説明

紋織物の染色方法

【課題】柄の立体をだす紋意匠織と地組織との変化で柄だしする紋織物に対する染色方法に関するものであり、特に、従来にない極めて斬新な色合い並びに風合いに染色し得る紋織物に対する染色方法を提供すること。
【解決手段】生地表面1a側に、地組織部分2と、該地組織部分から突出する紋意匠織組織部分3とを有する紋織物生地1を準備する工程と、前記紋織物生地を水洗い処理4し、湯のし処理5をした後、前記紋織物生地の裏面1b側から浸透性を有する色糊で前記紋織物生地の表面側地組織部分まで染色する第1の染色工程6と、前記第1の染色工程で染色された紋織物生地を蒸し水洗処理10、のりつけ処理11および仕上げのし処理12してなることを特徴とする紋織物の染色方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柄の立体をだす紋意匠織と地組織との変化で柄だしする紋織物に対する染色方法に関するものであり、特に、従来にない極めて斬新な色合い並びに風合いに染色し得る紋織物に対する染色方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、従来より上記するような組織変化のある紋織物生地に対する染色方法として、蝋あるいはダックによる頭ずり加工方法が知られている。しかしながら、この頭ずり加工方法は、生地耳部分と生地中央部分との色の違い、エンディング(反物の端と端との色が合わない)、さらには、紋意匠織(生地表面側の頭)部分の色を単一色でしか表現できない等々の問題点があった。
【0003】
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この発明は、上記する従来の技術にみられる問題点を解消しようとするものであり、紋織物生地における反物幅方向の色違いを防止し、反物長さ方向の両端側における色違いを防止し、さらには、紋意匠織部分の多色表現を可能とする極めて斬新な紋織物の染色方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、請求項1に記載の発明は、生地表面側に、地組織部分と、該地組織部分から突出する紋意匠織組織部分とを有する紋織物生地を準備する工程と、前記紋織物生地を水洗い処理し、湯のし処理をした後、前記紋織物生地の裏面側から浸透性を有する色糊で前記紋織物生地の表面側地組織部分まで染色する第1の染色工程と、前記第1の染色工程で染色された紋織物生地を蒸し水洗処理、のりつけ処理および仕上げのし処理してなることを特徴とする紋織物の染色方法を構成するものである。
【0006】
さらに、この発明において請求項2に記載の発明は、生地表面側に、地組織部分と、該地組織部分から突出する紋意匠織組織部分とを有する紋織物生地を準備する工程と、前記紋織物生地を水洗い処理し、湯のし処理をした後、前記紋織物生地の裏面側から浸透性を有する色糊で前記紋織物生地の表面側地組織部分まで染色する第1の染色工程と、前記第1の染色工程で染色された紋織物生地を蒸し水洗処理、湯のし処理をした後、前記紋織物生地の表面側から異なる色相の色糊により複数回の捺染する第2の染色工程と、前記第2の染色工程により染色された紋織物生地を蒸し水洗処理、のりつけ処理および仕上げのし処理してなることを特徴とする紋織物の染色方法を構成するものである。
【0007】
さらに、この発明において請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の紋織物の染色方法であって、前記紋織物生地が、前記地組織部分に対して、綴れ織組織、平3・1組織、絵抜き組織、意匠地組織などの組織の少なくとも一つの組織を含むものからなることを特徴とするものである。
【0008】
さらに、この発明において請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の紋織物の染色方法であって、前記第1の染色工程に用いられる色糊が、水に、染料、アルギン酸ソーダー、浸透剤、均染剤、消泡剤、染料溶解剤を混合したものからなることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、この発明において請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の紋織物の染色方法であって、前記第2の染色工程に用いられる色糊が、水に、染料、アルギン酸ソーダー、均染剤、消泡剤、染料溶解剤を混合したものからなることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、この発明において請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の紋織物の染色方法であって、前記第2の染色工程では、前記紋織物生地の表面側より、ぼかし柄ローラでグラデーションの強いぼかし染を異なる色相で複数回行い、異なる色相の混色した染色部分と、混色していない染色部分とを形成してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成において、この発明になる紋織物の染色方法によれば、生地表面側に、地組織部分と、該地組織部分から突出する紋意匠織組織部分とを有する紋織物生地を準備する工程と、前記紋織物生地を水洗い処理し、湯のし処理をした後、前記紋織物生地の裏面側から浸透性を有する色糊で前記紋織物生地の表面側地組織部分まで染色する第1の染色工程と、前記第1の染色工程で染色された紋織物生地を蒸し水洗処理、湯のし処理をした後、紋織物生地の表面側から異なる色相の色糊により複数回の捺染する第2の染色工程と、前記第2の染色工程により染色された紋織物生地を蒸し水洗処理、のりつけ処理および仕上げのし処理する工程を含むものからなっているので、紋意匠織部分の多色表現を可能とする極めて斬新な紋織物の染色方法を提供し得る点において極めて有効に作用するものといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明になる紋織物の染色方法について、図面に示す具体的な実施例にもとづいて詳細に説明する。図1は、この発明になる紋織物の染色方法についての第1の構成例に基づく染色方法の工程手順を示す概略的な説明図であり、図2は、この発明になる紋織物の染色方法についての第2の構成例に基づく染色方法の工程手順を示す概略的な説明図である。
【0013】
一方、図3は、この発明になる紋織物の染色方法における第2の染色工程の詳細を説明するための概略的な側面図であり、図4は、各種の紋意匠織組織部分の詳細を示す組織図である。
【0014】
まず、この発明になる紋織物生地の染色方法における工程手順について、図1に示す第1の構成例、並びに、図2に示す第2の構成例に基づいて詳細に説明する。上記する第1および第2の構成例は、その第1の染色工程までは互いに同一工程のものである。
【0015】
この発明では、まず、所望の紋織物生地1が準備される。この紋織物生地1は、地組織部分2と、この地組織部分2から生地表面1a側に突出する紋意匠織組織部分3を有するものからなっている。一例になる紋織物生地1は、図4各図に示すような各種紋意匠織組織部分2を備えたものからなっている。
【0016】
図4において図4Aは、つづれ織組織21を示すものであって、図4Bは、平3・1織組織22を示すものであって、図4Cは、絵抜き組織23を示すものであって、図4Dは、意匠地組織24を示すものであって、図4Eは、朱子織組織25を示すものである。一例によれば、これらの各種の組織により、所望の柄を織り成すように混在する紋織物生地1が準備される。
【0017】
図4各図に示す各種の織組織を構成するにあたって、より一層、柄ならびに生地の変化を作り出すために、緯糸(地抜き)には、強撚糸を特別に作り、柄が浮き出すようにし、緯糸(絵抜き)には、弱い撚糸の糸を用い、絵抜き、つづれ織組織を使い、染め上げてからの柄変化を作り出す。また、朱子織組織で光沢を出し、平3・1織組織で柄を薄く出してある。このような組織でなる紋織物生地は、染め上がりに変化性を有し、縮みにくく、シワになりにくく、生糸の光沢、しなやかさを持ち合わせているものである。
【0018】
この発明では、上記するような構成でなる紋織物生地1を準備しておき、当該紋織物生地1に対して、水洗い処理4および湯のし処理5が施される。 この処理は、普通一般的なものであり、準備された紋織物生地1に高温の蒸気をあてて、反物を幅方向並びに長さ方向に整え、シワや縮みを整える。
【0019】
この水洗い処理4および湯のし処理5の後、第1の染色工程6がなされる。この発明において、この第1の染色工程6は、図1および図2に示すように、前記紋織物生地1の裏面1b側から、下記に示す成分からなる特殊な色糊により、生地裏全面に、梨地ローラーで捺染される。この第1の染色工程6で用いられる色糊は、従来の色糊と異なり、浸透力が強く、生地の地組織部分の表面まで浸透させる。この発明では、前記色糊での染色では、生地表面側における紋意匠織組織部分3までは染色されない。
【0020】
この第1の染色工程6で用いられる色糊の一例を示すと次ぎの通りである。
染料 0.01〜6%
糊剤 3% アルギル酸ソーダー
浸透剤 1〜5% シードEXP(山宗実業株式会社)
均染剤 3% インプルバー800(横浜ポリマー株式会社)
消泡剤 3% ライトシリコンS−26(共栄社化学株式会社)
染料溶解剤 0.1〜5% グリソルブZO(明成化学工業株式会社)
これに、水を加えて、100%
【0021】
図1に示す第1の構成例では、上記する第1の染色工程6の後、蒸し水洗処理10、のり付け処理11、仕上げのし処理12を経て、この発明における第1の構成例になる染色された紋織物を供する。
【0022】
一方、これに対して、この発明における第2の構成例になる紋織物の染色方法では、上記する第1の染色工程6の後、蒸し水洗処理7および湯のし処理8を経て、図2に示すように、第2の染色工程9がなされる。この発明において、この第2の染色工程9は、図2に示すように、前記紋織物生地1の表面1a側から、上記に示す成分から浸透剤を除いた成分でなる色糊により染色する。
【0023】
この発明において、前記第2の染色工程9は、前記紋織物生地1の表面1a側から、ぼかし柄ローラーにより異なる色相の染料によって複数回捺染する。このぼかし捺染は、例えば、図3に示すように、グラデーションの強いぼかし染を行うべく、混色した部分と、混色しない部分を形成する。例えば、図3に示すように、赤色Rと青色Bの2色でぼかしを行った場合、赤色R……赤紫色RP……紫色P……青紫色BP……青色Bといった無段階の色々な色を表現できる。
【0024】
図2に示す第2の構成例では、上記する第2の染色工程9の後、蒸し水洗処理10、のり付け処理11、仕上げのし処理12を経て、この発明における第2の構成例になる染色された紋織物を供する。
【0025】
この発明になる紋織物の染色方法によれば、予め準備される紋織物生地における地組織部分並びに紋意匠織組織部分の多様的な組み合わせ構成、第1の染色工程による染色構成、さらには、第2の染色工程における染色構成の組み合わせにより極めて変化性に富んだ、従来にない全く特異で、極めて斬新な織物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、この発明になる紋織物の染色方法についての第1の構成例に基づく染色方法の工程手順を示す概略的な説明図である。
【図2】図2は、この発明になる紋織物の染色方法についての第2の構成例に基づく染色方法の工程手順を示す概略的な説明図である。
【図3】図3は、この発明になる紋織物の染色方法における第2の染色工程の詳細を説明するための概略的な側面図である。
【図4】図4は、各種の紋意匠織組織部分の詳細を示す組織図である。
【符号の説明】
【0027】
1 紋織物生地
1a 生地表面
1b 生地裏面
2 地組織部分
3 紋意匠織組織部分
4 水洗い処理
5 湯のし処理
6 第1の染色工程
7 蒸し水洗処理
8 湯のし処理
9 第2の染色工程
10 蒸し水洗処理
11 のり付け処理
12 仕上げのし処理
21 つづれ織組織
22 平3・1織組織
23 絵抜き織組織
24 意匠地組織
25 朱子織組織
R 赤色
B 青色
RP 赤紫色
P 紫色
BP 青紫色

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地表面側に、地組織部分と、該地組織部分から突出する紋意匠織組織部分とを有する紋織物生地を準備する工程と、前記紋織物生地を水洗い処理し、湯のし処理をした後、前記紋織物生地の裏面側から浸透性を有する色糊で前記紋織物生地の表面側地組織部分まで染色する第1の染色工程と、前記第1の染色工程で染色された紋織物生地を蒸し水洗処理、のりつけ処理および仕上げのし処理してなることを特徴とする紋織物の染色方法。
【請求項2】
生地表面側に、地組織部分と、該地組織部分から突出する紋意匠織組織部分とを有する紋織物生地を準備する工程と、前記紋織物生地を水洗い処理し、湯のし処理をした後、前記紋織物生地の裏面側から浸透性を有する色糊で前記紋織物生地の表面側地組織部分まで染色する第1の染色工程と、前記第1の染色工程で染色された紋織物生地を蒸し水洗処理、湯のし処理をした後、前記紋織物生地の表面側から異なる色相の色糊により複数回の捺染する第2の染色工程と、第2の染色工程により染色された紋織物生地を蒸し水洗処理、のりつけ処理および仕上げのし処理してなることを特徴とする紋織物の染色方法。
【請求項3】
前記紋織物生地が、前記地組織部分に対して、綴れ織組織、平3・1組織、絵抜き組織、意匠地組織などの組織の少なくとも一つの組織を含むものからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紋織物の染色方法。
【請求項4】
前記第1の染色工程に用いられる色糊が、水に、染料、アルギン酸ソーダー、浸透剤、均染剤、消泡剤、染料溶解剤を混合したものからなることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかに記載の紋織物の染色方法。
【請求項5】
前記第2の染色工程に用いられる色糊が、水に、染料、アルギン酸ソーダー、均染剤、消泡剤、染料溶解剤を混合したものからなることを特徴とする請求項2に記載の紋織物の染色方法。
【請求項6】
前記第2の染色工程では、紋織物生地の表面側より、ぼかし柄ローラでグラデーションの強いぼかし染を異なる色相で複数回行い、異なる色相の混色した染色部分と、混色していない染色部分とを形成してなることを特徴とする請求項2に記載の紋織物の染色方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277773(P2007−277773A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108230(P2006−108230)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(302023633)株式会社丸亀屋 (1)
【Fターム(参考)】