説明

紅茶飲料およびその製造方法

【課題】高い抗肥満作用とともに糖尿病の発症の抑制効果が得られる紅茶飲料を提供する。
【解決手段】本発明は、紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する際および/または抽出後にエステラーゼで処理した紅茶抽出物から製造され、ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、茶抽出物をタンナーゼで処理する技術が知られている(特許文献1〜5)。
【0003】
特許文献1には、水性茶抽出物にオキシダーゼとタンナーゼとを加えることで、冷蔵貯蔵時の濁りの発生が減じられることが記載されている。また、特許文献2には、タンナーゼとクロロゲン酸エステラーゼとを併用するときに著しく茶抽出液の混濁を分解除去できることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、高濃度のカテキンを含有する状態においてタンナーゼ処理を施すことにより、茶飲料の旨味やコク味を損なわずに渋味を低減することができることが記載されている。
【0005】
特許文献4には、抗酸化力を高めた茶抽出物からなる抗酸化剤組成物が記載されている。また、特許文献4には、茶葉の抽出時および/または抽出後にタンニン分解酵素タンナーゼを作用させ、ガレート型カテキン類の没食子酸エステルを切断し、非ガレート型カテキン類と没食子酸に分解すること、エピガロカテキンガレートにタンナーゼを作用させ生じるエピガロカテキンと没食子酸はいずれも強い抗酸化力を持っていること等が記載されている。
また、特許文献5には、茶抽出物又はその濃縮物をタンナーゼ処理することにより、ガレート体カテキン率を低下させることが記載されている。特許文献5では、予めガレート体カテキン率が50質量%未満に調整された茶抽出物を用いて容器詰茶飲料を製造するにあたって、没食子酸の含有量を21〜150ppmに調整し、非重合体カテキン類中のガレート体カテキン率が0〜50質量%かつエピ体率を30〜60質量%に調整すれば、非重合体カテキン類濃度が高い場合でも、苦味が抑制されるだけでなく、長期保存してもカテキン類の組成変化が起こりにくいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−303450号公報
【特許文献2】特開平11−308965号公報
【特許文献3】特開2005−130809号公報
【特許文献4】特開2006−83352号公報
【特許文献5】特開2007−325585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、本発明者らは、タンナーゼ処理された紅茶抽出物が血糖値を低下させることを新たに知見した。また、このことは、タンナーゼだけでなく、クロロゲン酸エステラーゼのようなエステラーゼで処理された紅茶抽出物に共通した作用であることが予測された。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、抗肥満作用の高い紅茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する際および/または抽出後にエステラーゼで処理した紅茶抽出物から製造され、ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の紅茶飲料を飲料用容器に充填してなる容器詰飲料が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、糖尿病を予防又は治療するために用いられる上記の紅茶飲料が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する工程と、前記紅茶抽出液を抽出する前記工程の際および/または前記紅茶抽出液を抽出する前記工程の後に前記紅茶抽出物をエステラーゼで処理する工程と、を含み、ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料を製造する方法が提供される。
【0013】
この発明によれば、エステラーゼで処理された紅茶抽出物から製造された紅茶飲料にタンニン量に換算して60mg/100ml以上の高濃度のポリフェノールを含有させる。これにより、食事として摂取することにより、血糖値を低下させることができる。したがって、高い抗肥満作用とともに糖尿病の発症の抑制効果が得られる紅茶飲料が実現可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い抗肥満作用とともに糖尿病の発症の抑制効果が得られる紅茶飲料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】紅茶飲料のポリフェノール組成比を示す図である。
【図2】マウス長期投与試験におけるマウスの体重の増減の推移を示す図である。
【図3】(a)マウス長期投与試験におけるマウスの体重当たりの内臓(腸間膜)周囲脂肪の割合(%)を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウスの体重当たりの腎臓周囲脂肪の割合(%)を示す図である。
【図4】マウス長期投与試験におけるマウスの体重当たりの精巣周囲脂肪の割合(%)を示す図である。
【図5】マウス長期投与試験におけるマウスの空腹時の血糖値の推移を示す図である。
【図6】マウス長期投与試験における総ヘモグロビン中のヘモグロビンA1c(ヘモグロビンとブドウ糖が結合したもの)の割合を示す図である。
【図7】(a)マウス長期投与試験におけるマウスの血清トリグリセリド値を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウス血液中の総コレステロール値を示す図である。
【図8】マウス長期投与試験におけるマウスの血清NEFA値を示す図である。
【図9】(a)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓中の総脂質量を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓中のトリグリセリド値を示す図である。
【図10】(a)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓中の総コレステロール値を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓中のNEFA値を示す図である。
【図11】マウス長期投与試験におけるマウス肝臓中のリン脂質値を示す図である。
【図12】(a)マウス長期投与試験における飼育89〜91日目のマウス糞中脂質排泄量を示す図である。(b)マウス長期投与試験における飼育89〜91日目のマウス糞中のトリグリセリド値を示す図である。
【図13】(a)マウス長期投与試験における飼育89〜91日目のマウス糞中の総コレステロール値を示す図である。(b)マウス長期投与試験における飼育89〜91日目のマウス糞中の総胆汁酸を示す図である。
【図14】(a)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓中の脂肪酸合成酵素活性を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓中のカルニチンパルミトイル転移酵素活性を示す図である。
【図15】(a)マウス長期投与試験におけるマウスの血清レプチン値を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウスの血清インスリン値を示す図である。
【図16】マウス長期投与試験におけるマウスの血清アディポネクチン値を示す図である。
【図17】(a)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓のAPOA2発現量を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓のFABP1発現量を示す図である。
【図18】(a)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓のAPOC3発現量を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓のGCK発現量を示す図である。
【図19】(a)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓のPTEN発現量を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓のRBP4発現量を示す図である。
【図20】(a)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓のFBP1発現量を示す図である。(b)マウス長期投与試験におけるマウス肝臓のNFKBIA発現量を示す図である。
【図21】ラット血液サンプルの調製方法を示す図である。
【図22】ラット長期投与試験におけるラットの体重の増減の推移を示す図である。
【図23】(a)ラット長期投与試験におけるラットの体重当たりの内臓(腸間膜)周囲脂肪の割合(%)を示す図である。(b)ラット長期投与試験におけるラットの体重当たりの精巣周囲脂肪の割合(%)を示す図である。
【図24】ラット長期投与試験におけるラットの空腹時血糖値の推移を示す図である。
【図25】ラット長期投与試験におけるラットの随時血糖値の推移を示す図である。
【図26】(a)ラット長期投与試験における飼育4週目の総ヘモグロビン中のヘモグロビンA1c(ヘモグロビンとブドウ糖が結合したもの)の割合を示す図である。(b)ラット長期投与試験における飼育5週目の総ヘモグロビン中のヘモグロビンA1c(ヘモグロビンとブドウ糖が結合したもの)の割合を示す図である。
【図27】(a)ラット長期投与試験における飼育4週目の耐糖能試験の結果を示す図である。(b)ラット長期投与試験における飼育6週目の耐糖能試験の結果を示す図である。
【図28】(a)ラット長期投与試験における血清トリグリセリド値を示す図である。(b)ラット長期投与試験におけるラット血液中の総コレステロール値を示す図である。
【図29】ラット長期投与試験におけるラットの動脈硬化指数の結果を示す図である。
【図30】(a)ラット長期投与試験における血清HDL−C値を示す図である。(b)ラット長期投与試験における血清NEFA値を示す図である。
【図31】(a)ラット長期投与試験におけるラット肝臓中の総脂質量を示す図である。(b)ラット長期投与試験におけるラット肝臓中のNEFA値を示す図である。
【図32】(a)ラット長期投与試験におけるラット肝臓中のトリグリセリド値を示す図である。(b)ラット長期投与試験におけるラット肝臓中の総コレステロール値を示す図である。
【図33】ラット長期投与試験におけるラット肝臓あたりのリン脂質値を示す図である。
【図34】(a)ラット長期投与試験における血清TBARS値を示す図である。(b)ラット長期投与試験におけるラット肝臓中のTBARS値を示す図である。
【図35】(a)ラット長期投与試験におけるラット肝臓のカタラーゼ活性を示す図である。(b)ラット長期投与試験におけるラット肝臓のGSH−Px活性を示す図である。
【図36】(a)ラット長期投与試験におけるラットの血清レプチン値を示す図である。(b)ラット長期投与試験におけるラットの血清インスリン値を示す図である。
【図37】(a)ラット長期投与試験におけるラットの血清アディポネクチン値を示す図である。(b)ラット長期投与試験におけるラットのTNF−αを示す図である。
【図38】(a)ラット長期投与試験における飼育5週目44時間のラット尿中のアルブミンを示す図である。(b)ラット長期投与試験における飼育5週目44時間のラット尿中のクレアチニンを示す図である。
【図39】ラット長期投与試験における飼育5週目44時間のラット尿中の8−OHdGを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。本発明は、上述のとおり、紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する際および/または抽出後にエステラーゼで処理した紅茶抽出物から製造され、タンニン量に換算してポリフェノールを60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料である。
【0017】
<紅茶葉>
本発明で用いる紅茶抽出物の原料は、紅茶葉(茶樹Cameria sinensisの茶葉を完全に酸化発酵させて得られる全発酵茶葉)であれば特に品種は限定されず、オーソドックス(伝統的)製法による紅茶葉であってもよいし、OTC(非伝統的)製法による紅茶葉であってもよい。紅茶葉は、市販のものをそのまま使用してもよいが、粉砕、摩砕等の処理を施してもよい。
【0018】
<紅茶抽出液>
紅茶葉の抽出液は、例えば、抽出カラムに充填した原料茶類に水または熱水を一定流量で送水し、所定量の抽出液を得る方法や、抽出釜に茶葉を仕込み、所定量の水または熱水で一定時間浸積した後、茶葉と分離して抽出液を得る方法等、通常使用される方法を適宜選択して調製することができる。抽出倍率は、3倍〜50倍が好ましい。抽出倍率とは、抽出に使用する茶葉重量に対する抽出溶媒の容量の比率のことをいう。抽出条件は、例えば、水または熱水の温度を35℃以上100℃以下とすることができる。抽出の際には、抽出助剤を添加してもよい。抽出助剤としては特に限定されず、従来公知の抽出助剤を用いることができる。例えば、抗酸化剤として、L−アスコルビン酸ナトリウムやL−アスコルビン酸を用いることができ、pH調整剤として、重炭酸ナトリウムや炭酸カリウムを用いることができる。また、これらの抽出助剤を、茶葉の質量に対して0.1〜10質量%を添加して用いることができる。
【0019】
本発明では、これらの紅茶葉の抽出の際および/または抽出後にエステラーゼを作用させる。本発明のエステラーゼは、縮合型タンニンを分解できる作用を有するものであればよく、具体的には、ガレート型カテキンを非ガレート型カテキンに分解できる作用、または/及び、ガレート型テアフラビンを非ガレート型テアフラビンに分解できる作用を有するものが好ましい。例えば、ぺクチナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、タンナーゼが挙げられるが、タンナーゼもしくはクロロゲン酸エステラーゼのいずれかまたは両方を用いると好ましく、タンナーゼが特に好ましい。タンナーゼとしては、タンニンを分解する活性を有するものであれば任意のものを使用することができる。また、クロロゲン酸エステラーゼとしては、クロロゲン酸エステルを分解する活性を有するものであれば任意のものを使用することができる。
【0020】
紅茶葉から紅茶抽出液を抽出した後にエステラーゼを作用させる場合、紅茶抽出液にそのままエステラーゼを添加してもよいし、たとえば10倍程度濃縮した紅茶抽出液にエステラーゼを添加してもよい。紅茶抽出液をエステラーゼ処理するとき、温度は、10℃以上60℃以下、好ましくは20℃以上55℃以下、より好ましくは20℃以上40℃以下とすることができる。また、pHを2.0以上8.0以下、好ましくは、4.0以上7.0以下に調製しておいてもよい。そして、このような条件下でエステラーゼを10分以上480分以下反応させることができる。
【0021】
本発明では、紅茶抽出液をエステラーゼ処理することにより、紅茶抽出液中のガレート型カテキンおよびガレート型テアフラビンを非ガレート型にすることができる。ガレート型の含有量を減少させることで、渋みが低減され、非ガレート型のポリフェノールを含有することで、血糖値低下作用を得ることができる。本発明の紅茶飲料に含有するガレート型カテキンとガレート型テアフラビンとの総量(mg/100ml)に対する非ガレート型カテキンと非ガレート型テアフラビンとの総量(mg/100ml)の比率は、2〜15とすると好ましい。
【0022】
<ポリフェノール>
本発明の「紅茶飲料」は、「単体で混入された場合には苦渋味を感じる程度」のポリフェノールを含有する。ここで「ポリフェノール」とは、紅茶の抽出物から得られる紅茶葉由来ポリフェノールのみならず、これとは別途添加される一般的な植物に含有されるポリフェノール(添加ポリフェノール)をも含む意味である。ここで、「紅茶葉由来ポリフェノール」とは、本発明の紅茶飲料に用いられる主原料の紅茶葉由来のポリフェノールであり、紅茶飲料の製造において、主原料の紅茶葉から水または熱水などにて抽出されるものである。または別途調製した紅茶エキスも含まれる。
【0023】
「紅茶葉由来ポリフェノール」としては、ガレート型カテキンとしては、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン3ガレート、カテキンガレートが挙げられる。また、非ガレート型カテキンとしては、カテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンが挙げられる。ガレート型テアフラビンとしては、テアフラビン3ガレート、テアフラビン3'ガレート、テアフラビン3,3'ジガレートが挙げられる。非ガレート型テアフラビンとしては、テアフラビンが挙げられる。
【0024】
「添加ポリフェノール」の種類としては、植物に含有されるポリフェノールであれば特に限定されるものではないが、茶ポリフェノールや果実ポリフェノールが好ましい。
【0025】
「茶ポリフェノール」は、茶由来であれば特に限定されず、紅茶ポリフェノール、緑茶ポリフェノール、烏龍茶ポリフェノールなどが挙げられる。なかでも、甘味料との相性がよく、環状オリゴ糖を添加する必要がない、紅茶ポリフェノールを添加することが好ましい。添加ポリフェノールの製造方法は特に限定されないが、例えば、従来公知の方法で茶葉からの抽出等によって得られたものを使用できる。また、これらの添加ポリフェノールとして市販されているもの用いてもよい。また、添加ポリフェノールは濃縮物であってもよい。
【0026】
上記の「茶ポリフェノール」は各種のカテキン類を含んでおり、例えば、カテキン類の非重合体であるエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、カテキンもしくはガロカテキンなどのカテキン類などの他、紅茶ポリフェノールには、テアフラビン類、テアシネンシン類、テアルビジン類、プロアントシアニジン類などが含まれている。
【0027】
前述の「単体で混入された場合には苦渋味を感じる程度」とは、茶ポリフェノールを紅茶に混入した場合に、渋く、苦くて飲用できないと官能的に感じられる程度である。ポリフェノールによる苦渋味は、一般に水または熱水で抽出した紅茶、緑茶、烏龍茶など茶類を飲用する場合にも、感じられる。しかし、上記の添加茶ポリフェノールを紅茶に混入すると、紅茶の苦渋味は、嗜好品としての飲用が困難な程度になる。苦渋味は飲用する個々人の味覚によって差異があるため、苦渋味の度合いは相対的なものであるが、一例として、タンニン量に換算して60mg/100ml以上が挙げられる。
【0028】
「果実ポリフェノール」としては、りんごやぶどうなどのポリフェノールが挙げられる。これらの果実ポリフェノールにも、抗酸化作用、血圧上昇抑制作用などが知られており、ポリフェノールの効果は強化される。なかでも、特に香味の点において紅茶飲料との相性がよい、りんごポリフェノールが好ましい。りんごポリフェノールは少量の添加で効果があり、添加した際に渋苦味が低い。紅茶飲料に緑茶由来のポリフェノールを添加すると、苦渋味を感じやすくなる。
【0029】
そして、上記のように、主原料となる紅茶葉由来の紅茶葉由来ポリフェノールに、更に上記の添加ポリフェノール、好ましくは、添加紅茶ポリフェノール、及び/又はりんごポリフェノールを添加することにより、ポリフェノールを大量に摂取することができる。すなわち、紅茶葉から、茶葉と熱水のみで抽出する紅茶を飲用する場合と比較して、一度の飲用で、多くのポリフェノールを摂取することができる。
【0030】
<ポリフェノールの含有量>
本発明においては、紅茶飲料の総ポリフェノールにおける上記の紅茶葉由来ポリフェノール及び添加茶ポリフェノールの合計量の割合は、1質量%以上100質量%以下が好ましい。さらに好ましくは20質量%以上100質量%以下である。ここで、「総ポリフェノール」とは、紅茶葉由来ポリフェノール茶の他に、上記の添加される茶ポリフェノールや果物ポリフェノールを含めたポリフェノール全体の総量を意味する。
【0031】
また、前記の総ポリフェノールはタンニン量に換算して、60mg/100ml以上250mg/100ml以下含有することが特に好ましい。このように、エステラーゼ処理された紅茶抽出液に、さらに上記の添加ポリフェノールを添加して、ポリフェノールを60mg/100ml以上250mg/100ml以下含有させることにより、抗酸化作用、抗菌作用、糖分解酵素の阻害作用によるダイエット効果といった保健機能を有する紅茶飲料とすることができる。また、紅茶飲料中「紅茶葉由来ポリフェノール」の含有量がタンニン量に換算して60mg/100ml以上250mg/100ml以下含有するとより好ましい。このタンニン量は、酒石酸鉄法により測定することができる。
【0032】
<紅茶飲料>
本発明の紅茶飲料は、紅茶葉由来の紅茶葉ポリフェノールを含有し、かつ、エステラーゼで処理された紅茶抽出物に添加茶ポリフェノール及び/またはその他のポリフェノールを添加し、更に、高甘味度甘味料及び/又は糖アルコールを、添加することが好ましい。
【0033】
ここでいう「高甘味度甘味料」とは、非糖質系の甘味料であり、甘味度が高く、ショ糖と比べてごく微量で甘さを発揮することができる甘味料である。甘味度とは、ショ糖を1.00とした場合の、純ショ糖溶液と比較した甘さの値である。官能検査により測定されるため、正確に規定することは困難であるが、例えばスクラロースは600倍、アセスルファムカリウムは200倍、ステビアは200倍近いと言われている。
【0034】
また、「糖アルコール」とは、糖分子のアルデヒド基を還元して得られる還元基を有する糖類を、高温高圧下で水素と反応、還元して製造(接触還元)されるものであり、例えば、ソルビトール、マルチトール、キシリトールのような鎖状多価アルコールの総称である。
【0035】
甘味料とは、食品に甘みをつけるために使われる調味料であり、高甘味度甘味料や糖アルコールは、甘味料に含まれる。本発明における「高甘味度甘味料もしくは糖アルコールのいずれかまたは両方」とは、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア等の高甘味度甘味料、キシリトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコールのいずれか又はこれらの群から選ばれる2種以上からなる甘味料であってよい。
【0036】
高甘味度甘味料及び/または糖アルコールを添加することにより、茶ポリフェノールの苦渋味を緩和することができる。高甘味度甘味料のみではやや苦渋みが目立ち、また、糖アルコールと高甘味度甘味料を組み合わせることにより、砂糖を添加することで甘みを与えるよりも紅茶飲料を低熱量に抑えることができる。
【0037】
茶ポリフェノールに含まれるエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、カテキンもしくはガロカテキンや、テアフラビン類、テアシネンシン類、テアルビジン類、プロアントシアニジン類などはタンニン成分であり、その性質として渋みを有する。このため、ポリフェノールの量が通常の熱水などにて抽出して飲用している量を超えたポリフェノール含有飲料とすると、飲用に適さない度合いまで苦くなり、環状オリゴ糖を添加して苦味をマスキングすることが必要となる。
【0038】
一方、上記の本発明の紅茶飲料によれば、エステラーゼ処理をしてガレート型のカテキンを非ガレート型のカテキンとする。そのため、渋みを低減させることができる。また、渋みが残る場合は、高甘味度甘味料と糖アルコールとを添加させればよいため、環状オリゴ糖を添加する必要がない。したがって、紅茶飲料を低熱量に抑えつつ血糖値低下作用を有する紅茶飲料を提供することができる。
【0039】
ところで、エステラーゼの作用を受けた茶抽出液は、pHの低下が見られることがある。そこで、処理後の茶抽出液にアルカリを添加して、エステラーゼ処理前のpH値に調整することが望ましい。ここに用いられるアルカリとしては、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。具体的には、紅茶飲料のpHは、2.5〜8.0であることが好ましく、3.0〜7.9がより好ましい。
【0040】
また、本発明の紅茶飲料には、上記の他に果汁、香料、酸味料、栄養強化剤、安定剤などを使用してよい。
【0041】
また、本発明の紅茶飲料の製造方法においては、上記のエステラーゼ処理の後に70℃以上145℃以下、より好ましくは、90℃から142℃で、0.02分間から60分間、より好ましくは、0.03分間から40分間加熱する高温加熱工程を実行することができる。こうした加熱工程を実行することで、通常の紅茶飲料の殺菌工程を実行するとともに、同時にエステラーゼを失活させることができる。
【0042】
このようにして得られた茶抽出液を飲用に適する濃度に濃縮あるいは水で希釈して紅茶飲料を得る。あるいは、上記の紅茶抽出液を粉末化して即席粉末茶として利用してもよい。ここで得られる粉末茶は、冷水に対する溶解性、および溶液の冷却時の透明度に優れる。
【0043】
<容器詰飲料>
本発明の容器詰飲料は、上記の紅茶飲料を、従来公知の方法で飲料用容器に充填して得られる。
【0044】
飲料用容器としては、従来公知のガラス瓶、金属缶、紙、プラスチックなどが用いられ特に限定されない。また、容器とは、金属缶、PETボトル、紙容器などが用いられるがこれらに限定されない。また、容器詰紅茶飲料は、そのまま充填されていてもよく、必要に応じて殺菌処理が施されていてもよい。上記のうち、携帯が容易であり、栓の開閉が自由で軽量である点から、PETボトルが特に好ましい。
【0045】
容器詰飲料の場合、前述の加熱工程は、缶やPETボトル等の容器に充填した紅茶飲料に対して行ってもよい。殺菌工程において、加熱温度および加熱時間は、前述のとおりである。
【0046】
<血糖値低下作用>
本発明の紅茶飲料の血糖値低下作用とは、空腹時もしくは随時の少なくともいずれかの血糖値を低下させる作用を意味する。空腹時血糖値低下作用は、例えば、12時間絶食後の血糖値を分析することで評価することができる。随時血糖値低下作用は、例えば、給餌2時間後に測定した血糖値を分析することで評価することができる。また、HbA1c、血中インスリン値を分析することで評価をしてもよい。本発明は、特に随時血糖値低下作用を有する点に優れている。
【0047】
<抗肥満作用>
本発明の紅茶飲料を摂取することで得られる抗肥満作用とは、肥満を抑制するものであれば特に限定されるものではないが、体重増加抑制、血糖値上昇抑制及び血清トリグリセリド濃度上昇抑制効果等があげられる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
まず、紅茶葉40g(スリランカ産セイロン紅茶、三井農林株式会社製)から紅茶抽出液を抽出倍率20倍で抽出した。抽出条件は、85℃、7分とした。次に、この濃縮抽出により得られた紅茶抽出液をタンナーゼ0.2g(タンナーゼKTFH、キッコーマン株式会社製)により、温度25〜30℃の下で60分間処理した。このタンナーゼ処理の後に、L−アスコルビン酸ナトリウム1g、重炭酸ナトリウム0.3gでpHを調製し、全量を1000mLとなるよう純水で希釈し、想定飲用濃度の2倍となるよう調製した。さらに、135℃で30秒加熱する超高温殺菌を行い、紅茶飲料を得た。
【0050】
(実施例2)
タンナーゼ処理の後にキシリトール20g(ダニスコジャパン社製)及びスクラロース0.08g(三栄源エフ・エフ・アイ)を加えた以外は、実施例1と同様にした。
【0051】
(実施例3)
紅茶葉36g(ケニア産、三井農林株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0052】
(比較例1)
タンナーゼ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にした。
【0053】
(比較例2)
タンナーゼ処理を行わなかった以外は、実施例2と同様にした。
【0054】
(比較例3)
タンナーゼ処理を行わなかった以外は、実施例3と同様にした。
【0055】
1.紅茶飲料の分析
実施例1、及び、比較例1について、分析を行った。分析項目は、以下のとおり。結果は、表1に示す。なお、表1中、TF−1は、テアフラビン3−モノガレートであり、TF−1'は、テアフラビン3'−モノガレートであり、TF−2は、テアフラビン3,3'−ジガレートである。
(1)pH
pH計(製品名:pHメーターM−13、堀場製作所社製)により測定した。
(2)吸光度
褐色度(420nm)及び濁度(720nm)について、紫外・可視分光強度計(製品名:分光光度計U−1500、日立ハイテク社製)により測定した。
(3)Brix値(糖度)
糖度計(製品名:デジタル示差濃度計DD−7、アタゴ社製、またはデジタル屈折計RX−5000α、アタゴ社製)により測定した。
(4)ポリフェノール
試料の紅茶飲料を酒石酸鉄法によるタンニン値を350mg/100mlに調製した。その他分析項目については、アサヒ飲料社定法にて測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
分析の結果、表1及び図1で示すように、実施例1〜3では、ポリフェノール組成において非ガレート型カテキンの占める割合が多くなった。また、実施例1と実施例3とを比較すると、茶葉製法の違いによるポリフェノール組成の差が現れた。
【0058】
2.マウス長期投与試験
5週齢雄性C57BL/6Jマウスを5日間予備飼育した後、空腹時血糖値及び体重を測定し、対照群5匹(Con)、高脂肪食群6匹(HF)、比較例1の紅茶群5匹(CBT1)、実施例1の紅茶群6匹(CBT2)、イソケルシトリン(Isoquercitrin)群5匹(Iso)、テアフラビン(Theaflavin)群6匹(Thea)の6群に分けた。飼育期間は94日間とし、期間中体重と食餌摂取量は毎日測定した。また、本飼育1,4,7,9,12週目(本飼育1日目、22日目、44日目、59日目、81日目)に血糖値の測定を行い、本飼育12週目(本飼育81日目)に血漿トリグリセリド、血漿遊離脂肪酸(NEFA)の測定を行った。また、本飼育13週目(本飼育89〜91日目)にパルマスIIIN145×195mm(株式会社天然素材探索研究所)をマウスゲージの下に置き糞の採取を72時間行った。
マウスは94日間の本飼育の後、12時間絶食後開腹し、心臓より血液を採取した。次に肝臓、腎臓、腎周囲脂肪、精巣周囲脂肪、内臓(腸間膜)周囲脂肪を摘出した。摘出した臓器は直ちに測定用に調製するもの以外は液体窒素にて凍結し凍結保存(−84℃)した。血液サンプルはエッペンチューブに入れ1時間放置し、遠心分離(3000rpm、15℃、30分)を行い、得られた上清を血清として新たなエッペンチューブに移し、測定まで−84℃に保存した。試験結果は、平均値は±標準誤差で示し、各群間の有意差はFisherの最小有意差法(Fisher−LDS)を用いて検定した(以降すべての試験結果の各群間の有意差についても同様である)。
【0059】
飼料組成は表2に示した。CBT1群、CBT2群はカゼイン80gに紅茶30mlの割合で混合し、凍結乾燥したものをカゼインとし、高脂肪食と同じ組成のものを給餌した(紅茶カゼインは水分補正を行い20%とした)。Iso群にはIsoquercitrin粉末(製造元:EXTRASYNTHESE)を、Thea群にはTheaflavin粉末(三井農林株式会社製)をそれぞれサンプルとして高脂肪食に添加したものを給餌した。
【0060】
【表2】

【0061】
空腹時血糖値は12時間絶食後、メディセーフミニGR−102(テルモ株式会社)を用いて測定した。ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、解剖時に心臓より採血した血液で、マイクロマットIIHbA1cカートリッジ(Bio−Rad Laboratories)を用いて測定した。
血漿トリグリセリド,血漿NEFA(非エステル型脂肪酸)は12時間絶食後採血し、血液を30分放置後遠心分離(3000rpm、15℃、20分)を行い、得られた上清を血漿として測定した。血漿トリグリセリドは、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、酵素法(GPO・DAOS法)にて測定した。なお、血漿トリグリセリド濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。血漿NEFAはNEFA C−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、酵素法(ACS・ACOD法)にて測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0062】
血清トリグリセリド,血清NEFAは既述の保存した血清を用いて測定した。血清総コレステロール(TC)はコレステロールE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、酵素法(コレステロールオキシダーゼ・DAOS法)にて測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0063】
肝臓脂質、糞中脂質の抽出は、J.Folchらの方法(J.Folch,M.Less,and H.S.Stanly:A simple method for the isolation and purification of total lipids from animal tissues,J.Biol.Chem.,226,497−509(1957))にて行い、各脂質の測定は前述の方法にて行った。
【0064】
肝臓リン脂質(PL)は、リン脂質C−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、コリンオキシダーゼ・DAOS法にて測定した。
【0065】
糞中総胆汁酸は、総胆汁酸−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、酵素比色法にて測定した。
【0066】
肝臓脂質代謝系酵素活性の測定に用いるサンプルの調製は次のとおり行った。採血後直ちに摘出した肝臓から0.5gを切り分け、7倍量の0.25Mショ糖破砕溶液(pH7.2、1mM EDTA、3mM Tris−HCl含有)を加え、氷中でガラス製ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。このホモジネート液を遠心分離(1000rpm、4℃、10分)し、得られた上清をさらに遠心分離(9000rpm、4℃、10分)し上清と沈殿を分取した。この上清をさらに遠心分離(100000×g、4℃、60分)し、上清と沈殿を分取した。得られた上清はサイトゾル画分として肝臓における脂質代謝系酵素活性の測定に用いた。酵素活性をタンパク質mgで求めるため、A/G B−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、ビウレット法にてタンパク質を定量した。
【0067】
脂肪酸合成酵素活性は、セルに0.2Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)0.5ml、2.5mM アセチル−CoA0.2ml、10mM NADPH0.03ml、サンプル0.05ml、蒸留水0.41mlを順次入れ、パラフィルムでふたをしてセルを上下にして混合した後、30℃に保温した恒温セルホルダーに装着し、経時的に吸光度を測定(339nm、測定時間120秒)した。次に10mMマロニル−CoA 0.02mlを加えて混合した後、30℃に保温した恒温セルホルダーに装着し、再び経時的に吸光度を測定(339nm、測定時間120秒)した。また、ブランクは0.2Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)0.05mlを用い、サンプルの吸光度を補正した。分子吸光係数を6620M−1cm−1として、酵素活性を[式1]で求めた。
【0068】
[式1]
脂肪酸合成酵素(mmol/mg)=(吸光度の変化量/6620)×1000/サンプル中のタンパク質量(mg)
【0069】
カルニチンパルミトイル転移酵素活性の測定は、カルニチン依存的にアシル−CoAから遊離するCoAをジチオニトロ安息香酸(DTNB)と反応させ、生じる黄色の色素を経時的に測定する逆反応により活性値を求めた。すなわち、セルに116mM Tris−HClバッファー(pH8、2.5mM EDTA、0.2%TritonX−100、0.005mM DTNB含有)0.5ml、サンプル0.02ml、蒸留水0.45mlを順次入れ、パラフィルムでふたをしてセルを上下にして混合し、30℃に保温した恒温セルホルダーに装着し、経時的に吸光度を測定(412nm、Rate Time120秒)した。次に2mMパルミトイル−CoA0.02mlを加え混合し、経時的に吸光度を測定(412nm、Rate Time120秒)した。また、ブランクとして116mM Tris−HClバッファー(pH8、2.5mM EDTA、0.2%TritonX−100、0.005mM DTNB含有)0.02mlを用い、サンプルの吸光度を補正した。分子吸光係数を13600M−1cm−1として、酵素活性を[式2]で求めた。
【0070】
[式2]
カルニチンパルミトイル転移酵素(mmol/mg)=(吸光度の変化量/13600)×1000/サンプル中のタンパク質量(mg)
【0071】
血清レプチンはモリナガレプチン測定キット(株式会社森永生化学研究所)を用い、ELISA法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0072】
血清インスリンはレビスインスリン−マウス(Sタイプ)(株式会社シバヤギ)を用い、ELISA法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0073】
血清アディポネクチンはマウス/ラットアディポネクチンELISAキット(大塚製薬株式会社)を用い、ELISA法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0074】
遺伝子発現評価は、肝臓より抽出したRNAを用い、GeneSQUARE(登録商標)生活習慣病研究用マウス(倉敷紡績株式会社)にて分析し、DNAマイクロアレイ解析を行った。解析は、GenePix Pro 6.1.0.4(Axon CNS)にて行った。フィルター後、HF群を対照としてそれぞれ発現差解析を行った。Foldが2以上を誘導、0.5未満を抑制とした。なお、Thea群については分析を行わなかった。
【0075】
結果を図2〜20に示す。
図2に示すように、体重の推移はCBT1、CBT2群でHF群と比べて増加が少ない傾向が見られた。また、図3(a)に示すように、体重当たりの内臓(腸間膜)周囲脂肪はCBT2群で有意に低下した。図3(b)に示すように、腎臓周囲脂肪もまたCBT2群で低下したが有意差は見られなかった。図4に示すように、精巣周囲脂肪はCBT1,CBT2群でHF群に比べ低下傾向であった。脂肪の蓄積に関しては、全体的にCBT2群で低下の傾向を示した。
【0076】
図5で示すように、空腹時血糖値は、本飼育44日目まではそれぞれの群間で差は見られなかったが、59日目にCBT1群がHF群に比べて有意に低下した。本飼育81日目にはCBT1、CBT2群いずれも有意に低下した。図6は、総ヘモグロビン中のヘモグロビンA1cの割合を示す図である。
【0077】
図7(a)は、血清脂質に関し、トリグリセリド(TG)の結果を示す。図7(b)で示すように、総コレステロール(TC)はサンプル群での有意差は見られなかった。図8で示すように、血清NEFAはCBT1群で有意に低下し、CBT2群で低下傾向が見られた。
【0078】
図9(a)で示すように、肝臓脂質に関しては、総脂質はCBT1,CBT2群で有意に低下した。図9(b)で示すように、トリグリセリド(TG)はCBT1群で有意に低下し、CBT2群で低下傾向が見られた。図10(a)で示すように、総コレステロール(TC)はCBT2群で有意に低下し、CBT1群で低下傾向が見られた。図10(b)で示すように、NEFAはCBT2群で有意に低下し、CBT1群で低下傾向が見られた。図11で示すように、リン脂質(PL)はすべてのサンプル群で有意に低下した。
【0079】
図12(a)で示すように、糞中脂質排泄量に関しては、総脂質はCBT2群がHF群よりも高い傾向にあった。図12(b)は、トリグリセリド(TG)の結果を示す。図13(a)で示すように、総コレステロール(TC)はCBT2群がHF群よりも高い傾向にあった。図13(b)で示すように、総胆汁酸はCBT2群がHF群よりも高い傾向にあった。
【0080】
図14(a)で示すように、肝臓脂質代謝系酵素活性に関しては、脂肪酸合成酵素活性の結果を示す。図14(b)で示すように、カルニチンパルミトイル転移酵素活性はCBT2群で高い傾向にあった。
【0081】
ホルモン、サイトカインに関しては、図15(a)で示すように、血清レプチンはCBT2群で低下傾向が見られた。図15(b)で示すように、インスリンもCBT2群で低下傾向が見られた。図16で示すように、アディポネクチンは群間差がなかった。
【0082】
遺伝子発現解析に関しては、脂質代謝関連遺伝子として、紅茶群でAPOA2(apolipoprotein A−II)、FABP1(fatty acid binding protein 1,liver)が発現抑制されており(図17(a)、(b))、APOC3(apolipoprotein C−III)が発現抑制の傾向が見られた(図18(a))。また、糖質代謝関連遺伝子として、紅茶群でGCK(glucokinase)が発現抑制されており(図18(b))、PTEN(phosphatase and tensin homolog)、RBP4(retinol binding protein 4,plasma)で発現抑制の傾向が見られた(図19(a)、(b))。その他、代表的なところでは、紅茶群でFBP1(fructose bisphosphatase 1)が発現誘導、NFKBIA(nuclear factor of kappa light polypeptide gene enhancer in B−cells inhibitor, alpha)が発現抑制されていた(図20(a)、(b))。
【0083】
3.ラット長期投与試験
7週齢雄性GKラットを5日間予備飼育した後、空腹時血糖値及び体重を測定し、各群5頭ずつ対照群(Con)、比較例1の紅茶群(CBT1)、実施例1の紅茶群(CBT2)の3群に分けた。また、GKラットの対照群として、7週齢雄性Wistarラット(Wistar)を5頭用いた。飼育期間は39日間とし、期間中体重と食餌摂取量は毎日測定した。また、週に1度空腹時血糖値を測定し、本飼育4,6週目(本飼育26日目、38日目)に随時血糖値の測定を行った。また、本飼育4,5週目(本飼育22、34日目)にHbA1cの測定を行った。また、本飼育4,6週目(本飼育27、38日目)に10時間絶食の後、耐糖能試験を行った。さらに、本飼育5週目(本飼育32、33日目)に、代謝ケージを用いて尿の採取を44時間行った。
ラットは39日間の本飼育の後、12時間絶食後開腹し、心臓より血液を採取した。次に肝臓、腎臓、精巣周囲脂肪、内臓(腸間膜)周囲脂肪を摘出した。摘出した臓器は直ちに測定用に調製するもの以外は液体窒素にて凍結し凍結保存(−84℃)した。血液サンプルの調製方法は、図21に示した。TBARSは採取した血液0.1mlを0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液1.9mlに氷中で加え、静かに攪拌した後遠心分離(3000rpm、15℃、30分)し上清を得た。この上清0.5mlを共栓付き褐色試験管に移し測定まで−84℃凍結保存した。また、このようにして得られた赤血球画分に0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液を1.9ml加え、攪拌した後、遠心分離(3000rpm、15℃、15分)をして再度赤血球画分を得た。同操作を3回繰り返し、洗浄した赤血球画分に蒸留水を2.9ml加え攪拌し、溶血赤血球を得た。この溶血赤血球をエッペンチューブに移し測定まで−84℃凍結保存した。
【0084】
飼料組成は表3に示した。CBT1群、CBT2群はカゼイン80gに紅茶30mlの割合で混合し、凍結乾燥したものをカゼインとし、高脂肪食と同じ組成のものを給餌した(紅茶カゼインは水分補正を行い20重量%とした)。
【0085】
【表3】

【0086】
空腹時血糖値は本飼育1、8、15、22、37、40日目において、12時間絶食後に測定した。また、耐糖能試験は10時間絶食後に、40%(w/v)D−グルコース溶液を、グルコース濃度が体重1kg当たり2gとなるようにゾンデを用いて経口投与した。経口投与の直前を0分とし、投与15、30、60、120分後の血糖値を測定した。血糖値の測定方法は、メディセーフミニGR−102(テルモ株式会社製)を用いて測定した。
【0087】
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、本飼育4,5週目(本飼育22、34日目)に採血した血液で、マイクロマットIIHbA1cカートリッジ(Bio−Rad Laboratories)を用いて測定した。血清トリグリセリド、血清NEFA及び血清HDLコレステロール(HDL−C)は、食後12時間絶食後採血し、「2.マウス長期投与試験」と同様に処理した。血清トリグリセリド、血清NEDAは、「2.マウス長期投与試験」と同様の方法で測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。血清HDLコレステロール(HDL−C)は、コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、コレステロールオキシダーゼ・DAOS法にて測定した。動脈硬化指数は、[式3]にて求めた。
【0088】
[式3]
動脈硬化指数=(TC−HDL−C)/HDL−C
【0089】
肝臓脂質の抽出は、J.Folchらの方法(J.Folch,M.Less,and H.S.Stanly:A simple method for the isolation and purification of total lipids from animal tissues,J.Biol.Chem.,226,497−509(1957))にて行い、各脂質の測定は前述の方法にて行った。
【0090】
血清過酸化脂質(血清TBARS)は、解剖時に心臓より採血した血液を用い八木ら(八木国男:ビタミン,49,403(1975))の蛍光法(TBA法)に従い、脂質の過酸化に伴って生成するチオバルビツール酸反応物(TBARS)を測定した。すなわち、凍結保存しておいた上記の採血した血液0.5mlに、1/12N硫酸4.0mlを加えて混合した後、10%(w/v)リンタングステン酸0.5mlを加えて攪拌した。室温で5分放置した後、遠心分離(3000rpm、15℃、10分)し、上清を捨て、残った上清をろ紙で吸い取り除去した。この沈殿に1/12N硫酸2.0ml、10%(w/v)リンタングステン酸0.3mlを加え、白い沈殿を十分に懸濁させた。さらに遠心分離(3000rpm、15℃、10分)し、前述した方法で上清を除去後、蒸留水4.0mlを加えて十分に懸濁し、以後の操作に用いた。なお、スタンダードには5nmol/ml(生理食塩水:0.9%(w/v)塩化ナトリウム溶液)1,1,3,3テトラエトキシプロパン溶液0.1mlに蒸留水3.9mlを加えたものを、ブランクには蒸留水4.0mlを用い、サンプルと同様に操作した。次にTBA試薬(0.67%(w/v)2−チオバルビツール酸溶液)1.0mlを加え、十分混合した。その後、沸騰湯浴中(100℃)で60分間加熱し、流水下で5分間冷却した。ついで、n−ブタノール5.0mlを加え、振とうし抽出を行った。これを遠心分離(2000rpm、15℃、10分)し、得られた上清(n−ブタノール層)の蛍光を励起波長(Ex)515nm、蛍光波長(Em)553nmで測定した。なお、TBARS値は[式4]にて求めた。
【0091】
[式4]
血清TBARS(nmol/ml of blood)=0.5×(f/F)×(1/0.1)×(2.0/0.5)
0.5:スタンダード(nmol/ml)
f/F:サンプルの蛍光値/スタンダードの蛍光値
(2.0/0.5):(生理食塩水+血液)/上清
【0092】
肝臓過酸化脂質(肝臓TBARS)は、解剖時に摘出した肝臓を内山、三原らの方法(M.Uchiyama and M.Mihara:Determination of malonaldehyde precursor in tissue by thiobarbituric acid test,Anal.Biochem.,86,271−278(1978))によって調製し、前述のTBA法に従い、脂質の過酸化に伴って生成するチオバルビツール酸反応物(TBARS)を測定した。すなわち、凍結保存しておいた肝臓0.5gを5倍量の0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.4、1mM EDTA含有)を加え、氷中でテフロン(登録商標)製ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。さらに、2倍量の2.3%(w/v)KClを添加し、ホモジナイズした。このホモジネート液を肝臓過酸化脂質測定試料とした。この試料0.5mlを共栓付き褐色試験管に入れ、1%(w/v)リン酸0.3ml、TBA試薬(0.67%(w/v)2−チオバルビツール酸溶液)1.0mlを加え、十分混合した。その後、沸騰湯浴中(100℃)で45分間加熱し、流水下で5分間冷却した。ついで、n−ブタノール4.0mlを加え、激しく攪拌し抽出を行った。これを遠心分離(2000rpm,15℃,10分)し、得られた上清(n−ブタノール層)の蛍光を励起波長(Ex)515nm、蛍光波長(Em)553nmで測定した。なお、スタンダードには10nmol/ml(生理食塩水)1,1,3,3テトラエトキシプロパン溶液を、ブランクには生理食塩水をそれぞれの試料の代わりに用い、同様に操作したものを使用した。なお、TBARS値は[式5]にて求めた。
【0093】
[式5]
肝臓TBARS(nmol/ml of liver)=(f/F)×10×(9.0/0.5)×(1/用いた肝臓重量)
f/F:サンプルの蛍光値/スタンダードの蛍光値
10:標準物質nmol
(9.0/0.5):ホモジネート全量/測定に用いたホモジネート量
【0094】
肝臓における抗酸化酵素活性は、前述の肝臓TBARS測定の際に調製したホモジネート液を用いてサンプル調製を行った。このホモジネート液から繊維状物質を除去するために遠心分離(1000rpm(150×g)、4℃、3分)した。その上清を遠心分離(3000rpm(1400×g)、4℃、10分)し、細胞破片等を除去した。この上清を氷中で超音波処理(50W、2分)し、さらに、遠心分離(9500rpm(14000×g)、4℃、20分)し、得られた上清を肝臓における抗酸化酵素活性測定サンプルとした。さらに、酵素活性をタンパク質mgで求めるために、A/G B−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、ビウレット法にてタンパク質を定量した。
カタラーゼ活性はHの分解に基づく240nmの吸光度の減少を、紫外部吸光法(金田尚志、植田伸夫編「過酸化脂質実験法」医師薬出版、B.Chance and A.C.Maehly:Assay of catalase and peroxidase,Vol.2,764−775,Academic Press(1955))で経時的に測定することによって求めた。すなわち、セルに50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)1.0ml、30mM H0.5ml、サンプル20μlを入れ、パラフィルムでふたをしてセルを上下して混和した後、スペクトルフォトメーターで経時的に吸光度を測定(240nm,Rag Time:1秒,Rate Time:15秒)した。50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)、30mM Hは25℃でプレインキュベートしたものを用いた。なお、ブランクとしてサンプルの代わりに50mMリン酸ナトリウムバッファー20μlを用い、サンプルの吸光度を補正した。カタラーゼ活性は、1分間にHを1μmol分解する酵素量を1Uとして表示し、タンパク質mg当たりの酵素活性として示した。なお、カタラーゼ活性は[式6]にて求めた。
【0095】
[式6]
カタラーゼ活性(U)
=1分間当たりの吸光度変化量/H 1μmolに相当する吸光度
カタラーゼ活性(U/mg of protein)
=カタラーゼ活性(U)/(測定に用いたサンプル中のタンパク質量(mg)
【0096】
グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH−Px)活性は、グルタチオンレダクターゼ(GSSG−R)が作用する際のNADPHの減少を利用し、GSSG−Rの作用と共役するGSH−Pxの活性を測定した(R.A.Lawrence and R.F.Burk:Glutatione peroxidase activity in selenium deficient rat liver,Biochem.Biophys.Res.Commum.,71,952−958(1990)、何普明、安本教傳、老化促進マウス赤血球の細胞齢によるグルタチオンペルオキシダーゼ活性と酸化タンパク質レベルの変化、日本栄養・食糧学会誌、Vol.43,2,121−125(1990))。すなわち、セルに25℃でプレインキュベートした0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0,4mM EDTA含有)1.0ml、0.01Mアジ化ナトリウム0.2ml、0.01M還元型グルタチオン(GSH)0.2ml、1.5mM NADPH0.2ml、蒸留水1.0mlを順次入れ、パラフィルムでふたをしてセルを上下して混合した。次に、0.3%(w/v)GSSG−R(酵母製 200U/mg)0.2ml、サンプル20μl、70%(w/v)tert−ブチルヒドロペルオキシド20μlを加え、同様に混合した後、スペクトルフォトメーターで経時的に吸光度を測定(340nm、Rag Time:5秒、Rate Time:20秒)した。また、tert−ブチルヒドロペルオキシド自体によるNADPHの減少も無視できないため、ブランクとして、サンプルの代わりに0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0、4mM EDTA含有)20μlを用い、サンプルの吸光度を補正した。GSH−Pxの活性は1分間にNADPHを1μmol分解する酵素量を1Uとして表示し、タンパク質mg当たりの酵素活性として示した。なお、GSH−Px活性は[式7]にて求めた。
【0097】
[式7]
GSH−Px活性(U)=0.482×1分間当たりの吸光度変化量
=0.482×(サンプルの吸光度変化量−ブランクの吸光度)
0.482:1μmolのNADPH減少定数=(1/NADPH 1μmolに相当する吸光度)
GSH−Px活性(U/mg of protein)
=GSH−Px活性(U)/(測定に用いたサンプル中のタンパク質量(mg)
【0098】
血清レプチンはラットレプチンELISA kit ワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、ELISA法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0099】
血清インスリンはレビスインスリンキット(ラット用−T)(株式会社シバヤギ)を用い、ELISA法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0100】
血清アディポネクチンは、マウス/ラットアディポネクチンELISAキット(大塚製薬株式会社)を用い、ELISA法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0101】
血清TNF−αはTumour necrosis factor α rat(RPN2744)(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を用い、ELISA法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
【0102】
尿はメスシリンダーでトータルの尿量を量り、ろ過(TOYO NO.2)した。さらに、1ml量り取りAmincon Ultraで限外ろ過(8000rpm、4℃、20分)した尿を検体とした。
尿中のクレアチニンはクレアチニン−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、Jaffe法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
尿中のアルブミンはA/G B−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用い、BCG法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。
尿中の8−OHdGは、New 8−OHdG Check(日本老化制御研究所)を用い、ELISA法により測定した。なお、濃度は、標準液を用いて作成した標準曲線を用いて算出した。また、8−OHdG濃度からクレアチニンあたりの8−OHdGを[式8]にて求めた。
【0103】
[式8]
8−OHdG(ng/クレアチニン)=(8−OHdG濃度(ng/ml)×44時間で排出した尿量(ml))/クレアチニン濃度(mg/44時間)
【0104】
遺伝子発現評価は、肝臓より抽出したRNAを用い、44000プローブのWhole Rat Genomeチップ(Agilent Technologies)にて分析し、DNAマイクロアレイ解析を行った。解析はGene Spring(Agilent Technologies)にて行った。44000プローブからフィルター後24452プローブを解析対象とし、Con群を対照としてそれぞれ発現差解析を行った。発現差解析は、(i)統計的解析(T−Test、p<0.01)、(ii)(i)で有意差ありのものについてFold Change解析(倍率比較、2倍以上)を行い、(ii)で抽出されたものについて発現差ありと判定した。発現差ありと判定した各プローブセットに関して、Fisher's Exact Testを用いたGene Ontology解析を行った。
【0105】
結果を図22〜39に示す。図22で示すように、体重の増減推移はCBT1、CBT2群で対照群と比べて増加が少ない傾向が見られた。図23(a)で示すように、体重当たりの内臓(腸間膜)周囲脂肪は有意な差は見られなかった。図23(b)で示すように、精巣周囲脂肪は対照群とCBT1、CBT2群との差はなく、Wistar群が高い値を示した。
【0106】
図24で示すように、空腹時血糖値は、本飼育22日目にCBT2群がCon群に比べて有意に低下した。本飼育27日目、40日目にもCBT1群、及び、CBT2群で低い傾向が見られた。一方、随時血糖値は測定2回ともCBT2群で有意に低下した(図25)。HbA1cは、飼育4週目及び5週目において、Wistar群で低い値を示したが、CBT1群、及び、CBT2群とCon群との差は見られなかった(図26(a)、(b))。
【0107】
図27で示すように、耐糖能試験は本飼育4週目、6週目とも紅茶群(CBT1群、CBT2群)とCon群の差は見られなかった。
【0108】
図28(a)で示すように、血清脂質に関しては、CBT1群、及び、CBT2群とCon群とを比べてトリグリセリド(TG)は低下傾向が見られた。図28(b)で示すように、総コレステロール(TC)は、CBT1群、及び、CBT2群はCon群と比べて有意に低下し、CBT1群では1%水準で有意な低下が見られた。動脈硬化指数は、Wistar群で有意に高く、CBT1群、及び、CBT2群は、Con群と比べて低下傾向が見られた(図29)。HDL−C、NEFAについては有意な差は見られなかった(図30(a)、(b))。
【0109】
図31(a)、(b)で示すように、肝臓脂質に関しては、総脂質、NEFAについては有意な差は見られなかった。図32(a)で示すように、トリグリセリド(TG)はWistar群で有意に高く、CBT1群、及び、CBT2群とCon群との間に差は見られなかった。総コレステロール(TC)はCBT1群でCon群と比べて有意に低下した(図32(b))。PLはWistar群で有意に低く、紅茶群とCon群の差は見られなかった(図33)。
【0110】
過酸化脂質に関しては、血清TBARSはCBT2群でCon群と比べて有意に低下した(図34(a))。肝臓TBARSはCBT2群でCon群と比べて低下傾向が見られた。(図34(b))
【0111】
肝臓抗酸化酵素活性に関しては、図35(a)で示すように、カタラーゼ活性はCBT2群でCon群と比べて高い傾向が見られた。図35(b)で示すように、GSH−Px活性についてもCBT2群でCon群と比べて高い傾向が見られた。
【0112】
ホルモン、サイトカインに関しては、図36(a)で示すように、血清レプチンはWistar群で有意に低い値を示したが、CBT1群、及び、CBT2群とCon群との間で差は見られなかった。図36(b)で示すように、インスリンは、CBT1群、及び、CBT2群でCon群と比べて低下傾向が見られた。図37(a)で示すように、アディポネクチンはCBT2群でCon群と比べて高い傾向が見られた。図37(b)で示すように、TNF−αについては差が見られなかった。
【0113】
尿タンパクに関しては、図38(a)で示すように、アルブミンはWistar群で低く、CBT1群、及び、CBT2群とCon群の差は見られなかった。クレアチニン、8−OHdGについては群間差が見られなかった(図38(b)、図39)。
【0114】
遺伝子発現解析に関しては、CBT1群について44プローブに発現差が見られ、上位6のGO Termには、angiotensin type I receptor activity, bradykinin receptor activity, feeding behavior, metallopeptidase activity, drinking behavior, sperm capacitationがあがった。CBT2群については26プローブに発現差が見られ、上位6のGO Termには、extracellular ligand−gated ion channel activity, serotonin−activated cation−selective channel activity, ligand−gated ion channel activity, ligand−gated channel activity, neurotransmitter receptor activity, postsynaptic membraneがあがった。Wistar群については623プローブに発現差が見られ、上位6のGO Termには、retinoid metabolic process, diterpenoid metabolic process, antigen processing and presentation, hormone metabolic process, MHC protein complex, MHC class I protein complexがあがった。CBT1群とCBT2群との間で発現差があり、かつ重複しているものは3つあり、うち2つはESTであった。残り1つはCon群に対してupしており、NADH Dehydrogenaseであった。
【0115】
以上の結果から、紅茶ポリフェノール飲料摂取により、糖と同時摂取したときに糖の吸収を抑制することが示唆され、その効果には、エステラーゼにより分解された紅茶ポリフェノール分解物が関与していることが推察された。したがって、紅茶ポリフェノール飲料摂取により、高脂肪食によって引き起こされる糖尿病を予防又は治療できることが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する際および/または抽出後にエステラーゼで処理した紅茶抽出物から製造され、ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料。
【請求項2】
前記エステラーゼが、タンナーゼおよびクロロゲン酸エステラーゼのいずれかまたは両方を含む、請求項1に記載の紅茶飲料。
【請求項3】
ガレート型カテキンとガレート型テアフラビンとの総量に対する非ガレート型カテキンと非ガレート型テアフラビンとの総量の比率が、2以上15以下である、請求項1または2に記載の紅茶飲料。
【請求項4】
高甘味度甘味料もしくは糖アルコールのいずれか又は両方を含有する、請求項1乃至3いずれか1項に記載の紅茶飲料。
【請求項5】
前記紅茶飲料の総ポリフェノールとして、タンニン量に換算して60mg/100ml以上250mg/100ml以下含有する、請求項1乃至4いずれか1項に記載の紅茶飲料。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項に記載の紅茶飲料を飲料用容器に充填してなる容器詰飲料。
【請求項7】
糖尿病を予防又は治療するために用いられる請求項1乃至5いずれか1項に記載の紅茶飲料。
【請求項8】
紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する工程と、
前記紅茶抽出液を抽出する前記工程の際および/または前記紅茶抽出液を抽出する前記工程の後に前記紅茶抽出物をエステラーゼで処理する工程と、
を含み、
ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料を製造する方法。
【請求項9】
前記エステラーゼが、タンナーゼおよびクロロゲン酸エステラーゼのいずれか又は両方を含む、請求項8に記載の紅茶飲料を製造する方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図2】
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【図5】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−183010(P2012−183010A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47349(P2011−47349)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(596126465)アサヒ飲料株式会社 (84)
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【Fターム(参考)】