説明

納豆容器及び該納豆容器を用いた納豆の製造方法

【課題】 納豆の乾燥を防止する合成樹脂製シート(可食性シート)などの被膜が不要で、かつ、汎用されている容器本体の容量を被蓋時に小さくして納豆の表面を蓋体に確実に接せさせ、納豆の乾燥を防止することができ、輸送コストの上昇も防ぐことができる納豆容器を提供する。
【解決手段】 容器本体2と、上記容器本体2に被蓋される蓋体7とを備えた納豆容器1であって、上記蓋体7の周辺部に凸部10を形成し、該凸部10は、蓋体7を容器本体2に被蓋したときに、煮豆13を容器本体2の中央部に強制的に集めて、該煮豆13の表面が蓋体7に接するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、納豆容器に係り、特に、納豆の乾燥を防止する合成樹脂製シートなどの被膜が不要な納豆容器及び該納豆容器を用いた納豆の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
納豆は、原料となる大豆を選別する選別工程、選別された大豆を洗浄する洗浄工程、洗浄された大豆を水に浸漬する浸漬工程、浸漬した大豆を蒸し煮する蒸し煮工程、蒸し煮された大豆に納豆菌を接種する接種工程、納豆菌が接種された大豆を納豆容器となる容器に充填する充填工程、容器に充填された大豆を発酵させ、納豆を形成する発酵工程、形成された納豆を熟成させる熟成工程、たれ、からし等の添付品を添付して包装する包装工程を経て製造され出荷される。
【0003】
前記容器は、大豆の充填から消費まで一貫して使用されるため、納豆容器として要求される機能は、充填工程における操作性や、保温性、保湿性、通気性など大豆の発酵に適する機能のほか、衛生性、販売促進適正などの機能も要求されている。
【0004】
また、従来、納豆容器には、収容された納豆の表面が乾燥するのを防止するため、合成樹脂製シートが被膜されているのが一般的であるが、このシートを用いる方法では、納豆を摂食するとき、納豆の上に被せられた被膜を取り外す際に、納豆の粘質物が手指やテーブルに付着し、その始末に煩わしく摂食性が悪いという問題と、製造工程が一工程増え、製造ラインが複雑化し、コスト高となる、という問題を有していた。
【0005】
このため、この合成樹脂製シートを廃止し、納豆の表面を乾燥させないための手段として、蓋中央部を煮豆方向にへこませて煮豆に接触させる技術が特許文献1で提案されている。
【0006】
【特許文献1】特許第3997309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1に示す技術は、底面と、この底面の周縁から所定の角度を持って起立する側壁と、この側壁の上端から前記底面と略平行に突出するフランジ部とを有する容器本体と、前記フランジ部の一端に折り曲げ部を介して一体化され、前記フランジ部と略同じ大きさの蓋体とを備えた納豆容器において、前記蓋体の前記フランジ部との接触部を除く中央部に、前記側壁との間に所定の隙間を形成する大きさで、蓋体を閉じたとき前記容器本体内に向けて侵入し蒸し煮大豆の表面に接触する深さの窪みを形成したので、蒸し煮大豆を充填し発酵させる際に、蓋体に孔を開けることなく納豆容器内に発酵に必要な酸素を供給することができ、しかも、有孔被膜を用いることなく大豆の乾燥を防ぐことができる技術であるが、この従来技術の場合、納豆の表面中央部にある納豆は、乾燥を防止できるが、容器周辺部にある納豆は乾燥し易い、という問題を有していた。
【0008】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、蓋体の周辺部に凸部を設けて容器本体の煮豆を中央部に強制的に集めることによって、該煮豆の表面が蓋体に接するように構成することで、表面中央部だけではなく容器周辺部の納豆まで乾燥しない納豆を提供することができ、しかも、乾燥を防止する合成樹脂製シート(可食性シート)などの被膜が不要で、かつ、納豆の乾燥を確実に防止することができる納豆容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の納豆容器は、底面と、この底面の周縁から所定の角度を持って起立する側壁と、この側壁の上端から前記底面と略平行に突出するフランジ部とを有する容器本体と、上記容器本体に被蓋される蓋体とを備えた納豆容器において、上記蓋体の周辺部に、容器本体内の周辺部にある煮豆に接触する高さの凸部を形成し、該凸部は、蓋体を容器本体に被蓋したときに、煮豆を容器本体の中央部に強制的に集めて、該納豆の表面が蓋体に接するように構成し、煮豆の乾燥を防止する被膜シートを廃止したことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の納豆容器を技術的前提とし、前記蓋体の周辺部の凸部が、蓋体のフランジ部より8mm以上の高さであり、かつ、容器本体内の周辺部にある煮豆に接触する高さを有して形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の納豆容器を技術的前提とし、前記蓋体の周辺部の凸部が、容器本体の側壁上端部から凸部内側までの水平距離が8mm以上となるように形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
そして、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の納豆容器を技術的前提とし、前記蓋体の周辺部の凸部が、容器本体の周辺部全体の8割超に渡って設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の納豆容器を技術的前提とし、前記蓋体に空気孔が形成されておらず、かつ、発酵に必要な空気は、蓋体と容器本体の隙間から取り入れることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の納豆容器を技術的前提とし、前記蓋体の中央部は、前記フランジ部と略同一高さに形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
またさらに、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の納豆容器を技術的前提とし、前記容器本体の底面は、中央部に向かって略凸状に形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
またさらに、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の納豆容器を技術的前提とし、前記容器本体の一隅には、納豆収納部とは仕切られた調味料収納部が納豆収納部と一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項9に記載の発明は、原料の大豆を浸漬する浸漬工程と、浸漬された大豆を蒸煮する蒸煮工程と、蒸煮した煮豆に納豆菌を接種する納豆菌接種工程と、納豆菌が接種された煮豆を納豆容器に盛り込む盛り込み工程と、納豆容器に盛り込まれた煮豆を発酵させる発酵工程とを有する納豆の製造方法において、前記納豆容器として請求項1乃至8のいずれかに記載の納豆容器を使用することにより煮豆の乾燥を防止する被膜シートを廃止したことを特徴とする納豆の製造方法である。
【0018】
さらに、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の納豆の製造方法を技術的前提とし、前記発酵工程において納豆容器の蓋体と容器本体の間の隙間から発酵に必要な空気を取り入れることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
それ故、請求項1の発明によれば、納豆の乾燥を防止する合成樹脂製シートなどの被膜が不要であり、しかも、表面中央部の納豆の乾燥を防止するため、煮豆と蓋体を接触させることで、煮豆周辺の空間が狭まり乾燥しにくくすると共に、煮豆から蒸発した水滴が蓋体に溜まるが、蓋体と煮豆とを接触させたので、蓋体についた水滴が煮豆へと戻り易いため、煮豆(納豆)の乾燥を防止することができる。
【0020】
また、この発明によれば、容器本体内の周辺部にある納豆は、蓋体と容器本体の隙間から流入した湿度の低い空気が煮豆に直接接触しないので、煮豆の乾燥を防止することができる。フラットな蓋体の場合、流入した湿度の低い外気が直接煮豆の表面に接触するため、乾燥し易いが、この発明にあっては、このようなことが起こらないので、乾燥を防止することができる。
【0021】
さらには、この発明にあっては、前記特許文献1のような落し蓋を採用した形状の容器と比較した場合、本発明の納豆容器の方が容器本体の周辺部の煮豆(納豆)の乾燥を防止することができる。これは、容器本体内に盛り込んだ煮豆は、盛り込み直後は山盛りになり易いため、落し蓋の場合には、容器本体内の周辺部にある煮豆と落し蓋との間に隙間が発生し易く、この隙間部分は蓋との接触がないため蒸発し易くなって乾燥し易い状態となり、そこに外気が流入して外気が接触するため乾燥が促進される。これを防止するためには、煮豆の盛り込みがフラットとなるような盛り込み装置を用いたり、山盛りになった煮豆をフラットに成形する等の工程が必要となるが、これでは製造ラインが複雑化し、かつ、製造コストが嵩むため採用することはできないのに対し、本発明の納豆容器にあっては、容器周辺部の煮豆と蓋体の周辺部の凸部が接触するように構成されているので、周辺部の煮豆は乾燥しにくく、加えて、流入してくる外気は、蓋体と容器本体の隙間から流入した後、容器本体の低い位置まで下りた後ではじめて煮豆と接触するが、容器本体の低い位置部分は、比較的湿度が高くなっているため、流入した外気の湿度が上がり、この湿度が上がった外気が煮豆と接触するため、乾燥しにくくなるからである。
【0022】
ここで、本発明の納豆容器は、容器周辺部の煮豆と蓋体の周辺部の凸部が接触するように構成され、且つ、容器中央部にある納豆の表面が蓋体に接するように構成されているものであるが、当然ながら前記凸部や蓋体の全ての面が漏れなく煮豆と接していることはありえないので、一部に煮豆と接しない箇所が存在していても構わないことは言うまでもない。
【0023】
さらに、本発明の納豆容器は、納豆の乾燥を防止することができれば、蓋体周辺部の凸部を容器本体の周辺部全体に渡って設けられていなくてもよいし、又は一部の凸部を煮豆に接しない高さに構成してもよい。例えば、請求項8に記載の発明のように、容器本体の一隅に納豆収納部とは仕切られた調味料収納部が納豆収納部と一体に形成されているような場合においては、該調味料収納部と該納豆収納部との間の仕切り部は、納豆収納部に外気が直接流入しにくいため、該仕切り部に対応する位置の蓋体周辺部には凸部を構成しなくとも乾燥を防ぐことができる。
【0024】
次に、請求項2に記載の発明によれば、容器本体の下方に外気が入り込む距離を長くすることができ、また、容器本体内の周辺部の煮豆と蓋体を接触させることで、その箇所の煮豆周りの空間が減り、蒸発しにくく乾燥しにくくすることができる。
【0025】
また、この発明によれば、蓋体の周辺部の凸部の幅と、請求項3に記載の発明で、容器本体の側壁上端部から凸部内側までの水平距離とを、それぞれ8mm以上とすることで、容器本体内に流入した外気が納豆の表面中央部に入り込むまでの間に、できるだけ容器本体の下の方で長い間滞留するため、表面にある納豆の乾燥を有効に防止することができる。なお、凸部の形状は矩形でも楔形でも構わない。
【0026】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、蓋体の周辺部の凸部がない箇所があると、その位置にある納豆が乾燥しやすくなるが、蓋体の周辺部の凸部を、容器本体の周辺部全体の8割超に渡って形成したので、容器本体内の周辺部にある納豆が乾燥し易くなるのを防止することができる。
【0027】
なお、例えば、請求項8に記載の発明のように、容器本体の一隅に納豆収納部とは仕切られた調味料収納部が納豆収納部と一体に形成されているような場合においては、「容器本体の周辺部全体」の語は「容器本体の納豆収納部の周辺部全体」を意味する。この場合、調味料収納部と納豆収納部との間の仕切り部は、納豆収納部に外気が直接流入しにくいため、該仕切り部に対応する位置の蓋体においては凸部を構成していなくとも凸部を構成してあるものとして凸部が構成されている割合を計算する。例えば、納豆収納部の全周が30cmの容器において、調味料収納部と納豆収納部との間の仕切り部の長さが10cmを占める場合で、該仕切り部以外の20cmの中に凸部を15cmに渡って構成した場合には、凸部(15cm)と仕切り部(10cm)の合計25cmに凸部があるものと見て凸部の割合を計算する。つまりこの事例においては、25cm/30cm=約83%に渡って凸部が形成されたものと判断する。
【0028】
また、請求項5に記載の発明によれば、蓋体に空気孔が設けられておらず、発酵に必要な空気は蓋体と容器本体との隙間から取り入れるように構成する。納豆は発酵のために外気と容器本体内の空気の入れ替えが必要であり、容器本体内を完全に密閉することはできないが、蓋体の天井部に空気孔を設けると、特に被膜シートを廃止した本発明の納豆容器の場合にはゴミなどが直接納豆に触れる可能性があり不衛生となる。また、被膜シートのない状態で蓋体の天井部に空気孔を設けると表面にある納豆が乾燥してしまう。しかしながら、請求項5に記載の発明のように空気孔を設けないことでゴミが入るのを防止することができ、衛生的であると同時に、納豆表面の乾燥を防止することができる。
【0029】
次に、蓋体を従来技術のように落し蓋(蓋体中央部を容器本体方向に凸にすること)とした場合には、容器本体内に盛り込むことができる煮豆の容量は容器本体容量から蓋体中央部の凸部を引いた容積となるが、請求項6に記載の発明によれば、蓋体の中央部を、前記フランジ部と略同一高さに形成したので、容器本体内に盛り込むことができる煮豆の容量は容器本体容量から蓋体周辺部の凸部を引いた容積となり、比較的多くの容量の煮豆を盛り込むことができる。つまり、請求項6に記載の発明の納豆容器は、従来技術の納豆容器に比べ同じ容量の煮豆を盛り込もうとした場合に納豆容器全体の容積を小さくすることができ、輸送コストの増加を防止することができる。また、一般的なフラットな蓋体の容器本体の仕様にあわせて設計された装置をそのまま使える。例えば、積み重なった空の容器を吸盤で1枚づつ吸い付けてラインに並べる装置や、容器の段重ね時の高さが変わらない箱詰めやラベル帯のための装置等が考えられる。
【0030】
また、請求項7に記載の発明によれば、汎用されている容器本体の容量を被蓋時にさらに小さくして納豆の表面を蓋体に確実に接触させることができ、表面にある納豆の乾燥をより確実に防止することができる。
【0031】
また、請求項8に記載の発明によれば、粘度を調整したタレを入れる小容器部分を容器本体の一隅に一体形成し、別体のタレ小袋及び被膜シートを廃止したので、食するときの利便性が相乗的に向上し、また、本発明のような小容器部を形成しようとすると、納豆を盛り込む容器本体の容量が小さくなり、このような納豆容器に特許文献1のような落し蓋を採用した場合には、ますます納豆を入れる容量が小さくなってしまうが、本発明にあっては、上記した構成とすることで、小容器部を形成しても、納豆を入れる容量は比較的確保し易い等、幾多の優れた効果を奏する。さらに、前記小容器部分に包装されていないタレを直接入れる場合、タレの漏れを防止するために増粘多糖類(寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガム等)などを用いて粘度を調整する必要がある。増粘多糖類などを用いたタレを使用する場合、タレを充填するには増粘多糖類の溶解温度(比較的高温)で充填するか、常温充填をした後にタレの温度を増粘多糖類の溶解温度にまで達する必要があるが、設備的に比較的シンプルな常温充填をするための工夫として、発酵工程において通常発酵温度(例えば40℃程度)よりも5℃程度高く設定して一度崩れたゲルを復元するといった工夫も考えられる。発酵温度を高くすると当然に納豆の乾燥が進みやすくなる。つまり、容器本体の一隅にタレを入れる小容器部分を一体形成し、該小容器部に増粘多糖類を用いたタレを入れる場合には特に本発明の構成による乾燥の防止が重要となる。
【0032】
請求項8に記載の発明の納豆容器においては、「蓋体の周辺部」の語は「納豆収納部に対応する蓋体の周辺部」を意味し、「容器本体内の周辺部」の語は「容器本体の納豆収納部の周辺部」を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1は、この発明の第1実施形態例に係る納豆容器の容器本体と蓋体の構成を示す斜視図を、図2は煮豆が収容され蓋体が被蓋された同納豆容器の断面図を、図3は納豆が収容され蓋体が被蓋された同納豆容器の断面図である。
【0035】
図において、符号1は納豆容器を、2は納豆容器1の容器本体で、底面3と、この底面3の周縁から所定の角度で起立する側壁4と、この側壁4の上端から底面3と略平行に張り出したフランジ部5とで構成され、側壁4には所要の間隔で複数の溝6が形成されている。
【0036】
上記底面3は、容器本体2の中央部に向かって徐々に高くなるように緩やかに湾曲して形成されている。勿論、底面3を従来の納豆容器と同様に形成しても構わない。
【0037】
符号7は納豆容器1の蓋体で、この実施形態例では、前記フランジ部5の一端に折り曲げ部8を介して容器本体2と一体に形成され、前記フランジ部5と接触するフランジ部9から容器本体2の内側壁と接する部分には、下向きに突出する断面略U字状の凸部10が形成されている。また、天井部がフラットな蓋体7の底面には複数の溝12が形成されている。勿論、この窪み12は、形成しなくとも良い。また、上記蓋体7は、容器本体2とは別体で形成しても構わない。
【0038】
この納豆容器1は、図2に示すように、煮豆13を充填し、折り曲げ部8を折り曲げ容器本体2の開口部に蓋体7を被せた後、2ヶ所の接着点で容器本体2側のフランジ部5と蓋体7側のフランジ部9を接着して固定する。
【0039】
このとき、蓋体7の周辺部の凸部10が収容された納豆(煮豆)13を容器本体2の中央部へと押し付け、さらに、本容器本体2の底部は徐々に湾曲して中央部が高くなるように構成されているので、煮豆13は、容器本体2の上方へと押し上げられ、その表面が蓋体7の上面と接触する。勿論、この容器本体2に蓋体7を被せたときの納豆容器1の内容積は、蓋体7の下面が内部に充填した煮豆13の上面に接触する大きさに形成されている。
【0040】
尚、納豆の製造工程を示すフローチャートは、特に図示はしないが、特許文献1に記載されているように、内部に所定の温度の温風を供給する温風供給装置を備えている発酵装置と、コンテナと、所定の間隔で配置された複数の棚と、を備えてなり、各棚上に大豆が充填された納豆容器1が載置されている。
【0041】
このような構成で、原料となる大豆が入荷したらその品質をチェックし、大豆に混入した異物、割れや欠けのある大豆などを除去した後、選別された大豆を洗浄し、大豆の表面に付着するごみやほこりを除去し、挽き割り納豆の場合には、丸大豆を6から8つに割り、皮を取り除き、洗浄した丸大豆もしくは挽き割り大豆を水に浸漬する。ここで、浸漬時間は、丸大豆の場合は12〜20時間、挽き割り大豆の場合は3〜5時間程度である。
【0042】
所定時間水に浸漬した大豆を水から揚げ、大豆が柔らかくなるまで圧力釜で蒸し煮する。ここで、蒸し煮する温度および時間は、丸大豆の場合は120〜130℃で約30分、挽き割り大豆の場合は105〜125℃で約15分間程度である。
【0043】
柔らかく蒸し煮された大豆が熱いうちに、希釈された納豆菌をスプレーして接種し、納豆菌が接種された大豆を前記納豆容器1に充填する。ここで、前記納豆容器1の折り曲げ部8を折り曲げ、容器本体2の開口部を蓋体7で覆い、互いに接触した容器本体2側のフランジ部5と蓋体7側のフランジ部9を接着点で接着し固定した後、カバーフィルムで封止する。
【0044】
大豆を充填した納豆容器1を発酵装置内のコンテナの棚上に並べ、発酵装置を作動させると、発酵装置は、30〜50℃の温風を送風する。そして、納豆容器1を約20時間、発酵装置内に置いておくと、納豆菌の作用により蒸し煮大豆が発酵して納豆になる。
【0045】
発酵が終了すると、納豆容器1は、冷蔵庫に移され、納豆の熟成が行なわれる。この熟成は、5℃に冷却された冷蔵庫で24時間行われる。このとき、図3に示すように、蓋体7の底面が納豆(大豆13)に接触しているため、蓋体7が有孔被膜の代わりになり、納豆の乾燥を防止することができる。
【0046】
納豆の熟成が終わると納豆容器1は冷蔵庫から取出され、包装されて出荷される。
【0047】
上記の納豆容器1に収納された納豆を摂食する場合、ポリエチレンなどの被膜がないので、有孔被膜を取り除く際に手指やテーブルに対する納豆の粘質物の付着の発生がなく、その準備を容易に行うことができる。
【0048】
また、この実施形態例では、容器本体2の内容量を、従来の納豆容器と同じに形成し、被蓋時に上記内容量を小さくすることができるので、容器本体2が大きくならず、従って輸送コストが増加することもない。
【0049】
図4は、この発明の第2実施形態例にかかる納豆容器1を示しており、該納豆容器1は、容器本体2一隅に、納豆収納部である容器本体2とは仕切られた調味料収納部14が容器本体2と一体に形成し、対応する蓋体7の一隅に、該調味料収納部14に密に嵌合して調味料がみだりに漏出しないように作用する密封用凸部15が形成されている他は、他の構成・作用は上記第1実施形態例と同様であるので、図面には第1実施形態例と同一の符号を付して、その詳細な説明を茲では省略する。
【0050】
この実施形態例に係る納豆容器1は、上記のように構成したので、粘度を調整したタレを入れる調味料収納部を容器本体の一隅に一体形成し、別体のタレ小袋及び被膜シートを廃止したので、食するときの利便性が相乗的に向上し、また、このような調味料収納部を形成しようとすると、納豆を盛り込む容器本体2の容量が小さくなり、このような納豆容器1に特許文献1のような落し蓋を採用した場合には、ますます納豆を入れる容量が小さくなってしまうが、この実施形態例にあっては、上記した構成とすることで、調味料収納部を形成しても、納豆を入れる容量は比較的確保し易い。
【0051】
さらに、前記小容器部分に包装されていないタレを直接入れる場合、タレの漏れを防止するために増粘多糖類(寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガム等)などを用いて粘度を調整する必要がある。増粘多糖類などを用いたタレを使用する場合、タレを充填するには増粘多糖類の溶解温度(比較的高温)で充填するか、常温充填をした後にタレの温度を増粘多糖類の溶解温度にまで達する必要があるが、設備的に比較的シンプルな常温充填をするための工夫として、発酵工程において通常発酵温度(例えば40℃程度)よりも5℃程度高く設定して一度崩れたゲルを復元するといった工夫も考えられる。発酵温度を高くすると当然に納豆の乾燥が進みやすくなる。つまり、容器本体の一隅にタレを入れる小容器部分を一体形成し、該小容器部に増粘多糖類を用いたタレを入れる場合には特に本発明の構成による乾燥の防止が重要となる。
【0052】
〔実験例〕
以下、本発明を実験例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
納豆製造は常法により行った。すなわち、納豆菌はバチルスズブチルス属の菌を使用した。
【0054】
十分に浸漬した大豆(小粒大豆)を蒸煮釜(原田産業社製の納豆自動小型蒸煮釜)にて蒸煮した。蒸煮した大豆(煮豆)に納豆菌(バチルスズブチルス属の菌)の接種(納豆菌の希釈液を散布)、攪拌し、試験例ごとに用意した発砲スチロール製の納豆容器に煮豆を盛り込みをして、発酵室において40℃で18時間発酵させた。
【0055】
発酵終了後、トレーを冷蔵室に移し10℃以下に冷やした後、目視により乾燥具合を確認した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1からも明らかなように、試験例1〜4から、納豆の表面中央部と周辺部の乾燥するメカニズムは別々であり、従来の容器(フラットな蓋体や落とし蓋)では不十分であることがわかった。
【0058】
次に、試験例5から、蓋中央部に煮豆を集めずに、煮豆が蓋体と接触しない状態で発酵させると、周辺部は若干乾燥し、表面中央部は乾燥してしまい好ましくないことがわかった。
【0059】
また、試験例6より、蓋周辺の凸部は高さが8mm以上が好ましく、幅(容器本体の側壁上端部からの凸部内側までの水平距離)も8mm以上が好ましいことがわかった。
【0060】
さらに、試験例7、試験例8より、蓋周辺の凸部は、一部欠けているとその箇所が乾燥しやすいため、容器本体の周辺部全体の8割超、好ましくは9割超に渡って、さらに好ましくは全周に渡っていることが好ましいことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の第1実施形態例に係る納豆容器の容器本体と蓋体の構成を示す斜視図である。
【図2】蓋体が被蓋された同納豆容器の断面図である。
【図3】納豆が収容され蓋体が被蓋された同納豆容器の断面図である。
【図4】この発明の第2実施形態例に係る納豆容器の容器本体の一隅に、納豆収納部とは仕切られた調味料収納部が納豆収納部と一体に形成されている納豆容器の一例の図である。
【符号の説明】
【0062】
1 納豆容器
2 容器本体
3 底面
4 側壁
5 フランジ部
7 蓋体
8 折り曲げ部
9 フランジ部
10 (蓋体周辺部の)凸部
13 蒸し煮大豆(納豆)
14 調味料収納部
15 密封用凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、この底面の周縁から所定の角度を持って起立する側壁と、この側壁の上端から前記底面と略平行に突出するフランジ部とを有する容器本体と、上記容器本体に被蓋される蓋体とを備えた納豆容器において、
上記蓋体の周辺部に、容器本体内の周辺部にある煮豆に接触する高さの凸部を形成し、該凸部は、蓋体を容器本体に被蓋したときに、煮豆を容器本体の中央部に強制的に集めて、該納豆の表面が蓋体に接するように構成し、煮豆の乾燥を防止する被膜シートを廃止したことを特徴とする納豆容器。
【請求項2】
前記蓋体の周辺部の凸部が、蓋体のフランジ部より8mm以上の高さを有して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の納豆容器。
【請求項3】
前記蓋体の周辺部の凸部が、容器本体の側壁上端部から凸部内側までの水平距離が8mm以上となるように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の納豆容器。
【請求項4】
前記蓋体の周辺部の凸部が、容器本体の周辺部全体の8割超に渡って設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の納豆容器。
【請求項5】
前記蓋体に空気孔が形成されておらず、かつ、発酵に必要な空気は、蓋体と容器本体の隙間から取り入れることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の納豆容器。
【請求項6】
前記蓋体の中央部は、前記フランジ部と略同一高さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の納豆容器。
【請求項7】
前記容器本体の底面は、中央部に向かって略凸状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の納豆容器。
【請求項8】
前記容器本体の一隅には、納豆収納部とは仕切られた調味料収納部が納豆収納部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の納豆容器。
【請求項9】
原料の大豆を浸漬する浸漬工程と、浸漬された大豆を蒸煮する蒸煮工程と、蒸煮した煮豆に納豆菌を接種する納豆菌接種工程と、納豆菌が接種された煮豆を納豆容器に盛り込む盛り込み工程と、納豆容器に盛り込まれた煮豆を発酵させる発酵工程とを有する納豆の製造方法において、前記納豆容器として請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の納豆容器を使用することにより煮豆の乾燥を防止する被膜シートを廃止したことを特徴とする納豆の製造方法。
【請求項10】
前記発酵工程において納豆容器の蓋体と容器本体の間の隙間から発酵に必要な空気を取り入れることを特徴とする請求項9に記載の納豆の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−161202(P2009−161202A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340137(P2007−340137)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(301058355)株式会社ミツカン (32)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【Fターム(参考)】