紅麹含有パン
【課題】抗酸化作用を有する紅麹含有パンを提供すること。
【解決手段】紅麹を配合した、抗酸化作用を有する紅麹含有パン。抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、紅麹を水で膨潤させ、この紅麹懸濁液をパン製造原料中に添加し混合して製造する。
【効果】抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、日常的に摂取可能であり利便性も高くかつ多量に摂取可能である。従って、このような抗酸化物質を含有された紅麹含有パンの摂取量を増やすことによって、活性酸素による酸化ストレスに起因する疾病の予防に有用であると考えられる。
【解決手段】紅麹を配合した、抗酸化作用を有する紅麹含有パン。抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、紅麹を水で膨潤させ、この紅麹懸濁液をパン製造原料中に添加し混合して製造する。
【効果】抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、日常的に摂取可能であり利便性も高くかつ多量に摂取可能である。従って、このような抗酸化物質を含有された紅麹含有パンの摂取量を増やすことによって、活性酸素による酸化ストレスに起因する疾病の予防に有用であると考えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紅麹含有パンに関する。
【背景技術】
【0002】
紅麹菌を穀類等に繁殖させた紅麹は、紅酒,紅露酒,紅乳腐などの醸造原料,食品類や肉類の着色および保存剤として広く利用されている。紅麹は血圧降下作用があり(特開昭61-197524,62-298598, 特公平3-31170)、コレステロール低下物質であるモナコリンKを生産することが発見され(特公昭59-25599)、さらに紅麹自体にもコレステロール低下作用があること(特開昭60-44914)、血糖値低下作用(特開昭58-43783, 特公昭59-25599)、抗腫瘍プロモーション作用、抗菌作用、免疫抑制作用など多岐にわたる生理活性が報告されている。
【0003】
また、米に紅麹菌を繁殖させた米紅麹の紅麹抽出液中に含まれるジメルミン酸(dimerumic acid)に抗酸化作用を有することが報告されている(Free Radical Biology Medicine, 28(6), 999-1004 (2002), Biochemical Pharmacorology,63,1019-1026 (2002))。生活習慣病には活性酸素やフリーラジカルが深く関わり、生体の酸化的障害が生活習慣病を引き起こすことが明らかになっている。活性酸素は、生体内の代謝過程で産生されるだけでなく、大気汚染、水質汚染、電磁波、心的ストレスなど様々な要因により生体内で発生すると考えられており、現代人は常に活性酸素による酸化ストレスにさらされていると言っても過言ではない。近年、抗酸化機能食品を摂取し、生活習慣病の予防、治療、健康維持・増進を図ろうとの関心が高まってきた。また、機能性食品素材としての開発など米の高度利用化を目的として、白米にはないタンニン系またはアントシアニン系色素を含む有色米の抗酸化作用も知られている (Journal of Agriculture and Food Chemistry, 50,7524-7529, (2002) ,日本食品科学工学会誌, 49(8),540-543 (2002))。このため、紅麹の持つ抗酸化作用を利用した種々の機能性食品の開発が求められている。
【0004】
紅麹を含有するパンに関しては、特開平3−4729に、小麦粉加工物を培地として製麹された紅麹を含有するパンが開示されている。しかしながら、これまでに、紅麹含有パンの形態において抗酸化作用があることを報告した例は全く見当たらない。
【特許文献1】特開平3−4729
【非特許文献1】Free Radical Biology Medicine, 28(6), 999-1004 (2002)
【非特許文献2】Biochemical Pharmacorology,63,1019-1026 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗酸化作用を有する紅麹含有パンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当発明者らは、紅麹含有パンについて種々の鋭意研究を重ねた結果、その作用機構は不明であるが、紅麹含有パンにすぐれた抗酸化作用を有し、抗酸化活性の高い食品素材の開発に有益であることを見出したものである。すなわち、本発明は、紅麹を配合したことを特徴とする、抗酸化作用を有する紅麹含有パンを提供する。本発明はまた、抗酸化作用を有する紅麹含有パンの製造方法であって、紅麹を水で膨潤させ、この紅麹懸濁液をパン製造原料中に添加し混合して製造することを特徴とする方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、日常的に摂取可能であり利便性も高くかつ多量に摂取可能である。従って、このような抗酸化物質を含有された紅麹含有パンの摂取量を増やすことによって、活性酸素による酸化ストレスに起因する疾病の予防に有用であると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、紅麹を用いることを特徴とする。紅麹は、加熱殺菌処理後に乾燥させて粉末としたものであっても、殺菌処理していないものであってもよい。紅麹を配合して小麦粉とともに発酵させることにより、パン焼成の工程を経ているにもかかわらず、抗酸化作用をもつ紅麹含有パンが得られることは驚くべきことである。
【0009】
パンの製造原料としては、一般に用いられる小麦粉(強力粉)とパン酵母(ドライイースト)を用いる。さらに、パン製造材料として通常用いられる材料、例えば、塩、バター、砂糖、ベーキングパウダー、ショートニング、油脂、香味料等を適宜加えることができる。
【0010】
紅麹は、紅麹菌(Monascus)を米、白米、大豆などで培養した後、低温(例えば35〜42℃)で乾燥させて粉末化したものを用いる。紅麹の配合量は、小麦粉に対して固形分比で0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%である。紅麹は固体のまま配合してもよいが、好ましくは紅麹を水で膨潤させた後に配合する。膨潤は室温で1時間程度で十分である。紅麹を膨潤させた後、水と紅麹を含む懸濁液を、小麦粉、水、ドライイーストなどを含むパン製造原料中に添加し、混合する。次に、通常の方法にしたがって、30〜35℃で発酵と混捏とを適宜繰り返すことにより、パン種を発酵させる。発酵の温度と時間は、原材料、製造環境、製品の嗜好性などにより適宜選択することができる。例えば、下記の実施例では、28℃で予備発酵15分、混捏13分、28℃で1次発酵60分、ガス抜き、28℃で2次発酵30分、ガス抜き、32℃で成形発酵50分の工程を用いている。次に、発酵したパン種を焼成する。焼成温度は160〜220℃の間で適宜選択することができる。このようにして、紅麹含有パンを製造することができる。
【0011】
このようにして得られる紅麹含有パンは、すぐれた抗酸化作用を有するため、ヒトの酸化的障害状態を有効に改善する効果を有する。
【0012】
本発明の抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、乾燥食品の形態や粉末の形態とすることができ、また、その加工物を食品添加物の形態として各種の食品に添加することもできる。さらに、各種疾病、生活習慣病の改善剤のような医薬品の形態でも使用でき、種々の原因から由来するヒトの酸化的障害の改善に有効である。
【0013】
本発明の抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、食品として、食品添加物として、あるいは、医薬としてヒトに摂取させ、あるいは経口投与させることにより、すぐれた抗酸化作用を発揮して、フリーラジカルや活性酸素から細胞や臓器を守る働きをし、ヒトの酸化的障害状態を有効に改善する。しかも紅麹は、一般に、古来より食用として安全が保証されている物質であるため、摂取量ないし投与量に特に制限はなく、改善すべき酸化ストレスに応じて広範に変化させることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により何等限定されるものではない。
【0015】
紅麹含有パンの製造
紅麹を水190mLに1時間膨潤させた後、表1に示す組成のパン製造原料に紅麹水溶液として添加混入した。この原料を12分混捏し、予備発酵28℃で15分行い、さらに混捏を13分した。その後、1次発酵28℃で60分行い、ガス抜き後、2次発酵28℃で30分行い、ガス抜き後、成形発酵32℃で50分行い、焼成は190℃で40分行った。なお、紅麹をそのまま粉末で添加するとパンに紅麹の粉末が均一に混在されず、焼成後のパンに色むらが生じ、食味を著しく低下させるものであった。
【0016】
【表1】
【0017】
抗酸化能の評価
かくして得られた紅麹含有パン、ならびに同様にして製造した0.5%、1.0%紅麹含有パンを凍結乾燥し、ミキサーにて粉末状とした。これを活性酸素種(ROS)を特異的・定量的に測定可能な電子スピン共鳴(ESR)法を用い、二酸化チタン(TiO2)を混合後、紫外線(UV365nm)照射により生成するヒドロキシルラジカルをESR法により弁別・定量した結果から抗酸化能の評価を行った。
【0018】
その結果、0.5%、1.0%、2.0%、5.0%および10.0%紅麹含有パンは、紅麹無添加パンと比較して濃度依存的に顕著な抗酸化作用が認められた(図1)。これらの紅麹含有パン中の紅麹含有量は2.0〜10.0%であり、日常無理なく摂取可能な量であって、その摂取は抗酸化作用にきわめて有効である。なお、紅麹含有パンの焼き上げにおいて190℃もの高温をかけたにもかかわらず、得られた紅麹含有パンが抗酸化作用を有していることが示された。
【0019】
嗜好評価
得られた紅麹含有パンの嗜好の比較を行った。パンの中心部より縦40×横40×高さ10mm3の試料を切り出し、26℃のパネル用個室にて評価を行った。パネルは20〜30歳台の健常な女性40人とし、調査項目はきめ、色、香り、硬さ、味、食感、総合評価の7項目とし、順位法によって嗜好の評価を行った。結果は順位グラフを描き、有意水準5%の棄却楕円を用いて有意性の検定を行った。結果を図2〜4に示す。
【0020】
紅麹含有パンの1日経過したパンの嗜好評価の結果は、きめ、食感、味、香り、総合評価において、0.5%および1.0%紅麹含有パンの嗜好が高く評価され、味では0.5%、1.0%および2.0%紅麹含有パンの嗜好が高く評価された。3日経過したパンでは、食感、総合評価において、0.5%、1.0%および2.0%紅麹含有パンの嗜好が評価され、きめ、色では0.5%紅麹含有パンの嗜好が評価された。香りは2.0%紅麹含有パンの嗜好が評価された。6日経過したパンでは、食感、総合評価において、0.5%、1.0%および2.0%紅麹含有パンの嗜好が高く評価され、色では、0.5%紅麹含有パンの嗜好が評価された。
【0021】
日数の経時変化による嗜好評価では、硬さおよび味において、1.0%、2.0%、5.0%および10.0%紅麹含有パンは3日経過したパンにおいても嗜好は高く評価された。色では、2.0%、5.0%および10.0%紅麹含有パンにおいて3日経過したパンでも嗜好は高く評価された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の紅麹含有パンは優れた抗酸化能を有するので、これらの効果を期待した機能性食品として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の抗酸化能の評価の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、焼成日から1日経過した紅麹含有パンの嗜好評価を示すグラフである。
【図3】図3は、焼成日から3日経過した紅麹含有パンの嗜好評価を示すグラフである。
【図4】図4は、焼成日から6日経過した紅麹含有パンの嗜好評価を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は紅麹含有パンに関する。
【背景技術】
【0002】
紅麹菌を穀類等に繁殖させた紅麹は、紅酒,紅露酒,紅乳腐などの醸造原料,食品類や肉類の着色および保存剤として広く利用されている。紅麹は血圧降下作用があり(特開昭61-197524,62-298598, 特公平3-31170)、コレステロール低下物質であるモナコリンKを生産することが発見され(特公昭59-25599)、さらに紅麹自体にもコレステロール低下作用があること(特開昭60-44914)、血糖値低下作用(特開昭58-43783, 特公昭59-25599)、抗腫瘍プロモーション作用、抗菌作用、免疫抑制作用など多岐にわたる生理活性が報告されている。
【0003】
また、米に紅麹菌を繁殖させた米紅麹の紅麹抽出液中に含まれるジメルミン酸(dimerumic acid)に抗酸化作用を有することが報告されている(Free Radical Biology Medicine, 28(6), 999-1004 (2002), Biochemical Pharmacorology,63,1019-1026 (2002))。生活習慣病には活性酸素やフリーラジカルが深く関わり、生体の酸化的障害が生活習慣病を引き起こすことが明らかになっている。活性酸素は、生体内の代謝過程で産生されるだけでなく、大気汚染、水質汚染、電磁波、心的ストレスなど様々な要因により生体内で発生すると考えられており、現代人は常に活性酸素による酸化ストレスにさらされていると言っても過言ではない。近年、抗酸化機能食品を摂取し、生活習慣病の予防、治療、健康維持・増進を図ろうとの関心が高まってきた。また、機能性食品素材としての開発など米の高度利用化を目的として、白米にはないタンニン系またはアントシアニン系色素を含む有色米の抗酸化作用も知られている (Journal of Agriculture and Food Chemistry, 50,7524-7529, (2002) ,日本食品科学工学会誌, 49(8),540-543 (2002))。このため、紅麹の持つ抗酸化作用を利用した種々の機能性食品の開発が求められている。
【0004】
紅麹を含有するパンに関しては、特開平3−4729に、小麦粉加工物を培地として製麹された紅麹を含有するパンが開示されている。しかしながら、これまでに、紅麹含有パンの形態において抗酸化作用があることを報告した例は全く見当たらない。
【特許文献1】特開平3−4729
【非特許文献1】Free Radical Biology Medicine, 28(6), 999-1004 (2002)
【非特許文献2】Biochemical Pharmacorology,63,1019-1026 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗酸化作用を有する紅麹含有パンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当発明者らは、紅麹含有パンについて種々の鋭意研究を重ねた結果、その作用機構は不明であるが、紅麹含有パンにすぐれた抗酸化作用を有し、抗酸化活性の高い食品素材の開発に有益であることを見出したものである。すなわち、本発明は、紅麹を配合したことを特徴とする、抗酸化作用を有する紅麹含有パンを提供する。本発明はまた、抗酸化作用を有する紅麹含有パンの製造方法であって、紅麹を水で膨潤させ、この紅麹懸濁液をパン製造原料中に添加し混合して製造することを特徴とする方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、日常的に摂取可能であり利便性も高くかつ多量に摂取可能である。従って、このような抗酸化物質を含有された紅麹含有パンの摂取量を増やすことによって、活性酸素による酸化ストレスに起因する疾病の予防に有用であると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、紅麹を用いることを特徴とする。紅麹は、加熱殺菌処理後に乾燥させて粉末としたものであっても、殺菌処理していないものであってもよい。紅麹を配合して小麦粉とともに発酵させることにより、パン焼成の工程を経ているにもかかわらず、抗酸化作用をもつ紅麹含有パンが得られることは驚くべきことである。
【0009】
パンの製造原料としては、一般に用いられる小麦粉(強力粉)とパン酵母(ドライイースト)を用いる。さらに、パン製造材料として通常用いられる材料、例えば、塩、バター、砂糖、ベーキングパウダー、ショートニング、油脂、香味料等を適宜加えることができる。
【0010】
紅麹は、紅麹菌(Monascus)を米、白米、大豆などで培養した後、低温(例えば35〜42℃)で乾燥させて粉末化したものを用いる。紅麹の配合量は、小麦粉に対して固形分比で0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%である。紅麹は固体のまま配合してもよいが、好ましくは紅麹を水で膨潤させた後に配合する。膨潤は室温で1時間程度で十分である。紅麹を膨潤させた後、水と紅麹を含む懸濁液を、小麦粉、水、ドライイーストなどを含むパン製造原料中に添加し、混合する。次に、通常の方法にしたがって、30〜35℃で発酵と混捏とを適宜繰り返すことにより、パン種を発酵させる。発酵の温度と時間は、原材料、製造環境、製品の嗜好性などにより適宜選択することができる。例えば、下記の実施例では、28℃で予備発酵15分、混捏13分、28℃で1次発酵60分、ガス抜き、28℃で2次発酵30分、ガス抜き、32℃で成形発酵50分の工程を用いている。次に、発酵したパン種を焼成する。焼成温度は160〜220℃の間で適宜選択することができる。このようにして、紅麹含有パンを製造することができる。
【0011】
このようにして得られる紅麹含有パンは、すぐれた抗酸化作用を有するため、ヒトの酸化的障害状態を有効に改善する効果を有する。
【0012】
本発明の抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、乾燥食品の形態や粉末の形態とすることができ、また、その加工物を食品添加物の形態として各種の食品に添加することもできる。さらに、各種疾病、生活習慣病の改善剤のような医薬品の形態でも使用でき、種々の原因から由来するヒトの酸化的障害の改善に有効である。
【0013】
本発明の抗酸化作用を有する紅麹含有パンは、食品として、食品添加物として、あるいは、医薬としてヒトに摂取させ、あるいは経口投与させることにより、すぐれた抗酸化作用を発揮して、フリーラジカルや活性酸素から細胞や臓器を守る働きをし、ヒトの酸化的障害状態を有効に改善する。しかも紅麹は、一般に、古来より食用として安全が保証されている物質であるため、摂取量ないし投与量に特に制限はなく、改善すべき酸化ストレスに応じて広範に変化させることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により何等限定されるものではない。
【0015】
紅麹含有パンの製造
紅麹を水190mLに1時間膨潤させた後、表1に示す組成のパン製造原料に紅麹水溶液として添加混入した。この原料を12分混捏し、予備発酵28℃で15分行い、さらに混捏を13分した。その後、1次発酵28℃で60分行い、ガス抜き後、2次発酵28℃で30分行い、ガス抜き後、成形発酵32℃で50分行い、焼成は190℃で40分行った。なお、紅麹をそのまま粉末で添加するとパンに紅麹の粉末が均一に混在されず、焼成後のパンに色むらが生じ、食味を著しく低下させるものであった。
【0016】
【表1】
【0017】
抗酸化能の評価
かくして得られた紅麹含有パン、ならびに同様にして製造した0.5%、1.0%紅麹含有パンを凍結乾燥し、ミキサーにて粉末状とした。これを活性酸素種(ROS)を特異的・定量的に測定可能な電子スピン共鳴(ESR)法を用い、二酸化チタン(TiO2)を混合後、紫外線(UV365nm)照射により生成するヒドロキシルラジカルをESR法により弁別・定量した結果から抗酸化能の評価を行った。
【0018】
その結果、0.5%、1.0%、2.0%、5.0%および10.0%紅麹含有パンは、紅麹無添加パンと比較して濃度依存的に顕著な抗酸化作用が認められた(図1)。これらの紅麹含有パン中の紅麹含有量は2.0〜10.0%であり、日常無理なく摂取可能な量であって、その摂取は抗酸化作用にきわめて有効である。なお、紅麹含有パンの焼き上げにおいて190℃もの高温をかけたにもかかわらず、得られた紅麹含有パンが抗酸化作用を有していることが示された。
【0019】
嗜好評価
得られた紅麹含有パンの嗜好の比較を行った。パンの中心部より縦40×横40×高さ10mm3の試料を切り出し、26℃のパネル用個室にて評価を行った。パネルは20〜30歳台の健常な女性40人とし、調査項目はきめ、色、香り、硬さ、味、食感、総合評価の7項目とし、順位法によって嗜好の評価を行った。結果は順位グラフを描き、有意水準5%の棄却楕円を用いて有意性の検定を行った。結果を図2〜4に示す。
【0020】
紅麹含有パンの1日経過したパンの嗜好評価の結果は、きめ、食感、味、香り、総合評価において、0.5%および1.0%紅麹含有パンの嗜好が高く評価され、味では0.5%、1.0%および2.0%紅麹含有パンの嗜好が高く評価された。3日経過したパンでは、食感、総合評価において、0.5%、1.0%および2.0%紅麹含有パンの嗜好が評価され、きめ、色では0.5%紅麹含有パンの嗜好が評価された。香りは2.0%紅麹含有パンの嗜好が評価された。6日経過したパンでは、食感、総合評価において、0.5%、1.0%および2.0%紅麹含有パンの嗜好が高く評価され、色では、0.5%紅麹含有パンの嗜好が評価された。
【0021】
日数の経時変化による嗜好評価では、硬さおよび味において、1.0%、2.0%、5.0%および10.0%紅麹含有パンは3日経過したパンにおいても嗜好は高く評価された。色では、2.0%、5.0%および10.0%紅麹含有パンにおいて3日経過したパンでも嗜好は高く評価された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の紅麹含有パンは優れた抗酸化能を有するので、これらの効果を期待した機能性食品として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の抗酸化能の評価の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、焼成日から1日経過した紅麹含有パンの嗜好評価を示すグラフである。
【図3】図3は、焼成日から3日経過した紅麹含有パンの嗜好評価を示すグラフである。
【図4】図4は、焼成日から6日経過した紅麹含有パンの嗜好評価を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅麹を配合したことを特徴とする、抗酸化作用を有する紅麹含有パン。
【請求項2】
紅麹を水で膨潤させ、この紅麹懸濁液をパン製造原料中に添加し混合して製造することを特徴とする、抗酸化作用を有する紅麹含有パンの製造方法。
【請求項1】
紅麹を配合したことを特徴とする、抗酸化作用を有する紅麹含有パン。
【請求項2】
紅麹を水で膨潤させ、この紅麹懸濁液をパン製造原料中に添加し混合して製造することを特徴とする、抗酸化作用を有する紅麹含有パンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2009−254237(P2009−254237A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103668(P2008−103668)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(508112704)学校法人昭和女子大学 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(508112704)学校法人昭和女子大学 (2)
【Fターム(参考)】
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