説明

納豆容器、容器入り納豆及びその製造方法

【課題】使用時に余分なゴミが出にくくかつ比較的低コストで製造可能であるにもかかわらず、内部に収納している納豆用調味料を簡単にかつ周囲を汚すことなく吐出できる納豆容器を提供すること。
【解決手段】本発明の納豆容器11は、発泡樹脂製であり、納豆収納凹部25を有する容器本体22と、その開口26を塞ぐ蓋体23とがヒンジ部24を介して連結された構造を有する。蓋体23には蓋体内面23b側に膨出した形状の調味料収納凹部32が設けられる。蓋体23には蓋体外面23a側に谷折りする際の折曲予定線L1が設定される。蓋体23には調味料収納凹部32に連通し折曲予定線L1を横断する開裂溝31が設けられる。蓋体外面23a側には、調味料収納凹部32の開口を覆って密閉するシール材13が設けられる。蓋体23を折曲予定線L1に沿って谷折りすると、開裂溝31の折曲予定線横断部位35にて開裂する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆と個包装されない納豆用調味料とを納豆容器内にて別々に収納してなる納豆容器、容器入り納豆及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、納豆は紙製あるいは合成樹脂製の容器内に収納された状態で販売されるが、一般的に容器内には個包装された納豆用調味料も併せて収納されている。調味料等を個包装した場合、喫食時に個包装から調味料等を取り出して納豆にかける作業が必要となるが、通常その作業は面倒である。また、かかる作業を行う際には、個包装を破ろうとする指に調味料が付着したり、その指に力が入り過ぎて調味料が周囲に飛び散ったりするため、煩わしさを伴う。また、使用後に個包装はゴミとなるため、環境の面から見ても好ましくない。
【0003】
このような背景から、納豆と個包装されない納豆用調味料とを納豆容器内にて別々に収納してなる容器入り納豆が従来提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。そして、特許文献1〜3で提案されている容器入り納豆によれば、喫食時に個包装から調味料を取り出して納豆にかける作業が不要となる結果、手を汚す煩わしさも一応は解消されるようになっている。
【0004】
ちなみに、特許文献1のものは、破断しにくい強度を有する合成樹脂製の蓋体に収納凹部が形成され、その収納凹部内に調味料を収納した状態でその開口部を易破断シール体で密封した構成を有している。そして喫食時には、収納凹部内に形成した破断突起体でこの易破断シール体を破断することにより、調味料を納豆に注入するようになっている。
【0005】
特許文献2のものは、破断しにくい強度を有する合成樹脂製の蓋体に収納凹部が形成され、その収納凹部内に調味料を収納した状態でその開口部を帯シール片で密封した構成を有している。そして喫食時には、この帯シール片を引っ張って剥離することにより、収納凹部を開口させて調味料を納豆に注入するようになっている。
【0006】
特許文献3のものは、収納部本体と共蓋とヒンジ部とが発泡樹脂により一体形成されるとともに、ヒンジ部に沿って切断手段が形成され、調味料を収納する包装フィルムが共蓋の凹部開口に固着された構成を有している。そして喫食時には、まず収納部本体と共蓋とを切断手段に沿って切り離し、次に包装フィルムを剥がすことにより、収納凹部を開口させて調味料を納豆に注入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−179174号公報
【特許文献2】特開2002−37349号公報
【特許文献3】特開平10−305886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜3で提案されている容器入り納豆には、下記のような問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1、2のものは、破断突起体や帯シール片を設ける必要があるため、構造的に非常に複雑である。ゆえに、製造上及び容器の原料コスト上、納豆用の容器として実現することは非常に困難である。また、特に特許文献2のものは、使用後に帯シール片などの余分なゴミが発生するが、このようなゴミは通常調味料で汚れているため、テーブル上に直接置くことができない。このため、取扱上不便である。勿論、このようなゴミの発生は、環境面から見てあまり好ましいものではない。
【0010】
また、特許文献3のものは、使用時に共蓋を切り離すことが必須であり、なおかつ切り離し後に包装フィルムを剥がして開口させる必要がある。ゆえに、使用にあたり煩雑な作業を要求される。しかも、包装フィルムを剥がして開ける際に手が汚れるばかりか、包装フィルム自体が汚れたゴミとなってしまう。また、切り離された共蓋は外側が調味料で汚れているため、納豆付着防止用の被膜フィルムがないと、共蓋の内側まで汚れてしまう結果になる。よってこの場合には、テーブル上に共蓋を直接置くことができなくなり、取扱上不便なものとなる。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用時に余分なゴミが出にくくかつ比較的低コストで製造可能であるにもかかわらず、内部に収納している納豆用調味料を簡単にかつ周囲を汚すことなく吐出させることができる納豆容器、容器入り納豆を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記の優れた容器入り納豆を製造するうえで好適な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段[1]〜[10]を以下に列挙する。
【0013】
[1]納豆収納凹部を有する容器本体と前記容器本体の開口を塞ぐ蓋体とがヒンジ部を介して連結された構造を有する発泡樹脂製の納豆容器であって、前記蓋体には、蓋体内面側に膨出した形状の調味料収納凹部が設けられ、蓋体外面側に谷折りする際の折曲予定線が設定され、かつ、前記調味料収納凹部に連通し前記折曲予定線を横断するように配置された開裂溝が設けられ、前記蓋体の前記蓋体外面側には、前記調味料収納凹部の開口を覆って密閉するシール材が設けられ、前記蓋体を前記折曲予定線に沿って前記蓋体外面側に谷折りすることにより、前記開裂溝の折曲予定線横断部位にて開裂しうるように構成されていることを特徴とする納豆容器。
【0014】
従って、手段1に記載の発明によると、蓋体を折曲予定線に沿って蓋体外面側に谷折りすると、その折曲予定線を横断するように配置した開裂溝の折曲予定線横断部位が開裂する。その結果、調味料収納凹部に収納されていた調味料が開裂溝を介して開裂箇所に到達し、そこから調味料収納凹部の外部に吐出される。この場合、蓋体が発泡樹脂製であるため、切れ目などの構造を設けなくても、蓋体を比較的容易に蓋体外面側に谷折りすることができる。ゆえに、内部に収納している調味料を簡単に外部に吐出させることができる。また、本発明によると、破断突起体や帯シール片を設ける必要がないため、構造的に簡単なものとなり、比較的低コストで製造することができる。そして、本発明の納豆容器はもともと平坦であった発泡樹脂シートを金型成型にて納豆収納凹部等を成型するのと同時に調味料収納凹部や開裂溝を成型することができる。よって、硬質プラスチックなどを用いる必要もなく、また納豆容器製造工程を極めてシンプルにすることができ、比較的低コストで製造することができる。さらに本発明では、密閉用のシール材の破断や剥離を伴わずに調味料が吐出可能な構造であるため、使用後に帯シール片などの余分なゴミが発生しない。よって、自分の手や周囲を汚すことなく、しかも煩雑な作業を伴うことなく調味料を吐出させることができ、取扱上便利である。
【0015】
なお、本発明における「折曲予定線」とは、あくまで折り曲げる際の基準となる仮想上の線のことを意味し、蓋体における所定箇所に実際上の線が引かれていることを必須とするものではない。ただし、このような実際上の線が引かれていることを妨げるものでもない。ここで、本発明の納豆容器は折り曲げ時の山折り側に調味料収納凹部が設けられているため、調味料収納凹部同士を押し付け合う構造ではない。しかし、発泡樹脂は弾性が強く伸びやすいため折り曲げ時に外側から指などで押し出すことが可能であり、粘性の高い調味料でも問題なく吐出できるという利点がある。
【0016】
[2]前記蓋体における前記折曲予定線上の少なくとも一部には、前記蓋体外面側にて開口する折曲溝または折曲用ミシン目が形成されていることを特徴とする手段1に記載の納豆容器。
【0017】
従って、手段2に記載の発明によると、折曲予定線上の少なくとも一部に折曲溝または折曲用ミシン目をあらかじめ形成しておくことで、折曲予定線に沿って正確にかつ極めて簡単に谷折りすることができる。よって、所望とする部位にて開裂溝を確実に開裂させることができ、調味料をより簡単かつ確実に外部に吐出させることができる。また、このような折曲溝または折曲用ミシン目があれば、折り曲げ時にユーザーが折曲予定線の存在を視覚を通じて認知しやすくなるという利点もある。
【0018】
[3]前記調味料収納凹部の底部は、前記開裂溝に向って傾斜していることを特徴とする手段1または2に記載の納豆容器。
【0019】
従って、手段3に記載の発明によると、調味料収納凹部の底部が開裂溝に向って傾斜しているため、調味料収納凹部から開裂箇所に向けて調味料がスムーズに案内される。よって、調味料をより簡単かつ確実に外部に吐出させることができる。
【0020】
[4]前記容器本体と前記蓋体とを分離するための分離加工部が前記ヒンジ部近傍に形成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の納豆容器。
【0021】
従って、手段4に記載の発明によると、分離加工部を設けたことにより容器本体と蓋体とを容易に分離することができる。また、分離加工部を設けておけば、切り離してから調味料を注ぎたいか、切り離さずに調味料を注ぎたいか、というように、ユーザーが好みに合わせて自由に選択できるようになる。
【0022】
[5]前記折曲予定線は前記ヒンジ部の延びる方向と平行に設定されていることを特徴とする手段4に記載の納豆容器。
【0023】
従って、手段5に記載の発明によると、ユーザーが蓋体を切り離すことなく、蓋体と容器本体との溶着部を剥がすだけで、蓋体を折曲予定線で容易に折り曲げることが可能となる。よって、いっそう調味料を注ぎやすくすることができる。
【0024】
[6]前記蓋体には、前記折曲予定線を回避しつつ前記調味料収納凹部及び前記開裂溝を包囲する包囲溝が設けられていることを特徴とする手段1乃至5のいずれか1項に記載の納豆容器。
【0025】
従って、手段6に記載の発明によると、調味料収納凹部及び開裂溝を包囲する包囲溝を設けたことにより、蓋部が全体的に補強されて湾曲などが防止されるとともに、シール材の捲れが防止される。ただし、包囲溝は折曲予定線を回避して設けられているため、折曲予定線の近傍については蓋部が補強されていない。よって、折曲予定線に沿って正確にかつ極めて簡単に谷折りすることができ、折曲予定線以外の箇所で折れ曲がることを防止することができる。
【0026】
[7]手段1乃至6のいずれか1項に記載の納豆容器における前記納豆収納凹部に納豆を収納し、前記調味料収納凹部に納豆用調味料を収納してなる容器入り納豆。
【0027】
従って、手段7に記載の発明によると、蓋体の蓋体外面側への谷折りによって、調味料収納凹部内に収納している納豆用調味料を簡単に外部に吐出させて、納豆に注ぐことができる。また、本発明によると、破断突起体や帯シール片を設ける必要がないため、構造的に簡単なものとなり、比較的低コストで製造することができる。そして、本発明の納豆容器はもともと平坦であった発泡樹脂シートを金型成型にて納豆収納凹部等を成型するのと同時に調味料収納凹部や開裂溝を成型することができる。よって、硬質プラスチックなどを用いる必要もなく、また納豆容器製造工程を極めてシンプルにすることができ、比較的低コストで製造することができる。さらに本発明では、密閉用のシール材の破断や剥離を伴わずに調味料が吐出可能な構造であるため、使用後に帯シール片などの余分なゴミが発生しない。よって、自分の手や周囲を汚すことなく、しかも煩雑な作業を伴うことなく調味料を吐出させることができる。このため、利便性が高いにもかかわらず比較的安価な容器入り納豆を提供することが可能となる。
【0028】
[8]手段1乃至6のいずれか1項に記載の納豆容器の前記蓋体における前記調味料収納凹部に納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と、前記容器本体における前記納豆収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、前記蒸煮大豆が充填された前記納豆収納凹部を塞ぐように、前記納豆用調味料が充填され前記シール材により密閉された前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、前記蒸煮大豆と前記納豆用調味料とが充填された前記納豆容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程とを含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【0029】
従って、手段8に記載の発明によると、調味料を充填してシール材で密閉し、次いで蒸煮大豆を充填した後に蓋閉じを行うという順序であるため、以下の利点がある。例えば、先に蒸煮大豆を充填した後に調味料の充填及びシール密閉を行おうとすると、容器本体が撓む可能性があり、上手くシールするためにはシール時間を長めに設定する、あるいはシール位置をできるだけ蓋体の周縁部近くに設定するなどの工夫が必要になる。これに対して本発明によれば、シールしたい蓋体だけをしっかり支えてシールすることが可能なため、容器本体の撓みを防ぐことができ、シール密閉工程にて特に工夫をしなくても蓋体を確実に密閉することができる。また、先に蒸煮大豆を充填した後に調味料の充填及びシール密閉を行う場合、調味料充填工程でのミス(液垂れなど)やシール不良が生じると、充填済みの蒸煮大豆が無駄になってしまう。これに対して本発明によれば、このような無駄の発生を防ぐことができる。つまり、調味料充填及びシール密閉工程でミスが起きやすい場合に、この製造方法を採用する価値がある。さらに本発明によれば、工程の比較的早い段階で調味料を充填してシール材で密閉しているので、調味料収納凹部への異物の付着や菌汚染のリスクが小さくなり、衛生的に好ましい。
【0030】
[9]手段1乃至6のいずれか1項に記載の納豆容器の前記容器本体における前記納豆収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、前記蒸煮大豆が充填された前記納豆収納凹部を塞ぐように前記納豆容器の前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、前記蓋体における前記調味料収納凹部に納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と、前記蒸煮大豆と前記納豆用調味料とが充填された前記納豆容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程とを含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【0031】
従って、手段9に記載の発明によると、蒸煮大豆を充填し、次いで蓋閉じを行った後に調味料を充填してシール材で密閉するという順序であるため、以下の利点がある。即ちこの順序であると、シール密閉工程において少々不便さがある一方で、納豆容器自体を反転しなくてよいという利点があり、製造ラインを単純化できる点で好ましい。また、蒸煮大豆充填工程や蓋閉じ工程でのミス(豆のはみ出しによる容器汚れ、潰れなど)が生じると、充填済みの調味料とシール材とが無駄になってしまう。これに対して本発明によれば、このような無駄の発生を防ぐことができる。つまり、蒸煮大豆充填工程でミスが起きやすい場合に、本発明の製造方法を採用する価値がある。
【0032】
[10]手段1乃至6のいずれか1項に記載の納豆容器の前記容器本体における前記納豆収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、前記蒸煮大豆が充填された前記納豆収納凹部を塞ぐように前記納豆容器の前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、前記蒸煮大豆が充填された前記納豆容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程と、前記蓋体における前記調味料収納凹部に前記納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程とを含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【0033】
従って、手段10に記載の発明によると、蒸煮大豆を充填して蓋閉じしかつ納豆菌発酵を行ってから、調味料を充填してシール材で密閉するという順序であるため、設備上衛生的にキープできる設備で製造する場合には、問題なく採用することができる。また、納豆の発酵不良などが生じる場合、調味料を充填してから発酵という工程であると、充填済みの調味料とシール材とが無駄になってしまうが、納豆菌発酵後に調味料の充填及びシールをすれば、そのような無駄の発生を防止することができる。つまり、発酵不良が起きやすい場合にこの製造方法を採用する価値がある。
【発明の効果】
【0034】
従って、請求項1〜10に記載の発明によれば、使用時に余分なゴミが出にくくかつ比較的低コストで製造可能であるにもかかわらず、内部に収納している納豆用調味料を簡単にかつ周囲を汚すことなく吐出させることができる納豆容器、容器入り納豆を提供することにある。また、請求項11〜13に記載の発明によれば、上記の優れた容器入り納豆を製造するうえで好適な方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の納豆容器(蓋閉め前かつシール前)を示す平面図。
【図2】上記実施形態の納豆容器(蓋閉め後かつシール後)を示す平面図。
【図3】図2の納豆容器の正面図。
【図4】図2の納豆容器のA−A線断面図。
【図5】図2の納豆容器のB−B線断面図。
【図6】上記納豆容器の使用時の様子を説明するための断面図。
【図7】別の実施形態における納豆容器(蓋閉め前)を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した一実施の形態の納豆容器を図1〜図6に基づき詳細に説明する。図1は、蓋閉め前かつシール前の状態の納豆容器11を示す平面図である。図2は、蓋閉め後かつシール後の状態の納豆容器11を示す平面図である。図3は図2の納豆容器11を示す正面図である。
【0037】
本実施形態の納豆容器11は、納豆2及び納豆用調味料3を内部に別々に収納しておき、必要に応じて納豆用調味料3を納豆2に注ぎ入れることが可能な構造の容器である。この納豆容器11は発泡樹脂シート製の成型体12とシール材13とからなる容器であって、発泡樹脂シート製の成型体12は容器本体22と蓋体23とヒンジ部24とを備えた構造を有している。容器本体22は平面視矩形状であって、上側に開口26が形成された納豆収納凹部25を有している。この納豆収納凹部25には納豆2が収納される。蓋体23は容器本体22の開口26を塞ぐための部分であって、容器本体22と同じく平面視矩形状を呈している。容器本体22と蓋体23とはヒンジ部24を介して連結されている。
【0038】
図1等に示されるように、納豆容器11を構成する発泡樹脂シート製の成型体12は、厚さ3mm以内であることがよく、ここでは厚さ約1.5mmのものを使用している。発泡樹脂シートを構成する樹脂としては、発泡ポリスチレン樹脂を使用しているが、発泡ポリエチレン樹脂や発泡ポリウレタン樹脂等を使用してもよい。そして、この発泡樹脂シート製の成型体12では、短辺の方向(即ち図1の左右方向)が原反シートの巻き取り方向(原反の長手方向)となっている。発泡樹脂シート製の成型体12は、内部に多数の気泡を有している。これらの気泡は回転長円体状(あるいは回転楕円体状)の独立気泡であって、長軸が一定の方向に沿って配列した状態となっている。この方向のことを「気泡の配向方向D1」と呼ぶことにする。従って、この発泡樹脂シート製の成型体12においては、短辺の方向に気泡が配向していると把握できる。
【0039】
そして本実施形態では、蓋体23を蓋体外面23a側に谷折りする際の折曲予定線L1が、発泡樹脂シート製の成型体12における蓋体領域中央部を通って気泡の配向方向D1に平行となるように設定されている(図1参照)。折曲予定線L1は、発泡樹脂シート製の成型体12における気泡の配向方向D1に対して±45°以内の角度θをなすことが、開裂部位をシャープに開裂しやすくするという理由で好ましい。本実施形態ではθ=0°に設定されている。即ち、折曲予定線L1と気泡の配向方向D1とが平行になっている。
【0040】
図1〜図7に示されるように、本実施形態の蓋体23は、蓋体外面23aにて開口する一対の調味料収納凹部32と、同じく蓋体外面23aにて開口する1本の断面略V字状の開裂溝31とを有している。開裂溝31と一対の調味料収納凹部32とは蓋体23において互いに連結している。一対の蓋体23は調味料収納凹部32及び開裂溝31は、もともと平坦であった発泡樹脂シートを金型成型して所定部分を裏面側に膨出させて成型体12とする際に形成されたものである。開裂溝31は、成型体12における蓋体領域の中央部に位置し、折曲予定線L1を横断している。従って、開裂溝31は、気泡の配向方向D1に対して平行に延びていることになる。一対の調味料収納凹部32は、開裂溝31を挟んでその両側にそれぞれ配置されている。なお、本実施形態における一対の調味料収納凹部32は、大きさ及び形状が等しいが、必ずしもそうでなくてもよい。また、発泡樹脂シート製の成型体12の平面視において、調味料収納凹部32は、開裂溝31に向うに従って幅が徐々に狭くなる形状となっている。
【0041】
図4,図5等に示されるように、調味料収納凹部32の底部34は、開裂溝31に向って5°〜30°ほど傾斜している。このような傾斜は、底部34の全体に設けられていなくてもよく、一部に設けられていればよい。調味料収納凹部32は、開裂溝31と連結する部位において最も深くなっている。図4に示されるように、調味料収納凹部32の最深部の深さは、特に限定されないが5mm以上となるように設定されることがよい(本実施形態では約8mm)。開裂溝31の最浅部の深さは、特に限定されないが5mm以上となるように設定されることがよい(本実施形態では約7mm)。なお、開裂溝31の長さについては、特に限定されないが5mm以上となるように設定されることがよい(本実施形態では約12mm)。このような寸法設定にする理由としては、開裂溝31がよりいっそう破断して開裂しやすくなり、発泡樹脂のカスの発生をより確実に防止することができるからである。
【0042】
図1に示されるように、発泡樹脂シート製の成型体12の平面視において、開裂溝31にて折曲予定線L1を横断している部位(以下、折曲予定線横断部位35)は、蓋体外面23a側に谷折りした際に最も応力が加わりやすい部位となっている。例えば、開裂溝31における少なくとも折曲予定線横断部位35は、配向性が低減または喪失されていてもよい。これにより、折曲予定線L1が気泡の配向方向D1に対して±45°以内の角度θをなしていなくとも開裂部位をシャープに開裂しやすくなる。配向性低減・喪失処理として具体的には以下のものがある。調味料収納凹部32及び開裂溝31が形成された発泡樹脂シートを用意し、その折曲予定線横断部位35(具体的には、応力が最も加わりやすい開裂溝31の底部中央部)に熱加工を施す。この熱加工では、ヒートツールとしてホットローラを用い、蓋体23の搬送時にそのホットローラを開裂溝31の底部中央部に接触させるようにする。
【0043】
図1、図2、図4〜図6等に示されるように、蓋体23における折曲予定線L1上には、蓋体外面23a側にて開口する折曲溝41が2箇所に形成されている。折曲溝41は、開裂溝31を挟んでその両側に一対配置されている。個々の折曲溝41の長さは、発泡樹脂シート製の成型体12の短辺の長さの1/3程度に設定されている。つまり、折曲溝41は、折曲予定線L1に沿って発泡樹脂シート製の成型体12の全幅にわたり形成されているわけではなく、その一部に形成されている。なお、折曲溝41は、折曲予定線L1に沿って発泡樹脂シート製の成型体12のほぼ全幅にわたり形成されていてもよい。ただし、調味料3の漏れを防ぐために、折曲溝41と開裂溝31とを連結しない構造であることが好ましい。また、これらの折曲溝41は、調味料収納凹部32及び開裂溝31ほど深くなくてよく、3mm以下(本実施形態では約1mm)となっている。
【0044】
図1、図2、図4〜図6等に示されるように、蓋体23には、蓋体外面23a側にて開口するとともに、調味料収納凹部32及び開裂溝31をほぼ包囲する包囲溝42が設けられている。このような包囲溝42を設けた結果、蓋体23が全体的に補強されている。ただし、蓋体23の谷折りの便宜を考慮して、包囲溝42は折曲予定線L1(折曲溝41)を回避するようにして配置されている。包囲溝42は、調味料収納凹部32及び開裂溝31ほど深くなくてよく、7mm以下(本実施形態では約5mm)となっている。
【0045】
図2〜図6に示されるように、蓋体23の蓋体外面23a側には、可撓性及び液体不透過性を有するシール材13として、樹脂フィルムが熱溶着されている。この樹脂フィルムからなるこのシール材13は、特に凹凸加工を施したものではなく、略平坦でシンプルな構成を有している。シール材13を形成する樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等といった汎用樹脂が使用可能である。シール材13は、蓋体外面23aの全体を覆うように熱溶着されることで、調味料収納凹部32内の納豆用調味料3を密閉している。シール材13は透明、不透明を問わず選択することが可能である。例えば、前者であると、収納後であっても納豆用調味料3の状態等を目視確認または検査機による確認をすることができる。後者であると、納豆用調味料3の光による劣化等を防止することができる。ここで、納豆用調味料3としては、液体状の納豆用たれ等が具体例として挙げられる。
【0046】
次に、本実施形態の納豆容器11の使用方法(開封方法)を図6に基づいて説明する。まず、納豆2及び納豆用調味料3が収納された納豆容器11(即ち容器入り納豆)を用意する。この納豆容器11における容器本体22のフランジ部と蓋体23とは互いに溶着されている。そして開封時には、蓋体23と容器本体22との溶着部を半分程度剥がし、さらにその状態で蓋体23を折曲予定線L1に沿って蓋体外面23a側に谷折りにする。すると、蓋体23に形成された開裂溝31の折曲予定線横断部位35、とりわけ底部中央部P1が左右方向に引っ張られ、当該箇所に応力が集中するため、底部中央部P1が他の部分より優先的に破断してシャープに開裂する。その結果、納豆用調味料3が蓋体23の外部に吐出され、納豆収納凹部25内の納豆2の上に納豆用調味料3が注がれるようになっている。
【0047】
次に、本実施形態の容器入り納豆を製造する方法をいくつか例を挙げて説明する。
【0048】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は次のとおりである。まず、図1に示す状態の納豆容器11を用意し、蓋体外面23aの側を上向きにして配置する。そして、蓋体23における一対の調味料収納凹部32に、図示しない充填装置を用いて納豆用調味料3を所定量充填する(調味料充填工程)。次に、納豆用調味料3が充填された調味料収納凹部32の開口を塞ぐようにシール材13を熱溶着し、調味料収納凹部32を液漏れ不能に密閉する(シール密閉工程)。次に、シール密閉工程を経た納豆容器11を反転させて、容器本体22における納豆収納凹部25の開口26側を上向きにして配置する。そして、図示しない別の充填装置によって、容器本体22における納豆収納凹部25に所定量の蒸煮大豆を充填する(蒸煮大豆充填工程)。納豆用調味料3が充填されシール材13により密閉された状態の納豆容器11をヒンジ部24で折り曲げ、蒸煮大豆が充填された納豆収納凹部25を塞ぐように蓋体23を閉じる(蓋閉じ工程)。次に、蒸煮大豆と納豆用調味料3とが充填された納豆容器11を発酵室で所定時間保管することで納豆菌発酵を行い(発酵工程)、所望とする容器入り納豆を完成させる。
【0049】
第1の製造方法によると、調味料3を充填してシール材13で密閉し、次いで蒸煮大豆を充填した後に蓋閉じを行うという順序であるため、以下の利点がある。例えば、先に蒸煮大豆を充填した後に調味料3の充填及びシール密閉を行おうとすると、容器本体22が撓む可能性があり、上手くシールするためにはシール時間を長めに設定する、あるいはシール位置をできるだけ蓋体23の周縁部近くに設定するなどの工夫が必要になる。これに対して第1の製造方法によれば、シールしたい蓋体23だけをしっかり支えてシールすることが可能なため、容器本体22の撓みを防ぐことができ、シール密閉工程にて特に工夫をしなくても蓋体23を確実に密閉することができる。また、先に蒸煮大豆を充填した後に調味料3の充填及びシール密閉を行う場合、調味料充填工程でのミス(液垂れなど)やシール不良が生じると、充填済みの蒸煮大豆が無駄になってしまう。これに対して第1の製造方法によれば、このような無駄の発生を防ぐことができる。つまり、調味料充填及びシール密閉工程でミスが起きやすい場合に、この製造方法を採用する価値がある。さらに第1の製造方法によれば、工程の比較的早い段階で調味料3を充填してシール材13で密閉しているので、調味料収納凹部32への異物の付着や菌汚染のリスクが小さくなり、衛生的に好ましい。
【0050】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は次のとおりである。まず、図1に示す状態の納豆容器11を用意し、蓋体外面23aの側を下向きにし、かつ、容器本体22における納豆収納凹部25の開口26側を上向きにして配置する。そして、納豆容器11の容器本体22における納豆収納凹部25に図示しない充填装置を用いて所定量の蒸煮大豆を充填する(蒸煮大豆充填工程)。次に、蒸煮大豆が充填された状態の納豆容器11をヒンジ部24で折り曲げ、納豆収納凹部25を塞ぐように納豆容器11の蓋体23を閉じる(蓋閉じ工程)。次に、蓋体23における調味料収納凹部32に、図示しない別の充填装置を用いて納豆用調味料3を所定量充填する(調味料充填工程)。次に、納豆用調味料3が充填された調味料収納凹部32の開口を塞ぐようにシール材13を熱溶着し、調味料収納凹部32を液漏れ不能に密閉する(シール密閉工程)。次に、蒸煮大豆と納豆用調味料とが充填された納豆容器11を発酵室で所定時間保管することで納豆菌発酵を行い(発酵工程)、所望とする容器入り納豆を完成させる。
【0051】
第2の製造方法によると、蒸煮大豆を充填し、次いで蓋閉じを行った後に調味料3を充填してシール材13で密閉するという順序であるため、以下の利点がある。即ちこの順序であると、シール密閉工程において少々不便さがある一方で、納豆容器11自体を反転しなくてよいという利点があり、製造ラインを単純化できる点で好ましい。また、蒸煮大豆充填工程や蓋閉じ工程でのミス(豆のはみ出しによる容器汚れ、潰れなど)が生じると、充填済みの調味料3とシール材13とが無駄になってしまう。これに対して第2の製造方法によれば、このような無駄の発生を防ぐことができる。つまり、蒸煮大豆充填工程でミスが起きやすい場合に、第2の製造方法を採用する価値がある。
【0052】
(第3の製造方法)
第3の製造方法は次のとおりである。まず、図1に示す状態の納豆容器11を用意し、蓋体外面23aの側を下向きにし、かつ、容器本体22における納豆収納凹部25の開口26側を上向きにして配置する。そして、納豆容器11の容器本体22における納豆収納凹部25に、図示しない充填装置を用いて所定量の蒸煮大豆を充填する(蒸煮大豆充填工程)。次に、納豆収納凹部25に蒸煮大豆が充填された納豆容器11をヒンジ部24で折り曲げ、納豆収納凹部25を塞ぐように蓋体23を閉じる(蓋閉じ工程)。次に、蒸煮大豆が充填された納豆容器11を発酵室で所定時間保管して納豆菌発酵を行う(発酵工程)。次に、蓋体23における調味料収納凹部32に納豆用調味料3を充填する(調味料充填工程)。次に、納豆用調味料3が充填された調味料収納凹部32の開口を塞ぐようにシール材13を熱溶着し、調味料収納凹部32を液漏れ不能に密閉して(シール密閉工程)、所望とする容器入り納豆を完成させる。
【0053】
第3の製造方法によると、蒸煮大豆を充填して蓋閉じしかつ納豆菌発酵を行ってから、調味料3を充填してシール材13で密閉するという順序であるため、設備上衛生的にキープできる設備で製造する場合には、問題なく採用することができる。また、納豆2の発酵不良などが生じる場合、調味料3を充填してから発酵という工程であると、充填済みの調味料3とシール材13とが無駄になってしまうが、納豆菌発酵後に調味料3の充填及びシールをすれば、そのような無駄の発生を防止することができる。つまり、発酵不良が起きやすい場合にこの製造方法を採用する価値がある。
【0054】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0055】
(1)本実施形態の納豆容器11によると、蓋体23を折曲予定線L1に沿って蓋体外面23a側に谷折りすると、その折曲予定線L1を横断するように配置した開裂溝31の折曲予定線横断部位35が開裂する。その結果、調味料収納凹部32に収納されていた調味料3が開裂溝31を介して開裂箇所に到達し、そこから調味料収納凹部32の外部に吐出される。この場合、蓋体23が発泡樹脂製であるため、切れ目などの構造を設けなくても、蓋体23を比較的容易に蓋体外面23a側に谷折りすることができる。ゆえに、内部に収納している調味料3を簡単に外部に吐出させることができる。また、この納豆容器11によると、従来技術のものとは異なり破断突起体や帯シール片を設ける必要がないため、構造的に簡単なものとなり、比較的低コストで製造することができる。そして、本発明の納豆容器11はもともと平坦であった発泡樹脂シートを金型成型にて納豆収納凹部25等を成型するのと同時に調味料収納凹部32や開裂溝31を成型することができる。よって、硬質プラスチックなどを用いる必要もなく、また納豆容器製造工程を極めてシンプルにすることができ、比較的低コストで製造することができる。さらにこの納豆容器11では、密閉用のシール材13の破断や剥離を伴わずに調味料3が吐出可能な構造であるため、使用後に帯シール片などの余分なゴミが発生しない。よって、自分の手や周囲を汚すことなく、しかも煩雑な作業を伴うことなく調味料3を吐出させることができ、取扱上便利である。
【0056】
(2)本実施形態の納豆容器11では、蓋体23における折曲予定線L1上の少なくとも一部に、蓋体外面23a側にて開口する折曲溝41が形成されている。このため、折曲溝41が形成されている折曲予定線L1に沿って、蓋体23を正確にかつ極めて簡単に谷折りすることができる。よって、所望とする部位にて開裂溝31を確実に開裂させることができ、調味料3をより簡単かつ確実に外部に吐出させることができる。また、このような折曲溝41があれば、折り曲げ時にユーザーが折曲予定線L1の存在を視覚を通じて認知しやすくなるという利点もある。
【0057】
(3)本実施形態の納豆容器11では、調味料収納凹部32の底部34が開裂溝31に向って傾斜している。従って、調味料収納凹部32から開裂箇所に向けて調味料3がスムーズに案内され、調味料3をより簡単かつ確実に外部に吐出させることができる。特に本実施形態のように蓋体23を分離せずに調味料3を吐出させる場合でも、傾斜によって調味料3が流れやすくなるため、ヒンジ部24に近い側の調味料収納凹部32についても、調味料3を残らず注ぎだすことができる。
【0058】
(4)本実施形態の納豆容器11では、折曲予定線L1がヒンジ部24の延びる方向と平行に設定されている。このため、ユーザーが蓋体23を切り離すことなく、蓋体23と容器本体22との溶着部を剥がすだけで、蓋体23を折曲予定線L1に沿って容易に折り曲げることが可能となる。よって、いっそう調味料3を注ぎやすくすることができる。
【0059】
(5)本実施形態の納豆容器11では、蓋体23には折曲予定線L1を回避しつつ調味料収納凹部32及び開裂溝31を包囲する包囲溝42が設けられている。ゆえに、この包囲溝42の設置により、蓋体23が全体的に補強されて湾曲などが防止されるとともに、シール材13の捲れが防止される。ただし、包囲溝42は折曲予定線L1を回避して設けられているため、折曲予定線L1の近傍については蓋体23が補強されていない。よって、折曲予定線L1に沿って正確にかつ極めて簡単に蓋体23を谷折りすることができ、折曲予定線L1以外の箇所で折れ曲がることを防止することができる。さらにこの包囲溝42は、蓋体23の蓋体内面23b側から見て膨出した、いわば包囲凸部となっているため、例えば以下のような利点がある。即ち、調味料3を注ぐ際あるいは注ぎ終わった後に、開裂溝31から調味料3が蓋体23の蓋体内面23b側に垂れ落ちることがあっても、蓋体内面23b側の包囲凸部(包囲溝42)により移動が阻止される。その結果、蓋体23の縁部まで調味料3が垂れて手を汚したりテーブルを汚したりすることが防止される。また、本実施形態の容器入り納豆では、利便性の観点から納豆付着防止用の被膜フィルムを用いておらず、それゆえ納豆2の臭い漏れが起こりやすいが、上記の包囲凸部(包囲溝42)があることで臭い漏れの軽減が図られる。しかも、被膜フィルムなしの容器入り納豆では、容器本体22と蓋体23との隙間からゴミが入って納豆2に付着するリスクがあるが、上記の包囲凸部(包囲溝42)があれば、ゴミの侵入を防ぐことができ、衛生状態を維持することができる。
【0060】
(6)本実施形態の納豆容器11では、蓋体23を蓋体外面23a側に谷折りする際の折曲予定線L1を、発泡樹脂シート製の成型体12における気泡の配向方向D1に対して0°の角度θをなすように設定している。そのため、発泡樹脂シート製の成型体12を折り曲げる際の曲げ強度を最小限にすることができる。ゆえに、わざわざ切れ目を設けなくても、小さい力で蓋体23を蓋体外面23a側に簡単に谷折りすることができ、開裂部位をシャープに開裂することができる。よって、内部に収納している調味料3を簡単かつ確実に外部に吐出させることができる。
【0061】
(7)本実施形態の納豆容器11では、密閉用のシール材13が略平坦な樹脂フィルムであることから、切れ目や突起部がない極めて単純な構造となっており、加工コストを低く抑えることができる。また、シール材13側を折り曲げて開裂する必要がないことから、薄い樹脂フィルムを使用することができ、材料コストを低く抑えることができる。さらに、このような樹脂フィルムを蓋体23の蓋体外面23a側に溶着することで、漏れを防止しつつ調味料3を確実に収納することができる。
【0062】
(8)本実施形態の容器入り納豆では、蓋体23で容器本体22を塞いだときに、調味料収納凹部32及び開裂溝31が全体的に納豆収納凹部25によって覆われて保護され、外部に露出しない状態となる。ゆえに、調味料収納凹部32及び開裂溝31の破損や変形を未然に防止することができる。また、開裂溝31があらかじめ下側、つまり納豆収納凹部25側を向いているため、特に向きを変えることなく、そのまま折り曲げて調味料3を吐出させることができる。よって、納豆2に調味料3を速やかに注ぐことができ、非常に利便性が高い。
【0063】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、容器本体22と蓋体23とを分離するための分離加工部が特に形成されていなかったが、例えば図7に示す別の実施形態の発泡樹脂シート製の成型体12Aのように、ヒンジ部24近傍に分離加工部51を形成してもよい。好適な分離加工部としてはミシン目などがある。ミシン目はヒンジ部24に沿って1本または2本形成される。このような構成であると、容器本体22と蓋体23とを容易に分離することができる。また、分離加工部51を設けておけば、切り離してから調味料3を注ぎたいか、切り離さずに調味料3を注ぎたいか、というように、ユーザーが好みに合わせて自由に選択できるようになる。
【0065】
・上記実施形態では、折曲予定線L1がヒンジ部24の延びる方向と平行に設定されていたが、これに限定されるわけではない。例えば図7に示す別の実施形態の発泡樹脂シート製の成型体12Aのように、折曲予定線L1がヒンジ部24の延びる方向と直交して設定されていてもよい。分離加工部51を設けておけば、図7に示すように折曲予定線L1がヒンジ部24の延びる方向と直交する形態を選択することができる。
【0066】
・上記実施形態では、蓋体23に2つの調味料収納凹部32を設けたものを示したが、調味料収納凹部32の数は2つに限らず、1つのみあるいは3つ以上であってもよい。
【0067】
・上記実施形態では、折曲予定線L1を1本のみ設定したが、2つ以上設定することも可能である。複数の折曲予定線L1を設定する場合、それらは平行であってもよく、そうでなくてもよい。
【0068】
・上記実施形態ではシール材13として樹脂フィルムを用いたが、樹脂フィルム以外のものを使用してもよい。つまり、ある程度薄くて可撓性や液体不透過性を有するものであれば、必ずしも樹脂製でなくてもよい。そのようなものとして、例えば、油含浸紙、フィルムコート紙、金属ラミネートフィルム、金属箔などを挙げることができる。
【0069】
次に、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)手段1乃至10のいずれか1項において、前記折曲予定線は、前記発泡樹脂における前記気泡の配向方向に対して±30°以内(好ましくは±20°以内、特に好ましくは±10°以内)の角度をなすように設定されること。
(2)手段1乃至10のいずれか1項において、前記発泡樹脂のシート厚さが3mm以下、前記開裂溝の最浅部の深さが3mm以上、前記開裂溝の長さが5mm以上であること。
(3)手段1乃至10のいずれか1項において、前記開裂溝と前記調味料収納凹部とが連結する部位の深さは、前記開裂溝における前記折曲予定線横断部位の深さよりも深いこと。
(4)手段1乃至10のいずれか1項において、前記調味料収納凹部は複数であること。
(5)手段1乃至10のいずれか1項において、前記調味料収納凹部は前記開裂溝を挟んで一対配置されていること。
【符号の説明】
【0070】
2…納豆
3…納豆用調味料
11…納豆容器
12,12A…容器本体
13…シール材
22…容器本体
23…蓋体
23a…蓋体外面
23b…蓋体内面
24…ヒンジ部
25…納豆収納凹部
26…開口
31…開裂溝
32…調味料収納凹部
34…(調味料収納凹部の)底部
35…折曲予定線横断部位
41…折曲溝
42…包囲溝
51…分離加工部
L1…折曲予定線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
納豆収納凹部を有する容器本体と前記容器本体の開口を塞ぐ蓋体とがヒンジ部を介して連結された構造を有する発泡樹脂製の納豆容器であって、
前記蓋体には、蓋体内面側に膨出した形状の調味料収納凹部が設けられ、蓋体外面側に谷折りする際の折曲予定線が設定され、かつ、前記調味料収納凹部に連通し前記折曲予定線を横断するように配置された開裂溝が設けられ、
前記蓋体の前記蓋体外面側には、前記調味料収納凹部の開口を覆って密閉するシール材が設けられ、
前記蓋体を前記折曲予定線に沿って前記蓋体外面側に谷折りすることにより、前記開裂溝の折曲予定線横断部位にて開裂しうるように構成されている
ことを特徴とする納豆容器。
【請求項2】
前記蓋体における前記折曲予定線上の少なくとも一部には、前記蓋体外面側にて開口する折曲溝または折曲用ミシン目が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の納豆容器。
【請求項3】
前記調味料収納凹部の底部は、前記開裂溝に向って傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の納豆容器。
【請求項4】
前記容器本体と前記蓋体とを分離するための分離加工部が前記ヒンジ部近傍に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の納豆容器。
【請求項5】
前記折曲予定線は前記ヒンジ部の延びる方向と平行に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の納豆容器。
【請求項6】
前記蓋体には、前記折曲予定線を回避しつつ前記調味料収納凹部及び前記開裂溝を包囲する包囲溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の納豆容器。
【請求項7】
前記折曲予定線は、前記発泡樹脂における前記気泡の配向方向に対して±30°以内の角度をなすように設定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の納豆容器。
【請求項8】
前記発泡樹脂のシート厚さが3mm以下、前記開裂溝の最浅部の深さが3mm以上、前記開裂溝の長さが5mm以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の納豆容器。
【請求項9】
前記開裂溝と前記調味料収納凹部とが連結する部位の深さは、前記開裂溝における前記折曲予定線横断部位の深さよりも深いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の納豆容器。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の納豆容器における前記納豆収納凹部に納豆を収納し、前記調味料収納凹部に納豆用調味料を収納してなる容器入り納豆。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の納豆容器の前記蓋体における前記調味料収納凹部に納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、
前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と、
前記容器本体における前記納豆収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、
前記蒸煮大豆が充填された前記納豆収納凹部を塞ぐように、前記納豆用調味料が充填され前記シール材により密閉された前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、
前記蒸煮大豆と前記納豆用調味料とが充填された前記納豆容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程と
を含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の納豆容器の前記容器本体における前記納豆収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、
前記蒸煮大豆が充填された前記納豆収納凹部を塞ぐように前記納豆容器の前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、
前記蓋体における前記調味料収納凹部に納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、
前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と、
前記蒸煮大豆と前記納豆用調味料とが充填された前記納豆容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程と
を含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の納豆容器の前記容器本体における前記納豆収納凹部に蒸煮大豆を充填する蒸煮大豆充填工程と、
前記蒸煮大豆が充填された前記納豆収納凹部を塞ぐように前記納豆容器の前記蓋体を閉じる蓋閉じ工程と、
前記蒸煮大豆が充填された前記納豆容器を発酵室で保管して納豆菌発酵を行う発酵工程と、
前記蓋体における前記調味料収納凹部に前記納豆用調味料を充填する調味料充填工程と、
前記納豆用調味料が充填された前記調味料収納凹部を前記シール材にて密閉するシール密閉工程と
を含むことを特徴とする容器入り納豆の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67431(P2013−67431A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−263862(P2012−263862)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2011−32670(P2011−32670)の分割
【原出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(301058355)株式会社ミツカン (32)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【Fターム(参考)】