説明

糸貯留装置、紡績ユニット及び紡績機

【課題】 糸貯留ローラに紡績糸を整然と巻き付けることができ、紡績糸が切断された場合における紡績糸の糸端の動きを制御することができる糸貯留装置、並びに紡績ユニット及び紡績機を提供する。
【解決手段】 糸貯留装置が備える糸貯留ローラ51は、紡績糸Yが巻き付けられる糸貯留部52と、糸貯留部52の基端部52aから給糸装置側に、第1傾斜角度θ1で広がる第1テーパ部58と、第1テーパ部58から給糸装置側に、第1傾斜角度θ1よりも小さい第2傾斜角度θ2で広がる第2テーパ部59と、を有する。第2テーパ部59は、導入される紡績糸Yを受ける機能、及び紡績糸Yの切断時に基端部52a側において振り回される紡績糸Yの糸端が糸貯留部52の先端部側に動くのを抑制する機能を有する。第1テーパ部58は、第2テーパ部59が受けた紡績糸Yを基端部52aに案内する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸装置と巻取装置との間において紡績糸を貯留するための糸貯留装置、並びにそのような糸貯留装置を備える紡績ユニット及び紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紡績ユニットとして、紡績糸を供給する給糸装置と、紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、給糸装置と巻取装置との間において、糸貯留ローラに紡績糸を巻き付けることで紡績糸を貯留する糸貯留装置と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような紡績ユニットにおいては、糸貯留装置の糸貯留ローラについて、紡績糸が巻き付けられる糸貯留部の傾斜角度を複数段階で変化させたり(例えば、特許文献2参照)、糸貯留部の巻付け開始側の基端部から給糸装置側に広がるテーパ部の傾斜角度を45度以上としたり(例えば、特許文献3参照)するなど、種々の形状が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−174421号公報
【特許文献2】特開2010−89908号公報
【特許文献3】特開2010−76889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、糸貯留装置の糸貯留ローラについて種々の形状が提案されているのは、糸貯留ローラに紡績糸を整然と巻き付けることが、紡績ユニットを円滑に動作させる上で極めて重要だからである。加えて、紡績糸が切断された場合に、紡績糸の糸端が糸貯留ローラにおける想定外の部分に移動するのを防止することができれば、その後も紡績ユニットを円滑に動作させることができる。
【0005】
そこで、本発明は、糸貯留ローラに紡績糸を整然と巻き付けることができると共に、紡績糸が切断された場合における紡績糸の糸端の動きを制御することができる糸貯留装置、並びにそのような糸貯留装置を備える紡績ユニット及び紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の糸貯留装置は、紡績糸を供給する給糸装置と、紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、の間において、紡績糸を貯留するための糸貯留装置であって、紡績糸が巻き付けられる糸貯留ローラを備え、糸貯留ローラは、紡績糸が巻き付けられる糸貯留部と、糸貯留部の巻付け開始側の基端部から給糸装置側に、第1傾斜角度で広がる第1テーパ部と、第1テーパ部から給糸装置側に、第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度で広がる第2テーパ部と、を有し、第2テーパ部は、糸貯留ローラに導入される紡績糸を受ける機能、及び紡績糸が給糸装置側で切断された場合に基端部側において振り回される紡績糸の糸端が糸貯留部の先端部側に動くのを抑制する機能を有し、第1テーパ部は、第2テーパ部が受けた紡績糸を基端部に案内する機能を有する。
【0007】
この糸貯留装置では、糸貯留ローラに導入される紡績糸を第2テーパ部が受け、第2テーパ部が受けた紡績糸を第1テーパ部が糸貯留部の基端部に案内する。このとき、第2テーパ部が第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度を有しているので、第2テーパ部による紡績糸の受けが安定化する。そして、第1テーパ部が第2傾斜角度よりも大きい第1傾斜角度を有しているので、第1テーパ部による紡績糸の案内が安定化する。従って、糸貯留ローラに紡績糸を整然と巻き付けることができる。更に、紡績糸が給糸装置側で切断された場合には、糸貯留部の基端部側において振り回される紡績糸の糸端が糸貯留部の先端部側に動くのを第2テーパ部が抑制する。このとき、第2テーパ部が第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度を有しているので、第2テーパ部による糸端の動きの抑制が確実化する。従って、紡績糸が切断された場合における紡績糸の糸端の動きを制御することができる。以上により、この糸貯留装置によれば、糸貯留ローラに紡績糸を整然と巻き付けることができると共に、紡績糸が切断された場合における紡績糸の糸端の動きを制御することができる。
【0008】
また、糸貯留装置は、少なくとも第2テーパ部に対向するように配置された吸引口にエアーの吸引流を発生させる吸引機構を更に備えてもよい。この構成によれば、糸貯留部の基端部側において振り回される紡績糸の糸端が糸貯留部の先端部側に移動することが第2テーパ部によって規制された状態で、その振り回される紡績糸の糸端が吸引流の作用を十分に受けることになる。従って、紡績糸の糸端の繊維屑を確実に除去することができる。
【0009】
また、糸貯留装置は、糸貯留ローラに対して巻取装置側に設けられ、紡績糸を引っ掛けて糸貯留ローラに巻き付ける糸掛け部材と、糸貯留ローラに対して給糸装置側に設けられ、紡績糸が給糸装置側で切断された場合に紡績糸の糸端が糸貯留ローラを越えて糸掛け部材側に移動するのを規制する規制機能部と、を更に備えてもよい。この構成によれば、紡績糸が給糸装置側で切断された場合に紡績糸の糸端が糸貯留ローラを越えて糸掛け部材側に移動するのを規制し、紡績糸の糸端が糸掛け部材に絡まるのを防止することができる。
【0010】
本発明の紡績ユニットは、上述した糸貯留装置と、糸貯留装置に導入される紡績糸を供給する給糸装置と、糸貯留装置から導出される紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備える。
【0011】
この紡績ユニットは、上述したように、糸貯留ローラに紡績糸を整然と巻き付けることができると共に、紡績糸が切断された場合における紡績糸の糸端の動きを制御することができる糸貯留装置を備えているので、紡績糸の巻取り時や紡績糸の切断時等において円滑な動作を実現することができる。
【0012】
また、紡績ユニットは、糸貯留装置と巻取装置との間において、切断された紡績糸の糸端同士を継ぐ糸継装置を更に備えてもよい。この構成によれば、上述した糸貯留装置によって、紡績糸の切断時における動作が円滑化されているため、切断された紡績糸の糸端同士を効率良く確実に継ぐことができる。
【0013】
また、給糸装置は、繊維束をドラフトするドラフト装置と、繊維束に撚りを与えて紡績糸を生成する紡績装置と、を有してもよい。この構成によれば、高品質の紡績糸を効率良く供給することができる。
【0014】
また、紡績装置は、エアーの旋回流によって繊維束に撚りを与えて紡績糸を生成する空気紡績装置であってもよい。この構成によれば、より高品質の紡績糸をより効率良く供給することができる。
【0015】
本発明の紡績機は、上述した紡績ユニットを複数備える。
【0016】
この紡績機は、上述したように、紡績糸の巻取り時や紡績糸の切断時等において円滑な動作を実現することができる紡績ユニットを備えているので、高品質のパッケージを効率良く生成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、糸貯留ローラに紡績糸を整然と巻き付けることができると共に、紡績糸が切断された場合における紡績糸の糸端の動きを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の紡績機の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態の紡績ユニットの側面図である。
【図3】本発明の一実施形態の糸貯留装置の斜視図である。
【図4】糸欠点検出時の糸貯留装置の斜視図である。
【図5】糸欠点検出時の紡績ユニットの側面図である。
【図6】糸欠点検出時の紡績ユニットの側面図である。
【図7】糸切れ時の紡績ユニットの側面図である。
【図8】糸切れ時の糸貯留装置の斜視図である。
【図9】図3の糸貯留装置の糸貯留ローラの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[紡績機及び紡績ユニットの構成]
【0020】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、ブロアボックス4と、原動機ボックス5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されており、各紡績ユニット2は、紡績糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、紡績糸Yが切断された紡績ユニット2において糸継動作を行う。ブロアボックス4には、紡績ユニット2の各部において吸引流や旋回流等を発生させるためのエアー供給源等が収容されている。原動機ボックス5には、紡績ユニット2の各部に動力を供給するための原動機等が収容されている。
【0021】
なお、以下の説明では、紡績糸Yが走行する経路(すなわち、糸道)において、紡績糸Yが生成される側を上流側といい、紡績糸Yが巻き取られる側を下流側という。また、糸継台車3に対して糸道が位置する側を前側といい、その反対側を後側という。ここでは、複数の紡績ユニット2の配列方向に延在する作業通路(図示省略)が紡績機1の前側に設けられている。従って、作業者は、その作業通路から各紡績ユニット2の操作や監視等を行うことができる。
【0022】
図1及び図2に示されるように、各紡績ユニット2は、上流側から順に、ドラフト装置(給糸装置)6と、紡績装置(給糸装置)7と、ヤーンクリアラ(糸欠点検出装置)8と、テンションセンサ(テンション測定装置)9と、糸貯留装置50と、ワキシング装置11と、巻取装置12と、を備えている。これらの装置は、上流側が上側となるように(すなわち、下流側が下側となるように)、フレーム13によって直接的に又は間接的に支持されている。ヤーンクリアラ8、テンションセンサ9、糸貯留装置50及びワキシング装置11は、糸処理モジュール80として、フレーム13に対して着脱自在に取り付けられている。
【0023】
ドラフト装置6は、スライバSを延伸して繊維束Fを生成する(すなわち、繊維束Fをドラフトとする)装置であり、バックローラ対14と、サードローラ対15と、エプロンベルト16が架けられたミドルローラ対17と、フロントローラ対18と、を有している。各ローラ対14,15,17,18のボトムローラは、原動機ボックス5からの動力、又は紡績ユニット2ごとに設けられた電動モータ(図示省略)によって、異なる回転速度で駆動される。これにより、ドラフト装置6は、上流側から供給されたスライバSを延伸して繊維束Fを生成し、下流側の紡績装置7に供給する。
【0024】
紡績装置7は、エアーの旋回流によって繊維束Fに撚りを与えて紡績糸Yを生成する空気紡績装置である。より詳細には(ただし、図示省略)、紡績装置7は、紡績室と、繊維案内部と、旋回流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回流発生ノズルは、繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されており、紡績室内に旋回流を発生させる。この旋回流によって、紡績室内に案内された繊維束Fの繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、紡績された紡績糸Yを紡績室内から紡績装置7の外部に案内する。
【0025】
ヤーンクリアラ8は、紡績装置7と糸貯留装置50との間において、走行する紡績糸Yの糸欠点を検出し、糸欠点検出信号をユニットコントローラ10に送信する。なお、ヤーンクリアラ8は、糸欠点として、例えば、紡績糸Yの太さ異常や紡績糸Yに含有されている異物を検出するように構成されている。テンションセンサ9は、紡績装置7と糸貯留装置50との間において、走行する紡績糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。ワキシング装置11は、糸貯留装置50と巻取装置12との間において、走行する紡績糸Yにワックスを付与する。なお、ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0026】
糸貯留装置50は、紡績装置7と巻取装置12との間において、走行する紡績糸Yを貯留する。糸貯留装置50は、紡績装置7から紡績糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等に紡績装置7から送り出される紡績糸Yを滞留させて紡績糸Yが弛むのを防止する機能、及び巻取装置12側における紡績糸Yのテンションを調節して巻取装置12側における紡績糸Yのテンションの変動が紡績装置7側に伝わるのを防止する機能を有している。
【0027】
巻取装置12は、紡績糸YをパッケージPに巻き取って満巻のパッケージPを形成する装置であり、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバース装置23と、を有している。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、回転可能に支持するボビンBやパッケージP(すなわち、ボビンBに紡績糸Yが巻き付けられたもの)の表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。巻取ドラム22は、紡績ユニット2ごとに設けられた電動モータ(図示省略)によって駆動されて、接触するボビンBやパッケージPを回転させる。トラバース装置23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25によって駆動されて、回転するボビンBやパッケージPに対して紡績糸Yを所定幅で綾振りする。
【0028】
糸継台車3は、紡績糸Yが切断された紡績ユニット2まで走行し、当該紡績ユニット2において糸継動作を行う。糸継台車3は、スプライサ(糸継装置)26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸31によって回動可能に支持されており、紡績装置7側の紡績糸Yの糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ26に案内する。サクションマウス28は、支軸32によって回動可能に支持されており、巻取装置12側の紡績糸Yの糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ26に案内する。スプライサ26は、引き渡された糸端同士の糸継ぎを行う。
[糸貯留装置の構成]
【0029】
次に、上述した糸貯留装置50の構成について説明する。図2及び図3に示されるように、糸貯留装置50は、糸貯留ローラ51と、電動モータ(駆動モータ)55と、下限側糸貯留量センサ56と、上限側糸貯留量センサ57と、糸掛け部材61と、糸外し部材64と、吸引機構65と、規制部材71と、を備えている。更に、紡績装置7と糸貯留ローラ51との間には、上流側から順に、第1案内部材78と、糸動作制御部材75と、が設けられており、糸貯留ローラ51と巻取装置12との間には、第2案内部材79が設けられている。
【0030】
糸貯留ローラ51は、電動モータ55の駆動軸に固定されており、電動モータ55によって回転させられる。糸貯留ローラ51は、糸貯留部52と、基端側テーパ部53と、先端側テーパ部54と、を有している。糸貯留部52は、紡績糸Yが巻き付けられる円筒状の部分であり、先端側に向かって僅かに先細りとなっている。基端側テーパ部53は、糸貯留部52の巻付け開始側の基端部52aから上流側に向かって末広がりとなっている。先端側テーパ部54は、糸貯留部52の先端部52bから下流側に向かって末広がりとなっている。
【0031】
基端側テーパ部53は、上流側から糸貯留ローラ51に導入される紡績糸Yを受けて糸貯留部52の基端部52aに円滑に案内する。これにより、糸貯留部52には、基端側から先端側に向かって整然と紡績糸Yが巻き付けられていく。一方、先端側テーパ部54は、糸貯留ローラ51から紡績糸Yが解舒される際に、糸貯留部52に巻き付けられた紡績糸Yが一度に抜け落ちる輪抜け現象の発生を防止しつつ、糸貯留ローラ51から下流側に紡績糸Yを円滑に導出する。
【0032】
下限側糸貯留量センサ56は、非接触で糸貯留ローラ51上の紡績糸Yの有無を検出するセンサであり、糸貯留部52に対向するように糸貯留ローラ51の後側に配置されている。下限側糸貯留量センサ56は、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が下限量に達した場合に、下限貯留量検出信号をユニットコントローラ10に送信する。上限側糸貯留量センサ57は、非接触で糸貯留ローラ51上の紡績糸Yの有無を検出するセンサであり、糸貯留部52の先端部52bに対向するように糸貯留ローラ51の側方に配置されている。上限側糸貯留量センサ57は、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が上限量に達した場合に、上限貯留量検出信号をユニットコントローラ10に送信する。
【0033】
糸掛け部材61は、糸貯留ローラ51に対して巻取装置12側に設けられ、紡績糸Yを引っ掛けて糸貯留ローラ51に巻き付ける部材であり、フライヤ軸62と、フライヤ63と、を有している。フライヤ軸62は、糸貯留ローラ51の先端側において糸貯留ローラ51に対して同一軸回りに相対回転可能に支持されている。フライヤ63は、フライヤ軸62の先端に固定されており、紡績糸Yが引っ掛かるように糸貯留ローラ51の先端側テーパ部54上に湾曲している。ここで、糸貯留ローラ51とフライヤ軸62との間には磁力が作用させられており、糸掛け部材61を糸貯留ローラ51に対して相対回転させるためには、糸掛け部材61に所定値以上のトルクを生じさせることが必要となっている。
【0034】
糸外し部材64は、糸掛け部材61から紡績糸Yを外す部材であり、糸貯留ローラ51の先端側テーパ部54近傍に配置されている。糸外し部材64は、下降位置と上昇位置との間で遥動可能に支持されている。ここで、下降位置は、糸道から退避した位置であり、上昇位置は、糸道上の紡績糸Yを押し上げて糸掛け部材61から紡績糸Yを外す位置である。糸外し部材64は、ばね(図示省略)によって下降位置側に付勢されているので、通常は下降位置に位置しており、糸継動作時等には、糸継台車3に設けられた空気圧シリンダ(図示省略)によって上昇位置に移動させられる。
【0035】
吸引機構65は、糸貯留ローラ51の基端側テーパ部53に対向するように配置された吸引口66aにエアーの吸引流を発生させる。吸引口66aは、パイプ状部材66の一端に設けられており、パイプ状部材66の他端は、サクションパイプ27やサクションマウス28と共通の繊維屑回収室(図示省略)に配管(図示省略)を介して接続されている。後述するように、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合には、糸貯留部52の基端部52a側において紡績糸Yの糸端が振り回されることになるが、その糸端は、吸引口66aに発生させられた吸引流の作用を受ける。そのため、その糸端の繊維屑は、殆ど飛散することなく、吸引機構65によって除去される。
【0036】
規制部材71は、糸貯留ローラ51の側方に(糸貯留部52に対向するように)配置された板材であり、第1規制部72と、第2規制部73と、第3規制部74と、を有している。第1規制部72は、紡績糸Yの巻付け時の糸貯留ローラ51の回転方向における吸引口66aの上流側に位置しており、第2規制部73は、当該回転方向における吸引口66aの下流側に位置している。第1規制部72及び第2規制部73は、糸貯留部52の基端部52aに対向するように配置されており、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合に糸貯留部52の基端部52a側において振り回される紡績糸Yの糸端が糸貯留部52の先端部52b側からの紡績糸Yの解舒に先行して糸貯留部52の先端部52b側に移動するのを規制する。第3規制部74は、糸貯留部52に対向するように配置されており、紡績糸Yが巻取装置12側で切断された場合に糸貯留部52の先端部52b側において振り回される紡績糸Yの糸端が糸貯留部52の基端部52a側からの紡績糸Yの解舒に先行して糸貯留部52の基端部52a側に移動するのを規制する。なお、上限側糸貯留量センサ57は、規制部材71の下端部に取り付けられている。
【0037】
糸動作制御部材75は、糸貯留ローラ51の上流側(ここでは、テンションセンサ9の下面(下流側の端面))に取り付けられた板材であり、案内機能部76と、規制機能部77と、を有している。案内機能部76は、紡績糸Yにテンションを付与して紡績糸Yを糸貯留ローラ51の基端側テーパ部53に案内すると共に、紡績装置7から伝わってくる紡績糸Yの撚りが案内機能部76よりも下流側に伝わるのを防止する。規制機能部77は、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合に紡績糸Yの糸端が糸貯留装置50に案内される紡績糸Yの糸道から外れて糸貯留ローラ51を越えて糸掛け部材61側に移動するのを規制する。
【0038】
第1案内部材78は、糸貯留ローラ51の上流側(ここでは、テンションセンサ9の下面(下流側の端面))に取り付けられた板材であり、テンションセンサ9の筐体に形成されたスリットから、筐体内に配置された所定の検出位置に紡績糸Yを案内する。一方、第2案内部材79は、糸貯留ローラ51の下流側(ここでは、糸処理モジュール80のモジュールフレーム81上)に取り付けられた板材であり、ワキシング装置11の所定位置に紡績糸Yを案内すると共に、回転する糸掛け部材61によって振り回される紡績糸Yの軌道を規制して、第2案内部材79よりも下流側の紡績糸Yの走行を安定化させる。
[糸貯留装置の動作]
【0039】
次に、上述した糸貯留装置50の動作について説明する。紡績ユニット2において、紡績糸Yが生成されてパッケージPに巻き取られる通常動作が行われる場合には、電動モータ55が糸貯留ローラ51を略一定の回転速度で駆動させる。これにより、糸掛け部材61が糸貯留ローラ51と一体的に回転して、フライヤ63が紡績糸Yを引っ掛ける。そして、紡績糸Yを引っ掛けた状態で回転する糸掛け部材61が、回転する糸貯留ローラ51に紡績糸Yを巻き付けていく。
【0040】
糸貯留ローラ51に紡績糸Yが巻き付けられると、ユニットコントローラ10は、下限側糸貯留量センサ56から送信される下限貯留量検出信号、及び上限側糸貯留量センサ57から送信される上限貯留量検出信号に基づいて、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が下限量以上且つ上限量以下となるように紡績ユニット2の動作を制御する。ここで、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が下限量以上になると、糸貯留ローラ51の糸貯留部52と紡績糸Yとの接触面積が大きくなり、糸貯留部52と紡績糸Yとの間でスリップ等が殆ど発生しなくなる。従って、糸貯留装置50は、糸貯留ローラ51の回転によって紡績装置7から紡績糸Yを安定して(すなわち、略一定品質且つ略一定速度で)引き出すことができる。
【0041】
そして、糸貯留ローラ51に紡績糸Yが巻き付けられた状態で、巻取装置12側における紡績糸Yのテンションが高くなると、糸掛け部材61を糸貯留ローラ51に対して相対回転させようとする力(すなわち、糸掛け部材61の回転を停止させようとする力)がフライヤ63に作用する。これにより、糸掛け部材61に生じるトルクが所定値以上になると、糸掛け部材61が糸貯留ローラ51に対して相対回転し、その結果、糸貯留ローラ51から紡績糸Yが解舒される。逆に、巻取装置12側における紡績糸Yのテンションが低くなり、糸掛け部材61に生じるトルクが所定値未満になると、糸掛け部材61が糸貯留ローラ51と一体的に回転し、その結果、糸貯留ローラ51に紡績糸Yが巻き付けられる。このように、糸貯留装置50は、巻取装置12側における紡績糸Yのテンションを調節して巻取装置12側における紡績糸Yのテンションの変動が紡績装置7側に伝わるのを防止することができる。
[糸欠点検出時の紡績ユニットの動作]
【0042】
次に、糸欠点検出時の紡績ユニット2の動作について説明する。紡績ユニット2において、紡績糸Yが生成されてパッケージPに巻き取られる通常動作が行われている際に、ヤーンクリアラ8が糸欠点を検出すると、ヤーンクリアラ8は糸欠点検出信号をユニットコントローラ10に送信する。ユニットコントローラ10は、糸欠点検出信号を受信すると、直ちにドラフト装置6や紡績装置7等の動作を停止させる。これにより、繊維束Fに撚りが与えられなくなり、紡績糸Yが紡績装置7側で切断される。
【0043】
紡績糸Yが紡績装置7側で切断されても、ユニットコントローラ10は、糸貯留ローラ51の回転及び巻取装置12による巻取りを継続させる。そのため、図4に示されるように、切断された紡績糸Yの糸端は、糸貯留ローラ51に巻き取られ、糸貯留ローラ51から巻取装置12側に紡績糸Yが解舒されている間、糸貯留部52の基端部52a側において振り回される。このとき、その糸端は、規制部材71の第1規制部72によって糸貯留部52の先端部52b側への移動が規制されつつ、吸引口66aに発生させられた吸引流の作用を受ける。そのため、糸貯留ローラ51から巻取装置12側に紡績糸Yが円滑に解舒され、しかもその間、上流側の糸端の繊維屑は、殆ど飛散することなく、吸引機構65によって除去される。
【0044】
そして、巻取装置12が、切断された紡績糸Yの糸端までパッケージPに巻き取ると、ユニットコントローラ10は、紡績糸Yが切断された紡績ユニット2を示す制御信号を糸継台車3に送信する。これにより、糸継台車3は、当該紡績ユニット2の前まで走行し、糸継動作を開始する。
【0045】
まず、図5に示されるように、サクションマウス28がパッケージPの表面近傍まで回動して吸引流を発生させると共に、巻取装置12がパッケージPを逆回転させる。これにより、サクションマウス28は、パッケージPの表面から紡績糸Yの糸端を引き出して捕捉する。続いて、図6に示されるように、サクションマウス28が元の位置(待機位置)に回動して、巻取装置12側の紡績糸Yの糸端をスプライサ26に案内する。ここで、巻取装置12がパッケージPの回転を停止させる。
【0046】
その一方では、図5に示されるように、サクションパイプ27が紡績装置7の下流側まで回動して吸引流を発生させる。このとき、ユニットコントローラ10がドラフト装置6や紡績装置7等の動作を再開させるので、サクションパイプ27は、生成された紡績糸Yの糸端を捕捉する。続いて、図6に示されるように、サクションパイプ27が元の位置(待機位置)に回動して、紡績装置7側の紡績糸Yの糸端をスプライサ26に案内する。
【0047】
巻取装置12側の紡績糸Yの糸端及び紡績装置7側の紡績糸Yの糸端がスプライサ26に案内されると、糸貯留装置50においては、糸掛け部材61が紡績装置7側の紡績糸Yを引っ掛け、一体的に回転する糸貯留ローラ51に紡績糸Yを巻き付けていく。これにより、巻取装置12による巻取りが停止されていても、紡績装置7から送り出される紡績糸Yには殆ど弛みが発生しない。このように、糸貯留装置50は、糸継台車3による糸継動作時等に紡績装置7から送り出される紡績糸Yを滞留させて紡績糸Yが弛むのを防止することができる。
【0048】
そして、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yの貯留量が下限量に達すると、糸貯留ローラ51の糸貯留部52と紡績糸Yとの間でスリップ等が殆ど発生しなくなるので、紡績装置7から紡績糸Yが安定して(すなわち、略一定品質且つ略一定速度で)引き出されるようになる。ここで、ユニットコントローラ10が糸外し部材64を下降位置から上昇位置に移動させ、糸外し部材64が糸掛け部材61から紡績糸Yを外す。
【0049】
このように、糸貯留ローラ51が回転している状態で糸掛け部材61から紡績糸Yが外されると、糸貯留ローラ51から紡績糸Yが解舒されるのを阻止する抵抗が殆どなくなる。これにより、紡績糸Yの貯留量が下限量に達する前に糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Y(すなわち、品質の不安定な紡績糸Y)は、サクションパイプ27によって糸貯留ローラ51から解舒されて吸い込まれることになる。なお、この間にも、紡績装置7から紡績糸Yが安定して引き出されて糸貯留ローラ51に巻き付けられているので、紡績糸Yの貯留量は下限量以上に維持される。
【0050】
サクションパイプ27によって品質の不安定な紡績糸Yが除去されると、ユニットコントローラ10が糸外し部材64を上昇位置から下降位置に移動させる。これにより、紡績装置7側の紡績糸Yが糸掛け部材61に掛けられ、糸貯留ローラ51から下流側に紡績糸Yが解舒されなくなる。ここで、スプライサ26が、巻取装置12側の紡績糸Yの糸端と紡績装置7側の紡績糸Yの糸端とを継ぐ。このとき、スプライサ26において切断された不要な糸端は、サクションパイプ27及びサクションマウス28によって除去される。そして、スプライサ26による糸継ぎが終了すると、ユニットコントローラ10は、巻取装置12による巻取りを再開させる。
[糸切れ時の紡績ユニットの動作]
【0051】
次に、糸切れ時の紡績ユニット2の動作について説明する。図7に示されるように、紡績ユニット2において、紡績糸Yが生成されてパッケージPに巻き取られる通常動作が行われている際に、糸貯留装置50よりも下流側で紡績糸Yが切れると、糸貯留装置50の下流側に設けられた糸走行センサ(図示省略)によって紡績糸Yが検知されなくなる。これにより、ユニットコントローラ10は、糸貯留装置50と巻取装置12との間で糸切れが発生したと判断し、直ちにドラフト装置6や紡績装置7等の動作を停止させる。これにより、繊維束Fに撚りが与えられなくなり、紡績糸Yが紡績装置7側でも切断される。
【0052】
紡績糸Yが紡績装置7側で切断されても、ユニットコントローラ10は、糸貯留ローラ51の回転及び巻取装置12による巻取りを継続させる。そのため、切断された紡績糸Yの糸端は、糸貯留ローラ51に巻き取られ、糸貯留部52の基端部52a側において振り回される。このとき、その糸端は、規制部材71の第1規制部72によって糸貯留部52の先端部52b側への移動が規制されつつ、吸引口66aに発生させられた吸引流の作用を受ける。そのため、上流側の糸端の繊維屑は、殆ど飛散することなく、吸引機構65によって除去される。
【0053】
ここで、糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yは下流側でも切れているので、糸貯留ローラ51から下流側に解舒されることはない。そのため、ユニットコントローラ10は、糸貯留ローラ51の正回転(通常の回転方向)を停止させ、糸貯留ローラ51を逆回転させる。このとき、糸貯留ローラ51に巻き付けられていた紡績糸Yの上流側の糸端は、規制部材71の第2規制部73によって糸貯留部52の先端部52b側への移動が規制される。そのため、図8に示されるように、上流側の糸端は、吸引機構65の吸引口66aに確実に補足される。更に、糸貯留ローラ51に巻き付けられていた紡績糸Yの下流側の糸端は、規制部材71の第3規制部74によって糸貯留部52の基端部52a側への移動が規制される。従って、糸貯留ローラ51に巻き付けられていた紡績糸Yは、糸貯留部52の基端部52a側から円滑に解舒され、吸引機構65に吸い込まれていく。
【0054】
糸貯留ローラ51に巻き付けられた紡績糸Yが吸引機構65によって除去されると、ユニットコントローラ10は、糸貯留ローラ51の逆回転を停止させ、糸貯留ローラ51を正回転させる。ユニットコントローラ10は、紡績糸Yが切れた紡績ユニット2を示す制御信号を糸継台車3に送信する。これにより、糸継台車3は、当該紡績ユニット2の前まで走行し、上述したように糸継動作を実行する。
[糸貯留装置の糸貯留ローラの構成]
【0055】
次に、糸貯留装置50の糸貯留ローラ51の構成について、より詳細に説明する。図9に示されるように、糸貯留ローラ51において、糸貯留部52の巻付け開始側の基端部52aから上流側に向かって末広がりとなっている基端側テーパ部53は、次のように構成されている。
【0056】
すなわち、基端側テーパ部53は、第1テーパ部58と、第2テーパ部59と、を有している。第1テーパ部58は、糸貯留部52の基端部52aから紡績装置7側(すなわち、糸貯留ローラ51の回転中心線方向に略平行な方向に沿って紡績糸Yの導入側)に、第1傾斜角度θ1で広がっている。第2テーパ部59は、第1テーパ部58から紡績装置7側に、第1傾斜角度θ1よりも小さい第2傾斜角度θ2で広がっている。糸貯留部52の表面と第1テーパ部58の表面とは連続的に接続されている。同様に、第1テーパ部58の表面と第2テーパ部59の表面とは連続的に接続されている。ここで、第1傾斜角度θ1は、例えば40〜80度、より好ましくは50〜70度であり、第2傾斜角度θ2は、例えば10〜35度、より好ましくは15〜30度である。
【0057】
なお、第1傾斜角度θ1とは、糸貯留ローラ51の回転中心線を含む平面と第1テーパ部58の表面との交線(直線であっても曲線であってもよい)の傾きの平均値である。同様に、第2傾斜角度θ2とは、糸貯留ローラ51の回転中心線を含む平面と第2テーパ部59の表面との交線(直線であっても曲線であってもよい)の傾きの平均値である。
【0058】
第2テーパ部59は、糸貯留ローラ51に導入される紡績糸Yを受ける機能、及び紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合に糸貯留部52の基端部52a側において振り回される紡績糸Yの糸端があばれて糸貯留部52の先端部52b側に動くのを抑制する機能を有している。第1テーパ部58は、第2テーパ部59が受けた紡績糸Yを糸貯留部52の基端部52aに案内する機能を有している。なお、吸引機構65の吸引口66aは、少なくとも第2テーパ部59(ここでは、基端側テーパ部53及び糸貯留部52の基端部52a)に対向するように配置されている。
[糸貯留装置、紡績ユニット及び紡績機の作用及び効果]
【0059】
以上説明したように、糸貯留装置50では、糸貯留ローラ51に導入される紡績糸Yを第2テーパ部59が受け、第2テーパ部59が受けた紡績糸Yを第1テーパ部58が糸貯留部52の基端部52aに案内する。このとき、第2テーパ部59が第1傾斜角度θ1よりも小さい第2傾斜角度θ2を有しているので、第2テーパ部59による紡績糸Yの受けが安定化する。そして、第1テーパ部58が第2傾斜角度θ2よりも大きい第1傾斜角度θ1を有しているので、第1テーパ部58による紡績糸Yの案内が安定化する。従って、糸貯留ローラ51に紡績糸Yを整然と巻き付けることができる。更に、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合には、糸貯留部52の基端部52a側において振り回される紡績糸Yの糸端が糸貯留部52の先端部52b側に動くのを第2テーパ部59が抑制する。このとき、第2テーパ部59が第1傾斜角度θ1よりも小さい第2傾斜角度θ2を有しているので、第2テーパ部59による糸端の動きの抑制が確実化する。従って、紡績糸Yが切断された場合における紡績糸Yの糸端の動きを制御することができる。以上により、糸貯留装置50によれば、糸貯留ローラ51に紡績糸Yを整然と巻き付けることができると共に、紡績糸Yが切断された場合における紡績糸Yの糸端の動きを制御することができる。
【0060】
また、吸引機構65の吸引口66aが第2テーパ部59に対向するように配置されている。これにより、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合に、糸貯留部52の基端部52a側において振り回される紡績糸Yの糸端が糸貯留部52の先端部52b側に移動することが第2テーパ部59によって規制された状態で、その振り回される紡績糸Yの糸端が吸引流の作用を十分に受けることになる。従って、紡績糸Yの糸端の繊維屑を確実に除去することができる。
【0061】
また、糸貯留ローラ51に対して紡績装置7側には、紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合に紡績糸Yの糸端が糸貯留ローラ51を越えて糸掛け部材61側に移動するのを規制する規制機能部77が設けられている。これにより、紡績糸Yのテンションが高い状態で、詰り等、何らかの理由により紡績糸Yが紡績装置7側で切断された場合に、紡績糸Yの糸端が糸貯留ローラ51を越えて糸掛け部材61側に移動するのを規制し、紡績糸Yの糸端が糸掛け部材61に絡まるのを防止することができる。
【0062】
また、紡績ユニット2は、上述したように、糸貯留ローラ51に紡績糸Yを整然と巻き付けることができると共に、紡績糸Yが切断された場合における紡績糸Yの糸端の動きを制御することができる糸貯留装置50を備えている。従って、紡績ユニット2によれば、紡績糸Yの巻取り時や紡績糸Yの切断時等において円滑な動作を実現することができる。
【0063】
また、紡績ユニット2は、糸貯留装置50と巻取装置12との間において、切断された紡績糸Yの糸端同士を継ぐスプライサ26を備えている(ここでは、スプライサ26が複数の紡績ユニット2によって共有されている)。紡績ユニット2では、上述したように、糸貯留装置50によって、紡績糸Yの切断時における動作が円滑化されているため、切断された紡績糸Yの糸端同士を効率良く確実に継ぐことができる。
【0064】
また、紡績糸Yを供給する給糸装置がドラフト装置6及び紡績装置7によって構成されている。しかも、紡績装置7は、エアーの旋回流によって繊維束Fに撚りを与えて紡績糸Yを生成する空気紡績装置である。これらにより、高品質の紡績糸Yを効率良く供給することができる。
【0065】
また、紡績機1は、上述したように、紡績糸Yの巻取り時や紡績糸Yの切断時等において円滑な動作を実現することができる紡績ユニット2を備えているので、高品質のパッケージPを効率良く生成することができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、紡績機1及び紡績ユニット2では、紡績糸を供給する給糸装置がドラフト装置6及び紡績装置7によって構成されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットには、紡績糸が巻き付けられたボビンから紡績糸を供給するように構成された給糸装置等、紡績糸を供給することができれば、その他の給糸装置が適用されてもよい。
【0067】
なお、紡績装置が空気紡績装置である場合には、紡績装置は、繊維束の撚りが紡績装置の上流側に伝わるのを防止するために、繊維案内部に保持されて紡績室内に突出するように配置されたニードルを更に備えていてもよい。また、紡績装置は、そのようなニードルに代えて、繊維案内部の下流側端部によって、繊維束の撚りが紡績装置の上流側に伝わるのを防止するものであってもよい。更に、紡績装置は、互いに反対方向に撚りを掛ける一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。
【0068】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、糸貯留装置50が紡績装置7から紡績糸Yを引き出す機能を有していたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、紡績糸を供給する給糸装置から、デリベリローラとニップローラとで紡績糸が引き出されてもよい。
【0069】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、糸欠点検出時における紡績糸Yの切断が、紡績装置7における旋回流の停止によって実施されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、糸欠点検出時における紡績糸の切断がカッターによって実施されてもよい。
【0070】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、上側で供給された紡績糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、下側で供給された紡績糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
【0071】
また、紡績機1及び紡績ユニット2では、ドラフト装置6のボトムローラやトラバース装置23のトラバース機構が、原動機ボックス5からの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動されていたが、本発明の紡績機及び紡績ユニットでは、紡績ユニットの各部(例えば、ドラフト装置、紡績装置、巻取装置等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
【0072】
紡績糸Yの走行方向において、テンションセンサ9がヤーンクリアラ8の上流側に配置されてもよい。また、ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2ごとでなく、複数の紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。また、ワキシング装置11、テンションセンサ9及びヤーンクリアラ8は、紡績ユニット2に設けられなくてもよい。また、巻取装置12は、紡績ユニット2ごとに設けられた駆動モータによって駆動されるのではなく、複数の紡績ユニット2に共通で設けられた駆動源によって駆動されてもよい。この場合において、パッケージPを逆回転させるときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するように、クレードルアーム21がエアシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ(図示省略)によってパッケージPが逆回転させられる。また、糸処理モジュール80が設けられずに、ヤーンクリアラ8、テンションセンサ9、糸貯留装置50及びワキシング装置11が、個別に、フレーム13によって直接的に又は間接的に支持されていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…紡績機、2…紡績ユニット、6…ドラフト装置(給糸装置)、7…紡績装置(給糸装置)、12…巻取装置、26…スプライサ(糸継装置)、50…糸貯留装置、51…糸貯留ローラ、52…糸貯留部、52a…基端部、52b…先端部、53…基端側テーパ部、58…第1テーパ部、59…第2テーパ部、61…糸掛け部材、65…吸引機構、66a…吸引口、77…規制機能部、S…スライバ、Y…紡績糸、F…繊維束、P…パッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績糸を供給する給糸装置と、前記紡績糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、の間において、前記紡績糸を貯留するための糸貯留装置であって、
前記紡績糸が巻き付けられる糸貯留ローラを備え、
前記糸貯留ローラは、
前記紡績糸が巻き付けられる糸貯留部と、
前記糸貯留部の巻付け開始側の基端部から前記給糸装置側に、第1傾斜角度で広がる第1テーパ部と、
前記第1テーパ部から前記給糸装置側に、前記第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度で広がる第2テーパ部と、を有し、
前記第2テーパ部は、前記糸貯留ローラに導入される前記紡績糸を受ける機能、及び前記紡績糸が前記給糸装置側で切断された場合に前記基端部側において振り回される前記紡績糸の糸端が前記糸貯留部の先端部側に動くのを抑制する機能を有し、
前記第1テーパ部は、前記第2テーパ部が受けた前記紡績糸を前記基端部に案内する機能を有することを特徴とする糸貯留装置。
【請求項2】
少なくとも前記第2テーパ部に対向するように配置された吸引口にエアーの吸引流を発生させる吸引機構を更に備えることを特徴とする請求項1記載の糸貯留装置。
【請求項3】
前記糸貯留ローラに対して前記巻取装置側に設けられ、前記紡績糸を引っ掛けて前記糸貯留ローラに巻き付ける糸掛け部材と、
前記糸貯留ローラに対して前記給糸装置側に設けられ、前記紡績糸が前記給糸装置側で切断された場合に前記紡績糸の糸端が前記糸貯留ローラを越えて前記糸掛け部材側に移動するのを規制する規制機能部と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の糸貯留装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の糸貯留装置と、
前記糸貯留装置に導入される前記紡績糸を供給する給糸装置と、
前記糸貯留装置から導出される前記紡績糸を前記パッケージに巻き取る巻取装置と、を備えることを特徴とする紡績ユニット。
【請求項5】
前記糸貯留装置と前記巻取装置との間において、切断された前記紡績糸の糸端同士を継ぐ糸継装置を更に備えることを特徴とする請求項4記載の紡績ユニット。
【請求項6】
前記給糸装置は、
繊維束をドラフトするドラフト装置と、
前記繊維束に撚りを与えて前記紡績糸を生成する紡績装置と、を有することを特徴とする請求項4又は5記載の紡績ユニット。
【請求項7】
前記紡績装置は、エアーの旋回流によって前記繊維束に撚りを与えて前記紡績糸を生成する空気紡績装置であることを特徴とする請求項6記載の紡績ユニット。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項記載の紡績ユニットを複数備えることを特徴とする紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−67447(P2013−67447A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205330(P2011−205330)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】