説明

納豆パンの製造方法

【課題】一種独特の味付けの仕方をなすもので、パン生地の味付けと、納豆の味付けとがそれぞれ独立になされることはもちろん、パン生地の味付けが納豆と相性良いために、納豆の味付けを必ずしも濃くしなくとも、美味しく食することができ、また、独特の風味があり健康にもさらに良好な納豆パンの製造方法を提供する。
【解決手段】小麦粉、ライ麦粉、米粉などの原料を練って発酵させたパン生地の中に具として調理した納豆をくるんで加熱し仕上げる納豆パンの製造方法において、パン生地に味付けのために醤油を添加して練り込むことを特徴とする。
【効果】パン生地と納豆との境界をハッキリすることにより構造的にテンションのきいた味が得られ、醤油の風味が納豆のネバネバに封じ込められることはなく、醤油の味と香りを十分に楽しみながら納豆を味わうよう食欲を進めることができ、また、納豆と醤油の健康効果が共に得られることはもちろん、香りによる健康効果も期待し得るという優れた効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小麦粉等の生地に納豆を包んだ形態の納豆パンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンは、小麦粉またはライ麦粉を主原料とし、これに酵母、食塩、砂糖などを加えて水でこね、酵母の発酵により膨らませたうえ、成形して焼き上げたものをいう。最近では主原料に米粉などが用いられる。さらに、中心にジャム、あん、挽き肉などの具を包み込んだパンも多く、具とともに美味しく食することができるために好まれる。また、最近では、納豆のうま味と健康価値が加わることに着目して納豆パンが造られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−37408号公報
【特許文献2】実用新案登録第3095535号公報
【0004】
特許文献1に記載される納豆パンは、酵母菌の生育が納豆菌により影響を受けないように、味付けした納豆を可食フィルムで包んだ状態でパン生地にくるみ込んでから焼き上げるというもので、その際に可食フィルムが加熱で溶解することにより、納豆のネバネバ成分がパン生地に浸透し、それで生地にも味付けされうま味が生じるという。
【0005】
また、特許文献2に記載される納豆パンは、納豆を300回転/分以上2000回転/分の高速回転で混練することにより、クリーム状の納豆ペーストを造り、これをパン生地にくるんだり、他の具と共に混合させたりして焼き上げるもので、納豆ペーストの特徴を生かして好みに応じた具材と共にヘルシーで且つ極めてユニークな納豆ペーストを内蔵するパンを提供できるという。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の納豆パンによれば、パン生地については、古来からの普通のパンと同じであって、食塩や砂糖などにより味付けがなされるが、これは極軽くなされ、納豆には際立つように濃い味付けがなされていた。したがって、この点であんパンに類したありふれたパンであった。
【0007】
また、具としての納豆に濃く味付けがなされていると、調味液がだぶついてパンの中心部に浸透し、具とパンとの間に味の境界がハッキリしなくなるために、食したときに味にしまりがなくテンションが感じられなくなるという問題もあった。
【0008】
この発明は、一種独特の味付けの仕方をなすもので、パン生地の味付けと、納豆の味付けとがそれぞれ独立になされることはもちろん、パン生地の味付けが納豆と相性良いために、納豆の味付けを必ずしも濃くしなくとも、美味しく食することができ、また、独特の風味があり健康にもさらに良好な納豆パンの製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、小麦粉、ライ麦粉、米粉などの原料を練って発酵させたパン生地の中に具として調理した納豆をくるんで加熱し仕上げる納豆パンの製造方法において、パン生地に味付けのために醤油を添加して練り込むことを特徴とする納豆パンの製造方法を提供するものである。
【0010】
納豆パンの製造方法を上記のように構成したから、パン生地の部分を納豆と相性の良い醤油で味付けをするので、食欲の観点から見て、納豆の味付けを軽くすることが許される関係から、納豆のネバネバや調味の粘性(あるいは水気)を少なくすることで、それがパン生地に及ぶのを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
したがって、この発明によれば、パン生地と納豆との境界をハッキリすることにより構造的にテンションのきいた味が得られ、醤油の風味が納豆のネバネバに封じ込められることはなく、醤油の味と香りを十分に楽しみながら納豆を味わうよう食欲を進めることができ、また、納豆と醤油の健康効果が共に得られることはもちろん、香りによる健康効果も期待し得るという優れた効果がある。
【0012】
また、請求項2に記載の如く食用油で揚げると、短時間の加熱となるので、納豆の健康効果を保存でき、請求項3に記載の如く醤油の量を調整すると、上記効果が一層得られやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明方法により造った納豆パンを一部切欠して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明は、小麦粉、ライ麦粉、米粉などの原料を練ってから発酵させたパン地1の中に納豆3をくるんだ状態に焼き上げる納豆パンの製造方法であって、この限りでは普通の納豆パンやあんパンなどと同じ製法であるが、パン地1となるパン生地を練る際にその味付けのために醤油5を添加する点が従来と異なっている。
【0015】
ところで、納豆と醤油とは元々相性が良いので、普通に納豆を食するときには納豆の味付けに醤油が用いられ、食卓において箸で掻きながらネバネバとともに混ぜ込まれる。しかし、この発明では、基本的に納豆3に醤油を用いなく、用いても隠し味程度であって、納豆3とは別の素材であるパン地1の味付けにもっぱら用いられる。
【0016】
醤油には、濃口醤油、淡口醤油、白醤油、タマリ醤油、再仕込醤油などの種類があり、いずれも材料には大豆と小麦(割合がそれぞれ異なる)が使用される。成分としては、酵母菌の発酵により、旨味成分であるクルタミン酸、アスパラギン酸、コハク酸、酸味を感じさせる乳酸や酢酸、苦みを感じさせるペプチド、甘味を感じさせるグリセリンなどのぶどう糖など、多様なアミノ酸や有機酸が含まれている。風味とともに香りが良いのが特徴である。
【0017】
塩分は多いけれども、意外なことに、血圧を下げたり、血糖値を抑制したりするなど、驚くほどに健康効果のある成分が含まれているという。特に香りが健康効果に大きく作用していると考えられる。しかも、納豆による多様な健康効果も期待できる。
【0018】
醤油の添加量については、醤油の種類等により多少の違いはあるものの、小麦粉、ライ麦粉、米粉などの原料100gに対して1ccより少ないと、風味が不足し、4ccより多いと味付け過剰となるので、1cc〜4cc程度が適当である。
【0019】
パン生地を加熱するには、釜を使って焼き上げたり、蒸したり、食用油で揚げたりするなど様々となる。そのうち、油で揚げる手段をとると、180°Cでは2〜3分と非常に短時間であり、加熱が納豆3に及ばないうちに揚げることができるから、納豆の血栓を溶かす成分(熱に弱いナットウキナーゼ)をそのまま保存でき、また、熱により納豆のネバネバがパン生地1に及ぶというのをうまく抑制できる。なお、納豆菌や他の有効成分は熱に強いので加熱によっても温存できる。
【0020】
したがって、納豆菌パワーや成分パワーを熱で損なうことなく丸ごと得られるばかりでなく、醤油の成分の健康効果も得られ、しかも、パン生地1と納豆3との境界がはっきりしてテンションのきいた味となる。加えて、納豆のネバネバが醤油5の香りをとじ込まないので、パンから醤油の香りが発散して香りが非常に良くなるのである。この香りが食欲を増すことはもちろん、これも健康に大きく貢献する。また、加熱中に醤油5が表面に浮上し、そこに焼き上がりの色とともに醤油5が集中した茶色の表層7が形成される。これで食さなくとも(割らなくとも)良い香りが漂う独特のパンとなる。
【0021】
納豆の味付けについては、後記実施例にかかわらず様々となるが、納豆と相性の良い醤油がパン生地に使用されているため、納豆の味付けを緩和できることから、水分を少なく調理することにより粘りを抑制することができる。こうして、パン地1と納豆3との境界を比較的ハッキリさせることができる。
【0022】
この点は好みにもよることであって、前記引用文献1の発明では、納豆のネバネバの味がパン生地に波及することが良好という見解である。しかし、本願の発明では、パン地1が醤油で味付けされているので、ことさらそれを納豆で味付けする必要はないのである。しかしながら、納豆3の調味が発泡したパン地1に幾分かでも波及することは避けられないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
パン生地に使用した材料は次の通りである。
小麦粉 100g
ドライイースト 4g
食塩 1g
砂糖 9g
醤油 2cc
マーガリン 8g
湯 75cc
【0024】
パン生地にくるむ具に使用した材料は次の通りである。数値は数量比を表す。
納豆(挽き割り) 5
おお葉 1
白ゴマ 1
キムチの元 1
【0025】
(造り方)
(1) 湯にマーガリンを入れて溶かす。
(2) 小麦粉を(1)に1/3入れ、ドライイースト、食塩、砂糖を入れ、醤油を入れて混ぜる。
(3)(2)に残りの小麦粉2/3を入れて生地を造り、これを丸く固める。
(4)この生地を電子レンジに200Wで30秒かける。それから10分休ませる(一次発酵)。これで2倍程度に膨らむ。
(5)一次発酵させてから小分けしてこれを丸め直す。このときに生地を軽くたたくようにしてガス抜きをする。
(6)ガス抜きした生地に具を入れ、皿に並べて電子レンジ(200W)で30秒かけ、それから40分程度ねかせる(二次発酵)。これでさらに2倍程度に膨らむ。
(7)二次発酵(仕上げ発酵)させた生地は、加熱し仕上げる手段として、180°Cに熱した油で揚げる。揚げる時間は2〜3分程度である。
【0026】
上記のように造った納豆パンは、こんがりと焼き上がっていることはもちろん、醤油の香ばしい薫りが漂っており、これだけでも食欲が出てくるのであるが、食するとパン地1がほのかに醤油風味であって、その醤油風味とともに納豆1を食することになるので、味の調和が格別であって、納豆をこの上なく美味しく食することができた。
【実施例2】
【0027】
実施例1とはほゞ同じであるが、加熱し仕上げる手段としては、オーブンを使用し、12分間焼き上げ、焼き上がった表面にバターを塗って仕上げた。
【符号の説明】
【0028】
1 パン生地が加熱し仕上げられてなるパン地
3 具として調理された納豆
5 醤油


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、ライ麦粉、米粉などの原料を練って発酵させたパン生地の中に具として調理した納豆をくるんで加熱し仕上げる納豆パンの製造方法において、パン生地に味付けのために醤油を添加して練り込むことを特徴とする納豆パンの製造方法。
【請求項2】
加熱し仕上げる手段として、食用油でパン生地を揚げることを特徴とする請求項1記載の納豆パンの製造方法。
【請求項3】
醤油の添加が、小麦粉、ライ麦粉、米粉などの原料100gに対して1cc〜4ccであることを特徴とする請求項1又は2記載の納豆パンの製造方法。


【図1】
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