説明

糸継装置及び糸巻取装置

【課題】 部品点数を減少させ、小型化を図ることができる糸継装置、及びそのような糸継装置を備える糸巻取装置を提供する。
【解決手段】 スプライサ8は、糸端同士を継ぐ装置であって、ステッピングモータ24と、ステッピングモータ24によって駆動させられるカム機構60と、カム機構60によって動作を制御され、糸端を切断する糸切断機構80Bと、糸切断機構80Bによって動作を制御され、糸端を把持する糸把持機構80Aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸端同士を継ぐ糸継装置、及びそのような糸継装置を備える糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給糸ボビンからパッケージに糸を巻き取る糸巻取装置が知られている。このような糸巻取装置には、例えば糸欠点を除去するために糸が切断された場合に、給糸ボビン側の糸端とパッケージ側の糸端とを継ぐ糸継装置が搭載されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−42169号公報
【特許文献2】特開昭64−26742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の糸継装置は、カム、カムフォロア、及びカムフォロアをカムに付勢する付勢部材の組を、動作機構の動作ごとに複数有していたり、或いは、カム機構に代えて電磁アクチュエータを有していたりするなど、部品点数が多く、小型化を図ることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、部品点数を減少させ、小型化を図ることができる糸継装置、及びそのような糸継装置を備える糸巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の糸継装置は、糸端同士を継ぐ糸継装置であって、駆動源と、駆動源によって駆動させられるカム機構と、カム機構によって動作を制御され、糸端を切断する糸切断機構と、糸切断機構によって動作を制御され、糸端を把持する糸把持機構と、を備える。
【0007】
この糸継装置では、カム機構によって糸切断機構の動作が制御され、その糸切断機構によって糸把持機構の動作が制御される。これにより、糸把持機構の動作を制御するためのカム機構を別途設ける必要がないので、部品点数を減少させることができ、その結果、糸継装置の小型化を図ることが可能となる。
【0008】
また、糸切断機構は、糸端を切断するカッター部と、カム機構からカッター部に動作を伝達するカッター動作伝達部と、を有し、糸把持機構は、カッター動作伝達部によって動作を制御されてもよい。この構成によれば、カッター動作伝達部が、カッター部への動作の伝達だけでなく、糸把持機構への動作の伝達も担うため、糸端の切断及び糸端の把持という関連した動作の調整を容易に行うことができる。
【0009】
また、糸把持機構は、糸端を把持するクランプ部と、カッター動作伝達部からクランプ部に動作を伝達するクランプ動作伝達部と、を有してもよい。この構成によれば、クランプ動作伝達部がカッター動作伝達部からクランプ部への動作の伝達を担うため、糸端の切断及び糸端の把持という関連した動作の調整をより容易に行うことができる。しかも、カッター部とクランプ部との位置関係に左右され難くなるので、設計の自由度を向上させることができる。
【0010】
また、クランプ動作伝達部は、カッター動作伝達部に接触する円板状部材を有し、当該円板状部材を介してカッター動作伝達部からクランプ部に動作を伝達してもよい。この構成によれば、カッター動作伝達部からクランプ部への動作の伝達を円滑化することができる。
【0011】
また、カッター動作伝達部には、円板状部材を介してクランプ部に動作を伝達するカムとしての機能を有する屈曲部が形成されていてもよい。この構成によれば、糸端の切断及び糸端の把持という関連した動作の調整を高精度に行うことができる。
【0012】
また、カッター動作伝達部をカム機構に接触するように付勢する第1付勢部材と、クランプ動作伝達部をカッター動作伝達部の屈曲部に接触するように付勢する第2付勢部材と、を更に備えてもよい。この構成によれば、カム機構からカッター動作伝達部への動作の伝達、及びカッター動作伝達部からクランプ動作伝達部への動作の伝達を確実化することができる。
【0013】
また、カッター動作伝達部が回転可能に取り付けられた第1支持軸と、クランプ動作伝達部が回転可能に取り付けられた第2支持軸と、を更に備え、第1付勢部材は、ねじりコイルばねであり、第1支持軸に回転可能に取り付けられており、第2付勢部材は、ねじりコイルばねであり、第2支持軸に回転可能に取り付けられていてもよい。この構成によれば、第1支持軸及び第1付勢部材によって占有されるスペース、並びに第2支持軸及び第2付勢部材によって占有されるスペースの省スペース化を図ることができる。
【0014】
また、クランプ動作伝達部は、第2の支持軸に回転可能に取り付けられた長尺状の連結部材を有し、クランプ部は、連結部材の長手方向における一端部に設けられており、円板状部材は、連結部材の長手方向における他端部に取り付けられており、クランプ部は、カッター動作伝達部によって円板状部材が移動させられて連結部材が回転することにより、糸端を把持する動作、又は糸端の把持を開放する動作を行ってもよい。この構成によれば、連結部材の回転という簡単な動作によって、その連結部材の一端部に設けられたクランプ部の動作を実現することができる。
【0015】
本発明の糸巻取装置は、上述した本発明の糸継装置を備え、給糸ボビンを支持する糸供給部、給糸ボビンから解舒された糸のバルーンを制御する糸解舒補助部、走行する糸に所定テンションを付与するテンション付与部、供給側の糸端を糸継装置に引き渡す供給側糸捕捉部、巻取側の糸端を糸継装置に引き渡す巻取側糸捕捉部、走行する糸の糸欠点を検出する糸欠点検出部、及び糸をパッケージに巻き取る巻取部が、糸継装置と共に糸道に沿って設けられている。
【0016】
この糸巻取装置は、上述したように小型化を図ることができる糸継装置を備えているので、糸供給部から巻取部に至る装置の高さを抑えることができる。これにより、例えば巻取部が上側に位置する場合には、巻取部に対するパッケージの着脱等を容易に行うことが可能となる。
【0017】
また、テンション付与部によって付与された糸のテンションを測定する糸張力測定部、及び走行する糸の状態を検出する糸走行状態検出部が、糸道に沿って更に設けられていてもよい。この場合にも、糸供給部から巻取部に至る装置の高さを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、部品点数を減少させ、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の糸巻取装置である巻取ユニットの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態の糸継装置であるスプライサの斜視図である。
【図3】同スプライサの斜視図である。
【図4】同スプライサの斜視図である。
【図5】同スプライサの斜視図である。
【図6】同スプライサの糸継動作を説明するための縦断面図である。
【図7】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図8】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図9】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図10】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図11】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図12】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図13】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図14】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図15】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図16】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図17】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図18】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図19】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図20】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図21】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【図22】同スプライサの動作機構の動作を説明するための下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[巻取ユニットの構成]
【0021】
図1に示されるように、巻取ユニット(糸巻取装置)1は、給糸ボビンBからパッケージPに糸Yを巻き取る装置である。給糸ボビンBは、前工程の精紡機で形成され、例えば、トレーにセットされた状態で精紡機から搬送される。なお、複数の巻取ユニット1が並設されることで自動ワインダが構成されている。
【0022】
巻取ユニット1には、ボビン支持部(糸供給部)2、糸解舒補助装置(糸解舒補助部)3、プレクリアラ4、ゲート式テンサ(テンション付与部)5、テンションセンサ(糸張力測定部)6、下糸捕捉装置(供給側糸捕捉部)7、スプライサ(糸継装置、糸処理装置)8、カッター9、ヤーンクリアラ(糸欠点検出部)11、上糸捕捉装置(巻取側糸捕捉部)12及び巻取部13が、糸Yの走行経路(すなわち、糸道)に沿って上流側(ここでは、下側)から順に設けられている。これらの各構成は、機台14に取り付けられている。また、巻取ユニット1には、巻取ユニット1の各構成を制御する制御部15、及び巻取ユニット1の動作状況等を表示するディスプレイ(表示部)16が設けられている。制御部15は、自動ワインダの全体を制御する制御装置との間で、ワインディング動作に関する種々の情報を送受信する。
【0023】
ボビン支持部2は、給糸ボビンBを直立させた状態で支持する。糸解舒補助装置3は、給糸ボビンBの上方に配置された筒状部材によって、給糸ボビンBから解舒された糸Yのバルーンを制御する。ゲート式テンサ5は、櫛歯状の固定ゲート及び可動ゲートからなる一対のゲートによって糸Yをジグザグ状に保持することで、走行する糸Yに所定テンションを付与する。テンションセンサ6は、ゲート式テンサ5によって付与された糸Yのテンションを測定する。
【0024】
プレクリアラ4は、糸道を挟んで所定間隔で配置された一対の規制部材によって、規定値よりも大きい糸欠点の通過を予め規制する。ヤーンクリアラ11は、糸Yの巻取中にスラブ等の糸欠点を検出する。カッター9は、プレクリアラ4によって糸欠点の通過が規制されたとき、或いはヤーンクリアラ11によって糸欠点が検出されたときに、糸Yを切断する。スプライサ8は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時に、給糸ボビンB側の糸端とパッケージP側の糸端と(糸端同士)を継ぐ。
【0025】
下糸捕捉装置7は、軸線αを中心に上下方向へ回動可能に構成されており、その回動端には吸引口7aが設けられている。吸引口7aは、スプライサ8の上部とプレクリアラ4の下部との間で回動する。上糸捕捉装置12は、軸線βを中心に上下方向へ回動可能に構成されており、その回動端には吸引口12aが設けられている。吸引口12aは、スプライサ8の下部と巻取部13との間で回動する。これにより、下糸捕捉装置7は、下方向に回動した位置で待機して吸引口7aで給糸ボビンB側の糸端を吸引し、その後、上方向に回動して給糸ボビンB側の糸端をスプライサ8に引き渡す。一方、上糸捕捉装置12は、上方向に回動して吸引口12aでパッケージP側の糸端を吸引し、その後、下方向に回動してパッケージP側の糸端をスプライサ8に引き渡す。
【0026】
巻取部13は、給糸ボビンBから解舒された糸YをパッケージPに巻き取って満巻のパッケージPを形成する。巻取部13は、ドラム溝17aが形成された巻取ドラム17、及びパッケージPを回転可能に支持するクレードル18を有している。クレードル18は、パッケージPの表面を巻取ドラム17の表面に対して適切な接圧で接触させる。巻取部13は、モータで巻取ドラム17を駆動回転させてパッケージPを従動回転させることにより、糸Yを所定幅で綾振りしつつ糸YをパッケージPに巻き取っていく。
[スプライサの構成]
【0027】
次に、上述したスプライサ8について、より詳細に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、給糸ボビンB側(供給側)を下側、パッケージP側(巻取側)を上側、スプライサ8に対して糸道側を前側、その反対側を後側という。
【0028】
図2及び図3に示されるように、スプライサ8は、フレーム体21と、フレーム体21の前側に取り付けられた解撚部40と、解撚部40の前側に取り付けられた糸継部50と、を備えている。スプライサ8は、フレーム体21を介して機台14に取り付けられている。解撚部40の上側及び下側には、糸継部50を挟んで対向するようにガイド板22,23がそれぞれ取り付けられている。ガイド板22には、パッケージP側の糸端が導入されるガイド溝22a、及び給糸ボビンB側の糸端が導入されるガイド溝22bが形成されている。同様に、ガイド板23には、パッケージP側の糸端が導入されるガイド溝23a、及び給糸ボビンB側の糸端が導入されるガイド溝23bが形成されている。
【0029】
ガイド板22には、ガイド溝22aに導入されたパッケージP側の糸端を把持するクランプ部91が設けられており、ガイド板23には、ガイド溝23aに導入されたパッケージP側の糸端を切断するカッター部87が設けられている。更に、ガイド板23には、ガイド溝23bに導入された給糸ボビンB側の糸端を把持するクランプ部91が設けられており、ガイド板22には、ガイド溝22bに導入された給糸ボビンB側の糸端を切断するカッター部87が設けられている。解撚部40は、クランプ部91によって把持された状態でカッター部87によって切断されたパッケージP側の糸端及び給糸ボビンB側の糸端を解撚する。糸継部50は、解撚部40によって解撚されたパッケージP側の糸端と給糸ボビンB側の糸端とを撚り合わせる。
【0030】
図4及び図5に示されるように、スプライサ8は、ステッピングモータ(駆動源)24と、ステッピングモータ24によって駆動させられるカム機構(伝達機構)60と、カム機構60によって動作を制御される動作機構(第1動作機構)70及び動作機構(第2動作機構)80と、動作機構70,80の一部をカム機構60に接触するように付勢する単一のねじりコイルばね(付勢部材、第1付勢部材)25と、を更に備えている。動作機構70は、糸端を寄せる糸寄せ機構70A、糸端同士を撚る際に糸端を押さえる撚り止め機構70B、及び糸端同士の継ぎ目の長さを調整する継ぎ目長さ調整機構70Cを含んでいる。動作機構80は、糸端を把持する糸把持機構80A、及び糸端を切断する糸切断機構80Bを含んでいる。
【0031】
ステッピングモータ24は、その回転軸24aがフレーム体21の上板21aから突出した状態で上板21aに固定されている。カム機構60は、フレーム体21の上板21aと下板21bとの間に回転可能に掛け渡された単一のカム軸61と、上板21a近傍においてカム軸61に固定されたカム(第1カム、板状部材)62と、下板21b近傍においてカム軸61に固定されたカム(第2カム、板状部材)63と、を有している。ステッピングモータ24の回転軸24a、及びフレーム体21の上板21aから突出したカム軸61の上端部61aには、タイミングプーリ26,27がそれぞれ固定されており、タイミングプーリ26,27間には、タイミングベルト28が掛け渡されている。これにより、カム軸61及びカム62,63は、ステッピングモータ24によって一体的に回転させられる。
【0032】
フレーム体21の上板21aと下板21bとの間には、カム軸61と略平行となるように単一の支持軸(第1支持軸)29が掛け渡されている。支持軸29には、動作機構70が有するカムフォロア部(第1カムフォロア部)71、及び動作機構80が有するカムフォロア部(第2カムフォロア部、カッター動作伝達部)81が旋回可能に取り付けられている。
【0033】
図5に示されるように、カムフォロア部71は、フレーム体21の上板21a近傍において支持軸29に回転可能に取り付けられた板状部材である。カムフォロア部71には、アーム71aが形成されおり、アーム71aの中間部の下面には、カムフォロア(第1カムフォロア)72が回転可能に取り付けられている。
【0034】
図4に示されるように、カムフォロア部81は、カムフォロア部71近傍において支持軸29に回転可能に取り付けられた上板82、フレーム体21の下板21b近傍において支持軸29に回転可能に取り付けられた下板83、及び上板82と下板83と接続する接続板84と、を有している。これらの上板82、下板83及び接続板84は、一体的に形成されている。下板83には、一対のアーム83a,83bが形成されており、アーム83bの先端部の上面には、カムフォロア(第2カムフォロア)85が回転可能に取り付けられている。一方、上板82には、支持軸29の中心線方向から見た場合にアーム83aと重なるようにアーム82aが形成されている。
【0035】
図4及び図5に示されるように、ねじりコイルばね25は、カムフォロア部81の上板82と下板83との間において、支持軸29に回転可能に取り付けられている。ねじりコイルばね25の一端部25aは、カムフォロア部71のアーム71aの中間部に掛け止められており、ねじりコイルばね25の他端部25bは、カムフォロア部81の接続板84に掛け止められている。この単一ねじりコイルばね25によって、カムフォロア部71のカムフォロア72は、カム機構60のカム62に接触するように付勢され、カムフォロア部81のカムフォロア85は、カム機構60のカム63に接触するように付勢される。つまり、カムフォロア72及びカムフォロア85は、ねじりコイルばね25によって、支持軸29に対して(すなわち、支持軸29の中心線回りに)互いに逆回転方向に(すなわち、カム軸61を挟み込むように)付勢される。
【0036】
図5に示されるように、カムフォロア部71のアーム71aの先端部には、長尺状の連結部材73の後端部が回転可能に連結されている。図2及び図3に示されるように、連結部材73の前端部には、糸寄せレバー体74が回転可能に連結されている。糸寄せレバー体74は、支持軸25と略平行となるように解撚部40に回転可能に取り付けられた支持軸75と、支持軸75の上端部及び下端部にそれぞれ固定された糸寄せレバー74a,74bと、を有している。連結部材73の前端部は、上側の糸寄せレバー74aの基端部から延在するアーム74cに回転可能に連結されている。以上のカムフォロア部71、連結部材73及び糸寄せレバー体74を含んで、糸寄せ機構70A及び継ぎ目長さ調整機構70Cが構成されている。
【0037】
糸寄せレバー体74の支持軸75には、撚り止めレバー体76が回転可能に取り付けられている。撚り止めレバー体76は、支持軸75に回転可能に取り付けられたブラケット76cと、ブラケット76cの上端部及び下端部からそれぞれ延在する撚り止めレバー76a,76bと、を有している。更に、支持軸75には、撚り止めレバー体76を糸寄せレバー体74側に付勢するねじりコイルばね77が回転可能に取り付けられている。これにより、撚り止めレバー体76は、糸寄せレバー体74と共に解撚部40側に回動する。ただし、ブラケット76cに設けられた凸部76dが、解撚部40に設けられたストッパ40aに接触した後は、糸寄せレバー体74のみが解撚部40側に回動する。以上のカムフォロア部71、連結部材73及び撚り止めレバー体76を含んで、撚り止め機構70Bが構成されている。
【0038】
図4及び図5に示されるように、カムフォロア部81のアーム82aの先端部には、屈曲部86aが形成された長尺状の連結部材(カッター動作伝達部)86の後端部が回転可能に連結されている。連結部材86の前端部には、給糸ボビンB側の糸端を切断するカッター部87が回転自在に連結されている。図3に示されるように、カッター部87は、ガイド板22の下面に固定された固定片87aと、ガイド板22の下面に回転可能に取り付けられた可動片87bと、を有している。固定片87a及び可動片87bは、ガイド溝22bを挟んで対を成している。図4に示されるように、連結部材86の前端部は、可動片87bの基端部から延在するアーム87cに回転可能に連結されている。
【0039】
同様に、カムフォロア部81のアーム83aの先端部には、屈曲部86aが形成された長尺状の連結部材86の後端部が回転可能に連結されている。連結部材86の前端部には、パッケージP側の糸端を切断するカッター部87が回転自在に連結されている。カッター部87は、ガイド板23の上面に固定された固定片87aと、ガイド板23の上面に回転可能に取り付けられた可動片87bと、を有している。固定片87a及び可動片87bは、ガイド溝23aを挟んで対を成している。連結部材86の前端部は、可動片87bの基端部から延在するアーム87cに回転可能に連結されている。
【0040】
以上のカムフォロア部81、連結部材86及びカッター部87を含んで、カム機構60によって動作を制御される糸切断機構80Bが構成されている。このように、糸切断機構80Bは、パッケージP側及び給糸ボビンB側の糸端を切断するカッター部87と、カム機構60からカッター部87に動作を伝達するカムフォロア部81及び連結部材86と、を有している。
【0041】
更に、図2及び図4に示されるように、ガイド板22の上面には、支持軸(第2支持軸)88が固定されている。支持軸88には、長尺状の連結部材(クランプ動作伝達部)89の中間部が回転可能に取り付けられている。連結部材89の前端部には、パッケージP側の糸端を把持するクランプ部91が設けられている。クランプ部91は、ガイド板22の上面に固定された固定片91aと、連結部材89の前端部に形成された可動片91bと、を有している。固定片91a及び可動片91bは、ガイド溝22aを挟んで対を成している。連結部材89の後端部には、連結部材86に接触する円板状部材(クランプ動作伝達部)92が回転可能に取り付けられている。
【0042】
ガイド板22の上面に固定された支持軸88には、ねじりコイルばね(第2付勢部材)93が回転可能に取り付けられている。ねじりコイルばね93は、円板状部材92を連結部材86の屈曲部86aに接触するように付勢する。また、ねじりコイルばね93は、可動片91bを固定片91aに接触するように付勢する。これにより、屈曲部86aは、円板状部材92を介してクランプ部91に動作を伝達するカムとしての機能を有することになる。そして、クランプ部91は、連結部材86によって円板状部材92が移動させられて連結部材89が回転することにより、ねじりコイルばね93の付勢力に抗してパッケージP側の糸端の把持を開放する動作を行う。
【0043】
同様に、ガイド板23の下面には、支持軸88が固定されており、支持軸88には、長尺状の連結部材89の中間部が回転可能に取り付けられている。連結部材89の前端部には、給糸ボビンB側の糸端を把持するクランプ部91が設けられている。クランプ部91は、ガイド板23の下面に固定された固定片91aと、連結部材89の前端部に形成された可動片91bと、を有している。固定片91a及び可動片91bは、ガイド溝23bを挟んでと対を成している。連結部材89の後端部には、連結部材86に接触する円板状部材92が回転可能に取り付けられている。
【0044】
ガイド板23の下面に固定された支持軸88には、ねじりコイルばね93が回転可能に取り付けられている。ねじりコイルばね93は、円板状部材92を連結部材86の屈曲部86aに接触するように付勢する。また、ねじりコイルばね93は、可動片91bを固定片91aに接触するように付勢する。これにより、屈曲部86aは、円板状部材92を介してクランプ部91に動作を伝達するカムとしての機能を有することになる。そして、クランプ部91は、連結部材86によって円板状部材92が移動させられて連結部材89が回転することにより、ねじりコイルばね93の付勢力に抗して給糸ボビンB側の糸端の把持を開放する動作を行う。
【0045】
以上の連結部材89、円板状部材92及びクランプ部91を含んで、糸切断機構80Bによって動作を制御される糸把持機構80Aが構成されている。このように、糸把持機構80Aは、パッケージP側の糸端及び給糸ボビンB側の糸端を把持するクランプ部91と、糸切断機構80Bの連結部材86からクランプ部91に動作を伝達する連結部材89及び円板状部材92と、を有している。
[スプライサの糸継動作]
【0046】
以上のように構成されたスプライサ8の糸継動作について説明する。図6に示されるように、糸寄せレバー74a,74bが解撚部40側に旋回することにより、下糸捕捉装置7によって案内された給糸ボビンB側の糸端YB、及び上糸捕捉装置12によって案内されたパッケージP側の糸端YPが、解撚部40側に引き寄せられる。これにより、糸端YBは、ガイド板23のガイド溝23b、ガイド板22のガイド溝22b、及び糸継部50の糸継ノズル51に導入される。同様に、糸端YPは、ガイド板22のガイド溝22a、ガイド板23のガイド溝23a、及び糸継部50の糸継ノズル51に導入される。ここでは、糸寄せレバー74a,74bは、糸寄せ機構70Aとして機能している。なお、糸端YB,YPは、糸継ノズル51への導入において、ガイド傾斜部53を介して収容部52に配置される。
【0047】
続いて、ガイド板23のガイド溝23bに導入された糸端YBは、ガイド溝23b近傍においてクランプ部91によって把持される。同様に、ガイド板22のガイド溝22aに導入された糸端YPは、ガイド溝22a近傍においてクランプ部91によって把持される。続いて、ガイド板22のガイド溝22bに導入された糸端YBは、ガイド溝22b近傍においてカッター部87によって切断される。同様に、ガイド板23のガイド溝23aに導入された糸端YPは、ガイド溝23a近傍においてカッター部87によって切断される。このとき、糸端YB,YPの切断長さは、糸寄せレバー74a,74bの旋回の停止位置によって決定される。
【0048】
これにより、切断された糸端YBの先端部分は、解撚部40の解撚ノズル41内に吸引口41aを介して吸い込まれ、噴射孔42から解撚ノズル41内に噴射される解撚用エアーによって解撚される。同様に、切断された糸端YPの先端部分は、解撚部40の解撚ノズル43内に吸引口43aを介して吸い込まれ、噴射孔44から解撚ノズル43内に噴射される解撚用エアーによって解撚される。
【0049】
続いて、糸寄せレバー74a,74bが解撚部40側に更に旋回することにより、解撚された糸端YB,YPの先端部分が解撚ノズル41,43内から引き出される。そして、糸寄せレバー74a,74bと共に旋回した撚り止めレバー76a,76bによって、解撚された糸端YB,YPの先端部分が糸継部50近傍において押さえられる。ここで、撚り止めレバー76a,76bは、ストッパ40aへの接触によって停止させられている。これにより、解撚された糸端YB,YPの先端部分は、噴射孔54から収容部52内に噴射される糸継用エアーによって撚り合わされる。このとき、糸端YB,YP同士の継ぎ目の長さは、糸寄せレバー74a,74bの更なる旋回の停止位置によって決定される。ここでは、糸寄せレバー74a,74bは、継ぎ目長さ調整機構70Cとして機能している。
【0050】
続いて、糸寄せレバー74a,74b及び撚り止めレバー76a,76bが逆方向に旋回すると共に、クランプ部91が把持を開放する。これにより、継ぎ合わされた糸端YB及び糸端YP(すなわち、糸Y)は、スプライサ8の前側の糸道上に復帰する。
[動作機構の構成及び動作]
【0051】
次に、糸寄せ機構70A、撚り止め機構70B、継ぎ目長さ調整機構70C、糸把持機構80A及び糸切断機構80Bについて、より詳細に説明する。図7〜図22において、(a)は、糸寄せ機構70A、撚り止め機構70B及び継ぎ目長さ調整機構70Cの動作を示し、(b)は、糸把持機構80Aの動作を示し、(c)は、糸切断機構80Bの動作を示す。
【0052】
図7に示されるように、カム62には、初期位置62i及びカム軸61の中心線CLを通る平面の一方の側において外周に沿うようにパターン部62aが形成されており、当該平面の他方の側において外周に沿うようにパターン部62bが形成されている。すなわち、パターン部62a,62bは、カム62の回転中心に対して0度以上180度未満の範囲及び180度以上360度未満の範囲のそれぞれに2パターン形成されている。各パターン部62a,62bは、スプライサ8が行う複数の処理(より具体的には、動作機構70が行う複数の動作)のそれぞれに対応している。
【0053】
また、カム63には、初期位置63i及びカム軸61の中心線CLを通る平面の一方の側において外周に沿うようにパターン部63aが形成されており、当該平面の他方の側において外周に沿うようにパターン部63bが形成されている。すなわち、パターン部63a,63bは、カム63の回転中心に対して0度以上180度未満の範囲及び180度以上360度未満の範囲のそれぞれに2パターン形成されている。各パターン部63a,63bは、スプライサ8が行う複数の処理(より具体的には、動作機構80が行う複数の動作)のそれぞれに対応している。
【0054】
各動作の開始時においては、カム62の初期位置62iにカムフォロア72が接触し且つカム63の初期位置63iにカムフォロア85が接触している。この場合(すなわち、各パターン部62a,62bが初期位置62iにあり且つ各パターン部63a,63bが初期位置63iにある場合)に、カム63に埋設されたマグネット(第1マグネット)31が、スプライサ8のフレーム体21の下板21bに設置された磁気センサー(センサー)30に対向する(図5参照)。磁気センサー30は、マグネット31が有する極性(一方の極性)を検知するものである。なお、カム63の回転方向においてマグネット31の両側に隣接するようにカム63に埋設されたマグネット(第2マグネット)は、マグネット31と反対の極性(他方の極性)を有する。これにより、各パターン部62a,62bが初期位置62iにあり且つ各パターン部63a,63bが初期位置63iにあることが検出される。
[動作機構の第1動作]
【0055】
この初期状態からステッピングモータ24が一方の方向に回転して、カム軸61及びカム62,63が矢印A1方向に回転すると、動作機構70の動作は、カム62のパターン部62aに制御され、動作機構80の動作は、カム63のパターン部63aに制御されることになる。そして、図8に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から8度程度回転すると、ねじりコイルばね25のねじれ角θが最大値となる。
【0056】
更に、図9に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から38度程度回転すると、カムフォロア部71を介して連結部材73が矢印A11方向に移動して、糸寄せレバー74a,74b及び撚り止めレバー76a,76bが矢印A12方向に旋回する(図9の(a)参照)。このとき、ねじりコイルばね25のねじれ角θが最小値となる。この糸寄せレバー74a,74bの旋回により、給糸ボビンB側の糸端YBが、ガイド板23のガイド溝23b、ガイド板22のガイド溝22b、及び糸継部50の糸継ノズル51に導入される。同様に、パッケージP側の糸端YPが、ガイド板22のガイド溝22a、ガイド板23のガイド溝23a、及び糸継部50の糸継ノズル51に導入される。
【0057】
更に、図10に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から60度程度回転すると、カムフォロア部81を介して連結部材86が矢印A13方向に移動する(図10の(b)参照)。そして、円板状部材92から連結部材86の屈曲部86aが離れると、連結部材89がねじりコイルばね93によって付勢されて、クランプ部91の可動片91bが支持軸88を中心として閉じる方向に回転する。これにより、糸端YB,YPが把持される。更に、図11に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から75度程度回転すると、カムフォロア部81を介して連結部材86が更に矢印A13方向に移動して、カッター部87の可動片87bが、ガイド板22,23に設けられた支持軸95を中心として閉じる方向に回転する(図11の(c)参照)。これにより、糸端YB,YPが切断される。このとき、糸端YB,YPの切断長さは、糸寄せレバー74a,74bの旋回の停止位置によって決定される。
【0058】
更に、図12及び図13に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から105度、135度と徐々に回転していく。この間、切断された糸端YB,YPの先端部分が解撚部40において解撚される。なお、この間、カッター部87は閉じたままであるが、この場合のカッター部87には把持機構が付加されていないので、カッター部87が閉じると直ちに、切断された糸端YB,YPの先端部分はフリーとなる。
【0059】
更に、図13及び図14に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から165度程度回転するまでの間に、カムフォロア部71を介して連結部材73が更に矢印A11方向に移動して、糸寄せレバー74a,74b及び撚り止めレバー76a,76bが更に矢印A12方向に旋回する(図13及び図14の(a)参照)。ただし、撚り止めレバー76a,76bは、ストッパ40aへの接触によって途中で停止させられる。この糸寄せレバー74a,74bの更なる旋回により、解撚された糸端YB,YPの先端部分が解撚ノズル41,43内から引き出される。そして、撚り止めレバー76a,76bによって押さえられた状態で、解撚された糸端YB,YPの先端部分が糸継部50において撚り合わされる。このとき、糸端YB,YP同士の継ぎ目の長さは、糸寄せレバー74a,74bの更なる旋回の停止位置によって決定される。
【0060】
ここで、ステッピングモータ24が他方の方向に回転して、カム軸61及びカム62,63が矢印A1と逆方向に回転し、初期状態に戻るまで(すなわち、パターン部62aが初期位置62iにあり且つパターン部63aが初期位置63iにあることが検出されるまで)、上述した動作が逆に行われる。つまり、糸寄せレバー74a,74b及び撚り止めレバー76a,76bが矢印A12と逆方向に旋回すると共に、クランプ部91が把持を開放する。これにより、継ぎ合わされた糸端YB及び糸端YP(すなわち、糸Y)は、スプライサ8の前側の糸道上に復帰する。
[動作機構の第2動作]
【0061】
一方、図15に示されるように、初期状態からステッピングモータ24が他方の方向に回転して、カム軸61及びカム62,63が矢印A2方向に回転すると、動作機構70の動作は、カム62のパターン部62bに制御され、動作機構80の動作は、カム63のパターン部63bに制御されることになる。そして、図16に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から6度程度回転すると、ねじりコイルばね25のねじれ角θが最大値となる。
【0062】
更に、図17に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から40度程度回転すると、カムフォロア部71を介して連結部材73が矢印A11方向に移動して、糸寄せレバー74a,74b及び撚り止めレバー76a,76bが矢印A12方向に旋回する(図17の(a)参照)。このとき、ねじりコイルばね25のねじれ角θが最小値となる。この糸寄せレバー74a,74bの旋回により、給糸ボビンB側の糸端YBが、ガイド板23のガイド溝23b、ガイド板22のガイド溝22b、及び糸継部50の糸継ノズル51に導入される。同様に、パッケージP側の糸端YPが、ガイド板22のガイド溝22a、ガイド板23のガイド溝23a、及び糸継部50の糸継ノズル51に導入される。
【0063】
更に、図18に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から60度程度回転すると、カムフォロア部81を介して連結部材86が矢印A13方向に移動する(図18の(b)参照)。そして、円板状部材92から連結部材86の屈曲部86aが離れると、連結部材89がねじりコイルばね93によって付勢されて、クランプ部91の可動片91bが支持軸88を中心として閉じる方向に回転する。これにより、糸端YB,YPが把持される。更に、図19に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から75度程度回転すると、カムフォロア部81を介して連結部材86が更に矢印A13方向に移動して、カッター部87の可動片87bが支持軸95を中心として閉じる方向に回転する(図19の(c)参照)。これにより、糸端YB,YPが切断される。このとき、糸端YB,YPの切断長さは、糸寄せレバー74a,74bの旋回の停止位置によって決定される。
【0064】
更に、図20に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から105度程度回転すると、カムフォロア部81を介して連結部材86が矢印A14方向に移動して、カッター部87の可動片87bが支持軸95を中心として開く方向に回転する(図20の(c)参照)。このようなカッター部87の動作は、切断した糸端YB,YPを把持する把持機構をカッター部87自体が有している場合に行われる。これにより、例えば糸Yが伸縮性に富んだものである場合に、カム軸61及びカム62,63が75度程度回転して糸端YB,YPを切断した後、105度程度回転して把持機構を備えたカッター部87が開くまでカッター部87によって糸端YB,YPの把持を開放することで、糸端YB,YPが急激に縮むのを防止し、解撚ノズル41,43が作動して糸を吸い込む準備ができた後に糸端YB,YPが解放される。それゆえ、糸端YB,YPを解撚部40の解撚ノズル41,43内に確実に吸い込ませることができる。なお、このときでも、円板状部材92から連結部材86の屈曲部86aが離れているため、クランプ部91による糸端YB,YPの把持は維持される。更に、図21に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から135度と徐々に回転していく。この間、切断された糸端YB,YPの先端部分が解撚部40において解撚される。
【0065】
更に、図21及び図22に示されるように、カム軸61及びカム62,63が初期状態から165度程度回転するまでの間に、カムフォロア部71を介して連結部材73が更に矢印A11方向に移動して、糸寄せレバー74a,74b及び撚り止めレバー76a,76bが更に矢印A12方向に旋回する(図22の(a)参照)。ただし、撚り止めレバー76a,76bは、ストッパ40aへの接触によって途中で停止させられる。この糸寄せレバー74a,74bの更なる旋回により、解撚された糸端YB,YPの先端部分が解撚ノズル41,43内から引き出される。そして、撚り止めレバー76a,76bによって押さえられた状態で、解撚された糸端YB,YPの先端部分が糸継部50において撚り合わされる。このとき、糸端YB,YP同士の継ぎ目の長さは、糸寄せレバー74a,74bの更なる旋回の停止位置によって決定される。
【0066】
ここで、ステッピングモータ24が一方の方向に回転して、カム軸61及びカム62,63が矢印A2と逆方向に回転し、初期状態に戻るまで(すなわち、パターン部62bが初期位置62iにあり且つパターン部63bが初期位置63iにあることが検出されるまで)、上述した動作が逆に行われる。つまり、糸寄せレバー74a,74b及び撚り止めレバー76a,76bが矢印A12と逆方向に旋回すると共に、クランプ部91が把持を開放する。これにより、継ぎ合わされた糸端YB及び糸端YP(すなわち、糸Y)は、スプライサ8の前側の糸道上に復帰する。
[作用及び効果]
【0067】
以上説明したように、スプライサ8では、カム機構60によって糸切断機構80Bの動作が制御され、その糸切断機構80Bによって糸把持機構80Aの動作が制御される。これにより、糸把持機構80Aの動作を制御するためのカム機構を別途設ける必要がないので、部品点数を減少させることができ、その結果、スプライサ8の小型化を図ることが可能となる。
【0068】
また、糸切断機構80Bのカムフォロア81及び連結部材86が、カッター部87への動作の伝達だけでなく、糸把持機構80Aへの動作の伝達も担い、更に、糸把持機構80Aの円板状部材92及び連結部材89が、糸切断機構80Bのカムフォロア81及び連結部材86からクランプ部91への動作の伝達を担う。これにより、糸端YB,YPの切断及び糸端YB,YPの把持という関連した動作の調整を容易に行うことができる。
【0069】
また、糸切断機構80Bがカムフォロア81及び連結部材86とは別体でカッター部87を有し、糸把持機構80Aが円板状部材92及び連結部材89とは別体でクランプ部91を有している。これにより、カッター部87とクランプ部91との位置関係に左右されず、設計の自由度を向上させることができる。更に、糸切断機構80Bからクランプ部91への動作の伝達が円板状部材92を介して行われるので、当該動作の伝達を円滑化することができる。しかも、糸切断機構80Bの連結部材86に、円板状部材92を介してクランプ部91に動作を伝達するカムとしての機能を有する屈曲部86aが形成されている。これにより、糸端YB,YPの切断及び糸端YB,YPの把持という関連した動作の調整を高精度に行うことができる。
【0070】
また、ねじりコイルばね25によって、糸切断機構80Bのカムフォロア81がカム機構60のカム63に接触するように付勢され、ねじりコイルばね93によって、糸把持機構80Aの円板状部材92が糸切断機構80Bの連結部材86に接触するように付勢される。これにより、カム機構60から糸切断機構80Bのカムフォロア81及び連結部材86への動作の伝達、及びそのカムフォロア81及び連結部材86から糸把持機構80Aの円板状部材92及び連結部材89への動作の伝達を確実化することができる。更に、ねじりコイルばね25が支持軸29に回転可能に取り付けられており、ねじりコイルばね93が支持軸88に回転可能に取り付けられているため、支持軸29及びねじりコイルばね25によって占有されるスペース、並びに支持軸88及びねじりコイルばね93によって占有されるスペースの省スペース化を図ることができる。
【0071】
また、糸把持機構80Aにおいては、クランプ部91が連結部材89の長手方向における前端部に設けられており、円板状部材92が連結部材89の長手方向における後端部に取り付けられている。そして、糸切断機構80Bの連結部材86によって円板状部材92が移動させられて連結部材89が回転することにより、クランプ部91が糸端YB,YPの把持を開放する動作を行う。これにより、連結部材89の回転という簡単な動作によって、その連結部材89の前端部に設けられたクランプ部91の動作を実現することができる。
【0072】
また、巻取ユニット1は、上述したように小型化を図ることができるスプライサ8を備えている。そのため、ボビン支持部2、糸解舒補助装置3、プレクリアラ4、ゲート式テンサ5、テンションセンサ6、下糸捕捉装置7、スプライサ8、カッター9、ヤーンクリアラ11、上糸捕捉装置12及び巻取部13というように、多くの構成がスプライサ8と共に糸道に沿って設けられていても、ボビン支持部2から巻取部13に至る巻取ユニット1の高さを抑えることができる。これにより、上側に位置する巻取部13に対するパッケージPの着脱等を容易に行うことが可能となる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は、スプライサ8が自動ワインダの巻取ユニット1に適用された場合であったが、これに限定されず、スプライサ8に相当する本発明の糸継装置は、紡績装置を備えた巻取装置に適用されてもよいし、複数の巻取ユニット間を移動可能に構成された作業台車に適用されてもよい。
【0074】
また、クランプ部91は、糸切断機構80Bの連結部材86によって円板状部材92が移動させられて連結部材89が回転することにより、糸端YB,YPの把持を開放する動作を行うものに限定されず、糸端YB,YPを把持する動作を行うものであってもよい。また、ねじりコイルばね25,93に代えて、板ばね、引っ張りばね、圧縮ばね等の付勢部材を用いてもよい。また、カム機構60は、板カムであるカム62,63に代えて、シリンダカムや溝カムを用いたものであってもよい。また、巻取ユニット1は、糸Yの走行速度や送り長さ等、走行する糸Yの状態を検出する糸走行状態検出部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…巻取ユニット(糸巻取装置)、2…ボビン支持部(糸供給部)、3…糸解舒補助装置(糸解舒補助部)、5…ゲート式テンサ(テンション付与部)、6…テンションセンサ(糸張力測定部)、7…下糸捕捉装置(供給側糸捕捉部)、8…スプライサ(糸継装置)、11…ヤーンクリアラ(糸欠点検出部)、12…上糸捕捉装置(巻取側糸捕捉部)、13…巻取部、24…ステッピングモータ(駆動源)、25…ねじりコイルばね(第1付勢部材)、29…支持軸(第1支持軸)、60…カム機構、80A…糸把持機構、80B…糸切断機構、81…カムフォロア部(カッター動作伝達部)、86…連結部材(カッター動作伝達部)、86a…屈曲部、87…カッター部、88…支持軸(第2支持軸)、89…連結部材(クランプ動作伝達部)、91…クランプ部、92…円板状部材(クランプ動作伝達部)、93…ねじりコイルばね(第2付勢部材)、Y…糸、YB,YP…糸端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸端同士を継ぐ糸継装置であって、
駆動源と、
前記駆動源によって駆動させられるカム機構と、
前記カム機構によって動作を制御され、前記糸端を切断する糸切断機構と、
前記糸切断機構によって動作を制御され、前記糸端を把持する糸把持機構と、を備えることを特徴とする糸継装置。
【請求項2】
前記糸切断機構は、前記糸端を切断するカッター部と、前記カム機構から前記カッター部に動作を伝達するカッター動作伝達部と、を有し、
前記糸把持機構は、前記カッター動作伝達部によって動作を制御されることを特徴とする請求項1記載の糸継装置。
【請求項3】
前記糸把持機構は、前記糸端を把持するクランプ部と、前記カッター動作伝達部から前記クランプ部に動作を伝達するクランプ動作伝達部と、を有することを特徴とする請求項2記載の糸継装置。
【請求項4】
前記クランプ動作伝達部は、前記カッター動作伝達部に接触する円板状部材を有し、当該円板状部材を介して前記カッター動作伝達部から前記クランプ部に動作を伝達することを特徴とする請求項3記載の糸継装置。
【請求項5】
前記カッター動作伝達部には、前記円板状部材を介して前記クランプ部に動作を伝達するカムとしての機能を有する屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の糸継装置。
【請求項6】
前記カッター動作伝達部を前記カム機構に接触するように付勢する第1付勢部材と、
前記クランプ動作伝達部を前記カッター動作伝達部の屈曲部に接触するように付勢する第2付勢部材と、を更に備えることを特徴とする請求項5記載の糸継装置。
【請求項7】
前記カッター動作伝達部が回転可能に取り付けられた第1支持軸と、
前記クランプ動作伝達部が回転可能に取り付けられた第2支持軸と、を更に備え、
前記第1付勢部材は、ねじりコイルばねであり、前記第1支持軸に回転可能に取り付けられており、
前記第2付勢部材は、ねじりコイルばねであり、前記第2支持軸に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項6記載の糸継装置。
【請求項8】
前記クランプ動作伝達部は、前記第2の支持軸に回転可能に取り付けられた長尺状の連結部材を有し、
前記クランプ部は、前記連結部材の長手方向における一端部に設けられており、
前記円板状部材は、前記連結部材の長手方向における他端部に取り付けられており、
前記クランプ部は、前記カッター動作伝達部によって前記円板状部材が移動させられて前記連結部材が回転することにより、前記糸端を把持する動作、又は前記糸端の把持を開放する動作を行うことを特徴とする請求項7記載の糸継装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載の糸継装置を備え、
給糸ボビンを支持する糸供給部、前記給糸ボビンから解舒された糸のバルーンを制御する糸解舒補助部、走行する前記糸に所定テンションを付与するテンション付与部、供給側の糸端を前記糸継装置に引き渡す供給側糸捕捉部、巻取側の糸端を前記糸継装置に引き渡す巻取側糸捕捉部、走行する前記糸の糸欠点を検出する糸欠点検出部、及び前記糸をパッケージに巻き取る巻取部が、前記糸継装置と共に糸道に沿って設けられていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項10】
前記テンション付与部によって付与された前記糸のテンションを測定する糸張力測定部、及び走行する前記糸の状態を検出する糸走行状態検出部が、前記糸道に沿って更に設けられていることを特徴とする請求項9記載の糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−67467(P2013−67467A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206371(P2011−206371)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】