説明

糸状菌由来グルコース脱水素酵素の製造方法

【課題】
基質特異性の優れた糸状菌由来グルコース脱水素酵素を遺伝子組み換えにて工業的に大量生産する方法を提供する。
【解決手段】
糸状菌由来のグルコース脱水素酵素の遺伝子を挿入した発現ベクターにて形質転換した宿主を培養する際、培養時のpHを7.3以下に制御するか、および/または単位体積あたりの酸素移動速度を1.0μmol/ml・分以下に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状菌由来のグルコース脱水素酵素(以下GDHと略すこともある)を遺伝子組み換えで生産する方法に関するものである.特に前記酵素を高発現させるための培養方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血中グルコース量は糖尿病の重要なマーカーであり,特に血糖自己測定は,糖尿病患者が通常の自己の血糖値を把握し治療に生かすために重要である.血糖自己測定に用いられるセンサにはグルコースを基質とする酵素が利用されている.そのような酵素の例としては,例えばグルコース酸化酵素(EC 1.1.3.4)が挙げられる.グルコース酸化酵素はグルコースに対する特異性が高く、熱安定性に優れているという利点を有していることから血糖センサ用酵素として古くから利用されてきたが、グルコースを酸化してD−グルコノ−δ−ラクトンに変換する過程で生じる電子がメディエーターを介して電極に渡されることで測定がなされ、その反応で生じたプロトンが酸素にとられるため反応液中の溶存酸素の影響を受け易いという問題があった。
【0003】
このような問題を回避するために、例えばNAD(P)依存型グルコース脱水素酵素(EC 1.1.1.47)あるいはピロロキノリンキノン依存型グルコース脱水素酵素(EC 1.1.5.2(旧 EC1.1.99.17))が血糖センサ用酵素として用いられるようになった。これらの酵素は溶存酸素の影響を受けない点で優位であるが、前者のNAD(P)依存型グルコース脱水素酵素は安定性の乏しさや補酵素の添加が必要という煩雑性があり、後者のピロロキノリンキノン依存型グルコース脱水素酵素も、基質特異性に乏しくマルトースやラクトースといったグルコース以外の糖類にも作用するため、測定値の正確性に欠けるという欠点を有していた。
【0004】
こうしたグルコース脱水素酵素に対して、フラビンアデニンジヌクレオチド(以下FADと略す)を補酵素とするグルコース脱水素酵素が知られている(非特許文献1〜6および特許文献1)。
【非特許文献1】Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):265−76
【非特許文献2】Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):277−93
【非特許文献3】Biochim Biophys Acta.146(2):317−27
【非特許文献4】Biochim Biophys Acta.146(2):328−35
【非特許文献5】J Biol Chem (1967)242:3665−3672
【非特許文献6】Appl Biochem Biotechnol (1996)56:301−310
【特許文献1】WO 2004/058958
【0005】
これらのFADを補酵素とするGDHは古くから知られており、なかでも糸状菌に由来するGDH(非特許文献1〜4および特許文献1)は、グルコースに対する基質特異性に優れ、溶存酸素の影響を受けず、しかもマルトースに対する作用性が低いといった優れた特性を有している。
【0006】
しかしながら、これらの糸状菌に由来するGDHは野生型微生物の培養物から単離、抽出されたものであり、その生産量には限りがあり、到底工業的に利用し得るものではなかった。
【0007】
そこで当然ながら遺伝子組み換えでの大量生産を目指して、常法によりこれら糸状菌由来GDHの遺伝子がクローニングされ、大腸菌、酵母などの宿主・ベクター系を用いての製造が検討された(特許文献2)。
【特許文献2】WO 2006/101239
【0008】
遺伝子組み換えでタンパク質を生産する場合、通常は取扱いが容易であることから、前記のような大腸菌、酵母が宿主として用いられることが多い。こういった好気的微生物の培養において、目的とするタンパク質を高い収量で取得するためには、培養に影響を与える種々の因子を最適化する必要がある。それらの因子としては一般的に、培地成分、培養温度、通気攪拌速度、pHなどの因子が挙げられる。これらの因子の内、通気攪拌速度については好気的微生物であることから通常培養液中の溶存酸素が十分な条件で培養するのが一般的である。
【0009】
そのような例として、特許文献3には、大腸菌を宿主とする遺伝子組み換え菌の培養において、溶存酸素を3ppm以上の条件で培養することが記載されている。また特許文献4には、リパーゼ遺伝子で形質転換させたピキア属酵母を溶存酸素20%飽和以下で培養することが記載されている。さらに特許文献5には、N末端にメチオニンの付加していない組み換えタンパク質の製造において、培養液中の溶存酸素濃度を1ppm以下に制御する培養方法が記載されている。特許文献6は好気的微生物であっても培養液中の溶存酸素を制限して培養する方法の一例である。しかしながら、本発明の糸状菌由来のGDHのように(配列番号11)、N末端にメチオニンが付加している場合については報告されていなかった。
【特許文献3】特開昭63−157974
【特許文献4】特開平08−228779
【特許文献5】特開2002−253270
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、より工業的な実用レベルの生産性を有する糸状菌由来GDHの製造方法を提供することである。さらにより具体的には、糸状菌由来のGDH遺伝子により形質転換された宿主微生物の培養を制御することにより、極めて高い収量で糸状菌由来GDHを取得することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために、糸状菌由来GDH遺伝子により形質転換させた宿主微生物の培養条件を様々な角度から検討したところ、本酵素の場合、培養時のpHを7.3以下に制御することにより高い生産性を達成できることを見出した。また、通気攪拌速度について詳細に検討を進めたところ、好気的な宿主微生物であっても、培養液への酸素供給を制限する制御を行うことにより、目的酵素が著量生産されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、糸状菌由来のGDHを製造する方法であって、当該酵素のDNAを挿入した発現ベクターで形質転換した宿主微生物を培養する際、培養時のpHを7.3以下に制御するか、および/または培養液の酸素移動速度を単位体積あたり1.0μmol/ml・分以下に制御する培養方法を提供する。また、さらに好ましくは前記酸素移動速度を0.1から0.8μmol/ml・分の間に制御する培養方法を提供し、より好ましくは0.1から0.5μmol/ml・分の間に制御する培養方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、糸状菌由来のGDHを工業的なレベルで高収量に生産することが可能になり、血糖自己測定用として市場に流通しているグルコースセンサであって、グルコースに対して極めて高い特異性を有するグルコースセンサの製造が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いる糸状菌とは一般的に「カビ」と俗称される微生物であって、菌糸が分岐して菌糸体を形成し、葉緑素を有しない一群の微生物を示しており、生物分類学上では菌類の中の真菌類を構成する生物群から、出芽によって無性生殖を行う酵母類を除外した一群の生物を指している。その一例を挙げると、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属、ムコール属などが挙げられ、本発明に使用する糸状菌として特に好ましいのは、アスペルギルス属の糸状菌である。
【0015】
これらの糸状菌からGDHの遺伝子を取得するには、公知の遺伝子クローニングの手法を組み合わせることによって容易に可能である。例えばGDHを生産するペニシリウム属の培養液から酵素を高純度に精製した後、タンパク質の部分アミノ酸配列を決定し、決定した部分アミノ酸配列から作製したプローブを用いて元のペニシリウム属菌のcDNAライブラリからGDH遺伝子を取得することができる。こうして得られたGDH遺伝子を利用すれば例えば他の糸状菌、例えばアスペルギルス属の糸状菌から同様にしてGDH遺伝子も取得することができる。また、アウペルギルス属の1種であるアスペルギルス・オリゼ株ではゲノム配列が公開されているため、ホモロジー検索によってGDH遺伝子を検索することが可能であり、検索された配列を利用してアスペルギルス・オリゼ株のcDNAライブラリから同様にしてGDH遺伝子を取得できる。本発明においては、特にアスペルギルス属由来のGDH遺伝子を用いるのが好ましい。
【0016】
このようにして得られたGDH遺伝子を発現用ベクターに挿入し、適当な宿主に形質転換させてGDHを生産する形質転換体とする。ここで宿主としては特に限定するものではなく、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、カビ、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞等を使用することができる。これらの内でもその宿主・ベクター系が良く検討されており、取扱いが容易である、大腸菌、酵母が特に好ましい。宿主が大腸菌の場合、エシェリヒア・コリC600、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリDH5αなどが用いられ、ベクターとしてはpBR322、pUC19、pBluescriptなどが例として挙げられる。宿主が酵母の場合は、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、キャンデイダ・ウチリスなどが例として挙げられ、ベクターとしてはpAUR101、pAUR224、pYE32などが挙げられる。
【0017】
GDH遺伝子にて形質転換させた宿主を培養する方法としては、回分培養、連続培養、流加培養などの方法であればいずれでも良いが、特に好ましいのは回分培養である。回分培養では初発培地で栄養条件が制限される閉鎖系の培養となるため、培養温度、培養時pH、通気撹拌条件などの生物工学的な条件が培養を成功させるための重要な因子となる。
【0018】
このような培養の培地としては、一般微生物の通常の培養に使用される炭素源、窒素源、有機ないしは無機塩等を適宜含む培地を使用することができる。炭素源としては、グルコース、グリセリン、マルトース、デンプン、デキストリン、シュークロース、動植物油、糖蜜等が挙げられる。窒素源としては、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーンステイープリカー、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、およびアンモニア、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、尿素等の有機または無機の窒素源等が挙げられる。なお、天然有機窒素源は窒素源であるとともに炭素源にもなりうる。有機ないし無機塩としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩類、酢酸塩類、リン酸塩類、具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素1カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素1ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム等を挙げることができる。培地のpHを調節する目的で有機または無機の酸、アルカリ等を加えてもよく、消泡の目的で油脂類、表面活性剤等を適量加えてもよい。
【0019】
GDHを工業的に生産するには、上記のようにして調整した培地を数十リットル以上の規模の培養槽に投入し、加熱殺菌を行い、前記の形質転換体を接種して通気撹拌培養を行う。ここで培養温度は、形質転換体である宿主が生育可能な範囲から選択することができるが、例えば約20℃〜40℃、好ましくは25℃〜35℃の範囲が挙げられる。
【0020】
本発明においては、培養時のpHを7.3以下に制御する。培養時のpHを制御するには、通常、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウムなどの酸、アルカリ溶液を必要により希釈、加熱殺菌して培養槽に適宜添加して行われる。糸状菌由来GDHの生産においては、培養の経過とともにpHの上昇が起こるため、酸の添加によりpHを7.3以下になるように制御する。
【0021】
本発明において、より好適に実施するには、pHを7.3以下に制御することに加えて、培養液の酸素移動速度を単位体積あたり1.0μmol/ml・分以下、好ましくは0.1から0.8μmol/ml・分以下、さらに好ましくは0.1から0.5μmol/ml・分以下に制御する。本発明ではpHを7.3以下に制御するか、酸素移動速度を単位体積あたり1.0μmol/ml・分以下に制御するかのいずれによっても良いが、この両者をともに実施することがより好ましい。
【0022】
本発明を、糸状菌由来GDHを組換え生産する方法においてより好適に実施するには、そのN末端領域に存在するシグナルペプチド配列に変異を導入することにより、該目的酵素の発現量を変異導入前と比べて高めることができる。変異の形態としては、たとえば、そのN末端領域に存在するシグナルペプチドのアミノ酸配列の一部を欠損、あるいは置換する変異を行えばよい。
シグナルペプチドは、成熟型タンパク質のN末端に残基数15〜30個に及ぶ延長ペプチドとして存在する。該ペプチド配列中には、疎水性アミノ酸領域を持ち、新生ポリペプチド鎖の小胞体膜への付着および膜通過に先導役を務め、膜通過後は切断されるものである。
【0023】
さらに具体的には、配列番号2、4、10、12のいずれかに記載されたアミノ酸配列のうち、そのN末端に存在するMLFSLAFLSALSLATASPAGRAのアミノ酸配列の一部、あるいは全てを削除して発現させればよい。また、配列番号2、4、10、12のいずれかに記載されたアミノ酸配列のうち、そのN末端に存在するMLFSLAFLSALSLATASPAGRAのアミノ酸配列に、1〜22個のアミノ酸置換または/及びアミノ酸挿入を行うよう変異させてもよい。
発現の際には、遺伝子DNAはGDHの発現をさらに向上させるように、コドンユーセージ(Codon usage)を変更したものであってもよい。
【0024】
本発明における糸状菌由来のGDH組換え体は特に限定されるものではないが、アスペルギルス属やペニシリウム属などをGDH遺伝子の給源としたGDH組換え体が例示できる。好ましくはアスペルギルス属のGDHであり、さらに好ましくはアスペルギルス・オリゼである。最も好ましくは配列番号4、10のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するGDHが例示できる。
【0025】
これらGDH組換え体は、該GDHをコードする遺伝子をPCR法にて入手し、この遺伝子を発現用ベクターに挿入し、適当な宿主に形質転換させた形質転換体を培養し、培養液から遠心分離などで菌体を回収した後、菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じてEDTAなどのキレート剤や界面活性剤等を添加して可溶化してGDHを含む水溶性画分として得ることができる。または適当な宿主ベクター系を用いることにより、発現したGDHを直接培養液中に分泌させることが出来る。
【0026】
本発明においては、GDHのN末端領域に存在するシグナルペプチドのアミノ酸配列の一部を欠損、あるいは置換することによりシグナルペプチドの機能を低下できる。
例えば、配列番号4に記載されたアミノ酸配列を有するGDHでは、そのN末端に存在するMLFSLAFLSALSLATASPAGRAのアミノ酸配列の一部、あるいは全てを削除することによりシグナルペプチドの機能を低下することができる。あるいは、1〜22個のアミノ酸置換または/及びアミノ酸挿入を行うことによっても可能である。
具体的な置換位置は例えばシグナルペプチド切断部が例示できる。好ましくはシグナルペプチドのC末端に相当するアラニンを他のアミノ酸に置換することにより、機能低下が可能である。
【0027】
該目的酵素の発現量がシグナルペプチド配列の存在する状態と比べて高まったかどうかは、該配列への変異導入前後における培養液1mlあたりの総活性値を比較して確認することが出来る。また、シグナルペプチド配列の改変は、エドマン分解を用いたN末端アミノ酸シーケンスにより確かめることができる。
【0028】
本発明において培養槽の酸素移動速度とは、培養液の温度、培養槽内の圧力、通気撹拌条件によって定まり、次のようにして測定する(「発酵工学の基礎」:P.F.Stanbury著、学会出版センター)。
<亜硫酸酸化法による酸素移動速度の測定>
亜硫酸ソーダを銅またはコバルト触媒の存在下で硫酸ソーダに酸化する速度を測定して酸素移動速度を求める方法であり、この系では亜硫酸の酸化速度と酸素移動速度は等しいとする。まず、培養槽に1mMの銅イオンを加えた0.5Mの亜硫酸ソーダ液を張り込み、一定の速度で通気撹拌する。一定時間毎に液のサンプリングを行い、直ちに過剰のヨウ素液を加え、未反応の亜硫酸をヨウ素と反応させ、チオ硫酸ソーダで逆滴定して、その滴定量を時間に対してプロットすれば、その勾配から酸素移動速度が求められる。実際には、使用する培養槽に対して、種々の通気撹拌条件における酸素移動速度を求めておき、該当する通気撹拌条件を設定することにより、その条件による培養槽の酸素移動速度が決定される。
【0029】
本発明において、糸状菌由来のGDHの酵素量はその酵素活性をもって表すことができる。具体的にはGDH活性の測定は次のようにして行う。
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1%TritonX−100を含む)
14mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液15.8ml、DCPIP溶液0.2ml、D−グルコース溶液4mlを混合して反応試薬とする。
【0030】
<測定条件>
反応試薬2.9mlを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mlを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義される。
【0031】
活性(U/ml)={−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率}/(16.3×0.1×1.0)
【0032】
なお、式中の3.0は反応試薬+酵素溶液の液量(ml)、16.8は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(ml)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。
【0033】
なお、本発明者らは、大収量のGDHタンパク質を取得するために鋭意努力した結果、上記目的を達成するために、まずその改変の元になる遺伝子DNAとして、先の発明でアスペルギルス・オリゼのゲノム情報を利用し、グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHと示す)と推測される遺伝子DNAを見出している。
【0034】
本発明者らは、NCBIのデータベースを利用し、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHと示す)と推測される遺伝子DNAを見出した。
【0035】
本発明者らは、非特許文献1〜4、NCBIのデータベースなどから、GDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)の同定は容易になしうると予想していた。そしてさらに、当該遺伝子を含有する組換えベクターを作製し、形質転換した形質転換体を作り、形質転換体が発現する当該遺伝子がコードするタンパク質を精製することも容易になしうると考えていた。具体的には、非特許文献1〜4に記載された方法や公知技術を参考にしてアスペルギルス・オリゼを培養し、その培養上清から各種クロマトグラフィーを用いてGDHを精製して、その末端アミノ酸配列などを分析してプローブを作製し、GDHをコードする遺伝子を単離することを試みた。
【0036】
本発明者らは種々検討したが、通常行う塩析、クロマトグラフィー等を用いた精製法では、アスペルギルス・オリゼ培養上清から、高純度で、SDS−PAGE上ではっきりと確認できるGDH標品を得るのは困難であることが分かった。酵素タンパク質に結合しているであろう糖鎖が精製、確認を困難にしている原因の1つであると推察した。したがって、遺伝子取得の常法の1つである部分アミノ酸配列を利用したクローニングを断念せざるを得ないと判断した。このため、遺伝子取得には多くの試行錯誤をともない、非常な困難を極めたが、鋭意検討の結果、アスペルギルス・オリゼ由来のGDHをコードする遺伝子を単離した。その詳細は実施例に後述する。
【0037】
また、本発明者らは他起源のGDH遺伝子の取得についても種々検討し、ペニシリウム属(Penicillium lilacinoechinulatum)由来のGDHをコードする遺伝子、およびアスペルギルス・テレウス由来のGDHをコードする遺伝子を単離した。その詳細も実施例に後述する。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA(遺伝子)は、NCBIのデータベースから予測される、アスペルギルス・オリゼRIB40株由来のグルコースデヒドロゲナーゼをコードするDNA(遺伝子)を含む、イントロンを除去していないゲノム遺伝子配列からイントロンを除去したものである。配列番号2はその対応アミノ酸配列である。
【0040】
配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子は、NCIBのデータベースから予測されるグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子の全配列を示す。
【0041】
配列番号3に記載の塩基配列からなるDNA(遺伝子)は、本願発明者が同定した、後述のアスペルギルス・オリゼ TI株由来のグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)の全配列を示す。配列番号4はその対応アミノ酸配列である。また、
配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)も、本発明の適用範囲に含まれる。
【0042】
配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子とは、後述のアスペルギルス・オリゼ TI株由来のグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)の全配列を示す。また、
配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)も、本発明の適用範囲に含まれる。
【0043】
後述の実施例に記載される、アスペルギルス・オリゼGDH遺伝子の取得手順の概略は以下の通りである。
【0044】
アスペルギルス・オリゼ由来GDH遺伝子を取得するために、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・テレウス培養上清から、塩析、クロマトグラフィー等を用いてGDHの精製を試みたが、高純度のGDHを得るのは困難であった。(実験例1[1])
よって、遺伝子取得の常法の1つである部分アミノ酸配列を利用したクローニングは断念せざるを得なくなった。
【0045】
そこで、我々はGDHを生産する微生物を上記以外に求め鋭意探索した結果、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231株がGDHを生産することを見出し、本菌株の培養液から高純度の精製酵素を得ることに成功した。(実験例1[2])
次いで、該酵素を用いて部分アミノ酸配列を決定することに成功し、決定したアミノ酸配列を元に、PCR法により、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH遺伝子を一部取得し、塩基配列を決定した(1356bp)。(実験例1[3][4])
最終的に、この塩基配列を元に、公開されているアスペルギルス・オリゼのゲノムデータベースより、アスペルギルス・オリゼGDH遺伝子を推定(実験例1[5])、取得した。
【0046】
<実験例1>
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ(以下AOGDHとも記載)遺伝子の推定
[1]アスペルギルス・オリゼ由来GDHの取得
アスペルギルス・オリゼは、土壌より入手し定法に従ってL乾燥菌株とし保管していたものを使用した。以下これをアスペルギルス・オリゼTI株と呼ぶ。アスペルギルス・オリゼTI株のL乾燥菌株をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し25℃でインキュベートすることにより復元した。復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収してフィルター滅菌水に懸濁した。2基の10L容ジャーファーメンター中に生産培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4・7水和物、2%グルコース、pH6.5)6Lを調製し、120℃15分オートクレーブ滅菌して放冷した後、上記の菌糸懸濁液を接種し、30℃、通気攪拌培養を行った。培養開始から64時間後に培養を停止し、菌糸体を濾過により除去してGDH活性を含む濾過液を回収した。回収した上清を限外ろ過膜(分子量10,000カット)により低分子物質を除去した。次いで、硫酸アンモニウムを60%飽和度となるように添加、溶解し、硫安分画を行い、遠心機によりGDHを含む上清画分を回収後、Octyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。得られたGDH溶液を、G−25−Sepharoseカラムを用いて脱塩を行った後、60%飽和度の硫酸アンモニウムを添加、溶解し、これをPhenyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。更にこれを50℃で45分加温した後、遠心分離を行って上清を得た。以上の工程を経て得られた溶液を精製GDH標品(AOGDH)とした。尚、上記精製過程においては、緩衝液として20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を使用した。さらに、AOGDHの部分アミノ酸配列を決定するため、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの各種手段により精製を試みたものの、部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。また、我々はアスペルギルス・テレウスに属する微生物を独自に探索入手し、上記と同様にその培養上清より、塩析、Octyl−sepharose等による精製を試みたが、アスペルギルス・オリゼ同様部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。通常、一般的に行われる精製法を用いて、高純度で、SDS−PAGE上ではっきりと確認できるGDH標品を得ることができなかったのは、酵素タンパク質に結合しているであろう糖鎖が原因の一つとなっているのではないかと推察した。したがって、遺伝子取得の常法の1つである該タンパク質の部分アミノ酸配列を利用したクローニングを断念せざるを得なくなった。
【0047】
[2]ペニシリウム属糸状菌由来GDHの取得
ペニシリウム属糸状菌由来のGDH生産菌としてPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231(独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)を用い、上記アスペルギルス・オリゼTI株と同用の手順に従って、培養および精製を行い、SDS電気泳動でほぼ均一な精製標品を取得した。
【0048】
[3]cDNAの作製
Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231について上記方法に従い(ただしジャーファーメンターでの培養時間は24時間)培養を実施し、濾紙濾過により菌糸体を回収した。得られた菌糸は直ちに液体窒素中に入れて凍結させ、クールミル(東洋紡社製)を用いて菌糸を粉砕した。粉砕菌体より直ちにセパゾールRNA I(ナカライテスク社製)を用いて本キットのプロトコールに従ってトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNAからはOrigotex−dt30(第一化学薬品社製)をもちいてmRNAを精製し、これをテンプレートにReverTra−Plus−TM(東洋紡社製)を用いてRT−PCRを行った。得られた産物はアガロース電気泳動を行い、鎖長0.5〜4.0kbに相当する部分を切り出した。切り出したゲル断片からMagExtractor−PCR&Gel Clean Up―(東洋紡社製)を用いてcDNAを抽出・精製してcDNAサンプルとした。
【0049】
[4]GDH遺伝子部分配列の決定
上記で精製したPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDHを0.1%SDS、10%グリセロールを含有するTris−HClバッファー(pH6.8)に溶解し、ここにGlu特異的V8エンドプロテアーゼを終濃度10μg/mlとなるよう添加し37℃16時間インキュベートすることで部分分解を行った。このサンプルをアクリルアミド濃度16%のゲルを用いて電気泳動してペプチドを分離した。このゲル中に存在するペプチド分子を、ブロット用バッファー(1.4%グリシン、0.3%トリス、20%エタノール)を用いてセミドライ法によりPVDF膜に転写した。PVDF膜上に転写したペプチドはCBB染色キット(PIERCE社製GelCode Blue Stain Reagent)を用いて染色し、可視化されたペプチド断片のバンド部分2箇所を切り取ってペプチドシーケンサーにより内部アミノ酸配列の解析を行った。得られたアミノ酸配列はIGGVVDTSLKVYGT(配列番号15)およびWGGGTKQTVRAGKALGGTST(配列番号16)であった。この配列を元にミックス塩基を含有するディジェネレートプライマーを作製し、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来cDNAをテンプレートにPCRを実施したところ増幅産物が得られ、アガロースゲル電気泳動により確認したところ1.4kb程度のシングルバンドであった。このバンドを切り出して東洋紡製MagExtractor−PCR&Gel Clean Up−を用いて抽出・精製した。精製DNA断片はTArget Clone −Plus−(東洋紡社製)によりTAクローニングし、得られたベクターで大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡社製)をヒートショックにより形質転換した。形質転換クローンのうち青白判定でインサート挿入が確認されたコロニーについてMagExtractor−Plasmid−(東洋紡社製)を用いてプラスミドをミニプレップ抽出・精製し、プラスミド配列特異的プライマーを用いてインサートの塩基配列を決定した(1356bp)。
【0050】
[5]AOGDH遺伝子の推定
決定した塩基配列を元に「NCBI BLAST」のホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からホモロジー検索を実施し、AOGDH遺伝子を推定した。検索により推定したAOGDHとP.lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH部分配列とのアミノ酸レベルでの相同性は49%であった。
【0051】
<実施例1>
アスペルギルス・テレウス由来グルコース脱水素酵素(以下ATGDHと示す)遺伝子の大腸菌への導入
ATGDH遺伝子を取得するために、アスペルギルス・テレウスの菌体(寄託番号NBRC 33026として製品評価技術基盤機構・生物資源部門に登録されている。)よりmRNAを調製し、cDNAを合成した。配列番号13,14に示す2種類のオリゴDNAを合成し、調製したcDNAをテンプレートとしてKOD−Plus(東洋紡績製)を用いてATGDH遺伝子(予想シグナルペプチド配列を除去した遺伝子配列)を増幅した。DNA断片を制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンatgに合わせNdeI認識配列のatgを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)NdeI−BamHIサイトに挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを、コンピテントハイ DH5α(東洋紡績製)を用いて導入した。常法に従いプラスミドを抽出し、ATGDH遺伝子の塩基配列の決定を行った(配列番号11)。cDNA配列から推定されるアミノ酸残基は568アミノ酸(配列番号12)であった。
【0052】
<実施例2>
実施例1で得た形質転換体を、培養温度28℃にて、単位体積あたりの酸素移動速度を0.1から1.5(μmol/ml・分)の範囲で10L容ジャーファーメンターにてTB培地で1〜4日間液体培養した。なお、この実施例では培養時のpHを7.3以下に制御することは特に行わなかった。各培養フェーズの菌体を集菌した後、超音波破砕してGDH活性を測定した。それぞれの酸素移動速度における菌体量,pH,GDH活性の関係を図1〜6に示す。この図に示すように、GDHの生成量は酸素移動速度を0.1〜0.5μmol/ml・分の間に制御した場合に最大に達することが判明した。また、GDHの生成が良好に維持される限界の酸素移動速度は1.0μmol/ml・分付近に存在すること、1.0μmol/ml・分を超えると急激に低下することも明らかになった。

【0053】
<実施例3>
アスペルギルス・オリゼ由来のグルコース脱水素酵素(以下AOGDHと略する)の遺伝子を取得するために、まず同じ糸状菌であるペニシリウム属の1菌種を培養して、その培養液からSDS電気泳動でほぼ均一な精製酵素を得た。次にこの精製酵素をGlu特異的V8エンドプロテアーゼにて部分分解した後電気泳動でペプチド断片を単離した。ついで単離したペプチドのアミノ酸配列をペプチドシーケンサーにて決定した。一方、前記のペニシリウム属菌から常法により取得したcDNAをテンプレートとして、前記ペプチドの部分アミノ酸配列を元に作製したデイジェネレートプライマーを用いてPCRを実施したところ約1.4Kbの増幅産物が得られた。この増幅産物を精製して、精製DNA断片をTArget Clone −Plus−(東洋紡績製)によりTAクローニングし、得られたベクターで大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡績製)をヒートショックにより形質転換した。形質転換クローンのうち青白判定でインサート挿入が確認されたコロニーについてMagExtractor−Plasmid−(東洋紡績製)を用いてプラスミドを精製し、プラスミド配列特異的プライマーを用いてインサートの塩基配列を決定した(1356bp)。決定した塩基配列を元に「NCBI BLAST」のホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からホモロジー検索を実施し、AOGDH遺伝子を推定した。
AOGDH遺伝子を取得するために、アスペルギルス・オリゼ株の菌体よりmRNAを調製し、cDNAを合成した。配列番号13、14に示す2種類のオリゴDNAを合成し、調製したcDNAをテンぺレートとしてKOD Plus DNAポリメラーゼ(東洋紡績製)を用いてAOGDH遺伝子を増幅した。DNA断片を制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンatgに合わせNdeI認識配列のatgを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)NdeI−BamHIサイトに挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリーDH5α(東洋紡績製)を形質転換した。形質転換体より、常法に従いプラスミドを抽出し、AOGDH遺伝子の塩基配列の決定を行った(配列番号11)。(cDNAから推定されるアミノ酸配列は、配列番号12)
【0054】
<実施例4>
実施例3で得られた形質転換体を実施例2と同様に、単位体積あたりの酸素移動速度を0.5から1.0μmol/ml・分の範囲で、10L容ジャーファーメンターにてTB培地で3日間培養した。なお、この場合も特に培養時のpHの制御は行わなかった。その培養経過を図7〜9に示す。この図に示すように、アスペルギルス・オリゼでは、GDHの生成量は単位体積あたりの酸素移動速度は0.5から0.75μmol/ml・分の範囲で最大になることが示され、1.0μmol/ml・分以上では急激に低下することが判明した。
【0055】
<比較例1>
アスペルギルス・テレウス野生株を液体培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO ・7水和物、2%グルコース、0.05mM p−ベンゾキノン、0.1mM EDTA、pH6.5)にて、10L容ジャーファーメンターを用いて30℃、1日間培養し、菌体内のGDH活性を測定したところ、約0.1U/mlであった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、糸状菌由来のグルコース脱水素酵素を遺伝子組み換えにより工業的なレベルで大量に取得することを可能にする。また、血糖測定のためのグルコースセンサにおいて基質特異性に優れたセンサの開発に適したグルコース脱水素酵素を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】アスペルギルス・テレウス由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、0.1μmol/ml・分の条件にて培養した時の培養経過を示している。
【図2】アスペルギルス・テレウス由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、0.3μmol/ml・分の条件にて培養した時の培養経過を示している。
【図3】アスペルギルス・テレウス由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、0.5μmol/ml・分の条件にて培養した時の培養経過を示している。
【図4】アスペルギルス・テレウス由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、0.75μmol/ml・分の条件にて培養した時の培養経過を示している。
【図5】アスペルギルス・テレウス由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、1.0μmol/ml・分の条件にて培養した時の培養経過を示している。
【図6】アスペルギルス・テレウス由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、1.5μmol/ml・分の条件にて培養した時の培養経過を示している。
【図7】アスペルギルス・オリゼ由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、0.5μmol/ml・分にて培養した時の培養経過を示している。
【図8】アスペルギルス・オリゼ由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、0.75μmol/ml・分にて培養した時の培養経過を示している。
【図9】アスペルギルス・オリゼ由来のGDH遺伝子にて形質転換した大腸菌を、単位体積あたりの酸素移動速度をそれぞれ、1.0μmol/ml・分にて培養した時の培養経過を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状菌由来のグルコース脱水素酵素(GDH)の製造において,前記酵素の遺伝子を挿入した発現ベクターにより形質転換された宿主を培養する際に,培養時のpHを7.3以下に制御するか,および/または培養液の酸素移動速度を単位体積あたり1.0μmol/ml・分以下に制御することを特徴とする糸状菌由来GDHの製造方法。
【請求項2】
酸素移動速度を単位体積あたり0.1から0.8μmol/ml・分の間に制御することを特徴とする請求項1記載の糸状菌由来GDHの製造方法。
【請求項3】
酸素移動速度を単位体積あたり0.1から0.5μmol/ml・分の間に制御することを特徴とする請求項1記載の糸状菌由来GDHの製造方法。
【請求項4】
糸状菌がアスペルギルス属である請求項1から請求項3に記載の糸状菌由来GDHの製造方法。
【請求項5】
糸状菌由来のGDHの遺伝子が配列番号11に記載の遺伝子である請求項1から請求項3に記載の糸状菌由来GDHの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−154572(P2008−154572A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75020(P2007−75020)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】