説明

【課題】
耐汚染性や遮音性、磁性、導電性、保温性、その他金属やその酸化物、合金などの有する特徴を生かした金属糸を提供する。
【解決手段】
破断強度が50g/mm以上である支持体の片面又は両面に接着層を介して、タングステン、モリブテン、チタン、クロム、ニッケル、コバルト、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、錫、又は鉛、のいずれか若しくは複数、若しくはいずれか単体の酸化物若しくはいずれか単体の酸化物を複数、の金属箔を貼着してなる積層体を1mm幅以下にマイクロスリットしてなる糸とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸に関する発明であって、具体的には高分子樹脂フィルム等の支持体に貼着された金属箔を支持体ごとマイクロスリットすることにより得られる糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加飾用の糸としていわゆる金銀糸が広く用いられてきた。例えば、古くは西陣織等において高級感を呈するために、本金箔や本銀箔を織込んだり、刺繍したりして用いていた。しかし時代が進み、やがてスズやアルミニウム等の地金箔による安価な金属光沢を有する金属糸が金銀糸として製造されるようになり、また帯地等への使用が大幅に進められた。これに伴い、金銀糸の生産工程に工夫が凝らされるようになってきたが、それでも生産工程の主な部分は多くの労働力と時間を要する工程であった。
【0003】
やがてさらに生産性の向上が求められるようになり、多数の人手を要していた撚り工程が機械化されるようになったが、合成繊維工業が発展するにつれ、その技術を応用した製法が確立されるようになった。即ち、ポリエステルフィルムの上に真空技術を応用して金属膜を作る画期的な手法の確立を見たのである。そしてこの真空蒸着法を用いることで長尺フィルムにより金銀糸としての金属糸を工業的に大量生産できるようになってきた。
【0004】
そしてこの真空蒸着法による大量生産が広まるにつれ、現在に至るまで、色々な金属糸及びその製造方法等につき種々の提案がなされるようになってきた。
【0005】
例えば特許文献1に記載の発明であれば、現在主として用いられるアルミニウムの耐蝕性が問題であったところ、これを解決するための手法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−310239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1にて開示された発明は、要すれば、プラスチックフィルムの表面にアルミニウム薄膜を形成し、その表面に直接クロム薄膜を積層した積層体を2枚用意し、クロム薄膜を内側にしてそれらを貼り合わせた構成を有することを特徴としている。
【0008】
このようにすることで、確かに耐蝕性に関して対処可能となったが、一方である程度金属糸に関する技術が一通り提案された現在においては、金銀糸等の金属糸に対しては装飾以外の新しい利用方法や何らの付加的機能が付与されたものであることが市場的にも要望されるようになってきているため、もはや例えば特許文献1に記載された発明に記された機能のみを有した、即ち単純に耐蝕性だけを備えた金属糸では、耐蝕性以外にも電磁波シールド性、磁性、遮音性、導電性、また後染め耐性等の機能を同時に複数有する金属糸を望む市場要望に応えられない状況が生じるようになってきている。
【0009】
そこで、先に述べたように、金属糸は高分子樹脂フィルムの表面に金属やその酸化物、合金などを蒸着して積層してなる積層フィルムをスリットすることにより得られてなることより、蒸着する金属の呈する特性や機能に着目することでかかる特定の機能を明確に発揮する金属糸を検討するようになった。例えば磁性を有する金属糸を得たいのであれば磁性を呈する金属を蒸着により積層する、といったものである。
【0010】
しかしこのように金属等による機能を明確に呈するように蒸着しようとするならば、従来のいわゆる金属蒸着フィルムにおける数十〜数百nm程度の厚みの金属蒸着層では所望の機能を明確に発揮することは困難であり、故に蒸着以外の手法によりかかる目的を達する手法の確率が望まれるようになった。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐汚染性や磁性、保温性、導電性、遮音性その他金属やその酸化物、合金などの有する特徴を生かした金属糸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の糸に関する発明は、支持体の片面又は両面に接着層を介して金属箔を貼着してなる積層体を1mm幅以下にマイクロスリットしてなること、を特徴とする。
【0013】
本願発明の請求項2に記載の糸に関する発明は、請求項1に記載の糸であって、前記支持体の破断強度が50g/mm以上であること、を特徴とする。
【0014】
本願発明の請求項3に記載の糸に関する発明は、請求項1又は請求項2に記載の糸であって、前記支持体が、紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアセタールフィルム、変性ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリイミドフィルム、又はポリブチレンテレフタレートフィルム、のいずれか若しくは複数であること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項4に記載の糸に関する発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の糸であって、前記金属箔が、遮音性、磁性、導電性、遮熱性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性、又は耐湿熱性、のいずれかの機能を有してなること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項5に記載の糸に関する発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の糸であって、前記金属箔が、タングステン、モリブテン、チタン、クロム、ニッケル、コバルト、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、錫、又は鉛、のいずれか若しくは複数、若しくはいずれか単体の酸化物若しくはいずれか単体の酸化物を複数、の箔であること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項6に記載の糸に関する発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の糸であって、前記金属箔の厚みが、3μm以上であること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の糸を用いてなる、撚り糸又は組紐糸、であることを特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の糸を用いてなる、織物又は編地、であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本願発明にかかる糸であれば、別途それぞれに用意された、支持体となる高分子樹脂フィルム等の基材と、金属箔と、を接着剤を介して貼着して得られる積層体を1mm幅以下の幅でマイクロスリットして得られるものであるので、金属箔の呈する、つまり金属箔を構成する金属の呈する機能と同等の機能を呈することが可能となるスリット糸を得ることができる。
【0021】
これは、従来の金属蒸着フィルムにおける金属層(又は金属蒸着層とも言う。)に変えて金属箔とすることにより金属層に該当する部分の厚みが全く違うものとなるからである。これをさらに詳細に述べると、従来の金属蒸着フィルムにおいて金属層の厚みが数十〜数百nm程度の厚みであれば、この部分に磁性、遮音性、導電性を呈するスリット糸を得ようとしても金属層部分が薄いため充分な磁性、遮音性、導電性を発揮するだけの総量としての絶対的な金属量が不足するために所望の磁性、遮音性、導電性を呈することができないものであるところ、かかる金属層を厚みが3μm以上である金属箔を用いるようにすることで、磁性、遮音性、導電性を呈するための総量としての絶対的な金属量も充分に確保することが可能となり、その結果、磁性、遮音性、導電性を充分に有する金属糸とすることができるのである。また厚みが3μm以上の金属箔を単体でスリットしてもすぐに破断してしまうためにそのままでは利用できないものであったところ、これに破断強度が50g/mm以上の支持体を基材として利用することにより、かかる基材に積層された金属箔も容易に破断することがなくなり、また蒸着層ではなく金属箔を用いることにより金属層そのものが容易に破断してしまう、という事態を防ぐことも可能となる。つまり、確実に機能を発揮することができる糸を容易に得ることができるようになるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明にかかる糸について第1の実施の形態として説明する。
【0023】
本実施の形態にかかる糸は、基本的に支持体の片面に接着層を介して金属箔を貼着してなる積層体を1mm幅以下にマイクロスリットすることにより得られるものである。
【0024】
以下、順次説明をしていく。
まず本実施の形態にかかる糸に用いられる支持体としては、その破断強度が50g/mm以上であることが望ましく、本実施の形態では50g/mm以上であるものとする。また支持体として、紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアセタールフィルム、変性ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリイミドフィルム、又はポリブチレンテレフタレートフィルム、のいずれか若しくは複数を用いることが考えられるが、これ以外のものであっても構わない。つまり、前述の物質であって破断強度が50g/mm以上であることが望ましく、本実施の形態では厚みが6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることとする。
【0025】
尚、支持体の厚みについては特段限定するものではなく、むしろ前述の破断強度を満たすだけの厚みがあればそれで良いが、本実施の形態で用いるPETフィルムであれば、6μm以上75μm以下であれば好ましいと言える。これは厚みが75μm以上であると本実施の形態にかかる糸の厚みが増してしまい、糸としての柔軟性を確保することができないからであり、6μm以下であると上述の破断強度を確保できないからである。
【0026】
次に、この支持体表面に貼着する金属箔につき説明する。
本実施の形態における金属箔は一般的な金属箔を意味し、また指すものであり、特段のものではないことを予め断っておく。
【0027】
かかる金属箔は、従来公知の手法で得られるもの、例えば圧延によるものであったり、打ちによるものであったり、電解によるものであったりするもので構わない。
【0028】
金属箔に関しさらに説明すると、本実施の形態における金属箔は、何らかの機能を有していることが求められる。例えば、遮音性、磁性、導電性、遮熱性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性、又は耐湿熱性、といった機能であるが、これら以外の機能であっても特定素材による金属箔が有する機能として公知なものであれば構わない。
【0029】
そしてかような機能を発揮する金属箔として、例えばタングステン、モリブテン、チタン、クロム、ニッケル、コバルト、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、錫、又は鉛、のいずれか若しくは複数、若しくはいずれか単体の酸化物若しくはいずれか単体の酸化物を複数、であることが考えられる。そして本実施の形態における金属箔の厚みは、3μm以上であることが望ましい。
【0030】
この点に関しさらに具体的に説明を続ける。
例えば本実施の形態にかかる糸が遮音性を備えた糸であること望む場合、用いる金属箔はタングステン箔等であることが好ましいが、これはタングステン箔を用いることで比重が重く容易に遮音性を得ることができる、等の理由によるからである。
【0031】
そしてタングステン箔を、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼着し、得られた積層体をマイクロスリットすれば、遮音性を備えた糸となせる。またこのようにして得られた遮音性を有する糸であれば、これを織編物に利用することで、遮音性を備えた織編物を得ることができる。
【0032】
また本実施の形態にかかる糸に導電性を付与することを所望するのであれば、金属箔として金、銀、銅、アルミニウムを用意し、これを例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼着し、得られた積層体をマイクロスリットすれば良い。またこのようにして得られた導電性を有する金属糸であれば、これを織編物に利用できるばかりでなく、導電性を有することを利用してこれをケーブルとすることも可能となる。またこの導電性を備えた糸は電磁波シールド糸としても用いることが可能である。
【0033】
さらに例をあげると、本実施の形態にかかる糸に磁性を付与することを所望するのであれば、金属箔として鉄、コバルト、ニッケルの単体若しくは複合体を用意し、これを例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼着し、得られた積層体をマイクロスリットすれば良い。またこのようにして得られた磁性を有する糸であれば、これを織編物に利用できる。
【0034】
このように、例えば磁性を備えた糸に関して検討すると、従来の金属蒸着フィルムにおいてニッケルを蒸着させて金属層(金属蒸着層とも言う。)を積層させていたところ、これに代えて本実施の形態では金属層としてニッケル箔を用いることを特徴としているが、この場合を例に、さらに説明する。
【0035】
従来の金属蒸着フィルムにおいてニッケルを金属層(又は金属蒸着層とも言う。)として積層しようとしてもニッケル自体が高沸点の金属であるため、金属箔と同じだけの厚みを付けようとしても支持体に耐熱性がないので、ニッケルを蒸着する前に支持体が破損してしまう可能性が高く、現実性に乏しいと言わざるを得ない。また仮に破損しない支持体を選択しようにも、又は破損しない蒸着方法を適用しようにも、結局コスト的にニッケル箔を用いた場合と比較すると高くなり好ましくない。よって本実施の形態では金属を蒸着させるのではなく、金属箔を積層することとしているのである。
【0036】
この点に関しさらに詳細に述べると、従来の金属蒸着フィルムにおいて金属層の厚みが数十〜数百nm程度の厚みであれば、この部分に磁性を呈する糸をニッケルを蒸着してなる金属蒸着フィルムをマイクロスリットすることにより得ようとしても、ニッケル層である金属層部分が薄いため、還元すれば上述の通り充分な厚みを持った蒸着を施すことが不可能であるため、結局充分な磁性を発揮するだけの総量としての絶対的なニッケルの量が不足するために所望の磁性を呈することができないものであった。しかしニッケル層を厚みが3μm以上であるニッケル箔を用いるようにすることで、磁性を呈するための総量としての絶対的なニッケルの量を充分に確保することが可能となり、その結果磁性を充分に有する糸とすることができるようになったことを本願発明にかかる発明者は見いだしたのである。そしてこれは磁性を付与するためにニッケル箔を用いる場合に限定されるのではなく、上述の通り、遮音性を求めるのであればタングステン箔を、導電性を求めるのであればアルミニウム箔等を、それぞれ用いる場合においても、さらには特定の性質を所望するために該当する性質を有する金属箔を用いる場合において、同様であることを断っておく。
【0037】
また厚みが3μm以上の金属箔を単体でスリットしてもすぐに破断してしまうために、これを単体では利用できないものであったところ、これに貼着する支持体として破断強度が50g/mm幅以上のものを利用することにより、金属箔も破断することがなくなり、また蒸着層ではなく金属箔を用いることにより金属層そのものが容易に破断してしまう、という事態を防ぐことも可能となる。つまり、確実に機能を発揮することができる糸を容易に得ることができるようになるのである。
【0038】
そしてこのようにすることで本実施の形態にかかる糸では、糸がしなやかに動くことにより糸の金属層部分の表面に裂傷が生じたとしても金属層部分が完全に断裂してしまうことがなくなるため、その結果、所望の特定機能が失われずに済むことが期待されるのである。
【0039】
以上説明した支持体と金属箔とを用いて本実施の形態にかかる糸を得る。そこで次にこの糸を得る手法に関し説明をする。ここでは導電性を備えた糸とすることを想定して説明をする。
【0040】
まず支持体であるPETフィルムの片面に、従来公知の接着剤を用いて、厚さ6μmのアルミニウム箔を積層する。ここで、従来公知の接着剤とは、例えばポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、又はポリエーテル樹脂等の接着剤であって、本実施の形態ではポリエステル樹脂を用いることとする。そしてこの接着剤をウェットコーティング法によりPETフィルムの表面に塗布、積層し、さらにその表面にアルミニウム箔を積層する。そして同様にPETフィルムのもう片方の面にも同様にして、厚さ6μmのアルミニウム箔を積層する。そしてこれら全体に対し加圧することにより、PETフィルムとアルミニウム箔とを積層してなるのである。尚、本実施の形態において加圧、圧着するに際しての手法は特段制限するものではなく、従来公知のゴムロールプレス手法を用いれば良い。
【0041】
この際、接着剤の厚みとしては特段制限するものではないが、1μm以上5μm以下の厚みとすれば良い。1μm以下であるとPETフィルムとアルミニウム箔とが容易に剥離してしまい、また5μm以上の厚みとすると、最終的に得られる糸に充分な柔軟性が備わらないからである。
【0042】
このようにして支持体であるPETフィルムの両面にアルミニウム箔を積層した積層体を得ると、次にこれをマイクロスリット(微裁断)する。この際、幅としては1mm以下であることが望ましいが、これは得られる糸を単体として用いる場合であっても、後述のようにこれを例えば芯糸として他の糸と撚り合わせた糸とする場合であっても、1mm以下の幅としておけばいずれにも適して利用することができるからである。尚、マイクロスリットの手法については従来公知のものであって良く、特段の制限をするものではない。
【0043】
以上のようにして得られた糸は、支持体の表面に金属箔が積層された略断面形状を有しており、また金属箔よりなる金属層部分の厚みが3μm以上あるので、金属層の呈する機能と同様の機能を備えた糸を得ることができる。そしてここではアルミニウム箔を用いたので、得られる糸には導電性があり電線、電磁波シールド等の用途に使うことができる。
【0044】
また本実施の形態では支持体の両面に金属箔を積層した場合につき説明したが、支持体の片面に金属箔を積層した積層体とし、これをマイクロスリットして機能を有した糸を得ることとしても良い。また両面に金属箔を積層する場合では、それら両面に用いる金属箔は同一のものであっても良く、異なるものであっても良いが、この点に関してこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0045】
さらに本実施の形態により得られた糸を芯糸として、撚り糸又は組紐糸とすることも考えられるが、この場合は芯糸即ち本実施の形態にかかる糸の有する機能を発揮した撚り糸又は組紐糸とすることができる。さらに本実施の形態により得られた糸を用いた織物又は編地とすれば、やはり本実施の形態にかかる糸の有する機能を発揮した織物又は編地とすることができるが、これらに関してもこれ以上の詳細な説明を省略する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明にかかる積層体につき、さらに実施例により説明する。
【0047】
(実施例1)
支持体として、厚み12μmのPETフィルム(東レ株式会社製ルミラー)を用いた。
その表面に、接着剤(大日精化工業株式会社製セイカボンド)を厚みが2μmとなるように塗布して接着層とし、さらにその両面に金属箔として厚みが12μmのアルミニウム箔を積層した。アルミニウム箔は従来公知の圧延法により得られたものである。またこれらの積層に際しては従来公知のゴムロールプレス法を用いた。
得られた積層体を幅が0.38mmとなるようにマイクロスリットして糸を得た。
(実施例2)
実施例1と同様にして糸を得たが、厚みが9μmの金属箔として銀箔を用いた。
(実施例3)
実施例1と同様にして糸を得たが、厚みが9μmの金属箔として銅箔を用いた。
【0048】
(比較例1)
厚み12μmのPETフィルム(東レ株式会社製ルミラー)の表面に、真空蒸着機により厚みが60nmとなるようにアルミニウムを積層した。
【0049】
得られた積層体を幅が0.38mmとなるようにマイクロスリットして糸を得た。
以上得られた糸につき、それぞれの機能を調査したところ、実施例1〜3についてはアルミニウム箔、銀箔、銅箔の有する機能である導電性が発揮された。しかし比較例1についてはアルミニウム蒸着により金属層を付けたものは導電性は充分に発揮されなかった。そして、比較例1により得られた糸の略断面を調べてみると、至る所でアルミニウム箔部分に断裂が生じていたことがわかった。即ち、アルミニウム箔部分が断裂したため、所望の機能を充分に発揮しなかったものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面又は両面に接着層を介して金属箔を貼着してなる積層体を1mm幅以下にマイクロスリットしてなること、
を特徴とする、糸。
【請求項2】
請求項1に記載の糸であって、
前記支持体の破断強度が50g/mm以上であること、
を特徴とする、糸。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の糸であって、
前記支持体が、紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアセタールフィルム、変性ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリイミドフィルム、又はポリブチレンテレフタレートフィルム、のいずれか若しくは複数であること、
を特徴とする、糸。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の糸であって、
前記金属箔が、遮音性、磁性、導電性、遮熱性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性、又は耐湿熱性、のいずれかの機能を有してなること、
を特徴とする、糸。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の糸であって、
前記金属箔が、タングステン、モリブテン、チタン、クロム、ニッケル、コバルト、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、錫、又は鉛、のいずれか若しくは複数、若しくはいずれか単体の酸化物若しくはいずれか単体の酸化物を複数、の箔であること、
を特徴とする、糸。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の糸であって、
前記金属箔の厚みが、3μm以上であること、
を特徴とする、糸。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の糸を用いてなること、
を特徴とする、撚り糸又は組紐糸。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の糸を用いてなること、
を特徴とする、織物又は編地。

【公開番号】特開2009−30183(P2009−30183A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192791(P2007−192791)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(301054830)尾池テック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】