌体破砕液
基質及びバッファーは測定する酵素の種類に従い以下の表に示すものを使用した。
【0069】
【表3】
【0070】
エンドペプチダーゼ活性測定方法
以下の組成の溶液を37℃で1時間反応させ、10%(w/v)TCA 1 mlを添加し、ボルテックス、遠心後、上清の325 nmにおける吸光度を測定した。1分間に吸光度を1上昇させる酵素活性を1 unitとした。
2% アゾカセイン(Azocasein)/sH2O 250μl (終濃度 1%)
1M バッファー 50μl (終濃度 100mM)
酵素* + sH2O 200μl
合計500μl
*培養液上清
バッファーは測定する酵素の種類に従い以下の表に示すものを使用した。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例1 糸状菌用発現ベクターカセット及び形質転換体の構築
特許文献1(特開2010-4760号公報)に記載のプラスミドベクターIE-232を使用し、以下のプラスミドベクターの構築を行った。
【0073】
(1)ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
(a)sodMプロモーター(配列番号3)制御下ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ1遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー3:5’- ACCAAACCACCCAAAATGAAGGTACGTCAATTCCACTGAT -3’(配列番号28)
プライマー4:5’- CACTGGAAAGTACATCTACTCCTCCAAGTCCTTCTTAGTC -3’(配列番号29)
プライマー3の5’末端15塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー4の5’末端15塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端15塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをIE-300とした。
【0074】
(b)amyAプロモーター(配列番号1)制御下ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
IE-300のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー6:5’- ATGAAGGTACGTCAATTCCACTGAT -3’(配列番号32)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりamyAプロモーター(配列番号1)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー7:5’- ACACTCCCCGCGTACGGTACGCCTCCGGGTAGTAG -3’(配列番号33)
プライマー8:5’- AATTGACGTACCTTCATAAATGCCTTCTGTGGGGT -3’(配列番号34)
プライマー7の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー8の5’末端17塩基はペプチダーゼ1遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBaAiP014とした。
【0075】
(c)glaAプロモーター(配列番号2)制御下ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
IE-300のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー6:5’- ATGAAGGTACGTCAATTCCACTGAT -3’(配列番号32)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりglaAプロモーター(配列番号2)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー9:5’- ACACTCCCCGCGTACGGGAATTCTGTAGCTGCTCT -3’(配列番号36)
プライマー10:5’- TTGACGTACCTTCATCTTGCTTCGACTTCGTTTGCTGATG -3’(配列番号37)
プライマー9の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー10の5’末端15塩基はペプチダーゼ1遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをIE-324とした。
【0076】
(d)hlyプロモーター(配列番号4)制御下ペプチダーゼ1発現プラスミドの構築
IE-300のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー6:5’- ATGAAGGTACGTCAATTCCACTGAT -3’(配列番号32)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりhlyプロモーター(配列番号4)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー11:5’- ACACTCCCCGCGTACGGCTACAGCATGGTCTGGAT -3’(配列番号38)
プライマー12:5’- AATTGACGTACCTTCATGGTGTTGTGGTGTGAAGG -3’(配列番号39)
プライマー11の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー12の5’末端17塩基はペプチダーゼ1遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhiP014とした。
【0077】
(2)ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
(a)sodMプロモーター(配列番号3)制御下ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ2遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー13:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGAAGTCGGTACTCAACAT -3’(配列番号40)
プライマー14:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTCACGGGTTATAATCCACAA -3’(配列番号41)
プライマー13の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー14の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(3分)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsP002とした。
【0078】
(b)amyAプロモーター(配列番号1)制御下ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
pBsP002のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー15:5’- ATGAAGTCGGTACTCAACATGGGAG -3’(配列番号42)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりamyAプロモーター(配列番号1)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー7:5’- ACACTCCCCGCGTACGGTACGCCTCCGGGTAGTAG -3’ (配列番号33)
プライマー16:5’- TTGAGTACCGACTTCATAAATGCCTTCTGTGGGGT -3’ (配列番号43)
プライマー7の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー16の5’末端17塩基はペプチダーゼ2遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBaAP002とした。
【0079】
(c)glaAプロモーター(配列番号2)制御下ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
pBsP002のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー15:5’- ATGAAGTCGGTACTCAACATGGGAG -3’(配列番号42)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりglaAプロモーター(配列番号2)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー9:5’- ACACTCCCCGCGTACGGGAATTCTGTAGCTGCTCT -3’ (配列番号36)
プライマー17:5’- TTGAGTACCGACTTCATCTTGCTTCGACTTCGTTT -3’ (配列番号44)
プライマー9の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー17の5’末端17塩基はペプチダーゼ2遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBgAP002とした。
【0080】
(d)hlyプロモーター(配列番号4)制御下ペプチダーゼ2発現プラスミドの構築
pBsP002のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー15:5’- ATGAAGTCGGTACTCAACATGGGAG -3’(配列番号42)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりhlyプロモーター(配列番号4)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー11:5’- ACACTCCCCGCGTACGGCTACAGCATGGTCTGGAT -3’(配列番号38)
プライマー18:5’- TTGAGTACCGACTTCATGGTGTTGTGGTGTGAAGG -3’(配列番号45)
プライマー11の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー18の5’末端17塩基はペプチダーゼ2遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhP002とした。
【0081】
(3)ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
(a)sodMプロモーター(配列番号3)制御下ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ3遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー19:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGACCATTCGTCCAATGAA -3’(配列番号46)
プライマー20:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTTATAGAGACATATTAGCCA -3’(配列番号47)
プライマー19の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー20の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsP003とした。
【0082】
(b)amyAプロモーター(配列番号1)制御下ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
pBsP003のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー21:5’- ATGACCATTCGTCCAATGAAGTTCA -3’(配列番号48)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりamyAプロモーター(配列番号1)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー7:5’- ACACTCCCCGCGTACGGTACGCCTCCGGGTAGTAG -3’(配列番号33)
プライマー22:5’- ATTGGACGAATGGTCATAAATGCCTTCTGTGGGGT -3’(配列番号49)
プライマー7の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー22の5’末端17塩基はペプチダーゼ3遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBaAP003とした。
【0083】
(c)glaAプロモーター(配列番号2)制御下ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
pBsP003のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’ (配列番号31)
プライマー21:5’- ATGACCATTCGTCCAATGAAGTTCA -3’ (配列番号48)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりglaAプロモーター(配列番号2)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー9:5’- ACACTCCCCGCGTACGGGAATTCTGTAGCTGCTCT -3’(配列番号36)
プライマー23:5’- ATTGGACGAATGGTCATCTTGCTTCGACTTCGTTT -3’(配列番号50)
プライマー9の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー23の5’末端17塩基はペプチダーゼ3遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBgAP003とした。
【0084】
(d)hlyプロモーター(配列番号4)制御下ペプチダーゼ3発現プラスミドの構築
pBsP003のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー5:5’- CCGTACGCGGGGAGTGTGCTTAAGG -3’(配列番号31)
プライマー21:5’- ATGACCATTCGTCCAATGAAGTTCA -3’(配列番号48)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(10分30秒)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりhlyプロモーター(配列番号4)を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー11:5’- ACACTCCCCGCGTACGGCTACAGCATGGTCTGGAT -3’(配列番号38)
プライマー24:5’- ATTGGACGAATGGTCATGGTGTTGTGGTGTGAAGG -3’(配列番号51)
プライマー11の5’末端17塩基はleuAマーカー(配列番号35)の3’末端と相同の配列で、プライマー24の5’末端17塩基はペプチダーゼ3遺伝子の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端17塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhP003とした。
【0085】
(4)ペプチダーゼ7発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ7遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー25:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGCATATGCTCTTATTTAT -3’(配列番号52)
プライマー26:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTTAGATCTTCTTCTGGCACA -3’(配列番号53)
プライマー25の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー26の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsP004とした。
【0086】
(5)ペプチダーゼ9発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ9遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー27:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGCGGGGCGCATCTCTCCT -3’(配列番号54)
プライマー28:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTTACAAAGCAAGAAGAAGAC -3’(配列番号55)
プライマー27の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー28の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsiP020とした。
【0087】
(6)ペプチダーゼ8発現プラスミドの構築
IE-232のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー1:5’- TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA -3’(配列番号26)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ8遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー29:5’- TACCAACCAAACCACCCAAAATGAGATTTCTTCTGTCTTT -3’(配列番号56)
プライマー30:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATCTATTTGGGGGATGCAACTC -3’(配列番号57)
プライマー29の5’末端20塩基はsodMプロモーター(配列番号3)の3’末端と相同の配列で、プライマー30の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBsP005とした。
【0088】
(7)ペプチダーゼ4発現プラスミドの構築
pBhiP014のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー31:5’- GGTGTTGTGGTGTGAAGGGTGATTGATGTG -3’(配列番号58)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ4遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー32:5’- ACCCTTCACACCACAACACCATGCGTTTCCTCCCCTGCAT -3’(配列番号59)
プライマー33:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTTACAGCGAATCTGCGAAGG -3’(配列番号60)
プライマー32の5’末端20塩基はhlyプロモーター(配列番号4)の3’末端と相同の配列で、プライマー33の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(1分30秒)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhP006とした。
【0089】
(8)ペプチダーゼ6発現プラスミドの構築
pBhiP014のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー31:5’- GGTGTTGTGGTGTGAAGGGTGATTGATGTG -3’ (配列番号58)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’ (配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ6遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー34:5’- ACCCTTCACACCACAACACCATGGCTGCCAAACTAGTAGA -3’(配列番号61)
プライマー35:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATCTAATCAATAGAGTCGTCCC -3’(配列番号62)
プライマー34の5’末端20塩基はhlyプロモーター(配列番号4)の3’末端と相同の配列で、プライマー35の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhiP021とした。
【0090】
(9)ペプチダーゼ5発現プラスミドの構築
pBhiP014のプラスミドDNAを鋳型として、下記プライマーを使用して下記条件でPCRによりベクター側を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー31:5’- GGTGTTGTGGTGTGAAGGGTGATTGATGTG -3’(配列番号58)
プライマー2:5’- ATGTACTTTCCAGTGCGTGTAGTCTACTCT -3’(配列番号27)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(9分)を30サイクル
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRによりペプチダーゼ5遺伝子を増幅した。得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的のDNA断片を切り出し、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製を行った。
<プライマー>
プライマー36:5’- ACCCTTCACACCACAACACCATGACTTCGAAAATCGCCCA -3’(配列番号63)
プライマー37:5’- ACACGCACTGGAAAGTACATTCAGTCAACAAAGATTGTCT -3’(配列番号64)
プライマー36の5’末端20塩基はhlyプロモーター(配列番号4)の3’末端と相同の配列で、プライマー37の5’末端20塩基はglaBターミネーター(配列番号30)の5’末端と相同の配列である。
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(2分)を30サイクル
上記2個のPCR増幅産物を各末端20塩基の相同領域を介して、In-FusionTM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用いて融合し、得られたプラスミドをpBhiP007とした。
【0091】
(10)各種ペプチダーゼ高生産形質転換株の取得
上記で構築した各プラスミドDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて下記条件でPCRにより麹菌へ導入するDNA断片を増幅した。また、コントロールとしてIE-232のプラスミドDNAを鋳型としてプライマー38とプライマー5を用いて下記条件でPCRによりleuAマーカーを増幅した。得られたPCR増幅産物をWizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いた精製、エタノール沈殿を行った。得られたDNA断片で麹菌を形質転換した。
<プライマー>
プライマー38:5’- GCGTGGTTTACTAGCTTTAGTGCTA -3’(配列番号65)
プライマー39:5’- ATCGGCTGAAGTTAGGAGCGGCCATTG -3’(配列番号66)
<PCR条件>
98℃(10秒)、58℃(5秒)、72℃(8分30秒)を30サイクル
【0092】
(11)形質転換体の調製
定法であるPEG−カルシウム法(Mol Gen Genet,218,99-104,(1989))に従って、上記で調製したセルフクローニングベクターをそれぞれ用いて、ロイシン要求性変異麹菌株を形質転換した。なお、当該ロイシン要求性変異麹菌株は、麹菌(アスペルギルス・オリゼ)のロイシンをコードする遺伝子を変異させて正常なロイシンが合成できないようにした菌株であり、ロイシン要求性を相補する選択マーカー遺伝子が組み込まれなければ、通常、ロイシンを含まない培地では増殖することができない。当該ロイシン要求性変異麹菌株は、アスペルギルス・オリゼleu-5として、茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている(寄託番号FERM P-20079)。
【0093】
次いで形質転換処理した菌株を、硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek-Dox)培地(2%グルコース、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で培養し、かかる培地で生育できる菌株を選択することにより、セルフクローニングベクターそれぞれについて形質転換体を得た。
【0094】
実施例2 セルフクローニングによるペプチダーゼ1の産生
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ1(推定分子量86.9 kDa)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた。
【0095】
上記で調製した各形質転換体を、30℃で64時間、MPY液体培地(2%マルトース、1%ペプトン、0.5%酵母エキス)で培養した。培養後に培養液上清の酵素活性測定とSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を図1に、SDS-PAGEの結果を図2に示す。sodM、amyA、glaA、hlyの各プロモーターで発現がみられ、特にamyAプロモーターを使用した場合に最も多くの分泌生産が確認された。
【0096】
実施例3 セルフクローニングによるペプチダーゼ2の産生
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ2(推定分子量81.1 kDa)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた。
【0097】
上記で調製した各形質転換体を、30℃で64時間、GPY液体培地(2%グルコース、1%ペプトン、0.5%酵母エキス)(PsodM、Phly)、又はMPY液体培地(PamyA、PglaA)で培養した。培養後に培養液上清の酵素活性測定とSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を図3に、SDS-PAGEの結果を図4に示す。sodM、hlyのプロモーターで発現が確認でき、特にsodMプロモーターを使用することで最も多くの分泌生産が確認された。
【0098】
実施例4 セルフクローニングによるペプチダーゼ3の産生
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ3(推定分子量78.9 kDa)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた。
【0099】
上記で調製した各形質転換体を、30℃で40又は64時間、GPY液体培地又はMPY液体培地で培養した。培養後に培養液上清及び菌体破砕液の酵素活性測定とSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を図5に、SDS-PAGEの結果を図6に示す。sodM、hlyプロモーターを使用することで、ペプチダーゼ3の菌体内での生産を、さらに、64時間培養することで菌体外での生産も確認でき、特にsodMプロモーターを使用した場合に最も多くの分泌生産が確認できた。
【0100】
実施例5 hlyプロモーターを用いた種々のペプチダーゼ遺伝子のセルフクローニング発現
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ3種類(ペプチダーゼ4、ペプチダーゼ5及びペプチダーゼ6)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ産生させた(hlyプロモーター使用)。
【0101】
(1)セルフクローニング株(ペプチダーゼ4)
上記で調製したペプチダーゼ4生産株を、30℃で64時間、GPY液体培地で培養した。培養後に培養液上清の酵素活性測定とSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を図7に、SDS-PAGEの結果を図8に示す。hlyプロモーターを使用することにより、菌体外と菌体内にペプチダーゼ4発現が確認でき、特に菌体内で著量の生産性が確認できた。
【0102】
(2)セルフクローニング株(ペプチダーゼ5)
上記で調製したペプチダーゼ5生産株を、小麦フスマ培養(30℃、40時間)、GPY液体培養(3 ml、30℃、40時間又は10日間)、又はそれらに1 mM CoCl2を添加した培地での培養を行った。培養後に小麦フスマ培養では菌体外のみ、液体培養は菌体内外の酵素活性測定を行った。酵素活性測定の結果を図9に示す。GPYを用いた液体培地では、菌体内で著量の生産を確認でき、さらに、塩化コバルトを培地に添加することでその菌体内での生産量は、3-4倍に増加した。また、小麦フスマの固体培養、及び10日間の液体培養を行うことで、菌体外への分泌発現にも成功した。
【0103】
(3)セルフクローニング株(ペプチダーゼ6)
上記で調製したペプチダーゼ6生産を、小麦フスマ培養(30℃、40時間)、又はGPY液体培養(3 ml、30℃、40時間又は10日間)を行った。培養後に小麦フスマ培養では菌体外のみ、液体培養は菌体内外の酵素活性測定を行った。酵素活性測定の結果を図10に示す。GPYを用いた液体培地では、菌体内で著量の生産を確認でき、更に、培養時間を40時間から、10日間にすることでその菌体内での生産量は、約30%増加するとともに、菌体外への分泌生産も確認できた。また、小麦フスマの固体培養を行うことで、菌体外への分泌発現にも成功した。
【0104】
(4)セルフクローニング株(ペプチダーゼ5及びペプチダーゼ6の100 ml培養)
上記で調製したペプチダーゼ5生産株とペプチダーゼ6生産株のプレートから分生子をマイクロプレート等でかきとり、3 ml GPY培地へ植菌した。30℃、200 rpm、24時間の前培養後、培養液を100 ml GPY(ペプチダーゼ5は+1 ml CoCl2)/300 ml三角フラスコへ移し、30℃、150 rpmで5日間又は10日間培養を行った。培養液上清を0.45μmフィルターで濾過後、酵素活性測定及び150μlずつ濃縮後にSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を表5及び6に、SDS-PAGEの結果を図11に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
表5から、ペプチダーゼ5については、培養時間を5日間から10日間にすることで、菌体外への分泌生産量は、約4倍に増加した。さらに、表6から、ペプチダーゼ6については、培養時間を5日間から10日間にすることで、菌体外への分泌生産量は、約6倍に増加した。また、図11から、ペプチダーゼ5、ペプチダーゼ6ともに、培養時間を5日間から10日間にすることで菌体内での生産量が著量増加していることが明らかとなった。この結果から、培養を3 mlから100 mlにスケールアップしても10日間の培養で菌体外にペプチダーゼ5及びペプチダーゼ6を生産させることができることが確認できた。
【0108】
実施例6 sodMプロモーターを用いた種々のペプチダーゼ遺伝子のセルフクローニング発現
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ3種類(ペプチダーゼ7、ペプチダーゼ8及びペプチダーゼ9)を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ産生させた(sodM-プロモーター使用)。
【0109】
(1)セルフクローニング株(ペプチダーゼ7)
上記で調製したペプチダーゼ7生産株をGPY液体培養(3 ml、30℃、40、64又は88時間)した。培養後、培養液上清の酵素活性測定を行った。酵素活性測定の結果を図12に示す。その結果、sodMプロモーターを使用することにより、菌体外に著量の分泌生産が確認できた。さらに、培養時間を88時間にすることで、24時間に比べて20倍以上の生産量の増加に成功した。
【0110】
(2)セルフクローニング株(ペプチダーゼ7の100 ml培養)
上記で調製したペプチダーゼ7生産株のプレートから分生子をマイクロプレート等でかきとり、3 ml GPY培地へ植菌した。30℃、200 rpm、24時間の前培養後、培養液を100 ml GPY/300 ml三角フラスコへ移し、30℃、150 rpmで88時間培養を行った。培養液上清を0.45μmフィルターで濾過後、酵素活性測定及び150μlずつ濃縮後にSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を表7に、SDS-PAGEの結果を図13に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
その結果、培養を3 mlから100 mlにスケールアップしても菌体外にペプチダーゼ7を生産させることができることが確認できた。
【0113】
(3)セルフクローニング株(ペプチダーゼ8及びペプチダーゼ9)
上記で調製したペプチダーゼ8生産株とペプチダーゼ9生産株のプレートから分生子をマイクロプレート等でかきとり、3 ml GPY培地へ植菌し、30℃、200 rpm、40時間培養を行った。培養液上清を0.45μmフィルターで濾過後、酵素活性測定及び150μlずつ濃縮後にSDS-PAGEを行った。酵素活性測定の結果を表8及び9に、SDS-PAGEの結果を図14に示す。
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
その結果、sodMプロモーターを使用することにより、菌体外に、ペプチダーゼ8、ペプチダーゼ9の著量の分泌生産が確認できた。
【0117】
実施例7 糸状菌用発現ベクターの調製及びセルフクローニングによるペプチダーゼ10の産生
麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に由来するペプチダーゼ10遺伝子を、麹菌を用いたセルフクローニング法によって発現させ、産生させた(トランスイソメラーゼ(pdiA)プロモーター使用)。
【0118】
(1)糸状菌用発現ベクターの調製
(1-1)プラスミドベクター
(a)pdiAプロモーターとペプチダーゼ10遺伝子の融合遺伝子の調製
pdiAプロモーターについては、麹菌ゲノムDNAを鋳型として、プライマー40(5'-cctttttgaccttggtggttgatagaacgg-3'(配列番号67))とプライマー41(5'-agggtcgcattttgagatgctgaatcggataa-3'(配列番号68))を用いて、KODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、日本)により下記PCR条件で増幅させた。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(1分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0119】
ペプチダーゼ10遺伝子については、麹菌ゲノムDNAを鋳型として、プライマー42(5'-gattcagcatctcaaaatgcgacccttgtctcatctttc-3'(配列番号69))とプライマー43(5'-ctaaggcagatcaagccacaacttcaacatc-3'(配列番号70))を用いて、KODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、日本)により下記PCR条件で増幅させた。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(2分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0120】
上記pdiAプロモーターPCR増幅産物と、上記ペプチダーゼ10遺伝子PCR増幅産物を混合し、下記PCR条件で、5'-末端がリン酸化されたプライマー40と5'-末端がリン酸化されたプライマー43を用いて、KODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、日本)によりPCRを行った。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、68℃(3分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0121】
得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、インサートを調製した。
【0122】
(b)上記融合遺伝子のサブクローニング
特開2010-4760号公報([0055])に記載のpUCLT1に、上記で調製した融合遺伝子をサブクローニングした。具体的には、上記pUCLT1を鋳型として、プライマー44(5'-ccgtacgcgg ggagtgtgct taaggcgatg-3'(配列番号71))とプライマー45(5'-atgtactttc cagtgcgtgt agtctactc -3'(配列番号72))を用いてKODプラスDNAポリメラーゼ(東洋紡、日本)によりPCRを行い、得られたPCR増幅産物についてアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて目的断片を切り出し、ベクターを調製した。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(8分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0123】
上記ベクターと上記融合遺伝子を、DNA Ligation Kit ver.1(タカラバイオ、日本)によりサブクローニングし、得られたプラスミドをpUCLTPA1とした。
【0124】
(1-2)セルフクローニングベクター
上記で得られたプラスミドベクターpUCLTPA1を鋳型として、プライマー46(5’-gcgtggttta ctagctttag tgctaccaaa-3'(配列番号73))とプライマー47(5’-ctgcagatcg gctgaagtta ggagcggcca ttgtc-3'(配列番号74))を用いてPCRを行い、得られたPCR増幅産物をQIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)を用いて精製し、これをセルフクローニングベクターPUCLTPA1とした。
<PCR条件>
・96℃(5分)を1サイクル
・96℃(20秒)、60℃(30秒)、72℃(9分)を30サイクル
・72℃(7分)を1サイクル。
【0125】
(2)形質転換体の調製
定法であるPEG−カルシウム法(Mol Gen Genet,218,99-104,(1989))に従って、上記で調製したセルフクローニングベクターPUCLTPA1を用いて、ロイシン要求性変異麹菌株(アスペルギルス・オリゼleu-5(寄託番号:FERM P-20079))を形質転換した。
【0126】
次いで形質転換処理した菌株を、硝酸を単一窒素源とするツアペクドックス(Czapek-Dox)培地(2%グルコース、0.1%リン酸1水素2カリウム、0.05%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.001%硫酸鉄、0.3%硝酸ナトリウム)で培養し、かかる培地で生育できる菌株を選択することにより、セルフクローニングベクターPUCLTPA1について形質転換体を得た。
【0127】
(3)ペプチダーゼ10の産生
上記で調製したペプチダーゼ10生産菌を5 mlのGPY液体培地に植菌後、30℃、250 rpmで3日間ディスポの試験管で培養した。培養後、100μlの培養液上清を遠心濃縮し、20μlのサンプルバッファーに懸濁し、100℃で3分間煮沸後、20μlをアプライし、SDS-PAGEを行った。コントロールは、特開2010-4760号公報([0055])に記載のプラスミドpUCLT1を用いて、OSI1013Leu要求性変異株を形質転換した株を用いた。SDS-PAGEの結果を図15に示す。その結果、pdiAプロモーターを使用することにより、N結合型糖鎖が付加されたブロードなバンドとして、菌体外にg/L-brothレベルの著量のペプチダーゼ10が分泌生産された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌体内で機能するターミネーターを有する糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項2】
前記プロモーターが以下の(a1)又は(b1)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c1)又は(d1)のDNAからなることを特徴とする、請求項1に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a1)配列番号1及び2に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b1)配列番号1及び2に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c1)配列番号6に記載される塩基配列からなるDNA
(d1)配列番号6に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項3】
前記プロモーターが以下の(a2)又は(b2)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c2)又は(d2)のDNAからなることを特徴とする、請求項1に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a2)配列番号3に記載される塩基配列からなるDNA
(b2)配列番号3に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c2)配列番号6、7、8、12、13及び14に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d2)配列番号6、7、8、12、13及び14に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
前記プロモーターが以下の(a3)又は(b3)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c3)又は(d3)のDNAからなることを特徴とする、請求項1に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a3)配列番号4に記載される塩基配列からなるDNA
(b3)配列番号4に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c3)配列番号6〜11に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d3)配列番号6〜11に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項5】
前記プロモーターが以下の(a4)又は(b4)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c4)又は(d4)のDNAからなることを特徴とする、請求項1に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a4)配列番号5に記載される塩基配列からなるDNA
(b4)配列番号5に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c4)配列番号15に記載される塩基配列からなるDNA
(d4)配列番号15に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項6】
糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子、及び請求項1〜5のいずれか一項に記載の遺伝子発現カセットを有する糸状菌用発現ベクター。
【請求項7】
実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである、請求項6に記載の糸状菌用発現ベクター。
【請求項8】
直鎖状であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の糸状菌用発現ベクター。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の糸状菌用発現ベクターで形質転換されてなる糸状菌。
【請求項10】
請求項9に記載の糸状菌を培地で培養し、当該培地からペプチダーゼを回収する工程を含む、ペプチダーゼの生産方法。
【請求項1】
以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロモーター、以下の(c)又は(d)のDNAからなるペプチダーゼ遺伝子、及び糸状菌体内で機能するターミネーターを有する糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1〜5に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6〜15に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項2】
前記プロモーターが以下の(a1)又は(b1)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c1)又は(d1)のDNAからなることを特徴とする、請求項1に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a1)配列番号1及び2に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(b1)配列番号1及び2に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c1)配列番号6に記載される塩基配列からなるDNA
(d1)配列番号6に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項3】
前記プロモーターが以下の(a2)又は(b2)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c2)又は(d2)のDNAからなることを特徴とする、請求項1に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a2)配列番号3に記載される塩基配列からなるDNA
(b2)配列番号3に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c2)配列番号6、7、8、12、13及び14に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d2)配列番号6、7、8、12、13及び14に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
前記プロモーターが以下の(a3)又は(b3)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c3)又は(d3)のDNAからなることを特徴とする、請求項1に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a3)配列番号4に記載される塩基配列からなるDNA
(b3)配列番号4に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c3)配列番号6〜11に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNA
(d3)配列番号6〜11に記載される塩基配列からなる群より選択されるいずれか一つの塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項5】
前記プロモーターが以下の(a4)又は(b4)のDNAからなり、前記ペプチダーゼ遺伝子が以下の(c4)又は(d4)のDNAからなることを特徴とする、請求項1に記載の糸状菌用遺伝子発現カセット:
(a4)配列番号5に記載される塩基配列からなるDNA
(b4)配列番号5に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ糸状菌体内でプロモーターとして機能するDNA
(c4)配列番号15に記載される塩基配列からなるDNA
(d4)配列番号15に記載される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項6】
糸状菌体内で機能する選択マーカー遺伝子、及び請求項1〜5のいずれか一項に記載の遺伝子発現カセットを有する糸状菌用発現ベクター。
【請求項7】
実質的に糸状菌に由来するヌクレオチドだけからなるセルフクローニングベクターである、請求項6に記載の糸状菌用発現ベクター。
【請求項8】
直鎖状であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の糸状菌用発現ベクター。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の糸状菌用発現ベクターで形質転換されてなる糸状菌。
【請求項10】
請求項9に記載の糸状菌を培地で培養し、当該培地からペプチダーゼを回収する工程を含む、ペプチダーゼの生産方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−65552(P2012−65552A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210641(P2010−210641)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度生物系特定産業技術研究支援センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000165251)月桂冠株式会社 (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度生物系特定産業技術研究支援センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000165251)月桂冠株式会社 (88)
【Fターム(参考)】
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